説明

ゼリー入り飲料及びその製造方法

【課題】本物果実に類似した食感のゼリーを含有する飲料を簡便な方法で、特別な装置を必要とせずに提供する。
【解決手段】以下の工程(i)〜(iii):(i)脱アシル型ジェランガム、グルコマンナン、及び、キサンタンガム又はκ−カラギナンを含むゲル化剤を加熱溶解してゲル化剤溶液(A)を得る工程;(ii)前記ゲル化剤溶液を45℃以下に冷却する工程;及び(iii)可溶性カルシウム塩溶液(B)を調整し、これに冷却したゲル化剤溶液を投入してゼリー部を製造する工程;を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼリー入り飲料及びその製造方法に関し、より詳細には、果実様食感を有するゼリーを含有する飲料及び該飲料を簡便に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料、特に果実風味を有する飲料において、果肉を含有させたものはその食感も楽しむことができる。しかし、果肉中には果実の種や皮等の異物が混在し易く充分な量を飲料中に配合できないという衛生上の問題から、飲料中に配合するための果実様食感を有するゼリーの需要が高まっており、果実様食感が付与されたゼリーを含有するゼリー入り飲料が種々検討されている。例えば、特許文献1は、エステル化度5%のLMペクチンを主成分とするゲル化剤でゲル化されたゼリー小体を含有する、果実感や繊維感を感じることのできるゼリー含有飲食品を開示する。特許文献2は、ジェランガム及びLMペクチンを用いて繊維状に成形したゼリーを配合したゼリー入り飲料を開示する。また、特許文献3は果実状食感を有する粒状ゼリーを工業的に製造するための製造装置を開示する。さらに、特許文献4は、特定量の脱アシル型ジェランガム及びキサンタンガム溶液に可溶性カルシウム塩を添加した後、攪拌しながらLMペクチン溶液を添加し、得られたゲルをマイクロゲル化することを特徴とする果実食感を有する飲料を提案する。
【特許文献1】特開平7−31387号公報
【特許文献2】特開平3−277259号公報
【特許文献3】特開2003−284540号公報
【特許文献4】特開2004−129596号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、上記のゼリー入り飲料を工業規模で製造しようとした場合、ゼリーが0.5mm未満ほどの大きさまでに微粉砕され、果実様食感を楽しむのに満足な飲料とするには、そのゼリーの食感や大きさの制御が困難であることを見出した。
【0004】
本発明の課題は、本物果実に類似した食感のゼリーを含有する飲料を簡便な方法で、特別な装置を必要とせずに提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ゲル化剤として脱アシル型ジェランガム、グルコマンナン及びキサンタンガム又はκ−カラギナンを特定量配合して溶解し、得られたゲル化剤溶液を冷却後、可溶性カルシウム塩溶液に投入してゼリー部を調製することで、工業規模で製造しても、ゼリーが破砕され過ぎることなく、ゼリーの果実様食感を楽しむことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、脱アシル型ジェランガム、グルコマンナン並びにキサンタンガム及び/又はκ−カラギナンを含むゲル化剤溶液(A);及び
可溶性カルシウム塩溶液(B);
を混合して得られるゼリー部を含有するゼリー入り飲料であって、前記の飲料中に、脱アシル型ジェランガム0.01〜0.45重量%、グルコマンナン0.002〜0.125重量%並びにキサンタンガム及び/又はκ−カラギナン0.003〜0.2重量%を含む、前記のゼリー入り飲料を提供する。
本発明はまた、ゲル化剤溶液(A)中のゲル化剤濃度が、脱アシル型ジェランガム0.15〜0.75重量%、グルコマンナン0.0375〜0.125重量%並びにキサンタンガム及び/又はκ−カラギナン0.05〜0.2重量%である、前記のゼリー入り飲料を提供する。
本発明はまた、可溶性カルシウム塩溶液(B)中のカルシウム濃度が、0.1重量%である、前記のゼリー入り飲料を提供する。
本発明はまた、ゲル化剤溶液(A)/カルシウム塩溶液(B)が容積比で5以下である、前記のゼリー入り飲料を提供する。
本発明はまた、ゼリー部の平均粒径が0.5〜10mmである、前記のゼリー入り飲料を提供する。
本発明はまた、以下の工程(i)〜(iii):
(i)脱アシル型ジェランガム、グルコマンナン並びにキサンタンガム及び/又はκ−カラギナンを含むゲル化剤を加熱溶解してゲル化剤溶液(A)を得る工程;
(ii)前記ゲル化剤溶液を45℃以下に冷却する工程;及び
(iii)可溶性カルシウム塩溶液(B)を調製し、これに冷却したゲル化剤溶液を混合してゼリー部を製造する工程;
を含む、ゼリー入り飲料の製造方法を提供する。
本発明はまた、前記工程(ii)において、冷却後のゲル化剤溶液(A)の粘度が100mPa・s以上である、前記のゼリー入り飲料の製造方法を提供する。
【0007】
さらに本発明は、(iv)製造したゼリー部を保持する工程をさらに含む、前記のゼリー入り飲料及びその製造方法を提供する。
さらに本発明は、前記飲料部のアルコール濃度が1〜25v/v%である、前記のゼリー入り飲料及びその製造方法を提供する。
さらに本発明は、ゼリーの一部又は全部が分散した状態である、前記のゼリー入り飲料及びその製造方法を提供する。
さらに本発明は、容器詰め飲料である前記のゼリー入り飲料を提供する。
さらに本発明は、ゼリーが柑橘類のさのう様の食感を有する、柑橘類風味の前記のゼリー入り飲料及びその製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、本物果実に非常に類似した食感を有するゼリー、例えばみかんやグレープフルーツ等の柑橘系果実のさのうに類似した食感を有するゼリーを含有するゼリー入り飲料、特に容器に充填された容器詰め飲料であってそのまま流通販売に供することができる形態のゼリー入り飲料を、簡便に特別な装置を要さず製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ゼリー部
本明細書中において、「ゼリー部」とは、以下にそれぞれ詳述する、ゲル化剤溶液(A)及び可溶性カルシウム塩溶液(B)を混合して得られる、粒状、円柱状、角状等、種々の形状である比較的小さいゼリーであって、ゼリー入り飲料中で果実様の食感を呈するものである。
【0010】
ゼリー部の大きさは、果実様食感を呈する飲用に適した大きさであれば限定されず任意の大きさとすることができ、一般に、柑橘系果実様食感を有するゼリーを得ようとする場合には、ゼリー部の大きさを、平均粒径0.5〜10mm、好ましくは1.0〜5.0mm、より好ましくは2.0〜4.0mmとすることができる。なお、本明細書において、平均粒径とは、最も数(個数)が多く含まれるゼリー部(又はゼリー)の大きさを指し、ゼリー部(又はゼリー)が球状でない場合には、その長辺の長さを指す。ゼリー部の平均粒径が0.5mm以下では得られる飲料中で果実様食感が感じられにくく、平均粒径が10mm以上であると容器詰飲料とした場合に容器中への充填が困難となる、充填後の飲料の飲用に困難を生じる、飲料の喉越しが損なわれる等の不都合が生じ得る。平均粒径が上記範囲であるならば、ゼリー部の最大の大きさ(ゼリー部が球状でない場合は、その長辺の長さ)が20mm程度のものが混在してもよい。ゼリー部の大きさは、ゲル化剤溶液(A)とカルシウム塩溶液(B)とを混合する際の剪断力によって調整することができ、同一の配合であっても、剪断力の大きい場合には小さなゼリー部、剪断力の小さい場合には大きなゼリー部を得ることが出来る。剪断力は、例えば:上記(A)を(B)に混合(投入)する際の混合(投入)速度;上記(A)と(B)との混合をタンク内で行う場合その回転数;上記(A)と(B)との混合を管内で行う場合には管内を通過する流速;等を操作することにより、調整可能である。ゼリー部の大きさはまた、ゲル化剤溶液(A)とカルシウム塩溶液(B)とを混合する際のゲル化剤溶液の粘度によっても調整可能である。該粘度が低い場合にはゲル化剤溶液がカルシウム溶液中で拡散しやすく、大きな軟らかいゼリー部を形成しやすい。
【0011】
ゼリー部は、少なくとも脱アシル型ジェランガム及びグルコマンナンをゲル化剤として含有し、さらに、キサンタンガム及び/又はκ−カラギナンをゲル化剤として含有する。これらを含むことで、工業規模で製造した場合であっても輸送に耐え得る強度、弾力性及び耐熱性を有し、かつ果実様食感を有するゼリー部を得ることができる。ゲル化剤の配合(種類及び量)は、例えば以下の(a)〜(c)の点に留意して決定することができる。
(a)ゲル化剤溶液を45℃以下に冷却する工程(ii)の後で適度な粘度(100mPa・s以上、好ましくは150mPa・s以上)を有する配合であること。冷却後に適度な粘度がない場合、その後の工程(iii)でゼリー部を製造する際に、可溶性カルシウム溶液によりゲル化剤溶液が希釈され、ゲル化が進行しない、充分な密度のゲルが形成されない、等の不都合が生じる。
(b)製造したゼリーが所望の弾性を有する配合であること。ゲルが所望の弾性を有さない場合、ゼリー入り飲料の容器充填時、加熱殺菌装置通過時等に受ける衝撃によりゼリーが破壊され、容器詰後、ゼリー入り飲料として飲用する際に、望ましい果実様の食感を有するゼリーが得られない。ゼリーの弾性は、例えば後述の参考例に記載したようなゲル破断試験の破断歪(破断点に到達するまでの時間で代替可能)から判断することが出来る。
(c)製造したゼリーが耐熱性を有する配合であること。ゼリーが耐熱性を有さない場合、飲料の加熱殺菌にゼリーが耐え得ない。加熱殺菌の必要のない、チルド流通方式を用いて飲料を提供する場合や、炭酸飲料の製造においてはこの(c)の点を無視して配合を決定することができる。
【0012】
例えばジェランガムのみでは上記の条件(a)及び(b)を満たさず;ジェランガム+グアガム+キサンタンガムの配合では上記の条件(a)及び(b)を満たさず;ジェランガム+LMペクチンの配合では上記の条件(b)を満たさずマイクロゲルのみが形成され;脱アシル型ジェランガム+グルコマンナン+キサンタンガム又はκ−カラギナンの配合では上記の条件(a)〜(c)が全て満たされることを本発明者らは見出している。
【0013】
本発明におけるゲル化剤に含まれる脱アシル型ジェランガム、グルコマンナン、キサンタンガム及びκ−カラギナンについて、以下に詳述する。
脱アシル型ジェランガム
ゼリー部の骨格を形成すると考えられるゲル化剤であり、その配合量はゲル化剤溶液(A)中、0.15〜0.75重量%が好ましく、0.15〜0.50重量%がより好ましく、0.20〜0.35重量%が特に好ましい。0.15重量%以下であると、ゼリーが形成されない、ゼリーの耐熱性が得られず殺菌工程等によりゼリーが破損する等の問題が生じる。また0.75重量%以上であると硬くて脆い食感のゼリーとなり、食感が好ましくないばかりか、工業規模で製造した場合の機械耐性に劣ることがある。脱アシル型ジェランガムのみをゲル化剤とすると、ゲル化剤溶液の粘度が非常に低粘度となり(後述の実施例3参照)、カルシウム塩溶液に投入した際にゲル化剤溶液が分散してしまい、果実様食感を有するゼリー部が形成されないことを本発明者らは確認している。なお、上記脱アシル型ジェランガムの配合量は、ゼリー入り飲料全体に対し、0.01〜0.45重量%であることが好ましい。
【0014】
グルコマンナン
単独ではゲル化せず、以下に述べるキサンタンガム又はκ−カラギナン等との併用で、弾力のあるゼリー部を形成するゲル化剤である。グルコマンナンを配合することで、上記脱アシル型ジェランガムによって形成されるゼリー部の骨格に弾力が付与され、果実様の食感、機械耐性等の面において好ましいゼリー部が得られる。また、グルコマンナンをゲル化剤として適量配合することで、ゲル化剤溶液に粘度が付与される。その配合量はゲル化剤溶液(A)中、0.038〜0.125重量%が好ましく、0.05〜0.1重量%がより好ましく、0.05〜0.075重量%が特に好ましい。0.038重量%以下であると、ゲル化剤溶液の粘度について所望する値が得られず、弾力が低く、果実様食感、機械耐性において好ましいゼリー部が得られない。また、0.125重量%以上であると、冷却時のゲル化剤溶液の粘度が高く、取り扱い辛い、小さいゼリー部の製造が困難になる、得られるゼリー部の弾力が高すぎる等の問題が生じ得る。なお、上記グルコマンナンの配合量は、ゼリー入り飲料全体に対し、0.002〜0.125重量%であることが好ましい。
【0015】
キサンタンガム、κ−カラギナン
上記グルコマンナンと併用し、弾力性を有するゼリー部を形成するために配合される。従って、その配合量は上記グルコマンナンの量に対応し、具体的には、ゲル化剤溶液(A)中、0.05〜0.2重量%が好ましく、0.075〜0.15重量%がより好ましく、0.075〜0.125重量%が特に好ましい。また、上記キサンタンガム及び/又はκ−カラギナンの配合量は、ゼリー入り飲料全体に対し、0.003〜0.2重量%であることが好ましい。キサンタンガム及びκ−カラギナンは組合せて用いることもできる。なお、キサンタンガム及び/又はκ−カラギナンの代わりにローカストビーンガムをグルコマンナンと併用しても弾力性を有するゼリー部が得られるが、ローカストビーンガムを配合する場合、その配合量は、キサンタンガム及び/又はκ−カラギナンの場合と比較して10倍程度用いることが望ましく、ゲル化剤溶液(A)中、0.4〜2.0重量%、好ましくは0.7〜1.2重量%である。
【0016】
所望するゼリーの食感、強度、耐酸性付与等の目的に応じて、上述のゲル化剤と組合せて、通常飲食品に配合されるゲル化剤、増粘剤及び分散剤、例えば、ネイティブジェランガム、寒天、ゼラチン、ペクチン、アルギン酸及びその塩、ローカストビーンガム、タマリンドガム、カルボキシメチルセルロース及びその塩、カードラン、サイリウムシードガム等の1種又は2種以上を適量用いることが出来る。
【0017】
なお、ゲル化剤の配合は、冷却後のゲル化剤溶液(A)の粘度及び後述の参考例の手法を用いて測定した場合のゼリー部のゲル強度及び破断歪(又はゲル破断点までの時間)が大きく異ならない量及び組み合わせであれば代替可能である。
【0018】
ゲル化剤として脱アシル型ジェランガムを用いると、果実様食感を有するゼリー部の製造に好適であるのみならず、マイクロゲルも同時に形成されるので(特許文献4参照)、特にゼリーが分散した状態であるゼリー入り飲料を得ようとする場合には分散剤を別途使用しなくてもよいという点で好適である。同様のマイクロゲル形成作用はペクチン、寒天、アルギン酸ナトリウム等をゲル化剤としてさらに配合した場合にもこれらのゲル化剤から得られるであろう。
【0019】
ゼリー部に含まれる可溶性カルシウム塩溶液(B)に用いられる可溶性カルシウム塩としては、ゲル化剤として用いる脱アシル型ジェランガムをゲル化する作用を発揮するものであれば、有機酸塩又は無機酸塩のいずれも用いることができ、例えば、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、フマル酸カルシウム、クエン酸カルシウム、コハク酸カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム等の有機酸塩、塩化カルシウム等の無機酸塩を、1種又は2種以上選択して使用することが出来る。好ましくは可溶性カルシウム塩として乳酸カルシウムを用いることができる。
【0020】
本発明において、カルシウム塩溶液(B)の量は、ゲル化剤溶液(A)中の脱アシル型ジェランガムがゲル化する濃度、すなわちゼリー部の骨格が形成される濃度であれば特に制限されず、当業者であれば適宜設定することができる。カルシウム塩溶液(B)中の可溶性カルシウム塩濃度は高いほど、ゲル化剤溶液(A)と混合した際の反応が速やかに進行するため、好ましいが、濃度が低い場合でも、混合時間を長くすれば、充分にゲル化剤溶液との反応を行うことができる。ただし、カルシウム塩溶液(B)の濃度が低いと、ゲル化剤溶液(A)との混合(投入)時にゲル化剤溶液が分散してしまい、所望の物性(大きさ・食感)を有するゼリー部が得られないことがあることから、通常、可溶性カルシウム塩の配合量は、カルシウム塩溶液(B)中、Ca濃度に換算して0.1重量%以上、好ましくは0.5重量%以上とする。
【0021】
また、ゲル化剤溶液(A)に対し、カルシウム塩溶液(B)の量が少な過ぎると、ゲル化剤溶液(A)全量に対しカルシウム塩溶液が充分に反応するよう行き渡らず、ゼリー部を形成できない場合がある。従って、カルシウム塩溶液(B)は、上記ゲル化剤溶液(A)に対して、容積比で(A)/(B)が5以下となるように混合するのがよい。この割合を考慮して、カルシウム塩溶液(B)中のカルシウム塩濃度が低くなり過ぎないように、可溶性カルシウム塩の配合量を設定すればよい。
【0022】
ゲル強度・破断歪
本明細書中において、「ゲル強度」とは、後述の参考例の手法を用いて測定した値を指し、測定には、ゼリー部と同様の配合を用いて製造した、強度測定可能な大きさのゼリー(ゲル)を用いる。好ましいゼリーの強度は、ゼリーの食感を近づけようとする果実の種類によっても変わるが、例えばグレープフルーツのさのうの食感を得ようとする場合には、後述の参照例に記載の手法で測定した場合に、50〜500g、好ましくは100〜300g、より好ましくは100〜200gの強度を有する配合で作成したゼリー部を用いることで、本物の果実に近い食感のゼリーを得ることが出来る。ゲル強度が高すぎると細片化が困難となる、飲みにくい、噛みにくい等の不都合が生じ得る。ゲル強度が低すぎるとゼリーの食感が感じられにくく、さらに工業規模で製造した場合の機械耐性が低く、工場設備内で微粉砕され得る。
【0023】
また、本明細書中において、「破断歪」とは、上記ゲル強度の測定における破断点までの距離をゼリーの高さで除した値(%)であり、破断点に到達するまでの時間を代替の数値として評価可能な値である。この破断歪は、ゼリーの弾力の指標とすることができる。破断歪が小さい(脆い)ゼリーは、工業規模で製造した場合の機械耐性が弱く、工場設備内で微粉砕されたり、飲料中での振動(輸送時の振動や容器詰飲料を振って飲む場合の振動等)によって破損しやすい。一方、破断歪が大きすぎるゼリーは噛みにくいものとなり得る。例えば、グレープフルーツのさのうの食感を得ようとする場合には、後述の参考例に記載の手法で測定した場合に、破断点までの時間が、3〜7sec、好ましくは4〜6secの破断歪を有する配合で作成したゼリー細片部を用いることで、本物の果実に近い食感のゼリーを工業規模で得ることが出来る。
【0024】
飲料部
本明細書中において、飲料部とは、ゼリー入り飲料において上記ゼリー部以外の部分が存在する場合、その部分を指し、従って、本発明の製造方法によれば、ゼリー部をそのままゼリー入り飲料としてもよいし、ゼリー部を飲料部と混合してゼリー入り飲料を得ることも出来る。
【0025】
ゼリー入り飲料
本明細書中において、「ゼリー入り飲料」とは、前記のゼリー部を10〜100容量%含む飲料をいう。具体的には、糖類、酸味料、果汁、香料、その他添加物等をゲル化剤溶液(A)及び/又は可溶性カルシウム塩溶液(B)に混合して製造した場合には、前記ゼリー部をそのままゼリー入り飲料とすることができる。また、前記ゼリー部を、糖類、酸味料、果汁、香料、その他添加物等からなる飲料部と混合してゼリー入り飲料とすることもできる。この場合、ゼリー部と飲料部の混合割合は、適宜設定すればよいが、通常、10〜100容量%である。なお、本発明のゼリー入り飲料は、糖類、酸味料、果汁、香料、その他添加物の一部をゲル化剤溶液(A)及び/又は可溶性カルシウム塩溶液(B)に混合し、残りを飲料部として混合してもよい。
【0026】
本発明のゼリー入り飲料の形態としては、例えばジュース、果汁飲料、炭酸飲料、清涼飲料水、乳清飲料、アルコール飲料等を挙げることができる。特に本物の果実に近い食感のゼリーを含有する飲料を提供するという観点からはこれらの飲料であって、果実の風味を有するものが好ましい。アルコール飲料であれば、例えば、果実の香味を有するカクテル類などの低アルコール飲料を好適に例示できる。
【0027】
本発明のゼリー入り飲料がアルコール飲料である場合のアルコール濃度は、1v/v%以上、好ましくは1〜25v/v%、より好ましくは3〜12v/v%、さらに好ましくは4〜10v/v%、特に好ましくは5〜8v/v%である。一般に、アルコール濃度が1v/v%未満であると、アルコール感がほとんど感じられず、また、25v/v%超であると、アルコール臭が強すぎ、果汁等の新鮮な香味が打消されると言われる。
【0028】
本発明の飲料がアルコール飲料である場合、アルコールはゼリー部の製造時には配合に含めず、別途混合することが好ましい。すなわち、ゼリー部を、ゼリー部よりもアルコール濃度が高い飲料部と混合する工程及び所望により該混合液を貯蔵する工程を経て、ゼリー入り飲料を製造することで、ゼリーの食感がより本物の果実に近いゼリー入り飲料が得られることを本発明者らは見出している。そのメカニズムの詳細は不明であるが、アルコールを含まない又は低濃度のアルコールを含有するゼリー部を、それよりも高濃度のアルコールを含有する飲料部中で貯蔵することにより、ゼリー部の脱水反応が起こり、その結果、強度が増強し、本物の果実により類似した食感を呈するゼリーを含むゼリー入り飲料が得られることが予想される。
【0029】
この場合、飲料部とゼリー部とのアルコール濃度差は、柑橘系果実のさのう状食感を得たい場合には、例えば1〜50v/v%、好ましくは3〜40v/v%、より好ましくは4〜30v/v%である。アルコール濃度差が1v/v%未満であると充分に満足し得る果実食感のゼリーが得られず、50v/v%超であると、柑橘系果実のさのう状食感ではなくなる可能性があり、また、ゼリー部中に含有されるゲル化剤が変性する可能性がある。
【0030】
上記のアルコールを含む飲料部中でのゼリー部の貯蔵工程は、ゼリー部の大きさや配合にもよるが、ゼリーに所望の食感を与えるべく、少なくとも12時間、好ましくは24時間以上行うことが好ましい。貯蔵時間が一定時間を超えるとそれ以上、飲料中のゼリーの食感が変化しないと考えられるため、上記の貯蔵する時間に上限はなく、飲料としての保存性を考慮すれば、3年以内、好ましくは2年以内、好ましくは1年以内である。当業者に良く知られるように、使用するゲル化剤の種類によっては、飲料部のpHや温度がゼリー部のゲル強度に影響するため、これに留意して貯蔵工程を行う。
【0031】
上記の貯蔵工程は、ゼリー部が飲料部中にある限り、静置状態でも、移動や攪拌をしながらでも行うことが出来る。ゼリー部と飲料部が静置状態で分離してしまう場合、必要に応じて緩い攪拌を加えることが望ましいであろう。ゼリー部の食感を均等に変化させるには、ゼリー部が飲料部中で分散した状態で貯蔵工程を行うことが好ましい。
【0032】
容器詰飲料を製造する場合、上記の貯蔵工程は、容器中で行うことができる。ゼリー部と飲料部の容器への充填は、同時に又は別々に、或いは混合してから行うことができる。ゼリー部と飲料部を確実に混合すること及び簡便性を考慮すれば、これらを混合してから容器に充填することが好ましい。
【0033】
本発明のゼリー入り飲料において、飲用中、ゼリーの食感や香味を飲み始めから飲み終わりまで楽しむことが出来るよう、ゼリーは飲料中に分散した状態であることが好ましい。本発明において、ゼリーが飲料中で「分散した状態」とは、飲料を静置した場合にゼリー部が全体に分散し、見た目上均一に近い状態であることをいう。ゼリー部を製造する際のゲル化剤として含まれる脱アシル型ジェランガムは、マイクロゲルを含むゼリー部を形成する性質を有し、果実様の食感を呈する大きさのゼリーに加え、ほとんど食感を感じない程度のマイクロゲル(見た目は水のようなさらさらの液体)も形成するため、この混合物は、マイクロゲルの存在により該ゼリーが分散する。
【0034】
さらに、従来公知の分散剤を補助的に用いて、すなわちゼリー部であるゲル化剤溶液(A)及び/又は可溶性カルシウム塩溶液(B)、或いは飲料部に配合して、上記マイクロゲルによるゼリー部の分散をさらに安定なものとすることも出来る。分散剤としては、例えば、ネイティブジェランガム、LMペクチン、κ−カラギナン、タマリンドシードガム等を用いることができる。例えば脱アシル型ジェランガムをゲル化剤として用いたマイクロゲルを含むゼリーを、ネイティブジェランガムを極微量添加することにより増粘を感じない程度の増粘作用とともに分散させることで、飲料の喉越しを損なわず、かつ安定な分散した状態を得ることができる。
【0035】
ゼリー入り飲料において、液体部分の粘度は、例えば20℃において6mPa・s 〜100mPa・s(B型粘度計)とすることが出来る。粘度が高すぎると喉越しが悪く爽やかさに欠ける飲料となるが、粘度が低すぎると、ゼリー部が分散した状態となりにくい。
【0036】
本発明の飲料は果実様食感のゼリーを含有するものであるから、ゼリーの食感と相性の良い果汁、果汁繊維(パルプ)、果肉、ピューレ等を配合することで、さらに本発明の特徴が生かされた飲料となる。なお、上記したとおり、これら原材料等は、ゼリー部であるゲル化剤溶液(A)及び/又は可溶性カルシウム塩溶液(B)、或いは飲料部に配合することができる。果汁等における果実の種類は、限定されず、また1種又は2種以上でもよく、例えば、柑橘類果実(オレンジ、温州ミカン、レモン、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、ユズ、タンジェリン、タンジェロ、カラマンシー等)、リンゴ、ブドウ、モモ、パイナップル、グアバ、バナナ、マンゴー、アセロラ、パパイヤ、パッションフルーツ、ウメ、ナシ、アンズ、ライチ、カシス、メロン、西洋ナシ、スモモ類等が使用できる。
【0037】
本発明の飲料においては、果汁の他にも、通常飲料に配合するような、糖類、アルコール類、酸類、香料、ビタミン、色素類、酸化防止剤、甘味料、酸味料、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定剤等を配合することができる。
【0038】
アルコールは、飲用可能なアルコールであれば何ら制限されず、例えば、醸造アルコール、スピリッツ類(ラム、ウオッカ、ジン等)、リキュール類、ウイスキー、ブランデー又は焼酎(甲類、乙類等)等、更には清酒、ワイン、ビール等の醸造酒を、1種又は2種以上を組合せて用いることができる。本発明のゼリー入り飲料は果実様食感のゼリーを含有する果実系飲料として好適に提供されるものであるから、その香味を生かすようなアルコール(例えば、カクテルで果汁と共に用いられるアルコール等)が好ましい。また、本発明においては、飲料部をゼリー部と混合することで飲料部中のアルコール濃度が希釈されるため、アルコール濃度が高いものを用いることが好ましい。従って、例えば、焼酎、スピリッツ類、ウイスキー等の蒸留酒を好適に用いることができる。なお、ゼリー部中にアルコールを配合することもできるが、アルコールを配合するとゼリーのゲル化が阻害されることもあることから、本発明のゼリー部は、アルコールを含まない態様とするのが好ましい。
【0039】
本発明のゼリー入り飲料のpHは特に制限されないが、果実様食感のゼリーを配合するという観点からは、酸性であることが好ましく、具体的には、pH2.0〜5.0が好ましく、pH2.5〜4.0がより好ましい。pHが2.0を下回ると酸味が強すぎて香味の面から嗜好性が下がり、またゼリーの食感が貯蔵中に変化する可能性がある。pH5.0を上回ると果実系飲料としての嗜好性を保つことが困難となる。
【0040】
本発明のゼリー入り飲料は、容器詰飲料として提供することができる。特に本発明のゼリー入り飲料がアルコール飲料の場合、ゼリー部の飲料部中での貯蔵工程を容器中で行うことができるため、容器詰飲料として好適に提供することができる。容器は、瓶、缶、紙、ペットボトル(PET)等、種々の形態の容器を用いることができるが、果実様食感を有するゼリーを含有することを考慮すれば、充填、飲用の際に不都合が生じないよう、広口の、例えばボトル缶等を用いることが好ましい。また、容器として再栓可能なスクリューキャップ等を備えた容器(例えば、ボトル缶)を用いれば、飲用中にゼリーが沈降した場合にも、消費者が栓をして容器を振ってゼリーを分散させることができるため好ましい。
【0041】
製造工程(i)〜(iv)
本発明のゼリー入り飲料の製造方法は、以下の工程(i)〜(iii):(i)脱アシル型ジェランガム、グルコマンナン、及び、キサンタンガム及び/又はκ−カラギナンを含むゲル化剤を加熱溶解してゲル化剤溶液(A)を得る工程;(ii)前記ゲル化剤溶液を45℃以下に冷却する工程;及び(iii)可溶性カルシウム塩(B)を調製し、これに冷却したゲル化剤溶液(A)を混合してゼリー部を製造する工程;を含む。
【0042】
工程(i)は、上記ゲル化剤を加熱溶解してゲル化剤溶液を得る工程であり、これにより、均一なゲル化剤溶液を得ることができる。溶解に必要な温度は当業者であれば適宜設定することができ、用いるゲル化剤の配合(種類及び割合)により異なるが、約60〜100℃、好ましくは75〜90℃程度である。
【0043】
工程(ii)は、工程(i)で得られたゲル化剤溶液を、45℃以下に冷却する工程であり、冷却後のゲル化剤溶液の温度は、好ましくは10〜45℃程度である。この工程(ii)における冷却温度は、用いるゲル化剤の配合によって変動する、冷却時のゲル化剤溶液の粘度(100mPa・s以上が好ましく、150mPa・s以上がより好ましい)を考慮して設定することができ、例えば後述の実施例3に記載するように、ゲル化剤としてキサンタンガムを配合した場合とκ−カラギナンを配合した場合とでは、好ましい粘度のゲル化剤溶液(A)を得られる温度は異なる。通常、45℃以上であると、ゲル化剤溶液の粘度が低く、またゲル化剤の配合によっては、続く工程(iii)において可溶性カルシウム塩(B)溶液と混合した際にゲル化が容易に進行しない。10℃以下であると、ゲル化剤溶液の粘度が高すぎることによる作業性の低下、可溶性カルシウム塩(B)溶液との反応速度の低下などが予想される。
【0044】
通常、脱アシル型ジェランガムのようなカチオン存在下でゲル化するゲル化剤を用いる場合、ゲル化剤溶液にカルシウム塩等のカチオンを添加後、この混合液を冷却することでゼリーを得るが、本発明においては、まずゲル化剤溶液を攪拌冷却後、冷却したゲル化剤溶液を可溶性カルシウム塩溶液に添加してゲルを形成させる点に特徴がある。ゲル化剤溶液を冷却することで脱アシル型ジェランガムのカチオンとの反応性が高まると考えられる。このような手法を用いることで、所望の果実様食感を有するゼリーを簡便に得ることができる。可溶性カルシウム塩溶液と冷却後のゲル化剤溶液を混合する際、可溶性カルシウム塩溶液にゲル化剤溶液を投入することが、果実様食感を有するゼリーを得る際には好ましい。ゲル化剤溶液に可溶性カルシウム塩溶液を添加した場合、カルシウム液の周辺部分のみがゲルを形成し(魚卵のような性状)、果実様食感を有するゼリーは得られない場合があり、また、ゼリーの機械耐性がなく、工業規模で製造した場合に破損してしまう。
【0045】
また、上述の工程(iii)において、ゲル化剤溶液の粘度が低すぎると、可溶性カルシウム塩溶液中で分散してしまい、結果として可溶性カルシウム溶液によりゲル化剤溶液が希釈され、ゲル化が進行しない、充分な密度のゲルが形成されないなど、所望するゼリーが形成されないことがある。一方、ゲル化剤溶液の粘度が高すぎても、作業性が悪い、小さいゼリーの形成が困難である、等の問題がある。以上より、上述の工程(ii)における冷却は、脱アシル型ジェランガムがネットワークを形成しうる45℃以下の温度であって、かつ、ゲル化剤溶液の粘度が100〜100,000mPa・s、好ましくは150mPa・s程度となる範囲の温度に冷却することが望ましい。
【0046】
ここで、上述した工程(iii)は、タンクのような設備を用いて行ってもよいし、輸送管内のドージングによる混合で行ってもよいが、制御の容易性からタンク等の設備を用いるのが好ましい。
【0047】
上述した工程(iii)の後、ゲル化を安定させるために、(iv)製造したゼリー部を保持する工程を設けることが好ましい。この保持工程(iv)により、所望の大きさ・食感のゼリーが得られ、ゼリーの破損をさらに防止することができる。この保持工程(iv)は、ゲル化剤の配合量やゼリー部の全量等により異なるが、通常5〜60分、好ましくは10〜30分程度、静置状態又は攪拌状態、好ましくは攪拌状態でゼリー部を保持することにより行う。
【0048】
上記の工程(i)〜(iii)、好ましくは工程(i)〜(iv)を経て製造されたゼリー部は、そのまま、または飲料部と混合後、必要に応じて、殺菌され、容器に充填される。このように本発明の製造方法によると、工業レベルの大規模の飲料生産においても、簡便で実用性の高いゼリー入り飲料の製造方法を提供することができる。
【実施例】
【0049】
以下に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
実施例1
表1中のAを温水中にて混合し、加熱溶解した(80℃)。別容器中でBを混合し、溶解した(20℃)。Aを45℃以下に冷却後(A液の粘度:約150mPa・s(B型粘度計(トキメック)を用いて測定)、Bを緩やかに攪拌下(20rpm以下)、AをBに緩やかに注入し(5〜10KL/H。全体量:20KL)、ゲル化させた。この攪拌状態で20分以上維持し、ゲル化剤と可溶性カルシウム溶液とを充分に反応させ、ゲル化した。その後、表1、C中A液及びB液を除く「その他原料」(糖類、酸味料、果汁、香料、水)を添加し、混合し、液送ポンプ及びチューブ式殺菌機を通過させて容器に充填してゼリー入り飲料を得た。また、表1、C中「その他原料」をB液に予め投入しても、同様の結果を得ることができた。
【0050】
【表1】

【0051】
比較例
表2に示す処方を用い、実施例1と同様の手法を用いてゼリー入り飲料を得た(冷却後のA液の粘度(実施例1と同様の手法を用いて測定):比較例1 約110mPa・s、比較例2 約150mPa・s)。その結果、形成したゼリー部を飲料部に混合し、ゼリー入り飲料を製造することはできたが、その後容器に充填するまでの液送ポンプ及びチューブ式殺菌機を通過する際の衝撃によってゼリーが砕けてしまい、得られた容器詰飲料は、所望果実様食感を有するゼリーを含まないものとなった。
【0052】
【表2】

【0053】
実施例1及び比較例から得られた結果より、以下のことが考察される:
・グアガムのような増粘剤を用いてA液の粘度が100mPa・s以上(より好ましくは150mPa・s以上)となるようにすると所望する大きさのゼリー部を得られるが、所望する食感及び機械耐性を有するゼリーを得るには、グルコマンナンを配合することが好ましい。
・A液中、0.15重量%以上の配合量の脱アシル型ジェランガムでゼリー骨格を形成し得る。
・ゼリー部(比較例におけるA液)に、パルプを添加しても、ゼリー部を製造することができる。
【0054】
実施例2
以下の表3に示す配合で、グレープフルーツ風味のゼリー入り容器詰アルコール飲料を製造した。具体的には、ジェランガム、グルコマンナン、キサンタンガムに加水して加熱溶解し、冷却攪拌しながら乳酸カルシウム溶液に添加してさらに攪拌した。このように調製したゼリー部は、平均粒径2〜3mmのゼリーとマイクロゲルとを含有していた。
次に、ニュートラルスピリッツに、配合中の水の一部を加えてアルコール濃度を30v/v%とし、これに上記のゼリー部を混合した。さらに、この混合物に残りの原料を添加して攪拌混合し、ゼリー入りアルコール飲料を調製した。このアルコール飲料280mLを広口ボトル缶に充填し、容器詰めゼリー入りアルコール飲料を得た。
【0055】
【表3】

【0056】
得られた容器詰アルコール飲料は、本物の柑橘類のさのう果肉のみが入っていると間違えるパネラーもいるほど、飲料中のゼリーが本物のグレープフルーツ様の食感を有していた。
【0057】
実施例3
各種配合におけるゲル化剤溶液の、冷却後の粘度を測定した。表4に示す配合で各ゲル化剤を85℃の温水に溶解し、10分間静置したのち冷水浴にて攪拌しながら30℃又は20℃まで冷却した。各ゲル化剤溶液の粘度を、B型粘度計(株式会社トキメック)を用いて測定した。すなわち、各ゲル化剤溶液350mlをIWAKI300mlビーカーに注ぎ回転子を挿入し、ローター回転30秒後の粘度を測定した。結果を表5に示す。また、様々な粘度を有する温度の異なる各配合について実施例1の手法に準じて2.5%乳酸Ca水溶液に攪拌下緩やかに注入してゲル化させたところ、100mPa・s以下の粘度を有するゲル化剤溶液では、ゲル化剤溶液が乳酸Ca水溶液中で分散してしまい、ゲル化がうまく進行しなかった。
【0058】
【表4】

【0059】
【表5】

【0060】
ジェランガムのみをゲル化剤として用いた場合と比較して、グルコマンナン及びキサンタンガム又はκ−カラギナンを組み合わせて用いた場合、冷却後のゲル化剤溶液の粘度が高いことが明らかになった。また、キサンタンガムを組み合わせた場合と比較して、κ−カラギナンを組み合わせた場合、より低い温度で粘度が上昇し、100mPa・s以上の粘度を得ようとする場合、約25℃以下に冷却することが好ましいと考えられた。
【0061】
参考例 ゼリーのゲル強度の測定
ゲル強度測定可能な大きさのゼリー部を作成しゲル強度を測定した。脱アシル型ジェランガム0.45g、キサンタンガム0.19g及びグルコマンナン0.13gに、80℃温水を混合して溶解し、全量が200gとなるゲル化剤溶液を調製し、次いでこのゲル化剤溶液を25℃に冷却して、直径30mmの筒状の型に流し込み、2%乳酸カルシウム溶液中に浸漬し、このカルシウム溶液中で静かに型を外して30分間静置し、ゼリー部を形成した。形成したゼリー部を、乳酸カルシウム0.6%水溶液に浸し、5℃で2日間静置した後、φ30mm、高さ30mmの円筒状に切断し、ゲル強度(破断点における強度)を測定した。ゲル強度の測定方法は以下のとおりである。
(ゲル強度の測定方法)
測定機器:Texture Analyzer (Stable Micro Systems社)
プランジャー:φ10mm
挿入速度:2mm/s
測定の結果、ゲル強度は110.7g、破断点までの時間は4.53sec.であり、このようなゼリーと同様の配合のゲル化剤を用いて、実施例2の手法で製造したゼリー入りアルコール飲料は、容器に充填するまでのポンプ及びチューブ式殺菌機を通過する際の衝撃でもゼリーが砕けることは無く、ゼリーの強度は充分であり、さらに飲用時にもゼリーが所望の果実様食感を有するものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱アシル型ジェランガム、グルコマンナン及び、キサンタンガム又はκ−カラギナンを含むゲル化剤溶液(A);及び
可溶性カルシウム塩溶液(B);
を混合して得られるゼリー部を含有するゼリー入り飲料であって、前記の飲料中に、脱アシル型ジェランガム0.01〜0.45重量%、グルコマンナン0.002〜0.125重量%及びキサンタンガム又はκ−カラギナン0.003〜0.2重量%を含む、前記のゼリー入り飲料。
【請求項2】
ゲル化剤溶液(A)中のゲル化剤濃度が、脱アシル型ジェランガム0.15〜0.75重量%、グルコマンナン0.038〜0.125重量%、及びキサンタンガム又はκ−カラギナン0.05〜0.2重量%である、請求項1に記載のゼリー入り飲料。
【請求項3】
可溶性カルシウム塩溶液(B)中のカルシウム濃度が、0.1重量%である、請求項1又は2に記載のゼリー入り飲料。
【請求項4】
ゲル化剤溶液(A)/カルシウム塩溶液(B)が容積比で5以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のゼリー入り飲料。
【請求項5】
ゼリー部の平均粒径が0.5〜10mmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のゼリー入り飲料。
【請求項6】
以下の工程(i)〜(iii):
(i)脱アシル型ジェランガム、グルコマンナン及び、キサンタンガム又はκ−カラギナンを含むゲル化剤を加熱溶解してゲル化剤溶液(A)を得る工程;
(ii)前記ゲル化剤溶液を45℃以下に冷却する工程;及び
(iii)可溶性カルシウム塩溶液(B)を調製し、これに冷却したゲル化剤溶液を混合してゼリー部を製造する工程;
を含む、ゼリー入り飲料の製造方法。
【請求項7】
前記工程(ii)において、冷却後のゲル化剤溶液(A)の粘度が100mPa・s以上である、請求項6に記載のゼリー入り飲料の製造方法。

【公開番号】特開2009−55879(P2009−55879A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228187(P2007−228187)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】