説明

ソフトカプセル剤

【課題】有効成分を含有する水溶液をソフトカプセルに充填する場合において、高い水分活性を保持したままカプセル中に封入できるソフトカプセル剤の提供。
【解決手段】カプセル皮膜素材として少なくとも水溶性高分子を含有するソフトカプセル剤であって、カプセル内容物の水分量(C)とカプセル皮膜の水分量(S)の比が0.7≦C/S≦15であり、且つカプセル皮膜の水分活性値がカプセル内容物の水分活性値よりも低いことを特徴とするソフトカプセル剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い水分活性値を有する溶液を充填可能なソフトカプセル剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソフトカプセルの皮膜はゼラチンを主成分としてグリセリン等の可塑剤を添加したものが一般に用いられている。このような水溶性高分子を皮膜とするカプセルに薬物等の水溶液を充填すると、従来の技術では皮膜に水分が移行して皮膜が膨潤又は溶解するため製品として流通に耐え難い。
【0003】
このため、水溶性薬物や動植物の水性エキス等をソフトカプセル化するための技術が種々検討されてきた。例えば、薬物水溶液を賦形剤等に吸着させて粉末化し、親油性物質に懸濁させて充填する方法、具体的には水溶液薬物に界面活性剤を加えて酢酸トコフェロール等の親油成分と均一に混合した溶液を充填する方法(特許文献1−2)、水分を含有した植物エキス等を脂肪酸グリセライドで乳化させて充填する方法(特許文献3)、パンテチン等の水溶液薬物をポリエチレングリコール等の水溶性高分子を加えて高稠な溶液として充填する方法(特許文献4)、或いはゼラチン皮膜に耐水性を持たせるためにゼラチンシートと多糖類シートを積層した積層膜ソフトカプセルとする方法(特許文献5)、ゼラチンとアルギン酸からなる皮膜でカプセル化した後、塩化カルシウム溶液に漬けてカプセル表面に耐酸性の皮膜を付与する方法(特許文献6)、内容物の水分を保持するために多量の食物繊維を加えてペースト状にして充填する方法(特許文献7)が報告されている。
【0004】
しかしながら、これらはいずれもカプセル内容物の水溶液に、油性物質やO/W型の乳化・懸濁化剤或いは高分子物質等を加えてエマルジョンとしたり、粘稠性を高める等して、その水分活性を低下させたものであり、薬物等の性状、安定性、服用感等を損なったり、製造上支障をきたすという問題があった。すなわち、薬物を粉末化し、親油性物質に懸濁させる方法及び水溶性高分子溶液と均一混合する方法或いは乳化させる方法では、製造コストのアップと充填可能量が制限され、また粉末化工程での加熱によって薬物の安定性が損なわれる場合があり、更に服用感及び食感等を重視する薬物、エキス類等には薬物及びエキス類本来の味、臭い等が損なわれるため、好ましくない。また、積層膜ソフトカプセルを製造するためには、従来のロータリー式カプセル充填機に加えて特殊な設備が必要であるといった問題があった。更に、内容物に多量の食物繊維や糖類を加えてペースト状にして充填する方法では、カプセル充填工程において送液ポンプに負荷がかかり、焼き付きの原因となる等の欠点があった。
【0005】
その後、水分活性値が0.55〜0.80の内容物を、その内容物の水分活性値以上の水分活性値をもつカプセル皮膜に封入したソフトカプセル剤が開発されたが、水分活性値が0.80より大きいカプセル内容物を充填した場合、カプセルの軟化や付着が生じる等の問題が残されていた(特許文献8)。
【0006】
従って、水分活性値の高い水溶性内容物であっても安定に保持可能なカプセル剤が望まれていた。
【0007】
【特許文献1】特開昭62−67020号公報
【特許文献2】特開平5−310566号公報
【特許文献3】特開昭52−35178号公報
【特許文献4】特開昭56−30915号公報
【特許文献5】特開昭63−164858号公報
【特許文献6】特開平1−313421号公報
【特許文献7】特開2000−344661号公報
【特許文献8】特開昭64−20078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、有効成分を含有する水溶液をソフトカプセルに充填する場合において、油性物質、O/W型乳化剤又は水溶性高分子等を添加することなく、高い水分活性を保持したままカプセル中に封入できるソフトカプセル剤を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、斯かる実情に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、カプセル皮膜の水分活性値をカプセル内容物の水分活性値より低くすることにより、高い水分活性をもつ水溶性内容物であっても安定に保持できることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、カプセル皮膜の水分活性値がカプセル内容物の水分活性値よりも低いことを特徴とするソフトカプセル剤及びその製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水分活性値の高い内容物をそのままソフトカプセル化でき、薬物等の性状や安定性、更には服用感又は食感を損なうことのないソフトカプセル剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明ソフトカプセル剤は、カプセル皮膜の水分活性値がカプセル内容物の水分活性値よりも低いものであるが、斯かるカプセル剤はこれまでに全く知られていない。ここで、水分活性値(water actibity:a)とは、水を含有する媒体において、同一温度での媒体の水蒸気圧Pと純水の蒸気圧P0との比(P/P0)であり、媒体中の水の活動度を示すパラメーターを意味する。
本発明ソフトカプセル剤におけるカプセル内容物の水分活性値は、特に限定されるものではなく、例えば水分活性値が0.80より大きい溶液でも充填可能であるが、皮膜の水分活性値とのバランスを考えると、0.50≦a≦1であるのが好ましく、更に0.65≦a≦0.95、特に0.70≦a≦0.90であるのが好ましい。
尚、カプセル内容物の性質や性状は、特に限定されず、内容物が溶解した溶液状のものの他、乳化されたものや懸濁化されたものであってもよい。
【0013】
一方、カプセル皮膜の水分活性値は、カプセル内容物の水分活性値よりも低い値であればよいが、好ましくは0.25≦a≦0.90であり、特に0.40≦a≦0.70であるのが好ましい。
従って、本発明のソフトカプセル剤は、カプセル皮膜の水分活性値が内容物のそれよりも低く、且つ内容物の水分活性値が0.50≦a≦1で、カプセル皮膜の水分活性値が0.25≦a≦0.90の範囲にあるものが特に好ましい。
【0014】
更に、本発明のソフトカプセル剤は、長期保存及び流通時の安定性の点から、カプセル内容物の水分量(C)とカプセル皮膜の水分量(S)の比を調整することにより、カプセル皮膜の水分がカプセル内容物へ移行したり、カプセル内容物の水分がカプセル皮膜に移行するのを制御したものが好ましい。斯かるC/S比としては、好ましくは0.7≦C/S≦15、より好ましくは1.0≦C/S≦10であり、特に1.0≦C/S≦7.0であるのが好ましい。
【0015】
カプセル内容物の種類は、特に限定されるものではないが、好ましくは医薬品、医薬部外品、化粧品、健康食品、食品、飲料、調味料、香料、入浴剤等が挙げられる。具体的には、薬事法により規制されている医薬品、医薬部外品及び化粧品原料の他、健康食品、食品、飲料、調味料として利用可能な任意の素材を用いることができる。より具体的には、アカメガシワ、アセンヤク、アロエ、イカリソウ、ウイキョウ、ウバイ、ウヤク、ウワウルシ、ウコン、エイジツ、エゾウコギ、エンゴサク、エンメイソウ、オウギ、オウゴン、オウセイ、オウバク、オウヒ、オウレン、オンジ、カイクジン、カイバ、カシュウ、ガジュツ、カッコン、カノコソウ、カミツレ、ガラナ、カンゾウ、キキョウ、キジツ、牛胆汁、キョウニン、クコシ、ケイガイ、ケイヒ、ケツメイシ、ゲンチアナ、ゲンノショウコ、コウジン、コウボク、ゴオウ、ゴカヒ、ゴシツ、ゴシュユ、ゴミシ、サイコ、サイシン、サイム、サルビア、サンキライ、サンザシ、サンシシ、サンシュユ、サンショウ、サンソウニン、サンヤク、ジオウ、シベット、シャクヤク、ジャショウシ、シャゼンソウ、ジュウヤク、シュクシャ、ショウキョウ、ショウズク、ジョテイシ、ジリュウ、シンイ、セネガ、センキュウ、ゼンコ、センブリ、ソウジュツ、ソウハクヒ、ソヨウ、ダイオウ、タイソウ、チョウジ、チョウトウコウ、チンピ、トウガラシ、トウキ、トウジン、トウチュウカソウ、トウニン、トウヒ、トコン、トシシ、トチュウ、ナンテンジツ、ナンバンゲ、ニクジュヨウ、ニンジン、ニンニク、バクモンドウ、ハマボウフウ、ハンゲ、ハンピ、ビャクジュツ、ブクリョウ、ボウイ、ホコツシ、ボタンピ、ホップ、マオウ、モクテンリョウ、ムイラプアマ、モッコウ、ヨクイニン、リュウガンニク、リュウタン、ロートコン、ロクジョウ等の生薬のエキス、ブルーベリー、ビルベリー、エキナセア、キクカ、麦若葉、コウカ、サラシア、ローズマリー、ニンドウ、田七人参、イチョウ葉、ヨモギ、緑茶、ハーブ類、キノコ類、マムシ、動物の肝臓、心臓又は胎盤等の臓器から抽出されたもの、もしくはこれらを酸、塩基又は酵素を用いて製造した加水分解物等の動植物のエキス、穀物、植物、海産物を麹菌、紅麹菌、乳酸菌、酢酸菌、納豆菌、酵母等で発酵させた発酵物のエキス、ビタミンB1類、ビタミンB2類、ナイアシン、ビタミンB6類、ビタミンB12類、パントテン酸、ビオチン、葉酸類、ビタミンC類等の水溶性ビタミン類、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどの脂溶性ビタミン類或いはアミノ酸、ペプチド、タンパク、核酸、DNA等が挙げられる。尚、ここでいうエキスの抽出方法は特に限定されるものではなく、水又は含水アルコール等で抽出する一般公的な方法や日本薬局方に示された方法等により製造されたチンキ、流エキス、軟エキス、乾燥エキス等も使用できる。これらのうち、水溶液として安定に存在し、水溶液状態のまま製剤化され適用されることが好ましい生薬エキス、動植物エキス等が特に好適である。
【0016】
上記カプセル内容物は、必要に応じて賦形剤やpH調整剤等が含まれていてもよい。
ここで賦形剤としては、カルボキシメチルセルロース、ポピドン、アラビアゴム、リン脂質等の分散補助剤や、エタノール、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等の溶解補助剤、カラメル等の着色料、着香剤、グルコース、スクロース、ガラクトース、マルトース、キシロースなどの糖類、ソルビトール、マルチトール、キシリトールなどの糖アルコール類、プルランなどの多糖類又は多糖類の加水分解物等、通常液剤に用いられる成分が挙げられ、これらの賦形剤は1種又は2種以上を組み合わせることができる。
【0017】
pH調整剤は、製剤技術において一般に知られているものが使用できる。例えば塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸及びクエン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸又はこれらの塩や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等のアルカリが挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
カプセル皮膜素材としては、水溶性高分子、例えばゼラチン、コハク化ゼラチン、ゼラチン加水分解物、加水分解ゼラチン、架橋型ゼラチン等ゼラチン誘導体を含むペプチド類、アルギン酸ナトリウム、プルラン、グルコマンナン、アラビアゴム、カラギーナン等の多糖類、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類、オイドラギット、ポリビニルピロリドン等の合成高分子が用いられるが、特にゼラチン及びコハク化ゼラチンが好適に用いられる。またその配合量は、皮膜全重量に対して20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。
【0019】
本発明ソフトカプセル剤の皮膜には、水分活性値やC/S値を維持できる限り、水分活性低下剤、保湿剤やpH調整剤、防腐剤等の皮膜の形成に必要な補助成分の他、付着防止剤、油性物質や水に不安定な物質、更には内容物の有効成分と相互作用を起こす薬物等の他の活性成分を必要に応じて含有させることができる。
【0020】
水分活性低下剤を添加することにより、目的とする皮膜の水分活性値へと調整することができるが、斯かる水分活性低下剤としては、例えばグルコース、スクロース、ガラクトース、マルトース、キシロースなどの単糖及び二糖類、グリシン、セリン、トリメチルグリシンなどのアミノ酸及びその誘導体、ソルビトール、マルチトールなどの糖アルコール、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化アンモニウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどの塩類、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸、エタノールなどのアルコール類、グリセリン等を挙げることができ、これらは1種又は2種以上を皮膜に配合することができる。また保湿剤を添加することにより、乾燥後のカプセル皮膜水分量を一定に保持することができ、カプセル形状を長時間保持することができる。斯かる保湿剤としては、例えばグリセリン、ソルビトール、エリスリトール、マンニトール、キシリトール、トレハロース等の糖アルコール、プルラン等の多糖類又は多糖類の加水分解物等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を皮膜に配合することができる。この場合、皮膜素材と保湿剤の比率が1:2〜3:1の範囲、特に1:1〜3:1の範囲になるように皮膜素材に保湿剤を添加し調製するのが好ましい。
【0021】
皮膜のpHを調整するためのpH調整剤としては、製剤技術において一般に知られている酸又はアルカリが使用できる。例えば塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸及びクエン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸又はこれらの塩や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム等のアルカリが挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
付着防止剤としては、スターチ、カルナロバロウ、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられ、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0023】
また、本発明のソフトカプセル剤は一般に用いられるコーティング剤、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、オイドラギッド類、セラック等の1種又は2種以上を組み合わせて被覆することができる。
【0024】
更に薬物相互作用をおこす薬物(例えばビタミンB12とビタミンC、塩酸チアミンとニコチン酸アミド、葉酸とリボフラビンなど)は、それぞれをカプセル皮膜とカプセル内容物に分けて配合すればよく、水溶液中での安定性に問題があるような物質(例えばビタミンB1類、ビタミンB2類、ナイアシン、ビタミンB6類、ビタミンB12類、パントテン酸、ビオチン、葉酸類、ビタミンC類等のビタミン類等)を配合したい場合には、カプセル皮膜にそれらを含有せしめるのが好ましい。
【0025】
本発明ソフトカプセルの製造は、従来用いられているソフトカプセルの製法、例えばロータリー式全自動ソフトカプセル成型機を用いた打ち抜き法、二枚のゼラチンシート間に内容物を入れ、金型で両面から圧縮して打ち抜く平板法或いは二重ノズルを用いた滴下法(シームレスカプセル等)等を用い、カプセル内容物をカプセル皮膜に充填し、成型、乾燥することにより行うことができる。ここで、水分活性値及び水分量の調整は、カプセル成型前に予めカプセル内容物とカプセル皮膜のそれぞれについて行ってもよく、またカプセル成型後に乾燥条件(例えば乾燥温度、乾燥時の相対湿度、乾燥時間等)を適切に制御し、カプセル皮膜の水分量を減少させることにより行ってもよく、或いはこれらを組み合わせて行ってもよい。
【0026】
本発明ソフトカプセル剤の包装形態は、一般的に知られている形態を用いることができ、例えば、ビン充填、アルミ包装、PTP包装等が挙げられるが、特にPTP包装が好ましい。
【0027】
本発明ソフトカプセル剤の好ましい態様としては、例えばカプセル内容物の水分活性値が0.70<a<0.96の生薬エキスであり、カプセル皮膜素材にはゼラチン等のペプチド類を用い、水分活性値が0.40≦a≦0.70であり、皮膜中に保湿剤としてグリセリン、ソルビトール等の糖アルコール及びビタミンB1類、ビタミンB12類等のビタミン類を含有し、C/Sが1.0〜10.0であるオバール5型のソフトカプセル剤が挙げられる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
(ソフトカプセルの調製)
ゼラチン45重量%、グリセリン15重量%及び水40重量%からなるゼラチン溶液を70℃で溶解し、脱泡した後、60℃で約10時間静置して、水分活性値(a):0.88のゼラチン溶液を得た。この溶液をロータリー式ソフトカプセル充填機(オバール5型)を用いて、水分活性値の異なるニンジンエキス(水分活性値(a):0.84と0.94)を充填し、成型後、温度27℃、湿度50%以下で乾燥し、適時サンプリングして、カプセル皮膜中の水分活性値がカプセル内容物の水分活性値よりも小さいことを確認後、表1に示すソフトカプセルを調製した。皮膜及び内容物の水分活性値はサンプリング後、直ちにカプセル重量を測定し、内容物を取り出した後、皮膜をヘキサンで洗浄して、水分活性測定器(Aw-Wert-Messer;Duratherm製)で測定した。また乾燥減量を測定し、皮膜中の初期水分量(S)を求め、内容物の水分量(C)とSの比率(C/S)を算出した。
【0029】
【表1】

【0030】
(ソフトカプセルの安定性試験)
調製したソフトカプセルをPTP包装し、25℃、RH60%に6ヵ月間保存して内容物の流出の有無を調べ、変化を観察した結果を表2に示した。これらのソフトカプセルは25℃、RH60%保存で内容物の流出及びカプセルの変形は認められなかった。
【0031】
【表2】

【0032】
実施例2
(ソフトカプセルの調製)
ゼラチン25重量%、グリセリン50重量%及び水25重量%からなるゼラチン溶液を70℃で溶解、脱泡した後、展延板を用いて厚さ約1mmのゼラチンシート(水分活性値(a):0.81)を2枚作製した。1枚を下金型板上に置き、水分活性値の異なるニンジンエキス(水分活性値(a):0.85、0.90及び0.94)を流し込み、次いで他のゼラチンシートを重ねた上金型板を置き、上下金型板を加圧機で圧縮してソフトカプセルを成型した。その後、温度25℃、湿度50%以下で乾燥し、適時サンプリングして、カプセル皮膜中の水分活性値がカプセル内容物の水分活性値よりも小さいことを確認後、表3に示すソフトカプセルを調製した。サンプリングしたソフトカプセルは直ちにカプセル重量を測定し、内容物を取り出した後、実施例1と同様に水分活性値、乾燥減量及び水分量を測定した。調製したソフトカプセルを表3に示す。
【0033】


【表3】

【0034】
(ソフトカプセルの安定性試験)
調製したソフトカプセルをガラス瓶に入れ、35℃及び25℃、保存し、内容物の流出の有無を調べ、形状変化を観察した結果を表4及び表5に示した。これらのカプセルは35℃及び25℃保存で内容物の流出及びカプセルの変形は認められなかった。
【0035】
【表4】

【0036】
【表5】

【0037】
実施例3
乳化機にコハク化ゼラチン45kg、グリセリン15kg、水40kgを入れ、70℃でコハク化ゼラチンを攪拌溶解し、溶液を減圧下で脱泡した後、60℃で約10時間静置して皮膜用のコハク化ゼラチン溶液(水分活性値(a):0.87)を調製した。ロータリー式ソフトカプセル充填機(オバール5型)でニンニクエキス(水分活性値(a):0.88)を1カプセル当たり250mgまたは350mg充填し、成型後、温度27℃、湿度50%以下で4〜6日間乾燥して、2種類のソフトカプセルを調製した[1):充填量250mg、皮膜の水分活性値(a):0.53、内容物の水分活性値(a):0.77及びC/S:1.50;2):充填量350mg、皮膜の水分活性値(a):0.54、内容物の水分活性値(a):0.82及びC/S:3.50]。また各ソフトカプセルをガラス瓶あるいはPTP包装し、35℃に保存して内容物の流出の有無、形状変化及び崩壊時間を調べ、結果を表6に示した。内容物の流出、カプセルの変形及び崩壊時間の遅延はほとんど認められなかった。
【0038】
【表6】

【0039】
実施例4
乳化機にコハク化ゼラチン33kg、グリセリン24kg、水33kgを入れ、70℃でコハク化ゼラチンを攪拌溶解し、溶液を減圧下で脱泡した後、60℃で約10時間静置して皮膜用のコハク化ゼラチン溶液(水分活性値(a):0.85)を調製した。ロータリー式ソフトカプセル充填機(オバール5型)でニンニクエキス(水分活性値(a):0.92)を1カプセル当たり150mg、250mg及び350mg充填し、温度25℃、湿度40%以下で5〜7日間乾燥して、3種類のソフトカプセルを調製した[1):充填量150mg、皮膜の水分活性値0.57、内容物の水分活性値0.78、C/S値1.25;2):充填量250mg、皮膜の水分活性値(a):0.54、内容物の水分活性値(a):0.76、C/S:2.35;3):充填量350mg、カプセル皮膜の水分活性値(a):0.55、内容物の水分活性値(a):0.83、C/S:3.52]。また各ソフトカプセルをガラス瓶あるいはPTP包装し、35℃に保存して内容物の流出の有無、形状変化及び崩壊時間を調べ、結果を表7に示した。内容物の流出、カプセルの変形及び崩壊時間の遅延はほとんど認められなかった。
【0040】
【表7】

【0041】
実施例5
乳化機にコハク化ゼラチン28kg、グリセリン20kg、シアノコバラミン0.2g及び水28kgを入れ、70℃でコハク化ゼラチンを攪拌溶解し、溶液を減圧下で脱泡した後、60℃で約10時間静置して皮膜用のコハク化ゼラチン溶液(水分活性値(a):0.86)を調製した。ニンニクエキス(水分活性値(a):0.92)をロータリー式ソフトカプセル充填機(オバール4型)で1カプセル当たり260mg充填し、温度25℃、湿度40%以下で5日間乾燥し、ソフトカプセル(皮膜の水分活性値(a):0.52、内容物の水分活性値(a):0.82、C/S:2.90)を調製した。ソフトカプセルをガラス瓶あるいはPTP包装し、35℃に保存して内容物の流出、カプセルの変形、崩壊時間及びビタミンの安定性を調べ、その結果を表8に示した。その結果、シアノコバラミンの含量低下、内容物の流出、カプセルの変形及び崩壊時間の遅延はほとんど認められなかった。
【0042】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル皮膜素材として水溶性高分子を含有するソフトカプセル剤であって、カプセル内容物の水分量(C)とカプセル皮膜の水分量(S)の比が0.7≦C/S≦15であり、且つカプセル皮膜の水分活性値がカプセル内容物の水分活性値よりも低いことを特徴とするソフトカプセル剤。
【請求項2】
カプセル皮膜素材として水溶性高分子及び保湿剤又は水分活性低下剤を含有するソフトカプセル剤であって、カプセル内容物の水分量(C)とカプセル皮膜の水分量(S)の比が0.7≦C/S≦15であり、且つカプセル皮膜の水分活性値がカプセル内容物の水分活性値よりも低いことを特徴とするソフトカプセル剤。
【請求項3】
カプセル皮膜の水分活性値が0.25≦a≦0.90であり、カプセル内容物の水分活性値が0.5≦a≦1である請求項1又は2記載のソフトカプセル剤。
【請求項4】
カプセル皮膜素材と保湿剤の比率が1:2〜3:1である請求項2又は3記載のソフトカプセル剤。
【請求項5】
保湿剤又は水分活性低下剤が、グリセリン及び/又は、ソルビトール、エリスリトール、マンニトール、キシリトール、トレハロースから選ばれる糖アルコールである請求項2〜4のいずれか1項記載のソフトカプセル剤。
【請求項6】
水溶性高分子が、ゼラチン、コハク化ゼラチン、ゼラチン加水分解物、加水分解ゼラチン及び架橋型ゼラチンから選ばれるゼラチン誘導体、アルギン酸ナトリウム、プルラン、グルコマンナン、アラビアゴム及びカラギーナンから選ばれる多糖類、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロースから選ばれるセルロース類、オイドラギット及びポリビニルピロリドンから選ばれる合成高分子、よりなる群から選ばれるものである請求項1〜5のいずれか1項記載のソフトカプセル剤。
【請求項7】
カプセル内容物が、医薬品、医薬部外品、化粧品、健康食品、食品、飲料、調味料、香料及び入浴剤からなる群より選ばれたものである請求項1〜6のいずれか1項記載のソフトカプセル剤。
【請求項8】
カプセル皮膜がカプセル内容物とは異なる有効成分を含有するものである請求項1〜7のいずれか1項記載のソフトカプセル剤。
【請求項9】
カプセル内容物をカプセル皮膜に封入した後、必要に応じて乾燥することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載のソフトカプセル剤の製造方法。
【請求項10】
水分活性値が0.5≦a≦1であるカプセル内容物を水分活性値が0.25≦a≦0.90であるカプセル皮膜に封入した後、必要に応じて乾燥して水分活性値及び/又は水分量を調整することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載のソフトカプセル剤の製造方法。

【公開番号】特開2009−102368(P2009−102368A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328272(P2008−328272)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【分割の表示】特願2003−510014(P2003−510014)の分割
【原出願日】平成14年7月3日(2002.7.3)
【出願人】(000250100)湧永製薬株式会社 (51)
【Fターム(参考)】