説明

タイヤチェーン

【課題】可能な限り簡単に装着することができ、かつ同時に車両タイヤに対する最適な保持がそれにより保証される、タイヤチェーンを提供する。
【解決手段】車両用のタイヤチェーン(GLK)は、装着状態で車両タイヤ(REI)の外側面(ASF)と接触する外側ストランド(ASS)と、装着状態で車両タイヤ(REI)の内側面(ISF)と接触する内側ストランド(ISS)と、装着状態で外側ストランド(ASS)と内側ストランド(ISS)との間に配置され、装着状態で車両タイヤ(REI)のトレッド(LFL)と接触するチェーンネット(KNE)とを備える。内側ストランド(ISS)は伸縮自在の設計であり、内側部品(TE2)を密閉する外側部品(TE1)を有する。外側部品(TE1)および内側部品(TE2)は伸縮性が異なる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のタイヤチェーンであって、装着状態で車両タイヤの外側面と接触する外側ストランドおよび装着状態で車両タイヤの内側面と接触する内側ストランドと、装着状態で外側ストランドと内側ストランドとの間に配置される車両のトレッドと接触するチェーンネットと、伸縮自在の設計を有する内側ストランドとを有するタイヤチェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
各々ゴムリングとして設計された内側ストランドおよび外側ストランドを有するタイヤチェーンは、仏国特許公開第2561589A1号から公知である。タイヤのトレッド上に載置される十字形要素は、内側ストランドと外側ストランドとの間に配置される。タイヤチェーンは、内側ストランドを伸縮させることによって、車両タイヤ上に引っ張って載置することができる。先行技術の実施形態の欠点は、中でも特に、非常に厚いゴムリングが装着をかなり困難に、あるいは不可能にさえする一方、ほとんど努力せずにタイヤ上に引っ張って載置することのできるゴムの使用は、車両タイヤに対するタイヤチェーンの保持の不良を導く。
【特許文献1】仏国特許公開第2561589A1号
【発明の開示】
【0003】
本発明の目的はしたがって、可能な限り簡単に装着でき、かつ同時に車両タイヤに対する最適な保持がそれにより保証される、タイヤチェーンを提供することである。
【0004】
この目的は、本発明に従って、内側ストランドが内側部品とそれを密閉する外側部品とを有し、前記外側部品および前記内側部品が異なる伸縮性を有することにより、冒頭に示した型のタイヤチェーンで達成される。
【0005】
本発明に係る解決策により、タイヤチェーンの簡単な装着および装着されたチェーンの車両タイヤに対する非常に良好な保持の両方を保証することが可能である。
【0006】
特に優れた装着特性およびタイヤに対する良好な保持を保証するために、内側ストランドの外側部品は、少なくとも幾つかの部分でゴム弾性を持つリングまたはそのようなリングに接続することのできるリングとして設計された、閉じた管状リングとして設計すると有利である。
【0007】
本発明の有利な変形では、内側部品が、内側部品の長手方向に相互に変位可能な両端を持つようにする。この実施形態では、内側部品が外側部品の収縮によってそれ自体で変位することができるので、内側部品の直径は自動的に低減することができる。代わりに、内側部品の直径は装着中に引き離すことによって低減することができる。
【0008】
本発明の別の有利な実施形態では、内側部品は引張りに対して安定なばねとして設計される。引張りに対する安定性のため、タイヤチェーンの意図しない伸張の発生を防止することができる。
【0009】
簡単に具現することのできる本発明の変形は、内側部品の両端にアイを設け、該アイに相互に変位可能な内側部品の自由端部分を挿通させることができるようにする。
【0010】
装着後の内側部品の優れた固定を保証するために、内側ストランドはラチェットを持つことができ、それによって、相互に変位自在の内側部分の両端部分を相互に固定することができる。1つの変形では、ラチェットはユーザによって作動させることができる。
【0011】
しかし、使用の快適性は、タイヤの転動が自由端部分の固定を導くように遠心締付け機構を有するラチェットによって高めることができる。
【0012】
本発明の別の変形では、内側部品が少なくとも幾つかの部分でゴム弾性を持つようにする。内側部品は閉リングとして設計されることが好ましい。これは、外側部品が2つの自由端を有し、それらが各々着脱自在の自己閉鎖クロージャの一部に接続され、それらが次に内側ストランドの内側部品に接続されて成る実施形態では、閉鎖部が相互に引っ張られるという利点を有する。こうして、内側ストランドが車両タイヤ上に引っ張って載置された後に、車両タイヤの内側における内側ストランドISSの自動閉鎖が保証される。
【0013】
本発明の基本的な目的はまた、内側ストランドに加えて、装着状態で同様に車両タイヤの内側面と接触する少なくとも1つの追加弾性ストランドを設け、かつ少なくとも1つの追加ストランドを好ましくはリング状に設計することによっても達成することができる。タイヤ上に引っ張って次々に載置される小さい厚さの複数のゴムリングを、厚いゴムリングの代わりに使用することができる。
【0014】
タイヤチェーンの簡単かつ信頼できる張設は、内側ストランドによって引き起こされる引張り力がチェーンネットに直接導入されるように、固定手段によってチェーンネットに直接接続される内側ストランドによって達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明を追加の利点と共に、図面に示す幾つかの非限定の例示的実施形態に基づいて、以下でさらに詳細に説明する。
【0016】
図1によると、本発明に係る車両用のタイヤチェーンGLKまたはスノーチェーンは、チェーンKENとして設計された外側ストランドASSと、内側ストランドISSとを有する。チェーンネットKEN[訳注:原文のまま、KNE]は外側ストランドASSと内側ストランドISSとの間に配置され、内側ストランドISSは伸縮自在のストランドとして設計される。より正確には、内側ストランドISSはその長手軸の方向に伸縮することができ、その結果内側ストランドISSの長さを変えることができる。その結果、車両タイヤに対するタイヤチェーンの装着が容易になる。装着状態のタイヤチェーンの優れた保持を保証するために、内側ストランドISSはさらに弾性ストランドとして設計される。
【0017】
内側ストランドISSは、内側ストランドISSによって生じる引張り力がチェーンネットKNEに直接導入されるように、固定手段を用いて、例えばフックHAKまたはここには図示しないプラスチッククリップを用いて、チェーンネットKNEに直接接続することができる。さらに、内側ストランドに、フックが挿通される穴を設けることができる。代替的に、内側ストランドISSは、布帯/ファブリック内に収容することもできる。チェーンネットKNE用のフックHAKまたは同様の固定具を受容するために、この布帯に穴を設けることができる。こうしてタイヤに対する非常に優れた着座を達成することができる。
【0018】
装着する場合、タイヤチェーンGLKは、図2〜4に「REI」で指定されたタイヤ上に簡単に引っ張って載置することができる。リング状に閉じられた内側ストランドISSは今、タイヤの外側から、図4で「LFL」で指定されたタイヤトレッド上に引っ張られ、それは内側ストランドの伸縮性のため、非常に簡単に実行することができる。基材の特性およびアクセス性に応じて、内側ストランドISSはタイヤREIと基材の間の接触面において、タイヤREIの基材とトレッドとの間に部分的にまたは完全に押し込むことができる。タイヤチェーンGLKをタイヤ上に引っ張って載置した後で、それ以上の装着処置を取る必要なく、単に運転を開始することができる。内側ストランドISSの引張り力のため、タイヤREIの接触面の領域でトレッドと基材との間に押し込まれる内側ストランドの部分は、自動的にREIの内側に引っ張られるので、タイヤチェーンの最適な着座が保証される。タイヤチェーンGLEI[訳注:原文のまま]を取り外すには、内側ストランドISSが再び多少伸張されて、タイヤREIの内側からタイヤの正面側に引っ張られる。つまり、それは後ろから前方に引っ張られてトレッド上に載置される。
【0019】
図2によると、内側ストランドISSは、タイヤチェーンGLKの装着状態で車両タイヤREIの内側面ISFと接触する。外側ストランドASSもまた、フックで閉じることができるようにするために中断することができる。タイヤチェーンGLKのずっと優れた張設を達成するために、フックの代わりに、ラチェットシステムを用いて外側ストランドASSの端部を接続することも可能である。
【0020】
代替的に、外側ストランドASSをゴムの帯片に、または内側ストランドISSと同様に設計されたストランドに置換することもできる。しかし、原則として外側ストランドASSの他の実施形態も可能であり、それは例えば、その中にゴムストランドが緊張要素として延在するケーブルとして、特に鋼もしくは布ケーブルとして、または布帯としてさえ、特に管状布帯として設計することができる。
【0021】
図3に示すように、外側ストランドASSは、装着状態でタイヤREIの外側面AFLと接触する。外側ストランドASSは、ここに示された実施形態では連続チェーンとして設計される。しかし、外側ストランドASSを分割チェーンとして設計し、ここには示されていない緊張要素によって閉じることも可能である。
【0022】
図4によると、チェーンネットKNEは、装着状態でタイヤREIのトレッドLFLと接触する。チェーンネットKNEは、フックHAKを用いて内側ストランドISSと直接接続される。外側ストランドASSはまた、内側ストランドと同様に、フックを用いてチェーンネットKNEに接続することもできる。
【0023】
図5および6から明らかなように、内側ストランドISSは、本発明では、内側部品TE2とそれを密閉する外側部品TE1とを有し、外側部品TE1および内側部品TE2は伸縮性が異なる。内側ストランドISSの外側部品TE1は、閉じた管状ゴムリングとして設計される。内側部品TE2は、引張りに対して安定しかつ内側部品TE2の長手方向に相互に変位可能な2つの端部EN1、EN2を有する、ばねとして設計される。内側部品TE2の自由端部分ABS1、ABS2が挿通されるアイOES1、OES2を、内側部品TE2の両端EN1、EN2に設けることができる。端部EN1、EN2を相互に変位させることによって、内側部品TE2の外周を引き寄せることができる。これを図5に示す。外側部品TE1は伸縮することができ、内側部品TE2の外周は、内側ストランドISSをタイヤ上に引っ張って載置することができるように、外力の作用によって拡張させることができる。
【0024】
図7および8によると、内側ストランドISSはラチェットRAT1、RAT2を持つことができ、それを用いて、内側部品TE2の相互に変位させることのできる自由端部分ABS1、ABS2を固定することができる。内側部品のラチェットRAT1の解放およびしたがって端部分ABS1、ABS2の解放を可能にするために、例えば解放ボタンLKNの形の作動部材が設けられる。図7は、ラチェットRAT1が固定されて装着状態にある内側ストランドISSを示す。図8は、ラチェットが解放され、外側部品TE1が伸張した状態の内側ストランドISSを示す。
【0025】
図9および10に示すように、ラチェットRAT2は、車両タイヤREIの転動が自由端部分ABS1、ABS2の固定を導くように、遠心力締付け機構を持つことができる。この場合、ラチェットRAT2の手動解放は不要である。図9は、ラチェットRAT2が固定され、外側部品TE1が引き寄せられて、装着状態にある内側ストランドISSを示す。図10は、ラチェットRAT2が解放され、外側部品TE1が伸張した状態の内側ストランドISSを示す。
【0026】
図11および12に示す本発明の実施形態では、内側部品TE2は同様に、ゴム弾性を持つリング状部品として設計することができる。外側部品TE1はここでは2つの自由端END1、END2を持ち、それらは各々着脱自在の自己閉鎖クロージャVERの一部分TEI1、TEI2に接続される。クロージャVERの2つの部分TEI1、TEI2は同様に、内側ストランドISSの内側部品TE2に接続される。内側部品TE2の弾性復元力のため、2つのクロージャ部分TEI1、TEI2は、内側ストランドISSの伸張後に相互に引っ張られ、相互に弾着される。クロージャVERは、作動部材BETを用いて再び解放することができる。
【0027】
図14では、装着状態で同様に車両タイヤの内側面ASFと接触し、かつ装着のために次々に車両タイヤ上に引っ張って載置することのできる環状設計の1つまたはそれ以上の弾性ストランドSTRを、ゴムの帯片の形状の図13に示した内側ストランドISSの代わりに、またはこれに加えて、設けることができる。
【0028】
内側ストランドISSは全ての実施形態で、タイヤ上での最適な保持を保証するために、事前設定されたタイヤ寸法に適合するような大きさに形成される。
【0029】
言うまでもなく、上述した例示的実施形態以外に、本発明に係る内側ストランドISSの特性を得ることのできる、ここに示さなかった他の材料および設計を使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係るタイヤチェーンの斜視図である。
【図2】本発明に係るタイヤチェーンが装着された状態のタイヤの内側の斜視図である。
【図3】図2の本発明に係るタイヤチェーンが装着された図2のタイヤの外側の斜視図である。
【図4】図2および図3の本発明に係るタイヤチェーンが装着された図2および図3のタイヤのトレッドの斜視図である。
【図5−14】内側ストランドの様々な変形例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着状態で車両タイヤ(REI)の外側面(ASF)と接触する外側ストランド(ASS)と、装着状態で前記車両タイヤ(REI)の内側面(ISF)と接触する内側ストランド(ISS)と、前記車両タイヤ(REI)のトレッド(LFL)上で装着状態で前記外側ストランド(ASS)と前記内側ストランド(ISS)との間に配置されるチェーンネット(KNE)とを有し、前記内側ストランド(ISS)が伸縮自在の設計を有して成る車両用のタイヤチェーン(GLK)であって、前記内側ストランド(ISS)が内側部品(TE2)とそれを密閉する外側部品(TE1)とを有し、前記外側部品(TE1)および前記内側部品(TE2)が異なる伸縮性を有することを特徴とするタイヤチェーン。
【請求項2】
前記内側ストランド(ISS)の前記外側部品(TE1)が、少なくとも幾つかの部分がゴム弾性を持つリングまたはそのようなリングに接続することのできるリングとして設計された、閉じた管状リングとして設計されることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤチェーン。
【請求項3】
前記内側部品(TE2)が、前記内側部品(TE2)の長手方向に相互に変位可能な2つの端部(EN1、EN2)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のタイヤチェーン。
【請求項4】
前記内側部品(TE2)が、引張りに対して安定なばねとして設計されることを特徴とする、請求項1ないし3に記載のタイヤチェーン。
【請求項5】
相互に変位させることのできる前記内側部品(TE2)の自由端部分(ABS1、ABS2)が挿通されるアイ(OES1、OES2)を前記内側部品(TE2)の前記2つの端部(EN1、EN2)に設けることを特徴とする、請求項4または5に記載のタイヤチェーン。
【請求項6】
前記内側ストランド(ISS)がラチェット(RAT1、RAT2)を有し、それを用いて前記内側部品(TE2)の前記自由端部分(ABS1、ABS2)を固定することができ、前記自由端部分が相互に変位可能であることを特徴とする、請求項1ないし4の1項に記載のタイヤチェーン。
【請求項7】
前記ラチェット(RAT1)をユーザが作動させることができることを特徴とする、請求項6に記載のタイヤチェーン。
【請求項8】
前記車両タイヤ(REI)の転動が前記自由端部分(ABS1、ABS2)の固定を導くように、前記ラチェット(RAT2)が遠心力締付け機構を有することを特徴とする、請求項6に記載のタイヤチェーン。
【請求項9】
前記内側部品(TE2)が少なくとも幾つかの部分でゴム弾性設計を有することを特徴とする、請求項2に記載のタイヤチェーン。
【請求項10】
前記内側部品(TE2)を閉じたリングとして設計することを特徴とする、請求項9に記載のタイヤチェーン。
【請求項11】
前記外側部品(TE1)が2つの自由端(END1、END2)を有し、それらが各々着脱自在の自己閉鎖クロージャ(VER)の一部分(TEI1、TEI2)に接続され、前記部分(TEI1、TEI2)が前記内側ストランド(ISS)の前記内側部品(TE2)に接続されかつ相互に引っ張られることを特徴とする、請求項9に記載のタイヤチェーン。
【請求項12】
装着状態で車両タイヤ(REI)の外側面(ASF)と接触する外側ストランド(ASS)と、装着状態で前記車両タイヤ(REI)の内側面(ISF)と接触する内側ストランド(ISS)と、前記外側ストランド(ASS)と前記内側ストランド(ISS)との間に配置され、装着状態で前記車両タイヤ(REI)のトレッド(LFL)と接触するチェーンネット(KNE)とを有し、前記内側ストランド(ISS)が伸縮自在の設計を有して成る車両用のタイヤチェーン(GLK)であって、前記内側ストランド(ISS)に加えて、装着状態で同様に前記車両タイヤの前記内側面(ASF[訳注(Tr.Ed):原文のまま])と接触する追加の弾性ストランド(STR)を設けることを特徴とするタイヤチェーン。
【請求項13】
前記内側ストランド(ISS)および前記少なくとも1つの追加ストランド(STR)が各々リング状設計であることを特徴とする、請求項13に記載のタイヤチェーン。
【請求項14】
前記内側ストランド(ISS)によって生じる引張り力が前記チェーンネット(KNE)に直接導入されるように、前記内側ストランドが固定手段を用いて前記チェーンネット(KNE)に直接接続されることを特徴とする、請求項1ないし13の1項に記載のタイヤチェーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−106404(P2007−106404A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−277090(P2006−277090)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(506342626)ペヴァーク オーストリア ゲーエムベーハー (1)