タッチパネル装置
【課題】平均回数の変更が頻繁に発生せず、さらに描画速度が急激に変化する場合でも、平均回数が一度に大きく変化しないようにする。
【解決手段】タッチ面の全面についてスキャンを実施して、タッチ面上の位置に応じたレベル信号を取得し、そのレベル信号に基づいてタッチ位置を検出する制御部7を備え、この制御部は、レベル信号に基づいてタッチ位置を算出するタッチ位置算出部42と、タッチ面上で指示物を動かす描画速度に応じて平均回数を設定する平均回数設定部43と、ここで設定された平均回数に基づいてタッチ位置を平均化する平均位置算出部44と、を備え、平均回数設定部は、タッチ位置の変化状況から各回の速度特性値を求めるとともに、現在までの複数回の速度特性値から速度評価値を求めて、その速度評価値を所定のしきい値と比較して、その比較結果に基づいて新たな平均回数を設定する。
【解決手段】タッチ面の全面についてスキャンを実施して、タッチ面上の位置に応じたレベル信号を取得し、そのレベル信号に基づいてタッチ位置を検出する制御部7を備え、この制御部は、レベル信号に基づいてタッチ位置を算出するタッチ位置算出部42と、タッチ面上で指示物を動かす描画速度に応じて平均回数を設定する平均回数設定部43と、ここで設定された平均回数に基づいてタッチ位置を平均化する平均位置算出部44と、を備え、平均回数設定部は、タッチ位置の変化状況から各回の速度特性値を求めるとともに、現在までの複数回の速度特性値から速度評価値を求めて、その速度評価値を所定のしきい値と比較して、その比較結果に基づいて新たな平均回数を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出したタッチ位置を平均化して出力するタッチパネル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル装置は、画面上の位置を入力する位置入力デバイスとして広く普及しており、画面上のボタンを選択する操作などの画面操作に用いられる他、ユーザが指示物(ユーザの指やスタイラス)を動かした際の指示物の軌跡に沿って線を描画する手書き入力にも用いられ、この場合、タッチ面にマーカーで直接描画をするのと同様の感覚で線を描画することができることから、ユーザの利便性を高めることができる。
【0003】
このようなタッチパネル装置では、ノイズの影響などで、検出したタッチ位置が不規則に変動する現象、いわゆるジッタが発生する。このジッタは、タッチ位置の検出誤差となり、これが顕著になると、指示物による実際のタッチ位置から大きくずれた座標値が出力される。
【0004】
そこで、このジッタによる問題を解消するため、タッチ位置を平均化して出力する技術が知られている(特許文献1参照)。ここでは、入力操作がトレースやポインティングであれば平均回数、すなわちタッチ位置を平均化する際のデータ数を増やし、入力操作がグラフィックであれば平均回数を減らすようにしている。また、座標指示器がカーソルであれば平均回数を増やし、座標指示器がスタイラスペンであれば平均回数を減らすようにしている。
【0005】
また、ジッタは、特に手書き入力で、描画速度、すなわちタッチ面上で指示物を動かす速度が低い場合に問題となり、滑らかな線を描画することができなくなる。この問題は、平均回数を増やすことで解決することができるが、単純に平均回数を増やすと、描画速度が高い場合に、指示物の動きにあまり遅れずに線を表示させる描画の追随性が低下して、ユーザの操作感が悪化する。
【0006】
そこで、この描画の追随性の問題を解消するため、描画速度が高い場合には平均回数(平均化の母数)を減らし、描画速度が低い場合には平均回数を増やす技術が知られている(特許文献2参照)。ここでは、描画速度(単位時間当りにタッチ位置が進む移動距離)をしきい値(基準値)と比較して、しきい値に対する描画速度の大小に応じて平均回数を切り替えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−214708号公報
【特許文献2】特開平6−175771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さて、前記特許文献1に開示された従来の技術は、入力操作の形態や座標指示器の種類に応じて平均回数を変更するようにしたものであり、手書き入力において描画速度が途中で変化する場合の問題は解決することができない。
【0009】
一方、前記特許文献2に開示された従来の技術では、手書き入力において、描画速度が変化するのに応じて平均回数を変更することから、描画速度が途中で変化する場合に有効であり、描画の追随性と滑らかさの両立を図ることができる。しかしながら、単に描画速度に応じて平均回数を切り替えるだけであるため、描画速度がしきい値の近傍で変化する場合には、平均回数の変更が頻繁に生じるという問題があった。
【0010】
また、単に描画速度に対応した大小2つの平均回数を用いるため、平均回数変更の効果を上げるため、2つの平均回数が大きく異なるように設定すると、平均回数を変更した際の変化量が大きくなるため、表示された線が実際の指示物の軌跡とは大きく異なったものになり、適切な描画が行われないという問題があった。また、平均回数の変化量が大きくなると、描画感覚、すなわち指示物の動きに応じて線が描かれる際にユーザが受ける印象が変化して、ユーザに違和感を与えるという問題があった。
【0011】
一方、前記特許文献2にも開示されているように、しきい値とこれに対応する平均回数を複数用意して、描画速度に応じて平均回数を段階的に設定する構成も考えられるが、このように構成しても、描画速度が急激に変化する場合には、平均回数が一度に大きく変化するため、前記の問題を解決することはできない。
【0012】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、平均回数の変更が頻繁に発生せず、さらに描画速度が急激に変化する場合でも、平均回数が一度に大きく変化しないように構成されたタッチパネル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のタッチパネル装置は、指示物によるタッチ操作が行われるタッチ面およびこのタッチ面上のタッチ操作を検出するタッチ検出手段を有するパネル本体と、前記タッチ面の全面についてスキャンを実施して、前記タッチ面上の位置に応じたタッチ検出信号を取得し、そのタッチ検出信号に基づいてタッチ位置を検出する制御部とを備え、前記制御部は、前記タッチ検出信号に基づいてタッチ位置を算出するタッチ位置算出部と、前記タッチ面上で前記指示物を動かす描画速度に応じて平均回数を設定する平均回数設定部と、この平均回数設定部で設定された平均回数に基づいて前記タッチ位置を平均化する平均位置算出部と、を備え、前記平均回数設定部は、前記タッチ位置の変化状況から各回の速度特性値を求めるとともに、現在までの複数回の前記速度特性値から速度評価値を求めて、その速度評価値を所定のしきい値と比較して、その比較結果に基づいて新たな平均回数を設定する構成とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、現在までの複数回の速度特性値から求められた速度評価値は、描画速度の変化状況を示すものであり、この速度評価値に基づいて平均回数が設定されるため、描画速度の変化状況に応じた適切な平均回数に設定することができる。そして、描画速度が変化してもすぐには速度評価値に大きな変化が現れず、描画速度が高い状態または低い状態が継続することで、速度評価値が徐々に変化して、速度評価値がしきい値に到達したところで平均回数が変化し、描画速度が変化するタイミングに遅れて平均回数が変化するため、平均回数が頻繁に変化することを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係るタッチパネル装置1を示す全体構成図
【図2】受信電極4および受信部7の概略構成図
【図3】受信信号処理部21の概略構成図
【図4】制御部8の概略構成図
【図5】描画速度が高速側に変化する場合の各パラメータの変化状況の一例を示す図
【図6】図5に示した各パラメータの変化状況をグラフ化して示す図
【図7】描画速度が低速側に変化する場合の各パラメータの変化状況の一例を示す図
【図8】図7に示した各パラメータの変化状況をグラフ化して示す図
【図9】図7に示した例による平均回数の変更に伴う平均位置の状況を示す図
【図10】制御部8での処理の手順を示すフロー図
【図11】図10に示した平均回数算出(ST110)の手順を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0016】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、指示物によるタッチ操作が行われるタッチ面およびこのタッチ面上のタッチ操作を検出するタッチ検出手段を有するパネル本体と、前記タッチ面の全面についてスキャンを実施して、前記タッチ面上の位置に応じたタッチ検出信号を取得し、そのタッチ検出信号に基づいてタッチ位置を検出する制御部とを備え、前記制御部は、前記タッチ検出信号に基づいてタッチ位置を算出するタッチ位置算出部と、前記タッチ面上で前記指示物を動かす描画速度に応じて平均回数を設定する平均回数設定部と、この平均回数設定部で設定された平均回数に基づいて前記タッチ位置を平均化する平均位置算出部と、を備え、前記平均回数設定部は、前記タッチ位置の変化状況から各回の速度特性値を求めるとともに、現在までの複数回の前記速度特性値から速度評価値を求めて、その速度評価値を所定のしきい値と比較して、その比較結果に基づいて新たな平均回数を設定する構成とする。
【0017】
これによると、現在までの複数回の速度特性値から求められた速度評価値は、描画速度の変化状況を示すものであり、この速度評価値に基づいて平均回数が設定されるため、描画速度の変化状況に応じた適切な平均回数に設定することができる。そして、描画速度が変化してもすぐには速度評価値に大きな変化が現れず、描画速度が高い状態または低い状態が継続することで、速度評価値が徐々に変化して、速度評価値がしきい値に到達したところで平均回数が変化し、描画速度が変化するタイミングに遅れて平均回数が変化するため、平均回数が頻繁に変化することを避けることができる。
【0018】
また、第2の発明は、前記速度評価値は、現在の平均回数に基づく積算回数分だけ前記速度特性値を積算した積算値である構成とする。
【0019】
これによると、速度評価値を求めるために速度特性値を積算するだけで済むため、制御部の演算負担を軽減することができる。
【0020】
また、第3の発明は、前記平均回数設定部は、前記速度評価値と前記しきい値との比較結果から、平均回数を変更するか否かを判定し、平均回数を変更する場合には、現在の平均回数を所定の変更幅だけ増減する構成とする。
【0021】
これによると、平均回数が所定の変更幅ずつ段階的に増減するため、描画速度が急激に変化する場合でも、平均回数が一度に大きく変化することを避けることができる。
【0022】
特に、現在の平均回数に基づく積算回数分だけ速度特性値を積算して速度評価値を求める構成では、前回の設定で平均回数が変更されると、描画速度に変化がなくても速度評価値が増減してしきい値から遠ざかるため、すぐには平均回数が変更されず、平均回数が頻繁に変化することを避けることができる。
【0023】
また、第4の発明は、前記平均回数設定部は、平均回数を所定の上限値および下限値の範囲に制限する構成とする。
【0024】
これによると、平均回数を所定の変更幅だけ増減することで、平均回数が上限値および下限値の範囲から逸脱する場合には、平均回数が上限値または下限値に設定される。これにより、平均回数が必要以上に大きくなったり小さくなったりすることを避けることができる。
【0025】
また、第5の発明は、前記平均回数設定部は、前記速度評価値を高速しきい値および低速しきい値と比較して、描画速度が高速側および低速側のいずれに変化したかを判定し、描画速度が高速側に変化した場合には平均回数を減らし、描画速度が低速側に変化した場合には平均回数を増やす構成とする。
【0026】
これによると、描画速度が高速側に変化した場合には平均回数を減らすため、描画の追随性を確保することができ、このとき、平均回数を減らすことで描画の滑らかさが低下するおそれがあるが、描画速度が高い場合には各回のタッチ位置が離れているため、描画の滑らかさは問題とならない。一方、描画速度が低速側に変化した場合には平均回数を増やすため、描画の滑らかさを確保することができ、このとき、平均回数を増やすことで描画の追随性が低下するおそれがあるが、描画速度が低いため、描画の追随性は問題とならない。
【0027】
また、第6の発明は、前記平均回数設定部は、描画速度が低速側に変化したものと判定すると、平均回数を1回だけ増やす構成とする。
【0028】
これによると、描画位置が不適切なものになることを避けることができる。
【0029】
また、第7の発明は、前記平均回数設定部は、描画速度が低速側に変化したものと判定すると、その回の平均回数は変更せず、次回の平均回数を増やす構成とする。
【0030】
これによると、描画位置が不適切なものになることを避けることができる。
【0031】
また、第8の発明は、前記速度特性値は、前回からタッチ位置が移動した移動距離である構成とする。
【0032】
これによると、各回のタッチ位置は一定の時間間隔で求められるため、移動距離を速度とみなすことができる。そして、単にタッチ位置の座標値を減算するだけで、速度特性値として移動距離を求めることができるため、制御部の演算負担を軽減することができる。この場合、速度特性値を積算して速度評価値を求める構成では、移動距離を積算した総移動距離が速度評価値となる。
【0033】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0034】
図1は、本実施形態に係るタッチパネル装置1を示す全体構成図である。このタッチパネル装置1は、指示物(ユーザの指やスタイラス)によるタッチ操作が行われるタッチ面2を有するとともに互いに並走する複数の送信電極(タッチ検出手段)3と互いに並走する複数の受信電極(タッチ検出手段)4とが格子状に配置されたパネル本体5と、送信電極3に対して駆動信号(パルス信号)を印加する送信部6と、送信電極3に印加された駆動信号に応答した受信電極4の応答信号を受信して、送信電極3と受信電極4とが交差する電極交点ごとのレベル信号(タッチ検出信号)を出力する受信部7と、この受信部7から出力されるレベル信号に基づいてタッチ位置を検出すると共に送信部6および受信部7の動作を制御する制御部8とを備えている。
【0035】
このタッチパネル装置1は、大画面の表示装置と組み合わせることで、プレゼンテーションや講義に用いることができるようにした、いわゆるインタラクティブホワイトボードとして用いられ、特にここでは、プロジェクタ装置10と組み合わせて用いられ、パネル本体5のタッチ面2が、プロジェクタ装置10の投影画面を表示するスクリーンとなる。
【0036】
制御部8から出力されるタッチ位置情報は、パソコンなどの外部機器9に入力され、ここで生成した表示画面データがプロジェクタ装置10に出力される。これにより、タッチ面2上に表示された画面上のボタンを選択する操作などの画面操作を行うことができ、また、手書き入力モードとすると、ユーザがタッチ面2上で指示物を動かした際の指示物の軌跡に沿って線が表示され、タッチ面2にマーカーで直接描画をするのと同様の感覚で線を描くことができる。さらに、タッチ操作で描かれた画像を消去するイレーサを用いることもできる。
【0037】
送信電極3は、X方向に延在し、Y方向に所定の間隔をおいて配列されている。受信電極4は、Y方向に延在し、X方向に所定の間隔をおいて配列されている。この送信電極3および受信電極4は同一の配置間隔(例えば20mm)で配置されており、その本数はパネル本体5のアスペクト比に応じて異なり、例えば送信電極3が60本、受信電極4が96本配置される。
【0038】
送信電極3と受信電極4とは、絶縁層を挟んで重なり合う態様で交差しており、この送信電極3と受信電極4とが交差する電極交点にはコンデンサが形成され、ユーザが指示物でタッチ操作を行う際に、指示物がタッチ面2に接近あるいは接触すると、これに応じて電極交点の静電容量が実質的に減少することで、タッチ操作の有無を検出することができる。
【0039】
ここでは、相互容量方式が採用されており、送信電極3に駆動信号を印加すると、これに応答して受信電極4に充放電電流が流れ、この充放電電流が応答信号として受信電極4から出力され、このとき、ユーザのタッチ操作に応じて電極交点の静電容量が変化すると、受信電極4の応答信号が変化し、この変化量に基づいてタッチ位置が算出される。この相互容量方式では、受信部7で応答信号を信号処理して得られるレベル信号が、送信電極3と受信電極4とによる電極交点ごとに出力されるため、同時に複数のタッチ位置を検出する、いわゆるマルチタッチ(多点検出)が可能である。
【0040】
送信部6および受信部7は、制御部8から出力される同期信号に応じて動作し、送信部6において1本の送信電極3に駆動信号を印加する間に、受信部7において受信電極4を1本ずつ選択して受信電極4からの応答信号を順次処理し、この1ライン分のスキャンを全ての送信電極3について順次繰り返すことで、タッチ面2の全面に渡る1フレーム分のスキャンが行われ、これにより1フレーム分のレベル信号、すなわち全ての電極交点ごとのレベル信号を取得することができる。この1フレーム分のスキャンに要する時間(フレーム周期)は例えば10msとする。
【0041】
制御部8は、受信部7から出力される電極交点ごとのレベル信号から所定の演算処理によってタッチ位置(タッチ領域の中心座標)を求める。このタッチ位置の演算では、X方向(受信電極4の配列方向)とY方向(送信電極3の配列方向)とでそれぞれ隣接する複数(例えば4×4)の電極交点ごとのレベル信号から所要の補間法(例えば重心法)を用いてタッチ位置を求める。これにより、送信電極3及び受信電極4の配置ピッチ(例えば20mm)より高い分解能(例えば1mm以下)でタッチ位置を検出することができる。
【0042】
また、制御部8では、タッチ面2の全面に渡って電極交点ごとのレベル信号の受信が終了する1フレーム周期ごとにタッチ位置を求める処理が行われ、タッチ位置情報がフレーム単位で外部機器9に出力される。外部機器9では、時間的に連続する複数のフレームのタッチ位置情報に基づいて、各タッチ位置を時系列に連結する表示画面データを生成して、プロジェクタ装置10に出力する。なお、マルチタッチの場合には、複数の指示物によるタッチ位置を含むタッチ位置情報がフレーム単位で出力される。
【0043】
図2は、受信電極4および受信部7の概略構成図である。各受信電極4には、受信電極4の応答信号の受信部7への入力を断続するスイッチング素子SWが接続されている。受信部7は、スイッチング素子SWを介して受信電極4から入力される応答信号に対して所要の信号処理を行う受信信号処理部21を備えている。各スイッチング素子SWは制御部8からの駆動信号に応じて個別にオン/オフ制御される。
【0044】
受信電極4およびスイッチング素子SWは、所定数(例えば24本)ごとにグループ化され、各グループに属するスイッチング素子SWの互いに対応するもの同士が並行してオン/オフ制御される。また、各グループごとに受信信号処理部21が設けられている。各グループではスイッチング素子SWが1つずつ順にオンとなるように制御され、残りのスイッチング素子SWはオフに制御されており、スイッチング素子SWをオンとすることで選択された1本の受信電極4の応答信号が受信信号処理部21に入力される。
【0045】
このように、スイッチング素子SWのスイッチング動作が複数のグループ間で並行して行われるため、全ての受信電極4の応答信号を受信するのに要する時間を短縮することができる。また、受信部7での応答信号の処理をグループごとに分割して行うことができるため、ハードウエア構成の大型化を抑えることができる。
【0046】
図3は、受信信号処理部21の概略構成図である。この受信信号処理部21は、IV変換部31と、バンドパスフィルタ32と、絶対値検出部33と、積分部34と、サンプルホールド部35と、AD変換部36とを備えている。
【0047】
IV変換部31では、スイッチング素子SWを介して入力される受信電極4の応答信号(充放電電流信号)が電圧信号に変換される。バンドパスフィルタ32では、IV変換部31の出力信号に対して、送信電極3に印加される駆動信号の周波数以外の周波数成分を有する信号を除去する処理が行われる。絶対値検出部(整流部)33では、バンドパスフィルタ32の出力信号に対して全波整流が行われる。積分部34では、絶対値検出部33の出力信号を時間軸方向に積分する処理が行われる。サンプルホールド部35では、積分部34の出力信号を所定のタイミングでサンプリングする処理が行われる。AD変換部36では、サンプルホールド部35の出力信号をAD変換してレベル信号(ディジタル信号)を出力する。
【0048】
図4は、制御部8の概略構成図である。制御部8は、前記のように、タッチ面2の全面についてスキャンを実施して、タッチ面2上の位置(ここでは電極交点の位置)に応じたレベル信号(タッチ検出信号)を取得し、そのレベル信号に基づいてタッチ位置を検出するものであり、その主制御部41は、タッチ位置算出部42と、平均回数設定部43と、平均位置算出部44と、を備えている。
【0049】
タッチ位置算出部42は、受信部7から出力されるレベル信号に基づいてタッチ位置を算出する。平均回数設定部43は、描画速度、すなわちユーザが指示物を動かす速度に基づいて、平均回数、すなわち平均位置算出部44でタッチ位置を平均化する際のデータ数を設定する。平均位置算出部44は、平均回数設定部43で設定された平均回数に基づいて、タッチ位置算出部42で求めたタッチ位置を平均化して平均位置を求める。この平均回数設定部43および平均位置算出部44の各処理は手書き入力モードで実行される。
【0050】
タッチ位置算出部42で求めたタッチ位置は位置情報保存部45に保存され、この位置情報保存部45を参照して、平均回数設定部43および平均位置算出部44の各処理が行われる。
【0051】
なお、主制御部41のタッチ位置算出部42、平均回数設定部43および平均位置算出部44は、CPUで所定のプログラムを実行することで実現される。位置情報保存部45はRAMで実現される。位置情報保存部45は、後に詳しく説明するが、少なくとも平均回数の上限値(例えば31)に対応するデータ量を保存可能なものとする。
【0052】
図5は、描画速度が高速側に変化する場合の各パラメータの変化状況の一例を示す図である。図6は、図5に示した各パラメータの変化状況をグラフ化して示す図である。図7描画速度が低速側に変化する場合の各パラメータの変化状況の一例を示す図である。図8は、図7に示した各パラメータの変化状況をグラフ化して示す図である。ここで、サンプル数は、位置情報保存部45に保存された有効なタッチ位置のデータ数であり、スキャン回数と一致する。
【0053】
以下、図5〜図8に示した具体例を適宜に参照しながら、図4に示した平均回数設定部43で行われる処理について詳しく説明する。
【0054】
平均回数設定部43では、タッチ位置の変化状況から各回の速度特性値を求めるとともに、現在までの複数回の速度特性値から速度評価値を求めて、その速度評価値を所定のしきい値と比較して、その比較結果に基づいて新たな平均回数を設定する。
【0055】
特に、本実施形態では、速度特性値を、前回からタッチ位置が移動した移動距離とする。タッチ位置は1回のスキャンの度に求められ、各回のタッチ位置の時間間隔は、フレーム周期に対応した一定値となるため、前回のタッチ位置と今回のタッチ位置との2点間の距離である移動距離は描画速度とみなすことができる。このように速度特性値を移動距離とすると、単にタッチ位置の座標値を減算するだけで、速度特性値として移動距離を求めることができるため、制御部8の演算負担を軽減することができる。
【0056】
また、本実施形態では、速度評価値を、現在の平均回数に基づく積算回数分だけ移動距離(速度特性値)を積算した積算値、すなわち積算回数分だけ過去に遡った回から今回までの移動距離を積算した積算値である総移動距離とする。このように速度評価値を、移動距離(速度特性値)を積算した総移動距離とすると、速度評価値として総移動距離を求めるために移動距離を積算するだけで済むため、制御部8の演算負担を軽減することができる。
【0057】
このように現在までの複数回の移動距離を積算した総移動距離は、積算期間における描画速度の変化状況を示すものであり、この総移動距離に基づいて平均回数が設定されるため、描画速度の変化状況に応じた適切な平均回数に設定することができる。
【0058】
特に、総移動距離は、描画速度が変化してもすぐには大きく変化せず、描画速度が高い状態または低い状態が継続することで徐々に変化する。このため、描画速度が変化するタイミングに遅れて平均回数が変化するようになり、描画速度が一時的に変化して元に戻るような場合には平均回数が変化せず、平均回数が頻繁に変化することを避けることができる。
【0059】
図5,図6に示す例では、サンプル数が15となるときに移動距離が2mmから4mmに変化するが、この移動距離が変化するタイミングから1回遅れてサンプル数が16となるときに平均回数が13回から10回に変更される。また、図7,図8に示す例では、サンプル数が15となるときに移動距離が4mmから2mmに変化するが、この移動距離が変化するタイミングから4回遅れてサンプル数が19となるときに平均回数が7回から8回に変更される。
【0060】
なお、サンプル数が平均回数(積算回数)に達するまでは、便宜的にサンプル数を平均回数として平均化が行われる。図5,図6に示す例では、当初の平均回数の13回に達するまでは、サンプル数が増えるのに応じて平均回数が増える。また、図7,図8に示す例では、当初の平均回数の7回に達するまでは、サンプル数が増えるのに応じて平均回数が増える。
【0061】
また、本実施形態では、総移動距離(速度評価値)としきい値との比較結果から、平均回数を変更するか否かを判定し、平均回数を変更する場合には、現在の平均回数を所定の変更幅だけ増減する。
【0062】
特に、本実施形態では、総移動距離(速度評価値)を高速しきい値および低速しきい値と比較して、描画速度が高速側および低速側のいずれに変化したかを判定し、描画速度が高速側に変化した場合には平均回数を減らし、描画速度が低速側に変化した場合には平均回数を増やす。
【0063】
すなわち、総移動距離が高速しきい値より大きくなると、描画速度が高速側に変化したものと判定して、平均回数を所定の変更幅nだけ減らし、一方、総移動距離が低速しきい値より小さくなると、描画速度が低速側に変化したものと判定して、平均回数を所定の変更幅mだけ増やす。総移動距離が高速しきい値と低速しきい値との間にある場合には、描画速度に大きな変化がないものと判断して、平均回数は変更しない。
【0064】
これにより、描画速度が高い場合には平均回数を減らすため、描画の追随性を確保することができ、このとき、平均回数を減らすことで、描画の滑らかさが低下するおそれがあるが、描画速度が高い場合には各回のタッチ位置が離れているため、描画の滑らかさは問題とならない。一方、描画速度が低い場合には平均回数を増やすため、描画の滑らかさを確保することができ、このとき、平均回数を増やすことで、描画の追随性が低下するが、描画速度が低いため、描画の追随性は問題とならない。
【0065】
図5〜図8に示した例では、低速しきい値が20mmに、高速しきい値が30mmにそれぞれ設定されている。この低速しきい値および高速しきい値は、特に限定されるものではなく、タッチパネル装置1の仕様に応じて最適な値に設定される。
【0066】
また、図5〜図8に示した例では、描画速度が高速側に変化した場合の平均回数の変更幅nが3回に設定されている。この変更幅nは、特に限定されるものではなく、タッチパネル装置1の仕様に応じて最適な値に設定される。
【0067】
一方、描画速度が低速側に変化した場合の平均回数の変更幅mは1回に設定されている。この変更幅mは、2回以上に設定することは不可能ではないが、その場合、求められた平均位置が逆戻りする状態が発生することがあるため、変更幅mは1回とすることが望ましい。この点については、後に具体例を用いて詳しく説明する。
【0068】
このように総移動距離を高速しきい値および低速しきい値と比較して、平均回数を変更する場合には平均回数を所定の変更幅m,nだけ増減するようにすると、平均回数が段階的に増減するため、描画速度が急激に変化する場合でも、平均回数が一度に大きく変化することを避けることができる。図5,図6に示す例では、平均回数は13、10、7と段階的に小さくなっている。また、図7,図8に示す例では、平均回数は7、8、9、10、11と段階的に大きくなっている。
【0069】
また、本実施形態では、現在の平均回数に基づく積算回数分だけ移動距離を積算して総移動距離を求めるため、前回の設定で平均回数が変更されると、描画速度に変化がなくても総移動距離が増減するため、描画速度が特に大きく変化しなければ、すぐには平均回数が変更されず、平均回数が頻繁に変化することを避けることができる。
【0070】
すなわち、図5,図6に示したように、描画速度が高速側に変化する場合には、総移動距離が高速しきい値に達すると、平均回数が減り、これに伴って総移動距離が小さくなるため、一旦、総移動距離が高速しきい値より小さくなるが、移動距離が大きな状態が継続しているため、再度、総移動距離が高速しきい値に達して、平均回数が減り、これに伴って総移動距離が小さくなる。その後、積算の範囲(スキャンの度に求められる移動距離の時系列上の範囲)の全体が、描画速度が高い(移動距離が大きな)期間に入ると、総移動距離が高速しきい値より小さい値に落ち着き、平均回数は変更されない。
【0071】
また、図7,図8に示したように、描画速度が低速側に変化する場合には、総移動距離が低速しきい値に達すると、平均回数が増え、これに伴って総移動距離が大きくなるため、一旦、総移動距離が低速しきい値より大きくなるが、移動距離が小さな状態が継続しているため、再度、総移動距離が低速しきい値に達して、平均回数が増え、これに伴って総移動距離が大きくなり、以後、数回に渡って平均回数の変更が繰り返される。その後、積算の範囲の全体が、描画速度が低い(移動距離が小さな)期間に入ると、総移動距離が低速しきい値より大きな値に落ち着き、平均回数は変更されない。
【0072】
このように、描画速度が高速側に変化すると、平均回数が段階的に小さくなり、また、描画速度が低速側に変化すると、平均回数が段階的に大きくなり、その後、描画速度に変化がないと、平均回数が一定の値に落ち着く。
【0073】
また、本実施形態では、平均回数を所定の上限値および下限値の範囲に制限する。すなわち、描画速度が低速側に変化した場合に平均回数を変更幅mだけ増やすことで平均回数が上限値を超える場合には、平均回数が上限値に設定され、一方、描画速度が高速側に変化した場合に平均回数を変更幅nだけ減らすことで平均回数が下限値を下回る場合には、平均回数が下限値に設定される。
【0074】
平均回数の上限値は、描画速度が想定される範囲で最も低くなる場合でも、描画の滑らかさを十分に確保することができる値に設定される。平均回数の下限値は、描画速度が想定される範囲で最も高くなる場合でも、十分な描画の追随性を確保することができる値に設定される。これにより、平均回数を所定の上限値および下限値の範囲に制限しても、描画の追随性および滑らかさを十分に確保することができる。
【0075】
図5〜図8に示した例では、平均回数の上限値が31回に、平均回数の下限値が7回にそれぞれ設定されている。なお、この平均回数の上限値および下限値は、特に限定されるものではなく、タッチパネル装置1の仕様に応じて最適な値に設定される。
【0076】
また、本実施形態では、描画速度が低速側に変化した場合には、新たに設定された平均回数をその回の平均化処理に即反映させず、次回の平均化処理に反映させる、すなわち、次回の平均回数を増やして、今回の平均化処理には現在の平均回数を用いるようにしている。
【0077】
このため、描画速度が低速側に変化した場合には、総移動距離を求める際の積算回数と、タッチ位置を平均化する際の平均回数とが、同じ回で一致する。図7,図8に示す例では、サンプル数が18となるとき、積算回数は現在設定されている平均回数である7回となり、その回の平均化処理の平均回数も7回となっており、次回のサンプル数が19となるときに、平均回数が8回に変更される。
【0078】
一方、描画速度が高速側に変化した場合には、新たに設定された平均回数がその回の平均化処理に即反映される。このため、総移動距離を求める際の積算回数と、タッチ位置を平均化する際の平均回数とは、同じ回で異なるものになる。図5,図6に示す例では、サンプル数が16となるとき、積算回数は現在設定されている平均回数である13回となるが、その回の平均回数は10回となっている。
【0079】
次に、描画速度が低速側に変化した場合の平均回数の変更幅mについて説明する。図9は、図7に示した例による平均回数の変更に伴う平均位置の状況を示す図である。図9(A)は、平均回数の変更幅mを1回に設定した場合を、図9(B)は、平均回数の変更幅mを2回に設定した場合を、それぞれ示す。
【0080】
本実施形態では、フレームごとにタッチ位置が出力されるたびに、そのタッチ位置に基づく線を描画表示するリアルタイム処理を行っているが、ここで、平均回数を増やす場合に平均化に過去のデータを使用するようにすると、描画位置が不適切なものになるという問題がある。
【0081】
すなわち、リアルタイム処理では、スキャンの度にサンプル数が1しか増えないため、描画速度が低速側に変化した場合の平均回数の変更幅mを2回以上にすると、平均化の範囲(スキャンの度に求められるタッチ位置の時系列上の範囲)を古い方に広げることになるため、平均位置が逆戻りする状態が発生することがある。
【0082】
図9(B)に示す例では、サンプル数が18のときに、総移動距離が低速しきい値に到達し、その次のサンプル数が19のときに、平均回数を7回から9回に増やしている。このようにすると、サンプル数が19のときの平均位置が、前回の平均位置と前々回の平均位置との間になり、実際のタッチ位置は一方向に進んでいるにも拘わらず平均位置が逆戻りした状態となる。
【0083】
このように描画速度が低速側に変化した場合の平均回数の変更幅mを2回以上にすると、平均位置が逆戻りする状態が発生することがあるため、平均回数の変更幅mは1回とすることが望ましく、これにより描画位置が不適切なものになることを避けることができる。
【0084】
また、本実施形態では、描画速度が低速側に変化したものと判定された回の平均回数は変更せず、次回の平均回数を増やすようにしているが、これも、前記の平均回数の変更幅mを1回に制限することと同様の理由によるものであり、これにより描画位置が不適切なものになることを避けることができる。
【0085】
図10は、制御部8での処理の手順を示すフロー図である。図11は、図10に示した平均回数算出(ST110)の手順を示すフロー図である。
【0086】
本タッチパネル装置1を手書きモードに設定すると、図10に示すように、まず、制御部8にて、サンプル数および平均回数が初期化される(ST101)。ここでは、サンプル数が0に、平均回数が下限値(7回)に設定される。
【0087】
そして、送信電極3に対して駆動信号を印加しながら受信電極4から出力される信号を処理するスキャンがタッチ面2の全面について実施され(ST102)、制御部8にて、受信部7から出力されるレベル信号に基づいてタッチがあったものと判定されると(ST103でYes)、タッチ位置算出部42にてタッチ位置を算出して、その情報を位置情報保存部45に保存する(ST104)。
【0088】
ついで、サンプル数を1増やし(ST105)、また、次回平均回数を現在設定されている平均回数の値に設定する(ST106)。なお、ここでは、平均回数とは別に次回平均回数を設定しているが、これは、後に詳しく説明するように、描画速度が高速側に変化した場合と、描画速度が低速側に変化した場合とで、平均回数の取り扱いが異なるためである。
【0089】
ついで、サンプル数が平均回数の下限値(7回)以上であるか否かが判定され(ST107)、サンプル数が平均回数の下限値に満たないと(ST107でNo)、平均回数をサンプル数の値に設定する(ST108)。そして、その設定された平均回数にて平均位置を算出する(ST111)。
【0090】
一方、サンプル数が平均回数の下限値以上であると(ST107でYes)、平均回数分の移動距離を積算して総移動距離を求め(ST109)、その総移動距離に基づいて平均回数を算出する(ST110)。そして、その算出された平均回数にて平均位置を算出する(ST111)。
【0091】
このようにして平均位置を算出すると(ST111)、次回平均回数を平均回数の値に設定して(ST112)、次回のスキャン(ST102)に進む。
【0092】
次に、平均回数算出(ST110)の手順について詳しく説明する。
【0093】
ここでは、図11に示すように、まず、総移動距離を低速しきい値(20mm)と比較して描画速度が低速側に変化したか否かを判定する(ST201)。ここで、総移動距離が低速しきい値以下となる場合には(ST201でYes)、次回平均回数を1回(変更幅m)だけ増やす(ST202)。そして、求められた次回平均回数が平均回数の上限値(31回)より大きい場合には(ST203でYes)、次回平均回数を平均回数の上限値に設定する(ST204)。
【0094】
一方、低速判定(ST201)で、総移動距離が低速しきい値を超えている場合には(ST201でNo)、次に、総移動距離を高速しきい値(30mm)と比較して描画速度が高速側に変化したか否かを判定する(ST205)。ここで、総移動距離が高速しきい値以上となる場合には(ST205でYes)、平均回数を3回(変更幅n)だけ減らす(ST206)。そして、求められた平均回数が下限値(7回)より小さい場合には(ST207でYes)、平均回数を下限値に設定する(ST208)。
【0095】
また、高速判定(ST205)で、総移動距離が高速しきい値未満となる場合(ST205でNo)、すなわち、総移動距離が低速しきい値と高速しきい値との間にある場合には、描画速度が変化していないものと判断して、平均回数の増減は行われない。
【0096】
このように、描画速度が高速側に変化した場合には、平均回数を減らしてその回の平均位置算出に即反映するが、描画速度が低速側に変化した場合には、次回の平均回数を増やして、平均位置算出には現在の平均回数を用いる。また、平均回数を変化幅m,nだけ増減することで、平均回数が上限値および下限値の範囲から逸脱する場合には、平均回数が上限値または下限値に設定される。
【0097】
以上のように、本実施形態では、現在の平均回数に基づく積算回数分だけ速度特性値(移動距離)を積算した速度評価値(総移動距離)を求め、この速度評価値を所定のしきい値と比較して、速度評価値がしきい値で規定された適正領域から外れる場合には、平均回数の増減とこれに伴う速度評価値の増減が繰り返され、最終的に平均回数が描画速度に見合った値になると、速度評価値が適正領域内に収まるようになって、平均回数が一定となる。このように本実施形態では、平均回数が描画速度に見合った値になるまで段階的に増減されるため、平均回数が頻繁に変化することを避けることができ、また、描画速度が急激に変化する場合でも平均回数が一度に大きく変化しないようにすることができる。
【0098】
なお、本実施形態では、インタラクティブホワイトボードとして用いられる大型のタッチパネル装置の例を示したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば携帯端末に設けられる小型のタッチパネル装置に適用することも可能である。
【0099】
また、本実施形態では、静電容量方式、特に相互容量方式によるタッチパネル装置について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、タッチ位置を検出する原理が異なる種々の方式によるタッチパネル装置に適用することができる。
【0100】
また、本実施形態では、速度評価値を、現在の平均回数分だけ速度特性値(移動距離)を積算した積算値(総移動距離)としたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、速度特性値を積算する際の積算回数を、平均回数そのものではなく、これに所定の比率を乗じたものや、所定値だけ加算または減算したものとしてもよい。
【0101】
また、本実施形態では、しきい値を高速側と低速側に1つずつ設定したが、高速しきい値を複数設定して、高速の程度を数段階に分けて判定するようにしてもよい。この場合、高速しきい値ごとに平均回数の変更幅を設定し、高速しきい値が大きなものほど、平均回数の変更幅が大きくなるようにする。これにより、描画速度の変化の程度に応じて平均回数を細かく調整することができる。一方、描画速度が低速側に変化する場合の平均回数の変更幅は1とすることが望ましく、この場合、低速しきい値を複数設定することはできない。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明にかかるタッチパネル装置は、平均回数の変更が頻繁に発生せず、さらに描画速度が急激に変化する場合でも、平均回数が一度に大きく変化しないようになる効果を有し、検出したタッチ位置を平均化して出力するタッチパネル装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0103】
1 タッチパネル装置
2 タッチ面
3 送信電極(タッチ検出手段)
4 受信電極(タッチ検出手段)
5 パネル本体
6 送信部
7 受信部
8 制御部
41 主制御部
42 タッチ位置算出部
43 平均回数設定部
44 平均位置算出部
45 位置情報保存部
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出したタッチ位置を平均化して出力するタッチパネル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル装置は、画面上の位置を入力する位置入力デバイスとして広く普及しており、画面上のボタンを選択する操作などの画面操作に用いられる他、ユーザが指示物(ユーザの指やスタイラス)を動かした際の指示物の軌跡に沿って線を描画する手書き入力にも用いられ、この場合、タッチ面にマーカーで直接描画をするのと同様の感覚で線を描画することができることから、ユーザの利便性を高めることができる。
【0003】
このようなタッチパネル装置では、ノイズの影響などで、検出したタッチ位置が不規則に変動する現象、いわゆるジッタが発生する。このジッタは、タッチ位置の検出誤差となり、これが顕著になると、指示物による実際のタッチ位置から大きくずれた座標値が出力される。
【0004】
そこで、このジッタによる問題を解消するため、タッチ位置を平均化して出力する技術が知られている(特許文献1参照)。ここでは、入力操作がトレースやポインティングであれば平均回数、すなわちタッチ位置を平均化する際のデータ数を増やし、入力操作がグラフィックであれば平均回数を減らすようにしている。また、座標指示器がカーソルであれば平均回数を増やし、座標指示器がスタイラスペンであれば平均回数を減らすようにしている。
【0005】
また、ジッタは、特に手書き入力で、描画速度、すなわちタッチ面上で指示物を動かす速度が低い場合に問題となり、滑らかな線を描画することができなくなる。この問題は、平均回数を増やすことで解決することができるが、単純に平均回数を増やすと、描画速度が高い場合に、指示物の動きにあまり遅れずに線を表示させる描画の追随性が低下して、ユーザの操作感が悪化する。
【0006】
そこで、この描画の追随性の問題を解消するため、描画速度が高い場合には平均回数(平均化の母数)を減らし、描画速度が低い場合には平均回数を増やす技術が知られている(特許文献2参照)。ここでは、描画速度(単位時間当りにタッチ位置が進む移動距離)をしきい値(基準値)と比較して、しきい値に対する描画速度の大小に応じて平均回数を切り替えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−214708号公報
【特許文献2】特開平6−175771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
さて、前記特許文献1に開示された従来の技術は、入力操作の形態や座標指示器の種類に応じて平均回数を変更するようにしたものであり、手書き入力において描画速度が途中で変化する場合の問題は解決することができない。
【0009】
一方、前記特許文献2に開示された従来の技術では、手書き入力において、描画速度が変化するのに応じて平均回数を変更することから、描画速度が途中で変化する場合に有効であり、描画の追随性と滑らかさの両立を図ることができる。しかしながら、単に描画速度に応じて平均回数を切り替えるだけであるため、描画速度がしきい値の近傍で変化する場合には、平均回数の変更が頻繁に生じるという問題があった。
【0010】
また、単に描画速度に対応した大小2つの平均回数を用いるため、平均回数変更の効果を上げるため、2つの平均回数が大きく異なるように設定すると、平均回数を変更した際の変化量が大きくなるため、表示された線が実際の指示物の軌跡とは大きく異なったものになり、適切な描画が行われないという問題があった。また、平均回数の変化量が大きくなると、描画感覚、すなわち指示物の動きに応じて線が描かれる際にユーザが受ける印象が変化して、ユーザに違和感を与えるという問題があった。
【0011】
一方、前記特許文献2にも開示されているように、しきい値とこれに対応する平均回数を複数用意して、描画速度に応じて平均回数を段階的に設定する構成も考えられるが、このように構成しても、描画速度が急激に変化する場合には、平均回数が一度に大きく変化するため、前記の問題を解決することはできない。
【0012】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、平均回数の変更が頻繁に発生せず、さらに描画速度が急激に変化する場合でも、平均回数が一度に大きく変化しないように構成されたタッチパネル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のタッチパネル装置は、指示物によるタッチ操作が行われるタッチ面およびこのタッチ面上のタッチ操作を検出するタッチ検出手段を有するパネル本体と、前記タッチ面の全面についてスキャンを実施して、前記タッチ面上の位置に応じたタッチ検出信号を取得し、そのタッチ検出信号に基づいてタッチ位置を検出する制御部とを備え、前記制御部は、前記タッチ検出信号に基づいてタッチ位置を算出するタッチ位置算出部と、前記タッチ面上で前記指示物を動かす描画速度に応じて平均回数を設定する平均回数設定部と、この平均回数設定部で設定された平均回数に基づいて前記タッチ位置を平均化する平均位置算出部と、を備え、前記平均回数設定部は、前記タッチ位置の変化状況から各回の速度特性値を求めるとともに、現在までの複数回の前記速度特性値から速度評価値を求めて、その速度評価値を所定のしきい値と比較して、その比較結果に基づいて新たな平均回数を設定する構成とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、現在までの複数回の速度特性値から求められた速度評価値は、描画速度の変化状況を示すものであり、この速度評価値に基づいて平均回数が設定されるため、描画速度の変化状況に応じた適切な平均回数に設定することができる。そして、描画速度が変化してもすぐには速度評価値に大きな変化が現れず、描画速度が高い状態または低い状態が継続することで、速度評価値が徐々に変化して、速度評価値がしきい値に到達したところで平均回数が変化し、描画速度が変化するタイミングに遅れて平均回数が変化するため、平均回数が頻繁に変化することを避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係るタッチパネル装置1を示す全体構成図
【図2】受信電極4および受信部7の概略構成図
【図3】受信信号処理部21の概略構成図
【図4】制御部8の概略構成図
【図5】描画速度が高速側に変化する場合の各パラメータの変化状況の一例を示す図
【図6】図5に示した各パラメータの変化状況をグラフ化して示す図
【図7】描画速度が低速側に変化する場合の各パラメータの変化状況の一例を示す図
【図8】図7に示した各パラメータの変化状況をグラフ化して示す図
【図9】図7に示した例による平均回数の変更に伴う平均位置の状況を示す図
【図10】制御部8での処理の手順を示すフロー図
【図11】図10に示した平均回数算出(ST110)の手順を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0016】
前記課題を解決するためになされた第1の発明は、指示物によるタッチ操作が行われるタッチ面およびこのタッチ面上のタッチ操作を検出するタッチ検出手段を有するパネル本体と、前記タッチ面の全面についてスキャンを実施して、前記タッチ面上の位置に応じたタッチ検出信号を取得し、そのタッチ検出信号に基づいてタッチ位置を検出する制御部とを備え、前記制御部は、前記タッチ検出信号に基づいてタッチ位置を算出するタッチ位置算出部と、前記タッチ面上で前記指示物を動かす描画速度に応じて平均回数を設定する平均回数設定部と、この平均回数設定部で設定された平均回数に基づいて前記タッチ位置を平均化する平均位置算出部と、を備え、前記平均回数設定部は、前記タッチ位置の変化状況から各回の速度特性値を求めるとともに、現在までの複数回の前記速度特性値から速度評価値を求めて、その速度評価値を所定のしきい値と比較して、その比較結果に基づいて新たな平均回数を設定する構成とする。
【0017】
これによると、現在までの複数回の速度特性値から求められた速度評価値は、描画速度の変化状況を示すものであり、この速度評価値に基づいて平均回数が設定されるため、描画速度の変化状況に応じた適切な平均回数に設定することができる。そして、描画速度が変化してもすぐには速度評価値に大きな変化が現れず、描画速度が高い状態または低い状態が継続することで、速度評価値が徐々に変化して、速度評価値がしきい値に到達したところで平均回数が変化し、描画速度が変化するタイミングに遅れて平均回数が変化するため、平均回数が頻繁に変化することを避けることができる。
【0018】
また、第2の発明は、前記速度評価値は、現在の平均回数に基づく積算回数分だけ前記速度特性値を積算した積算値である構成とする。
【0019】
これによると、速度評価値を求めるために速度特性値を積算するだけで済むため、制御部の演算負担を軽減することができる。
【0020】
また、第3の発明は、前記平均回数設定部は、前記速度評価値と前記しきい値との比較結果から、平均回数を変更するか否かを判定し、平均回数を変更する場合には、現在の平均回数を所定の変更幅だけ増減する構成とする。
【0021】
これによると、平均回数が所定の変更幅ずつ段階的に増減するため、描画速度が急激に変化する場合でも、平均回数が一度に大きく変化することを避けることができる。
【0022】
特に、現在の平均回数に基づく積算回数分だけ速度特性値を積算して速度評価値を求める構成では、前回の設定で平均回数が変更されると、描画速度に変化がなくても速度評価値が増減してしきい値から遠ざかるため、すぐには平均回数が変更されず、平均回数が頻繁に変化することを避けることができる。
【0023】
また、第4の発明は、前記平均回数設定部は、平均回数を所定の上限値および下限値の範囲に制限する構成とする。
【0024】
これによると、平均回数を所定の変更幅だけ増減することで、平均回数が上限値および下限値の範囲から逸脱する場合には、平均回数が上限値または下限値に設定される。これにより、平均回数が必要以上に大きくなったり小さくなったりすることを避けることができる。
【0025】
また、第5の発明は、前記平均回数設定部は、前記速度評価値を高速しきい値および低速しきい値と比較して、描画速度が高速側および低速側のいずれに変化したかを判定し、描画速度が高速側に変化した場合には平均回数を減らし、描画速度が低速側に変化した場合には平均回数を増やす構成とする。
【0026】
これによると、描画速度が高速側に変化した場合には平均回数を減らすため、描画の追随性を確保することができ、このとき、平均回数を減らすことで描画の滑らかさが低下するおそれがあるが、描画速度が高い場合には各回のタッチ位置が離れているため、描画の滑らかさは問題とならない。一方、描画速度が低速側に変化した場合には平均回数を増やすため、描画の滑らかさを確保することができ、このとき、平均回数を増やすことで描画の追随性が低下するおそれがあるが、描画速度が低いため、描画の追随性は問題とならない。
【0027】
また、第6の発明は、前記平均回数設定部は、描画速度が低速側に変化したものと判定すると、平均回数を1回だけ増やす構成とする。
【0028】
これによると、描画位置が不適切なものになることを避けることができる。
【0029】
また、第7の発明は、前記平均回数設定部は、描画速度が低速側に変化したものと判定すると、その回の平均回数は変更せず、次回の平均回数を増やす構成とする。
【0030】
これによると、描画位置が不適切なものになることを避けることができる。
【0031】
また、第8の発明は、前記速度特性値は、前回からタッチ位置が移動した移動距離である構成とする。
【0032】
これによると、各回のタッチ位置は一定の時間間隔で求められるため、移動距離を速度とみなすことができる。そして、単にタッチ位置の座標値を減算するだけで、速度特性値として移動距離を求めることができるため、制御部の演算負担を軽減することができる。この場合、速度特性値を積算して速度評価値を求める構成では、移動距離を積算した総移動距離が速度評価値となる。
【0033】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0034】
図1は、本実施形態に係るタッチパネル装置1を示す全体構成図である。このタッチパネル装置1は、指示物(ユーザの指やスタイラス)によるタッチ操作が行われるタッチ面2を有するとともに互いに並走する複数の送信電極(タッチ検出手段)3と互いに並走する複数の受信電極(タッチ検出手段)4とが格子状に配置されたパネル本体5と、送信電極3に対して駆動信号(パルス信号)を印加する送信部6と、送信電極3に印加された駆動信号に応答した受信電極4の応答信号を受信して、送信電極3と受信電極4とが交差する電極交点ごとのレベル信号(タッチ検出信号)を出力する受信部7と、この受信部7から出力されるレベル信号に基づいてタッチ位置を検出すると共に送信部6および受信部7の動作を制御する制御部8とを備えている。
【0035】
このタッチパネル装置1は、大画面の表示装置と組み合わせることで、プレゼンテーションや講義に用いることができるようにした、いわゆるインタラクティブホワイトボードとして用いられ、特にここでは、プロジェクタ装置10と組み合わせて用いられ、パネル本体5のタッチ面2が、プロジェクタ装置10の投影画面を表示するスクリーンとなる。
【0036】
制御部8から出力されるタッチ位置情報は、パソコンなどの外部機器9に入力され、ここで生成した表示画面データがプロジェクタ装置10に出力される。これにより、タッチ面2上に表示された画面上のボタンを選択する操作などの画面操作を行うことができ、また、手書き入力モードとすると、ユーザがタッチ面2上で指示物を動かした際の指示物の軌跡に沿って線が表示され、タッチ面2にマーカーで直接描画をするのと同様の感覚で線を描くことができる。さらに、タッチ操作で描かれた画像を消去するイレーサを用いることもできる。
【0037】
送信電極3は、X方向に延在し、Y方向に所定の間隔をおいて配列されている。受信電極4は、Y方向に延在し、X方向に所定の間隔をおいて配列されている。この送信電極3および受信電極4は同一の配置間隔(例えば20mm)で配置されており、その本数はパネル本体5のアスペクト比に応じて異なり、例えば送信電極3が60本、受信電極4が96本配置される。
【0038】
送信電極3と受信電極4とは、絶縁層を挟んで重なり合う態様で交差しており、この送信電極3と受信電極4とが交差する電極交点にはコンデンサが形成され、ユーザが指示物でタッチ操作を行う際に、指示物がタッチ面2に接近あるいは接触すると、これに応じて電極交点の静電容量が実質的に減少することで、タッチ操作の有無を検出することができる。
【0039】
ここでは、相互容量方式が採用されており、送信電極3に駆動信号を印加すると、これに応答して受信電極4に充放電電流が流れ、この充放電電流が応答信号として受信電極4から出力され、このとき、ユーザのタッチ操作に応じて電極交点の静電容量が変化すると、受信電極4の応答信号が変化し、この変化量に基づいてタッチ位置が算出される。この相互容量方式では、受信部7で応答信号を信号処理して得られるレベル信号が、送信電極3と受信電極4とによる電極交点ごとに出力されるため、同時に複数のタッチ位置を検出する、いわゆるマルチタッチ(多点検出)が可能である。
【0040】
送信部6および受信部7は、制御部8から出力される同期信号に応じて動作し、送信部6において1本の送信電極3に駆動信号を印加する間に、受信部7において受信電極4を1本ずつ選択して受信電極4からの応答信号を順次処理し、この1ライン分のスキャンを全ての送信電極3について順次繰り返すことで、タッチ面2の全面に渡る1フレーム分のスキャンが行われ、これにより1フレーム分のレベル信号、すなわち全ての電極交点ごとのレベル信号を取得することができる。この1フレーム分のスキャンに要する時間(フレーム周期)は例えば10msとする。
【0041】
制御部8は、受信部7から出力される電極交点ごとのレベル信号から所定の演算処理によってタッチ位置(タッチ領域の中心座標)を求める。このタッチ位置の演算では、X方向(受信電極4の配列方向)とY方向(送信電極3の配列方向)とでそれぞれ隣接する複数(例えば4×4)の電極交点ごとのレベル信号から所要の補間法(例えば重心法)を用いてタッチ位置を求める。これにより、送信電極3及び受信電極4の配置ピッチ(例えば20mm)より高い分解能(例えば1mm以下)でタッチ位置を検出することができる。
【0042】
また、制御部8では、タッチ面2の全面に渡って電極交点ごとのレベル信号の受信が終了する1フレーム周期ごとにタッチ位置を求める処理が行われ、タッチ位置情報がフレーム単位で外部機器9に出力される。外部機器9では、時間的に連続する複数のフレームのタッチ位置情報に基づいて、各タッチ位置を時系列に連結する表示画面データを生成して、プロジェクタ装置10に出力する。なお、マルチタッチの場合には、複数の指示物によるタッチ位置を含むタッチ位置情報がフレーム単位で出力される。
【0043】
図2は、受信電極4および受信部7の概略構成図である。各受信電極4には、受信電極4の応答信号の受信部7への入力を断続するスイッチング素子SWが接続されている。受信部7は、スイッチング素子SWを介して受信電極4から入力される応答信号に対して所要の信号処理を行う受信信号処理部21を備えている。各スイッチング素子SWは制御部8からの駆動信号に応じて個別にオン/オフ制御される。
【0044】
受信電極4およびスイッチング素子SWは、所定数(例えば24本)ごとにグループ化され、各グループに属するスイッチング素子SWの互いに対応するもの同士が並行してオン/オフ制御される。また、各グループごとに受信信号処理部21が設けられている。各グループではスイッチング素子SWが1つずつ順にオンとなるように制御され、残りのスイッチング素子SWはオフに制御されており、スイッチング素子SWをオンとすることで選択された1本の受信電極4の応答信号が受信信号処理部21に入力される。
【0045】
このように、スイッチング素子SWのスイッチング動作が複数のグループ間で並行して行われるため、全ての受信電極4の応答信号を受信するのに要する時間を短縮することができる。また、受信部7での応答信号の処理をグループごとに分割して行うことができるため、ハードウエア構成の大型化を抑えることができる。
【0046】
図3は、受信信号処理部21の概略構成図である。この受信信号処理部21は、IV変換部31と、バンドパスフィルタ32と、絶対値検出部33と、積分部34と、サンプルホールド部35と、AD変換部36とを備えている。
【0047】
IV変換部31では、スイッチング素子SWを介して入力される受信電極4の応答信号(充放電電流信号)が電圧信号に変換される。バンドパスフィルタ32では、IV変換部31の出力信号に対して、送信電極3に印加される駆動信号の周波数以外の周波数成分を有する信号を除去する処理が行われる。絶対値検出部(整流部)33では、バンドパスフィルタ32の出力信号に対して全波整流が行われる。積分部34では、絶対値検出部33の出力信号を時間軸方向に積分する処理が行われる。サンプルホールド部35では、積分部34の出力信号を所定のタイミングでサンプリングする処理が行われる。AD変換部36では、サンプルホールド部35の出力信号をAD変換してレベル信号(ディジタル信号)を出力する。
【0048】
図4は、制御部8の概略構成図である。制御部8は、前記のように、タッチ面2の全面についてスキャンを実施して、タッチ面2上の位置(ここでは電極交点の位置)に応じたレベル信号(タッチ検出信号)を取得し、そのレベル信号に基づいてタッチ位置を検出するものであり、その主制御部41は、タッチ位置算出部42と、平均回数設定部43と、平均位置算出部44と、を備えている。
【0049】
タッチ位置算出部42は、受信部7から出力されるレベル信号に基づいてタッチ位置を算出する。平均回数設定部43は、描画速度、すなわちユーザが指示物を動かす速度に基づいて、平均回数、すなわち平均位置算出部44でタッチ位置を平均化する際のデータ数を設定する。平均位置算出部44は、平均回数設定部43で設定された平均回数に基づいて、タッチ位置算出部42で求めたタッチ位置を平均化して平均位置を求める。この平均回数設定部43および平均位置算出部44の各処理は手書き入力モードで実行される。
【0050】
タッチ位置算出部42で求めたタッチ位置は位置情報保存部45に保存され、この位置情報保存部45を参照して、平均回数設定部43および平均位置算出部44の各処理が行われる。
【0051】
なお、主制御部41のタッチ位置算出部42、平均回数設定部43および平均位置算出部44は、CPUで所定のプログラムを実行することで実現される。位置情報保存部45はRAMで実現される。位置情報保存部45は、後に詳しく説明するが、少なくとも平均回数の上限値(例えば31)に対応するデータ量を保存可能なものとする。
【0052】
図5は、描画速度が高速側に変化する場合の各パラメータの変化状況の一例を示す図である。図6は、図5に示した各パラメータの変化状況をグラフ化して示す図である。図7描画速度が低速側に変化する場合の各パラメータの変化状況の一例を示す図である。図8は、図7に示した各パラメータの変化状況をグラフ化して示す図である。ここで、サンプル数は、位置情報保存部45に保存された有効なタッチ位置のデータ数であり、スキャン回数と一致する。
【0053】
以下、図5〜図8に示した具体例を適宜に参照しながら、図4に示した平均回数設定部43で行われる処理について詳しく説明する。
【0054】
平均回数設定部43では、タッチ位置の変化状況から各回の速度特性値を求めるとともに、現在までの複数回の速度特性値から速度評価値を求めて、その速度評価値を所定のしきい値と比較して、その比較結果に基づいて新たな平均回数を設定する。
【0055】
特に、本実施形態では、速度特性値を、前回からタッチ位置が移動した移動距離とする。タッチ位置は1回のスキャンの度に求められ、各回のタッチ位置の時間間隔は、フレーム周期に対応した一定値となるため、前回のタッチ位置と今回のタッチ位置との2点間の距離である移動距離は描画速度とみなすことができる。このように速度特性値を移動距離とすると、単にタッチ位置の座標値を減算するだけで、速度特性値として移動距離を求めることができるため、制御部8の演算負担を軽減することができる。
【0056】
また、本実施形態では、速度評価値を、現在の平均回数に基づく積算回数分だけ移動距離(速度特性値)を積算した積算値、すなわち積算回数分だけ過去に遡った回から今回までの移動距離を積算した積算値である総移動距離とする。このように速度評価値を、移動距離(速度特性値)を積算した総移動距離とすると、速度評価値として総移動距離を求めるために移動距離を積算するだけで済むため、制御部8の演算負担を軽減することができる。
【0057】
このように現在までの複数回の移動距離を積算した総移動距離は、積算期間における描画速度の変化状況を示すものであり、この総移動距離に基づいて平均回数が設定されるため、描画速度の変化状況に応じた適切な平均回数に設定することができる。
【0058】
特に、総移動距離は、描画速度が変化してもすぐには大きく変化せず、描画速度が高い状態または低い状態が継続することで徐々に変化する。このため、描画速度が変化するタイミングに遅れて平均回数が変化するようになり、描画速度が一時的に変化して元に戻るような場合には平均回数が変化せず、平均回数が頻繁に変化することを避けることができる。
【0059】
図5,図6に示す例では、サンプル数が15となるときに移動距離が2mmから4mmに変化するが、この移動距離が変化するタイミングから1回遅れてサンプル数が16となるときに平均回数が13回から10回に変更される。また、図7,図8に示す例では、サンプル数が15となるときに移動距離が4mmから2mmに変化するが、この移動距離が変化するタイミングから4回遅れてサンプル数が19となるときに平均回数が7回から8回に変更される。
【0060】
なお、サンプル数が平均回数(積算回数)に達するまでは、便宜的にサンプル数を平均回数として平均化が行われる。図5,図6に示す例では、当初の平均回数の13回に達するまでは、サンプル数が増えるのに応じて平均回数が増える。また、図7,図8に示す例では、当初の平均回数の7回に達するまでは、サンプル数が増えるのに応じて平均回数が増える。
【0061】
また、本実施形態では、総移動距離(速度評価値)としきい値との比較結果から、平均回数を変更するか否かを判定し、平均回数を変更する場合には、現在の平均回数を所定の変更幅だけ増減する。
【0062】
特に、本実施形態では、総移動距離(速度評価値)を高速しきい値および低速しきい値と比較して、描画速度が高速側および低速側のいずれに変化したかを判定し、描画速度が高速側に変化した場合には平均回数を減らし、描画速度が低速側に変化した場合には平均回数を増やす。
【0063】
すなわち、総移動距離が高速しきい値より大きくなると、描画速度が高速側に変化したものと判定して、平均回数を所定の変更幅nだけ減らし、一方、総移動距離が低速しきい値より小さくなると、描画速度が低速側に変化したものと判定して、平均回数を所定の変更幅mだけ増やす。総移動距離が高速しきい値と低速しきい値との間にある場合には、描画速度に大きな変化がないものと判断して、平均回数は変更しない。
【0064】
これにより、描画速度が高い場合には平均回数を減らすため、描画の追随性を確保することができ、このとき、平均回数を減らすことで、描画の滑らかさが低下するおそれがあるが、描画速度が高い場合には各回のタッチ位置が離れているため、描画の滑らかさは問題とならない。一方、描画速度が低い場合には平均回数を増やすため、描画の滑らかさを確保することができ、このとき、平均回数を増やすことで、描画の追随性が低下するが、描画速度が低いため、描画の追随性は問題とならない。
【0065】
図5〜図8に示した例では、低速しきい値が20mmに、高速しきい値が30mmにそれぞれ設定されている。この低速しきい値および高速しきい値は、特に限定されるものではなく、タッチパネル装置1の仕様に応じて最適な値に設定される。
【0066】
また、図5〜図8に示した例では、描画速度が高速側に変化した場合の平均回数の変更幅nが3回に設定されている。この変更幅nは、特に限定されるものではなく、タッチパネル装置1の仕様に応じて最適な値に設定される。
【0067】
一方、描画速度が低速側に変化した場合の平均回数の変更幅mは1回に設定されている。この変更幅mは、2回以上に設定することは不可能ではないが、その場合、求められた平均位置が逆戻りする状態が発生することがあるため、変更幅mは1回とすることが望ましい。この点については、後に具体例を用いて詳しく説明する。
【0068】
このように総移動距離を高速しきい値および低速しきい値と比較して、平均回数を変更する場合には平均回数を所定の変更幅m,nだけ増減するようにすると、平均回数が段階的に増減するため、描画速度が急激に変化する場合でも、平均回数が一度に大きく変化することを避けることができる。図5,図6に示す例では、平均回数は13、10、7と段階的に小さくなっている。また、図7,図8に示す例では、平均回数は7、8、9、10、11と段階的に大きくなっている。
【0069】
また、本実施形態では、現在の平均回数に基づく積算回数分だけ移動距離を積算して総移動距離を求めるため、前回の設定で平均回数が変更されると、描画速度に変化がなくても総移動距離が増減するため、描画速度が特に大きく変化しなければ、すぐには平均回数が変更されず、平均回数が頻繁に変化することを避けることができる。
【0070】
すなわち、図5,図6に示したように、描画速度が高速側に変化する場合には、総移動距離が高速しきい値に達すると、平均回数が減り、これに伴って総移動距離が小さくなるため、一旦、総移動距離が高速しきい値より小さくなるが、移動距離が大きな状態が継続しているため、再度、総移動距離が高速しきい値に達して、平均回数が減り、これに伴って総移動距離が小さくなる。その後、積算の範囲(スキャンの度に求められる移動距離の時系列上の範囲)の全体が、描画速度が高い(移動距離が大きな)期間に入ると、総移動距離が高速しきい値より小さい値に落ち着き、平均回数は変更されない。
【0071】
また、図7,図8に示したように、描画速度が低速側に変化する場合には、総移動距離が低速しきい値に達すると、平均回数が増え、これに伴って総移動距離が大きくなるため、一旦、総移動距離が低速しきい値より大きくなるが、移動距離が小さな状態が継続しているため、再度、総移動距離が低速しきい値に達して、平均回数が増え、これに伴って総移動距離が大きくなり、以後、数回に渡って平均回数の変更が繰り返される。その後、積算の範囲の全体が、描画速度が低い(移動距離が小さな)期間に入ると、総移動距離が低速しきい値より大きな値に落ち着き、平均回数は変更されない。
【0072】
このように、描画速度が高速側に変化すると、平均回数が段階的に小さくなり、また、描画速度が低速側に変化すると、平均回数が段階的に大きくなり、その後、描画速度に変化がないと、平均回数が一定の値に落ち着く。
【0073】
また、本実施形態では、平均回数を所定の上限値および下限値の範囲に制限する。すなわち、描画速度が低速側に変化した場合に平均回数を変更幅mだけ増やすことで平均回数が上限値を超える場合には、平均回数が上限値に設定され、一方、描画速度が高速側に変化した場合に平均回数を変更幅nだけ減らすことで平均回数が下限値を下回る場合には、平均回数が下限値に設定される。
【0074】
平均回数の上限値は、描画速度が想定される範囲で最も低くなる場合でも、描画の滑らかさを十分に確保することができる値に設定される。平均回数の下限値は、描画速度が想定される範囲で最も高くなる場合でも、十分な描画の追随性を確保することができる値に設定される。これにより、平均回数を所定の上限値および下限値の範囲に制限しても、描画の追随性および滑らかさを十分に確保することができる。
【0075】
図5〜図8に示した例では、平均回数の上限値が31回に、平均回数の下限値が7回にそれぞれ設定されている。なお、この平均回数の上限値および下限値は、特に限定されるものではなく、タッチパネル装置1の仕様に応じて最適な値に設定される。
【0076】
また、本実施形態では、描画速度が低速側に変化した場合には、新たに設定された平均回数をその回の平均化処理に即反映させず、次回の平均化処理に反映させる、すなわち、次回の平均回数を増やして、今回の平均化処理には現在の平均回数を用いるようにしている。
【0077】
このため、描画速度が低速側に変化した場合には、総移動距離を求める際の積算回数と、タッチ位置を平均化する際の平均回数とが、同じ回で一致する。図7,図8に示す例では、サンプル数が18となるとき、積算回数は現在設定されている平均回数である7回となり、その回の平均化処理の平均回数も7回となっており、次回のサンプル数が19となるときに、平均回数が8回に変更される。
【0078】
一方、描画速度が高速側に変化した場合には、新たに設定された平均回数がその回の平均化処理に即反映される。このため、総移動距離を求める際の積算回数と、タッチ位置を平均化する際の平均回数とは、同じ回で異なるものになる。図5,図6に示す例では、サンプル数が16となるとき、積算回数は現在設定されている平均回数である13回となるが、その回の平均回数は10回となっている。
【0079】
次に、描画速度が低速側に変化した場合の平均回数の変更幅mについて説明する。図9は、図7に示した例による平均回数の変更に伴う平均位置の状況を示す図である。図9(A)は、平均回数の変更幅mを1回に設定した場合を、図9(B)は、平均回数の変更幅mを2回に設定した場合を、それぞれ示す。
【0080】
本実施形態では、フレームごとにタッチ位置が出力されるたびに、そのタッチ位置に基づく線を描画表示するリアルタイム処理を行っているが、ここで、平均回数を増やす場合に平均化に過去のデータを使用するようにすると、描画位置が不適切なものになるという問題がある。
【0081】
すなわち、リアルタイム処理では、スキャンの度にサンプル数が1しか増えないため、描画速度が低速側に変化した場合の平均回数の変更幅mを2回以上にすると、平均化の範囲(スキャンの度に求められるタッチ位置の時系列上の範囲)を古い方に広げることになるため、平均位置が逆戻りする状態が発生することがある。
【0082】
図9(B)に示す例では、サンプル数が18のときに、総移動距離が低速しきい値に到達し、その次のサンプル数が19のときに、平均回数を7回から9回に増やしている。このようにすると、サンプル数が19のときの平均位置が、前回の平均位置と前々回の平均位置との間になり、実際のタッチ位置は一方向に進んでいるにも拘わらず平均位置が逆戻りした状態となる。
【0083】
このように描画速度が低速側に変化した場合の平均回数の変更幅mを2回以上にすると、平均位置が逆戻りする状態が発生することがあるため、平均回数の変更幅mは1回とすることが望ましく、これにより描画位置が不適切なものになることを避けることができる。
【0084】
また、本実施形態では、描画速度が低速側に変化したものと判定された回の平均回数は変更せず、次回の平均回数を増やすようにしているが、これも、前記の平均回数の変更幅mを1回に制限することと同様の理由によるものであり、これにより描画位置が不適切なものになることを避けることができる。
【0085】
図10は、制御部8での処理の手順を示すフロー図である。図11は、図10に示した平均回数算出(ST110)の手順を示すフロー図である。
【0086】
本タッチパネル装置1を手書きモードに設定すると、図10に示すように、まず、制御部8にて、サンプル数および平均回数が初期化される(ST101)。ここでは、サンプル数が0に、平均回数が下限値(7回)に設定される。
【0087】
そして、送信電極3に対して駆動信号を印加しながら受信電極4から出力される信号を処理するスキャンがタッチ面2の全面について実施され(ST102)、制御部8にて、受信部7から出力されるレベル信号に基づいてタッチがあったものと判定されると(ST103でYes)、タッチ位置算出部42にてタッチ位置を算出して、その情報を位置情報保存部45に保存する(ST104)。
【0088】
ついで、サンプル数を1増やし(ST105)、また、次回平均回数を現在設定されている平均回数の値に設定する(ST106)。なお、ここでは、平均回数とは別に次回平均回数を設定しているが、これは、後に詳しく説明するように、描画速度が高速側に変化した場合と、描画速度が低速側に変化した場合とで、平均回数の取り扱いが異なるためである。
【0089】
ついで、サンプル数が平均回数の下限値(7回)以上であるか否かが判定され(ST107)、サンプル数が平均回数の下限値に満たないと(ST107でNo)、平均回数をサンプル数の値に設定する(ST108)。そして、その設定された平均回数にて平均位置を算出する(ST111)。
【0090】
一方、サンプル数が平均回数の下限値以上であると(ST107でYes)、平均回数分の移動距離を積算して総移動距離を求め(ST109)、その総移動距離に基づいて平均回数を算出する(ST110)。そして、その算出された平均回数にて平均位置を算出する(ST111)。
【0091】
このようにして平均位置を算出すると(ST111)、次回平均回数を平均回数の値に設定して(ST112)、次回のスキャン(ST102)に進む。
【0092】
次に、平均回数算出(ST110)の手順について詳しく説明する。
【0093】
ここでは、図11に示すように、まず、総移動距離を低速しきい値(20mm)と比較して描画速度が低速側に変化したか否かを判定する(ST201)。ここで、総移動距離が低速しきい値以下となる場合には(ST201でYes)、次回平均回数を1回(変更幅m)だけ増やす(ST202)。そして、求められた次回平均回数が平均回数の上限値(31回)より大きい場合には(ST203でYes)、次回平均回数を平均回数の上限値に設定する(ST204)。
【0094】
一方、低速判定(ST201)で、総移動距離が低速しきい値を超えている場合には(ST201でNo)、次に、総移動距離を高速しきい値(30mm)と比較して描画速度が高速側に変化したか否かを判定する(ST205)。ここで、総移動距離が高速しきい値以上となる場合には(ST205でYes)、平均回数を3回(変更幅n)だけ減らす(ST206)。そして、求められた平均回数が下限値(7回)より小さい場合には(ST207でYes)、平均回数を下限値に設定する(ST208)。
【0095】
また、高速判定(ST205)で、総移動距離が高速しきい値未満となる場合(ST205でNo)、すなわち、総移動距離が低速しきい値と高速しきい値との間にある場合には、描画速度が変化していないものと判断して、平均回数の増減は行われない。
【0096】
このように、描画速度が高速側に変化した場合には、平均回数を減らしてその回の平均位置算出に即反映するが、描画速度が低速側に変化した場合には、次回の平均回数を増やして、平均位置算出には現在の平均回数を用いる。また、平均回数を変化幅m,nだけ増減することで、平均回数が上限値および下限値の範囲から逸脱する場合には、平均回数が上限値または下限値に設定される。
【0097】
以上のように、本実施形態では、現在の平均回数に基づく積算回数分だけ速度特性値(移動距離)を積算した速度評価値(総移動距離)を求め、この速度評価値を所定のしきい値と比較して、速度評価値がしきい値で規定された適正領域から外れる場合には、平均回数の増減とこれに伴う速度評価値の増減が繰り返され、最終的に平均回数が描画速度に見合った値になると、速度評価値が適正領域内に収まるようになって、平均回数が一定となる。このように本実施形態では、平均回数が描画速度に見合った値になるまで段階的に増減されるため、平均回数が頻繁に変化することを避けることができ、また、描画速度が急激に変化する場合でも平均回数が一度に大きく変化しないようにすることができる。
【0098】
なお、本実施形態では、インタラクティブホワイトボードとして用いられる大型のタッチパネル装置の例を示したが、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば携帯端末に設けられる小型のタッチパネル装置に適用することも可能である。
【0099】
また、本実施形態では、静電容量方式、特に相互容量方式によるタッチパネル装置について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、タッチ位置を検出する原理が異なる種々の方式によるタッチパネル装置に適用することができる。
【0100】
また、本実施形態では、速度評価値を、現在の平均回数分だけ速度特性値(移動距離)を積算した積算値(総移動距離)としたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、速度特性値を積算する際の積算回数を、平均回数そのものではなく、これに所定の比率を乗じたものや、所定値だけ加算または減算したものとしてもよい。
【0101】
また、本実施形態では、しきい値を高速側と低速側に1つずつ設定したが、高速しきい値を複数設定して、高速の程度を数段階に分けて判定するようにしてもよい。この場合、高速しきい値ごとに平均回数の変更幅を設定し、高速しきい値が大きなものほど、平均回数の変更幅が大きくなるようにする。これにより、描画速度の変化の程度に応じて平均回数を細かく調整することができる。一方、描画速度が低速側に変化する場合の平均回数の変更幅は1とすることが望ましく、この場合、低速しきい値を複数設定することはできない。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明にかかるタッチパネル装置は、平均回数の変更が頻繁に発生せず、さらに描画速度が急激に変化する場合でも、平均回数が一度に大きく変化しないようになる効果を有し、検出したタッチ位置を平均化して出力するタッチパネル装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0103】
1 タッチパネル装置
2 タッチ面
3 送信電極(タッチ検出手段)
4 受信電極(タッチ検出手段)
5 パネル本体
6 送信部
7 受信部
8 制御部
41 主制御部
42 タッチ位置算出部
43 平均回数設定部
44 平均位置算出部
45 位置情報保存部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
指示物によるタッチ操作が行われるタッチ面およびこのタッチ面上のタッチ操作を検出するタッチ検出手段を有するパネル本体と、
前記タッチ面の全面についてスキャンを実施して、前記タッチ面上の位置に応じたタッチ検出信号を取得し、そのタッチ検出信号に基づいてタッチ位置を検出する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記タッチ検出信号に基づいてタッチ位置を算出するタッチ位置算出部と、
前記タッチ面上で前記指示物を動かす描画速度に応じて平均回数を設定する平均回数設定部と、
この平均回数設定部で設定された平均回数に基づいて前記タッチ位置を平均化する平均位置算出部と、を備え、
前記平均回数設定部は、前記タッチ位置の変化状況から各回の速度特性値を求めるとともに、現在までの複数回の前記速度特性値から速度評価値を求めて、その速度評価値を所定のしきい値と比較して、その比較結果に基づいて新たな平均回数を設定することを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
前記速度評価値は、現在の平均回数に基づく積算回数分だけ前記速度特性値を積算した積算値であることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル装置。
【請求項3】
前記平均回数設定部は、前記速度評価値と前記しきい値との比較結果から、平均回数を変更するか否かを判定し、平均回数を変更する場合には、現在の平均回数を所定の変更幅だけ増減することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタッチパネル装置。
【請求項4】
前記平均回数設定部は、平均回数を所定の上限値および下限値の範囲に制限することを特徴とする請求項3に記載のタッチパネル装置。
【請求項5】
前記平均回数設定部は、前記速度評価値を高速しきい値および低速しきい値と比較して、描画速度が高速側および低速側のいずれに変化したかを判定し、描画速度が高速側に変化した場合には平均回数を減らし、描画速度が低速側に変化した場合には平均回数を増やすことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のタッチパネル装置。
【請求項6】
前記平均回数設定部は、描画速度が低速側に変化したものと判定すると、平均回数を1回だけ増やすことを特徴とする請求項5に記載のタッチパネル装置。
【請求項7】
前記平均回数設定部は、描画速度が低速側に変化したものと判定すると、その回の平均回数は変更せず、次回の平均回数を増やすことを特徴とする請求項5または請求項6に記載のタッチパネル装置。
【請求項8】
前記速度特性値は、前回からタッチ位置が移動した移動距離であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のタッチパネル装置。
【請求項1】
指示物によるタッチ操作が行われるタッチ面およびこのタッチ面上のタッチ操作を検出するタッチ検出手段を有するパネル本体と、
前記タッチ面の全面についてスキャンを実施して、前記タッチ面上の位置に応じたタッチ検出信号を取得し、そのタッチ検出信号に基づいてタッチ位置を検出する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記タッチ検出信号に基づいてタッチ位置を算出するタッチ位置算出部と、
前記タッチ面上で前記指示物を動かす描画速度に応じて平均回数を設定する平均回数設定部と、
この平均回数設定部で設定された平均回数に基づいて前記タッチ位置を平均化する平均位置算出部と、を備え、
前記平均回数設定部は、前記タッチ位置の変化状況から各回の速度特性値を求めるとともに、現在までの複数回の前記速度特性値から速度評価値を求めて、その速度評価値を所定のしきい値と比較して、その比較結果に基づいて新たな平均回数を設定することを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
前記速度評価値は、現在の平均回数に基づく積算回数分だけ前記速度特性値を積算した積算値であることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル装置。
【請求項3】
前記平均回数設定部は、前記速度評価値と前記しきい値との比較結果から、平均回数を変更するか否かを判定し、平均回数を変更する場合には、現在の平均回数を所定の変更幅だけ増減することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタッチパネル装置。
【請求項4】
前記平均回数設定部は、平均回数を所定の上限値および下限値の範囲に制限することを特徴とする請求項3に記載のタッチパネル装置。
【請求項5】
前記平均回数設定部は、前記速度評価値を高速しきい値および低速しきい値と比較して、描画速度が高速側および低速側のいずれに変化したかを判定し、描画速度が高速側に変化した場合には平均回数を減らし、描画速度が低速側に変化した場合には平均回数を増やすことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のタッチパネル装置。
【請求項6】
前記平均回数設定部は、描画速度が低速側に変化したものと判定すると、平均回数を1回だけ増やすことを特徴とする請求項5に記載のタッチパネル装置。
【請求項7】
前記平均回数設定部は、描画速度が低速側に変化したものと判定すると、その回の平均回数は変更せず、次回の平均回数を増やすことを特徴とする請求項5または請求項6に記載のタッチパネル装置。
【請求項8】
前記速度特性値は、前回からタッチ位置が移動した移動距離であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のタッチパネル装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−80361(P2013−80361A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219834(P2011−219834)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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