説明

タマネギの乾燥保存装置

【課題】風通しが良く、一度に大量のタマネギを乾燥保存でき、さらに、雨風が強くとも雨粒がタマネギにかかることなく乾燥保存できるタマネギの乾燥保存装置を提供する。
【解決手段】2以上に連設された支柱壁と、該支柱壁間に横架するように設けられた複数の横架棒と、前記支柱壁間に架設されたシートと、から構成されるタマネギの乾燥保存装置において、該支柱壁の中央頂部に設けられた回動ジョイントと、該回動ジョイントから両側に下り勾配に張り出して設けられ、かつ、跳ね上げるように回動可能なアームと、前記両側のアームによって担持された前記シートと、を備え、前記シートが、前記アームの回動に連動して跳ね上げられ又は下ろされることを特徴とするタマネギの乾燥保存装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫されたタマネギを畑や空き地において、乾燥保存するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タマネギは、大変おいしく、様々な料理に、例えば、肉じゃが、カレー等の煮込み料理、鍋料理、味噌汁、デミグラスソース、トマトソース等に用いられて、食されている。また、タマネギには、ビタミンB1、B2、C、カリウム、抗酸化成分、フラクトオリゴ糖、等が含まれ、滋養強壮、発汗、利尿、殺菌作用、疲労回復、等の効能があるので健康にもよい。
【0003】
また、タマネギは1〜2か月の長期保存ができるが、湿度に弱いので、従来から、日陰で風通しの良い場所に吊るして保存されている。そこで、タマネギを畑で乾燥できる装置が研究開発されており、例えば、湿度の低い季節に雨除けシートをかけることにより簡易テント小屋となり収穫物を保存できる有効な手段が先行技術として開示されている〔参考文献1〕。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−11220公報(〔0016〕、〔図3〕)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術は、畑で簡単にタマネギ等の野菜を乾燥保存できるが、高さが低く一段しか乾燥できないので、乾燥できる数量が限られており、また、タマネギを大量に乾燥させると風通しが悪くなる。また、小さな屋根はあるが、横殴りの雨に対しては雨粒がタマネギに当たり湿気を抑えることが難しいという不便な点があった。
【0006】
本発明は、これらの問題を解決したものであって、風通しが良く、一度に大量のタマネギを乾燥保存でき、さらに、雨風が強くとも雨粒がタマネギにかかることなく乾燥保存できるタマネギの乾燥保存装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係るタマネギの乾燥保存装置は、2以上に連設された支柱壁と、該支柱壁間に横架するように設けられた複数の横架棒と、前記支柱壁間に架設されたシートと、から構成されるタマネギの乾燥保存装置において、該支柱壁の中央頂部に設けられた回動ジョイントと、該回動ジョイントから両側に下り勾配に張り出して設けられ、かつ、跳ね上げるように回動可能なアームと、前記両側のアームによって担持された前記シートと、を備え、前記シートが、前記アームの回動に連動して跳ね上げられ又は下ろされることを特徴とする。
【0008】
この構成を採用することにより、本発明に係るタマネギの乾燥保存装置は、横架棒に吊るして、大量にタマネギを乾燥保存することができ、しかも、横架棒が上下左右にそれぞれ複数本架設されているから、大量に保存する場合でも分散して保存できる。また、一箇所にタマネギが密集しないので風通しがよくなり、湿度に弱いタマネギの保存に最適である。また、家の軒先に吊るして乾燥させる場合と違い、簡易な構造で部材も軽量であり、どこにでも設置できるので、タマネギを収穫した後の畑にも設置できる。また、本発明の特徴であるが、アームに固結されているシートが屋根の代わりになるので、晴天時には、シートが日陰を作り、その下にタマネギを保存するので、タマネギが直射日光に曝されることなく好都合であり、また、雨天時には、シートによって、タマネギが保存に悪影響を与える雨に曝されることがない。さらに、晴天時には、アームを上方に跳ね上げることによって、シートを高く上げることができ風通しを良くすることができる。他方、雨天時には、アームを下げることによって、乾燥保存しているタマネギにシートを近付けることができるので、雨粒がかかりにくくなる。
【0009】
請求項2に係るタマネギの乾燥保存装置は、請求項1に記載のタマネギの乾燥保存装置において、前記アームが、内外筒二重に構成され、かつ、前記外筒が軸方向に伸長可能であると共に前記シートの端部が該外筒に固定されたことを特徴とする。
【0010】
この構成を採用することにより、大雨の時には、アームを下げ、さらにアームを伸ばすことにより、シートの端がアームの外側端部に縛られ結ばれているので、シートはアームと共に伸びるから、シートの面積を大きく張り出すことができ、タマネギに雨がかかるのを防ぐことができる。また、よく晴れているときは、アームを短く縮めてシートの張り出しを少なくし、風通しを良くすることができる。また、太陽の位置によって直射日光が当たる場合には、当たる側のアームだけを伸ばして直射日光を遮ることもできる。したがって、天候の状態に合わせて、タマネギの保存状況が最適となるように、アーム及びシートの張り出し状況を適宜調節できることになる。
【0011】
請求項3に係るタマネギの乾燥保存装置は、請求項1又は2のタマネギの乾燥保存装置において、前記アームが、水平面に対し凸状の円弧形状をしたことを特徴とする。
【0012】
この構成を採用することにより、アームを下げた場合に、乾燥保存しているタマネギを覆うようにでき、アームの回動に連動するシートもタマネギを包んで覆うようにできるので、雨天時において、乾燥保存しているタマネギに雨粒がかかりにくく、シートからの排水も良好になる。
【0013】
請求項4に係るタマネギの乾燥保存装置は、請求項1から3のいずれかのタマネギの乾燥保存装置において、前記横架棒に、複数の突起物を設けたことをを特徴とする。
【0014】
この構成を採用することにより、タマネギを乾燥保存するときに突起物にタマネギを吊るす紐等を素早く確実に引っかけることができるので、タマネギを吊るす作業が簡易になり、また、強風が吹いても乾燥保存されているタマネギは移動することなく、また、落下することもなない。さらに、突起物を適当に配置することによって、タマネギが密集せず、風通しを良くして、最適な状態でタマネギを乾燥保存できる。これにより、シートの張り出し、跳ね上げ量を調整することと相まって、タマネギを最適な状態で乾燥できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る乾燥保存装置によれば、一度に、大量で、また、天候に合わせて最適な環境でタマネギを乾燥保存することができる。したがって、タマネギの味覚、外観等の品質を高次元で維持できるので、タマネギの商品価値を落とさないようにすることができる。
【0016】
また、本発明のタマネギの乾燥保存装置は、家の軒先までタマネギを運搬せずに、畑等の農圃でタマネギを乾燥保存できるので、運搬費用を節約できる。また、軽量で簡易な装置なので、どこにでも簡単に設置ができて、撤去作業も簡単で、そのうえ不要時には倉庫等に簡単に保管できて、しかも嵩張らない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施するための形態に係るタマネギの乾燥保存装置であって、模式的全体斜視図である。
【図2】本発明の実施するための形態に係るタマネギの乾燥保存装置であって、アームを跳ね上げた場合の模式的全体斜視図である。
【図3】本発明の実施するための形態に係るタマネギの乾燥保存装置であって、アームを下ろし、かつ、アームを伸ばしている場合の模式的全体斜視図である。
【図4】本発明の実施するための形態に係るタマネギの乾燥保存装置の回動ジョイントと、アームと、シートを表した図であって、(a)は、アームを下げかつ外筒を縮めた状態の模式的側面図であり、(b)は、アームを跳ね上げかつ外筒を縮めた状態の模式的側面図であり、(c)は、アームを下げかつ外筒を伸ばした状態の模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るタマネギの乾燥保存装置を実施するための形態について図1、2、3、4を用いて説明する。図1は、本発明の実施するための形態に係るタマネギの乾燥保存装置であって、模式的全体斜視図であり、図2は、本発明の実施するための形態に係るタマネギの乾燥保存装置であって、アームを跳ね上げた場合の模式的全体斜視図であり、図3は、本発明の実施するための形態に係るタマネギの乾燥保存装置であって、アームを下ろし、かつ、アームを伸ばしている場合の模式的全体斜視図である。図4は、本発明の実施するための形態に係るタマネギの乾燥保存装置の回動ジョイントと、アームと、シートを表した図であって、(a)は、アームを下げかつ外筒を縮めた状態の模式的側面図であり、(b)は、アームを跳ね上げかつ外筒を縮めた状態の模式的側面図であり、(c)は、アームを下げかつ外筒を伸ばした状態の模式的側面図である。
【0019】
図1に示すように、本発明に係るタマネギの乾燥保存装置1は、収穫済みの農圃やその近くの空地等に、全高1〜2mの柱体2−1を一列に立設した支柱壁2を、2個又はそれ以上、2〜5mの距離で連設しており、支柱壁2と支柱壁2との間は、複数の横架棒3で連結していて、その上方にシート4が屋根として架設されている。タマネギ10は、横架棒3の突起物3−1に引っ掛けて吊下げ、乾燥保存する。タマネギの乾燥保存装置1は、シート4が屋根となっており、湿気に弱いタマネギ10に雨粒がかかるのを防ぐとともに、晴天時には、直射日光がタマネギ10に当たらないようにしている。また、横架棒3は、複数設けられているので、一度に大量にタマネギ10を乾燥保存することができ、また、横架棒3とそれに設けられた突起物3−1は、それぞれ適当な間隔で設けられているので、風通しが良く保存されるタマネギ10の品質が良好な状態で保たれる。
【0020】
支柱壁2は、支柱壁2を支える土台2−6と、その土台2−6の上面から略一列に立設した複数の柱体2−1と、柱体2−1の中間部に複数設置され、かつ、横架棒3を固定して支持するための横架棒支持具2−2と、柱体2−1群の頭頂部を繋ぎいで柱体2−1を固定させる繋ぎ材2−3と、頂部部材2−3の中央上部に設けられて、かつ、アーム2−5を回動させるための回動ジョイント2−4(例えば、ラチェットなど)と、回動ジョイント2−4から繋ぎ材2−3に沿って、左右に設けられて、かつ、回動ジョイント2−5によって、上方に跳ね上げ又は繋ぎ材2−3に沿うように下ろすことができて回動自在であるアーム2−5と、から構成されている。また、アーム2−5は、図4に示すように、外筒2−5aと内筒2−5bから成り、内筒2−5bが回動ジョイント2−4に連結されて、外筒2−5aは、内筒2−5bより全長が少し短くて伸縮可能であって、伸ばした状態でも縮めた状態でも、その状態を保持できるようになっている。なお、回動ジョイント2−4は、ラチェット式になっており、跳ね上げる場合には段階的に動き、下げる場合には一気に下がるようになっている。
【0021】
横架棒3は、両端を横架棒支持具2−2で固定されていて、支柱壁2間を架設されており、この棒にタマネギを吊るして乾燥保存させる。また、横架棒3には、突起物3−1が複数有しており、タマネギを吊るす場合に、その突起物3−1に引っ掛けることができるので、タマネギを吊るし易い。また、横架棒3は、複数あるので、一度に大量にタマネギを乾燥保存できる。また、横架棒3及び突起物3−1は、適当な間隔で風通しが良いように配置されている。
【0022】
シート4は、横架棒3に吊るされて保存乾燥ているタマネギに雨粒がかかりタマネギが傷んでしまうこと、及び、直射日光にタマネギが曝されて劣化すること、を防ぐものであって、アーム2−5によって下から支えられており、支柱壁2間に架設されている。シート4の大きさは、アーム2−5を最大限延ばした場合に合わせてあり、シート4の角はアーム2−5の外筒2−5aの外側端部に連結されており、アーム2−5の外筒2−5a全体に紐又はクリップ又は鳩目フックにより係止されて固定されている。アーム2−5を縮めた場合には、両方のアーム2−5の外筒2−5a同士の内側部分で余ったシート4が折り畳まれることになり、シートの張り出し幅を調整できる。即ち、シート4は、図4に示すように、アーム2−5の外筒2−5aの伸縮に伴って、張り出されたり、畳まれたりする。また、シート4は、アーム2−5の外筒2−5aに固定されているので、アーム2−5の回動する動きに連動して、シート4も、跳ね上げたり、頂部部材2−3に沿うように下ろしたりすることができる。なお、シート4は、屈折可能な防水性の布地、例えば、合成樹脂製のシートが好適である。また、シーズン毎に張り替えるのであれば、ブルーシートでもよい。
【0023】
柱体2−1や、横架棒3は、丸棒かパイプが好適で、軽量の金属が良いが、丈夫なプラスチック製でも使用できる。市販の規格品を使用すれば、容易に調達できる。横架棒支持具2−2は、大量のタマネギの荷重がかかった横架棒3を固定するので、丈夫な金属製のものが好適である。例えば、柱体2−1や、横架棒3に単管を用いた場合には、直交クランプや自在クランプを用いることができる。繋ぎ材2−3は、柱体2−1を繋ぎとめるので、金属製又はプラスチック製の丸棒又はパイプが良い。アーム2−5は、金属製又はプラスチック製で、外筒2−5aはパイプ形状であり、内筒2−5bはパイプでも丸棒でもよい。土台2−6は、タマネギの乾燥保存装置1の全体の荷重支えることができ、かつ、風等で転倒しないようにするために、重量のある金属製のものか、コンクリート製のものがよい。
【0024】
次に、図2を用いて使用方法を説明する。本発明に係るタマネギの乾燥保存装置1を、晴天時には、図2に示すようにアーム2−5を上方に跳ね上げた状態で固定する。これによって、突起物3−1に引っ掛けて横架棒3に吊るされたタマネギ10は、シート4が庇の働きをするので、直射日光が当たらない。そのうえ、庇となるシート4が、吊るされたタマネギ10から、上方にはなれているので、風通しがよくなる。この場合、横架棒3とその突起物3−1は、風通しを良くするために、適当な間隔で配置する必要がある。したがって、本発明に係るタマネギの乾燥保存装置1を用いれば、乾燥保存されるタマネギ10は、通気性がよく保存されて、高品質に保つことができる。
【0025】
アーム2−5は、ラチェット式となった回動ジョイント2−4によって、太陽の位置に合わせて、適宜自在に跳ね上げ量を変えることができる。また、通常は風通しを良くすためにアーム2−5を縮めた状態で使用するが、太陽の日差しがタマネギ10に直接当たる様であれば、日光が当たる側のアーム2−5を伸ばすことによって、庇となるシート4を広げて日光が直接タマネギ10に当たることを防ぐこともできる。
【0026】
次に、図3を用いて別の使用方法を説明する。本発明に係るタマネギの乾燥保存装置1を、雨天時には、図3に示すようにアーム2−5を繋ぎ材2−3に沿うように下方に下げた状態で、固定する。これによって、横架棒3に吊るされたタマネギ10は、シート4が覆うように被さるので、湿気に弱いタマネギ10が、雨粒に曝されることを防ぎ、タマネギ10の品質を保つことができる。また、通常は、風通しを良くするためにアーム2−5を縮めた状態にしておく。また、風雨が激しい場合には、アーム2−5を伸ばすことで、アーム2−5の外筒2−5aに固定されていて連動して広がるシート4が、より完全な形で、横架棒3に吊るされたタマネギ10を覆うので、風雨が強くともタマネギ10が雨に曝されることがなく、タマネギ10の品質を保つことができる。
【0027】
また、本発明に係るタマネギの乾燥保存装置1は、簡単に組立、解体ができる。そして、それぞれの部品は軽量でコンパクトであるので、どこにでも運搬して簡単に組み立てることができ大変便利である。またシーズンオフには、簡単に解体して、倉庫に片付けても嵩張らない。
【0028】
また、発明に係るタマネギの乾燥保存装置1は、タマネギ10以外の野菜や果物(例えば、柿)を乾燥保存させるのに用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
タマネギだけでなく、野菜や作物を日陰で自然乾燥させて保存する分野に、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1:タマネギの乾燥保存装置
2:支柱壁
2−1:柱体 2−2:横架棒支持具
2−3:繋ぎ材 2−4:回動ジョイント
2−5:アーム
2−5a:外筒 2−5b:内筒
2−6:土台
3:横架棒 3−1:突起物
4:シート
10:タマネギ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上に連設された支柱壁と、該支柱壁間に横架するように設けられた複数の横架棒と、前記支柱壁間に架設されたシートと、から構成されるタマネギの乾燥保存装置において、該支柱壁の中央頂部に設けられた回動ジョイントと、該回動ジョイントから両側に下り勾配に張り出して設けられ、かつ、跳ね上げるように回動可能なアームと、前記両側のアームによって担持された前記シートと、を備え、前記シートが、前記アームの回動に連動して跳ね上げられ又は下ろされることを特徴とするタマネギの乾燥保存装置。
【請求項2】
前記アームが、内外筒二重に構成され、かつ、前記外筒が軸方向に伸長可能であると共に前記シートの端部が該外筒に固定されたことを特徴とする請求項1に記載のタマネギの乾燥保存装置。
【請求項3】
前記アームが、水平面に対し凸状の円弧形状をしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のタマネギの乾燥保存装置。
【請求項4】
前記横架棒に、複数の突起物を設けたことを特徴とする請求項1又は2又は3に記載のタマネギの乾燥保存装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−21983(P2013−21983A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160792(P2011−160792)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(510158200)株式会社 ダイツウ (17)
【Fターム(参考)】