説明

テープカートリッジ

【課題】金属プレートのメッキ量を低減しながら、メッキ処理されていない金属プレートの部分が外部に露出されにくくすることにより、錆の発生を低減する。
【解決手段】ハブ部材12の底板15に金属プレート20が一体化されている。金属プレートの表裏面の少なくとも一方はメッキが施されたメッキ面22,23であり、金属プレートの側面24,25はメッキが施されていない非メッキ部分を含んでいる。金属プレートの側面の非メッキ部分の少なくとも一部が、底板に形成された開口17を介して外部に露出している。カバー部材30が、開口に挿入されて、開口を介して露出した非メッキ部分を覆っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ記録用途に好ましく使用される単リール型のテープカートリッジに関する。特に、金属プレートがインサート成形されたハブ部材を備えたテープカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
単リール型のテープカートリッジは、主にコンピュータシステムのデータバックアップ用途として用いられている。
【0003】
この種のテープカートリッジにおいては、テープカートリッジをドライブ装置に装填したとき、ドライブ装置の駆動ギアとテープカートリッジのリールに形成したギアとを互いに確実に嵌合させるために、リールの中央の底板に固定された円環状の金属プレートをドライブ装置の駆動ギアに設けた磁石で吸着する。
【0004】
前記金属プレートとして、一般にSPCCなどの冷間圧延鋼板をプレス成形により所定形状に打ち抜いた後、防錆を目的としてその外表面全体にニッケルメッキなどのメッキ処理を施したものが用いられる。この金属プレートは、インサート成形によりリールの底板に一体化される。
【0005】
インサート成形時に金型内で金属プレートが位置ズレすると、金型が金属プレートを挟み込み、金型が破損してしまう。これを防止するため、金属プレートを金型内に固定する各種手法が提案されている。例えば、金属プレートに3つの貫通孔が形成されている場合には、当該貫通孔に挿入可能な突起を金型に設ける方法や、金属プレートの中央の円形の開口の端縁に係合する保持ピンを金型に設ける方法(特許文献1参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−4880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
金属プレートはプレス成形後にメッキ処理を行って作製されるため、金属プレートの全面にメッキが施されている。そのため、金属プレートの外表面のうち、その後のインサート成形によって樹脂で覆われる部分もメッキが施される。防錆の観点から考えると、樹脂で覆われる部分は実質的に酸素や水と接触しないため、このような部分にまでメッキを施すのは無駄である。
【0008】
また、プレス成形の後に別工程でメッキ処理を施すことは、金属プレートの製造工程を複雑にし、コスト高となる。
【0009】
そこで、メッキ使用量の削減や加工コストの低減を目的として、表裏面にあらかじめメッキ処理を施した亜鉛メッキ鋼板(SECC、SGCCなど)やニッケルメッキ鋼板などのメッキ鋼板を打ち抜きプレス成形して金属プレートを作製する案が考えられる。
【0010】
この場合、メッキ鋼板をプレス成形した後の切断面(側面)にはメッキ処理が施されていないため、メッキ量は従来の金属プレートに比べて減少する。また、切断面の大半はインサート成形によって樹脂で覆われるため、錆発生の可能性は低い。更に、プレス成形後のメッキ処理が不要になるため、比較的安価に金属プレートを作製することが可能となる。
【0011】
しかしながら、上述したようにインサート成形時に金属プレートを保持ピンを用いて位置決めする場合、金属プレートの側面のうち保持ピンが接する部分は樹脂で覆われない。従って、成形後に金属プレートのメッキが施されていない部分の一部が外部に露出してしまい、この露出した部分から錆が発生する。
【0012】
金属プレートに発生した錆が脱落すると、ドライブ装置内に散乱したり、磁気テープの磁性面に付着してエラーレートが上昇したりする原因となる。
【0013】
更に、金属プレートに錆が著しく発生すると、ドライブ装置の駆動ギアに設けた磁石に金属プレート上の隆起した錆が接触することによって、リールが駆動ギアに傾いた状態で嵌合されてしまう。このため、リールが傾いた状態で回転することにより、テープのエッジがリールのフランジの外周端に接触し、テープのエッジが損傷したり、テープの直進性が悪化したりする懸念がある。
【0014】
本発明は、上記の問題を解決するものであり、金属プレートのメッキ量を低減しながら、メッキ処理されていない金属プレートの部分が外部に露出されにくくすることにより、錆の発生を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のテープカートリッジは、筐体内に、データ記録テープが巻回されるリールが収納されたテープカートリッジである。前記リールは、円筒部と、前記円筒部の下側の開口を閉じる底板と、前記円筒部の外周面の下側から外向きに突出した下フランジとが一体的に成形されたハブ部材、及び、前記下フランジに対向するように前記円筒部に接合された上フランジを備える。磁力吸引用の環状の金属プレートが前記ハブ部材の前記底板に一体化されている。前記金属プレートの表裏面の少なくとも一方はメッキが施されたメッキ面である。前記金属プレートの側面はメッキが施されていない非メッキ部分を含んでいる。前記メッキ面が外部に露出し、且つ、前記側面の前記非メッキ部分の少なくとも一部が、前記底板に形成された開口を介して外部に露出している。カバー部材が、前記開口に挿入されて、前記開口を介して露出した前記非メッキ部分を覆っている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ハブ部材の底板に形成された開口を介して露出した金属プレートの非メッキ部分をカバー部材が覆うので、当該非メッキ部分からの錆の発生を低減することができる。
【0017】
従って、非メッキ部分を有する金属プレートを使用することができるので、金属プレートのメッキ量を低減することができる。また、金属プレートの製造工程を簡単化することができ、そのコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施形態1にかかるテープカートリッジの外観を示した斜視図である。
【図2】図2Aは、本発明の実施形態1にかかるテープカートリッジに収納されるリールの下方から見た斜視図である。図2Bは、当該リールの底面図である。
【図3】図3は、図2Bの3−3線を含む面に沿った、本発明の実施形態1にかかるテープカートリッジに収納されるリールの矢視断面図である。
【図4】図4Aは本発明の実施形態1にかかるテープカートリッジに使用される金属プレートの斜視図、図4Bはその平面図、図4Cは図4Bの4C−4C線を含む面に沿った金属プレートの断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態1にかかるテープカートリッジに使用されるハブ部材の下方から見た斜視図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態1にかかるテープカートリッジに使用されるハブ部材の中央部分の拡大断面図である。
【図7】図7Aは本発明の実施形態1にかかるテープカートリッジに使用されるカバー部材の正面側から見た斜視図、図7Bはその裏面側から見た斜視図、図7Cはその側面図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態1にかかるテープカートリッジに使用される別のハブ部材の底面図である。
【図9】図9は、図8に示したハブ部材の中央部分の拡大断面図である。
【図10】図10Aは本発明の実施形態1にかかるテープカートリッジに使用される別のカバー部材の正面側から見た斜視図、図10Bはその裏面側から見た斜視図、図10Cはその側面図である。
【図11】図11は、本発明の実施形態2にかかるテープカートリッジに使用されるハブ部材の底面図である。
【図12】図12Aは本発明の実施形態2にかかるテープカートリッジに使用されるカバー部材の正面側から見た斜視図、図12Bはその裏面側から見た斜視図、図12Cはその側面図である。
【図13】図13Aは本発明の実施形態3にかかるテープカートリッジに使用される金属プレートの平面図、図13Bは図13Aの13B−13B線を含む面に沿った金属プレートの断面図である。
【図14】図14は、本発明の実施形態3にかかるテープカートリッジに使用されるハブ部材の下方から見た斜視図である。
【図15】図15Aは本発明の実施形態3にかかるテープカートリッジに使用されるカバー部材の正面側から見た斜視図、図15Bはその背面図、図15Cはその側面図である。
【図16】図16は、本発明の実施形態3にかかるテープカートリッジに使用される、カバー部材が装着されたハブ部材の下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上記の本発明のテープカートリッジにおいて、前記金属プレートは、メッキ鋼板を用いて作製されていることが好ましい。この場合、前記メッキは、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、錫のいずれか、もしくはそれらのいずれか主成分とする合金で構成されていることが好ましい。これにより、汎用されているメッキ鋼板を打ち抜いて金属プレートを作製することができるので、金属プレートの製造工程を簡単化することができる、そのコストを低減することができる。
【0020】
前記底板に形成された前記開口が前記底板を貫通する貫通孔であることが好ましい。この場合、前記カバー部材は、前記貫通孔の端縁に係合する係合構造を備えていることが好ましい。これにより、インサート成形時に金属プレートを保持ピンを用いて金型により強固に固定することができる。また、簡単な構造でカバー部材の底板に対する取り付け強度を向上させることができる。
【0021】
以下に、本発明を好適な実施形態を示しながら詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されないことはいうまでもない。以下の説明において参照する各図は、説明の便宜上、本発明の実施形態の構成部材のうち、本発明を説明するために必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。従って、本発明は以下の各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、以下の各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。以下に示す図において、同一の部材には同一の符号をしており、それらについての重複する説明を省略する。
【0022】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかるテープカートリッジ1の外観を示した斜視図である。テープカートリッジ1は、上ハーフ2aと下ハーフ2bとが上下方向に接合された箱状(中空の略直方体形状)の筐体2を備える。筐体2内には、データ記録テープが巻回されるリールが収納されている。
【0023】
図2Aはリール10の下方から見た斜視図、図2Bはリール10の底面図、図3は、図2Bの3−3線を含む面に沿ったリール10の矢視断面図である。リール10は、中央が開口した円板状の上フランジ11と、ハブ部材12との2部品で構成される。ハブ部材12は、中空円筒形状を有する円筒部13と、円筒部13の外周面の下端から外向きに突出する円板状の下フランジ14と、円筒部13の下側の開口を閉じる底板15とを備え、これらが一体に成形されている。底板15の下面には、中央に円形の開口27が形成された円環状の金属プレート20が取り付けられている。金属プレート20は、その下面を露出させながら、インサート成形によりハブ部材12と一体化されている。金属プレート20の中央の開口27内の領域に、カバー部材30が底板15に装着されている。上フランジ11が、下フランジ14に対向するように円筒部13の上端に接合されてハブ部材12と一体化される。磁気テープ(図示せず)は、上フランジ11と下フランジ14との間に、円筒部13の外周面である円筒面上に巻回される。
【0024】
下ハーフ2b(図1参照)の中央には円形の開口(図示せず)が形成されており、この開口を介してハブ部材12の底板15及び金属プレート20が露出する。底板15の下面には、被駆動歯16が、リール10と同心の円弧に沿って、金属プレート20を取り囲むように設けられている。
【0025】
図3に示されているように、ドライブ装置の駆動軸90の上面には、被駆動歯16とかみ合う駆動歯91形成されるとともに、磁石93が取り付けられている。テープカートリッジ1をドライブ装置に装填すると、ドライブ装置の駆動軸90の磁石93が、リール10の金属プレート20を吸着するので、被駆動歯16と駆動歯91とが確実に噛み合う。
【0026】
図4Aは、金属プレート20の斜視図、図4Bは金属プレート20の平面図、図4Cは図4Bの4C−4C線を含む面に沿った金属プレート20の断面図である。本実施形態1の金属プレート20は、母材としての鋼板の表面にメッキが施されたメッキ鋼板を打ち抜いて作製される。従って、図4Cに示されていように、金属プレート20の表裏面は全面にメッキが施されたメッキ面22,23であるが、側面24,25はメッキが施されていない非メッキ部分(即ち、母材である鋼板21)を含んでいる。なお、図4Cでは、表裏面22,23の両方にメッキが施されたメッキ鋼板を使用した場合を示したが、表裏面のいずれか一方のみにメッキが施されたメッキ鋼板を使用することもできる。金属プレート20は、表裏面のうちメッキが施された面(メッキ面)が外部に露出するようにして底板15に一体化される(図3参照)。表裏面のうちの少なくとも一方に施されるメッキは、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、錫のいずれか、もしくはそれらのいずれか主成分とする合金で構成されていることが好ましい。
【0027】
図5は、金属プレート20がインサート成形により一体化されたハブ部材12の下方から見た斜視図である。図6は、当該ハブ部材の中央部分の拡大断面図である。図5及び図6では、カバー部材30(図2A、図2B、図3参照)はまだ装着されていない。本実施形態1では、インサート成形時に金属プレート20を金型内に固定するために、金属プレート20の内周側の側面24(図4C参照)を3本の保持ピン(図示せず)で支持した。従って、底板15には、当該3本の保持ピンに起因する3つの貫通孔(開口)17が形成されている。金属プレート20の内周側の側面24のうち保持ピンが当接した部分には、インサート成形時に樹脂が付着することはない。従って、図6から容易に理解できるように、貫通孔17の内周面に、金属プレート20の内周側の側面24が露出する。上述したように側面24は非メッキ部分を含むから(図4C参照)、貫通孔17内に、金属プレート20の非メッキ部分が露出する。従って、この外部に露出した非メッキ部分から錆が発生する可能性がある。
【0028】
図7Aはカバー部材30の正面側から見た斜視図、図7Bはその裏面側から見た斜視図、図7Cはその側面図である。カバー部材30は、略円形の封止板31と、封止板31の外周縁から等角度間隔に突出した3つの凸部32と、各凸部32に立設された挿入部33と、挿入部33の先端に形成された係合部34とを備えている。挿入部33は、ハブ部材12のインサート成形時に金属プレート20を支持する保持ピンと略同一の外形形状(本実施形態1では円筒形状)を有している。係合部34は、挿入部33の長手方向に直交する方向に、挿入部33の外周面から突出している。
【0029】
図3に示されているように、カバー部材30は、その3つの挿入部33がハブ部材12の3つの貫通孔17に挿入されるように、ハブ部材12に装着される。挿入部33の先端の係合部34が、ハブ部材12の底板15の裏面側の貫通孔17の端縁と係合するので、カバー部材30がハブ部材12から脱落するのが防止される。
【0030】
貫通孔17に挿入されたカバー部材30の挿入部33が、貫通孔17内に露出していた金属プレート20の非メッキ部分を外界から遮蔽する。更に、挿入部33は、保持ピンと略同一の外形形状を有しているので、貫通孔17の内周面にほぼ密着する。このようにして貫通孔17内に露出していた金属プレート20の非メッキ部分はカバー部材30によりほぼ覆われるので、当該非メッキ部分での錆の発生を低減することができる。
【0031】
図8は、本実施形態1にかかるテープカートリッジ1に使用される別のハブ部材12Aの底面図、図9は、当該ハブ部材12Aの中央部分の拡大断面図である。このハブ部材12Aは、金属プレート20を6本の保持ピンで金型内に固定しながらインサート成形により作製された。従って、底板15には、当該6本の保持ピンに起因する6つの貫通孔(開口)17が形成されている点で、上記のハブ部材12と異なる。図10Aは、このハブ部材12Aに装着されるカバー部材30Aの正面側から見た斜視図、図10Bはその裏面側から見た斜視図、図10Cはその側面図である。カバー部材30Aは、ハブ部材12Aの6つの貫通孔17に対応して、等角度間隔に配置された6本の挿入部33を備えている。このカバー部材30Aも、上記のカバー部材30と同様の作用効果を奏する。
【0032】
(実施形態2)
本実施形態2は、金属プレート20の側面の非メッキ部分を露出させる貫通孔(開口)の配置及び形状に関して実施形態1と異なる。これにともない、カバー部材の構成が変更されている。以下、実施形態1との相違点を中心に、本実施形態2を説明する。
【0033】
図11は、本実施形態2にかかるテープカートリッジに使用されるハブ部材12Bの底面図である。このハブ部材12Bは、金属プレート20を、その外周側の側面25(図4C参照)を3本の板状の保持ピンで金型内に固定しながらインサート成形により作製された。従って、底板15には、金属プレート20の外周側の端縁に隣接する3つのスロット状の貫通孔(開口)18が形成されている。図示を省略するが、実施形態1のハブ部材12,12Aの貫通孔17と同様に、貫通孔18の内周面には、金属プレート20の外周側の側面25の非メッキ部分が露出する。
【0034】
図12Aは、このハブ部材12Bに装着されるカバー部材30Bの正面側から見た斜視図、図12Bはその裏面側から見た斜視図、図12Cはその側面図である。カバー部材30Bは、円環形状を有し、その外周側の端縁に3つの板状の挿入部33Bが等角度間隔で形成されている。挿入部33Bは、その外側面(金属プレート20とは反対側の面)に形成されたリブ34を除いて、ハブ部材12Bのインサート成形時に金属プレート20を支持する保持ピンと略同一の外形形状を有している。
【0035】
カバー部材30Bは、その3つの挿入部33Bがハブ部材12Bの3つの貫通孔18に挿入されるように、ハブ部材12Bに装着される。挿入部33Bは、貫通孔18内に露出していた金属プレート20の非メッキ部分にほぼ密着し、これを外界から遮蔽する。このようにして貫通孔18内に露出していた金属プレート20の非メッキ部分はカバー部材30Bによりほぼ覆われるので、実施形態1と同様に、当該非メッキ部分での錆の発生を低減することができる。
【0036】
挿入部33Bにリブ34が形成されていることにより、挿入部33Bは貫通孔18内に圧入される。これにより、カバー部材30Bがハブ部材12Bから脱落するのが防止される。なお、リブ34に代えて、カバー部材30Bの挿入部33Bの先端に、ハブ部材12Bの底板15の裏面側の貫通孔18の端縁と係合する係合構造を形成してもよい。
【0037】
本実施形態2は、上記を除いて実施形態1と同じである。
【0038】
(実施形態3)
本実施形態3では、金属プレートに、中央の円形の開口の他に更に貫通孔が形成されている。また、カバー部材が金属プレートのメッキ面のほぼ全面を覆う。以下、実施形態1との相違点を中心に、本実施形態3を説明する。
【0039】
図13Aは本実施形態3にかかるテープカートリッジに使用される金属プレート20Cの平面図、図13Bは図13Aの13B−13B線を含む面に沿った金属プレート20Cの断面図である。金属プレート20Cには、中央の円形の開口(貫通孔)27に加えて、開口27の周囲に、これより相対的に小さな3つの貫通孔28が略等角度間隔で形成されている。金属プレート20Cは、実施形態1の金属プレート20と同様に、メッキ鋼板を打ち抜いて作製される。貫通孔28は、インサート成形時に金属プレート20Cを金型に固定するために金型に設けた保持ピンを挿入するため、または、貫通孔28内に樹脂を充填させることによりハブ部材に対する金属プレート20Cの取り付け強度を向上させるため、等の目的で形成されている。
【0040】
図14は、本実施形態3にかかるテープカートリッジに使用されるハブ部材12Cの下方から見た斜視図である。図14では、カバー部材はまだ装着されていない。実施形態1のハブ部材12と同様に、このハブ部材12Cは、金属プレート20Cを、中央の開口27の内周側の側面24(図13B参照)を3本の保持ピンで金型内に固定しながらインサート成形により作製された。従って、底板15には、金属プレート20Cの内周側の端縁に隣接する3つの貫通孔(開口)17Cが形成されている。貫通孔17Cの正面から見た形状は、略台形形状である。図示を省略するが、実施形態1のハブ部材12,12Aの貫通孔17と同様に、貫通孔17Cの内周面には、金属プレート20Cの内周側の側面24の非メッキ部分が露出する。
【0041】
開口27の周囲に形成された3つの貫通孔28内に樹脂は完全に充填されていない。従って、貫通孔28の内周面にも非メッキ部分(即ち、メッキ鋼板の母材)が露出する。
【0042】
図15Aは本実施形態3にかかるテープカートリッジに使用されるカバー部材30Cの正面側から見た斜視図、図15Bはその背面図、図15Cはその側面図である。カバー部材30Cは、略円板形状の封止板31Cと、その中心を取り囲むように設けられた3つの挿入部35とを備えている。挿入部35は、封止板31Cに対してほぼ垂直に立設した板状の挿入片36と、挿入片36の先端から中心側に向かって延びた係合爪37とを備えている。
【0043】
カバー部材30Cは、その3つの挿入部35がハブ部材12Cの3つの貫通孔17Cに挿入されるように、ハブ部材12Cに装着される。挿入部35の先端の係合爪37が、ハブ部材12Cの底板15の裏面側の貫通孔17Cの端縁と係合するので、カバー部材30Cはハブ部材12Cから脱落するのが防止される。
【0044】
図16は、カバー部材30Cが装着されたハブ部材12Cの下方から見た斜視図である。カバー部材30Cの封止板31Cが、金属プレート20Cのほぼ全面を覆っている。
【0045】
本実施形態3によれば、実施形態1,2と同様に、挿入片36が、貫通孔17C内に露出していた金属プレート20Cの非メッキ部分にほぼ密着し、これを外界から遮蔽する。従って、貫通孔17C内の当該非メッキ部分での錆の発生を低減することができる。
【0046】
これに加えて、封止板31Cが、金属プレート20Cの貫通孔28を覆うので、貫通孔28内に露出した非メッキ部分が外界から遮蔽される。従って、貫通孔28内の当該非メッキ部分での錆の発生をも低減することができる。
【0047】
金属プレート20Cのメッキとして錫メッキや亜鉛メッキを用いた場合、メッキからウィスカーの発生が懸念される。ところが、本実施形態3では、カバー部材30Cの封止板31が、金属プレート20Cのメッキ面の全面を覆うので、メッキ面から発生したウィスカーがドライブ装置内に入り込み内部回路を短絡させる可能性を低減することができる。
【0048】
本実施形態3は、上記を除いて実施形態1と同じである。
【0049】
上記の実施形態1〜3は例示に過ぎない。本発明はこれらの実施形態に限定されず、適宜変更することができる。
【0050】
例えば、上記の実施形態1〜3を適宜組み合わせることができる。例えば、実施形態1に示したカバー部材30,30Aの挿入部を、実施形態2の挿入部33Bや実施形態3の挿入部35に置き換えてもよい。挿入部の形状は、これら以外の任意の形状であってもよい。また、カバー部材の挿入部の位置は、実施形態1,3のように金属プレートの中央の開口の側面24に隣接する位置であってもよく、実施形態2のように金属プレートの外周側の側面25に隣接する位置であってもよい。更に、カバー部材の挿入部の数は、上記の実施形態のように3本、6本に限定されず、これら以外であってもよい。カバー部材の挿入部の形状、位置、数等の仕様は、金属プレートの側面の非メッキ部分を露出させる、ハブ部材に形成された貫通孔(開口)に応じて設定することが好ましい。
【0051】
実施形態3に示した、金属プレートの露出したメッキ面の全面を覆う封止板を、実施形態1,2に示したカバー部材に設けてもよい。
【0052】
上記の実施形態1〜3では、底板15に形成された複数の貫通孔17,17C,18に対して1つのカバー部材を装着したが、本発明はこれに限定されない。例えば、カバー部材を複数に分割し、複数のカバー部材のそれぞれを1又は複数の貫通孔に装着してもよい。
【0053】
上記の実施形態1〜3では、インサート成形時に金属プレートを金型内に固定するための保持ピンによって、ハブ部材12の底板15に貫通孔17,17C,18が形成されていたが、本発明は、保持ピンが貫通孔ではなく非貫通孔(盲孔)を形成する場合にも適用することができる。非貫通孔であっても、その内周面に金属プレートの側面の非メッキ部分が露出される場合がある。そのような場合には、上記の実施形態1〜3と同様にカバー部材でメッキ部分を覆うことにより、当該メッキ部分からの錆の発生を低減することができる。カバー部材がハブ部材から脱落するのを防止するためには、実施形態2で示したリブ34やこれと同様に作用する圧入構造をカバー部材の挿入部に設けることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の利用分野は特に制限はなく、データ記録用の単リール型のテープカートリッジに好ましく利用することができる。特に、所望の防錆特性を有しながら低コストである単リール型のテープカートリッジとして好ましく利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 テープカートリッジ
2 筐体
10 リール
11 上フランジ
12,12A,12B,12C ハブ部材
13 円筒部
14 下フランジ
15 底板
17,17C,18 貫通孔(底板に形成された開口)
20,20C 金属プレート
22,23 金属プレートのメッキ面
24,25 金属プレートの側面
30,30A,30B,30C カバー部材
33,33B,35 挿入部
34 係合部(係合構造)
37 係合爪(係合構造)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に、データ記録テープが巻回されるリールが収納されたテープカートリッジであって、
前記リールは、円筒部と、前記円筒部の下側の開口を閉じる底板と、前記円筒部の外周面の下側から外向きに突出した下フランジとが一体的に成形されたハブ部材、及び、前記下フランジに対向するように前記円筒部に接合された上フランジを備え、
磁力吸引用の環状の金属プレートが前記ハブ部材の前記底板に一体化されており、
前記金属プレートの表裏面の少なくとも一方はメッキが施されたメッキ面であり、前記金属プレートの側面はメッキが施されていない非メッキ部分を含んでおり、
前記メッキ面が外部に露出し、且つ、前記側面の前記非メッキ部分の少なくとも一部が、前記底板に形成された開口を介して外部に露出しており、
カバー部材が、前記開口に挿入されて、前記開口を介して露出した前記非メッキ部分を覆っていることを特徴とするテープカートリッジ。
【請求項2】
前記金属プレートは、メッキ鋼板を用いて作製されており、
前記メッキは、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、錫のいずれか、もしくはそれらのいずれか主成分とする合金で構成されている請求項1に記載のテープカートリッジ。
【請求項3】
前記底板に形成された前記開口が前記底板を貫通する貫通孔であり、
前記カバー部材は、前記貫通孔の端縁に係合する係合構造を備えている請求項1又は2に記載のテープカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−54790(P2013−54790A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190901(P2011−190901)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)