説明

テープ貼着用治具及びこれを用いた貼着方法

【課題】段差部に対するテープの位置決めと貼着操作とを正確にかつ容易に行う。
【解決手段】被着体にテープ6を貼着するテープ貼着用治具10であって、前記テープ6の被着面は、長手方向に延びる段差部を含み、前記段差部に当接し前記段差部に沿って摺動可能な第1のガイド部20と、前記第1のガイド部20の前記段差部に対する対向状態を位置決めする第2のガイド部30と、前記テープ6を繰り出し可能に保持するテープ保持部40と、前記第1のガイド部20の摺動に伴って繰り出される前記テープ6を、前記第1のガイド部20の前記段差部に対する対向状態に応じて前記段差部の少なくとも一部に押圧するテープ押圧部50と、を備えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着体にテープを貼着するテープ貼着用治具及びこれを用いた貼着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、被着体にテープを貼着するに際しては、貼着したい箇所に正確にかつきれいに貼着する必要があり、これを実現するための種々の治具が提案されている。例えば、被着面裏面の長手方向に突条部が形成された被着体に粘着テープを貼着する治具が開示されている(特許文献1)。特許文献1に記載の治具は、被着面に粘着テープを圧着するプレスローラと、該プレスローラとともに被着体を挟む3つのガイドローラとを備えている。この治具においては、被着面裏面の突条部に3つのガイドローラを嵌合させるとともにプレスローラとガイドローラとで被着面を挟持しながら治具を移動させることによって被着面に粘着テープが貼着される。
【0003】
自動車等の各種の輸送体を被着体とする場合、塗膜様の粘着テープを被着体に貼着したり、あるいは塗装部と非塗装部との境界にマスキングテープを貼着したのち被着体に塗料を付着することで色を塗り分けたりすることが行われている。こうした塗膜様テープやマスキングテープなどの塗装用テープにおいては、テープ貼着時にしわや撚れがないことも重要であるが、テープの側端縁の直線性等も重要である。したがって、こうした塗装用テープは、シワを容易に抑制でき、また側端縁の直線性が出しやすい観点から、平坦部に貼着するのが通常であった。
【0004】
【特許文献1】特開2003−313512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、機能上及びデザイン上の観点から、輸送体表面に伸びる段差部やその近傍に塗装テープを貼着することが要望される場合がある。このような場合、上記特許文献1の治具は、平坦な被着面にテープを貼着するものであるため、段差部を有する被着面にテープを貼着することはできなかった。また、段差部に沿ってテープを貼着する場合、テープのシワを抑制し側端縁の直線性を確保するには、段差部に対する正確な位置決めと貼着操作とが必要となる。しかしながら、こうした作業をすべて手作業で行うには高い熟練を有するほか時間も要してしまうことになる。したがって、現状において、段差部やその近傍におけるテープの貼着作業を効率的に行うのは不可能であった。
【0006】
そこで、本発明は、段差部に対するテープの位置決めと貼着操作とを正確にかつ容易に行うことができるテープ貼着用治具及びこれを用いた貼着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、被着体にテープを貼着するテープ貼着用治具であって、前記テープの被着面は、長手方向に延びる段差部を含み、前記段差部に当接し前記段差部に沿って摺動可能な第1のガイド部と、前記第1のガイド部の前記段差部に対する対向状態を位置決めする第2のガイド部と、前記テープを繰り出し可能に保持するテープ保持部と、前記第1のガイド部の摺動に伴って繰り出される前記テープを、前記第1のガイド部の前記段差部に対する対向状態に応じて前記段差部の少なくとも一部に押圧するテープ押圧部と、を備える、治具が提供される。
【0008】
本治具において、前記第2のガイド部は、前記段差部以外の被着体表面を摺動移動可能であるとしてもよい。また、前記テープ押圧部は、前記段差部の一部にのみ前記テープを押圧するものとすることもできる。
【0009】
本治具は、前記段差部は、長手方向に延びる稜線部を備え、前記第1のガイド部は、前記稜線部に沿って摺動可能であるとしてもよい。この形態において、前記テープ押圧部は、前記段差部の前記稜線部に前記テープを押圧するとしてもよい。
【0010】
また、本治具は、前記第1のガイド部の前記段差部に対する対向角度と前記テープ押圧部の前記段差部に対する対向角度とが同等であるとしてもよい。
【0011】
さらに、前記第1のガイド部及び前記テープ押圧部を前記段差部に対して押圧しつつ摺動可能な把持部を備えることもできる。この形態において、前記把持部を把持する作業者の手指と前記テープ保持部に保持される前記テープとの干渉を抑制する干渉抑制部を備えることもできる。また、本治具においては、前記テープはマスキングテープであるとしてもよい。
【0012】
本発明によれば、被着体の被着面にテープを貼着する貼着方法であって、請求項1〜9のいずれかに記載の治具を用いて、前記第1のガイド部を前記段差部に沿って摺動移動させながら前記テープ押圧部により前記テープを前記段差部の少なくとも一部に押圧する工程を備える、方法が提供される。
【0013】
本発明によれば、車両の表面の少なくとも一部に塗装用マスキングテープを貼着して塗装する方法であって、前記マスキングテープの被着面は、長手方向に延びる段差部を含み、請求項1〜9のいずれかに記載の治具を用いて前記第1のガイド部を前記段差部に沿って摺動移動させながら前記テープ押圧部により前記マスキングテープを前記段差部の少なくとも一部に押圧する工程と、前記マスキングテープを前記被着面に圧着する工程と、前記マスキングテープによって確保された被塗面を塗装して前記段差部に沿って前記段差部の近傍で前記車両表面の塗り分けする塗装工程と、を備える、方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明のテープ貼着用治具は、被着体にテープを貼着するテープ貼着用治具であって、前記テープの被着面は、長手方向に延びる段差部を含み、前記段差部に当接し前記段差部に沿って摺動可能な第1のガイド部と、前記第1のガイド部の前記段差部に対する対向状態を位置決めする第2のガイド部と、前記テープを繰り出し可能に保持するテープ保持部と、前記第1のガイド部の摺動に伴って繰り出される前記テープを、前記第1のガイド部の前記段差部に対する対向状態に応じて前記段差部の少なくとも一部に押圧するテープ押圧部と、を備える。
【0015】
本発明のテープ貼着用治具によれば、第1のガイド部を段差部に当接させ、その状態で段差部の形成方向に向かって第1のガイドを摺動させることにより、段差部に沿うようにガイドされながらテープが繰り出され、その繰り出されたテープが第1のガイド部の段差部への対向方向に応じて段差部の少なくとも一部に押圧される。このとき、第1のガイド部によってテープの貼着方向が決定されるとともに、第2のガイド部によって段差部に対する第1のガイド部の姿勢が決定される。また、段差部に対する第1のガイド部の姿勢が決定されるのに付随して、段差部に対するテープ押圧部の姿勢も決定される。したがって、本治具によれば、段差部に対するテープの位置決めを正確に行うことができる。しかも、本治具によるテープの貼着は、治具を段差部に沿って第1のガイド部を摺動移動させるという簡単な動作であるため、作業の熟練度に関係なく高い精度で被着体にテープを貼着することができる。したがって、本発明のテープ貼着用治具によれば、段差部に対するテープの位置決めと貼着操作とを正確にかつ容易に行うことができる。
【0016】
本発明によれば、テープ貼着用治具のほか、これを用いた貼着方法及び塗装用マスキングテープを貼着して塗装する方法が提供される。以下、本発明の実施の形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1〜図4は、本発明のテープ貼着用治具の好ましい形態を示したものであり、図1は、本治具の斜視図を示し、図2(a)〜(d)は、本治具の底面図、正面図、背面図(なお、背面図においては、テープ切断部を省略)及び側面図を示し、図3は、被着体と本形態の第1のガイド部及び第2のガイド部との説明図を示し、図4は、本治具を用いて段差部にテープを貼着する様子を表す斜視図を示している。なお、図に示される形態は、本発明の好ましい形態であるが、本発明を限定するものではない。
【0017】
(テープ貼着用治具)
本治具は、図1に示すように、段差部に当接し段差部に沿って摺動可能な第1のガイド部20と、第1のガイド部20の段差部に対する対向状態を位置決めする第2のガイド部30と、テープ6を繰り出し可能に保持するテープ保持部40と、第1のガイド部20の摺動に伴って繰り出されるテープ6を段差部の一部に押圧するテープ押圧部50とを備えている。
【0018】
本発明のテープ貼着用治具は、自動車等の輸送体における各種パネルや、建築物の内外壁、ガラス、サッシなど種々の被着体にテープを貼着するのに用いることができる。特に、長手方向に延びる段差部を含む被着体に好ましく用いることができる。ここで、本明細書でいう「段差部」とは、被着体表面に高低差が形成された部分を示し、例えば、凸状や凹状、L字状、Γ字状、U字状などのような非平坦な形状をいう。また、本発明の治具を適用する段差部は、長手方向に延びる稜線部を備えていてもよい。こうした稜線部を有する場合には、稜線部に対するテープの対向姿勢を決定することで段差部に対するテープの対向状態を位置決めすることができる。
【0019】
本治具に使用可能なテープは特に限定しないが、例えば、ロール状に巻回されたテープ等のように、裏面に予め粘着剤や接着剤などからなる粘着層を備えていることが好ましい。また、テープの種類は特に限定せず、例えば、マスキングテープ、装飾用テープなど種々のものを用いることができる。好ましくは、マスキング用である。
【0020】
(第1のガイド部)
第1のガイド部20は、図2(a)及び図2(b)に示すように、段差部に当接可能な当接部位22を備える。当接部位22を段差部に当接させるには、例えば、当接部位22に段差部の少なくとも一部の表面形状に沿った形状を設ければよい。このような形状としては、段差部の表面形状に対応して種々の形状を採ることができる。例えば、段差部が凸状又は凹状であれば、当接部位22は段差部の凸状又は凹状に倣った凹状又は凸状にすることができる。あるいは、被着面が断面L字状やΓ字状であれば、当接部位22はその曲折部に対応した形状にすることができる。このような当接部位22の大きさは、段差部に当接可能であれば特に限定しない。
【0021】
第1のガイド部20は、段差部に沿ってテープを位置決めする観点から、段差部に沿って摺動可能であるのが好ましい。また、摺動可能とすれば、被着面上でのテープ側端縁の直線性が確保されやすくなる。段差部に沿って第1のガイド部20を摺動させるには、好ましくは、治具10の進行方向に回転移動するローラ状体を第1のガイド部20に設ける。こうすることで、第1のガイド部20を段差部に沿ってよりスムーズに摺動させることができる。ローラ状体を設ける位置や形態は特に限定しない。好ましくは、ローラ状体が当接部位22を備え、当接部位22が摺動に伴って変位して回転移動する形態である。このときのローラ状体の数や大きさは特に限定しないが、進行方向に沿って並んだ2以上のローラ状体を有するのが好ましい。また、ローラ状体の大きさは、段差部に沿って治具10が安定に移動可能な大きさを適宜設計すればよい。
【0022】
ローラ状体に段差部との当接機能を持たせた場合、このローラ状体は、段差部の形状に合わせて各種形状を採ることができる。例えば、段差部に当接可能な形状が側面に形成された筒状体、円錐状体、鼓状体等が挙げられる。具体的には、例えば、図3(a)に示すように、長手方向に延びる稜線部を備えた段差部4上にテープを貼着する場合、ローラ状体は、段差部4の形状に沿うように円筒状体の中央側面がくびれた鼓状体とすることができる。こうすることで、当接部位22は段差部4に対して適度な表面積で接するため、段差部に対する振れを抑制することができる。
【0023】
本形態における第1のガイド部20は、図2(a)に示すように、当接部位22を側面に有する2つのローラ状体24a、24bと、治具10の進行方向に平行に立設する2つの板状のガイド本体26a、26bとから構成されている。このローラ状体24a、24bには、それぞれの軸中心に中心軸28a、28bが挿通されており、中心軸28a、28bを回転軸として回転可能になっている。また、各中心軸28a、28bの両端は、ガイド本体26a、26bに挟持された状態で固定されている。これにより、ローラ状体24a、24bは、当接部位22を段差部に当接させながら治具10の進行方向に回転移動することができる。
【0024】
段差部が長手方向に延びる稜線部を備える場合、第1のガイド部20は、この稜線部に沿って摺動可能であるのが好ましい。こうすることで、段差部に対する第1のガイド部20の姿勢が安定に維持されやすくなる。第1のガイド部20を稜線部に沿って摺動可能にするには、稜線部に倣った形状を第1のガイド部20に形成することにより容易に実現することができる。
【0025】
第1のガイド部20は、例えば、第1のガイド部20のうち少なくとも被着体との接触面を摩擦抵抗の少ない材料で構成することができる。このような材料としては、例えば、軟質のプラスチック材料やフェルト、表面にシリコーン加工が施されたゴムシートなどが挙げられる。
【0026】
(第2のガイド部)
第1のガイド部20を段差部に当接させたとき、第1のガイド部20は、第2のガイド部30によって段差部に対する対向状態が位置決めされるのが好ましい。第2のガイド部30を備えることで、段差部が第1のガイド部20のみでは段差部に対する対向状態の位置決めが困難な場合であっても、第1のガイド部20の段差部に対する姿勢、ひいてはテープの段差部に対する姿勢を確実に決めることができる。すなわち、段差部の形状に関わらずテープの姿勢を段差部に対して定めることができるようになる。この第2のガイド部30の位置や形態等は第1のガイド部20の段差部に対する姿勢を決定できる限り特に限定しないが、段差部以外の被着体表面を摺動移動可能に構成されているのが好ましい。こうすることで、テープ幅方向に対する第1のガイド部20の振れを効果的に抑制することができる。本形態においては、図3(c)に示すように、第1のガイド部20の当接部位22を段差部に当接させたときに、ガイド本体26a、26bのうち一方の底面を構成する一辺が被着体に当接可能に構成されている。したがって、この辺を第2のガイド部30として被着体表面に当接して摺動させることにより、段差部に対する第1のガイド部20の姿勢が安定に支持される。
【0027】
(テープ押圧部)
テープ押圧部50は、テープを被着面に押圧する押圧部位52を備える。テープ押圧部50は、押圧部位52によりテープを被着面に押圧するものであればその大きさや形状等は特に限定しない。テープ押圧部50は、テープを被着面の少なくとも一部に押圧するものであればよいので、治具10の移動方向に直交する方向においてテープを被着面に対して押圧しようとする部分に対応する幅を有していればよい。したがって、テープ幅の一部にのみ相当する幅を有していてもよいし、それよりも広い幅を有していてもよい。本治具は、テープ押圧部50がテープ幅の一部のみ対応する幅を有していることで、テープ押圧部50によるテープの被着面への押圧状況によってテープがよれたりシワがよったりすることを防ぐことができる。テープ押圧部50は、治具の移動に伴って回転等しない形態でもよいが、好ましくは、治具の移動に伴って同じ方向に回転する1又は2以上の回転体である。
【0028】
テープ押圧部50は、第1のガイド部20を段差部に当接させたときの第1のガイド部20の姿勢(段差部に対する対向角度)に応じて段差部の少なくとも一部を押圧するのが好ましい。こうすれば、第1のガイド部20を段差部に当接させることによって段差部に対するテープ押圧部50の姿勢が決定され、その結果、段差部に対するテープの姿勢も決定することができる。テープ押圧部50の段差部に対する対向角度は、第1のガイド部20の対向角度によって決まるものであれば両者は異なる角度であってもよい。好ましくは、第1のガイド部20の段差部に対する対向角度とテープ押圧部50の段差部に対する対向角度とが同等である。こうすることで、第1のガイド部20を段差部に対して押圧しながら摺動させたときに、段差部に対してテープ押圧部50から適度な押圧力が付与される。これにより、段差部に対して確実にテープを押圧することができる。また、テープ押圧部50によって段差部に対する第1のガイド部20の姿勢が安定に支持されるため、テープの位置決めをより正確に行うことができる。
【0029】
このようなテープ押圧部50は、段差部の少なくとも一部を押圧することによりテープを段差部の少なくとも一部に押圧するものであるが、好ましくは、段差部の一部にのみテープを押圧する。こうすることにより、段差部の全体に対して一度にテープを貼着することによる撚れやしわの発生を効果的に防ぐことができる。テープを押圧する箇所としては、段差部が長手方向に延びる稜線部を備える場合、その稜線部にテープを貼着するのが好ましい。稜線部であればテープの位置決めがしやすいため、位置決めの正確性が十分確保され、テープの側端縁の直線性を容易に確保することができる。
【0030】
段差部の一部にのみテープを押圧した場合、段差部に押圧されていない残りのテープ部分については、例えば、治具によるテープ位置決め作業に伴って、あるいはその後に手作業で貼着すればよい。この場合であっても、すでにテープの一部が段差部に対して正確な位置に貼着されているため、テープのシワを抑制しつつ側端縁の直線性を確保することができる。
【0031】
本形態のテープ押圧部50は、図2(a)に示すように、筒状の回転体54と、回転体54の軸中心に挿通され回転体54を回転可能に支持する中心軸56とを備えており、回転体54の表面が押圧部位52を形成している。本形態においては、テープ押圧部50は、治具10の進行方向に対して第1のガイド部20よりも後方に取り付けられている。また、その位置は、第1のガイド部20を段差部に当接させたときに段差部の稜線部を押圧可能な位置になっている。したがって、第1のガイド部20を段差部に当接させた状態で摺動させることにより、テープ押圧部50は、段差部に対する姿勢が定められた状態で第1のガイド部20に案内されながら、稜線部に対してテープを連続的に押圧する。これにより、図3(d)に示すように、稜線部にテープの一部が貼着される。
【0032】
テープ押圧部50は、適度な反発弾性を有する材料により構成されていることが好ましい。こうすることで、テープ押圧部50がテープに密着しやすくなるとともに段差部を適度な圧力で押圧することができる。このような材料としては、天然ゴムや合成ゴム、発砲ゴム等のゴム材料、発砲ウレタンなどの発砲プラスチック材料、フェルト材料などが挙げられるが、好ましくは、発砲ウレタン、発砲ゴムなどの発砲材料である。発砲材料によれば、段差部に対して押圧したときに段差部の表面形状の少なくとも一部に倣って変形しやすいため、段差部の少なくとも一部にテープを確実に圧着させることができる。なお、テープ押圧部50は、全体が反発弾性材料により構成されていてもよいし、表層のみが反発弾性材料により構成されていてもよい。
【0033】
(テープ保持部)
本治具10は、未貼着のテープ(例えば、ロール状に巻回されたテープ)をテープ押圧部50に向かって繰り出し可能に保持するテープ保持部40を有する。これにより、未貼着のテープの位置が固定されるため、貼着の際にテープ幅方向の振れを抑制することができる。本形態のテープ保持部40は、図1に示すように、ロール状に巻回されたテープ6を挟持可能な2つの方形状の挟持板44a、44bと、挟持板44a、44bの一方に設けられテープ6を回転可能に装着可能なホルダ46とにより構成されている。このテープ保持部40は、治具10の本体を構成する把持部60のうち進行方向に対して前方上端に取り付けられている。また、挟持板44aにはそれぞれ対向する位置に螺孔が形成されており、この螺孔に適合する螺子48を通すことによって両者が一体化可能になっている。これにより、簡単にテープ6の装着及び脱着を行うことができる。
【0034】
(把持部)
治具10は、このような第1のガイド部20及びテープ押圧部50を段差部に対して押圧しつつ摺動可能な把持部60を備えていることが好ましい。把持部60の形状や大きさは特に限定しないが、作業者が片手で把持可能な大きさ・形状であるのが好ましい。本形態では、図1に示すように、把持部60は、2つの側板62、64により構成される。この側板62、64は、適度な間隔を保持した状態で平行に立設されており、その底部に第1のガイド部20とテープ押圧部50とが取り付けられている。底部における第1のガイド部20及びテープ押圧部50の位置は特に限定しないが、第1のガイド部20が治具の進行方向に対してテープ押圧部50よりも前方に設けられるのが好ましい。こうすれば、移動方向への誘導動作がテープの圧着動作よりも先行して行われるため、テープを精度よく貼着することができる。
【0035】
第1のガイド部20が把持部60に設けられている場合、第1のガイド部20は、把持部60に対して着脱可能であってもよい。着脱のための構造は特に限定せず、当業者が通常用いる手段を適宜採用することができる。本形態における第1のガイド部20には、ガイド本体26a、26bの上面に把持部60の側板62、64の厚みに対応した図示しない溝状の係止部が形成されている。これにより、第1のガイド部20は、係止部を側板62、64に係合することによって把持部60に係止されるとともに、係止部を側板62、64から離脱させることにより把持部60から取り外すことができる。
【0036】
(干渉抑制部)
把持部60を備える場合、これを把持する作業者の手指とテープ保持部40に保持されたテープとの干渉を抑制する干渉抑制部70を備えるのが好ましい。こうすれば、作業者の手指がテープに接触するのを防止してテープを連続的に繰り出すことができるため、貼着時のテープの撚れやズレを抑制することができる。干渉抑制部70を設ける位置や形状等は、作業者が把持部60を把持した際にその手指がテープに接触しやすい位置であれば特に限定せず、テープの大きさや保持される位置などに応じて適宜設定すればよい。例えば、テープの側面全体を被覆する形態とすることもできるが、好ましくは、手指がテープに接触しやすい部分にのみ設ける。本形態においては、図2(d)に示すように、干渉抑制部70は、把持部60とテープ保持部40との接続部近傍であって一方の挟持板44aの上部に、把持部60を順手で把持したときに作業者の親指を載置可能な隔板として形成されている。
【0037】
本治具10は、段差部に対するテープ幅方向の位置を調節する位置調節部材80を備えていてもよい。位置調節部材80を備えることで、貼着したい位置にテープを正確に誘導することができる。また、テープの貼着位置を容易に変更することができる。このような部材としては、例えば、テープ押圧前又はテープ押圧時にテープの幅方向に対する移動を規制する形態を採るとしてもよい。具体的には、図2(a)及び図2(c)に示すように、例えば、把持部60とテープ押圧部50の回転体54との間に挟み込むようにして装着され、テープ保持部40から繰り出されたテープの側端縁に当接可能なスペーサとすることもできる。本形態では、位置調節部材80は、治具10の進行方向に対して押圧部位52の前方から後方にかけて設けられているため、押圧部位52による押圧時には、段差部に対してテープを正確な位置にセットしておくことができる。
【0038】
また、本治具においては、テープ保持部から繰り出されたテープを所望の位置で切断するテープ切断部90を有するとしてもよい。こうすれば、テープの切断時にはさみやカッター等の切断器具が不要であるため、作業を簡略化することができる。切断のための構造は特に限定せず、当業者が通常用いる手段を適宜採用することができる。例えば、金属性材料やプラスチック性材料等により形成された切断刃とすることができる。このとき、切断刃の形状は特に限定せず、例えば、鋸刃形状や三角形状といった各種形状を採ることができる。また、その大きさも特に限定しないが、確実にかつ容易にテープを切断するには切断刃の幅がテープ幅以上であることが好ましい。テープ切断部を設ける位置は、切断したい箇所でテープを切断可能であれば特に限定しない。本形態では、テープ切断部90は、金属性材料によって形成された三角形状の切断刃により構成されており、把持部60の側板62,64に挟持された形態でテープ押圧部50の下流に設けられている。このテープ切断部90は、側板62,64の後方を被着面に当接させつつ第1のガイド部20を被着面から離間させるように治具10を動かすことで、切断刃がテープに押し当てられてテープを容易に切断する。
【0039】
(テープ貼着方法)
次に、本発明の治具を用いたテープの貼着方法について説明する。まず、ロール状に巻回されたテープ6をテープ保持部40のホルダ46に装着する。次いで、2つの挟持板44a、44bを重ね合わせたのち螺孔に螺子48を差し込んで挟持板44a、44bを一体化し、その後、テープ6を繰り出してテープ押圧部50の押圧部位52の表面に延在させる。このようにして、治具10をセットアップする。
【0040】
続いて、貼着作業を行う。具体的には、まず、干渉抑制部70に親指を載置した状態で把持部60を把持する。この状態で、図3(c)に示すように、段差部4に第1のガイド部20を当接させるとともに第2のガイド部30を段差部4以外の被着体表面に当接させることによって、段差部4に対する第1のガイド部20の姿勢を決定する。そのときの治具10の状態を図4に示す。段差部4に対する第1のガイド部20の姿勢が定まると、これに伴いテープ押圧部50の姿勢が段差部4の少なくとも一部を押圧した状態で決定されるため、段差部4に対するテープ6の姿勢も決定される。
【0041】
こうして段差部に対するテープ6の姿勢が決まると、その状態を維持したまま第1のガイド部20とテープ押圧部50とを段差部4に対して押圧しつつ第1のガイド部20を段差部4に沿って摺動させていく。これにより、テープ保持部40からテープ6が繰り出され、繰り出されたテープ6がテープ押圧部50によって段差部4の少なくとも一部に押圧されて貼着される。図3(d)は、そのときのテープの貼着状態を表す。このとき、第1のガイド部20によってテープ6の貼着方向が誘導されるため、段差部4に対して直線性を確保した状態でテープ6を貼着していくことができる。所望の位置までテープ6を貼着した後は、切断刃の刃先にテープ6を押し当てるように治具10を動かしてテープ6をカットしたのち、図3(e)に示すように、段差部4に押圧されなかった残りのテープ部分を被着体に対して手作業で貼着していき、貼着作業を終了する。
【0042】
貼着されたテープは、例えば、装飾用としたり、あるいはマスキング用として利用することができる。テープ貼着の目的がマスキング用の場合、貼着されたテープ側端縁を塗装の境界線として利用することができる。すなわち、上述した貼着方法により段差部に沿ってマスキングテープを貼着して圧着したのち、マスキングテープによって確保された被塗面を塗装する。その後、マスキングテープを被着体から剥離する。本治具によれば、段差部に対してテープのシワを抑制しかつ側端縁の直線性を確保しながらテープが貼着されるため、段差部やその近傍であっても、塗り分けの境界線を直線性を維持した状態で形成することができる。
【0043】
なお、本形態の治具10においては、第1のガイド部20は回転体を用いる構成としたが、これに限定するものではなく、回転等しない形態であってもよい。また、当接部位22の形状を鼓状としたが、これに限定せず、被着面の表面形状に合わせて各種形状を採ることができる。さらに、テープ押圧部50は、反発弾性材料により構成された回転体としたが、これに限定しないで変位しない不動の形態としてもよい。
【0044】
以上説明したように、本発明のテープ貼着用治具10、これを用いたテープ貼着方法及び塗装方法によれば、段差部に対するテープの位置決めと貼着操作とを正確にかつ容易に行うことができる。したがって、段差部やその近傍におけるテープの貼着作業を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本形態のテープ貼着用治具を示す斜視図である。
【図2】本形態のテープ貼着用治具を示す図である。図2(a)は底面図、図2(b)は正面図、図2(c)は背面図、図2(d)は側面図である。
【図3】本形態のテープ貼着用治具の被着体及びガイド部の説明図である。図3(a)は被着体の斜視図、図3(b)は図3(a)における被着体のA−A断面図、図3(c)は段差部に第1のガイド部を当接したときの説明図、図3(d)は稜線部にテープを押圧した状態を示す説明図、図3(e)は段差部にテープを貼着した状態を示す説明図である。
【図4】本形態のテープ貼着用治具を用いて段差部にテープを貼着する様子を表す斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
2 被着体、4 段差部、6 テープ、10 テープ貼着用治具、20 第1のガイド部、22 当接部位、24a、24b ローラ状体、26a、26b ガイド本体、28a、28b 中心軸、30 第2のガイド部、40 テープ保持部、44a、44b 挟持板、46 ホルダ、48 螺子、50 テープ押圧部、52 押圧部位、54 回転体、56 中心軸、60 把持部、62、64 側板、70 干渉抑制部、80 位置調節部材、90 テープ切断部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着体にテープを貼着するテープ貼着用治具であって、
前記テープの被着面は、長手方向に延びる段差部を含み、
前記段差部に当接し前記段差部に沿って摺動可能な第1のガイド部と、
前記第1のガイド部の前記段差部に対する対向状態を位置決めする第2のガイド部と、
前記テープを繰り出し可能に保持するテープ保持部と、
前記第1のガイド部の摺動に伴って繰り出される前記テープを、前記第1のガイド部の前記段差部に対する対向状態に応じて前記段差部の少なくとも一部に押圧するテープ押圧部と、
を備える、治具。
【請求項2】
前記第2のガイド部は、前記段差部以外の被着体表面を摺動移動可能である、請求項1に記載の治具。
【請求項3】
前記テープ押圧部は、前記段差部の一部にのみ前記テープを押圧する、請求項1又は2に記載の治具。
【請求項4】
前記段差部は、長手方向に延びる稜線部を備え、
前記第1のガイド部は、前記稜線部に沿って摺動可能である、請求項1〜3のいずれかに記載の治具。
【請求項5】
前記テープ押圧部は、前記段差部の前記稜線部に前記テープを押圧する、請求項4に記載の治具。
【請求項6】
前記第1のガイド部の前記段差部に対する対向角度と前記テープ押圧部の前記段差部に対する対向角度とが同等である、請求項1〜5のいずれかに記載の治具。
【請求項7】
前記第1のガイド部及び前記テープ押圧部を前記段差部に対して押圧しつつ摺動可能な把持部を備える、請求項1〜6のいずれかに記載の治具。
【請求項8】
前記把持部を把持する作業者の手指と前記テープ保持部に保持される前記テープとの干渉を抑制する干渉抑制部を備える、請求項7に記載の治具。
【請求項9】
前記テープはマスキングテープである、請求項1〜8のいずれかに記載の治具。
【請求項10】
被着体の被着面にテープを貼着する貼着方法であって、
請求項1〜9のいずれかに記載の治具を用いて、前記第1のガイド部を前記段差部に沿って摺動移動させながら前記テープ押圧部により前記テープを前記段差部の少なくとも一部に押圧する工程を備える、方法。
【請求項11】
車両の表面の少なくとも一部に塗装用マスキングテープを貼着して塗装する方法であって、
前記マスキングテープの被着面は、長手方向に延びる段差部を含み、
請求項1〜9のいずれかに記載の治具を用いて前記第1のガイド部を前記段差部に沿って摺動移動させながら前記テープ押圧部により前記マスキングテープを前記段差部の少なくとも一部に押圧する工程と、
前記マスキングテープを前記被着面に圧着する工程と、
前記マスキングテープによって確保された被塗面を塗装して前記段差部に沿って前記段差部の近傍で前記車両表面の塗り分けする塗装工程と、
を備える、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−274063(P2008−274063A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118157(P2007−118157)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000150774)株式会社槌屋 (56)
【Fターム(参考)】