ディスクブレーキ装置およびサポートの穴加工方法
【課題】パッドクリップの脱落を防止し、かつパッドクリップがロータ軸方向へズレることを防止することができるディスクブレーキ装置を提供する。
【解決手段】サポート30の耳部44をロータ半径方向内周側と外周側から挟持する挟持部62を有するパッドクリップ60を備えるディスクブレーキ装置10であって、サポート30は、耳部44におけるロータ半径方向外周側被挟持面46に凹状の穴45を有すると共に、穴45は、外周側被挟持面46に対して、耳部先端部側に耳部基端部側に比べて高い側壁を有するように傾きを持って形成され、パッドクリップ60は、挟持部62におけるロータ半径方向外周側挟持片62aに、穴45に嵌入する舌片を備えることを特徴とする。
【解決手段】サポート30の耳部44をロータ半径方向内周側と外周側から挟持する挟持部62を有するパッドクリップ60を備えるディスクブレーキ装置10であって、サポート30は、耳部44におけるロータ半径方向外周側被挟持面46に凹状の穴45を有すると共に、穴45は、外周側被挟持面46に対して、耳部先端部側に耳部基端部側に比べて高い側壁を有するように傾きを持って形成され、パッドクリップ60は、挟持部62におけるロータ半径方向外周側挟持片62aに、穴45に嵌入する舌片を備えることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキ装置に係り、特にディスクブレーキ装置を構成するサポートに組み付けるパッドクリップの脱落を防止するのに好適なディスクブレーキ装置およびサポートの穴加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクブレーキ装置におけるサポートに形成された凸状の耳部に対して、当該耳部を挟持するようにパッドクリップを組み付ける構造は、従来より実用化されている。
【0003】
このような組付け構造を採用するにあたって問題視されてきた点は、サポートの耳部を挟持する挟持部と、ブレーキパッドの凸片(トルク受け部)を保持するパッド保持部との相対的な力の反作用によって生じるパッドクリップの倒れ込み(脱落)である。
【0004】
具体的には、図14、図15に示すように、パッドクリップ2をサポート1に組付けた状態では、パッド保持部5は、ブレーキパッド配置方向へ浮き上がった状態となる(図14参照)。これに対し、ブレーキパッドを組み付けると、パッド保持部5はサポート1におけるトルク受け面側へ押し付けられる方向の力(矢印Aの方向の力)を受ける(図15参照)。このような力を受けたパッドクリップ2には、挟持部3におけるロータ内周側挟持片4を基点として、ブレーキパッド配置方向へ倒れ込もうとする力(矢印Bの方向の力)が生じることとなる(図15参照)。このような力が生じた場合、サポート1からパッドクリップ2が脱落する危険性がある。
【0005】
このような問題を解決するために、パッドクリップ、およびその組付け構造として、種々の形態が提案されている。例えば、特許文献1には、耳部の外周側被挟持面と内周側被挟持面とを平行に形成した上で、外周側被挟持面に、ロータ軸方向に沿った溝を設ける構成が開示されている。また、特許文献1では、パッドクリップの挟持部を構成する外周側挟持片に、対向する外周側被挟持面側へ突出させた突起を設ける構成が開示されている。そして特許文献1では、外周側挟持片に設けた突起を外周側被挟持面に設けた溝に嵌め込むことで組付け状態を保持することが開示されている。
このような構成とすることによれば、楔効果により、パッドクリップの抜け止め性を高めることができる。
【0006】
また、特許文献2にも、耳部の外周側被挟持面と内周側被挟持面とを平行に形成した上で、外周側被挟持面に、ロータ軸方向に沿った溝を設ける構成が開示されている。また、特許文献2では、パッドクリップの挟持部を構成する外周側挟持片をロータ軸方向に2つに分割し、押さえ爪と上部片を構成している。押さえ爪は、ブレーキパッド配置方向に設けられた連結片から延設された切片をフック状に形成した片である。押さえ爪は、その先端を溝の段差部に当接させると共に、内周側挟持面側への付勢力を付与することで、挟持力も生じさせる。一方、上部片は、耳部に接触することが無い。
【0007】
このような構成とすることで、押さえ爪による楔効果を得ることができ、パッドクリップの抜け止め性を高めることができる。また、押さえ爪は、ブレーキパッド配置方向に位置する連結片を基点として分割・延設されているため、組付け状態が不完全である場合には、撓みによる浮き上がりが生じ、組付け状態の確認も行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3806815号公報
【特許文献2】特開2010−107001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献に開示されているような構成のディスクブレーキ装置であれば、その構造により、サポートからパッドクリップが脱落することを抑制する効果を高めることができると考えられる。
【0010】
しかし、上記特許文献に開示されている組付け構造には、次のような課題がある。例えば特許文献1、2に開示されているディスクブレーキ装置では、耳部のロータ外周側被挟持面に対して、ロータ軸方向に沿った溝を設け、この溝にパッドクリップに設けた舌片を引掛けるように構成している。
【0011】
このような構成の場合、パッドクリップは、ロータ円周方向に対する倒れ込み防止効果を得ることができる。しかし、溝に引掛けられた舌片は、ロータ軸方向には拘束されていない。このため、パッドクリップはロータ軸方向に対する方向へのズレが生ずる虞がある。こうした場合、パッドクリップがロータ軸方向へズレることを防止するための押え片を設ける必要が生じ、パッドクリップを形成するための板取性の悪化を招く。
また、パッドクリップに押え片を設けた場合には、当該押え片が当接するサポート側の面の加工が必要となり、加工コストの高騰を招く。
【0012】
そこで本発明では、パッドクリップの脱落を防止し、かつサポートをロータ軸方向から押える専用の押さえ片を設けることなくパッドクリップがロータ軸方向へズレることを防止することができるディスクブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明に係るディスクブレーキ装置は、サポートの耳部をロータ半径方向内周側と外周側から挟持する挟持部を有するパッドクリップを備えるディスクブレーキ装置であって、前記サポートは、前記耳部におけるロータ半径方向外周側被挟持面に凹状の穴を有すると共に、前記穴は、前記外周側被挟持面に対して、前記耳部先端部側に前記耳部基端部側に比べて高い側壁を有するように傾きを持って形成され、前記パッドクリップは、前記挟持部におけるロータ半径方向外周側挟持片に、前記穴に嵌入する舌片を備えることを特徴とする。
【0014】
また、上記のような特徴を有するディスクブレーキ装置では、前記外周側被挟持面はロータ円周方向に沿って形成し、前記穴の穿孔方向は、前記サポートの中心線とのなす角を鋭角となるように傾きを持って形成することにより穴底面を傾斜させたことを特徴とする。
【0015】
このような構成とした場合、外周側被挟持面は、ロータ円周方向に略平行となり、穴は、サポートのロータ円周方向中心側からロータの回入側、回出側それぞれへ向けた傾きを持って形成されることとなる。このため、特殊工具を用いる事無く、穿孔のためのエンドミルの刃先を傾斜させるだけで、近接する他の要素を避けて穴形成を行うことが可能となる。
【0016】
また、上記のような特徴を有するディスクブレーキ装置では、前記外周側被挟持面は、前記耳部先端部を基点として、当該先端部から離間するに従ってロータ半径方向内周側被挟持面へ近づく方向へ向けた傾斜角度を有し、前記穴は、ロータ半径方向に沿った方向を穿孔方向として形成することもできる。
【0017】
このような構成とした場合、穴はロータ半径方向に対して略平行に形成されることとなり、外周側被挟持面は、耳部の基端部側ほどロータ半径方向の厚みが薄くなるような傾きを持つこととなる。このため、挟持部における外周側挟持片の挟持角度が鋭角となるため、パッドクリップの抜け止め効果を高めることができる。
【0018】
また、上記のような特徴を有するディスクブレーキ装置では、前記穴の側壁と前記舌片との接触点がロータ円周方向、ロータ軸方向のそれぞれに存在することが望ましい。
このような構成とすることで、パッドクリップの位置決めを舌片により確実に行うことができる。
【0019】
また、このような特徴を有する場合には、前記穴における前記耳部先端部側側壁の平面視形状と、前記舌片の先端部形状と、を共に円弧状とすると良い。
このような構成とすることで、穴形状は、エンドミルによる座グリ加工のみで側壁形状の形成ができ、舌片は、打ち抜きにより形状形成ができる。よって、加工性の向上を図ることができる。
【0020】
また、上記目的を達成するための本発明に係るサポートの穴加工方法は、耳部におけるロータ半径方向外周側被挟持面に凹状の穴を有するディスクブレーキ装置用サポートの穴加工方法であって、前記サポートにおけるロータ円周方向中心を基準として、ロータ回入側においてはロータ回入側に、ロータ回出側においてはロータ回出側に先端を向けた傾きを持ったエンドミルにより、前記穴の切削加工を行うようにすると良い。
【0021】
このような特徴を有する加工方法によれば、特殊工具を使用することなく穴加工を行うことができる。また、エンドミルの先端を傾けて穿孔を行うことで、サポートを構成する近接要素(例えばロータパス部)等に干渉することなく穴をあけることができる。
【0022】
さらに、上記のような特徴を有するサポートの穴加工方法において、前記耳部におけるロータ半径方向外周側被挟持面に設けられる穴の切削加工は、前記エンドミルの直径と一致した座グリ加工であるようにすると良い。
このような方法を採ることにより、穴加工の加工時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0023】
上記のような特徴を有するディスクブレーキ装置によれば、パッドクリップの脱落を防止することができる。また、舌片を穴に嵌入させることにより、パッドクリップがロータ軸方向へズレることも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態に係るディスクブレーキ装置の構成を示す斜視図である。
【図2】サポートの構成を示す左側面図である。
【図3】図2におけるA−A断面を示す図である。
【図4】サポートの構成と、穴を形成するためのエンドミルの傾斜状態を示す正面図である。
【図5】図2におけるA−A断面におけるブレーキパッド、およびパッドクリップの組付けを行っていない状態のサポートを示し、エンドミルによる穴の穿孔を説明するための図である。
【図6】パッドクリップの正面構成を示す図である。
【図7】パッドクリップの平面構成を示す図である。
【図8】パッドクリップの右側面構成を示す図であり、(1)は半円形状の舌片を設けた例を示し、(2)はV字突起型舌片を設けた例を示し、(3)は球状舌片を設けた例を示している。
【図9】実施形態に係るディスクブレーキ装置における外周側被挟持面に対する舌片の嵌入状態を示す平面図である。
【図10】舌片の先端形状を円弧以外とした場合の嵌入状態の例を示す平面図である。
【図11】穴の耳部先端側側壁の平面視形状を円弧以外とした場合の例を示す平面図である。
【図12】穴、および舌片を複数配置した場合の例を示す平面図である。
【図13】耳部の外周側被挟持面に傾斜を持たせた変形例を示す部分拡大断面図である。
【図14】従来のディスクブレーキ装置におけるサポートに対してパッドクリップのみを組付けた状態の例を示す図である。
【図15】従来のディスクブレーキ装置におけるサポートに対して組付けたパッドクリップに、ブレーキパッドを組付けた際に生じる力を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のディスクブレーキ装置、およびサポートの穴加工方法に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
まず、図1から図3を参照して、ディスクブレーキ装置10の全体構成についての概要を説明する。本発明に係るディスクブレーキ装置10は、一般的なフローティング型のディスクブレーキ装置と同様な構成を基本とする。
【0026】
すなわち、ロータ100と、サポート30、キャリパ20、およびインナ側ブレーキパッド56a(図2参照)、アウタ側ブレーキパッド56b(図2参照)を基本として構成される。ロータ100は、摺動面を備えた回転板であり、摺動面と直交する方向に回転軸を備える。
【0027】
サポート30は、図示しない車両側係止部に固定され、後述するキャリパ20や、インナ側ブレーキパッド56a、およびアウタ側ブレーキパッド56bのロータ軸方向への移動を可能に保持する保持部材である。サポート30は、ロータ100のインナ側とアウタ側のそれぞれに、ロータ回入側トルク受け部32a,34aと、ロータ回出側トルク受け部32b,34bとを有する。ロータのインナ側におけるロータ回入側トルク受け部32aとアウタ側におけるロータ回入側トルク受け部34a、およびインナ側におけるロータ回出側トルク受け部32bとアウタ側におけるロータ回出側トルク受け部34bは、ロータ100の半径方向外周側に設けられたロータパス部40によりそれぞれ接続されている。
【0028】
また、ロータ100のインナ側、アウタ側共に、ロータ回入側トルク受け部32a,34aと、ロータ回出側トルク受け部32b,34bとは、ブリッジ部36,38により接続されている。なお、ロータ100のインナ側に配置されたロータ回入側トルク受け部32aとロータ回出側トルク受け部32bとにはそれぞれ、固定用雌ねじ孔42と、キャリパ保持用袋穴41(図4参照)が形成されている。ロータ回入側トルク受け部32a、ロータ回出側トルク受け部32bにおける詳細な構成については、後述する。
【0029】
また、キャリパ20は、ロータ100に対してインナ側ブレーキパッド56aとアウタ側ブレーキパッド56bとを押し付ける役割を担う。キャリパ20は、キャリパ本体22と爪部26、ブリッジ部28、およびアーム部24を有する。キャリパ本体22には、シリンダが設けられ、内部にカップ状のピストン(不図示)が配置される。爪部26は、ロータ100を介してキャリパ本体22の対向位置に配置される。ブリッジ部28は、ロータ100の半径方向外周側に配置され、ロータ100を跨いでキャリパ本体22と爪部26とを連結する役割を担う。アーム部24は、キャリパ20をサポート30へ保持する基点となる役割を担う。アーム部24は、キャリパ本体22を基点として、ロータ回入側と回出側のそれぞれの方向へ延設される。アーム部24の先端は、サポート30におけるキャリパ保持用袋穴41の対向位置とし、スライドピン70を介してサポート30に対してロータ軸方向への摺動を可能に保持される。
【0030】
インナ側ブレーキパッド56a、およびアウタ側ブレーキパッド56bは、上述したロータ100の摺動面を挟持して、摩擦力を発生させる役割を担う。摩擦力を生じさせたインナ側ブレーキパッド56aとアウタ側ブレーキパッド56bの動きを拘束することで、車両に対する制動力を生じさせるためである。インナ側ブレーキパッド56a、アウタ側ブレーキパッド56bは共に、プレッシャプレートと、ライニングを基本として構成される。プレッシャプレートは、インナ側ブレーキパッド56aではピストンによって、アウタ側ブレーキパッド56bでは爪部26によって、それぞれ押圧されることとなる金属板である。図3にはアウタ側が表示されている。プレッシャプレートは、プレート本体58と、トルク受け部58aとから成る。プレート本体58は、詳細を後述するライニングを貼付するための領域である。トルク受け部58aは、サポート30におけるトルク受け部32,34に当接することで制動力を生じさせる部位である。プレート本体58は、ロータ100における摺動面の配置形態に沿った方向の面を持つように形成、配置されている。また、トルク受け部58aは、プレート本体58におけるロータ回入側側面と、ロータ回出側側面からそれぞれ、ロータ100の回入側と回出側に延設されている矩形突出部である。
【0031】
次に、図3〜図8を参照して、サポート30におけるトルク受け部32(ロータ回入側トルク受け部32a,ロータ回出側トルク受け部32b),34(ロータ回入側トルク受け部34a,ロータ回出側トルク受け部34b)の詳細な構造と、このトルク受け部32,34に組付けられるパッドクリップ60の構成に関する詳細を説明する。
【0032】
ロータ100のインナ側、アウタ側、回入側、回出側のそれぞれに配置されたトルク受け部32,34はいずれも、図3に示すように、ブレーキパッド56(インナ側ブレーキパッド56a、アウタ側ブレーキパッド56b)配置方向に向けて突出した、突起状の耳部44と、当該耳部44に対して凹状に形成されたトルク受け面52とを有する。
【0033】
耳部44は、ロータ半径方向外周側とロータ半径方向内周側に、詳細を後述するパッドクリップ60による被挟持面(外周側被挟持面46、および内周側被挟持面50)を有する(図4参照)。内周側被挟持面50、および外周側被挟持面46は共に、ロータ円周方向に対して略平行となるように形成されている。本実施形態においては、外周側被挟持面46に凹状の穴45を形成している。穴45の底面は、ロータ半径方向に対して、傾斜を持つように形成されている。具体的には、ロータ回入側トルク受け部32a,34aでは、穴底がロータ回入側から回出側に向け深くなるような傾きを持つように穿孔方向を定めて形成している。一方、ロータ回出側トルク受け部32b,34bでは、穴底がロータ回出側から回入側に向けて深くなるような傾きを持つように穿孔方向を定めて形成している。したがって、それぞれの穴の穿孔方向(穴底に立つ垂線)とサポート30の中心線α(サポート中央部を通るロータ半径方向線)との成す角度θは鋭角となる。
【0034】
穴45の形態をこのようにすることで、特殊工具を用いる事無く、エンドミルの刃先に傾斜を持たせるだけで、トルク受け部32,34の他の構成要素を避けつつ、外周側被挟持面46に適切な大きさの穴を形成することが可能となる。ここで、中心線αとエンドミルの成す角(傾斜角度)θは、前述のトルク受け部32,34の他の構成要素を避けることができる角度であれば良く、0°<θ<90°の範囲の中で、適宜選択すれば良いが、望ましくは、0°<θ<45°とすると良い。エンドミルの傾斜角度が大きくなると、穴45の側壁による舌片62d(図6から図8(1)参照)の引掛り効果が低下する虞が生ずるからである。
【0035】
なお、穴45の穿孔をエンドミルで行うことにより、穴底を平坦面としつつ、耳部44の先端側に深さを持たせることができる。これにより、詳細を後述するパッドクリップ60における舌片62dの先端部が、耳部44先端側の側壁、すなわちブレーキパッド配置方向において、穴底と外周側被挟持面46との間の段差に引っ掛かることになる。また、穴45の穿孔をエンドミルで行うことにより、耳部44先端側における穴45の側壁の平面視形状は、円弧状となる。このため、舌片62dの先端を当該側壁に当接させることで、パッドクリップ60がロータ軸方向へズレることを抑制することが可能となる。
【0036】
また、穴45の切削加工は、形成目的とする穴45の直径と一致した直径を持つエンドミルを用いた座グリ加工とすると良い。エンドミルによる切削方向を1方向とすることができ、加工時間の短縮を図ることができるからである。
【0037】
トルク受け面52は、サポート30を正面から見た際に、耳部44の下側、すなわちロータ半径方向内周側に、ロータ軸方向に向けて形成された溝である。このため、耳部44を基準とした場合には、凹状の体を成すこととなる。トルク受け面52は、ブレーキパッド56におけるトルク受け部58aが当接する部位である。このため、当接部の当接端面の形状に沿うように加工されている(図3から図5に示す例では当接面は平坦面)。
【0038】
このような構成を持つサポート30のトルク受け部32,34に組付けられるパッドクリップ60は、弾性変形可能な金属板で形成されており、少なくとも、挟持部62と、パッド保持部64とを有する。図6〜図8(1)にその詳細を示す。挟持部62は、サポート30における耳部44をロータ半径方向内周側と外周側から挟み込み、パッドクリップ60のサポート30への組付け状態を安定させる役割を担う。挟持部62は、内周側挟持片62cと、外周側挟持片62a、および連結片62bから構成される。内周側挟持片62cは、耳部44における内周側被挟持面50に付勢する板片であり、外周側挟持片62aは、外周側被挟持面46に付勢する板片である。本実施形態に係るパッドクリップ60では、外周側挟持片62aから外周側被挟持面46側へ向けて突出する舌片62dが切り起こしにより設けられている。そして、連結片62bは、内周側挟持片62cと外周側挟持片62aを連結する板片である。
【0039】
舌片62dは、ブレーキパッド配置側、すなわち耳部44の先端側が先端となるように形成される。これにより、外周側被挟持面46に形成した穴45の側壁に、舌片62dの先端が引掛り、パッドクリップ60の抜け止め効果を発揮することが可能となる。図6から図8(1)に示す例では、舌片62dは、先端が円弧状となるように形成している。ここで、舌片62d先端の円弧と、外周側被挟持面46に形成した穴45の円弧とが一致、あるいは穴45の円弧の方が若干大きくなるように、舌片62dの円弧を定める。このような構成とすることで、舌片62dを穴45に嵌入させた際、パッドクリップ60の抜け止め効果が得られると共に、舌片62dの幅方向への動きが拘束される。これにより、パッドクリップ60のロータ軸方向に対するズレを防止し、位置決め効果を得ることができる。
【0040】
内周側挟持片62cは、組付け状態において、内周側被挟持面50に沿う形態を採る。すなわち、ロータ円周方向に対して略平行に配置される。一方で、外周側挟持片62aは、ブレーキパッド56の配置方向側の先端部を基点として、先端部から離間するに従って内周側挟持片62cへ近づく方向へ向けた傾斜角度を有する。すなわち、挟持部62の開口部側ほど、内周側挟持片62cと外周側挟持片62aの距離が近くなるように形成されている。このような構成とすることで、耳部44を挟持した際の締め代を作ることができ、耳部44に対する付勢力を生じさせることができる。
【0041】
パッド保持部64は、挟持部62における内周側挟持片62cと、パッド当接片64a、およびパッド保持片64bを基本として構成される。パッド当接片64aは、内周側挟持片62cのブレーキパッド配置側端部の反対側に位置する端部を基点として、ロータ半径方向内周側へ向けて延設された板片である。ブレーキパッド56を組み付けていない状態では、ロータ半径方向内周側へ向かうほどサポート30におけるトルク受け面52から離間する方向の傾斜角度を有する(傾斜形態については不図示)。パッド保持片64bは、パッド当接片64aのロータ半径方向内周側端部を基点として、ブレーキパッド配置方向へ向けて延設された板片である。
【0042】
このような構成のパッド保持部64では、ブレーキパッド56が組み付けられると、内周側挟持片62cとパッド保持片64bとの間に、ブレーキパッド56におけるトルク受け部58aが配置されることとなる。このため、パッド保持部64では、内周側挟持片62cとパッド当接片64aとの接続点を基点として、パッド保持片64bがロータ半径方向内周側へ押し広げられる。よって、パッド当接片64aは、サポート30におけるトルク受け面52側へ近接するような力を受ける。
【0043】
上記のような特徴を持つディスクブレーキ装置10では、サポート30に組み付けたパッドクリップ60が脱落する虞を抑制することができる。また、上記のような特徴を持つディスクブレーキ装置10によれば、パッドクリップ60がロータ軸方向へズレることを抑制することができる。
【0044】
また、上記実施形態では、穴45に対して舌片62dは図9に示すように、その先端部全体が接触する形態となるものであるように説明した。しかしながら本発明に係るディスクブレーキ装置10を構成する上では、舌片45は図10に示すように、穴45の側壁に対して少なくとも、ロータ円周方向に1点(図10中点A)と、ロータ軸方向に2点(図10中点B、C)の接触点を持つ構成であれば良い。このような構成とすることで、脱落防止効果と、ズレ防止効果の双方を得ることができるからである。
【0045】
舌片62dは上述した例では、切り起こしにより形勢されているが、絞り加工により突出させた形態として形成してよい。これは、外周側挟持片62aの外面から内面に向けて例えば押出し治具により絞り加工することで、図8(2)のようなV字突起型舌片62d´を形成すればよい。このV字突起型舌片62d´を前記穴45の傾斜底面に適合するように形成することで、パッドクリップ60のロータ軸方向へのズレを防止することが可能である。また、図8(3)に示すように、外周側挟持片62aの外周面にロータ軸方向に沿う直線切り込みを入れ、切り込み線の片側に半球状の絞り加工を施すことで、半球型舌片62d´´を形成するようにしてもよい。
【0046】
さらに、本発明における穴45は、耳部44の先端側における平面視形状を円弧状とするものである必要性も無い。例えば、図11に示すように、先端側における穴45の平面視形状を略矩形(角部には、エンドミルの半径に応じたRが生ずる)とした場合であっても、舌片62dの先端を穴形状に合わせることで、上記実施形態と同様な効果を得ることができる。さらに、穴45の耳部先端側側壁に直線部分を形成することで、パッドクリップ60の組付け状態の安定性が向上する。
【0047】
さらにまた、外周側被挟持面46に形成する穴45の数は、1つに限らず、複数であっても良い(図12参照)。このような構成とした場合であっても、上記先端側側壁に直線部分を形成した場合と同様に、パッドクリップ60の組付け状態の安定性を向上させることができる。
【0048】
なお、上記実施形態では図6、図7に、パッドクリップ60は、ロータ100のインナ側のものとアウタ側のものとが連結された一体型のタイプを示している。しかしながら、本発明のディスクブレーキ装置10に採用可能なパッドクリップ60は、ロータ100のインナ側とアウタ側とで分割したタイプのものであっても良い。
【0049】
また、本発明に係るディスクブレーキ装置10の変形形態として図13に示すように、穴45の穿孔方向に傾きを持たせる代わりに、外周側被挟持面46に傾きを持たせるようにしても良い。具体的には、外周側被挟持面46に、耳部先端部を基点として、当該先端部から離間するに従って内周側被挟持面50へ近づく方向へ向けた傾斜角度を持たせるようにすれば良い。このような構成とすることにより、穴45の穿孔方向をロータ半径方向に沿わせた場合であっても、上記実施形態と同様な構成を採ることができる。すなわち、いずれの構成とした場合であっても、穴45が、外周側被挟持面46に対して、耳部先端部側に耳部基端部側に比べて高い側壁を有するような傾きを持って形成されることとなる。
【0050】
なお、外周側被挟持面46に傾きを持たせた上で、穴45の穿孔方向にも傾きを持たせるような形態を採った場合であっても、本発明に係るディスクブレーキ装置10の一部とみなすことができることはいうまでも無い。
【符号の説明】
【0051】
10………ディスクブレーキ装置、20………キャリパ、22………キャリパ本体、24………アーム部、26………爪部、28………ブリッジ部、30………サポート、32………トルク受け部、32a………ロータ回入側トルク受け部、32b………ロータ回出側トルク受け部、34………トルク受け部、34a………ロータ回入側トルク受け部、34b………ロータ回出側トルク受け部、36………ブリッジ部、38………ブリッジ部、40………ロータパス部、41………キャリパ保持用袋穴、44………耳部、45………穴、46………外周側被挟持面、48………先端面、48a………面取り部、50………内周側被挟持面、52………トルク受け面、56………ブレーキパッド、56a………インナ側ブレーキパッド、56b………アウタ側ブレーキパッド、58………プレート本体、58a………トルク受け部、60………パッドクリップ、62………挟持部、62a………外周側挟持片、62b………連結片、62c………内周側挟持片、62d………舌片、64………パッド保持部、64a………パッド当接片、64b………パッド保持片、100………ロータ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキ装置に係り、特にディスクブレーキ装置を構成するサポートに組み付けるパッドクリップの脱落を防止するのに好適なディスクブレーキ装置およびサポートの穴加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクブレーキ装置におけるサポートに形成された凸状の耳部に対して、当該耳部を挟持するようにパッドクリップを組み付ける構造は、従来より実用化されている。
【0003】
このような組付け構造を採用するにあたって問題視されてきた点は、サポートの耳部を挟持する挟持部と、ブレーキパッドの凸片(トルク受け部)を保持するパッド保持部との相対的な力の反作用によって生じるパッドクリップの倒れ込み(脱落)である。
【0004】
具体的には、図14、図15に示すように、パッドクリップ2をサポート1に組付けた状態では、パッド保持部5は、ブレーキパッド配置方向へ浮き上がった状態となる(図14参照)。これに対し、ブレーキパッドを組み付けると、パッド保持部5はサポート1におけるトルク受け面側へ押し付けられる方向の力(矢印Aの方向の力)を受ける(図15参照)。このような力を受けたパッドクリップ2には、挟持部3におけるロータ内周側挟持片4を基点として、ブレーキパッド配置方向へ倒れ込もうとする力(矢印Bの方向の力)が生じることとなる(図15参照)。このような力が生じた場合、サポート1からパッドクリップ2が脱落する危険性がある。
【0005】
このような問題を解決するために、パッドクリップ、およびその組付け構造として、種々の形態が提案されている。例えば、特許文献1には、耳部の外周側被挟持面と内周側被挟持面とを平行に形成した上で、外周側被挟持面に、ロータ軸方向に沿った溝を設ける構成が開示されている。また、特許文献1では、パッドクリップの挟持部を構成する外周側挟持片に、対向する外周側被挟持面側へ突出させた突起を設ける構成が開示されている。そして特許文献1では、外周側挟持片に設けた突起を外周側被挟持面に設けた溝に嵌め込むことで組付け状態を保持することが開示されている。
このような構成とすることによれば、楔効果により、パッドクリップの抜け止め性を高めることができる。
【0006】
また、特許文献2にも、耳部の外周側被挟持面と内周側被挟持面とを平行に形成した上で、外周側被挟持面に、ロータ軸方向に沿った溝を設ける構成が開示されている。また、特許文献2では、パッドクリップの挟持部を構成する外周側挟持片をロータ軸方向に2つに分割し、押さえ爪と上部片を構成している。押さえ爪は、ブレーキパッド配置方向に設けられた連結片から延設された切片をフック状に形成した片である。押さえ爪は、その先端を溝の段差部に当接させると共に、内周側挟持面側への付勢力を付与することで、挟持力も生じさせる。一方、上部片は、耳部に接触することが無い。
【0007】
このような構成とすることで、押さえ爪による楔効果を得ることができ、パッドクリップの抜け止め性を高めることができる。また、押さえ爪は、ブレーキパッド配置方向に位置する連結片を基点として分割・延設されているため、組付け状態が不完全である場合には、撓みによる浮き上がりが生じ、組付け状態の確認も行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3806815号公報
【特許文献2】特開2010−107001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献に開示されているような構成のディスクブレーキ装置であれば、その構造により、サポートからパッドクリップが脱落することを抑制する効果を高めることができると考えられる。
【0010】
しかし、上記特許文献に開示されている組付け構造には、次のような課題がある。例えば特許文献1、2に開示されているディスクブレーキ装置では、耳部のロータ外周側被挟持面に対して、ロータ軸方向に沿った溝を設け、この溝にパッドクリップに設けた舌片を引掛けるように構成している。
【0011】
このような構成の場合、パッドクリップは、ロータ円周方向に対する倒れ込み防止効果を得ることができる。しかし、溝に引掛けられた舌片は、ロータ軸方向には拘束されていない。このため、パッドクリップはロータ軸方向に対する方向へのズレが生ずる虞がある。こうした場合、パッドクリップがロータ軸方向へズレることを防止するための押え片を設ける必要が生じ、パッドクリップを形成するための板取性の悪化を招く。
また、パッドクリップに押え片を設けた場合には、当該押え片が当接するサポート側の面の加工が必要となり、加工コストの高騰を招く。
【0012】
そこで本発明では、パッドクリップの脱落を防止し、かつサポートをロータ軸方向から押える専用の押さえ片を設けることなくパッドクリップがロータ軸方向へズレることを防止することができるディスクブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明に係るディスクブレーキ装置は、サポートの耳部をロータ半径方向内周側と外周側から挟持する挟持部を有するパッドクリップを備えるディスクブレーキ装置であって、前記サポートは、前記耳部におけるロータ半径方向外周側被挟持面に凹状の穴を有すると共に、前記穴は、前記外周側被挟持面に対して、前記耳部先端部側に前記耳部基端部側に比べて高い側壁を有するように傾きを持って形成され、前記パッドクリップは、前記挟持部におけるロータ半径方向外周側挟持片に、前記穴に嵌入する舌片を備えることを特徴とする。
【0014】
また、上記のような特徴を有するディスクブレーキ装置では、前記外周側被挟持面はロータ円周方向に沿って形成し、前記穴の穿孔方向は、前記サポートの中心線とのなす角を鋭角となるように傾きを持って形成することにより穴底面を傾斜させたことを特徴とする。
【0015】
このような構成とした場合、外周側被挟持面は、ロータ円周方向に略平行となり、穴は、サポートのロータ円周方向中心側からロータの回入側、回出側それぞれへ向けた傾きを持って形成されることとなる。このため、特殊工具を用いる事無く、穿孔のためのエンドミルの刃先を傾斜させるだけで、近接する他の要素を避けて穴形成を行うことが可能となる。
【0016】
また、上記のような特徴を有するディスクブレーキ装置では、前記外周側被挟持面は、前記耳部先端部を基点として、当該先端部から離間するに従ってロータ半径方向内周側被挟持面へ近づく方向へ向けた傾斜角度を有し、前記穴は、ロータ半径方向に沿った方向を穿孔方向として形成することもできる。
【0017】
このような構成とした場合、穴はロータ半径方向に対して略平行に形成されることとなり、外周側被挟持面は、耳部の基端部側ほどロータ半径方向の厚みが薄くなるような傾きを持つこととなる。このため、挟持部における外周側挟持片の挟持角度が鋭角となるため、パッドクリップの抜け止め効果を高めることができる。
【0018】
また、上記のような特徴を有するディスクブレーキ装置では、前記穴の側壁と前記舌片との接触点がロータ円周方向、ロータ軸方向のそれぞれに存在することが望ましい。
このような構成とすることで、パッドクリップの位置決めを舌片により確実に行うことができる。
【0019】
また、このような特徴を有する場合には、前記穴における前記耳部先端部側側壁の平面視形状と、前記舌片の先端部形状と、を共に円弧状とすると良い。
このような構成とすることで、穴形状は、エンドミルによる座グリ加工のみで側壁形状の形成ができ、舌片は、打ち抜きにより形状形成ができる。よって、加工性の向上を図ることができる。
【0020】
また、上記目的を達成するための本発明に係るサポートの穴加工方法は、耳部におけるロータ半径方向外周側被挟持面に凹状の穴を有するディスクブレーキ装置用サポートの穴加工方法であって、前記サポートにおけるロータ円周方向中心を基準として、ロータ回入側においてはロータ回入側に、ロータ回出側においてはロータ回出側に先端を向けた傾きを持ったエンドミルにより、前記穴の切削加工を行うようにすると良い。
【0021】
このような特徴を有する加工方法によれば、特殊工具を使用することなく穴加工を行うことができる。また、エンドミルの先端を傾けて穿孔を行うことで、サポートを構成する近接要素(例えばロータパス部)等に干渉することなく穴をあけることができる。
【0022】
さらに、上記のような特徴を有するサポートの穴加工方法において、前記耳部におけるロータ半径方向外周側被挟持面に設けられる穴の切削加工は、前記エンドミルの直径と一致した座グリ加工であるようにすると良い。
このような方法を採ることにより、穴加工の加工時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0023】
上記のような特徴を有するディスクブレーキ装置によれば、パッドクリップの脱落を防止することができる。また、舌片を穴に嵌入させることにより、パッドクリップがロータ軸方向へズレることも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態に係るディスクブレーキ装置の構成を示す斜視図である。
【図2】サポートの構成を示す左側面図である。
【図3】図2におけるA−A断面を示す図である。
【図4】サポートの構成と、穴を形成するためのエンドミルの傾斜状態を示す正面図である。
【図5】図2におけるA−A断面におけるブレーキパッド、およびパッドクリップの組付けを行っていない状態のサポートを示し、エンドミルによる穴の穿孔を説明するための図である。
【図6】パッドクリップの正面構成を示す図である。
【図7】パッドクリップの平面構成を示す図である。
【図8】パッドクリップの右側面構成を示す図であり、(1)は半円形状の舌片を設けた例を示し、(2)はV字突起型舌片を設けた例を示し、(3)は球状舌片を設けた例を示している。
【図9】実施形態に係るディスクブレーキ装置における外周側被挟持面に対する舌片の嵌入状態を示す平面図である。
【図10】舌片の先端形状を円弧以外とした場合の嵌入状態の例を示す平面図である。
【図11】穴の耳部先端側側壁の平面視形状を円弧以外とした場合の例を示す平面図である。
【図12】穴、および舌片を複数配置した場合の例を示す平面図である。
【図13】耳部の外周側被挟持面に傾斜を持たせた変形例を示す部分拡大断面図である。
【図14】従来のディスクブレーキ装置におけるサポートに対してパッドクリップのみを組付けた状態の例を示す図である。
【図15】従来のディスクブレーキ装置におけるサポートに対して組付けたパッドクリップに、ブレーキパッドを組付けた際に生じる力を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のディスクブレーキ装置、およびサポートの穴加工方法に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
まず、図1から図3を参照して、ディスクブレーキ装置10の全体構成についての概要を説明する。本発明に係るディスクブレーキ装置10は、一般的なフローティング型のディスクブレーキ装置と同様な構成を基本とする。
【0026】
すなわち、ロータ100と、サポート30、キャリパ20、およびインナ側ブレーキパッド56a(図2参照)、アウタ側ブレーキパッド56b(図2参照)を基本として構成される。ロータ100は、摺動面を備えた回転板であり、摺動面と直交する方向に回転軸を備える。
【0027】
サポート30は、図示しない車両側係止部に固定され、後述するキャリパ20や、インナ側ブレーキパッド56a、およびアウタ側ブレーキパッド56bのロータ軸方向への移動を可能に保持する保持部材である。サポート30は、ロータ100のインナ側とアウタ側のそれぞれに、ロータ回入側トルク受け部32a,34aと、ロータ回出側トルク受け部32b,34bとを有する。ロータのインナ側におけるロータ回入側トルク受け部32aとアウタ側におけるロータ回入側トルク受け部34a、およびインナ側におけるロータ回出側トルク受け部32bとアウタ側におけるロータ回出側トルク受け部34bは、ロータ100の半径方向外周側に設けられたロータパス部40によりそれぞれ接続されている。
【0028】
また、ロータ100のインナ側、アウタ側共に、ロータ回入側トルク受け部32a,34aと、ロータ回出側トルク受け部32b,34bとは、ブリッジ部36,38により接続されている。なお、ロータ100のインナ側に配置されたロータ回入側トルク受け部32aとロータ回出側トルク受け部32bとにはそれぞれ、固定用雌ねじ孔42と、キャリパ保持用袋穴41(図4参照)が形成されている。ロータ回入側トルク受け部32a、ロータ回出側トルク受け部32bにおける詳細な構成については、後述する。
【0029】
また、キャリパ20は、ロータ100に対してインナ側ブレーキパッド56aとアウタ側ブレーキパッド56bとを押し付ける役割を担う。キャリパ20は、キャリパ本体22と爪部26、ブリッジ部28、およびアーム部24を有する。キャリパ本体22には、シリンダが設けられ、内部にカップ状のピストン(不図示)が配置される。爪部26は、ロータ100を介してキャリパ本体22の対向位置に配置される。ブリッジ部28は、ロータ100の半径方向外周側に配置され、ロータ100を跨いでキャリパ本体22と爪部26とを連結する役割を担う。アーム部24は、キャリパ20をサポート30へ保持する基点となる役割を担う。アーム部24は、キャリパ本体22を基点として、ロータ回入側と回出側のそれぞれの方向へ延設される。アーム部24の先端は、サポート30におけるキャリパ保持用袋穴41の対向位置とし、スライドピン70を介してサポート30に対してロータ軸方向への摺動を可能に保持される。
【0030】
インナ側ブレーキパッド56a、およびアウタ側ブレーキパッド56bは、上述したロータ100の摺動面を挟持して、摩擦力を発生させる役割を担う。摩擦力を生じさせたインナ側ブレーキパッド56aとアウタ側ブレーキパッド56bの動きを拘束することで、車両に対する制動力を生じさせるためである。インナ側ブレーキパッド56a、アウタ側ブレーキパッド56bは共に、プレッシャプレートと、ライニングを基本として構成される。プレッシャプレートは、インナ側ブレーキパッド56aではピストンによって、アウタ側ブレーキパッド56bでは爪部26によって、それぞれ押圧されることとなる金属板である。図3にはアウタ側が表示されている。プレッシャプレートは、プレート本体58と、トルク受け部58aとから成る。プレート本体58は、詳細を後述するライニングを貼付するための領域である。トルク受け部58aは、サポート30におけるトルク受け部32,34に当接することで制動力を生じさせる部位である。プレート本体58は、ロータ100における摺動面の配置形態に沿った方向の面を持つように形成、配置されている。また、トルク受け部58aは、プレート本体58におけるロータ回入側側面と、ロータ回出側側面からそれぞれ、ロータ100の回入側と回出側に延設されている矩形突出部である。
【0031】
次に、図3〜図8を参照して、サポート30におけるトルク受け部32(ロータ回入側トルク受け部32a,ロータ回出側トルク受け部32b),34(ロータ回入側トルク受け部34a,ロータ回出側トルク受け部34b)の詳細な構造と、このトルク受け部32,34に組付けられるパッドクリップ60の構成に関する詳細を説明する。
【0032】
ロータ100のインナ側、アウタ側、回入側、回出側のそれぞれに配置されたトルク受け部32,34はいずれも、図3に示すように、ブレーキパッド56(インナ側ブレーキパッド56a、アウタ側ブレーキパッド56b)配置方向に向けて突出した、突起状の耳部44と、当該耳部44に対して凹状に形成されたトルク受け面52とを有する。
【0033】
耳部44は、ロータ半径方向外周側とロータ半径方向内周側に、詳細を後述するパッドクリップ60による被挟持面(外周側被挟持面46、および内周側被挟持面50)を有する(図4参照)。内周側被挟持面50、および外周側被挟持面46は共に、ロータ円周方向に対して略平行となるように形成されている。本実施形態においては、外周側被挟持面46に凹状の穴45を形成している。穴45の底面は、ロータ半径方向に対して、傾斜を持つように形成されている。具体的には、ロータ回入側トルク受け部32a,34aでは、穴底がロータ回入側から回出側に向け深くなるような傾きを持つように穿孔方向を定めて形成している。一方、ロータ回出側トルク受け部32b,34bでは、穴底がロータ回出側から回入側に向けて深くなるような傾きを持つように穿孔方向を定めて形成している。したがって、それぞれの穴の穿孔方向(穴底に立つ垂線)とサポート30の中心線α(サポート中央部を通るロータ半径方向線)との成す角度θは鋭角となる。
【0034】
穴45の形態をこのようにすることで、特殊工具を用いる事無く、エンドミルの刃先に傾斜を持たせるだけで、トルク受け部32,34の他の構成要素を避けつつ、外周側被挟持面46に適切な大きさの穴を形成することが可能となる。ここで、中心線αとエンドミルの成す角(傾斜角度)θは、前述のトルク受け部32,34の他の構成要素を避けることができる角度であれば良く、0°<θ<90°の範囲の中で、適宜選択すれば良いが、望ましくは、0°<θ<45°とすると良い。エンドミルの傾斜角度が大きくなると、穴45の側壁による舌片62d(図6から図8(1)参照)の引掛り効果が低下する虞が生ずるからである。
【0035】
なお、穴45の穿孔をエンドミルで行うことにより、穴底を平坦面としつつ、耳部44の先端側に深さを持たせることができる。これにより、詳細を後述するパッドクリップ60における舌片62dの先端部が、耳部44先端側の側壁、すなわちブレーキパッド配置方向において、穴底と外周側被挟持面46との間の段差に引っ掛かることになる。また、穴45の穿孔をエンドミルで行うことにより、耳部44先端側における穴45の側壁の平面視形状は、円弧状となる。このため、舌片62dの先端を当該側壁に当接させることで、パッドクリップ60がロータ軸方向へズレることを抑制することが可能となる。
【0036】
また、穴45の切削加工は、形成目的とする穴45の直径と一致した直径を持つエンドミルを用いた座グリ加工とすると良い。エンドミルによる切削方向を1方向とすることができ、加工時間の短縮を図ることができるからである。
【0037】
トルク受け面52は、サポート30を正面から見た際に、耳部44の下側、すなわちロータ半径方向内周側に、ロータ軸方向に向けて形成された溝である。このため、耳部44を基準とした場合には、凹状の体を成すこととなる。トルク受け面52は、ブレーキパッド56におけるトルク受け部58aが当接する部位である。このため、当接部の当接端面の形状に沿うように加工されている(図3から図5に示す例では当接面は平坦面)。
【0038】
このような構成を持つサポート30のトルク受け部32,34に組付けられるパッドクリップ60は、弾性変形可能な金属板で形成されており、少なくとも、挟持部62と、パッド保持部64とを有する。図6〜図8(1)にその詳細を示す。挟持部62は、サポート30における耳部44をロータ半径方向内周側と外周側から挟み込み、パッドクリップ60のサポート30への組付け状態を安定させる役割を担う。挟持部62は、内周側挟持片62cと、外周側挟持片62a、および連結片62bから構成される。内周側挟持片62cは、耳部44における内周側被挟持面50に付勢する板片であり、外周側挟持片62aは、外周側被挟持面46に付勢する板片である。本実施形態に係るパッドクリップ60では、外周側挟持片62aから外周側被挟持面46側へ向けて突出する舌片62dが切り起こしにより設けられている。そして、連結片62bは、内周側挟持片62cと外周側挟持片62aを連結する板片である。
【0039】
舌片62dは、ブレーキパッド配置側、すなわち耳部44の先端側が先端となるように形成される。これにより、外周側被挟持面46に形成した穴45の側壁に、舌片62dの先端が引掛り、パッドクリップ60の抜け止め効果を発揮することが可能となる。図6から図8(1)に示す例では、舌片62dは、先端が円弧状となるように形成している。ここで、舌片62d先端の円弧と、外周側被挟持面46に形成した穴45の円弧とが一致、あるいは穴45の円弧の方が若干大きくなるように、舌片62dの円弧を定める。このような構成とすることで、舌片62dを穴45に嵌入させた際、パッドクリップ60の抜け止め効果が得られると共に、舌片62dの幅方向への動きが拘束される。これにより、パッドクリップ60のロータ軸方向に対するズレを防止し、位置決め効果を得ることができる。
【0040】
内周側挟持片62cは、組付け状態において、内周側被挟持面50に沿う形態を採る。すなわち、ロータ円周方向に対して略平行に配置される。一方で、外周側挟持片62aは、ブレーキパッド56の配置方向側の先端部を基点として、先端部から離間するに従って内周側挟持片62cへ近づく方向へ向けた傾斜角度を有する。すなわち、挟持部62の開口部側ほど、内周側挟持片62cと外周側挟持片62aの距離が近くなるように形成されている。このような構成とすることで、耳部44を挟持した際の締め代を作ることができ、耳部44に対する付勢力を生じさせることができる。
【0041】
パッド保持部64は、挟持部62における内周側挟持片62cと、パッド当接片64a、およびパッド保持片64bを基本として構成される。パッド当接片64aは、内周側挟持片62cのブレーキパッド配置側端部の反対側に位置する端部を基点として、ロータ半径方向内周側へ向けて延設された板片である。ブレーキパッド56を組み付けていない状態では、ロータ半径方向内周側へ向かうほどサポート30におけるトルク受け面52から離間する方向の傾斜角度を有する(傾斜形態については不図示)。パッド保持片64bは、パッド当接片64aのロータ半径方向内周側端部を基点として、ブレーキパッド配置方向へ向けて延設された板片である。
【0042】
このような構成のパッド保持部64では、ブレーキパッド56が組み付けられると、内周側挟持片62cとパッド保持片64bとの間に、ブレーキパッド56におけるトルク受け部58aが配置されることとなる。このため、パッド保持部64では、内周側挟持片62cとパッド当接片64aとの接続点を基点として、パッド保持片64bがロータ半径方向内周側へ押し広げられる。よって、パッド当接片64aは、サポート30におけるトルク受け面52側へ近接するような力を受ける。
【0043】
上記のような特徴を持つディスクブレーキ装置10では、サポート30に組み付けたパッドクリップ60が脱落する虞を抑制することができる。また、上記のような特徴を持つディスクブレーキ装置10によれば、パッドクリップ60がロータ軸方向へズレることを抑制することができる。
【0044】
また、上記実施形態では、穴45に対して舌片62dは図9に示すように、その先端部全体が接触する形態となるものであるように説明した。しかしながら本発明に係るディスクブレーキ装置10を構成する上では、舌片45は図10に示すように、穴45の側壁に対して少なくとも、ロータ円周方向に1点(図10中点A)と、ロータ軸方向に2点(図10中点B、C)の接触点を持つ構成であれば良い。このような構成とすることで、脱落防止効果と、ズレ防止効果の双方を得ることができるからである。
【0045】
舌片62dは上述した例では、切り起こしにより形勢されているが、絞り加工により突出させた形態として形成してよい。これは、外周側挟持片62aの外面から内面に向けて例えば押出し治具により絞り加工することで、図8(2)のようなV字突起型舌片62d´を形成すればよい。このV字突起型舌片62d´を前記穴45の傾斜底面に適合するように形成することで、パッドクリップ60のロータ軸方向へのズレを防止することが可能である。また、図8(3)に示すように、外周側挟持片62aの外周面にロータ軸方向に沿う直線切り込みを入れ、切り込み線の片側に半球状の絞り加工を施すことで、半球型舌片62d´´を形成するようにしてもよい。
【0046】
さらに、本発明における穴45は、耳部44の先端側における平面視形状を円弧状とするものである必要性も無い。例えば、図11に示すように、先端側における穴45の平面視形状を略矩形(角部には、エンドミルの半径に応じたRが生ずる)とした場合であっても、舌片62dの先端を穴形状に合わせることで、上記実施形態と同様な効果を得ることができる。さらに、穴45の耳部先端側側壁に直線部分を形成することで、パッドクリップ60の組付け状態の安定性が向上する。
【0047】
さらにまた、外周側被挟持面46に形成する穴45の数は、1つに限らず、複数であっても良い(図12参照)。このような構成とした場合であっても、上記先端側側壁に直線部分を形成した場合と同様に、パッドクリップ60の組付け状態の安定性を向上させることができる。
【0048】
なお、上記実施形態では図6、図7に、パッドクリップ60は、ロータ100のインナ側のものとアウタ側のものとが連結された一体型のタイプを示している。しかしながら、本発明のディスクブレーキ装置10に採用可能なパッドクリップ60は、ロータ100のインナ側とアウタ側とで分割したタイプのものであっても良い。
【0049】
また、本発明に係るディスクブレーキ装置10の変形形態として図13に示すように、穴45の穿孔方向に傾きを持たせる代わりに、外周側被挟持面46に傾きを持たせるようにしても良い。具体的には、外周側被挟持面46に、耳部先端部を基点として、当該先端部から離間するに従って内周側被挟持面50へ近づく方向へ向けた傾斜角度を持たせるようにすれば良い。このような構成とすることにより、穴45の穿孔方向をロータ半径方向に沿わせた場合であっても、上記実施形態と同様な構成を採ることができる。すなわち、いずれの構成とした場合であっても、穴45が、外周側被挟持面46に対して、耳部先端部側に耳部基端部側に比べて高い側壁を有するような傾きを持って形成されることとなる。
【0050】
なお、外周側被挟持面46に傾きを持たせた上で、穴45の穿孔方向にも傾きを持たせるような形態を採った場合であっても、本発明に係るディスクブレーキ装置10の一部とみなすことができることはいうまでも無い。
【符号の説明】
【0051】
10………ディスクブレーキ装置、20………キャリパ、22………キャリパ本体、24………アーム部、26………爪部、28………ブリッジ部、30………サポート、32………トルク受け部、32a………ロータ回入側トルク受け部、32b………ロータ回出側トルク受け部、34………トルク受け部、34a………ロータ回入側トルク受け部、34b………ロータ回出側トルク受け部、36………ブリッジ部、38………ブリッジ部、40………ロータパス部、41………キャリパ保持用袋穴、44………耳部、45………穴、46………外周側被挟持面、48………先端面、48a………面取り部、50………内周側被挟持面、52………トルク受け面、56………ブレーキパッド、56a………インナ側ブレーキパッド、56b………アウタ側ブレーキパッド、58………プレート本体、58a………トルク受け部、60………パッドクリップ、62………挟持部、62a………外周側挟持片、62b………連結片、62c………内周側挟持片、62d………舌片、64………パッド保持部、64a………パッド当接片、64b………パッド保持片、100………ロータ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サポートの耳部をロータ半径方向内周側と外周側から挟持する挟持部を有するパッドクリップを備えるディスクブレーキ装置であって、
前記サポートは、前記耳部におけるロータ半径方向外周側被挟持面に凹状の穴を有すると共に、
前記穴は、前記外周側被挟持面に対して、前記耳部先端部側に前記耳部基端部側に比べて高い側壁を有するように傾きを持って形成され、
前記パッドクリップは、前記挟持部におけるロータ半径方向外周側挟持片に、前記穴に嵌入する舌片を備えることを特徴とするディスクブレーキ装置。
【請求項2】
前記外周側被挟持面はロータ円周方向に沿って形成し、
前記穴の穿孔方向は、前記サポートの中心線との成す角を鋭角となるように傾きを持って形成することにより穴底面を傾斜させたことを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ装置。
【請求項3】
前記外周側被挟持面は、前記耳部先端部を基点として、当該先端部から離間するに従ってロータ半径方向内周側被挟持面へ近づく方向へ向けた傾斜角度を有し、
前記穴は、ロータ半径方向に沿った方向を穿孔方向として形成したことを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ装置。
【請求項4】
前記穴の側壁と前記舌片との接触点がロータ円周方向、ロータ軸方向のそれぞれに存在することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のディスクブレーキ装置。
【請求項5】
前記穴における前記耳部先端部側側壁の平面視形状と、
前記舌片の先端部形状と、
を共に円弧状としたことを特徴とする請求項4に記載のディスクブレーキ装置。
【請求項6】
耳部におけるロータ半径方向外周側被挟持面に凹状の穴を有するディスクブレーキ装置用サポートの穴加工方法であって、
前記サポートにおけるロータ円周方向中心を基準として、ロータ回入側においてはロータ回入側に、ロータ回出側においてはロータ回出側に先端を向けた傾きを持ったエンドミルにより、前記穴の切削加工を行うことを特徴とするサポートの穴加工方法。
【請求項7】
前記穴の切削加工は、前記エンドミルの直径と一致した座グリ加工であることを特徴とする請求項6に記載のサポートの穴加工方法。
【請求項1】
サポートの耳部をロータ半径方向内周側と外周側から挟持する挟持部を有するパッドクリップを備えるディスクブレーキ装置であって、
前記サポートは、前記耳部におけるロータ半径方向外周側被挟持面に凹状の穴を有すると共に、
前記穴は、前記外周側被挟持面に対して、前記耳部先端部側に前記耳部基端部側に比べて高い側壁を有するように傾きを持って形成され、
前記パッドクリップは、前記挟持部におけるロータ半径方向外周側挟持片に、前記穴に嵌入する舌片を備えることを特徴とするディスクブレーキ装置。
【請求項2】
前記外周側被挟持面はロータ円周方向に沿って形成し、
前記穴の穿孔方向は、前記サポートの中心線との成す角を鋭角となるように傾きを持って形成することにより穴底面を傾斜させたことを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ装置。
【請求項3】
前記外周側被挟持面は、前記耳部先端部を基点として、当該先端部から離間するに従ってロータ半径方向内周側被挟持面へ近づく方向へ向けた傾斜角度を有し、
前記穴は、ロータ半径方向に沿った方向を穿孔方向として形成したことを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ装置。
【請求項4】
前記穴の側壁と前記舌片との接触点がロータ円周方向、ロータ軸方向のそれぞれに存在することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のディスクブレーキ装置。
【請求項5】
前記穴における前記耳部先端部側側壁の平面視形状と、
前記舌片の先端部形状と、
を共に円弧状としたことを特徴とする請求項4に記載のディスクブレーキ装置。
【請求項6】
耳部におけるロータ半径方向外周側被挟持面に凹状の穴を有するディスクブレーキ装置用サポートの穴加工方法であって、
前記サポートにおけるロータ円周方向中心を基準として、ロータ回入側においてはロータ回入側に、ロータ回出側においてはロータ回出側に先端を向けた傾きを持ったエンドミルにより、前記穴の切削加工を行うことを特徴とするサポートの穴加工方法。
【請求項7】
前記穴の切削加工は、前記エンドミルの直径と一致した座グリ加工であることを特徴とする請求項6に記載のサポートの穴加工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−96454(P2013−96454A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237810(P2011−237810)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】
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