ディスク装置及びディスクカートリッジ
【課題】可撓性のある光ディスクに対し、ピックアップのアクセス精度の向上を図る。
【解決手段】回転するディスク20に対し情報の再生又は記録が行なわれる際に、安定化部材30の作用面によりディスクに生じる面ぶれが抑制された光ディスクに対し、ピックアップ26を作用面の中心を通る母線よりも、例えばディスクの回転方向上流側で、かつ中心母線に対し所定の角度をなす直線に沿って移動する。すなわち、面ぶれによるディスクの振幅の影響が少ない位置に沿って、ピックアップの経路を設定する。
【解決手段】回転するディスク20に対し情報の再生又は記録が行なわれる際に、安定化部材30の作用面によりディスクに生じる面ぶれが抑制された光ディスクに対し、ピックアップ26を作用面の中心を通る母線よりも、例えばディスクの回転方向上流側で、かつ中心母線に対し所定の角度をなす直線に沿って移動する。すなわち、面ぶれによるディスクの振幅の影響が少ない位置に沿って、ピックアップの経路を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク装置及びディスクカートリッジに係り、さらに詳しくは、ディスクに対し情報の記録及び再生の少なくとも一方を行なうディスク装置、及びディスクを収容するディスクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ放送のデジタル化が開始されるなど、情報のデジタル化に伴い記録媒体としてのディスクへ記録される情報の高密度化に対する要求が高まっている。この要求に対する主な方策としては、情報の記録又は再生のために用いられるレーザ光のスポット径を小さくすることがあげられる。
【0003】
レーザ光のスポット径を小さくするには、その波長を短くし、対物レンズの開口数(NA)を大きくすることが有効である。レーザ光の波長に関しては、従来からCD(Compact Disk)には、例えば780nm程度の波長の近赤外光が用いられ、DVD(Digital Versatile Disk)には、例えば650nm程度の波長の赤色光が用いられているが、近年では、青紫色のレーザ光を発振する半導体レーザが開発され、今後400nm近傍の波長のレーザ光が用いられることが予想されている。また、対物レンズについては、従来、CD用の対物レンズのNAは0.5未満であり、DVD用の対物レンズのNAは0.6程度であったが、今後はさらにNAが増大する傾向にある。
【0004】
しかしながら、光の波長を短くすることや、対物レンズのNAを増大することは、対物レンズを含む光学系の焦点深度の狭小化を招く。このため、フォーカスサーボ精度を向上させる必要が生じる。また、対物レンズのNAが増大すると、その対物レンズとディスクの記録面との距離を小さく設定する必要があるため、ディスクの面ぶれを小さくする必要がある。その理由は、始動時のフォーカスサーボを開始する直前に対物レンズを含むピックアップとディスクとが接触するなどの事態を回避する必要があるからである。
【0005】
このような背景から、可撓性を有するシート(薄膜)に記録面が形成されたディスクの開発がすすめられ、このディスクを安定化板上で回転させることにより、ディスクに生じる面ぶれを空気力学的に抑制するディスク装置が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に記載されているディスク装置は、円形板の両端を折り曲げて形成されたバックプレートと呼ばれる安定化部材を備え、ディスクを回転させて情報の記録又は再生を行なう際には、バックプレートをディスクの記録面に押し当ててヘッド近傍の面ぶれを抑制しようとするものである。この方法では、光ディスクは凹面を形成する平面によって規定される折れ曲がりの部分に追従して非常に特異な屈曲動作を行う必要があり、回転の高速化にともなって屈曲動作が追いつかなくなってしまうことがある。
【0007】
一方、非特許文献1に記載されているディスク装置は、サドルプレートと呼ばれる安定化板と、U字型スタビライザ(U-shaped stabilizer)とよばれる安定化部材を備え、ディスクに対し情報の記録又は再生を行なう際には、ディスクをU字型スタビライザのギャップに挟んだ状態で回転させるとともに、サドルプレートを用いて負圧力を作用させ、ディスクを前述した特許文献1に記載のディスク装置とは逆方向へ湾曲させることにより、面ぶれをギャップ内の特定領域で選択的に安定化させようとするものである。この方法では、回転を高速化するとサドルプレートによって発生する負圧がディスクに作用する遠心力に負けて、最終的にディスクを所望の湾曲形状にすることができなくなり、ギャップ内の特定領域においても面振れが増大してしまうという不都合がある。
【0008】
ところで、特許文献1には、連続的に一様に曲がった湾曲面(以下、連続面という)を有する安定化部材は可撓性を有する光ディスク媒体の安定化には不適であるとの記述があるが、鋭意検討の結果、発明者等は回転数が4000rpmを越える領域では、この連続面が可撓性ディスクの安定化に有効に作用することをつきとめた。さらに、単純な連続面を有する安定化部材では、連続面がディスクに対し凹形状である場合には、連続面の中心を通る母線近傍の面ぶれ特性よりも、その回転方向下流側での面ぶれ特性のほうが安定しており、連続面がディスクに対し凸形状である場合には、連続面の中心を通る母線近傍の面ぶれ特性よりも、その回転方向下流側での面ぶれ特性のほうが安定していることが判明した。
【0009】
【特許文献1】特開昭57−33619号公報
【非特許文献1】「オプティカル・リードアウト・オブ・ビデオディスク」 アイイーイーイー・トランザクション・オン・コンシューマー・エレクトロニクス(“OPTICAL READOUT OF VIDEODISC”,IEEE TRANSACTION ON CONSUMER ELECTRONICS),1976年11月、P.304−308
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はかかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、可撓性のあるディスクに対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方を向上することが可能なディスク装置を提供することにある。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、可撓性のあるディスクに対して情報の再生及び記録の少なくとも一方を行なうヘッドのアクセス精度の向上を図ることが可能なディスクカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第1の観点からすると、回転するディスクの記録面に沿って移動するヘッドと、前記ディスクに対向可能に配置された安定化部材と、を備えるディスク装置において、前記安定化部材の前記ディスクに対向する対向面は、その中心を通る中心母線を対称軸とする湾曲面を含み、前記ヘッドは前記中心母線からオフセットした経路に沿って往復移動することを特徴とするディスク装置である。
【0013】
これによれば、回転するディスクに対し情報の再生又は記録が行なわれる際には、安定化部材の対向面によりディスクに生じる面ぶれが抑制され、ディスク装置のヘッドは、面ぶれが最も抑制された経路となる、対向面の中心を通る母線(以下、中心母線ともいう)からオフセットした経路に沿って移動する。
【0014】
したがって、ヘッドがディスクの回転方向に関し中心母線と同一の位置を移動する場合に比較して、ヘッドのディスクに対するアクセス精度が向上し、結果的にディスクに対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方の向上を図ることが可能となる。
【0015】
本発明は、第2の観点からすると、回転するディスクの記録面に沿って移動するヘッドと、前記ディスクに対向可能に配置された安定化部材と、を備えるディスク装置において、前記安定化部材の前記ディスクに対向する対向面は、その中心を通る中心母線を対称軸とする凹状の湾曲面を含み、前記中心母線を含む領域が平坦面であることを特徴とするディスク装置である。
【0016】
これによれば、回転するディスクに対し情報の再生又は記録が行なわれる際には、安定化部材の対向面によりディスクに生じる面ぶれが抑制される。したがって、ヘッドのディスクに対するアクセス精度が向上し、結果的にディスクに対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方の向上を図ることが可能となる。
【0017】
本発明は第3の観点からすると、可撓性を有するディスクを回転可能に収納するケーシングと、前記ディスクに対向して配置された安定化部材と、を備えるディスクカートリッジにおいて、前記安定化部材の前記ディスクに対向する対向面は、その中心を通る中心母線を対称軸とする湾曲面を含み、前記ケーシングには、前記ディスクの記録面に対して情報の記録及び再生の少なくとも一方を行なうヘッドの移動経路を規定するスロットが、前記中心母線からオフセットした位置に形成されていることを特徴とするディスクカートリッジである。
【0018】
これによれば、回転するディスクに対し情報の再生又は記録が行なわれる際には、安定化部材の対向面によりディスクに生じる面ぶれが抑制され、ディスク装置のヘッドは、面ぶれが最も抑制された経路となる、対向面の中心母線からオフセットした経路に沿って移動する。
【0019】
したがって、ヘッドがディスクの回転方向に関し中心母線と同一の位置を移動する場合に比較して、ヘッドのディスクに対するアクセス精度が向上し、結果的にディスクに対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方の向上を図ることが可能となる。
【0020】
本発明は第4の観点からすると、可撓性を有するディスクを回転可能に収納するケーシングと、前記ディスクの記録面に対向して配置された安定化部材と、を備えるディスクカートリッジにおいて、前記安定化部材の前記ディスクに対向する対向面は、その中心を通る中心母線を対称軸とする凹状の湾曲面を含み、前記中心母線を含む領域が平坦面であることを特徴とするディスクカートリッジである。
【0021】
これによれば、回転するディスクに対し情報の再生又は記録が行なわれる際には、安定化部材の対向面によりディスクに生じる面ぶれが抑制される。したがって、ヘッドのディスクに対するアクセス精度が向上し、結果的にディスクに対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
《第1の実施形態》
【0023】
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図5(B)に基づいて説明する。図1には、第1の実施形態にかかるディスク装置100の概略構成が示されている。
【0024】
ディスク装置100は、可撓性のある光ディスク20に対し情報の記録及び再生を行なうことが可能な光ディスク装置である。このディスク装置100は、図1に示されるように、Z軸に平行な回転軸22aを有するモータ22、該モータ22の回転軸22aの+Z側端部に固定されたスピンドルシャフト24、光ディスク20に対し情報の記録及び再生の少なくとも一方を行なうピックアップ26、光ディスク20の回転を安定させる安定化部材30、上記各部を収容する本体(ハウジング)10、及びピックアップ26並びにモータ22を制御する不図示の制御装置などを備えている。
【0025】
光ディスク20としては、図2示されるように、例えば、厚さ100μm、外径120mmで中央に丸孔が形成された円形板状のポリカーボネイト製のシート20aをディスク基板とし、このシート20aの−Z側の図2おいて着色して示された内周直径50mmから外周直径116mmまでの領域20bに記録層が成膜された可撓性を有する光ディスクが用いられる。
【0026】
記録層は、シート20aの領域20bに、まずスタンパのピッチ0.6μm、幅0.3μmのグルーブを熱転写した後に、スパッタリングにより順次厚さ120nmのAg反射層、厚さ7nmの(ZrO2−Y2O3)−SiO2層、厚さ10nmのAgInSbTeGe層、厚さ25nmのZnS−SiO2層、厚さ10nmのSi3N4層を成膜することにより形成されている。
【0027】
また、光ディスク20の表裏面には、記録層やディスク基板の保護のために、スピンコートしたUV樹脂を紫外線を照射して硬化することにより厚さ10μmの透明保護膜が形成され、中央部には、例えば、厚さ0.3mm、外径30mmで中心部に内径15mmの丸孔が形成された円形プレート20cが、その中心がシート20aの中心と一致するように取りつけられている。ここで、説明の便宜上図2に示されるように、光ディスク20の中心oを原点とするxy座標系を定義する。
【0028】
安定化部材30は、図1と、安定化部材30を下方から見た図である図3とを総合するとわかるように、例えば、中央に直径32mmの円形開口が形成された外径125mmの高さの低い円柱状部材であり、+Z側の面がハウジング10の天井面に固定され、−Z側の面は光ディスク20に対向する凹形状の湾曲面(以下、作用面ともいう)となっている。
【0029】
安定化部材30の作用面は、図3に示されるようにY軸に平行で作用面の中心を通る母線L(以下、中心母線Lともいう)を有し、全体的には、例えば曲率半径1000mmで湾曲している。そして中心母線から−x方向及び+x方向へ距離S(ここでは17.5mmとする)隔てたY軸に平行な2本の直線と、作用面の外周とによって規定される領域、すなわち図3において着色された領域が平坦部となっている。
【0030】
図1に戻り、スピンドルシャフト24は、円柱状の大径部と、該大径部の上端に設けられた小径部とを有する段付き円柱状の部材である。光ディスク20は円形プレート20cの丸孔にスピンドルシャフト24の小径部が挿入され、大径部の上面によって下方から支持されることにより、記録層を下面とし、その中心が作用面の中心に一致した状態でスピンドルシャフト24に装着されている。また、一例として光ディスク20は、該光ディスク20が平坦と仮定したときの記録面と逆側の面と、安定化部材30の作用面の平坦部との距離が150μmとなるようにスピンドルシャフト24に装着されているものとする。
【0031】
モータ22は、回転軸22aを駆動することによりスピンドルシャフト24を介して光ディスク20を、例えば約4000〜20000rpmの範囲内で回転させる。光ディスク20の回転数などは、不図示の制御装置により制御される。
【0032】
ピックアップ26は、光ディスク20の下方(−Z側)に配置され、光源、対物レンズを含む光学系、受光素子などを含む周知の構成のものが用いられている。ピックアップ26は、モータ22により回転される光ディスク20の記録面にレーザ光を集光するとともに、記録面からの反射光を受光することで光ディスク20からの情報の読み取り(再生)、及び光ディスク20に対する情報の書き込み(記録)などを行う。そして、図2の矢印a,a’に示されるように、光ディスク20の中心を通りy軸と、例えば10度の角度をなす直線に沿って、不図示のピックアップ駆動装置によって駆動される。これによりピックアップ26は、安定化部材30の作用面の中心を通り、中心母線Lに対し10度の角度をなす直線に沿って移動する。
【0033】
次に、上述のように構成されたディスク装置100により、光ディスク20に対し情報の記録及び再生を行なった場合の安定化部材30の作用について説明する。光ディスク20が回転すると、光ディスク20にはその回転により発生する遠心力により水平な状態になろうとする復元力と、その回転と面形状の作用により生じる空気流の差に基づく圧力変化による反発力が発生する。その際に安定化部材30は、光ディスク20に対し空気力学的な力を作用させ、光ディスク20に生じる復元力と反発力のつりあいをとることにより、いわゆる光ディスク20の面ぶれ(ディスク20の回転方向の振れ)を低減する。
【0034】
発明者等は、上述した安定化部材30を用いて光ディスク20の安定化実験を行なった。安定化実験は、図4に示されるように、光ディスク20を矢印bに示される方向に回転させた状態で、光ディスク20の外周の−Y側端の点P1と、点P1から外周に沿って−50度及び+50度の位置にある点P0及びP3とにより規定される中心角100度の円周上の各位置で観測される、光ディスク20の面ぶれにより生じるZ軸方向の振幅を計測するものである。
【0035】
安定化部材30を用いた場合には、図4とディスク20の−Y側の様子を示す図5(A)を総合するとわかるように、点P1近傍の光ディスク20の回転方向下流側の位置近傍では、光ディスク20に対し安定化部材30から離れる方向の力Fが作用する。そして力Fの下流側では、光ディスク20が安定化部材30に対して近接する領域(点P2’近傍)が存在する。一方点P1の光ディスク20の回転方向上流側の位置近傍には、光ディスク20が安定化部材30に対し近接する領域(点P2近傍)が存在する。
【0036】
基本的には、光ディスク20と安定化部材30とが近接する部分で光ディスク20の面ぶれが効果的に抑制され、点P0〜点P3で規定される円周上の各位置における面ぶれ特性は、図5(B)に示されるようになる。中心母線付近に平坦部を有する凹状に湾曲した図3の安定化部材を用いた場合には、ディスク円周方向に見た場合に、効果的に面ぶれが抑制される領域が2ヶ所、その180度逆側の対称位置を考えると安定化部材30全面においては4ヶ所存在する。この現象は、光ディスク20の回転数がさほど速くない4000rpm付近で確認され、回転数が10000rpmを越える高速域になるとその影響は顕著となった。
【0037】
次表1は、光ディスク20の回転数を4000rpmから14000rpmまで2000rpmずつ段階的に変化させて、図4に示されるように、光ディスク20の中心から−Y方向へ25mm隔てた位置にある点P4、40mm隔てた位置にある点P5、58mm隔てた位置にある点P6と、上述した点P2及び点P2’と光ディスク20の中心を結ぶ2本の直線上で、光ディスク20の中心から25mm隔てた位置にある点P7及び点P10と、40mm隔てた位置にある点P8及び点P11と、58mm隔てた位置にある点P9及び点P12での光ディスク20の振幅(μm)をレーザ変位計を用いて計測したときの結果である。表1に示されるように、安定化部材30を用いて光ディスク20を安定化した場合には、点P4、P5、P7、P8、P9、P10、P11、P12での振幅は10μm以下に抑えられ、点P6では振幅が15μmを大幅に越えているのがわかる。
【0038】
【表1】
【0039】
また、次表2は、光ディスク20の回転数を4000rpmから14000rpmまで2000rpmずつ段階的に変化させて、点P4〜P12における光ディスク20の円周方向のチルト角(以下、単にチルト角という)を、レーザオートコリメータを用いて計測したときの計測結果である。表2に示されるように、安定化部材30を用いて光ディスク20を安定化した場合には、点P4、P5、P6、P7、P8、P9でのチルト角はほぼ零度(±0.1deg以内)となっているのがわかる。
【0040】
【表2】
【0041】
したがって、光ディスク20に対して情報の再生又は記録を行なう際に、点P7、P8、P9で規定される直線に沿ってピックアップ26の移動経路(以下、第1経路という)を設定するか、あるいは点P10、P11、P12で規定される直線に沿ってピックアップ26の移動経路(以下、第2経路という)を設定すれば、ディスク20の振幅を経路全域にわたって10μm以下に抑えることができるので、アクセス精度の向上を図ることが可能となることがわかる。特に、第2経路に比較して第1経路では、表2に示されるように、その経路近傍の光ディスク20のチルト角が小さいため、本実施形態では、最もアクセス精度を向上する効果が高い第1経路上をピックアップ26が移動することとしている。
【0042】
なお、点P4、P5、P6で規定される直線に沿ってピックアップ26の移動経路を設定した場合においては、外周部点P6でのディスク20の振幅がやや悪化するものの、チルト角は零度近傍になっているので、例えば、光ディスク20の記録密度を下げたり、ディスク外周部の情報記録領域の範囲を狭くするなどして対応することにより、点P4、P5、P6で規定される直線上もピックアップ26の移動経路として十分に活用可能である。
【0043】
なお、点P10、P11、P12で規定される直線に沿ってピックアップ26の移動経路を設定する際には、ピックアップ26のチルト角を制御する機構を具備させ、ピックアップ26を走査するディスク面のチルト角の変化に追従させることにより、ディスク面に対するピックアップ26のチルト角を零度近傍に制御する方法が好適である。
【0044】
以上説明したように、本第1の実施形態にかかるディスク装置100によると、情報の再生又は記録を行なう際に光ディスク20に生じる面ぶれによる影響が少なく、かつチルト角が小さい位置(チルト角が零度近傍となる位置)に沿って、ピックアップ26の移動経路が設定されている。
【0045】
したがって、面ぶれによりピックアップ26が受ける悪影響が緩和されて、ディスク20に対するアクセス精度が向上し、結果的に光ディスク20に対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方を向上することが可能となっている。
【0046】
また、本第1の実施形態では、図2に示されるように、ピックアップ26をy軸と10度の角度をなす直線に沿って移動することとしたが、上述した理由からピックアップ26をy軸と−40度の角度をなす直線(点P10、P11、P12で規定される直線)沿って移動することとしてもよい。このようにしても、面ぶれによりピックアップ26が受ける悪影響が緩和されて、ディスク20に対するアクセス精度が向上し、結果的に光ディスク20に対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方を向上することが可能となる。
【0047】
また、本第1の実施形態では、ピックアップ26を、図2に示されるように、y軸と10度の角度をなす直線に沿って移動することとしたが、これに限らず、図6に示されるように、y軸から回転方向上流側(+x側)へ例えば10mm隔てたy軸に平行な直線に沿って移動することとしてもよい。
【0048】
次表3は、光ディスク20の回転数を4000rpmから14000rpmまで2000rpmずつ段階的に変化させて、図7に示されるように、ピックアップ26の移動経路上で、光ディスク20の中心から25mm隔てた位置にある点P7’、40mm隔てた位置にある点P8’、58mm隔てた位置にある点P9’での光ディスク20の振幅をレーザ変位計を用いて計測したときの計測結果であり、次表4は、点P7’、P8’、P9’におけるチルト角をレーザオートコリメータを用いて計測した時の計測結果である。
【0049】
表3及び表4に示されるように、点P7’、P8’、P9’においても、光ディスク20の面ぶれは10μm以下に抑えられており、チルト角はほぼ零度(±0.1deg以内)となっていることがわかる。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
したがって、光ディスク20に対して情報の再生又は記録を行なう際に、点P7’、P8’、P9’で規定される直線に沿ってピックアップ26の移動経路を設定すれば、ディスク20の振幅を経路全域にわたって10μm以下に抑え、かつ移動経路近傍の光ディスク20のチルト角を零度近傍の小さい値とすることができるので、ピックアップ26のアクセス精度の向上を図ることが可能となり、結果的に光ディスク20に対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方を向上することが可能となる。
【0053】
また、本第1の実施形態では、y軸とピックアップ26の移動経路が10度又は−40度の角度をなしている場合について説明したが、これに限らず、移動経路をy軸に沿うように設定し、安定化部材30の中心母線Lがy軸に対し−10度又は40度の角度を有するようにしてもよい。要は、安定化部材30の中心母線Lに対しピックアップ26の移動経路が10度又は−40度の角度を有していればよい。
【0054】
なお、安定化部材の作用面は、図3に示される構成から中心母線近傍に形成した平坦部をなくし、面全体を単純に、例えば曲率半径900mmで湾曲させた単純湾曲面とすることもできる。このような単純湾曲面を作用面とした安定化部材30’を用いた場合には、図8(A)に示されるように、点P1の光ディスク20の回転方向下流側に、光ディスク20と安定化部材30’とが近接する領域(点P2’’近傍)が存在する。
【0055】
基本的には、光ディスク20と安定化部材30’とが近接する領域の中心付近でディスクの面振れが効果的に抑制され、点P0〜点P3で規定される円周上の各位置における面ぶれ特性は図8(B)に示されるようになる。単純湾曲面を作用面とする安定化部材30’を用いた場合には、ディスク円周方向に見た場合に、効果的に面ぶれが抑制されている領域が1ヶ所(点P2’’近傍)、その180度逆側の対称位置を考えると安定化部材30’全面においては2ヶ所存在する。例えば、前記安定化部材30’を用いた場合には、点P2’’は光ディスク20の中心を通り、y軸と−25度の角度をなす直線上に現れる。そしてこの直線上の面ぶれ特性及びチルト角は、前述した点P10,P11,P12におけるディスク20の挙動と類似するものであった。
【0056】
したがって、作用面を単純湾曲面とする場合には、中心母線の下流側で、光ディスク20の中心と点P2’’を通る直線(y軸と−25度の角度をなす直線)上をピックアップ26の移動経路とすることで、ピックアップ26のアクセス精度の向上を図ることが可能となり、結果的に光ディスク20に対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方を向上することが可能となる。
【0057】
なお、中心母線付近に平坦部を有する安定化部材30では、効果的な面ぶれの抑制が行なえる点P2,P2’の中心母線からの角度はそれぞれ、10度と−40度であった。これらの値は、おおよそこの近傍とはなるが、湾曲面の曲率、中心母線付近の平坦面の幅等により変化する。同様に、安定化部材30’では点P2’’の中心母線からの角度は−25度であった。この値についても、おおよそこの近傍とはなるが、湾曲面の曲率、中心母線付近の平坦面の幅等により変化する。
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態を、図9〜図13(B)に基づいて説明する。ここで、前述した第1の実施形態と同等の構成部分については、同一の符号を用いるとともに説明を簡略し又は省略するものとする。
【0058】
図9には、第2の実施形態にかかるディスク装置101の概略構成が示されている。このディスク装置101は、図9に示されるように、Z軸に平行な回転軸22aを有するモータ22、該モータ22の回転軸22aの+Z側端部に固定されたスピンドルシャフト24、光ディスク20に対し情報の記録及び再生を行なうピックアップ26、光ディスク20の回転を安定させる安定化部材31、上記各部を収容する本体(ハウジング)10、及びピックアップ26並びにモータ22を制御する不図示の制御装置などを備えている。
【0059】
安定化部材31は、図9と、安定化部材31を上方から見た図である図10とを総合するとわかるように、例えば、中央に直径32mmの円形開口が形成された外径125mmの高さの低い円柱状部材であり、−Z側の面は不図示の支持部材を介してハウジング10の底壁面に固定され、+Z側の面は光ディスク20に対向する凸形状の湾曲面(以下、作用面ともいう)となっている。
【0060】
安定化部材31の作用面は、Y軸に平行で作用面の中心を通る母線L’(以下、中心母線L’ともいう)を有し、全体的には、例えば曲率半径1000mmで湾曲している。そして中心母線L’から−x方向及び+x方向へ距離S(ここでは17.5mmとする)隔てたY軸に平行な2本の直線と、作用面の外周とによって規定される領域、すなわち図10において着色された領域が平坦部となっている。
【0061】
図9に戻り、スピンドルシャフト24は、安定化部材31の中央に設けられた円形開口の内部に、円柱状の大径部の上面がわずかに突出するように配置されている。そして、光ディスク20は円形プレート20cの丸孔にスピンドルシャフト24の小径部が挿入され、大径部の上面によって下方から支持されることにより、記録層を上面とし、その中心が作用面の中心に一致した状態でスピンドルシャフト24に装着されている。ここでは一例として、光ディスク20は、該光ディスク20が平坦と仮定した時の下面と、安定化部材31の作用面の平坦部との距離が150μmとなるようにスピンドルシャフト24に装着されているものとする。
【0062】
ピックアップ26は、光ディスク20の上方(+Z側)に配置され、図11の矢印a,a’に示されるように、光ディスク20の中心を通りy軸と、例えば−10度の角度をなす直線に沿って、不図示のピックアップ駆動装置によって駆動される。これによりピックアップ26は、安定化部材30の作用面の中心を通り、中心母線L’に対し−10度の角度をなす直線に沿って移動する。
【0063】
次に、上述のように構成されたディスク装置101により、光ディスク20に対し情報の記録及び再生を行なった場合の安定化部材31の作用について説明する。光ディスク20が回転すると、光ディスク20にはその回転により発生する遠心力により水平な状態になろうとする復元力と、その回転と面形状の作用により生じる空気流の差に基づく圧力変化による反発力が発生する。その際に安定化部材31は、光ディスク20に対し空気力学的な力を作用させ、光ディスク20に生じる復元力と反発力のつりあいをとることにより、いわゆる光ディスク20の面ぶれを低減する。
【0064】
発明者等は、上述した安定化部材31を用いて光ディスク20の安定化実験を行なった。安定化実験は、図12に示されるように、光ディスク20を矢印bに示される方向に回転させた状態で、光ディスク20の外周の−Y側端の点P1と、点P1から外周に沿って−30度及び+30度の位置にある点P0及びP3とにより規定される中心角60度の円周上の各位置で観測される、光ディスク20の面ぶれにより生じるZ軸方向の振幅を計測するものである。
【0065】
安定化部材31を用いた場合には、図12と、ディスク20の−Y側の様子を示す図13(A)を総合するとわかるように、点P1の光ディスク20の回転方向上流側(P3側)の位置近傍では、光ディスク20に対し安定化部材31から離れる方向の力が作用する。この安定化部材31から離れた部分には安定化部材31が十分に作用しないため、点P0〜点P3で規定される円周上の各位置における面ぶれ特性は図13(B)に示されるようになる。図13(B)からは点P1の上流側(P3側)ではディスク20の面ぶれが局所的に悪化しているのがわかる。この現象は、光ディスク20の回転数がさほど速くない4000rpm付近で確認され、回転数が10000rpmを越える高速域になるとその影響は顕著となった。
【0066】
また、光ディスク20の回転数を4000rpmから14000rpmまで2000rpmずつ段階的に変化させて、図12に示されるように、光ディスク20の中心から−Y方向へ25mm隔てた位置にある点P4、40mm隔てた位置にある点P5、58mm隔てた位置にある点P6と、ピックアップ26の移動経路上で、光ディスク20の中心から25mm隔てた位置にある点P7、40mm隔てた位置にある点P8、58mm隔てた位置にある点P9で光ディスク20の振幅をレーザ変位計を用いて計測したところ、次表5に示される計測結果が得られた。
【0067】
表5に示されるように、回転数が4000〜12000rpmの範囲内安である場合には、点P4、P5、P7、P8、P9での光ディスク20の振幅は10μm以下に抑えられているが、点P6では回転数の増加にともなって振幅が10μmを越えて大幅に増大しているのがわかる。
【0068】
【表5】
【0069】
したがって、光ディスク20に対して情報の再生又は記録を行なう際に、従来から行なわれてきたようにピックアップ26の移動経路を点P4、P5、P6で規定される直線に沿うように設定すると、光ディスク20の振幅が大きい点P6近傍でピックアップ26のアクセス精度が低下することが考えられるが、点P7、P8、P9で規定される直線に沿ってピックアップ26の移動経路を設定すれば、ディスク20の振幅を経路全域にわたって10μm以下に抑えることができるので、アクセス精度の向上を図ることが可能となる。
【0070】
以上説明したように、本第2の実施形態にかかるディスク装置101によると、情報の再生又は記録を行なう際に光ディスク20に生じる面ぶれによる影響が少ない位置に沿って、ピックアップ26の移動経路が設定されている。
【0071】
したがって、面ぶれによりピックアップ26が受ける悪影響が緩和されてディスク20に対するアクセス精度が向上し、結果的に光ディスク20に対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方を向上することが可能となっている。
【0072】
また、本第2の実施形態では、ピックアップ26を、図11に示されるように、y軸と−10度の角度をなす直線に沿って移動することとしたが、これに限らず、図14に示されるように、例えばy軸から回転方向下流側(−x側)へ10mm隔てたy軸に平行な直線に沿って移動することとしてもよい。
【0073】
また、本第2の実施形態では、図11に示されるように、y軸とピックアップ26の移動経路が10度の角度をなしている場合について説明したが、これに限らず、移動経路をy軸に沿うように設定し、安定化部材30の中心母線Lがy軸に対し10度の角度を有するようにしてもよい。要は、安定化部材30の中心母線Lに対しピックアップ26の移動経路が−10度の角度を有していればよい。
【0074】
《第3の実施形態》
次に、本発明の第3の実施形態を、図15〜図17に基づいて説明する。ここで、前述した第1の実施形態と同等の構成部分については、同一の符号を用いるとともに説明を簡略し又は省略するものとする。
【0075】
図15には、第3の実施形態にかかるディスク装置102の概略構成が示されている。このディスク装置102は、図15に示されるように、回転軸22aを有するモータ22、該モータ22の回転軸22aの+Z側端部に固定されたスピンドルシャフト24、不図示の保持部材に着脱自在に保持されたディスクカートリッジ40、ディスクカートリッジ40に収納された光ディスク20に対し情報の記録及び再生を行なうピックアップ26、上記各部を収容する本体(ハウジング)10、及びピックアップ26及びモータ22を制御する不図示の制御装置などを備えている。
【0076】
ディスクカートリッジ40は、図15に示されるように、相互に係合するカバー42及びベース44と、カバー42とベース44とにより形成された内部空間に収容される安定化部材30、及び光ディスク20を備えている。
【0077】
カバー42は正方形板状の部材で、安定化部材30は、図16に仮想線で示されるように、中心母線Lがy軸と−10度の角度をなすようにカバー42の下面に取り付けられている。
【0078】
ベース44は、平面視ほぼ正方形の容体で、XY平面に平行な底板部と、該底板部の外周に沿って設けられた側壁部の2部分からなり、図16に示されるように、底板部には長手方向をY軸方向とする鍵穴状のスロット45が形成されている。このスロット45は円形の開口部45aと長方形状の開口部45bが連通したような形状を有し、開口部45aはその中心が安定化部材30の作用面の中心と一致するように形成され、開口部45bは開口部45aの−Y側からベース44の内壁面まで延びるように形成されている。
【0079】
そして、ベース44は、図15に示されるように、カバー42の下面に固定された安定化部材30と、該安定化部材30の下方に配置された光ディスク20とが、ベース44の底板部と側壁部で規定される空間に収容された状態で、カバー42の下面に固定されている。
【0080】
このように構成されたディスクカートリッジ40は、ディスク装置102の保持部材(不図示)に装着されると、内部に収容された光ディスク20が、カートリッジ40の下方から、スロット45の開口部45aを介して挿入されたスピンドルシャフト24に回動可能に支持されるとともに、ピックアップ26がスロット45の開口部45bを介して光ディスク20にアクセス可能な状態となる。そして、制御装置は、モータ22を介して光ディスク20を所定の回転数で回転駆動すると、ピックアップ駆動装置を介してピックアップ26をディスクカートリッジ44のスロット45bに沿って移動させながら、光ディスク20の記録層に対し情報の再生又は記録を行なう。
【0081】
発明者等は、上述のように構成された光ディスク装置102において、光ディスク20を矢印bに示される方向に、回転数を4000rpmから14000rpmまで2000rpmずつ段階的に変化させながら回転させ、図17に示されるように、ピックアップ26の移動経路上で、光ディスク20の中心から25mm隔てた位置にある点P13、40mm隔てた位置にある点P14、58mm隔てた位置にある点P15で光ディスク20の振幅をレーザ変位計を用いて計測したところ、次表6に示される計測結果が得られた。また、点P13、P14、P15で、光ディスク20のチルト角をレーザオートコリメータを用いて計測したところ次表7に示される結果が得られた。
【0082】
表6及び表7に示されるように、点P13、P14、P15においても、光ディスク20の面ぶれは10μm以下に抑えられており、チルト角はほぼ零度(±0.1deg以内)となっていることがわかる。
【0083】
【表6】
【0084】
【表7】
【0085】
したがって、光ディスク20に対して情報の再生又は記録を行なう際に、点P13、P14、P15で規定される直線に沿ってピックアップ26の移動経路を設定すれば、ディスク20の振幅を経路全域にわたって10μm以下に抑え、かつ移動経路近傍の光ディスク20のチルト角を零度近傍の小さい値とすることができるので、ピックアップ26のアクセス精度の向上を図ることが可能となることがわかる。
【0086】
以上説明したように、本第3の実施形態にかかるディスクカートリッジ40によると、ベース44には、ディスク20を回転させた際に光ディスク20に生じる面ぶれによる影響が少ない位置に沿って、スロット45の開口部45bが形成されている。
【0087】
したがって、面ぶれによりピックアップ26が受ける悪影響が緩和されてディスク20に対するアクセス精度が向上し、結果的に光ディスク20に対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方を向上することが可能となっている。
【0088】
また、本第3の実施形態では、安定化部材30を、中心母線Lとスロット45が所定の角度をなすように設けたが、これに限らず、スロット45の開口部45bを中心母線Lの回転方向上流側(+x側)に、例えば10mm程度隔てて設けてもよい。
【0089】
また、本第3の実施形態では、図15に示されるように、ディスクカートリッジ44が安定化部材30を備えている場合について説明したが、これに限らず、安定化部材31を備えていてもよい。この場合には、安定化部材31を、中心母線L’がy軸と10度の角度をなすように設けるか、又は、スロット45の開口部45bを中心母線L’の回転方向下流側(−x)に、例えば10mm程度隔てて設ければよい。
【0090】
なお、上記各実施形態における安定化部材30,31の外径、及び作用面の曲率半径の値は一例であり、使用するディスクに応じて最適な値とすることができる。例えば、ディスクの外径が小さくなればそれに応じて安定化部材30,31の外径も小さくすればよく、ディスク基板の厚さや材質が光ディスク20と異なるものを用いる場合には、例えば、実験やシミュレーションなどにより最適な安定化部材の形状を決定すればよい。
【0091】
また、安定化部材30,31の中心母線とピックアップ26の移動経路のなす角度及び両者間の距離は一例である。要は、ピックアップ26が面ぶれの影響を受けにくい位置から規定される経路上を移動可能であればよい。
【0092】
また、安定化部材30,31としては、例えばプラスティックの射出整形や、金属板を板金加工することにより製造することができる。
【0093】
また、上記各実施形態では、光ディスク20の一側に設けられた安定化部材30又は安定化部材31のみによって、光ディスク20の面ぶれを抑制したが、これに限らず、安定化部材30又は安定化部材31に加えて、例えば図18(A)及び図18(B)に代表的に示されるように、光ディスク20の他側に、安定化部材30又は安定化部材31の作用面を反転させた形状の作用面を有する補助安定化部材32を配置してもよい。
【0094】
また、上記各実施形態では、ディスク装置100,101,102が1つのピックアップ26を備えている場合について説明したが、これに限らず、例えば、ピックアップ26の他に、スピンドルシャフト24を挟んで他のピックアップを配置してもよい。このようにすれば、ディスク装置100で、例えば2つのピックアップを用いた転送レートの高速化が測れるようになる。
【0095】
また、上記各実施形態では、安定化部材30により可撓性のある光ディスクを安定化する場合について説明したが、これに限らず、例えば、磁気ディスクや光磁気ディスクなどの可撓性を有するディスクにも好適である。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上説明したように、本発明のディスク装置100,101,102は、可撓性のあるディスクに対し、情報の再生及び記録を行なうのに適しており、本発明のディスクカートリッジ40は、可撓性のあるディスクを収納するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるディスク装置100の概略的な構成を示す図である。
【図2】図1における光ディスク20を説明するための図である。
【図3】図1における安定化部材30を示す平面図である。
【図4】ディスク装置100の安定化実験における光ディスク20の計測位置を示す図である。
【図5】図5(A)及び図5(B)は、安定化部材30を用いたときの光ディスク20の面ぶれ特性を説明するための図である。
【図6】図1におけるピックアップ26の移動経路の変形例を説明するための図である。
【図7】図6における移動経路を採用したときの安定化実験における、光ディスク20の計測位置を示す図である。
【図8】図8(A)及び図8(B)は、安定化部材30’を用いたときの光ディスク20の面ぶれ特性を説明するための図である。
【図9】本発明の第2の実施形態にかかるディスク装置101の概略的な構成を示す図である。
【図10】図9における安定化部材31を示す平面図である。
【図11】図9におけるピックアップ26の移動経路を説明するための図である。
【図12】ディスク装置101の安定化実験における、光ディスク20の計測位置を示す図である。
【図13】図13(A)及び図13(B)は、安定化部材31を用いたときの光ディスク20の面ぶれ特性を説明するための図である。
【図14】図9におけるピックアップ26の移動経路の変形例を説明するための図である。
【図15】本発明の第3の実施形態にかかるディスク装置102の概略的な構成を示す図である。
【図16】図15におけるディスクカートリッジ40に形成されたスロット45を示す図である。
【図17】ディスク装置102の安定化実験における、光ディスク20の計測位置を示す図である。
【図18】図18(A)は第1の実施形態にかかるディスク装置100の変形例を示す図であり、図18(B)は第3の実施形態にかかるディスク装置102の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0098】
20…光ディスク、26…ピックアップ、30,31,30’…安定化部材、10…本体(ハウジング)、20a…シート、20b…領域(記録層)、24…スピンドルシャフト、22…モータ、22a…回転軸、32…補助安定化部材、40…ディスクカートリッジ、45…スロット、45a,45b…開口部、100,101,102…ディスク装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク装置及びディスクカートリッジに係り、さらに詳しくは、ディスクに対し情報の記録及び再生の少なくとも一方を行なうディスク装置、及びディスクを収容するディスクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビ放送のデジタル化が開始されるなど、情報のデジタル化に伴い記録媒体としてのディスクへ記録される情報の高密度化に対する要求が高まっている。この要求に対する主な方策としては、情報の記録又は再生のために用いられるレーザ光のスポット径を小さくすることがあげられる。
【0003】
レーザ光のスポット径を小さくするには、その波長を短くし、対物レンズの開口数(NA)を大きくすることが有効である。レーザ光の波長に関しては、従来からCD(Compact Disk)には、例えば780nm程度の波長の近赤外光が用いられ、DVD(Digital Versatile Disk)には、例えば650nm程度の波長の赤色光が用いられているが、近年では、青紫色のレーザ光を発振する半導体レーザが開発され、今後400nm近傍の波長のレーザ光が用いられることが予想されている。また、対物レンズについては、従来、CD用の対物レンズのNAは0.5未満であり、DVD用の対物レンズのNAは0.6程度であったが、今後はさらにNAが増大する傾向にある。
【0004】
しかしながら、光の波長を短くすることや、対物レンズのNAを増大することは、対物レンズを含む光学系の焦点深度の狭小化を招く。このため、フォーカスサーボ精度を向上させる必要が生じる。また、対物レンズのNAが増大すると、その対物レンズとディスクの記録面との距離を小さく設定する必要があるため、ディスクの面ぶれを小さくする必要がある。その理由は、始動時のフォーカスサーボを開始する直前に対物レンズを含むピックアップとディスクとが接触するなどの事態を回避する必要があるからである。
【0005】
このような背景から、可撓性を有するシート(薄膜)に記録面が形成されたディスクの開発がすすめられ、このディスクを安定化板上で回転させることにより、ディスクに生じる面ぶれを空気力学的に抑制するディスク装置が提案されている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1に記載されているディスク装置は、円形板の両端を折り曲げて形成されたバックプレートと呼ばれる安定化部材を備え、ディスクを回転させて情報の記録又は再生を行なう際には、バックプレートをディスクの記録面に押し当ててヘッド近傍の面ぶれを抑制しようとするものである。この方法では、光ディスクは凹面を形成する平面によって規定される折れ曲がりの部分に追従して非常に特異な屈曲動作を行う必要があり、回転の高速化にともなって屈曲動作が追いつかなくなってしまうことがある。
【0007】
一方、非特許文献1に記載されているディスク装置は、サドルプレートと呼ばれる安定化板と、U字型スタビライザ(U-shaped stabilizer)とよばれる安定化部材を備え、ディスクに対し情報の記録又は再生を行なう際には、ディスクをU字型スタビライザのギャップに挟んだ状態で回転させるとともに、サドルプレートを用いて負圧力を作用させ、ディスクを前述した特許文献1に記載のディスク装置とは逆方向へ湾曲させることにより、面ぶれをギャップ内の特定領域で選択的に安定化させようとするものである。この方法では、回転を高速化するとサドルプレートによって発生する負圧がディスクに作用する遠心力に負けて、最終的にディスクを所望の湾曲形状にすることができなくなり、ギャップ内の特定領域においても面振れが増大してしまうという不都合がある。
【0008】
ところで、特許文献1には、連続的に一様に曲がった湾曲面(以下、連続面という)を有する安定化部材は可撓性を有する光ディスク媒体の安定化には不適であるとの記述があるが、鋭意検討の結果、発明者等は回転数が4000rpmを越える領域では、この連続面が可撓性ディスクの安定化に有効に作用することをつきとめた。さらに、単純な連続面を有する安定化部材では、連続面がディスクに対し凹形状である場合には、連続面の中心を通る母線近傍の面ぶれ特性よりも、その回転方向下流側での面ぶれ特性のほうが安定しており、連続面がディスクに対し凸形状である場合には、連続面の中心を通る母線近傍の面ぶれ特性よりも、その回転方向下流側での面ぶれ特性のほうが安定していることが判明した。
【0009】
【特許文献1】特開昭57−33619号公報
【非特許文献1】「オプティカル・リードアウト・オブ・ビデオディスク」 アイイーイーイー・トランザクション・オン・コンシューマー・エレクトロニクス(“OPTICAL READOUT OF VIDEODISC”,IEEE TRANSACTION ON CONSUMER ELECTRONICS),1976年11月、P.304−308
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はかかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、可撓性のあるディスクに対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方を向上することが可能なディスク装置を提供することにある。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、可撓性のあるディスクに対して情報の再生及び記録の少なくとも一方を行なうヘッドのアクセス精度の向上を図ることが可能なディスクカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第1の観点からすると、回転するディスクの記録面に沿って移動するヘッドと、前記ディスクに対向可能に配置された安定化部材と、を備えるディスク装置において、前記安定化部材の前記ディスクに対向する対向面は、その中心を通る中心母線を対称軸とする湾曲面を含み、前記ヘッドは前記中心母線からオフセットした経路に沿って往復移動することを特徴とするディスク装置である。
【0013】
これによれば、回転するディスクに対し情報の再生又は記録が行なわれる際には、安定化部材の対向面によりディスクに生じる面ぶれが抑制され、ディスク装置のヘッドは、面ぶれが最も抑制された経路となる、対向面の中心を通る母線(以下、中心母線ともいう)からオフセットした経路に沿って移動する。
【0014】
したがって、ヘッドがディスクの回転方向に関し中心母線と同一の位置を移動する場合に比較して、ヘッドのディスクに対するアクセス精度が向上し、結果的にディスクに対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方の向上を図ることが可能となる。
【0015】
本発明は、第2の観点からすると、回転するディスクの記録面に沿って移動するヘッドと、前記ディスクに対向可能に配置された安定化部材と、を備えるディスク装置において、前記安定化部材の前記ディスクに対向する対向面は、その中心を通る中心母線を対称軸とする凹状の湾曲面を含み、前記中心母線を含む領域が平坦面であることを特徴とするディスク装置である。
【0016】
これによれば、回転するディスクに対し情報の再生又は記録が行なわれる際には、安定化部材の対向面によりディスクに生じる面ぶれが抑制される。したがって、ヘッドのディスクに対するアクセス精度が向上し、結果的にディスクに対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方の向上を図ることが可能となる。
【0017】
本発明は第3の観点からすると、可撓性を有するディスクを回転可能に収納するケーシングと、前記ディスクに対向して配置された安定化部材と、を備えるディスクカートリッジにおいて、前記安定化部材の前記ディスクに対向する対向面は、その中心を通る中心母線を対称軸とする湾曲面を含み、前記ケーシングには、前記ディスクの記録面に対して情報の記録及び再生の少なくとも一方を行なうヘッドの移動経路を規定するスロットが、前記中心母線からオフセットした位置に形成されていることを特徴とするディスクカートリッジである。
【0018】
これによれば、回転するディスクに対し情報の再生又は記録が行なわれる際には、安定化部材の対向面によりディスクに生じる面ぶれが抑制され、ディスク装置のヘッドは、面ぶれが最も抑制された経路となる、対向面の中心母線からオフセットした経路に沿って移動する。
【0019】
したがって、ヘッドがディスクの回転方向に関し中心母線と同一の位置を移動する場合に比較して、ヘッドのディスクに対するアクセス精度が向上し、結果的にディスクに対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方の向上を図ることが可能となる。
【0020】
本発明は第4の観点からすると、可撓性を有するディスクを回転可能に収納するケーシングと、前記ディスクの記録面に対向して配置された安定化部材と、を備えるディスクカートリッジにおいて、前記安定化部材の前記ディスクに対向する対向面は、その中心を通る中心母線を対称軸とする凹状の湾曲面を含み、前記中心母線を含む領域が平坦面であることを特徴とするディスクカートリッジである。
【0021】
これによれば、回転するディスクに対し情報の再生又は記録が行なわれる際には、安定化部材の対向面によりディスクに生じる面ぶれが抑制される。したがって、ヘッドのディスクに対するアクセス精度が向上し、結果的にディスクに対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
《第1の実施形態》
【0023】
以下、本発明の第1の実施形態を図1〜図5(B)に基づいて説明する。図1には、第1の実施形態にかかるディスク装置100の概略構成が示されている。
【0024】
ディスク装置100は、可撓性のある光ディスク20に対し情報の記録及び再生を行なうことが可能な光ディスク装置である。このディスク装置100は、図1に示されるように、Z軸に平行な回転軸22aを有するモータ22、該モータ22の回転軸22aの+Z側端部に固定されたスピンドルシャフト24、光ディスク20に対し情報の記録及び再生の少なくとも一方を行なうピックアップ26、光ディスク20の回転を安定させる安定化部材30、上記各部を収容する本体(ハウジング)10、及びピックアップ26並びにモータ22を制御する不図示の制御装置などを備えている。
【0025】
光ディスク20としては、図2示されるように、例えば、厚さ100μm、外径120mmで中央に丸孔が形成された円形板状のポリカーボネイト製のシート20aをディスク基板とし、このシート20aの−Z側の図2おいて着色して示された内周直径50mmから外周直径116mmまでの領域20bに記録層が成膜された可撓性を有する光ディスクが用いられる。
【0026】
記録層は、シート20aの領域20bに、まずスタンパのピッチ0.6μm、幅0.3μmのグルーブを熱転写した後に、スパッタリングにより順次厚さ120nmのAg反射層、厚さ7nmの(ZrO2−Y2O3)−SiO2層、厚さ10nmのAgInSbTeGe層、厚さ25nmのZnS−SiO2層、厚さ10nmのSi3N4層を成膜することにより形成されている。
【0027】
また、光ディスク20の表裏面には、記録層やディスク基板の保護のために、スピンコートしたUV樹脂を紫外線を照射して硬化することにより厚さ10μmの透明保護膜が形成され、中央部には、例えば、厚さ0.3mm、外径30mmで中心部に内径15mmの丸孔が形成された円形プレート20cが、その中心がシート20aの中心と一致するように取りつけられている。ここで、説明の便宜上図2に示されるように、光ディスク20の中心oを原点とするxy座標系を定義する。
【0028】
安定化部材30は、図1と、安定化部材30を下方から見た図である図3とを総合するとわかるように、例えば、中央に直径32mmの円形開口が形成された外径125mmの高さの低い円柱状部材であり、+Z側の面がハウジング10の天井面に固定され、−Z側の面は光ディスク20に対向する凹形状の湾曲面(以下、作用面ともいう)となっている。
【0029】
安定化部材30の作用面は、図3に示されるようにY軸に平行で作用面の中心を通る母線L(以下、中心母線Lともいう)を有し、全体的には、例えば曲率半径1000mmで湾曲している。そして中心母線から−x方向及び+x方向へ距離S(ここでは17.5mmとする)隔てたY軸に平行な2本の直線と、作用面の外周とによって規定される領域、すなわち図3において着色された領域が平坦部となっている。
【0030】
図1に戻り、スピンドルシャフト24は、円柱状の大径部と、該大径部の上端に設けられた小径部とを有する段付き円柱状の部材である。光ディスク20は円形プレート20cの丸孔にスピンドルシャフト24の小径部が挿入され、大径部の上面によって下方から支持されることにより、記録層を下面とし、その中心が作用面の中心に一致した状態でスピンドルシャフト24に装着されている。また、一例として光ディスク20は、該光ディスク20が平坦と仮定したときの記録面と逆側の面と、安定化部材30の作用面の平坦部との距離が150μmとなるようにスピンドルシャフト24に装着されているものとする。
【0031】
モータ22は、回転軸22aを駆動することによりスピンドルシャフト24を介して光ディスク20を、例えば約4000〜20000rpmの範囲内で回転させる。光ディスク20の回転数などは、不図示の制御装置により制御される。
【0032】
ピックアップ26は、光ディスク20の下方(−Z側)に配置され、光源、対物レンズを含む光学系、受光素子などを含む周知の構成のものが用いられている。ピックアップ26は、モータ22により回転される光ディスク20の記録面にレーザ光を集光するとともに、記録面からの反射光を受光することで光ディスク20からの情報の読み取り(再生)、及び光ディスク20に対する情報の書き込み(記録)などを行う。そして、図2の矢印a,a’に示されるように、光ディスク20の中心を通りy軸と、例えば10度の角度をなす直線に沿って、不図示のピックアップ駆動装置によって駆動される。これによりピックアップ26は、安定化部材30の作用面の中心を通り、中心母線Lに対し10度の角度をなす直線に沿って移動する。
【0033】
次に、上述のように構成されたディスク装置100により、光ディスク20に対し情報の記録及び再生を行なった場合の安定化部材30の作用について説明する。光ディスク20が回転すると、光ディスク20にはその回転により発生する遠心力により水平な状態になろうとする復元力と、その回転と面形状の作用により生じる空気流の差に基づく圧力変化による反発力が発生する。その際に安定化部材30は、光ディスク20に対し空気力学的な力を作用させ、光ディスク20に生じる復元力と反発力のつりあいをとることにより、いわゆる光ディスク20の面ぶれ(ディスク20の回転方向の振れ)を低減する。
【0034】
発明者等は、上述した安定化部材30を用いて光ディスク20の安定化実験を行なった。安定化実験は、図4に示されるように、光ディスク20を矢印bに示される方向に回転させた状態で、光ディスク20の外周の−Y側端の点P1と、点P1から外周に沿って−50度及び+50度の位置にある点P0及びP3とにより規定される中心角100度の円周上の各位置で観測される、光ディスク20の面ぶれにより生じるZ軸方向の振幅を計測するものである。
【0035】
安定化部材30を用いた場合には、図4とディスク20の−Y側の様子を示す図5(A)を総合するとわかるように、点P1近傍の光ディスク20の回転方向下流側の位置近傍では、光ディスク20に対し安定化部材30から離れる方向の力Fが作用する。そして力Fの下流側では、光ディスク20が安定化部材30に対して近接する領域(点P2’近傍)が存在する。一方点P1の光ディスク20の回転方向上流側の位置近傍には、光ディスク20が安定化部材30に対し近接する領域(点P2近傍)が存在する。
【0036】
基本的には、光ディスク20と安定化部材30とが近接する部分で光ディスク20の面ぶれが効果的に抑制され、点P0〜点P3で規定される円周上の各位置における面ぶれ特性は、図5(B)に示されるようになる。中心母線付近に平坦部を有する凹状に湾曲した図3の安定化部材を用いた場合には、ディスク円周方向に見た場合に、効果的に面ぶれが抑制される領域が2ヶ所、その180度逆側の対称位置を考えると安定化部材30全面においては4ヶ所存在する。この現象は、光ディスク20の回転数がさほど速くない4000rpm付近で確認され、回転数が10000rpmを越える高速域になるとその影響は顕著となった。
【0037】
次表1は、光ディスク20の回転数を4000rpmから14000rpmまで2000rpmずつ段階的に変化させて、図4に示されるように、光ディスク20の中心から−Y方向へ25mm隔てた位置にある点P4、40mm隔てた位置にある点P5、58mm隔てた位置にある点P6と、上述した点P2及び点P2’と光ディスク20の中心を結ぶ2本の直線上で、光ディスク20の中心から25mm隔てた位置にある点P7及び点P10と、40mm隔てた位置にある点P8及び点P11と、58mm隔てた位置にある点P9及び点P12での光ディスク20の振幅(μm)をレーザ変位計を用いて計測したときの結果である。表1に示されるように、安定化部材30を用いて光ディスク20を安定化した場合には、点P4、P5、P7、P8、P9、P10、P11、P12での振幅は10μm以下に抑えられ、点P6では振幅が15μmを大幅に越えているのがわかる。
【0038】
【表1】
【0039】
また、次表2は、光ディスク20の回転数を4000rpmから14000rpmまで2000rpmずつ段階的に変化させて、点P4〜P12における光ディスク20の円周方向のチルト角(以下、単にチルト角という)を、レーザオートコリメータを用いて計測したときの計測結果である。表2に示されるように、安定化部材30を用いて光ディスク20を安定化した場合には、点P4、P5、P6、P7、P8、P9でのチルト角はほぼ零度(±0.1deg以内)となっているのがわかる。
【0040】
【表2】
【0041】
したがって、光ディスク20に対して情報の再生又は記録を行なう際に、点P7、P8、P9で規定される直線に沿ってピックアップ26の移動経路(以下、第1経路という)を設定するか、あるいは点P10、P11、P12で規定される直線に沿ってピックアップ26の移動経路(以下、第2経路という)を設定すれば、ディスク20の振幅を経路全域にわたって10μm以下に抑えることができるので、アクセス精度の向上を図ることが可能となることがわかる。特に、第2経路に比較して第1経路では、表2に示されるように、その経路近傍の光ディスク20のチルト角が小さいため、本実施形態では、最もアクセス精度を向上する効果が高い第1経路上をピックアップ26が移動することとしている。
【0042】
なお、点P4、P5、P6で規定される直線に沿ってピックアップ26の移動経路を設定した場合においては、外周部点P6でのディスク20の振幅がやや悪化するものの、チルト角は零度近傍になっているので、例えば、光ディスク20の記録密度を下げたり、ディスク外周部の情報記録領域の範囲を狭くするなどして対応することにより、点P4、P5、P6で規定される直線上もピックアップ26の移動経路として十分に活用可能である。
【0043】
なお、点P10、P11、P12で規定される直線に沿ってピックアップ26の移動経路を設定する際には、ピックアップ26のチルト角を制御する機構を具備させ、ピックアップ26を走査するディスク面のチルト角の変化に追従させることにより、ディスク面に対するピックアップ26のチルト角を零度近傍に制御する方法が好適である。
【0044】
以上説明したように、本第1の実施形態にかかるディスク装置100によると、情報の再生又は記録を行なう際に光ディスク20に生じる面ぶれによる影響が少なく、かつチルト角が小さい位置(チルト角が零度近傍となる位置)に沿って、ピックアップ26の移動経路が設定されている。
【0045】
したがって、面ぶれによりピックアップ26が受ける悪影響が緩和されて、ディスク20に対するアクセス精度が向上し、結果的に光ディスク20に対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方を向上することが可能となっている。
【0046】
また、本第1の実施形態では、図2に示されるように、ピックアップ26をy軸と10度の角度をなす直線に沿って移動することとしたが、上述した理由からピックアップ26をy軸と−40度の角度をなす直線(点P10、P11、P12で規定される直線)沿って移動することとしてもよい。このようにしても、面ぶれによりピックアップ26が受ける悪影響が緩和されて、ディスク20に対するアクセス精度が向上し、結果的に光ディスク20に対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方を向上することが可能となる。
【0047】
また、本第1の実施形態では、ピックアップ26を、図2に示されるように、y軸と10度の角度をなす直線に沿って移動することとしたが、これに限らず、図6に示されるように、y軸から回転方向上流側(+x側)へ例えば10mm隔てたy軸に平行な直線に沿って移動することとしてもよい。
【0048】
次表3は、光ディスク20の回転数を4000rpmから14000rpmまで2000rpmずつ段階的に変化させて、図7に示されるように、ピックアップ26の移動経路上で、光ディスク20の中心から25mm隔てた位置にある点P7’、40mm隔てた位置にある点P8’、58mm隔てた位置にある点P9’での光ディスク20の振幅をレーザ変位計を用いて計測したときの計測結果であり、次表4は、点P7’、P8’、P9’におけるチルト角をレーザオートコリメータを用いて計測した時の計測結果である。
【0049】
表3及び表4に示されるように、点P7’、P8’、P9’においても、光ディスク20の面ぶれは10μm以下に抑えられており、チルト角はほぼ零度(±0.1deg以内)となっていることがわかる。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
したがって、光ディスク20に対して情報の再生又は記録を行なう際に、点P7’、P8’、P9’で規定される直線に沿ってピックアップ26の移動経路を設定すれば、ディスク20の振幅を経路全域にわたって10μm以下に抑え、かつ移動経路近傍の光ディスク20のチルト角を零度近傍の小さい値とすることができるので、ピックアップ26のアクセス精度の向上を図ることが可能となり、結果的に光ディスク20に対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方を向上することが可能となる。
【0053】
また、本第1の実施形態では、y軸とピックアップ26の移動経路が10度又は−40度の角度をなしている場合について説明したが、これに限らず、移動経路をy軸に沿うように設定し、安定化部材30の中心母線Lがy軸に対し−10度又は40度の角度を有するようにしてもよい。要は、安定化部材30の中心母線Lに対しピックアップ26の移動経路が10度又は−40度の角度を有していればよい。
【0054】
なお、安定化部材の作用面は、図3に示される構成から中心母線近傍に形成した平坦部をなくし、面全体を単純に、例えば曲率半径900mmで湾曲させた単純湾曲面とすることもできる。このような単純湾曲面を作用面とした安定化部材30’を用いた場合には、図8(A)に示されるように、点P1の光ディスク20の回転方向下流側に、光ディスク20と安定化部材30’とが近接する領域(点P2’’近傍)が存在する。
【0055】
基本的には、光ディスク20と安定化部材30’とが近接する領域の中心付近でディスクの面振れが効果的に抑制され、点P0〜点P3で規定される円周上の各位置における面ぶれ特性は図8(B)に示されるようになる。単純湾曲面を作用面とする安定化部材30’を用いた場合には、ディスク円周方向に見た場合に、効果的に面ぶれが抑制されている領域が1ヶ所(点P2’’近傍)、その180度逆側の対称位置を考えると安定化部材30’全面においては2ヶ所存在する。例えば、前記安定化部材30’を用いた場合には、点P2’’は光ディスク20の中心を通り、y軸と−25度の角度をなす直線上に現れる。そしてこの直線上の面ぶれ特性及びチルト角は、前述した点P10,P11,P12におけるディスク20の挙動と類似するものであった。
【0056】
したがって、作用面を単純湾曲面とする場合には、中心母線の下流側で、光ディスク20の中心と点P2’’を通る直線(y軸と−25度の角度をなす直線)上をピックアップ26の移動経路とすることで、ピックアップ26のアクセス精度の向上を図ることが可能となり、結果的に光ディスク20に対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方を向上することが可能となる。
【0057】
なお、中心母線付近に平坦部を有する安定化部材30では、効果的な面ぶれの抑制が行なえる点P2,P2’の中心母線からの角度はそれぞれ、10度と−40度であった。これらの値は、おおよそこの近傍とはなるが、湾曲面の曲率、中心母線付近の平坦面の幅等により変化する。同様に、安定化部材30’では点P2’’の中心母線からの角度は−25度であった。この値についても、おおよそこの近傍とはなるが、湾曲面の曲率、中心母線付近の平坦面の幅等により変化する。
《第2の実施形態》
次に、本発明の第2の実施形態を、図9〜図13(B)に基づいて説明する。ここで、前述した第1の実施形態と同等の構成部分については、同一の符号を用いるとともに説明を簡略し又は省略するものとする。
【0058】
図9には、第2の実施形態にかかるディスク装置101の概略構成が示されている。このディスク装置101は、図9に示されるように、Z軸に平行な回転軸22aを有するモータ22、該モータ22の回転軸22aの+Z側端部に固定されたスピンドルシャフト24、光ディスク20に対し情報の記録及び再生を行なうピックアップ26、光ディスク20の回転を安定させる安定化部材31、上記各部を収容する本体(ハウジング)10、及びピックアップ26並びにモータ22を制御する不図示の制御装置などを備えている。
【0059】
安定化部材31は、図9と、安定化部材31を上方から見た図である図10とを総合するとわかるように、例えば、中央に直径32mmの円形開口が形成された外径125mmの高さの低い円柱状部材であり、−Z側の面は不図示の支持部材を介してハウジング10の底壁面に固定され、+Z側の面は光ディスク20に対向する凸形状の湾曲面(以下、作用面ともいう)となっている。
【0060】
安定化部材31の作用面は、Y軸に平行で作用面の中心を通る母線L’(以下、中心母線L’ともいう)を有し、全体的には、例えば曲率半径1000mmで湾曲している。そして中心母線L’から−x方向及び+x方向へ距離S(ここでは17.5mmとする)隔てたY軸に平行な2本の直線と、作用面の外周とによって規定される領域、すなわち図10において着色された領域が平坦部となっている。
【0061】
図9に戻り、スピンドルシャフト24は、安定化部材31の中央に設けられた円形開口の内部に、円柱状の大径部の上面がわずかに突出するように配置されている。そして、光ディスク20は円形プレート20cの丸孔にスピンドルシャフト24の小径部が挿入され、大径部の上面によって下方から支持されることにより、記録層を上面とし、その中心が作用面の中心に一致した状態でスピンドルシャフト24に装着されている。ここでは一例として、光ディスク20は、該光ディスク20が平坦と仮定した時の下面と、安定化部材31の作用面の平坦部との距離が150μmとなるようにスピンドルシャフト24に装着されているものとする。
【0062】
ピックアップ26は、光ディスク20の上方(+Z側)に配置され、図11の矢印a,a’に示されるように、光ディスク20の中心を通りy軸と、例えば−10度の角度をなす直線に沿って、不図示のピックアップ駆動装置によって駆動される。これによりピックアップ26は、安定化部材30の作用面の中心を通り、中心母線L’に対し−10度の角度をなす直線に沿って移動する。
【0063】
次に、上述のように構成されたディスク装置101により、光ディスク20に対し情報の記録及び再生を行なった場合の安定化部材31の作用について説明する。光ディスク20が回転すると、光ディスク20にはその回転により発生する遠心力により水平な状態になろうとする復元力と、その回転と面形状の作用により生じる空気流の差に基づく圧力変化による反発力が発生する。その際に安定化部材31は、光ディスク20に対し空気力学的な力を作用させ、光ディスク20に生じる復元力と反発力のつりあいをとることにより、いわゆる光ディスク20の面ぶれを低減する。
【0064】
発明者等は、上述した安定化部材31を用いて光ディスク20の安定化実験を行なった。安定化実験は、図12に示されるように、光ディスク20を矢印bに示される方向に回転させた状態で、光ディスク20の外周の−Y側端の点P1と、点P1から外周に沿って−30度及び+30度の位置にある点P0及びP3とにより規定される中心角60度の円周上の各位置で観測される、光ディスク20の面ぶれにより生じるZ軸方向の振幅を計測するものである。
【0065】
安定化部材31を用いた場合には、図12と、ディスク20の−Y側の様子を示す図13(A)を総合するとわかるように、点P1の光ディスク20の回転方向上流側(P3側)の位置近傍では、光ディスク20に対し安定化部材31から離れる方向の力が作用する。この安定化部材31から離れた部分には安定化部材31が十分に作用しないため、点P0〜点P3で規定される円周上の各位置における面ぶれ特性は図13(B)に示されるようになる。図13(B)からは点P1の上流側(P3側)ではディスク20の面ぶれが局所的に悪化しているのがわかる。この現象は、光ディスク20の回転数がさほど速くない4000rpm付近で確認され、回転数が10000rpmを越える高速域になるとその影響は顕著となった。
【0066】
また、光ディスク20の回転数を4000rpmから14000rpmまで2000rpmずつ段階的に変化させて、図12に示されるように、光ディスク20の中心から−Y方向へ25mm隔てた位置にある点P4、40mm隔てた位置にある点P5、58mm隔てた位置にある点P6と、ピックアップ26の移動経路上で、光ディスク20の中心から25mm隔てた位置にある点P7、40mm隔てた位置にある点P8、58mm隔てた位置にある点P9で光ディスク20の振幅をレーザ変位計を用いて計測したところ、次表5に示される計測結果が得られた。
【0067】
表5に示されるように、回転数が4000〜12000rpmの範囲内安である場合には、点P4、P5、P7、P8、P9での光ディスク20の振幅は10μm以下に抑えられているが、点P6では回転数の増加にともなって振幅が10μmを越えて大幅に増大しているのがわかる。
【0068】
【表5】
【0069】
したがって、光ディスク20に対して情報の再生又は記録を行なう際に、従来から行なわれてきたようにピックアップ26の移動経路を点P4、P5、P6で規定される直線に沿うように設定すると、光ディスク20の振幅が大きい点P6近傍でピックアップ26のアクセス精度が低下することが考えられるが、点P7、P8、P9で規定される直線に沿ってピックアップ26の移動経路を設定すれば、ディスク20の振幅を経路全域にわたって10μm以下に抑えることができるので、アクセス精度の向上を図ることが可能となる。
【0070】
以上説明したように、本第2の実施形態にかかるディスク装置101によると、情報の再生又は記録を行なう際に光ディスク20に生じる面ぶれによる影響が少ない位置に沿って、ピックアップ26の移動経路が設定されている。
【0071】
したがって、面ぶれによりピックアップ26が受ける悪影響が緩和されてディスク20に対するアクセス精度が向上し、結果的に光ディスク20に対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方を向上することが可能となっている。
【0072】
また、本第2の実施形態では、ピックアップ26を、図11に示されるように、y軸と−10度の角度をなす直線に沿って移動することとしたが、これに限らず、図14に示されるように、例えばy軸から回転方向下流側(−x側)へ10mm隔てたy軸に平行な直線に沿って移動することとしてもよい。
【0073】
また、本第2の実施形態では、図11に示されるように、y軸とピックアップ26の移動経路が10度の角度をなしている場合について説明したが、これに限らず、移動経路をy軸に沿うように設定し、安定化部材30の中心母線Lがy軸に対し10度の角度を有するようにしてもよい。要は、安定化部材30の中心母線Lに対しピックアップ26の移動経路が−10度の角度を有していればよい。
【0074】
《第3の実施形態》
次に、本発明の第3の実施形態を、図15〜図17に基づいて説明する。ここで、前述した第1の実施形態と同等の構成部分については、同一の符号を用いるとともに説明を簡略し又は省略するものとする。
【0075】
図15には、第3の実施形態にかかるディスク装置102の概略構成が示されている。このディスク装置102は、図15に示されるように、回転軸22aを有するモータ22、該モータ22の回転軸22aの+Z側端部に固定されたスピンドルシャフト24、不図示の保持部材に着脱自在に保持されたディスクカートリッジ40、ディスクカートリッジ40に収納された光ディスク20に対し情報の記録及び再生を行なうピックアップ26、上記各部を収容する本体(ハウジング)10、及びピックアップ26及びモータ22を制御する不図示の制御装置などを備えている。
【0076】
ディスクカートリッジ40は、図15に示されるように、相互に係合するカバー42及びベース44と、カバー42とベース44とにより形成された内部空間に収容される安定化部材30、及び光ディスク20を備えている。
【0077】
カバー42は正方形板状の部材で、安定化部材30は、図16に仮想線で示されるように、中心母線Lがy軸と−10度の角度をなすようにカバー42の下面に取り付けられている。
【0078】
ベース44は、平面視ほぼ正方形の容体で、XY平面に平行な底板部と、該底板部の外周に沿って設けられた側壁部の2部分からなり、図16に示されるように、底板部には長手方向をY軸方向とする鍵穴状のスロット45が形成されている。このスロット45は円形の開口部45aと長方形状の開口部45bが連通したような形状を有し、開口部45aはその中心が安定化部材30の作用面の中心と一致するように形成され、開口部45bは開口部45aの−Y側からベース44の内壁面まで延びるように形成されている。
【0079】
そして、ベース44は、図15に示されるように、カバー42の下面に固定された安定化部材30と、該安定化部材30の下方に配置された光ディスク20とが、ベース44の底板部と側壁部で規定される空間に収容された状態で、カバー42の下面に固定されている。
【0080】
このように構成されたディスクカートリッジ40は、ディスク装置102の保持部材(不図示)に装着されると、内部に収容された光ディスク20が、カートリッジ40の下方から、スロット45の開口部45aを介して挿入されたスピンドルシャフト24に回動可能に支持されるとともに、ピックアップ26がスロット45の開口部45bを介して光ディスク20にアクセス可能な状態となる。そして、制御装置は、モータ22を介して光ディスク20を所定の回転数で回転駆動すると、ピックアップ駆動装置を介してピックアップ26をディスクカートリッジ44のスロット45bに沿って移動させながら、光ディスク20の記録層に対し情報の再生又は記録を行なう。
【0081】
発明者等は、上述のように構成された光ディスク装置102において、光ディスク20を矢印bに示される方向に、回転数を4000rpmから14000rpmまで2000rpmずつ段階的に変化させながら回転させ、図17に示されるように、ピックアップ26の移動経路上で、光ディスク20の中心から25mm隔てた位置にある点P13、40mm隔てた位置にある点P14、58mm隔てた位置にある点P15で光ディスク20の振幅をレーザ変位計を用いて計測したところ、次表6に示される計測結果が得られた。また、点P13、P14、P15で、光ディスク20のチルト角をレーザオートコリメータを用いて計測したところ次表7に示される結果が得られた。
【0082】
表6及び表7に示されるように、点P13、P14、P15においても、光ディスク20の面ぶれは10μm以下に抑えられており、チルト角はほぼ零度(±0.1deg以内)となっていることがわかる。
【0083】
【表6】
【0084】
【表7】
【0085】
したがって、光ディスク20に対して情報の再生又は記録を行なう際に、点P13、P14、P15で規定される直線に沿ってピックアップ26の移動経路を設定すれば、ディスク20の振幅を経路全域にわたって10μm以下に抑え、かつ移動経路近傍の光ディスク20のチルト角を零度近傍の小さい値とすることができるので、ピックアップ26のアクセス精度の向上を図ることが可能となることがわかる。
【0086】
以上説明したように、本第3の実施形態にかかるディスクカートリッジ40によると、ベース44には、ディスク20を回転させた際に光ディスク20に生じる面ぶれによる影響が少ない位置に沿って、スロット45の開口部45bが形成されている。
【0087】
したがって、面ぶれによりピックアップ26が受ける悪影響が緩和されてディスク20に対するアクセス精度が向上し、結果的に光ディスク20に対する情報の再生精度及び記録精度の少なくとも一方を向上することが可能となっている。
【0088】
また、本第3の実施形態では、安定化部材30を、中心母線Lとスロット45が所定の角度をなすように設けたが、これに限らず、スロット45の開口部45bを中心母線Lの回転方向上流側(+x側)に、例えば10mm程度隔てて設けてもよい。
【0089】
また、本第3の実施形態では、図15に示されるように、ディスクカートリッジ44が安定化部材30を備えている場合について説明したが、これに限らず、安定化部材31を備えていてもよい。この場合には、安定化部材31を、中心母線L’がy軸と10度の角度をなすように設けるか、又は、スロット45の開口部45bを中心母線L’の回転方向下流側(−x)に、例えば10mm程度隔てて設ければよい。
【0090】
なお、上記各実施形態における安定化部材30,31の外径、及び作用面の曲率半径の値は一例であり、使用するディスクに応じて最適な値とすることができる。例えば、ディスクの外径が小さくなればそれに応じて安定化部材30,31の外径も小さくすればよく、ディスク基板の厚さや材質が光ディスク20と異なるものを用いる場合には、例えば、実験やシミュレーションなどにより最適な安定化部材の形状を決定すればよい。
【0091】
また、安定化部材30,31の中心母線とピックアップ26の移動経路のなす角度及び両者間の距離は一例である。要は、ピックアップ26が面ぶれの影響を受けにくい位置から規定される経路上を移動可能であればよい。
【0092】
また、安定化部材30,31としては、例えばプラスティックの射出整形や、金属板を板金加工することにより製造することができる。
【0093】
また、上記各実施形態では、光ディスク20の一側に設けられた安定化部材30又は安定化部材31のみによって、光ディスク20の面ぶれを抑制したが、これに限らず、安定化部材30又は安定化部材31に加えて、例えば図18(A)及び図18(B)に代表的に示されるように、光ディスク20の他側に、安定化部材30又は安定化部材31の作用面を反転させた形状の作用面を有する補助安定化部材32を配置してもよい。
【0094】
また、上記各実施形態では、ディスク装置100,101,102が1つのピックアップ26を備えている場合について説明したが、これに限らず、例えば、ピックアップ26の他に、スピンドルシャフト24を挟んで他のピックアップを配置してもよい。このようにすれば、ディスク装置100で、例えば2つのピックアップを用いた転送レートの高速化が測れるようになる。
【0095】
また、上記各実施形態では、安定化部材30により可撓性のある光ディスクを安定化する場合について説明したが、これに限らず、例えば、磁気ディスクや光磁気ディスクなどの可撓性を有するディスクにも好適である。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上説明したように、本発明のディスク装置100,101,102は、可撓性のあるディスクに対し、情報の再生及び記録を行なうのに適しており、本発明のディスクカートリッジ40は、可撓性のあるディスクを収納するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるディスク装置100の概略的な構成を示す図である。
【図2】図1における光ディスク20を説明するための図である。
【図3】図1における安定化部材30を示す平面図である。
【図4】ディスク装置100の安定化実験における光ディスク20の計測位置を示す図である。
【図5】図5(A)及び図5(B)は、安定化部材30を用いたときの光ディスク20の面ぶれ特性を説明するための図である。
【図6】図1におけるピックアップ26の移動経路の変形例を説明するための図である。
【図7】図6における移動経路を採用したときの安定化実験における、光ディスク20の計測位置を示す図である。
【図8】図8(A)及び図8(B)は、安定化部材30’を用いたときの光ディスク20の面ぶれ特性を説明するための図である。
【図9】本発明の第2の実施形態にかかるディスク装置101の概略的な構成を示す図である。
【図10】図9における安定化部材31を示す平面図である。
【図11】図9におけるピックアップ26の移動経路を説明するための図である。
【図12】ディスク装置101の安定化実験における、光ディスク20の計測位置を示す図である。
【図13】図13(A)及び図13(B)は、安定化部材31を用いたときの光ディスク20の面ぶれ特性を説明するための図である。
【図14】図9におけるピックアップ26の移動経路の変形例を説明するための図である。
【図15】本発明の第3の実施形態にかかるディスク装置102の概略的な構成を示す図である。
【図16】図15におけるディスクカートリッジ40に形成されたスロット45を示す図である。
【図17】ディスク装置102の安定化実験における、光ディスク20の計測位置を示す図である。
【図18】図18(A)は第1の実施形態にかかるディスク装置100の変形例を示す図であり、図18(B)は第3の実施形態にかかるディスク装置102の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0098】
20…光ディスク、26…ピックアップ、30,31,30’…安定化部材、10…本体(ハウジング)、20a…シート、20b…領域(記録層)、24…スピンドルシャフト、22…モータ、22a…回転軸、32…補助安定化部材、40…ディスクカートリッジ、45…スロット、45a,45b…開口部、100,101,102…ディスク装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するディスクの記録面に沿って移動するヘッドと、前記ディスクに対向可能に配置された安定化部材と、を備えるディスク装置において、
前記安定化部材の前記ディスクに対向する対向面は、その中心を通る中心母線を対称軸とする湾曲面を含み、
前記ヘッドは前記中心母線からオフセットした経路に沿って往復移動することを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
前記対向面は、凹状の湾曲面を含み、前記中心母線を含む領域が平坦面であることを特徴とする請求項1に記載のディスク装置。
【請求項3】
前記ヘッドは、前記中心母線に対して前記ディスクの回転方向上流側にオフセットした経路に沿って往復移動することを特徴とする請求項2に記載のディスク装置。
【請求項4】
前記ヘッドは、前記平坦面に対向するディスクの記録面に沿って往復移動することを特徴とする請求項2又は3に記載のディスク装置。
【請求項5】
前記対向面は、前記中心母線を対称軸とする凹状の湾曲面であり、前記ヘッドは、前記中心母線に対して、前記ディスクの回転方向下流側にオフセットした経路に沿って往復移動することを特徴とする請求項1に記載のディスク装置。
【請求項6】
前記対向面は、凸状の湾曲面を含み、前記ヘッドは、前記中心母線に対して前記回転方向下流側にオフセットした経路に沿って往復移動することを特徴とする請求項1に記載のディスク装置。
【請求項7】
前記経路は、前記中心母線に対する角度及び距離の少なくとも1つに関し、前記中心母線からオフセットしていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のディスク装置。
【請求項8】
回転するディスクの記録面に沿って移動するヘッドと、前記ディスクに対向可能に配置された安定化部材と、を備えるディスク装置において、
前記安定化部材の前記ディスクに対向する対向面は、その中心を通る中心母線を対称軸とする凹状の湾曲面を含み、前記中心母線を含む領域が平坦面であることを特徴とするディスク装置。
【請求項9】
可撓性を有するディスクを回転可能に収納するケーシングと、前記ディスクに対向して配置された安定化部材と、を備えるディスクカートリッジにおいて、
前記安定化部材の前記ディスクに対向する対向面は、その中心を通る中心母線を対称軸とする湾曲面を含み、
前記ケーシングには、前記ディスクの記録面に対して情報の記録及び再生の少なくとも一方を行なうヘッドの移動経路を規定するスロットが、前記中心母線からオフセットした位置に形成されていることを特徴とするディスクカートリッジ。
【請求項10】
前記対向面は、凹状の湾曲面を含み、前記中心母線を含む領域が平坦面であることを特徴とする請求項9に記載のディスクカートリッジ。
【請求項11】
前記スロットは、前記中心母線に対して前記ディスクの回転方向上流側にオフセットした位置に形成されていることを特徴とする請求項10に記載のディスクカートリッジ。
【請求項12】
前記スロットは、前記平坦面に対向するように形成されていることを特徴とする請求項10又は11に記載のディスクカートリッジ。
【請求項13】
前記対向面は、前記中心母線を対称軸とする凹状の湾曲面であり、前記スロットは、前記中心母線に対して、前記ディスクの回転方向下流側にオフセットした位置に形成されていることを特徴とする請求項9に記載のディスクカートリッジ。
【請求項14】
前記対向面は、凸状の湾曲面を含み、前記スロットは、前記中心母線に対して、前記ディスクの回転方向下流側にオフセットした位置に形成されていることを特徴とする請求項9に記載のディスクカートリッジ。
【請求項15】
前記スロットは、前記中心母線に対する角度及び距離の少なくとも1つに関し、前記中心母線からオフセットしていることを特徴とする請求項9〜14のいずれか一項に記載のディスクカートリッジ。
【請求項16】
可撓性を有するディスクを回転可能に収納するケーシングと、前記ディスクの記録面に対向して配置された安定化部材と、を備えるディスクカートリッジにおいて、
前記安定化部材の前記ディスクに対向する対向面は、その中心を通る中心母線を対称軸とする凹状の湾曲面を含み、前記中心母線を含む領域が平坦面であることを特徴とするディスクカートリッジ。
【請求項1】
回転するディスクの記録面に沿って移動するヘッドと、前記ディスクに対向可能に配置された安定化部材と、を備えるディスク装置において、
前記安定化部材の前記ディスクに対向する対向面は、その中心を通る中心母線を対称軸とする湾曲面を含み、
前記ヘッドは前記中心母線からオフセットした経路に沿って往復移動することを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
前記対向面は、凹状の湾曲面を含み、前記中心母線を含む領域が平坦面であることを特徴とする請求項1に記載のディスク装置。
【請求項3】
前記ヘッドは、前記中心母線に対して前記ディスクの回転方向上流側にオフセットした経路に沿って往復移動することを特徴とする請求項2に記載のディスク装置。
【請求項4】
前記ヘッドは、前記平坦面に対向するディスクの記録面に沿って往復移動することを特徴とする請求項2又は3に記載のディスク装置。
【請求項5】
前記対向面は、前記中心母線を対称軸とする凹状の湾曲面であり、前記ヘッドは、前記中心母線に対して、前記ディスクの回転方向下流側にオフセットした経路に沿って往復移動することを特徴とする請求項1に記載のディスク装置。
【請求項6】
前記対向面は、凸状の湾曲面を含み、前記ヘッドは、前記中心母線に対して前記回転方向下流側にオフセットした経路に沿って往復移動することを特徴とする請求項1に記載のディスク装置。
【請求項7】
前記経路は、前記中心母線に対する角度及び距離の少なくとも1つに関し、前記中心母線からオフセットしていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のディスク装置。
【請求項8】
回転するディスクの記録面に沿って移動するヘッドと、前記ディスクに対向可能に配置された安定化部材と、を備えるディスク装置において、
前記安定化部材の前記ディスクに対向する対向面は、その中心を通る中心母線を対称軸とする凹状の湾曲面を含み、前記中心母線を含む領域が平坦面であることを特徴とするディスク装置。
【請求項9】
可撓性を有するディスクを回転可能に収納するケーシングと、前記ディスクに対向して配置された安定化部材と、を備えるディスクカートリッジにおいて、
前記安定化部材の前記ディスクに対向する対向面は、その中心を通る中心母線を対称軸とする湾曲面を含み、
前記ケーシングには、前記ディスクの記録面に対して情報の記録及び再生の少なくとも一方を行なうヘッドの移動経路を規定するスロットが、前記中心母線からオフセットした位置に形成されていることを特徴とするディスクカートリッジ。
【請求項10】
前記対向面は、凹状の湾曲面を含み、前記中心母線を含む領域が平坦面であることを特徴とする請求項9に記載のディスクカートリッジ。
【請求項11】
前記スロットは、前記中心母線に対して前記ディスクの回転方向上流側にオフセットした位置に形成されていることを特徴とする請求項10に記載のディスクカートリッジ。
【請求項12】
前記スロットは、前記平坦面に対向するように形成されていることを特徴とする請求項10又は11に記載のディスクカートリッジ。
【請求項13】
前記対向面は、前記中心母線を対称軸とする凹状の湾曲面であり、前記スロットは、前記中心母線に対して、前記ディスクの回転方向下流側にオフセットした位置に形成されていることを特徴とする請求項9に記載のディスクカートリッジ。
【請求項14】
前記対向面は、凸状の湾曲面を含み、前記スロットは、前記中心母線に対して、前記ディスクの回転方向下流側にオフセットした位置に形成されていることを特徴とする請求項9に記載のディスクカートリッジ。
【請求項15】
前記スロットは、前記中心母線に対する角度及び距離の少なくとも1つに関し、前記中心母線からオフセットしていることを特徴とする請求項9〜14のいずれか一項に記載のディスクカートリッジ。
【請求項16】
可撓性を有するディスクを回転可能に収納するケーシングと、前記ディスクの記録面に対向して配置された安定化部材と、を備えるディスクカートリッジにおいて、
前記安定化部材の前記ディスクに対向する対向面は、その中心を通る中心母線を対称軸とする凹状の湾曲面を含み、前記中心母線を含む領域が平坦面であることを特徴とするディスクカートリッジ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−149311(P2007−149311A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146059(P2006−146059)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(503391577)長太郎エンジニアリング株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(503391577)長太郎エンジニアリング株式会社 (16)
【Fターム(参考)】
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