説明

データ取得方法

【課題】 特定の体積の測定が実施できる方法を提供することである。
【解決手段】
− 高温ガスを通る光線(12)を案内する工程と、
− 光線(12)が通過する各高温ガス体積部(16)のための、
光線(12)の方向に対して0°よりも大きい角度を有する、予め定められた方向へ散乱光(15)を案内する信号を検出する工程と、
− 高温ガスの吸収スペクトルを確かめながら、検出される信号を処理する工程と、
− 燃焼工程を指示する取得データに対して吸収スペクトルデータを処理する工程を備えていることにより解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ取得方法に関する。特に、この方法はガスタービンの燃焼室内で起る燃焼過程を示すデータに役立つ。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンの開発時および運転時に、燃焼室内で起こる燃焼過程を示す数多くのデータを集めなければならない。例えばデータとは、温度および圧力、組成等などの他のデータを含んでいる。
【0003】
通常、温度は燃焼室内に導入される熱電対アレーを使用して集められる(出口に対して閉鎖されている。)。
【0004】
これらの熱電対アレーは、精密な測定を保証しない。その理由は、実際に提供される熱電対の数量が限られていることと、圧力により生じる流れへの妨害が生じることにある。
【0005】
加えて、これらの熱電対アレーによってしか、温度測定を行うことができない。他の適切なデータの測定を行うためには、別の適切なセンサを備える必要がある。
【0006】
特許文献1には、燃焼過程を監視し、かつ制御するための方法が開示されている。この方法によれば、レーザ光線は、燃焼室の外側ケーシングから送られ、燃焼室の内側ケーシングから反射される。従って、この反射光は検出され、かつ処理される。
【0007】
この方法によれば、内側と外側のケーシングの間の通路全体に関係する累積データを検出することができるが、特定の体積(すなわち、内側と外側のケーシングの間の特定の体積)に関するデータは得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開2008/0289342第号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
開示の態様は、特定の体積の測定が実施できる方法を提供することにある。
【0010】
開示の他の態様は、精密な測定は、例えば燃焼室出口での温度分布を得るために行うことができる方法を提示することを含んでいる。
【0011】
開示の他の態様は、数多くの異なるデータ(すなわち、温度だけではない)の測定ができる方法を提示することである。例えば、これらの別のデータとは、圧力、濃度および組成を含む。
【0012】
これら及び他の態様は、従属請求項による方法を提供することにより達せられる。
【0013】
その他の特徴及び長所は、図における限定していない例により図示された、好ましいが非排他的方法の実施例の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ガスタービン燃焼室に接続された装置の概略図である。
【図2】コリメータレンズの方へ案内される、特殊な散乱光を示す図である。
【図3】異なる検出器の概略図である。
【図4】異なる検出器の概略図である。
【図5】レーザ光を形成している一つの構成部品の、波長(λ)と時間の関係を示す図である。
【図6】図5のレーザ光から出る散乱光の一つの構成部品の、波長(λ)と時間の関係を示す図である。
【図7】図5のレーザ構成部品が通過する、媒体(高温ガス)の吸収(波長(λ)と時間の関係)を示す図である。
【図8】レーザ光を形成している複数の構成部品の波長(λ)と時間の関係を示す図である。
【図9】レーザ光源の実例を示す図である。
【図10】レーザ光の詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0015】
以下に、データ取得用の装置を最初に説明する。
【0016】
図1にはガスタービンの燃焼室1とガスタービンの燃焼室の運転下流側の高圧タービン段が示してある。燃焼室1内では、空気と燃料が注入され、かつ燃焼して、タービン段2へ案内される高温ガスを生成する。
【0017】
燃焼室1は外側ケーシング3と内側ケーシング4を備えている。装置10は外側ケーシング3に接続しているのが好ましい。いずれにしても、装置10は内側ケーシング4にも接続している。
【0018】
装置10は、燃焼時に生じる高温ガスを通る光線12を案内するための(レーザ光源などの)光線源11を備えている。光線源11の波長は、同調可能であるのが好ましい。
【0019】
例えば、光線源11は複数のレーザダイオード11a〜dを備えていてもよく、各々は所定の周波数でレーザ光線12aを発生させる(図9)。各レーザダイオードは、予め決められた周波数で作動し、かつ最小波長と最大波長の間で同調可能である。この点で、図5は、一つのレーザダイオードにより放出される発光の一例を示しており、このレーザダイオードは、所定の周波数fで作動し、かつ波長λmaxとλminの間で同調可能である。
【0020】
各レーザダイオード11a〜dにより発生したレーザ光線12aは、混ぜ合わされて、燃焼室1内に案内されるレーザ光線12を発生させる。この点で、図8は複数の同調可能なレーザダイオード11a〜dにより放出された発光の一例を示しており、各々所定の周波数で作動している。
【0021】
レーザダイオードの代わりに、何れの他の種類のレーザ源を使用できるのは当然である。
【0022】
装置10は、光線12がそこを通って通過する高温ガス容積16により、所定の方向に放出された散乱光15を指示する信号の、一つあるいはそれより多くの検出器を備えている。
【0023】
さらに装置10は、高温ガスの吸収スペクトルを得るために、検出された信号を処理するための処理ユニット17も備えている。処理ユニットはコンピュータであってもよく、ヘテロダイン法に従って作動させるのが好ましい。
【0024】
散乱光15の方向を選択するためのコリメータレンズ19が設けられているのが有利である。コリメータレンズ19は、外側ケーシング3内の窓に面しており、かつ光学信号を検出器13に提供する。コリメータレンズ19は、非球面レンズから成る。
【0025】
加えて、光ファイバ(例えば多目的光ファイバ)20は、コリメータレンズ19と検出器13の間に設けられている(いずれにせよ、この特徴は必要ではない)。
【0026】
図4は、光ファイバ20が一列の検出器13に接続している一例を示す。
【0027】
図3は、光ファイバ20が、MEM素子(微小電気機械素子)、電気光学変調器あるいは他の素子のような光スイッチ21、従って検出器13に接続している別の例を示す。
【0028】
コリメータレンズ19と光ファイバ20がどちらも設けられていると、光ファイバの端部20aは、レンズ19の焦点に位置決めされる。対照的に、コリメータレンズ19が設けられると(しかし、光ファイバ20は設けられていない)、検出器13あるいは光スイッチ21は、レンズ19の焦点に位置している。
【0029】
素子の作動は以下の通りである。
【0030】
レーザ源11はレーザ光線12(その特徴は例えば図に示してある)を発生させ、このレーザ光線は燃焼室1を通過し、高温ガスは燃焼室を貫流する。レーザ源11は、レーザ光線12の周波数が連続的に変化するように連続的に同調される(図5はレーザ光線12の特定の周波数での単一の構成部品を示す)。
【0031】
レーザ光線12が各体積16を通過すると、レーザ光線は体積16内に含まれる物質によりその一部が吸収される(図6は図9の構成部品に関する吸収を示す)。
【0032】
次いで、各体積16は全方向に散乱光15を再放出する。従って、散乱光1T5の一部はレンズ19の方へ向かう。
【0033】
散乱光15がレンズ19に達すると、レンズ19の光軸19aに対して平行な方向へ伝播する光線だけが、レンズ19を通過する。光軸19aに対して平行な方向へ伝播しない散乱光15は、光ファイバ20の端部20aに集束し、光スイッチ21あるいは検出器16が位置するレンズ19の焦点には合わない。この理由で、散乱光は検出されない。特定の方向に伝播する散乱光15だけが検出されるので、特定の局所情報が検出でき、温度分布(あるいは他の特徴)は再編成することができる。
【0034】
図4の実施例で、散乱光15を示す信号は、検出器13の各々に連続的に達するが、一方、図3の実施例では、一つの信号は一度に検出器13に達する。
【0035】
散乱光15を示すこれらの信号は、検出器13で電気信号に変換される。従って、これらの電気信号は処理ユニット17に供給される。処理ユニットは、周波数成分を互いから分離し、かつ各検出器13あるいは光ファイバに面している各体積16に関する高温ガスの吸収スペクトルを再構成するために、(ヘテロダイン法に従って)信号を作る。
【0036】
放出されるレーザ光線12の波長は公知なので、各周波数で吸収を確かめることが可能であり、従って高温ガスの特徴を確かめることが可能である。図7は図5のレーザ構成部品の周波数での高温ガスの吸収を示す。
【0037】
以下に、高温ガスを発生させる燃焼工程からのデータ取得の方法を説明する。
【0038】
この方法は高温ガスを通過する光線12を案内する工程を備えている。光線12は異なる周波数で一つあるいはそれより多くの構成部品を有するレーザ光線であり、これらの構成部品は、最小波長と最大波長の間で同調されるのが好ましい。これらの最小波長と最大波長は、検出されねばならない煙道ガスの成分(例えば一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素、二酸化窒素等)に従って選定することができる。
【0039】
本方法は、光線12が通過する各高温ガス体積16のための光線12の方向に対して0°よりも大きい角度を有する予め定められた方向で、散乱光15を示す信号を検出する工程と、高温ガス吸収スペクトルを得るために検出された信号を処理する工程を備えている。
【0040】
従って、吸収スペクトルは、選定されたガス成分あるいは異なる特徴の、温度および/または圧力および/または組成および/または濃度などの燃焼過程を示すデータを得るために処理される。この詳細(elaboration)は、従来技術において良く知られている(同調可能なダイオードレーザ吸収分光法、TDLAS)。
【0041】
光線12は、レンズ19の光軸に対して予め決められた角度Aで放出される。予め決められた角度Aは、40°より小さく、0より大きいのが好ましく、さらに15〜25°であるのが好ましい。これによりコンパクトな配設が得られ、いずれにしても、難しい角度も可能になる。
【0042】
検出時、体積16からさらに近くか、さらに遠い体積16からの散乱光15が検出される。処理時に、光源11からさらに遠い体積16からの燃焼過程を示すデータは、光源11に近い体積16からの燃焼過程を示すデータに基づいて計算される。
【0043】
言い換えると、適切な体積16を通過するレーザ光線12の一部はすでに減衰されるので、体積からの信号は、適切な体積16での条件の平均を示し、さらにレーザ光線12がすでに通過した他の体積16の全てにおける条件の平均も示す。従って、適切な体積kでの実際の条件を計算することができる(ケーシングに隣接した第一の体積からの光線12は以前の吸収を有しておらず、かつ計算を必要としないのが当然である)。
【0044】
例えば(図10)、体積k−1における場合、T=1830Kの温度が計算され、体積kでは、温度T=1820Kが計算される。体積kでの実際の温度は、1820×2−183=1810Kである。
【0045】
レーザ源11を担持するケーシングに隣接した体積k0で、1830Kの温度が測定されると、これは実際にこの体積での温度である。
【0046】
一実施例によれば、光線12が通過する高温ガスの体積は、光線12の方向で、不連続の高温ガス体積16内にほぼ分離できる。不連続の高温ガス体積16は、コリメータレンズ19の部分および/またはセンサ13に通じる光ファイバ20に相互関連される。
【0047】
このようにして、温度、圧力、組成などの異なるデータが確定できる。加えて、データは燃焼室内では選定された体積を意味するので、温度分布などの極めて特定の情報も確定できる。
【0048】
例えば、選定されたガス成分の濃度を確定するために、選定された分子に関する分子吸収スペクトルを提供することができ、濃度を示すデータを得るために吸収スペクトルを作ることは、吸収スペクトルを分子吸収スペクトルと比べることを含んでいる。
【0049】
説明した特徴は、互いに独立して規定されているのは当然である。
【0050】
実際、使用される材料と寸法は、要求と最新技術に従って随意に選択できる。
【符号の説明】
【0051】
1 燃焼室
2 タービン段
3 外側ケーシング
4 内側ケーシング
10 装置
11,11a−d 光源
12,12a 光線
13 検出器
15 散乱光
16 体積
17 処理ユニット
19 コリメータレンズ
19a 光軸
20 光ファイバ
20a 光ファイバの端部
21 光スイッチ
f 周波数
k,k0,k−1 異なる位置での体積
t 時間
A 角度
λ,λmax,λmin 波長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温ガスを発生させる燃焼工程から、データ収集を行うための方法であって、
この方法が以下の工程、すなわち
− 高温ガスを通る光線(12)を案内する工程と、
− 光線(12)が通過する各高温ガス体積部(16)のための、
光線(12)の方向に対して0°よりも大きい角度を有する、予め定められた方向へ散乱光(15)を案内する信号を検出する工程と、
− 高温ガスの吸収スペクトルを確かめながら、検出される信号を処理する工程と、
− 燃焼工程を指示する取得データに対して吸収スペクトルデータを処理する工程を備えていることを特徴とする方法。
【請求項2】
光軸(19a)を有するレンズ(19)により、散乱光(15)の予め定められた方向を選択する工程を備え、
光線(12)を、レンズ(19)の 光軸(19a)に対して予め定められた角度(A)で放出し、予め定められた角度(A)が、40°よりも小さく、好ましくは0°よりも大きく、さらに好ましくは15〜25°であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも一つの検出器(13)を介して検出を行い、
検出時に、前記少なくとも一つの検出器(13)に近い体積(16)から、およびさらに遠い体積から散乱される散乱光(15)が検出され、
処理時に、少なくとも一つの光源(11)からさらに遠い体積(16)からの燃焼過程を示すデータが、光源(11)により近い体積(16)からの燃焼過程を示すデータに基づいて計算されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
燃焼過程を示すデータが、温度および/または圧力および/または濃度および/または組成を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
選定された分子に関する分子吸収スペクトルを提供し、
選定されたガス成分の濃度を示すデータを得るために吸収スペクトルを処理することが、吸収スペクトルを分子吸収スペクトルと比べることを含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
光線が、特定の周波数で少なくとも一つの成分を有しており、この成分が、最小波長と最大波長の間で連続的に同調されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
光線(12)が複数の成分を備えており、各々が特定の周波数を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
光線(12)がレーザ光線であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
燃焼がガスタービン燃焼室(1)内で起こることを特徴とする請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−92524(P2013−92524A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−230524(P2012−230524)
【出願日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5400 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】