説明

データ記憶のための機器

【課題】大データ容量の近接場光記録用の機器及び方法を提供する。
【解決手段】第1表面を有する構成部品と、前記第1表面に隣接して位置決めされた相変化記憶媒体と、前記第1表面に隣接する焦点に電磁放射を方向づけて、近接場放射を利用して前記相変化記憶媒体の一部の相を変化させる第1導波路と、前記相変化記憶媒体に隣接して第1端部が位置決めされた第1電極と、前記記憶媒体の導電率の変化に応じて変化する前記第1電極内の電流を検出する検出器とを備える、機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、国立標準技術研究所(NIST)と締結した契約第70NANB1H3056号を受け、米国政府の援助で行われた。米国政府は、本発明の一定の権利を有する。
【0002】
本発明は、データ記憶のための機器に関し、より詳細には、相変化記憶媒体を使用する光記憶装置に係るものである。
【背景技術】
【0003】
光データ・システムにおいて、記憶媒体への情報の読み書きは光ビームに依存する。光ビームをどのくらい小さく集束できるかに関しては、回折限界という基本的な制約がある。この制限は、光の波長に直接関係する。波長が短いほど、光のスポットを小さくすることができ、したがって、所与の面積に、より多くのビットを記憶できる。解像限界は、アッベ(Abbe)の式によって以下のように与えられる。
【0004】
解像力=(波長×0.61)/(開口数)
レーザ・スポットのサイズを小さくするには、より短い波長のレーザ及び/又はより大きい開口数のレンズを使用する必要がある。CDからDVD、DVDからDVD−ブルーレイ(Blu−Ray)への移行に際して、780nmでの0.55から、635nmでは0.6よりも大きくし、最終的には、405nmで0.85に開口数を大きくし、レーザの波長を短くした。より短い波長の光及びより大きい開口数(NA)のレンズでは、より長い波長及びより小さいNAの光学系を使用するシステムに比べて、集束スポットの焦点深度(DOF)がより浅くなる。DOFは、以下のように表現することができる。
【0005】
DOF=2×波長×(屈折率)/(開口数)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−292338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
遠視野光技術を使用して、記憶媒体上で回折限界未満のマークを検出することはできない。開口数0.85及び波長405nmを用いる最新のDVD−Blu−Ray技術では、最小マーク・サイズは140nmである。さらに、マークを読書きする媒体に関して焦点を正しい位置に保つには、サーボ・システムがかなりの作業を行うことを必要とする。なぜなら、動作中のディスクのぐらつきその他の不完全性により、焦点位置が変動するからである。
【0008】
光記録システムにおけるデータ容量は、DVD−Blu−Rayのものよりも大きくすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1表面を有する構成部品と、この第1表面に隣接する焦点に電磁放射を方向づける第1導波路と、この第1表面に隣接して位置決めされた記憶媒体と、この記憶媒体から反射された電磁放射を検出する検出器と、反射された電磁放射を収集し、この反射された電磁放射を検出器に向かって送るために、焦点に隣接して位置決めされた構造体とを備える機器を提供する。
【0010】
別の観点では、本発明は、試料を検査する機器を提供する。この機器は、試料に隣接して位置決めされるように構成された第1表面を有する構成部品と、この第1表面に隣接する焦点に電磁放射を方向づける第1導波路と、試料又は試料上の汚染物質により反射された電磁放射を検出する検出器と、反射された電磁放射を収集し、この反射された電磁放射を検出器に向かって送るために、焦点に隣接して位置決めされた構造体とを備える。
【0011】
本発明は、第1表面を有する構成部品と、この第1表面に隣接して位置決めされた相変化記憶媒体と、この第1表面に隣接する焦点に電磁放射を方向づけて、近接場放射を利用して相変化記憶媒体の一部の相を変化させる第1導波路と、この相変化記憶媒体に隣接して第1端部が位置決めされた第1電極と、記憶媒体の導電率の変化に応じて変化する第1電極内の電流を検出する検出器とを備える機器も含む。
【0012】
本発明はさらに、相変化記憶媒体と、この相変化記憶媒体に隣接して第1端部が位置決めされた第1電極と、記憶媒体の導電率の変化に応じて変化する第1電極内の電流を検出する検出器とを備える機器を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に従って構成された記録ヘッドを含むことのできるディスク・ドライブを絵画的に表現した図である。
【図2】本発明に従って構成された一体型導波路構造体を備えたスライダを使用する近接場光記録システムを概略的に表現した図である。
【図3】固体浸漬ミラー構造体を概略的に表現した図である。
【図4】固体浸漬ミラー構造体を含むスライダの一部を概略的に表現した図である。
【図5】固体浸漬ミラー構造体を含むスライダの一部の等角図である。
【図6】図5のスライダの一部の等角図である。
【図7】本発明に従って構成された別のスライダの一部を概略的に表現した図である。
【図8】記録媒体の表面上の粒子によって散乱する光を概略的に表現した図である。
【図9】本発明に従って構成された別のスライダの一部を概略的に表現した図である。
【図10】本発明に従って構成された別のスライダの一部を概略的に表現した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照すると、図1は、本発明に従って構築できる記録ヘッドを含むディスク・ドライブ10のヘッド・ディスク組立体部分を絵画的に表現したものである。このディスク・ドライブは、ディスク・ドライブの様々な構成部品を収容するように寸法設定され構成されたハウジング12を含む(この図では、上側部分が取り除かれ、下側部分が見えている)。このハウジング内で少なくとも1つのデータ記憶媒体16を回転させるスピンドル・モータ14が設けられる。ハウジング12は、少なくとも1本のアーム18を収容し、各アーム18は、記録及び/又は読取り用のヘッド又は摺動体(スライダ)22を伴う第1端部20と、軸受け26によってシャフトに旋回可能に装着された第2端部24とを有する。アクチュエータ・モータ28は、アーム18を旋回点の周りで旋回させて、ディスク16の所望の領域上でヘッド22を位置決めするために、アームの第2端部24に配置される。アクチュエータ・モータ28は、この図には示さない当技術分野で周知の制御装置によって制御される。この記憶媒体は、矢印30で示す方向に回転する。ディスクが回転すると、スライダは、空気軸受けに支えられてディスク表面の上を飛行する。
【0015】
図2は、サスペンション・アーム32及び構成部品又はスライダ34の一部を、記録ディスク36と組み合わせて概略的に表現したものである。データの書込み及び/又は読取りの間、このディスクは、スライダに対して相対的に、矢印38で示す方向に移動する。このスライダは、ジンバル組立体40によってサスペンション・アームに結合され、ディスクの表面42に隣接して位置決めされ、空気軸受け44によってディスク表面から離されている。このジンバル組立体は、サスペンション・アーム32に連結された第1部分41と、スライダ34に連結された第2部分42とを含む。この第2部分は、第1部分に対して片持ちになっている。このスライダは、前端部すなわち前方の端部46及び後端部すなわち後方の端部48を有する。この実施例では、前端部は、サスペンション・アームの旋回点に向き合い、後端部は、サスペンション・アームの旋回点の反対側を向く。このスライダは、後端部に隣接して装着された固体浸漬ミラー50の形態の光学構造体を含む。矢印52で示す光ビームがレーザによって生成され、光ファイバ54によってスライダに向かって伝達される。ミラー56が、光変換器に向かって光が反射されるようにサスペンション・アームの端部に装着される。格子を使用して、この光を固体浸漬ミラーに結合させることができる。この実施例の記録ディスクは、基板58と、1つ又は複数の副層60と、相変化材料を含む記録層62と、1つ又は複数の被覆層64とを含む。検出器66は、ディスクを透過する光を検出するためにディスクの下に位置決めできる。
【0016】
光記録を行うには、データ記憶媒体の表面に、例えば可視光、赤外光、又は紫外光の電磁波を方向づけ、それによって、この媒体の局所領域の温度が上がり、記憶媒体の記録層で相変化が生じる。記憶媒体からデータを読み取るために、この媒体に光を方向づけ、この媒体から反射される光、又はこの媒体を通過する光を検出できる。相変化材料中のマークは、反射又は透過する光の特性に影響を及ぼすことになり、影響を受けた特性の変化を利用して、媒体上にマークが存在するか否かを示すことができる。
【0017】
記録層は、追記型又は書換え型の相変化材料などの活性被膜材料、追記型(WORM)に適用する有機色素、或いは、例えば光磁気材料など、光照射/加熱の後で特性が変化する他の任意の材料を含むことができる。
【0018】
最適な活性媒体の例には、VI族、V族、及びIII族の元素などの相変化合金が含まれる。これらの合金は、加熱するとアモルファスから結晶(安定な状態)又はその逆の相転移を起こす。特定の実施例は、DVD製品で使用されているGe−Sb−Te合金(核形成が支配的な結晶化)又はAg−In−Sb−Te(成長が支配的な結晶化)である。成長が支配的なドープされたSbTe共晶合金は、小さなサイズのマークに適している。なぜなら、これらの結晶化時間は、マークのサイズが小さくなるとともに短くなるからである。このような相変化媒体は、100nm未満の大きさの安定なアモルファスのマークを保持できることが示されている。
【0019】
真空技術によって室温で相変化材料を被着させると、被着させたままの状態は、アモルファスであり、準安定である。この材料を結晶安定状態に転化させるには、(光又は熱により)初期化することが必要である。ディスク積層体における熱の管理を効果的に行うために、活性被膜に加えて、誘電体及び金属の被膜を追加することができる。特に熱に安定な構造の材料であるZnS−SiOで誘電体スペーサ及びキャップ層を形成することができ、それによって読書きサイクルを極めて多数回行うことができる。反射光を利用して読出しが行われる場合には、Al−Cr合金製の放熱及び反射層を追加できる。基板材料は、例えば、ガラス又はポリカーボネートにできる。媒体は、この媒体の表面上方にスライダを飛行させるのに必要とされる平滑度を確保するために、スパッタ後処理を行うことができる。
【0020】
記録層は、マーク間の領域とは反射率の異なるマーク・パターンのらせんトラックを含む。集束されたレーザ・ビームがマークの上を通過すると、光量の変化を透過又は反射で検出することができる。反射モードでは、光は導波路構造体に再結合され、それから出て検出器に結合される。透過モードでは、ディスクの反対側に集光レンズ及び検出器が位置決めされる。マーク・パターンを表す検出器電流を復号してデジタル情報を作成する。
【0021】
媒体に書込みを行うには、この媒体に短い(通常、数ナノ秒程度の)高出力レーザ・パルスを印加して、初期状態の結晶媒体をアモルファス化させる。媒体の消去を行うには、この媒体に、より長い(数マイクロ秒程度の)低出力パルスを印加して、媒体の一部を再結晶させ、媒体のその部分に記憶されたデータを消去する。アモルファス化温度は約600℃であり、結晶化温度は約200℃である。
【0022】
相変化材料は、それらの相、すなわち結晶又はアモルファスのいずれかに応じて異なる光学定数を示す。相と相の間の変化は、レーザ光により誘起され、マークのサイズは、以下のアッベの式によって与えられる回折限界の基本的な制約によって制限される。
【0023】
解像力=(波長×0.61)/(開口数)
しかし、例えばいわゆる超解像効果を利用して、このような記録材料に回折限界未満のサイズのマークを書き込むことのできる遠視野光技術が報告されている。光データ記憶における制限要因は、このような小さなマークを、過剰な読出しレーザ出力を印加することによって情報を破壊することなく、十分な搬送波対雑音比(CNR)で読み出す能力である。
【0024】
図3は、固体浸漬ミラー構造体70を概略的に表現したものである。この固体浸漬ミラーは、(コンデンサとも呼ぶ)方物面鏡74の形態の平面導波路72を含む。第1格子76及び第2格子78は、入射光を導波路に結合する分割格子を形成する。矢印80及び82で示される偏光の形態をした電磁放射は、これらの格子に方向づけられる。これらの格子は、導波路の長手方向軸線84に平行な方向にずれており、そのため、導波路の半分86に入射する結合光が、導波路の残りの半分88に入射する光に関して180°ずれる。この導波路は、光を反射させるために側面90及び92で界面を提供する材料で構成される。導波路の側面90及び92は、焦点94に光が集光される形状になっている。金属変換器96は、この焦点に位置決めされる。好ましくは、この変換器は、金、銀、アルミニウム、又は銅などの金属でできている。
【0025】
固体浸漬ミラー構造体は、波長未満のスポットに光を集束させて、相変化媒体に近接場光記録することができる。この構造体は、磁気ハード・ドライブで使用するものと同様にスライダ上に製作することができ、相変化記憶媒体の上方を光近接場程度の間隔で飛行して、回折限界よりもはるかに小さなサイズのマークを光学的に書き込む。
【0026】
図3では、コンデンサは、平面固体浸漬ミラー(P−SIM)である。焦点での導波路のそれぞれの半分における光同士の間の位相差のため、光の電場は、コンデンサの対称軸線に沿う長手方向に偏光する。長手方向の電場は、それが長手方向を向いているときに、変換器に強く結合する。固体浸漬ミラーの端部98は、記憶媒体に隣接して位置決めでき、それによって、変換器の端部で放出される電磁放射を利用して媒体の一部を加熱できる。変換器の寸法、特に長さが正しく選択されている場合、この変換器は入射光に共振し、変換器の端部近傍の媒体中で極めて大きな電場を発生させる。
【0027】
レーザ・ダイオードからの光は、格子によって、SiOクラッド上のコア層を含むことのできる平面導波路構造体に結合される。導波路の側面は放物線形状にでき、それによって、用いられる導波路積層構造体及び材料によって決まる寸法のスポットに、光の出力を集束させることができる。633nmのレーザ・ダイオードを使用して、実効屈折率が約1.6のSIM構造について、180nm(トラックを横切る方向)×130nm(トラック内方向)のスポット・サイズが実証されている。
【0028】
一実施例では、405nmのレーザ・ダイオード及び実効屈折率が1.8のTiOのコア層材料を使用して、スポット・サイズを107nm(トラックを横切る方向)×77nm(トラック内方向)まで縮小でき、それによって約21.7Gb/cm(約140Gb/インチ)の記録密度が得られる。DVD−ブルーレイでは、280nmのスポット・サイズを用い、約3.0Gb/cm(約19.5Gb/インチ)の密度を実現する。このように、導波路構造体が一体型されたスライダを使用する光近接場記録構成の面密度は、DVD−ブルーレイに比べて7倍の改善ができるはずである。(図3に示す)導波路放物線の焦点に配置された適切な金属でできているピンは、光のスポットを100nm未満に抑えることができる。
【0029】
図4は、固体浸漬ミラー構造体を含む構成部品又はスライダ100の一部を概略的に表現したものである。固体浸漬ミラー構造体102は、スライダの本体104に装着される。この固体浸漬ミラー構造体は、放物線形状の平面導波路と、コア層の両側に位置決めされたクラッド層とを含む。導波路に光108を結合するために格子106が設けられる。アルミナとできる追加の透明層110は、固体浸漬ミラー構造体上に位置決めされる。金属ピン112は、スライダの空気軸受け表面114に隣接して、導波路の焦点に位置決めされる。相変化記憶媒体116は、空気軸受け118によってスライダから離隔される。
【0030】
記憶媒体からデータを読み取るには、この記憶媒体に光を方向づけ、記録ディスク上のマークからの反射光を検出する。記憶媒体中のマークにより、反射光の特性、例えば強度が変化する。図5は、検出器122と、媒体上のマークからの反射光を検出器に向かって方向づける手段とを含む構成部品又はスライダ120の一部の等角図である。記録ビットから反射される光は、複数の方向に散乱し、そのため極めて弱くなるので(図8参照)、反射用の空洞又はへこみにより、これらの散乱光を収集し、これらを検出器に方向を変更する。より詳細には、ノッチ、へこみ、又はくぼみ126が、固体浸漬ミラー構造体の端部128の周りで、スライダの空気軸受け表面に形成される。ノッチ、へこみ、又はくぼみ126の内面130は、導波路132に沿って反射光を検出器に方向づける形状になっている。導波路132は、周囲の材料よりも屈折率の大きい材料を含むことができ、そのため光は、内部全反射によって導波路に沿って伝播する。或いは、光は、検出器まで空気中を伝播できる。
【0031】
図5の実施例では、ABSのところに、結合した導波路とともに放物線の半分のへこみを配置する。このミラーは、散乱光を収集し、それを共通の一方向に案内して、弱い散乱光の検出を容易にする。この方向は、検出器の場所に応じて、ABS表面に沿った任意の適切な軸に沿うものとできる。検出器は、スライダ内に一体化することもでき、または駆動部の外に配置することもできる。空洞の寸法は、好都合な場所に配置された検出器に可視光を案内できるように、数ミクロン(数波長)とすべきである。空洞のミラー表面の形状は、散乱光が選択した方向に効果的に送られるように調整される。
【0032】
導波路は、所望の方向に光が反射されるように、金属化された側壁を有することもでき、または、内部全反射によって無損失で光が検出器に送られるように、低屈折率の外側クラッド層及び高屈折率のコア層を含む誘電体導波路とすることもできる。
【0033】
図6は、固体浸漬ミラー構造体を含む図5のスライダ120の一部の等角図である。固体浸漬ミラー構造体124は、スライダ内に埋め込まれる。この固体浸漬ミラー構造体は、放物線形状の平面コア層と、このコア層の両側に位置決めされたクラッド層とを含む。金属ピン128は、スライドの空気軸受け表面129に隣接して、導波路の焦点に位置決めされる。相変化記憶媒体133は、空気軸受け134によってスライダから離される。へこみ126は、固体浸漬ミラー構造体の端部136の周りで、スライダの空気軸受け表面に形成される。へこみ126の内面138は、導波路に沿って反射光を矢印140及び142で示す方向に反射する形状になっている。検出器は、この反射光を感知するように装着することができ、導波路を介してへこみ126に結合することができる。図6には、検出器に至るチャネル用のへこみを示していないが、矢印140及び142で示す光を検出器に向かって透過させるように位置決めする。
【0034】
代替として、スライダの上面で光を検出することができる。図5及び図6の実施例では、SIMは、タンタラ(酸化タンタル)又はチタニアなどの高屈折率のコア材料と、例えば酸化アルミニウムなどの低屈折率のクラッドとを含む。屈折率を調整してより小さくした別の被膜、例えばガラス内にSIMを埋め込んで、多モード導波路を形成することができる。この場合、散乱光を方向変更してこの多モード導波路構造体に戻すことができる。こうすると、出力結合機構を逆に利用して、スライダの上面から散乱光の検出が可能になる。図7に、この考え方を示す。
【0035】
図7は、本発明に従って構成された別の構成部品又はスライダ148の一部を概略的に表現したものである。固体浸漬ミラー構造体150は、スライダ内に埋め込まれる。この固体浸漬ミラー構造体は、放物線形状のコア層152と、このコア層の両側に位置決めされたクラッド層162及び164とを含む。金属ピン154は、スライダの空気軸受け表面156に隣接して、導波路の焦点のところに位置決めされる。相変化記憶媒体158は、空気軸受け160によってスライダから離される。アルミナとできる固体浸漬ミラー構造体150は、ガラスとできるクラッド層166と168の間に位置決めされる。一実施例では、コア層152の屈折率は約2とすることができ、クラッド層162及び164の屈折率は約1.6、クラッド層166及び168の屈折率は約1.4とできる。こうすると、例えばAlTiCとできる材料170及び172で示すスライダ内に埋め込まれる多モード導波路176が形成される。ピン154で放出される光は、記憶媒体158で反射され、多モード導波路176に結合する。導波路176の端部表面を変更して、導波路の端部への光の結合を改善できる。スライダの上面に反射防止被覆(AR)を施すことができる。AR層の厚さは、導波路を上方向に伝播する光が、AR層の界面で反射されて導波路に戻らずに、検出器に向かう方向に導波路から出て結合するように調節できる。同じことが、スライダのABS側に当てはまる。適切なAR被覆は、記憶媒体から反射された光を効果的に外部導波路構造体に再結合する助けとなり得る。検出器174は、導波路176を透過した光を検出するように位置決めされる。
【0036】
図7に、コア152並びにクラッド層162及び164を含むSIMの断面を示す。これらはさらに、ガラス被膜166及び168に埋め込まれる。この低屈折率ガラス被膜は、アルミナのコア152およびクラッド層162、164のクラッドとして働き、そのため多モード導波路が形成される。このかなり広い導波路は、試料からの後方散乱光を、それらの入射角とは無関係に、SIMの上部に配置できる検出器174に方向づける。ABSのところのアルミナ/ガラス多モード導波路の物理的な寸法は、元のSIMの寸法よりもはるかに大きい。
【0037】
読出し機能は例えばスライダの異なる部分を使用することによって、代替として抵抗率の変化を検出して、相変化被膜中のアモルファス領域と結晶領域を見分けることができる。抵抗率の変化を検出するために、スライダに導電センサを埋め込むことができる。こうすると、ディスク構造が適切に調節されている場合には、スライダから相変化マークに流れ込む電流、或いは相変化マークから流れ出る電流を測定できる。アモルファスマークと結晶質マークの導電率の差のために、信号がつくられる。図9は、相変化媒体からのデータの読み取りに使用できる電極又は導線202を含む構成部品又はスライダ200の一部を概略的に表現したものである。スライダ200は、上記で説明した導波路に類似の導波路204を含む。電極202は、外部電圧源208への接続部の働きをするボンディング・パッド206に電気的に接続される。この実施例では、電圧源は、ボンディング・パッドと記憶媒体210の間に接続される。記録トラックの実施例212は、スライダの下に位置決めされて示されている。このトラックは、導電率がそれぞれ異なるアモルファス質マーク214及び結晶質部分216を含む。電極202と媒体210の間に電圧が印加されると、電極と媒体の間を電子が通り抜ける。電子トンネル密度は、電極が、この媒体の半金属性領域の上にあるか、導電性がより小さい領域の上にあるかに応じて増減する。電子トンネル密度の変化を表す電流の変化を検出するために、回路内にセンサ218を配置できる。この場合、これらの電流の変化は、記憶媒体上に記憶されたデータを表す。
【0038】
別の実施例では、スライダは、空気軸受け表面に接してわずかな隙間(約10nm程度)だけ離隔された2つの電極を含むことができる。こうすると、スライダがディスク表面の上方を飛行するときに、これらの電極間の抵抗率を測定できる。これら2つの電極間に十分な電位が印加される場合には、いくらかの電子が一方の電極から出て媒体を通り抜け、次いで、他方の電極に入る。この場合、トンネル電流の量は、隙間に隣接する媒体が、アモルファス又は半金属のいずれであるかによって決まる。
【0039】
図10は、相変化媒体からのデータの読み取りに使用できる2つの電極又は導線222及び224を含む構成部品又はスライダ220の一部を概略的に表現したものである。スライダ220は、上記で説明した導波路に類似の導波路226を含む。電極222及び224は、外部電圧源232への接続部の働きをするボンディング・パッド228及び230に電気的に接続される。この実施例では、電圧源は、これらのボンディング・パッド間に接続される。記録トラックの実施例234は、スライダの下に位置決めされて示されている。このトラックは、導電率がそれぞれ異なるアモルファス質マーク236及び半金属部分238を含む。これらの電極は、空気軸受け表面に隣接して隙間240だけスライダから離隔される。電極222と電極224の間に電圧が印加されると、これらの電極の一方と媒体の間、且つ媒体と他方の電極の間を電子が通り抜ける。電子トンネル密度は、これらの電極が、この媒体の半金属性領域の上にあるか、導電性がより小さい領域の上にあるかに応じて増減する。電子トンネル密度の変化を表す電流の変化を検出するために、回路内にセンサ242を配置できる。この場合、これらの電流の変化は、記憶媒体上に記憶されたデータを表す。
【0040】
記憶媒体に隣接するこれらの電極の端部の間隔は、マーク・サイズと同程度でなければならず、これは、5〜7nmの範囲、或いはそれよりも狭いことがある。ダウン・トラック方向のこれらの電極の端部の幅は、20nm未満程度とできる。これらの電極は、例えばタングステンで構成できる。これらの電極について、代替形状を用いることもできる。例えば、これらの電極は、スライダの空気軸受け表面近くで尖らせることができる。
【0041】
本発明は、光ディスク検査ツールによる欠陥検出において解像力が制限されるという問題にも対処できる。TB/インチを目指す今後の磁気データ記憶密度では、記録ヘッドの飛行高さを数ナノメートル程度に低くすることが必要とされる。このような低い飛行高さでは、基板の品質及び媒体被覆の方法を改善して、清浄度及び平滑度の最大化、並びにナノメートル未満の尺度での媒体の均質性を確保することが求められる。製作中にこれらの特性を制御し、仕上げられたディスクを試験するために、ナノメートル未満の解像力が得られる新規な高速の検査ツールが必要である。
【0042】
媒体上、並びに金属製又はガラス製の基板上の粒子及び欠陥を識別する周知の光学的な方法は、散乱計測と組み合わせた走査型顕微エリプソメータである。それによって、集束されたレーザ・ビームで照明されたときに、光学的な特性に偏差が生じる領域として欠陥が検出される。小さな汚染物質又は欠陥は通常、材料及び欠陥サイズに大きく依存するそれらの散乱特性により検出される。遠視野構成で405nmのレーザを使用する現在利用可能な一つの検査ツールでは、100nmの寸法の欠陥しか検出することができない。このような遠視野技術では、解像力は概ね回折によって制限され、アッベの式である解像力=(波長×0.61)/(開口数)に従って光の波長の約半分になる。その結果、寸法が回折限界未満の汚染物質についてのサイズ及び形状の情報は失われる。好都合な条件下では遠視野でもなおこのような小さな粒子を検出できるが、これらの粒子は、点散乱体としてしか識別することができず、これらが波長のほぼ半分の間隔で離れていても個々には解像できない。
【0043】
SIMに基づくヘッドを近接場で照明センサとして使用して、スピン・スタンドに基づく検査ツールの光学的な解像力を向上させることが提案されている。SIMに基づくヘッドでは、ABSのところで、任意の小寸法の光スポットが得られる。ABSにおけるスポットの寸法は概ね、適切な偏光で照明されるヘッド内部の小型金属構造体の寸法によって決まる。理論的には、このようなスポットは、20nmにも小さくできるはずである。この金属構造体は、入射光の強い吸収体として働き、入射する光の場を表面プラズモン・ポラリトンに変換する。媒体側では、スポットの寸法は、所望の値に調節できるヘッド飛行高さにも依存する。このような「光ヘッド」を使用して、SIMに基づく光スライダの改善された光学解像力を利用することによって、欠陥及び汚染物質に関して、ガラス製及び金属製の基板の表面並びに仕上げた媒体ディスクを調べ、特徴づけることができる。
【0044】
図6に、所望の波長未満の解像力を実現するのに必要な光構成部品を伴うスライダを示す。誘電体導波路は、(適切な手段によって)放物線案内層の上面で結合した出力を、ABS表面の金属ピンに伝達する。この伝達された光は、スライダのABSの高さ(レベル)に置かれた放物線の焦点に集束する。このスライダをサスペンション上に装着して、試料の上方を適切な高さで飛行させ、それによって検査中のディスク上の粒子及び汚染物質を照明できる。
【0045】
試料から散乱される光の検出は、いくつかの方法で実施できる。透明な基板(ガラス、プラスチックなど)の場合、散乱光の検出は、基板の裏面で従来型の高NAコリメート光学系を使用して、できるだけ多くの光を収集し、それを検出器に送ることによって、透過により実施できる。金属ディスク又は記録層で被覆されたガラス・ディスクなどの不透明な基板の場合、散乱光の強度は、反射により測定できる。
【0046】
図5及び図6に示すように、SIMを取り囲む領域内の記録ヘッドの空気軸受け表面(ABS)を改変して別のミラー又はレンズ構造体を収容し、それによって基板からの後方散乱光を収集し、検出器に送ることができる。
【0047】
図8は、記録媒体の表面上の粒子によって散乱される光を概略的に表現したものである。照明用近接場変換器(ピン)180の光学特性により、基板184の欠陥182、例えば誘電体粒子との相互作用が生じる。このため、図8に矢印で示すように、欠陥の周りである種の角度(cos2θ)で散乱するまとまった光になる。
【0048】
本発明の近接場による書込み/読取り技術では、導波路構造体の一体化されたスライダを相変化媒体と組み合わせて使用し、それによって、合焦の安定性、脱着性、低コスト、及びROM配給フォーマットとの互換性などの利点とともに、(DVD−ブルーレイよりも大きな)大データ容量が得られる。
【0049】
本発明は、近接場光記録用の機器及び方法を提供する。相変化材料ディスクに対してこの機器を使用して、小さなマークの書込みを行い、それらを読み取ることができる。この機器は、相変化媒体と、導波路構造体が一体化されたスライダとを含むことができる。
【0050】
上記で説明した実施例では、導波路構造体は固体浸漬ミラーである。しかし、本発明の機器で、他の導波路構造体を使用することもできる。例えば、モード・インデックス・レンズ構造体を使用することができ、このモード・インデックス・レンズの焦点のところに金属ピンを配置できる。或いは、3次元導波路構造体を使用できる。
【0051】
いくつかの実施例に関して本発明を説明してきたが、当業者には、添付の特許請求の範囲で定義する本発明の範囲から逸脱することなく、開示した実施例に様々な変更を加えることができることが明らかであろう。
【符号の説明】
【0052】
40 ジンバル組立体
50 固体浸漬ミラー
54 光ファイバ
56 ミラー
60 副層
62 記録層
64 カバー層
66 検出器
70 固体浸漬ミラー構造体
72 平面導波路
74 放物面鏡
76 第1格子
78 第2格子
96 金属変換器
102 固体浸漬ミラー構造体
106 格子
110 透明層
112 金属ピン
116 相変化記憶媒体
118 空気軸受け
122 検出器
124 固体浸漬ミラー構造体
126 くぼみ
132 導波路
133 相変化記憶媒体
134 空気軸受け
150 固体浸漬ミラー構造体
152 コア層
154 金属ピン
158 相変化記憶媒体
162、164 クラッド層
166、168 ガラス被膜
174 検出器
176 多モード導波路
180 変換器、ピン
182 欠陥
204 導波路
210 記憶媒体
212 記録トラック
226 導波路
234 記録トラック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面を有する構成部品と、
前記第1表面に隣接して位置決めされた相変化記憶媒体と、
前記第1表面に隣接する焦点に電磁放射を方向づけて、近接場放射を利用して前記相変化記憶媒体の一部の相を変化させる第1導波路と、
前記相変化記憶媒体に隣接して第1端部が位置決めされた第1電極と、
前記記憶媒体の導電率の変化に応じて変化する前記第1電極内の電流を検出する検出器とを備える、機器。
【請求項2】
前記第1電極と前記記憶媒体の間に接続された電圧源をさらに備える、請求項1に記載された機器。
【請求項3】
前記相変化記憶媒体に隣接して第1端部が位置決めされた第2電極であって、前記第1電極の前記第1端部と前記第2電極の前記第1端部が、隙間により離間されている第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極の間に接続された電圧源とをさらに備える、請求項1に記載された機器。
【請求項4】
相変化記憶媒体と、
前記相変化記憶媒体に隣接して第1端部が位置決めされた第1電極と、
前記記憶媒体の導電率の変化に応じて変化する前記第1電極内の電流を検出する検出器とを備える、機器。
【請求項5】
前記第1電極と前記記憶媒体の間に接続された電圧源をさらに備える、請求項4に記載された機器。
【請求項6】
前記相変化記憶媒体に隣接して第1端部が位置決めされた第2電極であって、前記第1電極の前記第1端部と前記第2電極の前記第1端部が、隙間により離間されている第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極の間に接続された電圧源をさらに備える、請求項4に記載された機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−210363(P2011−210363A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123685(P2011−123685)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【分割の表示】特願2005−367597(P2005−367597)の分割
【原出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(500373758)シーゲイト テクノロジー エルエルシー (278)
【Fターム(参考)】