説明

データ記録装置及びそれを備える商品処理装置

【課題】ファイル書き込み等の操作中に電源遮断が発生しても、FAT及びディレクトリ情報を保護し、再起動時にファイル操作の実行直前の状態に復元することができるデータ記録装置及びそれを備える商品処理装置を提供する。
【解決手段】FATファイルシステムにおけるファイルデータ、FAT及びディレクトリ情報を記録媒体に記録するデータ記録装置において、FAT及びディレクトリ情報の更新前に、不揮発性メモリに設けられるバックアップ領域に、更新されるFAT及びディレクトリ情報のバックアップを行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FATファイルシステムにおけるファイルデータ、FAT及びディレクトリ情報を記録媒体に記録するデータ記録装置及びそれを備える商品処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年は、トレーサビリティやHACCPへの対応のため、多くの生産情報等を保存・管理することが必要になっている。計量包装機器では、Windows(登録商標)パソコンと互換性のあるFATファイルシステム(例えば、特許文献1参照。)を搭載することにより、生産情報等の保存や管理を行うことが考えられる。
【0003】
FATファイルシステムは、ファイルデータ、すなわちデータ本体をクラスタ単位で記録するデータ領域と、ファイル名・作成日時・ファイル属性・ファイルサイズ・開始クラスタ等のファイル管理情報が記録されるディレクトリ領域と、ファイルが使用するデータ領域内のクラスタの位置・順番等のファイル管理情報が記録されるFAT領域と、ブートレコードが記録されるブートセクタと、で構成される。
【0004】
上記FATファイルシステムにおけるファイル更新の際には、データ領域に新たなファイルデータを上書きするとともに、ディレクトリ領域、FAT領域にファイル管理情報も上書きすることを要する。
【特許文献1】特開平11−149401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、データ領域への書き込み中に停電等による計量包装機器の電源遮断が発生した場合には、電源遮断が発生するまでに書き込んだファイルデータの構成部分と上書きされる前に記録されていたファイルデータの構成部分とが、データ領域内で混在してファイルデータが破壊される結果となる。
【0006】
また、ディレクトリ領域や、FAT領域への書き込み中に電源遮断が発生した場合には、ファイル名、ファイルサイズ、開始クラスタ、使用クラスタの位置・順番等のファイル管理情報が破壊されることにより、ファイルデータとファイル管理情報の整合性が毀損されて、ファイルへのアクセスができなくなる場合もある。
【0007】
特に、コンパクトフラッシュ(登録商標)においては、書き込み前に書き込みセクタの消去を行う必要があるため、この消去動作の直後に電源遮断が発生した場合には、そのセクタに属しているファイル管理情報がすべて消失することになる。このような場合、アクセスしていたファイルのみならず他のファイルにもアクセス不能となる場合がある。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、ファイル書き込み等の操作中に電源遮断が発生しても、データ領域におけるファイルデータ、FAT及びディレクトリ情報を保護し、再起動時にファイル操作の実行直前の状態に復元することができるデータ記録装置及びそれを備える商品処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、FATファイルシステムにおけるファイルデータ、FAT及びディレクトリ情報を記録媒体に記録するデータ記録装置であって、FAT及びディレクトリ情報の更新前に、不揮発性メモリに設けられるバックアップ領域に、更新されるFAT及びディレクトリ情報のバックアップを行うことを特徴とするデータ記録装置を提供する。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載のデータ記録装置において、前記バックアップ領域を非ファイルシステムにより管理することを特徴とするデータ記録装置を提供する。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のデータ記録装置において、前記バックアップ領域を、前記FAT及びディレクトリ情報を記録する記録媒体とは別の記録媒体に設けることを特徴とするデータ記録装置を提供する。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載のデータ記録装置において、前記バックアップ領域に、前記FAT及びディレクトリ情報に加えて電源遮断が発生有無を判別するための電断判別フラグを記録することを特徴とするデータ記録装置を提供する。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載のデータ記録装置において、ファイルデータ、FAT及びディレクトリ情報を記録する記録媒体はリムーバブルディスクであって、バックアップの際に、前記リムーバブルディスクを特定するボリュームシリアル番号をバックアップデータとして保存することを特徴とするデータ記録装置を提供する。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載のデータ記録装置において、前記ファイルデータの更新の際に、更新前のファイルデータが格納されているクラスタとは別の空きクラスタに更新するファイルデータを書き込み、更新するファイルデータが書き込まれたクラスタへFATチェーンを付け替えた後で、更新前のファイルデータが使用しているクラスタを開放することを特徴とするデータ記録装置を提供する。
【0015】
請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載のデータ記録装置を備えることを特徴とする商品処理装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載のデータ記録装置によれば、ファイル管理情報の更新前に、FAT及びディレクトリ情報のバックアップを行うので、ファイル操作中に電源遮断が発生しても、FAT及びディレクトリ情報を保護して、再起動時にファイル操作の実行直前の状態に復元することができる。
【0017】
請求項2に記載のデータ記録装置によれば、バックアップ領域を非ファイルシステムにより管理するので、バックアップ中に電源遮断が発生しても、バックアップデータの信頼性が確保される。
【0018】
請求項3に記載のデータ記録装置によれば、バックアップ領域を、FAT及びディレクトリ情報を記録する記録媒体とは別の記録媒体に設けるので、バックアップ中に電源遮断が発生してもバックアップデータの信頼性が確保される。
【0019】
請求項4に記載のデータ記録装置によれば、バックアップ領域に記録された電断判別フラグの値に基づいて、再起動時に自動的に復元処理を開始することができ、電断判別フラグ値から復元すべきセクタ数を割り出すことができる。
【0020】
請求項5に記載のデータ記録装置によれば、リムーバブルディスクを特定するボリュームシリアル番号をバックアップデータとして保存するので、再起動時に異なるリムーバブルディスクが挿入されているときに復元処理が行われることを防止できる。
【0021】
請求項6に記載のデータ記録装置によれば、空きクラスタへ更新するファイルデータを書き込み、そのクラスタへFATチェーンを付け替えた後で、旧ファイルデータが使用しているクラスタを開放するので、ファイルデータ更新中に電源遮断が発生しても、旧ファイルデータは確実に保護することができる
【0022】
請求項7に記載の商品処理装置によれば、請求項1乃至6のいずれかに記載されるデータ記録装置と同様の効果を奏するので、商品処理装置により処理する商品の生産情報のほか、操作履歴、商品処理装置の機物設定データ等も確実に保存することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照しつつ説明する。
【0024】
図1〜図6は発明を実施する形態の一例であって、図1は、本実施形態に係る商品処理装置(不図示)が備えるデータ記録装置の概要を示すブロック図、図2は、データ記録装置の記録媒体(コンパクトフラッシュ(登録商標))の内部構成を示す図である。図3は、データ記録装置におけるファイルの書き込み手順を示すフロー図、図4は、ファイル書き込み時におけるセクタへの書き込み処理の詳細を示すフロー図、図5は、データ記録装置を再起動したときの復元処理を示すフロー図である。図6は、ファイルデータの書き込み処理を説明する図である。
【0025】
本実施形態に係る商品処理装置は、例えば、商品の計量、包装、商品ラベルの印字・貼付等の処理を行うものであって、トレーサビリティやHACCPへの対応のため、処理した商品に関する生産関連情報を保存することができるデータ記録装置を備えてなる。
【0026】
データ記録装置は、図1に示されるように、制御部1と、これにドライバーDを介して挿脱自在に接続されるコンパクトフラッシュ(登録商標)CF(以下、単に「CF」という。)と、を備えてなり、CFに商品の生産関連情報を保存できるようになっている。データ記録装置は、Windows(登録商標)パソコンと互換性のあるFATファイルシステムを搭載している。
【0027】
CFの内部は、図2に示されるように、ファイルデータ(データ本体)と、サブディレクトリ内に作成したファイル及びディレクトリのディレクトリ情報が記録されるデータ・サブディレクトリ領域101、ドライブのルートに作成したファイル及びディレクトリのディレクトリ情報が記録されるルートディレクトリ領域102と、ファイルが使用するデータ領域内のクラスタの位置・順番等のファイル管理情報が記録されるFAT領域103,104と、ブートレコードが記録されるブートセクタ105と、で構成される。ここで、ディレクトリ情報としては、ファイル名・作成日時・ファイル属性・ファイルサイズ・開始クラスタ等が該当する。FAT領域103,104は、ファイル管理上、重要な領域であることから、読み書き不良を防ぐために二重構造とされている。
【0028】
制御部1には、データを常時保持できる高速アクセス可能な不揮発性メモリとして、電源バックアップされるSRAMが内蔵されている。SRAMは、CFのデータをバックアップするためのバックアップ領域に接続されており、このバックアップ領域は、非ファイルシステムにより管理されている。
【0029】
CFへのファイル書き込み処理は、図3に示されるように、ディレクトリエントリ書込み(ステップA1)、ファイルデータ書込み(ステップA2)、FAT書込み(ステップA3)、ディレクトリエントリ書込み〔サイズ、開始クラスタのセット〕(ステップA4)、電断フラグ(後述する)のクリア(ステップA5)の順に行われる。
【0030】
上記A1〜A4の各書込み処理の詳細は、図4のフロー図に示されるとおりである。書込み処理が開始されると、まず、FATあるいはディレクトリ情報の書込みか否かが確認され(ステップB1)、データ本体の書込みである場合は、書き込みデータがそのままCFへライトされて(ステップB8)、書込み処理が終了する。FATあるいはディレクトリ情報の書込みの場合には、SRAMに接続されるバックアップ領域の容量があるかが確認され(ステップB2)、容量が不足する場合には、そのままCFに書き込みデータがライトされて(ステップB8)、書込み処理が終了する。
【0031】
バックアップ領域の容量が確保されている場合には、ドライブ名、ボリュームシリアル番号、書込み開始セクタ番号、書き込みセクタ内容のバックアップが順次行われた(ステップB3〜B7)後に、電断判別フラグ値が追加され(ステップB8)、最後に、CFのFATあるいはディレクトリ情報の書込みデータがライトされて(ステップB8)、書込み処理が終了する。
【0032】
さて、データ記録装置に電源遮断が発生した後に、データ記録装置を再起動させると、図5に示される復元処理が開始する。ファイルシステム初期化(ステップC1)、マウント(ステップC2)の後、データ記録装置に挿入されているCFが、電源遮断時に挿入されていたCFであるか否かを確認するために、バックアップ領域に保持されているCFのボリュームシリアル番号のデータを使用して照合が行われる(ステップC3)。照合しない場合、すなわち、電源遮断時に挿入されているCFと交換されている場合には、ファイル復元処理を行うことなく、バックアップ領域を初期化する(ステップC6)。
【0033】
ステップC3で、CFが電源遮断時のものと同じであることが確認された場合には、書込み処理中に電源遮断が発生したか否かを確認するために、電断判別フラグ値のチェックが行われる(ステップC4)。上述したように、電断判別フラグ値は、A1、A3、A4の各書込み処理が終了するたびに1つずつ追加され、すべての書込みが無事終了したときにはクリアされる。したがって、電断判別フラグ値が0である場合には、書込み処理中に電源遮断がなかったと判断されるので、ファイル復元処理を行うことなく、バックアップ領域を初期化する(ステップC6)。
【0034】
一方、電断判別フラグ値が1〜3である場合には、書込み処理中に電源遮断が発生したと考えられるので、電断判別フラグ値に応じたセクタ数分、バックアップ領域からCFへの復元処理が行い(ステップC5)、その後にバックアップ領域を初期化する(ステップC6)。以上により、CFのFATあるいはディレクトリ情報の書き込み処理中に電源遮断が発生しても、これらに記憶されるファイル名、ファイルサイズ、開始クラスタ、使用クラスタの位置・順番等のファイル管理情報は、破壊されることなく確実に復元することができるものである。
【0035】
さて、データ記録装置の電源遮断は、ファイルデータのデータ領域101への書き込み中にも発生することがある。これに対処するため、本実施形態に係るデータ記録装置では、図6に示されるような手順で書込み(更新)処理を行うこととしている。図6(a)に示されるように、クラスタa〜dにファイルデータが格納されている状態から更新する場合には、図6(b)に示されるように、上記クラスタとは別の空きクラスタe,fを検索して、これに更新するファイルデータを書き込み、FATチェーンを付け替える。
【0036】
そして、FATチェーンを付け替えた後で、図6(c)に示されるように、更新前の旧ファイルデータの記録に使用されているクラスタを開放する。したがって、データ更新中に、電源遮断が発生しても、旧データは破壊されることなく復元することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】データ記録装置の概要を示すブロック図。
【図2】データ記録装置の記録媒体の内部構成を示す図。
【図3】データ記録装置におけるファイルの書き込み手順を示すフロー図。
【図4】ファイル書き込み時におけるセクタへの書き込み処理の詳細を示すフロー図。
【図5】データ記録装置を再起動したときの復元処理を示すフロー図。
【図6】ファイルデータの書き込み処理を説明する図。
【符号の説明】
【0038】
1 制御部
CF コンパクトフラッシュ(登録商標)〔記録媒体〕
101 データ・サブディレクトリ領域
102 ルートディレクトリ領域
103,104 FAT領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FATファイルシステムにおけるファイルデータ、FAT及びディレクトリ情報を記録媒体に記録するデータ記録装置であって、FAT及びディレクトリ情報の更新前に、不揮発性メモリに設けられるバックアップ領域に、更新されるFAT及びディレクトリ情報のバックアップを行うことを特徴とするデータ記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載のデータ記録装置において、前記バックアップ領域を非ファイルシステムにより管理することを特徴とするデータ記録装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のデータ記録装置において、前記バックアップ領域を、前記FAT及びディレクトリ情報を記録する記録媒体とは別の記録媒体に設けることを特徴とするデータ記録装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のデータ記録装置において、前記バックアップ領域に、前記FAT及びディレクトリ情報に加えて電源遮断が発生有無を判別するための電断判別フラグを記録することを特徴とするデータ記録装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のデータ記録装置において、ファイルデータ、FAT及びディレクトリ情報を記録する記録媒体はリムーバブルディスクであって、バックアップの際に、前記リムーバブルディスクを特定するボリュームシリアル番号をバックアップデータとして保存することを特徴とするデータ記録装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のデータ記録装置において、前記ファイルデータの更新の際に、更新前のファイルデータが格納されているクラスタとは別の空きクラスタに更新するファイルデータを書き込み、更新するファイルデータが書き込まれたクラスタへFATチェーンを付け替えた後で、更新前のファイルデータが使用しているクラスタを開放することを特徴とするデータ記録装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のデータ記録装置を備えることを特徴とする商品処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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