説明

トナー担持体

【課題】単一の層からなる弾性層を有するトナー担持体において、トナーダメージの低減とトナー掻き取り性の向上とを両立させて、耐久時においても高画質の画像を得ることができるトナー担持体を提供する。
【解決手段】シャフト1の外周に単一のポリウレタンフォーム層2を担持してなるトナー担持体10である。ポリウレタンフォーム層2に導電材とバインダとを含む導電性溶液が含浸されてなる。ポリウレタンフォーム層2の、表面から1mmまでの硬度がアスカーF硬度で75〜84度であって、かつ、表面から1mmより内部の硬度がIFD硬度で220〜240Nである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はトナー担持体に関し、詳しくは、複写機やプリンタ等の画像形成装置において、感光体や紙等の画像形成体にトナー(現像剤)を搬送してその表面に可視画像を形成する現像ローラに対しトナーを供給するために用いられるトナー担持体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機やプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置等における現像部には、図3に示すように、静電潜像を保持する感光体等の画像形成体11と、この画像形成体11に当接して表面に担持したトナー20を付着させることにより静電潜像を可視画像化する現像ローラ12と、この現像ローラ12にトナーを供給するためのトナー担持体13とが設けられている。このような現像部においては、トナー20を、トナー収容部14からトナー担持体13および現像ローラ12を介して画像形成体11まで搬送する一連のプロセスにより、画像形成が行われる。なお、図中の符号15は転写ローラ、16は帯電部、17は露光部、18はトナー掻き取り用のブレードを示す。
【0003】
このうち、トナー担持体13には、摩擦帯電により表面にトナー20を担持して現像ローラ12にトナーを供給(搬送)する機能と、現像ローラ12の表面に残留した不要トナーを掻き取るクリーニング部材としての機能とがある。よって、トナー担持体13には、トナー搬送性、トナー帯電性およびトナー掻き取り性が要求される。特に、画像形成において、高画質かつ高耐久の性能の実現を考えた場合、トナー担持体13には、画像形成に伴うトナーへのダメージを低減しつつ、残存トナーの掻き取り性を高めることが求められる。
【0004】
トナー担持体13は、一般に、軸の外周に、接着層を介してポリウレタンフォーム等の導電性を付与した弾性層を担持させたローラ形状を有している。導電性ローラに係る改良技術としては、例えば、特許文献1に、帯電ロール等に用いられる導電性ロールであって、軸体の外周に導電性弾性体層が同心円状に形成され、この導電性弾性体層の表面が、内部に所定の電気抵抗を有する導電粒子を分布させた樹脂誘電体層で被覆されている導電性ロールが開示されている。また、特許文献2には、現像ローラとして使用可能な導電性ローラとして、導電性樹脂製多孔体からなるローラ本体と、ローラ本体に挿通されてなる導電性シャフトとよりなり、ローラ本体が、樹脂製多孔体に導電性樹脂溶液を含浸し乾燥することにより得られたものであって、乾燥により形成された導電性樹脂がローラ本体の内部に付着しているのみならず外周面が導電樹脂層で被覆されている導電性ローラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−66675号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開2003−43805号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トナー担持体において、供給するトナーに対するダメージを低減する観点からは、トナー担持体の接触圧を低減することが好ましい。そのためには、少なくともトナー担持体の弾性層を構成するポリウレタンフォーム層の半径方向内部については、柔らかく形成することが必要である。一方で、残存トナーの掻き取り性の観点からは、トナーを効率良く回収するために、ポリウレタンフォーム層の表面を硬く形成することが好ましい。よって、トナー担持体において、上記トナーダメージの低減およびトナー掻き取り性の向上の要請を両立させることは困難であり、これらは2律背反の関係となっていた。
【0007】
このような要請に対しては、トナー担持体を構成するポリウレタンフォーム層の内部の硬度を低く、表面の硬度を高くすることが考えられる。しかしながら、特許文献1に開示されているような硬度の異なる2層からなる構造では、生産工程が煩雑となり、部材点数が増加してしまうという問題も生ずる。したがって、このような他の問題を生ずることなく、トナー担持体においてトナーダメージの低減とトナー掻き取り性の向上とを両立させるための技術の確立が望まれていた。
【0008】
そこで本発明の目的は、上記問題を解消して、単一の層からなる弾性層を有するトナー担持体において、トナーダメージの低減とトナー掻き取り性の向上とを両立させて、耐久時においても高画質の画像を得ることができるトナー担持体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意検討した結果、以下のようなことを見出した。すなわち、従来において、導電性ローラに用いられるポリウレタンフォーム層については、特許文献2に開示されているように、その内部に導電材とバインダとを含む導電性溶液を無作為に均一に含浸させることで、表面硬度と内部硬度とがほぼ同じとなるようにしていた。そのため、これをトナー担持体に適用した場合には、トナーダメージを軽減させつつ、接する現像ローラ内のトナーを掻き取ることが困難となっていた。
【0010】
かかる観点から本発明者はさらに検討した結果、トナー担持体の単一の弾性層を構成するポリウレタンフォーム層の内部に含浸させる導電性溶液の量を調整することで、ポリウレタンフォーム層の表面近傍と内部とで硬度を変化させることが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、シャフトの外周に単一のポリウレタンフォーム層を担持してなるトナー担持体において、
前記ポリウレタンフォーム層に導電材とバインダとを含む導電性溶液が含浸されてなり、該ポリウレタンフォーム層の、表面から1mmまでの硬度がアスカーF硬度で75〜84度であって、かつ、表面から1mmより内部の硬度がIFD硬度で220〜240Nであることを特徴とするものである。
【0012】
本発明において、前記ポリウレタンフォーム層に対する前記導電性溶液の含浸量は、9〜13g/Lの範囲とすることが好ましい。また、本発明においては、前記ポリウレタンフォーム層を、30〜70cc/cm/secの範囲内の通気性を有するポリウレタンフォームを用いて形成することが好ましい。さらに、前記導電性溶液の固形分濃度は、好適には、19.0〜22.0質量%の範囲内とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記構成としたことで、単一の層からなる弾性層を有するトナー担持体において、トナーダメージの低減とトナー掻き取り性の向上とを両立させることができ、これにより、耐久時においても高画質の画像を得ることができるトナー担持体を実現することが可能となった。上述したように、単一の弾性層において表面近傍と内部との硬度を変化させた導電性ローラは、従来、存在しなかったものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のトナー担持体の一例を示す概略斜視図である。
【図2】導電性溶液の含浸前のポリウレタンフォーム層の表面近傍および内部の硬度と、導電性溶液の含浸後のポリウレタンフォーム層の表面近傍および内部の硬度との関係を示すグラフである。
【図3】画像形成装置の現像部の一構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明のトナー担持体の一例を示す概略斜視図を示す。図示するように、本発明のトナー担持体10は、シャフト1の外周に、単一のポリウレタンフォーム層2を担持してなる。
【0016】
本発明のトナー担持体10においては、ポリウレタンフォーム層2に、導電材とバインダとを含む導電性溶液が含浸されてなり、このポリウレタンフォーム層2の、表面から1mmまでの硬度がアスカーF硬度で75〜84度であって、かつ、表面から1mmより内部の硬度がIFD硬度で220〜240Nである点に特徴がある。このように、ポリウレタンフォーム層2の表面近傍と内部とで硬度を個々に制御して、表面近傍については硬く、内部については柔らかく形成したことで、印字耐久時において、トナー掻き取り性を向上しつつ、トナーダメージの低減を図ることができる。本発明においては、これにより、印字耐久末期においても高画質の画像を得ることができるトナー担持体を得ることが可能となったものである。また、本発明のトナー担持体は、単一のポリウレタンフォーム層を有するものであるので、2層構成の場合と比べて、部材点数や、製造時の工程を削減することができるメリットも有する。
【0017】
本発明において、ポリウレタンフォーム層2の、表面から1mmまでの硬度、および、表面から1mmより内部の硬度を問題としているのは、各硬度の測定法に基づき、測定可能なポリウレタンフォーム層2の表面近傍および内部を規定しているものである。すなわち、表面近傍については、アスカーF硬度の測定法より、ポリウレタンフォーム層2の表面から1mmまでの硬度が測定される。また、内部については、IFD硬度の測定では厚み方向に50%圧縮させるので、厚みの中心部分、例えば、フォーム厚が6mmの場合には、表面より3mmの箇所の硬度が測定されるため、表面から1mmより内部と規定している。
【0018】
本発明において、ポリウレタンフォーム層2の表面から1mmまでの硬度は、アスカーF硬度で75〜84度、好適には80〜82度である。この表面近傍の硬度が、低すぎるとトナー掻き取り性が低下してしまい、高すぎるとトナーダメージが増大し、いずれにおいても高画質画像を長期にわたり得ることができなくなる。また、ポリウレタンフォーム層2の表面から1mmより内部の硬度は、IFD硬度で220〜240N、好適には230〜235Nである。この内部の硬度が、低すぎるとトナーに対し十分に力がかからないので、摩擦が生じないためにトナーを帯電させることができず、高すぎるとトナーダメージが増大するため、いずれにおいても高画質画像を長期にわたり得ることができなくなる。特には、内部の硬度の高低の方が、画像品質に与える影響は大きいことがわかっている。
【0019】
本発明において、ポリウレタンフォーム層2の硬度の制御は、主として、ポリウレタンフォーム層2に対する導電性溶液の含浸量を調整することにより行うことができる。具体的には、本発明においては、ポリウレタンフォーム層2に対する導電性溶液の含浸量を、9〜13g/Lの範囲とすることが好ましく、より好ましくは、12〜12.5g/Lの範囲である。ポリウレタンフォーム層2に対する導電性溶液の含浸量が、少なすぎると表面硬度が低下し、一方、多すぎると、内部まで導電性溶液が浸入して、表面硬度と同時に内部の硬度も高くなるので、いずれにしても、本発明の所期の効果が得られないおそれがある。ここで、含浸される導電性溶液の固形分は、実質的に導電材およびバインダからなるので、上記含浸量とは、実質的には、ポリウレタンフォーム層2の表面および内部に付着した導電材およびバインダの質量を意味する。
【0020】
本発明においては、上記範囲で導電性溶液の含浸量を調整することで、上述したように、単一のポリウレタンフォーム層において、表面近傍と内部とで異なる硬度を得ることができる。これは、導電性溶液の含浸量を比較的少ない量とすることで、導電性溶液がポリウレタンフォーム層の内部まで浸入せずに、表面近傍のみに含浸されることになって、表面近傍の硬度が高くなり、これにより表面近傍と内部との硬度差が生ずることによるものと考えられる。ここで、トナー担持体においては、シャフトから電源を取るために所望の導電性を具備する必要があり、かかる観点からは厚み方向すべてが含浸されることが望ましいが、本発明に係る硬度条件を満足するためには、ポリウレタンフォーム層における導電性溶液の含浸領域は、表面から全厚みの16〜17%までの領域とすれば十分である。
【0021】
また、ポリウレタンフォーム層2の表面近傍および内部の硬度は、ポリウレタンフォームの配合や通気性、密度等に加え、導電性溶液の配合等によっても変わるので、本発明においては、これらの選択も重要となる。
【0022】
本発明のトナー担持体において、シャフト1としては、特に制限されるものではなく、例えば、硫黄快削鋼や鉛快削鋼などの鋼材にニッケルや亜鉛等のめっきを施したものや、鉄、ステンレススチール、アルミニウム等の金属製の中実体からなる芯金、内部を中空にくりぬいた金属製円筒体等の金属製シャフト等を用いることができる。
【0023】
また、本発明のトナー担持体において、ポリウレタンフォーム層2に用いるポリウレタンフォームとしては、特に制限はないが、例えば、特許第3,480,028号公報に開示された手法により、2個以上の活性水素を有する化合物と2個以上のイソシアネート基を有する化合物とを、触媒や発泡剤、整泡剤等の添加剤とともに攪拌混合して発泡・硬化させることにより製造されたものが好適である。発泡硬化後における除膜処理は、行っていても、行っていなくてもよい。
【0024】
上記特許第3,480,028号公報に開示された手法によるポリウレタンフォームは、具体的には、800〜3600の平均分子量差を有する2種類の単一ジオールを含む単一ジオールの混合物を、ポリオール成分に対して総量で50質量%以上含むポリエーテルポリオールと、イソシアネートと、水と、触媒と、発泡剤とを混合し、発泡させ、放置することにより製造することができる。
【0025】
ここで、「単一のジオール」とは、1種のジオールまたは平均分子量の差が400以内の2種以上のジオール群を総称する意味に用いられる。また、「平均分子量差」とは、対象となるジオールが各々有する平均分子量の差分を表し、組み合わせが多種類ある場合には、特に、最大の差分を表す意味に用いられる。
【0026】
上記ポリウレタンフォームを製造する際に用いるポリエーテルポリオールは、(1)例えば、ジエチレングリコールにプロピレンオキサイドのみを付加させたタイプのポリエーテルポリオール、(2)例えば、ジエチレングリコールにプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとをブロックまたはランダムに付加させたタイプのポリエーテルポリオール、(3)上記(1)または(2)に、例えば、アクリルニトリルやスチレンをグラフトしたタイプのポリエーテルポリオール等を含み、特に制限されないが、好ましくは、(1)タイプのポリエーテルポリオールである。
【0027】
上記ポリエーテルポリオールを製造するために用いられる開始剤には、多価アルコール、多価フェノール、モノ若しくはポリアミン等があるが、好ましくは多価アルコールおよび多価フェノールであり、特に好ましくは多価アルコールである。具体的には例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等が挙げられ、中でも、ジエチレングリコールが特に好ましい。
【0028】
また、上記ポリエーテルポリオール成分には、ジオール以外のポリオール成分を含んでもよい。このようなポリオール成分としては、通常、ポリウレタンフォームの製造に使用される3官能の、例えば、グリセリンベースにアルキレンオキサイド、例えば、プロピレンオキサイドを付加させたもの、2種のアルキレンオキサイド、例えば、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとをランダム若しくはブロックで付加させたもの、多官能のものとしては、例えば、サッカロースベースに上記と同様のものを付加させたポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0029】
イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート等を、単独または混合して使用することができる。中でも、トリレンジイソシアネートが特に好ましい。
【0030】
触媒および発泡剤に用いられる化合物としては、種類および使用量に特に制限はなく、公知のものが使用される。具体的には例えば、触媒としては、トリエチレンジアミン、テトラメチレンヘキサジアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン等のアミン触媒、スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート等の有機錫触媒が用いられる。また、発泡剤としては、メチレンクロライド、フロン123、フロン141b等が用いられる。
【0031】
また、本発明で用いるポリウレタンフォームには、上記の他に各種の添加剤、例えば、難燃剤や酸化防止剤、紫外線吸収剤、整泡剤等を適宜配合することができる。このうち整泡剤としては、例えば、各種のシロキサンや、ポリアルキレンオキサイドブロック共重合体等が挙げられる。
【0032】
本発明において、ポリウレタンフォーム層2に用いるポリウレタンフォームの通気性は、30〜70cc/cm/secであることが好ましい。ポリウレタンフォームの通気性が低すぎると、トナー担持体としてのトナーを担持する機能を損なうおそれがあり、高すぎると、表面近傍と内部とを目的の硬度に制御することが困難となる。上記範囲内程度の通気性とすることで、導電性溶液の含浸領域を所望に制御して、表面近傍と内部とを目的の硬度に制御することが容易となる。なお、上記通気性は、JIS K 6400に準じて測定された値である。
【0033】
また、上記ポリウレタンフォームの密度としては、50〜70kg/mの範囲が好ましい。密度が低すぎても高すぎても、表面近傍と内部とを目的の硬度に制御することが困難となる。
【0034】
さらに、上記ポリウレタンフォームの平均セル径は、好適には300〜500μm程度とする。平均セル径が小さすぎると、トナー流動性およびトナー搬送性が低下し、大きすぎると、表面近傍と内部とを目的の硬度に制御することが困難となる。
【0035】
さらにまた、上記ポリウレタンフォームのセル数は、好適には50〜83個/inch程度とする。平均セル数が少なすぎると、表面近傍と内部とを目的の硬度に制御することが困難となり、多すぎると、トナー流動性およびトナー搬送性が低下する。
【0036】
次に、本発明において、導電性溶液に用いる導電材としては、カーボンブラックやグラファイトなどの炭素質粒子、銀やニッケルなどの金属粉、酸化スズや酸化チタンあるいは酸化亜鉛などの導電性金属酸化物の単体、あるいは硫酸バリウムなどの絶縁性微粒子を芯体にして上記導電性金属酸化物を湿式で被覆したもの、導電性金属炭化物、導電性金属窒化物、導電性金属ホウ化物などから選ばれる1種または複数種の組み合わせで用いられる。本発明においては、中でも、カーボンブラックを好適に用いることができ、より好ましくは、ケッチェンブラックを用いる。導電材としては、平均粒径が100nm以下、特には50nm以下程度の微細粒子を用いることが好ましい。
【0037】
また、導電性溶液に用いるバインダとしては、アクリル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、アクリル酸−スチレン共重合体樹脂、アクリル酸−酢酸ビニル共重合体樹脂等のアクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリ塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ブタジエン樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、クロロプレンゴム等を例示することができる。中でも、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、クロロプレンゴムを用いることが好ましい。これらバインダは、単独で、または、2種以上を混合して用いることができる。導電材単独では、ポリウレタンフォームの気泡壁に強固には結合し得ないが、バインダを配合した導電性溶液とすることで、導電材がポリウレタンフォームの気泡壁に強固に付着して、安定な導電性層をポリウレタンフォームの気泡内に形成できる。
【0038】
本発明において、導電性溶液の固形分濃度は、19.0〜22.0質量%の範囲内であることが好ましい。導電性溶液の固形分濃度が、低すぎるとトナーダメージが増大し、高すぎるとトナーに対し十分に力がかからないので、摩擦が生じないためにトナーを帯電させることができず、いずれも好ましくない。
【0039】
導電性溶液における導電材とバインダとの配合比は、バインダの固形分100質量部に対して、導電材の固形分が10〜110質量部、特には30〜50重量部であることが好ましい。導電材の固形分が多すぎると、ポリウレタンフォームへの接着力が不十分になるおそれがあり、少なすぎると、トナー担持体の表面抵抗が安定しないおそれがある。
【0040】
なお、上記導電性溶液には、導電材およびバインダに加えて、適量の水やトルエン、酢酸エチル等の有機溶媒を添加することができる。これらの溶媒は、導電性溶液の粘度が5〜300cps(25℃)程度となるように添加することが好ましい。導電性溶液の粘度をこの範囲内とすること、ポリウレタンフォームに対する導電性溶液の含浸付着作業がより容易となる。
【0041】
上記導電性溶液には、さらに、必要に応じて他の添加剤、例えば、鉱物油系消泡剤やシリコン系消泡剤、界面活性剤、荷電制御剤等を添加することができる。これらは、導電性溶液100質量部に対して0.001〜10重量部、特には0.001〜0.1質量部程度で添加することが好ましい。
【0042】
本発明のトナー担持体において、シャフト1とポリウレタンフォーム層2との間には、両者の接着を確保するために、所望に応じ接着層を設けることができる。接着層は、例えば、二液型ポリウレタン接着剤やエポキシ接着剤、ポリエステル接着剤、アクリル接着剤、アクリルエマルジョン接着剤、ウレタンエマルジョン接着剤などを用いて形成することができる。
【0043】
本発明のトナー担持体の製造は、例えば、以下のように行うことができる。すなわち、まず、適宜形状にて製造されたポリウレタンフォームから所望のサイズにてブロック状ポリウレタンフォームを切り出し、穴を開けて、所望に応じ接着層を介してシャフト1を通す。その後、このブロック状ポリウレタンフォームの表面を研磨して円筒状に仕上げることで、ローラ形状とする。次いで、上記導電性溶液を用いて、ポリウレタンフォームに導電性を付与する。具体的には、例えば、粉末状の導電剤とバインダとを、必要に応じて他の添加剤とともに水または有機溶媒に分散・含有させて導電性溶液を準備し、この導電性溶液にローラ形状としたシャフトつきポリウレタンフォームを浸漬して、導電性溶液をポリウレタンフォームの気泡内に含浸させる。その後、シャフトつきポリウレタンフォームを導電性溶液から取り出し、圧縮して余剰の導電性溶液を除去した後、加熱乾燥して水分等を除去することで、導電剤をバインダとともに、ポリウレタンフォームの気泡内に固着させることができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
図1に示すような、シャフトの外周に単一のポリウレタンフォーム層を担持してなるトナー担持体を、以下に従い製造した。まず、適宜形状にて製造されたポリウレタンフォームから所望のサイズにてブロック状ポリウレタンフォームを切り出し、穴を開けて、接着層を介してシャフト(材質:SUM22,直径6.0mm,長さ300mm)を通した。その後、このブロック状ポリウレタンフォームの表面を研磨して円筒状に仕上げ、ポリウレタンフォーム層の直径が13.0mm、長さ250mm(シャフト上の厚み6mm)のローラ形状とした。使用したポリウレタンフォームA〜Cの含浸前の表面および内部の硬度、密度並びに通気性の値を、下記の表1中に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
次いで、下記の表2に示す配合にて導電性溶液を調製し、この導電性溶液に上記のシャフトつきポリウレタンフォームを浸漬して、導電性溶液をポリウレタンフォームの気泡内に含浸させた。その後、シャフトつきポリウレタンフォームを導電性溶液から取り出し、圧縮して余剰の導電性溶液を除去した後、加熱乾燥して水分等を除去して、各実施例および比較例のトナー担持体を得た。図2に、導電性溶液の含浸前のポリウレタンフォームの表面近傍および内部の硬度と、導電性溶液の含浸後のポリウレタンフォームの表面近傍および内部の硬度との関係を、それぞれ示す。
【0047】
【表2】

*1)対ウレタン比率とは、ポリウレタンフォーム層の密度に対する質量%を示す。
【0048】
(印字耐久時の画質評価)
得られた各トナー担持体を市販のプリンタに組み込んで、1%の印字パターンで20000枚まで印刷を行った。その結果、0枚〜10000枚でかすれが生じた場合を×、10000枚〜15000枚でかすれが生じた場合を△、15000枚〜20000枚でかすれが生じた場合を○、20000枚までかすれが生じない場合を◎として評価した。その結果を、各トナー担持体の構成および物性とともに、下記の表3に示す。
【0049】
【表3】

【0050】
上記表3に示すように、本発明に係る表面近傍および内部の硬度を満足する実施例1のトナー担持体においては、20000枚までかすれが生じない良好な印字耐久性能が得られていることが確かめられた。また、上記表2,3より、ポリウレタンフォーム内に含浸されるカーボン分量が、含浸後の表面硬度に影響していることがわかる。
【符号の説明】
【0051】
1 シャフト
2 ポリウレタンフォーム層
10,13 トナー担持体
11 画像形成体
12 現像ローラ
14 トナー収容部
15 転写ローラ
16 帯電部
17 露光部
18 トナー掻き取り用ブレード
20 トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの外周に単一のポリウレタンフォーム層を担持してなるトナー担持体において、
前記ポリウレタンフォーム層に導電材とバインダとを含む導電性溶液が含浸されてなり、該ポリウレタンフォーム層の、表面から1mmまでの硬度がアスカーF硬度で75〜84度であって、かつ、表面から1mmより内部の硬度がIFD硬度で220〜240Nであることを特徴とするトナー担持体。
【請求項2】
前記ポリウレタンフォーム層に対する前記導電性溶液の含浸量が、9〜13g/Lである請求項1記載のトナー担持体。
【請求項3】
前記ポリウレタンフォーム層が、30〜70cc/cm/secの範囲内の通気性を有するポリウレタンフォームを用いて形成されている請求項1または2記載のトナー担持体。
【請求項4】
前記導電性溶液の固形分濃度が、19.0〜22.0質量%の範囲内である請求項1〜3のうちいずれか一項記載のトナー担持体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−181229(P2012−181229A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42054(P2011−42054)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】