説明

トンネルの切羽前方の地山・地質構造の探査方法

【課題】坑壁が自立しないような軟弱な地山にも適用することが可能なボアホールカメラを使用したトンネルの切羽前方の地山・地質構造の探査方法を提供すること。
【解決手段】トンネルの切羽前方に、削孔機Bの中継管14に透明な管部材Pを用いて削孔を形成することにより、削孔に透明な管部材Pを敷設し、この削孔に敷設した管部材Pに、ボアホールカメラ3を挿入し、管部材Pを介して地山の状況を撮影する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの切羽前方の地山・地質構造の探査方法に関し、特に、ボアホールカメラを使用したトンネルの切羽前方の地山・地質構造の探査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルの切羽前方の地山・地質構造の探査方法として、
(1)弾性波を用いて間接的に切羽前方の状態を推測する方法
(2)削孔機を用いた先行ボーリングによって地山のサンプルを採取、分析する方法
(3)削孔機を用いた先行ボーリングによって得られた機械データから算出された削孔エネルギのデータを分析する方法
(4)削孔機を用いた先行ボーリングによって形成した削孔にボアホールカメラを挿入し、地山の状況を直接観察する方法
等が実用化されている。
【0003】
しかしながら、(1)の方法は、間接的に地山の状況を推測するものであるため、湧水や亀裂の影響により測定結果に誤差を生じるという問題があった。
また、(2)の方法は、地山のサンプルの採取、分析に時間を要するという問題があった。
また、(3)の方法は、削孔エネルギのデータを分析するものであるため、破砕帯等の軟弱な地山では削孔エネルギが小さいため正確な分析が行えず、適切な判断ができないという問題があった。
また、(4)の方法は、直接的に地山の状況を観察するものであるため、地山の状況を正確に把握できるという利点を有する反面、削孔の坑壁の安定が前提となり、坑壁が自立しないような軟弱な地山には適用できないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来のトンネルの切羽前方の地山・地質構造の探査方法の有する問題点に鑑み、トンネルの切羽前方の地山・地質構造の探査方法に関し、特に、直接的に地山の状況を観察することによって、地山の状況を正確に把握できるボアホールカメラを使用したトンネルの切羽前方の地山・地質構造の探査方法の利点を生かしながら、坑壁が自立しないような軟弱な地山にも適用することが可能なボアホールカメラを使用したトンネルの切羽前方の地山・地質構造の探査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明のトンネルの切羽前方の地山・地質構造の探査方法は、トンネルの切羽前方に削孔機を用いて形成した削孔に敷設した透明な管部材に、ボアホールカメラを挿入し、管部材を介して地山の状況を撮影することを特徴とする。
【0006】
この場合において、前記透明な管部材を削孔機の中継管に用いて削孔を形成することができる。
【0007】
また、前記透明な管部材に、透孔を形成した管部材を用いることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のトンネルの切羽前方の地山・地質構造の探査方法によれば、トンネルの切羽前方に削孔機を用いて形成した削孔に敷設した透明な管部材に、ボアホールカメラを挿入し、管部材を介して地山の状況を撮影することにより、削孔に敷設した透明な管部材によって削孔の坑壁の安定を図りながら、ボアホールカメラで直接的に地山の状況、例えば、湧水の状況、亀裂の状態、走向・傾斜の有無等を観察することによって、地山の状況を正確に把握することができる。
これにより、トンネル施工に際して、最適な支保工の選定や必要な対策工をトンネルの掘削を行う前に検討、施工することできる。
【0009】
また、前記透明な管部材を削孔機の中継管に用いて削孔を形成することにより、透明な管部材を削孔の形成と同時に削孔内に敷設することができ、これによって、削孔の坑壁の一層の安定を図ることができ、本発明の地山・地質構造の探査方法を、坑壁が自立しないような軟弱な地山にも適用することが可能となる。
【0010】
また、前記透明な管部材に、透孔を形成した管部材を用いることにより、管部材に形成した透孔に流入する湧水をトンネルの切羽側で採取、分析することができ、これによって、地山の状況を推測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のトンネルの切羽前方の地山・地質構造の探査方法に使用する設備の一実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のトンネルの切羽前方の地山・地質構造の探査方法の実施の形態を説明する。
【0013】
本発明のトンネルの切羽前方の地山・地質構造の探査方法は、トンネルの切羽前方の地山・地質構造の探査方法に関し、直接的に地山の状況を観察することによって、地山の状況を正確に把握できるボアホールカメラを使用したトンネルの切羽前方の地山・地質構造の探査方法の利点を生かしながら、坑壁が自立しないような軟弱な地山にも適用することが可能にしたものである。
【0014】
このため、本発明のトンネルの切羽前方の地山・地質構造の探査方法は、トンネルの切羽前方に削孔機を用いて形成した削孔に敷設した透明な管部材に、ボアホールカメラを挿入し、管部材を介して地山の状況を撮影するようにしている。
【0015】
この場合において、削孔機には、特に限定されるものではないが、例えば、図1に示すような、先端側からロストビット11、ロックリング12、先導管13、中継管14及び端末管15からなる外管部材1と、この外管部材1に挿入して使用される、先端側からパイロットビット21、ステー22、調整ロッド23、ガイドスリーブ24、ロッド25、スリーブ26、シャンクスリーブ27及びドリフター28からなる削孔部材2とを備えた削孔機B(例えば、トンネルジャンボ)を用いることができる。
【0016】
ここで、外管部材1の中継管14には、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂製の透明な管部材Pを用いるようにする。
この管部材Pは、削孔機Bの削孔部材としての機能に加え、この管部材Pを介してボアホールカメラ3によって地山の状況を撮影するものであるため、機械的強度、特に、靱性と硬度を備える必要があり、このため、上記合成樹脂材料の内、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂を好適に用いることができる。
なお、透明な管部材Pとなる中継管14の長さは、地山の状況を撮影する範囲に合わせて設定するようにするが、通常、数メートル(例えば、3〜5m程度)の長さのものを、必要に応じて、複数をジョイントして、使用することができる。
また、管部材Pは、削孔機Bの削孔部材として使用されることによって、例えば、表面に硬化被覆層を設けたり、掘削水に低摩耗性のものを使用するようにしても、どうしても表面が傷付くことになるが、地山に存在する水で表面が濡れることによって、曇りを防止することができ、削孔した孔壁の状況を観察することができる。
【0017】
また、中継管14に用いる管部材Pに、必要に応じて、適宜箇所に透孔Hを形成した管部材P0を用いることができる。
これにより、管部材P0に形成した透孔Hに流入する湧水をトンネルの切羽側で採取、分析することができ、これによって、地山からの湧水の状況を推測することができる。
【0018】
なお、本実施例においては、透明な管部材Pを削孔機の中継管14に用いて削孔を形成することにより、透明な管部材Pを削孔の形成と同時に削孔内に敷設することができるようにしているが、地山の性状に応じて、削孔機を用いて形成した削孔に、後から透明な管部材を挿入、敷設することもできる。
【0019】
そして、トンネルの切羽前方に、削孔機Bの中継管14に透明な管部材Pを用いて削孔を形成することにより、削孔に透明な管部材Pを敷設し、この削孔に敷設した管部材Pに、ボアホールカメラ3を挿入し、管部材Pを介して地山の状況を撮影するようにする。
【0020】
管部材Pを敷設する削孔は、通常、略水平に形成するようにするが、地山の状況を撮影する透明な管部材Pの位置に湧水が滞留しないように、1〜5°程度の先端側が上向きの角度をもって形成することが好ましい。
【0021】
また、ボアホールカメラ3は、従来汎用されているものを用いることができるが、撮影した画像を電子データとして取り込むことで、各種の解析に利用できるようにする。
また、撮影した画像の歪み、ノイズ等のついては、キャリブレーションをかけることによって修正することができる。
また、撮影した画像の上下方向の認識は、湧水の水面位置によって行うようにするほか、必要に応じて、ボアホールカメラ3の先端部にセンサを配設して検出することもできる。
【0022】
このトンネルの切羽前方の地山・地質構造の探査方法は、削孔に敷設した透明な管部材Pによって削孔の坑壁の安定を図りながら、ボアホールカメラ3で直接的に地山の状況を把握するようにしているので、トンネル施工に以下の効果をもたらすことができる。
(1)ボアホールカメラで直接的に地山の状況、例えば、湧水の状況、亀裂の状態、走向・傾斜の有無等を観察することによって、地山の状況を正確に把握することができる。
(2)トンネル施工に際して、最適な支保工の選定や必要な対策工をトンネルの掘削を行う前に検討、施工することでき、安全で合理的な施工を実現することができ、切羽作業の中断等の発生を未然に防止することができる。
(3)トンネル施工のサイクルに対する時間的な影響を小さくすることができる。
【0023】
以上、本発明のトンネルの切羽前方の地山・地質構造の探査方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明のトンネルの切羽前方の地山・地質構造の探査方法は、削孔に敷設した透明な管部材によって削孔の坑壁の安定を図りながら、ボアホールカメラで直接的に地山の状況を把握できるという特性を有していることから、坑壁が自立しないような軟弱な地山の探査の用途に好適に用いることができるほか、広く一般の地山の探査の用途にも用いることができる。
【符号の説明】
【0025】
B 削孔機
H 透孔
P 透明な管部材
P0 透明な管部材
1 外管部材
14 中継管
2 削孔部材
3 ボアホールカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの切羽前方に削孔機を用いて形成した削孔に敷設した透明な管部材に、ボアホールカメラを挿入し、管部材を介して地山の状況を撮影することを特徴とするトンネルの切羽前方の地山・地質構造の探査方法。
【請求項2】
前記透明な管部材を削孔機の中継管に用いて削孔を形成することを特徴とする請求項1記載のトンネルの切羽前方の地山・地質構造の探査方法。
【請求項3】
前記透明な管部材に、透孔を形成した管部材を用いることを特徴とする請求項1又は2記載のトンネルの切羽前方の地山・地質構造の探査方法。

【図1】
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