説明

ドレーン材及び地盤改良装置

【課題】 コストを抑えた状態のまま、通水能力を向上させることができるドレーン材を提供する。
【解決手段】 一部又は全部が透水性を有する長尺状の外壁部11と、外壁部11によって囲まれ、外壁部11の長手方向に連通された流路となる中空部12とを備え、外壁部11は、長手方向の一端部11bから他端部11aにかけて、中空部12の断面積が小さくなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を軟弱化させている地盤中に含まれる水分等を排出し、軟弱地盤を改良するために用いられるドレーン材、及び、このドレーン材を用いた地盤改良装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤中の水分を排出することにより軟弱地盤を硬質地盤に改良する軟弱地盤の改良方法として、通水性を有する砂等からなるサンドマットを地表面に覆い、地盤鉛直方向に鉛直ドレーン材を打設する工法が知られている。
【0003】
また、軟弱地盤中に鉛直ドレーン材を打設し、この軟弱地盤を密封シートで覆い、鉛直ドレーン材を介して地盤中の水分等を抜き取って地盤の圧密を促進する真空圧密による軟弱地盤改良工法である、いわゆる大気圧工法も知られている。この大気圧工法は、軟弱地盤を圧密するために軟弱地盤上を密封シートで覆うことにより、軟弱地盤中に真空状態を作り出し、地表面に臨まされた鉛直ドレーン材に減圧手段であるポンプを接続することにより、軟弱地盤中の水分等を排出することができる。
【0004】
また、他の軟弱地盤改良方法では、密封シートを用いる代わりに、上端に端部から一定長さ分だけ、内部は通水性を有し、周面からの通気を遮断させた不透気部が設けられたドレーン材を用い、地表面から所定の深さまでの地盤を密封層として利用する方法についても知られている。さらに、地表面に、粘土質の盛土をすることにより、密封層を人工的に形成するようにすることも知られている。
【0005】
これらの工法は、盛土、密封シート等の準備及び撤去、さらにこれらに要する費用など様々な事情を考慮し、施工者等により適宜選択されるものである。しかし、いずれの工法を選択したとしても、ドレーン材は必要不可欠である。
【0006】
ところで、上述の方法により軟弱地盤の改良を行う際に用いられてきたドレーン材は、鉛直ドレーン材、水平ドレーン材のいずれも断面寸法が一定であり、ドレーン材を流れる水の流量の変化について着目したものは少なかった。
【0007】
【特許文献1】特開2001−226951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上述の実情に鑑みてなされたものであり、コストを抑えて通水能力を向上させ、あるいは通水能力を維持してコストを低減させることができるドレーン材、及び、このドレーン材を用いた地盤改良装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、本発明に係るドレーン材は、一部又は全部が透水性を有する長尺状の外壁部と、上記外壁部によって囲まれ、該外壁部の長手方向に連通された流路となる中空部とを備え、上記外壁部は、長手方向の一端部から他端部にかけて、上記中空部の断面積が小さくなることを特徴とする。
【0010】
また、上記外壁部は、長手方向の一端部から他端部にかけて、暫時又は段階的に、上記中空部の断面積が小さくなるようにしてもよい。
【0011】
また、本発明に係る地盤改良装置は、地盤中の水分を排出して地盤改良を行う地盤改良装置において、上記地盤に打設され、一部又は全部が透水性を有する長尺状の外壁部と、該外壁部によって囲まれ該外壁部の長手方向に連通された流路となる中空部とを有する鉛直ドレーン材と、上記鉛直ドレーン材の一端部において該鉛直ドレーン材の中空部と連通される長尺状の外壁部と、該外壁部によって囲まれ該外壁部の長手方向に連通された流路となる中空部とを有する水平ドレーン材とを備え、上記鉛直ドレーン材及び/又は上記水平ドレーン材は、各外壁部が、長手方向の一端部から他端部にかけて、該中空部の断面積が小さくなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、外壁部が、長手方向の一端部から他端部にかけて、中空部の断面積が小さくなる構造を有するドレーン材であり、流量に応じた中空部の断面積を有するので、材料面での無駄がなく、従来と比してコスト削減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る地盤改良装置及びこの地盤改良装置に用いられるドレーン材の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
地盤改良装置1は、図1乃至図3に示すように、軟弱地盤2中に所定の長さ地表面2aから臨まされて打設された鉛直ドレーン材10と、地表面2a上に盛られた第1の盛土層3と、第1の盛土層3上に配設され鉛直ドレーン材10が連結された水平ドレーン材20と、水平ドレーン材20を覆い、水平ドレーン材20を含む軟弱地盤2を密封するように盛られた第2の盛土層4とから構成されている。
【0015】
地盤改良装置1は、軟弱地盤2上に盛られた盛土層3により当該軟弱地盤2が圧密され、軟弱地盤2に所定の深さに打設された鉛直ドレーン材10と、この鉛直ドレーン材10と連結された水平ドレーン材20とにより、地盤中の水分、空気等が図1中矢印A及び矢印Bに示す方向に、排出され、地盤の改良を行う装置である。地盤改良装置1は、例えば、地盤改良装置1は、図2、図3に示すように、300[m]四方の軟弱地盤2に略1[m]間隔で、例えば、30〜50[m]の深さに格子状に打設された鉛直ドレーン材10に対し、水平ドレーン材20が連結され、地盤中の水分等を排出する。
【0016】
軟弱地盤2上に盛られる第1の盛土層3は、軟弱地盤2に対し圧密を行うとともに、鉛直ドレーン材10を軟弱地盤2中に打設する打設機等の足場となるものであり、普通土を盛ることにより形成される層である。また、水平ドレーン材20を覆うように盛られる第2の盛土層4は、軟弱地盤2を密封し圧密するものであり、第1の盛土層3と同様に、普通土を盛ることにより形成される層である。
【0017】
鉛直ドレーン材10は、図4、図5に示すように、長尺状の外壁11とこの外壁11により囲まれて形成される中空部12とを有する。鉛直ドレーン材10の外壁11は、透水性を有する透水部材から形成されている。鉛直ドレーン材10の外壁11は、図5(A)に示すように、上端11bから下端11aにかけて、中空部12の断面積が小さくなるように形成されている。これは、上流側すなわち外壁11の下端11a側の排水能力と、下流側すなわち外壁11の上端11b側の排水能力が異なり、下流側の方が排水の流量が多くなることを想定してのものであり、これにより材料費の節約を行うことができる。具体的には、鉛直ドレーン材10の外壁11は、図5(A)に示すように、上端11bにおける厚みS1と、下端11aにおける厚みS2とが、S1>S2となる関係を有し、その厚みはS1から暫時S2となるように形成されている。
【0018】
なお、鉛直ドレーン材10の外壁11は、上述のように、上端11bから下端11aにかけて、中空部12の断面積が次第に小さくなるように形成されることに限らず、例えば、図5(B)に示すように、上端11bから下端11aにかけて、中空部12の断面積が段階的に小さくなるように形成されるものであってもよい。具体的には、図5(B)に示す鉛直ドレーン材40は、それぞれ厚みの異なる外壁41、42、43、44を連結して形成されている。各外壁41〜44は、それぞれS3〜S6の厚みを有し、その厚みがS3>S4>S5>S6に形成されている。また、鉛直ドレーン材40は、例えば、外壁41と外壁42の端部同士を突き合わせ、粘着テープ45により連結される。鉛直ドレーン材40は、同様にして、隣接する外壁同士を突き合わせ、粘着テープ45により連結して形成される。鉛直ドレーン材40は、所定長さを有する外壁41〜44を、上端40bから下端40aにかけて、段階的に厚みが小さくなるように連結して形成されている。なお、鉛直ドレーン材40は、図5(B)においては、4つの外壁41〜44を連結することにより形成されているが、これに限らず、複数段連結し、中空部12の断面積が段階的に小さくなるように形成されるものであればいかなるものであってもよい。また、鉛直ドレーン材40は、粘着テープ45により、連結することについて述べたが、これに限らず、例えば、接着剤、ステイプルなどの結束具等により連結させ形成するようにしてもよい。さらに、鉛直ドレーン材40に用いられる粘着テープ45は、透水性を有するように、間欠的に多数の透水孔を有するものであることが好ましい。さらに、鉛直ドレーン材40は、各外壁41〜44を突き合わせて、粘着テープ45により連結させることについて述べたが、一方の外壁の端部に他方の外壁の端部を突きさすようにしてもよい。
【0019】
また、鉛直ドレーン材10の外壁11は、断面略矩形形状であり、外壁11により内部に中空部12が形成される。鉛直ドレーン材10は、軟弱地盤2中に所定の深さに打設され、上端11bが所定の長さ軟弱地盤2の地表面2aから臨まされるように配設される。鉛直ドレーン材10は、外壁11が透水性を有することから、軟弱地盤2中の水分を排出することにより軟弱地盤の改良を行なうために、当該軟弱地盤2に鉛直に配置される。鉛直ドレーン材10は、図2及び図3に示すように、複数本が例えば1m間隔に軟弱地盤2に配置され、それぞれの外壁11の上端11bが水平ドレーン材20と連結され、この水平ドレーン材20を介して、軟弱地盤2中の水分を排出する。
【0020】
鉛直ドレーン材10の外壁11は、図4に示すように、透水性材料からなり、この外壁11により中空部12が設けられる。この中空部12内には、ある程度の可撓性と形状保持性を有する芯材13が設けられている。外壁11は、断面が略矩形で、外壁11と芯材13との隙間により形成される中空部12に、軟弱地盤2中の水分が通水される。
【0021】
鉛直ドレーン材10の芯材13は、長手方向に多数の溝を有し、その溝が軟弱地盤2中の外壁11を透水した水分の通水路となる。芯材13は、地盤改良における地盤の沈下による追従性・伸縮性、運搬等の利便性を考慮してある程度の可撓性を有するとともに、軟弱地盤2への打設後において十分な通水路を確保するための形状保持性を有する、例えばプラスチック等の樹脂材料から形成される。芯材13は、例えば、塩化ビニル、ポリエチレンなどの材料から形成される。また、芯材13は、外壁11の形状に合わせて、すなわち、外壁11がその上端11bから下端11aにかけて中空部12の断面積が小さくなるように形成されていることに応じて、芯材13の幅方向における溝の数を減らす、または、高さ方向における溝の高さを下げるように形成されている。
【0022】
なお、芯材13は、上述に限らず、地盤改良における地盤の沈下による追従性・伸縮性、運搬等の利便性を考慮した可撓性と通水路となる中空部12が確保できる形状保持性を有するものであれば、いかなる材質、形状からなるものであってもよい。また、芯材13は、上述に限らず、生分解性の樹脂材料で形成することにより、環境へ配慮したものとすることができる。
【0023】
外壁11は、透水性を有する材料から形成され、芯材13の外周を中空部12を残して覆うように形成されている。外壁11は、例えば、ポリエステル製の不織布から形成され、軟弱地盤2中の水分を中空部12に透過させ、透過した水分を水平ドレーン材20に通水し排出する。なお、外壁11は、芯材13と同様に、生分解性の樹脂材料で形成することにより、鉛直ドレーン材10全体を地盤中に残した場合であっても環境に配慮したものとすることができる。
【0024】
このような鉛直ドレーン材10は、周知の打設装置を使用して軟弱地盤2に所定の間隔を設けて複数本鉛直に打設される。なお、この鉛直ドレーン材10は、下端に図示しないアンカーを巻き付ける等することにより所定位置に打設する。その際、鉛直ドレーン材10の下端部を折返し状態となるようにすることで、下端からの砂等の進入を防止することができる。
【0025】
鉛直ドレーン材10は、例えば、連続的に高さ又は幅を変化させながら押出し成形することで芯材13を成形し、外壁11となる不織布材料を覆うことにより形成する。このように形成される鉛直ドレーン材10は、製造工場等にてロール状に巻回し、打設装置に設置する。
【0026】
続いて、水平ドレーン材20について説明をする。
【0027】
水平ドレーン材20は、図6、図7に示すように、長尺状の外壁21とこの外壁21により囲まれて形成される中空部22とを有する。水平ドレーン材20の外壁21は、鉛直ドレーン材10からの水を軟弱地盤2外に排水する排水部材であり、鉛直ドレーン材10と同様の透水性を有する材料により形成される。水平ドレーン材20の外壁21は、図7(A)に示すように、下流側端部21bから上流側端部21aにかけて、中空部22の断面積が小さくなるように形成されている。これは、鉛直ドレーン材10と同様に、上流側の排水能力と、下流側の排水能力が異なり、下流側の方が排水の流量が多くなることを想定してのものであり、これにより材料費の節約を行うことができる。具体的には、水平ドレーン材20の外壁21は、図7(A)に示すように、下流側端部21bにおける幅T1と、上流側端部21aにおける幅T2とが、T1>T2となる関係を有し、その幅はT1から暫時T2となるように形成されている。なお、水平ドレーン材20は、上流側端部21aにおいては、端部を折返し図示しない重石、ステイプル等により、閉塞するようにし、上流側端部21aからの排水の流出を防止する。
【0028】
なお、水平ドレーン材20の外壁21は、上述のように、下流側端部21bから上流側端部21aにかけて、中空部22の断面積が次第に小さくなるように形成されることに限らず、例えば、図7(B)に示すように、下流側端部21bから上流側端部21aにかけて、中空部22の断面積が段階的に小さくなるように形成されるものであってもよい。具体的には、図7(B)に示す水平ドレーン材50は、それぞれ幅の異なる外壁51、52、53、54を連結して形成されている。各外壁51〜54は、それぞれT3〜T6の幅を有し、その幅がT3>T4>T5>T6に形成されている。また、水平ドレーン材50は、外壁51の端部に外壁52の端部を突きさし嵌合させることにより連結される。水平ドレーン材50は、同様にして、隣接する外壁の端部同士を突きさし嵌合することにより連結して形成される。水平ドレーン材50は、所定長さを有する外壁51〜54を、下流側端部50bから上流側端部50aにかけて、段階的に幅が小さくなるように連結して形成されている。なお、水平ドレーン材50は、図7(B)においては、4つの外壁51〜54を連結することにより形成されているが、これに限らず、複数段連結し、中空部22の断面積が段階的に小さくなるように形成されるものであればいかなるものであってもよい。また、水平ドレーン材50は、それぞれの外壁を突きさし嵌合することにより連結することに限らず、例えば、鉛直ドレーン材40において用いた粘着テープ45により、連結するようにしてもよく、また、接着剤、ステイプルなどの結束具等により連結させ形成するようにしてもよい。
【0029】
また、水平ドレーン材20の外壁21は、断面略矩形形状であり、外壁21により内部に中空部22が形成される。水平ドレーン材20は、図3に示すように、軟弱地盤2中から臨まされた鉛直ドレーン材10の上端が外壁21上に載置される。水平ドレーン材20は、図2及び図3に示すように、直線状に配設された鉛直ドレーン材10に沿って配置され、鉛直ドレーン材10の上端が外壁21上に載置されることにより、鉛直ドレーン材10からの排水が水平ドレーン材20に流入し、最終的に軟弱地盤2外に排出する。
【0030】
なお、鉛直ドレーン材10と水平ドレーン材20とは、上述のように水平ドレーン材20の外壁21上に鉛直ドレーン材10の上端を載置することに限らず、周知の連結部材を用いて連結するようにしてもよく、また、土嚢のような重石を載せ載置状態を維持するようにしてもよい。さらに、水平ドレーン材20の外壁21に開口部を設け、鉛直ドレーン材10の上端を挿通し、通水を確保するようにしてもよい。
【0031】
水平ドレーン材20の外壁21は、図6に示すように、透水性材料からなり、この外壁21により中空部22が設けられる。この中空部22内には、ある程度の可撓性と形状保持性を有する芯材23が設けられている。外壁21は、断面が略矩形で、外壁21と芯材23との隙間により形成される中空部22に、軟弱地盤2中の水分が通水される。
【0032】
水平ドレーン材20の芯材23は、板状部材に凹凸を形成するエンボス加工が施されており、この凹凸により形成される間隙が中空部22となる。水平ドレーン材20は、この間隙を介して鉛直ドレーン材10からの水分を軟弱地盤2外に排出する。芯材23は、鉛直ドレーン材10に用いられる芯材13と同様に、地盤改良における地盤の沈下による追従性・伸縮性、運搬等の利便性を考慮してある程度の可撓性を有するとともに、鉛直ドレーン材10からの水分の通水路となる中空部22を確保するための形状保持性を有する、例えばプラスチック等の樹脂材料から形成される。芯材23は、例えば、塩化ビニル、ポリエチレンなどの材料から形成される。また、芯材23は、外壁21の形状に合わせて、すなわち、外壁21がその下流側端部21bから上流側端部21aにかけて中空部22の断面積が小さくなるように形成されていることに応じて、芯材23の幅も小さくなるように形成されている。
【0033】
なお、芯材23は、上述に限らず、地盤改良における地盤の沈下による追従性・伸縮性、運搬等の利便性を考慮した可撓性と通水路となる中空部22が確保できる形状保持性を有するものであれば、いかなる材質、形状からなるものであってもよい。また、芯材23は、上述に限らず、生分解性の樹脂材料で形成することにより、環境へ配慮したものとすることができる。
【0034】
外壁21は、透水性を有する材料から形成され、芯材23の外周を中空部22を残して覆うように形成されている。外壁21は、例えば、ポリエステル製の不織布から形成され、鉛直ドレーン材10からの水分を中空部22に透過等させ、透過した水分を排出する。なお、水平ドレーン材20は、上述に限らず、外壁21を塩化ビニルからなる不透水性材料により形成するようにしてもよい。さらに、外壁21は、芯材23と同様に、生分解性の樹脂材料で形成することにより、環境に配慮したものとすることができる。
【0035】
なお、鉛直ドレーン材10及び水平ドレーン材20は、上述のように、厚みや幅のどちらか一方のみを暫時または段階的に変えることに限らず、厚み及び幅を暫時または段階的に変えるようにしてもよい。
【0036】
以上のような構成を有する地盤改良装置1は、第1の盛土層3及び第2の盛土層4の圧密作用により、地盤中の水分等が鉛直ドレーン材10の外壁11を通過し、内部の中空部12に流入し、この中空部12を通って水平ドレーン材20の中空部22に流入し、排水される。各ドレーン材10、20は、それぞれ一端から他端にかけて、断面積が小さくなるように形成されており、この他端側が上流に、一端側が下流に位置するように配設される。このため、各ドレーン材10、20は、各位置における排水能力に応じた形状を有し、材料費の削減を行うことができる。また、各ドレーン材10、20は、流量に応じた断面積を有するので、効率的な排水を行うことができる。
【0037】
なお、地盤改良装置1は、鉛直ドレーン材10と水平ドレーン材20とを設置し、盛土層4による圧密による地盤改良工法に用いられるものであるが、これに限らず、水平ドレーン材20に減圧手段であるポンプを接続し、ポンプの作用により地盤中に負圧を付与するようにする地盤改良工法に用いるようにしてもよいのはもちろんである。
【0038】
続いて、地盤改良装置1の他の実施の形態について説明をする。なお、地盤改良装置1と同一の構成については、同様の符号を付し、その説明を省略する。第2の実施の形態として示す地盤改良装置60は、図8に示すように、軟弱地盤2中に所定の長さ地表面2aから臨まされて打設された鉛直ドレーン材70と、地表面2a上に盛られたサンドマット層61と、サンドマット層61上に覆われた密封シート62と、サンドマット層61内の水分を吸い出す排水ポンプ63とから構成されている。
【0039】
地盤改良装置60は、軟弱地盤2上に覆われた密封シート62により当該軟弱地盤2が圧密され、軟弱地盤2に所定の深さ、例えば30〜50[m]に打設された鉛直ドレーン材70により、地盤中の水分、空気等が図8中矢印Aに示す方向、すなわち、地表面2aに向かって流れ、サンドマット層61に流れこんだ水分等が、排水ポンプ63により排出され、地盤の改良を行う装置である。
【0040】
サンドマット層61は、通水性が良好な砂等から形成され、鉛直ドレーン材70からの水分等を排水ポンプ63に通水する。
【0041】
密封シート62は、サンドマット層61を含む軟弱地盤2を覆い、当該軟弱地盤2を圧密するための不透水部材からなるシートである。密封シート62の端部は、図8に示すように、圧密性を高めるために、地盤中に埋設されている。
【0042】
鉛直ドレーン材70は、鉛直ドレーン材10と同様の構成を有し、図9に示すように、長尺状の外壁71とこの外壁71により囲まれて形成される中空部72とを有する。鉛直ドレーン材70の外壁71は、透水性を有する透水部材から形成されている。鉛直ドレーン材70の外壁71は、図9(A)に示すように、上端71bから下端71aにかけて、中空部72の断面積が小さくなるように形成されている。これは、上流側すなわち外壁71の下端71a側の排水能力と、下流側すなわち外壁71の上端71b側の排水能力が異なり、下流側の方が排水の流量が多くなることを想定してのものであり、これにより材料費の節約を行うことができる。具体的には、鉛直ドレーン材70の外壁71は、図9(A)に示すように、上端71bにおける厚みS1と、下端71aにおける厚みS2とが、S1>S2となる関係を有し、その厚みはS1から暫時S2となるように形成されている。また、鉛直ドレーン材70には、上端71bから所定の距離に亘って、不透水部73が形成されている。この不透水部73は、鉛直ドレーン材70を軟弱地盤2中に打設した際に、地表面2aから所定の深さ、例えば2〜3[m]を不透水層とし、盛土層を設ける代わりとする役目を果たす。鉛直ドレーン材における不透水部は、いわゆる大気圧工法を用いる際に設けられる部材である。鉛直ドレーン材70における不透水部73は、不透水性の粘着テープ74を巻回することにより形成してもよく、また、不透水性材料を塗布するようにして形成してもよい。
【0043】
なお、鉛直ドレーン材70の外壁71は、鉛直ドレーン材10と同様に、上端71bから下端71aにかけて、中空部72の断面積が次第に小さくなるように形成されることに限らず、例えば、図9(B)に示すように、上端から下端にかけて、中空部の断面積が段階的に小さくなるように形成されるものであってもよい。なお、図9(B)における鉛直ドレーン材の例は、図5(B)において示した鉛直ドレーン材40のように、各外壁同士の端部を突き合わせることに止まらず、嵌入させて粘着テープ45により連結するものを示している。
【0044】
以上のような構成を有する地盤改良装置60は、密封シート62の圧密作用により、地盤中の水分等が鉛直ドレーン材70の外壁71を通過し、内部の中空部72に流入し、この中空部72を通ってサンドマット層61に流入し、排水ポンプ63により排水される。鉛直ドレーン材70は、それぞれ一端から他端にかけて、断面積が小さくなるように形成されており、この他端側が上流に、一端側が下流に位置するように配設される。このため、鉛直ドレーン材70は、各位置における排水能力に応じた形状を有し、材料費の削減を行うことができる。また、鉛直ドレーン材70は、流量に応じた断面積を有するので、効率的な排水を行うことができる。
【0045】
なお、地盤改良装置60においては、サンドマット層61を設ける例について説明をしたが、これに限らず、地盤改良装置1と同様に、水平ドレーン材を設けるようにしてもよい。
【0046】
また、地盤改良装置1、60においては、図10に示すように、水平ドレーン材を地表面2a上に、格子状となるように、設置するようにしてもよい。このとき、水平ドレーン材は、軟弱地盤2の平面視中心付近から軟弱地盤2外に向かって排水することから、図10に示すように、軟弱地盤2外側に向かうに連れて、断面積が大きくなるように配置するようにすることで、より効率的に、排水処理を行うことができる。なお、このような水平ドレーン材は、改良を予定する軟弱地盤の平面形状や排水を導く位置に応じて適宜選択するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】地盤改良装置の概略を示した断面図である。
【図2】地盤改良装置の概略を示した平面図である。
【図3】鉛直ドレーン材と水平ドレーン材との連結を示した斜視図である。
【図4】鉛直ドレーン材の一部を示した破断斜視図である。
【図5】(A)は、図4の鉛直ドレーン材のA−A’線における断面図であり、(B)は、鉛直ドレーン材の他の実施の形態として示した断面図である。
【図6】水平ドレーン材の一部を示した破断斜視図である。
【図7】(A)は、図6の水平ドレーン材のB−B’線における断面図であり、(B)は、水平ドレーン材の他の実施の形態として示した断面図である。
【図8】他の実施の形態として示す地盤改良装置の概略を示した断面図である。
【図9】他の実施の形態として示す地盤改良装置に用いられる鉛直ドレーン材の断面図である。
【図10】水平ドレーン材の設置例を示した平面図である。
【符号の説明】
【0048】
1、60 地盤改良装置、2 軟弱地盤、2a 地表面、3 第1の盛土層、4 第2の盛土層、10、40、70 鉛直ドレーン材、11、21、71 外壁、12、22、72 中空部、13、23 芯材、20、50 水平ドレーン材、45 粘着テープ、61 サンドマット層、62 密封シート、63 排水ポンプ、73 不透水部、74 粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部又は全部が透水性を有する長尺状の外壁部と、
上記外壁部によって囲まれ、該外壁部の長手方向に連通された流路となる中空部とを備え、
上記外壁部は、長手方向の一端部から他端部にかけて、上記中空部の断面積が小さくなることを特徴とするドレーン材。
【請求項2】
上記外壁部は、長手方向の一端部から他端部にかけて、暫時又は段階的に、上記中空部の断面積が小さくなることを特徴とする請求項1記載のドレーン材。
【請求項3】
地盤中の水分を排出して地盤改良を行う地盤改良装置において、
上記地盤に打設され、一部又は全部が透水性を有する長尺状の外壁部と、該外壁部によって囲まれ該外壁部の長手方向に連通された流路となる中空部とを有する鉛直ドレーン材と、
上記鉛直ドレーン材の一端部において該鉛直ドレーン材の中空部と連通される長尺状の外壁部と、該外壁部によって囲まれ該外壁部の長手方向に連通された流路となる中空部とを有する水平ドレーン材とを備え、
上記鉛直ドレーン材及び/又は上記水平ドレーン材は、各外壁部が、長手方向の一端部から他端部にかけて、該中空部の断面積が小さくなることを特徴とする地盤改良装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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