説明

ナビゲーションシステム

【課題】 車両の移動ルートを決定する際に、通信端末についての通信環境を考慮することによって、該通信端末による良好なデータ通信を行えるようにしたナビゲーションシステムを提供する。
【解決手段】 本発明は、衛星通信により得られる位置情報に基づいて、設定した目的地までのルートを探索し、該ルートに沿って車両の進路を案内するナビゲーションシステムにおいて、設定した目的地までの複数のルートを選出するルート探索手段1と、各種データ通信を可能とする複数の通信手段11〜18と、選出したルート上における上記通信手段についての通信環境に関する情報を取得する通信環境取得手段3と、上記取得した通信環境に関する情報を考慮して、最終的なルートを決定するルート決定手段5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、衛星通信により得られる位置情報に基づいて、設定した目的地までのルートを探索し、該ルートに沿って車両の進路を案内するナビゲーションシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】ナビゲーションシステムにおいては、携帯電話、PHS等の通信端末を接続することによって、文字、図形、音声、動画等を含むマルチメディア情報のやり取りを行うことができるものや、VICS(交通情報通信システム)からの交通情報、FM多重放送からの文字、画像による各種情報を受信することができるものがある。
【0003】一方で、これら各種の通信端末との間のデータ通信は、車両の移動ルートにおける通信環境によって影響を受けることがある。すなわち、車両の移動ルートが使用している通信端末のサービスエリアから外れたり、移動する車両と通信基地局との間にビル、山間部等の通信障害物がある場合には、良好なデータ通信が行えず、通信の切断、品質の劣化が生じていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のナビゲーションシステムにおいては、車両の移動ルートを決定する際に、上記通信端末についての通信環境を考慮していないので、決定された移動ルートが上記通信端末による通信にとって好ましくないルートとなることがあり、ナビゲーションシステムで決定されたルートを車両が移動している最中に、良好なデータ通信を行えないという問題があった。
【0005】そこで本発明の目的は、車両の移動ルートを決定する際に、上記通信端末についての通信環境を考慮することによって、該通信端末による良好なデータ通信を行うことができるナビゲーションシステムを提供することにある。
【0006】本発明の別の目的は、上記決定されたルートを走行中においても、通信が遮断されないようにしたナビゲーションシステムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため本発明は、衛星通信により得られる位置情報に基づいて、設定した目的地までのルートを探索し、該ルートに沿って車両の進路を案内するナビゲーションシステムにおいて、設定した目的地までの複数のルートを選出するルート探索手段と、各種データ通信を可能とする複数の通信手段と、選出したルート上における上記通信手段についての通信環境に関する情報を取得する通信環境取得手段と、上記取得した通信環境に関する情報を考慮して、最終的なルートを決定するルート決定手段とを備えて構成される。
【0008】ここで、上記通信環境取得手段で取得される通信環境に関する情報には、上記各通信手段の基地局の位置情報及び該基地局周辺の通信障害物の位置情報を含み、上記ルート決定手段は、上記基地局の位置情報及び上記通信障害物の位置情報から通信環境に最適なルートを決定することができる。
【0009】また本発明は、上記通信環境取得手段により取得した通信環境に関する情報を考慮して、上記複数の通信手段を切り替えて通信を行う通信制御手段を更に備えて構成することができる。
【0010】更に本発明において、上記通信制御手段は、上記通信環境取得手段により取得した通信環境に関する情報を考慮して、上記通信手段によるデータの送受のタイミングを制御するよう構成することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図示した一実施形態に基いて本発明を詳細に説明する。図1は本発明をカーナビゲーションシステムに適用した場合の一実施形態における構成を示す図である。本実施形態におけるカーナビゲーションシステムは、車両の移動ルートを探索するルート探索部1、通信制御部2、通信環境取得部3、通信状況把握部4、ルート決定部5、ナビゲーションの機能を制御するナビゲーション制御部6、中央処理装置7、RAM及びROMで構成される記憶部8及び外部インターフェース9を備え、これらは相互にバス接続されている。
【0012】ルート探索部1は、GPS衛星により得られる車両の位置情報に基づいて、設定した目的地までのルートを複数探索するものである。通信制御部2は、上記外部インターフェース9に接続される複数の通信端末による各種データ通信を制御するためのものである。通信制御部2は、通信データの種類、すなわち文字、画像、音声、動画等の種類や、車両の移動速度、移動ルート等により、適宜通信端末の切り替えやデータ送受のタイミングを制御することができる。
【0013】通信環境取得部3は、上記探索されたルート上における上記各通信端末についての通信環境に関する情報を取得する。ここで、通信環境に関する情報には、上記各通信端末の基地局の位置情報及び該基地局周辺の通信障害物、例えば高層ビル、山間部等の位置情報が含まれる。後述するように、通信環境に関する情報の一部は、記憶部8のROMに予め格納され、また他の一部は、上記通信端末を通してリアルタイムに取得される。通信環境取得部3は、必要に応じて、探索されたルート上の通信環境に関する情報を、記憶部8から読み出し、また通信端末を通してそのホストコンピュータから取得することができる。通信状況把握部4は、探索されたルートにおいて、各種通信サービスエリアの通信状況、すなわち通信回線の利用状況を把握する。
【0014】ルート決定部5は、上記ルート探索部1で選択された複数のルートのうち、上記通信端末による通信が最適に行えるルートを決定する。そのため、ルート決定部5は、上記通信環境取得部3で取得された通信環境に関する情報、及び上記通信状況把握部4で把握された通信状況を考慮し、車両の走行中において最もデータ通信に影響の少ないルートを決定する。
【0015】記憶部8は、各種情報、プログラム等を中央処理装置7で実行又は処理可能にするための記憶領域としてのRAM、及び各種プログラム、地図情報、電波環境、基地局位置情報等を記憶したROMから構成される。外部インターフェース9は、通信端末その他の外部入出力機器の接続インタフェースであり、図1においては、ここに、携帯電話10、PHS11、GPSアンテナ12、FMダイバシティアンテナ13、ファックス14、モニター15、TVチューナー16、ビーコン受信機17及びパソコン18が接続されている。本ナビゲーションシステムは、これら複数の通信端末を通して、文字、画像、動画等を含む、地図情報、渋滞情報、各種案内、サービス等の提供を受けることができる。
【0016】次に、図1に示したカーナビゲーションシステムにより車両の移動ルートを決定する手順について、図2を参照しつつ説明する。以下では、図2における出発点Aにおいて、目的地Kに向かう最適ルートを本カーナビゲーションシステムで探索する場合の例に沿って説明する。ドライバが出発点Aにおいて、目的地Kを指定してルート探索を開始すると、ルート探索部1は、出発点Aと目的地Kを結ぶ幾つかのルートを探索する。図2に示す例では、山間部を通過するルート(A−B−C−J−K)と、市街地を通過するルート(A−B−C−D−E−F−G−H−I−J−K)が探索される。
【0017】通信環境取得部3は、上記2つのルートにおける通信環境に関する情報を取得する。すなわち、2つのルート周辺の通信サービスエリア、通信基地局の位置、ビル、山間部、地下道等の通信障害物の位置等の情報を、外部インターフェース9に接続された通信端末を通して取得し、また記憶部8に予め格納された情報から抽出する。これによって、ルート上の位置Bには地下道があり、C−J間は山間部であり、位置Gにはビル40があるなどの情報が取得される。また、通信状況把握部4によって、各通信端末の通信状況が把握される。ルート決定部5は、上記通信環境取得部3及び通信状況把握部4によって得られた情報に基づいて、上記選出された2つのルートのうち、車両移動中の通信が良好に行えるルートを決定する。この結果、通信品質の劣化や遮断が起こりにくい市街地ルートが選択される。市街地ルートは、その大半が携帯サービスエリアであり、携帯電話10を用いることによって、このルートを走行中、データ交換が可能である。
【0018】次に、上記決定されたルートに従って車両が移動している間、通信制御部2は、上記通信環境取得部3及び通信状況把握部4によって得られた情報に基づいて、随時、通信端末によるデータ送受のタイミングの制御及び通信を行う端末の切り替え制御を行う。すなわち、通信制御部2は、車両が地下道Bに差し掛かると、その時点で行っているデータの送受を中止し、地下道Bを抜けた時点でこれを再開する。これによって、地下道Bの通過中にデータ送受信が行われて情報の一部が欠如したり、再送信が必要になったりする問題を回避することができる。同様にして、通信制御部2は、ビル40によって電波が届きにくい区間Gに入る手前で、データの送受を中止し、その通過後に再開する。また、携帯サービスエリア外であるがPHSサービスエリア内である区間Hにおいては、通信制御部2は、データ交換を行う通信端末を携帯電話10からPHS11に一時的に切り替える。これによって、区間Hにおいても通信が可能となる。以上のようにして、本カーナビゲーションシステムにおいては、市街地ルートが選択され、そのルート上において適宜データの送受のタイミングや通信を行う通信端末を切り替えることによって、該ルート走行中、継続してデータ通信が可能となる。なお、本ナビゲーションシステムにおいては、車両が上記決定されたルートを走行中においても、上記ルート探索部1、通信環境取得部3、通信状況把握部4及びルート決定部5によってルートの探索、決定を逐次行うようにすることができる。
【0019】以上、本発明の一実施形態を図面に沿って説明した。しかしながら本発明は前記実施形態に示した事項に限定されず、特許請求の範囲の記載に基いてその変更、改良等が可能であることは明らかである。本発明においては、更に、上記通信状況把握部4で得られた通信回線の使用状況が良好でない場合に、これをドライバに通知し、または他の通信端末による通信を行うことを促すメッセージを与えるように構成しても良い。また、上記ルート決定部5又は通信制御部2が、走行中において送受信するデータの種類、すなわち動画像、静止画像、ファックスデータ、音声データ、文字データ等の違いを考慮し、ルートを決定し又はデータの送受信を制御するように構成しても良い。また、上記データの種類に応じて、車両の移動速度の制限をドライバに通知するよう構成しても良い。更に、受信した交通情報から移動ルート上における車両の予想平均移動速度を求め、該求められた速度に適した通信システムを選択するように構成しても良い。
【0020】
【発明の効果】以上の如く本発明によれば、車両の移動中における通信に最適なルートが決定されるので、移動中に大量のデータをダウンロードする時や、連続して通信を行う時でも、情報を欠如することなく通信を行うことができるようになる。
【0021】また、通信端末の切り替えやデータ送受のタイミングを制御することによって、通信データの取りこぼしがなくなり、ルート移動中の情報の欠如が回避され、また再請求が必要なくなるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における構成図である。
【図2】本発明によりルートを決定する手順を説明するための図である。
【符号の説明】
1 ルート探索部
2 通信制御部
3 通信環境取得部
4 通信状況把握部
5 ルート決定部
6 ナビゲーション制御部
7 中央処理装置
8 記憶部
9 外部インターフェース
10 携帯電話
11 PHS
12 GPSアンテナ
13 FMダイバシティアンテナ
14 ファックス
15 モニター
16 TVチューナー
17 ビーコン受信機
18 パソコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】 衛星通信により得られる位置情報に基づいて、設定した目的地までのルートを探索し、該ルートに沿って車両の進路を案内するナビゲーションシステムにおいて、設定した目的地までの複数のルートを選出するルート探索手段と、各種データ通信を可能とする複数の通信手段と、選出したルート上における上記通信手段についての通信環境に関する情報を取得する通信環境取得手段と、上記取得した通信環境に関する情報を考慮して、最終的なルートを決定するルート決定手段と、を備えたことを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項2】 上記通信環境取得手段で取得される通信環境に関する情報には、上記各通信手段の基地局の位置情報及び該基地局周辺の通信障害物の位置情報を含み、上記ルート決定手段は、上記基地局の位置情報及び上記通信障害物の位置情報から通信環境に最適なルートを決定することを特徴とする請求項1記載のナビゲーションシステム。
【請求項3】 上記通信環境取得手段により取得した通信環境に関する情報を考慮して、上記複数の通信手段を切り替えて通信を行う通信制御手段を更に備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のナビゲーションシステム。
【請求項4】 上記通信制御手段は、上記通信環境取得手段により取得した通信環境に関する情報を考慮して、上記通信手段によるデータの送受のタイミングを制御することを特徴とする請求項3記載のナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2000−131083(P2000−131083A)
【公開日】平成12年5月12日(2000.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−300481
【出願日】平成10年10月22日(1998.10.22)
【出願人】(000003104)東洋通信機株式会社 (1,528)
【Fターム(参考)】