説明

ナビゲーション装置

【課題】推奨経路上の基準地点からユーザの歩数及び所定の歩幅を基に測定した歩行距離を推奨経路上の移動距離とし、推奨経路上のユーザの位置を推定するナビゲーション装置において、推奨経路上の施設を通過することにより発生する歩行距離と実際の移動距離との間のずれを補正する。
【解決手段】ナビゲーション装置は、探索した推奨経路の経路案内を行う際、推奨経路上の基準地点からユーザの歩数及び所定の歩幅を基に測定した歩行距離を推奨経路上の移動距離とし、推奨経路上のユーザの位置を推定する。推奨経路上の推定位置が階段に到達したとき(S41:Yes)、「階段の段数×80cm−階段の長さ」を基準地点からの移動距離から減算し(S42)、推定現在位置を更新する(S43)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下街などGPS(Global Positioning System)を用いた現在位置の測定ができない場所において経路案内を精度よく実施するためのナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
GPSが発達し、測位衛星からの電波を受信できる地域では地球上のいかなる場所でも自分の位置を測定できるようになり、このGPSを利用したナビゲーション装置が広く利用されている。
【0003】
しかし、地下街などでは、GPS衛星から送信される電波が壁面などによって遮られるためにGPS測位を実施することができない。そこで、GPS測位に代えて、位置が既知の基準地点からの移動距離を測定することで、大凡の位置を推定する技術が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、地下街の入口を出発点として目的地を設定して経路探索を行い、経路探索によって求められた推奨経路の案内を行う際、歩数計のカウント値及び所定の歩幅を基にユーザの歩行距離を測定するとともに、その歩行距離を推奨経路上の移動距離とし、出発点から移動距離だけ推奨経路上で進めた位置をユーザの現在位置と推定して経路案内を行うナビゲーション装置が記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたナビゲーション装置では、階段や坂道など、高低の変化を伴うことで歩行距離(水平方向+垂直方向)よりも推奨経路の延長方向(水平方向)の移動距離が短くなる施設を通過するときに、歩行距離と実際の移動距離との間にずれが発生するため、推定される現在位置と実際の現在位置との間にずれが発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−3251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、こうした従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、推奨経路上の基準地点から歩数及び所定の歩幅を基にユーザの歩行距離を測定するとともに、その歩行距離を推奨経路上の移動距離とし、基準地点から移動距離だけ推奨経路上で進めた位置をユーザの推定位置とするナビゲーション装置において、推奨経路上における、歩数計で設定されている歩幅と実施の歩幅(移動距離)との差が生じる階段などの施設を通過することにより発生する歩行距離と実際の移動距離との間のずれを補正することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のナビゲーション装置は、推奨経路上の基準地点から歩数及び所定の歩幅を基にユーザの歩行距離を測定し、前記測定した歩行距離を前記推奨経路上の移動距離とし、前記基準地点から前記移動距離だけ前記推奨経路上で進めた位置を前記ユーザの推定位置とするナビゲーション装置であって、ユーザの歩数を計測する歩数計測手段と、前記歩数及び予め設定されている所定の歩幅に基づいて歩行距離を特定する歩行距離特定手段と、前記推奨経路上に存在する、前記所定の歩幅と移動距離との差が生じる施設の位置情報及び属性情報を記憶する施設情報記憶手段と、前記属性情報を基に前記ユーザが前記施設を通過するときの歩幅を推定する歩幅推定手段と、前記推定位置が前記施設の位置に到達したとき、前記推定した歩幅を用いて、前記移動距離を補正する移動距離補正手段と、を有するナビゲーション装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、推奨経路上の基準地点から歩数及び所定の歩幅を基にユーザの歩行距離を測定するとともに、その歩行距離を推奨経路上の移動距離とし、基準地点から移動距離だけ推奨経路上で進めた位置をユーザの推定位置とするナビゲーション装置において、推奨経路上の所定の歩幅と移動距離との差が生じる施設を通過することにより発生する歩行距離と実際の移動距離との間のずれを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態のナビゲーション装置のシステム構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態のナビゲーション装置の概略動作を示すフローチャートである。
【図3】図2における経路案内処理の詳細を示すフローチャートである。
【図4】図3における地下街モードでの案内処理を示すフローチャートである。
【図5】図4における推定現在位置補正処理を示すフローチャートである。
【図6】図5における推定現在位置補正処理の補正原理を説明するための図である。
【図7】推定現在位置補正処理の変形例を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2の実施形態のナビゲーション装置における推定現在位置補正処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施形態]
〈ナビゲーション装置のシステム構成〉
図1に本発明の第1の実施形態のナビゲーション装置のシステム構成を示す。本実施形態のナビゲーション装置は、インターネットなどのネットワーク1を介して通信可能なナビゲーションサーバ10と携帯端末装置20を備えて構成される。携帯端末装置20は基地局2を介してネットワーク1に接続される。
【0012】
携帯端末装置20は、制御部21と、それぞれが制御部21に接続された位置測定部22、操作部23、表示部24、音声出力部25、通信部26及び記憶部27を備えている。
【0013】
制御部21は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)を内蔵しており、ROMや記憶部27に記憶されているプログラムをCPUがRAMをワークエリアとして実行することにより実現される機能として、探索要求手段28及び経路案内手段29を備えている。さらに詳しくは、経路案内手段29は、位置推定手段29a及び推定位置補正手段29bを備えている。
【0014】
位置測定部22はGPS受信機22a及び歩数計22bを備えている。
GPS受信機22aは、複数のGPS衛星から送信される電波を受信して演算することにより、受信点、即ち携帯端末装置20の現在位置(緯度、経度)を測定して、現在位置情報を生成する。
【0015】
歩数計22bは、携帯端末装置20のユーザの歩数をカウントし、カウント値を歩数情報として出力する。例えば重りを利用した機械的な運動を電気的に計測するもの、或いはコイル又は磁気センサを内蔵し、パルス増幅回路、カウンタ等を有して、歩行又は走行によりコイル又は磁気センサと地磁気の電磁誘導で発生するパルスを歩数として累積していくもの(即ち、電子式万歩計(登録商標))が使用される。小型軽量で、携帯端末装置20の内部に収納配置される。
【0016】
また、歩数計22bとして、この他に例えばシリコン基板上に形成した薄膜カンチレバー上に応力エレメントを設け、応力エレメントの電気的特性値の変化を所定の基準レベルと比較してパルス信号を発生するソリッドステートタイプのセンサエレメントを使用してもよい。この場合には、超小型でかつデジタル出力が容易に得られる利点がある。また、身体の運動を電気的に検出する加速度センサと、加速度センサの出力信号を身体の特定の運動に対応した電気的パルスに変換して出力し、このパルスを計数するタイプでもよい。さらには、その他の小型、軽量、デジタル出力のものを使用してもよく、例えば加速度センサ、地磁気センサという名称で呼ばれる部品を使用してもよい。要は、原理はどんなものであれ、1歩の歩行運動があったことを電気的な出力として捉えることができればよい。また、例えば市販のものを別個に使用し、別個使用の歩数計からケーブルで出力信号を制御部21に入力可能なコネクタを使用する構成であってもよい。
【0017】
操作部23は、ユーザが携帯端末装置20を使用するときに各種指令の入力を行うための手段であり、表示部24の画面上のタッチパネル、図示しない装置筐体上のボタン或いはそれらの組み合わせからなる。表示部24は、薄型表示装置、例えば液晶、有機EL(Electroluminescence)などのディスプレイからなり、ナビゲーションサーバ10から送信された地図、推奨経路などを表示する。音声出力部25は、スピーカからなり、経路案内に関する音声メッセージを出力する。
【0018】
通信部26は、基地局2及びネットワーク1を介してナビゲーションサーバ10と通信を行うための手段である。記憶部27は、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリからなり、ナビゲーションサーバ10からダウンロードした地図データ、経路案内の履歴情報、ユーザが登録した各種固定情報などを保存することができる。
【0019】
探索要求手段28は、ナビゲーションサーバ10に送信するための経路探索要求信号を生成する。この経路探索要求信号は出発地情報及び目的地情報からなる位置情報を含む。出発地情報及び目的地情報はユーザが操作部23から入力する。ただし、GPS受信機22aの受信状態が良好なときは、GPS受信機22aが生成した現在位置情報を出発地情報にすることができる。
【0020】
経路案内手段29は、経路探索要求信号に応じてナビゲーションサーバ10から提供された地図データ及び推奨経路データを用いて経路案内を行う。より詳しくは、ナビゲーションサーバ10から送信された地図データ及び推奨経路データから、地図画像上に推奨経路を重畳した表示画像データを生成して表示部24に送出し、所定の経路案内メッセージを音声出力部25に送出する。
【0021】
位置推定手段29aは、歩数計22bの出力に基づいて、携帯端末装置20の現在位置を推定する。即ち、歩数計22bは、GPS衛星からの電波の受信が不能な地下街などで、位置が正確に分かっている推奨経路上の地点、例えばGPS受信機22aの受信状態が良好であった直近の地点やユーザが操作部23から入力した地点を基準地点として移動距離の測定を開始するので、位置推定手段29aは、基準地点の位置から歩数計22bがカウントした歩数に予め定められた一定の歩幅(例えば、一般人の歩幅である80cm)を乗算した値である歩行距離を推奨経路上で進めた位置を現在位置とする。この歩幅情報はデフォルト値として予め記憶部27に記憶されており、ユーザの身体条件(年齢、性別等)に応じて設定することもできる。
【0022】
推定位置補正手段29bは、推定現在位置が階段に到達したとき、歩行距離と実際の移動距離との差異を無くすように、所定の演算を行うことで、歩行距離に基づく移動距離を補正し、推定現在位置と実際の現在位置のずれの拡大を防止する。詳細については後述する。
【0023】
ナビゲーションサーバ10は、制御部11と、制御部11に接続された通信部12、地図DB(データベース)13、及び経路DB14を備えている。通信部12は、ネットワーク1を介して携帯端末装置20と通信を行うための手段である。制御部11は、CPU、ROM、及びRAMを内蔵しており、ROMに記憶されているプログラムをCPUがRAMをワークエリアとして実行することにより実現される機能として、地図検索手段15、経路探索手段16及び送信データ生成手段17を備えている。
【0024】
地図DB13には、携帯端末装置20に地図を表示するための地図データが格納されている。地図データには、道路、河川、店舗などの地物や施設を表す図形データが含まれている。また、地下街が存在する場所には地下街の地図データも格納されており、地上の地図データには、地下街の出入口に関する図形データが含まれている。また、地下街の地図データには、地下街に関する図形データと、地下街内に存在する各種店舗などの施設の情報が含まれている。
【0025】
経路DB14には、地図データが表す地図画像に対応した領域に存在する道路ネットワークデータが格納されている。道路ネットワークデータには、道路のノード(交差点)を表すノード情報、及びノード間のリンクを表すリンク情報、リンクコスト情報が含まれている。リンク情報は、リンクの特徴(平坦、坂道、階段、エスカレータ、動く歩道、エレベータなど)に関する属性情報を含む。また、坂道については斜度及び両端の位置及び水平方向長、階段については段数及び両端の位置及び水平方向長、エスカレータについては長さ及び両端の位置及び水平方向長、動く歩道については両端の位置及び水平方向長を含む。
【0026】
制御部11の地図検索手段15は、携帯端末装置20から送信された経路探索要求信号に含まれている出発地情報及び目的地情報に基づいて、その出発地から目的地までの地図データを地図DB13から検索する。経路探索手段16は、経路探索要求信号に含まれている出発地情報及び目的地情報に基づいて、その出発地から目的地までの推奨経路のノード情報及びリンク情報を経路DB14から探索する。
【0027】
送信データ生成手段17は、地図検索手段15により検索された地図データ、及び経路探索手段16により探索された推奨経路データから、携帯端末装置20に送信するための送信データを生成する。ここで、送信データは、地図検索手段15により検索された地図データ、及び経路探索手段16により探索された推奨経路データのうち、携帯端末装置20の現在位置付近の所定の範囲の部分である。この送信データは、携帯端末装置20の移動に伴う送信要求に応じて、移動方向の一定範囲の地図データ、及び推奨経路データに更新される。
【0028】
〈ナビゲーション装置の動作〉
以上の構成を備えたナビゲーション装置の動作について説明する。図2はナビゲーション装置の概略動作を示すフローチャートである。このフローチャートにおいて、携帯端末装置20の処理は、ナビゲーションサーバ10により提供されるナビゲーションサービスを受けるためのアプリケーションを立ち上げたときに始まる。また、ナビゲーションサーバ10の処理は、携帯端末装置20から送信された経路探索要求信号の受信に応じて始まる。
【0029】
図示のように、携帯端末装置20では、推奨経路探索要求のための出発地及び目的地が入力される(ステップS1)。即ち、表示部24に出発地、目的地の入力画面が表示され、ユーザが操作部23から入力した出発地、目的地が出発地情報、目的地情報として制御部21内のRAMに書き込まれる。ここで、位置測定部22のGPS受信機22aの受信状態が良好であり、GPS受信機22aが現在位置情報を生成しているときは、それを出発地情報とすることもできる。一方、地下街にいるときのように、GPS受信機22aが受信不能のときは、ユーザが目的地を入力することが必要となる。また、地下街にいるときは、地下街にいることを入力する。これにより、地下街フラグが制御部21内のRAMに設定される。
【0030】
次に探索要求手段28は、RAMに保持されている位置情報(出発地情報及び目的地情報)を読み出し、それらを含む経路探索要求信号を生成し、通信部26にナビゲーションサーバ10へ送信させる(ステップS2)。
【0031】
ナビゲーションサーバ10では、携帯端末装置20から送信された経路探索要求信号が通信部12で受信され、制御部11へ送られることにより、経路探索処理(ステップS11)が始まる。
【0032】
この経路探索処理では、地図検索手段15が、経路探索要求に係る出発地から目的地までの範囲を含む地図データを地図DB13から検索する。また、この経路探索処理では、経路探索手段16が、経路探索要求に係る出発地から目的地までの推奨経路を探索する。
【0033】
経路探索処理が終了すると、送信データ生成手段17が、地図検索手段15により検索された地図データ、及び経路探索手段16により探索された推奨経路データに基づいて、送信データを生成し、通信部12に携帯端末装置20へ送信させる(ステップS12)。ここで、携帯端末装置20の現在位置付近の所定の範囲の部分に地下街がある場合は、地上の地図データ及び推奨経路データとともに地下街の地図データ及び推奨経路データを送信する。
【0034】
携帯端末装置20では、地図データ及び推奨経路データが通信部26で受信され、制御部21に送られると(ステップS3)、経路案内手段29が経路案内処理(ステップS4)を行う。
【0035】
〈経路案内処理〉
図3は経路案内処理の詳細を示すフローチャートである。経路案内処理の開始により、表示部24に地図及び推奨経路を表示するとともに、GPS受信機22aが現在位置情報を生成しているときはその現在位置を、GPS受信機22aが現在位置情報を生成せず、位置推定手段29aが推定現在位置情報を生成しているときはその推定現在位置を表示する。これにより、ユーザの歩行に伴って表示される推定現在位置が更新される(ステップS21)。
【0036】
次いで経路案内手段29は、地下街に到達したか否かを判断する(ステップS22)。例えば直前の判断ではGPS受信機22aの受信状態が良好であるため、GPS受信機22aで生成された現在位置情報に基づく現在位置が地下街への入口から所定距離(例えば20m)の地上であり、今回の判断ではGPS受信機22aが受信不能あるいは電波の強度が一定の基準値以下となった場合には、地下街(実際には、地上から地下への転換地点である地下街の入口の階段、エスカレータ、エレベータ等)に到達したと判断する。
なお、ユーザが携帯端末装置20を操作することにより、地下街モードに設定を切り替えるような態様でもよい。
【0037】
地下街に到達したと判断した場合は(ステップS22:Yes)、経路案内手段29は、歩数計22bによる移動距離測定を開始する地点である基準地点をRAMに書き込むとともに、地下街モードフラグをRAMに設定し(ステップS23)、ステップS24に進む。地下街に到達していないと判断した場合は(ステップS22:No)、そのままステップS24に進む。
【0038】
ステップS24では、地下街モードか否か、換言すれば、地下街モードフラグが設定されているか否かを判断する。判断の結果、地下街モードであった場合は(ステップS24:Yes)、地下街モードでの案内(ステップS25)を行い、地下街モードでなかった場合は(ステップS24:No)、地上モードでの案内を行う(ステップS26)。目的地に到着するまで(ステップS27:No)、ステップS21〜S25又はS26を繰り返し、目的地に到達したら(ステップS27:Yes)、この図のフローを終える。
【0039】
〈地下街モードでの案内〉
図3における地上モードでの案内(ステップS26)は周知技術を用いるものであるため、説明を省略し、地下街モードでの案内(ステップS25)について、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0040】
まず位置推定手段29aは、先にステップS23で設定した基準地点に対して、歩数計22bのカウント値に一定の歩幅(例えば80cm)を掛けた値である歩行距離をユーザの移動距離とし、その移動距離を推奨経路上で進めることで、現在位置を推定する(ステップS31)。即ち、歩数計22bの1カウント毎に歩幅分の一定距離進んだものとし、「カウント数」×「一定距離」=「歩行距離」=「移動距離」とする。
【0041】
ただし、推定現在位置が所定の施設(階段、エスカレータ、動く歩道、エレベータ)に到達したときは(ステップS32:Yes)、推定位置補正手段29bが推定現在位置補正処理(ステップS33)を実行する。従って、まず地下街の入口の階段やエスカレータで歩数計22bがカウントを開始したときに、推定現在位置補正処理を行うことになる。なお、推定現在位置が所定の施設(階段など)に到達したか否かは、推定現在位置が推奨経路上における所定の施設の始点から終点の間の区間の位置に存在しているか否かを基に判断する。
【0042】
〈推定現在位置補正処理〉
図5は推定現在位置補正処理を示すフローチャートである。
まず到達した施設が階段であるか否かを判断する(ステップS41)。本実施形態では、補正処理の対象施設を階段に限定しているため、階段以外の施設(エスカレータ、動く歩道、エレベータ)に対しては(ステップS41:No)、補正を行わずに処理を終了する。
【0043】
一方、到達した施設が階段であった場合は、ステップS42で「階段の段数×80cm−階段の長さ」を基準地点からの移動距離から減算し、推定現在位置の地点情報を更新する(ステップS43)。
【0044】
なお、ここでは、ステップS32で施設(階段、エスカレータ、動く歩道、エレベータ)に到達したか否かを判断し、ステップS41で施設が階段であるか否かを判断しているが、ステップS32において、階段に到達したか否かを判断し、ステップS41を省略するように構成することもできる。
【0045】
図6は、図5のステップS42及びS43により推定現在位置が補正される理由(補正原理)を説明するための図である。
図示のように、推奨経路100上に段数がK(図ではK=6)、長さがL1の階段101がある場合、推定現在位置補正処理を行わないと仮定すると、階段101を通過したことにより、歩数計22bは階段の段数であるKカウントアップするから、推奨経路100上のユーザの位置は、「所定の歩幅F0(例えば80cm)×階段の段数K」だけ階段の始点P1から進んだ位置P3に到達する。ところが、実際にはユーザは階段の終点P2にいる。通常、階段の一段当たりの長さ(L1/K)は、所定の歩幅F0(例えば80cm)より短いから、位置P3は階段の終点P2より前方になり、その距離は「F0×K−L1」である。
【0046】
従って、階段101を通過したときに、推定現在位置を「F0×K−L1」戻すことにより、階段101を通過したときの歩数計22bで測定した歩行距離による移動距離を実際の移動距離に補正し、推定現在位置を補正することができる。
【0047】
図5のステップS42、S43は、この補正処理を示しており、ステップS42で「段数(K)×80cm(所定の歩幅F0)−階段の長さ(L1)」を基準地点Sからの移動距離から減算し、ステップS43で推定現在位置を更新する。
【0048】
ところで図5のステップS42、S43の場合、歩数計22bのカウント値Kに対応する移動距離「F0×K」と実際の移動距離である階段の長さL1との差異「F0×K−L1」に起因する移動距離の補正を推定現在位置が階段に到達したときから通過するまでの所定のタイミングで一度に行う。このため、携帯端末装置20の表示部24に表示されている地図の縮尺が大きいと、補正により推奨経路上の推定現在位置が大きく変化し、ユーザに不自然な感じを与えるおそれがある。
【0049】
そこで、上記移動距離の補正を歩数計22bのカウントアップ毎に行うことで、推奨経路上の推定現在位置の一度の変化を低減したのが図7に示す処理である。この処理では、推定現在位置が階段101の位置に到達したとき、歩幅を所定の歩幅F0(例えば80cm)から階段101の一段当たりの長さ、即ち階段の長さL1を段数Kで除算した値L1/Kに変更する(ステップS51)。次いで、変更後の歩幅で階段101の段数Kだけカウントアップし(ステップS52)、所定の歩幅F0に戻す(ステップS53)。
【0050】
ここで、図5のステップS42、S43は、図7と同様に歩幅をL1/Kに変更した後、その歩幅と所定の歩幅F0(例えば80cm)との差を一歩ずつ補正する代わりに、K歩分まとめて補正していると考えることができる。
【0051】
即ち、所定の歩幅F0と変更後の歩幅L1/Kの一歩当たりの差は「F0−L1/K」であるから、一歩当たりの移動距離の差は「F0−L1/K」である。そして、階段101がK段であるから、階段101を通過する間にK歩分の差異である「K×『F0−L1/K』」=「F0×K−L1」となり、図5のステップS42で減算する長さと同じになる。
【0052】
なお、図7では、階段の長さを段数で割ることで一段当たりの長さを算出し、それを歩幅としているが、階段の属性情報に一段当たりの長さを含めておき、それを歩幅とするように構成することもできる。
【0053】
図4の説明に戻る。所定の施設に到達していない場合(ステップS32:No)、地下街から出たか否かを判断する(ステップS34)。この判断は、図2におけるステップS22と逆の状態になったことに基づく。即ち、直前の判断時にGPS受信機22aが受信不能あるいは電波の強度が一定の基準値以下であり、今回の判断時に受信状態が良好になった場合には、地下街から出たと判断する。
【0054】
そして、地下街から出たと判断した場合は(ステップS34:Yes)、基準地点及び地下街モードフラグをクリアして(ステップS35)、この図のフローを終える。また、地下街から出ていないと判断した場合は(ステップS34:No)、そのままこの図のフローを終える。
【0055】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態のナビゲーション装置は、地下街モードの経路案内において、階段に加えて、エスカレータ及び動く歩道及びエレベータでも移動距離の補正を行うことが第1の実施形態との相違点である。以下、その相違点を中心に説明する。
【0056】
図8は本実施形態における推定現在位置補正処理を示すフローチャートである。この図において、図5(第1の実施形態)と同じステップには図5と同じ参照符号を付した。到達した施設が階段であった場合の処理は、第1の実施形態と同じである(ステップS41:Yes→S42→S43)。
【0057】
到達した施設が階段でない場合(ステップS41:No)、即ちエスカレータ又は動く歩道又はエレベータの場合は、歩数計22bのカウントが一定時間停止したか否かを判断する(ステップS44)。
【0058】
ユーザがエスカレータ又は動く歩道又はエレベータを通過するときは、それらの施設により移送されている間、それらの施設上で歩行を停止し、それらの施設の終点(推奨経路上の移動方向先端)まで移送されたとき歩行を再開すると考えられる。従って、それらの施設の長さを移送速度で割った時間を基に一定時間を定めておけば、歩数計22bのカウントが一定時間停止したか否かを基にユーザがエスカレータ又は動く歩道又はエレベータ上にいるか否かを判断することができる。
【0059】
そこで、歩数計22bのカウントが一定時間停止したと判断したとき(ステップS44:Yes)、推定現在位置を施設の終点位置(推奨経路上の移動方向先端)に補正する(ステップS45)。これにより、ユーザがエスカレータ又は動く歩道又はエレベータの終点に到達し、歩行を再開するときの推定現在位置をエスカレータ又は動く歩道の終点に正確に合わせることができる。一定時間停止していない判断したときは(ステップS44:No)、そのまま処理を終える。
【0060】
なお、以上の実施形態は、本発明を携帯端末装置とサーバからなるシステムに適用したものであるが、本発明は地図DB及び経路DBを備えたスタンドアローン型のナビゲーション装置に適用することもできる。
上記実施形態では、出発地が地上である場合について説明したが、出発地が地下街であってもよい。この場合、GPSによる現在位置の測位ができないので、出発地点は手動で入力することになる。
【符号の説明】
【0061】
1…ネットワーク、10…ナビゲーションサーバ、11…制御部、12…通信部、13…地図DB、14…経路DB、15…地図検索手段、16…経路探索手段、20…携帯端末装置、21…制御部、22…位置測定部、23…操作部、24…表示部、26…通信部、28…探索要求手段、29…経路案内手段、29a…位置推定手段、29b…推定位置補正手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
推奨経路上の基準地点から歩数及び所定の歩幅を基にユーザの歩行距離を測定し、前記測定した歩行距離を前記推奨経路上の移動距離とし、前記基準地点から前記移動距離だけ前記推奨経路上で進めた位置を前記ユーザの推定位置とするナビゲーション装置であって、
ユーザの歩数を計測する歩数計測手段と、
前記歩数及び予め設定されている所定の歩幅に基づいて歩行距離を特定する歩行距離特定手段と、
前記推奨経路上に存在する、前記所定の歩幅と移動距離との差が生じる施設の位置情報及び属性情報を記憶する施設情報記憶手段と、
前記属性情報を基に前記ユーザが前記施設を通過するときの歩幅を推定する歩幅推定手段と、
前記推定位置が前記施設の位置に到達したとき、前記推定した歩幅を用いて、前記移動距離を補正する移動距離補正手段と、
を有するナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたナビゲーション装置において、
前記歩幅推定手段は、前記属性情報に含まれる施設としての階段の長さ及び段数を用いて歩幅を推定するナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1に記載されたナビゲーション装置において、
前記移動距離補正手段は、前記属性情報に含まれる施設の段数に前記所定の歩幅を乗算した値から前記属性情報に含まれる施設の長さを減算した値を前記移動距離から減算する手段を有するナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載されたナビゲーション装置において、
前記移動距離補正手段は、前記歩数のカウント毎に前記推定した歩幅で歩行距離を測定する手段を有するナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載されたナビゲーション装置において、
GPSを用いて前記ユーザの位置を測定する位置測定手段を備え、
前記基準地点は、前記位置測定手段による位置測定が可能から不可能に変化した地点であるナビゲーション装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載されたナビゲーション装置において、
前記基準地点は前記推奨経路の出発地であるナビゲーション装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載されたナビゲーション装置において、
当該ナビゲーション装置は、ネットワークを介して通信可能な携帯端末装置及びナビゲーションサーバとを備えるナビゲーション装置。
【請求項8】
請求項7に記載されたナビゲーション装置において、
前記携帯端末装置は、推奨経路の探索要求を行う探索要求手段と、前記歩数計測手段と、歩行距離特定手段と、前記歩行距離特定手段で特定された歩行距離だけ前記推奨経路上で前記基準地点から進めた地点を前記ユーザの推定位置とする推定位置決定手段と、前記推定位置を前記推奨経路とともに表示する表示手段と、前記歩幅推定手段と、前記移動距離補正手段と、を有し、前記ナビゲーションサーバは、前記探索要求に応じて、推奨経路の探索を行う経路探索手段と、前記施設情報記憶手段と、を有するナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−215408(P2012−215408A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79438(P2011−79438)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(500578216)株式会社ゼンリンデータコム (231)
【Fターム(参考)】