ニコチン薬の製造法およびその方法により製造される医薬
【課題】タバコ代償療法または離脱方法に適する複合体微粒子、および製造方法の提供。
【解決手段】ニコチン、非球状化糖、および水を含む液状担体を組み合わせて流動性混合物を製造し、ヒトの肺胞および下部気道への送達に適するニコチン薬の微粒子を製造する条件で、前記流動性混合物を噴霧乾燥することを特徴とする、吸入器にて使用するためのニコチン薬の製造方法。本方法により製造されるニコチン組成物は、タバコ代償療法または離脱方法に適する複合体微粒子である。
【解決手段】ニコチン、非球状化糖、および水を含む液状担体を組み合わせて流動性混合物を製造し、ヒトの肺胞および下部気道への送達に適するニコチン薬の微粒子を製造する条件で、前記流動性混合物を噴霧乾燥することを特徴とする、吸入器にて使用するためのニコチン薬の製造方法。本方法により製造されるニコチン組成物は、タバコ代償療法または離脱方法に適する複合体微粒子である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はニコチン薬に関する。特に、本発明は吸入に適するニコチン薬の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
喫煙は、肺気腫、慢性気管支炎、肺感染症および肺癌などの呼吸器系疾患を含む多くの疾患の誘因または原因因子であることが判明している。殆どの常習喫煙者が、タバコ煙中のニコチンの薬理学的作用により、耽溺症あるいは依存症となる。ニコチンは血液/脳関門を通過して急速に吸収され、脊髄、自律神経節および副腎髄質のニコチン受容体に対して直接作用を示す。
【0003】
様々なニコチン代償療法が開発されている。それらの一部のものはニコチン代用薬を利用する。ニコチン代用薬は、一般に、固体形態中、蒸気中または溶液中にニコチンを含有する。例えば、ニコチン代償療法はニコチンガムの使用をその部類に入れている。ニコチンガムの欠点の一つは、タバコを吸う場合と比較して、ニコチンガムを噛むことで達成される定常状態のニコチンレベルが低いこと、また血中ニコチンレベルの上昇速度も、タバコを吸う場合と比較して実質的により低いことである。さらに、ガムは胃腸での副作用、しゃっくり、口腔潰瘍および咽喉痛に関連している。吸収されるニコチン量も長時間にわたる喫煙者の咀嚼および嚥下作用によって大きく変動する。
【0004】
ニコチンパッチも開発されている。ニコチンパッチの欠点の一つは、それらが適用部位での皮膚刺激に関連することである。さらに、それらはニコチンの吸収が緩慢で、タバコを吸いたいヒトの渇望を満足させる上で、効果のないものとなり得る。
【0005】
自己噴射式エアロゾル剤(加圧式エアロゾル剤としても知られる)は、溶液中にニコチンを含有し、タバコ代用薬として提案されてきた。その一例はヤコブス(Jacobs)の自己噴射式製剤である(特許文献1)。ヤコブス特許に示されているように、これらの送達システムは、水系エアロゾル製剤およびフレオンなどの噴射剤(加圧式容器に貯蔵される)を含む。ヤコブス式は、これを作動させたとき、使用者の口腔にニコチンと固体担体を送達する。従って、ヤコブスが創案したエアロゾルはニコチンと固体担体の混合物を組み合わせて含有する。ニコチンは固体担体の複合部分として形成されるものではない。さらに、ヤコブスが創案したエアロゾルの粒径は不定であった。それ故、かかる加圧式エアゾール剤を使用して投与される投与量は、正確に制御されない可能性がある。
【0006】
また、ニコチン含有剤を吸入により送達する乾燥粉末吸入器を製造することも提案されている(特許文献2参照)。塩と複合体の形態のニコチン製剤が開発されている一方で、肺胞と肺のより小さな気道への吸入に適合するニコチン製剤についての要望が今なお存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4635651号明細書
【特許文献2】国際出願PCT/CA95/00562号明細書
【発明の概要】
【0008】
タバコの煙はニコチンが関連するタールの個々に分離した微粒子を含んでなるエアロゾルである。タール微粒子はヒトの肺胞と下部気道にまで侵入し得る大きさの微粒子である。研究によると、ニコチンはタール微粒子によりヒトの肺胞と下部気道に効率的に搬送されることが判明している。現行のタバコ代償療法は、ヒトのタバコ願望を満足させるには有効でなかった。本発明によるニコチン製剤はタバコの煙により酷似しており、タバコ代償療法または離脱療法の有効性を改善して、既存の吸入器技法と共に使用し得る製剤として提供される。
【0009】
本発明の方法によると、個々に分離した微粒子を含んでなる複合体物質が提供されるが、この微粒子はニコチンと担体の混合物である。タバコの煙と同様に、該複合体物質はニコチンおよび担体双方の物理的組み合わせである。該担体は、ヒトの肺胞と下部気道に吸入により搬送されるような粒径と密度を有する微粒子を効果的に提供する。ニコチンは担体と共にヒトの肺胞と下部気道に搬送されるように担体と組み合わせてある。対照的に、先行技術の製剤においては、ニコチンと担体が互いに単に会合しているか、または凝集しているだけであり、結果として、それらは気流中で互いに分離してしまう。従って、当該担体は一般的にヒトの肺胞と下部気道にある用量のニコチンを搬送するようには作用しなかった。本発明によると、ニコチンと担体は、それらが吸入に際して分離しないような様式で物理的に結合している複合体物質を形成する。
【0010】
本発明の方法によると、吸入器で使用するための、以下の工程を包含するニコチン薬の製造法が提供される:
a)ニコチン、非球状化医薬等級の糖、および液状担体を組み合わせて流動性混合物を製造する工程;および
b)該流動性混合物を噴霧乾燥して噴霧乾燥微粒子を形成させる工程。
【0011】
当該流動性混合物は、ヒトの肺胞と下部気道への送達に適するニコチン薬の複合体微粒子を製造する条件で噴霧乾燥する。
【0012】
本発明のもう一つの方法によると、タバコ代償療法または離脱療法を実施するための以下の工程を包含する方法が提供される:
a)基本的に、ニコチン、非球状化医薬等級の糖、および液状担体からなる流動性混合物を調製する工程;
b)ヒトの肺胞と下部気道への送達に適し、エアロゾル化して吸入した場合に、タバコの煙に類似しているニコチン薬の微粒子を製造する条件で複合体物質を製造するために流動性混合物を噴霧乾燥する工程;および
c)肺への薬物送達に適する吸入器とともに使用する当該複合体物質を容器に梱包する工程。
【0013】
該吸入器は、好ましくは、非加圧式である。かかる吸入器は、呼吸活性化吸入器と称されることもあるが、吸入器を介して空気流を生じるためにヒトの吸入を利用する。
【0014】
一実施態様において、液状担体は水を含み、また好ましくは水からなる。
【0015】
別の実施態様において、該液状担体はさらにアルコールを含んでなり、特に、ニコチンが硫酸ニコチンまたは酒石酸ニコチンなどのニコチン塩である場合にアルコールを含有する。この場合、アルコールは流動性混合物へのニコチンの溶解性を促進するために、共溶媒として加えてもよい。かかる事例において、該液状担体は、好ましくは、マイナー部分としてのアルコールと主要部分としての水を含んでなる。液状担体におけるアルコールと水の比は、重量部で約1:1ないし1:10、好ましくは約1:2ないし1:8、より好ましくは約1:5ないし1:7であってもよい。
【0016】
本発明の別の実施態様において、流動性混合物は乾燥する前に噴霧される。
【0017】
流動性混合物は、好ましくは、実質的に球形状の微粒子を形成する条件で乾燥する。より好ましくは、該流動性混合物は、表面に小さな窪みのある球形状微粒子を形成する条件で乾燥する。一実施態様において、該流動性混合物は、噴霧乾燥機において流動性混合物の噴霧粒子から迅速に液状担体が除去されるような十分に高い温度で乾燥する。
【0018】
本発明の利点は、本明細書に開示した方法により生産される医薬粒子が、肺胞および肺の気道を経由してヒト血流に吸収されるように都合よく改造されていることである。この微粒子は複合体構造である。従って、ニコチンは吸入に際して糖(担体)から分離することがない。このように、糖はタバコの煙に類似した様式で、ニコチンを肺に搬送する。流動性混合物を噴霧乾燥する条件をコントロールすることにより、約0.1ないし約5μmの粒径、好ましくは、約0.5ないし約3μmの粒径の微粒子を製造することができる。
【0019】
ニコチンは、それがヒトの喉または上気道に影響を与えた場合、刺激を生じる可能性がある。従って、本発明方法は粉末薬製剤を製造するために使用し得るが、該製剤は吸入によって、過度の刺激を生じることなく、そして好ましくは刺激なしに、ヒトの肺胞およびより小さな気道に到達し得る。
【0020】
本方法は微粒子を製造するためにも使用し得るが、該微粒子は球状であるだけでなく、凹凸表面または“小さな窪みのある”表面をも有する。乾燥微粒子が球形状であることは粒子の凝集を低下させる一方、吸入器においては、使用者が吸入によって微粒子をエアロゾル化するのを容易にする。さらに、小さな窪みのある表面を有することで、医薬粒子の空気力学が改善されて、それによって粒子が使用者の吸入した空気中により容易に飛散搬送され得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明のこれらの利点および他の利点については、本発明の以下の好適な実施態様の記載に従い、以下の図面を参照し、さらに十分に、また完全に理解されよう:
【図1】本明細書に開示の方法に使用される医薬等級の糖の典型的な非球状化微粒子の顕微鏡写真である;
【図2】本明細書に開示の方法に使用される典型的な非球状化医薬等級の糖の粒径を説明するグラフである;
【図3】本明細書に開示の方法に使用される医薬等級の糖の典型的な非球状化微粒子の第2実施態様の顕微鏡写真である;
【図4】本明細書に開示の方法に使用される医薬等級の糖の典型的な非球状化微粒子の第3実施態様の顕微鏡写真である;
【図5】本明細書に開示の方法に使用される典型的な非球状化医薬等級の糖の粒径を説明する第2実施態様のグラフである;
【図6】本明細書に開示の方法に使用される典型的な非球状化医薬等級の糖の粒径を説明する第3実施態様のグラフである;
【図7】本明細書に開示の方法に使用される医薬等級の糖の典型的な非球状化微粒子の第4実施態様の顕微鏡写真である;
【図8】本明細書に開示の方法に使用される医薬等級の糖の典型的な非球状化微粒子の第5実施態様の顕微鏡写真である;
【図9】本明細書に開示の方法に使用される典型的な非球状化医薬等級の糖の粒径を説明する第4実施態様のグラフである;
【図10】本明細書に開示の方法に使用される典型的な非球状化医薬等級の糖の粒径を説明する第5実施態様のグラフである;
【図11】本明細書に開示の方法に使用される典型的な非球状化医薬等級の糖の粒径を説明する第6実施態様のグラフである;
【図12】噴霧乾燥前の流動性混合物中のニコチン濃度に対する本発明により製造した完成品中のニコチン濃度を示すグラフである;
【図13】噴霧乾燥前の流動性混合物中のニコチン対ラクトースの比に対しての完成品中のニコチン濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の方法によると、ニコチンおよび医薬等級の糖を含有してなる複合体医薬は、使用者による吸入に適する形状に製造される。特に、該医薬は固体の個々に分離した流動性微粒子を含有してなり、この微粒子は肺胞と肺のより小さな気道に達するように、使用者が吸入した空気中に飛散搬送され得る。
【0023】
本発明の方法によると、非球状化医薬等級糖およびニコチンを液状担体と混合して流動性混合物を形成し、これを次いで乾燥し得る。該液状担体は流動性混合物を形成するのに十分な程度までの糖およびニコチンと混合する試薬であり、この混合物は噴霧乾燥機中などで急速乾燥し得る。ニコチン、糖および液状担体はいずれの順序でも組み合わせ得る。液状担体はニコチンおよび糖の一方または双方を可溶化するために利用し得る。試剤の一方が液状担体に不溶である場合、当該液状混合物はよく混ぜ合わせるかまたは均一化して、全般的に両立性の組成を有する液状混合物を製造するとよい。
【0024】
本開示によると、出願人は、噴霧乾燥前にニコチンと組み合わせる医薬等級糖の形状または形態が、吸入に際して使用者の上気道に堆積しない複合体物質の調製に役立つことを期せずして見出した。特に、球状化した糖を本工程に使用した場合、生成する噴霧乾燥生成物は糸形状の粒子として形成される傾向があり、球状の粒子とはならない。予想外に、非球状の糖は、可溶化して、ニコチンと混合した場合、噴霧乾燥により球状の微粒子を形成する。非球状化医薬等級の糖は、その糖を可溶化して、液状担体中のニコチン製剤と組み合わせ、次いで噴霧乾燥することにより処理するため、糖の当初の形状または形態が最終の粉末薬に影響するであろうとは、予想外のことである。
【0025】
当業者は、非球状化粒子が、丸いもしくは球状の粒子を生じる球状化工程により製造される球状化粒子とは対照的に、非球状の不規則な形の粒子(例えば、くさび形状など)であることを理解しよう。かかる非球状化粒子は凍結乾燥により、または物理的粒径減少法(例えば、摩砕、ミクロ微粉化など)により調製し得る。
【0026】
従って、本明細書開示の一実施態様には、以下の工程を含んでなる吸入器にて使用するためのニコチン薬の製造法が包含される:
a)ニコチン、非球状化医薬等級糖および液状担体を組み合わせ、流動性混合物を製造する工程;
【0027】
b)当該流動性混合物を噴霧乾燥して、噴霧乾燥微粒子を製造する工程。
【0028】
該噴霧乾燥微粒子は、ヒトの肺胞と下部気道への送達に適するニコチン薬の複合体微粒子を製造する条件で噴霧乾燥し得る。
【0029】
一実施態様において、非球状化医薬等級糖はミクロ微粉化した医薬等級糖、例えば、図2にて参照し得るような粒径分布を有する図1に見られるミクロ微粉化ラクトースを包含する。
【0030】
別の実施態様において、非球状化医薬等級糖は、摩砕または微粉摩砕した糖、例えば、図5および6に参照し得るような粒径分布を有する図3および4に見られる摩砕または微粉摩砕したラクトースを包含する。
【0031】
別の実施態様において、非球状化医薬等級糖は、ふるい分け、または粗くふるい分けした医薬等級糖、例えば、図9および10に参照し得るような粒径分布を有する図7および8に見られるふるい分け、または粗くふるい分けしたラクトースを包含する。
【0032】
別の実施態様において、非球状化の医薬等級糖は、図11に説明するような粒径を有する。
【0033】
一実施態様において、非球状化医薬等級糖は、当業者既知の工程を用いて、ミクロ微粉化、摩砕またはふるい分けし得る。例えば、非球状化の医薬等級糖は、糖の粒径を縮小させて非球状化の糖とし得る摩砕、強打、粉砕、破砕、切削、もしくは他の物理的崩壊またはそれらの組み合わせに付すことができる。例えば、摩砕工程では、剛球を容れたドラムを回転させ、その剛球がニコチンまたは糖の粒子と衝突して粒径を縮小する。
【0034】
一実施態様において、非球状化の医薬等級糖は、約200μm未満のd50値、好ましくは100μm未満、より好ましくは50μm未満、さらに好ましくは10μm未満、さらに好ましくは約5μm未満のd50値を有し、また約300μm未満のd90値、好ましくは200μm未満、より好ましくは100μm未満、さらに好ましくは50μm未満、さらに好ましくは15μm未満、さらに好ましくは約10μm未満のd90値を有する非球形状または不規則な形状の糖粒子を含有してなる。一実施態様において、非球状化の医薬等級糖は、くさびの形状である。
【0035】
一実施態様において、非球状化の糖は吸入可能な糖であり、好ましくは、ラクトース、デキストロース、グルコース、マルトースまたはそれらの組み合わせから選択されるが、最も好ましくはラクトース、例えば、α−ラクトース一水和物である。当該糖は天然または合成の糖であってもよく、また糖の類似体または誘導体を包含し得る。本明細書ではラクトースを参照するが、記載した他の1種以上の糖も同様に採用し得ることは正しく理解されよう。非球状化ラクトースは担体として働くので、添加剤として承認されているいずれの非球状化ラクトースも使用し得る。非球状化ラクトースは、好ましくは、CP(カナダ薬局方)、USP(米国薬局方)、NF(米国国民医薬品集)、BP(英国薬局方)またはBPC(英国公定書注解)などの医薬品等級のものである。出発原料として使用される非球状化ラクトースは、従って、水に易溶の乾燥粉末の形状である。
【0036】
ニコチン製剤は液状担体に可溶であるか、または液状担体と混合し得るニコチンのいずれの形状であってもよい。例えば、ニコチンは室温で水に混和し得る液体であるニコチン塩基であってもよい。あるいは、またはさらに、ニコチンは室温で固体である塩であってもよい。ニコチン塩基は一般に油状剤型である。好ましくは、ニコチンはニコチン塩基を含んでなる。ニコチンはニコチンの薬理学的に活性な類似体もしくは誘導体、または単独でもしくは他の活性物質との組み合わせでニコチンの作用を模倣する物質であってもよい。ニコチンが塩基である場合、それを水に加えて混合し、全体として均一な液状混合物を製造してもよい。液状担体はニコチンが混合し得るいずれの液体もしくは液体類であってもよく、またラクトースを溶解して流動性混合物を形成してもよく、流動性混合物は、好ましくは、全体として均一な組成の混合物である。ニコチン塩基は一般に水に混和可能であり、ニコチン塩製剤は一般に水可溶性である。さらに、非球状化ラクトースは水に可溶である。それ故、ニコチンが塩基であろうと、および/または塩製剤であろうと、液状担体は水を含んでなる。塩を使用する場合、液状担体はニコチンとラクトースを可溶化する。ニコチン塩基を使用する場合、液状担体は非球状化のラクトースを可溶化し、液状塩基と混合(例えば均一化)して全体として均一な溶液を作成する(例えば、液状塩基と混和し得る)。水は好適な液状担体であるが、水と組み合わせて、または水の代わりに他の液体を使用してもよい。例えば、代替の液体を使用して、それ自体だけで、または水と組み合わせて、固体物質を可溶化するか、または液状担体中のニコチン塩基を分散することが可能である。
【0037】
さらに好適な実施態様において、液状担体はアルコールと水の混合物を含有していてもよい。水とアルコールは共沸混合物を形成する。ニコチン塩基製剤はアルコールに易溶性である。しかし、非球状化のラクトースはアルコールに不溶である。本実施態様に従うと、該溶液は水の含量が少なくてもよく、その場合は溶液の乾燥速度および/または乾燥産物中の水分量に益する。
【0038】
好ましくは、アルコールは一級アルコールである。さらに、アルコールは、好ましくは、低級アルキルアルコール(すなわち、C1ないしC5)である。ニコチン塩基溶液用の溶媒として使用し得る特に好適なアルコールはエタノールである。エタノールはCP等級のものでよく、好ましくはUSP等級である。しかし、可能ならば該塩基の溶液にアルコールを使用することは避けるのが好ましいとは正しく理解されよう。
【0039】
この液状担体は、好ましくは、アルコールを共溶媒として使用する場合のアルコールに比べて、過剰量の水を含む。かかる実施態様において、混合物は、好ましくは、マイナー部分としてのアルコールと主要部分としての水を含んでなる。アルコールが必要な場合、液状担体中のアルコール対水の比は重量部で、約1:1ないし1:10であり、好ましくは約1:2ないし1:8、より好ましくは1:5ないし1:7であり得る。
【0040】
液状担体(例えば、水および/またはアルコール)はニコチンと混合して液状混合物とし、この混合物に次いで非球状化糖を加えてもよい。従って、非球状化ラクトースおよびニコチン塩は水(および選択肢としては水/アルコール混合物)に溶解し、流動性混合物を形成し得る。別法として、非球状化ラクトースを水(および選択肢としては水/アルコール混合物)に溶解し、ニコチン塩基を前記水(および選択肢としては水/アルコール混合物)と混合して流動性混合物を形成してもよい。ニコチン、液状担体および非球状化糖は所望の順序で一緒に組み合わせ、乾燥流動性混合物を製造し得ることは正しく理解されよう。
【0041】
利用される液状混合物の量は、流動性混合物を製造するために充分な量である。好適な実施態様によると、該混合物は噴霧乾燥機の入り口で(流動性混合物を開口部に通すなど)細かく分割する。流動性混合物は、好ましくは、水の粘度に匹敵する粘度を有し、その液体を噴霧器(好ましくは回転式噴霧器)に通すことなどにより、容易に微細に分割し得る。
【0042】
流動性混合物を製造するために液状担体と組み合わせるニコチンと非球状化ラクトースの比は、噴霧乾燥産物中の所望のニコチン濃度によって変わる。製品の取扱制限のため、当該分野では、担体が、有効成分に比較して、粉末化糖の重量のかなりの部分を含むことが典型的である。利用される非球状化糖(例えば、ラクトース)の量は、ニコチンの量に比べて、当該技術分野で既知の乾燥粉末吸入器と連携して噴霧乾燥産物を使用し得るように十分な量でなければならない。従って、流動性混合物中の非球状化ラクトースとニコチンの比は、重量部で、約1:10ないし約10:1、より好ましくは約3:7ないし約3:2、最も好ましくは約4:6で変わり得る。さらに、流動性混合物中の糖濃度は、約1%ないし約10%、より好ましくは約2%ないし約5%、最も好ましくは約3%(w/v、すなわち、g/100ml)で変わり得る。
【0043】
流動性混合物は、肺胞および肺のより小さな気道に到達し得るようにサイズの整った微粒子を製造するように乾燥する。好ましくは、該微粒子は、微粒子の質量メジアン空力直径(MMAD)に基づき、約0.1ないし約5μmであり、より好ましくは約0.5ないし約5μm、最も好ましくは約0.5ないし約3μmである。流動性混合物は、好ましくは、噴霧乾燥機を用いることなどにより急速に乾燥する。しかし、適切にサイズの整った微粒子を製造し得る他の乾燥技法(例えば、流動床乾燥法を使用する)を使用してもよい。
【0044】
流動性混合物は、好ましくは、球形状の、または実質的に球形状の微粒子を製造するように急速に乾燥する。かかる微粒子は回転式噴霧器を使用して流動性の液体を噴霧乾燥機に供給することにより達成し得る。
【0045】
噴霧乾燥機の操作条件は、肺胞および肺のより小さな気道に到達し得るようにサイズの整った微粒子を製造するように調整する。回転式噴霧器は液体供給速度を約2ないし約20ml/分で、より好ましくは2ないし約10ml/分で、最も好ましくは約2ないし約5ml/分で操作してもよい。回転式噴霧器は、約10,000ないし約30,000rpm、より好ましくは約15,000ないし約25,000rpm、最も好ましくは約20,000ないし約25,000rpmで操作し得る。様々なサイズの微粒子が噴霧乾燥によって得られること、また所望の粒径の微粒子を選択し得ることは、正しく理解されよう。
【0046】
噴霧乾燥機は、液状担体を急速に蒸発させるために充分に高い温度で操作されるが、ラクトースとニコチンの温度が、これらの化合物が分解し始める点まで上昇させないようにされる。従って、噴霧乾燥機は入口の温度を約120ないし約170℃とし、出口の温度を約70ないし約100℃として操作してもよい。
【0047】
薬物粒子は球形状であるか、または別の空力学的形状のものである。かかる微粒子はバルクの形態で保存しても凝集しない傾向がある。さらに、噴霧乾燥工程に際して、液状担体を充分に急速に蒸発させることで、薬物粒子が凹凸のある、または“小さな窪みのある”表面をもつものとして製造され得る。凹凸のある表面は該粒子が空中を通過するときに乱気流を発生し、その結果、空力学的揚力をもつ粒子を提供する。このことは使用者が吸入した空気中に微粒子が飛散するのを、また飛散継続を促進し、薬物粒子の、肺胞とより小さな気道に到達する能力を改善する。
【0048】
以下の実施例は、説明することのみを意図するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0049】
ニコチン3gおよびラクトース27gを水200gに加えた。この混合物を溶液が澄明となるまで(凡そ10分間)撹拌した。この混合物をビュッヒミニスプレードライヤー190にて、500ml/分の空気流速、入口温度165℃、出口温度87℃で噴霧乾燥した。ニコチンとラクトースの溶液を7ml/分の速度で噴霧器に供給した。結果を表1に示す。
【0050】
実験手順は表1に示す条件の各セットの下で繰り返した。ニコチン・ラクトース複合体産物中のニコチン含量の定量は、262nmの波長でUV分光光度法により実施した。粒径は当該技術分野で既知のレーザ回折法により確認した。
【0051】
ニコチン対ラクトースの比(w/w)が4:6である溶液中のニコチンの3%(w/v)の濃度は、完成品中、最高の濃度を生じた。空気流が750ml/分を超えると、結果的に湿った粉末を製造することになり、流動特性に有害であった。
【0052】
図12は完成品中のニコチン濃度を、実験1〜5の溶液中のニコチン濃度の関数として示したグラフである。「第1系列」は噴霧乾燥後の完成品中のニコチン濃度である。「第2系列」は噴霧乾燥前の溶液中のニコチン濃度である。溶液中のニコチン濃度が高い程、完成品中のニコチン濃度が常に高くなるということではないことが理解されよう。
【0053】
図13は完成品中のニコチン濃度を、実験6〜8の溶液中のニコチン対ラクトースの比の関数として示したグラフである。溶液中、ラクトースに対するニコチンの比の高いことが、必ずしも完成品中に高いニコチン濃度を生ずるものではないことが理解されよう。溶液中、ラクトースに対するニコチンの最高比は凡そ3:7であることが判明した。図13における「第1系列」は噴霧乾燥後の完成品中のニコチン濃度を示し、一方、「第2系列」は噴霧乾燥前の溶液中のラクトースに対するニコチンの比を示す。
【0054】
結果は、完成品中のニコチンの最高濃度が、溶液中凡そ3%(w/v)のニコチン濃度、および溶液中凡そ4:6のニコチン:ラクトース比で達成されたことを示す。
【0055】
【表1】
【技術分野】
【0001】
本発明はニコチン薬に関する。特に、本発明は吸入に適するニコチン薬の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
喫煙は、肺気腫、慢性気管支炎、肺感染症および肺癌などの呼吸器系疾患を含む多くの疾患の誘因または原因因子であることが判明している。殆どの常習喫煙者が、タバコ煙中のニコチンの薬理学的作用により、耽溺症あるいは依存症となる。ニコチンは血液/脳関門を通過して急速に吸収され、脊髄、自律神経節および副腎髄質のニコチン受容体に対して直接作用を示す。
【0003】
様々なニコチン代償療法が開発されている。それらの一部のものはニコチン代用薬を利用する。ニコチン代用薬は、一般に、固体形態中、蒸気中または溶液中にニコチンを含有する。例えば、ニコチン代償療法はニコチンガムの使用をその部類に入れている。ニコチンガムの欠点の一つは、タバコを吸う場合と比較して、ニコチンガムを噛むことで達成される定常状態のニコチンレベルが低いこと、また血中ニコチンレベルの上昇速度も、タバコを吸う場合と比較して実質的により低いことである。さらに、ガムは胃腸での副作用、しゃっくり、口腔潰瘍および咽喉痛に関連している。吸収されるニコチン量も長時間にわたる喫煙者の咀嚼および嚥下作用によって大きく変動する。
【0004】
ニコチンパッチも開発されている。ニコチンパッチの欠点の一つは、それらが適用部位での皮膚刺激に関連することである。さらに、それらはニコチンの吸収が緩慢で、タバコを吸いたいヒトの渇望を満足させる上で、効果のないものとなり得る。
【0005】
自己噴射式エアロゾル剤(加圧式エアロゾル剤としても知られる)は、溶液中にニコチンを含有し、タバコ代用薬として提案されてきた。その一例はヤコブス(Jacobs)の自己噴射式製剤である(特許文献1)。ヤコブス特許に示されているように、これらの送達システムは、水系エアロゾル製剤およびフレオンなどの噴射剤(加圧式容器に貯蔵される)を含む。ヤコブス式は、これを作動させたとき、使用者の口腔にニコチンと固体担体を送達する。従って、ヤコブスが創案したエアロゾルはニコチンと固体担体の混合物を組み合わせて含有する。ニコチンは固体担体の複合部分として形成されるものではない。さらに、ヤコブスが創案したエアロゾルの粒径は不定であった。それ故、かかる加圧式エアゾール剤を使用して投与される投与量は、正確に制御されない可能性がある。
【0006】
また、ニコチン含有剤を吸入により送達する乾燥粉末吸入器を製造することも提案されている(特許文献2参照)。塩と複合体の形態のニコチン製剤が開発されている一方で、肺胞と肺のより小さな気道への吸入に適合するニコチン製剤についての要望が今なお存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4635651号明細書
【特許文献2】国際出願PCT/CA95/00562号明細書
【発明の概要】
【0008】
タバコの煙はニコチンが関連するタールの個々に分離した微粒子を含んでなるエアロゾルである。タール微粒子はヒトの肺胞と下部気道にまで侵入し得る大きさの微粒子である。研究によると、ニコチンはタール微粒子によりヒトの肺胞と下部気道に効率的に搬送されることが判明している。現行のタバコ代償療法は、ヒトのタバコ願望を満足させるには有効でなかった。本発明によるニコチン製剤はタバコの煙により酷似しており、タバコ代償療法または離脱療法の有効性を改善して、既存の吸入器技法と共に使用し得る製剤として提供される。
【0009】
本発明の方法によると、個々に分離した微粒子を含んでなる複合体物質が提供されるが、この微粒子はニコチンと担体の混合物である。タバコの煙と同様に、該複合体物質はニコチンおよび担体双方の物理的組み合わせである。該担体は、ヒトの肺胞と下部気道に吸入により搬送されるような粒径と密度を有する微粒子を効果的に提供する。ニコチンは担体と共にヒトの肺胞と下部気道に搬送されるように担体と組み合わせてある。対照的に、先行技術の製剤においては、ニコチンと担体が互いに単に会合しているか、または凝集しているだけであり、結果として、それらは気流中で互いに分離してしまう。従って、当該担体は一般的にヒトの肺胞と下部気道にある用量のニコチンを搬送するようには作用しなかった。本発明によると、ニコチンと担体は、それらが吸入に際して分離しないような様式で物理的に結合している複合体物質を形成する。
【0010】
本発明の方法によると、吸入器で使用するための、以下の工程を包含するニコチン薬の製造法が提供される:
a)ニコチン、非球状化医薬等級の糖、および液状担体を組み合わせて流動性混合物を製造する工程;および
b)該流動性混合物を噴霧乾燥して噴霧乾燥微粒子を形成させる工程。
【0011】
当該流動性混合物は、ヒトの肺胞と下部気道への送達に適するニコチン薬の複合体微粒子を製造する条件で噴霧乾燥する。
【0012】
本発明のもう一つの方法によると、タバコ代償療法または離脱療法を実施するための以下の工程を包含する方法が提供される:
a)基本的に、ニコチン、非球状化医薬等級の糖、および液状担体からなる流動性混合物を調製する工程;
b)ヒトの肺胞と下部気道への送達に適し、エアロゾル化して吸入した場合に、タバコの煙に類似しているニコチン薬の微粒子を製造する条件で複合体物質を製造するために流動性混合物を噴霧乾燥する工程;および
c)肺への薬物送達に適する吸入器とともに使用する当該複合体物質を容器に梱包する工程。
【0013】
該吸入器は、好ましくは、非加圧式である。かかる吸入器は、呼吸活性化吸入器と称されることもあるが、吸入器を介して空気流を生じるためにヒトの吸入を利用する。
【0014】
一実施態様において、液状担体は水を含み、また好ましくは水からなる。
【0015】
別の実施態様において、該液状担体はさらにアルコールを含んでなり、特に、ニコチンが硫酸ニコチンまたは酒石酸ニコチンなどのニコチン塩である場合にアルコールを含有する。この場合、アルコールは流動性混合物へのニコチンの溶解性を促進するために、共溶媒として加えてもよい。かかる事例において、該液状担体は、好ましくは、マイナー部分としてのアルコールと主要部分としての水を含んでなる。液状担体におけるアルコールと水の比は、重量部で約1:1ないし1:10、好ましくは約1:2ないし1:8、より好ましくは約1:5ないし1:7であってもよい。
【0016】
本発明の別の実施態様において、流動性混合物は乾燥する前に噴霧される。
【0017】
流動性混合物は、好ましくは、実質的に球形状の微粒子を形成する条件で乾燥する。より好ましくは、該流動性混合物は、表面に小さな窪みのある球形状微粒子を形成する条件で乾燥する。一実施態様において、該流動性混合物は、噴霧乾燥機において流動性混合物の噴霧粒子から迅速に液状担体が除去されるような十分に高い温度で乾燥する。
【0018】
本発明の利点は、本明細書に開示した方法により生産される医薬粒子が、肺胞および肺の気道を経由してヒト血流に吸収されるように都合よく改造されていることである。この微粒子は複合体構造である。従って、ニコチンは吸入に際して糖(担体)から分離することがない。このように、糖はタバコの煙に類似した様式で、ニコチンを肺に搬送する。流動性混合物を噴霧乾燥する条件をコントロールすることにより、約0.1ないし約5μmの粒径、好ましくは、約0.5ないし約3μmの粒径の微粒子を製造することができる。
【0019】
ニコチンは、それがヒトの喉または上気道に影響を与えた場合、刺激を生じる可能性がある。従って、本発明方法は粉末薬製剤を製造するために使用し得るが、該製剤は吸入によって、過度の刺激を生じることなく、そして好ましくは刺激なしに、ヒトの肺胞およびより小さな気道に到達し得る。
【0020】
本方法は微粒子を製造するためにも使用し得るが、該微粒子は球状であるだけでなく、凹凸表面または“小さな窪みのある”表面をも有する。乾燥微粒子が球形状であることは粒子の凝集を低下させる一方、吸入器においては、使用者が吸入によって微粒子をエアロゾル化するのを容易にする。さらに、小さな窪みのある表面を有することで、医薬粒子の空気力学が改善されて、それによって粒子が使用者の吸入した空気中により容易に飛散搬送され得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明のこれらの利点および他の利点については、本発明の以下の好適な実施態様の記載に従い、以下の図面を参照し、さらに十分に、また完全に理解されよう:
【図1】本明細書に開示の方法に使用される医薬等級の糖の典型的な非球状化微粒子の顕微鏡写真である;
【図2】本明細書に開示の方法に使用される典型的な非球状化医薬等級の糖の粒径を説明するグラフである;
【図3】本明細書に開示の方法に使用される医薬等級の糖の典型的な非球状化微粒子の第2実施態様の顕微鏡写真である;
【図4】本明細書に開示の方法に使用される医薬等級の糖の典型的な非球状化微粒子の第3実施態様の顕微鏡写真である;
【図5】本明細書に開示の方法に使用される典型的な非球状化医薬等級の糖の粒径を説明する第2実施態様のグラフである;
【図6】本明細書に開示の方法に使用される典型的な非球状化医薬等級の糖の粒径を説明する第3実施態様のグラフである;
【図7】本明細書に開示の方法に使用される医薬等級の糖の典型的な非球状化微粒子の第4実施態様の顕微鏡写真である;
【図8】本明細書に開示の方法に使用される医薬等級の糖の典型的な非球状化微粒子の第5実施態様の顕微鏡写真である;
【図9】本明細書に開示の方法に使用される典型的な非球状化医薬等級の糖の粒径を説明する第4実施態様のグラフである;
【図10】本明細書に開示の方法に使用される典型的な非球状化医薬等級の糖の粒径を説明する第5実施態様のグラフである;
【図11】本明細書に開示の方法に使用される典型的な非球状化医薬等級の糖の粒径を説明する第6実施態様のグラフである;
【図12】噴霧乾燥前の流動性混合物中のニコチン濃度に対する本発明により製造した完成品中のニコチン濃度を示すグラフである;
【図13】噴霧乾燥前の流動性混合物中のニコチン対ラクトースの比に対しての完成品中のニコチン濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の方法によると、ニコチンおよび医薬等級の糖を含有してなる複合体医薬は、使用者による吸入に適する形状に製造される。特に、該医薬は固体の個々に分離した流動性微粒子を含有してなり、この微粒子は肺胞と肺のより小さな気道に達するように、使用者が吸入した空気中に飛散搬送され得る。
【0023】
本発明の方法によると、非球状化医薬等級糖およびニコチンを液状担体と混合して流動性混合物を形成し、これを次いで乾燥し得る。該液状担体は流動性混合物を形成するのに十分な程度までの糖およびニコチンと混合する試薬であり、この混合物は噴霧乾燥機中などで急速乾燥し得る。ニコチン、糖および液状担体はいずれの順序でも組み合わせ得る。液状担体はニコチンおよび糖の一方または双方を可溶化するために利用し得る。試剤の一方が液状担体に不溶である場合、当該液状混合物はよく混ぜ合わせるかまたは均一化して、全般的に両立性の組成を有する液状混合物を製造するとよい。
【0024】
本開示によると、出願人は、噴霧乾燥前にニコチンと組み合わせる医薬等級糖の形状または形態が、吸入に際して使用者の上気道に堆積しない複合体物質の調製に役立つことを期せずして見出した。特に、球状化した糖を本工程に使用した場合、生成する噴霧乾燥生成物は糸形状の粒子として形成される傾向があり、球状の粒子とはならない。予想外に、非球状の糖は、可溶化して、ニコチンと混合した場合、噴霧乾燥により球状の微粒子を形成する。非球状化医薬等級の糖は、その糖を可溶化して、液状担体中のニコチン製剤と組み合わせ、次いで噴霧乾燥することにより処理するため、糖の当初の形状または形態が最終の粉末薬に影響するであろうとは、予想外のことである。
【0025】
当業者は、非球状化粒子が、丸いもしくは球状の粒子を生じる球状化工程により製造される球状化粒子とは対照的に、非球状の不規則な形の粒子(例えば、くさび形状など)であることを理解しよう。かかる非球状化粒子は凍結乾燥により、または物理的粒径減少法(例えば、摩砕、ミクロ微粉化など)により調製し得る。
【0026】
従って、本明細書開示の一実施態様には、以下の工程を含んでなる吸入器にて使用するためのニコチン薬の製造法が包含される:
a)ニコチン、非球状化医薬等級糖および液状担体を組み合わせ、流動性混合物を製造する工程;
【0027】
b)当該流動性混合物を噴霧乾燥して、噴霧乾燥微粒子を製造する工程。
【0028】
該噴霧乾燥微粒子は、ヒトの肺胞と下部気道への送達に適するニコチン薬の複合体微粒子を製造する条件で噴霧乾燥し得る。
【0029】
一実施態様において、非球状化医薬等級糖はミクロ微粉化した医薬等級糖、例えば、図2にて参照し得るような粒径分布を有する図1に見られるミクロ微粉化ラクトースを包含する。
【0030】
別の実施態様において、非球状化医薬等級糖は、摩砕または微粉摩砕した糖、例えば、図5および6に参照し得るような粒径分布を有する図3および4に見られる摩砕または微粉摩砕したラクトースを包含する。
【0031】
別の実施態様において、非球状化医薬等級糖は、ふるい分け、または粗くふるい分けした医薬等級糖、例えば、図9および10に参照し得るような粒径分布を有する図7および8に見られるふるい分け、または粗くふるい分けしたラクトースを包含する。
【0032】
別の実施態様において、非球状化の医薬等級糖は、図11に説明するような粒径を有する。
【0033】
一実施態様において、非球状化医薬等級糖は、当業者既知の工程を用いて、ミクロ微粉化、摩砕またはふるい分けし得る。例えば、非球状化の医薬等級糖は、糖の粒径を縮小させて非球状化の糖とし得る摩砕、強打、粉砕、破砕、切削、もしくは他の物理的崩壊またはそれらの組み合わせに付すことができる。例えば、摩砕工程では、剛球を容れたドラムを回転させ、その剛球がニコチンまたは糖の粒子と衝突して粒径を縮小する。
【0034】
一実施態様において、非球状化の医薬等級糖は、約200μm未満のd50値、好ましくは100μm未満、より好ましくは50μm未満、さらに好ましくは10μm未満、さらに好ましくは約5μm未満のd50値を有し、また約300μm未満のd90値、好ましくは200μm未満、より好ましくは100μm未満、さらに好ましくは50μm未満、さらに好ましくは15μm未満、さらに好ましくは約10μm未満のd90値を有する非球形状または不規則な形状の糖粒子を含有してなる。一実施態様において、非球状化の医薬等級糖は、くさびの形状である。
【0035】
一実施態様において、非球状化の糖は吸入可能な糖であり、好ましくは、ラクトース、デキストロース、グルコース、マルトースまたはそれらの組み合わせから選択されるが、最も好ましくはラクトース、例えば、α−ラクトース一水和物である。当該糖は天然または合成の糖であってもよく、また糖の類似体または誘導体を包含し得る。本明細書ではラクトースを参照するが、記載した他の1種以上の糖も同様に採用し得ることは正しく理解されよう。非球状化ラクトースは担体として働くので、添加剤として承認されているいずれの非球状化ラクトースも使用し得る。非球状化ラクトースは、好ましくは、CP(カナダ薬局方)、USP(米国薬局方)、NF(米国国民医薬品集)、BP(英国薬局方)またはBPC(英国公定書注解)などの医薬品等級のものである。出発原料として使用される非球状化ラクトースは、従って、水に易溶の乾燥粉末の形状である。
【0036】
ニコチン製剤は液状担体に可溶であるか、または液状担体と混合し得るニコチンのいずれの形状であってもよい。例えば、ニコチンは室温で水に混和し得る液体であるニコチン塩基であってもよい。あるいは、またはさらに、ニコチンは室温で固体である塩であってもよい。ニコチン塩基は一般に油状剤型である。好ましくは、ニコチンはニコチン塩基を含んでなる。ニコチンはニコチンの薬理学的に活性な類似体もしくは誘導体、または単独でもしくは他の活性物質との組み合わせでニコチンの作用を模倣する物質であってもよい。ニコチンが塩基である場合、それを水に加えて混合し、全体として均一な液状混合物を製造してもよい。液状担体はニコチンが混合し得るいずれの液体もしくは液体類であってもよく、またラクトースを溶解して流動性混合物を形成してもよく、流動性混合物は、好ましくは、全体として均一な組成の混合物である。ニコチン塩基は一般に水に混和可能であり、ニコチン塩製剤は一般に水可溶性である。さらに、非球状化ラクトースは水に可溶である。それ故、ニコチンが塩基であろうと、および/または塩製剤であろうと、液状担体は水を含んでなる。塩を使用する場合、液状担体はニコチンとラクトースを可溶化する。ニコチン塩基を使用する場合、液状担体は非球状化のラクトースを可溶化し、液状塩基と混合(例えば均一化)して全体として均一な溶液を作成する(例えば、液状塩基と混和し得る)。水は好適な液状担体であるが、水と組み合わせて、または水の代わりに他の液体を使用してもよい。例えば、代替の液体を使用して、それ自体だけで、または水と組み合わせて、固体物質を可溶化するか、または液状担体中のニコチン塩基を分散することが可能である。
【0037】
さらに好適な実施態様において、液状担体はアルコールと水の混合物を含有していてもよい。水とアルコールは共沸混合物を形成する。ニコチン塩基製剤はアルコールに易溶性である。しかし、非球状化のラクトースはアルコールに不溶である。本実施態様に従うと、該溶液は水の含量が少なくてもよく、その場合は溶液の乾燥速度および/または乾燥産物中の水分量に益する。
【0038】
好ましくは、アルコールは一級アルコールである。さらに、アルコールは、好ましくは、低級アルキルアルコール(すなわち、C1ないしC5)である。ニコチン塩基溶液用の溶媒として使用し得る特に好適なアルコールはエタノールである。エタノールはCP等級のものでよく、好ましくはUSP等級である。しかし、可能ならば該塩基の溶液にアルコールを使用することは避けるのが好ましいとは正しく理解されよう。
【0039】
この液状担体は、好ましくは、アルコールを共溶媒として使用する場合のアルコールに比べて、過剰量の水を含む。かかる実施態様において、混合物は、好ましくは、マイナー部分としてのアルコールと主要部分としての水を含んでなる。アルコールが必要な場合、液状担体中のアルコール対水の比は重量部で、約1:1ないし1:10であり、好ましくは約1:2ないし1:8、より好ましくは1:5ないし1:7であり得る。
【0040】
液状担体(例えば、水および/またはアルコール)はニコチンと混合して液状混合物とし、この混合物に次いで非球状化糖を加えてもよい。従って、非球状化ラクトースおよびニコチン塩は水(および選択肢としては水/アルコール混合物)に溶解し、流動性混合物を形成し得る。別法として、非球状化ラクトースを水(および選択肢としては水/アルコール混合物)に溶解し、ニコチン塩基を前記水(および選択肢としては水/アルコール混合物)と混合して流動性混合物を形成してもよい。ニコチン、液状担体および非球状化糖は所望の順序で一緒に組み合わせ、乾燥流動性混合物を製造し得ることは正しく理解されよう。
【0041】
利用される液状混合物の量は、流動性混合物を製造するために充分な量である。好適な実施態様によると、該混合物は噴霧乾燥機の入り口で(流動性混合物を開口部に通すなど)細かく分割する。流動性混合物は、好ましくは、水の粘度に匹敵する粘度を有し、その液体を噴霧器(好ましくは回転式噴霧器)に通すことなどにより、容易に微細に分割し得る。
【0042】
流動性混合物を製造するために液状担体と組み合わせるニコチンと非球状化ラクトースの比は、噴霧乾燥産物中の所望のニコチン濃度によって変わる。製品の取扱制限のため、当該分野では、担体が、有効成分に比較して、粉末化糖の重量のかなりの部分を含むことが典型的である。利用される非球状化糖(例えば、ラクトース)の量は、ニコチンの量に比べて、当該技術分野で既知の乾燥粉末吸入器と連携して噴霧乾燥産物を使用し得るように十分な量でなければならない。従って、流動性混合物中の非球状化ラクトースとニコチンの比は、重量部で、約1:10ないし約10:1、より好ましくは約3:7ないし約3:2、最も好ましくは約4:6で変わり得る。さらに、流動性混合物中の糖濃度は、約1%ないし約10%、より好ましくは約2%ないし約5%、最も好ましくは約3%(w/v、すなわち、g/100ml)で変わり得る。
【0043】
流動性混合物は、肺胞および肺のより小さな気道に到達し得るようにサイズの整った微粒子を製造するように乾燥する。好ましくは、該微粒子は、微粒子の質量メジアン空力直径(MMAD)に基づき、約0.1ないし約5μmであり、より好ましくは約0.5ないし約5μm、最も好ましくは約0.5ないし約3μmである。流動性混合物は、好ましくは、噴霧乾燥機を用いることなどにより急速に乾燥する。しかし、適切にサイズの整った微粒子を製造し得る他の乾燥技法(例えば、流動床乾燥法を使用する)を使用してもよい。
【0044】
流動性混合物は、好ましくは、球形状の、または実質的に球形状の微粒子を製造するように急速に乾燥する。かかる微粒子は回転式噴霧器を使用して流動性の液体を噴霧乾燥機に供給することにより達成し得る。
【0045】
噴霧乾燥機の操作条件は、肺胞および肺のより小さな気道に到達し得るようにサイズの整った微粒子を製造するように調整する。回転式噴霧器は液体供給速度を約2ないし約20ml/分で、より好ましくは2ないし約10ml/分で、最も好ましくは約2ないし約5ml/分で操作してもよい。回転式噴霧器は、約10,000ないし約30,000rpm、より好ましくは約15,000ないし約25,000rpm、最も好ましくは約20,000ないし約25,000rpmで操作し得る。様々なサイズの微粒子が噴霧乾燥によって得られること、また所望の粒径の微粒子を選択し得ることは、正しく理解されよう。
【0046】
噴霧乾燥機は、液状担体を急速に蒸発させるために充分に高い温度で操作されるが、ラクトースとニコチンの温度が、これらの化合物が分解し始める点まで上昇させないようにされる。従って、噴霧乾燥機は入口の温度を約120ないし約170℃とし、出口の温度を約70ないし約100℃として操作してもよい。
【0047】
薬物粒子は球形状であるか、または別の空力学的形状のものである。かかる微粒子はバルクの形態で保存しても凝集しない傾向がある。さらに、噴霧乾燥工程に際して、液状担体を充分に急速に蒸発させることで、薬物粒子が凹凸のある、または“小さな窪みのある”表面をもつものとして製造され得る。凹凸のある表面は該粒子が空中を通過するときに乱気流を発生し、その結果、空力学的揚力をもつ粒子を提供する。このことは使用者が吸入した空気中に微粒子が飛散するのを、また飛散継続を促進し、薬物粒子の、肺胞とより小さな気道に到達する能力を改善する。
【0048】
以下の実施例は、説明することのみを意図するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0049】
ニコチン3gおよびラクトース27gを水200gに加えた。この混合物を溶液が澄明となるまで(凡そ10分間)撹拌した。この混合物をビュッヒミニスプレードライヤー190にて、500ml/分の空気流速、入口温度165℃、出口温度87℃で噴霧乾燥した。ニコチンとラクトースの溶液を7ml/分の速度で噴霧器に供給した。結果を表1に示す。
【0050】
実験手順は表1に示す条件の各セットの下で繰り返した。ニコチン・ラクトース複合体産物中のニコチン含量の定量は、262nmの波長でUV分光光度法により実施した。粒径は当該技術分野で既知のレーザ回折法により確認した。
【0051】
ニコチン対ラクトースの比(w/w)が4:6である溶液中のニコチンの3%(w/v)の濃度は、完成品中、最高の濃度を生じた。空気流が750ml/分を超えると、結果的に湿った粉末を製造することになり、流動特性に有害であった。
【0052】
図12は完成品中のニコチン濃度を、実験1〜5の溶液中のニコチン濃度の関数として示したグラフである。「第1系列」は噴霧乾燥後の完成品中のニコチン濃度である。「第2系列」は噴霧乾燥前の溶液中のニコチン濃度である。溶液中のニコチン濃度が高い程、完成品中のニコチン濃度が常に高くなるということではないことが理解されよう。
【0053】
図13は完成品中のニコチン濃度を、実験6〜8の溶液中のニコチン対ラクトースの比の関数として示したグラフである。溶液中、ラクトースに対するニコチンの比の高いことが、必ずしも完成品中に高いニコチン濃度を生ずるものではないことが理解されよう。溶液中、ラクトースに対するニコチンの最高比は凡そ3:7であることが判明した。図13における「第1系列」は噴霧乾燥後の完成品中のニコチン濃度を示し、一方、「第2系列」は噴霧乾燥前の溶液中のラクトースに対するニコチンの比を示す。
【0054】
結果は、完成品中のニコチンの最高濃度が、溶液中凡そ3%(w/v)のニコチン濃度、および溶液中凡そ4:6のニコチン:ラクトース比で達成されたことを示す。
【0055】
【表1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ニコチン、非球状化医薬等級の糖、および液状担体を組み合わせて流動性混合物を製造する工程;および
b)前記流動性混合物を噴霧乾燥して噴霧乾燥微粒子を形成させる工程;
を含む、吸入に適するニコチン薬の製造方法。
【請求項2】
前記液状担体が水を含有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記微粒子が直径約0.1ないし5μmであり、吸入に際して前記ニコチンと糖が物理的に結合したままの状態であるように、噴霧乾燥により物理的に結合させたものである請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記流動性混合物は、ニコチンに対する非球状化糖の比が、重量部で約1:10ないし約10:1で変動する請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記流動性混合物は、ニコチンに対する非球状化糖の比が、重量部で約3:7ないし約3:2で変動する請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記流動性混合物は、約1ないし約10%(w/v)で変動する非球状化糖の濃度を有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記流動性混合物中の非球状化糖の前記濃度が、約2ないし約5%(w/v)で変動する請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記流動性混合物を噴霧乾燥により乾燥して、直径が約0.1ないし約5μmの微粒子を製造する請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記流動性混合物を噴霧乾燥する前に霧状とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
球形状微粒子を形成する条件で前記流動性混合物を乾燥する請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
小さな窪みのある表面を有し、直径が約0.5ないし約3μmである球形状微粒子を形成する条件で前記流動性混合物を乾燥する請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ニコチンがニコチン塩基を含んでなり、前記医薬等級の糖がラクトース、デキストロース、グルコース、マルトースまたはそれらの組み合わせからなる群より選択されるものである請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
小さな窪みのある表面を有する球形状微粒子を形成する条件で前記流動性混合物を乾燥する請求項1に記載の製造方法。
【請求項14】
a)基本的に、ニコチン、非球状化医薬等級の糖、および液状担体からなる流動性混合物を調製する工程;
b)ヒトの肺胞と下部気道への送達に適し、エアロゾル化して吸入した場合に、タバコの煙に類似しているニコチン薬の微粒子を製造する条件で複合体物質を製造するために前記流動性混合物を噴霧乾燥する工程;および
c)肺への薬物送達に適する吸入器とともに使用する前記複合体物質を容器に梱包する工程;
を含む、タバコ代償療法または離脱療法を実施する方法。
【請求項15】
前記液状担体が水を含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記液状担体が基本的に水からなる請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記流動性混合物は、ニコチンに対する非球状化糖の比が、重量部で約1:10ないし約10:1で変動する請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記流動性混合物は、ニコチンに対する非球状化糖の比が、重量部で約3:7ないし約3:2で変動する請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記流動性混合物は、約1ないし約10%(w/v)で変動する非球状化糖の濃度を有する請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記流動性混合物中の非球状化糖の前記濃度が、約2ないし約5%(w/v)で変動する請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記流動性混合物を噴霧乾燥により乾燥して、直径が約0.1ないし約5μmの微粒子を製造する請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記流動性混合物を噴霧乾燥する前に霧状とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
球形状微粒子を形成する条件で前記流動性混合物を乾燥する請求項14に記載の方法。
【請求項24】
小さな窪みのある表面を有し、直径が約0.5ないし約3μmである球形状微粒子を形成する条件で前記流動性混合物を乾燥する請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記ニコチンがニコチン塩基を含み、前記医薬等級の糖がラクトース、デキストロース、グルコース、マルトースまたはそれらの組み合わせからなる群より選択されるものである請求項14に記載の方法。
【請求項26】
前記医薬等級の糖がラクトース、デキストロース、グルコース、マルトースまたはそれらの組み合わせからなる群より選択されるものである請求項14に記載の方法。
【請求項27】
直径が約0.1ないし約5μmの微粒子を製造するように噴霧乾燥を操作する請求項14に記載の方法。
【請求項1】
a)ニコチン、非球状化医薬等級の糖、および液状担体を組み合わせて流動性混合物を製造する工程;および
b)前記流動性混合物を噴霧乾燥して噴霧乾燥微粒子を形成させる工程;
を含む、吸入に適するニコチン薬の製造方法。
【請求項2】
前記液状担体が水を含有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記微粒子が直径約0.1ないし5μmであり、吸入に際して前記ニコチンと糖が物理的に結合したままの状態であるように、噴霧乾燥により物理的に結合させたものである請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記流動性混合物は、ニコチンに対する非球状化糖の比が、重量部で約1:10ないし約10:1で変動する請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記流動性混合物は、ニコチンに対する非球状化糖の比が、重量部で約3:7ないし約3:2で変動する請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記流動性混合物は、約1ないし約10%(w/v)で変動する非球状化糖の濃度を有する請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記流動性混合物中の非球状化糖の前記濃度が、約2ないし約5%(w/v)で変動する請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記流動性混合物を噴霧乾燥により乾燥して、直径が約0.1ないし約5μmの微粒子を製造する請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記流動性混合物を噴霧乾燥する前に霧状とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
球形状微粒子を形成する条件で前記流動性混合物を乾燥する請求項1に記載の製造方法。
【請求項11】
小さな窪みのある表面を有し、直径が約0.5ないし約3μmである球形状微粒子を形成する条件で前記流動性混合物を乾燥する請求項1に記載の製造方法。
【請求項12】
前記ニコチンがニコチン塩基を含んでなり、前記医薬等級の糖がラクトース、デキストロース、グルコース、マルトースまたはそれらの組み合わせからなる群より選択されるものである請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
小さな窪みのある表面を有する球形状微粒子を形成する条件で前記流動性混合物を乾燥する請求項1に記載の製造方法。
【請求項14】
a)基本的に、ニコチン、非球状化医薬等級の糖、および液状担体からなる流動性混合物を調製する工程;
b)ヒトの肺胞と下部気道への送達に適し、エアロゾル化して吸入した場合に、タバコの煙に類似しているニコチン薬の微粒子を製造する条件で複合体物質を製造するために前記流動性混合物を噴霧乾燥する工程;および
c)肺への薬物送達に適する吸入器とともに使用する前記複合体物質を容器に梱包する工程;
を含む、タバコ代償療法または離脱療法を実施する方法。
【請求項15】
前記液状担体が水を含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記液状担体が基本的に水からなる請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記流動性混合物は、ニコチンに対する非球状化糖の比が、重量部で約1:10ないし約10:1で変動する請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記流動性混合物は、ニコチンに対する非球状化糖の比が、重量部で約3:7ないし約3:2で変動する請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記流動性混合物は、約1ないし約10%(w/v)で変動する非球状化糖の濃度を有する請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記流動性混合物中の非球状化糖の前記濃度が、約2ないし約5%(w/v)で変動する請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記流動性混合物を噴霧乾燥により乾燥して、直径が約0.1ないし約5μmの微粒子を製造する請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記流動性混合物を噴霧乾燥する前に霧状とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
球形状微粒子を形成する条件で前記流動性混合物を乾燥する請求項14に記載の方法。
【請求項24】
小さな窪みのある表面を有し、直径が約0.5ないし約3μmである球形状微粒子を形成する条件で前記流動性混合物を乾燥する請求項14に記載の方法。
【請求項25】
前記ニコチンがニコチン塩基を含み、前記医薬等級の糖がラクトース、デキストロース、グルコース、マルトースまたはそれらの組み合わせからなる群より選択されるものである請求項14に記載の方法。
【請求項26】
前記医薬等級の糖がラクトース、デキストロース、グルコース、マルトースまたはそれらの組み合わせからなる群より選択されるものである請求項14に記載の方法。
【請求項27】
直径が約0.1ないし約5μmの微粒子を製造するように噴霧乾燥を操作する請求項14に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−82660(P2013−82660A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−246087(P2011−246087)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(502294116)ニコ・パフ・コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246087(P2011−246087)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(502294116)ニコ・パフ・コーポレーション (1)
【Fターム(参考)】
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