説明

ニトラミン発射薬

【課題】 高圧領域まで圧力指数変動の少ないニトラミン含有発射薬および該ニトラミン含有発射薬を製造する方法を提供する。
【解決手段】 ニトラミン化合物、ニトロセルロースおよび可塑剤を含有する発射薬であって、ニトラミン化合物を46重量%以上含有し、発射薬原材料を捏和、または混和する前のニトラミン化合物全体の99%が33ミクロン(μm)以下、平均粒径が9ミクロン(μm)以下であることを特徴とするニトラミン発射薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトラミン化合物を含有する発射薬に関する。本発明は更に圧力指数変動を抑制したニトラミン発射薬に関する。
【背景技術】
【0002】
高エネルギー化、および/または高安全化を図るため、ニトラミン化合物を含有させた発射薬が研究されている。ニトラミン化合物は、一般的に火薬エネルギーが高く、熱的安定性に優れるといった利点を有する。しかし、その一方、ニトラミン化合物を含有した発射薬の燃焼特性については、高圧になるに従い、圧力指数が高くなるという事が知られている。
ここでいう圧力指数とは、
r=aP (rは燃焼速度、aは係数、Pは圧力、nは圧力指数)
で示される式中のnの値である。
【0003】
一般に高圧力領域で、圧力指数が高く変動してしまうと、射撃する場合に砲内圧力が急激に高くなり、弾丸を安定した初速で飛翔させることが難しくなる。また、砲内圧力が急激に高くなった場合、発射薬が燃焼途中で壊れ、更に砲内圧力が高くなり、砲にダメージを与える恐れもある。
【0004】
特許文献1には、発射薬の構成要素である可塑化されたバインダーの燃焼速度をニトラミン化合物の燃焼速度に合わせることにより、圧力指数の変動をなくす方法について記載されている。しかし、ニトラミン化合物の燃焼速度に合わせたバインダーを選定するのは難しく、また、そのようなバインダーを選定すると、発射薬のエネルギー範囲を任意に設計することは難しくなる。
特許文献2には、シクロトリメチレントリニトラミン(RDX)、および/又はシクロテトラメチレンテトラニトラミン(HMX)の重量平均粒子径を10ミクロン(μm)以下にし、ニトログアニジンを組成物中50〜70重量%含む発射薬は、圧力指数を低くできることについて記載されている。しかし、圧力指数の変動を抑制する方法については全く記載されていない。
【0005】
特許文献3には、約5ミクロン(μm)以下の重量平均粒径のシクロトリメチレントリニトラミン(RDX)、シクロテトラメチレンテトラニトラミン(HMX)、テトラメチレンテトラニトラミン(HNIW)、およびそれらの混合物を用いた発射薬の製造方法について記載されている。しかし、ニトラミン化合物の粒径と燃焼速度の関係や、圧力指数変動を抑制する方法については全く記載されていない。
特許文献4には、発射薬に用いるシクロトリメチレントリニトラミン(RDX)、シクロテトラメチレンテトラニトラミン(HMX)の平均粒径として1〜10ミクロン(μm)が好ましいと記載されている。しかし、圧力指数変動を抑制する方法については全く記載されていない。
【0006】
非特許文献1には、粒径5ミクロン(μm)と20ミクロン(μm)の2種類のシクロトリメチレントリニトラミン(RDX)を用いることで、燃焼挙動を改善できると記載されている。しかし、圧力指数変動を抑制する方法については全く記載されていない。
非特許文献2には、シクロトリメチレントリニトラミンの粒径と燃焼挙動の関係について、粒径3ミクロン(μm)、4.6ミクロン(μm)、10ミクロン(μm)、21ミクロン(μm)のシクロトリメチレントリニトラミンをそれぞれ用いた発射薬で検討した結果について記載されている。粒径が小さくなるに従い、圧力指数が低くなる傾向があることを記載している。しかし、圧力指数変動を抑制する方法については全く記載されていない。
【0007】
非特許文献3には、粒径2〜3ミクロン(μm)の細かなシクロトリメチレントリニトラミンを用いた発射薬は圧力指数変動をなくすことができると記載されている。しかし、シクロトリメチレントリニトラミンの粒径を2〜3ミクロン(μm)まで細かくすることは難しく、実用的ではない。また、発射薬中のシクロトリメチレントリニトラミンの粒径をどうコントロールすべきかについては全く記載がない。
【0008】
【特許文献1】米国特許第4092188号公報
【特許文献2】特許第2845676号公報
【特許文献3】特表平9−5068533号公報
【特許文献4】特開2000−272989号公報
【非特許文献1】Defence Science Journal,Vol48,No3,July1998,pp317−321
【非特許文献2】Defence Science Journal,Vol46,No2,April1996,pp83−86
【非特許文献3】Twnty−Second Symposium(International)on Combustion/The Combustion Institute,1998/pp 1835−1842
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、高圧領域まで圧力指数変動の少ないニトラミン発射薬を提供することを目的とする。また、その様なニトラミン発射薬を製造する方法を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために、ニトラミン発射薬の製造方法、および発射薬中のニトラミン化合物の粒径、および発射薬の密度と燃焼特性について鋭意研究した結果、発射薬中のニトラミン化合物の含有量、粒径分布を制御することにより、前記目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
1)ニトラミン化合物、ニトロセルロースおよび可塑剤を含有する発射薬であって、ニトラミン化合物を46重量パーセント以上含有し、発射薬原材料を捏和、または混和する前のニトラミン化合物全体の99%が粒径33ミクロン(μm)以下、平均粒径が9ミクロン(μm)以下であることを特徴とするニトラミン発射薬。
2)発射薬中のニトラミン化合物全体の99%が粒径33ミクロン(μm)以下、平均粒径が9ミクロン(μm)以下であることを特徴とする1)記載のニトラミン発射薬。
3)発射薬の密度が1.56×10kg/m以上であることを特徴とする2)記載のニトラミン発射薬。
4)粒径4ミクロン(μm)以下のニトラミン化合物を発射薬中のニトラミン化合物全体の16%以上含むことを特徴とする1)〜3)のいずれかに記載のニトラミン発射薬。
【0012】
5)ニトラミン化合物が、シクロトリメチレントリニトラミン(RDX)、シクロテトラメチレンテトラニトラミン(HMX)、テトラメチレンテトラニトラミン(HNIW)のいずれか、または2種以上の混合物であることを特徴とする1)〜4)のいずれかに記載のニトラミン発射薬。
6)ニトラミン化合物を60重量%以上含有し、密度が1.64×10kg/m以上であることを特徴とする1)〜5)のいずれかに記載のニトラミン発射薬。
7)発射薬組成中のニトラミン化合物が46〜80重量%、ニトロセルロースが12〜40重量%、可塑剤が5〜25重量%であることを特徴とする1)〜6)のいずれかに記載のニトラミン発射薬。
8)発射薬組成中のニトラミン化合物が46〜65重量%、ニトロセルロースが25〜40重量%、可塑剤が7〜25重量%であることを特徴とする1)〜6)のいずれかに記載のニトラミン発射薬。
【0013】
9)可塑剤として不活性可塑剤および/またはニトログリセリンを用いたことを特徴とする1〜8)のいずれかに記載のニトラミン発射薬。
10)ニトラミン化合物を少なくともニトロセルロースおよび/又は可塑剤と混合して粉状にしてから所望の発射薬形状に成型することを特徴とする1)〜9)のいずれかに記載のニトラミン発射薬の製造方法。
11)粉状のニトラミン化合物の被覆率が2以上であることを特徴とする10)に記載のニトラミン発射薬の製造方法。
12)粉状のニトラミン化合物の被覆率が3以上であることを特徴とする10)に記載のニトラミン発射薬の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の発射薬は、幅広い圧力領域において、圧力指数の変動を抑制できる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について、特にその好ましい態様を中心に、詳細に説明する。
本発明にいうニトラミン発射薬とは、高エネルギー化、高安全化等の高性能化を目指すために発射薬組成中にニトラミン化合物を含む発射薬のことである。ニトラミン化合物含有発射薬の主要原料は、ニトラミン化合物、ニトロセルロース、可塑剤である。その他、必要に応じてニトロセルロース以外のバインダー、ニトログアニジンなどのエネルギー物質、安定剤や、消炎剤、燃焼触媒、増粘剤、表面こう化剤、光沢剤などの添加剤を単独、または2種以上の混合物として含む組成であっても良い。
【0016】
ニトラミン化合物としては例えば、シクロトリメチレントリニトラミン(RDX)、シクロテトラメチレンテトラニトラミン(HMX)、テトラメチレンテトラニトラミン(HNIW)、ペンタエリスリトールテトラニトラミン(PETN)、トリアミノグアニジンナイトレートのいずれか、または2種以上の混合物を用いることができる。ニトロセルロース以外のバインダーとしてはニトラミン化合物とニトラミン化合物以外の原料を発射薬形状に形作れるものであればどの様なものでも良い。例えば、アセチル化ニトロセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロース誘導体や、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリブタジエン、ポリウレタンなどの汎用ポリマー、更にはポリアジドメチルオキセタン(AMMO)、ポリビスアジドメチルオキセタン(BAMO)、ポリニトラトメチルオキセタン(NIMO)、およびそれらの共重合体などの高エネルギーポリマーを用いることができる。これらのセルロース誘導体、汎用ポリマー、高エネルギーポリマーは単独で用いても、2種以上の混合物として用いても良い。
【0017】
また、可塑剤としては、発射薬を所望の機械物性にできるものであればどのようなものを用いても良い。例えば、ニトログリセリン、ブタントリオールトリナイトレート、トリメチロールエタントリナイトレート、トリメチロールプロパントリナイトレート、ジエチレングリコールジナイトレート、トリエチレングリコールジナイトレート、ブタンジオールジナイトレート、メチルニトラトエチルニトラミンやエチルニトラトエチルニトラミンやブチルニトラトエチルニトラミンなどのニトラトエチルニトラミン類、ビスー2,2−ジニトロプロピルアセタールとビスー2,2−ジニトロプロピルホルマールの混合物(BDNPA/F)、低分子のアジドおよび/またはニトロ基含有ポリマーなどのエネルギー可塑剤が挙げられる。可塑剤としての別の例としては、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレートなどのフタル酸エステル類、アセチルクエン酸トリエチル(ATEC)、アセチルクエン酸トリブチル(ATBC)、クエン酸トリブチル(TBC)などのオキシ酸エステル類、リン酸トリブチルなどのリン酸エステル、トリアセチンなどの不活性可塑剤が挙げられる。
上記に挙げた可塑剤を単独で用いても良く、また2種以上の混合物として用いても良い。
【0018】
発射薬組成中のニトラミン化合物は46〜80重量%、ニトロセルロースは12〜40重量%、可塑剤は5〜20重量%が好ましい。更に好ましくは、ニトラミン化合物は46〜65重量%、バインダ−は25〜40重量%、可塑剤は7〜15重量%が好ましい。その他の成分は必要に応じて任意に添加できる。発射薬組成中のニトラミン化合物が45重量%以下だとニトラミン化合物の粒度分布の圧力指数への影響が小さくなる場合がある。また、80重量%を超えるとバインダーが少なくなるので80重量%以下が好ましい。
【0019】
発射薬原材料を捏和、または混和する前、及び/または発射薬中のニトラミン化合物の粒径分布はニトラミン化合物全体の99%が33ミクロン(μm)以下であり、平均粒径が9ミクロン(μm)以下であることが好ましい。更に好ましくは全体の99%が32ミクロン(μm)以下であり、平均粒径が8ミクロン(μm)以下であることである。33ミクロン(μm)より大きな粒径のものが全体の1%超あり、平均粒径が9ミクロン(μm)より大きくなると、高圧下での圧力指数の変動が大きくなる恐れがある。また、粒径4ミクロン(μm)以下の細かな粒径のものが多いほど、圧力指数の変動が低く抑えられる。粒径4ミクロン(μm)以下のものを全体の16%以上含むことが好ましい。更には粒径3ミクロン(μm)以下のものを16%以上含むことが好ましい。
【0020】
ここでいう粒径分布は体積基準の粒度分布である。発射薬原材料を捏和、または混和する前のニトラミン化合物の粒度分布は、例えばニトラミン化合物を水に分散させ、レーザー回折式粒度分布測定装置にて測定して求めることができる。
発射薬原材料を捏和、または混和する前の粉、または発射薬中のニトラミン化合物の粒径は、ニトラミン化合物は溶かさず、ニトラミン化合物以外の発射薬原料をニトラミン化合物の粒度分布測定に影響が少ない程度の少なくとも97重量%以上まで溶解させる溶媒を用いて除去した後、レーザー回折式粒度分布測定装置にて測定して求めることができる。溶媒としては、ニトラミン化合物は溶かさず、ニトラミン化合物以外の発射薬原料を溶解除去できる溶媒であれば、どのような溶媒を用いても良い。
【0021】
例えばアセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフランのうちの1種以上の溶媒とエタノール、またはメタノールを混合した溶媒を用いることができる。粉、または発射薬中のニトラミン化合物ができるだけ溶解しないようあらかじめニトラミン化合物を溶解させた飽和溶液を溶媒として用いる方法は好ましい方法である。この溶媒に、ニトラミン化合物以外の発射薬原料をニトラミン化合物の粒度分布測定に影響が少ない程度の少なくとも97重量%以上まで溶解させた後、ろ過して、固形物を水、または水とメタノール混合液中に分散させ、レーザー回折式粒度分布測定装置にて測定することができる。前記溶媒の種類、量を選定するため、ろ過した固形分、および/またはろ液をHPLC分析、またはGPC分析し、ニトラミン化合物以外の発射薬原料がうまく除去できたかどうか確認することは好ましい方法である。
【0022】
上記いずれの場合にも、ニトラミン化合物が均質に液中に分散するよう、攪拌時間、攪拌速度を設定し、測定は2回以上実施し、測定データが安定していることを確認することが好ましい。測定前に、分散液に超音波をかけ、均質に分散させることも、ニトラミン化合物を均質に液中に分散させるよい方法である。
発射薬の密度は1.56×10kg/m以上であることが好ましい。更に好ましくは1.58×10kg/m以上である。密度が1.56×10kg/mよりも低いと、圧力指数変動が大きくなる恐れがある。ニトラミン化合物を60重量%以上含有する組成は、密度を1.60×10kg/m以上にすることが更に好ましい。ここでいう密度とは発射薬の重量と体積を測定し、求めた値のことである。
【0023】
発射薬原材料を捏和、または混和する前、及び/または発射薬中のニトラミン化合物の粒径、および発射薬の密度を前記範囲に制御する方法としては、公知の溶剤圧伸製造方法、無溶剤圧伸製造方法で所望の発射薬形状に成型する工程の捏和、または混和工程の前に、ニトラミン化合物を少なくともニトロセルロース及び/又は可塑剤と混合して粉状にすることが最も好ましい方法である。粉中には、必要に応じてニトラミン化合物以外のエネルギー物質、安定剤や、消炎剤、燃焼触媒、増粘剤、表面こう化剤、光沢剤などの添加剤を含ませても良い。
【0024】
粉状にする方法としては特許第2802388号、特開2002−179490号、特開2002−179491号、WO99/18050、米国特許4770728、特開昭61−37239号に記載の方法が挙げられる。粉の表面は、ニトラミン被覆率を2以上にすることが好ましい。更に好ましくは3以上にすることである。被覆率が2よりも小さいと、公知の製造方法で製造中にニトラミン化合物同士が凝集し、粒径が大きくなり、前記粒径範囲から外れる恐れがある。被覆率は(RDX以外の発射薬原料由来の炭素濃度)/(RDXの炭素濃度)によって求められる値のことである。特開2002−179490に記載の方法により求めることができる。
【0025】
X線光電子分光分析装置にて、試料にX線を照射し、表面から放出された光電子スペクトルを測定することにより、ピーク位置から試料表面に存在する原子とその化学状態を、スペクトルの面積強度から表面原子濃度を測定する。本測定では、粉の各成分由来の炭素、酸素、窒素の光電子スペクトルを測定し、各成分のうち、どの成分が粉表面に多く存在するかを測定し、被覆率を求める。
【実施例】
【0026】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。
(実施例1)
RDXが76重量%、ニトロセルロース(窒素量12.6%)23.5重量%、エチルセントラリット(安定剤)0.5重量%よりなる粉を日本特許第2802388号に記載の方法で製造した。溶解槽内でRDX、ニトロセルロース、エチルセントラリットをメチルエチルケトン、水混合液中で攪拌した。その後、60〜70℃まで加温し、RDX、ニトロセルロース、エチルセントラリットを完全に溶解し、その溶液をエジェクターに供給した。同時に水蒸気もエジェクターに供給し、サイクロンで溶媒から分離し、所望の粉を得た。RDXの被覆率は3.4であった。この粉中のRDXの粒径分布をレーザー回折式粒度分布測定装置により求めたところ、平均粒径は5.4ミクロン(μm)で、全体の99%が19ミクロン(μm)以下であった。
【0027】
RDXの粒径は以下のようにして測定した。
あらかじめRDXを飽和させた酢酸エチル/エタノール混合溶媒を準備し、粉をその溶媒中に分散させ、RDX以外の発射薬成分を97重量%以上溶解させた。
その液をろ過し、固形分を2〜3度RDXを飽和させた酢酸エチル/エタノール混合溶媒で洗浄した。その後、水/メタノール混合液中に固形分を分散させた。
【0028】
その分散液を下記の測定条件に従って粒度分布測定を行った。
装置:JEOL製 「HELOS & CUVETTE」(商標)
測定原理 レーザー回折法(ファンフォーファー回折原理)
光源 He−Neレーザー(632.8nm/5mW)
検出器 31素子リング状マルチディレクター
分散器 静置式湿式分散ユニット
この粉と、ニトログリセリンとニトロセルロース(窒素量12.6%)の混合物、ジブチルフタレート、エチルセントラリット、硫酸カリウム(消炎剤)を溶剤とともに捏和機に仕込み均質になるまで混合、捏和し、それ以降は公知の溶剤圧伸方法を用いて単孔管状発射薬を製造した。発射薬組成はRDX50重量%、ニトロセルロース27.5重量%、ニトログリセリン11重量%、ジブチルフタレート9重量%、エチルセントラリット(安定剤)1.5重量%、硫酸カリウム1重量%である。
【0029】
この発射薬中のRDX粒径分布を前記の方法と同様にレーザー回折式粒度分布測定装置により求めたところ、平均粒径は7.7ミクロン(μm)で、全体の99%が27ミクロン(μm)以下であった。また、全体の16%が2.6ミクロン(μm)以下であった。密度は1.60×10kg/mであった。
この発射薬を、通常発射薬を評価する密閉爆発試験器を用いて圧力指数を求めた。容積7.00×10−4と2.49×10−4の2種類の密閉爆発試験器に、発射薬をそれぞれ装填密度0.06×10kg/m、0.20×10kg/mで装填し、発射薬の燃焼により発生する圧力よりそれぞれ10〜50MPa、20〜200MPaの圧力領域の圧力指数を求めた。20〜200MPaの圧力領域で求めた圧力指数と10〜50MPaの圧力領域で求めた圧力指数の差は0.19であった。
【0030】
(実施例2)
発射薬組成をRDX46.5重量%、ニトロセルロース31.5重量%、ニトログリセリン9重量%、ジブチルフタレート10.5重量%、エチルセントラリット(安定剤)1.5重量%、硫酸カリウム1重量%にした以外は実施例1と同様にして発射薬を製造した。
この発射薬中のRDX粒径分布を実施例1と同様にしてレーザー回折式粒度分布測定装置により求めたところ、平均粒径は7.8ミクロン(μm)で、全体の99%が28ミクロン(μm)以下であった。また、全体の16%が3.0ミクロン(μm)以下であった。密度は1.59×10kg/mであった。
実施例1と同様にして圧力指数を求めたところ、20〜200MPaの圧力領域で求めた圧力指数と10〜50MPaの圧力領域で求めた圧力指数の差は0.20であった。
【0031】
(実施例3)
RDXが76重量%、ニトロセルロース(窒素量12.6%)23.5重量%、エチルセントラリット(安定剤)0.5重量%よりなる粉を特開2002−179490号に記載の方法で製造した。水分を含有するRDX、ニトロセルロース、エチルセントラリットをメチルエチルケトン中で攪拌し、60〜70℃に加温して完全に溶解させた。この溶液を60〜70℃に保ったまま、同軸型ネブライザー(噴霧口径0.1mm)を用いてチェンバー(長さ200mm)中に噴霧し、生成した粉を攪拌した水中で回収した。この粉のRDXの被覆率は13であった。この粉中のRDXの粒径分布を実施例1と同様にしてレーザー回折式粒度分布測定装置により求めたところ、平均粒径は5.0ミクロン(μm)で、全体の99%が20ミクロン(μm)以下であった。
【0032】
この粉と、ニトロセルロース(窒素量12.6%)、ジブチルフタレート、エチルセントラリット、硫酸カリウム(消炎剤)を溶剤とともに捏和機に仕込み均質になるまで混合、捏和し、それ以降は公知の溶剤圧伸方法を用いて単孔管状発射薬を製造した。発射薬組成はRDX63.5重量%、ニトロセルロース26重量%、ジブチルフタレート8重量%、エチルセントラリット(安定剤)1.5重量%、硫酸カリウム1重量%であった。
この発射薬中のRDX粒径分布を実施例1と同様にしてレーザー回折式粒度分布測定装置により求めたところ、平均粒径は5.5ミクロン(μm)で、全体の99%が31ミクロン(μm)以下であった。また、全体の16%が2.0ミクロン(μm)以下であった。密度は1.62×10kg/mであった。
実施例1と同様にして圧力指数を求めたところ、20〜200MPaの圧力領域で求めた圧力指数と10〜50MPaの圧力領域で求めた圧力指数の差は0.19であった。
【0033】
(比較例1)
実施例1と同じ組成の発射薬を、粉状にする工程を省き、捏和機に直接平均粒径7ミクロン(μm)で、全体の99%が37ミクロン(μm)以下のRDX、ニトロセルロースとニトログリセリンの混合物、ニトロセルロース、ジブチルフタレート、エチルセントラリット(安定剤)、硫酸カリウムを入れ、混合、捏和して実施例1と同様の形状に発射薬を製造した。
【0034】
捏和機に入れるRDXの粒径は以下のようにして測定した。
界面活性剤(分散剤)が約1%入った水を1〜3ml準備し、これに、RDX約0.03gを加え、1〜5時間超音波により、RDXを水中に分散させた。その分散液を実施例1と同様の測定条件に従って粒度分布測定を行った。
この発射薬中のRDX粒径分布を実施例1と同様にしてレーザー回折式粒度分布測定装置により求めたところ、平均粒径は10.3(μm)ミクロンで、全体の99%が34ミクロン(μm)以下であった。また、全体の15%が4.0ミクロン以下であった。密度は1.60×10kg/mであった。
この発射薬を、実施例1と同様にして圧力指数を求めたところ、20〜200MPaの圧力領域で求めた圧力指数と10〜50MPaの圧力領域で求めた圧力指数の差は0.25であった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、ニトラミン化合物含有発射薬の分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトラミン化合物、ニトロセルロースおよび可塑剤を含有する発射薬であって、ニトラミン化合物を46重量パーセント以上含有し、発射薬原材料を捏和、または混和する前のニトラミン化合物全体の99%が粒径33ミクロン(μm)以下、平均粒径が9ミクロン(μm)以下であることを特徴とするニトラミン発射薬。
【請求項2】
発射薬中のニトラミン化合物全体の99%が粒径33ミクロン(μm)以下、平均粒径が9ミクロン(μm)以下であることを特徴とする請求項1記載のニトラミン発射薬。
【請求項3】
発射薬の密度が1.56×10kg/m以上であることを特徴とする請求項2記載のニトラミン発射薬。
【請求項4】
粒径4ミクロン(μm)以下のニトラミン化合物を発射薬中のニトラミン化合物全体の16%以上含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のニトラミン発射薬。
【請求項5】
ニトラミン化合物が、シクロトリメチレントリニトラミン(RDX)、シクロテトラメチレンテトラニトラミン(HMX)、テトラメチレンテトラニトラミン(HNIW)のいずれか、または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のニトラミン発射薬。
【請求項6】
ニトラミン化合物を60重量%以上含有し、密度が1.64×10kg/m以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のニトラミン発射薬。
【請求項7】
発射薬組成中のニトラミン化合物が46〜80重量%、ニトロセルロースが12〜40重量%、可塑剤が5〜25重量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のニトラミン発射薬。
【請求項8】
発射薬組成中のニトラミン化合物が46〜65重量%、ニトロセルロースが25〜40重量%、可塑剤が7〜25重量%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のニトラミン発射薬。
【請求項9】
可塑剤として不活性可塑剤および/またはニトログリセリンを用いたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のニトラミン発射薬。
【請求項10】
ニトラミン化合物を少なくともニトロセルロースおよび/又は可塑剤と混合して粉状にしてから所望の発射薬形状に成型することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のニトラミン発射薬の製造方法。
【請求項11】
粉状のニトラミン化合物の被覆率が2以上であることを特徴とする請求項10に記載のニトラミン発射薬の製造方法。
【請求項12】
粉状のニトラミン化合物の被覆率が3以上であることを特徴とする請求項10に記載のニトラミン発射薬の製造方法。

【公開番号】特開2006−151791(P2006−151791A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229976(P2005−229976)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)