説明

ネガ型フォトレジスト用ポリマー

【課題】ハーフトーン露光技術に適した硬化特性を有するネガ型フォトレジスト用ポリマーを提供すること。
【解決手段】不飽和カルボン酸ユニットと、エポキシ基含有不飽和化合物ユニットと、N−置換マレイミドユニットと、オレフィン系不飽和化合物ユニットと、末端ビニル基とを有し、不飽和カルボン酸ユニットの含有率が3〜40mol%であり、エポキシ基含有不飽和化合物ユニットの含有率が3〜20mol%であり、N−置換マレイミドユニットの含有率が3〜20mol%であり、オレフィン系不飽和化合物ユニットの含有率が30〜80mol%であるネガ型フォトレジスト用ポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハーフトーン露光技術に適したネガ型フォトレジスト用ポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子の有機絶縁膜、カラーフィルター保護膜、ブラックマトリクス、フォトスペーサー、UVオーバーコートなどに用いられるパターンを形成するため、フラットパネルディスプレイ(以下、「FPD」という)製造用レジストが使われている。例えば、特許文献1に記載されるように、FPD製造用フォトレジストとして、ハーフトーン露光用のポジ型フォトレジストが知られている。しかし、ポジ型フォトレジストでは、感光剤として使用されているナフトキノンジアジドスルホン酸がスルホン酸を発生し、金属配線部位を腐食するという問題が生じる。
【0003】
一方、ネガ型フォトレジストではこのような問題は生じないが、ハーフトーン露光技術に対する適用性の高い樹脂は少ない。現在、液晶表示素子の有機絶縁膜などのパターン形成に用いられているネガ型フォトレジストは、バインダー樹脂としてアクリル系感光性樹脂を含む。アクリル系感光性樹脂は、220℃以下の工程においては可視光領域で90%以上の高い透過率を示す一方で、220℃を超える高温工程においては熱安定性に乏しい。熱安定性を改善するため、例えば、特許文献2に記載されているようにマレイミド類を導入する手法が知られている。しかし、この手法を用いた場合、アルカリ溶解性およびネガ型でのハーフトーン露光特性が劣化する。
【0004】
そこで、平坦性、透過性、アルカリ溶解性、耐熱性、耐化学性、パターン安定性などの基本的な物性に加え、さらに、ハーフトーン露光技術に適した硬化特性を有するネガ型フォトレジストの開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−49720号公報
【特許文献2】特開2007−279728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、ハーフトーン露光技術に適した光および熱硬化性を有するネガ型フォトレジスト用ポリマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、不飽和カルボン酸ユニットと、エポキシ基含有不飽和化合物ユニットと、N−置換マレイミドユニットと、オレフィン系不飽和化合物ユニットと、末端ビニル基とを有することを特徴とするネガ型フォトレジスト用ポリマーが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、ハーフトーン露光技術に適した光および熱硬化性を有するネガ型フォトレジスト用ポリマーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態に係るネガ型フォトレジスト用ポリマーの残膜率と露光量との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の種々の実施形態について説明する。
実施形態に係るネガ型フォトレジスト用ポリマーは、(A1)不飽和カルボン酸ユニットと、(A2)エポキシ基含有不飽和化合物ユニットと、(A3)N−置換マレイミドユニットと、(A4)オレフィン系不飽和化合物ユニットと、末端ビニル基とを有する。このネガ型フォトレジスト用ポリマーの一般式を下記に示す。
【化1】

【0011】
実施形態に係るネガ型フォトレジスト用ポリマーは、光および/または熱によってエポキシ基由来の架橋および末端ビニル基由来の架橋により硬化する。未硬化部分はアルカリ現像液で溶解されるため、パターン形成が可能である。当該ネガ型フォトレジストは、例えば、FPD用基板の製造に用いられる。
【0012】
以下、実施形態に係るネガ型フォトレジスト用ポリマーに含まれる各成分について説明する。
【0013】
(A1)不飽和カルボン酸ユニット
不飽和カルボン酸ユニットは、ラジカル重合性を有する不飽和カルボン酸および/または不飽和カルボン酸無水物をラジカル重合させたユニットである。
【0014】
不飽和カルボン酸としては、例えばモノカルボン酸、ジカルボン酸、多価カルボン酸のモノ[(メタ)アクリロイロキシアルキル]エステル、両末端にカルボキシル基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレート、カルボキシル基を有する多環式化合物などを挙げることができる。
【0015】
モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸;ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸;多価カルボン酸のモノ[(メタ)アクリロイロキシアルキル]エステルとしては、例えば、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、フタル酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル];両末端にカルボキシル基と水酸基とを有するポリマーのモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート;カルボキシル基を有する多環式化合物としては、例えば、5−カルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−カルボキシ−6−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンが挙げられる。
【0016】
これらのうち、得られるポリマーのアルカリ水溶液に対する溶解性から、好ましくは、モノカルボン酸が用いられる。また、モノマーの共重合性および入手容易性から、特に好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸が用いられる。これらは、単独で、または組み合わせて用いられる。
【0017】
(A2)エポキシ基含有不飽和化合物ユニット
エポキシ基含有不飽和化合物ユニットは、ラジカル重合性を有するエポキシ基含有不飽和化合物をラジカル重合させたユニットである。エポキシ基含有不飽和化合物ユニットは、前記不飽和カルボン酸ユニットと反応して架橋するように作用する。このように、エポキシ基含有不飽和化合物ユニットはネガ型フォトレジスト用ポリマーに膜硬化性を付与し、残膜率に寄与する。
【0018】
エポキシ基含有不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロへキシルメタクリレートが挙げられる。これらのうち、共重合反応性および得られる塗膜の耐熱性、表面硬度を高める点から、メタクリル酸グリシジル、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロへキシルメタクリレートが好ましい。これらは、単独で、または組み合わせて用いられる。
【0019】
(A3)N−置換マレイミドユニット
N−置換マレイミドユニットは、N−置換マレイミドをラジカル重合させたユニットである。N−置換マレイミドユニットは、ネガ型フォトレジスト用ポリマーに耐熱性を付与する。
【0020】
N−置換マレイミドは、例えば、N−フェニルマレイミド、N−ヒドロキシフェニルマイレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−スクシンイミジル−3−マレイミドベンゾエート、N−スクシンイミジル−4−マレイミドブチレート、N−スクシンイミジル−6−マレイミドカプロエート、N−スクシンイミジル−3−マレイミドプロピオネート、N−(9−アクリジニル)マレイミドである。これらのうち、共重合反応性および入手の容易性から、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドが好ましく用いられる。これらは、単独で、または組み合わせて用いられる。
【0021】
(A4)オレフィン系不飽和化合物ユニット
オレフィン系不飽和化合物ユニットは、(A1)不飽和カルボン酸、(A2)エポキシ基含有不飽和化合物および(A4)N−置換マレイミド以外のラジカル重合性を有するオレフィン系不飽和化合物をラジカル重合させたユニットである。オレフィン系不飽和化合物は特に制限されないが、例えば、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸環状アルキルエステル、水酸基を有するメタアクリル酸エステル、アクリル酸環状アルキルエステル、メタクリル酸アリールエステル、アクリル酸アリールエステル、不飽和ジカルボン酸ジエステル、ビシクロ不飽和化合物、不飽和芳香族化合物、共役ジエンである。
【0022】
メタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、n−ステアリルメタクリレート;アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチルアクリレート、イソプロピルアクリレート;メタクリル酸環状アルキルエステルとしては、例えば、シクロヘキシルメタクリレート、2−メチルシクロヘキシルメタクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルメタクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシエチルメタクリレート、イソボロニルメタクリレートが挙げられる。
【0023】
水酸基を有するメタアクリル酸エステルとしては、例えば、ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、2−メタクリロキシエチルグリコサイド、4−ヒドロキシフェニルメタクリレート;アクリル酸環状アルキルエステルとしては、例えば、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、2−メチルシクロヘキシルアクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルアクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシエチルアクリレート、イソボロニルアクリレート;メタクリル酸アリールエステルとしては、例えば、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート;アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート;不飽和ジカルボン酸ジエステルとしては、例えば、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチルが挙げられる。
【0024】
ビシクロ不飽和化合物としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−エトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジエトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−tert−ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シクロヘキシルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(tert−ブトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(シクロヘキシルオキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−(2’−ヒドロキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(ヒドロキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5,6−ジ(2’−ヒドロキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシ−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシ−5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−ヒドロキシメチル−5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンが挙げられる。
【0025】
不飽和芳香族化合物としては、例えば、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メトキシスチレン;共役ジエンとしては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンが挙げられる。
【0026】
その他の不飽和化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニルが挙げられる。
【0027】
これらのうち、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸環状アルキルエステル、ビシクロ不飽和化合物、不飽和芳香族化合物、共役ジエンが、モノマーの共重合性から、好ましく用いられる。
【0028】
また、スチレン、メチルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、ジシクロペンタニルメタクレートが、得られるポリマーのアルカリ水溶液に対する溶解性の点から、特に好ましい。これらは、単独で、または組み合わせて用いられる。
【0029】
(A1)〜(A4)の各ユニットを形成するモノマーの仕込みモル比は以下のとおりであることが好ましい。
【0030】
不飽和カルボン酸は、ネガ型フォトレジスト用ポリマーに3乃至40mol%、好ましくは、5乃至30mol%、より好ましくは、10乃至30mol%含まれる。不飽和カルボン酸が3mol%未満の場合、現像の際、樹脂がアルカリ現像液によって溶解される速度(以下、「アルカリ溶解速度」という)が遅く、必要な残膜を得るのに時間がかかる。また、40mol%を超える場合、アルカリ溶解速度が速すぎて、樹脂が必要以上に溶解し、所望のレジストパターンを得ることができない。
【0031】
エポキシ基含有不飽和化合物は、ネガ型フォトレジスト用ポリマーに3乃至20mol%、好ましくは、5乃至20mol%、より好ましくは、5乃至10mol%含まれる。エポキシ基含有不飽和化合物が3mol%未満の場合、得られる硬化膜の強度が十分でなく、一方、20mol%を超える場合、ネガ型フォトレジスト用ポリマーの保存安定性が劣る。
【0032】
N−置換マレイミドは、ネガ型フォトレジスト用ポリマーに3乃至20mol%、好ましくは、5乃至20mol%、より好ましくは、5乃至10mol%含まれる。N−置換マレイミドが3mol%未満の場合、得られる硬化膜の耐熱性が不十分となる。また、20mol%を超えると、アルカリ現像時のスカム発生を抑制することができない。
【0033】
オレフィン系不飽和化合物は、ネガ型フォトレジスト用ポリマーに30乃至80mol%、好ましくは、30乃至70mol%、より好ましくは、40乃至60mol%含まれる。30mol%未満の場合、硬化膜の化学品耐性、耐熱性が低くなる。一方、80mol%を超える場合、所望のアルカリ溶解速度と硬化性能との両方を実現することが難しくなる。
【0034】
末端ビニル基
末端ビニル基は、分子量調整剤として例えばα−メチルスチレンダイマーを用いることにより導入することができる。末端ビニル基を導入すると少ない露光量でもネガ型フォトレジスト用ポリマーを硬化させることができるので、ネガ型フォトレジスト用ポリマーに良好なハーフトーン露光特性を与えるのに寄与する。
【0035】
α−メチルスチレンダイマーに由来する末端ビニル基含有ユニットは、ネガ型フォトレジスト用ポリマーに0.1乃至5mol%、好ましくは、0.5乃至3mol%、より好ましくは、1乃至2mol%含まれる。0.1mol%未満の場合、ハーフトーン露光幅が狭い。一方、5mol%を超える場合、ポリマーの溶解性が悪くなり、現像時に不溶分が発生する。
【0036】
α−スチレンダイマーをモノマー及び重合開始剤と同時に滴下反応させることにより付加する末端ビニル基は、ラジカル重合時に付加開裂型連鎖移動反応性官能基として作用しており、ポリマーの分子量制御とともにポリマー末端にビニル基型として維持される。そのため、生成されたネガ型フォトレジスト用ポリマーは光及び熱硬化性末端基を有する。
【0037】
本発明のネガ型フォトレジスト用ポリマーの製造方法は、(A1)〜(A4)の各ユニットを形成するモノマー、α−スチレンダイマー及び開始剤を有機溶剤に溶解し、この混合溶液を滴下しながら、重合反応を実施することを含む。
【0038】
開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシ−ベンゾエート等の有機過酸化物系重合開始剤;2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等の有機アゾ系重合開始剤等が挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、有機アゾ系重合開始剤を使用すると、モノマーのラジカル重合効率が高くなるため好ましい。
【0039】
本発明のネガ型フォトレジスト用ポリマーの製造方法において使用される溶剤としては、(A1)〜(A4)の各ユニットを形成するモノマー、α−メチルスチレンダイマー及び重合開始剤を均一に溶解させることができ、かつこれらと反応しないものが選択される。このような溶剤としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類;テトラヒドロフランなどのエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどのケトン類;2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類が挙げられる。
【0040】
さらに、これらとともに、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルホルムアニリド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、ベンジルエチルエーテル、ジヘキシルエーテル、アセトニルアセトン、イソホロン、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、フェニルセロソルブアセテートなどの高沸点溶剤を用いることもできる。
【0041】
これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
これらの溶剤の中で、溶解性、各成分との反応性などから、プロピレンレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
【0043】
有機溶剤は、上記モノマー、α−メチルスチレンダイマー及び重合開始剤の仕込み量の合計100質量部に対して、50乃至500質量部、好ましくは100乃至400質量部の量で用いられる。
【0044】
本反応のネガ型フォトレジスト用ポリマーの重合温度は、重合開始剤のラジカル発生温度に起因するものであるが、50乃至100℃が好ましく、更に60乃至80℃であることがより好ましい。50℃未満では残留モノマーが多く、モノマー転化率及び収率が低下する。また、100℃を超えると、エポキシ基含有不飽和ユニットの開環硬化反応が進行し、硬化基の損失、分子量の不均化が生じる。
【0045】
本反応のネガ型フォトレジスト用ポリマーを製造する際の反応系の濃度は、モノマー種及び開始剤の種類によって変化させることができるが、好ましくは、滴下終了後の固形分濃度が10乃至60質量%、更に好ましくは20乃至40質量%になるように調整する。
【0046】
実施形態に係るネガ型フォトレジスト用ポリマーは、さらに、その基本的物性および硬化特性に影響を及ぼさない限り、他の成分を含んでいてもよい。
【0047】
実施形態に係るネガ型フォトレジスト用ポリマーの重量平均分子量は、2,000乃至50,000、好ましくは、3,000乃至30,000、より好ましくは5,000乃至20,000である。重量平均分子量が、2,000未満の場合、生産性が低下する。また、50,000を超える場合、ワニス粘度を十分低くすることができないため、厚膜化し、かつ均一な膜を得ることができない。
【0048】
実施形態に係るネガ型フォトレジスト用ポリマーの熱分解温度は、240℃以上、好ましくは270℃以上である。240℃未満の場合、高温処理を必要とするFPD製造工程で分解してしまう。
【0049】
ネガ型フォトレジスト用ポリマーを用いたFPD用基板の製造方法
本発明の実施形態のネガ型フォトレジスト用ポリマーを用いて例えばFPD用基板を製造するには、基板上に上記ネガ型フォトレジスト用ポリマーを塗布して形成した塗膜を、露光および現像する。
【0050】
(1)塗膜
当該製造方法においては、まず、ネガ型フォトレジスト用ポリマーを基板上に塗布することによって、塗膜を形成する。また、塗布方法は特に限定されないが、例えば、スピンコート、スリットコート、スプレーコート、ディップコートなど従来公知の塗布方法を用いることができる。塗膜の膜厚は、例えば0.5乃至10μmである。
【0051】
また、当該ネガ型フォトレジスト用ポリマーを基板上に膜厚3μmで塗布した場合、波長350nmにおけるUV光の透過率は90%以上、好ましくは95%以上である。
【0052】
(2)露光
次に、所定のパターンが形成されたハーフトーンマスクを用いて、当該塗膜を露光し、硬化させる。露光量は5乃至50J/cm、好ましくは5乃至20J/cmである。露光に用いられる光は特に限定されず、例えば、可視光、紫外光(UV光)、遠紫外光、極端紫外光を用いることができるが、好ましくはUV光である。
【0053】
ここで、硬化熱量は70mJ/mg以上であり、好ましくは、100mJ/mg以上である。硬化熱量が、70mJ/mg未満の場合、十分な架橋効果が得られない。
【0054】
(3)現像
現像は、アルカリ現像液を用いて行う。用いられるアルカリ現像液は、塗膜の未硬化部分を溶解させる能力のある溶液であれば特に限定されず、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどを含有した水溶液が用いられる。アルカリ現像液には、必要に応じて、界面活性剤、水性有機溶媒などを含有していてもよい。
【0055】
現像の方法としては、特に限定されないが、例えば、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像により行われる。
【0056】
アルカリ溶解速度は、20乃至5,000Å/sec、好ましくは30乃至2,000Å/sec、より好ましくは30乃至1,000Å/secである。アルカリ溶解速度が、20Å/sec未満の場合、溶解速度が十分でなく、必要な残膜を得るために時間がかかる。一方、アルカリ溶解速度が5,000Å/secを超える場合、未露光部の溶解が進みすぎて、所望のレジストパターンを形成することができない。
【0057】
現像により所望のパターンを形成した樹脂を、最後に乾燥オーブンで十分乾燥させる。例えば、乾燥温度は180乃至250℃、乾燥時間は0.5乃至2時間である。
【0058】
このとき塗布膜の残膜率は、85%以上、好ましくは、90%以上、特に好ましくは、92%以上である。85%未満の場合、ソフトベーク時とハードベーク時との膜厚の差が大きくなり、安定的に製造できない。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の実施例及び比較例を示し、本発明について、より具体的に説明する。
【0060】
以下の実施例および比較例において用いた、(A1)不飽和カルボン酸、(A2)エポキシ基含有不飽和化合物、(A3)N−置換マレイミド、(A4)オレフィン系不飽和化合物、および末端ビニル基を与える化合物の化学式を下記に示す。
【化2】

【0061】
実施例1
滴下ロートを備えた三口フラスコ2000mlを窒素置換し、その中にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を457g仕込み、65℃まで昇温後、予め2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)16.7g、スチレン(ST)101.5g、N−シクロヘキシルマレイミド(CHMI)57.3g、メタクリル酸メチル(MMA)83.2g、メタクリル酸(MAA)78.4g、メタクリル酸グリシジル(GMA)22.7g、α−メチルスチレンダイマー(MSD)10.2gをPGMEA514gに溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、反応液を更に65℃で3時間反応させて、ポリマー溶液を得た。
【0062】
得られたポリマーを下記化学式に示す。
【化3】

【0063】
実施例2
滴下ロートを備えた三口フラスコ2000mlを窒素置換し、その中にPGMEAを457g仕込み、65℃まで昇温後、予め2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)16.7g、ST101.6g、CHMI28.2g、MMA141.8g、MAA27.1g、GMA40.3g、MSD10.2gをPGMEA514gに溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、反応液を更に65℃で3時間反応させて、ポリマー溶液を得た。
【0064】
実施例3
滴下ロートを備えた三口フラスコ2000mlを窒素置換し、その中にPGMEAを457g仕込み、65℃まで昇温後、予め2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)16.7g、ST49.1g、CHMI112.9g、MMA47.2g、MAA81.3g、GMA89.5g、MSD10.2gをPGMEA514gに溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、反応液を更に65℃で3時間反応させて、ポリマー溶液を得た。
【0065】
実施例4
滴下ロートを備えた三口フラスコ2000mlを窒素置換し、その中にPGMEAを457g仕込み、65℃まで昇温後、予め2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)16.7g、ST98.3g、CHMI56.4g、MMA110.2g、MAA13.5g、GMA89.5g、MSD10.2gをPGMEA514gに溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、反応液を更に65℃で3時間反応させて、ポリマー溶液を得た。
【0066】
実施例5
滴下ロートを備えた三口フラスコ2000mlを窒素置換し、その中にPGMEAを457g仕込み、65℃まで昇温後、予め2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)16.7g、ST101.5g、CHMI57.3g、MMA83.2g、MAA78.4g、GMA22.7g、MSD5.1gをPGMEA514gに溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、反応液を更に65℃で3時間反応させて、ポリマー溶液を得た。
【0067】
実施例6
滴下ロートを備えた三口フラスコ2000mlを窒素置換し、その中にPGMEAを457g仕込み、65℃まで昇温後、予め2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)16.7g、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(CHDMMA)174.6g、CHMI56.4g、MMA94.5g、MAA67.7g、GMA31.3g、MSD10.2gをPGMEA514gに溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、反応液を更に65℃で3時間反応させて、ポリマー溶液を得た。
【0068】
実施例7
滴下ロートを備えた三口フラスコ2000mlを窒素置換し、その中にPGMEAを457g仕込み、65℃まで昇温後、予め2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)16.7g、ST65.5g、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)104.0g、CHMI56.4g、MMA63.0g、MAA67.7g、GMA44.7g、MSD10.2gをPGMEA514gに溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、反応液を更に65℃で3時間反応させて、ポリマー溶液を得た。
【0069】
実施例8
滴下ロートを備えた三口フラスコ2000mlを窒素置換し、その中にPGMEAを457g仕込み、65℃まで昇温後、予め2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)16.7g、ST101.5g、ベンジルメタクリレート(BzMA)138.0g、CHMI57.3g、MAA78.4g、GMA22.7g、MSD10.2gをPGMEA514gに溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、反応液を更に65℃で3時間反応させて、ポリマー溶液を得た。
【0070】
実施例9
滴下ロートを備えた三口フラスコ2000mlを窒素置換し、その中にPGMEAを457g仕込み、65℃まで昇温後、予め2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)16.7g、BzMA260.6g、CHMI56.4g、MAA102.9g、GMA22.4g、MSD10.2gをPGMEA514gに溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、反応液を更に65℃で3時間反応させて、ポリマー溶液を得た。
【0071】
実施例10
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)8.4gを使用した以外は、上記実施例1と同様に反応させて、ポリマー溶液を得た。
【0072】
実施例11
CHMI57.3gの代わりにN−フェニルマレイミド(PMI)55.4gを使用した以外は、上記実施例1と同様に反応させて、ポリマー溶液を得た。
【0073】
実施例12
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)16.7gの代わりにジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)14.0gを使用した以外は、上記実施例1と同様に反応させて、ポリマー溶液を得た。
【0074】
実施例13
GMA22.7gの代わりに4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(4HBAGE)32.0gを使用した以外は、上記実施例11と同様に反応させて、ポリマー溶液を得た。
【0075】
比較例1
滴下ロートを備えた三口フラスコ2000mlを窒素置換し、その中にPGMEAを457g仕込み、65℃まで昇温後、予め2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)16.7g、ST101.5g、CHMI57.3g、MMA83.2g、MAA78.4g、GMA22.7gをPGMEA514gに溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、反応液を更に65℃で3時間反応させて、ポリマー溶液を得た。
【0076】
比較例2
2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)25.0gを使用した以外は、上記比較例1と同様に反応させて、ポリマー溶液を得た。
【0077】
使用した原料を下記の表1にまとめて示す。
【表1】

【0078】
実施例および比較例に係るポリマーについて、以下の特性を評価した。
【0079】
(1)アルカリ溶解速度
得られたポリマー溶液を0.4μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過した後、このポリマー溶液をシリコンウエハー上へスピンコーティングし、1.0μmの膜厚に塗布した。次いで、このシリコンウエハーを90℃のホットプレート上で90秒間ベークした。更に、塗膜調整されたシリコンウエハーを90℃のホットプレート上の樹脂層を2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像を行い、樹脂層が完溶した時の時間よりアルカリ溶解速度を換算した。
【0080】
(2)残膜率
得られたポリマー溶液を0.4μmのテフロン(登録商標)製フィルターで濾過した後、このポリマー溶液をシリコンウエハー上へスピンコーティングし、1.0μmの膜厚に塗布した。次いで、このシリコンウエハーを90℃のホットプレート上で90秒間ベークした。更に、縮小投影露光装置を用いてテストチャートマスクを介して露光した後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に50秒間浸し水洗した後、乾燥した。以下に示す通り、露光部の残膜と上記ソフトベーク時の膜厚の比率を残膜率とした。
【0081】
残膜率=(露光部の残膜の膜厚)/(ソフトベーク時の膜厚)×100
残膜率を下記の基準で評価した。
◎:92%以上
○:90%以上92%未満
△:90%未満
(3)塗膜性
固形分濃度を18質量%に調整した実施例および比較例のポリマー溶液を2.5インチシリコンウエハー上に約1μmでスピンコーティングしたときの膜厚を15スポットにおいて測定した。スポット間での膜厚の誤差範囲を塗膜性の指標とし、下記の基準で評価した。
◎:膜厚の誤差範囲が10nm未満
○:膜厚の誤差範囲が10nm以上20nm未満
△:膜厚の誤差範囲が20nm以上50nm未満
×:膜厚の誤差範囲が50nm以上、および/またはスカム、残渣を発生したもの
(4)熱分解温度
実施例および比較例で調製したポリマー溶液それぞれ10gを、イオン交換水500g中に再沈殿させ、得られたスラリーを5Torr、40℃で48時間真空乾燥することにより、樹脂粉末を得た。得られた樹脂粉末の熱分解温度を、示差熱熱重量同時測定装置TG/DTA 6300(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いて、温度300〜800℃、昇温速度10℃/minの条件で測定した。また、分解開始温度は、接線法による一次分解開始点とした。
熱分解温度は下記の基準で評価した。
◎:270℃以上
○:240℃以上270℃未満
×:240℃未満
(5)硬化熱量
上記熱分解温度の測定で得た樹脂粉末について、示差走査熱量計DSC6220(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いて硬化熱量を測定した。
硬化熱量は下記の基準で評価した。
◎:100mJ/mg以上
○:70mJ/mg以上100mJ/mg未満
×:70mJ/mg未満
(6)透過性
固形分濃度を20質量%に調整した実施例および比較例のポリマー溶液を2.5インチガラスウエハー上に3μmでスピンコーティングした時のUVスペクトルを測定し、350nmにおける透過率(%)を算出した。
透過性は下記の基準で評価した。
◎:95%以上
○:90%以上95%未満
×:90%未満
(7)ハーフトーン露光幅
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)25g、固形分濃度を20質量%に調整した実施例および比較例のポリマー溶液8.5g、IRGACURE OXE02(BASF社製 光重合開始剤 エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム))1.0g、KBM−403(信越化学工業社製 接着助剤 3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)0.15g、およびFZ2122(東レ・ダウコーニング社製 シリコーン系界面活性剤 ポリアルキレンオキサイドを有するジメチルポリシロキサン)0.18gを加えたものの膜厚(3μm)を100%とし、膜厚が80%および50%になるときのそれぞれの露光量E80およびE50(mJ/cm)を測定した。これらの露光量の差を以下に示す通り、ハーフトーン露光幅(mJ/cm)とした。
【0082】
ハーフトーン露光幅=ΔE=E80−E50
ハーフトーン露光幅は下記の基準で評価した。
◎:8mJ/cm以上
○:5mJ/cm以上8mJ/cm未満
×:5mJ/cm未満
実施例1および比較例1に係るネガ型フォトレジスト用ポリマーの残膜率と露光量との関係を図1に示す。
【0083】
(8)総合評価
以上の試験結果に基づき、総合評価を行った。総合評価は下記の基準で行った。
◎:各評価の◎の数の合計が5個以上
○:各評価の◎の数の合計が3個または4個
×:各評価の◎の数の合計が2個以下、または少なくとも1つ×を含む
これらの評価結果を下記表2に示す。
【表2】

【0084】
上記表2から明らかなように、実施形態に係るネガ型フォトレジスト用ポリマーは、現像に適したアルカリ溶解速度を有する。また、塗膜性、即ち、平坦性に優れており、十分な残膜率および透過率を有する。さらに、熱分解温度が高く、耐熱性にも優れ、且つ硬化熱量が大きく、十分な架橋が得られる。
【0085】
また、図1から、実施例1に係るネガ型フォトレジスト用ポリマーは、比較例1のネガ型フォトレジスト用ポリマーと比較して、ハーフトーン露光幅が広いことが示された。これは、実施例1に係るネガ型フォトレジスト用ポリマーに含有されるエポキシ由来の架橋に加えて、末端ビニル基由来の架橋が起こるためであると考えられる。
【0086】
よって、実施形態に係るポリマーは、FPD製造用レジストに要求される基本的特性に加えて、ハーフトーン露光技術に適した硬化特性を実現している。
【0087】
当該ネガ型フォトレジスト用ポリマーは、FPD用基板の製造、具体的には、液晶表示素子の有機絶縁膜、カラーフィルター保護膜、ブラックマトリクス、フォトスペーサー、UVオーバーコートなどの製造に有用に用いられることが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和カルボン酸ユニットと、エポキシ基含有不飽和化合物ユニットと、N−置換マレイミドユニットと、オレフィン系不飽和化合物ユニットと、末端ビニル基とを有することを特徴とするネガ型フォトレジスト用ポリマー。
【請求項2】
前記不飽和カルボン酸ユニットの含有率が3〜40mol%であり、
前記エポキシ基含有不飽和化合物ユニットの含有率が3〜20mol%であり、
前記N−置換マレイミドユニットの含有率が3〜20mol%であり、
前記オレフィン系不飽和化合物ユニットの含有率が30〜80mol%であることを特徴とする請求項1に記載のネガ型フォトレジスト用ポリマー。

【図1】
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【公開番号】特開2013−72015(P2013−72015A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212349(P2011−212349)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000165000)群栄化学工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】