説明

ノズル及びノズルを含むディスペンサ

ノズル(10)は、流体入口と、流体をスプレーの形態で中を通してノズルから放出することができる出口オリフィス(20)と、流体入口を出口オリフィスに流体接続する流体通路とを有する。流体通路は、出口オリフィス(20)のすぐ上流に、対向する前端面と後端面(18、16)とを有する渦流室(14)を含む。少なくとも1つの入口オリフィス(24、26)が渦流室内へ流体を導き、出口オリフィス(20)は渦流室の前端面(18)に形成される。渦流室は、前端面から後端面まで測定した0.03mmから0.6mmまでの範囲の最小長、及び10:1から40:1までの範囲の最大幅Wmaxと最小長の比(Wmax/Lmin)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はノズル配置に関する。より詳細には本発明は、限定はされないが、圧力をかけて流体をノズル配置に通して流体のスプレー(spray)を生成する際に使用されるノズル配置に関する。本発明はさらに、このようなノズル配置を含むディスペンサ(dispenser)に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルはしばしば、さまざまな流体のスプレーを生成する手段を提供するために使用される。具体的には、ノズルは普通、容器に蓄えられた流体を霧化されたスプレー又はミストの形態で分配することを可能にする手段を提供するために、以後「エアゾール・キャニスタ」と呼ぶ流体が充填された加圧容器の出口弁に取り付けられたアクチュエータに組み込まれる。例えば制汗スプレー、消臭スプレー、香水、空気清涼剤、防腐剤、塗料、殺虫剤、つや出し剤、ヘア・ケア製品、医薬品、水及び潤滑剤を含む多数の商品がこの形態で消費者に提供されている。さらに、ノズル配置はしばしば、ある種の流体製品の霧化されたスプレー又はミストを生成するために、手動で操作可能なポンプすなわちトリガによって非加圧容器から流体が放出されるディスペンサに組み込まれる。このタイプのディスペンサを以後、手動ポンプ・ディスペンサと呼ぶ。一般に手動ポンプ・ディスペンサを使用して分配される製品の例には、さまざまなローション剤、殺虫剤、ならびにさまざまな園芸用、家庭用スプレーが含まれる。
【0003】
エアゾール・キャニスタ用のノズルは通常、エアゾール弁から延びる弁棒の端に位置するアクチュエータに組み込まれるが、ノズルの特徴の多くを、エアゾール弁自体及び/又は弁棒に直接に組み込むことも提案されている。したがって、本明細書でノズル配置と言うときには、エアゾール出口弁又は弁棒に組み込まれたノズル配置、ならびにエアゾール・キャニスタの弁棒又は弁に取り付けられたアクチュエータの部分を構成するノズル配置あるいは手動ポンプ・ディスペンサの部分であるノズル配置を包含することが意図されていることを理解されたい。
【0004】
ノズル配置はさらに、流体のスプレーを生成する必要があるさまざまな工業用途で使用される。例えばミスト・ノズルは園芸及び冷却用途で使用される。ノズル配置はしばしば、エンジンなどの燃料噴射系の一部としても使用される。本発明に基づくノズル配置は、適当な任意の用途に適合させることができることが理解される。
【0005】
スプレーは、圧力をかけて流体をノズル配置に通したときに生成される。スプレーを形成するため、ノズル配置は、ノズルを通過している流体流れが、1つ又は複数の出口オリフィスから放出されるときに多数の液滴に分割されるように、すなわち「霧化する」ように構成される。
【0006】
特定のスプレーに必要な液滴の最適径は主に、対象とする特定の製品及び意図される用途によって決まる。例えば、患者(例えば喘息患者)によって吸入されることが意図された薬物を含む医薬品スプレーは通常、肺の中へ深く入り込むことができる非常に小さな液滴を必要とする。対照的に、つや出しスプレーは、つや出し対象表面へのエアゾール液滴の密着を促進するため、及び特にスプレーが有毒である場合に吸入の程度を低下させるために、より大きな直径を有するスプレー液滴を含むことが好ましい。
【0007】
従来のノズル配置によって生成されるエアゾール液滴の液滴径は、出口オリフィスの寸法及び流体をノズルに通す際の圧力を含むいくつかの因子によって決定される。しかしながら、液滴径分布の幅が狭い小さな液滴を含むスプレーを、特に低圧で生成したい場合には、問題が生じる可能性がある。スプレーを生成するのに低い圧力を使用することは、それによって、相対的に高価なエアゾール容器の代わりに手動ポンプ・ディスペンサなどの低圧ノズル装置を使用することができるようになり、エアゾール容器の場合にも、スプレー内に存在する噴射剤の量を減らし、あるいは一般により低い圧力を生成する代替噴射剤(例えば圧縮ガス)を使用することができるようになるため、ますます望ましくなっている。エアゾール・キャニスタに使用される噴射剤のレベルを低下させたいとする要望は現今の時事的問題であり、後に論じる理由から手持ち式エアゾール・キャニスタで使用することができる噴射剤の量に制限を設けることを提案する法律がいくつかの国で立案されているため、このことは将来的により重要になる可能性が高い。噴射剤レベルの低下は、流体をノズル配置に通すために使用可能な圧力の低下を引き起こし、さらに、混合物の状態で存在して液滴の分割を助ける噴射剤の量の低下につながる。したがって、適当に小さな径の液滴からなるエアゾール・スプレーを低い動作圧で生成する能力を有するノズル配置が求められている。
【0008】
従来のノズル配置が取り付けられた知られている加圧エアゾール・キャニスタの他の問題点は、エアゾール・キャニスタの寿命の間に、特にキャニスタの寿命の終わりが近づいたときに、噴射剤が徐々に枯渇するにつれてキャニスタ内の圧力が低下するため、生成されるエアゾール液滴の液滴径が増大する傾向があることである。この圧力低下は、生成されるエアゾール液滴の液滴径の観測可能な増大を引き起こし、したがって生成されるスプレーの質が損なわれる。
【0009】
対象とする流体が高い粘度を有する場合には、流体を十分に小さな液滴に霧化することがより難しくなるため、質の高いスプレーを低い圧力で提供する課題は達成がより困難になる。
【0010】
上で概要を述べた問題を解決し又は少なくとも緩和するため、ノズル配置を改良するさまざまな提案がなされている。
【0011】
ノズル出口での液体の分散を助けるため、液体流れに気体を混入することが知られている。この配置は、液体と気体の混合物がノズルの出口オリフィスを出るときに、気体が膨張して、流体をより小さな液滴に分割するのを助けるというものである。エアゾール・キャニスタの場合には、キャニスタ内にある種の噴射剤が、液体製品中に懸濁した液化ガスの形態で、及び液体製品の上方の気体又は蒸気として存在する。液体製品が分配されるときには、懸濁状態で保持された液化ガスが、ノズルの出口オリフィスから大気中へ出るときに膨張し、液体製品を小さな液滴に分割する。一般的な液化ガス噴射剤には、いずれも揮発性有機化合物(volatile organic commpound:VOC)であるプロパン、ブタン、イソブテン、n−ブタン及びジメチルエーテルなどが含まれる。VOCは環境に対して有害であり、エアゾール・キャニスタに使用されるVOCの量を減らそうとする法的及び倫理的圧力が増している。低VOCエアゾールはしばしばより低い動作圧を有し、液体中に懸濁した噴射剤の量が少ない。その結果、特に空気清涼剤、殺虫剤などのある種の製品に対して有効なスプレーを得ることが困難になることがある。
【0012】
エアゾール・キャニスタ内の噴射剤が、液体の上方の蒸気又は圧縮ガスとして存在する場合には、液体がエアゾール弁又はノズルを通過して分配されるときに噴射剤ガスの一部を液体中へ注入する蒸気相タップを使用することが知られている。この噴射剤ガスは、エアゾール弁及び/又はノズルの中で液体と混合され、液体流れが出口オリフィスを通って外へ出るときに液体流れの分散を助ける。この配置は、例えば低VOC製剤を用いる場合のように懸濁状態の噴射剤が全く又は少量しか存在しない場合に、あるいは二酸化炭素、窒素、圧縮空気などの代替非VOC噴射剤が使用される場合に必要となる可能性がある。この配置の問題点は、噴射剤ガスがより急速に減少し、その結果、内容物が使用されるにつれてキャニスタ内の圧力が低下し、スプレーの質に不利な影響を与えることである。
【0013】
手動ポンプ・ディスペンサなどの他の用途では、液体の分配中に気体、通常は空気を液体に混合することが知られている。その結果、この混合物がノズルから大気中へ出るときに気体が膨張して、液体を非常に小さな液滴に分割する。このような手動ポンプ・ディスペンサは通常、液体製品を分配するための少なくとも1つのポンプ室と、気体を加圧するための少なくとも1つの追加のポンプ室とを有する。ディスペンサを作動させると、加圧された気体が加圧された液体と混合されて、ノズルにおける液体の霧化を促進する。
【0014】
ノズル配置に渦流室を組み込むことも知られている。この渦流室内では流体が回転され、その後、流体は出口オリフィスを通って室を出る。知られている渦流室は一般に円筒形の室を含み、室の下流壁すなわち前端壁の中心に出口オリフィスが位置する。室の側面には、流体が室の中で回転するように流体を円筒形の壁に向かって接線方向に導く1つ又は複数の流体入口が提供される。2つ以上の入口オリフィスがある場合、全ての入口オリフィスが、同じ円周方向に流体を室内へ供給する。渦流室は、出口オリフィスから円錐形のスプレー・パターンを生成するのに特に有用である。
【0015】
知られている多くの渦流室が、断面が円形の円筒形であるが、知られているいくつかの配置では、側壁を通して室に入る入口が、室の円形の断面をある程度四角にするようなやり方で形成される。それでもやはり、室内で流体が回転するのを促進するためこのような室の断面は概ね円形である。本明細書及び特許請求の範囲において渦流室の断面が概ね円形であると言うとき、このことは、渦流室が完全な円形である必要は必ずしもなく、円に近く、その中で流体が回転することができる任意のプロファイルを包含することが意図されていることを理解されたい。
【0016】
渦流室について言うときには、便宜上、流体が室を出る室の上流端を「前」端と呼び、室の反対側の端すなわち下流端を「後」端と呼ぶ。
【0017】
知られている典型的な渦流室が、Benoistの米国特許第6,367,711B1号に記載されている。この配置では、プロファイルの中央に概ね円筒形の室を画定するため、4つのプロファイルが円形に配置される。隣接するプロファイル間の空間は、流体に渦流運動が与えられるように流体を接線方向に中央の室内へ導く入口を形成する。室の前端壁の中央にスプレー・オリフィスが提供される。
【0018】
WO 01/89958として公開されている本発明の出願人の国際特許出願に開示されているとおり、最終的なエアゾールの液滴径及び液滴径分布を制御する手段として、最後の出口オリフィスの上流に、最後の出口オリフィスからから間隔を置いて配置された渦流室を、ノズル配置に組み込むことが有益であることも分かっている。
【0019】
多くの知られている渦流室は、流体、一般にリカー(liquor)などの液体が出口オリフィスを出るときにその周りを回転する空心を中央に生成する。空心は、室内で液体が回転するときに渦を形成する結果として生成され、室は、出口オリフィスの中心を通してノズルの外側から空心を中へ引き込む。空心を形成する渦流室は中空円錐形のスプレーを生成し、ノズルの最後の出口スプレー・オリフィスに隣接した位置でしか使用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第6,367,711B1号
【特許文献2】WO 01/89958
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従来の渦流室が有効であることは分かってはいるものの、生成されるスプレーの質をさらに高め、かつ/又は従来の渦流室を使用することによって生み出される特性とは異なる特性を有するスプレーを生成する目的に使用することができる代替渦流室構成を有するノズル配置を提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第1の態様によれば、流体入口と、流体をスプレーの形態で中を通してノズルから放出することができる出口オリフィスと、流体入口を出口オリフィスに流体接続する流体流れ通路とを有するノズルであって、通路が、出口オリフィスのすぐ上流に渦流室を含み、渦流室が対向する前端面と後端面とを有し、流体通路がさらに、中を通して流体を渦流室内へ導入することができる少なくとも1つの入口オリフィスを含み、ノズルの出口オリフィスが渦流室の前端面に形成されたノズルにおいて、渦流室が、前端面から後端面まで測定した0.03mmから0.6mmまでの範囲の最小長、及び10:1から40:1までの範囲の最大幅と最小長の比(Wmax/Lmin)を有することを特徴とするノズルが提供される。
【0023】
室の横断面は概ね円形とすることができ、この場合、室の最大幅はその最大径Dmaxとなる。
【0024】
渦流室は、0.1mmから0.3mmまでの範囲の最小長を有することができる。
【0025】
出口オリフィスを取り巻く中心領域における渦流室の長さが、中心領域を取り巻く半径方向外側の領域における渦流室の長さよりも短くなるように、渦流室の長さをその直径を横切って変化させることができる。渦流室の前端面を、渦流室の長さを変化させるような形状に形成することができる。渦流室の前端面を、後端面に向かって内部で突き出た円錐台形部分を中心領域に有する壁によって画定することができる。
【0026】
少なくとも1つの渦流室入口オリフィスを、渦流室の後端面を通して渦流室内へ流体を導くように構成することができる。
【0027】
入口から室の少なくとも一部分を横切って延び、その後、室の前端面の表面領域と接触する経路に沿って非接線方向に、後端面を通して渦流室内へ流体を導くように、少なくとも1つの渦流室入口オリフィスを構成することができる。
【0028】
渦流室入口オリフィスを2つ以上配置することができ、渦流室入口オリフィスはそれぞれ、室の後端面を通して室内へ流体を導くように構成される。これらの2つ以上の渦流室入口オリフィスを、室の後端面に対して非接線方向の経路に沿って渦流室内へ流体を導くように構成することができる。これらの2つ以上の渦流室入口オリフィスを、室内の交差しない経路に沿って室内へ流体を導くように構成することができる。これらの2つ以上の渦流室入口オリフィスを、実質的に平行な経路に沿って室内へ流体を導くように構成することができる。前記2つ以上の渦流室入口オリフィスのうちの少なくとも1つの渦流室入口オリフィスは、前記2つ以上の入口オリフィスのうちの少なくとも1つの他の渦流室入口オリフィスよりも大きな最小断面積を有することができる。
【0029】
室内で流体が室の縦軸の周りを回転するように、軸に対してある角度で流体を室内へ導くよう渦流室入口オリフィス又はそれぞれの渦流室入口オリフィスを配置することができる。
【0030】
渦流室内へ流体を導く入口オリフィスを4つ以上配置することができる。
【0031】
2つ以上の渦流室入口オリフィスがある場合、全ての入口オリフィスから室内へ同じ流体が供給されるように、ノズルを構成することができる。流体は液体又は液体/気体混合物とすることができる。あるいは、入口オリフィスのうちの少なくとも1つの入口オリフィスを通して第1の流体源から第1の流体を室内へ供給することができ、入口オリフィスのうちの少なくとも1つの他の入口オリフィスを通して第2の流体源から第2の流体を室内へ供給することができるように、ノズルを構成することもできる。第1の流体は、液体又は液体と気体の混合物とすることができる。第2の流体は、液体又は液体と気体の混合物、あるいは気体とすることができる。第1の流体と第2の流体とを室内で同じ全体的な方向に回転させるように入口オリフィスを構成することができ、又は第1の流体と第2の流体とを概ね反対方向に回転させるように入口オリフィスを構成することができる。
【0032】
流体流れ通路手段は、直列に配置された前記渦流室のうちの2つ以上の渦流室を含むことができる。この場合、直列の最後の室の出口オリフィスはノズルの最後の出口オリフィスを含む。
【0033】
流体流れ通路手段は、並列に配置された前記渦流室のうちの2つ以上の渦流室を含むことができ、それぞれの前記渦流室の出口オリフィスはノズルの最後の出口オリフィスである。
【0034】
ノズルは出口オリフィスを2つ以上有することができ、この場合、これらの2つ以上の出口オリフィスは、その渦流室又は渦流室のうちの1つの渦流室の前面を貫通して延びることができる。
【0035】
ノズルは、ノズルの外側前面の出口オリフィス又はそれぞれの出口オリフィスの周りに円錐台形の凹みを含むことができる。この凹みを、出口オリフィスの長さが最小になるように構成することができる。出口オリフィスの長さは0.6mm以下であることが好ましい。
【0036】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様に基づくノズル配置を含む流体ディスペンサが提供される。
【0037】
このディスペンサはエアゾール・キャニスタを含むことができる。このエアゾール・キャニスタは液体製品を含むことができ、この液体製品は、少なくとも部分的に液体製品に溶解した状態で存在する噴射剤を含む。あるいは、このディスペンサは、手動で作動するポンプ・ディスペンサを含むことができる。この場合、ディスペンサを、液体と気体の混合物を分配するように構成することができる。このディスペンサを、液体と空気の混合物を分配するように構成することができる。
【0038】
次に、添付図面を参照して本発明のいくつかの実施形態を、単に例示目的で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に基づくノズルの出口端部の拡大概略複合縦断面図である。
【図2】線A−Aに沿って切った図1のノズルの概略横断面図である。
【図3】本発明に基づくノズルの第2の実施形態の出口端部の図1と同様の図である。
【図4】線B−Bに沿って切った図3のノズルの概略横断面図である。
【図5】本発明に基づくノズルの第3の実施形態の出口端部の図1と同様の図である。
【図6】線C−Cに沿って切った図5のノズルの概略横断面図である。
【図7】本発明に基づくノズルの第4の実施形態の出口端部の図1と同様の図である。
【図8】線D−Dに沿って切った図7のノズルの概略横断面図である。
【図9】本発明に基づくノズルの第5の実施形態の出口端部の図1と同様の図である。
【図10】線E−Eに沿って切った図9のノズルの概略横断面図である。
【図11】本発明に基づくノズルの第6の実施形態の出口端部の図1と同様の図である。
【図12】線F−Fに沿って切った図11のノズルの概略横断面図である。
【図13】本発明に基づくノズルの第7の実施形態の出口端部の図2と同様の図である。
【図14】線G−Gに沿って切った図13のノズルの概略複合縦断面図である。
【図15】線H−Hに沿って切った図13のノズルの概略複合縦断面図である。
【図16】本発明に基づくノズルの第8の実施形態の縦断面図である。
【図17】図16のノズルの一本体形成性部分の一部断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
最初に図1及び2を参照すると、全体が符号10で示されたノズルの出口端部が概略的に示されている。
【0041】
ノズル10のこの端部は、壁16によって画定された後端面ないし下流端面と、壁18によって画定された前端面ないし上流端面とを有する渦流室14がその内部に形成された胴体12を含む。室14は、横断面が(図2に示されているように)概ね円形であり、室の前端面18の中心に出口オリフィス20を有する。出口オリフィス20は、ノズル10の最後の出口オリフィスであり、ノズルの外側前面23の円錐形の凹み22の中に開いている。円錐形の凹み22は、前面23に向かって外側へ発散している。
【0042】
チャネル24、26によって画定された2つの入口オリフィスが、後端壁16を通して室14内へ1つ又は複数の流体を導く。入口オリフィス24、26は、後端壁16の表面に対して非接線方向に配置されている。「非接線方向に」とは、それぞれのオリフィス24、26を通って渦流室14に入る流体が、オリフィスの直ぐ周りの壁16の表面から離れる方向に室内へ導かれることを意味する。この配置は、入口オリフィスが一般に、室内の湾曲した側壁領域上へ流体を接線方向に導く従来の渦流室配置と対比されなければならない。この実施形態では、入口オリフィス24、26が室を横切って前端壁18上へ流体を導く。
【0043】
この実施形態における後端壁16を通した非接線入口24、26の使用は、室14に入る流体が、従来の渦の中の流体と同じ摩擦レベルにさらされないため有利であると考えられる。したがって、非接線入口の使用は流体のエネルギー損を低減させ、これにより、流体の分割ないし霧化を助けるより多くのエネルギーが流体内に存在するため、低い動作圧であっても渦が良好なスプレー・パターンを生成することが可能になる。これによってさらに、通常なら霧化させるのが困難な溶液とともにこのノズルを有効に使用することが可能になる。
【0044】
入口チャネル24、26は、室の両側に1つずつ異なる平面内に配置され、平らな前端壁18に向かって互いに発散する(図1の矢印Yによって示された)経路に沿って流体を導くため室14の縦軸Xに対して約30度の角度で配置される。
【0045】
図1は、たとえ両方の入口オリフィス24、26及び出口オリフィス20が異なる縦平面にあるとしてもそれらの全てのオリフィスの位置を示す複合縦断面図であることに留意されたい。図3、5、7、9、11、14、15及び17も同様の図である。
【0046】
使用時、入口オリフィス24、26を通って室14に入った流体流れはある角度で前端壁18に当たり、向きがそらされ、その結果、図2の矢印Zによって示されているように室14の縦軸Xの周りを回転する。入口オリフィス24、26は室の両側で反対方向に向けられているため、両方の入口オリフィス24、26からの流体流れは、室14の中で同じ円周方向に回転する。しかしながら、代替実施形態では、室の中で流体流れが反対方向に回転するように入口オリフィスを配置することもできる。
【0047】
図1及び2に示されているように、一方の入口オリフィス26は、他方の入口チャネル24よりも小さな最小断面積を有する。室14内での流体の混合の促進に役立つためこの配置は好ましい。しかしながら、入口チャネル24、26を同じサイズにすることもできる。
【0048】
ノズル10は、後端面16を通して非接線方向に流体を渦流室内へ導く2つ以上の入口オリフィスを有することが好ましいが、別の入口配置を使用することもできる。例えば、ノズルが渦流室への入口オリフィスを1つだけ有してもよく、任意の入口オリフィス又は全ての入口オリフィスを接線方向又は非接線方向に配置してもよい。さらに、1つ又は複数の入口オリフィスが、室の側壁を通して渦流室内へ流体を導いてもよく、これらの入口オリフィスを接線方向又は非接線方向に配置してもよい。
【0049】
図1及び2には示されていないが、入口オリフィス24、26は、ノズルの1つ又は複数の流体入口を最後の出口オリフィス20に接続するノズル10の流体通路の一部を構成する。
【0050】
ノズル10は、両方の入口オリフィス24、26を通して同じ流体が室14内へ導かれるように配置することができる。この流体は一般にリカーなどの液体だが、液体と気体の混合物とすることもできる。例えば、このノズルがエアゾール・キャニスタとともに使用される場合、この流体を、ブタン、二酸化炭素などの気体を懸濁状態で含む液体とすることができる。あるいは、この液体は、入口オリフィス24、26の上流でこの液体と混合された空気、窒素などの気体を含むことができる。この場合、この液体と気体は、ノズル内の入口オリフィス24、26の上流で混合してもよく、又はノズル10に入る前に混合してもよい。入口オリフィス24、26を通して渦流室14に同じ流体が供給される場合、これらの入口オリフィスは、渦流室14を、渦流室の上流の流体通路に形成された膨張室(図示せず)と接続することができる。
【0051】
他の代替配置では、入口オリフィス24、26がそれぞれ渦流室14内へ異なる流体を供給し、その結果、渦流室内で2種類の流体が混合されるように、ノズル10を構成することができる。この場合、一方の入口オリフィス24、26が渦流室14内へ第1の流体を供給し、他方の入口オリフィス24、26が渦流室内へ第2の流体を供給する。第1の流体と第2の流体をともに液体とし、あるいは一方又は両方の流体を液体/気体混合物とすることができる。あるいは一方を液体、他方を気体とすることもできる。異なる流体を渦流室内へ供給するように入口オリフィス24、26が配置される場合、この流体流れ通路手段は、入口オリフィス24、26に異なる流体源を接続するため別個の流体流れ通路部分を含む。したがって、この配置では、ノズルが、流体ごとに1つ、合計2つの流体入口と、それぞれの入口を対応する一方の渦流室入口オリフィス24、26に接続する別個の流体流れ通路部分とを有する。代替実施形態では、渦流室への入口オリフィスを2つ以上有することができ、この場合、これらのオリフィスを2つ以上の流体源に都合のよい任意の方法で接続することができる。
【0052】
本発明によれば、渦流室14の後端面16と前端面18の間の最小長(Lmin)は0.03mmから0.6mmまでの範囲にあり、室の最大幅(Wmax)と室の最小長(Lmin)との比は10:1から40:1までの範囲にある。室14の最小長は、0.1から0.3mmまでの範囲にあることがより好ましい。
【0053】
用語最大幅(Wmax)は、室の縦軸に直角な任意の方向に測定した室の最大横寸法を指す。この実施形態では室14が円筒形であり、室14の最大幅はその直径Dであり、この場合Dは4mmである。大部分の実施形態では、室の縦軸の周りの液体の回転を促進するため、室の横断面は概ね円形であると予想される。しかしながら、前述のとおり、場合によっては室が完全な円形ではない。横断面の輪郭が完全な円形ではない室では、室の直径Dを、室の内面に接する仮想の円から測定することができる。いくつかの実施形態では、室が、一端又は他端に向かって内側へ傾斜した側壁を有することができる。例えば、室の形状を概ね円錐台形とすることができる。これらの場合には、室の最大幅をその最大径(Dmax)とし、最大幅と最小長の比Wmax/LminをDmax/Lminと書き直すことができる。
【0054】
従来の渦流室よりも長さが短く、Wmax/Lmin(Dmax/Lmin)比がより大きな渦流室14は、流体の霧化を改善し、より小さな液滴径及びより幅の狭い液滴径分布を与えることが分かった。このことは特に流体が液体と気体の混合物である場合に言えるが、流体が気体を含まないか又は流体が気体を最小量しか含まない場合にも言えることが分かっている。さらに、本発明に基づくノズル10では、スプレー内に生成されたより微細な液滴が、地面に向かって落下する前に、従来のノズルに比べてより遠くまで運ばれることも分かった。流体が液体と気体の混合物を含む場合には、長さが短く幅の広い本発明に基づく渦流室14が気体をより小さな気泡に変え、これらの気泡が液滴とともに伴出され、出口オリフィス20を出るときに膨張して、液滴をよりいっそう小さな液滴に破壊すると考えられる。本発明に基づくノズルでは流量が増大することも分かった。試験では、本発明のノズルにおいて使用されるより長さが短くより幅の広い室によって、入口及び出口オリフィスのサイズが同じ従来の渦流キャンバと比較したときに、15%以上の流量の増大が記録された。
【0055】
本発明の範囲は、流体入口が流体を側面から渦流室内へ導入するノズル配置を包含するが、大部分の用途では、1つ又は複数の入口が後端面を通して渦流室内へ開くと予想される。このような短い室では、側壁に形成することができる入口のサイズが限定され、それにより必要な流量を達成することが困難になる可能性がある。
【0056】
出口オリフィス20が開く円錐形の凹み22は、出口オリフィス20の出口の縁を鋭くし、出口オリフィス20の長さを短くする。この配置は、流体中の気泡が膨張するのを防ぐのを助けるのに特に有益であることが分かっている。これは、スプレーが円錐形の凹みに入る前の出口オリフィス20全体にわたる圧力降下が最小限に留まるため、気泡が膨張する余地がほとんどないからである。出口オリフィスの長さは0.6mm以下であることが好ましい。
【0057】
図3から15は、本発明のいくつかの代替実施形態を示す。第1の実施形態に関して述べたことの大部分は、以下の実施形態にも同じように当てはまることを理解されたい。また、これらのさまざまな実施形態のうちの任意の1つの実施形態に関して記載された個々の特徴を、これらのさまざまな実施形態のうちの他の任意の1つの実施形態に関して記載された任意の特徴と組み合わせることができることも理解されたい。
【0058】
これらのそれぞれの実施形態の対応する特徴を示すため、全体を通じて同じ参照符号が使用される。
【0059】
図2及び3は、第1の実施形態の渦流室と同様の渦流室14を有するノズル10を示す。唯一の違いは前端面18の形状である。この実施形態では、室14の前端面を画定する壁18が、後端面16に向かって室の内部へ突き出た円錐台形の中心領域18Aを有する。この領域は、中心領域18Aにおける室14の長さを、中心領域18Aの周囲の半径方向外側の領域18Bに比べて短くする役目を果たす。前端壁18はさらに、出口オリフィス20を取り巻く円錐台形の内側凹み18Cを有する。この内側凹みは、出口オリフィスに向かうにつれて内側へ次第に狭くなり、出口オリフィスのところでノズルの外側前壁23の円錐形の凹み22と出合い、2重円錐台形配置を形成する。この出口オリフィス20を取り巻く円錐形の内側凹み18Cの使用は、出口オリフィスの中へ、次いで出口オリフィスから外へ流体を導くのを助け、外側凹み22とともに、出口オリフィス20の最も狭い部分の長さを最小にする。
【0060】
図5及び6に示された実施形態では、渦流室14の側壁28が後端16から前端18まで内側へ傾斜し、その結果、室14が円錐台の形状を有する。この実施形態の出口オリフィス20はこれまでの実施形態の出口オリフィスよりも長く、ノズルの前端壁23の外面の底面が平らな円錐台形の凹み22の中へ開いている。この実施形態では、室の最大幅(Wmax)が、後端壁において測定される室の最大径(Dmax)である。
【0061】
図7及び8は、渦流室14の出口オリフィス20を取り巻く円錐形の内側凹みがないことを除けば図3及び4に関して上で説明したノズルと同様のノズル10の一実施形態を示す。この実施形態では出口オリフィス20が長く、出口オリフィスがノズルの前壁23の外面の円錐形の凹み22の中へ開くまで、その全長にわたって出口オリフィスの側壁が平行である。
【0062】
図9及び10の実施形態は、図7及び8の実施形態と非常によく似ているが、ノズルの前端壁23の円錐形の凹み22を出口オリフィスに向かって可能な限り延長することによって、出口オリフィスの長さが最小長まで短縮されている点が異なる。これによって出口オリフィス20の縁が鋭くなる。
【0063】
図11及び12に示された次の実施形態は、出口オリフィス20に向かって内側へ傾斜した円錐形の前端壁18を有する。この配置は、出口オリフィスの中へ、次いで出口オリフィスから外へ流体を導くのを助け、出口オリフィスが長く、出口オリフィスがノズルの前壁23の外面の円錐形の凹み22の中へ開くまで、その全長にわたって出口オリフィスの側壁が平行である。
【0064】
これまでに説明した全ての実施形態では、渦流室14へ通じる2つの入口オリフィス24、26があった。図13から15は、4つの入口オリフィス24、24’及び26、26’を有する実施形態を示し、これらの入口オリフィスは全て、後端面16を通して非接線方向に流体を室内へ導く。2つの入口オリフィス26、26’は、残りの2つの入口オリフィス24、24’よりも小さな最小断面積を有する。これらの入口オリフィスは室の反対側に対で配置されており、同じ円周方向に回転するように流体を室内へ導くような角度に向けられている。しかしながら、多くの異なる態様で流体を室内へ導くように入口オリフィスを配置することができることが理解される。例えば、交差した経路に沿って流体を室内へ導くように入口オリフィスを配置することができ、あるいは1つ又は複数の入口オリフィスを通して室内に入る流体がある方向に回転し、別の1つ又は複数のオリフィスを通して室内に入る流体がこれとは反対方向に回転するように、入口オリフィスを配置することができる。この実施形態の渦流室14の前端面18は平らであり、出口オリフィス20は、ノズルの外側前面23の円錐台形の凹み22の平らな底部分22Aに開いている。
【0065】
前述のとおり、説明した実施形態のうちの任意の実施形態の特徴をさまざまな態様で組み合わせることができる。例えば、図1から12に示された実施形態のうちの任意の実施形態を、図13から15に示したように4つの入口オリフィスを有するように変更することができる。
【0066】
ノズルの前壁23の外側前面の円錐形の凹み22は、出口オリフィス20の長さを短くし、出口オリフィスの出口の縁を鋭くするために提供される。この出口オリフィスに形成されるスプレーは一般に円錐形の凹み22を塞がない。
【0067】
出口オリフィスが円錐形の凹み22の中に開いていると有利であることが分かっているが、用途によっては、ノズルの前壁23の外側前面にあって、出口オリフィス20の直径よりもわずかに大きな直径を有する円筒形の室又は管(図示せず)の中に出口オリフィス20が開いていたほうが有利であることも分かっている。試験において、その領域における直径が約0.1mm、長さが1mmの円筒形の室は、円錐形の外側凹みを有するノズルよりも細いスプレー円錐を生み出し、スプレーをより遠くに飛ばすことが分かった。この配置は、スプレーの到達距離が特に重要な場合に望ましいことがある。
【0068】
これまでに説明した実施形態では、ノズルが、ノズルの最後の出口オリフィスに隣接した流体通路上の位置に、渦流室を1つだけ有する。しかしながら、本明細書に記載されたタイプの2つ以上の渦流室を、ノズル内に並列及び/又は直列に配置すると有利であることが分かった。例えば、室の出口オリフィスを出た流体が結合して単一のスプレーを形成するように、ノズルの出口端に2つ以上の渦流室を並列に配置することができる。あるいは、本明細書に記載されたタイプの2つ以上の渦流室を、ノズルの流体通路に沿って直列に配置することもできる。単一のノズル内に、本明細書に記載されたタイプの複数の渦流室を所望の組合せで並列及び/又は直列に配置することができることが理解される。したがって、一例では、流体通路上に2つ以上の室を並列に配置し、これらの室を出た流体が、通路のさらに下流の1つ又は複数の室の中へ導かれるようにすることができる。下流に室が2つ以上ある場合、これらの室は並列又は直列に配置することができる。
【0069】
本発明に基づくノズル配置を、あらゆる粘度の液体とともに使用されるように、また、エアゾール・キャニスタ、手動ポンプなどのディスペンサを含む広範囲にわたる用途で使用されるように適合させることができる。したがって、本発明に基づくノズル配置を、限定はされないが、制汗スプレー、消臭スプレー、香水、空気清涼剤、防腐剤、塗料、殺虫剤、つや出し剤、ヘア・ケア製品、医薬品、水、潤滑剤、ローション剤、殺虫剤、ならびにさまざまな園芸用、家庭用スプレー及び工業用流体を含む広範囲にわたる製品をスプレーの形態で送達する際に使用されるように適合させることができる。しかしながら、本発明に基づくノズル配置は、低VOCエアゾール・キャニスタとともに使用するのに特に適している。本発明に基づくノズルは、液体と空気の混合物を分配するように構成された手動ポンプ・ディスペンサとともに使用するのにも特に適している。
【0070】
本発明に基づくノズル配置は、溶液とすることができる気体と混合された液体を分配するのに特に適合するが、気体をほとんど又は全く含まない液体を含む流体を分配するのにも有益である。これらの状況において、本発明に基づくノズルは、広範囲にわたるスプレー角度を提供することが分かっており、本発明に基づくノズルは、広い角度及び狭い液滴径分布を有するフル・コーン・スプレー(full cone spray)を生み出す能力を有する。
【0071】
本発明に基づくノズル配置は、多くの工業、農業、園芸及び医薬品用途においても有利に使用することができる。
【0072】
本発明に基づくノズル配置は、金属及び例えばポリプロピレン、ナイロン、アセチル、PVCなどの多くのプラスチックを含む適当な任意の材料から製造することができる。
【0073】
本発明に基づくノズルは、縦に2つの部分に分割された分割ノズルであることができる。この配置では、これらの2つの部分が、これらの部分が組み立てられるときに互いに接触する当接面を有する。これらの一方又は両方の部分の当接面には、渦流室を含む流体通路の少なくとも一部分を構成するさまざまな溝及び/又は凹みが形成される。
【0074】
あるいは、ポスト(post)とポストの上にぴったりとはまるインサート(insert)とによって渦流室を形成することもできる。この配置では、ポストの自由端と室の前端面を画定するインサートの端壁との間の隙間によって渦流室が形成される。ポスト及び/又はインサートの側壁には、流体を室内へ導く入口チャネルを形成するために溝が形成され、インサートの端壁を貫通して出口オリフィスが形成される。この配置を含むノズル10の一例を図16及び17に示す。
【0075】
ノズル10は本体30及びインサート32を含む。好ましい実施形態では、本体30とインサート32の両方がポリマー材料から射出成形される。しかし、これらは、適当な任意の製造法を使用して適当な任意の材料から製造することができる。本体は、後端ないし入力端が壁36によって閉め切られた外側管状壁34を有し、端壁36の内側から外側管状壁34の内部にポスト38が突き出している。ポストは、ポストの自由端44に至るテーパ部分42を有する円筒形部分40を有する。ポスト38と外側管状壁34との間に環状の隙間を画定するため、ポスト38の円筒形部分40の外径は管状壁34の内径よりも小さい。
【0076】
インサート32は円形であり、本体の外側管状壁34内の締りばめである外径を有する。内側端からインサートの内部へ穴46が延び、この穴は、ポストの円筒形部分40の上にぴったりとはまる円筒形部分48と、ポスト38のテーパ部分42と整合し、テーパ部分42にぴったりとはまるテーパ部分50とを有する。室の後端面16を形成するポストの自由端44と、室の前端壁18を画定するインサートの端壁52との間の隙間によって渦流室14が形成される。インサートの端壁52の外面には円錐台形の凹み22が形成され、室を凹み22に流体接続するため、室14の中心に端壁52を貫いて出口オリフィス20が延びる。
【0077】
ポストの外面の半球形の溝54によって、渦流室14の4つの入口チャネルが形成される。溝54は、ポストの円筒形部分40及びテーパ部分42に沿って延び、テーパ部分42を横切ってポストの自由端面44まで達する。ノズル10への流体入口を形成するため、本体の端壁36を貫通する1つ又は複数の開口56が形成される。インサート32の内側端は本体の端壁36から間隔を置いて配置され、そのため、開口56を通ってノズルに入った流体はポストの溝54に入ることができ、したがって渦流室14に流入することができ、流体は渦流室14で回転させられた後、出口オリフィス20を通ってノズルを出る。
【0078】
室に入ったときに流体が回転するのを促すため、溝54は、ポストのテーパ部分42を横切って斜めに形成される。ポストのテーパ部分42も流体の回転を促進する。これらのチャネルが半球形であり、インサートの平らな内面に当接することは、流体が曲線を描いて室内へ流入することを促して、必要な回転運動の生成を助けるため有利である。図16に示されているように、流体を室内へ角度をつけて導くため、インサートの穴のテーパ部分50はポストの自由端44よりも先に延びる。必要ならば、インサートの内面又はポストの表面に、流体を回転させるように流体を導くのを助ける構造物を形成することができる。
【0079】
この実施形態では、それぞれの溝を通って室に入った流体が室内で同じ回転方向に回転するように、全ての溝が同じ方向に傾いている。しかしながら、溝からの流体流れが異なる方向に回転するように、一部の溝を反対方向に傾けることもできる。本体の端壁の別々の入口開口56から2つの流体が入り、ポストの別々の溝54に導かれ、その結果、これらの流体が室14内で混合されるように、本体30及びインサート32を適合させることもできる。
【0080】
図16及び17に示されたノズル10は、手動で作動されるディスペンサの部分を構成することができ、又はエアゾール缶などのアクチュエータ/ノズルに組み込むことができる。
【0081】
最も実用的で最も好ましい実施形態であると現時点で考えられるものに関して本発明を説明したが、本発明は、開示された配置に限定されず、むしろ、本発明の趣旨及び範囲に含まれるさまざまな変更及び等価の構造を包含することが意図されていることを理解されたい。
【0082】
本明細書では用語「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含まれる(comprised)」又は「含む(comprising)」が使用されているが、これらの用語は、言及された特徴、完全体、ステップ又は構成要素の存在を明示するものと解釈すべきであるが、1つ又は複数の他の特徴、完全体、ステップ、構成要素又はこれらのグループの存在又は追加を妨げない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体入口と、流体をスプレーの形態で中を通してノズルから放出することができる出口オリフィスと、前記流体入口を前記出口オリフィスに流体接続する流体流れ通路とを有するノズルであって、前記通路が、前記出口オリフィスのすぐ上流に渦流室を含み、前記渦流室が対向する前端面と後端面とを有し、前記通路がさらに、中を通して流体を前記渦流室内へ導入することができる少なくとも1つの入口オリフィスを含み、ノズルの前記出口オリフィスが前記渦流室の前記前端面に形成されたノズルにおいて、前記渦流室が、前記前端面から前記後端面まで測定した0.03mmから0.6mmまでの範囲の最小長、及び10:1から40:1までの範囲の最大幅Wmaxと最小長Lminの比(Wmax/Lmin)を有することを特徴とするノズル。
【請求項2】
前記室の横断面が概ね円形であり、前記最大幅Wmaxがその最大径Dmaxである、請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
前記渦流室が、0.1mmから0.3mmまでの範囲の最小長を有する、請求項1又は請求項2に記載のノズル。
【請求項4】
前記出口オリフィスを取り巻く中心領域における前記渦流室の長さが、前記中心領域を取り巻く半径方向外側の領域における前記渦流室の長さよりも短くなるように、前記渦流室の長さがその直径を横切って変化する、請求項1から3のいずれか一項に記載のノズル室。
【請求項5】
前記渦流室の前記前端面が、前記渦流室の長さを変化させるような形状に形成された、請求項4に記載のノズル。
【請求項6】
前記渦流室の前記前端面が、前記後端面に向かって内部で突き出た円錐台形部分を前記中心領域に有する壁によって画定された、請求項5に記載のノズル。
【請求項7】
前記少なくとも1つの渦流室入口オリフィスが、前記渦流室の前記後端面を通して前記渦流室内へ流体を導くように構成された、前記請求項のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項8】
前記入口から前記室の少なくとも一部分を横切って延び、その後、前記室の前記前端面の表面領域と接触する経路に沿って非接線方向に、前記後端面を通して前記渦流室内へ流体を導くように、前記少なくとも1つの渦流室入口オリフィスが構成された、請求項7に記載のノズル。
【請求項9】
前記室内で前記流体が前記室の縦軸の周りを回転するように、前記軸に対してある角度で流体を前記室内へ導くよう前記渦流室入口オリフィス又はそれぞれの渦流室入口オリフィスが配置された、請求項7又は請求項8に記載のノズル。
【請求項10】
渦流室入口オリフィスが2つ以上あり、前記渦流室入口オリフィスがそれぞれ、前記室の前記後端面を通して前記室内へ流体を導くように構成された、前記請求項のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項11】
前記2つ以上の渦流室入口オリフィスが、前記室の前記後端面に対して非接線方向の経路に沿って前記渦流室内へ前記流体を導くように構成された、請求項10に記載のノズル。
【請求項12】
前記2つ以上の渦流室入口オリフィスが、前記室内の交差しない経路に沿って前記室内へ流体を導くように構成された、請求項10又は請求項11に記載のノズル。
【請求項13】
前記2つ以上の渦流室入口オリフィスが、実質的に平行な経路に沿って前記室内へ流体を導くように構成された、請求項12に記載のノズル。
【請求項14】
前記2つ以上の渦流室入口オリフィスのうちの少なくとも1つの渦流室入口オリフィスが、前記2つ以上の入口オリフィスのうちの少なくとも1つの他の渦流室入口オリフィスよりも大きな最小断面積を有する、請求項10から13のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項15】
前記渦流室内へ流体を導く入口オリフィスが4つ以上ある、請求項10から14のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項16】
全ての前記入口オリフィスから前記室内へ同じ流体が供給されるように構成された、請求項10から15のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項17】
前記流体が液体又は液体/気体混合物である、請求項16に記載のノズル。
【請求項18】
前記入口オリフィスのうちの少なくとも1つの入口オリフィスを通して第1の流体源から第1の流体を前記室内へ供給することができ、前記入口オリフィスのうちの少なくとも1つの他の入口オリフィスを通して第2の流体源から第2の流体を前記室内へ供給することができるように構成された、請求項10から15のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項19】
前記第1の流体が、液体及び液体と気体の混合物のうちの一方である、請求項18に記載のノズル。
【請求項20】
前記第2の流体が、液体、液体と気体の混合物及び気体のうちの1つである、請求項18又は請求項19に記載のノズル。
【請求項21】
前記第1の流体と前記第2の流体とを前記室内で同じ全体的な方向に回転させるように、前記入口オリフィスが構成された、請求項18から20のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項22】
前記第1の流体と前記第2の流体とを前記室内で概ね反対方向に回転させるように、前記入口オリフィスが構成された、請求項18から20のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項23】
前記流体流れ通路手段が、直列に配置された前記渦流室のうちの2つ以上の渦流室を含む、前記請求項のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項24】
前記流体流れ通路手段が、直列に配置された前記渦流室のうちの2つ以上の渦流室を含む、請求項1から23のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項25】
前記直列の最後の室の出口オリフィスが前記ノズルの最後の出口オリフィスを含む、請求項24に記載のノズル。
【請求項26】
前記流体流れ通路手段が、並列に配置された前記渦流室のうちの2つ以上の渦流室を含み、それぞれの前記渦流室の出口オリフィスが前記ノズルの最後の出口オリフィスである、前記請求項のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項27】
出口オリフィスを2つ以上有する、前記請求項のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項28】
2つ以上の出口オリフィスが、前記渦流室又はそれぞれの渦流室の前面を貫通して延びる、請求項27に記載のノズル。
【請求項29】
前記ノズルの外側前面の前記出口オリフィス又はそれぞれの出口オリフィスの周りに円錐台形の凹みが形成された、前記請求項のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項30】
前記円錐台形の外側凹みが、前記それぞれの出口オリフィスの長さが最小になるように構成された、請求項29に記載のノズル。
【請求項31】
流体入口と、流体をスプレーの形態で中を通してノズルから放出することができる出口オリフィスと、前記流体入口を前記出口オリフィスに流体接続する流体流れ通路手段とを有するノズルであって、前記通路が、前記出口オリフィスのすぐ上流に渦流室を含み、前記渦流室の横断面が円形であり、前記渦流室が対向する前端面と後端面とを有し、前記通路がさらに、中を通して流体を前記渦流室内へ導入することができる少なくとも1つの入口オリフィスを含み、ノズルの前記出口オリフィスが前記渦流室の前記前端面に形成されたノズルにおいて、前記渦流室が、前記前端面から前記後端面まで測定した0.03mmから0.6mmまでの範囲の最小長、及び10:1から40:1までの範囲の直径と最小長の比(D/L)を有することを特徴とするノズル。
【請求項32】
請求項31及び請求項1から31のいずれか一項に記載のノズル。
【請求項33】
請求項1から32のいずれか一項に記載のノズル配置を含む流体ディスペンサ。
【請求項34】
前記ディスペンサがエアゾール・キャニスタである、請求項33に記載の流体ディスペンサ。
【請求項35】
前記エアゾール・キャニスタが液体製品を含み、前記液体製品が、少なくとも部分的に前記液体製品に溶解した状態で存在する噴射剤を含む、請求項34に記載の流体ディスペンサ。
【請求項36】
前記ディスペンサが手動で作動するポンプ・ディスペンサである、請求項33に記載の流体ディスペンサ。
【請求項37】
液体と空気などの気体との混合物を分配するように構成された、請求項36に記載の流体ディスペンサ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公表番号】特表2009−545433(P2009−545433A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522323(P2009−522323)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【国際出願番号】PCT/GB2007/002894
【国際公開番号】WO2008/015409
【国際公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(509029483)インクロ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】