説明

バスバー接続具

【課題】重ね合わせ状態のバスバーに接圧を与えて接続する作業を容易にすることが可能なバスバー接続具を提供する。
【解決手段】バスバー接続具20は、一対の撓み片31,31を弾性拡開させる拡開位置35Bと一対の撓み片31,31を弾性拡開させない非拡開位置35Aとに移動可能な撓み片拡開手段35を備え、撓み片拡開手段35が拡開位置35Bにあるときに、重ね合わせバスバー15を一対の撓み片31,31の突出する方向に対して略直交する方向から一対の撓み片31,31間に挿通し、撓み片拡開手段35を拡開位置35Bから非拡開位置35Aに移動させて一対の撓み片31,31を復元変形させることで重ね合わせバスバー15が一対の撓み片31,31間に挟み込まれて接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバー接続具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに異なる機器に連なる2枚のバスバーを重ね合わせ状態とし、この重ね合わせ状態のバスバーを弾性部材で挟みつけることでバスバー間に接圧を与えて接続するようにした技術が知られている。
【0003】
下記特許文献1は、雄コネクタの雄バスバーと雌コネクタの雌バスバーとをコネクタ嵌合時に重ね合わせ状態とし、ボルトを回して移動ブロックを重ね合わせ状態のバスバー側に移動させる。これにより、移動ブロック内に固定されたバネのU字状の弾性接触片が弾性拡開して重ね合わせ状態のバスバーがU字状の弾性接触片の内側に挿通されるとともに、弾性接触片の弾性反発力で重ね合わせ状態のバスバーを挟み込んで接圧を与えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−18579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の構成のように、重ね合わせ状態のバスバーをU字状の弾性接触片に当接させて弾性接触片を弾性拡開させる場合には、重ね合わせ状態のバスバーの接続の際に強い力が必要となる。特許文献1では強い力を与えるためにボルトを回転させて移動ブロックを少しずつ移動させているが、このようにボルトを回転させて移動ブロックを移動させる場合には、重ね合わせ状態のバスバーの接続作業が煩雑になりやすいという問題がある。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、重ね合わせ状態のバスバーに接圧を与えて接続する作業を容易にすることが可能なバスバー接続具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、それぞれ接続用バスバーを有する一方及び他方の機器における複数の前記接続用バスバーを重ね合わせ状態として構成された重ね合わせバスバーを、合成樹脂製のハウジングに収容された弾性部材の一対の撓み片間に挟み込んで接続するバスバー接続具において、前記一対の撓み片を弾性拡開させる拡開位置と前記一対の撓み片を弾性拡開させない非拡開位置とに移動可能な撓み片拡開手段を備え、前記撓み片拡開手段が前記拡開位置にあるときに、前記重ね合わせバスバーを前記一対の撓み片の突出する方向に対して略直交する方向から前記一対の撓み片間に挿通し、前記撓み片拡開手段を前記拡開位置から前記非拡開位置に移動させて前記一対の撓み片を復元変形させることで前記重ね合わせバスバーが前記一対の撓み片間に挟み込まれて接続される構成としたところに特徴を有する。
【0008】
本構成によれば、撓み片拡開手段が拡開位置にあって一対の撓み片間が弾性拡開されているときに重ね合わせバスバーを一対の撓み片間に挿通することで、重ね合わせバスバーを一対の撓み片間に挿通する際に、一対の撓み片を強い力で弾性拡開させる必要がないため、容易に重ね合わせバスバーを一対の撓み片間に挿通することが可能になる。よって、重ね合わせ状態のバスバーに接圧を与えて接続する作業を容易にすることが可能になる。
【0009】
また、重ね合わせバスバーを一対の撓み片の突出する方向に対して略直交する方向から一対の撓み片間に挿通するため、一対の撓み片の突出する方向について、バスバー接続具を小型化することが可能になる。
【0010】
上記構成の実施態様として以下の構成を有すれば好ましい。
・前記撓み片拡開手段は、前記一対の撓み片の先端側から前記一対の撓み片間に進入する。
このようにすれば、重ね合わせバスバーが挿通されない側を一対の撓み片を拡開させるために利用することができる。
【0011】
・前記撓み片拡開手段を前記非拡開位置から前記拡開位置に移動させるための倍力機構を備える。
このようにすれば、倍力機構により非拡開位置から拡開位置への移動を容易にすることができる。
【0012】
・前記倍力機構は、前記撓み片拡開手段に当接し、所定角度回転可能なカム部と、前記カム部に連なる把持部と、を備える倍力部材からなる。
このようにすれば、把持部を操作してカム部を所定角度回転させれば、撓み片拡開手段を非拡開位置から拡開位置に移動させることが可能になるため、より一層、重ね合わせ状態のバスバーに接圧を与えて接続する作業を容易にすることが可能になる。
【0013】
・前記倍力部材は、前記ハウジングに設けられた軸部が挿通される軸部挿通孔が設けられるとともに、前記軸部の軸方向に分割された第1部材と第2部材とを有し、前記第1部材に被係止部が設けられるとともに、前記第2部材には、前記被係止部に係止して前記第1部材と前記第2部材との組み付け状態を保つ係止部が設けられている。
このようにすれば、倍力部材のハウジングへの組み付けを容易にすることができる。
【0014】
・前記倍力機構は、前記撓み片拡開手段と前記ハウジングとの間をネジ留めして行うものである。
このようにすれば、簡素な構成で撓み片拡開手段を拡開位置と非拡開位置とに移動することが可能となる。
【0015】
・前記撓み片拡開手段は、前記一対の撓み片の各内面側に当接して前記一対の撓み片を拡開させる当接部が設けられている。
このようにすれば、一対の撓み片を拡開させる構成を簡素化することができる。
【0016】
・前記ハウジングに並んで設けられた複数の収容室に複数の前記弾性部材がそれぞれ収容されており、前記当接部は、前記撓み片拡開手段に複数設けられている。
このようにすれば、複数の弾性部材の一対の撓み片について、一括して弾性拡開させることが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、重ね合わせ状態のバスバーに接圧を与えて接続する作業を容易にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1に係るバスバー接続具を示す斜視図
【図2】バスバー接続具を示す平面図
【図3】バスバー接続具を示す側面図
【図4】倍力部材を拡開角度まで回転させた状態のバスバー接続具を示す側面図
【図5】バスバー接続部の分解斜視図
【図6】ハウジングに撓み片拡開手段が装着された状態を示す斜視図
【図7】ハウジングに撓み片拡開手段が装着された状態を示す平面図
【図8】ハウジングに撓み片拡開手段が装着された状態を示す左側面図
【図9】ハウジングに撓み片拡開手段が装着された状態を示す右続面図
【図10】撓み片拡開手段を示す正面図
【図11】撓み片拡開手段を示す平面図
【図12】撓み片拡開手段を示す
【図13】弾性部材を示す正面図
【図14】弾性部材を示す側面図
【図15】倍力部材が第1部材と第2部材に分割された状態のバスバー接続具を示す斜視図
【図16】バスバー接続部の被取付部材への取り付けを概略的に示す図
【図17】撓み片拡開手段が非拡開位置にある状態のバスバー接続具を示す断面図
【図18】図17の状態から撓み片拡開手段が拡開位置に移動した状態のバスバー接続具を示す断面図
【図19】図18の状態から重ね合わせバスバーが接点部間に挿入された状態のバスバー接続具を示す断面図
【図20】図19の状態から撓み片拡開手段を非拡開位置に戻した状態のバスバー接続具を示す断面図
【図21】実施形態2に係るバスバー接続具を示す斜視図
【図22】バスバー接続具を示す平面図
【図23】バスバー接続具を示す正面図
【図24】バスバー接続具を示す底面図
【図25】バスバー接続具を示す側面図
【図26】撓み片拡開手段を示す斜視図
【図27】撓み片拡開手段を示す底面図
【図28】撓み片拡開手段を示す背面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図20を参照しつつ説明する。
本実施形態のバスバー接続具20は、図16に示すように、例えば、自動車等の車両に配された一方の機器11及び他方の機器13のそれぞれから延出された接続用バスバー12,14A間に接圧を生じさせて接続用バスバー12,14Aを接続するものである。以下では、上下方向については、図3を基準とし、前後方向については、図3の右方を前方、左方を後方として説明する。
【0020】
(機器)
一方の機器11は、図16に示すように、機器本体(図示しない)を箱形の機器ケース11Aに収容している。この機器ケース11Aは金属製で、例えば自動車のボディに固定されている。
この機器11には、内部の機器11本体から機器ケース11Aの上面に設けられた挿通孔(図示しない)を通って上方に突出する複数本(図16では7本)の板状の接続用バスバー12が、左右方向(接続用バスバー12の厚み方向)に等間隔で並んで設けられている。
【0021】
他方の機器13は、車両内において一方の機器11とは異なる箇所に配されており、この他方の機器13から複数のバスバー14が左右方向に延びている。
複数のバスバー14は、その末端側がL字型に屈曲されており、屈曲部分よりも先は、上下方向に延びる板状の接続用バスバー14Aとされている。
【0022】
なお、他方の機器13からバスバー14ではなく、電線を介して接続用バスバー14Aに接続するようにすることも可能であり、この場合、電線の端末に圧着等の公知の接続手段により取付けられる端子金具に接続用バスバー14Aを形成すればよい。
【0023】
一方の機器11の接続用バスバー12と他方の機器13の接続用バスバー14Aは、互いに接触若しくはわずかな隙間を生じて対向配置されることで互いに重なり合っており、これにより2枚の接続用バスバー12,14Aが重ね合わされた状態の重ね合わせバスバー15が構成されている。
【0024】
(バスバー接続具)
バスバー接続具20は、図5に示すように、合成樹脂製のハウジング21と、ハウジング21に収容され、一対の撓み片31,31を備える複数の弾性部材30と、ハウジング21の開放された前面に被せられ一対の撓み片31,31を弾性拡開させる撓み片拡開手段35と、撓み片拡開手段35を移動させる倍力部材42(本発明の構成である「倍力機構」の一例)と、を備えている。
【0025】
(ハウジング)
ハウジング21は、図17に示すように、複数(本実施形態では7個)の弾性部材30が収容される複数(本実施形態では7室)の収容室22が左右に並んで設けられており、ハウジング21の前面側は、撓み片拡開手段35が装着可能な装着凹部23として前方に開放されている。
各収容室22間は、仕切り壁24によって仕切られている。
【0026】
各仕切り壁24の前方側には、図6に示すように、後述する撓み片拡開手段35の嵌め込み凹部37A,37Bを嵌め込んで位置決めするための嵌め込み凸部21A,21Bが形成されている。
下方側の嵌め込み凸部21Bは、上方側の嵌め込み凸部21Aよりも上下方向に長く形成されている。
これら嵌め込み凸部21A,21Bの突出寸法を撓み片拡開手段35の厚みよりも大きくすることで、各仕切り壁24の前端部には、長方形状の切欠部25が凹設されている。切欠部25は、撓み片拡開手段35が一対の撓み片31,31を拡開させない非拡開位置35Aと一対の撓み片31,31を拡開させる拡開位置35Bとの間の寸法に応じて各仕切り壁24の前端から後方側に所定寸法切欠かれている。この切欠部25内に撓み片拡開手段35が前方や後方にクリアランスを有しつつ配されることで撓み片拡開手段35が非拡開位置35Aと拡開位置35Bとの間を前後に移動可能となっている。
【0027】
各収容室22の各上壁22Aには、前後方向に延びる溝部26が貫通形成されている。溝部26は、重ね合わせバスバー15が挿入された際に、重ね合わせバスバー15の先端の上壁22Aへの当接を回避するための逃げとされている。なお、溝部26は、上記した重ね合わせバスバー15の逃げとするものに限らず、重ね合わせバスバー15の挿入状態を視認する視認窓として機能させるようにすることができる。この場合、重ね合わせバスバー15の先端が収容室22内に配される状態を挿入の終端位置としてもよい。
【0028】
各収容室22の下壁22Bには、図5に示すように、前後方向に延びるバスバー挿入溝27が貫通形成されている。
バスバー挿入溝27の溝壁は、下方から上方に向けてテーパ状にバスバー挿入溝27の幅を狭くするガイド面27Aが形成されている。このガイド面27Aに当接した重ね合わせバスバー15はガイド面27Aに摺接して収容室22内に案内される。
ハウジング21の両側面には、側方に突出する円柱状の軸部28と、側方に板状に突出する取付部29とがそれぞれ形成されている。
【0029】
取付部29には、円形状の取付孔29Aが貫通形成されている。取付孔29Aには、ボルトBTが挿通される円筒形状の金属であるカラー29Bが嵌め込まれている。被取付部材16への取り付けの際には、例えば、図16に示すように、取付孔29Aに通したボルトBTを被取付部材16に設けられたボルト孔16Aにボルト締めすることでバスバー接続具20が被取付部材16に取り付けることができる。なお、ハウジング21をシールド機能を生じさせる金属製のシールドシェルで覆うようにし、シールドシェルを被取付部材16に取り付けるようにしてもよい。
【0030】
(弾性部材)
弾性部材30は、例えば、ステンレス又は鉄からなる金属製であって、帯状の金属板材を略U字状に曲げ加工を施して形成されており、図13に示すように、一対の撓み片31,31と、一対の撓み片31,31の基端部を一体に連ねる連結部41とからなる。
【0031】
一対の撓み片31,31間は、後端の連結部41から前後方向(撓み片の延出方向)の中間部にかけて幅寸法が小さくなるように傾斜した縮径部32,32と、そこから先端側にかけて一対の撓み片31,31間の幅寸法が大きくなるように傾斜した拡径部34,34とを有する。この拡径部34,34間に後述する撓み片拡開手段35が進入することで一対の撓み片31,31を拡開させるようになっている。
【0032】
また、縮径部32,32における拡径部34,34側には、一対の撓み片31,31を内側に突出させて重ね合わせバスバー15を挟み込む接点部33,33が形成されている。
この接点部33,33間の寸法(拡径部34,34を拡開させる前の接点部33,33の内面間の寸法)は、重ね合わせバスバー15について2枚の接続用バスバー12,14Aを隙間なく密着させた状態の厚み寸法よりもわずかに小さい。これにより、一対の撓み片31,31の間に重ね合わせバスバー15が挿入されると、一対の撓み片31,31を弾性拡開させるとともに一対の撓み片31,31の弾性的な復元力により重ね合わせバスバー15に対して接圧を生じさせた状態で挟持する。
【0033】
(撓み片拡開手段)
撓み片拡開手段35は、合成樹脂製の部材であって、図10に示すように、ハウジング21の装着凹部23に嵌め込まれる板状部36と、板状部36の左右に突出する棒状部40とを備える。
板状部36の上端部には、ハウジング21の嵌め込み凸部21A,21Bが嵌め込まれる矩形状の嵌め込み凹部37A,37Bが所定間隔毎に設けられている。
【0034】
板状部36の下端部には、ハウジング21のバスバー挿入溝27に連なる凹部38が形成されている。
板状部36の後面には、図17に示すように、弾性部材30の拡径部34,34に当接して拡径部34,34を拡開させる当接凸部39(本発明の構成である「当接部」の一例)が設けられている。
当接凸部39は、先端側の幅寸法がやや細径に形成された台形状であって、弾性部材30の上下方向の径のほぼ全体に亘るように上下方向に延びている。この当接凸部39の側面が拡径部34に当接して一対の撓み片31,31を拡開させる当接面39Aとなっている。
棒状部40は、円柱状であって、その軸方向が外方側に向けて水平に突出している。
【0035】
この撓み片拡開手段35は、前後方向の位置によって、一対の撓み片31,31を弾性拡開させない非拡開位置35A(図8,図17の位置)と、一対の撓み片31,31を弾性拡開させる拡開位置35B(図18の位置)とに移動可能になっている。
撓み片拡開手段35に使用される合成樹脂は、拡径部34,34に当接して一対の撓み片31,31を弾性拡開させてもほとんど塑性変形しない程度の強度(剛性)を有するものが使用される。
【0036】
(倍力部材)
倍力部材42は、所定角度回転させることにより、撓み片拡開手段35を非拡開位置35Aとする非拡開角度(図1,3)と、撓み片拡開手段35を拡開位置35Bとする拡開角度(図4)との間の所定角度を回転可能に構成されたものであり、図1に示すように、ハウジング21の両側に設けられ軸部28を中心に回転可能なカム部43と、作業者が把持することが可能な把持部47とを有している。
【0037】
カム部43は、このカム部43を回転させる力を撓み片拡開手段35を前後方向に移動させる力に変換するものであり、このカム部43の内部に軸部28が挿通される軸部挿通孔44と、撓み片拡開手段35の棒状部40を付勢して前後方向に移動させるための付勢孔43Aが貫通形成されている。
軸部挿通孔44は、カム部43を回転させるために設けられており、軸部28がわずかな隙間を有して挿通される円形状の貫通孔である。
付勢孔43Aは、概ね弧状(略L字状)の貫通孔であり、カム部43を所定角度回転させた際に、棒状部40が付勢孔43の孔縁に摺接しつつ付勢されて棒状部40(撓み片拡開手段35)を前後方向に移動させることが可能な曲率で弧状に形成されている。
【0038】
この倍力部材42は、図15に示すように、左右方向に第1部材42Aと第2部材42Bとを連結して構成されており、第1部材42Aには、被係止部45が上方に突出するとともに、第2部材42Bには、被係止部45に係止して両部材を連結状態に保持する係止部46が設けられている。
被係止部45は、左端が段差状に突出し、第2部材42B側に向けて傾斜状に突出寸法が小さくなる形状をなす。
係止部46は、被係止部45を孔縁に係止する係止孔46Aを有し、先端側に摘み片が第1部材42Aに対して反り返った形状をなしている。
第1部材42Aと第2部材42Bの連結部分には、第1部材42Aに連結凸部48Aが設けられるとともに、第2部材42Bに連結凸部48Aが嵌め込まれる連結凹部48Bが設けられている。
【0039】
次に、バスバー接続具20による重ね合わせバスバー15の接続について説明する。
まず、図17のように、非拡開角度(垂直方向)にある倍力部材42を拡開角度(垂直よりもやや斜め方向)に回転させる。これにより、撓み片拡開手段35が非拡開位置35Aから拡開位置35Bに移動し、撓み片拡開手段35の当接凸部39が一対の撓み片31,31の拡径部34,34に当接し、一対の撓み片31,31を弾性拡開する(図18)。
【0040】
そして、バスバー接続具20を重ね合わせバスバー15の上方から重ね合わせバスバー15側に下降させる。すると、重ね合わせバスバー15がバスバー挿入溝27に挿通されるとともに、弾性部材30の一対の撓み片31,31間に重ね合わせバスバー15が進入し、接点部33,33間に挿通される(図19)。
【0041】
そして、拡開角度(図4)にある倍力部材42を非拡開角度(図3)に回転させると、撓み片拡開手段35が拡開位置35Bから非拡開位置35Aに後退し、一対の撓み片31,31が弾性復元して、重ね合わせバスバー15が接点部33,33間に挟持される(図20)。
【0042】
本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏する。
(1)それぞれ接続用バスバー12,14Aを有する一方及び他方の機器11,13における複数の接続用バスバー12,14Aを重ね合わせ状態として構成された重ね合わせバスバー15を、合成樹脂製のハウジング21に収容された弾性部材30の一対の撓み片31,31間に挟み込んで接続するバスバー接続具20において、一対の撓み片31,31を弾性拡開させる拡開位置35Bと一対の撓み片31,31を弾性拡開させない非拡開位置35Aとに移動可能な撓み片拡開手段35を備え、撓み片拡開手段35が拡開位置35Bにあるときに、重ね合わせバスバー15を一対の撓み片31,31の突出する方向に対して略直交(概ね直交)する方向から一対の撓み片31,31間に挿通し、撓み片拡開手段35を拡開位置35Bから非拡開位置35Aに移動させて一対の撓み片31,31を復元変形させることで重ね合わせバスバー15が一対の撓み片31,31間に挟み込まれて接続される。
【0043】
本実施形態によれば、撓み片拡開手段35が拡開位置35Bにあって一対の撓み片31,31間が弾性拡開されているときに重ね合わせバスバー15を一対の撓み片31,31間に挿通することで、重ね合わせバスバー15を一対の撓み片31,31間に挿通する際に、一対の撓み片31,31を強い力で弾性拡開させる必要がないため、容易に重ね合わせバスバー15を一対の撓み片31,31間に挿通することが可能になる。よって、重ね合わせ状態のバスバーに接圧を与えて接続する作業を容易にすることが可能になる。
【0044】
また、重ね合わせバスバー15を一対の撓み片31,31の突出する方向に対して略直交する方向から一対の撓み片31,31間に挿通するため、一対の撓み片31,31の突出する方向について、バスバー接続具20を小型化することが可能になる。
【0045】
(2)撓み片拡開手段35は、一対の撓み片31,31の先端側から一対の撓み片31,31間に進入する。
このようにすれば、重ね合わせバスバー15が挿通されない側を一対の撓み片31,31を拡開させるために利用することができる。
【0046】
(3)撓み片拡開手段35を非拡開位置35Aから拡開位置35Bに移動させるための倍力部材42(倍力機構)を備える。
このようにすれば、倍力機構により非拡開位置35Aから拡開位置35Bへの移動を容易にすることができる。
【0047】
(4)倍力機構は、所定角度の回転で撓み片拡開手段35を拡開位置35Bと非拡開位置35Aとに移動可能なカム部43と、カム部43に連なる把持部47と、を備える倍力部材42からなる。
このようにすれば、把持部47を操作してカム部43を所定角度回転させれば、撓み片拡開手段35を非拡開位置35Aから拡開位置35Bに移動させることが可能になる。よって、より一層、重ね合わせ状態のバスバーに接圧を与えて接続する作業を容易にすることが可能になる。
【0048】
(5)倍力部材42は、ハウジング21に設けられた軸部28が挿通される軸部挿通孔44が設けられるとともに、軸部28の軸方向に分割された第1部材42Aと第2部材42Bとを有し、第1部材42Aに被係止部45が設けられるとともに、第2部材42Bには、被係止部45に係止して第1部材42Aと第2部材42Bとの組み付け状態を保つ係止部46が設けられている。
このようにすれば、倍力部材42のハウジング21への組み付けを容易にすることができる。
【0049】
(6)撓み片拡開手段35は、一対の撓み片31,31の各内面側に当接して一対の撓み片31,31を拡開させる当接凸部39(当接部)が設けられている。
このようにすれば、一対の撓み片31,31を拡開させる構成を簡素化することができる。
【0050】
(7)ハウジング21に並んで設けられた複数の収容室22に複数の弾性部材30がそれぞれ収容されており、当接凸部39(当接部)は、撓み片拡開手段35に複数設けられている。
このようにすれば、複数の弾性部材30の一対の撓み片31,31について、一括して弾性拡開させることが可能になる。
【0051】
<実施形態2>
実施形態2について、図21〜28を参照しつつ説明する。実施形態1では、倍力機構としてカム部43を有する倍力部材42を用いたが、実施形態2では、倍力機構としてネジ61とナット62を用いるものである。以下では、上下方向については、図23を基準として説明し、前後方向については、図22の下方を前方、上方を後方として説明する。また、実施形態1と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
(バスバー接続具)
バスバー接続具50は、図21に示すように、合成樹脂製のハウジング51と、ハウジング51に収容され、複数の弾性部材30と、ハウジング51の開放された前面に被せられ一対の撓み片31,31を弾性拡開させる撓み片拡開手段54と、撓み片拡開手段54を移動させる倍力部材60(本発明の構成である「倍力機構」の一例)とを備えている。
【0053】
(ハウジング)
ハウジング51は、弾性部材30が収容される収容室22が左右に複数(7室)並んで設けられており、各収容室22は仕切り壁24で仕切られるとともに、前方側が開放されることにより、撓み片拡開手段54が装着可能な装着凹部52が形成されている。
【0054】
各収容室22の各上壁22Aには、前後方向に延びる溝部26が貫通形成されている。
各収容室22の下壁22Bには、図23に示すように、前後方向に延びるバスバー挿入溝57が貫通形成されている。バスバー挿入溝57は、下方がテーパ状に拡径されている。
【0055】
ハウジング51の前面側の両側端部には、図21に示すように、前方側に突出する一対の係止片57,57が左右に撓み変形可能に設けられている。
係止片57,57の先端部には、互いに向かい合う方向(内方側)に突出する係止爪57A,57Aが設けられており、ハウジング51の前面と係止爪57A,57Aとの間に撓み片拡開手段54の板状部55が配される。
【0056】
また、ハウジング51の両側面には、左右に板状に突出する被締結部53と取付部29が形成されている。
被締結部53は、ハウジング51の後面に連なるように設けられており、ネジ61の軸部が挿通される通し孔53Aが貫通形成されている。
【0057】
(撓み片拡開手段)
撓み片拡開手段54は、合成樹脂製であって、図26に示すように、ハウジング51の装着凹部52に嵌め込まれる長方形状(帯状)の板状部55と、板状部55の左右に面一に延出される被締結部56とを備える。
板状部55の下端部には、ハウジング51のバスバー挿入溝27に連なる凹部38が形成されている。
【0058】
板状部55の後面には、弾性部材30の拡径部34,34に当接して拡径部34,34を拡開させる当接凸部39が設けられている。
被締結部56は、撓み片拡開手段54がハウジング51に装着されるとハウジング51の被締結部53と平行な位置関係となる。
【0059】
被締結部56は、中心部にネジ61の軸部を挿通可能な円形状の通し孔56Aが貫通形成されている。
被締結部56の板状部55に連なる部分には、撓み片拡開手段54をハウジング51に係止するための係止孔59が設けられている。この係止孔59の孔縁にハウジング51の係止片57の係止爪57Aが係止可能とされることで、撓み片拡開手段54をハウジング51に装着した状態に保持する。
【0060】
この撓み片拡開手段54は、前後方向の位置によって、一対の撓み片31,31を弾性拡開させない非拡開位置(図24の位置)と、一対の撓み片31,31を弾性拡開させる拡開位置(図示しない)とに移動可能になっている。
撓み片拡開手段54に使用される合成樹脂は、拡径部34,34に当接して一対の撓み片31,31を弾性拡開させてもほとんど塑性変形しない程度の強度(剛性)を有するものが使用される。
【0061】
(倍力部材)
倍力部材60は、軸部と頭部を有するネジ61と、ネジ61の軸部に螺合するナット62とからなる。被締結部53と被締結部56との間が所定間隔離れた状態のまま被締結部53,56をネジ留めすることで、撓み片拡開手段54を非拡開位置から拡開位置に移動させることができる。また、一対の撓み片31,31間に重ね合わせバスバー15を挿通した後は、ネジを緩めれば、一対の撓み片31,31の弾性反発力で、撓み片拡開手段54を拡開位置から被拡開位置に移動させることができる。
実施形態2によれば、倍力部材60(倍力機構)は、撓み片拡開手段54とハウジング51との間をネジ留めして行うものであるため、簡素な構成で撓み片拡開手段54を拡開位置と非拡開位置とに移動することが可能となる。
【0062】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)弾性部材30には、ステンレス又は鉄を用いることとしたが、これに限らず、アルミニウムやアルミニウム合金、銅や銅合金等の他の金属を用いることも可能である。また、金属に限らず、接続用バスバー12,14A間の接圧を確保できる程度の弾性力を生じさせることが可能な樹脂等の部材を用いるようにしてもよい。
【0063】
(2)上記実施形態では、倍力部材42,60を用いて撓み片拡開手段35,54を移動させる構成としたが、他の倍力部材(倍力機構)を用いて撓み片拡開手段35,54を移動させてもよい。また、倍力部材42,60を用いずに、作業者自身が(強い力で)付勢するか、何らかの付勢手段を用いて、撓み片拡開手段35,54を非拡開位置と拡開位置との間で移動させる構成としてもよい。
【0064】
(3)上記実施形態では、撓み片拡開手段35,54は、合成樹脂製としたが、一対の撓み片31,31を弾性拡開できる強度を有するものであれば、これに限られず、他の材質の部材を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0065】
11…一方の機器
12…接続用バスバー
13…他方の機器
14A…接続用バスバー
15…重ね合わせバスバー
16…被取付部材
20,50…バスバー接続具
21,51…ハウジング
22…収容室
24…仕切り壁
25…切欠部
27,57…バスバー挿入溝
28…軸部
29…取付部
30…弾性部材
31,31…一対の撓み片
32…縮径部
33…接点部
34…拡径部
35,54…撓み片拡開手段
35A…非拡開位置
35B…拡開位置
37A,37B…嵌め込み凹部
39…当接凸部(当接部)
40…棒状部
42,60…倍力部材(倍力機構)
42A…第1部材
42B…第2部材
43…カム部
43A…付勢孔
44…軸部挿通孔
45…被係止部
46…係止部
47…把持部
53,56…被締結部
53A,56A…通し孔
61…ネジ
62…ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ接続用バスバーを有する一方及び他方の機器における複数の前記接続用バスバーを重ね合わせ状態として構成された重ね合わせバスバーを、合成樹脂製のハウジングに収容された弾性部材の一対の撓み片間に挟み込んで接続するバスバー接続具において、
前記一対の撓み片を弾性拡開させる拡開位置と前記一対の撓み片を弾性拡開させない非拡開位置とに移動可能な撓み片拡開手段を備え、
前記撓み片拡開手段が前記拡開位置にあるときに、前記重ね合わせバスバーを前記一対の撓み片の突出する方向に対して略直交する方向から前記一対の撓み片間に挿通し、前記撓み片拡開手段を前記拡開位置から前記非拡開位置に移動させて前記一対の撓み片を復元変形させることで前記重ね合わせバスバーが前記一対の撓み片間に挟み込まれて接続されるバスバー接続具。
【請求項2】
前記撓み片拡開手段は、前記一対の撓み片の先端側から前記一対の撓み片間に進入する請求項1記載のバスバー接続具。
【請求項3】
前記撓み片拡開手段を前記非拡開位置から前記拡開位置に移動させるための倍力機構を備える請求項1又は請求項2に記載のバスバー接続具。
【請求項4】
前記倍力機構は、前記撓み片拡開手段に当接し、所定角度回転可能なカム部と、前記カム部に連なる把持部と、を備える倍力部材からなる請求項3に記載のバスバー接続具。
【請求項5】
前記倍力部材は、前記ハウジングに設けられた軸部が挿通される軸部挿通孔が設けられるとともに、前記軸部の軸方向に分割された第1部材と第2部材とを有し、前記第1部材に被係止部が設けられるとともに、前記第2部材には、前記被係止部に係止して前記第1部材と前記第2部材との組み付け状態を保つ係止部が設けられている請求項4に記載のバスバー接続具。
【請求項6】
前記倍力機構は、前記撓み片拡開手段と前記ハウジングとの間をネジ留めして行うものである請求項3ないし請求項5のいずれか一項に記載のバスバー接続具。
【請求項7】
前記撓み片拡開手段は、前記一対の撓み片の各内面側に当接して前記一対の撓み片を拡開させる当接部が設けられている請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のバスバー接続具。
【請求項8】
前記ハウジングに並んで設けられた複数の収容室に複数の前記弾性部材がそれぞれ収容されており、
前記当接部は、前記撓み片拡開手段に複数設けられている請求項7に記載のバスバー接続具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2013−105633(P2013−105633A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248792(P2011−248792)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】