説明

バッテリ搬入装置及びバッテリユニット

【課題】バッテリユニットを安定的に保持搬送でき、生産性を向上することが可能なバッテリ搬入装置を提供する。
【解決手段】車体5に取り付けられるべくその幅方向に突出した車体取付部3を両側部に複数有するバッテリユニット1を組立ライン4に搬入するバッテリ搬入装置6であって、複数の車体取付部3のうちのそれぞれ一側部側の任意の2個に係合する2組の係合アーム7と、係合アーム7を互いに接離方向に移動させる接離手段8と、係合アーム7を上下動させる上下動手段9とを有し、各係合アーム7を互いに近接させた状態で任意の2個の車体取付部3の間に位置させ、接離手段8により各係合アーム7を互いに離間する方向に移動させて各係合アーム7を各車体取付部3に係合させ、上下動手段9により係合アーム7でバッテリユニット1を吊り上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車に搭載されるバッテリユニットを組立ラインに搬入するバッテリ搬入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、充電可能な車両駆動用バッテリを搭載した電気自動車が実用化されている。この電気自動車では、複数のバッテリを一体化したバッテリユニットが車両の床下に固定され、バッテリユニットに充電された電力によりメインモータが駆動されて車両が走行駆動される。ここで用いられるバッテリユニットは、容量が大きいほど車両を長時間走行させることができ車両の走行性能を向上させることができるが、容量が大きくなればなるほど重量が大きくなる。バッテリユニットの一例を挙げると長さ1500mm、幅1000mm、高さ300mm、重量200kg程度となる。このような大型重量物であるバッテリユニットは、専用パレット内に収容されて組立ラインに搬入されるが、人手による搬送は困難でありその取り扱いが難しい。
【0003】
このような大型重量物を搬送する技術として、重量物に固定された複数の係止ピンの一方向側から複数のフックを引っ掛けて重量物を搬送する技術が、例えば「特許文献1」に開示されている。また、長尺重量物の幅方向外側から長尺重量物をすくい上げて搬送する技術が、例えば「特許文献2」に開示されている。
【0004】
【特許文献1】実公昭56−14299号公報
【特許文献2】特公昭59−194986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気自動車用のバッテリユニットは、上述したように専用パレット内に収容されており、専用パレットの壁部が邪魔となって「特許文献2」に開示されたようにその幅方向外側からすくい上げることができない。また、バッテリユニットは水平姿勢を保ちつつ衝撃を与えずに搬送する必要があることから、「特許文献1」に開示されたように一方向側からフックを引っ掛けて搬送すると、安定性が悪いと共に重量が大きいことからバランスを崩し易くフックが外れてしまう虞がある。
【0006】
本発明は上述の問題点を解決し、バッテリユニットを安定的に保持搬送でき、生産性を向上することが可能なバッテリ搬入装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、電気自動車に搭載されるバッテリユニットを組立ラインに搬入するバッテリ搬入装置であって、前記バッテリユニットは車体に取り付けられるべくその幅方向に突出した車体取付部を両側部に複数有し、前記複数の車体取付部のうちのそれぞれ一側部側の任意の2個に係合する2組の係合アームと、前記係合アームを互いに接離方向に移動させる接離手段と、前記係合アームを上下動させる上下動手段とを有し、前記各係合アームを互いに近接させた状態で任意の2個の前記車体取付部の間に位置させ、前記接離手段により前記各係合アームを互いに離間する方向に移動させて前記各係合アームを前記各車体取付部に係合させ、前記上下動手段により前記係合アームで前記バッテリユニットを吊り上げることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のバッテリ搬入装置において、さらに前記係合アームは前記複数の車体取付部のうちの前記バッテリユニットの重心に近い任意の2個に係合することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のバッテリ搬入装置において、さらに吊り上げた前記バッテリユニットを前記組立ラインに載置する際に、前記バッテリユニットが水平方向に傾かないようにガイドするガイドピンを有することを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1ないし3の何れか1つに記載のバッテリ搬入装置によって取り扱われるバッテリユニットであって、複数のバッテリを樹脂ケースで一体化して形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、任意の2個の車体取付部のそれぞれ内側から外側に開く態様で係合アームが車体取付部に係合した状態でバッテリ搬入装置がバッテリユニットを搬送するので、安定性よくバッテリユニットを搬送することができると共に、バランスが崩れても係合アームが車体取付部から外れることがないので安全性を向上でき、生産性を向上することができる。さらに、任意の2個の車体取付部のそれぞれ内側から外側に開く態様で係合アームが車体取付部に係合するので、バッテリ搬入装置を小型化することができ、生産性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1及び図2は、本発明の一実施形態に用いられるバッテリユニットが組立ラインに搬入されるときの状態を示している。同図において、複数のバッテリを一体化して構成されたバッテリユニット1は、専用のパレット2内に収納された状態で納入される。バッテリユニット1はその重量及び絶縁性を考慮して樹脂製のケースによって覆われており、その両側部には車体に取り付けられる金属製の車体取付部3が片側4個ずつ突出した状態で1つの部品としてユニット化されている。このバッテリユニット1は、図3に示すようにパレット2から取り出された後に組立ライン4に載置され、図4に示すように車体5の底面に組み付けられる。
【0013】
上述のバッテリユニット搬入作業において、パレット2内からバッテリユニット1を取り出す必要があるが、図2に示すようにパレット2の壁部とバッテリユニット1に取り付けられている車体取付部3とが非常に近接しているため、バッテリユニット1をその幅方向から車体取付部3を把持して吊り上げることができない。
【0014】
そこで、パレット2内からバッテリユニット1を吊り上げる治具として図5に示すバッテリ搬入装置6を用いる。バッテリ搬入装置6は、片側2個ずつの2組の係合アーム7を有しており、図5において手前側の係合アーム7と奥側の係合アーム7との間隔はバッテリユニット1の幅W(図2参照)よりも若干広い幅W1に設定されており、各組の係合アーム7同士は図示しないLMガイドレール等の接離機構によって接続され、接離手段としてのシリンダ8の作動により各組同期して互いに接離自在に構成されている。なお、本実施形態では各組の係合アーム7は車両前後方向に接離自在に移動する。各組の係合アーム7は、互いに近接した図5(a)に示す第1の位置を占めた際にその先端同士の間隔Lが各車体取付部3のうち中央に位置する2個の間隔L1よりも小さくなるように設定され、互いに離間した図5(b)に示す第2の位置を占めた際にその根本同士の間隔L2が間隔L1よりも小さくなるように設定されている。また、パレット2の底面と車体取付部3の底面との間には、係合アーム7の先端が潜り込むことが可能な間隔が設けられている。さらにバッテリ搬入装置6には、その全体を上下動させる上下動手段としての上下動機構9と、その全体を前後左右方向に移動させる図示しない移動機構とが接続されている。
【0015】
上記構成より、係合アーム7が第1の位置を占めた状態でバッテリ搬入装置6を下降させ、係合アーム7がパレット2の底面と車体取付部3の底面との間に位置した図6に示す状態からモータ8を作動させて係合アーム7を第2の位置に移動させ、図7に示すように係合アーム7を車体取付部3に係合させてバッテリ搬入装置6を上昇させ、バッテリ搬入装置6を移動させて図8に示すように組立ライン4上にバッテリユニット1を載置する。
【0016】
上述の構成により、任意の2個の車体取付部3のそれぞれ内側から外側に開く態様で係合アーム7が車体取付部に係合した状態でバッテリ搬入装置6がバッテリユニット1を搬送するので、安定性よくバッテリユニット1を搬送することができると共に、バランスが崩れても係合アーム7が車体取付部3から外れることがないので安全性を向上でき、生産性を向上することができる。
【0017】
上記構成において、図8に示すように、バッテリ搬入装置6にそれぞれ孔を有する2個のアーム部材10を一体的に取り付け、各アーム部材10の孔に嵌合可能なガイドピン11を組立ライン4の近傍に設置する構成を採用してもよい。各アーム部材10に形成された孔はガイドピン11に緩く嵌合し、バッテリユニット1が上下以外の方向に移動することを緩く規制している。これにより、バッテリユニット1の水平姿勢を保つことができ、バッテリユニット1が落下することを防止することができると共に、バッテリユニット1が傾くことによってバッテリユニット1に不必要な負荷がかかることを防止することができる。
【0018】
上述した実施形態では、バッテリユニット1がその片側に4個ずつ車体取付部3を有する構成を示したが、本発明が適用可能なバッテリユニットはこれに限られず、片側に2個以上の車体取付部を有するバッテリユニットであれば本発明を適用可能である。片側に4個以上の車体取付部3を有するバッテリユニットを採用する場合には、バッテリユニットの重心に近い任意の複数箇所(例えば2個)の車体取付部を係合アーム7によって係合する構成とする。これにより、バッテリユニットの重心近傍においてバッテリ搬入装置がバッテリユニットを保持するので、バッテリユニットが歪みバッテリユニットに不必要な負荷がかかることを防止することができる。さらに、バッテリユニットの重心近傍においてバッテリ搬入装置がバッテリユニットを保持することにより、バッテリ搬入装置を小さくすることができ生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に用いられるバッテリユニット及びパレットの概略斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に用いられるバッテリユニット及びパレットの概略平面図である。
【図3】本発明の一実施形態におけるバッテリユニットの搬送形態を示す概略図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるバッテリユニットの搬送形態を示す概略図である。
【図5】本発明の一実施形態に用いられるバッテリ搬入装置を示す概略斜視図である。
【図6】本発明の一実施形態におけるバッテリユニットの搬送手順を示す概略図である。
【図7】本発明の一実施形態におけるバッテリユニットの搬送手順を示す概略図である。
【図8】本発明の一実施形態におけるバッテリユニットの搬送手順を示す概略図である。
【符号の説明】
【0020】
1 バッテリユニット
3 車体取付部
4 組立ライン
5 車体
6 バッテリ搬入装置
7 係合アーム
8 接離手段(モータ)
9 上下動手段(上下動機構)
11 ガイドピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車に搭載されるバッテリユニットを組立ラインに搬入するバッテリ搬入装置であって、
前記バッテリユニットは車体に取り付けられるべくその幅方向に突出した車体取付部を両側部に複数有し、前記複数の車体取付部のうちのそれぞれ一側部側の任意の2個に係合する2組の係合アームと、前記係合アームを互いに接離方向に移動させる接離手段と、前記係合アームを上下動させる上下動手段とを有し、前記各係合アームを互いに近接させた状態で任意の2個の前記車体取付部の間に位置させ、前記接離手段により前記各係合アームを互いに離間する方向に移動させて前記各係合アームを前記各車体取付部に係合させ、前記上下動手段により前記係合アームで前記バッテリユニットを吊り上げることを特徴とするバッテリ搬入装置。
【請求項2】
請求項1記載のバッテリ搬入装置において、
前記係合アームは前記複数の車体取付部のうちの前記バッテリユニットの重心に近い任意の2個に係合することを特徴とするバッテリ搬入装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のバッテリ搬入装置において、
吊り上げた前記バッテリユニットを前記組立ラインに載置する際に、前記バッテリユニットが水平方向に傾かないようにガイドするガイドピンを有することを特徴とするバッテリ搬入装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか1つに記載のバッテリ搬入装置によって取り扱われるバッテリユニットであって、複数のバッテリを樹脂ケースで一体化して形成されていることを特徴とするバッテリユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−73444(P2010−73444A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238593(P2008−238593)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】