説明

バブル観測方法およびその装置

【課題】水槽内で発生したマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方(バブル)の挙動を画像で正確に観測できるバブル観測方法およびその装置を提供する。
【解決手段】水槽2のバイパス配管系に透明の観測用セル5を設け、バブル発生源1およびバブル発生ノズル3により水槽2内で発生したバブルを含んだバブル水の一部をサンプルとしてバイパス配管系の観測用セル5に取り出し、照明光学系9により照射された観測用セル5内を撮像装置8で捉えた画像に関するデジタルデータを、パーソナルコンピュータ10により画像処理しバブルを画像データとして出力する。水槽2内で発生したバブルの挙動を、照明光学系9および撮像装置8が準備された観測用セル5内に取り出し、バブルを画像で捉えて、そのバブル径の分布や個数および挙動などを観測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方のバブル径の分布やその個数および挙動を画像で観測するバブル観測方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バブル発生装置より発生したマイクロバブルのバブル径の分布やその個数等を計測して発生したマイクロバブルの現状を把握することによって、さらに小さなマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方(以下、これらを単に「バブル」という)の発生やバブル密度等が向上したバブル発生装置の開発指針が導ける。
【0003】
バブル発生装置から発生したバブルのバブル径の分布や個数等の計測は、一般的に、微細粒子にレーザ光を照射して、その散乱光の強度や分布から径を計測する光散乱方式で行われている(例えば、特許文献1−3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−104150号公報(第3−4頁、図1−2)
【特許文献2】特開2007−263876号公報(第4−5頁、図1−4)
【特許文献3】特開2009−300099号公報(第5−8頁、図1−2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光散乱方式は、上記バブルを含む水(以下、この水を「バブル水」という)にレーザ光を照射して、水中の散乱体(バブルや異物など)を計測する方式であり、水中にバブルと共に微細異物が混入していると、それをバブルとして計測してしまい、満足の得られる結果が得られない。また、バブル径は、標準粒子と呼ばれているポリスチレンラテックス粒子(固体)が水中にある場合で校正されており、バブル(気体)が水中にある場合と屈折率が異なり正確に計測することが難しい。
【0006】
光散乱方式でバブルを直接計測する場合、照射するレーザビーム内にバブルが単体で存在しなければならない。レーザビーム内に複数個のバブルが存在すると、複数個のバブルからの散乱光が重畳されて大きなバブルが1個あるとして計測をする。このため、バブルが単分散で入った水を希釈して濃度が低い状態で少量の計測を行わなければならない。
【0007】
現在、発表されている論文や文献では、バブルは時間が経過するにつれて収縮して径が縮小すると言われている。また、大きなバブルは急速に上昇して水中から消滅する。これらのことから、バブル発生装置から発生したバブルの径や個数等の計測は、発生直後から時間の経過に伴って測らなければならない。
【0008】
バブルは、周囲の水の圧力などが変化すると径が変化したり比較的径の大きなものは浮上して消滅したりする。このため、バブル発生装置から発生したバブルを収容している水槽等からスポイト等で計測を目的としたサンプルを収集した場合、圧力等の環境が水槽内とは全く異なり、水槽内のバブルに対してバブル径が変化したり比較的径の大きなマイクロバブルは浮上して消滅したりして、その挙動を正確に観測することが難しい。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、水槽内で発生したマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方の挙動を画像で正確に観測できるバブル観測方法およびその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載された発明は、水槽内で発生したマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方を含んだバブル水の一部を水槽に対してバイパス配管された透明の観測用セル内に導入し、この観測用セル内を撮像装置で撮像して観測用セル内の水中にあるマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方を画像として捉え、このマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方の挙動を画像で観測するバブル観測方法である。
【0011】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載のバブル観測方法において、撮像装置で捉えたマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方の静止画像からバブル径の分布および個数を観測する観測方法である。
【0012】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載のバブル観測方法において、観測用セル内に、マイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方を含んだバブル水が導入された時点で、観測用セル内へのバブル水の流入を停止させ、観測用セル内でのバブル水の流動が安定した時点から観測用セル内の観測を開始する観測方法である。
【0013】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3いずれか記載のバブル観測方法において、撮像装置の観測領域として撮像装置の縦横の視野寸法と焦点深度との積により観測体積を算出し、撮像装置の観測領域におけるマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方の静止画像からバブル個数を観測し、観測体積とバブル個数とから単位体積当たりのマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方の個数を算出する観測方法である。
【0014】
請求項5に記載された発明は、バブル発生装置により水槽内で発生したマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方を含んだバブル水の一部を取り出して水槽に戻すバイパス配管系に設けられた透明の観測用セルと、この観測用セルに対して設けられた照明光学系と、この照明光学系により照射された観測用セル内を撮像する撮像装置と、この撮像装置で捉えた画像に関するデジタルデータを画像処理しマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方を画像データとして出力するパーソナルコンピュータとを具備したバブル観測装置である。
【0015】
請求項6に記載された発明は、請求項5記載のバブル観測装置における撮像装置として、観測用セルに対向する対物レンズと鏡筒を有する光学系に高速度デジタルカメラが接続された観測装置である。
【0016】
請求項7に記載された発明は、請求項5または6記載のバブル観測装置において、水槽内で発生したマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方を含んだバブル水の一部を観測用セルに導入する箇所でバイパス配管系に設けられた開閉バルブを具備した観測装置である。
【0017】
請求項8に記載された発明は、請求項5乃至7いずれか記載のバブル観測装置において、観測用セルの上部に取り付けられ、水槽内から観測用セル内に流入したバブル水を水槽内の水面の高さと同じ高さになるようにして水槽に戻すセル上部槽を具備した観測装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明によれば、水槽内で発生したマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方を含んだバブル水の一部を水槽に対してバイパス配管されて水槽内と水圧などが同様の環境下にある透明の観測用セル内に導入し、この観測用セル内を撮像装置で撮像して観測用セル内の水中にあるマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方を目視観測可能な画像として捉え、このマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方の挙動を画像で観測するので、水槽内で発生したマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方の挙動を、マイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方の発生した直後から画像で捉えて正確に観測できる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、撮像装置で捉えたマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方の静止画像からバブル径の分布および個数を観測するので、形状や光の反射などから水中に混在する微細異物とマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方との判別が容易であり、マイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方のみを正確に観測することができる。また、画像の視野内では形状の判別が可能であるので、複数個のマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方が重畳する場合であっても判別してカウントすることができ、画像の視野内に多量のマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方が存在しても観測が可能である。したがって、高濃度のマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方の観測が可能である。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、観測用セル内に、マイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方を含んだバブル水が導入された時点で、観測用セル内へのバブル水の流入を停止させて、観測用セル内でのバブル水の流動が安定した時点から観測用セル内の観測を開始することにより、水の流れの少ない安定した対流状態または水の流れの影響を受けない状態でマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方の水中での経時変化等の挙動を画像で正確に観測できる。
【0021】
請求項4記載の発明によれば、撮像装置の観測領域として縦横の視野寸法と焦点深度との積により観測体積を算出し、撮像装置の観測領域におけるマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方の静止画像からバブル個数を観測し、観測体積とバブル個数とから単位体積当たりのマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方の個数を算出することで、水中のマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方のバブル密度を正確に算出できる。
【0022】
請求項5記載の発明によれば、水槽のバイパス配管系に透明の観測用セルを設けて水槽内と観測用セル内の水圧などを同様の環境下におき、水槽内で発生したマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方を含んだバブル水の一部をサンプルとしてこのバイパス配管系の観測用セルに取り出し、照明光学系により照射された観測用セル内を撮像する撮像装置で捉えた画像に関するデジタルデータを、パーソナルコンピュータにより画像処理しマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方を画像データとして出力するので、水槽内で発生したマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方の挙動を、照明光学系および撮像装置が準備された観測用セル内に取り出して目視観測可能な画像で捉え、正確に観測できる。
【0023】
請求項6記載の発明によれば、観測用セルに対向する対物レンズと鏡筒を有する光学系に接続された高速度デジタルカメラで短時間のうちに多数の画像データを収集できることから、水中でのマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方の移動や凝集および合体などの、短時間のうちに行なわれる経時的変化の様子すなわち挙動も観測が可能である。
【0024】
請求項7記載の発明によれば、観測用セル内にマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方を含んだバブル水が導入されたならば、観測用セルへの導入箇所に設けられた開閉バルブを閉じて、バブル水の流入を停止することで、観測用セル内の水の流れの少ない安定した対流状態または水の流れの影響を受けない状態でマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方の水中での挙動を画像で正確に観測できる。
【0025】
請求項8記載の発明によれば、マイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方は、周囲の水圧などが変化すると径が変化したり比較的径の大きなマイクロバブルは浮上して消滅しやすいが、観測用セルの上部に取り付けたセル上部槽は、水槽内の水面の高さと観測用セル上の水面の高さとが同じになるようにして、観測用セル内が水槽内の一部となるように水圧条件を同一にすることができるので、水槽内と同一の水圧環境の下でマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方のバブル径や個数および挙動を画像で正確に観測できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係るバブル観測方法を実行するためのバブル観測装置の一実施の形態を示す構成図である。
【図2】同上観測装置の観測用セル内の観測領域を示す説明図である。
【図3】(a)は同上観測装置による観測領域を拡大した説明図、(b)はバブル重複状態を示す説明図である。
【図4】同上観測装置の撮像装置で撮られたバブルの画像を示す写真である。
【図5】同上観測装置の撮像装置で撮られた観測用セル内でのバブル水が安定した対流状態となった時点(0秒)と、約100秒後のマイクロバブルの状態を示す写真である。
【図6】同上観測装置の撮像装置で撮られたナノバブルの写真である。
【図7】同上観測装置の撮像装置で撮られた観測用セル内でのバブル水が安定した対流状態となった時点(0秒)と、約70秒後、約120秒後のバブルの挙動を示す観測用セル内の写真である。
【図8】同上観測装置の観測用セル内でのバブル水が安定した対流状態となった時点(0秒)と、40秒後、80秒後、120秒後のマイクロバブルのバブル径の分布と頻度(個数)との関係を示すグラフである。
【図9】同上観測装置の観測用セル内でのバブル水が安定した対流状態となった時点(0秒)と、20秒後、40秒後、60秒、80秒後、100秒後のマイクロバブルのバブル密度の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を、図1乃至図9に示された一実施の形態に基いて詳細に説明する。
【0028】
図1は、バブル観測装置の構成図を示し、バブル発生装置としてのバブル発生源1により気体が加圧溶解された水を導入配管1aを介して導入する水槽2が設置されている。バブル発生源1と水槽2との間には、水槽2内の水をバブル発生源1に戻す戻し配管1bも設置されている。
【0029】
バブル発生源1は、例えば水中に気体を加圧溶解するための渦流ポンプや気体溶解タンクなどを備え、これらにより発生した気体溶解水を、水槽2内に設置されたバブル発生装置としてのバブル発生ノズル3に供給する。バブル発生源1およびバブル発生ノズル3によりバブル発生装置を構成する。
【0030】
このバブル発生ノズル3は、バブル発生源1から導入配管1aを介し加圧供給された気体の加圧溶解された水を噴出させることでマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方(以下、マイクロバブルまたはナノバブルの一方および両方を単に「バブル」という)を発生させるノズルであり、このバブル発生ノズル3の噴出孔と対向する同一水深の位置で、水槽2に、開閉バルブ4Vを取り付けた導入通路4が接続され、この導入通路4の先端に、セル下部槽5aを介して透明ガラス製の観測用セル5の下端開口が連通接続され、この観測用セル5の上端開口に、セル上部槽6および戻し通路6aを介して水槽2の上部内が連通接続されている。
【0031】
開閉バルブ4Vは、開状態で導入通路4を絞らずにストレートに開通できる全開構造が、水槽2内で発生したバブルを含んだバブル水の一部を、圧力変化などを与えずにそのままの状態でセル下部槽5a内に導く上で望ましい。
【0032】
セル下部槽5aは、水槽2内で発生したバブルの一部を、圧力変化などを与えずにそのままの状態で観測用セル5内に導けるように、観測用セル5よりバルブ水導入方向に大形に形成することが望ましい。
【0033】
観測用セル5の上部に取り付けたセル上部槽6は、水槽2の水面の高さと観測用セル5上の水面の高さとが同じになるように水面等高化して、観測用セル5内が水槽2内の一部となり同一水深で同一水圧が得られるように水圧条件を同一にし、水槽2内から観測用セル5内に流入した水に水圧変化(加圧、減圧)を与えずに水を水槽2に返す役割を有する。
【0034】
このように、バブル発生ノズル3と同一水深位置の導入通路4、開閉バルブ4Vの全開構造、セル下部槽5aの大形化およびセル上部槽6の水面等高化などは、水槽2内で発生したバブル水の一部を、温度や水圧などを変化させずに水槽2内と同様の環境下で観測用セル5内に導入するための構造である。
【0035】
観測用セル5の側面には、観測用セル5に対向する対物レンズ8aと鏡筒8bを有する光学系にこれらの対物レンズ8aおよび鏡筒8bを介して画像を捉える高速度デジタルカメラ8cを接続した撮像装置8が設置されている。
【0036】
この高速度デジタルカメラ8cとしては、例えば毎秒300フレーム以上の高速度撮影が可能なCCD(チャージ・カップルド・デバイス)またはCMOS(コンプリメンタリ・メタル・オキサイド・セミコンダクタ)等の受像素子を有するエリアセンサカメラを用いる。
【0037】
対物レンズ8aは、その倍率を大きくすると、視野は狭まるが、観測バブルの画像は拡大されて、観測バブルの観測精度が向上し、反対に、その倍率を小さくすると、観測領域が広がり、バブルが見つかりやすくなる。
【0038】
さらに、観測用セル5に対して照明光学系9が設置され、この照明光学系9で照明された観測用セル5内を撮像する撮像装置8は、この撮像装置8で捉えた画像に関するデジタルデータを画像処理して画像データとして出力するパーソナルコンピュータ10に接続され、このパーソナルコンピュータ10は、画像データに基づき画像を出力する図示されないモニタやプリンタなどの出力装置に接続されている。
【0039】
次に、本観測装置の動作を説明する。
【0040】
バブル発生源1により気体が加圧溶解された水を水槽2に導入する。導入された気体が加圧溶解された水は、水槽2内に設置されたバブル発生ノズル3を経由して水槽2内にバブルを発生させる。バブルを含んだバブル水の一部は、バブル発生ノズル3と同一水深に位置する開閉バルブ4Vを取り付けた導入通路4を経由して、水槽2内と同様の温度や水圧などの環境下にある観測用セル5内に導入される。この場合、観測用セル5内に導入されたバブル水は、水槽2内に発生したバブル水のサンプルと考えることができる。
【0041】
観測用セル5内に、充分に発生したバブルが満たされたならば、導入通路4の開閉バルブ4Vを閉じて、観測用セル5内へ流入する水流を停止させるようにする。
【0042】
これにより、観測用セル5内のバブル水は、安定した対流状態を経て静止状態へと移行するので、観測用セル5内でのバブル水の流動が落ち着いて安定したバブル安定状態(すなわちバブルが緩速移動する状態または静止する状態)となった時点から、撮像装置8による観測用セル5内の観測を開始するのが、バブルの水中での挙動を画像で観測するのに最適である。
【0043】
観測用セル5内のバブルの観測は、観測用セル5の側面に設置された対物レンズ8aを装備した鏡筒8bで覗き見て、その画像を鏡筒8bに取り付けた高速度デジタルカメラ8cで画像として捉える撮像装置8によって行う。
【0044】
この撮像装置8で捉えた画像に関するデジタルデータは、パーソナルコンピュータ10で画像処理され、モニタまたはプリンタなどの出力装置に画像データとして出力され、出力装置からバブル画像が出力され、バブル形状、大きさ等が明瞭に表示される。
【0045】
このとき、観測用セル5には、照明光学系9を用いて観測用セル5内のバブル水に光を照射して、バブルが明瞭に観測できるようにしておく。
【0046】
図2および図3に示されるように、対物レンズ8aおよび鏡筒8bを介して高速度デジタルカメラ8cにより画像を捉える撮像装置8の観測領域Aは、対物レンズ8aおよび鏡筒8bを有する光学系の倍率で異なるが、倍率が明確ならば、対物レンズ8aおよび鏡筒8bを有する光学系の縦横の視野寸法H,Wと焦点深度Dとの積により観測体積Vを算出でき、この観測体積Vの観測領域A内のバブルのみが明瞭に観測されるが、この観測領域Aから外れた前後左右上下領域のバブルは焦点が合わず輪郭がぼやけてしまうことから、観測体積V内のバブル個数のみをカウントすることができ、単位体積当たりのバブル個数も換算可能である。すなわち、観測用セル5内の水中にあるバブルのバブル密度を算出できる。
【0047】
その際、図3(a)に示されるように、複数のバブルB1,B2が撮像装置8の観察点Sから見て重複している場合であっても、図3(b)に示されるように、撮像装置8で捉えた画像によって、複数のバブルB1,B2を明瞭に識別することができるので、バブル個数を正確にカウントできる。
【0048】
例えば、図4に示されるように、発生したバブルの個数は、観測用セル5内でのバブル水の流動が安定した時点での静止画像内(すなわち、縦横の視野寸法H・W×焦点深度D内)において、形状が明瞭な(すなわち焦点深度D内の)バブルを目視カウントすることで観測する。焦点深度Dの前後に外れた領域のバブルは焦点が合わないため自動的にカウント対象から外される。
【0049】
また、図5および図6に示された出力画像の例で示すように、対物レンズ8aの倍率を変えることで、観測領域および観測バブルの画像の大きさが変わり、倍率を大きくした場合はナノバブルの観測も可能となるまで観測精度が向上するとともに、明瞭にバブルの形状、大きさ等が表示される。
【0050】
図5は、導入通路4の開閉バルブ4Vを閉じてから観測用セル5内でのバブル水が安定した対流状態となった時点(0秒)におけるマイクロバブルの状態と、この時点(0秒)から約100秒後のマイクロバブルの状態とをスケールとともに表示した例である。図6は、観測用セル5の壁面に付着したナノバブルを示す。
【0051】
このように、捉えた画像から、微細異物とバブルとを容易に判別できると共に、バブルの直径および個数を観測できる。
【0052】
図7乃至図9に示されるように、対物レンズ8aおよび鏡筒8bを介して高速度デジタルカメラ8cにより画像を捉える撮像装置8で短時間のうちに多数の画像データを収集できることから、水中でのバブルの移動や凝集および合体などの、短時間のうちに行なわれる経時的変化の様子すなわち挙動の観測が可能である。図7中に撮像装置8の観察点を示す。
【0053】
例えば、図7は、導入通路4の開閉バルブ4Vを閉じてから観測用セル5内でのバブル水が安定した対流状態となった時点(0秒)における観測用セル5内の状態と、この時点(0秒)から約70秒後の観測用セル5内のバブル上昇状態と、約120秒後の観測用セル5内のバブル静止状態とを示す。
【0054】
また、図8は、観測用セル5内でのバブル水が安定した対流状態となった時点(0秒)、この時点(0秒)から40秒後、80秒後、120秒後の画像からそれぞれカウントしたマイクロバブルのバブル径の分布と個数(頻度)との関係を示すグラフである。
【0055】
さらに、図9は、観測用セル5内でのバブル水が安定した対流状態となった時点(0秒)、この時点(0秒)から20秒後、40秒後、60秒後、80秒後、100秒後の画像からそれぞれカウントしたマイクロバブルのバブル密度(1リットル当りに換算した個数)の変化を示すグラフである。
【0056】
次に、本観測方法および装置から得られる効果を説明する。
【0057】
(1) バブル発生装置を構成するバブル発生源1およびバブル発生ノズル3より水槽2内で発生したバブルを含んだバブル水の一部を、水槽2に対してバイパス配管されるとともに高速度デジタルカメラ8cなどの撮像装置8および照明光学系9が準備された透明の観測用セル5内に、水槽2内と同様の水圧などの環境下で導入し、この観測用セル5内を撮像装置8で撮像して観測用セル5内の水中にあるバブルの形状を目視観測可能な画像として捉え、その形状からバブル径の大きさを正確に観測できるとともに、画像内すなわち一定体積内のバブルの個数および挙動を時間に応じて正確に観測できる。
【0058】
すなわち、光散乱方式のようにバブルからの散乱光の強度や分布等によって観測するのではなく、バブル水槽2内で発生したバブルの挙動を、観測用セル5内に取り出した実際のバブルの目視観測可能な画像で捉えて、その画像からそのバブル径の分布や個数および挙動を観測するので、光散乱方式のように標準粒子等によってバブル径の校正をする必要が無く、バブルが発生した直後からのバブル径の分布や個数および挙動を画像で正確に観測できる。
【0059】
(2) 高速度デジタルカメラ8cなどの撮像装置8で捉えたバブルの静止画像から、形状や光の反射などでバブルと判断して、そのバブル径の分布や個数を観測するので、形状や光の反射などから水中に混在する微細異物とバブルとの判別が容易であり、バブルのみを正確に観測することができる。
【0060】
(3) 画像の視野内では形状の判別が可能であるので、複数個のバブルが重畳する場合であっても判別してカウントすることができ、画像の視野内に多量のバブルが存在しても観測が可能である。したがって、高濃度のバブルの観測が可能である。
【0061】
(4) 対物レンズ8aおよび鏡筒8bを介して高速度デジタルカメラ8cで画像を捉える撮像装置8の観測領域Aは、光学系の倍率で異なるが、倍率が明確ならば縦横の視野寸法と焦点深度Dとの積により観測体積を算出でき、単位体積当たりのバブルの個数が換算可能であるから、観測用セル5内にあるバブルのバブル密度を正確に算出できる。
【0062】
(5) 水槽2に、導入通路4、観測用セル5および戻し通路6aなどのバイパス配管系を設けて、バブル発生ノズル3から水槽2内に発生したバブルを含んだバブル水の一部をサンプルとしてこのバイパス配管系に取り出して、抵抗が少ない状態で充分な流量を観測用セル5に導くことによって、バブルの発生した直後の、バブル径等が変化する前の状態を観測できる。
【0063】
特に、バブルは、周囲の水の圧力などが変化すると径が変化したり比較的径の大きなマイクロバブルは浮上して消滅しやすいが、観測用セル5の上部に取り付けたセル上部槽6は、水槽2内の水面の高さと観測用セル5上の水面の高さとが同じになるようにして、水槽2内から観測用セル5内に流入した水に圧力変化(加圧、減圧)を与えずに水を水槽2に返す役割を有するので、すなわち観測用セル5内が水槽2内の一部となり同一水深で同一水圧となるように水圧条件を同一にすることができるので、水槽2内と同様の水圧環境の下で観測用セル5内バブルのバブル径や個数および挙動を画像で正確に観測できる。
【0064】
また、バイパス配管系の観測用セル5内でのバブルの挙動から、水槽2内でのバブルの挙動を推測でき、バブルの効果的利用方法の検討に役立つ。
【0065】
(6) 観測用セル5内に、充分に発生したバブルが満たされたならば、導入通路4の開閉バルブ4Vを閉じ、バブル水の流入を停止することで、観測用セル5内でのバブル水の流動が落ち着いて安定した状態となった時点(バブル緩速移動または静止時点)から観測用セル5内の観測を開始することにより、水の流れの少ない自然の対流状態または水の流れの影響を受けない状態でバブルの水中での経時変化等の挙動を画像で正確に観測できる。
【0066】
また、水の流れの影響を受けない状態で、観測用セル5内のバブルに電界や超音波等の外的要因を加えた場合のバブルの挙動も観測可能であり、超音波によるキャビテーションやゼータ電位等の測定も容易になる。
【0067】
(7) さらに、観測用セル5に対向する対物レンズ8aと鏡筒8bを有する光学系に接続された高速度デジタルカメラ8cで短時間のうちに多数の画像データを収集できることから、水中でのバブルの移動や凝集および合体などの、短時間のうちに行なわれる経時的変化の様子すなわち挙動も観測が可能である。特に、時間が経過するにつれて収縮して径が縮小すると言われているバブル径や個数および挙動を、発生直後から時間の経過に伴って観測することができる。
【0068】
(8) これらの観測により、バブル発生装置(バブル発生源1またはバブル発生ノズル3)の性能も正しく確認できるとともに、バブル径や個数および挙動を解析して、より良いバブル発生装置の開発技術の構築に寄与できる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のバブル観測方法は、バブルの発生状況や挙動などの観測報告業務に携わる者にとって産業上利用可能であり、本発明のバブル観測装置は、その装置を製造販売する者にとって産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1、3 バブル発生装置としてのバブル発生源、バブル発生ノズル
2 水槽
4V 開閉バルブ
5 観測用セル
6 セル上部槽
8 撮像装置
8a 対物レンズ
8b 鏡筒
8c 高速度デジタルカメラ
9 照明光学系
10 パーソナルコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽内で発生したマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方を含んだバブル水の一部を水槽に対してバイパス配管された透明の観測用セル内に導入し、
この観測用セル内を撮像装置で撮像して観測用セル内の水中にあるマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方を画像として捉え、
このマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方の挙動を画像で観測する
ことを特徴とするバブル観測方法。
【請求項2】
撮像装置で捉えたマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方の静止画像からバブル径の分布および個数を観測する
ことを特徴とする請求項1記載のバブル観測方法。
【請求項3】
観測用セル内に、マイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方を含んだバブル水が導入された時点で、観測用セル内へのバブル水の流入を停止させ、
観測用セル内でのバブル水の流動が安定した時点から観測用セル内の観測を開始する
ことを特徴とする請求項1または2記載のバブル観測方法。
【請求項4】
撮像装置の観測領域として撮像装置の縦横の視野寸法と焦点深度との積により観測体積を算出し、
撮像装置の観測領域におけるマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方の静止画像からバブル個数を観測し、
観測体積とバブル個数とから単位体積当たりのマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方の個数を算出する
ことを特徴とする請求項1乃至3いずれか記載のバブル観測方法。
【請求項5】
バブル発生装置により水槽内で発生したマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方を含んだバブル水の一部を取り出して水槽に戻すバイパス配管系に設けられた透明の観測用セルと、
この観測用セルに対して設けられた照明光学系と、
この照明光学系により照射された観測用セル内を撮像する撮像装置と、
この撮像装置で捉えた画像に関するデジタルデータを画像処理しマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方を画像データとして出力するパーソナルコンピュータと
を具備したことを特徴とするバブル観測装置。
【請求項6】
撮像装置は、観測用セルに対向する対物レンズと鏡筒を有する光学系に高速度デジタルカメラが接続された
ことを特徴とする請求項5記載のバブル観測装置。
【請求項7】
水槽内で発生したマイクロバブルおよびナノバブルの少なくとも一方を含んだバブル水の一部を観測用セルに導入する箇所でバイパス配管系に設けられた開閉バルブ
を具備したことを特徴とする請求項5または6記載のバブル観測装置。
【請求項8】
観測用セルの上部に取り付けられ、水槽内から観測用セル内に流入した水を水槽内の水面の高さと同じ高さになるようにして水槽に戻すセル上部槽
を具備したことを特徴とする請求項5乃至7いずれか記載のバブル観測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図9】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−247748(P2011−247748A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121292(P2010−121292)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000226002)株式会社ニクニ (25)