バリア膜形成装置、バリア膜形成方法及びバリア膜被覆容器
【課題】凹凸面が存在する容器や非常に均一性が必要な高いバリア性を必要とする容器に対して均一な成膜を行なうことが可能なバリア膜形成装置、バリア膜形成方法及びバリア膜被覆容器を提供する。
【解決手段】凹部12aを有する容器12を被処理物とし、内面にバリア膜を成膜するバリア膜形成装置であって、前記容器12を取り囲む大きさの空洞を有する誘電体部材50と、該誘電体部材50の外周側を覆う外部電極13と、前記容器12の口部11が位置する側の前記外部電極13の端面に絶縁部材26を介して取り付けられ、前記容器12の内部を、排気管14を介して減圧する排気手段と、前記排気管14側から挿入され、前記容器12内にバリア膜生成用の媒質ガス19を吹き出すためのガス吹出し部を兼用する内部電極17と、前記外部電極13と接地電極間に放電を発生させるための電界を付与するための電界付与手段とを具備する。
【解決手段】凹部12aを有する容器12を被処理物とし、内面にバリア膜を成膜するバリア膜形成装置であって、前記容器12を取り囲む大きさの空洞を有する誘電体部材50と、該誘電体部材50の外周側を覆う外部電極13と、前記容器12の口部11が位置する側の前記外部電極13の端面に絶縁部材26を介して取り付けられ、前記容器12の内部を、排気管14を介して減圧する排気手段と、前記排気管14側から挿入され、前記容器12内にバリア膜生成用の媒質ガス19を吹き出すためのガス吹出し部を兼用する内部電極17と、前記外部電極13と接地電極間に放電を発生させるための電界を付与するための電界付与手段とを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば樹脂等の容器等においてガスバリア性を付与するバリア膜を均一に形成するためのバリア膜形成装置、バリア膜形成方法及びバリア膜被覆容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック容器の一つである例えばペット(PET)ボトルは、外部からの酸素の透過、内部(例えば炭酸飲料水)からの二酸化炭素の透過を防止するためにその内面に例えばDLC(Diamond Like Carbon) のような炭素膜やシリカ膜などのバリア性の高い膜をコーティングすることが試みられており、その成膜装置が種々提案されている(特許文献1〜6)。また、その応用として、医療用容器や食品容器、あるいは、燃料タンク等で、酸素、水素、燃料等の透過防止、アロマ等の透過、吸着防止等が試みられている。
【0003】
ここで、高周波プラズマCVDを用いたプラスチック容器への炭素膜を成膜装置としては、容器内部にコーティングする基本的な発明である特許文献4にかかる装置について、図38を参照して説明する。
【0004】
図38に示すように、バリア膜成膜装置は、口部11を有するプラスチック容器12の内面に放電プラズマにより成膜を施す成膜装置であって、プラスチック容器12の外周を取り囲む大きさを有する外部上部電極13−1及び外部下部電極13−2からなる外部電極13と、前記プラスチック容器12が挿入された時に少なくともその容器の口部および肩部と前記外部電極13の間に介在された誘電体からなるスペーサ25と、前記口部11が位置する側の前記外部電極13の端面に絶縁部材26を介して取り付けられた排気管14と、前記外部電極13内の前記プラスチック容器12内に前記排気管14側から前記プラスチック容器12に挿入され、接地側に接続されると共に、媒質ガス19を吹き出すためのガス流路16が穿設された内部電極17と、前記排気管14に取り付けられた図示しない排気装置と、前記内部電極17に媒質ガス19を供給するための図示しないガス供給装置と、前記外部電極13に接続された高周波電源18とを具備してなるものである。なお、符号20はガス流路16の先端に設けられた絶縁部材からなるガス吹出し孔である。
【0005】
ここで、前記外部電極13は、上下端にフランジ21a,21bを有する円筒状のアースシールド22内に設けられており、該円筒状のアースシールド22は、円環状基台23上に載置されている。また、円板状の絶縁板24は、前記円環状基台23と前記外部下部電極13−2の底部側との間に配置されている。前記内部電極17のガス流路16の先端には円筒の絶縁部材26を設けることで局所的なプラズマ集中を防止するようにしている。
【0006】
また、前記スペーサ25は、この上に載置される環状の絶縁部材26から螺着されたねじ(図示せず)により固定されている。このようにスペーサ25を前記外部電極13の上部に挿入固定することにより、前記外部電極13の底部側からプラスチック容器12を挿入すると、そのプラスチック容器12の口部および肩部が前記円板状のスペーサ25の空洞部内に位置し、かつこれ以外のプラスチック容器12の外周が前記外部電極13内面に位置する。また、上下にフランジ31a,31bを有するガス排気管14は、前記アースシールド22の上部フランジ21aおよび前記環状の絶縁部材26の上面に載置されている。そして、蓋体32は、前記排気管14の上部フランジ31aに取り付けられている。
【0007】
このような構成の装置を用いてプラスチック容器へ炭素膜をコーティングする方法について説明する。
【0008】
まず、外部電極13内にプラスチック容器12を挿入し、内部のガスをガス排気管14によって排気する。規定の真空度(代表値:10-1〜10-5Torr)に到達した後、排気を続けながら媒質ガス19を内部電極17に例えば10〜200mL/minの流量で供給し、さらに内部電極17のガス吹き出し孔16を通してプラスチック容器12内に吹出す。なお、この媒質ガス19としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、含酸素炭化水素類、含窒素炭化水素類が用いられる。前記プラスチック容器12内の圧力は、ガス供給量と排気量のバランスによって例えば2×10-1〜1×10-2Torrに設定する。その後、高周波電源18から50〜2000Wの高周波電力を整合器36及びRF入力端子35を通して外部電極13に印加する。
【0009】
このような高周波電力の外部電極13への印加によって、前記外部電極13と内部電極17の間にプラズマが生成される。この時、プラスチック容器12は外部電極13の内にほぼ隙間無く収納されており、プラズマはプラスチック容器12内に発生する。前記媒質ガス19は、前記プラズマによって解離、又は更にイオン化して、炭素膜を形成するための成膜種が生成され、この成膜種が前記容器12内面に堆積し、炭素膜を形成する。炭素膜を所定の膜厚まで形成した後、高周波電力の印加を停止し、媒質ガス供給の停止、残留ガスの排気、窒素、希ガス、又は空気等を外部電極13内に供給し、この空間内を大気圧に戻す。この後、前記プラスチック容器12を外部電極13から取り外す。なお、この方法において炭素膜を厚さ20乃至30nm成膜するには2〜3秒間要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−53116号公報
【特許文献2】特許第2788412号公報(特開平8−53117号公報)
【特許文献3】国際公開第03/101847号
【特許文献4】特許第3643813号公報(特開2003−237754号公報)
【特許文献5】特開2005−247431号公報
【特許文献6】特開2000−230064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら前記成膜装置(特許文献4)においては、バリア性の高い良好な成膜を得るために、外部電極13とスペーサ25からなる空洞の形状がプラスチック容器12の形状に略相似形状とする必要があった。
【0012】
また特許文献1、2ではスペーサが無いが、同様に外部電極の空洞形状をプラスチック容器に略相似形状とする必要があった。いずれの場合も、容器の胴部等に凹凸(凹部または凸部、あるいは両方)があれば、当然その形状に相似形状の空洞とする必要がある。しかしながら、容器を長手方向に差し込む構造の装置の場合、これを実現することは難しい。
【0013】
また、容器の胴部の凹凸が比較的少ないものの場合には、凹凸部に若干空間ができてしまっても、実用しうるバリア性をなんとか得られていたが、近年における、軽量化や使用後のつぶし易さを目的とした容器デザインに見られるような容器の多様化によって、胴部の凹凸部(または、くぼみ部、凹部あるいは凸部)が複数又は該くぼみ部(凹部)が深いようなものが存在するような場合、成膜の不均一が非常に大きくなり実用しうるバリア性が得られないという問題が発生した。
【0014】
そこで、外部電極に容器を挿入後、容器の凹凸部に合わせて外部電極の一部を動かし、相似形状とする方法が考えられるが、このような可動構造は、高速量産装置ではコストや信頼性上出来るだけ避ける必要がある。
【0015】
また、凹凸が無く相似形状が実現できるような場合でも、より高いバリア性を得るためには容器に完全に相似形状の電極を用い、その間の空隙を等間隔とすることが必要であるが、容器の成形精度や外部電極13やスペーサ25の製作精度あるいは容器の設置精度のためにその実現は難しく、そのため、より高いバリア性を得られない、という問題がある。
【0016】
また、従来技術において、外部電極と容器とに適度な空隙を有する提案がある(特許文献3)が、凹凸のある容器の場合、略相似形状を出発点として、容器が挿入でき、かつ、バリア性が高い形状を得るべく、容器の凹凸部に対応して空隙形状を調整していく必要があるため、多様化した容器形状に対してほとんど全てオーダーメイドで外部電極を製作して用意する必要があり、コスト高、手間の増加という問題があった。また、外部電極の重量が増加しやすく、装置の構成において外部電極の配置や可動部の設定に制約が生じやすい状況にあるため、例えば容器を倒立させながら搬送・成膜する装置構成とすることに支障がある、という問題がある。
【0017】
また、従来技術において、誘電体スペーサを主として容器の口部、肩部に設ける成膜装置の提案(特許文献4)や、それを容器下部まで延出する提案(特許文献5)があるが、これらは、胴部に凹凸のない相似形状の電極あるいはスペーサが適用できる容器を対象として肩部の細径部分の膜付きを調整することを目的としており、胴部に凹凸がある容器を対象として胴部の膜付きを含む全体の均一化を得ることができなかった。すなわち、胴部などに凹凸を有する容器への成膜の際に課題となる膜分布の均一性の改善については何ら指針が与えられていない。これは、後述する容器内面に印加される電圧の均一化がなされていないためである。
【0018】
また、従来技術において、電極と成膜対象の間にプラスチック製で電極に電気的に接触しかつ成膜対象から一定の間隔を設ける外筒を設けた成膜装置の提案(特許文献6)があるが、これも、胴部などに凹凸を有する容器への成膜の際に課題となる膜分布の均一性の改善については何ら指針が与えられていない。これも、後述する容器内面に印加される電圧の均一化がなされていないためである。また、当該発明の対象は容器の内面・外面両方に成膜をするもので、主目的は容器の加熱防止であり、内面のみへの成膜における膜分布改善の指針を与えていない。
【0019】
総合すると、次のように問題を整理できる。高品質なガスバリア薄膜を形成するためには、後述する容器内面に印加される電圧の均一化を達成する必要がある。そのために外部電極の構成からアプローチする場合、外部電極と容器との間に、適切なサイズと組成からなる空隙と誘電体を配置する組み合わせにより電圧分布の最適化を図ることができる。このような組み合わせに到達した先行技術が上述の通り存在しない一方で、これを実現できた場合、高いガスバリア性以外の諸課題、具体的には各種容器への外部電極の共通化、容器凹凸デザインへの対応、膜厚の均一分布、外部電極の軽量化など、の解決に至るものであることから、品質上・装置コストの面で多大な効果を得ることができる。
【0020】
本発明は、前記問題に鑑み、凹凸面が存在する容器などに対して均一な成膜を行なうことが可能なバリア膜形成装置、バリア膜形成方法及びバリア膜被覆容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、少なくとも一以上の凹凸部を有する容器を被処理容器とし、前記被処理容器内面にバリア膜を成膜するバリア膜形成装置であって、前記容器を取り囲む大きさの空洞を有する誘電体部材と、該誘電体部材の外周側を覆う外部電極と、前記容器の口部が位置する側の前記外部電極の端面に絶縁部材を介して取り付けられ、前記容器内部を、排気管を介して減圧する排気手段と、前記容器内にバリア膜生成用の媒質ガスを吹き出すためのガス吹出し部と、前記外部電極と接地電極間に放電を発生させるための電界を付与するための電界付与手段とを具備してなることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0022】
第2の発明は、第1の発明において、前記ガス吹き出し部が接地されると共に、前記容器内に挿入され、内部電極を兼ねることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0023】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記被処理物である容器を取り囲む大きさの空洞が、容器外周が通過するための最大通過軌跡線によって作られる空間と一致する、又はそれより大きな隙間を有することを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0024】
第4の発明は、第1乃至3のいずれか一つの発明において、前記誘電体部材が、有底筒型形状であることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0025】
第5の発明は、第1乃至4のいずれか一つの発明において、前記誘電体部材が、底無し筒型形状又は一部底を有する筒型形状であることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0026】
第6の発明は、第1乃至5のいずれか一つの発明において、前記外部電極のうち前記容器の凹部空間に面した部分が前記誘電体部材で覆われてなることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0027】
第7の発明は、第1乃至6のいずれか一つの発明において、前記誘電体部材の空洞の一部が容器と近接していることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0028】
第8の発明は、第1乃至7のいずれか一つの発明において、前記誘電体部材が、フッ素系樹脂、硬質塩化ビニル、ガラス又はセラミックのいずれか一種又はこれらの組合せであることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0029】
第9の発明は、第1乃至8のいずれか一つの発明において、前記誘電体部材の内部に前記容器が設置された際、容器の胴部と誘電体部材との間の空隙が、空隙幅の最大値と最小値の差が3mm以上となるように形成されてなるものであることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0030】
第10の発明は、第1乃至9のいずれか一つの発明において、前記誘電体部材の厚さが均一であることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0031】
第11の発明は、第1乃至10のいずれか一つの発明において、前記誘電体部材が、有底又は無底の筒型形状であると共に、誘電体部材の平均厚さ/比誘電率が、0.95〜3.8の範囲であることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0032】
第12の発明は、第1乃至11のいずれか一つの発明において、前記誘電体部材が、容器の肩部、口部のいずれか一方又は両方に空隙を持って設けてなることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0033】
第13の発明は、第1乃至12のいずれか一つの発明において、前記誘電体部材又は空隙の厚さ(di)を比誘電率(εi)で除した換算距離di/εiの外部電極内表面から前記容器内表面までの総和が、容器全体に亙って均一であることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0034】
第14の発明は、第1乃至13のいずれか一つの発明において、前記換算距離di/εiの、外部電極内表面から前記容器内表面までの総和が、容器の全体で均一になるように、前記誘電体部材の材料と、前記誘電体部材と空隙の厚さと、前記外部電極形状を組み合わせてなることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0035】
第15の発明は、第1乃至14のいずれか一つの発明において、容器断面上の各容器表面地点における、前記誘電体部材又は空隙の厚さ(di)を比誘電率(εi)で除した換算距離di/εiの外部電極内表面から前記容器内表面までの各地点総和について、容器全体における各地点総和の標準偏差を平均値で除した値が0.75以下であることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0036】
第16の発明は、被処理物である容器の少なくとも主要部を取り囲む大きさの空洞を有すると共に、前記空洞は前記容器外周が通過するための最大通過軌跡線によって作られる空間と一致する、又はそれより大きな隙間を有する誘電体部材と、該誘電体部材の外周側に設置された外部電極と、前記容器内部を、排気管を介して減圧する排気手段と、前記容器内にバリア膜生成用の媒質ガスを吹き出すためのガス吹出し部と、前記容器内に放電を発生させるために前記外部電極に接続された電界付与手段とを具備してなり、前記容器内面にバリア膜を成膜することを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0037】
第17の発明は、第1又は16の発明の発明において、前記外部電極は接地電極であると共に、前記電界付与手段を接続した電極を前記容器内又は前記排気管に設けてなることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0038】
第18の発明は、第1又は16の発明において、前記誘電体部材の一部が前記容器と接することにより、前記容器の位置決めしてなることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0039】
第19の発明は、第1又は16の発明において、前記誘電体部材の一部が前記容器と接することにより、前記容器の位置決めしてなると共に、前記容器と接する前記誘電体の一部が可動構造であり、前記容器の挿入時又は取り出し時に移動してなることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0040】
第20の発明は、第1乃至19のいずれか一つにおいて、前記外部電極を取り囲む大きさを持つ接地された導電性のアースシールドを前記外部電極と絶縁して設置することを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0041】
第21の発明は、第1乃至20のいずれか一つの発明において、前記外部電極が真空容器を兼ねることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0042】
第22の発明は、第1乃至19のいずれか一つの発明において、前記誘電体部材が真空容器を兼ねることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0043】
第23の発明は、第1又は16の発明において、前記外部電極を取り囲む大きさを持つ接地された導電性のアースシールドを前記外部電極と絶縁して設置すると共に、前記アースシールドが真空容器を兼ねることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0044】
第24の発明は、第21又は22の発明において、前記外部電極がシート状であることを特徴とするバリア膜形成装置もある。
【0045】
第25の発明は、第1又は16の発明において、前記外部電極を取り囲む大きさを持つ接地された導電性のアースシールドを前記外部電極と絶縁して設置すると共に、前記外部電極と前記アースシールドの間の全体に絶縁部材を設置することを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0046】
第26の発明は、第1又は16の発明において、被処理物である容器の形状が、筒型形状であることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0047】
第27の発明は、第1又は16の発明において、被処理物である容器の形状が、筒型形状であると共に、少なくとも一以上の凹部を有することを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0048】
第28の発明は、第1の発明において、前記誘電体が、前記容器との間に空隙を有することを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0049】
第29の発明は、第1乃至28のいずれか一つの発明のバリア膜形成装置を用い、被処理物の容器内面にバリア膜を均一に成膜することを特徴とするバリア膜形成方法にある。
【0050】
第30の発明は、第1又は16の発明のバリア膜形成装置を用い、被処理物の容器内面にバリア膜を均一に成膜すると共に、被処理物である容器の形状が、筒型形状であることを特徴とするバリア膜形成方法にある。
【0051】
第31の発明は、第1乃至28のいずれか一つの発明のバリア膜形成装置を用い、被処理物の容器内面にバリア膜を均一に成膜すると共に、被処理物である容器の形状が、筒型形状であると共に、少なくとも一以上の凹部を有することを特徴とするバリア膜形成方法にある。
【0052】
第32の発明は、第1乃至28のいずれか一つのバリア膜形成装置を用い、被処理物の容器内面にバリア膜を均一に成膜すると共に、種々の空洞形状を有する複数の誘電体部材を用意し、その中から被処理物である容器の形状等に適するように選択し、その後容器にバリア膜を形成することを特徴とするバリア膜形成方法にある。
【0053】
第33の発明は、第1乃至28のいずれか一つのバリア膜形成装置を用い、被処理物の容器内面にバリア膜を均一に成膜すると共に、前記誘電体部材の全部または一部と、前記外部電極の全部または一部と、前記アースシールドの全部または一部が一体的に駆動手段により移動して、前記真空容器を開閉し、容器の挿入、取り出しを行うことを特徴とするバリア膜形成方法にある。
【0054】
第34の発明は、第1又は16のバリア膜形成装置を用い、ネックハンドリングにより前記容器を挿入および取り出しを行うことを特徴とするバリア膜形成方法にある。
【0055】
第35の発明は、第3、4又は16のいずれか一つの発明において、前記誘電体部材は前記容器を前記有底筒型の外部電極の底方向に向かって当該容器底側から挿入できる開口を有することを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0056】
第36の発明は、第3、4又は16のいずれか一つの発明において、前記容器の口部が下向きになるように前記外部電極の口部端部を下向きとし、前記外部電極の端部の下側に絶縁部材を介して排気管を取り付けることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0057】
第37の発明は、第36の発明のバリア膜形成装置を用い、当該容器を上下反転させた後、ネックハンドリングにより、前記容器の外部電極への挿入および取り出しを行うことを特徴とするバリア膜形成方法にある。
【0058】
第38の発明は、第30乃至34、37のいずれか一つの発明のバリア膜形成方法を用いて形成されてなることを特徴とするバリア膜被覆容器にある。
【発明の効果】
【0059】
本発明によれば、外部電極と容器の間に設置された誘電体部材と、前記誘電体部材と容器との空隙とを用いることにより、容器の内面全体に印加される電圧が均一化され、これにより、前記容器内面に成膜されるバリア膜を全体に亙って均質に成膜することができ、高いバリア性の容器を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、第1の実施の形態に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【図2】図2は、誘電体部材を設置したバリア膜形成の原理図である。
【図3】図3は、誘電体部材を設置したバリア膜形成の原理図である。
【図4】図4は、誘電体部材を設置したバリア膜形成の原理図である。
【図5】図5は、第1の実施の形態に係る他のバリア膜形成装置の概略図である。
【図6】図6は、第1の実施の形態に係る他のバリア膜形成装置の概略図である。
【図7】図7は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図8】図8は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図9】図9は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図10】図10は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図11】図11は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図12】図12は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図13】図13は、誘電体部材と容器最大軌跡線との関係を示す図である。
【図14】図14は、他の誘電体部材と容器最大軌跡線との関係を示す図である。
【図15】図15は、他の誘電体部材と容器最大軌跡線との関係を示す図である。
【図16】図16は、第2の実施の形態に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【図17】図17は、第3の実施の形態に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【図18】図18は、第4の実施の形態に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【図19】図19は、第5の実施の形態に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【図20】図20は、第6の実施の形態に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【図21】図21は、図20の要部断面図である。
【図22】図22は、第7の実施の形態に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【図23】図23は、第8の実施の形態に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【図24】図24は、第9の実施の形態に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【図25】図25は、第10の実施の形態に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【図26】図26は、図25の要部断面図である。
【図27】図27は、第11の実施の形態に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【図28】図28は、図27の要部断面図である。
【図29】図29は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図30】図30は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図31】図31は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図32】図32は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図33】図33は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図34】図34は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図35】図35は、酸素ガスバリア性と換算距離の比との関係図である。
【図36】図36は、換算距離Gの容器各個所の平均/標準偏差と酸素ガスバリアBIFとの関係図である。
【図37】図37は、誘電体部材によるバリア性改善の概念図である。
【図38】図38は、従来技術に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態又は実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態又は実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0062】
[第1の実施の形態]
本発明による実施の形態に係るバリア膜形成装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態に係るバリア膜形成装置を示す概念図である。なお、図38で説明した従来技術に係るバリア膜形成装置と同一部材については、同一符号を付して重複する説明は省略する。
図1に示すように、本実施の形態に係るバリア膜形成装置10は、少なくとも一以上の凹凸部12aを有するプラスチック容器(以下「容器」ともいう。)12を被処理物とし、内面にバリア膜を成膜するバリア膜形成装置であって、前記容器12の少なくとも主要部を取り囲む大きさの空洞を有する誘電体部材50と、該誘電体部材50の外周側を覆う外部電極13と、前記容器12の口部11が位置する側の前記外部電極13の端面に絶縁部材26を介して取り付けられ、前記容器12の内部を、排気管14を介して減圧する排気手段(図示せず)と、前記排気管14側から挿入され、前記容器12内にバリア膜生成用の媒質ガス19を吹き出すためのガス吹出し部を兼用する内部電極17と、前記外部電極13と接地電極間に放電を発生させるための電界を付与するための電界付与手段(高周波電源18及び整合器36)とを具備してなるものである。
【0063】
本発明では、前記容器12内面に印加される電圧を、外部電極13と容器12の間に設置された誘電体部材50と、前記誘電体部材50と容器12との空隙とを用いて、前記誘電体部材固有の比誘電率εiの関係から略均一としてなるものである。これにより、容器内面に均一な成膜を行なうことが可能となる。詳細は後述する。本発明は、厳密には電位の均一性をねらいとするところ、実際の電極設計においては、上述した空隙の大きさと比誘電率を用いた近似を活用できることを見出したためである。
【0064】
また、本実施例では、前記外部電極13が、円筒状としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、たとえば、適用する容器形状にあわせて、角筒状、くびれ形状などに調整しても良い。また、誘電体部材50が前記容器12の主要部を取り囲むとしているが、主要部とは、たとえば容器における胴部などを示しており、容器における口部や肩部などの付随的部分のみを取り囲むものではなく、たとえば1/2程度以上の表面積を占める場合を示す。また、おおむね全体を取り囲むことを想定するが、たとえば底部や容器の取手部などの特殊部分や、特に膜厚分布を調整したい部分を含まない場合を想定し、「主要部を取り囲む」と定義する。
【0065】
ここで、前記外部電極13は、上下端にフランジ22a,22bを有するアースシールド(上部)22−1及びアースシールド(下部)22−2から構成される筒状のアースシールド22内に設けられている。
前記筒状のアースシールド22(アースシールド(上部)22−1、アースシールド(下部)22−2)と前記外部電極13(外部電極(上部)13−1、外部電極(下部)13−2)と前記誘電体部材50(誘電体部材(上部)50−1と誘電体部材(下部)50−2)は、上部側と下部側とに二分割可能としており、着脱可能に取り付けられている。また、円板状の絶縁板24は、前記基台23と前記外部電極(下部)13−2の底部側との間に配置されている。
【0066】
また、上下にフランジ31a,31bを有するガス排気管14が形成されており、下フランジ31bから上フランジ22aを介してアースシールド22−1が垂下されている。なお、蓋体32は、前記排気管14の上部フランジ31aに取り付けられている。
【0067】
ここで、前記筒状のアースシールド22は、導電性の材料(アルミニウム、ステンレス、銅、真鍮等の導電部材)からなり、電磁波輻射を防ぐ電磁シールドと高周波のアースとしての役割を兼ねている。また、無垢材料、メッシュ、パンチングメタル等から構成することが可能である。なお、形状は、円筒状、角状等の筒状体で、全体を取り囲んでいる。
【0068】
なお、前記筒状のアースシールド22と外部電極13の分割部には、図のように導電コネクタ41及び真空シール(Oリング)42が介装されている。導電コネクタ41は、高周波の導通が確保されれば必ずしも必要ではない。
【0069】
また、前記誘電体部材(下部)50−2、外部電極(下部)13−2、前記絶縁板24及び前記基台23は、図示しないプッシャーにより、前記誘電体部材(上部)50−1、外部電極(上部)13−1に対して一体的に上下動し、前記外部電極(上部)13−1の底部を開閉する。ここで、前記アースシールド(下部)22−2は基台23と共に、一緒に分割される。
【0070】
本実施例では、接地電極である内部電極17はガス吹出し部を兼用しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、各々別途設けるようにすればよい。また、接地電極として内部電極は設けず、排気管を接地電極として用いることも可能である。さらに、外部電極側を接地電極とし、内部電極や排気管等に電源を接続することも可能である。要は、容器および誘電体部材を取り囲む外部電極と、その他の電極(複数でも良い)の間に電界を付与して、容器内にプラズマを発生させれば良い。
また、ガス吹き出し部は排気管側から容器内部に挿入されているが、必ずしも容器内に挿入する必要はなく、媒質ガスが容器内に供給されればよい。さらに、排気管側から挿入する必要もなく、たとえば容器に2つ口があれば、排気管に接続されていない口からガスを供給し、別の口からガスを排気することも出来る。
【0071】
ここで、前記放電を発生させるための電界として高周波を例として用いているが、直流ではなく交番電界、例えば、AC(交流)、LF(低周波)、RF(高周波)、VHF(高高周波)、マイクロ波、パルス等であれば用いることが出来る。このような電界であれば、外部電極と容器の間に誘電体部材が存在しても、誘電体部材に変位電流により電流が流れるため、容器内面まで電界が伝わり、プラズマを発生させることが出来る。この中でも、バリア性の高い膜を作りやすく、変位電流の流れやすい、LF、RF、VHFでの本発明の適用が特に好ましい。
【0072】
前記誘電体部材50としては、例えばプラスチックやガラス、またはセラミックを挙げることができ、これらの一種又はこれらの組合せから適宜誘電体部材を形成するようにすればよい。
前記プラスチックとしては、種々のものを用いることができるが、特に高周波損失が低く、耐熱性、難燃性、機械的強度の高い樹脂が好ましく、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素系樹脂、テフロン(登録商標)や、硬質塩化ビニル、ポリカーボネイト、PEEK(登録商標)が好ましい。前記セラミックとしては、高周波損失が低いアルミナ、ステアタイトまたは機械加工性が高いマコール(登録商標)が好ましい。
【0073】
高周波電力を出力する高周波電源18は、ケーブル34および給電端子35を通して前記外部電極13に接続されている。整合器36は、前記高周波電源18と前記給電端子35の間の前記ケーブル34に介装されている。
【0074】
前記内部電極17のガス吹出し孔16の先端には円筒の絶縁部材20を設けることで局所的なプラズマ集中を防止するようにしている。ガス吹き出し孔は前記内部電極17あるいは内部電極と兼用しない場合のガス吹き出し部のガス流路16と連通するように流れ方向に開口しても良いし、側壁に取り付けても良い。前記内部電極17の径は、プラスチック容器の口部内径以下とし、プラスチック容器12に挿入可能としている。
【0075】
前記内部電極17は、例えばタングステンやステンレス鋼のような耐熱性を有する金属材料により作られるが、アルミニウムで作ってもよい。また、内部電極17表面が平滑であると、その内部電極17の表面に堆積する炭素膜を剥離し易くなる虞がある。このため、内部電極17の表面を予めサンドブラスト処理し、表面粗さを大きくして表面に堆積する炭素膜を剥離し難くしても良い。
【0076】
次に、上述したバリア膜形成装置を用いて内面に炭素膜を被覆してなるプラスチック容器の製造方法を説明する。図示しないプッシャーにより誘電体部材50と外部電極13とアースシールド22とをそれぞれ上下に分割した下部側を一体的に動かして下げ、内部を開放する。つづいて、プラスチック容器12を開放した誘電体部材(下部)50−2内に挿入した後、図示しないプッシャーにより元に戻して閉じる。これらの動作は、誘電体部材(下部)50−2と外部電極(下部)13−2、絶縁板24、基台23及びアースシールド(下部)22−2を一体的に動かすことにより高速化を図っている。このとき、前記プラスチック容器12は排気管14にその口部を通して連通する。
【0077】
次いで、図示しない排気手段により排気管14を通して前記排気管14及び前記プラスチック容器12内外のガスを排気する。所定の真空度に到達した時点で、排気を続けながら媒質ガス19を内部電極17のガス流路16に供給し、この内部電極17のガス吹き出し孔20からプラスチック容器12内に底部に向かって吹き出させる。この媒質ガス19は、さらにプラスチック容器12の底部から壁面を伝わり、口部11に向かって流れていく。ガス供給量とガス排気量のバランスにより、前記プラスチック容器12内が所定のガス圧力になる。所定のガス圧力は必ずしも一定である必要はなく、過渡的に変化するものでも良い。
【0078】
次いで、高周波電源18から高周波電力を整合器36、ケーブル34および給電端子35を通して前記外部電極13に供給する。このとき、前記外部電極13(実質的に前記プラスチック容器内面)と接地された前記内部電極17との間に印加された高周波電圧により、容器内表面に電圧が印加され、プラズマシース端と容器内表面の間に生じる電界により容器内に放電プラズマが生成される。この放電プラズマによって媒質ガス19が解離し、生成した成膜種が前記プラスチック容器12内面に堆積し、炭素膜が形成される。
【0079】
所定の成膜時間(たとえば1秒から3秒程度)が経過すると前記炭素膜の膜厚が略所定の厚さに達するので、前記高周波電源18からの高周波電力の供給を停止し、媒質ガス19の供給の停止、残留ガスの排気、ガス排気停止の後、窒素、希ガス、又は空気等を内部電極17のガス流路16のガス吹き出し孔20、あるいは、排気管側に設置した図示しないガス供給弁を通してプラスチック容器12内に供給し、このプラスチック容器12内外を大気圧に戻し、内面炭素膜被覆プラスチック容器を取り出す。その後、前述した順序に従ってプラスチック容器12を交換し、次のプラスチック容器のコーティング作業へ移る。
【0080】
ここで、本実施の形態において前記媒質ガス19には、アセチレンを用いている。
【0081】
前記高周波電源18からの高周波電力は、13.56MHz乃至100MHzを用い、100〜1000Wの出力、0.1〜1Torrの圧力としている。また、この高周波電力の印加は連続的でも間欠的(パルス的)でもよい。なお、印加する高周波の周波数を高く(例えば60MHz)し、DLC膜に較べてより軟質な炭素膜を合成し、窒素又は酸素等の添加効果による軟質な炭素膜との相乗効果によって、基材との密着性をさらに良好にさせるようにすることができる。
【0082】
このような成膜において、本発明では、前記誘電体部材50を所定の空間部分を有して容器12の主要部を覆うように設けてなるので、プラズマ集中がなくなり、この結果プラズマが均一に発生し、凹部12aを有する容器12の内面の成膜を均一化することができる。
すなわち、従来の技術では容器外面に電極を密着して沿わせることが高バリアを得るために必要と考えていたのに対し、本発明では、高周波を印加する外部電極13を容器に直接沿わせず、容器12の略全面に亙って誘電体部材50を介することで容器12の略内面全体に印加される電圧を均一にするようにしている。これにより、前記容器12内面に成膜されるバリア膜を略全体に亙って均質にするようにしている。たとえば、従来の技術では経験的に、凹凸が少なくとも3mm以上になると単純な筒型電極ではバリア性向上が十分得られなかったが、本発明ではこのような場合にも十分なバリア性が得られる。なお、本発明で均一とは、本発明を用いない場合と比べて相対的に均一化することを示しており、必ずしも絶対的に均一な場合に限るものではない。
【0083】
従来技術では、電極が密接した部分のバリア膜は膜質が良好となり、バリア膜の膜厚も厚くなり、その結果バリア性が高くなるが、外部電極13が離れた部分は膜質・膜厚が低下し、容器全体としてはバリア性が低下してしまう場合があった。
これに対し本発明では外部電極13に密接した部分が無いことから、その部分に電圧がかかることでプラズマが集中することが無く、誘電体部材50を介して容器全体に均一な電圧がかかることでプラズマが均一に発生し、その結果容器全体の膜質・膜厚が均一となり、容器全体で高いバリア性を得ることができるものとなる。
【0084】
さらに、従来技術においては、例えばセンタリング等の不具合により、外部電極(金属)が容器の底部以外の壁部等の一部に部分的に接触するような場合、そこに放電がわずかながら集中し、その結果、成膜が不均一となるおそれがあるが、本発明のように誘電体部材50が絶縁物であるので、このようなことがあっても均一な成膜を施すことができる。
【0085】
なお、本発明においてバリア膜とは、ガスや液体や分子等の透過を防止するバリア膜だけでなく、アロマ等の臭い成分が容器に吸着・吸収されることを防ぐバリア膜も含む。
【0086】
このような誘電体部材50を有するバリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する手順を図7乃至12を用いてさらに詳述する。なお、容器12の形状としては、断面が概角形の略筒型形状の容器を例として用いている。
先ず、図7は容器挿入開始時を示す。図7に示すように、成膜装置の鉛直軸方向で上部装置10−1と下部装置10−2に2分割するものであり、容器12が下部装置10−2の上部に位置するように挿入治具71による挿入が開始される。
【0087】
図8においては、容器12が鉛直軸方向の下部誘電体部材50−2内に挿入される。
ここで、容器断面が通る最大の軌跡(破線で示す)を、容器最大通過軌跡線61と名付ける。なお、容器挿入の際には、容器転倒防止およびセンタリングのために容器胴部を図示しない治具によりささえながら行なうようにしている。
図9は下部誘電体部材50−2内への容器挿入終了時であり、下部誘電体部材50−2内に容器12の底部が設置される。
【0088】
図10は下部装置10−2を図示しないプッシャーにより上昇させて、上部装置10−1内に容器12の口部11側を挿入している。
図11はバリア膜形成装置10内に容器12が挿入終了した時を示している。
図12は図11の挿入終了状態において、容器12の図示を省略したものであり、容器最大通過軌跡線61は、最終的に容器外形線のうち、凹部(くぼみ部)12aを除いた線となる。
【0089】
このように、誘電体部材50は、容器12と接触せずに、前記容器最大軌跡線61の外側にその内面が所定の空隙51をもって位置することにより、容器内面への成膜の均一を図ることができる。なお、本実施の形態では、容器内容積が500mlで、空隙51は1mmとした。
このようにして容器12を取り囲む大きさの空洞が、容器12の外周が通過するための最大通過軌跡線61によって作られる空間と一致する、又はそれより大きな隙間を有するように誘電体部材50を配設するようにしており、これにより均一な成膜を得るようにしている。
また、種々の空洞形状を有する複数の誘電体部材50を用意し、その中から被処理物である容器12の形状等に適するように選択し、その後容器にバリア膜を成膜するようにしてもよい。これにより、容器の形状及び大きさに応じることが可能となり、均一な成膜を施すことが可能となる。
【0090】
次に、図2乃至図4、図35乃至図37を用いて前記誘電体部材50を設置することにより、容器全体の膜質・膜厚が均一になることを説明する原理について説明する。
ここで、図2中、符号12はプラスチック容器、12aは凹部(又はくびれ部)、13は外部電極、50は誘電体部材、55はプラズマのバルク部(バルク部のインピーダンスは低く、バルク部内の電位はほぼ一定と考えられる。)及び56はプラズマのシース部を各々図示している。また、aは誘電体部材50と容器12との近接部分、bは誘電体部材50と容器12の凹部12aとの離れている部分を図示する。また、d1は近接部分aにおける誘電体部材50の肉厚、d2は離れている部分bにおける誘電体部材50の肉厚、d3は近接部分aにおける誘電体部材50と容器12との距離、d4は離れている部分bにおけるにおける誘電体部材50と容器12との距離、d5は近接部分aにおける容器12の肉厚、d6は離れている部分bにおける容器12の肉厚を各々示す。なお、本説明においては、容器は断面が概円形の略筒型形状のものを例として用いている。
【0091】
先ず、本発明では、外部電極13と容器12の間に誘電体部材50を設置することにより、前記外部電極13内面から容器12内側表面までのインピーダンスZの分布の均一性が改善され、当該部の電圧降下の均一性が改善されるため、容器12内側表面の電圧が均一となって容器12内の放電の均一性が改善され、さらに、容器内側表面に形成されるバリア膜の均一性が改善され、結果として、容器全体のバリア性が向上するものと推察される。
【0092】
前記誘電体部材50を設置することにより、外部電極内面から容器内側表面までのインピーダンスZの分布が均一に近づく理由は以下の通りと考えられる。
ここで、図37にメカニズムである誘電体部材によるバリア性改善の概念図を示す。ここで、図37中、左図は従来の誘電体部材50が設置されていないものであり、右図は本発明の誘電体部材50が設置されたものである。
図37中左図の従来技術の場合には、プラズマのシース端のRF電位はボトル内でほぼ同電位と考えられるので、相似金属電極の外部電極13の場合は、電極に密着した部分のRF電界が強くなり、離れた部分のRF電界は弱くなる。この結果、RF電界が集中する部分と集中しない部分との差が生じることとなる。
【0093】
これに対し、図37中右図の本発明の場合には、樹脂等の誘電体部材50を用いると、外部電極13とシース端の距離が遠くなるので、RF電界の集中が抑えられる。
ここで、樹脂は誘電体でRF(高周波)のロスをほとんど生じないので、外部電極13に供給されたRF電力はロスすることなくシース部にRF電界を生じる。ロスが無いので、RF電界の大きさは相似金属電極の場合の平均値と同程度である。このRF電界により均一なプラズマが発生する。
【0094】
この結果、RF電界が均一で均一なプラズマが発生するので、シースに発生するDCバイアスも均一となり、結果としてイオンエネルギーが均一となって、膜質が均一となる。また、均一なプラズマであるので、成膜種も均一に存在するので、膜厚も均一となる。
なお、本発明において放電を発生させるための電界とは、交番電界であり、AC,LF,RF,VHF,マイクロ波等の電源周波数fを持つ電界、あるいはパルスを含むものである。この場合、外部電極と容器内面の間に設置された誘電体部材や空隙には変位電流が流れることになる。
【0095】
更に、近似的には、以下の数論が有効な指標を与える。
なお、本発明において放電を発生させるための電界とは、交番電界であり、AC,LF,RF,VHF,マイクロ波等の電源周波数fを持つ電界、あるいはパルスを含むものである。この場合、外部電極と容器内面の間に設置された誘電体部材や空隙には変位電流が流れることができる。
【0096】
このような誘電体部材や空隙のインピーダンスZは、下記「数1」に示す式(1)で求められる。
【0097】
【数1】
【0098】
ここで、ωは一定であるので、容量Cの大きさでインピーダンスZが決まる。
例えば、図2のように誘電体と空隙が直列に設置された場合の容量Cは、下記「数2」に示す式(2)で求められる。
【0099】
【数2】
【0100】
前記式(1)、式(2)より、下記「数3」に示す式(3)で換算距離Gが求められる。
【0101】
【数3】
【0102】
すなわち前記換算距離Gは、各部の距離(厚さ)diを比誘電率εiで割ったものの総和である。また、空隙の比誘電率εは1である。
【0103】
前記換算距離Gは、誘電体をすべて空隙に置き換えたときの電気的な空隙の距離(厚さ)に相当する。この定義により、外部電極内面から容器内側表面までのインピーダンスZの均一性は、換算距離Gの均一性、すなわち、容器の各場所の換算距離Gの比で表される。
したがって、換算距離Gの比が小さいほど、外部電極内面から容器内側表面までのインピーダンスZは均一で、容器内側表面に形成されるバリア膜が略均一となり、バリア性が向上することになる。
【0104】
この換算距離Gの比について、まず、比較例として従来の方法(誘電体が無い場合)の場合を説明する。
【0105】
なお、説明を簡素化するために、図2ように両極端である2点(近接部分aと離れている部分b)だけを考え、且つ、容器12の壁は十分薄いとして本説明では無視する(d5=d6=0)。
【0106】
図2において、誘電体部材50の代わりに例えば金属で製作すると、これは外部電極の一部となって従来の方法を模擬した形となる。すなわち、従来の容器最大通過軌跡線に沿った空洞を持つ外部電極となる。
この場合、d1=d2=0となり、空隙の比誘電率εは1であるので、近接部分aの換算距離はGmin=d3、離れている部分bの換算距離はGmax=d4となる。
したがって、換算距離の比はGmax/Gmin=d4/d3である。
【0107】
次に、本発明(誘電体部材のある場合)の換算距離Gの比について説明する。
図2において誘電体部材50を例えば樹脂(「テフロン(登録商標)」)で製作する。
この場合、近接部分aの換算距離はGmin=d3+d1/εD、離れている部分bの換算距離はGmax=d4+d2/εDとなる。
ここに、εDは誘電体(Dielectric)の比誘電率である。
【0108】
図2の場合はd1=d2であるので、換算距離Gの比はGmax/Gmin=(d4+d1/εD)/(d3+d1/εD)である。
d4>d3かつd1/εD<0であるので、本発明の換算距離Gの比Gmax/Gminは、先の比較例(従来の方法)より小さな値となり、均一性が改善される(均一となる)ことが分かる。
【0109】
なお、図2の構造では容器の全体を取り囲んで誘電体部材および外部電極を設置したが、図3に示すように、容器12との空隙が離れている部分bに対向する部分の誘電体部材50Bの比誘電率(εi)を他の誘電体部材50Aの比誘電率(εi)と異なるようにして、換算距離を変化させて、さらに容器内面に印加される電圧の均一化に寄与するようにしてもよい。
【0110】
また、図4に示すように、容器12との空隙が離れている部分bに対向する位置を覆うかたちで誘電体部材50を設け、その他を空隙として、換算距離を変化させて、容器内面に印加される電圧の略均一化に寄与するようにしてもよい。さらに、図示しないが、外部電極の金属表面が空隙に露出しないように、薄い誘電体部材を当該表面に取り付けても良い。
【0111】
以下、さらに下記「表1」及び「表2」に示した実際の比較・実験結果を用いて具体的に説明する。
なお、以下の考察においても容器の壁は十分薄いので、容器の厚さd5およびd6は無視して説明する(d5=d6=0)。
まず、表1に示す比較例1〜4では、従来の方法(誘電体部材を金属置き換える)で容器の凹部(くびれ部)12aの深さを変化させ、近接部分aと離れている部分bの換算距離Gの比Gmax/Gminと酸素ガスバリア性(BIF:Barrier Improvement Factor)を調べた。
なお、酸素ガスバリア性は一般的なMOCON法を用いて計測した。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
実験の結果、凹部(くびれ部)12aの深さが大きくなるほど、換算距離Gの比Gmax/Gminが大きくなり、酸素ガスバリア性が大きく低下することが分かる。
【0115】
つぎに、実施例1〜3では、誘電体部材(「テフロン(登録商標)」)50の内部空洞の形状を容器最大軌跡線に沿ったものとし、厚さを2mmとした。すると、同じ凹部(くびれ部)12aの深さに対し、本実施例の換算距離Gの比Gmax/Gminは、比較例より小さくなり、その結果酸素ガスバリア性が大きく改善されている。
【0116】
さらに、実施例4〜6では、誘電体部材(「テフロン(登録商標)」)50の厚さを4mmと厚くすることで、さらに換算距離Gの比Gmax/Gminを小さくすることができ、酸素ガスバリア性がさらに改善されている。
【0117】
実施例7〜11は、誘電体内側の空洞の形状が円筒の有底筒型形状で、図2のように容器肩部の張り出しがない形状のものとした。そのため、実施例1〜6と異なりこの肩部の方が容器くびれ部より離れており、上記離れている部分bは肩部となっており空隙が大きい。このため、実施例1〜6と比較してバリア性が低めであるが、従来の誘電体部材を用いない場合と比較すると大変改善している。
実施例7、8は誘電体部材(「テフロン(登録商標)」)50の厚さを変化(4mm、8mm)させている。また、実施例9、10は誘電体部材の厚さを4mmで、さらに空隙d3を変化させ、実施例11は誘電体部材の材質を硬質塩化ビニルに変化させている。
【0118】
これらの場合にも、Gの比Gmax/Gminが小さくなるほど、酸素ガスバリア性がさらに改善される傾向が見られた。
よって、誘電体部材の平均厚さ/比誘電率において、2mm/2.1〜8mm/2.1=0.95〜3.8の範囲が好適なものとなることが判明した。
【0119】
図35は、これらのデータをGの比Gmax/Gminと酸素ガスバリア性についてまとめたものである。
図35から、すべてのデータの近似式は、下記の式(4)の通り求められた。
y=36.03x-0.539・・・(4)
【0120】
一般に、コーティングバリア容器の性能としては、もとの容器の10倍以上、好ましくは15倍以上のバリア性が求められる。上記近似式(4)を用いると、10倍以上のバリア性を得るためには、最も大きな換算距離と最も小さな換算距離の比Gmax/Gminが1以上11以下、15倍以上を得るためには1以上5以下であればよいことが判明した。なお、換算距離の比は、距離を距離で割っているので無次元の数(単位が無い値)である。
【0121】
ここで、上記のデータは、断面が円形の縦長な場合の代表的な容器(PETボトル等)の場合に成り立つが、特異な形状の場合は絶対的な数値がずれる場合があるが、傾向は同様である。
【0122】
以上のように、誘電体部材50の設置によるバリア性の向上は、異なる形状の容器に対し、同じ形状の外部電極および誘電体部材からなるバリア膜形成装置を用いる場合にも効果を発揮する。
すなわち、容器形状が異なることで容器と誘電体部材空洞との空隙が大きくなっても、換算距離の比Gmax/Gminへの影響が小さく抑えられるからである。実施例7〜11の有底筒型形状は、容器形状にかかわらず径と長さが入れば用いることが出来るので、このような応用に適している。
【0123】
このことは、各種の容器に対しすべて相似形状の外部電極、あるいは、誘電体部材を作製しておく必要を無くし、型替え無し、あるいは、数種の形状の誘電体部材から、各ボトルに最も合ったものを選択して製造に用いればよいという大きなメリットを生むこととなる。
また、このような応用では、前記空隙が非常に大きくなる場合がある。
【0124】
本発明では、誘電体部材の設置により外部電極の金属表面が直接このような容器と外部電極の間の大きな空隙に面さないため、当該空隙に不要な放電が発生するのを防止することができる。
【0125】
また、図35より、容器内面に印加される電圧を均一にして高いバリア性を得るための方法として、容器内表面から誘電体部材50又は外部電極13までの最短距離についてd/εの総和を求め、その換算距離の比Gmax/Gminを11以下(バリア性10倍に相当)、好ましくは5以下(バリア性15倍に相当)、より好ましくは3.2以下(バリア性20倍に相当)とするのが良いことが判明した。
【0126】
さらに、理想的には容器の各地点において積分することにより求めることが望ましい。また、その代替手段として、容器の口部先端から容器の底部に亙って、例えば0.5cmおきの地点をとって、一箇所一箇所毎の和を求めるようにしても良い。この際に、例えば容器の中心を通る、容器断面上において各容器表面地点をとってもよい。
【0127】
また、別の手段として、実施例1〜11及び比較例1〜3を用い、各容器表面地点のd/εの総和の標準偏差/平均値を求めてもよい。この際に、各容器表面地点は容器断面上でとってもよく、この場合の各容器表面地点のd/εの総和の標準偏差/平均値が0.75以下(バリア性10倍に相当)、好ましくは0.66以下(バリア性15倍に相当)、より好ましくは0.57以下(バリア性20倍に相当)とするようにしてもよい。なお、比較例4はくびれ深さが15mmであるので除外した。
この結果を表3及び図36に示す。
【0128】
【表3】
【0129】
本発明は前記容器内面に印加される電圧を、外部電極と容器の間に設置された誘電体部材と、外部電極と容器との空隙又は前記誘電体部材と容器内面との空隙とを用いて、略均一としてなるので、容器の全体に亙って均一な成膜を得ることができる。
これに対し、従来技術の相似電極を用いるような場合(特許文献1,2)には、容器の成形精度や外部電極13やスペーサ25の製作精度あるいは容器の設置精度のために、完全な相似形状とすることは現実的には難しく、そのためにより高いバリア性を得られない問題があった。また、口部から肩部にかけての径が非常に細い部分は、外部電極と内部電極が非常に近くなるため上記の近似的な理論は当てはまらず、当該部分の容器内表面の電圧が他の部分と同じであっても、容器内面の電界が非常に大きくなり、放電が強くなって、成膜速度が速くなってしまい、均一な薄膜とすることができなかった。
上記の近似的理論は、容器の径が極端に細くなく、プラズマの電位がほぼ等しいと仮定できる部位で成り立ち、口部や肩部の細い部分では成り立たないものと推測される。
【0130】
また、上記の口部から肩部にかけての大きな電界を低減することを主目的として、外部電極と容器とに空隙を有する提案がある(特許文献3)が、凹凸のある容器を対象とした場合、略相似形状を出発点として、容器が挿入でき、かつ、バリア性が高い形状を得るべく、凹凸部に対応して空隙形状を調整していく必要があるため、多様化した容器形状に対してほとんど全てオーダーメイドで外部電極を製作して用意する必要があり、コスト高、手間の増加という問題があった。また、空隙が広くなるため、当該空隙でプラズマが発生しやすいので、空隙幅に限界があり、電圧を均一にする効果が限定的であり、容器全体の均一な薄膜を得るのが難しかった。さらに、容器の成形精度や外部電極13やスペーサ25の製作精度あるいは容器の設置精度による電圧分布の問題を改善することは出来ず、高いバリア性は得られなかった。あるいは、バリア性向上のばらつきが大きくなりやすかった。
【0131】
さらに、誘電体スペーサを主として容器の口部、肩部に設ける提案(特許文献4)又はそれを容器下部まで延出する提案(特許文献5)があるが、これも上記の口部から肩部にかけての大きな電界を低減することを主目的としており、胴部に凹凸のない相似形状の電極あるいはスペーサが適用できる容器を対象として肩部の細径部分の膜付きを調整することはできるが、胴部に凹凸がある容器を対象として胴部の膜付きを含む全体の均一化が得られるものではない。また、本提案でも容器の成形精度や外部電極13やスペーサ25の製作精度あるいは容器の設置精度による問題を改善することは出来ず、高いバリア性は得られなかった。
【0132】
また、従来技術において、電極と成膜対象の間にプラスチック製で電極に電気的に接触しかつ成膜対象から一定の間隔を設ける外筒を設けた成膜装置の提案がある(特許文献6)が、当該発明の対象は容器の内面・外面両方に成膜をするもので、主目的は容器の加熱防止であり、内面のみへの成膜を対象として、電圧分布の均一化による膜分布の改善を目的とした本発明とは全く異なるものであり、胴部などに凹凸を有する容器への成膜の際に課題となる膜分布の均一性や上記各種精度の問題によるバリア性低下に対する改善指針は何ら与えられていない。
【0133】
以上は容器の外部電極への挿入方向と水平な方向の断面に関して検討したが、以下に容器の挿入軸と垂直な断面方向について検討する。
【0134】
図13乃至図15は容器12の断面形状が円形や角形等の場合を示している。
ここで、図13に示すように、前記容器12の形状がおおむね円形状の場合は、換算距離Gはどこでもおおむね均一であるので、バリア性に影響はない。
【0135】
図14においては、例えば多角形等の半径が一定でない容器(角形)を挿入してコーティングを行う場合を示す。
この場合にも、前記の水平方向断面の場合と同様に、換算距離Gの比はGmax/Gmin=(d4+d1/εD)/(d3+d1/εD)であり、誘電体部材がないと場合に比べて小さくなり、バリア性が向上する。
【0136】
このような形状の誘電体部材を1つ用意するだけで、円形容器から各種角形容器まで対応することができる。
なお、次の図15に示す角形の空洞を有する誘電部材と異なり、容器の軸方向の角度を調整せず自由な角度で装置に挿入できるため、挿入装置の簡単化が図れる。
【0137】
最後に、図15に容器の外形と同様な角形の空洞を有する誘電部材の場合について示す。この場合はd4の一部が比誘電率εDのd2に側に置き換わるので、換算距離Gの比Gmax/Gmin=(d4+d2/εD)/(d3+d1/εD)は(b)よりも小さくなり、バリア性が向上できる。この場合、誘電体部材にはεDが大きい誘電体、たとえばアルミナ等を用いるとGが小さくなりさらに好ましい。
また、図示はしていないが、外部電極を角型筒状形状としても良い。
この他、多角形の容器に対して、上記角型と同様な考え方で、多角形型誘電部材を用いても良い。
【0138】
ここで、前記誘電体部材50は、少なくとも容器12の胴部を取り囲むものであることが好ましい。
また、誘電体部材50は、有底筒型形状又は略有底筒型形状としてもよいが、底無し筒型形状又は一部底を有する筒型形状としてもよい。
また、前記外部電極13のうち前記容器12の凹部12aの空隙に面した部分が前記誘電体部材50で覆われるようにしてもよい。
また、前記誘電体部材50の空洞の一部、又は空洞の略全体が、容器と略接しているようにしてもよい。
また、容器12の凹部12aに対向する部分の誘電体部材を異なる比誘電率εを有する誘電体部材とするようにしてもよい。
また、凹部形状に沿って誘電部材の形状を凸形とするようにしてもよい。
さらに、異なる比誘電率εiを有する誘電体部材を積層させるようにしてもよい。
【0139】
このように、前記誘電体部材の材料と空隙の厚さを種々設定することで、前記換算距離di/εiの、外部電極内表面から前記容器内表面までの総和が、容器の略全体で略均一になるようにし、成膜の均一性を図るようにしている。
【0140】
本発明では、容器12は凹部12aを有しないものを対象としても、従来技術で問題となっていた、容器の成形精度や外部電極13やスペーサ25の製作精度あるいは容器の設置精度のために、外部電極などを容器と完全に相似にすることが現実的には難しく、そのために高いバリア性を得られない課題に対して、誘電体部材による容器内面の電圧均一化を得ることが出来、容器内面に均質な膜を形成することができ、バリア性を向上させる効果を持つものである。
【0141】
また、容器の形状が、略筒型形状とするのが好ましい。ここで、筒型形状の容器とは、口部が細く、胴が太く、縦方向に長い容器形状で、側面部は円筒状あるいはパネル部のある角筒状であり、凹凸部がある場合と無い場合を含むものである。
【0142】
本実施の形態の他の例として、図5に誘電体部材を容器の凹部に対向する位置に設置するバリア膜形成装置を示す。この装置によっても、図4で説明したように外部電極と容器の間に設置された誘電体部材50と、外部電極13と容器12との空隙d6又は前記誘電体部材50と容器12との空隙d4とを用いて、略均一とすることができ、容器全体に亙って均一な成膜を得ることができる。さらに、本形態のように金属電極が比較的大きな空隙に露出すると異常放電することがあるので、少なくとも薄い誘電体を外部電極の表面に設置してこれを抑制しても良い。
【0143】
図6は容器12を上部が大きく開口するカップ状としたものである。このようなカップ状容器内にバリア膜を成膜するに際して、外部電極と容器の間に設置された誘電体部材50と、外部電極13と容器12との空隙d6又は前記誘電体部材50と容器12との空隙d4とを用いて、略均一化とすることができ、容器全体に亙って均一な成膜を得ることができる。
【0144】
[第2の実施の形態]
図16は、他の実施の形態のバリア膜形成装置の概略図である。
図16に示すように、容器12の形状を断面が円形状に変更しており、空隙51を最低3mm以上としたものを示している。
【0145】
本実施の形態によれば、誘電体部材50と容器12との隙間51を大きくした場合でも容器内面に均一で良好な成膜(酸素バリア性:BIF15倍以上)を得ることができる。
【0146】
[第3の実施の形態]
図17は、他の実施の形態のバリア膜形成装置の概略図である。
図17に示すように、容器12の形状を断面が円形状に変更しており、空隙51を最低1mmとしたものを示している。
また、容器底部側の凹部12bに対応するような凸部形状の誘電体部材62を設けている。
【0147】
本実施の形態によれば、容器胴部の凹部12a以外に、容器底部の凹部12bにおいても均一な成膜が可能となる。
【0148】
[第4の実施の形態]
図18は、他の実施の形態のバリア膜形成装置の概略図である。
図18に示すように、本実施の形態では、図17の装置において、容器12の肩部の電界を強めるために、誘電体部材の上部張出し部50−3を設けている。なお、本部材の形状は本発明の効果のため、容器形状に完全に沿ったものとする必要はなく、多種の容器の肩部形状を許容できる範囲の裕度をもった範囲の張出し形状とすればよい。また、上部張出し部50−3は、容器口部11の中心軸の軸出し機能を兼用するものとなる。なお、本発明において、このように誘電体部材の一部が容器に完全に沿わず多種の容器の形状を許容できる形状も略筒型形状に含むものとする。
【0149】
本実施の形態によれば、容器胴部以外の容器肩部においても均一な成膜が可能となる。
【0150】
[第5の実施の形態]
図19は、他の実施の形態のバリア膜形成装置の概略図である。
図19に示すように、図18の装置においてさらに容器12底部の側面の電界を強めるために、誘電体部材の下部張出し部50−4を設けている。また、下部張出し部50−4は、容器口部11の中心軸の軸出し機能を兼用するものとなる。
【0151】
また、本部材も容器形状に完全に沿ったものとする必要はなく、多種の容器の底部形状を許容できる範囲の裕度をもった範囲の張出し形状とすればよいが、容器12の転倒防止のために容器底部側面を接触するようにしてもよい。
【0152】
[第6の実施の形態]
図20及び図21は、他の実施の形態のバリア膜形成装置の概略図である。
図20及び図21に示すように、図18の装置においてさらに容器12低部側に、中心軸方向に向かって可動自在な誘電体部材の可動張出し部50−5を設けている。可動張出し部50−5は、例えばバネ機構、その他同様な構成の繰り出し容易なものとし、容器12が挿入されたときに、該容器12をセンタリングすると共に、その転倒の防止を図ったものである。また、容器12の側面の電界を強める効果もある。
【0153】
[第7の実施の形態]
図22は、他の実施の形態のバリア膜形成装置の概略図である。
図22に示すように、多種の容器12の肩部形状を想定し、上部外部電極13−1の内側に円錐形状の外部電極13−3を設けている。また、より高いバリア性を得るために、外部電極13−3をさらに固有の容器を対象とした相似形状になるようにしても良いし、いくつかの容器に近似的な相似形状としても良い。
【0154】
本実施の形態によれば、前記円錐形状の外部電極13−3を設置することにより、容器12肩部における誘電体部材の厚さが比較的略均一となり、容器12の上部側電界がより均一となり、その結果より均一な成膜を行なうことができる。
【0155】
[第8の実施の形態]
図23は、他の実施の形態のバリア膜形成装置の概略図である。
図23に示すように、本実施の形態では、誘電体部材で真空室を構成すると共に、前記誘電体部材の周囲には外部電極として、シート状の金属シート80を貼付けている。
前記金属シート80は例えばアルミニウム、ステンレス等で、厚さは高周波の表皮効果に当たるおおよそ50μm以上のものとするのが好ましく、上限はないが、たとえば5mm程度あってもよい。
【0156】
また、本発明のシートとは一般的な金属シートに限定されるものではなく、缶状の板材でもパンチングボードや網状等のシースルー金属でも良く、メッキなどの薄膜でも良い。
さらに、金属シート80の上部と下部の電気的接触を確保するために、周囲にコンタクトを設けることが好ましい。
本形態では、本発明の効果の他に、電極構造の軽量化、設計形状の自由度向上、機械加工の容易化による製作コストの低減、シースルー金属と透明樹脂部材(例えば透明硬質塩化ビニル等)の利用による内部可視化と、それによるプラズマ分布調整の容易化などの効果が得られる。なお、アースシールドもシースルー金属としている。
【0157】
[第9の実施の形態]
図24は、他の実施の形態のバリア膜形成装置の概略図である。
図24に示すように、外部のアースシールドであるアースシールド22で真空室を構成している。また、前記アースシールド22と金属シート80との間も空隙部分を少なくしてシール性を向上させるために、誘電体部材で埋め込んでいる。なお、空隙のままとしてもよい。
本形態では、上記第8の実施の形態の特別な効果がさらに増すと共に、空隙の絶縁破壊の抑制が得られる。
さらに、アースシールドを外部電極80と同様に金属シートとすることで、軽量化や低コスト化を図ることもできる。
【0158】
[第10の実施の形態]
図25は他の実施の形態のバリア膜形成装置の概略図である。図26は図25の要部断面図である。
図25及び図26に示すように、本実施の形態では、無数の空隙52を有する発泡体から誘電体部材50を構成している。前記空隙52の存在により実質的に比誘電率εDが下がり、換算距離の比を下げることができる。
【0159】
[第11の実施の形態]
図27は他の実施の形態のバリア膜形成装置の概略図である。図28は図27の要部断面図である。
図27及び図28に示すように、本実施の形態では、無数のスリット53を有する誘電体部材を設置している。前記スリット53の存在により実質的に比誘電率εDが下がり、換算距離の比を下げることができる。
【0160】
[第12の実施の形態]
図29乃至図31は、他の実施の形態のバリア膜形成装置の工程概略図である。
図29に示すように、多種の容器12の大きさを想定し、十分な隙間を有する誘電体部材50を外部電極13の内側に設置し、その上部開口部分から容器12を挿入治具71により挿入している。
【0161】
次に、図30に示すように、排気管14側から鉛直軸方向に可動自在な可動治具90とその先端側に設けられた口部把持治具91により容器12の口部11を把持し、固定する。
【0162】
その後、図31に示すように、誘電体部材50を有する外部電極及びアースシールド22が上昇し、容器12を収納する。
【0163】
このように、本実施の形態によれば、一般に容器12(特にPETボトル)の口部11の形状は、規格により略統一されているので、この部分を把持するネックハンドリングであればどのような形状の容器でも一種類のハンドリング装置で対応可能となり、従来の方法、あるいは上記の実施例で容器の底部を挿入する際に必要であった胴部の把持治具の型替えが不要となる。
これにより、多種多様な容器であっても誘電体部材50内に挿入可能な容器であれば、ネックハンドリングという簡易な操作で、バリア膜形成装置内に設置可能となる。また、誘電体部材50の存在により、容器内表面に亙って均一な成膜が可能となる。
本実施形態において、筒型形状の誘電体部材の一部、たとえば口部や肩部を、容器形状に近似の形状(完全な相似ではない)とすることで、多種の容器を許容できる形状とすることが可能であるが、このような形状も本特許において略筒型形状に含むものとする。
【0164】
[第13の実施の形態]
図32乃至図34は、他の実施の形態のバリア膜形成装置の概略図である。
本実施の形態では、図29乃至図31のバリア膜形成装置を上下反転構造としたものであり、工程の説明は省略する。本実施の形態のように、容器12の口部11を下向きの構成とすることで、炭素皮膜を形成する際に発生する副生成物である炭素粉が容器内に落下して付着することが抑止することができる。これにより、後工程である容器のエアクリーニングが非常に簡単化される。
【0165】
以上のように、本発明によれば、前記容器内面に印加される電圧を、外部電極と容器の間に設置された誘電体部材と、外部電極と容器との空隙又は前記誘電体部材と容器内面との空隙とを用いて、略均一としてなるので、容器の全体に亙って均一な成膜を得ることができる。
【0166】
特に、例えば容器内部に清涼飲料水等を充填する容器等の場合には、バリア性が比較的低くても良いので、各種の形状の容器に対して、ひとつの円柱状の筒型形状の電極を用いることで、電極の型替えをせずに、比較的良質な成膜が可能となる。よって、大量の容器を成膜する成膜システムにおいて、種々の容器に対して成膜用の型替えをすることが省略され、システム効率の大幅な向上を図ることができる。
【0167】
また、例えばビール等を充填する容器は高いバリア性が必要となり、円柱状の筒型形状の電極一つでの使いまわしでは十分なバリア性が得られない。しかしながら、本発明により誘電体部材や空隙の厚さや比誘電率εを適宜選択して容器全体にわたってd/εを均一化することで、凹凸のある複雑な形状の容器であっても良好な成膜が可能なり、15倍以上のバリア性が容易に得られる。
さらに高いバリア性が必要な場合には、凹凸のない容器を使用する必要があるが、その場合でも、製作精度、成形精度、設置精度などによるバリア性の低下を本発明で押さえさらに高いバリア性(たとえば20倍)を得ることが出来る。
【0168】
このとき、膜分布が均一となるので全体的に同程度の着色となるので、従来のように高いバリア性を得るために厚く膜をつけた場合に、着色の少ない部分はb値が4程度であるが着色の濃い部分がb値7〜8と濃くなってしまうことが解消される。
よって、ビールのような高バリアを必要とする場合にも、b値を4以下に抑えて見栄えの良い容器とすることが出来る。
【0169】
また、均一な成膜が可能となるので、高いバリア性が必要な場合にも従来の様に成膜時間を要さず、またその分、炭素粉ダストの発生が抑制できる。
【0170】
また、容器に凹凸面がある場合においては、例えばマイクロ波を使用した膜質が悪くバリア性の低い方法でしか均一化が図れなかったが、本発明はバリア性の高い高周波を用いた成膜法に於いて均一な成膜を得ることができる。
【0171】
本発明では、以上のような効果を一度に達成することができ、容器成膜技術の大幅な向上に寄与するものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0172】
以上のように、本発明に係るバリア膜形成装置及びバリア膜形成方法によれば、容器と外部電極の空隙の大小が問題となる場合、特に凹凸面が存在する容器に対して均一な成膜を行なうことが可能となり、従来よりも高いバリア性の成膜を低コストに得ることが出来る。
【符号の説明】
【0173】
11 口部
12 プラスチック容器
13 外部電極
14 排気管
16 ガス吹き出し孔
17 内部電極
18 高周波電源
19 媒質ガス
50 誘電体部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば樹脂等の容器等においてガスバリア性を付与するバリア膜を均一に形成するためのバリア膜形成装置、バリア膜形成方法及びバリア膜被覆容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチック容器の一つである例えばペット(PET)ボトルは、外部からの酸素の透過、内部(例えば炭酸飲料水)からの二酸化炭素の透過を防止するためにその内面に例えばDLC(Diamond Like Carbon) のような炭素膜やシリカ膜などのバリア性の高い膜をコーティングすることが試みられており、その成膜装置が種々提案されている(特許文献1〜6)。また、その応用として、医療用容器や食品容器、あるいは、燃料タンク等で、酸素、水素、燃料等の透過防止、アロマ等の透過、吸着防止等が試みられている。
【0003】
ここで、高周波プラズマCVDを用いたプラスチック容器への炭素膜を成膜装置としては、容器内部にコーティングする基本的な発明である特許文献4にかかる装置について、図38を参照して説明する。
【0004】
図38に示すように、バリア膜成膜装置は、口部11を有するプラスチック容器12の内面に放電プラズマにより成膜を施す成膜装置であって、プラスチック容器12の外周を取り囲む大きさを有する外部上部電極13−1及び外部下部電極13−2からなる外部電極13と、前記プラスチック容器12が挿入された時に少なくともその容器の口部および肩部と前記外部電極13の間に介在された誘電体からなるスペーサ25と、前記口部11が位置する側の前記外部電極13の端面に絶縁部材26を介して取り付けられた排気管14と、前記外部電極13内の前記プラスチック容器12内に前記排気管14側から前記プラスチック容器12に挿入され、接地側に接続されると共に、媒質ガス19を吹き出すためのガス流路16が穿設された内部電極17と、前記排気管14に取り付けられた図示しない排気装置と、前記内部電極17に媒質ガス19を供給するための図示しないガス供給装置と、前記外部電極13に接続された高周波電源18とを具備してなるものである。なお、符号20はガス流路16の先端に設けられた絶縁部材からなるガス吹出し孔である。
【0005】
ここで、前記外部電極13は、上下端にフランジ21a,21bを有する円筒状のアースシールド22内に設けられており、該円筒状のアースシールド22は、円環状基台23上に載置されている。また、円板状の絶縁板24は、前記円環状基台23と前記外部下部電極13−2の底部側との間に配置されている。前記内部電極17のガス流路16の先端には円筒の絶縁部材26を設けることで局所的なプラズマ集中を防止するようにしている。
【0006】
また、前記スペーサ25は、この上に載置される環状の絶縁部材26から螺着されたねじ(図示せず)により固定されている。このようにスペーサ25を前記外部電極13の上部に挿入固定することにより、前記外部電極13の底部側からプラスチック容器12を挿入すると、そのプラスチック容器12の口部および肩部が前記円板状のスペーサ25の空洞部内に位置し、かつこれ以外のプラスチック容器12の外周が前記外部電極13内面に位置する。また、上下にフランジ31a,31bを有するガス排気管14は、前記アースシールド22の上部フランジ21aおよび前記環状の絶縁部材26の上面に載置されている。そして、蓋体32は、前記排気管14の上部フランジ31aに取り付けられている。
【0007】
このような構成の装置を用いてプラスチック容器へ炭素膜をコーティングする方法について説明する。
【0008】
まず、外部電極13内にプラスチック容器12を挿入し、内部のガスをガス排気管14によって排気する。規定の真空度(代表値:10-1〜10-5Torr)に到達した後、排気を続けながら媒質ガス19を内部電極17に例えば10〜200mL/minの流量で供給し、さらに内部電極17のガス吹き出し孔16を通してプラスチック容器12内に吹出す。なお、この媒質ガス19としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、含酸素炭化水素類、含窒素炭化水素類が用いられる。前記プラスチック容器12内の圧力は、ガス供給量と排気量のバランスによって例えば2×10-1〜1×10-2Torrに設定する。その後、高周波電源18から50〜2000Wの高周波電力を整合器36及びRF入力端子35を通して外部電極13に印加する。
【0009】
このような高周波電力の外部電極13への印加によって、前記外部電極13と内部電極17の間にプラズマが生成される。この時、プラスチック容器12は外部電極13の内にほぼ隙間無く収納されており、プラズマはプラスチック容器12内に発生する。前記媒質ガス19は、前記プラズマによって解離、又は更にイオン化して、炭素膜を形成するための成膜種が生成され、この成膜種が前記容器12内面に堆積し、炭素膜を形成する。炭素膜を所定の膜厚まで形成した後、高周波電力の印加を停止し、媒質ガス供給の停止、残留ガスの排気、窒素、希ガス、又は空気等を外部電極13内に供給し、この空間内を大気圧に戻す。この後、前記プラスチック容器12を外部電極13から取り外す。なお、この方法において炭素膜を厚さ20乃至30nm成膜するには2〜3秒間要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平8−53116号公報
【特許文献2】特許第2788412号公報(特開平8−53117号公報)
【特許文献3】国際公開第03/101847号
【特許文献4】特許第3643813号公報(特開2003−237754号公報)
【特許文献5】特開2005−247431号公報
【特許文献6】特開2000−230064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら前記成膜装置(特許文献4)においては、バリア性の高い良好な成膜を得るために、外部電極13とスペーサ25からなる空洞の形状がプラスチック容器12の形状に略相似形状とする必要があった。
【0012】
また特許文献1、2ではスペーサが無いが、同様に外部電極の空洞形状をプラスチック容器に略相似形状とする必要があった。いずれの場合も、容器の胴部等に凹凸(凹部または凸部、あるいは両方)があれば、当然その形状に相似形状の空洞とする必要がある。しかしながら、容器を長手方向に差し込む構造の装置の場合、これを実現することは難しい。
【0013】
また、容器の胴部の凹凸が比較的少ないものの場合には、凹凸部に若干空間ができてしまっても、実用しうるバリア性をなんとか得られていたが、近年における、軽量化や使用後のつぶし易さを目的とした容器デザインに見られるような容器の多様化によって、胴部の凹凸部(または、くぼみ部、凹部あるいは凸部)が複数又は該くぼみ部(凹部)が深いようなものが存在するような場合、成膜の不均一が非常に大きくなり実用しうるバリア性が得られないという問題が発生した。
【0014】
そこで、外部電極に容器を挿入後、容器の凹凸部に合わせて外部電極の一部を動かし、相似形状とする方法が考えられるが、このような可動構造は、高速量産装置ではコストや信頼性上出来るだけ避ける必要がある。
【0015】
また、凹凸が無く相似形状が実現できるような場合でも、より高いバリア性を得るためには容器に完全に相似形状の電極を用い、その間の空隙を等間隔とすることが必要であるが、容器の成形精度や外部電極13やスペーサ25の製作精度あるいは容器の設置精度のためにその実現は難しく、そのため、より高いバリア性を得られない、という問題がある。
【0016】
また、従来技術において、外部電極と容器とに適度な空隙を有する提案がある(特許文献3)が、凹凸のある容器の場合、略相似形状を出発点として、容器が挿入でき、かつ、バリア性が高い形状を得るべく、容器の凹凸部に対応して空隙形状を調整していく必要があるため、多様化した容器形状に対してほとんど全てオーダーメイドで外部電極を製作して用意する必要があり、コスト高、手間の増加という問題があった。また、外部電極の重量が増加しやすく、装置の構成において外部電極の配置や可動部の設定に制約が生じやすい状況にあるため、例えば容器を倒立させながら搬送・成膜する装置構成とすることに支障がある、という問題がある。
【0017】
また、従来技術において、誘電体スペーサを主として容器の口部、肩部に設ける成膜装置の提案(特許文献4)や、それを容器下部まで延出する提案(特許文献5)があるが、これらは、胴部に凹凸のない相似形状の電極あるいはスペーサが適用できる容器を対象として肩部の細径部分の膜付きを調整することを目的としており、胴部に凹凸がある容器を対象として胴部の膜付きを含む全体の均一化を得ることができなかった。すなわち、胴部などに凹凸を有する容器への成膜の際に課題となる膜分布の均一性の改善については何ら指針が与えられていない。これは、後述する容器内面に印加される電圧の均一化がなされていないためである。
【0018】
また、従来技術において、電極と成膜対象の間にプラスチック製で電極に電気的に接触しかつ成膜対象から一定の間隔を設ける外筒を設けた成膜装置の提案(特許文献6)があるが、これも、胴部などに凹凸を有する容器への成膜の際に課題となる膜分布の均一性の改善については何ら指針が与えられていない。これも、後述する容器内面に印加される電圧の均一化がなされていないためである。また、当該発明の対象は容器の内面・外面両方に成膜をするもので、主目的は容器の加熱防止であり、内面のみへの成膜における膜分布改善の指針を与えていない。
【0019】
総合すると、次のように問題を整理できる。高品質なガスバリア薄膜を形成するためには、後述する容器内面に印加される電圧の均一化を達成する必要がある。そのために外部電極の構成からアプローチする場合、外部電極と容器との間に、適切なサイズと組成からなる空隙と誘電体を配置する組み合わせにより電圧分布の最適化を図ることができる。このような組み合わせに到達した先行技術が上述の通り存在しない一方で、これを実現できた場合、高いガスバリア性以外の諸課題、具体的には各種容器への外部電極の共通化、容器凹凸デザインへの対応、膜厚の均一分布、外部電極の軽量化など、の解決に至るものであることから、品質上・装置コストの面で多大な効果を得ることができる。
【0020】
本発明は、前記問題に鑑み、凹凸面が存在する容器などに対して均一な成膜を行なうことが可能なバリア膜形成装置、バリア膜形成方法及びバリア膜被覆容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、少なくとも一以上の凹凸部を有する容器を被処理容器とし、前記被処理容器内面にバリア膜を成膜するバリア膜形成装置であって、前記容器を取り囲む大きさの空洞を有する誘電体部材と、該誘電体部材の外周側を覆う外部電極と、前記容器の口部が位置する側の前記外部電極の端面に絶縁部材を介して取り付けられ、前記容器内部を、排気管を介して減圧する排気手段と、前記容器内にバリア膜生成用の媒質ガスを吹き出すためのガス吹出し部と、前記外部電極と接地電極間に放電を発生させるための電界を付与するための電界付与手段とを具備してなることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0022】
第2の発明は、第1の発明において、前記ガス吹き出し部が接地されると共に、前記容器内に挿入され、内部電極を兼ねることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0023】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記被処理物である容器を取り囲む大きさの空洞が、容器外周が通過するための最大通過軌跡線によって作られる空間と一致する、又はそれより大きな隙間を有することを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0024】
第4の発明は、第1乃至3のいずれか一つの発明において、前記誘電体部材が、有底筒型形状であることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0025】
第5の発明は、第1乃至4のいずれか一つの発明において、前記誘電体部材が、底無し筒型形状又は一部底を有する筒型形状であることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0026】
第6の発明は、第1乃至5のいずれか一つの発明において、前記外部電極のうち前記容器の凹部空間に面した部分が前記誘電体部材で覆われてなることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0027】
第7の発明は、第1乃至6のいずれか一つの発明において、前記誘電体部材の空洞の一部が容器と近接していることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0028】
第8の発明は、第1乃至7のいずれか一つの発明において、前記誘電体部材が、フッ素系樹脂、硬質塩化ビニル、ガラス又はセラミックのいずれか一種又はこれらの組合せであることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0029】
第9の発明は、第1乃至8のいずれか一つの発明において、前記誘電体部材の内部に前記容器が設置された際、容器の胴部と誘電体部材との間の空隙が、空隙幅の最大値と最小値の差が3mm以上となるように形成されてなるものであることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0030】
第10の発明は、第1乃至9のいずれか一つの発明において、前記誘電体部材の厚さが均一であることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0031】
第11の発明は、第1乃至10のいずれか一つの発明において、前記誘電体部材が、有底又は無底の筒型形状であると共に、誘電体部材の平均厚さ/比誘電率が、0.95〜3.8の範囲であることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0032】
第12の発明は、第1乃至11のいずれか一つの発明において、前記誘電体部材が、容器の肩部、口部のいずれか一方又は両方に空隙を持って設けてなることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0033】
第13の発明は、第1乃至12のいずれか一つの発明において、前記誘電体部材又は空隙の厚さ(di)を比誘電率(εi)で除した換算距離di/εiの外部電極内表面から前記容器内表面までの総和が、容器全体に亙って均一であることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0034】
第14の発明は、第1乃至13のいずれか一つの発明において、前記換算距離di/εiの、外部電極内表面から前記容器内表面までの総和が、容器の全体で均一になるように、前記誘電体部材の材料と、前記誘電体部材と空隙の厚さと、前記外部電極形状を組み合わせてなることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0035】
第15の発明は、第1乃至14のいずれか一つの発明において、容器断面上の各容器表面地点における、前記誘電体部材又は空隙の厚さ(di)を比誘電率(εi)で除した換算距離di/εiの外部電極内表面から前記容器内表面までの各地点総和について、容器全体における各地点総和の標準偏差を平均値で除した値が0.75以下であることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0036】
第16の発明は、被処理物である容器の少なくとも主要部を取り囲む大きさの空洞を有すると共に、前記空洞は前記容器外周が通過するための最大通過軌跡線によって作られる空間と一致する、又はそれより大きな隙間を有する誘電体部材と、該誘電体部材の外周側に設置された外部電極と、前記容器内部を、排気管を介して減圧する排気手段と、前記容器内にバリア膜生成用の媒質ガスを吹き出すためのガス吹出し部と、前記容器内に放電を発生させるために前記外部電極に接続された電界付与手段とを具備してなり、前記容器内面にバリア膜を成膜することを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0037】
第17の発明は、第1又は16の発明の発明において、前記外部電極は接地電極であると共に、前記電界付与手段を接続した電極を前記容器内又は前記排気管に設けてなることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0038】
第18の発明は、第1又は16の発明において、前記誘電体部材の一部が前記容器と接することにより、前記容器の位置決めしてなることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0039】
第19の発明は、第1又は16の発明において、前記誘電体部材の一部が前記容器と接することにより、前記容器の位置決めしてなると共に、前記容器と接する前記誘電体の一部が可動構造であり、前記容器の挿入時又は取り出し時に移動してなることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0040】
第20の発明は、第1乃至19のいずれか一つにおいて、前記外部電極を取り囲む大きさを持つ接地された導電性のアースシールドを前記外部電極と絶縁して設置することを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0041】
第21の発明は、第1乃至20のいずれか一つの発明において、前記外部電極が真空容器を兼ねることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0042】
第22の発明は、第1乃至19のいずれか一つの発明において、前記誘電体部材が真空容器を兼ねることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0043】
第23の発明は、第1又は16の発明において、前記外部電極を取り囲む大きさを持つ接地された導電性のアースシールドを前記外部電極と絶縁して設置すると共に、前記アースシールドが真空容器を兼ねることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0044】
第24の発明は、第21又は22の発明において、前記外部電極がシート状であることを特徴とするバリア膜形成装置もある。
【0045】
第25の発明は、第1又は16の発明において、前記外部電極を取り囲む大きさを持つ接地された導電性のアースシールドを前記外部電極と絶縁して設置すると共に、前記外部電極と前記アースシールドの間の全体に絶縁部材を設置することを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0046】
第26の発明は、第1又は16の発明において、被処理物である容器の形状が、筒型形状であることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0047】
第27の発明は、第1又は16の発明において、被処理物である容器の形状が、筒型形状であると共に、少なくとも一以上の凹部を有することを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0048】
第28の発明は、第1の発明において、前記誘電体が、前記容器との間に空隙を有することを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0049】
第29の発明は、第1乃至28のいずれか一つの発明のバリア膜形成装置を用い、被処理物の容器内面にバリア膜を均一に成膜することを特徴とするバリア膜形成方法にある。
【0050】
第30の発明は、第1又は16の発明のバリア膜形成装置を用い、被処理物の容器内面にバリア膜を均一に成膜すると共に、被処理物である容器の形状が、筒型形状であることを特徴とするバリア膜形成方法にある。
【0051】
第31の発明は、第1乃至28のいずれか一つの発明のバリア膜形成装置を用い、被処理物の容器内面にバリア膜を均一に成膜すると共に、被処理物である容器の形状が、筒型形状であると共に、少なくとも一以上の凹部を有することを特徴とするバリア膜形成方法にある。
【0052】
第32の発明は、第1乃至28のいずれか一つのバリア膜形成装置を用い、被処理物の容器内面にバリア膜を均一に成膜すると共に、種々の空洞形状を有する複数の誘電体部材を用意し、その中から被処理物である容器の形状等に適するように選択し、その後容器にバリア膜を形成することを特徴とするバリア膜形成方法にある。
【0053】
第33の発明は、第1乃至28のいずれか一つのバリア膜形成装置を用い、被処理物の容器内面にバリア膜を均一に成膜すると共に、前記誘電体部材の全部または一部と、前記外部電極の全部または一部と、前記アースシールドの全部または一部が一体的に駆動手段により移動して、前記真空容器を開閉し、容器の挿入、取り出しを行うことを特徴とするバリア膜形成方法にある。
【0054】
第34の発明は、第1又は16のバリア膜形成装置を用い、ネックハンドリングにより前記容器を挿入および取り出しを行うことを特徴とするバリア膜形成方法にある。
【0055】
第35の発明は、第3、4又は16のいずれか一つの発明において、前記誘電体部材は前記容器を前記有底筒型の外部電極の底方向に向かって当該容器底側から挿入できる開口を有することを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0056】
第36の発明は、第3、4又は16のいずれか一つの発明において、前記容器の口部が下向きになるように前記外部電極の口部端部を下向きとし、前記外部電極の端部の下側に絶縁部材を介して排気管を取り付けることを特徴とするバリア膜形成装置にある。
【0057】
第37の発明は、第36の発明のバリア膜形成装置を用い、当該容器を上下反転させた後、ネックハンドリングにより、前記容器の外部電極への挿入および取り出しを行うことを特徴とするバリア膜形成方法にある。
【0058】
第38の発明は、第30乃至34、37のいずれか一つの発明のバリア膜形成方法を用いて形成されてなることを特徴とするバリア膜被覆容器にある。
【発明の効果】
【0059】
本発明によれば、外部電極と容器の間に設置された誘電体部材と、前記誘電体部材と容器との空隙とを用いることにより、容器の内面全体に印加される電圧が均一化され、これにより、前記容器内面に成膜されるバリア膜を全体に亙って均質に成膜することができ、高いバリア性の容器を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、第1の実施の形態に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【図2】図2は、誘電体部材を設置したバリア膜形成の原理図である。
【図3】図3は、誘電体部材を設置したバリア膜形成の原理図である。
【図4】図4は、誘電体部材を設置したバリア膜形成の原理図である。
【図5】図5は、第1の実施の形態に係る他のバリア膜形成装置の概略図である。
【図6】図6は、第1の実施の形態に係る他のバリア膜形成装置の概略図である。
【図7】図7は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図8】図8は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図9】図9は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図10】図10は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図11】図11は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図12】図12は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図13】図13は、誘電体部材と容器最大軌跡線との関係を示す図である。
【図14】図14は、他の誘電体部材と容器最大軌跡線との関係を示す図である。
【図15】図15は、他の誘電体部材と容器最大軌跡線との関係を示す図である。
【図16】図16は、第2の実施の形態に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【図17】図17は、第3の実施の形態に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【図18】図18は、第4の実施の形態に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【図19】図19は、第5の実施の形態に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【図20】図20は、第6の実施の形態に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【図21】図21は、図20の要部断面図である。
【図22】図22は、第7の実施の形態に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【図23】図23は、第8の実施の形態に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【図24】図24は、第9の実施の形態に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【図25】図25は、第10の実施の形態に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【図26】図26は、図25の要部断面図である。
【図27】図27は、第11の実施の形態に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【図28】図28は、図27の要部断面図である。
【図29】図29は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図30】図30は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図31】図31は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図32】図32は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図33】図33は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図34】図34は、バリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する工程図である。
【図35】図35は、酸素ガスバリア性と換算距離の比との関係図である。
【図36】図36は、換算距離Gの容器各個所の平均/標準偏差と酸素ガスバリアBIFとの関係図である。
【図37】図37は、誘電体部材によるバリア性改善の概念図である。
【図38】図38は、従来技術に係るバリア膜形成装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態又は実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態又は実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0062】
[第1の実施の形態]
本発明による実施の形態に係るバリア膜形成装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態に係るバリア膜形成装置を示す概念図である。なお、図38で説明した従来技術に係るバリア膜形成装置と同一部材については、同一符号を付して重複する説明は省略する。
図1に示すように、本実施の形態に係るバリア膜形成装置10は、少なくとも一以上の凹凸部12aを有するプラスチック容器(以下「容器」ともいう。)12を被処理物とし、内面にバリア膜を成膜するバリア膜形成装置であって、前記容器12の少なくとも主要部を取り囲む大きさの空洞を有する誘電体部材50と、該誘電体部材50の外周側を覆う外部電極13と、前記容器12の口部11が位置する側の前記外部電極13の端面に絶縁部材26を介して取り付けられ、前記容器12の内部を、排気管14を介して減圧する排気手段(図示せず)と、前記排気管14側から挿入され、前記容器12内にバリア膜生成用の媒質ガス19を吹き出すためのガス吹出し部を兼用する内部電極17と、前記外部電極13と接地電極間に放電を発生させるための電界を付与するための電界付与手段(高周波電源18及び整合器36)とを具備してなるものである。
【0063】
本発明では、前記容器12内面に印加される電圧を、外部電極13と容器12の間に設置された誘電体部材50と、前記誘電体部材50と容器12との空隙とを用いて、前記誘電体部材固有の比誘電率εiの関係から略均一としてなるものである。これにより、容器内面に均一な成膜を行なうことが可能となる。詳細は後述する。本発明は、厳密には電位の均一性をねらいとするところ、実際の電極設計においては、上述した空隙の大きさと比誘電率を用いた近似を活用できることを見出したためである。
【0064】
また、本実施例では、前記外部電極13が、円筒状としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、たとえば、適用する容器形状にあわせて、角筒状、くびれ形状などに調整しても良い。また、誘電体部材50が前記容器12の主要部を取り囲むとしているが、主要部とは、たとえば容器における胴部などを示しており、容器における口部や肩部などの付随的部分のみを取り囲むものではなく、たとえば1/2程度以上の表面積を占める場合を示す。また、おおむね全体を取り囲むことを想定するが、たとえば底部や容器の取手部などの特殊部分や、特に膜厚分布を調整したい部分を含まない場合を想定し、「主要部を取り囲む」と定義する。
【0065】
ここで、前記外部電極13は、上下端にフランジ22a,22bを有するアースシールド(上部)22−1及びアースシールド(下部)22−2から構成される筒状のアースシールド22内に設けられている。
前記筒状のアースシールド22(アースシールド(上部)22−1、アースシールド(下部)22−2)と前記外部電極13(外部電極(上部)13−1、外部電極(下部)13−2)と前記誘電体部材50(誘電体部材(上部)50−1と誘電体部材(下部)50−2)は、上部側と下部側とに二分割可能としており、着脱可能に取り付けられている。また、円板状の絶縁板24は、前記基台23と前記外部電極(下部)13−2の底部側との間に配置されている。
【0066】
また、上下にフランジ31a,31bを有するガス排気管14が形成されており、下フランジ31bから上フランジ22aを介してアースシールド22−1が垂下されている。なお、蓋体32は、前記排気管14の上部フランジ31aに取り付けられている。
【0067】
ここで、前記筒状のアースシールド22は、導電性の材料(アルミニウム、ステンレス、銅、真鍮等の導電部材)からなり、電磁波輻射を防ぐ電磁シールドと高周波のアースとしての役割を兼ねている。また、無垢材料、メッシュ、パンチングメタル等から構成することが可能である。なお、形状は、円筒状、角状等の筒状体で、全体を取り囲んでいる。
【0068】
なお、前記筒状のアースシールド22と外部電極13の分割部には、図のように導電コネクタ41及び真空シール(Oリング)42が介装されている。導電コネクタ41は、高周波の導通が確保されれば必ずしも必要ではない。
【0069】
また、前記誘電体部材(下部)50−2、外部電極(下部)13−2、前記絶縁板24及び前記基台23は、図示しないプッシャーにより、前記誘電体部材(上部)50−1、外部電極(上部)13−1に対して一体的に上下動し、前記外部電極(上部)13−1の底部を開閉する。ここで、前記アースシールド(下部)22−2は基台23と共に、一緒に分割される。
【0070】
本実施例では、接地電極である内部電極17はガス吹出し部を兼用しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、各々別途設けるようにすればよい。また、接地電極として内部電極は設けず、排気管を接地電極として用いることも可能である。さらに、外部電極側を接地電極とし、内部電極や排気管等に電源を接続することも可能である。要は、容器および誘電体部材を取り囲む外部電極と、その他の電極(複数でも良い)の間に電界を付与して、容器内にプラズマを発生させれば良い。
また、ガス吹き出し部は排気管側から容器内部に挿入されているが、必ずしも容器内に挿入する必要はなく、媒質ガスが容器内に供給されればよい。さらに、排気管側から挿入する必要もなく、たとえば容器に2つ口があれば、排気管に接続されていない口からガスを供給し、別の口からガスを排気することも出来る。
【0071】
ここで、前記放電を発生させるための電界として高周波を例として用いているが、直流ではなく交番電界、例えば、AC(交流)、LF(低周波)、RF(高周波)、VHF(高高周波)、マイクロ波、パルス等であれば用いることが出来る。このような電界であれば、外部電極と容器の間に誘電体部材が存在しても、誘電体部材に変位電流により電流が流れるため、容器内面まで電界が伝わり、プラズマを発生させることが出来る。この中でも、バリア性の高い膜を作りやすく、変位電流の流れやすい、LF、RF、VHFでの本発明の適用が特に好ましい。
【0072】
前記誘電体部材50としては、例えばプラスチックやガラス、またはセラミックを挙げることができ、これらの一種又はこれらの組合せから適宜誘電体部材を形成するようにすればよい。
前記プラスチックとしては、種々のものを用いることができるが、特に高周波損失が低く、耐熱性、難燃性、機械的強度の高い樹脂が好ましく、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素系樹脂、テフロン(登録商標)や、硬質塩化ビニル、ポリカーボネイト、PEEK(登録商標)が好ましい。前記セラミックとしては、高周波損失が低いアルミナ、ステアタイトまたは機械加工性が高いマコール(登録商標)が好ましい。
【0073】
高周波電力を出力する高周波電源18は、ケーブル34および給電端子35を通して前記外部電極13に接続されている。整合器36は、前記高周波電源18と前記給電端子35の間の前記ケーブル34に介装されている。
【0074】
前記内部電極17のガス吹出し孔16の先端には円筒の絶縁部材20を設けることで局所的なプラズマ集中を防止するようにしている。ガス吹き出し孔は前記内部電極17あるいは内部電極と兼用しない場合のガス吹き出し部のガス流路16と連通するように流れ方向に開口しても良いし、側壁に取り付けても良い。前記内部電極17の径は、プラスチック容器の口部内径以下とし、プラスチック容器12に挿入可能としている。
【0075】
前記内部電極17は、例えばタングステンやステンレス鋼のような耐熱性を有する金属材料により作られるが、アルミニウムで作ってもよい。また、内部電極17表面が平滑であると、その内部電極17の表面に堆積する炭素膜を剥離し易くなる虞がある。このため、内部電極17の表面を予めサンドブラスト処理し、表面粗さを大きくして表面に堆積する炭素膜を剥離し難くしても良い。
【0076】
次に、上述したバリア膜形成装置を用いて内面に炭素膜を被覆してなるプラスチック容器の製造方法を説明する。図示しないプッシャーにより誘電体部材50と外部電極13とアースシールド22とをそれぞれ上下に分割した下部側を一体的に動かして下げ、内部を開放する。つづいて、プラスチック容器12を開放した誘電体部材(下部)50−2内に挿入した後、図示しないプッシャーにより元に戻して閉じる。これらの動作は、誘電体部材(下部)50−2と外部電極(下部)13−2、絶縁板24、基台23及びアースシールド(下部)22−2を一体的に動かすことにより高速化を図っている。このとき、前記プラスチック容器12は排気管14にその口部を通して連通する。
【0077】
次いで、図示しない排気手段により排気管14を通して前記排気管14及び前記プラスチック容器12内外のガスを排気する。所定の真空度に到達した時点で、排気を続けながら媒質ガス19を内部電極17のガス流路16に供給し、この内部電極17のガス吹き出し孔20からプラスチック容器12内に底部に向かって吹き出させる。この媒質ガス19は、さらにプラスチック容器12の底部から壁面を伝わり、口部11に向かって流れていく。ガス供給量とガス排気量のバランスにより、前記プラスチック容器12内が所定のガス圧力になる。所定のガス圧力は必ずしも一定である必要はなく、過渡的に変化するものでも良い。
【0078】
次いで、高周波電源18から高周波電力を整合器36、ケーブル34および給電端子35を通して前記外部電極13に供給する。このとき、前記外部電極13(実質的に前記プラスチック容器内面)と接地された前記内部電極17との間に印加された高周波電圧により、容器内表面に電圧が印加され、プラズマシース端と容器内表面の間に生じる電界により容器内に放電プラズマが生成される。この放電プラズマによって媒質ガス19が解離し、生成した成膜種が前記プラスチック容器12内面に堆積し、炭素膜が形成される。
【0079】
所定の成膜時間(たとえば1秒から3秒程度)が経過すると前記炭素膜の膜厚が略所定の厚さに達するので、前記高周波電源18からの高周波電力の供給を停止し、媒質ガス19の供給の停止、残留ガスの排気、ガス排気停止の後、窒素、希ガス、又は空気等を内部電極17のガス流路16のガス吹き出し孔20、あるいは、排気管側に設置した図示しないガス供給弁を通してプラスチック容器12内に供給し、このプラスチック容器12内外を大気圧に戻し、内面炭素膜被覆プラスチック容器を取り出す。その後、前述した順序に従ってプラスチック容器12を交換し、次のプラスチック容器のコーティング作業へ移る。
【0080】
ここで、本実施の形態において前記媒質ガス19には、アセチレンを用いている。
【0081】
前記高周波電源18からの高周波電力は、13.56MHz乃至100MHzを用い、100〜1000Wの出力、0.1〜1Torrの圧力としている。また、この高周波電力の印加は連続的でも間欠的(パルス的)でもよい。なお、印加する高周波の周波数を高く(例えば60MHz)し、DLC膜に較べてより軟質な炭素膜を合成し、窒素又は酸素等の添加効果による軟質な炭素膜との相乗効果によって、基材との密着性をさらに良好にさせるようにすることができる。
【0082】
このような成膜において、本発明では、前記誘電体部材50を所定の空間部分を有して容器12の主要部を覆うように設けてなるので、プラズマ集中がなくなり、この結果プラズマが均一に発生し、凹部12aを有する容器12の内面の成膜を均一化することができる。
すなわち、従来の技術では容器外面に電極を密着して沿わせることが高バリアを得るために必要と考えていたのに対し、本発明では、高周波を印加する外部電極13を容器に直接沿わせず、容器12の略全面に亙って誘電体部材50を介することで容器12の略内面全体に印加される電圧を均一にするようにしている。これにより、前記容器12内面に成膜されるバリア膜を略全体に亙って均質にするようにしている。たとえば、従来の技術では経験的に、凹凸が少なくとも3mm以上になると単純な筒型電極ではバリア性向上が十分得られなかったが、本発明ではこのような場合にも十分なバリア性が得られる。なお、本発明で均一とは、本発明を用いない場合と比べて相対的に均一化することを示しており、必ずしも絶対的に均一な場合に限るものではない。
【0083】
従来技術では、電極が密接した部分のバリア膜は膜質が良好となり、バリア膜の膜厚も厚くなり、その結果バリア性が高くなるが、外部電極13が離れた部分は膜質・膜厚が低下し、容器全体としてはバリア性が低下してしまう場合があった。
これに対し本発明では外部電極13に密接した部分が無いことから、その部分に電圧がかかることでプラズマが集中することが無く、誘電体部材50を介して容器全体に均一な電圧がかかることでプラズマが均一に発生し、その結果容器全体の膜質・膜厚が均一となり、容器全体で高いバリア性を得ることができるものとなる。
【0084】
さらに、従来技術においては、例えばセンタリング等の不具合により、外部電極(金属)が容器の底部以外の壁部等の一部に部分的に接触するような場合、そこに放電がわずかながら集中し、その結果、成膜が不均一となるおそれがあるが、本発明のように誘電体部材50が絶縁物であるので、このようなことがあっても均一な成膜を施すことができる。
【0085】
なお、本発明においてバリア膜とは、ガスや液体や分子等の透過を防止するバリア膜だけでなく、アロマ等の臭い成分が容器に吸着・吸収されることを防ぐバリア膜も含む。
【0086】
このような誘電体部材50を有するバリア膜形成装置を用いた容器内面に成膜する手順を図7乃至12を用いてさらに詳述する。なお、容器12の形状としては、断面が概角形の略筒型形状の容器を例として用いている。
先ず、図7は容器挿入開始時を示す。図7に示すように、成膜装置の鉛直軸方向で上部装置10−1と下部装置10−2に2分割するものであり、容器12が下部装置10−2の上部に位置するように挿入治具71による挿入が開始される。
【0087】
図8においては、容器12が鉛直軸方向の下部誘電体部材50−2内に挿入される。
ここで、容器断面が通る最大の軌跡(破線で示す)を、容器最大通過軌跡線61と名付ける。なお、容器挿入の際には、容器転倒防止およびセンタリングのために容器胴部を図示しない治具によりささえながら行なうようにしている。
図9は下部誘電体部材50−2内への容器挿入終了時であり、下部誘電体部材50−2内に容器12の底部が設置される。
【0088】
図10は下部装置10−2を図示しないプッシャーにより上昇させて、上部装置10−1内に容器12の口部11側を挿入している。
図11はバリア膜形成装置10内に容器12が挿入終了した時を示している。
図12は図11の挿入終了状態において、容器12の図示を省略したものであり、容器最大通過軌跡線61は、最終的に容器外形線のうち、凹部(くぼみ部)12aを除いた線となる。
【0089】
このように、誘電体部材50は、容器12と接触せずに、前記容器最大軌跡線61の外側にその内面が所定の空隙51をもって位置することにより、容器内面への成膜の均一を図ることができる。なお、本実施の形態では、容器内容積が500mlで、空隙51は1mmとした。
このようにして容器12を取り囲む大きさの空洞が、容器12の外周が通過するための最大通過軌跡線61によって作られる空間と一致する、又はそれより大きな隙間を有するように誘電体部材50を配設するようにしており、これにより均一な成膜を得るようにしている。
また、種々の空洞形状を有する複数の誘電体部材50を用意し、その中から被処理物である容器12の形状等に適するように選択し、その後容器にバリア膜を成膜するようにしてもよい。これにより、容器の形状及び大きさに応じることが可能となり、均一な成膜を施すことが可能となる。
【0090】
次に、図2乃至図4、図35乃至図37を用いて前記誘電体部材50を設置することにより、容器全体の膜質・膜厚が均一になることを説明する原理について説明する。
ここで、図2中、符号12はプラスチック容器、12aは凹部(又はくびれ部)、13は外部電極、50は誘電体部材、55はプラズマのバルク部(バルク部のインピーダンスは低く、バルク部内の電位はほぼ一定と考えられる。)及び56はプラズマのシース部を各々図示している。また、aは誘電体部材50と容器12との近接部分、bは誘電体部材50と容器12の凹部12aとの離れている部分を図示する。また、d1は近接部分aにおける誘電体部材50の肉厚、d2は離れている部分bにおける誘電体部材50の肉厚、d3は近接部分aにおける誘電体部材50と容器12との距離、d4は離れている部分bにおけるにおける誘電体部材50と容器12との距離、d5は近接部分aにおける容器12の肉厚、d6は離れている部分bにおける容器12の肉厚を各々示す。なお、本説明においては、容器は断面が概円形の略筒型形状のものを例として用いている。
【0091】
先ず、本発明では、外部電極13と容器12の間に誘電体部材50を設置することにより、前記外部電極13内面から容器12内側表面までのインピーダンスZの分布の均一性が改善され、当該部の電圧降下の均一性が改善されるため、容器12内側表面の電圧が均一となって容器12内の放電の均一性が改善され、さらに、容器内側表面に形成されるバリア膜の均一性が改善され、結果として、容器全体のバリア性が向上するものと推察される。
【0092】
前記誘電体部材50を設置することにより、外部電極内面から容器内側表面までのインピーダンスZの分布が均一に近づく理由は以下の通りと考えられる。
ここで、図37にメカニズムである誘電体部材によるバリア性改善の概念図を示す。ここで、図37中、左図は従来の誘電体部材50が設置されていないものであり、右図は本発明の誘電体部材50が設置されたものである。
図37中左図の従来技術の場合には、プラズマのシース端のRF電位はボトル内でほぼ同電位と考えられるので、相似金属電極の外部電極13の場合は、電極に密着した部分のRF電界が強くなり、離れた部分のRF電界は弱くなる。この結果、RF電界が集中する部分と集中しない部分との差が生じることとなる。
【0093】
これに対し、図37中右図の本発明の場合には、樹脂等の誘電体部材50を用いると、外部電極13とシース端の距離が遠くなるので、RF電界の集中が抑えられる。
ここで、樹脂は誘電体でRF(高周波)のロスをほとんど生じないので、外部電極13に供給されたRF電力はロスすることなくシース部にRF電界を生じる。ロスが無いので、RF電界の大きさは相似金属電極の場合の平均値と同程度である。このRF電界により均一なプラズマが発生する。
【0094】
この結果、RF電界が均一で均一なプラズマが発生するので、シースに発生するDCバイアスも均一となり、結果としてイオンエネルギーが均一となって、膜質が均一となる。また、均一なプラズマであるので、成膜種も均一に存在するので、膜厚も均一となる。
なお、本発明において放電を発生させるための電界とは、交番電界であり、AC,LF,RF,VHF,マイクロ波等の電源周波数fを持つ電界、あるいはパルスを含むものである。この場合、外部電極と容器内面の間に設置された誘電体部材や空隙には変位電流が流れることになる。
【0095】
更に、近似的には、以下の数論が有効な指標を与える。
なお、本発明において放電を発生させるための電界とは、交番電界であり、AC,LF,RF,VHF,マイクロ波等の電源周波数fを持つ電界、あるいはパルスを含むものである。この場合、外部電極と容器内面の間に設置された誘電体部材や空隙には変位電流が流れることができる。
【0096】
このような誘電体部材や空隙のインピーダンスZは、下記「数1」に示す式(1)で求められる。
【0097】
【数1】
【0098】
ここで、ωは一定であるので、容量Cの大きさでインピーダンスZが決まる。
例えば、図2のように誘電体と空隙が直列に設置された場合の容量Cは、下記「数2」に示す式(2)で求められる。
【0099】
【数2】
【0100】
前記式(1)、式(2)より、下記「数3」に示す式(3)で換算距離Gが求められる。
【0101】
【数3】
【0102】
すなわち前記換算距離Gは、各部の距離(厚さ)diを比誘電率εiで割ったものの総和である。また、空隙の比誘電率εは1である。
【0103】
前記換算距離Gは、誘電体をすべて空隙に置き換えたときの電気的な空隙の距離(厚さ)に相当する。この定義により、外部電極内面から容器内側表面までのインピーダンスZの均一性は、換算距離Gの均一性、すなわち、容器の各場所の換算距離Gの比で表される。
したがって、換算距離Gの比が小さいほど、外部電極内面から容器内側表面までのインピーダンスZは均一で、容器内側表面に形成されるバリア膜が略均一となり、バリア性が向上することになる。
【0104】
この換算距離Gの比について、まず、比較例として従来の方法(誘電体が無い場合)の場合を説明する。
【0105】
なお、説明を簡素化するために、図2ように両極端である2点(近接部分aと離れている部分b)だけを考え、且つ、容器12の壁は十分薄いとして本説明では無視する(d5=d6=0)。
【0106】
図2において、誘電体部材50の代わりに例えば金属で製作すると、これは外部電極の一部となって従来の方法を模擬した形となる。すなわち、従来の容器最大通過軌跡線に沿った空洞を持つ外部電極となる。
この場合、d1=d2=0となり、空隙の比誘電率εは1であるので、近接部分aの換算距離はGmin=d3、離れている部分bの換算距離はGmax=d4となる。
したがって、換算距離の比はGmax/Gmin=d4/d3である。
【0107】
次に、本発明(誘電体部材のある場合)の換算距離Gの比について説明する。
図2において誘電体部材50を例えば樹脂(「テフロン(登録商標)」)で製作する。
この場合、近接部分aの換算距離はGmin=d3+d1/εD、離れている部分bの換算距離はGmax=d4+d2/εDとなる。
ここに、εDは誘電体(Dielectric)の比誘電率である。
【0108】
図2の場合はd1=d2であるので、換算距離Gの比はGmax/Gmin=(d4+d1/εD)/(d3+d1/εD)である。
d4>d3かつd1/εD<0であるので、本発明の換算距離Gの比Gmax/Gminは、先の比較例(従来の方法)より小さな値となり、均一性が改善される(均一となる)ことが分かる。
【0109】
なお、図2の構造では容器の全体を取り囲んで誘電体部材および外部電極を設置したが、図3に示すように、容器12との空隙が離れている部分bに対向する部分の誘電体部材50Bの比誘電率(εi)を他の誘電体部材50Aの比誘電率(εi)と異なるようにして、換算距離を変化させて、さらに容器内面に印加される電圧の均一化に寄与するようにしてもよい。
【0110】
また、図4に示すように、容器12との空隙が離れている部分bに対向する位置を覆うかたちで誘電体部材50を設け、その他を空隙として、換算距離を変化させて、容器内面に印加される電圧の略均一化に寄与するようにしてもよい。さらに、図示しないが、外部電極の金属表面が空隙に露出しないように、薄い誘電体部材を当該表面に取り付けても良い。
【0111】
以下、さらに下記「表1」及び「表2」に示した実際の比較・実験結果を用いて具体的に説明する。
なお、以下の考察においても容器の壁は十分薄いので、容器の厚さd5およびd6は無視して説明する(d5=d6=0)。
まず、表1に示す比較例1〜4では、従来の方法(誘電体部材を金属置き換える)で容器の凹部(くびれ部)12aの深さを変化させ、近接部分aと離れている部分bの換算距離Gの比Gmax/Gminと酸素ガスバリア性(BIF:Barrier Improvement Factor)を調べた。
なお、酸素ガスバリア性は一般的なMOCON法を用いて計測した。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
実験の結果、凹部(くびれ部)12aの深さが大きくなるほど、換算距離Gの比Gmax/Gminが大きくなり、酸素ガスバリア性が大きく低下することが分かる。
【0115】
つぎに、実施例1〜3では、誘電体部材(「テフロン(登録商標)」)50の内部空洞の形状を容器最大軌跡線に沿ったものとし、厚さを2mmとした。すると、同じ凹部(くびれ部)12aの深さに対し、本実施例の換算距離Gの比Gmax/Gminは、比較例より小さくなり、その結果酸素ガスバリア性が大きく改善されている。
【0116】
さらに、実施例4〜6では、誘電体部材(「テフロン(登録商標)」)50の厚さを4mmと厚くすることで、さらに換算距離Gの比Gmax/Gminを小さくすることができ、酸素ガスバリア性がさらに改善されている。
【0117】
実施例7〜11は、誘電体内側の空洞の形状が円筒の有底筒型形状で、図2のように容器肩部の張り出しがない形状のものとした。そのため、実施例1〜6と異なりこの肩部の方が容器くびれ部より離れており、上記離れている部分bは肩部となっており空隙が大きい。このため、実施例1〜6と比較してバリア性が低めであるが、従来の誘電体部材を用いない場合と比較すると大変改善している。
実施例7、8は誘電体部材(「テフロン(登録商標)」)50の厚さを変化(4mm、8mm)させている。また、実施例9、10は誘電体部材の厚さを4mmで、さらに空隙d3を変化させ、実施例11は誘電体部材の材質を硬質塩化ビニルに変化させている。
【0118】
これらの場合にも、Gの比Gmax/Gminが小さくなるほど、酸素ガスバリア性がさらに改善される傾向が見られた。
よって、誘電体部材の平均厚さ/比誘電率において、2mm/2.1〜8mm/2.1=0.95〜3.8の範囲が好適なものとなることが判明した。
【0119】
図35は、これらのデータをGの比Gmax/Gminと酸素ガスバリア性についてまとめたものである。
図35から、すべてのデータの近似式は、下記の式(4)の通り求められた。
y=36.03x-0.539・・・(4)
【0120】
一般に、コーティングバリア容器の性能としては、もとの容器の10倍以上、好ましくは15倍以上のバリア性が求められる。上記近似式(4)を用いると、10倍以上のバリア性を得るためには、最も大きな換算距離と最も小さな換算距離の比Gmax/Gminが1以上11以下、15倍以上を得るためには1以上5以下であればよいことが判明した。なお、換算距離の比は、距離を距離で割っているので無次元の数(単位が無い値)である。
【0121】
ここで、上記のデータは、断面が円形の縦長な場合の代表的な容器(PETボトル等)の場合に成り立つが、特異な形状の場合は絶対的な数値がずれる場合があるが、傾向は同様である。
【0122】
以上のように、誘電体部材50の設置によるバリア性の向上は、異なる形状の容器に対し、同じ形状の外部電極および誘電体部材からなるバリア膜形成装置を用いる場合にも効果を発揮する。
すなわち、容器形状が異なることで容器と誘電体部材空洞との空隙が大きくなっても、換算距離の比Gmax/Gminへの影響が小さく抑えられるからである。実施例7〜11の有底筒型形状は、容器形状にかかわらず径と長さが入れば用いることが出来るので、このような応用に適している。
【0123】
このことは、各種の容器に対しすべて相似形状の外部電極、あるいは、誘電体部材を作製しておく必要を無くし、型替え無し、あるいは、数種の形状の誘電体部材から、各ボトルに最も合ったものを選択して製造に用いればよいという大きなメリットを生むこととなる。
また、このような応用では、前記空隙が非常に大きくなる場合がある。
【0124】
本発明では、誘電体部材の設置により外部電極の金属表面が直接このような容器と外部電極の間の大きな空隙に面さないため、当該空隙に不要な放電が発生するのを防止することができる。
【0125】
また、図35より、容器内面に印加される電圧を均一にして高いバリア性を得るための方法として、容器内表面から誘電体部材50又は外部電極13までの最短距離についてd/εの総和を求め、その換算距離の比Gmax/Gminを11以下(バリア性10倍に相当)、好ましくは5以下(バリア性15倍に相当)、より好ましくは3.2以下(バリア性20倍に相当)とするのが良いことが判明した。
【0126】
さらに、理想的には容器の各地点において積分することにより求めることが望ましい。また、その代替手段として、容器の口部先端から容器の底部に亙って、例えば0.5cmおきの地点をとって、一箇所一箇所毎の和を求めるようにしても良い。この際に、例えば容器の中心を通る、容器断面上において各容器表面地点をとってもよい。
【0127】
また、別の手段として、実施例1〜11及び比較例1〜3を用い、各容器表面地点のd/εの総和の標準偏差/平均値を求めてもよい。この際に、各容器表面地点は容器断面上でとってもよく、この場合の各容器表面地点のd/εの総和の標準偏差/平均値が0.75以下(バリア性10倍に相当)、好ましくは0.66以下(バリア性15倍に相当)、より好ましくは0.57以下(バリア性20倍に相当)とするようにしてもよい。なお、比較例4はくびれ深さが15mmであるので除外した。
この結果を表3及び図36に示す。
【0128】
【表3】
【0129】
本発明は前記容器内面に印加される電圧を、外部電極と容器の間に設置された誘電体部材と、外部電極と容器との空隙又は前記誘電体部材と容器内面との空隙とを用いて、略均一としてなるので、容器の全体に亙って均一な成膜を得ることができる。
これに対し、従来技術の相似電極を用いるような場合(特許文献1,2)には、容器の成形精度や外部電極13やスペーサ25の製作精度あるいは容器の設置精度のために、完全な相似形状とすることは現実的には難しく、そのためにより高いバリア性を得られない問題があった。また、口部から肩部にかけての径が非常に細い部分は、外部電極と内部電極が非常に近くなるため上記の近似的な理論は当てはまらず、当該部分の容器内表面の電圧が他の部分と同じであっても、容器内面の電界が非常に大きくなり、放電が強くなって、成膜速度が速くなってしまい、均一な薄膜とすることができなかった。
上記の近似的理論は、容器の径が極端に細くなく、プラズマの電位がほぼ等しいと仮定できる部位で成り立ち、口部や肩部の細い部分では成り立たないものと推測される。
【0130】
また、上記の口部から肩部にかけての大きな電界を低減することを主目的として、外部電極と容器とに空隙を有する提案がある(特許文献3)が、凹凸のある容器を対象とした場合、略相似形状を出発点として、容器が挿入でき、かつ、バリア性が高い形状を得るべく、凹凸部に対応して空隙形状を調整していく必要があるため、多様化した容器形状に対してほとんど全てオーダーメイドで外部電極を製作して用意する必要があり、コスト高、手間の増加という問題があった。また、空隙が広くなるため、当該空隙でプラズマが発生しやすいので、空隙幅に限界があり、電圧を均一にする効果が限定的であり、容器全体の均一な薄膜を得るのが難しかった。さらに、容器の成形精度や外部電極13やスペーサ25の製作精度あるいは容器の設置精度による電圧分布の問題を改善することは出来ず、高いバリア性は得られなかった。あるいは、バリア性向上のばらつきが大きくなりやすかった。
【0131】
さらに、誘電体スペーサを主として容器の口部、肩部に設ける提案(特許文献4)又はそれを容器下部まで延出する提案(特許文献5)があるが、これも上記の口部から肩部にかけての大きな電界を低減することを主目的としており、胴部に凹凸のない相似形状の電極あるいはスペーサが適用できる容器を対象として肩部の細径部分の膜付きを調整することはできるが、胴部に凹凸がある容器を対象として胴部の膜付きを含む全体の均一化が得られるものではない。また、本提案でも容器の成形精度や外部電極13やスペーサ25の製作精度あるいは容器の設置精度による問題を改善することは出来ず、高いバリア性は得られなかった。
【0132】
また、従来技術において、電極と成膜対象の間にプラスチック製で電極に電気的に接触しかつ成膜対象から一定の間隔を設ける外筒を設けた成膜装置の提案がある(特許文献6)が、当該発明の対象は容器の内面・外面両方に成膜をするもので、主目的は容器の加熱防止であり、内面のみへの成膜を対象として、電圧分布の均一化による膜分布の改善を目的とした本発明とは全く異なるものであり、胴部などに凹凸を有する容器への成膜の際に課題となる膜分布の均一性や上記各種精度の問題によるバリア性低下に対する改善指針は何ら与えられていない。
【0133】
以上は容器の外部電極への挿入方向と水平な方向の断面に関して検討したが、以下に容器の挿入軸と垂直な断面方向について検討する。
【0134】
図13乃至図15は容器12の断面形状が円形や角形等の場合を示している。
ここで、図13に示すように、前記容器12の形状がおおむね円形状の場合は、換算距離Gはどこでもおおむね均一であるので、バリア性に影響はない。
【0135】
図14においては、例えば多角形等の半径が一定でない容器(角形)を挿入してコーティングを行う場合を示す。
この場合にも、前記の水平方向断面の場合と同様に、換算距離Gの比はGmax/Gmin=(d4+d1/εD)/(d3+d1/εD)であり、誘電体部材がないと場合に比べて小さくなり、バリア性が向上する。
【0136】
このような形状の誘電体部材を1つ用意するだけで、円形容器から各種角形容器まで対応することができる。
なお、次の図15に示す角形の空洞を有する誘電部材と異なり、容器の軸方向の角度を調整せず自由な角度で装置に挿入できるため、挿入装置の簡単化が図れる。
【0137】
最後に、図15に容器の外形と同様な角形の空洞を有する誘電部材の場合について示す。この場合はd4の一部が比誘電率εDのd2に側に置き換わるので、換算距離Gの比Gmax/Gmin=(d4+d2/εD)/(d3+d1/εD)は(b)よりも小さくなり、バリア性が向上できる。この場合、誘電体部材にはεDが大きい誘電体、たとえばアルミナ等を用いるとGが小さくなりさらに好ましい。
また、図示はしていないが、外部電極を角型筒状形状としても良い。
この他、多角形の容器に対して、上記角型と同様な考え方で、多角形型誘電部材を用いても良い。
【0138】
ここで、前記誘電体部材50は、少なくとも容器12の胴部を取り囲むものであることが好ましい。
また、誘電体部材50は、有底筒型形状又は略有底筒型形状としてもよいが、底無し筒型形状又は一部底を有する筒型形状としてもよい。
また、前記外部電極13のうち前記容器12の凹部12aの空隙に面した部分が前記誘電体部材50で覆われるようにしてもよい。
また、前記誘電体部材50の空洞の一部、又は空洞の略全体が、容器と略接しているようにしてもよい。
また、容器12の凹部12aに対向する部分の誘電体部材を異なる比誘電率εを有する誘電体部材とするようにしてもよい。
また、凹部形状に沿って誘電部材の形状を凸形とするようにしてもよい。
さらに、異なる比誘電率εiを有する誘電体部材を積層させるようにしてもよい。
【0139】
このように、前記誘電体部材の材料と空隙の厚さを種々設定することで、前記換算距離di/εiの、外部電極内表面から前記容器内表面までの総和が、容器の略全体で略均一になるようにし、成膜の均一性を図るようにしている。
【0140】
本発明では、容器12は凹部12aを有しないものを対象としても、従来技術で問題となっていた、容器の成形精度や外部電極13やスペーサ25の製作精度あるいは容器の設置精度のために、外部電極などを容器と完全に相似にすることが現実的には難しく、そのために高いバリア性を得られない課題に対して、誘電体部材による容器内面の電圧均一化を得ることが出来、容器内面に均質な膜を形成することができ、バリア性を向上させる効果を持つものである。
【0141】
また、容器の形状が、略筒型形状とするのが好ましい。ここで、筒型形状の容器とは、口部が細く、胴が太く、縦方向に長い容器形状で、側面部は円筒状あるいはパネル部のある角筒状であり、凹凸部がある場合と無い場合を含むものである。
【0142】
本実施の形態の他の例として、図5に誘電体部材を容器の凹部に対向する位置に設置するバリア膜形成装置を示す。この装置によっても、図4で説明したように外部電極と容器の間に設置された誘電体部材50と、外部電極13と容器12との空隙d6又は前記誘電体部材50と容器12との空隙d4とを用いて、略均一とすることができ、容器全体に亙って均一な成膜を得ることができる。さらに、本形態のように金属電極が比較的大きな空隙に露出すると異常放電することがあるので、少なくとも薄い誘電体を外部電極の表面に設置してこれを抑制しても良い。
【0143】
図6は容器12を上部が大きく開口するカップ状としたものである。このようなカップ状容器内にバリア膜を成膜するに際して、外部電極と容器の間に設置された誘電体部材50と、外部電極13と容器12との空隙d6又は前記誘電体部材50と容器12との空隙d4とを用いて、略均一化とすることができ、容器全体に亙って均一な成膜を得ることができる。
【0144】
[第2の実施の形態]
図16は、他の実施の形態のバリア膜形成装置の概略図である。
図16に示すように、容器12の形状を断面が円形状に変更しており、空隙51を最低3mm以上としたものを示している。
【0145】
本実施の形態によれば、誘電体部材50と容器12との隙間51を大きくした場合でも容器内面に均一で良好な成膜(酸素バリア性:BIF15倍以上)を得ることができる。
【0146】
[第3の実施の形態]
図17は、他の実施の形態のバリア膜形成装置の概略図である。
図17に示すように、容器12の形状を断面が円形状に変更しており、空隙51を最低1mmとしたものを示している。
また、容器底部側の凹部12bに対応するような凸部形状の誘電体部材62を設けている。
【0147】
本実施の形態によれば、容器胴部の凹部12a以外に、容器底部の凹部12bにおいても均一な成膜が可能となる。
【0148】
[第4の実施の形態]
図18は、他の実施の形態のバリア膜形成装置の概略図である。
図18に示すように、本実施の形態では、図17の装置において、容器12の肩部の電界を強めるために、誘電体部材の上部張出し部50−3を設けている。なお、本部材の形状は本発明の効果のため、容器形状に完全に沿ったものとする必要はなく、多種の容器の肩部形状を許容できる範囲の裕度をもった範囲の張出し形状とすればよい。また、上部張出し部50−3は、容器口部11の中心軸の軸出し機能を兼用するものとなる。なお、本発明において、このように誘電体部材の一部が容器に完全に沿わず多種の容器の形状を許容できる形状も略筒型形状に含むものとする。
【0149】
本実施の形態によれば、容器胴部以外の容器肩部においても均一な成膜が可能となる。
【0150】
[第5の実施の形態]
図19は、他の実施の形態のバリア膜形成装置の概略図である。
図19に示すように、図18の装置においてさらに容器12底部の側面の電界を強めるために、誘電体部材の下部張出し部50−4を設けている。また、下部張出し部50−4は、容器口部11の中心軸の軸出し機能を兼用するものとなる。
【0151】
また、本部材も容器形状に完全に沿ったものとする必要はなく、多種の容器の底部形状を許容できる範囲の裕度をもった範囲の張出し形状とすればよいが、容器12の転倒防止のために容器底部側面を接触するようにしてもよい。
【0152】
[第6の実施の形態]
図20及び図21は、他の実施の形態のバリア膜形成装置の概略図である。
図20及び図21に示すように、図18の装置においてさらに容器12低部側に、中心軸方向に向かって可動自在な誘電体部材の可動張出し部50−5を設けている。可動張出し部50−5は、例えばバネ機構、その他同様な構成の繰り出し容易なものとし、容器12が挿入されたときに、該容器12をセンタリングすると共に、その転倒の防止を図ったものである。また、容器12の側面の電界を強める効果もある。
【0153】
[第7の実施の形態]
図22は、他の実施の形態のバリア膜形成装置の概略図である。
図22に示すように、多種の容器12の肩部形状を想定し、上部外部電極13−1の内側に円錐形状の外部電極13−3を設けている。また、より高いバリア性を得るために、外部電極13−3をさらに固有の容器を対象とした相似形状になるようにしても良いし、いくつかの容器に近似的な相似形状としても良い。
【0154】
本実施の形態によれば、前記円錐形状の外部電極13−3を設置することにより、容器12肩部における誘電体部材の厚さが比較的略均一となり、容器12の上部側電界がより均一となり、その結果より均一な成膜を行なうことができる。
【0155】
[第8の実施の形態]
図23は、他の実施の形態のバリア膜形成装置の概略図である。
図23に示すように、本実施の形態では、誘電体部材で真空室を構成すると共に、前記誘電体部材の周囲には外部電極として、シート状の金属シート80を貼付けている。
前記金属シート80は例えばアルミニウム、ステンレス等で、厚さは高周波の表皮効果に当たるおおよそ50μm以上のものとするのが好ましく、上限はないが、たとえば5mm程度あってもよい。
【0156】
また、本発明のシートとは一般的な金属シートに限定されるものではなく、缶状の板材でもパンチングボードや網状等のシースルー金属でも良く、メッキなどの薄膜でも良い。
さらに、金属シート80の上部と下部の電気的接触を確保するために、周囲にコンタクトを設けることが好ましい。
本形態では、本発明の効果の他に、電極構造の軽量化、設計形状の自由度向上、機械加工の容易化による製作コストの低減、シースルー金属と透明樹脂部材(例えば透明硬質塩化ビニル等)の利用による内部可視化と、それによるプラズマ分布調整の容易化などの効果が得られる。なお、アースシールドもシースルー金属としている。
【0157】
[第9の実施の形態]
図24は、他の実施の形態のバリア膜形成装置の概略図である。
図24に示すように、外部のアースシールドであるアースシールド22で真空室を構成している。また、前記アースシールド22と金属シート80との間も空隙部分を少なくしてシール性を向上させるために、誘電体部材で埋め込んでいる。なお、空隙のままとしてもよい。
本形態では、上記第8の実施の形態の特別な効果がさらに増すと共に、空隙の絶縁破壊の抑制が得られる。
さらに、アースシールドを外部電極80と同様に金属シートとすることで、軽量化や低コスト化を図ることもできる。
【0158】
[第10の実施の形態]
図25は他の実施の形態のバリア膜形成装置の概略図である。図26は図25の要部断面図である。
図25及び図26に示すように、本実施の形態では、無数の空隙52を有する発泡体から誘電体部材50を構成している。前記空隙52の存在により実質的に比誘電率εDが下がり、換算距離の比を下げることができる。
【0159】
[第11の実施の形態]
図27は他の実施の形態のバリア膜形成装置の概略図である。図28は図27の要部断面図である。
図27及び図28に示すように、本実施の形態では、無数のスリット53を有する誘電体部材を設置している。前記スリット53の存在により実質的に比誘電率εDが下がり、換算距離の比を下げることができる。
【0160】
[第12の実施の形態]
図29乃至図31は、他の実施の形態のバリア膜形成装置の工程概略図である。
図29に示すように、多種の容器12の大きさを想定し、十分な隙間を有する誘電体部材50を外部電極13の内側に設置し、その上部開口部分から容器12を挿入治具71により挿入している。
【0161】
次に、図30に示すように、排気管14側から鉛直軸方向に可動自在な可動治具90とその先端側に設けられた口部把持治具91により容器12の口部11を把持し、固定する。
【0162】
その後、図31に示すように、誘電体部材50を有する外部電極及びアースシールド22が上昇し、容器12を収納する。
【0163】
このように、本実施の形態によれば、一般に容器12(特にPETボトル)の口部11の形状は、規格により略統一されているので、この部分を把持するネックハンドリングであればどのような形状の容器でも一種類のハンドリング装置で対応可能となり、従来の方法、あるいは上記の実施例で容器の底部を挿入する際に必要であった胴部の把持治具の型替えが不要となる。
これにより、多種多様な容器であっても誘電体部材50内に挿入可能な容器であれば、ネックハンドリングという簡易な操作で、バリア膜形成装置内に設置可能となる。また、誘電体部材50の存在により、容器内表面に亙って均一な成膜が可能となる。
本実施形態において、筒型形状の誘電体部材の一部、たとえば口部や肩部を、容器形状に近似の形状(完全な相似ではない)とすることで、多種の容器を許容できる形状とすることが可能であるが、このような形状も本特許において略筒型形状に含むものとする。
【0164】
[第13の実施の形態]
図32乃至図34は、他の実施の形態のバリア膜形成装置の概略図である。
本実施の形態では、図29乃至図31のバリア膜形成装置を上下反転構造としたものであり、工程の説明は省略する。本実施の形態のように、容器12の口部11を下向きの構成とすることで、炭素皮膜を形成する際に発生する副生成物である炭素粉が容器内に落下して付着することが抑止することができる。これにより、後工程である容器のエアクリーニングが非常に簡単化される。
【0165】
以上のように、本発明によれば、前記容器内面に印加される電圧を、外部電極と容器の間に設置された誘電体部材と、外部電極と容器との空隙又は前記誘電体部材と容器内面との空隙とを用いて、略均一としてなるので、容器の全体に亙って均一な成膜を得ることができる。
【0166】
特に、例えば容器内部に清涼飲料水等を充填する容器等の場合には、バリア性が比較的低くても良いので、各種の形状の容器に対して、ひとつの円柱状の筒型形状の電極を用いることで、電極の型替えをせずに、比較的良質な成膜が可能となる。よって、大量の容器を成膜する成膜システムにおいて、種々の容器に対して成膜用の型替えをすることが省略され、システム効率の大幅な向上を図ることができる。
【0167】
また、例えばビール等を充填する容器は高いバリア性が必要となり、円柱状の筒型形状の電極一つでの使いまわしでは十分なバリア性が得られない。しかしながら、本発明により誘電体部材や空隙の厚さや比誘電率εを適宜選択して容器全体にわたってd/εを均一化することで、凹凸のある複雑な形状の容器であっても良好な成膜が可能なり、15倍以上のバリア性が容易に得られる。
さらに高いバリア性が必要な場合には、凹凸のない容器を使用する必要があるが、その場合でも、製作精度、成形精度、設置精度などによるバリア性の低下を本発明で押さえさらに高いバリア性(たとえば20倍)を得ることが出来る。
【0168】
このとき、膜分布が均一となるので全体的に同程度の着色となるので、従来のように高いバリア性を得るために厚く膜をつけた場合に、着色の少ない部分はb値が4程度であるが着色の濃い部分がb値7〜8と濃くなってしまうことが解消される。
よって、ビールのような高バリアを必要とする場合にも、b値を4以下に抑えて見栄えの良い容器とすることが出来る。
【0169】
また、均一な成膜が可能となるので、高いバリア性が必要な場合にも従来の様に成膜時間を要さず、またその分、炭素粉ダストの発生が抑制できる。
【0170】
また、容器に凹凸面がある場合においては、例えばマイクロ波を使用した膜質が悪くバリア性の低い方法でしか均一化が図れなかったが、本発明はバリア性の高い高周波を用いた成膜法に於いて均一な成膜を得ることができる。
【0171】
本発明では、以上のような効果を一度に達成することができ、容器成膜技術の大幅な向上に寄与するものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0172】
以上のように、本発明に係るバリア膜形成装置及びバリア膜形成方法によれば、容器と外部電極の空隙の大小が問題となる場合、特に凹凸面が存在する容器に対して均一な成膜を行なうことが可能となり、従来よりも高いバリア性の成膜を低コストに得ることが出来る。
【符号の説明】
【0173】
11 口部
12 プラスチック容器
13 外部電極
14 排気管
16 ガス吹き出し孔
17 内部電極
18 高周波電源
19 媒質ガス
50 誘電体部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一以上の凹凸部を有する容器を被処理容器とし、
前記被処理容器内面にバリア膜を成膜するバリア膜形成装置であって、
前記容器を取り囲む大きさの空洞を有する誘電体部材と、
該誘電体部材の外周側を覆う外部電極と、
前記容器の口部が位置する側の前記外部電極の端面に絶縁部材を介して取り付けられ、前記容器内部を、排気管を介して減圧する排気手段と、
前記容器内にバリア膜生成用の媒質ガスを吹き出すためのガス吹出し部と、
前記外部電極と接地電極間に放電を発生させるための電界を付与するための電界付与手段とを具備してなることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ガス吹き出し部が接地されると共に、前記容器内に挿入され、内部電極を兼ねることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記被処理物である容器を取り囲む大きさの空洞が、容器外周が通過するための最大通過軌跡線によって作られる空間と一致する、又はそれより大きな隙間を有することを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
前記誘電体部材が、有底筒型形状であることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つにおいて、
前記誘電体部材が、底無し筒型形状又は一部底を有する筒型形状であることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つにおいて、
前記外部電極のうち前記容器の凹部空間に面した部分が前記誘電体部材で覆われてなることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一つにおいて、
前記誘電体部材の空洞の一部が容器と近接していることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一つにおいて、
前記誘電体部材が、フッ素系樹脂、硬質塩化ビニル、ガラス又はセラミックのいずれか一種又はこれらの組合せであることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一つにおいて、
前記誘電体部材の内部に前記容器が設置された際、容器の胴部と誘電体部材との間の空隙が、空隙幅の最大値と最小値の差が3mm以上となるように形成されてなるものであることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一つにおいて、
前記誘電体部材の厚さが均一であることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一つにおいて、
前記誘電体部材が、有底又は無底の筒型形状であると共に、
誘電体部材の平均厚さ/比誘電率が、0.95〜3.8の範囲であることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一つにおいて、
前記誘電体部材が、容器の肩部、口部のいずれか一方又は両方に空隙を持って設けてなることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一つにおいて、
前記誘電体部材又は空隙の厚さ(di)を比誘電率(εi)で除した換算距離di/εiの外部電極内表面から前記容器内表面までの総和が、容器全体に亙って均一であることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一つにおいて、
前記換算距離di/εiの、外部電極内表面から前記容器内表面までの総和が、容器の全体で均一になるように、
前記誘電体部材の材料と、前記誘電体部材と空隙の厚さと、前記外部電極形状を組み合わせてなることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一つにおいて、
容器断面上の各容器表面地点における、前記誘電体部材又は空隙の厚さ(di)を比誘電率(εi)で除した換算距離di/εiの外部電極内表面から前記容器内表面までの各地点総和について、容器全体における各地点総和の標準偏差を平均値で除した値が0.75以下であることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項16】
被処理物である容器の少なくとも主要部を取り囲む大きさの空洞を有すると共に、前記空洞は前記容器外周が通過するための最大通過軌跡線によって作られる空間と一致する、又はそれより大きな隙間を有する誘電体部材と、
該誘電体部材の外周側に設置された外部電極と、
前記容器内部を、排気管を介して減圧する排気手段と、
前記容器内にバリア膜生成用の媒質ガスを吹き出すためのガス吹出し部と、
前記容器内に放電を発生させるために前記外部電極に接続された電界付与手段とを具備してなり、
前記容器内面にバリア膜を成膜することを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項17】
請求項1又は16において、
前記外部電極は接地電極であると共に、
前記電界付与手段を接続した電極を前記容器内又は前記排気管に設けてなることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項18】
請求項1又は16において、
前記誘電体部材の一部が前記容器と接することにより、前記容器の位置決めしてなることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項19】
請求項1又は16において、
前記誘電体部材の一部が前記容器と接することにより、前記容器の位置決めしてなると共に、
前記容器と接する前記誘電体の一部が可動構造であり、
前記容器の挿入時又は取り出し時に移動してなることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか一つにおいて、
前記外部電極を取り囲む大きさを持つ接地された導電性のアースシールドを前記外部電極と絶縁して設置することを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか一つにおいて、
前記外部電極が真空容器を兼ねることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項22】
請求項1乃至19のいずれか一つにおいて、
前記誘電体部材が真空容器を兼ねることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項23】
請求項1又は16において、
前記外部電極を取り囲む大きさを持つ接地された導電性のアースシールドを前記外部電極と絶縁して設置すると共に、
前記アースシールドが真空容器を兼ねることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項24】
請求項21又は22において、
前記外部電極がシート状であることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項25】
請求項1又は16において、
前記外部電極を取り囲む大きさを持つ接地された導電性のアースシールドを前記外部電極と絶縁して設置すると共に、
前記外部電極と前記アースシールドの間の全体に絶縁部材を設置することを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項26】
請求項1又は16において、
被処理物である容器の形状が、筒型形状であることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項27】
請求項1又は16において、
被処理物である容器の形状が、筒型形状であると共に、少なくとも一以上の凹部を有することを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項28】
請求項1において、
前記誘電体が、前記容器との間に空隙を有することを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項29】
請求項1乃至28のいずれか一つのバリア膜形成装置を用い、被処理物の容器内面にバリア膜を均一に成膜することを特徴とするバリア膜形成方法。
【請求項30】
請求項1又は16のバリア膜形成装置を用い、被処理物の容器内面にバリア膜を均一に成膜すると共に、
被処理物である容器の形状が、筒型形状であることを特徴とするバリア膜形成方法。
【請求項31】
請求項1乃至28のいずれか一つのバリア膜形成装置を用い、被処理物の容器内面にバリア膜を均一に成膜すると共に、
被処理物である容器の形状が、筒型形状であると共に、少なくとも一以上の凹部を有することを特徴とするバリア膜形成方法。
【請求項32】
請求項1乃至28のいずれか一つのバリア膜形成装置を用い、被処理物の容器内面にバリア膜を均一に成膜すると共に、
種々の空洞形状を有する複数の誘電体部材を用意し、その中から被処理物である容器の形状等に適するように選択し、その後容器にバリア膜を形成することを特徴とするバリア膜形成方法。
【請求項33】
請求項1乃至28のいずれか一つのバリア膜形成装置を用い、被処理物の容器内面にバリア膜を均一に成膜すると共に、
前記誘電体部材の全部または一部と、前記外部電極の全部または一部と、前記アースシールドの全部または一部が一体的に駆動手段により移動して、
前記真空容器を開閉し、容器の挿入、取り出しを行うことを特徴とするバリア膜形成方法。
【請求項34】
請求項1又は16のバリア膜形成装置を用い、
ネックハンドリングにより前記容器を挿入および取り出しを行うことを特徴とするバリア膜形成方法。
【請求項35】
請求項3、4又は16のいずれか一つにおいて、
前記誘電体部材は前記容器を前記有底筒型の外部電極の底方向に向かって当該容器底側から挿入できる開口を有することを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項36】
請求項3、4又は16のいずれか一つにおいて、
前記容器の口部が下向きになるように前記外部電極の口部端部を下向きとし、
前記外部電極の端部の下側に絶縁部材を介して排気管を取り付けることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項37】
請求項36のバリア膜形成装置を用い、
当該容器を上下反転させた後、ネックハンドリングにより、
前記容器の外部電極への挿入および取り出しを行うことを特徴とするバリア膜形成方法。
【請求項38】
請求項30乃至34、37のいずれか一つのバリア膜形成方法を用いて形成されてなることを特徴とするバリア膜被覆容器。
【請求項1】
少なくとも一以上の凹凸部を有する容器を被処理容器とし、
前記被処理容器内面にバリア膜を成膜するバリア膜形成装置であって、
前記容器を取り囲む大きさの空洞を有する誘電体部材と、
該誘電体部材の外周側を覆う外部電極と、
前記容器の口部が位置する側の前記外部電極の端面に絶縁部材を介して取り付けられ、前記容器内部を、排気管を介して減圧する排気手段と、
前記容器内にバリア膜生成用の媒質ガスを吹き出すためのガス吹出し部と、
前記外部電極と接地電極間に放電を発生させるための電界を付与するための電界付与手段とを具備してなることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ガス吹き出し部が接地されると共に、前記容器内に挿入され、内部電極を兼ねることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記被処理物である容器を取り囲む大きさの空洞が、容器外周が通過するための最大通過軌跡線によって作られる空間と一致する、又はそれより大きな隙間を有することを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
前記誘電体部材が、有底筒型形状であることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つにおいて、
前記誘電体部材が、底無し筒型形状又は一部底を有する筒型形状であることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つにおいて、
前記外部電極のうち前記容器の凹部空間に面した部分が前記誘電体部材で覆われてなることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一つにおいて、
前記誘電体部材の空洞の一部が容器と近接していることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一つにおいて、
前記誘電体部材が、フッ素系樹脂、硬質塩化ビニル、ガラス又はセラミックのいずれか一種又はこれらの組合せであることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一つにおいて、
前記誘電体部材の内部に前記容器が設置された際、容器の胴部と誘電体部材との間の空隙が、空隙幅の最大値と最小値の差が3mm以上となるように形成されてなるものであることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一つにおいて、
前記誘電体部材の厚さが均一であることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一つにおいて、
前記誘電体部材が、有底又は無底の筒型形状であると共に、
誘電体部材の平均厚さ/比誘電率が、0.95〜3.8の範囲であることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一つにおいて、
前記誘電体部材が、容器の肩部、口部のいずれか一方又は両方に空隙を持って設けてなることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一つにおいて、
前記誘電体部材又は空隙の厚さ(di)を比誘電率(εi)で除した換算距離di/εiの外部電極内表面から前記容器内表面までの総和が、容器全体に亙って均一であることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか一つにおいて、
前記換算距離di/εiの、外部電極内表面から前記容器内表面までの総和が、容器の全体で均一になるように、
前記誘電体部材の材料と、前記誘電体部材と空隙の厚さと、前記外部電極形状を組み合わせてなることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項15】
請求項1乃至14のいずれか一つにおいて、
容器断面上の各容器表面地点における、前記誘電体部材又は空隙の厚さ(di)を比誘電率(εi)で除した換算距離di/εiの外部電極内表面から前記容器内表面までの各地点総和について、容器全体における各地点総和の標準偏差を平均値で除した値が0.75以下であることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項16】
被処理物である容器の少なくとも主要部を取り囲む大きさの空洞を有すると共に、前記空洞は前記容器外周が通過するための最大通過軌跡線によって作られる空間と一致する、又はそれより大きな隙間を有する誘電体部材と、
該誘電体部材の外周側に設置された外部電極と、
前記容器内部を、排気管を介して減圧する排気手段と、
前記容器内にバリア膜生成用の媒質ガスを吹き出すためのガス吹出し部と、
前記容器内に放電を発生させるために前記外部電極に接続された電界付与手段とを具備してなり、
前記容器内面にバリア膜を成膜することを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項17】
請求項1又は16において、
前記外部電極は接地電極であると共に、
前記電界付与手段を接続した電極を前記容器内又は前記排気管に設けてなることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項18】
請求項1又は16において、
前記誘電体部材の一部が前記容器と接することにより、前記容器の位置決めしてなることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項19】
請求項1又は16において、
前記誘電体部材の一部が前記容器と接することにより、前記容器の位置決めしてなると共に、
前記容器と接する前記誘電体の一部が可動構造であり、
前記容器の挿入時又は取り出し時に移動してなることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか一つにおいて、
前記外部電極を取り囲む大きさを持つ接地された導電性のアースシールドを前記外部電極と絶縁して設置することを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか一つにおいて、
前記外部電極が真空容器を兼ねることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項22】
請求項1乃至19のいずれか一つにおいて、
前記誘電体部材が真空容器を兼ねることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項23】
請求項1又は16において、
前記外部電極を取り囲む大きさを持つ接地された導電性のアースシールドを前記外部電極と絶縁して設置すると共に、
前記アースシールドが真空容器を兼ねることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項24】
請求項21又は22において、
前記外部電極がシート状であることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項25】
請求項1又は16において、
前記外部電極を取り囲む大きさを持つ接地された導電性のアースシールドを前記外部電極と絶縁して設置すると共に、
前記外部電極と前記アースシールドの間の全体に絶縁部材を設置することを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項26】
請求項1又は16において、
被処理物である容器の形状が、筒型形状であることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項27】
請求項1又は16において、
被処理物である容器の形状が、筒型形状であると共に、少なくとも一以上の凹部を有することを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項28】
請求項1において、
前記誘電体が、前記容器との間に空隙を有することを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項29】
請求項1乃至28のいずれか一つのバリア膜形成装置を用い、被処理物の容器内面にバリア膜を均一に成膜することを特徴とするバリア膜形成方法。
【請求項30】
請求項1又は16のバリア膜形成装置を用い、被処理物の容器内面にバリア膜を均一に成膜すると共に、
被処理物である容器の形状が、筒型形状であることを特徴とするバリア膜形成方法。
【請求項31】
請求項1乃至28のいずれか一つのバリア膜形成装置を用い、被処理物の容器内面にバリア膜を均一に成膜すると共に、
被処理物である容器の形状が、筒型形状であると共に、少なくとも一以上の凹部を有することを特徴とするバリア膜形成方法。
【請求項32】
請求項1乃至28のいずれか一つのバリア膜形成装置を用い、被処理物の容器内面にバリア膜を均一に成膜すると共に、
種々の空洞形状を有する複数の誘電体部材を用意し、その中から被処理物である容器の形状等に適するように選択し、その後容器にバリア膜を形成することを特徴とするバリア膜形成方法。
【請求項33】
請求項1乃至28のいずれか一つのバリア膜形成装置を用い、被処理物の容器内面にバリア膜を均一に成膜すると共に、
前記誘電体部材の全部または一部と、前記外部電極の全部または一部と、前記アースシールドの全部または一部が一体的に駆動手段により移動して、
前記真空容器を開閉し、容器の挿入、取り出しを行うことを特徴とするバリア膜形成方法。
【請求項34】
請求項1又は16のバリア膜形成装置を用い、
ネックハンドリングにより前記容器を挿入および取り出しを行うことを特徴とするバリア膜形成方法。
【請求項35】
請求項3、4又は16のいずれか一つにおいて、
前記誘電体部材は前記容器を前記有底筒型の外部電極の底方向に向かって当該容器底側から挿入できる開口を有することを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項36】
請求項3、4又は16のいずれか一つにおいて、
前記容器の口部が下向きになるように前記外部電極の口部端部を下向きとし、
前記外部電極の端部の下側に絶縁部材を介して排気管を取り付けることを特徴とするバリア膜形成装置。
【請求項37】
請求項36のバリア膜形成装置を用い、
当該容器を上下反転させた後、ネックハンドリングにより、
前記容器の外部電極への挿入および取り出しを行うことを特徴とするバリア膜形成方法。
【請求項38】
請求項30乃至34、37のいずれか一つのバリア膜形成方法を用いて形成されてなることを特徴とするバリア膜被覆容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
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【図4】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【公開番号】特開2013−47390(P2013−47390A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−210187(P2012−210187)
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【分割の表示】特願2007−69462(P2007−69462)の分割
【原出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(505193313)三菱重工食品包装機械株式会社 (146)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【分割の表示】特願2007−69462(P2007−69462)の分割
【原出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(505193313)三菱重工食品包装機械株式会社 (146)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】
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