説明

パウチ容器

【課題】内容物の取り出し口が容器の壁面部に形成された構造において、製造が容易であり、且つ密閉性に優れたパウチ容器を提供することである。
【解決手段】パウチ容器10は、容器の上方に向かって山折りに折り返された底ガゼットシート11cが、互いに重ね合わされた表面シート11a及び裏面シート11bの下部に挿入された状態で各シート材の端縁同士を接合する端縁シール部12が形成され、内容物が充填される容器内部空間である充填部13が形成された構造である。パウチ容器10は、容器の表面部及び裏面部にそれぞれ設けられた注出口部19a,19bと、注出口部19a,19bに貼着された蓋部であるタックシート20a,20bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パウチ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
パウチ容器は、各種食料品やトイレタリー製品の容器として広く用いられており、例えば、シャンプー等の液状物やウェットシート等の湿潤固形物が充填された、高い密閉性が求められる用途にも適用されている。これらパウチ容器は、容器の壁面部を構成するシート材を備え、シート材の端縁同士を互いにヒートシールして内容物が充填される容器内部空間を形成した構造を有する。
【0003】
パウチ容器では、用途に応じて、内容物の取り出し口の形態が適宜変更される。例えば、特許文献1には、収納袋の内面を形成するフィルム層の外側にラミネートされたフィルム層に孔あけ加工して開口部を形成し、該開口部を収納袋の内面を形成するフィルム層と同じ材料のフィルム層を内側に有するつまみ用シートで覆い、このつまみ用シートの内側のフィルム層を、開口部を介して収納袋の内面を形成するフィルム層に融着させてなる収容袋が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002‐68295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された収容袋は、高い密閉性を有すると想定されるが、上記のように複雑な構造であるため、製造プロセスが煩雑であり生産性の観点から改良の余地がある。また、それぞれのフィルム層を融着により接合していることから、つまみ用シートを剥離して開口部を開封することが困難な場合もある。
【0006】
即ち、本発明の目的は、内容物の取り出し口が容器の壁面部に形成された構造において、製造が容易であり、且つ密閉性に優れたパウチ容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るパウチ容器は、少なくとも容器の壁面部を構成するシート材を備え、シート材の端縁同士が接合されて内容物が充填される容器内部空間が形成されたパウチ容器において、容器の壁面部に設けられた注出口部を備え、注出口部は、シート材を環状にハーフカットしたカット線により形成されることを特徴とする。
【0008】
当該構成によれば、シート材をハーフカットするという簡便な方法により、内容物の取り出し口となる注出口部が形成されるため、製造が容易である。また、注出口部の剥離前において、シート材の厚み方向に連続するカット部が存在しないため、密閉性に優れる。
【0009】
また、本発明に係るパウチ容器において、カット線は、シート材の内側から環状にハーフカットした第1ハーフカット線と、該第1ハーフカット線を囲むようにシート材の外側から環状にハーフカットした第2ハーフカット線からなることが好ましい。
【0010】
当該構成では、複数のハーフカット線を設けたことにより、シート材を切断し易くなり注出口部の剥離性が向上する。一方、第1ハーフカット線と第2ハーフカット線とがシート材の厚み方向に連続せず互いにずれて形成されるため、シート材の厚み方向に連続したカット部は存在せず、優れた密閉性を維持する。
【0011】
また、本発明に係るパウチ容器において、シート材は、少なくとも一つの接着層を介して積層された複層シート材であり、第1ハーフカット線及び第2ハーフカット線はいずれも、同じ接着層に達しており、第1ハーフカット線と第2ハーフカット線との間の接着層の全部又は一部が、注出口部以外の接着層より接着力が弱いことが好ましい。さらには、第1ハーフカット線と第2ハーフカット線との間の接着層は、第2ハーフカット線に近接する部分が第1ハーフカット線に近接する部分より接着力が弱いことが特に好ましい。
【0012】
当該構成によれば、開封時における注出口部の剥離性が向上する。また、注出口部を剥離するときには、注出口部の外側から内側に向かって剥離力が加わるため、第1ハーフカット線と第2ハーフカット線との間の接着層において、例えば、第2ハーフカット線に近づくほど、即ち外側ほど接着力を弱くすることで、注出口部をよりスムーズに剥離できる。一方、第1ハーフカット線に近接する部分の接着力は強いため、例えば、容器の内側から圧力が加わっても注出口部は剥離せず、流通過程等における意図しない剥離を防止できる。
【0013】
また、本発明に係るパウチ容器において、注出口部に貼着された蓋部を有することが好ましい。当該構成とすれば、密閉性をさらに高めることができる。さらに、蓋部と共に注出口部を剥離できるため、開封操作性もより良好となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るパウチ容器は、内容物の取り出し口が容器の壁面部に形成された構造において、製造が容易であり、且つ密閉性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態であるパウチ容器の正面図である。
【図2】図1のA‐A線断面を模式的に示す図である。
【図3】図2において、注出口部を剥離除去した様子を示す図である。
【図4】本発明の実施形態であるパウチ容器から内容物をボトルに詰め替える様子を示す図である。
【図5】本発明の実施形態であるパウチ容器の第1の変形例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態であるパウチ容器の第2の変形例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態であるパウチ容器の第3の変形例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態であるパウチ容器の第4の変形例を示す図である。
【図9】本発明の実施形態であるパウチ容器の第5の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
本実施形態では、容器の壁面部を構成するシート材として、表面シート11a、裏面シート11b、及び底ガゼットシート11cを備えたスタンディングパウチを例示するが、本発明は、当該パウチ形態に限定されず、所謂平パウチ(図6参照)や三方シール構造のピロー包装形態パウチ(図7参照)など、その他の公知形態にも適用することができる。
【0018】
本実施形態では、パウチ容器を自立させた形態で正面視鉛直方向に沿った方向を容器の上下方向とし、注出口部が形成される側を「上」とする。また、各シート材が積層される方向を容器の表裏方向とし、上下方向及び表裏方向に直交する方向を容器の左右方向又は幅方向とする。また、表面シート11aに関する構成要素の符号に「a」を付し、裏面シート11bに関する構成要素に「b」を付する。
【0019】
まず、図1及び図2を参照して、パウチ容器10の構成を説明する。
【0020】
図1は、内容物が充填されて底ガゼットシート11cが展開した形態を示している。図1では、内容物が充填される前の底ガゼットシート11cの上端位置を点線で示す。図1に示すように、パウチ容器10は、容器の表面部及び裏面部をそれぞれ構成する一対のシート材である表面シート11a及び裏面シート11bと、容器の底面部を構成するシート材である底ガゼットシート11cとを備える。
【0021】
パウチ容器10は、容器の上方に向かって山折りに折り返された底ガゼットシート11cが、互いに重ね合わされた表面シート11a及び裏面シート11bの下部に挿入された状態で各シート材の端縁同士を接合する端縁シール部12が形成され、内容物が充填される容器内部空間である充填部13が形成された構造である。パウチ容器10に内容物を充填すると、表面シート11a及び裏面シート11bが互いに離間し、底ガゼットシート11cが展開して自立性が発現する。底ガゼットシート11cには、容器の下部で表面シート11aと裏面シート11bとの接合を可能とする切欠き14が形成されている。
【0022】
また、パウチ容器10は、パウチ本体部15と、容器の上端の一部に設けられたノズル部16とを有する。ノズル部16とは、内容物を別の容器(例えば、図3に示すボトル100)に詰め替える際に当該容器に差し込まれる部分である。パウチ本体部15とは、ノズル部16以外の部分であり、本実施形態では、内容物が充填される部分である。パウチ容器10では、容器の上端から下端側に向かって略Vの字状に切り込まれた凹状部17が形成されることでノズル部16が形作られている。
【0023】
また、パウチ容器10は、容器の表面部及び裏面部にそれぞれ設けられた注出口部19a,19bと、注出口部19a,19bに貼着された蓋部であるタックシート20a,20bとを有する。本実施形態では、注出口部19a,19b及びタックシート20a,20bは、いずれもノズル部16に設けられている。
【0024】
以下、パウチ容器10の上記各構成要素について更に詳説する。
【0025】
シート材(表面シート11a、裏面シート11b、底ガゼットシート11c)は、パウチ容器10の壁面部を構成するシート状部材であって、通常、樹脂フィルムから構成される。シート材を構成する樹脂フィルムには、耐衝撃性、耐磨耗性、及び耐熱性など、包装体としての基本的な性能を備えることが要求される。また、端縁シール部12は、通常、ヒートシールにより形成されるので、シート材には、ヒートシール性も要求される。
【0026】
図2(図1のA‐A線断面図)に示すように、表面シート11aは、内面層24aと、外面層25aと、内面層24a及び外面層25aの間に設けられる中間層26aとを有する複層シート材である。内面層24aと中間層26aとの間には、第1接着層27aが設けられ、これにより内面層24aと中間層26aとが接合されている。外面層25aと中間層26aとの間には、第2接着層28aが設けられ、これにより外面層25aと中間層26aとが接合されている。同様に、裏面シート11bは、容器の内側から順に、内面層24bと、第1接着層27bと、中間層26bと、第2接着層28bと、外面層25bとを積層した複層シート材である。
【0027】
外面層25a,25b及び中間層26a,26bは、シート材のベースフィルム層であり、内面層24a,24bは、シート材にヒートシール性を付与するシーラント層である。高いガスバリア性が要求される場合には、ベースフィルム層とシーラント層との間にガスバリア層を設けることもできる。
【0028】
ここで、ベースフィルム層、シーラント層、及びガスバリア層の構成材料を例示する。
【0029】
ベースフィルム層を構成するフィルムとしては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレ−ト(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)など)、ポリオレフィン(ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66など)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルスルフォン(PES)及びエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)等から構成される一層又は二層以上の延伸又未延伸フィルムが例示できる。
【0030】
シーラント層を構成するフィルムとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−プロピレン共重合体(EP)、未延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸延伸ナイロン(ON)、エチレン−オレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)及びエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等から構成される一層又は二層以上の延伸又未延伸フィルムが例示できる。
【0031】
ガスバリア層としては、アルミニウム等の金属薄膜、又は塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などの樹脂フィルム、或いは任意の合成樹脂フィルム(例えば、ベースフィルム層であってもよい)に、アルミニウム、酸化アルミニウムやシリカ等の無機酸化物などを蒸着(又はスパッタリング)したフィルムなどが例示できる。
【0032】
また、シート材には、内容物の商品名や原材料・使用上の注意事項等の商品説明、その他各種デザインなどを表示するための印刷層(図示せず)を設けることができる。例えば、印刷層は、グラビア印刷等の公知の方法により、ベースフィルム層の内側の面に形成することができる。
【0033】
外面層25a,25bを構成するフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが特に好適であり、中間層26a,26bを構成するフィルムとしては、ポリアミドフィルムが特に好適である。内面層24a,24bを構成するフィルムとしては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムが特に好適である。
【0034】
これら各層の積層は、慣用のラミネート法、例えば、接着剤によるドライラミネーション、熱接着性層を挟んで熱により接着させる熱ラミネーションなどにより行うことができる。第1接着層27a,27b及び第2接着層28a,28bは、これら慣用のラミネート法に使用される、通常公知の接着剤を用いて形成される。
【0035】
端縁シール部12は、充填部13を密閉する接合部であって、通常、ヒートシールにより形成される。ヒートシールによる端縁シール部12は、各シート材のシーラント層が容器の内側となるように重ね合わせて熱圧着することで形成できる。内容物は、例えば、パウチ本体部15の上端を残して端縁シール部12を形成し、当該上端から充填できる。そして、内容物の充填後、パウチ本体部15の上端縁をヒートシールする。
【0036】
ノズル部16は、容器の上端角部に形成されることが好ましい。ボトル100への差し込みを容易にするため、ノズル部16の幅(左右方向長さ)は、差し込み対象である口部101の孔寸法よりも小さく設定される。また、ノズル部16は、その根元まで口部101に差し込んだ状態で、少なくとも注出口部19a,19bが形成された部分が口部101よりも下方に位置するような長さ(上下方向長さ)であることが好ましい。
【0037】
ノズル部16のサイズや形状は、凹状部17の形成位置等を調整することで適宜変更できる。凹状部17は、例えば、容器の上端角部から所定幅を残して、幅方向中央よりの上端位置から下端側に向かって略Vの字状に切り込んで形成される。この所定幅がノズル部16の幅となり、凹状部17の長さがノズル部16の長さとなる。
【0038】
注出口部19a,19bは、開封時に剥離除去される部分であって、表面シート11a及び裏面シート11bをそれぞれ環状にハーフカットしたカット線により形成される。注出口部19a,19bを除去することで、内容物の取り出し口である貫通孔23a,23bがそれぞれ形成される。
【0039】
注出口部19aは、表面シート11aを内面層24a側から環状にハーフカットした第1ハーフカット線21aと、該第1ハーフカット線21aを囲むように表面シート11aを外面層25a側から環状にハーフカットした第2ハーフカット線22aとにより形成される。同様に、注出口部19bは、表面シート11aを内面層24a側から環状にハーフカットした第1ハーフカット線21aと、該第1ハーフカット線21aを囲むように表面シート11aを外面層25a側から環状にハーフカットした第2ハーフカット線22aとにより形成される。ここで、環状とは、円形状に限定されず、楕円形状、半円形状、又は多角形状(例えば、三角形状、四角形状)を含む概念である。つまり、注出口部19a,19bの形状は、これらハーフカット線の形状により決定される。
【0040】
注出口部19a,19bは、端縁シール部12にかからない範囲でノズル部16の先端側に形成されることが好ましい。注出口部19a,19bは、ノズル部16をボトル100に差し込んだ状態で、少なくとも口部101より下方側に位置するように形成される。当該構成とすれば、ノズル部16をボトル等に差し込んだ状態で内容物を注出することができるため、詰め替え用途に好適である。このとき、内容物はボトルの内壁に沿うように注出されるため、例えば、内容物が洗剤等である場合には泡立ちが抑えられ、詰め替え作業が容易となる。
【0041】
注出口部19a,19bのサイズは、特に限定されないが、例えば、内容物の充填量が多い場合や内容物の粘度が高い場合には、液密性に問題がない範囲で注出口部19a,19bを拡大することが好ましい。
【0042】
第1ハーフカット線21aと第2ハーフカット線22aとは、互いに交わることなく、第2ハーフカット線22aが第1ハーフカット線21aの外側に形成されている。そして、第1ハーフカット線21a及び第2ハーフカット線22aはいずれも、同じ接着層に達する。本実施形態では、第1ハーフカット線21aが、シート材の内側から第1接着層27aまで形成され、第2ハーフカット線22aが、シート材の外側から第1接着層27aまで形成される。なお、第1ハーフカット線21bと、第2ハーフカット線22bとの関係についても同様である。
【0043】
第1ハーフカット線21a及び第2ハーフカット線22aに囲まれた第1接着層27aの接着部29aは、その全部又は一部が、注出口部以外の接着層より接着力が弱くなるように形成される。その形成方法としては、接着層を均一に形成した後、剥離性を有するワックス等を部分的に塗布して、接着力を抑えることによりなされる。また、接着剤を間欠的に塗布する、又は接着力の異なる複数の接着剤を使用することによっても形成できる。
【0044】
特に、接着部29aは、グラデーション接着部とすることが好ましい。具体的には、第2ハーフカット線22aに近接する部分が、第1ハーフカット線21aに近接する部分よりも接着力が弱くなるように形成される。例えば、第1ハーフカット線21aと第2ハーフカット線22aとの中間部分を境界として、第1ハーフカット線21a側の接着力を強くし、第2ハーフカット線22a側の接着力を弱くすることや、第2ハーフカット線22aに近づくほど接着力が次第に弱くなるように形成することが挙げられる。また、第1ハーフカット線21aに近接する部分は、接着部29a以外の部分と同等の接着力を有することが好ましい。このようにすれば、パウチ容器10の内側から圧力が加わっても注出口部19a,19bは剥離せず、流通過程等における意図しない剥離を防止できる。一方、第2ハーフカット線22aの周囲は、第1接着層27aを形成しない構成としてもよい。
【0045】
なお、第1ハーフカット線21b及び第2ハーフカット線22bに囲まれた第1接着層27bの接着部29bについても、上述した接着部29aと同様である。
【0046】
第1接着層27a,27bにおいて、接着部29a,29b以外の部分は、均一な接着力を発現し、内面層24a,24bと中間層26a,26bとの間で剥離されない程度に強い接着力を有する。第2接着層28a,28bについても、外面層25a,25bと中間層26a,26bとの間で剥離されない程度に強い接着力を有する。
【0047】
タックシート20a,20bは、注出口部19a,19b及びその周縁に貼着されて、注出口部19a,19bをそれぞれ覆う。タックシート20a,20bは、シート材に貼着可能な部材であり、パウチ容器10の流通過程で剥がれることなく、内容物を取り出すときには容易に剥離できる必要がある。図2に示すように、タックシート20a,20bは、小片状のフィルム基材30a,30bと、フィルム基材30a,30bの一方の面に形成された粘着剤層31a,31bとでそれぞれ構成される。
【0048】
フィルム基材30a,30bには、上記ベースフィルム層と同様の樹脂フィルムを適用できる。粘着剤層31a,31bには、常温で粘着性を有する一般的な感圧接着剤(合成ゴム系やアクリル樹脂系等の粘着剤)を適用できる。
【0049】
タックシート20a,20bは、容器の外側から表面シート11a及び裏面シート11bにそれぞれ貼着される。タックシート20aは、注出口部19aよりも大きなシートであり、粘着剤層31aにより注出口部19a及びその周縁の表面シート11a上に貼着されて注出口部19aの全体を覆う。タックシート20bは、注出口部19bよりも大きなシートであり、粘着剤層31bにより注出口部19b及びその周縁の裏面シート11b上に貼着されて注出口部19bの全体を覆う。
【0050】
タックシート20a,20bの形状は、図1に例示する円形状に限定されず、注出口部19a,19bの形状等に応じて適宜変更できる。また、タックシート20a,20bをめくり易くするために、タックシート20a,20bの端部の粘着力を抑えて摘み部を設けてもよい。
【0051】
本実施形態では、ノズル部16の付け根近傍に、弱シール部18が設けられている。弱シール部18は、表面シート11aと裏面シート11bとを剥離可能に接合して、ノズル部16の注出口部19a,19bが形成される部分と、内容物が充填される部分とを隔離するシール部である。
【0052】
弱シール部18は、容器の幅方向に沿って表面シート11aと裏面シート11bとをヒートシールすることで形成できる。弱シール部18は、例えば、シーラント層のガラス転移点(Tg)又は軟化点付近の温度でヒートシールすることにより、表面シート11a及び裏面シート11bのシーラント層同士が軟化した程度状態で接合して形成される。このため、接着強度が弱く剥離可能となる。なお、端縁シール部12は、ヒートシール温度を高く設定した条件、例えば、シーラント層の融点付近の温度でヒートシールすることにより形成される。
【0053】
次に、上記構成を備えるパウチ容器10の製造方法の一例について説明する。
【0054】
まず初めに、ベースフィルム層及びシーラント層を含む複層シート材の長尺体を、例えば、接着剤を用いたドライラミネートにより作製する。続いて、表面シート11a及び裏面シート11bの長尺体について、注出口部19a,19bとなる部分に、第1ハーフカット線21a,21bをそれぞれ形成する。そして、第1ハーフカット線21a,21bが形成された面が互いに対向するように、表面シート11a及び裏面シート11bの長尺体を重ね合わせ、その下部に容器上方に向かって山折りに折り返された底ガゼットシート11cの長尺体を挿入した状態で長尺体の長手方向に沿った一端(ここでは、下端)と、長手方向に直交するパウチ容器10の左右側端縁となる部分とをヒートシールする。このとき、端縁シール部12と共に弱シール部18を形成することができる。
【0055】
続いて、ヒートシールしたシート材の長尺体を、例えば、ダイカットロールを用いて打ち抜き、凹状部17、第2ハーフカット線22a,22bをそれぞれ形成する。次に、左右側端縁の端縁シール部12で長尺体を切断し、個々のパウチ容器10のサイズに分割する。そして、注出口部19a,19bを覆うように、シート材の外側からタックシート20a,20bをそれぞれ貼着する。
【0056】
最後に、開放されているパウチ本体部15の上端から容器内部空間に内容物を充填し、パウチ本体部15の上端縁をヒートシールして端縁シール部12を形成する。こうして、内容物が密閉されたパウチ容器10が得られる。
【0057】
以上のように、容器の表面部及び裏面部を構成する一対のシート材に、2つのハーフカット線を環状に形成するという簡便な方法により、内容物の取り出し口となる注出口部19a,19bを設けることができる。
【0058】
次に、図3及び図4を参照して、パウチ容器10の使用態様(パウチ容器10を開封して内容物を取り出す方法)を例示すると共に、パウチ容器10の作用効果を説明する。
【0059】
図3は、パウチ容器10の開封形態を、図4は、貫通孔23a,23bから液状の内容物70をボトル100に詰め替える様子をそれぞれ示す。パウチ容器10の内容物70をボトル100に詰め替えるときには、まず、弱シール部18の周辺を押圧して弱シール部18を剥離する。これにより、内容物70が充填された充填部13とノズル部16の内部空間とが連通する。弱シール部18は、流通過程では剥離することなく内容物がノズル部16に流入することを防止するが、開封時には容易に剥離できる。続いて、タックシート20a,20b、及び注出口部19a,19bを剥離除去する。
【0060】
図3に示すように、タックシート20aを剥離すると、タックシート20aに貼着されている注出口部19aがタックシート20aと共に除去され、注出口部19aが除去された部分に貫通孔23aが形成される。つまり、シート材の厚み方向に連続するカット部が形成される。このとき、注出口部19aに対して、その外側から内側に向かって剥離力が加わるが、パウチ容器10では、接着部29aが設けられているため、注出口部19aをスムーズに除去できる。同様に、タックシート20bを剥離すると、注出口部19bがタックシート20bと共にスムーズに除去され、貫通孔23bが形成される。
【0061】
図4に示すように、形成された貫通孔23a,23bから内容物70を注出するときには、貫通孔23a,23bがボトル100の口部101よりも鉛直下方側に位置するように、ノズル部16を口部101に差し込む。このとき、パウチ容器10の表面部及び裏面部が鉛直方向に沿った状態となり、内容物70が略水平方向に向かって流出する。つまり、内容物70は、胴部102の側面に当たり側面に沿って下方に流れるため、内容物70が泡立ち性のあるシャンプーや洗剤であっても、その泡立ちを十分に抑制できる。
【0062】
以上のように、パウチ容器10は、注出口部19a,19bを剥離除去する前において、シート材の厚み方向に連続するカット部が存在しないため、仮に流通過程において弱シール部18が剥離した場合であっても内容物70が漏れ出し難く密閉性に優れている。
【0063】
さらに、パウチ容器10には、接着部29a,29bが形成されているため、開封操作をスムーズに行うことができ、開封性にも優れている。また、注出口部19a,19bの全体を覆ってタックシート20a,20bが貼着されているので、密閉性が向上すると共に、タックシート20a,20bを利用して、例えば、これを指先で摘んで注出口部19a,19bを剥離除去できるため、開封性もより良好なものとなる。
【0064】
上記実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。
以下、設計変更例(変形例)を示す。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素には、同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0065】
図5は、ノズル部16及びその周辺を拡大して示している。図5に例示する形態では、注出口部19a,19bの周縁の表面シート11a及び裏面シート11b上に貼着された1つのタックシート20vが設けられている。タックシート20vは、容器の幅方向に長い帯状を呈し、容器の側端部で折り曲げられて、注出口部19a,19bの両方を覆う。
【0066】
タックシート20vを剥離すると、注出口部19a,19bが除去される。つまり、図5に例示する形態では、1つのタックシート20vを剥離することで、2つの注出口部19a,19bが除去されて貫通孔23a,23bが形成されるため、開封性がさらに向上する。
【0067】
図6は、一対の表面シート11aw及び裏面シート11bwからなるパウチ容器10wを示す。パウチ容器10wは、互いに重ね合わされた表面シート11aw及び裏面シート11bwの端縁に沿って端縁シール部12wが形成され、充填部13wが密閉された所謂平パウチである。パウチ容器10wは、平面視略矩形形状を呈し、ノズル部16を有さない。そして、パウチ容器10wでは、表面シート11awの上端角部に1つの注出口部19aが設けられている。
【0068】
図7は、1枚のシート材11xからなるパウチ容器10xを示す。パウチ容器10xは、容器の上端部及び下端部に端縁シール部12xが形成されると共に、裏面部にシート材11xの端縁同士を接合する端縁シール部(図示せず)が形成された三方シール構造である。パウチ容器10xでは、容器の表面部において、シート材11xの中央部を大きく開封可能な注出口部19xが形成されている。注出口部19xは、略矩形形状を呈するように環状に形成された第1ハーフカット線21x及び第2ハーフカット線22xにより形成されており、該注出口部19xの全体を覆って、摘み部40を有する略矩形形状のタックシート20xが貼着されている。
【0069】
パウチ容器10xは、上記実施形態と同様に、シート材の厚み方向に連続するカット部が存在しないため、大きく開封可能な形態でありながら密閉性に優れている。パウチ容器10xは、例えば、ウェットシートの容器として好適である。
【0070】
図8は、注出口部19y及びその近傍の断面形状を示す。ここでは、図面の明瞭化のため、容器の表面部の構造のみを示し(「a」省略)、シート材11yのハッチングを省略する。図8(a)に示す形態では、単層構造を有するシート材11yにおいて、その内側から環状にハーフカットされた第1ハーフカット線21yが、シート材11yの外側近傍にまで達している。一方、第2ハーフカット線は形成されず、注出口部19yは、第1ハーフカット線21yのみにより形成される。
【0071】
シート材11yの外側には、第1ハーフカット線21yが形成された範囲を超えてタックシート20yが貼着されている。また、タックシート20yの粘着材層30yは、第1ハーフカット線21yが形成された範囲に対応して設けられた強接着部50と、第1ハーフカット線21yの外側に設けられた弱接着部51とを含む。強接着部50は、例えば、シート材11yとタックシート20yとの間で剥離できない程度の強い接着力を有し、弱接着部51は、例えば、開封時に剥離可能な程度の弱い接着力を有する。
【0072】
図8(b)に示すように、シート材11yからタックシート20yを剥離すると、タックシート20yと共に注出口部19yが除去される。注出口部19yは、強接着部50により強く接着されたタックシート20yに加わる剥離力により、例えば、第1ハーフカット線21yの略延長線上に位置するシート材11yに切断部52(太線で図示する)が形成されて除去可能となる。
【0073】
図9は、図8と同様に、注出口部19z及びその近傍の断面形状を示す。図9(a)に例示する形態では、単層構造を有するシート材11zの内側から環状にハーフカットした第1ハーフカット線21zと、該第1ハーフカット線21zを囲むようにシート材11yの外側から環状にハーフカットした第2ハーフカット線22zとにより、注出口部19zが形成されている。第1ハーフカット線21zと第2ハーフカット線22zとは、シート材11zの面方向に沿って互いにオーバーラップすることが好適であり、また、互いに近接(例えば、互いの間隔が0.1mm〜1.0mm程度)して形成されることが好適である。
【0074】
図9(b)に示すように、シート材11zからタックシート20yを剥離すると、タックシート20yと共に注出口部19zが除去される。注出口部19zは、強接着部50により強く接着されたタックシート20yに加わる剥離力により、例えば、第1ハーフカット線21zと第2ハーフカット線22zとの間でシート材11zが面方向に切断され、各ハーフカット線をつなぐ切断部53(太線で図示する)が形成されて除去可能となる。
【0075】
なお、上記では、蓋部としてタックシートを有するものとして説明したが、蓋部を有さない形態であってもよい。この場合、注出口部の周辺を押圧する等して、注出口部を剥離除去することができる。
【符号の説明】
【0076】
10 パウチ容器、11a 表面シート、11b 裏面シート、11c 底ガゼットシート、12 端縁シール部、13 充填部、14 切欠き、15 パウチ本体部、16 ノズル部、17 凹状部、18 弱シール部、19a,19b 注出口部、20a,20b タックシート、21a,21b 第1ハーフカット線、22a,22b 第2ハーフカット線、23a,23b 貫通孔、24a,24b 内面層、25a,25b 外面層、26a,26b 中間層、27a,27b 第1接着層、28a,28b 第2接着層、29a,29b 接着部、30a,30b フィルム基材、31a,31b 粘着剤層、70 内容物、100 ボトル、101 口部、102 胴部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも容器の壁面部を構成するシート材を備え、シート材の端縁同士が接合されて内容物が充填される容器内部空間が形成されたパウチ容器において、
容器の壁面部に設けられた注出口部を備え、
注出口部は、シート材を環状にハーフカットしたカット線により形成されることを特徴とするパウチ容器。
【請求項2】
請求項1に記載のパウチ容器において、
注出口部を形成するカット線は、シート材の内側から環状にハーフカットした第1ハーフカット線と、該第1ハーフカット線を囲むようにシート材の外側から環状にハーフカットした第2ハーフカット線からなることを特徴とするパウチ容器。
【請求項3】
請求項2に記載のパウチ容器において、
シート材は、少なくとも一つの接着層を介して積層された複層シート材であり、
第1ハーフカット線及び第2ハーフカット線はいずれも、同じ接着層に達しており、
第1ハーフカット線と第2ハーフカット線との間の接着層の全部又は一部が、注出口部以外の接着層より接着力が弱いことを特徴とするパウチ容器。
【請求項4】
請求項3に記載のパウチ容器において、
第1ハーフカット線と第2ハーフカット線との間の接着層は、第2ハーフカット線に近接する部分が第1ハーフカット線に近接する部分より接着力が弱いことを特徴とするパウチ容器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一に記載のパウチ容器において、
注出口部に貼着された蓋部を有することを特徴とするパウチ容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−10545(P2013−10545A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145087(P2011−145087)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】