説明

パケット転送装置、通信システムおよびパケット転送方法

【課題】シグナリングメッセージを、終端処理を行うことなく転送することができるパケット転送装置を得ること。
【解決手段】通信装置から受信したシグナリングメッセージを、他の通信装置へ転送するパケット転送装置であって、通信装置との間でシグナリングプロトコルの下位層のプロトコルに基づいて送受信処理を行い、下位層のプロトコルに基づくコネクションの設定時に、コネクションの識別情報をコネクション情報として取得し、受信したシグナリングメッセージから抽出した下位層のプロトコルのコネクションの識別情報とコネクション情報とに基づいて、そのシグナリングメッセージを転送するIhu側処理部21およびIu側処理部22と、コネクション情報を保持するための記憶部29と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シグナリングメッセージを転送するパケット転送装置、通信システムおよびパケット転送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシグナリングメッセージの転送方法として、たとえば、下記特許文献1に記載の技術では、互いに異なる物理回線を利用する装置間を接続するIWF(InterWorking Function)装置が、主にシグナリング制御を行うIWF−cと、主にユーザデータの転送を行うIWF−uと、を備える。IWF−cは、SCCP(Signalling Connection Control Part)を一端終端して呼情報を認識する。RNC(Radio Network Controller)が「Initial UE(User Equipment) Message」をMSC(Mobile Switching Center)に向けて送信する際に、RNCとIWF−Cとの間及びIWF−cとMSCとの間でSCCPコネクションが設定され、同じ呼に対応するコネクションの対応表が作成される。そして、IWF装置は、この対応表を用いて転送を行なうことで、RNC内の複数ある制御信号送受信部の中から適切な送受信部を選択する。
【0003】
また、互いに異なる物理回線を利用する装置間を接続する装置として、3GPP(3rd Generation Partnership Project) TS.25.467で規定されているHNB−GW(3G Home Node B Gateway)がある(下記、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2004/077792号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】3GPP,“3GPP TS 25.467 V8.1.0”,2009−03
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術によれば、SCCPコネクション同士を対応付けるため、RNC側とMSC側との間でプロトコルが異なる場合に対応できない、という問題点があった。また、上記特許文献1に記載の技術ではシグナリングメッセージを一旦終端して転送している。そのため、シグナリングメッセージを転送する装置が、シグナリングメッセージを終端する機能を有する必要がある、という問題があった。
【0007】
また、上記非特許文献1では、HNB−GWのIu(CN(Core Network)との間のインタフェース)上のシグナリングプロトコルとその処理についての記述はあるが、Iuh(HNB(Home Node B)との間のインタフェース)とIu間のシグナリングメッセージのパケット転送に関しては記述がない。したがって、HNB−GWシグナリングメッセージを転送する場合に、シグナリングメッセージを終端する機能を有する必要がある、という問題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、シグナリングメッセージを、終端処理を行うことなく転送することができるパケット転送装置、通信システムおよびパケット転送方法得ることを目的とする。また、転送元と転送先が異なるプロトコルを用いている場合に、シグナリングメッセージを転送することができるパケット転送装置、通信システムおよびパケット転送方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、2つ以上の通信装置と接続し、前記通信装置から受信したシグナリングプロトコルに基づいて生成されたシグナリングメッセージを、他の前記通信装置へ転送するパケット転送装置であって、前記通信装置との間で前記シグナリングプロトコルの下位層のプロトコルに基づいて送受信処理を行い、前記下位層のプロトコルに基づくコネクションの設定時に、そのコネクションの識別情報をコネクション情報として取得するプロトコル処理手段と、前記コネクション情報を保持するための記憶手段と、を備え、前記プロトコル処理手段は、前記コネクション情報を前記記憶手段へ格納し、受信したシグナリングメッセージから抽出した前記下位層のプロトコルのコネクションの識別情報と前記コネクション情報とに基づいて、そのシグナリングメッセージを転送する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パケット転送装置が、第1のインタフェース側の通信プロトコル処理を行う第1のプロトコル処理手段と、第2のインタフェース側の通信プロトコル処理を行う第2のプロトコル処理手段と、を備え、第1のプロトコル処理手段および第2のプロトコル処理手段は、同一コネクションを示す第1のインタフェース側のコネクション識別情報と第2のインタフェース側のコネクション識別情報との対応を保持し、その対応に基づいて、シグナリングメッセージを転送するようにしたので、シグナリングメッセージを、終端処理を行うことなく転送することができる、という効果を奏する。また、転送元と転送先が異なるプロトコルを用いている場合に、シグナリングメッセージを転送することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施の形態1の通信システムの構成例を示す図である。
【図2】図2は、実施の形態1の通信システムを構成する各装置のプロトコルスタックの一例を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態1のHNB−GWの機能構成例を示す図である。
【図4】図4は、各プロトコルのコネクションのマッピングイメージを示す図である。
【図5】図5は、実施の形態1のマッピングテーブルの作成手順の一例を示すチャート図である。
【図6】図6は、論理識別情報と各コネクションの識別情報との対応付けの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明にかかるパケット転送装置、通信システムおよびパケット転送方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる通信システムの実施の形態1の構成例を示す図である。図1に示すように、本実施の形態の通信システムは、移動端末であるUE1と、フェムトセル基地局(HNB)2と、HNB−GW3と、CN4と、Security Gateway(セキュリティ装置)5と、HMS(HNB Management System:フェムトセル基地局管理システム)6と、で構成される。本実施の形態では、本発明にかかるパケット転送装置としてHNB−GW3を例にあげて説明を行なう。
【0014】
HNB2は、Uuインタフェース11を介して1以上のUE1と接続する(図1では、簡略化のためUE1は1台のみを記載している)。図1はこの発明の移動体通信システムを示すシステム構成図の一例である。HHNB−GW3は、Iuhインタフェース12を介して1以上のHNB2と接続する(図1では、簡略化のためHNB2は1台のみを記載している)。
【0015】
HHNB−GW3とHNB2間は、公衆網を含むことすることがあるため、図1の構成例では、セキュリティを確保するための処理(セキュリティ処理)を行うSecurity Gateway5を設置している。なお、HHNB−GW3とHNB2間が公衆網を含まない場合等、セキュリティ処理が不要な場合はSecurity Gateway5を備えなくてもよい。
【0016】
また、HHNB−GW3は、Iuインタフェース13を介してCN4と接続する。HMS6は、TR−069インタフェース14を介してHNB−GW3と接続し、HNB2やHNB−GW3の構成管理を行なう。
【0017】
図2は、本実施の形態の通信システムを構成する各装置のプロトコルスタックの一例を示す図である。ここでは、CN4からHNB2の間は、IP(Internet Protocol)ネットワークで構成されているとし、最下位レイヤにはEthernet(登録商標)が存在し、レイヤ3にはIPプロトコルが存在する。また、レイヤ4にはIPパケットの信頼性ある転送のためにSCTP(Stream Control Transmission Protocol)プロトコルが存在する。
【0018】
HNB3とHNB2の間は、セキュリティ機能として、たとえばRFC(Request for Comments) 4306で規定されているIPsec(Security Architecture for Internet Protocol)が存在する。
【0019】
CN4とHNB−GW3の間は、共通線信号をIPネットワークで転送するためのSCCPやM3UA(Message Transfer Part 3 User Adaptation)がある。同様にHNB−GW3とHNB2間にも、共通線信号を転送するためのRUA(RANAP User Adaption)がある。
【0020】
また、HNB2およびCN4では、無線アクセスベアラの設定や無線ベアラのリソース管理を行なうRANAP(Radio Access Network Application Part)プロトコルが存在する。また、RUAやSCCPは、RANAPプロトコルのメッセージ(RANAPメッセージ)を転送する機能を有し、HNB−GW2では、RUAやSCCPがRANAPメッセージをRUAやSCCP上で転送する。また、RANAPプロトコルは、CN4とUE間のメッセージであるNAS(Non Access Stratum)メッセージを転送する機能を持つ。
【0021】
UE1とHNB間は、最下層のRadio−PHY(無線物理層)があり、その上にRLC(Radio Linc Cotorol)/MAC(Medium Access Contorol)がある。また、その上に、RRC(Radio Resource Contorol)があり、さらにその上にNASがある。NASメッセージは、UuインタフェースではRRCプロトコルを介して転送される。HNB2では、RRCプロトコル上のNASメッセージとRRCプロトコル上のNASメッセージとの相互変換を行って転送する。なお、3GPPでは、RRCメッセージ、RANAPメッセージ上でのNASメッセージの転送については、3GPPに規定されている従来の方法と同様である。
【0022】
図3は、本実施の形態のHNB−GW3の機能構成例を示す図である。図3に示すように、本実施の形態のHNB−GW3は、Iuh側処理部(第1のプロトコル処理手段)21とIu側処理部(第2のプロトコル処理手段)22と記憶部29とで構成される。Iuh側処理部21およびIu側処理部22は、ここで転送対象としているシグナリングメッセージのプロトコルであるRANAPより下位のプロトコル処理を行うプロトコル処理手段である。
【0023】
Iuh側処理部21は、RUAプトコル処理を行うRUAプロトコル処理部23と、SCTPプロトコル処理を行うSCTPプロトコル処理部24と、IPおよびそれ以下のレイヤの処理を行う下位レイヤ処理部25と、を備える。また、Iu側処理部22は、SCCPプロトコル処理を行うSCCPプロトコル処理部26と、SCTPプロトコル処理を行うSCTPプロトコル処理部27と、IPおよびそれ以下のレイヤの処理を行う下位レイヤ処理部28と、を備える。
【0024】
つぎに、本実施の形態の動作を説明する。まず、CN4から送信されたRANAPメッセージが転送される場合を例に、本実施の形態のコネクションのマッピング動作(コネクションの対応付け動作)を説明する。
【0025】
図4は、各プロトコルのコネクションのマッピングイメージを示す図である。図4の例では、UE1から最初のRANAPメッセージ(Initial UE Message)をCN4まで送信した際に、Iu側SCCPコネクション32とIu側SCTPアソシエーション31のレイヤ間対応34と、Iuh側RUAコネクション36とIuh側SCTPアソシエーション35のレイヤ間対応37と、Iu側とIuh側間の対応である、Iuh側RUAコネクション36とIu側SCCPコネクション32との内部ピア間対応38と、がそれぞれマッピングテーブル(コネクション情報)として作成されているとする。これらのマッピングテーブルは記憶部29に保持されているとする。マッピングテーブルの作成方法については、後述する。また、本実施の形態では、RANAPの終端処理は行わず、RANAPメッセージはSCCP上(およびRUA上)で転送されるため、RANAPコネクション33は、RANAPがカプセル化されるSCCPコネクションに対応している。
【0026】
図4では、HNB−GW3が、HNB2−0〜HNB2−NのN+1台のHNBに接続する例を示している。作成されたマッピングテーブルには、図4に示すように、HNB−GW3とCN4間のIu側SCTPアソシエーション31のSCTPアソシエーション#0が、Iu側SCCPコネクション32のSCCPコネクション#0〜SCCPコネクション#M(Mは0以上の整数)と対応付けられているとする。Iu側SCTPアソシエーションのSCTPアソシエーション#0は、Iuh側SCTPアソシエーション35のSCTPアソシエーション#0〜SCTPアソシエーション#N(Nは0以上の整数)に対応付けられているとする。
【0027】
また、Iuh側RUAコネクション36のRUAコネクション#0,RUAコネクション#1,…,RUAコネクション#Mは、それぞれIu側SCCPコネクション32のSCCPコネクション#0,SCCPコネクション#1,…SCCPコネクション#Mに対応付けられているとする。また、Iuh側RUAコネクション36とIuh側SCTPアソシエーション35の対応は、図4では簡略化のため、HNB2−Nについて部分を示しており、Iuh側SCTPアソシエーション35のSCTPアソシエーション#Nが、Iuh側RUAコネクション36のRUAコネクション#M−1およびRUAコネクション#Mに対応しているとする。
【0028】
なお、SCCPコネクション#0〜SCCPコネクション#Mを識別する識別情報として、コネクションの識別ごとのDestination Local ReferenceとSource Local Referenceの値を保持しているとする。また、SCTPアソシエーション(Iu側SCTPアソシエーション31,Iuh側SCTPアソシエーション35の各コネクション)を識別する識別情報として、アソシエーションごとのIP DA(Destination Address)、IP SA(Source Address)、Destination Port、Source PortおよびDL Verification Tagの値を保持しているとする。また、RUAコネクション#0〜RUAコネクション#Mを識別する識別情報として、コネクションごとのRUA Context ID(IDentifier)を保持しているとする。なお、これらの識別情報は、コネクションが特定できれば必ずしも前記全ての情報が必要ではない。
【0029】
なお、ここでは、マッピングテーブルを、上述の識別情報同士を対応させるテーブルとして保持することとする。たとえば、Iu側SCCPコネクション32とIu側SCTPアソシエーション31のレイヤ間対応34のマッピングテーブルとしては、Destination Local ReferenceおよびSource Local Referenceと、Destination Port、Source PortおよびDL Verification Tagと、対応させて格納する。これに限らず、マッピングテーブルとしてはコネクションの識別ID(SCCPコネクション#0等)のみを対応させ、コネクションの識別IDと識別情報を別途保持するなど、他の形式で対応を保持するようにしてもよい。また、ここでは全てのマッピングテーブル(識別情報を別途保持する場合にはマッピングテーブルおよび識別情報)を記憶部29に保持し、各処理部から読み書きできるようにしているが、各構成要素が自身の処理に用いるマッピングテーブルをそれぞれ保持する(各構成要素がそれぞれ記憶手段を備える)ようにしてもよい。
【0030】
Iu側処理部22の下位レイヤ処理部28は、IPプロトコル処理機能によりIPヘッダを確認し、CN4から受信したRANAPメッセージのIP DAが自身(HNB−GW3)のアドレス(図4では、HNB−GW IPと記載)であり、かつIP SAが対向するCN4のアドレス(図4では、CN IPと記載)であるか、を確認する。
【0031】
IP DAが自身のアドレスであり、かつIP SAがCN4のアドレスである場合、Iu側処理部22のSCTPプロトコル処理部27は、そのRANAPメッセージのSCTPアソシエーション(Destination Port、Source PortおよびDL Verification Tag)が対向するCN4間の値であるかを確認する。
【0032】
SCTPアソシエーションが対向するCN4間の値であると確認した場合、Iu側処理部22のSCCPプロトコル処理部26は、そのRANAPメッセージのDestination Local ReferenceとSource Local Referenceを抽出する。そして、SCCPプロトコル処理部26は、内部ピア間対応38のマッピングテーブルを参照し、抽出したDestination Local ReferenceおよびSource Local Referenceに対応するRUAコネクションの識別情報(RUA Context)を検索する。検索結果として、Destination Local ReferenceおよびSource Local Referenceに対応するRUAコネクション対応するRUA Context IDが得られた場合、SCCPプロトコル処理部26は、得られたRUA Context IDとともに当該RANAPメッセージをIuh側処理部21のRUAプロトコル処理部23へ渡す。
【0033】
RUAプロトコル処理部23は、記憶部29のレイヤ間対応37のマッピングテーブルを検索し、受け取ったRUA Context IDに対応するSCTPアソシエーションの識別情報(IP DA、IP SA、Destination Port、Source PortおよびDL Verification Tag)を取得し、取得した識別情報とともに当該RANAPメッセージをSCTPプロトコル処理部24へ渡す。
【0034】
SCTPプロトコル処理部24は、受け取ったRANAPメッセージに受け取った識別情報に基づいてDestination Port、Source PortおよびDL Verification Tagを設定したSCTPメッセージを生成し、生成したSCTPメッセージを、受け取ったIP DAおよびIP SAとともに下位レイヤ処理部25へ渡す。下位レイヤ処理部25は、受け取ったSCTPメッセージに受け取ったIP DAおよびIP SAを設定したIPパケットを生成し、生成したIPパケットを宛先のHNB2−0〜2−Nへ送信する。以上の手順により、HNB−GW3は、CN4から受信したRANAPメッセージを、HNB2−0〜2−Nへ転送する。
【0035】
つぎに、HNB−GW3が、UE1から送信されたNASメッセージをRANAPメッセージにカプセル化したメッセージをCN4へ転送する場合の動作を説明する。HNB−GW3は、UE1から送信されたNASメッセージをカプセル化したRANAPメッセージを、UE1に接続するHNB2−0〜2−N経由で受信する。Iuh側処理部21の下位レイヤ処理部25は、IPプロトコル処理として、受信したメッセージのIP DAが自装置のIPアドレスであり、かつIP SAが対向するHNB2−0〜2−NのIPアドレスであるかを確認する。
【0036】
受信したメッセージのIP DAが自装置のIPアドレスであり、かつIP SAが対向するHNB2−0〜2−NのIPアドレスである場合、SCTPプロトコル処理部24は、そのメッセージに含まれるSCTPアソシエーションの識別情報(Destination Port、Source PortおよびDL Verification Tag)が対向装置(HNB2−0〜2−N)間の値であるかを確認する。
【0037】
SCTPアソシエーションの識別情報が対向装置間の値である場合、RUAプロトコル処理部23は、受信したメッセージからRUA Context IDを抽出する。そして、RUAプロトコル処理部23は、内部ピア間対応38のマッピングテーブルを参照し、抽出したRUA Context IDに対応するDestination Local ReferenceとSource Local Referenceを検索する。検索結果として、対応するDestination Local ReferenceとSource Local Referenceが得られた場合、RUAプロトコル処理部23は、得られたDestination Local ReferenceとSource Local Referenceともに、受信したメッセージをIu側処理部22のSCCPプロトコル処理部26へ渡す。
【0038】
SCCPプロトコル処理部26は、レイヤ間対応34のマッピングテーブルを参照し、受け取ったDestination Local ReferenceとSource Local Referenceに対応するSCTPアソシエーションの識別情報を検索する。そして、SCCPプロトコル処理部26は、検索した識別情報とともに受け取ったメッセージをSCTPプロトコル処理部27へ渡す。
【0039】
SCTPプロトコル処理部27は、SCCPプロトコル処理部26から受け取った識別情報に基づいて受け取ったメッセージを格納したSCTPメッセージを生成し、生成したSCTPメッセージを受け取った識別情報のIP SAおよびIP DAとともに下位レイヤ処理部28へ渡す。下位レイヤ処理部28は、受け取ったSCTPメッセージに、受け取ったIP SAおよびIP DAを格納したIPパケットを生成し、生成したIPパケットをCN4へ送信する。以上の手順により、HNB−GW3は、UE1からHNB2−0〜2−N経由で受信したRANAPメッセージを、CN4へ転送する。
【0040】
つぎに、本実施の形態のマッピングテーブルの作成方法について説明する。図5は、本実施の形態のマッピングテーブルの作成手順の一例を示すチャート図である。まず、HNB2は、UE1からCN4に対する最初のRANAPメッセージ(Initial UE Messase:INIT)を受信する。なお、実際には、UE1は、CN4に対する最初のNASメッセージを生成し、そのNASメッセージを受信したHNB2が、NASメッセージをカプセル化したRANAPメッセージとして送信するが、HNB−GW3では、RANAPメッセージとして認識するのみのため、NASプロトコルの処理についての説明は省略する。
【0041】
HNB2は、この時点では、HNB−GW3との間で、RANAP用のコネクションが設定されていないため、HNB2のSCTPプロトコルの処理として、接続を要求するためのSCTP INITメッセージを、HNB−GW3のSCTPプロトコル処理部(図5では、SCTPと略している)24へ送信する(ステップS1)。
【0042】
HNB−GW3のSCTPプロトコル処理部24は、SCTP INITメッセージを受信すると、そのメッセージに対する応答として、この接続要求を識別する一意なコンテキストであるCOOKIEを含むSCTP INIT−ACKメッセージをHNB2へ送信する(ステップS2)。HNB2は、SCTP INIT−ACKメッセージを受信すると、SCTP COOKIE−ECHOメッセージをHNB−GW3のSCTPプロトコル処理部24へ送信する(ステップS3)。なお、この際、HNB2は、HNB−GW3との間でRUAコネクションも設定されていないため、RUAの接続を要求するRUA CONNECTメッセージを、SCTP COOKIE−ECHOメッセージにカプセル化して、送信する。また、このRUA CONNECTメッセージには、UE1から受信したInitial UE Messageがカプセル化されているとする。
【0043】
SCTPプロトコル処理部24は、受信したRUA CONNECTメッセージをRUAプロトコル処理部(図5では、RUAと略している)23へ渡す(ステップS4)。RUAプロトコル処理部23が、RUA CONNECTメッセージに含まれるContext IDを抽出することにより、HNB2とHNB−GW3の間のRUAコネクションが確立される。
【0044】
この時点では、HNB2とHNB−GW3の間のSCTPアソシエーションはまだ確立されていないが、HNB−GW3は、Iuh側SCTPアソシエーション35の識別情報として、IP SA(この場合は、HNB2のアドレス)、IP DA(この場合は、HNB−GW3のアドレス)、Source protおよびDestination Portの情報は、以上の手順で取得できている。HNB−GW3のSCTPプロトコル処理部24は、HNB2との間で使用するDL Verification Tagをここで決定し、そのRUAコネクションのContext IDと、対応するSCTPアソシエーション情報(UL Verification Tag以外)と、を記憶部29に、レイヤ間対応37のマッピングテーブルのエントリとして格納する(ステップS5)。
【0045】
RUAプロトコル処理部23は、受信したRUA CONNECTメッセージに含まれるInitial UE Messageがカプセル化されたRANAPメッセージ(RNAP:Initial UE Message)を、そのRUA CONNECTメッセージから抽出したContext IDとともにSCCPプロトコル処理部26へ渡す(ステップS6)。SCCPプロトコル処理部26は、HNB−GW3とCN4の間のSCCPコネクションが設定されていないため、HNB−GW3とCN4の間のSCCPコネクションで用いるSource local referenceを決定する。SCCPプロトコル処理部26は、決定したSource local referenceと、RUAプロトコル処理部23から渡されたContext IDの対応を、記憶部29に、内部ピア間対応38のマッピングテーブルのエントリとして格納する(ステップS7)。
【0046】
なお、Destination local referenceは、対向する装置から通知されるため、SCCPプロトコル処理部26は、この時点では、Destination local referenceをマッピングテーブルに設定することはできないが、Destination local reference以外の項目としてマッピングテーブルのエントリとして格納する。
【0047】
SCCPプロトコル処理部(図5では、SCCPと略す)26は、RNAP:Initial UE Messageをカプセル化したSCCP CR(Connection Request)メッセージを生成し、SCTPプロトコル処理部27へ渡す(ステップS8)。この時点では、まだ、CN4との間のSCTPアソシエーションが設定されていないため、SCCPプロトコル処理部26は、SCTP INITメッセージをCN4へ送信する(ステップS10)。
【0048】
SCTPプロトコル処理部27は、送信方向のUL Verification Tagを決定することができるため、CN4との間で用いるUL Verification Tagを決定し、CN4間のIP DA、IP SA、Source Port、Destination Portは既知であるとし、DL Verification Tag以外のこれらのSCTPコネクション情報と、SCCPプロトコル処理部26が決定したSource local referenceと、を、記憶部29に、レイヤ間対応34のマッピングテーブルのエントリとして格納する(ステップS9)。
【0049】
CN4では、HNB−GW3のSCTPプロトコル処理部27からSCTP INITメッセージを受信すると、その応答としてSCTP INIT−ACKメッセージを送信する(ステップS11)。HNB−GW3のSCTPプロトコル処理部27は、SN4からSCTP INIT−ACKメッセージを受信すると、SCTP COOKIE−ECHOメッセージを送信する(ステップS12)。このSCTP COOKIE−ECHOメッセージには、SCCPプロトコル処理部26から受け取ったSCCP CRメッセージがカプセル化されているとする。なお、ここでは、SCTP COOKIE−ECHOメッセージにSCCPプロトコル処理部26から受け取ったSCCP CRメッセージがカプセル化されることとしたが、これに限らず、ステップS10で送信したSCTP INITメッセージにSCCPプロトコル処理部26から受け取ったSCCP CRメッセージがカプセル化してもよい。
【0050】
CN4は、HNB−GW3のSCTPプロトコル処理部27からSCTP COOKIE−ECHOメッセージを受信すると、カプセル化されたSCCP CRメッセージをとりだし、SCCPプロトコル処理として、接続確認を通知するSCCP CCメッセージを生成する。そして、CN4では、生成したSCCP CCメッセージをカプセル化したSCTP COOKIE−ACKメッセージを生成し、生成したSCTP COOKIE−ACKメッセージをHNB−GW3へ送信する(ステップS13)。このSCTP COOKIE−ACKメッセージには、DL Verification Tagが含まれている。
【0051】
なお、ここでは、CN4では、SCCP CCメッセージに、Initial UE Messageに対する応答のRANAP メッセージ(GMM(GPRM(General Packet Radio Service) Mobility Management):Authentication AND Ciphering Request(認証要求)))を格納したRUAメッセージ(Direct Trasfer)が、格納されている。本実施の形態ではRANAPメッセージの内容に制約はないため、ここではRANAPメッセージの内容について説明を省略する。
【0052】
HNB−GW3のSCTPプロトコル処理部27は、SCTP COOKIE−ACKメッセージを受信することによりCN4との間のSCTPアソシエーションが確立する。SCTPプロトコル処理部27は、SCTP COOKIE−ACKメッセージに含まれるDL Verification TagをステップS9で格納したレイヤ間対応34のマッピングテーブルのエントリ(DL Verification Tagが未設定)に設定する。これにより、レイヤ間対応34のマッピングテーブルの当該エントリが完全に確定する。受信したSCTP COOKIE−ACKメッセージからSCCP CCメッセージを取り出して、とりだしたメッセージをSCCPプロトコル処理部26へ渡す(ステップS14)。
【0053】
SCCPプロトコル処理部26は、受け取ったSCCP CCメッセージに格納されているDestination local referenceを抽出し、ステップS7で格納した内部ピア間対応38のマッピングテーブルのエントリ(Destination local referenceが未設定)に格納する(ステップS15)。これにより、内部ピア間対応38のマッピングテーブルのこのエントリが完全に確定する。また、SCCPプロトコル処理部26は、当該SCCPコネクションの識別情報(Destination local referenceおよびSource local reference)とともにSCCP CCメッセージから抽出したRANAPメッセージをカプセル化したRUAメッセージを、RUAプロトコル処理部23へ渡す(ステップS16)。
【0054】
RUAプロトコル処理部23は、受け取ったRANAPメッセージをカプセル化したRUAメッセージをSCTPプロトコル処理部24へ渡す(ステップS17)。SCTPプロトコル処理部24は、宛先のHNB2に対応するSCTPコネクションのUL Verification Tagを決定する。そして、SCTPプロトコル処理部24は、RUAプロトコル処理部23から受け取ったRUAメッセージをカプセル化したSCTP COOKIE−ACKメッセージ(決定したUL Verification Tagが格納されている)を、HNB2へ送信する(ステップS18)。また、SCTPプロトコル処理部24は、ステップS5で格納したレイヤ間対応37のマッピングテーブルのエントリに決定したUL Verification Tagを設定する。これにより、レイヤ間対応37のマッピングテーブルの当該エントリを完全に確定することができる。
【0055】
RANAPメッセージには、宛先を示すRNC−IDやIu signalling connection identifierが含まれ、通常のRANAPメッセージを転送する場合には、転送する装置がこれらの情報に基づいてRANAPメッセージを転送するためにRANAPメッセージのデコード処理を行う必要がある。これに対し、本実施の形態では、下位のプロトコルであるRUAプロトコル、SCCPプロトコル、SCTPプロトコルのコネクション情報を参照して、転送を行ない、RANAPメッセージのデコード処理を不要としている。
【0056】
なお、ここでは、シグナリングプロトコルとしてRANAPを例に説明したが、これに限らず、どのようなシグナリングプロトコルを用いてもよい。また、シグナリングプロトコルの下位のプロトコルも、RUAプロトコル、SCCPプロトコル、SCTPプロトコルに限らず、どのようなプロトコルを用いてもよく、下位のプロトコルの接続情報を本実施の形態と同様に、レイヤ間の対応と、内部ピア間の対応と、して保持するようにすればよい。
【0057】
また、本実施の形態では、レイヤ間の対応と、内部ピア間の対応と、をマッピングテーブルとして保持するようにしたが、同様の情報を保持できればテーブル形式以外の他の形式等を用いて対応を保持してもよい。
【0058】
このように、本実施の形態では、HNB−GW3が、RANAPプロトコルの下位層のプロトコルが、Iu側のコネクション同士(RUAコネクションとSCTPアソシエーション)の対応と、Iuh側のコネクション同士(SCCPコネクションとSCTPアソシエーション)の対応と、Iu側のコネクション(RUAコネクション)とIuh側のコネクション(SCCPコネクション)の対応と、を保持し、保持している対応に基づいて、RANAPプロトコルの下位層のプロトコルがRANAPメッセージを転送するようにした。そのため、RANAPメッセージを、終端処理を行うことなく転送することができる。また、転送元と転送先が異なるプロトコルを用いている場合にも、シグナリングメッセージを転送することができる。
【0059】
実施の形態2.
つぎに、本発明にかかる実施の形態2のパケット転送方法について説明する。本実施の形態の通信システムの構成は、実施の形態1の通信システムの構成と同様である。また、本実施の形態のHNB−GWの構成は、実施の形態1のHNB−GW3の構成と同様である。本実施の形態のプロトコルスタックも実施の形態1のプロトコルスタックと同様とする。以下、実施の形態1と異なる点を説明する。
【0060】
実施の形態1では、各プロトコルのコネクションの識別情報に基づいて、プロトコル間のコネクションの対応を示すマッピングテーブルを作成し、また、識別情報に基づいてマッピングテーブルを検索するようにした。本実施の形態では、マッピングテーブルの検索を容易にするために、HNB−GW内では、プロトコルに依存しない論理識別情報を導入する。
【0061】
SCTPアソシエーションを識別する情報は、4バイトの宛先IPアドレス(IP SA)と、4バイトの送信元IPアドレス(IP DA)と、2バイトのSCTP宛先ポート番号(Source port)と、2バイトのSCTP送信元ポート番号(Destination port)と、4バイトのVerification Tag(DL Verification Tag/UL Verification Tag)と、である。
【0062】
SCCPコネクションを識別する情報は、3バイトのDestination Local Referenceと、3バイトのSource Local Referenceと、である。
【0063】
RUAコネクションを識別する情報は、3バイトのContext IDである。このようにプロトコルによってコネクションを識別する情報の内容と量が異なる。本実施の形態では、コネクション間の対応の情報を簡素化するため、これらの識別情報を相互に結びつける装置内共通の論理識別情報を導入する。コネクションの最小単位がSCCPコネクションやRUAコネクションであることから、ここでは論理識別情報を3バイトとする。なお、論理識別情報は3バイトに限らず何バイトとしてもよい。また、論理識別情報の設定方法は、どのような方法としてもよいが、たとえば、初回のコネクション情報の格納時に、最小単位となるコネクションに対してコネクション情報と論理識別情報が1対1となるよう論理識別情報を割当てることとする。
【0064】
図6は、論理識別情報と各コネクションの識別情報との対応付けの一例を示す図である。図6に示すように、たとえば、論理識別情報#0(3バイトの数値)は、Iuh側のSCTPアソシエーション情報#A0と、Iuh側のRUAコネクション情報#B0と、Iu側のSCCPコネクション情報#C0と、Iu側のSCTPアソシエーション情報#D0と、に対応している。論理識別情報#1〜#5にも同様に各コネクションのコネクション情報と対応している。
【0065】
なお、Iuh側のSCTPアソシエーション情報#A0〜#A2は、4バイトの宛先IPアドレスと、4バイトの送信元IPアドレスと、2バイトのSCTP宛先ポート番号と、2バイトのSCTP送信元ポート番号と、4バイトのDL Verification Tag/UL Verification Tagと、であるが、これらの情報をまとめて#A0〜#2として示している。Iu側のSCTPアソシエーション情報#D0についても同様である。Iu側のSCCPコネクション情報#C0〜#C5についても、3バイトのDestination Local Referenceと、3バイトのSource Local Referenceと、の情報をまとめて#C0〜#C5として示している。
【0066】
また、より簡単に処理を行うためには、論理識別情報を用いずに、図6に例示した1つの大きなマッピングテーブルとして、各コネクションの識別情報の対応をまとめて保持することもできる。一方でプロトコルの独立性、拡張性を考慮すると、各プロトコルの処理部が分散して情報を保持する方法も考えられる。この場合、たとえば、Iuh側処理部21のSCTPプロトコル処理部24は、論理識別情報とIuh側のSCTPアソシエーション情報の対応をマッピングテーブルとして保持し、Iuh側処理部21のRUAプロトコル処理部23は、論理識別情報とIuh側のRUAコネクション情報の対応をマッピングテーブルとして保持し、Iu側処理部22のSCCPプロトコル処理部26は、論理識別情報とIu側のSCCPコネクション情報の対応をマッピングテーブルとして保持し、Iu側処理部22のSCTPプロトコル処理部27は、論理識別情報とIu側のSCTPアソシエーション情報の対応をマッピングテーブルとして保持する。
【0067】
また、Iu側とIuh側という観点での独立性、拡張性を考慮すると、Iuh側処理部21は、論理識別情報とIuh側のSCTPアソシエーション情報とIuh側のRUAコネクション情報との対応をマッピングテーブルとして保持し、Iu側処理部22は、論理識別情報とIu側のSCCPコネクション情報とIu側SCTPアソシエーション情報と対応をマッピングテーブルとして保持する方法も考えられる。マッピングテーブルの構成は、状況に応じて柔軟に変更することが可能である。これらの方法によりマッピングテーブルを保持することにより、各プロトコルの処理部は、自身のプロトコルのコネクション情報から論理識別情報を求め、さらに論理識別子に対応する他のプロトコルのコネクション情報を求めることにより、自身のプロトコルのコネクション情報に対応する他のプロトコルのコネクション情報ができる。
【0068】
ただし、複数のコネクションが1つのコネクションに多重されている場合は、該当プロトコルのコネクション識別情報から一意に対応するプロトコルのコネクション識別情報をマッピングできないことがあるため、注意が必要である。たとえば、Iu側処理部22のSCTPプロトコル処理部27が、受信したメッセージのSCTPアソシエーション情報から対応するSCCPコネクション情報を求める場合、Iu側のSCCPコネクション情報には複数のIu側のSCTPアソシエーション情報#C0〜#C5に対応しているため、論理識別情報は1つに特定できない。この場合は、SCCTPプロトコル処理部26が、受信したメッセージのDestination Local ReferenceとSource Local Referenceと、を用いて論理識別情報を特定することになる。この逆の方向の場合は論理識別情報を一意に特定できることは自明である。
【0069】
多重されているかどうかは、SCCPとSCTP、RUAとSCTPのように、その関係が明確である場合は、上述したようなテーブルの検索方法をプロトコル毎に決めておけばよい。また、多重関係が不明な場合や、より一般化する場合のために、多重されていることにより論理識別情報を一意に特定できないことを示すためのフラグを各コネクション情報に付加するようにしてもよい。
【0070】
つぎに、CN4から送信されたRANAPメッセージを転送する場合を例に、本実施の形態のHNB−GW3のレイヤ間のコネクションのマッピング動作を説明する。ここでは、各プロトコルの処理部毎に論理識別情報と該当プロトコルのコネクションのマッピングテーブルを持つ場合を例に説明する。また、各プロトコルの識別情報は、図6に例示したような対応であるとする。
【0071】
HNB−GW3では、Iu側処理部22の下位レイヤ処理部28およびSCTPプロトコル処理部27が、受信したメッセージからSCTPアソシエーション情報を抽出する。SCTPアソシエーション情報が#D0であったとする。SCTPプロトコル処理部27は、このSCTPアソシエーションに対応する論理識別情報が特定できないため、論理識別情報を特定せず、SCCPプロトコル処理部26へ受信したメッセージを渡す。SCCPプロトコル処理部26は、そのメッセージからSCCPコネクション情報(Destination Local ReferenceとSource Local Reference)を抽出し、抽出したSCCPコネクション情報に基づいて論理識別情報を求める。たとえば、抽出したSCCPコネクション情報が#C1であったとすると、SCCPプロトコル処理部26は、論理識別情報として#1を求める。
【0072】
実施の形態1の場合、SCCPプロトコル処理部26は、抽出したIu側のSCCPコネクション情報をキーとして、対応するIuh側のRUAコネクション情報を検索することになるが、本実施の形態では、論理識別情報をキーとしてIuh側のRUAコネクション情報を検索する。そして、その後、RUAプロトコル処理部23が、論理識別情報をキーにIuh側のSCTPアソシエーション情報を検索する。そして、検索結果に基づいて、SCCPプロトコル処理部26から受け取ったメッセージに基づいてRUAメッセージ、SCTPメッセージ及びIPパケットを生成し、対向するHNB2に転送する。このように、本実施の形態では、検索時のキーが短くなり、また検索データベースの構造が各テーブルで同様となるため、検索効率が良くなり、転送効率を向上させることができる。以上述べた以外の本実施の形態の動作は、実施の形態1と同様である。
【0073】
このように、本実施の形態では、各プロトコルのコネクション情報を論理識別情報に対応づけて保持し、論理識別情報を用いて対応する他のプロトコルのコネクション情報を検索するようにした。そのため、実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、実施の形態1に比べ検索キーが短くなり、検索効率が良くなり、転送効率を向上させることができる。さらには、各プロトコルのコネクションの対応が論理識別情報をキーとして統括的に扱えるため管理がしやすくなる効果がある。
【0074】
実施の形態3.
つぎに、本発明にかかる実施の形態3のパケット転送方法について説明する。本実施の形態の通信システムの構成は、実施の形態1の通信システムの構成と同様である。また、本実施の形態のHNB−GWの構成は、実施の形態1のHNB−GW3の構成と同様である。本実施の形態のプロトコルスタックも実施の形態1のプロトコルスタックと同様とする。以下、実施の形態1または実施の形態2と異なる点を説明する。
【0075】
実施の形態2では、論理識別情報を用いたマッピングテーブルをプロトコル毎に保持するようにしたが、ここでは、インタフェース毎(Iu側とIuh側)にマッピングテーブルを保持する場合について説明する。本実施の形態では、Iuh側処理部21は、論理識別情報とIuh側のSCTPアソシエーション情報とIuh側のRUAコネクション情報との対応をマッピングテーブルとして保持し、Iu側処理部22は、論理識別情報とIu側のSCCPコネクション情報とIu側SCTPアソシエーション情報と対応をマッピングテーブルとして保持する。
【0076】
CN4から送信されたRANAPメッセージを転送する場合を例に、本実施の形態のHNB−GW3のレイヤ間のコネクションのマッピング動作を説明する。ここでは、各プロトコルの処理部毎に論理識別情報と該当プロトコルのコネクションのマッピングテーブルを持つ場合を例に説明する。また、各プロトコルの識別情報は、図6に例示したような対応であるとする。
【0077】
HNB−GW3では、Iu側処理部22の下位レイヤ処理部28およびSCTPプロトコル処理部27が、受信したメッセージからSCTPアソシエーション情報を抽出する。SCTPアソシエーション情報が#D0であったとする。SCTPプロトコル処理部24は、このSCTPアソシエーションに対応する論理識別情報が特定できないため、論理識別情報を特定せず、SCCPプロトコル処理部26へ受信したメッセージを渡す。SCCPプロトコル処理部26は、そのメッセージからSCCPコネクション情報(Destination Local ReferenceとSource Local Reference)を抽出し、抽出したSCCPコネクション情報に基づいて論理識別情報を求める。たとえば、抽出したSCCPコネクション情報が#C1であったとすると、SCCPプロトコル処理部26は、論理識別情報として#1を求める。
【0078】
実施の形態2では、SCCPプロトコル処理部26は、論理識別情報をキーにIuh側のRUAコネクション情報とIuh側のSCTPアソシエーション情報をそれぞれ検索していたが、本実施の形態では、論理識別情報をキーにIuh側のRUAコネクション情報とIuh側のSCTPアソシエーション情報を同時に検索することができる。以上述べた以外の本実施の形態の動作は、実施の形態2と同様である。
【0079】
このように、本実施の形態では、論理識別情報を用いて、インタフェースごとに論理識別情報と各コネクション情報の対応をマッピングテーブルとして保持するようにした。そのため、実施の形態2と同様の効果が得られるとともに、同時に複数のコネクション情報を検索することにより、検索回数が減るため、検索効率がさらに良くなる。また、検索効率が良くなることにより、転送効率を向上させることができる。
【0080】
実施の形態4.
つぎに、本発明にかかる実施の形態4のパケット転送装置について説明する。本実施の形態では、本発明にかかるパケット転送装置として実施の形態1で述べたHNB2を例に説明する。実施の形態1〜実施の形態3で述べたHNB−GW3のパケット転送方法と同様の動作をHNB2が実施する。
【0081】
HNB2では、図2に示したIuh側のRUAプロトコルのコネクション情報と、Uu側のRRCプロトコルのRRCコネクション情報との対応をマッピングテーブルとして保持し、マッピングテーブルを用いて、受信したメッセージのRUAプロトコルのコネクション情報に対応するRRCコネクション情報を求め、また、受信したメッセージのRRCコネクション情報のコネクション情報に対応するRUAコネクションの情報を求める。これにより、HNB2は、RANAPメッセージやNASメッセージを転送することが可能となる。マッピングテーブルの保持方法やコネクション情報の検索方法は、実施の形態1〜実施の形態3のどの方法を用いてもよい。
【0082】
このように、両方のインタフェース(Uu側とIuh側)で同一のプロトコルを含まない場合にも、実施の形態1〜実施の形態3の動作を適用でき実施の形態1〜実施の形態3と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように、本発明にかかるパケット転送装置、通信システムおよびパケット転送方法は、シグナリングメッセージを転送するパケット転送装置に有用であり、特に、転送元と転送先が互いに異なるプロトコルを用いる場合に適している。
【符号の説明】
【0084】
1 UE
2 HNB
3 HNB−GW
4 CN
5 Security Gateway
6 HMS
11 Uuインタフェース
12 Iuhインタフェース
13 Iuインタフェース
14 TR−069インタフェース
21 Iuh側処理部
22 Iu側処理部
23 RUAプロトコル処理部
24 SCTPプロトコル処理部
25 下位レイヤ処理部
26 SCCPプロトコル処理部
27 SCTPプロトコル処理部
28 下位レイヤ処理部
29 記憶部
31 Iu側SCTPアソシエーション
32 Iu側SCCPコネクション
33 RANAPコネクション
34,37 レイヤ間対応
35 Iuh側SCTPアソシエーション
36 Iuh側RUAコネクション
38 内部ピア間対応

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の通信装置と接続し、前記通信装置から受信したシグナリングプロトコルに基づいて生成されたシグナリングメッセージを、他の前記通信装置へ転送するパケット転送装置であって、
前記通信装置との間で前記シグナリングプロトコルの下位層のプロトコルに基づいて送受信処理を行い、前記下位層のプロトコルに基づくコネクションの設定時に、そのコネクションの識別情報をコネクション情報として取得するプロトコル処理手段と、
前記コネクション情報を保持するための記憶手段と、
を備え、
前記プロトコル処理手段は、前記コネクション情報を前記記憶手段へ格納し、受信したシグナリングメッセージから抽出した前記下位層のプロトコルのコネクションの識別情報と前記コネクション情報とに基づいて、そのシグナリングメッセージを転送する、
ことを特徴とするパケット転送装置。
【請求項2】
前記通信装置として、第1の通信装置と第2の通信装置とを含むこととし、
前記プロトコル処理手段は、
前記第1の通信装置との間で前記シグナリングプロトコルの下位層のプロトコルである第1のプロトコルに基づいて送受信処理を行い、前記第1のプロトコルに基づくコネクションの設定時に、そのコネクションの識別情報を第1のコネクション識別情報として取得する第1のプロトコル処理手段と、
前記第2の通信装置との間で前記シグナリングプロトコルの下位層のプロトコルである第2のプロトコルに基づいて送受信処理を行い、前記第2のプロトコルに基づくコネクションの設定時に、そのコネクションの識別情報を第2のコネクション識別情報として取得する第2のプロトコル処理手段と、
を備え、
前記第1のプロトコル処理手段、前記第2のプロトコル処理手段のうちの1つ以上は、前記コネクション情報として、同一のコネクションに対応する前記第1のコネクション識別情報と前記第2のコネクション識別情報とを対応付けて前記記憶手段へ格納する、
ことを特徴とする請求項1に記載のパケット転送装置。
【請求項3】
前記第1のプロトコル処理手段および前記第2のプロトコル処理手段は、自身のプロトコルによるコネクションの設定が完了するまでの間は、受信したパケットから前記コネクション情報として格納すべき情報を抽出し、抽出した情報を前記コネクション情報として格納する、
ことを特徴とする請求項2に記載のパケット転送装置。
【請求項4】
前記第1のプロトコルと前記第2のプロトコルを互いに異なるプロトコルとする、
ことを特徴とする請求項2または3に記載のパケット転送装置。
【請求項5】
前記第1のプロトコルをRUAプロトコルとし、前記第2のプロトコルをSCCPプロトコルとする、
ことを特徴とする請求項4に記載のパケット転送装置。
【請求項6】
前記第1の通信装置との間で、前記第1のプロトコルより下位層のプロトコルである第1の下位プロトコルに基づいて送受信処理を行い、前記第1の下位プロトコルに基づくコネクションの設定時に、そのコネクションの識別情報を第1の下位コネクション識別情報として取得する第1の下位プロトコル処理手段、
をさらに備え、
前記第1のプロトコル手段または前記第1の下位プロトコル処理手段は、前記コネクション情報として、同一のコネクションに対応する前記第1のコネクション識別情報と前記第1の下位コネクション識別情報とを対応付けて前記記憶手段へ格納し、
前記第1の下位プロトコル処理手段は、受信したシグナリングメッセージから抽出した第1の下位プロトコルのコネクションの識別情報と前記コネクション情報とに基づいて、そのシグナリングメッセージを転送する、
ことを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載のパケット転送装置。
【請求項7】
前記第1の下位プロトコル処理手段は、自身のプロトコルによるコネクションの設定が完了するまでの間は、受信したパケットから前記コネクション情報として格納すべき情報を抽出し、抽出した情報を前記コネクション情報として格納する、
ことを特徴とする請求項6に記載のパケット転送装置。
【請求項8】
前記第1の下位プロトコルをSCTPプロトコルとする、
ことを特徴とする請求項6または7に記載のパケット転送装置。
【請求項9】
前記第2の通信装置との間で、前記第2のプロトコルより下位層のプロトコルである第2の下位プロトコルに基づいて送受信処理を行い、前記第2の下位プロトコルに基づくコネクションの設定時に、そのコネクションの識別情報を第2の下位コネクション識別情報として取得する第2の下位プロトコル処理手段、
をさらに備え、
前記第2のプロトコル処理手段または前記第2の下位プロトコル処理手段は、前記コネクション情報として、同一のコネクションに対応する前記第2のコネクション識別情報と前記第2の下位コネクション識別情報とを対応付けて前記記憶手段へ格納し、
前記第2の下位プロトコル処理手段は、受信したシグナリングメッセージから抽出した第2の下位プロトコルのコネクションの識別情報と前記コネクション情報とに基づいて、そのシグナリングメッセージを転送する、
ことを特徴とする請求項2〜8のいずれか1つに記載のパケット転送装置。
【請求項10】
前記第2の下位プロトコル処理手段は、自身のプロトコルによるコネクションの設定が完了するまでの間は、受信したパケットから前記コネクション情報として格納すべき情報を抽出し、抽出した情報を前記コネクション情報として格納する、
ことを特徴とする請求項9に記載のパケット転送装置。
【請求項11】
前記第2の下位プロトコルをSCTPプロトコルとする、
ことを特徴とする請求項9または10に記載のパケット転送装置。
【請求項12】
前記プロトコル処理手段は、コネクションを識別するためのプロトコルに依存しない論理識別情報と各プロトコルのコネクションの識別情報とを対応付けて前記コネクション情報として格納し、前記論理識別情報を用いて、受信したシグナリングメッセージから抽出したコネクションの識別情報に対応する論理識別情報を求め、前記論理識別情報に基づいて、同一コネクションに対応するコネクションの識別情報を求める、
ことを特徴とする請求項2〜11のいずれか1つに記載のパケット転送装置。
【請求項13】
HNB−GWとしての機能を有し、
前記第1の通信装置をHNBとし、
前記第2の通信装置をコアネットワーク内の装置とする、
ことを特徴とする請求項2〜12のいずれか1つに記載のパケット転送装置。
【請求項14】
HNBとしての機能を有し、
前記第1の通信装置を無線端末とし、
前記第2の通信装置をHNB−GWとする、
ことを特徴とする請求項2〜12のいずれか1つに記載のパケット転送装置。
【請求項15】
請求項1に記載のパケット転送装置と、
前記パケット装置に接続するHNBと、
前記パケット装置に接続するコアネットワークと、
を備え、
前記パケット転送装置は、前記HNBと前記コアネットワークとの間の、シグナリングプロトコルに基づいて生成されたシグナリングメッセージの転送を行なう、
ることを特徴とする通信システム。
【請求項16】
2つ以上の通信装置と接続し、前記通信装置から受信したシグナリングプロトコルに基づいて生成されたシグナリングメッセージを、他の前記通信装置へ転送するパケット転送装置におけるパケット転送方法であって、
前記通信装置との間で前記シグナリングプロトコルの下位層のプロトコルに基づいて送受信処理を行い、前記下位層のプロトコルに基づくコネクションの設定時に、そのコネクションの識別情報をコネクション情報として取得するプロトコル処理ステップと、
前記コネクション情報を保持する記憶ステップと、
受信したシグナリングメッセージから抽出した前記下位層のプロトコルのコネクションの識別情報と前記記憶ステップで保持した前記コネクション情報とに基づいて、そのシグナリングメッセージを転送する転送ステップと、
含むことを特徴とするパケット転送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−166432(P2011−166432A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26610(P2010−26610)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】