説明

パタ―ン形成方法

【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
この発明はパターン形成方法に関するもので、特に耐熱性金属のパターンを形成する際に用いて好適なパターン形成方法に関するものである。
(従来の技術)
近年の半導体装置、例えばシリコン(Si)を用いた半導体集積回路においては、W(タングステン)−Si(タングステンシリサイド)や、W等の耐熱性金属が、MOSトランジスタのゲート電極やオーミックの引き出し電極等として用いられており、さらに、GaAsを用いた半導体集積回路においては耐熱性ショットキー電極等として用いられている。また、W−N(タングステンナイトライド)やTa−N(タンタルナイトライド)等の耐熱性金属は温度特性の良い薄膜抵抗体として利用されている。
ところで、W等の耐熱性金属は、一般に沸点が5000℃以上であるため、抵抗加熱蒸着法や電子ビーム蒸着法のような成膜法によって薄膜化することが困難である。従って、W等の配線パターンを形成する際のW薄膜の形成においては、例えばArイオンをWターゲットに衝突させこのターゲットからスパッタされたタングステン粒子を試料上に堆積させるスパッタリング法が用いられている。以下、W−Siの配線パターンを形成する例により、スパッタリング法を用いた耐熱性金属のパターン形成方法の従来例の説明を行う。
その方法の一つとして通常のパターニング法がある。第4図(A)〜(C)はその工程図であり主な工程における試料の様子を断面図を以って示したものである。
この方法によれば、先ず、スパッタ法により下地11上にW−Si膜13を被着する(第4図(A))。次いで、フォトリソグラフィ技術によりこのW−Si膜上にレジストパターン15を形成した後、例えばSF6を用いたリアクティブイオンエッチング法(RIE法)によりW−Si膜のレジストパターンから露出している部分をエッチングする(第4図(B))。次いで、レジストパターン15を除去してW−Siの配線パターン13aを得る(第4図(C))。しかしこの方法を用いた場合、RIE法によるエッチング工程においてW−Siのエッチングが終了した際に下地11がRIE時のプラズマにさらされることになる。エッチングガスとしてSF6、NF3、CF4等を用いたRIE法は、周知の通り、シリコン基板、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜等をも容易にエッチングする。従って、W−Siが形成されている下地がシリコン基板の場合、W−Siのエッチングを適切なときに終了しないとこのシリコン基板もエッチングされてしまうという不都合が生じる。同様に下地上にシリコンやシリコン酸化膜のパターンがある場合にはこれらもエッチングされるため、パターン消滅、パターンの膜減りが生じる危険性があった。
一方、このような危険性なくパターン形成が出来る方法としてリフトオフ法がある。第5図(A)〜(C)は、レジストによるリフトオフ法でW−Siのパターンを形成する例を断面図を以って示した工程図である。この方法によれば、先ず、フォトリソグラフィ技術により下地21上に配線形成予定領域が開口されているレジストパターン23を形成する。なおこのレジストパターン23の開口部23aの断面形状は、後に行うリフトオフを容易にするため、逆テーパー形状とするのが良い(第5図(A))。
次いでスパッタ法によりレジストパターン23を含む下地21上にW−Si膜25を被着する(第5図(B))。スパッタ法は、一般に、被着金属の回り込みが良いためレジストパターン23の開口部23aの内壁側にもW−Siが被着するが、開口部23aの形状が逆テーパー状になっているので内壁の上部にはW−Siは被着しない(第5図(B))。
次いでこの試料をレジスト溶解液中に浸漬するとレジスト溶解液がレジストパターン23の開口部23aの内壁の、W−Siが被着していない部分(レジストの露出部分)からレジスト内に侵入してゆく。これによってリフトオフがなされW−Siのパターン25aを得ることが出来る(第5図(C))。
(発明が解決しようとする課題)
しかしながら、耐熱性金属のようなパターン形成材料の薄膜形成は、既に説明したような理由から、スパッタ法等で行わざるを得ず、このため、レジストパターンの開口部の側壁側にも薄膜は形成され易くなる。従って、レジストの露出部分が小さくなり易く、このためレジスト溶解液の侵入が容易でなくなるのでレジストの溶解に要する時間が長くなるという問題点があった。
さらに、パターン形成材料の膜厚を厚く材料するような場合は、レジストパターン開口部の側壁上部にもパターン形成材料が被着し易くなるためレジストの露出部分はさらに減少する傾向となり、場合によっては側壁レジストの露出部分が実質的になくなるようなことも起こり、リフトオフが非常にしづらくなってしまうという問題点があった。
また、レジストパターンの開口部の寸法は、開口部の口部については観測が容易であることから制御が容易であるが底部については口部ほどには制御しきれない。ところが第5図に示した方法であるとリフトオフ後に得られる配線パターンの寸法は、レジストパターンの開口部の底部の寸法によって決定されてしまうため、従って配線パターンの寸法精度が悪くなると共に配線パターンの縁部分の形状が歪み易いという問題点があった。
この発明はこのような点に鑑みなされたものであり、従ってこの発明の目的は、指向性の少ない薄膜形成方法によりパターン形成用材料を薄膜化しこの薄膜をリフトオフ法でパターンニングする際にリフトオフを容易に行うことが出来るパターン形成方法を提供することにある。
(課題を解決するための手段)
この目的の達成を図るため、この発明のパターン形成方法によれば、下地上に逆テーパ状の開口部を持つレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンを含む前記下地上側に指向性の少ない被着方法で第一被着膜を被着し、その後指向性の強い被着方法で第二被着膜を被着する工程と、該第二被着膜をマスクとして前記開口部内の第一被着膜をエッチング後、前記レジストパターンを溶解除去してリフトオフする工程とを含むことを特徴とする。
なおここで云う下地とは、例えばシリコン基板、GaAs基板等の半導体基板やセラミックス等の種々の基板、さらにこれら基板上に種々のパターンが既に形成されているような加工途中の基板等であることが出来る。
またレジストパターンは、それの開口部の側壁が下地に対しオーバーハング状になっているものが好ましい。
また、指向性の少ない被着方法として、例えば既に説明したようなスパッタ法、さらにCVD法等を挙げることが出来る。また、指向性の強い被着方法としては、例えば抵抗加熱蒸着法や電子ビーム蒸着法等を挙げることが出来る。
(作用)
この発明のパターン形成方法によれば、レジストパターンの開口部の側壁に第一被着膜が被着してしまっても、この被着部分は、その後の第二被着膜をマスクとするエッチング工程においてエッチングされる。ここで第一被着膜のレジスト開口部の側壁に被着した部分の膜厚のほうが底部に被着した部分の膜厚より薄いから、レジスト側壁に被着している第一被着膜は底部の第一被着膜が除去される前に充分にエッチングされる。従って、下地が露出される前にはレジスト溶解液が侵入するに充分なレジスト露出部が確保される。さらに、底部の第一被着膜の縁部もこのエッチングの際に整形されるようになる。
また、第一被着膜のエッチングをレジスト開口部側壁に被着した第一被着膜のエッチングのみにとどめずさらに進めてその後適切なときに停止するようにすれば、第一被着膜の第二被着膜から露出する部分が除去されるので、第二被着膜の寸法で規制される即ちレジストパターンの開口部の口部の寸法で規制されるパターンが得られる。
また、第一被着膜のエッチングの程度にかかわらず、エッチングマスクとして用いた第二被着膜をそのまま残存させるようにすれば、第一及び第二被着膜から成る積層パターンを容易に得ることが出来る。
(実施例)
以下、図面を参照し、またパターン形成材料を耐熱性金属であるW−Siとしてこれの配線パターンを形成する例により、この発明のパターン形成方法の実施例の説明を行う。なお、以下の説明に用いる各図はこの発明が理解できる程度に概略的に示してあるにすぎず、従って、各構成成分の寸法、形状等はこれら図示例のみに限定されるものでないことは理解されたい第一実施例 先ずこの発明の第一実施例の説明を行う。第1図(A)〜(D)はこの発明の第一実施例の説明に供する図であり、パターン形成工程中の主な工程における試料の様子を断面図を以って示しに工程図である。以下、各工程を順に説明する。
先ず、下地としての基板31上に通常のフォトリソグラフィ法によりレジストパターン33を形成する。このレジストパターン33は配線される予定領域にその配線パターンに対応した下地部分を露出する開口部33aを有している。そしてこの実施例の場合の開口部33aは、その口部の幅W1が底部の幅W2より狭くその断面形状が例えば逆テーパ状(オーバーハング状)となっている(第1図(A))。
次にこの開口部33aを有するレジストパターン33を含む下地31の上側に指向性の少ない被着方法例えばスパッタ法により、第一被着膜としてW−Si膜35を被着する(第1図(B))。
次に、このW−Si膜35に、下地31に対し垂直な方向から(蒸着源が基板に対し法線方向に在る状態)第二被着膜としての例えばAl(アルミニウム)膜37を、指向性の強い被着方法としての例えば電子ビーム加熱蒸着法により蒸着する(第1図(C))。
次に、前記蒸着で得た第二被着膜(Al)37をマスクとして前記第一被着膜(W−Si)35をエッチングするがこの実施例の場合このことを以下に説明するように行う。
エッチング手法はエッチングガスをSF6としたRIE法とする。そして、レジストパターン33の開口部33a内のW−Si膜35の、Al膜37から露出している部分を下地31が露出するところまでエッチングする。これにより、W−Si膜35のレジストパターンの開口部33aの側壁に被着した部分は除去されレジストの側壁が露出すると共に、開口部33aの底部に被着した部分は整形される(第1図(D))。その後この試料をレジスト溶解液中に浸漬し、レジスト溶解液でレジスト33を溶解してレジスト33上のW−Si膜35及びAl膜37をそれぞれリフトオフする。このリフトオフの際レジストパターンの開口部33aの側壁にはW−Siが被着していないため、レジスト溶解液はレジスト33に容易に侵入する。
次いでこの場合W−Si膜35上に残存しているAl膜37を例えば塩酸によって除去し、W−Siのパターン35aを得る(第1図(E))。
この第一実施例によれば、リフトオフを短時間で行えることは勿論のこと、RIE法による第一被着膜のエッチングにより第一被着膜のパターン寸法は第一被着膜37の寸法即ちレジストパターンの開口部33aの口部の幅W1と実質的に一致したものになるため、一般に制御しずらく上方からの観測も困難である開口部33aの底部でパターン寸法が決定される場合に比し、精度の良いパターンが得られるという効果が得られる。
なお、W−Si膜35をAl膜37をマスクとしてRIE法によりエッチングした後、Al膜37を塩酸により先ず除去し、その後にリフトオフを行った場合も、この発明の効果を得ることが出来ることは明らかである。また、第一被着膜をエッチングする手法はRIE法に限られるものではなくウエットエッチング等の他の好適な方法でも良い。
第二実施例 次にこの発明の第二実施例の説明を行う。この第二実施例は、第二被着膜をマスクとして第一被着膜をエッチングする工程におけるエッチング量が第一実施例とは異る場合の実施例である。第2図(A)及び(B)はその説明に供する図であり、第1図(D)及び(E)との相違点を試料の断面図を以って示した図である。
第一実施例と同様に、下地31上にレジストパターン33を形成し、次いで指向性の少ない被着法で第一被着膜(W−Si)35を形成し、次いで指向性の強い被着法で第二被着膜(Al)37を形成する。
次にSF6をエッチングガスとしたRIE法により、Al膜37をマスクとしてW−Si膜37をエッチングするが、この第二実施例の場合このエッチングを、レジストパターンの開口部33aの側壁に被着しているW−Si膜を除去出来る程度の条件で行う。このエッチング後の試料の様子は第2図2図(A)に示す如くなり、レジストパターンの開口部33aの底部にW−Siが残存してはいるものの、その側壁はレジスト溶解液が侵入するために充分な程度に露出されるようになる。その後、第一実施例と同様にリフトオフを行い、次いでW−Si膜上に残存しているAl膜を除去し、第2図(B)に示すようなW−Si膜のパターン35aを得る。
この第二実施例の場合もレジスト溶解液がレジストに容易に侵入するのでリフトオフを短時間で行うことができる。さらに、残存させたW−Si膜の縁部をある程度は整形できるので、その後に絶縁膜等を堆積させる際のステップカバレージの改善にも寄与する。またこの第二実施例の方法の場合は下地がRIE時のプラズマにさらされることが全くないので、下地がエッチングされたり、下層のパターンが膜減べりするような心配が全くないという効果が得られる。
第三実施例 次にこの発明の第三実施例の説明を行う。この第三実施例は、第一被着膜のマスクとして用いた第二被着膜を除去せずにそのまま配線として使用する場合の例である。第3図(A)及び(B)はその説明に供する図であり、第3図(A)は第一実施例に第三実施例を適用した例を示したものであり、第3図(B)は第二実施例に第三実施例を適用した例を示したものである。
いづれの場合もAl膜37と下地31との間にW−Si膜35が介在する多層構造のパターンが得られる。このような構造は、下地31が例えばSiや金(Au)等のようにAlと反応し易いものの場合Wがバリヤとなって相互拡散を防ぐ効果を示す。従って、例えば配線中の長い引き回しを行う部分等で配線抵抗の低減を目的としてAl膜を積層させる場合などにこの構造を用いれば好適である。また、このような構造は、レジスト開口部33a内の第二被着膜の除去が行わないだけで容易に自動的に得ることができるので、形成も容易である。
なお、上述の各実施例はパターン形成用材料を耐熱性金属とした例で説明しているが、この発明はこのような材料にのみ適用できるという訳ではない。指向性の少ない成膜方法でしか成膜ができず、然も、その材料の本質的な問題或いは工程上の都合上リフトオフでパターニングせざるを得ないようなパターン形成材料のパターニングにも、この発明を適用できることは明らかである。また、当然のことながら第二被着膜の材質は、第一被着膜の材質及びこれのエッチング方法に応じて適正な材料に変更できる。
(発明の効果)
上述した説明からも明らかなように、この発明のパターン形成方法によれば、第一被着膜(パターン形成用材料)の、レジストパターンの開口部の側壁に被着した部分を除去してからこのレジスト溶解によるリフトオフを行うので、W−Si等のような耐熱性金属のようにスパッタ法でしか有効な成膜が行えずこのため成膜時の指向性が少ないためにレジストパターンの開口部側壁に膜が被着しリフトオフが困難となっていたパターン形成用材料であっても、容易にリフトオフが行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
第1図(A)〜(E)は、この発明のパターン形成方法の第一実施例の説明に供する工程図、
第2図(A)及び(B)は、この発明のパターン形成方法の第二実施例の説明に供する図であり、その特徴部分のみ示した工程図、
第3図(A)及び(B)は、この発明のパターン形成方法の第三実施例の説明に供する図であり、その特徴部分の説明に供する図、
第4図(A)〜(C)及び第5図(A)〜(C)は、従来技術の説明に供する図である。
31……下地、33……レジストパターン
33a……レジストパターンの開口部
35……第一被着膜
35a……第一被着膜のパターン
37……第二被着膜
37a……第二被着膜のパターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】下地上に逆テーパ状の開口部を持つレジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンを含む前記下地上側に指向性の少ない被着方法で第一被着膜を被着し、その後指向性の強い被着方法で第二被着膜を被着する工程と、該第二被着膜をマスクとして前記開口部内の第一被着膜をエッチング後、前記レジストパターンを溶解除去してリフトオフする工程とを含むことを特徴とするパターン形成方法。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【第5図】
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【特許番号】第2503256号
【登録日】平成8年(1996)4月2日
【発行日】平成8年(1996)6月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭63−200358
【出願日】昭和63年(1988)8月11日
【公開番号】特開平2−49426
【公開日】平成2年(1990)2月19日
【出願人】(999999999)沖電気工業株式会社
【参考文献】
【文献】特開昭59−111325(JP,A)
【文献】特開昭59−114826(JP,A)
【文献】特開昭60−39870(JP,A)
【文献】特開昭60−147116(JP,A)
【文献】特開昭60−130862(JP,A)