説明

パチンコ遊技機の賞球回収装置

【課題】パチンコ遊技機において、賞球受皿から金属棒状体を差し込むような不正行為がなされても、この金属棒状体の進入を阻み、賞球検知センサーが作動されないようにして不正行為が完遂されないようにした賞球回収装置を提供する。
【解決手段】賞球受皿に放出された賞球を賞球誘導樋によりパチンコ遊技機の背面へ誘導し、この賞球を計数装置により計数するようにしたパチンコ遊技機であり、前記賞球誘導樋の賞球回収路に障壁段差が形成された賞球回収装置となるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ遊技機において貯留した賞球の回収装置に関するもので、賞球の回収にあたり、賞球を計数するための賞球検知センサーに対する不正行為を防止できるようにしてセキュリティ性を向上するようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
一般にパチンコ遊技機において遊技者が獲得した賞球は賞球容器に貯留され、これを賞球計数装置あるいは景品交換所へ運び、所望の景品と交換するようにしている。ところが、賞球の獲得量が大きい場合は、これに比例して重量が嵩み運搬作業に大きな労力を必要とするものであった。また、賞球が賞球容器に貯留されていると、この賞球はパチンコ遊技機の稼動対象とはならなくなることから、遊技場の賞球の総量が増加するという問題があった。
【0003】
そこで、遊技者が獲得した賞球をパチンコ遊技機の背面に誘導して排出するとともに、同時に賞球の数量を計数してその計数値を記録したカードを発券機から遊技者に提供し、遊技者がそのカードを景品交換所へ提出するようにしたシステムが提案されている。このようなシステムによれば、遊技者は重い賞球容器を運ぶ手間が省けるとともに、遊技場の賞球の総量を削減できるという利点が得られる。
【0004】
したがって、かかるシステムの場合は、賞球をパチンコ遊技機の背面に誘導する構成、およびパチンコ遊技機の背面で賞球を計数する機能が必要となる。これらの機能を果たす機構要素はパチンコ遊技機とは別途に配設されるものであり、通常、賞球受皿に開口して接続された樋状の誘導手段により賞球をパチンコ遊技機の背面へ導くようにしている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】実用新案登録第2596000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された構成では、賞球受皿に賞球を計数装置へ導く案内腕が接続されており、この案内腕の排出ノズルから落下する賞球を検知して計数するようにしている。賞球を検知する検知センサーは、金属である賞球を電気的に検知するものが採用されており、このような構成の場合、検知センサーを外部から意図的に作動し、計数値を歩進させる不正手段が可能となる。
【0006】
即ち、図9に示すように従来の賞球回収装置の賞球受皿100には、賞球Bが流入する開口部100aに賞球誘導樋101が接続され、この賞球誘導樋101の先端のノズル部101aから流入した賞球Bが賞球検知センサー102により検知され計数装置により計数される。このように構成される賞球誘導樋101は賞球Bが円滑に流れ、玉詰まりにより賞球Bの流れが停止してしまうなどの不具合が発生しないようにしなければならない。
【0007】
このため、賞球誘導樋101は賞球検知センサー102に至るまでの間が滑らかなスロープであることが望ましいことになる。したがって、このように構成される賞球回収装置では、賞球受皿100の開口部100aからノズル部101aまでに障害となるものが介在しないため、同図に示すように柔軟性のある金属棒状体W(先端に金属球を備えるものもある)が容易に差し込まれてしまうことがある。
【0008】
このように金属棒状体Wを差し込んだ不正行為者は、この金属棒状体Wの先端を賞球検知センサー102の部分で往復動させ、賞球Bが通過する仮想の状態を現出し、計数装置を作動して計数を歩進させることになる。かかる不正行為は、賞球受皿100から賞球検知センサー102まで円滑な流路としなければならないことによるもので、不正行為を効果的に防止できる手段が望まれているのが実情である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明は以下に述べる手段により上記課題を解決するようにした。即ち、請求項1記載の発明では、賞球受皿に放出された賞球を賞球誘導樋によりパチンコ遊技機の背面へ誘導し、この賞球を計数装置により計数するようにしたパチンコ遊技機であり、前記賞球誘導樋の内部の賞球回収路に障壁段差を形成した賞球回収装置となるようにする。
【0010】
請求項2記載の発明では、上記請求項1記載のパチンコ遊技機の賞球回収装置において、賞球誘導樋の賞球回収路は、賞球受皿から流入する賞球の導入口から流下方向へ向かう急峻な上り勾配の傾斜部および緩慢な下り勾配の傾斜部が連続して形成され、前記急峻な上り勾配の傾斜部が障壁段差となるようにする。
【0011】
請求項3記載の発明では、上記請求項1記載のパチンコ遊技機の賞球回収装置において、賞球誘導樋の賞球回収路の任意の位置に賞球を検知するための賞球検知センサーを配設する。
【0012】
請求項4記載の発明では、上記請求項1記載のパチンコ遊技機の賞球回収装置において、計数装置により計数した賞球の計数値を表示する表示手段を備える。
【0013】
請求項5記載の発明では、上記請求項1記載のパチンコ遊技機の賞球回収装置において、賞球受皿の前面に電飾手段を備える。
【0014】
請求項6記載の発明では、上記請求項1記載のパチンコ遊技機の賞球回収装置において、賞球誘導樋の導入口と賞球受皿の賞球排出口との間に、賞球回収路の流下方向へ賞球を付勢して給送する弾発機構を備える。
【0015】
請求項7記載の発明では、上記請求項6記載のパチンコ遊技機の賞球回収装置において、弾発機構は賞球受皿から流入する賞球を個々に付勢するようにする。
【0016】
請求項8記載の発明では、上記請求項6記載のパチンコ遊技機の賞球回収装置において、弾発機構が振り子状に転動する転動子で構成されているようにする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、賞球受皿から金属棒状体を差し込むような不正行為がなされても、賞球誘導樋の導入口と賞球受皿の賞球排出口との間に設けられた弾発機構および賞球誘導樋に形成された案内溝の急峻な上り勾配の傾斜部が障壁段部となり、さらに弾発機構が存在することにより、金属棒状体の進入が阻まれ、金属棒状体の先端が賞球検知センサーに達するのを阻止することができ、セキュリティ性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、賞球受皿から流入する賞球の導入口から流下方向へ向かう急峻な上り勾配の傾斜部および緩慢な下り勾配の傾斜部が連続して形成された賞球回収路を有する賞球誘導樋、および賞球受皿から流入する賞球を付勢して前記賞球回収路に給送する弾発機構を主体に構成するもので、以下、図に示すかかる構成の実施例を詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の賞球回収装置Aをパチンコ遊技機Pの下辺であって架台天板上に配設した状態を示すもので、パチンコ遊技機Pの側辺には玉貸機Cが配設される。賞球回収装置Aは、賞球受皿10および賞球受皿10に連設された賞球誘導樋20を備える。
【0020】
前記賞球受皿10には図2に示すように、中央に向かう下り勾配の傾斜面11が形成されており、底部には賞球誘導樋20へ向かう下り勾配の案内溝12が形成されている。したがって、パチンコ遊技機Pの賞球貯留部P1に貯留した賞球Bは、玉抜きレバーLBを操作することにより賞球受皿10に放出され、案内溝12に導かれて賞球誘導樋20へ流下する。
【0021】
前記賞球受皿10は架台天板上に配設するが、高さ調整脚10aを備えておくことにより、高さ方向の微調整が可能となる。また、前記傾斜面11に弾性シートを貼設しておくことにより、落下する賞球Bの飛散および騒音を低下することができる。さらに、賞球受皿10の開口部に、内側に反って賞球Bを内部に戻す逆止片10bを形成しておくことにより、賞球Bの外部への飛散を防止することができる。
【0022】
賞球誘導樋20は先端が円弧状に形成されており、外壁を除去した状態の図3に示すように、内部に2条の賞球回収路21が形成されている。この賞球回収路21は、賞球誘導樋20の導入口20aの底面付近から賞球の流下方向へ向かう急峻な上り勾配の傾斜部21aおよび緩慢な下り勾配の傾斜部21bが連続して形成されている。
【0023】
賞球誘導樋20の導出口20bは、玉貸機C内に配設される排出樋30に連設されており、賞球誘導樋20から流下した賞球Bは排出樋30の先端から排出され、回収されることになる。なお、賞球誘導樋20の導出口20bにはキーロック機構22を備え、玉貸機Cへの着脱が可能となるようにしている。また、賞球回収路21には賞球検知センサー40が配設されており、賞球回収路21を通過する賞球Bを検知し、その検知信号を計数装置に送出する。
【0024】
さらに、賞球誘導樋20の導入口20aと賞球受皿10の賞球排出口13との間には、賞球回収路21の流下方向へ賞球Bを付勢して給送する弾発機構50を設ける。この弾発機構50は、図4に示すように賞球受皿10から流下したし賞球Bの受止部51aと賞球Bに付勢力を与える弾発部51bが一体に形成された転動子51を主体に構成されている。
【0025】
前記転動子51は支軸52に固定されており、さらにこの支軸52はクランク板53に固定されている。そして、このクランク板の一方の端部には引張コイルバネ54が張設されており、他方の端部には電磁ソレノイド55のロッド55aの先端が固定されている。かかる構成により、電磁ソレノイド55に電流が流されると、そのロッド55aが牽引されて支軸52が回転して転動子51が転動し、電流の流れを遮断すると引張コイルバネ54の張力により転動子51は初期位置に復帰することになり、転動子51は振り子状に転動することになる。
【0026】
弾発機構50はこのように構成されていることから、図5に示すように流下した先位の賞球Bは、転動子51の受止部51aで一旦受け止められ、その後、電磁ソレノイド55に電流が流されて図6に示す状態に転動子51が転動すると、先位の賞球Bは転動子51の弾発部51bへ移動する。そして、この状態で電磁ソレノイド55への通電を停止して転動子51が初期位置に付着きすると、図4に示すごとく先位の賞球Bは弾発部51b上に位置し、後位の賞球Bは受止部51a上に位置して流下が規制された状態となる。
【0027】
かかる状態から再び電磁ソレノイド55が通電されると、これに伴って転動子51が転動することから図7に示すように先位の賞球Bは撥ねられるように付勢されて賞球回収路21の傾斜部21aを遡上し、賞球検知センサー40を作動して傾斜部21bを流下する。これと同時に後位の賞球Bは受止部51aが後退して支持状態が解除されることから、同図に示すように弾発部51b上に落下する。
【0028】
なお、前記弾発機構50には電磁ソレノイド55を採用する例を示したが、図8に示すようにステッピングモータ56に回転駆動されるカム部材57によりクランク板53を駆動してもよい。そして、弾発機構50の動作タイミングは、例えば、玉抜きレバーLBに応動するスイッチを設け、玉抜きレバーLBの操作に伴ってこのスイッチが作動したとき駆動が開始され、賞球検知センサー40からの検知信号が途絶えた段階で駆動を停止すればよく、弾発機構50を常時駆動する必要はない。
【0029】
また、賞球検知センサー40の検知信号を計数装置60が計数し、その計数値を賞球回収装置Aに設けた表示器CDにより積算表示することにより、遊技者が賞球Bの獲得量を把握することができる。さらに、賞球受皿10の前面に発光素子(LED)を配設し、賞球Bの計数が行われている間、この発光素子を点滅させることにより、遊技者に対し賞球の回収が確かに行われているという認識を与えるとともに電飾効果が得られる。
【0030】
このように賞球Bは転動子51の所定の動作周期で個々に弾発されるので確実な給送が可能となり、複雑な形態となる賞球回収路21においても玉詰まりの懸念を払拭することができる。また、賞球受皿10の賞球排出口13から弾発機構50を介して賞球回収路21へ至る経路が、一旦降下して上昇する複雑な流路となる。
【0031】
したがって、賞球排出口13から金属棒状体が差し込まれた場合においても、この複雑な流路を進入することになり、急峻な傾斜部21aが障壁段差となり金属棒状体を賞球検知センサー40に達するまで挿入することが困難となる。さらに本発明では、賞球Bの流路中に弾発機構50を設けたので、この機構要素に金属棒状体の先端が接触し、更に挿入が困難なものとなりセキュリティ性を確実なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の賞球回収装置をパチンコ遊技機に配設した状態を示す図である。
【図2】本発明の賞球回収装置の外観を示す図である。
【図3】本発明の賞球回収装置の構成の概要を示す図である。
【図4】本発明の賞球回収装置の要部の構成および動作態様を示す図である。
【図5】本発明の賞球回収装置の要部の構成および動作態様を示す図である。
【図6】本発明の賞球回収装置の要部の構成および動作態様を示す図である。
【図7】本発明の賞球回収装置の要部の構成および動作態様を示す図である。
【図8】本発明の賞球回収装置の弾発機構の他の例を示す図である。
【図9】従来の賞球回収装置の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0033】
A・・・・・・賞球回収装置
B・・・・・・賞球
C・・・・・・玉貸機
P・・・・・・パチンコ遊技機
10・・・・・賞球受皿
20・・・・・賞球誘導樋
20a・・・・導入口
20b・・・・導出口
21・・・・・賞球回収路
21a・・・・傾斜部
21b・・・・傾斜部
22・・・・・キーロック機構
30・・・・・排出樋
40・・・・・賞球検知センサー
50・・・・・弾発機構
51・・・・・転動子
51a・・・・受止部
51b・・・・弾発部
52・・・・・支軸
53・・・・・クランク板
54・・・・・引張コイルバネ
55・・・・・電磁ソレノイド
56・・・・・ステッピングモータ
60・・・・・計数装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
賞球受皿に放出された賞球を賞球誘導樋によりパチンコ遊技機の背面へ誘導し、この賞球を計数装置により計数するようにしたパチンコ遊技機であり、
前記賞球誘導樋の内部の賞球回収路に障壁段差が形成されていることを特徴とするパチンコ遊技機の賞球回収装置。
【請求項2】
前記賞球誘導樋の賞球回収路は、賞球受皿から流入する賞球の導入口から流下方向へ向かう急峻な上り勾配の傾斜部および緩慢な下り勾配の傾斜部が連続して形成され、前記急峻な上り勾配の傾斜部が障壁段差となるようにしたことを特徴とする請求項1記載のパチンコ遊技機の賞球回収装置。
【請求項3】
前記賞球誘導樋の賞球回収路の任意の位置に賞球を検知するための賞球検知センサーを配設したことを特徴とする請求項1記載のパチンコ遊技機の賞球回収装置。
【請求項4】
前記計数装置により計数した賞球の計数値を表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のパチンコ遊技機の賞球回収装置。
【請求項5】
前記賞球受皿の前面に電飾手段を備えたことを特徴とする請求項1記載のパチンコ遊技機の賞球回収装置。
【請求項6】
前記賞球誘導樋の導入口と賞球受皿の賞球排出口との間に、賞球回収路の流下方向へ賞球を付勢して給送する弾発機構を備えたことを特徴とする請求項1記載のパチンコ遊技機の賞球回収装置。
【請求項7】
前記弾発機構は賞球受皿から流入する賞球を個々に付勢するようにしたものであることを特徴とする請求項6記載のパチンコ遊技機の賞球回収装置。
【請求項8】
前記弾発機構が振り子状に転動する転動子により構成されていることを特徴とする請求項6記載のパチンコ遊技機の賞球回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−148360(P2009−148360A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327581(P2007−327581)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(000128946)マミヤ・オーピー株式会社 (122)
【Fターム(参考)】