説明

パーフッ素化ボロン酸をベースにした活性化担体

パーフッ素化ボロン酸とアルミニウムアルキルとをベースにした活性化担体と、エチレンおよびα−オレフィンの重合でのメタロセンおよびポストメタロセン錯体の活性化でのその使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタロセン錯体(metallocene complexes)の活性化、特に均質系触媒の活性化方法と、その製造方法と、そのオレフィン重合での使用とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
メタロセン錯体の存在下でのオレフィン重合には均質(homogeneous)触媒と不均質(hetrogeneous)触媒の両方がある。均質触媒系の重合では触媒、オレフィンモノマーおよび得られたポリマーが全て同じ液相中、一般には溶剤中に存在する。不均質重合、例えば懸濁重合や気相重合には多くの利点、特に、所定粒度分布を有する粒状のポリマーが得られるという利点がある。
【0003】
メタロセン触媒成分と活性化剤とから成る触媒系の存在下でエチレンとα−オレフィンとを(共)重合することは公知である。均質な活性化剤とよばれるものは単なるアルキルアルミニウム、例えばジエチルアルミニウムクロリドとCp2TiCl2からメチルアルミノキサン(MAO)単独またはその変性物、ペルフルオロアリールボラン、ペルフルオロアリールアラン、ペルフルオロアリールボレート、ペルフルオロアリールアルミネートとアルキル化剤、例えばトリイソブチルアルミニウムとの組み合わせまで広範囲である。このことは非特許文献1に記載されている。
【0004】
しかし、これらの活性化剤は高価、不安定であり、モルホロジー(形態)の悪いポリマーしかできないため、懸濁重合や気相重合の高い収率の生産プロセスでは使えない。上記触媒系すなわちメタロセン錯体と活性化剤とをこれらの重合プロセスで使用するためには、触媒系を固体担体で支持しなければならない。
【0005】
固体の担体上に支持する方法が最も代表的な方法である。MAOのような均質活性化剤は例えば非特許文献2〜5に記載されている。
【0006】
また、ペルフルオロアリールボレートやペルフルオロアリールアルミネートは特許文献1に記載されている。この触媒系で得られるポリマーは規則的な粒径を有し、見掛け密度が大きく、均質重合に比較して反応器の汚れが減る。
支持された均質活性化剤を使用したこれらの触媒系は対応する均質系よりも活性が劣り、従って、得られるポリマー特性は等級が低い。
【0007】
新世代の固体の活性化担体が開発されている。それらはスルフェート化されたジルコン粒子で、その例は非特許文献6および特許文献2〜8に記載されている。これらの活性化剤は全て賦活に関与する表面に酸のサイトを有する固体である。これらの酸のサイトはフッ素や塩素のようなハロゲン化物と組み合わせた金属である。金属はアルミニウム、チタン、ジルコニウムまたはニッケルから選択できる。均質系触媒でこれに対応するものは活性化反応が極めて悪いものである。
【0008】
弗化ジメチルアルミニウム(DMF)のような化合物をトリエチルアルミニウムと組み合わせて活性化剤として使用し、メタロセンファミリーの化合物を用いてプロピレンの立体特異性重合をした場合の生産性が悪いことは非特許文献に記載されている。従って、この化合物は極めて悪い活性化剤である。
【0009】
特許文献9に記載の三成分触媒反応系はメタロセンファミリーの化合物と、有機アルミニウムと、シリカアルミナとフッ素化試剤とから得られる活性化剤として用いられるフッ素化されたシリカアルミナとから成る。表面の酸のサイトはフッ素およびアルミニウムである。この発明の欠点は上記サイトの定義とフッ素化剤の使用とにある。
【0010】
特許文献10にも三成分系が記載されている。この三成分系はプレアルキル化(pre-alkylated)した(またはプレアルキル化しない)メタロセンファミリーの化合物と、アルキルアルミニウムまたはオリゴマー状のアルキルアルミノキサンの中から選択可能な共触媒と、下記の式で表される表面アルミニウムまたはマグネシウム酸サイトを有する固体の活性化担体とから成る:
【0011】
【化1】

【0012】
この活性化担体の製造方法は多数の段階を必要とし、フッ素化段階を別に必要とする。それに加えて、許容される活性を得るためにMAOのような活性化剤を使用する必要があるが、このMAOの使用は最終ポリマーのモルホロジーを悪くする。
【0013】
特許文献11〜13には周期律表の3〜10族の遷移金属、例えばランタニドおよびアクチニドをベースにした有機金属錯体を活性化させるための、式R2Al-O-B(R)-O-AlR2の化合物の使用が開示されている。これらの化合物をエチレンの均質重合で用いるのに成功している。これらの化合物はホウ素に対してアルミニウムの2つの均等物を用い、OH基は全く持たない。
【0014】
特許文献14にはAl/B比が2〜50のボロン酸とアルミニウムアルキルの反応生成物の担体上での含浸が開示されている。これらの活性化担体を、24バールの圧力下および70℃の温度で、メタロセン触媒成分を用いたエチレンと1−ブテンの共重合で試験している。
【0015】
特許文献15には、プロピレンの重合で用いられる活性化担体が開示されている。担体としては、N,N−ジメチルベンジルアミンの存在下でのボロン酸とアルミニウムアルキルの反応生成物が挙げられる。表面化学種はホウ酸のような作用があるアルミン酸塩である。
【0016】
従って、ポリマーのモルホロジーの等級を下げる原因となる均質系活性化剤、例えばメチルアルミノキサン(MAO)を使用しなくても十分活性が得られる活性化担体を開発するというニーズがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5643847号明細書
【特許文献2】McDaniel国際特許第WO-9960033号公報
【特許文献3】McDaniel国際特許第WO-0123433号公報
【特許文献4】McDaniel国際特許第WO-0123434号公報
【特許文献5】McDaniel国際特許第WO-0144309号公報
【特許文献6】McDaniel国際特許第WO-0149747号公報
【特許文献7】McDaniel米国特許第6548441号明細書
【特許文献8】Saudemontフランス特許第-A-2765225号公報
【特許文献9】国際特許出願第WO-0123433号公報
【特許文献10】フランス特許FR-A-2769245号公報
【特許文献11】米国特許出願第US−A−5,449,650号
【特許文献12】国際特許第WO99/18135号公報
【特許文献13】欧州特許出願第EP−A−1264847号公報
【特許文献14】国際特許第WO02/098930号公報
【特許文献15】米国特許出願第US−A−7,232,869号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Chen E.Chem Rev., 2000、100、1391
【非特許文献2】Chien (J. Polym. Sci., Part A Pol. Chem., 1991, 29, 1603.)
【非特許文献3】Collins (Macromolecules, 1992,25, 1780
【非特許文献4】Soga(Makromol. Chem., 1993, 194, 1745)
【非特許文献5】Kaminsky (Makromol.Chem.Rapid Commun., 1993, 14, 239)
【非特許文献6】Marks (J. Am. Chem. Soc., 1998, 120, 13533)
【非特許文献7】Zambelli (Macromolecules 1989,22, 2186)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、金属−OH基を有する化学種を製造することにある。
本発明の他の目的は、均質系の活性および生産性と同じ程度の極めて高い活性および生産性を有する活性担体触媒系を製造することにある。
本発明のさらに他の目的は、MAOのような均質系の活性化剤を必要としない活性触媒系を製造することにある
本発明のさらに他の目的は、優れたモルホロジーを有するポリマーを製造することにある。
上記の目的のいずれか一つは、本発明によって少なくとも一部が満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は下記の(a)〜(g)の段階から成ることを特徴とするメタロセン触媒成分またはモノサイト触媒成分のための活性化担体の製造方法を提供する:
(a)アルミニウムのアルキル化誘導体とパーフッ素化ボロン酸を化学量論量で−5℃以下の温度で溶剤中で反応させ、
(b)必要な場合には(a)段階の反応生成物を蒸発、乾燥およびトルエン中に溶解し、
(c)少なくとも一種の多孔質無機酸化物から成る粒子状担体を用意し、
(d)担体を加熱してデヒドロキシル化し、
(e)(a)段階または(b)段階のいずれか一方の反応生成物をデヒドロキシル化した担体に含浸し、
(f)(e)段階の担体を洗浄、乾燥し、
(g)活性化担体を回収する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】担体S4のモルホロジーを表す写真。
【図2】実施例8のエチレンと1−ヘキセンのコポリマーの分子量分布を表すグラフ。これは1−ヘキセン中の勾配組成を示す昇温溶離分別(TREF)で求めた。
【図3】活性化担体S4を用いて得られた実施例8のエチレンと1−ヘキセンのコポリマーのモルホロジーを表す写真。
【発明を実施するための形態】
【0022】
アルミニウムのアルキル化誘導体を1当量のパーフッ素化ボロン酸と反応させて得られる最終生成物は一般式Rn-Al-O-B(OH)-R'p の化合物である。例えば特許文献16、17に開示されているように、過剰なアルミニウム化合物が存在すると、主として式Rn-Al-O-BR"-O-Al-R'q. の化合物が生成する。さらに、この有機ホウ素化合物中ではホウ素は(OH)基と結合している点に注意する必要がある。
【特許文献16】ドイツ国特許第19744102号公報
【特許文献17】米国特許第2003/0008984号公報
【0023】
多孔質無機酸化物はシリカ、アルミナおよびこれらの混合物の中から選択するのが有利である。担体はシリカにするのが好ましい。
担体粒子は以下の特徴の少なくとも一つを有するのが好ましい:
7.5〜30nmの直径の気孔を有し、
1〜4cm3/gの気孔率を有し、
100〜1000m2/gの比表面積を有し、
1〜100μmの平均直径を有する。
【0024】
官能化前に担体を熱処理によってデヒドロキシル化し、その表面上にいくつかのOH基を得る。上記担体の単位nm2当り0.25〜10、好ましくは単位nm2当り0.5〜4のOH基を有するのが好ましい。熱処理は100〜1000℃の温度、好ましくは120〜800℃の温度、より好ましくは140〜700℃の温度で不活性ガス雰囲気下、例えば窒素またはアルゴン下に、大気圧下または約10-5バールの減圧下で少なくとも60分間加熱して行う。変形例では担体表面上のOH基の数を化学処理で制御できる。必要に応じてシリカに例えばNH4Clを混合して脱水を加速することもできる。
【0025】
種々の担体にすることができる。担体はその種類、その水加状態およびその保水性に応じて脱水処理する。担体に加えるこの脱水処理の程度は所望されるOH基の表面含有比率に応じて強くしたり弱くすることができる。
【0026】
アルミニウムのアルキル化誘導体は以下で表される:
AlRmnX'3-n
(ここで、Rm基は1〜12の炭素原子を含む置換または未置換のアルキル、例えばメチル、エチル、イソブチル、n−ヘキシルおよびn−オクチルであり、互いに同じでも異なっていてもよく、X'はハロゲンまたは水素であり、nは1〜3の整数である)
【0027】
アルミニウムのアルキル化誘導体は好ましくはアルミニウムアルキル、より好ましくはトリイソブチルアルミニウム(TiBA)またはトリエチルアルミニウム(TEA)またはフッ素化ジエチルアルミニウム(DEAF)であり、TEAが最も好ましい。
【0028】
パーフッ素化ボロン酸はペンタフルオロフェニルボロン酸であるのが好ましい。
【0029】
非特許文献8から、ボロン酸とアルミニウムアルキルとのアルカン中での低温での化学量論反応によってフリーのOH基を有する化学種が生成することが証明されている。反応を50℃の温度のトルエン中で行うと、得られる化学種はフリーのOH基を含まなくなり、Al−O−Bネットワークを有するかご構造を示す。
【非特許文献8】Hessen et al. (Chem. Comm., 2001, 1286 and Angew. Chem. Int. Ed. 2002, 41, 2166)
【0030】
本発明では、アルミニウムアルキルとペンタフルオロフェニルボロン酸を、−5℃以下、好ましくは−10℃以下の低温の溶剤中で、少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、化学量論で反応させる。
【0031】
溶剤はアルカン、例えばヘプタンであるのが好ましい。ボロン酸の一つの特徴は、非特許文献9に記載されているように、脱水によって水を遊離してボロキシンを生成するその能力である。
【非特許文献9】Dennis G. Hall in 「ボロン酸」、Wiley VCH, 2005.
【0032】
生成物の一部は凝縮してボロキシン型の無水物および水を生成するので、乾燥溶剤中でボロン酸を用いることは自明なことではない。すなわち、水は水を許容できるトルエンのような溶剤中で生じうる。本発明では溶剤として有機ホウ素−アルミニウム化合物の調製で一般に用いられているトルエンの代わりにアルカン、好ましくはヘプタンを用いる。トルエンを用いた場合には水が生成し、その水が反応媒体中に存在するアルキルアルミニウムと反応し、メタロセン触媒成分用の優れた活性化剤であるアルミノキサンが生成する。従って、溶剤としてトルエンを用いる従来の系で観察される活性は主として系中でアルミノキサンが生成されることに起因する。本発明では溶剤としてヘプタンを選択するのでアルミノキサンの生成はない。
【0033】
含浸段階(e)を室温(約25℃)でトルエン中で約1時間行う。
次いで、含浸した担体を例えばトルエン中で数回洗浄した後、動的減圧下で乾燥させる。
本発明の活性化担体は、メタロセン触媒成分およびポストメタロセン触媒成分の活性化に用いる。これらの触媒成分はこのような活性化剤の存在下でカチオン錯体を形成し易い。
上記活性カチオン錯体のカウンタアニオンはチーグラー−ナッタ触媒で使用されているのと同様な固体担体、好ましくは所定定義のよく管理された構造を有する固体担体で構成できる。重合を物理的に進展させるために、上記担体を官能化してメタロセン錯体を効果的に活性化するための表面酸サイトを作る。
【0034】
好ましいメタロセン触媒成分は一般式(I)で表される。
(CpRm)R"s(C'pR'n)MQ2 (I)
(ここで、
CpおよびC'pはそれぞれ独立して置換または未置換のシクロペンタジエニル、インデニルまたはフルオレニルから選択され、
RおよびR’はそれぞれ独立して1〜20の炭素原子を有するヒドロカルビルから選択され、
sはブリッジが存在しない場合はゼロで、ブリッジが存在する場合は1であり、
mおよびnは置換基の数を表す整数であり、
R’’は化合物に立体剛性を与える構造ブリッジであり、
Mは周期律表の4族金属で、Ti、ZrまたはHfから選択され、
Qはハロゲンまたは1〜6の炭素原子を有するハロゲンまたはアルキルである)。
【0035】
本発明の活性化担体は式(II)の束縛構造触媒成分を活性化することもできる:
(CpRm)R"s(YR'n)MQ2 (II)
(ここで、Yは周期律表の15族金属で、YはN、OまたはPであるのが好ましく、Nであるのがさらに好ましい)
【0036】
ブリッジが存在するのが好ましく、このブリッジはアルキレン基、例えばメチレン基(−CR2−)、エチレン基(−CH2CH2−)またはトリメチレン基(−CH2CH2CH2−)にすることができ、このアルキレン基は未置換か、少なくとも一つの炭化水素基、例えばイソプロピリデン基で置換されていてもよい。このブリッジはシリレン基(−SiH2−)でもよく、この基は例えば少なくとも一つの炭化水素基で置換されていてもよい。例としてはジアルキルシリレン基、例えばジメチルシリレン、ジアリールシリレン基、例えばジフェニルシリレンまたは、例えばアルキルアリールシリレン基、例えばメチルフェニルシリレンを挙げることができる。
Qは塩素またはメチルであるのが好ましい。
【0037】
メタロセン触媒は例えば下記化合物の中から選択できる:
ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド[(n-but-Cp)2ZrCl2]、
エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)ジルコニウムジクロライド[Et(THI)2ZrCl2]、
エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロライド[Et(Ind)2ZrCl2]、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド[iPr(Cp)(Flu)ZrCl2]、
イソプロピリデンビス(tert-ブチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド[iPr(t-Bu-Cp) 2ZrCl2]、
ジメチルシリル(3-tert-ブチル−シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド[Me2Si(3-t-Bu-Cp-Flu)ZrCl2]、
ジメチルシリル−ビスインデニル−ジルコニウムジクロライド[Me2Si(Ind)2ZrCl2]、
エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インデニル)ジメチルジルコニウム[Et(THI)2ZrMe2]、
エチレンビス(インデニル)ジメチルジルコニウム[Et(Ind)2ZrMe2]、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジメチルジルコニウム(iPr(Cp-Flu)ZrMe2)、
ジメチルシリル(3-tert-ブチルシクロペンタジエニル−フルオレニル)ジメチルジルコニウム[Me2Si(3-t-Bu-Cp-Flu)ZrMe2]、
ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル-tert-ブチルアミノ)ジルコニウムジクロライド[Me2Si(Me4-Cp-t-but-N)ZrCl2]、
ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル、tert-ブチルアミノ)ジメチルチタン[Me2Si(Me4-Cp-t-but-N)TiMe2]、
【0038】
エチレンビス(4,5,6,7-テトラヒドロ-1-インダニル)ジメチルチタン[Et(THI)2TiMe2]、
エチレンビス(インデニル)ジメチルチタン[Et(Ind)2TiMe2]、
イソプロピリデン(シクロペンタジエニル,フルオレニル)ジメチルチタン[iPr(Cp-Flu)TiMe2]、
ジメチルシリル(3-tert-ブチル,5−メチル−シクロペンタジエニル−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド[Me2Si(3-t-Bu,5-Me-Cp-Flu) ZrCl2]、
イソプロピリデン(3-tert-ブチル,5−メチル−シクロペンタジエニル-3,6-tert-ブチル-フルオレニル) ジルコニウムジクロライド [iPr(3-t-Bu,5-Me-Cp-3,6-t-Bu-Flu) ZrCl2];
ジメチルシリル(テトラメチルシクロペンタジエニル,tert-ブチルアミノ)チタンジクロライド[Me2Si(Me4-Cp-t-Bu-N)TiCl2]
【0039】
本発明の活性化担体はNi、Pdをベースにした二座錯体、例えばブルックハート型(Brookhart-type)のアルファ−ジイミンPdおよびNi錯体も活性化できる。
【0040】
本発明はさらに、下記(a)〜(g)の段階から成るエチレンおよびα−オレフィンの単独重合または共重合方法を開示する:
(a)溶剤および任意成分の捕捉剤/アルキル化剤を反応器に注入し、
(b)上記の活性化担体を反応器に注入し、
(c)触媒成分の溶液を反応器に注入し、
(d)必要な場合には、コモノマーを反応器に注入し、
(e)モノマーを反応器に注入し、60〜100℃の温度に加熱し、
(f)重合条件下に維持し、
(g)反応器を非活性化し、ポリマーを回収する。
【0041】
活性化担体の重量に対する触媒成分の重量比は0.3〜5/100である。
好ましいモノマーはエチレンまたはプロピレン、さらに好ましくはエチレンである。好ましいコモノマーはプロピレン、ブチレンまたはヘキセンである。
捕捉剤またはアルキル化剤は一般にアルミニウムアルキルである。触媒成分がハロゲン化錯体である場合は、アルキル化剤をジアルキル化錯体に変換する必要がある。好ましいアルキル化剤はトリイソブチルアルミニウム(TIBA)である。
【0042】
本発明の触媒系を用いて得られたポリマーの特徴は球状粒子の形の良好なモルホロジーにある。その重量平均分子量は200〜600kDaで、その分子量分布は4〜10である。分子量分布は多分散性指数(重量平均分子量Mwの数平均分子量Mnに対する比であるMw/Mn比)で示される。分子量はユニーバサル較正法で測定する。
【0043】
捕捉剤が存在する場合、それは一般にアルミニウムアルキル、例えばTiBAまたはTEA、好ましくはTiBAである。
【0044】
本発明の触媒系の特徴は優れた活性にあり、1時間当たり1モルの金属当たり少なくとも107グラムのポリマーが得られる。担体の量に対して金属の量を増加した時の活性は一定なままであるか、わずかに増加する(用いる担体による)。
【実施例】
【0045】
活性化担体の合成および重合反応に用いる溶剤は3オングストロームのモレキュラーシーブで乾燥した。調製は全てシュレンク(Schlenk)技術を用いた。コモノマー1−ヘキセンをCaH2上で乾燥した後、低温蒸留した。重合で用いるエチレンはAir Liquid社から購入し、3つの連続カラムに通して精製し、痕跡量の水および酸素を完全に除去した。
【0046】
活性化担体の合成
ボロン酸とアルミニウムアルキルとを化学量論的量でヘプタン中で混合し、−10℃の温度で2時間撹拌下に維持した。溶剤を動的減圧下で蒸発させ、得られた固体をトルエン中に再溶解した。シリカ(Crossfield ES70X)を下記昇温プログラムに従って約10-5バールの減圧下に加熱してデヒドロキシル化した:
30℃から100℃へ1時間で加熱、
100℃から130℃へ30分間で加熱、
130℃から450℃へ1時間で加熱、
450℃の温度で4時間維持。
ボロン酸とアルミニウムアルキルとの均一溶液をデヒドロキシル化シリカ担体上に1時間含浸した。次いで、含浸した担体を洗浄し、動的減圧下で乾燥させた。
【0047】
実施例1
活性化担体S1の合成
565mg(2.67mmol)のペンタフルオロフェニルボロン酸を−10℃の温度のヘプタン中に懸濁させた。2.9ml(2.67mmol)のTEAをヘプタン(0.92mol/l)中に調製した溶液を添加した。この混合物を−10℃の温度で2時間撹拌下に維持した。次いで、溶剤を動的減圧下に蒸発させた。得られた生成物をトルエンに溶解し、次いで、下記昇温プログラムに従って約10-5バールの減圧下に加熱してデヒドロキシル化済みの1.24gのシリカ上に含浸させた:
30℃から100℃に1時間で加熱、
100℃から130℃へ30分間で加熱、
130℃から450℃へ1時間で加熱、
450℃の温度で4時間維持。
含浸反応を室温で1時間行った。含浸した担体をトルエン中で3回洗浄し、動的減圧下で乾燥させた。
【0048】
実施例2a
活性化担体S1を用いたエチレンと1−ヘキセンの共重合
上記活性化担体S1をメタロセン触媒成分のイソプロピリデン ビスインデニルジルコニウムジクロライド(Et(Ind)2ZrCl2)と一緒に用いた。重合はエチレンに対して25mol%の1−ヘキセンの存在下に、80℃の温度、3バールのエチレンの圧力下で、300mlのヘプタン中で、捕捉剤として1mmol/lのTiBAを添加し、1時間実行した。mmetallocene/msupport比は0.4〜2%にした。結果は[表1]に示す。
【0049】
実施例2b
活性化担体S1上に含浸したメタロセン触媒成分を用いたエチレンと1−ヘキセンの共重合
300 mlのTiBA (1mmol/l) をヘプタンで調製して溶液を調製した。3.15 mg の活性化担体S1を50 mlのバルーンに導入した。ヘプタンで調製した2mlのTiBA溶液を活性化担体に添加した。メタロセン触媒成分Et(Ind)2ZrCl2 (1mmol/l) をトルエンに溶解し、活性化担体に添加した。担体は黄色になった。これは担体表面へのメタロセン化合物の完全なマイグレーションを示している。残りのTiBA溶液に担体混合物を添加し、反応媒体に2mlの1−ヘキセンを添加した。次いで、エチレンの重合を実施例2aと全く同様に実施した。mmetallocene/msupport比は0.4〜2%にした。結果は[表1]に示す。
【0050】
実施例3
活性化担体S2の合成
553.2mg(2.61mmol)のペンタフルオロフェニルボロン酸を−10℃の温度のヘプタン中に懸濁させた。1.98ml(2.61mmol)のTiBAをヘプタン(1.32mol/l)中に調製した溶液を添加した。この混合物を−10℃の温度で2時間撹拌下に維持し、次いで、溶剤を動的減圧下に除去した。得られた生成物をトルエンに溶解し、次いで、1.31gのデヒドロキシル化シリカ上に含浸させた。含浸反応を室温で1時間行った。含浸した担体をトルエン中で3回洗浄し、動的減圧下で乾燥させた。
【0051】
実施例4
活性化担体S2を用いたエチレンと1−ヘキセンの共重合
エチレンの重合を実施例2aと同様に実施した。結果は[表1]に示す。
【0052】
実施例5
活性化担体S3の合成
567.4mg(2.68mmol)のペンタフルオロフェニルボロン酸を−10℃の温度のヘプタンに懸濁させた。1.86ml(2.68mmol)のDEAFをアイソパー(1.44mol/l)中に調製した溶液を添加した。この混合物を−10℃の温度で2時間撹拌下に維持し、次いで、溶剤を動的減圧下に除去した。得られた生成物をトルエンに溶解し、次いで、1.11gのデヒドロキシル化シリカ上に含浸させた。含浸反応を室温で1時間行った。含浸した担体をトルエン中で3回洗浄し、動的減圧下で乾燥させた。
【0053】
実施例6
活性化担体S3を用いたエチレンと1−ヘキセンの共重合
エチレンの重合を実施例2aと同様に実施した。結果は[表1]に示す。
【0054】
実施例7
活性化担体S4の合成
565.3mg(2.67mmol)のペンタフルオロフェニルボロン酸を−10℃の温度のヘプタンに懸濁させた。3.76ml(2.67mmol)のTEAをヘプタン(0.71mol/l)中に調製した溶液を添加した。1.45gのデヒドロキシル化シリカをトルエンに懸濁させ、−10℃の温度にした。このシリカ懸濁液にボロン酸とTEAとの混合物を添加し、−10℃の温度で2時間撹拌下に維持した。次いで、含浸反応を撹拌下に室温で1時間行った。含浸した担体をトルエン中で3回洗浄し、動的減圧下で乾燥させた。担体S4のモルホロジーを[図1]に示す。
【0055】
実施例8
活性化担体S4を用いたエチレンと1−ヘキセンの共重合
エチレンと1−ヘキセンの共重合を実施例2aと同様に実施した。結果は[表1]に示す。得られたコポリマーの分子量分布を[図2]に、モルホロジーを[図3]に示す。
【0056】
実施例9
活性化担体S5の合成
528.2mg(2.49mmol)のペンタフルオロフェニルボロン酸を−10℃の温度のヘプタンに懸濁させた。2.50ml(2.49mmol)のTEAをヘプタン(0.99mol/l)中に調製した溶液を添加した。混合物を−10℃の温度で2時間撹拌下に維持した。混合物を沈降分離し、上澄みをカニューレを用いて回収した。得られた生成物をトルエンに溶解し、次いで、0.83gのデヒドロキシル化シリカ上に含浸させた。含浸反応を室温で1時間行った。含浸した担体をトルエン中で3回洗浄し、動的減圧下で乾燥させた。
【0057】
実施例10
活性化担体S5を用いたエチレンと1−ヘキセンの共重合
エチレンの重合を実施例2aと同様に実施した。結果は[表1]に示す。
【0058】
実施例11
活性化担体S6の合成
活性化担体S6を実施例3の担体S2と同じ方法に従って調製した。次いで、この担体を流動床に入れ、酸素下に450℃の温度で4時間焼成した。
【0059】
実施例12
活性化担体S6を用いたエチレンと1−ヘキセンの共重合
エチレンの重合を実施例2aと同様に実施した。結果は[表1]に示す。
【0060】
比較例
[特許文献14]の国際特許第WO02/098930号の方法に従って担体を合成する。ここでは、ボロン酸に対して、過剰なアルミニウムアルキルを本発明による1つの均等物の代わりに用いた。トリアルキルアルミニウムにボロン酸のごく一部を添加して、この混合物を室温で15分間撹拌下に維持し、次いで、デヒドロキシル化シリカ上に室温で1時間含浸させた。次いで、担体を動的減圧下で乾燥させた。次いで、エチレンと1−ヘキセンの共重合を本発明と同じ条件下で行った。
【0061】
比較例1
担体CS1の合成
13.3ml(13.2mmol)のTEAをヘプタン(0.99mol/l)で調製した溶液を2mlの乾燥トルエンに添加した。558mg(2.63mmol)のペンタフルオロフェニルボロン酸をトルエン/TEA溶液に徐々に添加し、得られた混合物を室温で15分間撹拌下に維持した。次いで、得られた生成物を0.94gのデヒドロキシル化シリカ上に含浸させた。含浸反応は室温で1時間行った。含浸した担体をトルエン中で3回洗浄し、動的減圧下で乾燥させた。
【0062】
比較例2
活性化担体CS1を用いたエチレンと1−ヘキセンの共重合
エチレンの重合を実施例2aと同様に実施した。結果は[表1]に示す。
【0063】
比較例3
担体CS2の合成
10.4ml(13.7mmol)のTiBAをヘプタン(1.32mol/l)で調製した溶液を2mlの乾燥トルエンに添加した。581.7mg(2.75mmol)のペンタフルオロフェニルボロン酸をトルエン/TiBA溶液に徐々に添加し、得られた混合物を室温で15分間撹拌下に維持した。次いで、得られた生成物を1.01gのデヒドロキシル化シリカ上に含浸させた。含浸反応は室温で1時間行った。含浸した担体をトルエン中で3回洗浄し、動的減圧下で乾燥させた。
【0064】
比較例4
活性化担体CS2を用いたエチレンと1−ヘキセンの共重合
エチレンと1−ヘキセンの共重合を実施例2aと同様に実施した。結果は[表1]に示す。
【0065】
比較例5
担体CS3の合成
1.2ml(1.45mmol)のTEAをヘプタン(1.21mol/l)で調製した溶液を2mlの乾燥トルエンに添加した。156.7mg(0.74mmol)のペンタフルオロフェニルボロン酸をトルエン/TEA溶液に徐々に添加し、得られた混合物を室温で15分間撹拌下に維持した。次いで、得られた生成物を1.64gのデヒドロキシル化シリカ上に含浸した。含浸反応は室温で1時間行った。含浸した担体をトルエン中で3回洗浄し、動的減圧下で乾燥させた。
【0066】
比較例6
活性化担体CS3を用いたエチレンと1−ヘキセンの共重合
エチレンと1−ヘキセンの共重合を実施例2aと同様に実施した。活性は全く見られなかった。
【0067】
【表1】

【0068】
*Act.Sup.mgは活性化担体の量(mg表記)を表す。
全ての重合は300mlのヘプタンを用い、3バールのエチレン下で、2mlの1−ヘキセン、1mmol/lのTiBA(捕捉剤)を用いて、80℃の温度で行った。
本発明で調製したポリマーは全て規則的な球状粒子として生成された。
【0069】
最高の活性は、一段階で調製した活性化担体S4で得られた。さらに、担体S4は極めて安定で且つ一ヶ月間貯蔵した後の試験でも同じ活性を再現した。
[表1]の結果から、mmetallocene/msupport比が増加すると活性が維持されるか、わずかに増加することがわかる。
【0070】
実施例13
エチレンのホモ重合を、活性化担体S1およびニッケルベースのブルックハート型錯体[(Ar)N=C(Me)-C(Me)=N(Ar)]NiBr2 (FPC1)(ここで、Arは2,6-Me2C6H3である)を用いて行った。この錯体は下記式で表される:
【化2】

【0071】
エチレンと1−ヘキセンの共重合を25℃の温度、3バールのエチレン下、300mlのヘプタン中で行った。ニッケル[Ni]の濃度を5μmol/lに、mcomplex/msupport比を0.7%に、1−ヘキセンの量を2mlにした。1mmol/lのTEAをアルキル化剤/捕捉剤として用いた。活性が1.36.106 gPE/molNI/hすなわち23 g/gのポリエチレンが生成された。ポリマーは特にモルホロジーを有していなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)〜(g)の段階を有することを特徴とする、メタロセン触媒成分またはモノサイト触媒成分を活性化する活性化担体の製造方法:
(a)アルミニウムのアルキル化誘導体とパーフッ素化ボロン酸を化学量論量で−5℃以下の温度でアルカンの中から選択される溶剤中で反応させ、
(b)必要に応じて(a)段階の反応生成物を蒸発、乾燥およびトルエン中に懸濁し、
(c)少なくとも一種の多孔質な無機酸化物から成る粒子状担体を用意し、
(d)上記担体を加熱してデヒドロキシル化し、
(e)(a)段階または(b)段階のいずれか一方の反応生成物をデヒドロキシル化した担体に含浸させ、
(f)(e)段階で得られた担体を洗浄、乾燥し、
(g)活性化担体を回収する。
【請求項2】
上記のアルミニウムのアルキル化誘導体がTiBA、TEAまたはDEAF、好ましくはTEAの中から選択されるアルミニウムアルキルである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
パーフッ素化ボロン酸がペンタフルオロフェニルボロン酸である請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
アルカン溶剤がヘプタンである請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
アルミニウムのアルキル化誘導体とパーフッ素化ボロン酸とを−10℃以下の温度で混合する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
含浸反応を室温で1時間行う請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法で得られる活性化担体。
【請求項8】
請求項7に記載の活性化担体と、メタロセン触媒成分またはブルックハート型(Brookhart-type)のアルファ−ジイミンPdおよびNi錯体とを含む活性触媒系。
【請求項9】
メタロセン触媒成分がビスインデニルまたはビステトラヒドロインデニルリガンドをベースにする請求項8に記載の活性触媒系。
【請求項10】
下記の(a)〜(g)の段階から成るエチレンおよびα−オレフィンの単独重合方法または共重合方法:
(a)溶剤および任意成分の捕捉剤を反応器に注入し、
(b)請求項7に記載の活性化担体を反応器に注入し、
(c)触媒成分の溶液を反応器に注入し、
(d)必要な場合には、コモノマーを反応器に注入し、
(e)モノマーを反応器に注入し、60〜100℃の温度に加熱し、
(f)重合条件下に維持し、
(g)反応器を非活性化し、ポリマーを回収する。
【請求項11】
モノマーがエチレンまたはプロピレン、好ましくはエチレンで、コモノマーがプロピレン、ブテンまたはヘキセンである請求項10に記載の方法。
【請求項12】
捕捉剤がTEAまたはTiBA、好ましくはTIBAである請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法で得られるポリマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−504670(P2012−504670A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529551(P2011−529551)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062744
【国際公開番号】WO2010/037808
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【出願人】(505252333)サントル・ナシヨナル・ド・ラ・ルシエルシユ・シヤンテイフイク (24)
【Fターム(参考)】