ヒアルロン酸の組成物および使用方法
本発明は、ドライアイおよび口腔乾燥症を含む乾燥を特徴とする疾患の処置のための組成物を提供する。組成物は、一般にヒアルロン酸およびポリリジンの抱合体を含む。これらの抱合体は冒された身体組織または表面に、グルタミン転移酵素を用いて、好ましくは内因性グルタミン転移酵素を用いて付着する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、ドライアイおよび口腔乾燥症を含むがこれらに限定されない、ヒアルロン酸の投与から便益を受ける疾患に関連する症状を軽減するための、組成物および方法に関する。
【0002】
背景技術
ドライアイは、角膜および結膜を含む眼の持続性の乾燥状態である。ドライアイは、異常なまたは適切でない涙の生成、およびムチン分泌の欠乏症(すなわち、乾性角結膜炎)から生じ得る。ドライアイ症状は、種々の潜在的な疾患、例えば涙腺(涙を生成する腺)を障害する自己免疫疾患、例えば関節リューマチ、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、および全身性硬化症およびサルコイドーシスなどの結果として現れることもある。ドライアイはまた、眼の手術、例えばレーシック(登録商標)手術などの後にも引き起こされることがある。ドライアイは米国において1300万人の人々に影響を及ぼしていると推定される。
【0003】
潜在する病理学に関わらず、ドライアイは一般に眼球前方の涙液膜の急激な破壊を伴い、暴露された眼球外表面の脱水を生じる。角膜および結膜を湿潤に保つには正常な涙の生成が必要であり、正常な涙の生成は角膜および結膜の潰瘍形成の予防および角膜の透明度の維持を助ける。さらに、涙は眼の表面のまぶたの動きを促進し(例えば、まばたきにおいて)、眼から異物を除去する。また涙は通常、眼の感染を予防するのに役立つリソチームを含む。
【0004】
ドライアイはまた、眼における中程度の不快感から重度の痛みまでの症状を伴うことがある。ドライアイが長期間続くと、視力低下(かすみ目)、ざらざらする、および/または燃えるような感覚、ならびにかゆみを引き起こし得る。この状態を処置せずに放置していると、さらに角膜潰瘍および/または瘢痕を生じることがある。
今日までのドライアイの最も一般的な処置は、人工涙液を用いることである。市場で入手可能な人工涙液製品は、Bion Tears(Alcon)、Lacriset(Merck)、Tears Naturale(Alcon)、Tears Naturale II(Alcon)を含む。しかし、人工涙液使用の欠点の1つは頻繁な適用が必要なことであり、これは特に、人工涙液製剤によりもたらされる苦痛の軽減が一般には長く続かないからである。
【0005】
口腔乾燥症(ドライマウス)は口腔乾燥症(xerostomia)として知られており、不適切な唾液の生成を特徴とする状態である。これは、ストレス(例えば恐れ)、唾液腺(すなわち、唾液を生成する腺)の感染、またはある種の薬物、例えば抗コリン薬、利尿薬、抗ヒスタミン薬、クロニジン、レボドパ、メチルドーパ、および三還系抗うつ薬などによって引き起こされる一時的な状態の場合もある。口腔乾燥症はまた、未知の病因による永久的な状態のこともある。口腔乾燥症はまた、シェーグレン症候群および全身性硬化症、ならびに口腔、首および頭部の放射線療法(例えば、口腔の癌の処置において)に関連する。口腔乾燥症は一般に嚥下および話すことにおいて困難や苦痛を生じ、味覚を障害する場合もある。場合によっては虫歯の原因ともなる。
【0006】
口腔乾燥症は現在、口内洗浄剤、局所的適用物、唾液の代替物、または無糖キャンディーなどの唾液分泌促進薬によって処置される。現在市場で入手可能な唾液分泌促進薬は、コリン作動性拮抗薬、例えばEvoxac(登録商標、セビメリンHCl、Daiichi Pharmaceutical Corp.)、およびSalagen(登録商標、ピロカルピンHCl、MGI Pharma., Inc.)などである。市場で入手可能な唾液置換物は、Moi-Stir、OrexおよびSalivartを含む。口腔乾燥症を軽減するためのもっとも一般的な処置は、人工の唾液を口の中にスプレーすることである。しかし人工涙液と同じく人工唾液も頻繁な適用が必要であり、冒された人々にとっては厄介である。
ヒアルロン酸はドライアイの処置に有用であることが以前に報告されている。しかし、かかる報告では遊離ヒアルロン酸の使用に焦点が置かれており、上記の人工涙液の処置と同様、継続して適用することが必要である。
【0007】
発明の概要
ドライアイおよび口腔乾燥症、およびヒアルロン酸投与から便益を受ける他の容態に対する持続的活性処置(prolonged activity treatment)は、継続的で頻繁な適用の必要性を克服するため望ましい。
本発明は、ドライアイ、口腔乾燥症、および乾燥に関連する他の容態に対する、継続的で頻繁な治療剤の適用の代替策を提供する。本発明は、ドライアイおよび口腔乾燥症を軽減するヒアルロン酸の有効性が、冒された身体の表面または組織にヒアルロン酸を共有結合的に付着することにより強化できるとの発見に部分的に基づく。かかる付着は、ドライアイおよび口腔乾燥症用の剤を繰り返し頻繁に適用する必要性を低減するが、これは、ヒアルロン酸が、瞬きや嚥下の過程においてより洗い流されにくくなるからである。本発明によれば、ヒアルロン酸は、冒された身体表面にグルタミン転移酵素の基質である連結分子を解して付着する。連結分子は、グルタミン転移酵素の基質であるアミノ基および/またはカルボキサミド基を含むことができる。グルタミン転移酵素は内因性グルタミン転移酵素が好ましいが、しかし外因性グルタミン転移酵素であってもよい。
【0008】
ここに提供される組成物は、しかし、ドライアイおよび口腔乾燥症における使用のみに限定されない。むしろ、乾燥を特徴とする別の組織の他の疾患における有用性も見出され、別の組織とは例えば、例えば膣、直腸、および鼻(その他に含まれるもの)などの粘膜組織ならびに、例えば皮膚、毛髪、爪および唇などの外表面を含む。さらにこの組成物は、他の身体組織、例えば内皮(特に大動脈の内皮)、および骨関節軟骨などにおいてさらに有用性が見出される。血管の内皮において用いる場合は、ヒアルロン酸組成物は長時間持続する予防的および/または治療的利点を提供し、前の報告にあるようにヒアルロン酸が血小板の凝固を阻害する。ヒアルロン酸はまた、関節炎の関節痛を低減することが前に報告されており、従って骨関節軟骨へのヒアルロン酸の付着は、関節炎を長時間軽減する。皮膚の乾燥によるしわにおいて用いられる場合は、ヒアルロン酸は局所的に適用され、非付着性ヒアルロン酸製剤の頻繁な適用の必要性を軽減することができる。本発明は、ヒアルロン酸と連結分子の抱合体の、前述の条件それぞれに調製された製剤を包含することを意図する。
【0009】
従って、本発明はその1側面において、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体、および遊離ヒアルロン酸を含み、遊離ヒアルロン酸と抱合体が少なくとも2のモル比で存在する組成物を提供する。
本発明の種々の態様は、本明細書中に開示される側面に等しく適用される。従って、これらの態様は1度列挙されるが、本明細書および特許請求の範囲に示されるように、種々の側面に適用されることが理解される。
【0010】
1つの態様において、連結分子は、少なくとも2個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも3個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも4個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも5個の脂肪族アミン、または少なくとも6個の脂肪族アミンを有する。他の態様において、連結分子は天然のポリリジンである。他の態様において、ポリリジンは、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、およびポリ−DL−リジンからなる群から選択される。他の態様において、連結分子はポリリジンの誘導体である。
【0011】
1つの態様において、連結分子は、少なくとも2個の連続したカルボキサミド、少なくとも3個の隣接したカルボキサミド、少なくとも4個の隣接したカルボキサミド、少なくとも5個のカルボキサミド、または少なくとも6個のカルボキサミドを有する。他の態様において、連結分子は天然のポリグルタミンである。他の態様において、連結分子は、ポリ−L−グルタミン、ポリ−D−グルタミン、およびポリ−DL−グルタミンからなる群から選択される。さらに他の態様において、連結分子はポリグルタミンの誘導体である。
【0012】
1つの態様において、ヒアルロン酸は天然のヒアルロン酸である。他の態様において、ヒアルロン酸は、ヒアルロン酸の薬学的に許容し得る塩、ヒアルロン酸エステル、および硫酸化ヒアルロン酸からなる群から選択されるヒアルロン酸の誘導体である。
モル比は、少なくとも2.0および少なくとも4.0からなる群から選択することができる。
他の態様において、組成物は、点眼剤、コンタクトレンズ用溶液、眼科用軟膏、アイパック、およびコンタクトレンズからなる群から選択される形態で提供される。さらに他の態様において、組成物は、舌下錠、うがい薬、練り歯磨き、キャンディ、および経口ジェルからなる群から選択される形態で提供される。
【0013】
1つの態様において、ヒアルロン酸は、少なくとも100,000の分子量を有する。重要な態様において、抱合体は、1.0より大きい正電荷に対する負電荷の比を有する。
他の態様において、組成物は、薬学的に許容し得る担体をさらに含む。重要な態様において、薬学的に許容し得る担体は、少なくとも280mOsmのモル浸透圧濃度(osmolarity)を有する。他の態様において、薬学的に許容し得る担体は、少なくとも6.5のpHを有する。
【0014】
薬学的に許容し得る担体は、眼科用保存剤を含むことができる。ある態様において、眼科用保存剤は、有機水銀剤、四級アンモニウム化合物、パラヒドロキシ安息香酸エステル、置換アルコールおよびフェノールからなる群から選択される。関連する態様において、有機水銀剤は、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、およびチメロサールからなる群から選択される。他の関連する態様において、四級アンモニウム化合物は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、およびポリクオタニウム−1(POLYQUAD)からなる群から選択される。
【0015】
さらに他の態様において、置換アルコールおよびフェノールは、クロロブタノール、およびクロロブタノール/フェニルエチルアルコールからなる群から選択される。眼科用保存剤は抗生物質であってもよい。
さらに他の態様において、組成物は、香味剤(flavoring agent)、着色剤および芳香剤(scenting agent)からなる群から選択される剤をさらに含む。他の態様において、組成物は、アルギニンまたはフッ化物をさらに含む。
1つの態様において、抱合体は、少なくとも90%、少なくとも95%、および少なくとも99%からなる群から選択される重量比を有する。他の態様において、連結分子は錯体を形成していない。
【0016】
他の側面において、本発明は、グルタミン転移酵素の基質である連結分子と共有結合的に連結しているヒアルロン酸を含み、前記連結分子が錯体を形成していない、医薬組成物を提供する。1つの態様において、組成物は、遊離ヒアルロン酸を含む。他の態様において、組成物は、点眼剤、コンタクトレンズ用溶液、眼科用軟膏、アイパック、およびコンタクトレンズからなる群から選択される形態で提供される。さらに他の態様において、組成物は、舌下錠、うがい薬、練り歯磨き、キャンディ、および経口ジェルからなる群から選択される形態で提供される。
【0017】
さらに他の側面において、本発明は、点眼瓶に入れた、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体を含む組成物を提供する。1つの態様において、組成物は、薬学的に許容し得る担体をさらに含む。他の態様において、取扱説明書が随意的に点眼瓶の外表面に提供される。1つの重要な態様において、組成物は、遊離ヒアルロン酸をさらに含む。他の態様において、薬学的に許容し得る担体は、少なくとも280mOsmのモル浸透圧濃度を有し、および/または少なくとも6.5のpHを有する。他の態様において、薬学的に許容し得る担体は、アルギニンまたはリゾチームを含む。1つの重要な態様において、連結分子は錯体を形成していない。
さらなる側面において、本発明は、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体ならびに、香味剤、着色剤および芳香剤からなる群から選択される剤を含む組成物を提供する。
【0018】
1つの態様において、香味剤は、マンニトール、サッカリンナトリウム、マグナスウィート(magnasweet)、ペパーミントの抽出物、葉の粉末または油;スペアミントの抽出物、葉の粉末または油;ウィンターグリーン油;バニラ抽出物;パセリ;オレガノ油;ベイリーフ油;チョウジ油;セージ油;サッサフラス油;レモン油;オレンジ油;アニス油;ベンズアルデヒド;アーモンド油;ショウノウ;ニオイヒバ油;マジョラム油;シトロネラ油;ラベンダー油;カラシ油;パイン油;まつ葉油;ローズマリー油;タイム油;シナモンリーフ油;メントール;カルボン;アネトール;オイゲノール;サリチル酸メチル;リモネン;シメン;n−デシルアルコール;シトロネロール;α−テルピネオール;酢酸メチル;シトロネリルアセテート;メチルオイゲノール;シネオール;リナロール;オイクトル(eyktl)リナロール;バニリン;チモール;ペリラ油;冬緑油;ユーカリ油;カフェイン;酒石クリーム、乳酸、リンゴ酸、グルタミン酸第一ナトリウム、亜硝酸塩、ソルビトール、アスパルテーム、アセスルファム、デキストロース、レブロース、シクラミン酸ナトリウム、ステビオシド、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、グリシルリジン、ペリルラルチン(perillartine)、タウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、およびp−メトキシシンナムアルデヒドからなる群から選択される。
【0019】
他の態様において、着色剤は、FD&C青色#1、FD&C黄色#5、FD&C黄色#10、FD&C赤色#3、FD&C赤色#40、カラメルカラー(caramel color)またはカラメルパウダー(caramel powder)(#05439)、チョコレートシェード(chocolate shade)(#05349)、グリーンレイクブレンド(green lake blend)(#09236)、コウェット二酸化チタン(kowet titanium dioxide)(#03970)、イエローリキッドカラー(yellow liquid color)(#00403)、および亜硝酸塩からなる群から選択される。
さらに他の態様において、芳香剤は、草花の抽出物、ハーブ抽出物、木の花の抽出物、植物抽出物、および人工の芳香剤からなる群から選択される。
重要な態様において、組成物は、経口または眼への投与用に製剤化される。組成物は、舌下錠、うがい薬、練り歯磨き、経口ジェルおよびキャンディとして製剤化することができる。組成物は、アルギニンまたはフッ化物をさらに含んでもよい。
【0020】
組成物はさらに、少なくとも6.5のpHおよび/または280mOsmより高いモル浸透圧濃度を随意的に有する、薬学的に許容し得る担体をさらに含むことができる。
他の側面において、本発明は、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体を、フッ化物を含む担体内において含む組成物を提供する。1つの態様において、担体は、薬学的に許容し得る担体である。他の態様において、薬学的に許容し得る担体は、少なくとも6.5のpHおよび/または280mOsmより高いモル浸透圧濃度を有する。1つの態様において、抱合体は、舌下錠、うがい薬、練り歯磨き、キャンディおよび経口ジェルからなる群から選択される形態で提供される。
【0021】
さらに他の側面において、本発明は、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体を舌下錠の形態において含む組成物を提供する。関連する態様において、舌下の形態はさらに、サッカリン、アスパルテーム、ソルビトール、アセスルファム、デキストロース、レブロース、シクラミン酸ナトリウム、ステビオシド、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、グリシルリジン、ペリルラルチン、タウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、およびp−メトキシシンナムアルデヒドからなる群から選択される甘味料を含む。他の態様において、舌下の形態はビタミンまたはフッ化物を含む。
【0022】
さらに他の側面において、本発明は、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体、および有効量の遊離ヒアルロン酸を含み、遊離ヒアルロン酸と抱合体が少なくとも2のモル比で存在する、医薬組成物を提供する。
他の側面において本発明は、上述の任意の組成物の有効量をその必要のある対象に投与することを含む、乾燥を特徴とする疾患の処置または予防のための方法を提供する。
1つの態様において、疾患はドライアイである。関連する態様において、ドライアイは、非進行性結膜瘢痕形成(スティーブンス−ジョンソン症候群)、シェーグレン症候群、トラコーマ、および瘢痕性類天疱瘡からなる群から選択される疾患に関連する。他の態様において、疾患は口腔乾燥症である。さらに他の疾患において、対象は、ドライアイ症状を誘発する外科的処置、たとえば視力矯正手術(corrective eye surgery)(例えば、レーシック(登録商標)手術)を受けたか、またはこれから受ける者である。
【0023】
他の側面において、本発明は、眼の乾燥を有するかまたはそのリスクを有する対象の眼に、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体の有効量を投与することを含む、対象を処置するための方法を提供する。1つの態様において、抱合体は、点眼剤、コンタクトレンズ用溶液、眼科用軟膏、アイパック、およびコンタクトレンズからなる群から選択される形態で提供される。
他の側面において、本発明は、口腔の乾燥を有するかまたはそのリスクを有する対象の口腔に、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体の有効量を投与することを含む、対象を処置する方法を提供する。1つの態様において、抱合体は、舌下錠、うがい薬、練り歯磨き、キャンディ、および経口ジェルからなる群から選択される形態で提供される。
【0024】
さらなる側面において、本発明は、関節の不快感を有するかまたはそのリスクを有する対象の関節に、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体の有効量を投与することを含む、対象を処置する方法を提供する。
さらに他の側面において、本発明は、過剰な血液凝固を有するかまたはそのリスクを有するか、または血液凝固のリスクが増加した対象の血管に、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体の有効量を投与することを含む、対象を処置する方法を提供する。
【0025】
さらに他の側面において、本発明は、しわを有するかまたはそのリスクを有する対象の皮膚に、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体の有効量を投与することを含む、対象を処置する方法を提供する。
上記の組成物および抱合体は、本明細書に提供される方法に好適である。
以下の態様は上記の方法に等しく適用される。1つの態様において、有効量は1日0.05μg/kg未満である。
これらおよび他の側面および態様について、本明細書にさらに詳細に記載する。
【0026】
発明の詳細な説明
本発明は、乾燥を特徴とする障害を含む、ヒアルロン酸の存在から便益を受ける疾患の処置のための新規な組成物および方法を提供する。乾燥を特徴とする障害は、それぞれ不十分な涙液および唾液の生成から生じ得るドライアイおよび口腔乾燥症を含む。ある態様において本発明は、ヒアルロン酸を、水分子を引きつけ保持するその機能を通して、冒された粘膜または外側の組織を湿潤させることのできる活性剤として用いる。本明細書中にさらに詳細に記述するように、ヒアルロン酸は、ドライアイを経験する対象者の角膜および結膜を湿潤させるために用いられて成功していることが報告されている。
【0027】
本発明は、ヒアルロン酸が、粘膜表面(例えば角膜または口腔)、内皮表面、または外表面(例えば毛髪または爪)などの冒された表面に、グルタミン転移酵素が介在する反応を用いて付着できるとの発見に部分的に基づく。グルタミン転移酵素は、特定のペプチド結合γグルタミニル残基と、アミンドナー基質として作用するペプチド結合リジンまたはポリアミンの種々の1級アミノ基との間の共有架橋反応を介在する、カルシウム依存酵素のファミリーである(Davies, et al, Adv. Exp. Med. Biol. 250, 391-401, 1988)。哺乳類においては、少なくとも5種類の酵素的に活性なグルタミン転移酵素が同定され、クローニングされて配列決定されている。本発明は、例えばグルタミンのカルボキサミド基と、例えばリジンのアミノ基との間の共有結合をもたらす機能を有する、任意のすべてのグルタミン転移酵素およびそれらの酵素誘導体を包含することを意図している。好ましい態様においては、抱合体の身体組織への付着をもたらすグルタミン転移酵素は内因性グルタミン転移酵素であるが、ある態様においては、外因性グルタミン転移酵素もまた用いることができる。
【0028】
ヒアルロン酸は、グルタミン転移酵素と反応するアミノ基またはカルボキサミド基を含まないために、本質的にはグルタミン転移酵素の基質ではない。しかし、ヒアルロン酸は、グルタミン転移酵素の反応に鋭敏に反応するよう、本発明に従って修飾することができる。これは例えば、カルボキサミドまたはアミノ側鎖基(単数または複数)をヒアルロン酸の適切な反応基に付加することにより、実現できる(すなわち、「修飾」ヒアルロン酸)。これはまた、グルタミン、リジン、またはグルタミンおよびリジンの両方を、ヒアルロン酸と共有結合的に結合し、グルタミン転移酵素の基質である抱合体を形成することによっても実現できる。最も好ましい方法は、ポリグルタミン、ポリリジン、インボルクリン(グルタミン転移酵素の天然の基質)またはインボルクリンの断片などの連結分子をヒアルロン酸に結合し、適切な抱合体を形成することである。次に、角膜上皮または口腔上皮などの上皮組織に存在する内因性グルタミン転移酵素は、連結分子(ヒアルロン酸が付着したもの)が眼または口腔内のアミノまたはカルボキサミド基質に共有結合的に付着するのを触媒することが可能となる。
【0029】
天然のヒアルロン酸は、D−グルクロン酸およびN−アセチルD−グルコサミンの二糖類の反復モノマーの直鎖ポリマーである。本明細書で用いられる場合、用語「ヒアルロン酸」は、明示的に他の記載がない限り、天然のヒアルロン酸および、塩およびエステルを含むその誘導体(すなわち類似体)を含むが、これらに限定されない。ヒアルロン酸の塩は、薬学的に許容し得る塩、例えば、ナトリウム塩および4級アンモニウム塩を含む。ヒアルロン酸誘導体は、エステル化などの他の化学反応により修飾されたヒアルロン酸を含み、従ってヒアルロン酸塩エステル、および硫酸化ヒアルロン酸(米国特許第6,339,074B1号に記載されたもの)を含む。ヒアルロン酸誘導体の1例は、ヒランである。ヒアルロン酸誘導体はまた、米国特許第4,851,521号、第4,965,353号および第5,202,431号に記載の、合成または半合成変種、例えばヒアルロン酸のエステルならびに、脂肪族、アラリファティック、ヘテロ環式、および脂環式アルコール(例えば、ヒアルロン酸のベンジルまたはエチルエステル)を含む。
【0030】
本発明の組成物はさらに、抱合体の形態に加えて、遊離形態のヒアルロン酸を含むことができる。遊離ヒアルロン酸の使用は以前に報告されている。ヒアルロン酸は、眼または他の冒された表面に、グルタミン転移酵素が介在する結合を介して付着することができることが現在発見されている。かかる付着により、ヒアルロン酸が眼(または他の冒された表面)に存在する時間を延長し、従って、かかる表面にヒアルロン酸を再度適用する必要性を低減または完全に消去する。従って、本組成物の治療的利点は、一旦身体組織に適用されるとその組織へ共有結合的に付着する、抱合体ヒアルロン酸の存在から主として誘発されることが理解される。この利点は、本組成物に存在することができる遊離ヒアルロン酸の場合には生ぜず、なぜならば遊離ヒアルロン酸は、限定的な治療的利点のみを有することが、以前より示されているからである。
【0031】
本明細書で用いられる場合、用語「抱合体」は、連結分子がヒアルロン酸に直接および間接に付着したもの両方を含む。間接付着は一般に、スペーサ(すなわち、リンカー)が連結分子とヒアルロン酸との間に存在することを意味する。好適なスペーサは本明細書に記載されている。
任意の特定の理論または機構に縛られることを意図するものではないが、ヒアルロン酸は、乾燥を特徴とする疾患、例えば、これらに限定されないがドライアイ、口腔乾燥症および膣乾燥症などの処置に有用であり、なぜならば、ヒアルロン酸は保湿剤(moisturizer)としておよび/または湿潤剤(humectant)として作用する機能を有するからである。本明細書で用いられる場合、保湿剤は、膜を形成しそれによって水分子を捕らえることができ、その蒸発を防いだり蒸発の程度を限定する剤である。本明細書で用いられる場合、湿潤剤は、組織、表面または他の領域の含水量を増加する剤である。ヒアルロン酸は一般に中性のpHにおいて負に荷電されており、親水性のヒドロキシ基を有し、水分子を引き付けて保持することができる。ヒアルロン酸は膜を形成し、水分子を引き付けて保持することができる。従ってヒアルロン酸は、保湿剤および湿潤剤の両方として機能することができる。
【0032】
ヒアルロン酸はまた血小板の凝固を阻害することが報告されており、この機構が、血管内投与製剤に関連する本発明の態様において活用されている。
ヒアルロン酸は市場を通して入手可能であり、種々のブランド名、例えばHealon、Hyalastine、Hyalectin、Hyloran(ヒアルロン酸ナトリウム)、およびHyaloftil(高分子ヒアルロン酸)を含むブランド名で販売されている。代替的に、ヒアルロン酸は、動物源(例えば雄鶏の鶏冠から市場でHyalformとして販売されている)や、in vitroでの発酵(例えば細菌による発酵、市場でRestylaneとして販売されている)から合成または精製することができ、これらは特に米国特許第
【表1】
号に記載されている。
【0033】
用いるヒアルロン酸の長さは、冒された身体の表面または組織に潤いを与えるのに十分な長さであれば、本発明には重要ではない。そのためには、ある態様においては、短いヒアルロン酸の鎖(strand)(すなわち、分子量が2000未満のもの)より、長いヒアルロン酸の鎖(すなわち、分子量が100,000より大のもの)の方が、連結分子に数個のかかる短い鎖が付着しているのでなければより好ましい。抱合体が1個の連結分子および1個のヒアルロン酸の鎖のみを包含する場合、少なくとも保持できる水分子の数を最大にするためにも、ヒアルロン酸の鎖が長いのが好ましい。低および高分子量のヒアルロン酸を生成し単離する方法は既知であり、米国特許第
【表2】
号などに報告されている。
【0034】
ヒアルロン酸の鎖の長さは、二糖類単位(各単位は約401ダルトンの分子量を有する)の数、または鎖の分子量で表される。例えば、分子量200,000のヒアルロン酸の鎖は、498個の二糖類モノマー単位で構成される。重要な態様においては、ヒアルロン酸の鎖は、
【表3】
分子量を有する。さらに他の態様においては、ヒアルロン酸はより大きな分子量すなわち、
【表4】
分子量を有する。ある好ましい態様においては、ヒアルロン酸は、
【表5】
の分子量を有する。
【0035】
ある態様においては、本発明の抱合体は、遊離ヒアルロン酸と組み合わせて対象に提供される。本明細書で用いられる場合、「遊離」ヒアルロン酸は連結分子に抱合されていない。本発明は、治療結果を達成するために、ヒアルロン酸が特定の受容体(例えばCD44)に結合することに頼っていない。むしろ、冒された部位へのヒアルロン酸の局在が、指向性投与およびグルタミン転移酵素が介在する結合を通して一般に制御される。ヒアルロン酸の受容体への結合は、本発明の方法においては必要ではない。遊離ヒアルロン酸の存在は問題とはならず、なぜならば、同族受容体への結合のために抱合されたヒアルロン酸と争うことがないため、抱合体の有効性を低下させないからである。さらに、本発明の抱合体は、十分なレベルの内因性グルタミン転移酵素およびグルタミン転移酵素の基質を有していれば、それがヒアルロン酸受容体を発現するかどうかに関わらず、どのような表面または組織にも付着するからである。
【0036】
ある態様においては、天然のヒアルロン酸より低い親和性でヒアルロン酸受容体に結合する、ヒアルロン酸誘導体が用いられる(遊離形態および/または抱合体の形態で)。ある態様においては、それらの親和性は、天然のヒアルロン酸の結合親和性の2倍未満、5倍未満、10倍未満、20倍未満、50倍未満、または100倍未満である。
【0037】
ある態様においては、組成物中の遊離ヒアルロン酸の抱合ヒアルロン酸に対するモル比は、
【表6】
である。ある特定の態様においては、遊離ヒアルロン酸の抱合ヒアルロン酸に対するモル比は、1より大、好ましくは1.5より大、そしてより好ましくは2より大である。本明細書で用いられる場合、遊離ヒアルロン酸の抱合ヒアルロン酸に対するモル比は、連結分子に抱合されていないヒアルロン酸のモル数(全MW変種を含む)の、連結分子に抱合されたヒアルロン酸のモル数(同一または異なるMW)に対する比率である。従って、ある態様においては、遊離ヒアルロン酸の量は、抱合されたヒアルロン酸と競合してヒアルロン酸受容体へ結合するのに十分である。
【0038】
本発明の連結分子は、グルタミン転移酵素の基質である。従って、連結分子は脂肪族アミンまたはカルボキサミドを有するが、ただし両方は有さないのが好ましい。好ましい連結分子は、グルタミン転移酵素の基質である複数の反応性カルボキサミドおよび/または脂肪族アミンを担持するポリマーである。グルタミン転移酵素の基質であるカルボキサミドを含む化合物は周知であり、グルタミンが含まれる。グルタミン転移酵素の基質である脂肪族アミンもまた周知であり、例えば、米国特許第5,490,980号に例示されており、この特許の開示は参照として本明細書に組み込まれる。しかしながら単一の脂肪族アミン部分を表している‘980特許と異なり、本発明は1側面において、複数の脂肪族アミンを用いることに関連する。脂肪族アミン(または複数の脂肪族アミン)は、隣接していてもよく、またはそれらは、好ましくは分枝状または非分枝状ポリマーの長さに沿って個別の間隔をあけられてもよい。ある態様においては、反応性部分間の間隔は、抱合体が特定の身体組織に付着するために重要である。
【0039】
1つの態様は、複数単位を有するポリマーである連結分子に関連し、ここで各単位は、グルタミン転移酵素の基質である脂肪族アミンを担持する。ポリマーはホモポリマーまたはヘテロポリマーであってよい。連結分子との関連で本明細書で用いられる場合、グルタミン転移酵素のポリ脂肪族アミンの基質は、連結分子の主鎖に沿って互いに個別の間隔をあけて、1個または2個以上の主鎖の分子により分離されている、少なくとも3個の脂肪族アミンを有する連結分子である。これは例えばリジンが豊富なポリマーにおいてもっとも簡単に描写でき、そこではポリマーの分離した単位が、各々はそれぞれがグルタミン転移酵素の基質である脂肪族アミンを担持する。連結分子それ自体は、隣接したリジンのポリマーであってよく、好ましくは、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、および少なくとも5個もしくは6個以上の隣接したリジンのポリマーである。各々が脂肪族アミンを担持する隣接した単位のポリマーが好ましい。ある態様においては、連結分子は2個の隣接したリジン残基を有することができ、好ましくは、これらは連結分子のどちらかの終端に位置する。
【0040】
同様に、他の重要な連結分子は、各単位がグルタミン転移酵素反応性のカルボキサミド基を担持する複数の単位を有するポリマーである。ポリマーはホモポリマーまたはヘテロポリマーであってよい。グルタミン転移酵素のポリカルボキサミドの基質は、連結分子の主鎖に沿って互いに個別の間隔をあけて、1個または2個以上の主鎖の分子により分離されている、少なくとも2個のカルボキサミドを有する連結分子である。連結分子は隣接したカルボキサミドのポリマーであってよく、好ましくは、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、または少なくとも5個もしくは6個以上の隣接したカルボキサミドのポリマーである。ある重要な態様においては、隣接するカルボキサミドは、連結分子のどちらかの終端に位置する。
【0041】
最も好ましい連結分子は、グルタミンまたはリジン、またはグルタミンおよびリジンなどの、カルボキサミド部分または脂肪族アミン部分の豊富なポリマーである。カルボキサミドの豊富なポリマーは、その単位の少なくとも20%がカルボキサミドを担持する単位であるものである。脂肪族アミンの豊富なポリマーは、その単位の少なくとも20%が脂肪族アミンを担持する単位であるものである。従って、これらのポリマーはまた、上記定義の単位を少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、またはそれ以上有するものも包含する。グルタミンまたはリジンが豊富なポリマーは、少なくとも20%の単位がグルタミンまたはリジン、またはグルタミンおよびリジンであるポリマーである。カルボキサミドまたは脂肪族アミンが豊富なポリマーは、隣接した結合グルタミンもしくはリジンにおいて生じるような、少なくとも3個、好ましくは4個、そして最も好ましくは5個もしくは6個以上の、別々で通常の距離をあけて分離されたカルボキサミドまたは脂肪族アミンを含むポリマーであってもよい。しかし、グルタミン転移酵素の基質とするために、わずか2個のグルタミンまたはリジンの鎖をヒアルロン酸に付加するかまたはつないでもよいことも、理解されるべきである。好ましい態様においては、連結分子およびそれを含む抱合体は、内因性グルタミン転移酵素の基質である(すなわち、内因性グルタミン転移酵素によって作用させられるのに十分なグルタミン転移酵素反応基を有する)。
【0042】
好ましい連結分子の1つはポリリジンである。ポリリジンは、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、およびポリ−DL−リジンを含む。他の重要な連結分子はポリグルタミンである。ポリグルタミンは、ポリ−L−グルタミン、ポリ−D−グルタミン、およびポリ−DL−グルタミンを含む。
従って連結分子は、天然または誘導体形態のポリリジンおよびポリグルタミンを含む。ポリリジンの天然の形態は、リジンモノマーのポリマーである。ポリリジンの誘導体形態は、リジンモノマーのポリマーであって、該モノマーの1つまたは2つが化学的または他の方法で修飾されているものである。
ある態様においては、連結分子は、タンパク質分解酵素によって開裂不可能な分子である。これら後者のペプチド誘導体は、加水分解できない主鎖の修飾を含むことができる。
【0043】
連結分子の長さは一般に限定されず、短い連結分子および長い連結分子の両方を本発明において用いることができる。従って、3残基の短い連結分子(例えば3個のリジンまたは3個のグルタミン)を効率的に用いることができる。連結分子の分子量は、200Da未満から100,000Daを超えるまでの範囲が可能であり、対応する残基の数は連結分子の構成に依存する。態様に応じて、連結分子は、
【表7】
またはそれ以上の分子量を有することができる。当業者であれば、連結分子のモノマー単位の数を、その分子量および組成に基づいて推定することができる。例で用いる連結分子は平均181リジン残基の長さを有し、従って平均分子量は約23,000である。
【0044】
重要な態様においては、連結分子は錯体を形成せず、特にポリリジンの場合はそうである。「錯体を形成しない」連結分子とは、連結分子が、本発明のヒアルロン酸および/または媒体溶液の塩またはアミノ酸以外の化合物と結合しないことを意味する。重要な態様においては、錯体を形成しない連結分子は、例えば薬剤などの治療剤または核酸と錯体を形成しない。核酸に結合してイオン錯体を形成するポリリジンの機能について報告されている。ポリリジンは中性のpHにおいて正に荷電されるため、核酸などのイオン的に負に荷電される剤と反応する傾向にある。しかし、本発明のある側面においては、抱合体は核酸を送達することを意図しておらず、そのような抱合体の連結分子は錯体を形成しない。
【0045】
ポリリジンなどの連結分子は、錯体を形成しない形態において維持することができ、例えば、塩濃度およびpHを操作することにより、ポリリジンと負に荷電された剤(例えば薬剤、または核酸などの治療剤)との間のイオン反応を妨げて、維持することができる。例えば、アニオンの濃度を増加させて、ポリリジンへのイオン結合のため、負に荷電された剤と競合させることができる。他の態様において、抱合体は、わずかに浸透圧の高い溶液、例えばモル浸透圧濃度が280mOsmより高い溶液内で提供することができる。他の態様において、組成物は、
【表8】
もしくはそれより高いモル浸透圧濃度を有する。任意の塩(一価および二価の塩を含む)、アミノ酸または緩衝液を、溶液のモル浸透圧濃度の調節に用いることができる。
【0046】
連結分子はまた、他の剤、これに限定されないがアルギニンなどを含むことにより、錯体を形成しない形態において提供することができる。ある態様においては、これらの剤は、ヒアルロン酸に結合するためにリジンモノマー単位と競合し、それによって、ヒアルロン酸と抱合体のポリリジン成分との間のイオン錯体形成を妨げる。従って、重要な態様においては、ヒアルロン酸とポリリジン成分は互いにイオン錯体を形成せず、むしろ、抱合の点においてのみ互いに接触している(例えば、それらの間の共有結合、またはそれらをスペーサ分子へ結合する共有結合)。
さらに他の態様においては、抱合体は核酸分子を担持することを意図しないため、例えばDNアーゼおよびRNアーゼなどの核酸分解酵素を組成物に含むことができる。
【0047】
十分な数のグルタミン転移酵素反応基(すなわち、脂肪族アミンまたはカルボキサミド)が、グルタミン転移酵素の反応を介した組織への反応に利用可能であることは重要である。従って、すべてのグルタミン転移酵素反応基が錯体を形成する必要はなく、ある場合においては、グルタミン転移酵素介在の反応には、2〜3個のグルタミン転移酵素反応基のみで十分である。ある態様においては、グルタミン転移酵素反応基はポリマーの終端に存在し、他の場合には、それらは内部に位置することができる。
抱合体の構造は、連結分子が十分な数の利用可能なアミノまたはカルボキサミド反応基を有し(グルタミン転移酵素の基質となるために)、またヒアルロン酸が冒された表面または組織を湿潤することができるのであれば、ヒアルロン酸および連結分子に関して様々に変化可能である。
【0048】
最も単純な形態において、抱合体はヒアルロン酸および連結分子が1:1の抱合体である。したがって、抱合体は、互いに直接または間接に付着する、ヒアルロン酸の1鎖および連結分子の1鎖を有する。
より複雑な形態において、抱合体は、数個のヒアルロン酸の鎖を1つの連結分子に付着して含む。ヒアルロン酸は、連結分子に、連結分子の長さに沿って隣接した部位に付着するか、または一定もしくはランダムな長さの間隔を置いて付着することができる。この後者の態様において、抱合体は、連結分子をその主鎖とし、ヒアルロン酸の鎖をそのグラフトとする、グラフト共重合体である。連結分子の主鎖に沿ったヒアルロン酸側鎖の長さ、数、および位置は、治療的利点をもたらすために投与すべき抱合体の量に影響する。ある態様において、ヒアルロン酸側鎖は、抱合体が冒された身体組織または表面に付着するために十分なグルタミン転移酵素反応基が存在する場合には、連結分子内のほとんどすべての利用可能な反応基にグラフトすることができる。
【0049】
抱合体を冒された表面に付着させるのに用いられる連結分子上のグルタミン転移酵素反応基は、連結分子の終端であってよいが、それに限定されない。従って、1つの態様において、反応基は連結分子の真ん中にあり、その片側または両側の側面にヒアルロン酸の鎖が付着してもよい。
【0050】
抱合体の構造はまた、連結分子へのヒアルロン酸のグラフトの程度によって記述することができる。本明細書で用いられる場合、グラフト率(grafting rate)は、ヒアルロン酸の二糖モノマーの数の、連結分子のモノマーの数に対する比で表される。例として、分子量220,000(および約549のヒアルロン酸二糖単位を含む)のヒアルロン酸の1本の鎖の、分子量23,000(および約181のリジン残基を含む)のポリリジン連結分子への抱合は、約3のグラフト率(すなわち549/181)に対応する。グラフト率は、連結分子にグラフトされるヒアルロン酸の鎖の数および長さ、ならびに連結分子それ自体の長さに依存して変えることができる。従って態様により、グラフト率は0.001より低い値から10000より高い値までの範囲に渡る。重要な態様において、グラフト率は、
【表9】
である。グラフト率は本来、ヒアルロン酸と連結分子の間の結合の数の指標ではないことは注意すべきである。ある好ましい態様において、ヒアルロン酸二糖単位の数は、連結分子のサブユニットの数(例えばリジン残基)より大きく、従って、グラフト率は1より大である。
【0051】
同様にして抱合体は、構造的に、抱合体の総重量(すなわちヒアルロン酸と連結分子の重量)に対するヒアルロン酸の総重量の比率によって記述することができ、パーセンテージで表される。この重量比は、同様に0.001未満〜99.9%までの範囲に渡る。重要な態様において、重量比は、
【表10】
である。ヒアルロン酸二糖モノマーの数が連結分子モノマー(例えばリジン残基)の数より多い好ましい態様においては、重量比は90%を超えるのが好ましい。従って好ましい態様においては、重量比は
【表11】
である。従って、ある重要な態様においては、抱合体における連結分子の重量は一般に10%以下である。
【0052】
抱合体の分子量は、抱合体の複合物によっても変わり得る。分子量220,000の1本のヒアルロン酸の鎖および分子量23,000の連結分子を有する、例としての抱合体の分子量は、243,000である。抱合体の分子量は約50,000から10,000,000を超えるまでの範囲で変化することができ、好ましい範囲は75,000〜1,000,000であり、より好ましい範囲は100,000〜500,000であり、さらに好ましい範囲は100,000〜300,000である。
さらに他の例においては、抱合体は、ポリリジン(重量)に対するヒアルロン酸(重量)の割合で、パーセンテージで表すことができる。
【0053】
抱合体はまた、その荷電比(すなわち正電荷に対する負電荷の比)によって表すことができる。1未満の荷電比は全体として正の荷電を示し、一方1より大きい荷電比は全体として負の荷電を示す。重要な態様において、荷電比は1より大から10より大までの範囲で変化することができる。ある態様においては、荷電比は
【表12】
またはそれよりさらに大である。他の態様においては、荷電比は1〜10の範囲で変化し、好ましくは2〜8、より好ましくは3〜7、およびさらにより好ましくは4〜6の範囲である。好ましい態様においては、好ましくはpHが6.5〜8の範囲において、抱合体は全体として負の電荷を有する。pHが6.5より大の場合は、ヒアルロン酸は負である。pHが約8より大では、リジン残基は中性に荷電されるが、しかし抱合体全体はまだ負に荷電される。ポリグルタミンを含む抱合体に対しては、グルタミン残基の中性の電荷のため、pHが6.5より大において抱合体は常に負に荷電される。
【0054】
本明細書で用いられる場合、抱合体とは、任意の化学的または生化学的方法により互いに安定して結合された2つの実体を意味する。重要なのは、付着の性質が、ヒアルロン酸の有効性または連結分子の基質活性を実質的に損なわないようなものであることである。これらの要因を心に留めていれば、共有結合または非共有結合を含む、当業者に知られている任意の結合を用いることができる。共有結合が好ましい。付着のかかる手段および方法は、当業者には周知である。
【0055】
ポリリジンを連結分子として用いる態様において、ヒアルロン酸およびポリリジンは、還元的アミノ化(reductive amination)反応により抱合される。例示によって、ポリリジンとHAの抱合体を形成するための実験方法が提供される。一般に、ヒアルロン酸の還元終端(reductive end)は、ポリリジン上のアミノ残基に結合されてシッフ塩基を形成し、次にイミノ結合に還元される。1つの実験デザインにおいて、ヒアルロン酸およびポリリジンを、ホウ酸緩衝液(pH8.5)またはリン酸緩衝液(pH8.3)などの溶媒に溶解する。還元剤、例えば水素化シアノホウ素ナトリウム(NaBH3CH)を加え、1時間〜5日間の間、0〜50℃の温度で反応を進行させる。反応は、ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドなどの有機溶媒を添加することによって制御できる。反応は、ヒアルロン酸とポリリジンのイオン相互反応を防ぐことにより強化することができる。かかるイオン相互反応は、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムなどの塩を加えることにより、または、反応温度を上げることにより、低下させることができる。
【0056】
ある態様においては、抱合体は、出発物質のモル比の範囲がポリリジン対ヒアルロン酸で0.5:1〜5:1において形成される。1つの重要な態様においては、ポリリジン対ヒアルロン酸の出発モル比は1.3:1である。これらの試薬のモル比は、ポリリジン1個当たり数個の(例えば1または2個の)ヒアルロン酸の鎖が抱合された抱合体を生成する可能性が高い。
合成反応が完了すると、溶液を透析して抱合されなかったポリリジンを取り除く。しかし、抱合されなかったヒアルロン酸は取り除かないのが好ましく、従って分離は、非抱合のポリリジンは選択的に除去するが、非抱合のヒアルロン酸は除去しないものである。例えば、分離技法が透析による場合は、透析用チューブ(dialysis tubing)は、ポリリジン(例えばMWが23,000)の移動は許容するが、ヒアルロン酸(例えばMWが少なくとも100,000)の移動は許容しない孔のサイズを選択する。
【0057】
抱合体を構成するために、連結分子をスペーサを介してヒアルロン酸につなぐのが望ましい場合もある。これにより、例えば、グルタミン転移酵素が連結分子の反応性部分へアクセスするのを妨害するなどの、立体障害から生じる可能性のある任意の問題を取り除くことができる。これらのスペーサは、任意の様々な分子であってよく、好ましくは非反応性で、例えばC1〜C30の直鎖または分枝状炭素鎖であって、飽和または非飽和で、リン脂質、アミノ酸(例えばグリシン)などで、天然または合成のものである。さらなるスペーサは、アルキルおよびアルケニル炭酸塩、カルバミン酸塩、リン酸塩、およびカルバミドを含む。これらはすべて関連しており、上述のC1〜C30などのスペーサに極性の機能性を付加することができる。付録Aに示されるような好適なスペーサは市場で入手可能であり、例えばPierce Chemical Co.から入手可能である。
【0058】
本明細書に記載される抱合または修飾は常用の化学作用を用いており、化学分野の当業者には周知であり、従って本発明の一部を形成するものではない。保護基ならびにモノおよびヘテロ二機能性リンカー(bifunctional linker)などの既知のリンカーの使用は文献に十分に解説されており、ここでは繰り返さない。
従って本発明による付着は、直接の付着である必要はない。本発明の組成物の成分は、それらの付着を促進するために官能基と共に提供され、および/またはリンカー基がこれらの組成物の成分の間に入って付着を促進する。さらに、本発明の組成物の成分は単一の工程において合成することもでき、それによって該成分を1つの同一実体であるとみなすことができる。例えば、ヒアルロン酸は、グルタミン転移酵素を介したポリペプチドの結合のために、1つの終端においてポリグルタミンを含むように合成してもよい。
【0059】
共有結合の特定の例は、二機能性架橋剤(bifunctional cross linker)分子が用いられるものを含む。架橋剤分子は、抱合すべき分子の性質により、ホモ二機能性またはヘテロ二機能性である。ホモ二機能性架橋剤は、2個の同一の反応基を有する。ヘテロ二機能性架橋剤は、順次の抱合反応を許容する2個の異なる反応基を有するものと定義される。種々の種類の市場で入手可能な架橋剤は、1個または2個以上の以下の基:1級アミン、2級アミン、スルフヒドリル、カルボキシル、カルボニル、および炭水化物、と反応する。アミン特異的架橋剤の例は、ビス(スルホスクシンイミジル)スベリン酸塩、ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン、ジスクシンイミジルスベリン酸塩、ジスクシンイミジル酒石酸塩、ジメチルアジピメート(adipimate)・2HCl、ジメチルピメリミデート(pimelimidate)・2HCl、ジメチルスベリミデート(suberimidate)・2HCl、およびエチレングリコールビス−[スクシンイミジル−[スクシナート]]である。スルフヒドリル基と反応する架橋剤は、ビスマレイミドヘキサン、1,4−ジ−[3’−(2’−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ブタン、1−[p−アジドサリチルアミド]−4−ヨードアセトアミド]ブタン、およびN−[4−(p−アジドサリチルアミド)ブチル]−3’[2’−ピリジルジチオ]プロピオンアミドを含む。炭水化物と選択的に反応する架橋剤は、アジドベンゾイルヒドラジンを含む。カルボキシル基と選択的に反応する架橋剤は、4−[p−アジドサリチルアミド]ブチルアミンを含む。アミンおよびスルフヒドリルと反応するヘテロ二機能性架橋剤は、N−スクシンイミジル−3−[2−ピリジルジチオ]プロピオナート、スクシンイミジル[4−ヨードアセチル]アミノベンゾアート、スクシンイミジル−4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシラート、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキスクシンイミドエステル、スルホスクシンイミジル6−[3−[2−ピリジルジチオ]プロピオンアミド]ヘキサノアート、およびスルホスクシンイミジル−4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシラートを含む。カルボキシルおよびアミン基と反応するヘテロ二機能性架橋剤は、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]−カルボジイミド塩酸塩を含む。炭水化物およびスルフヒドリルと反応するヘテロ二機能性架橋剤は、4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシルヒドラジド・2HCl、4−(4−N−マレイミドフェニル)−酪酸ヒドラジド・2HCl、および3−[2−ピリジルジチオ]プロピオニルヒドラジドを含む。架橋剤は、ビス−[β−4−アジドサリチルアミドエチル]二硫化物およびグルタルアルデヒドである。アミンまたはチオール基は、合成核酸の任意のヌクレオチドに加えることができ、二機能性架橋剤分子への付着点を提供する。核酸は、抱合競合剤、例えば
【表13】
を組み込むことにより合成できる。
【0060】
ヒアルロン酸を本発明のグルタミン転移酵素の基質に抱合するための他のリンカーは、米国特許第5,342,770号に記載のペプチドリンカーを含む。他の化学リンカー組成物は、米国特許第6,303,555 B1号(例えば、4〜6個の炭素原子を有するカルボン酸、またはエトキシ化多価アルコール、またはポリビニルピロリドン、またはMW6000〜10,000のポリエチレングリコール)、米国特許第5,952,454号(グリコシルドナーをアミン含有担体に抱合するためのスペーサ)、米国特許第6,361,777 B1号(アミノチオールリンカー)、米国特許第4,680,338号(二機能性リンカー)、米国特許第5,034,514号などに記載されている。
【0061】
ある態様においては、正常な生理学的条件のもとで開裂する結合により、または、光などの刺激の適用により特異的に開裂を引き起こす結合によってヒアルロン酸を連結分子に付着させ、それによって剤を放出できるのが望ましい。一定の態様においては、ヒアルロン酸はその抱合形態において不活性であり、放出された場合にのみ活性であることができる。他の場合においては、ヒアルロン酸は放出されて、身体組織に付着した点から離れた場所でのみ活性を発揮する。さらに他の場合においては、ヒアルロン酸は持続的な様式で放出され、組織に対して共有結合的に結合されるのではない形態で適用されたヒアルロン酸に比べて、その放出が延長される。容易に開裂する結合は、容易に加水分解される結合を含み、例えばエステル結合、アミド結合、またはシッフ塩基型の結合などである。光によって開裂される結合は周知である。さらに他の態様において、開裂可能な結合はそれ自体が、連結分子のモノマー単位の間のペプチド結合であってもよい。かかる結合は、トリプシンなどのタンパク質分解酵素によって開裂でき、冒された組織に応じて溶液の強さを変化させるのに用いることができる。
【0062】
非共有的な抱合方法も用いることができる。非共有的抱合は、疎水性相互作用、イオン相互作用、高親和性相互作用、例えばビオチン−アビジンおよびビオチン−ストレプトアビジン錯体形成、ならびに他の親和性相互作用を含む。1つの態様においては、アビジンなどの分子はポリグルタミンなどの連結分子に付着する。この抱合は、本発明に従って組織に一旦付着すると、ビオチン分子に付着する任意の剤に対する普遍的な連結部分となる。
【0063】
連結分子は、ミクロ球体またはナノ球体などの微粒子の一部であってもよく、ヒアルロン酸は微粒子内に、その中に物理的に閉じ込められるか、それに共有的に結合されるか、または物理化学的に微粒子に付着させることにより含まれてもよい。好ましい態様においては、ミクロ球体またはナノ球体は、少なくともそれらの表面上に、グルタミン、リジン、またはグルタミンとリジンの両方が豊富なポリマーを担持する。微粒子を製造する方法は文書化されており、本発明のベースを形成するものではない。本発明が従来技術と異なるのは以下の点においてのみである:本発明においては、微粒子構造のポリマーそのものまたはそれらが誘導体化されたものがグルタミンおよび/またはリジンを含むか、あるいは、グルタミンの、リジンの、またはグルタミンとリジンのポリマーがマトリクスを形成するポリマー混合物内に含められ、それによってかかるポリマーが微粒子の全体および/または表面に閉じ込められる。ミクロ球体またはナノ球体の例およびそれらの製造方法は、
【表14】
に見出すことができ、これらの開示は参照として本明細書に組み込まれる。
【0064】
本発明のさらに他の側面により、本明細書に引用されたものおよび当分野において既知のものを含む、ヒアルロン酸と任意の数のリンカー分子との抱合体は、身体組織または表面に種々の治療剤を送達するために用いられる。ある重要な態様においては、リンカーは、本明細書に引用したリンカーを含む脂肪族アミンおよびカルボキサミドである。本発明のこの側面において、ヒアルロン酸は、治療剤の担体分子として作用することが意図され、ヒアルロン酸それ自体は、治療的便益を付与してもしなくてもよい。他のリンカー分子は米国特許第6,267,957 B1号に開示されている。この特許の内容全体は参照として本明細書に組み込まれる。この後者の特許にはまた、ヒアルロン酸を介して投与可能な種々の治療剤が開示されている。用いることのできる治療剤の例は、アドレナリン作用薬;副腎皮質ステロイド;副腎皮質抑制剤;アルコール妨害剤;アルドステロン拮抗剤;アミノ酸;アンモニア解毒剤;アナボリック(同化作用剤);興奮薬;鎮痛剤;アンドロゲン;麻酔、添加物(adjunct to);麻酔薬;食欲抑制薬;拮抗剤;下垂体前葉抑制剤;駆虫薬;抗座そう剤;抗アドレナリン作用薬;抗アレルギー薬;抗アメーバ薬;抗アンドロゲン;抗貧血薬;抗狭心症薬;抗不安薬;抗関節炎薬;抗喘息薬;抗アテローム硬化症薬;抗菌剤;抗胆嚢炎薬;抗胆石生成薬(anticholelithogenic);抗コリン作用薬;抗凝集剤;抗コクシジウム薬(anticoccidal);抗けいれん薬;抗うつ薬;抗糖尿病薬;下痢止め薬;抗利尿薬;解毒剤;制吐剤;抗てんかん薬;抗エストロゲン;抗繊維素溶解薬;抗真菌剤;抗緑内障薬;抗血友病薬;抗出血薬;抗ヒスタミン薬;抗高脂血症薬;
【0065】
抗リポタンパク血症薬;降圧剤;抗低血圧薬;抗感染症薬;抗感染症薬、局所的;抗炎症薬;抗角化剤;抗マラリア薬;抗菌薬;偏頭痛薬;抗分裂剤;抗真菌薬;制嘔吐剤;抗新生物薬;抗好中球減少薬;抗肥満薬(antiobessional agent);駆虫薬;抗パーキンソン病薬;逆ぜん動薬;抗ニューモシスティス薬;抗増殖薬;抗前立腺肥大薬;抗原虫薬;かゆみ止め薬;抗精神病薬;抗リューマチ薬;抗住血吸虫薬;抗脂漏薬;抗分泌薬;鎮痙薬;抗血栓剤;鎮咳薬;抗潰瘍薬;抗尿結石薬;抗ウイルス薬;食欲抑制剤;良性前立腺過形成治療薬;血糖調節物質;骨吸収阻害薬;気管支拡張薬;炭酸脱水酵素阻害薬;心抑制薬;心臓保護薬;強心剤;心血管作動薬;胆汁分泌促進薬;コリン作動薬(cholinergic);コリン作動薬(cholinergic agonist);コリンエステラーゼ不活性化剤;コクシジウム抑制薬;認知補助剤(cognition adjuvant);認知促進薬;抑制薬;診断補助薬;利尿剤;ドーパミン作動剤;外部寄生虫撲滅薬;催吐剤(emetic);酵素阻害薬;エストロゲン;繊維素溶解薬;蛍光剤;フリーラジカル酸素捕捉剤;胃腸運動エフェクター;グルココルチコイド;性腺刺激因子(gonad stimulating principle);毛髪成長刺激剤;止血薬;ヒスタミンH2受容体拮抗薬;ホルモン;コレステロール低下剤;血糖降下薬;脂質低下薬;血液降下剤;造影剤;免疫剤;免疫調整剤(immunomodulator);免疫調節剤(immunoregulator);免疫賦活剤;免疫抑制剤;
【0066】
インポテンス治療補助剤;阻害剤;角質溶解薬;LNRH作動薬;肝臓疾患処置剤;ルテオリジン;記憶補助剤;精神機能促進剤;気分調整剤(mood regulator);粘液溶解薬;粘膜保護剤;散瞳剤;鼻充血除去薬;神経筋遮断薬;神経防護作用薬;NMDA拮抗薬;非ホルモンステロール誘導体;分娩促進薬;プラスミノゲン活性剤;血小板活性化因子拮抗薬;血小板凝集阻害剤;脳卒中後および頭部外傷後処置薬;増強薬;プロゲスチン;プロスタグランジン;前立腺成長阻害剤;プロチロトロピン(prothyrotropin);向精神薬;肺面;放射性剤;調整剤;弛緩薬;再分割剤(repartitioning agent);疥癬虫殺虫剤;硬化剤;鎮静剤;鎮静催眠薬;選択的アデノシンA1拮抗薬;セロトニン拮抗薬;セロトニン阻害剤;セロトニン受容体拮抗薬;ステロイド;興奮剤;抑制剤;症候性多発性硬化症;共力剤;甲状腺ホルモン;甲状腺阻害剤;チロ類似薬(thyromimetic);精神安定剤;筋萎縮性側策硬化症の処置;脳虚血の処置;パジェット病の処置;不安定狭心症の処置;尿酸排泄促進薬;血管収縮薬;血管拡張剤;外傷治療薬;創傷治療薬;キサンチン酸化酵素阻害薬である。
【0067】
当業者には明らかであるように、ヒアルロン酸が他の治療剤の担体として用いられるこれら後者の抱合体は、
かかる治療が必要な対象に対する治療的または予防的方法において用いることができる。かかる剤の投与から利益を受ける対象の識別は、開業医の領域である。
本発明の化合物は、本明細書に記載されているような特定の疾患もしくは症状を有するか、またはそれらを有するリスクのある対象の処置のための多数の方法において用いることができる。かかる疾患を有する対象は、開業医または自己診断によって疾患を有すると診断されたものである。かかる診断は、対象が経験している症状に基づいて、または臨床検査に基づいて行うことができる。疾患を有するリスクのある対象とは、環境的、行動的または遺伝的要因のために疾患を発症する傾向のあるものである。疾患または状態は、疾患を有する対象においては処置され、一方、疾患を有するリスクのある対象においては予防される。
【0068】
本化合物は、乾燥を特徴とするものを含む多くの疾患の処置または予防に用いることができる。乾燥を特徴とする状態とは、対象が、例えば眼や口などの組織または身体組織において水分または潤滑の不足を経験する状態である。乾燥を特徴とする状態は、身体の任意の領域を内部的および外部的に冒しえることが理解される。本明細書に提供される方法を用いて処置することができる状態の例は、ドライアイ、口腔乾燥症、皮膚の乾燥(例えば、しわ)、膣腔の乾燥などを含む。本化合物は、ヒアルロン酸が治療的または予防的に有益であると以前に報告されている任意の疾患の処置および/または予防に用いることができる。かかる疾患は前記されており、一般の開業医に既知である。
【0069】
本明細書に記載の化合物を用いて処置することができる皮膚の疾患は、褥瘡、栄養障害性潰瘍、やけど、無痛性創傷(indolent wound)、外傷後潰瘍、静脈瘤性および静脈炎後潰瘍、放射線壊死、単純ヘルペスウィルスおよび植皮により誘発される等による皮膚の病変を含む。これらの態様において、本組成物は、ガーゼパッド、クリーム、スプレー剤を用いて投与することができ、乳化剤を含んでもよい。局所用製剤に含んでもよい他の剤は、マンニトール、ポリエチレングリコール、オレイン酸、グリセロール、ソルビトール、p−オキシメチルベンゾアート、パラフィンジェリー、およびグリシンを含む。
【0070】
本発明の化合物を用いて処置できる他の疾患は、呼吸器疾患、例えば気腫、慢性気管支炎、喘息、肺水腫、急性呼吸窮迫症候群、気管支肺異形成症、肺線維症、および無気肺などを含む。これらの疾患に対して、本組成物は気管内投与することができ、それにはエアロゾル、噴霧器、または咽頭注入法(instillation)を用いることを含む。
間質性膀胱炎は、本発明の組成物を用いて処置が可能な他の疾患である。間質性膀胱炎を有する対象は、切迫した頻繁な排尿、排尿により軽減され得る恥骨結合上の痛み、関節炎、痙攣性結腸および低度の発熱などの症状を一般に有する。本組成物は、膀胱および/または関連する解剖学的構造内に、例えばカテーテルなどを用いて直接注入するのが好ましい。注入容量は、5ml〜100mlの範囲が可能であり、より好ましい容量は20ml〜70mlである。経腹壁的投与も考えられる。
【0071】
本化合物は、関節の不快感を経験している対象において用いることもできる。関節の不快感を経験している対象とは、膝および腕の関節などの関節に不快感または痛みを経験しているものである。この不快感は、関節の曲げが必要な動きの間に最もしばしば起こり、かかる関節の可動性の不足に関連している。それはしばしば、関節炎の発現である。この方法で処置すべき対象は、変形性関節症、急性または慢性滑膜炎、関節軟骨の退行変性過程、および乾燥関節疾患などの関節の疾患を有するか、発症するリスクのあるものである。一般にこれらの状態に伴う症状は、痛みおよび関節機能の障害を含む。これらの態様において、本組成物は、関節内注入物として投与することができる。かかる組成物は、コラーゲン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、グリコプロテイン、硫酸塩灰(sulphated ash)、アルブミン、および保存剤、例えば安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベンなどを含むことできる。注射は身体の任意の関節内に行うことができ、それらは、心皮、球節、ウマの蹄(coffin)、または脛足根関節(tibotarsal joint)、足根間関節または足根中足関節、大腿脛骨の外側もしくは内側包(lateral or medial sacs)、または大腿膝蓋関節を含むが、これらに限定されない。関節疾患の処置または予防に関連する方法は、競走馬などの動物に特に好適である。
【0072】
本化合物は、過剰な血液凝固を有する対象または血液凝固を発症するリスクの高い対象、または有害な心血管系イベントを有するか、そのリスクのある対象において有用である。これらの対象は、既に血液凝固を有するか、または環境的、行動的(例えば食生活)もしくは遺伝的要因のために血液凝固を発症しやすい。血液凝固を発症する高いリスクとは、対象の正規母集団のリスクより高いことである。過剰な血液凝固とは、不適切に生じ、対象の正規母集団が経験するより頻繁であるか、またはより重篤な血液凝固である。これらの対象は一般に、本発明の化合物を、ステントまたはバルーン血管形成などの静脈内または動脈内医療器具を用いて投与される。本化合物は医療器具を被覆することができ、またはボーラスもしくは連続注射により投与することもできる。本明細書で示される組成物は、従って、動脈の再狭窄の予防に有用である。代替的に、本抱合体は随意的に遊離ヒアルロン酸とともに、ガイドチャネル、バイパス、人工血管、シャント、および心血管系において用いられる他の生体材料などの調製において用いることができる。
【0073】
ある態様においては、本組成物は、身体組織または表面に対して、他の治療剤との処置のために供給される。ヒアルロン酸は組織を透過することが知られており、従って、身体組織の他の剤の受容を増加させるのに有用である。そのように処置される組織は、通常または病態により還流が悪くなっている組織であってよい。
本明細書に提供される組成物は、ドライアイまたは口腔乾燥症を有する対象の処置に用いることができるが、組成物の使用はこれに限定されない。ドライアイは、涙腺(すなわち、涙を生成する)を障害する自己免疫疾患を含むがこれには限定しない多くの潜在的状態から生じ得るものであり、自己免疫疾患は例えば関節リューマチ、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、および全身性硬化症およびサルコイドーシスなどである。これらの対象の多くは、涙を生成する機能が低下している。角膜および/または結膜を含む眼の持続する乾燥を有すると診断された対象は、本明細書に記載の処置法の好適な候補者である。これらの対象は、一般に眼に中程度の不快感から強い痛み、視力低下(かすみ目)、ざらざらする、および/または燃えるような感覚、ならびにかゆみを訴え、角膜潰瘍および/または瘢痕を発症することもある。
【0074】
本発明はまた、口腔乾燥症を有する対象の処置のための方法を提供する。口(すなわち口腔)の乾燥は、ストレス、潜在する状態、例えばシェーグレン症候群および全身性硬化症、唾液腺(すなわち、唾液を生成する腺)の感染、特定の医薬剤、例えば抗コリン作用薬、利尿薬、抗ヒスタミン薬、クロニジン、レボドーパ、メチルドーパ、および三環系抗欝薬などの使用、または放射線療法への暴露などから生じ得る。口腔乾燥症を有する対象は一般に、嚥下および話すことにおける困難さおよび苦痛、味覚の障害、場合によっては虫歯などを訴える。ドライアイはまた、ホルモンの変化のため閉経後の女性にも一般的である。
【0075】
ドライアイおよび口腔乾燥症の症状の軽減に加えて、本発明のヒアルロン酸抱合体は、組織または表面における湿度および水分を一定のレベルに維持するのが望ましい他の状況においても用いることができる。この例は、白内障手術、人口水晶体置換術および角膜移植などの眼内手術を含む。
本組成物はさらに、他の粘膜組織(例えば、膣、直腸、鼻腔、肛門等)および外部組織(例えば、毛髪、爪、唇等)の乾燥を伴う症状の軽減に用いることができる。
さらに他の態様において、本抱合体は異常な血小板凝固のリスクのある対象に用いることが意図されるが、これはヒアルロン酸が血小板凝固を抑制すると報告されているからである。かかる対象は、ステント留置またはバルーン血管造影法などの侵襲的処置を受けるものであってよく、本発明の抱合体はこれらの器具を用いて投与することができるが、その投与はこれらに限定されない。
【0076】
提供される組成物は、治療的な方法および予防的な方法の両方に使用可能であることが理解される。治療的に用いられる場合、本抱合体は対象に既に存在している症状を軽減することが意図され、従って対象が症状を訴えた後に投与することができる。予防的に用いられる場合、本抱合体は、対象がかかる症状を引き起こすことが知られている活動を行っているかこれから行おうとしている場合に、かかる症状が発生するのを防ぐか、またはその発生を遅延させることを意図する。これらの活動は、ドライアイの場合は例えば読書のし過ぎ、コンピュータの使い過ぎ、および場合によってはコンタクトレンズの長時間の使用などを含む。
【0077】
「対象」とは、ヒトまたは脊椎動物であり、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、サルなどの霊長類、サケなどの魚(水産養殖種)、ラットおよびマウスなどを含むが、これらに限定されない。
本発明の組成物は、有効量を投与される。用語「有効量」とは、所望の生物学的効果を実現するのに必要または十分な量をいう。例えば、ヒアルロン酸含有抱合体の有効量は、対象がドライアイ症状について処置される場合には、かかる症状を低減させるかまたは消滅させるのに必要な量である。処置される対象が、口腔乾燥症を有するかまたは有する疑いのある場合は、口腔乾燥症の症状を低減させるかまたは消滅させるのに必要な量である。本明細書で用いられる場合、用語「処置」とは、例えば、これらに限定されないがドライアイまたは口腔乾燥症に関連する症状の低減または完全な消滅を言う。例として、処置の前にドライアイ症状を経験している対象は、処置の後にドライアイ症状の重篤度または頻度が軽減されるか、または症状が完全に消滅すれば「処置された」ことになる。ドライアイまたは口腔乾燥症に関連する症状とは、本明細書に記載のものである。
【0078】
本明細書に記載の教示と組み合わせて、種々の抱合体構造から選択し、効力、相対的バイオアベイラビリティ、患者の体重、副作用の重篤度および好ましい投与方法などの要因を慎重に考慮することにより、重大な毒性または炎症をもたらすことなく、全体として特定の対象の処置に有効な、効果的な予防または治療の処置方法が計画できる。
任意の特定の適用に対する有効量は、処置される疾患もしくは状態または軽減される症状、投与される特定の抱合体、対象の大きさ、または、疾患、状態もしくは症状の重篤度などの要因により変化し得る。当業者は、過度の実験を必要とすることなく、特定の抱合体の有効量を経験的に決定することができる。
【0079】
抱合体の有効量はまた、該抱合体の正確な性質に依存し、これには連結分子に対するヒアルロン酸の割合、および、ヒアルロン酸および連結分子の長さまたは分子量などを含むが、これらに限定されない。遊離形態で適用される場合、ヒアルロン酸ナトリウムは0.1%(w/v)溶液(すなわち1mg/ml)で眼に投与されている。しかし、本発明のヒアルロン酸の、連結分子を介して眼球表面に付着する能力を考えると、本組成物においてはより少量のヒアルロン酸しか必要としないことが期待される。好ましくは、本剤形は、単位用量当たり遊離ヒアルロン酸の0.1%溶液に等価な効力を有する抱合体の量を投与する。一般に、抱合体は、眼に投与される場合は1投与当たり少なくとも50μgのヒアルロン酸を送達するよう製剤化され、口腔に投与される場合は1投与当たり少なくとも1mgのヒアルロン酸を送達するよう製剤化される。口腔を意図した組成物は、口腔内の処置すべき面積がより大きいことを考えると、眼のそれよりも濃縮されたものであってよい。
【0080】
本明細書に記載された化合物の対象への用量は、一般に約0.001mg/日〜16,000mg/日の範囲、より一般的には約0.05mg/日〜8000mg/日の範囲、そして最も一般的には約0.1mg/日〜4000mg/日の範囲である。対象の体重当たりで表すと(および、平均体重80kgを仮定すると)、一般的な容量は約0.00001〜200mg/kg/日の範囲、より一般的には約0.0006〜100mg/kg/日の範囲、そして最も一般的には約0.001〜50mg/kg/日の範囲である。
同様に、抱合体がその中に含まれて送達される容量は、投与部位により変化する。眼に送達する場合は、容量は2ml未満、1ml未満、0.5ml未満、0.25ml未満、0.1ml未満、0.05ml未満、0.025ml未満またはそれより低いのが好ましい。口腔に送達する場合は容量はそれより大きくてもよく、うがい薬など大きな容量の組成物で送達される場合は特にそうである。代替的に、抱合体をスプレー剤として口腔に送達する場合は、その容量は眼への投与容量の尺度となり得る。
【0081】
抱合体は対象に対し任意の様式で投与してよいが、その様式は処置する状態および症状に関連するのが好ましい。例えば、ドライアイ症状の処置に用いる場合は、抱合体は眼に投与される。口腔乾燥症の症状の処置に用いる場合は、抱合体は口腔に投与される。経口で投与する場合、胃または消化管の他の領域ではなく、直接口腔に(場合によって咽喉部を含む)抱合体を送達することを意図する。他の投与経路は、鼻腔内、気管内、吸入、膣、直腸、局所的、関節内、および静脈内を含むが、これらに限定されない。
【0082】
本化合物は、疾患および投与の様式に応じて、異なる容器、媒体または剤形において提供される。例えば、本明細書に詳細に記載されているように、本化合物は、経口適用のためには、舌下錠、ガム、うがい薬、練り歯磨き、キャンディ、ジェル、フィルム等として;眼への適用のためには、点眼器中の目薬、眼科用軟膏、アイジェル、アイパック、コンタクトレンズもしくは眼内レンズのコーティングとして;コンタクトレンズ用保存液または洗浄液等として;局所的適用のためには、ローション、軟膏、ジェル、クリーム、スプレー剤、ティッシュペーパー、綿棒、拭き取り用繊維等として;関節内適用のためには、関節内送達のための注入可能な溶液等として;血管適用のためには、医療器具のコーティング、注入可能溶液等として;膣または直腸への適用のためには、軟膏、タンポン、座薬、粘液付着性組成物等として、投与可能である。
【0083】
本発明の抱合体は、ドライアイを有する対象に、眼への投与に好適な種々の組成および物理的形態において投与可能である。眼への投与を意図した組成物は、眼の環境、少なくともpH、ならびに塩の組成および濃度に関して適合するものでなければならない。これらの組成物は、眼を刺激してはならない。
組成物は、種々の物理的形態において眼に投与可能であり、液体溶液、眼の軟膏またはジェル、または綿撤糸などのアイパックを含むが、これらに限定されない。液体溶液は点眼器の支援により便利に投与され、点眼瓶に入れて提供することができる。
【0084】
点眼瓶は、容器から液体を取り出すのに用いられる点眼器を含む容器である。点眼瓶はガラス製またはプラスチック製であり、液体の容量およびその保管寿命によってサイズが異なり得る。例えば眼科用保存剤などの保存剤を含まない溶液は、保管寿命が短くなる傾向があり、従って一般に小さい容量で調製される。従って、ある重要な態様においては、組成物は、最大で0.5mlの桁の容量、または5.0mlの桁の容量を含む点眼瓶で提供される。これら後者の態様は、単回の使用または1週間単位に対応し、随意的に、それらは眼科用保存剤を含まない。かかる小容量の複数の瓶(例えば、吹き込み充填密封法(blow-fill-seal method)により調製されたバイアルなど)は、キットで提供され、それは随意的に、箱、バッグ、またはボール紙もしくはプラスチックの裏あてなどの裏あてを含む。キットは、本明細書に概要を示すように、組成物の使用の指示書を含むことができる。
【0085】
組成物はまた、アイ・ケアのために定常的に用いられ市場で入手可能な溶液に入れて提供することもできる。例えば、組成物は、コンタクトレンズ洗浄液、コンタクトレンズ保存液、またはコンタクトレンズ装着者のための目薬などの、コンタクトレンズ用溶液に混合できる。コンタクトレンズ用溶液は当分野で知られており、一般にコンタクトレンズを保存または洗浄するのに用いる溶液、または、目薬もしくは人工涙液組成物などの、コンタクトレンズ装着者によって用いられる溶液を指す。コンタクトレンズ装着者に対して一緒に提供されれば、組成物は、角膜とコンタクトレンズとの間の摩擦を減少させる。組成物はまたフィルムの形態で提供することもでき、かかるフィルムは、例えばコンタクトレンズ製造業者によってコンタクトレンズに被覆することができて、ドライアイまたは炎症なしにコンタクトレンズの使用を延長することができる。同様に組成物は、コンタクトレンズを商業的にそれに入れて提供するための溶液に含むこともできる。
【0086】
同様に組成物は、当分野で知られている眼用ジェルまたは軟膏として製剤化することもできる。
眼用の投与を意図した組成物は、眼用溶液、ジェル等のために記載された、または涙の中に存在することが知られている他の剤を含むことができる。一例は、涙の中に存在することが知られているリゾチームである。
眼用の投与を含むある態様においては、組成物は、色を消すために処理すること(したがって、溶液を透明で無色にする)ができる。代替的に、組成物の色を加えるか変えることが望ましい場合もあり、特に、組成物が眼に送達されたことを確認するために色を用いる場合はそうである。
【0087】
ある態様においては眼用の組成物は保存剤を含まず、無菌フィルタ(例えば0.22μmフィルタ)でろ過して単回使用量としてパッケージされる。従ってある場合においては、本発明の組成物は、使用量の単位で調製および/またはパッケージされる。使用量の単位とは、1回の投与に必要な量、または1日、1週間、1ヶ月もしくはそれ以上の期間の投与量である。好ましくは、単位量の単位とは、1回の投与、または最大でも数日(ただし1週間未満)の期間の投与に必要な量である。使用単位のパッケージ化は溶液の汚染を防ぐのに有用であり、なぜならば、それによって個人が溶液に接触する回数が低減されるからである。
【0088】
本発明の抱合体は、同様にして、口腔乾燥症を有する対象に対して、種々の組成および経口または口腔投与に好適な物理的形態において投与することができる。「経口的」および「口腔的」の用語は本明細書では同義的に用いられ、口腔を指し、唇、歯、口、舌、口蓋、および上部咽喉領域を包含する。経口または口腔投与を意図した本組成物は、口腔の環境に適合しなければならない。一般に経口または口腔送達製剤に対する要求は、眼用送達製剤のそれと比べてよりゆるやかである。しかし、味覚および嗅覚の考慮は経口または口腔送達製剤において重要であり、これらは眼用製剤においては重要性がより低いであろう。
【0089】
好ましい態様において、組成物は、その物理的形態に関わらず口腔内に送達されて留まる。従って本組成物は、口腔内に留まり消化管では消化されない、ロゼンジ(トローチ剤)、スプレー剤、ガム、舌下錠、うがい薬、経口ジェル、練り歯磨き、粘膜付着性パッチなどの形態で提供されるのが好ましい。
経口的に送達される場合、抱合体は、舌下粘膜を含む口腔粘膜に接触する。「粘膜(mucosa)」は、粘膜(mucous membrane)を指す。本明細書で用いられる場合の「口腔粘膜」とは、口および上部咽頭領域の粘膜を指す。「舌下」とは、口腔内の舌の下側の領域を指す。
【0090】
1つの好適な経口形態は、舌下錠である。舌下錠は、抱合体を舌下粘膜に送達する。本明細書で用いられる場合、「錠剤」とは、圧縮または成型により調製される医薬剤形を指す。舌下錠は小さく平らであり、舌の下に置かれて迅速に、ほとんど瞬間的に崩壊し、抱合体を舌下粘膜に放出する。用語「崩壊」とは、バラバラに壊れることを意味する。好ましくは、本発明の舌下錠剤は崩壊して5分間以内に、より好ましくは2分間以内に抱合体を放出する。放出された抱合体は、口腔に存在する内因性グルタミン転移酵素の作用を介して、口腔粘膜に結合するために利用可能となる。
経口的送達製剤の他の形態は、ロゼンジ(トローチ剤)、ガム、および薄い溶解性フィルムを含む。
【0091】
経口製剤は液体形態をとることもできる。液体は、スプレー剤または滴剤として口腔全体に投与でき、これには舌下領域など領域を選択することを含む。本発明のスプレー剤または滴剤は、経口または舌下投与に適合させた標準のスプレー瓶、または点滴瓶を用いて投与することができる。液体製剤は、口腔への投与を容易にするために、好ましくはスプレー瓶、微細噴霧器、またはエアロゾル蒸気容器に保持される。液体組成物は、予め定められた量の組成物を口腔に送達するよう調整されている点滴器またはスプレー瓶に保持することもできる。目盛り付スプレーまたは点滴器を有する瓶は、当分野に知られている。
【0092】
本発明の抱合体は、経口ジェルとしても製剤化することができる。例として、抱合体は、粘膜付着性の不水溶性ジェルとして投与してもよい。このジェルは、少なくとも1種の不水溶性アルキルセルロースまたはヒドロキシアルキルセルロース、揮発性非水溶媒、および本抱合体から製造する。生物付着性ポリマーを添加してもよいが、必須ではない。ジェルは一旦粘膜表面に接触すると、主として揮発性溶媒または非水性溶媒が蒸発することにより、付着性フィルムを形成する。ジェルが粘膜表面に留まる機能は、そのフィルム性コンシステンシー(filmy consistency)および不溶性成分の存在と関連する。ジェルは、スプレーにより、浸すことにより、または指もしくは綿棒で直接適用することにより、粘膜表面に適用することができる。
【0093】
本発明の抱合体はまた、うがい薬または練り歯磨きとして製剤化することができる。
必要な場合、送達製剤は、香味剤、着色剤および/または芳香剤を含むことができる。香味剤、着色剤および/または芳香剤は、組成物をユーザーに許容されやすいように改善することを支援する。
【0094】
香味剤は、それがなければ無味の製剤に味付けを提供する剤、既に存在するが弱い味を強化する剤、または既存の不快な味を隠すかまたは変化させて、より口にあう味にする剤である。香味剤は当分野に知られており、Waner-Jenkinson Company, Inc.などの数多くの供給者から市場を通して入手可能である。香味剤の例は、ペパーミントの抽出物、葉の粉末または油;スペアミントの抽出物、葉の粉末または油;ウィンターグリーン油;バニラ抽出物;パセリ;オレガノ油;ベイリーフ油;チョウジ油;セージ油;サッサフラス油;レモン油;オレンジ油;アニス油;ベンズアルデヒド;アーモンド油;ショウノウ;ニオイヒバ油;マジョラム油;シトロネラ油;ラベンダー油;カラシ油;パイン油;まつ葉油;ローズマリー油;タイム油;シナモンリーフ油;メントール;カルボン;アネトール;オイゲノール;サリチル酸メチル;リモネン;シメン;n−デシルアルコール;シトロネロール;α−テルピネオール;酢酸メチル;酢酸シトロネリル;メチルオイゲノール;シネオール;リナロール;オイクトル(eyktl)リナロール;バニリン;チモール;ペリラ油;冬緑油;ユーカリ油;カフェイン、酒石クリーム、乳酸、リンゴ酸、グルタミン酸第一ナトリウム、亜硝酸塩、ソルビトール等を含む。香味剤は、製剤が口腔または経口投与を意図したものである場合に最も所望される。香味剤はまた、甘味剤(すなわち、甘味料)、例えばアスパルテーム、アセスルファム、サッカリン、デキストロース、レブロース、シクラミン酸ナトリウム、ステビオシド、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、グリシルリジン、ペリルラルチン、タウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、およびp−メトキシシンナムアルデヒド等を含む。
【0095】
同様に着色剤は、それがなければ無色の製剤に対して色を提供する剤、既に存在するが弱い色を強化する剤、または既存の潜在的に不快な色を、隠すかまたは変化させる剤である。着色剤はまた、色付きの製剤を色なしのものに変換する剤も含む。着色剤は当分野に知られており、上に記載したような香味剤の供給者から購入することができる。着色剤は眼用および経口製剤にも望ましい場合がある。好適な着色剤の例は、二酸化チタンである。経口組成物用の好適な着色剤は、FD&C青色#1、FD&C黄色#5および#10、FD&C赤色#3および#40、カラメルカラーまたはカラメルパウダー(#05439)、チョコレートシェード(#05349)、グリーンレイクブレンド(#09236)、コウェット二酸化チタン(#03970)、イエローリキッドカラー(#00403)、および硝酸塩を含む。
【0096】
芳香剤は、それがなければ無臭の製剤に対して芳香(すなわち、香り)を提供する剤、既に存在するが弱い芳香を強化する剤、または既存の潜在的に不快な匂いを、隠すかまたは変化させる剤である。芳香剤はまた、匂いのある製剤を無臭のものに変換する剤を含む。芳香剤は当分野に知られており、上に記載したような香味剤の供給者から購入することができる。着色剤の例は、草花の抽出物、ハーブ抽出物、木の花の抽出物または植物抽出物などの天然の芳香剤、および人工の芳香剤を含む。芳香剤は、眼用および経口製剤に対して望ましい可能性がある。
【0097】
好適な舌下錠の例は、以下の配合に従って生成される:ヒアルロン酸とポリリジンの抱合体(1個の錠剤あたり1mgの抱合体を供給するように配合);マンニトールUSP(DC級)31.5mg;微結晶(microcryst)、セルロース40.35mg;グリコール酸スターチナトリウム(sodium starch glycolate)NF2.6mg;サッカリンナトリウム、USP0.5mg;香味剤S.D.ペパーミント、FCC0.75mg;マグナスイートMM 188M0.5mg;バニラ香味剤#800、0.2mg;D&C黄色#10、アルミニウムレイク(Aluminum Lake)0.2mg;ステアリン酸マグネシウム、NF0.5mg;エアロシル200、0.4mg。
好適な舌下錠の他の例は以下の配合に従って生成される:ヒアルロン酸とポリリジンの抱合体(1個の錠剤あたり1mgの抱合体を供給するように配合);マンニトール30.30mg;微結晶セルロース(FMC)40.00、34.00mg;グリコール酸スターチナトリウム(EXPLS TAB Mendell)2.60;ステアリン酸マグネシウム、NF0.50mg;サッカリンナトリウム(Mallinckrodt)2.00mg;アスパルテーム(Neutrasweet)4.00mg;ペパーミント(Virginia Dare HF82 SD#517)0.40mg;バニラ(Virginina Dare 800NAT)0.30mg;MAFCOマグナスイート 188M0.25mg;プロスイート#560(MM54)0.75mg;チョコレート風味#682、2.00mg;D&C黄色#10。
【0098】
当業者は、これらの製剤に対する改変が容易に実施できることを認識する。それ自体が対象に対して治療的または有益である化合物を含む他の成分を、本発明の製剤に添加できることが理解される。例えば、本発明の経口製剤はビタミンまたはフッ化物を含んでよく、眼用製剤は、抗緑内障薬などの当分野で知られている治療剤を含んでもよい。
【0099】
上記の製剤においては、マンニトール、サッカリンナトリウム、ペパーミント、マグナスイートおよびバニラは、抱合体の味を隠すか、または快い味を最小限に提供することのできる香味剤である。香味剤は、有効性を犠牲にすることなく取り除くことができる。しかし、対象のコンプライアンスはより困難となる。香味は、個人の必要性や好みに合うように変化させることができる。D&C黄色は着色剤として用いられる。着色剤は、容易に取り除いたり、または他の染料と置き換えることができる。ステアリン酸マグネシウムおよびエアロシル200は、錠剤を圧縮機から解放するための潤滑剤である。これらの成分は、製造工程によっては完全に置き換えまたは取り除くことができる。微結晶性セルロース、マンニトールおよびグリコール酸スターチナトリウムは、錠剤のコアを提供する。セルロースおよびデンプンは、コア成分の結合を促進し、水分の存在下で錠剤の崩壊を促進する。これらの成分の相対的な量は、錠剤の崩壊を調節するために変化させることができる。
【0100】
全成分の量を計量し、マンニトールおよびアビセル(Avicel)を除く全成分を、80メッシュのステンレススチール製のふるいに通す。これらの材料は好適なサイズのポリエチレンの袋内で約5分間混合し、PKブレンダーなどの好適なブレンダーに移す。マンニトールおよびアビセルの必要量を40メッシュのステンレススチール製のふるいに通し、前記PKブレンダーに他の材料と共に加える。混合物をPKブレンダーで10分間混合して取り出す。混合物の試料を、効力および他の品質決定基準に関して検査する。混合物のかさ密度は、100tap用にセットされたかさ密度計を用いて決定する。錠剤圧縮機を指定のパンチに設定し、混合物を80mgの錠剤重量に圧縮する。
【0101】
錠剤は、1個の錠剤を舌の下に置くことにより投与する。この錠剤は崩壊してヒアルロン酸を含む抱合体を放出し、抱合体は次に口腔粘膜に付着する。
経口溶液は、蒸留した殺菌液を用いて製造し、以下の配合に従って製造することができる:ヒアルロン酸とポリリジンの抱合体(1投与当たり1mg/mlの抱合体を提供するように配合);塩化ナトリウム0.9%;および塩化ベンザルコニウム0.1〜0.2%。該製剤は、滴剤によるかまたは細かいミストとして投与可能な経口溶液であるが、その投与経路はこれらに限定されない。当業者は、製剤に対して容易に改変が可能であることを、容易に理解する。
【0102】
上記の製剤において、塩化ナトリウムは溶液に等浸透圧性を付与するために用いられる。かかる溶液はユーザーにとってより快適であるが、しかし塩化ナトリウムは所望により取り除いてもよい。また上記の製剤において、塩化ベンザルコニウムは保存剤として用いられる。
しかしある態様においては、わずかに高張性の製剤、例えば280mOsmを越える製剤を用いて、抱合体がそれ自体とまたは他の荷電化合物と錯体を形成しないよう維持するのが好ましい。これらの態様は、本明細書に記載されている。
【0103】
経口投与はまた、粘膜付着性デバイスまたはシステムを用いて有効にすることができる。この型の好ましいシステムは、適用後に自然に壊れるものである。好適な生体内崩壊性粘膜付着性デバイスまたはシステムの1例は、ジェル、ディスクまたはフィルムとして製剤化可能であり、任意の粘膜表面において用いることができるBEMA(登録商標)である。生体内崩壊性粘膜付着性デバイスは、活性剤が口腔または膣の粘膜などの粘膜表面に送達されることを許容する、ポリマーベースのシステムである。生体内崩壊性粘膜付着性デバイスは一般に、多くの形態をとることが可能なフィルムから構成される。1つの好ましい態様においては、生体内崩壊性粘膜付着性デバイスは、小さな半軟性ディスクの形態である。生体内崩壊性粘膜付着性デバイス、例えばBEMA(登録商標)ディスクは、形成後に抱合体を浸透させることができる。これらのデバイスは、例えば口、膣、直腸または肛門などの粘膜表面に付着できる。フィルムが生体内崩壊されるにつれて、それに含まれていた抱合体は放出され、隣接する粘膜に付着する。ディスクは本質的には粘膜表面の水分に溶解するため、ディスクを取り除く必要はない。生体内崩壊性粘膜付着性デバイスの1つの利点は、粘膜に付着せずにそれを囲む組織または腔へ放出される抱合体が最少となることである。一般に、フィルム(例えば、ディスクの形態において)の一方の側のみが粘膜表面に付着する。膣または肛門に適用するには、デバイス(例えばディスク)が丸められてから、デバイスの付着側に特に注意しながら腔へと挿入されることが推奨される。
【0104】
生体内崩壊性粘膜付着性デバイスは、デバイス中の抱合体の滞留時間、生体内崩壊の動態(および従って、活性剤の放出時間および放出率)、デバイスの味(特に経口投与に好適な)、ならびに形状およびディスクの厚さを制御するよう、特定的に合成することができる。
生体内崩壊性粘膜付着性システムおよびデバイスは、
【表15】
から市場を通して入手可能である。米国特許第
【表16】
号が特に参照可能である。
【0105】
抱合体は、デバイス重量の0.001〜30%、より好ましくは重量の0.005〜20%を構成してよい。他の成分もBEMA(登録商標)ディスクに存在することができ、それらには、可塑剤、香味剤(好ましくは経口適用のために)、芳香剤(例えば香料)、着色剤、および保存剤を含む。これら後者の成分は、ディスクの付着層および非付着層のどちらかまたは両方に加えることができる。
ディスクは、種々の形状またはサイズを有することができる。ディスクの厚さは、0.05mm〜1mm、または0.1mm〜5mmの範囲で変えることができ、付着層または非付着層のどちらかが総厚さの10〜90%を占めてよい。本明細書に記載されているように、抱合体は、多数の適切な溶媒または溶媒の組合せの中に入れてBEMA(登録商標)ディスクに装填するよう調製することができ、これら溶媒は、水、メタノール、エタノール、または低アルキルアルコール例えばイソプロピルアルコールなどを単体でもしくは組み合せて含むが、これらに限定されない。
【0106】
ディスクの形成は、フィルムディッピング、フィルム被覆、フィルム鋳造、スピンコーティング、またはスプレー乾燥を含むがこれらに限定されない、当分野で既知の任意数の技法を用いて実現することができる。ディスクの2つの層は一緒に形成することもでき、または別々に形成した後互いに接触させることもできる。ディスクは、楕円、正方形、および長方形の形状にすることができるが、これらに限定されない。
本発明の組成物は、薬学的に許容し得る濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合する担体、補助剤、および随意的に他の治療用成分を規定どおりに含むことができる、薬学的に許容し得る担体中において投与してもよい。用語「薬学的に許容し得る担体」とは、1種または2種以上の適合可能な固体または液体の充填剤、希釈剤、または封入物質であって、対象への投与に適したものを意味する。用語「担体」とは、有機および/または無機の成分、天然または合成のものであって、活性成分がそれに組み合わされて対象への適用が促進されるものを意味する。医薬組成物の成分はまた、本発明の抱合体および組成物と、また互いに、所望の医薬有効性を実質的に損なうことのない様式において混合することができる。薬学的に許容し得る担体は当分野で知られている。
【0107】
担体の性質は投与部位に依存して変わる。しかし、担体はグルタミン転移酵素活性に好適なものでなければならない。グルタミン転移酵素は、わずかにアルカリ性のpH(例えば、pH6.5〜9)において効率的に機能するが、これは、特に眼への投与に好適ではない。その結果、グルタミン転移酵素のpH依存性を、塩濃度を増加させることにより補償することが必要となる。また、ヒアルロン酸および連結分子が互いにイオン的に錯体を形成して、連結分子がグルタミン転移酵素に接近不可能になったり、および/またはヒアルロン酸が湿潤剤として効果的に機能するのを阻害したりしないことを確かめることも必要である。pHおよび塩濃度は、グルタミン転移酵素の最大活性、ヒアルロン酸と連結分子との間の最小イオン相互作用、および冒された表面または組織の最小の刺激に基づき決定する。
【0108】
グルタミン転移酵素活性に適合する好適な保存剤は、ケーソン(kathon)およびメチルパラベンを含む。グルタミン転移酵素活性に適合する好適な洗浄剤および界面活性剤は、hampene led、Tween 20、chemophor RH-40、およびDC190を含む。グルタミン転移酵素活性に適合する好適な保湿剤は、プロピレングリコール、ブチレングリコール、およびglucacam E-20を含む。避けるべき保存剤は、glydant、Dowicil 200、BTC2125M、およびヨードアセトアミドを含む。避けるべき洗浄剤および/または界面活性剤は、Bioterge AS-40、CTAB、モノマートCPA40、およびSDSを含む。
【0109】
ヒアルロン酸および他の投与される化合物は、それ自体で(ストレートで)、または薬学的に許容し得る塩の形態で投与することができる。医薬で用いる場合は、塩は、薬学的に許容し得なくてはならないが、しかし非薬学的に許容し得る塩も、それから薬学的に許容し得る塩を調製するために用いることができる。かかる塩は、限定されないが以下の酸から調製するものを含む:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸。また、かかる塩は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類塩、例えばカルボン酸基のナトリウム、カリウム、またはカルシウム塩として調製することもできる。
【0110】
好適な緩衝剤は、酢酸および塩(1〜2%w/v);クエン酸および塩(1〜3%w/v);ホウ酸および塩(0.5〜2.5%w/v);およびリン酸および塩(0.8〜2%w/v)を含む。好適な保存剤は、塩化ベンザルコニウム(0.003〜0.03%w/v);クロロブタノール(0.3〜0.9%w/v);パラベン(0.01〜0.25%w/v)およびチメロサール(0.004〜0.02%w/v)を含む。
医薬組成物はまた、好適な固体またはゲル相の担体または賦形剤を含むことができる。かかる担体または賦形剤の例は、これらに限定されないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーを含む。
【0111】
好適な液体または固体の医薬調製物の形態は、例えば、吸入用の水もしくは生理食塩水溶液、マイクロカプセル化、渦巻化(encochleated)、微細金粒子に被覆、リポソーム中に含有、噴霧化する、エアロゾル、皮膚に移植用のペレット、またはこすって皮膚に適用するために尖った物質上に乾燥して導入、などである。医薬組成物はまた以下を含むことができる:顆粒、粉体、錠剤、被覆錠剤、(微小)カプセル、座薬、シロップ、乳剤、懸濁液、クリーム、ドロップ、活性化合物の持続放出用調製物などであって、調製用賦形剤、添加物および/または補助剤、例えば崩壊剤、結合剤、被覆剤、膨張剤、潤滑剤、香味剤、甘味料または可溶化剤などが上記のように通例として用いられているもの。医薬組成物は、種々の薬剤送達システムにおける使用に好適である。薬剤送達の現在の方法の簡単な概説については、Langer, Science 249: 1527-1533, 1990を参照のこと;該文献は参照として本明細書に組み込まれる。
【0112】
組成物は、単位用量形態で便利に提供することができ、薬学分野で周知の任意の方法により調製することができる。すべての方法は、化合物を、1種または2種以上の付属成分を構成する担体と関連させるステップを含む。一般に組成物は、化合物を液体担体、細かく分割した固体担体またはその両方と均一かつ密接に関連させ、次に必要に応じて製品を形作ることによって調製される。液体用量単位は、バイアルまたはアンプルである。固体用量単位は、錠剤、カプセル、フィルム、および座薬である。
重要なのは、担体はそれが接触する身体組織または表面に好適でなければならないことである。当業者に知られているように、眼への投与に好適な担体は、眼に対する刺激が最少であること、そして好適には全く刺激しないことが要求される。眼または眼科用の製剤は薬学分野で知られており、当業者はかかる担体の組成についての指針としてRemington’s Pharmaceuticalsを参照することができる。
【0113】
眼科用製剤は、溶液、乳液、懸濁液などの液体、ならびにジェルおよび軟膏などの半固体の形態をとることができる。
眼科用製剤は、眼科用保存剤を含んでもよく、含まなくてもよい。眼科用保存剤は、当分野で知られている。一般にかかる保存剤は抗菌剤であり、これは細菌による感染が眼への剤の投与における最も一般的な副作用の1つだからである。眼科用保存剤の例は、有機水銀剤(例えば、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、チメロサール(Merthiolate(登録商標)、Lilly);四級アンモニウム化合物(例えば塩化ベンザルコニウム)、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、ポリクオタニウム−1(POLYQUAD);パラヒドロキシ安息香酸エステル;および置換アルコールおよびフェノール(例えば、クロロブタノール、クロロブタノール/フェニルエチルアルコール)を含む。他の好適な保存剤は、メチルパラベンおよびプロピルパラベンを含む。
【0114】
本明細書に記載の種々の製剤は、当分野で知られているように、ろ過または加熱により殺菌してもよい。
眼科用製剤はさらに、等張化剤、緩衝剤、保存剤(上に記載)、希釈剤、安定剤、キレート剤、増粘剤等を含むことができる。等張化剤の例は、塩化ナトリウム、ホウ酸、クエン酸ナトリウム等を含む。緩衝剤の例は、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤等を含む。眼科用製剤のpHは5〜8の範囲に維持するべきである。希釈剤の例は、蒸留または殺菌した水または生理食塩水(水性製剤用)、および植物油、流動パラフィン、鉱油、プロピレングリコール、およびp−オクチルドデカノール(非水性製剤用)を含む。安定剤の例は、亜硫酸ナトリウムおよびプロピレングリコールを含む。好適なキレート剤は、EDTAナトリウムである。増粘剤の例は、グリセロール、カルボキシメチルセルロース、およびカルボキシビニルポリマーを含む。
眼科用製剤に含むことができる他の成分は、ソルビン酸、リン酸二水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、グリセリン、リゾチーム等を含む。
【0115】
経口投与に対しては、かかる担体は本発明の化合物が、舌下または口腔内吸収錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ジェル、フィルム、シロップ、スラリー、懸濁液等として製剤化できるようにする。経口製剤はまた、練り歯磨き、パウダー、液体歯磨き剤、入れ歯洗浄剤、うがい薬、チューインガム、キャンディ、および他の食材を含むことができる。経口使用のための医薬調製物は、固体の賦形剤として得ることができ、随意的に、得られた混合物をすりつぶして必要に応じ好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物として加工し、錠剤または糖衣錠のコアを得ることができる。好適な賦形剤は、特に、乳糖、ショ糖、マンニトールまたはソルビトールを含む糖類などの充填剤;セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などである。所望により崩壊剤を加えてもよく、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、または、アルギン酸もしくはその塩例えばアルギン酸ナトリウムである。随意的に、経口製剤は、内部の酸性条件を中和するために生理食塩水また緩衝剤中に製剤化することもできるが、これは、抱合体が口腔内で取り込まれる場合には、消化管において取り込まれる場合に比べて重要ではない。糖衣錠のコアは、好適なコーティングと共に提供されてよい。この目的のために濃縮糖溶液を使用することができ、それには随意的に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールジェル(carbopol gel)、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒もしくは溶媒混合物を含んでよい。染料または顔料は、錠剤または糖衣錠のコーティングに、識別のため、または活性化合物の用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、加えることができる。
【0116】
経口で用いることのできる医薬調製物は、ゼラチンで作られた押し込み式カプセル(push-fit capsule)、ならびにゼラチンおよび可塑剤、例えばグリセロールまたはソルビトールで作られた軟性の密封カプセルを含む。押し込み式カプセルは、活性成分を、乳糖などの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および随意的に安定剤との混合物として含むことができる。ソフトカプセル剤においては、活性化合物は、好適な液体、例えば脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどに溶解または懸濁させることができる。さらに、安定剤を加えることができる。経口投与用に製剤化された微小球体も用いることができる。かかる微小球体は、当分野においてよく規定されている。経口投与用のすべての製剤は、かかる投与に好適な用量とすべきである。口腔内投与に対しては、組成物は従来様式で製剤化された錠剤またはトローチ剤の形態をとることができる。
【0117】
経口製剤に好適な抗菌剤などの保存剤は、チモール、メントール、トリクロサン、4−ヘキシルレソルシノール、フェノール、オイカリプトール、安息香酸、過酸化ベンゾイル、ブチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、サリシルアミド等を含む。
歯磨きペーストなどの経口製剤のための増粘剤は、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、天然ゴム、例えばカラヤゴム、キサンタンガム、アラビアゴム、トラガカントゴム等を含む。
経口製剤はさらに、保湿剤、例えば、これらに限定されないが、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等を含むことができる。
製剤が練り歯磨き、または歯の洗浄剤である場合には、さらに、シリカなどの研磨剤、例えば乾膠体、ヒドロゲル、アエロゲル、炭酸カルシウムもしくはマグネシウム、リン酸カルシウム、アルミナおよびその水酸化物、アルミノケイ酸塩、ケイ酸マグネシウムおよびケイ酸ジルコニウム等を含むことができる。これらの製剤はさらに、フッ化物、および亜鉛塩やアルカリ金属ピロリン酸塩などの抗結石剤を含んでもよい。
【0118】
吸入による投与に対しては、本発明による使用のための化合物は、エアゾールスプレーの形態で、加圧式パックまたは噴霧器から、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素もしくは他の好適なガスなどの好適な推進剤の使用と共に便利に送達することができる。加圧式エアロゾルの場合、用量単位は、計量した量を送達するためのバルブを提供することにより決定することができる。吸入器(inhaler)または吸入器(insufflator)において用いるための例えばゼラチンなどのカプセルおよびカートリッジは、化合物と、例えば乳糖またはデンプンなどの好適なパウダーベースとのパウダー混合物を含むよう、製剤化することができる。鼻腔へ投与するための化合物はまた、ジェルまたは点鼻薬として製剤化することができる。
【0119】
局所投与のためには、化合物は、外表面に好適な任意の標準的製剤として提供することができる。例えば、化合物が皮膚での使用を意図している場合、軟膏、ローション、スプレー剤、ジェル、ティッシュ、ふき取り繊維(例えば、オムツかぶれの処置用)等として提供することができる。唇への適用に対しては、化合物はリップバームまたはリップスティックの形態で提供できる。他の例としては、化合物が毛髪への適用を意図している場合、スプレー、シャンプー、または毛髪固定剤例えばヘアスプレー、ジェル、もしくはムースなどの形態で提供することができる。爪への適用に対しては、化合物は、マニキュア液および他の爪用ケア製品として提供できる。
【0120】
好ましくはないが、ある場合においては化合物は、そのような目的のために製剤化されている場合は全身的に投与してもよい。非経口投与は、ボーラス注射または連続注入によって実施できる。注射用の製剤は、単位用量形態、例えば、アンプルまたは複数用量容器に保存剤を添加して提供することができる。組成物は、油性または水性の媒体内において懸濁液、溶液または乳液の形態をとることができ、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの配合剤を含んでよい。
【0121】
非経口投与用の医薬製剤は、水溶性形態の活性化合物の水溶液を含む。さらに、活性化合物の懸濁液も、適切な油性注射用懸濁液として調製してもよい。好適な脂溶性溶媒または媒体は、例えばゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームなどを含む。水性注射用懸濁液は、懸濁液の粘性を高める物質を含んでよく、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどである。随意的に、懸濁液は、好適な安定剤または化合物の溶解性を高める剤を含むことができ、高度に濃縮された溶液の調製を可能としている。代替的に活性化合物はパウダーの形態をとることもでき、使用の前に、例えば殺菌された発熱物質を含まない水などの好適な媒体と構成される。
【0122】
化合物はまた、直腸または膣内での組成物、例えば座薬(タンポンを含む)または停留浣腸剤、例えばココアバターもしくは他のグリセリドなどの従来の座薬ベースを含むものとして、製剤化してもよい。膣洗浄製剤も用いることができる。粘膜投与はまた、粘膜付着性フィルム、例えば本明細書に詳細に記載されたものなどを用いて実施することができる。膣内投与を含むある態様においては、組成物を、膣のグルタミン転移酵素を介した抱合体の膣粘膜への付着を促進するために、膣内環境のpHを一時的に上げる媒体内で提供するのが望ましい場合がある。このpHの増加は長く持続する必要はなく、むしろ、有効量の抱合体が組織に接触するのに十分なだけ長いのがよい。例として、pHは、局所的に6.5〜9のpHを提供する粘膜付着ディスク、座薬または洗浄溶液の使用を通して調整することができる。
前に記載の製剤に加えて、化合物はまた、デポー調製物としても製剤化することができる。かかる長時間作用型製剤は、好適なポリマー材料もしくは疎水性材料(例えば許容し得る油内の乳液として)またはイオン交換樹脂と共に、またはやや溶けにくい誘導体、例えばやや溶けにくい塩として、製剤化してもよい。
【0123】
本発明の組成物は、例えば本明細書に記載の生体内崩壊性粘膜付着性システムおよび当分野で知られたものなどの、持続放出デバイスを用いて投与することができる。
他の送達システムは、時間放出、遅延放出、または持続放出送達システムである。かかるシステムは、化合物の繰り返しの投与を避けることができ、対象および内科医の利便性を増す。多くの型の放出送達システムが利用可能であり、当業者に知られている。それらは、ポリマーベースシステム、例えばポリ(ラクチド−グリコリド)、コポリオキサラート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシブチル酸、およびポリアンヒドリドを含む。
【0124】
前記のポリマー含有薬剤のマイクロカプセルは、例えば、米国特許第5,075,109号に記載されている。送達システムはまた非ポリマーシステムを含み、それらは以下である:コレステロールなどのステロールを含む脂質、コレステロールエステルおよび脂肪酸または中世脂肪、例えばモノ−、ジ−、およびトリ−グリセリド;ヒドロジェル放出システム;シラスティックシステム(sylastic system);ペプチドベースシステム;ワックスコーティング;従来の結合剤および賦形剤を用いた圧縮錠剤;部分融合インプラントなど。特定の例は、(a)本発明の剤が、マトリックス内の形態で含まれている崩壊システムであって、米国特許第4,452,775号、第4,675,189号、第5,736,152号などに記載されているようなシステム、および(b)活性成分が、制御された速度でポリマーから浸透する分散性システムであって、米国特許第3,854,480号、第5,133,974号、第5,407,686号などに記載されているようなシステムなどを含むが、これらに限定されない。さらに、ポンプをベースにしたハードウェア送達システムも用いることができ、それらの幾つかは移植に適合される。
【0125】
持続放出組成物は、局所的に、例えばジェル、軟膏、クリームまたはパッチ(例えば、経皮パッチまたは粘膜パッチ、例えばBEMA(登録商標)ディスク)として適用可能である。例として、持続放出生分解性粒子は、体表面にそれのみで、または軟膏、ジェルもしくはクリームとして適用できる。局所的投与は、皮膚表面および粘膜表面への投与を含む。粘膜表面送達は、リップスティック、リップバームなどの唇のトリートメント、ヘルペス用軟膏;日焼け止め軟膏;例えば口内炎(例えば、放射線または化学療法が誘発した口内炎)のための経口ジェル;口腔洗浄剤、歯磨きペースト、吸入剤、表面パッチ等を介して、効果を上げることができる。代替的に、それらを移植することもできる。好ましい態様においては、持続放出デバイスは生体内崩壊性または生分解性である。他の好ましい態様においては、持続放出デバイスはそれらが適用された表面(例えば皮膚または粘膜)に付着し、好ましい形態は本発明の生体内崩壊性粘膜付着性(例えばBEMA(登録商標))デバイスである。当分野ではかかるデバイスは周知である。
【0126】
本発明の組成物は、ある側面に従ったキットの形態で提供することができる。本明細書で用いられる場合、組成物がキットとして提供されるときは、組成物は第1の容器(たとえば瓶)内に包装または含まれており、その容器はさらに第2の容器(例えば箱、段ボール箱、または袋)に包装されていることを意図している。どの場合でも、組成物の使用のための説明書を含むのが好ましい。かかる説明書は、第1の容器(すなわち、組成物を直接包含する容器)の外表面のラベルに直接提供してもよく、または、第2の容器(すなわち、第1容器を包含する容器)の外表面のラベルに提供してもよい。代替的に、使用説明書は、両方の容器とは別に、例えば第2容器内に入れた独立の用紙に記載してもよい。使用説明書は、単一用量で送達される量、任意の間隔において越えるべきではない最大量(例えば1日最大用量)、投与の方法および投与部位、処置すべき対象、および製剤で処置すべきではない対象、禁忌事項、および製剤の活性成分と非活性成分などの情報を含むが、これらに限定されない。
以下の例は、例示目的で示すものであり、本発明の範囲を限定することは意図しない。
【0127】
例
例1:ポリ(L−リジン)とヒアルロン酸の還元アミノ化を介した抱合:
緒言:
ポリリジン(PLL)のヒアルロン酸(HA)への抱合は、ヒアルロン酸の末端糖残基のアルデヒド基がポリリジンのアミノ基とシッフ塩基を形成する能力に基づく。形成されたシッフ塩基は安定ではなく、加水分解により容易に逆転される。多数の還元剤を用いてシッフ塩基を安定な第2級アミンに変換することができる。還元反応は、シアノボロヒドラートナトリウムによって最も促進されるが、これは、この試薬のシッフ塩基に対する高い反応性およびアルデヒド基に対する低い反応性による。
【0128】
【化1】
【0129】
スキーム1.還元アミノ化を介したポリ(L−リジン)ヒアルロン酸抱合体の合成
材料および方法:
分子量粘性が平均220,000のヒアルロン酸であって、ナトリウム塩形態のものは、Lifecore Biomedical(Chaska, MN)より購入した。FITCでラベルされたポリ−L−リジン(すなわち、PLL−FITC)であって、分子量15,000〜30,000および置換の程度が1モルのリジンモノマー当たり0.003〜0.01モルFITCのものは、Sigma Chemical Co.(St. Louis, MO)より購入した。シアノボロヒドリドナトリウム(NaBH3CN)は、Aldrich(Milwaukee, WI)から入手した。
【0130】
還元アミノ化により、NaBH3CNを還元剤として用いてスキーム1に示すように、PLLをHAに抱合した。HA(100mg)およびPLL(10mg)は、1MのNaClを含む15mlのホウ酸ナトリウム緩衝液(0.1M、pH8.5)に溶解した。HAの濃度は6mg/mlであり、一方PLLの濃度は0.6〜2.4mg/mlの範囲で変化させた。シアノボロヒドリドナトリウムを24mMの濃度で反応物に加え、HAの還元終端に対して約1000モル過剰とした。反応混合物を40℃で一定に攪拌しながらインキュベートし、反応物からアリコートを試薬混合の直後、3日後および6日後に取り出した。アリコートはリン酸緩衝液で希釈して、HA濃度が3mg/mlおよびPLL濃度が0.3mg/mlとし、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)により分析した。陰性対照実験を、反応物にシアノボロヒドリドナトリウムを加えないこと以外は同じ条件下で行った。最終生成物は、実験では6日間の反応で、また対照では3日間の反応で収穫して、0.5MのNaCl水性溶液に対して、Spectra/Por7膜(分子量カットオフ50,000)を用いて透析し、未反応のシアノボロヒドリドナトリウムを取り除いた。低pHで行った実験では、試料は酢酸緩衝溶液(50mM酢酸、0.2MのNa2SO4)でpH3.5に希釈し、1日保存し、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)により分析した。
【0131】
GPCはWatersポンプシステムを用いて行い、25℃で流量1.0ml/分にて、Waters600コントローラおよび717自動サンプラーを備えたUltrahydrogel線形カラム(Waters Corporation、Milford, MA, US)を用いた。0.2MのNa2SO4および5mMのリン酸緩衝液(pH8.0)を含む水溶液を移動相として用いた。各試料をそれぞれ500μl、カラムに注入した。溶出液は、Waters996フォトダイオードアレイ検出器で検出し、208nmおよび490nmの波長、ならびに474走査型蛍光検出器(励起波長490nmおよび530nm)で処理した。低pHでの実験では、走行および検出条件は同一で、異なるのは溶出緩衝液の組成が50mMの酢酸、0.2MのNa2SO4でpHが3.5であることのみであった。
【0132】
結果:
反応混合物のUV吸収(490nmおよび208nmにおいて)および蛍光(490nmおよび530nmにおいて)GPCプロファイルは、5分後、3日後および6日後に分析した。最大滞留時間7分間におけるピークはHAによるものであり、一方最大滞留時間9分間におけるピークはPLL−FITCによるものである。この指定は、HAおよびPLL−FITC化合物の個別のGPCプロファイルに基づく。反応中の転換(transformation)は、PLL−FITCの変換(conversion)により追跡し、490nmでのUV吸収および530nmでの蛍光によって検出する。上記条件において、PLL−FITCは最大吸収を示し、一方HAは吸収を示さない。反応開始後、PLL−FITCに対応するピークの領域は減少し、反対にHAに対応するピーク(滞留時間7分で最大のピーク)は増加する。新しいピークの出現(滞留時間7分)は、PLL−FITCのHAへの抱合のためである。その吸収の増加は、反応過程におけるPLL−FITCとHAの抱合の増加に帰することができる。時間による抱合の程度は対応するピークの積分により決定され、2.4%(5分)、31.2%(3日)、37.5%(6日)である。
【0133】
NaBH3CH不在で実施された陰性対照実験を、還元剤を用いた場合の反応と比較した。490nmでのUV吸収および530nmでの蛍光によって検出されたGPCプロファイルを分析した。対照実験における抱合の程度は約10%であり、これはNaBH3CHが存在する場合に観察された抱合の程度の1/3未満であった。
【0134】
反応pH8.5においてPLL−FITCは正に荷電され、一方HAは負に荷電される。HAとPLL−FITCとの間の抱合反応は高い塩濃度(1MのNaCl)において実施され、まだ可能性の残る、試薬間のイオン錯体形成を防ぐ。イオン性と共有性の結合形成を識別するために、反応生成物を酢酸によりpH3.5に酸性化した。酸性条件下においてHAはプロトン化され、もしイオン錯体が形成された場合には不安定である。反対に、化学的共有結合は同じ条件で安定である。陰性対照物、およびNaBH3CHと共に得られた試験反応混合物は、pH3.5で1日保存し、GPC(酢酸緩衝液、50Mm、0.2MNa2SO4)により分析した。抱合体に帰するピークの部分は酸性化の前と同じである:対照では10%、NaBH3CHとの実験では34%であった。共有結合により形成されたHA−PLL−FITC抱合体は、pH3.5で侵食されないほどに十分に安定である。
【0135】
例2:ラビットの眼モデルにおけるHA−PLL−FITCの結合
材料および方法:
FITCでラベルされたポリリジンおよび、ヒアルロン酸に結合したFITCでラベルされたポリリジンの、付着の程度および時間を、in vivoでラビット角膜モデルを用いて試験した。このランダム化・二重盲検・プラセボ対照・単一中心・対側群・前臨床試験には、ニュージーランドホワイトラビットを用いた。
各ラビットの眼は、次の4種類の処置の1つにランダムに割り当てた:活性物質1(媒体に0.42%のFITCでラベルされたPCS−101(ポリリジンに抱合したヒアルロン酸で、抱合体に対して遊離ヒアルロン酸が約1:1のモル比;HAの平均分子量は220,000Daであり、ポリリジンは15,000〜30,000Daである)を添加(試料サイズ:眼9個));活性物質2(媒体に2%のFITCでラベルされたポリリジン)を添加(試料サイズ:眼4個));媒体(20mMのホウ酸ナトリウム、pH7.8に、80mMのNaClを添加)(試料サイズ:眼5個);およびプラセボ(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4)(試料サイズ:眼2個)。元の溶液の蛍光強度は、ポリリジン溶液中よりPCS−101溶液中で175倍低い。
【0136】
組成物は、1投与あたり40μlの同一容量で、生きているラビットのそれぞれの眼に1日2回、連続3日間、従って1つの眼に合計6滴を投与した。最後の滴下投与の1時間、16時間および36時間後に動物を屠殺し、角膜を取り出して、断面切片法のためにOCT媒体中で冷凍した。切片はSpotRTデジタルカメラ(Diagnostic Instrument, Inc.)により、FITC下の明視野照明、40倍の倍率で組織学的検査のために撮影した。すべてのラビットの試験が完了され、全変数について評価可能であった。結果を図1A〜1Fに示す。これらは、最後の適用の1時間後および36時間後における、点眼製剤中の蛍光PCS−101およびポリリジンの、in vivoでのラビット角膜への架橋を示す。
【0137】
結果:
図1A〜1Fは、眼の試験における、蛍光でラベルされたトランスリンク(TransLink)(登録商標)システム生成物を示すラビット角膜断面の写真である。上段(図1Aおよび図1B)は、3日間で6滴投与された最後の1滴の後、1時間後および36時間後に屠殺されたラビットの角膜上の蛍光ラベル付きポリリジントランスリンク(登録商標)システムアンカー(活性剤なし)を示す。ぺリコールポリリジンアンカーが、死んだ角膜上皮の最上層全体で1時間後に顕著な耐久性を維持していること、および36時間後にその存在を示していることがわかる。1時間後と36時間後の間の信号の低減は、24〜36時間後の上皮の自然な剥離の結果および、マーカーとして用いた蛍光分子の消滅による可能性が高い。
【0138】
図1Cおよび図1Dは、1時間後および36時間後における、ヒアルロン酸とポリリジンの抱合体のラビット角膜への付着を示す。抱合体中のポリリジンはFITCで同様にラベルされている。付着の前、FITCでラベルされた抱合体の原液は、FITCでラベルされたポリリジンの原液に比べて175倍低い蛍光強度を示した。ヒアルロン酸含有抱合体は、1時間後において、角膜の上皮細胞の最上層(および結膜/瞼、データ示されず)に耐久的に架橋する。最終適用の36時間後、少量だが検出可能な量の抱合体が角膜上に存在する。
図1Eは、角膜を媒体のみで処置した場合の、バックグラウンドの蛍光レベルを示す。図1Fは、断面における角膜の構造を示す。
【0139】
結論:
付着の程度および時間:
FITCが抱合したポリリジンを6滴投与すると、ポリリジンは、最後の1滴の適用後少なくとも36時間、ラビット角膜に耐久的に付着した。処置された眼の分析により、ポリリジンが架橋した分子が、角膜の成熟した表面上皮細胞および結膜および瞼にも付着したことが示された。この所見は驚きであり、何故ならば、正常なラビットの眼の表面細胞は自然の涙の膜が覆っており、剤がそこに付着するのを妨げることが予想されるからである。ポリリジンの付着時間の長いことは、かかる付着が自然の眼の環境に耐久するものであり、瞬きによって機械的に壊されるものではないことを示す。
【0140】
ヒアルロン酸に抱合したFITCをラベルしたポリリジンの6滴の投与は、同様に、少なくとも1時間、ポリリジンのラビット角膜への付着をもたらした。ラベルされたポリリジンの最小量は36時間後にも検出可能であったが、これは蛍光でラベルされた抱合体の原液の蛍光強度が低いことにより、部分的に説明可能である。ポリリジン単体の場合の結果と整合して、ヒアルロン酸抱合体の、眼の表面への耐久性のある付着が達成された。重要なことは、眼への刺激が観測されなかったことである。
【0141】
刺激:
活性物質1は、初回適用の5分後の1時点のみにおいて、ベースラインを越える統計的に有意な充血の増加を引き起こした。しかし、半グレード未満のこの変化は、このモデルにおいて刺激反応を達成するのに臨床的に重要とは考えられない。活性物質2は、4つの時点において、ベースラインを越える統計的に有意な充血の増加を引き起こした。さらに活性物質1は、ベースラインを越える統計的に有意な複合的な眼の刺激の増加を引き起こさなかったが、活性物質2は、4つの時点において、ベースラインを越える統計的に有意な複合的眼の刺激の増加を引き起こした。
【0142】
充血または複合的な眼の刺激における活性物質1とプラセボとの間の統計的な有意差は、どの時点においても観測されなかった。しかし活性物質1と活性物質2との間には、1〜3日において幾つかの統計的な有意差が観測され、特に、充血については15時点、複合刺激については8時点で観測された。
活性物質1は、ベースラインと比べて、またはプラセボ群と比べて、どの時点においても、いかなる臨床的に重要な変化も生じさせなかった。また1時点を除き、この化合物は、任意の刺激スコアにおいて統計的に有意な変化を生じさせなかった。この結果活性物質1は、本試験において刺激剤であることは示されなかった。
【0143】
例3:HA−ポリリジン抱合体のin vivoでヒトの指の角質層へ結合する能力:
材料および方法:
反応溶液は、0.34μg/μlのHA−PLL−FITC抱合体(PLL−FITC含量換算)を0.1Mのグリシン緩衝液と0.15MのNaCl、pH8の中に含み、合計反応量は20μlである。
ヒトの指を水ですすいで乾燥し、その後反応溶液を適用した。反応溶液は粉末無添加の指サックを用いて皮膚に10秒間すりこみ、室温で放置して乾燥した。指は次に水で洗浄して乾燥した。洗浄後の種々の時点において(0、2.5、6および24時間)、指の最上表面をSpotRtデジタルカメラ(Diagnostic Instrument, Inc.)を用いてFITC照明下で撮影した(2倍倍率)。
【0144】
結果:
図2は、0.34μg/μlのHA−PLL−FITC抱合体が、試料をすりこんで適用した場合に、ヒト指にin vivoで結合する時間経過のデータを示す。時間の経過は、0時間、2.5時間、6時間、および24時間である。処置なしの組織(対照)の染色レベルも同時に示す。
洗浄後に観測される明るい蛍光は、HA−PLL抱合体がヒト指の角質層にin vivoで架橋したことを示す(図2)。洗浄の24時間後においてもかなりの量の蛍光を見ることができ、in vivoでヒト皮膚に架橋したHA−PLL抱合体の耐久性を24時間以上に渡って示している。
【0145】
例4:グルタミン転移酵素無添加の場合のPCS−101の繰り返し適用後の取り込み
材料および方法:
完全な反応溶液は、PCS−101(HA−PLL−FITCおよび遊離HA)10mg/mlを、pH7.8の20mMのホウ酸ナトリウムと80mMのNaClとを含む滅菌緩衝液中に含む。総反応容量は50μlであった。
【0146】
無傷のラビット眼球をPBS緩衝液ですすいだ。反応溶液を0.5cm2のシリンダーで各角膜の中心に適用し、37℃で1分間湿潤チャンバー内でインキュベートした。インキュベーションの後、反応溶液を取り除き、角膜をPBS緩衝液で1分間25℃で洗浄した。次に、1個のラビット眼試料を取り除き、残りの試料に反応溶液をさらに適用し、再度37℃でインキュベーションした。このプロトコルを繰り返し、試料にPCS−101を合計1、2、4、6、8、10および12回適用して処置した。角膜はそれぞれ、洗浄後に、SpotRTデジタルカメラ(Diagnostic Instrument, Inc.)を用いてFITC照明下で2倍対物レンズで撮影した。次に角膜を摘出し、OCT媒体中で凍結した。各試料から凍結組織切片を作成し、切片をSpotRTデジタルカメラ(Diagnostic Instrument, Inc.)を用いて、エピ蛍光下で20倍対物レンズおよび適切なフィルタを用いて撮影した。
【0147】
結果
図3および図4は、グルタミン転移酵素の添加なしでラビットの角膜に繰り返し適用した後の、PCS−101の取り込みを示す。適用回数と1倍〜12倍の範囲を示す。最初の適用後に観測される蛍光は、PCS−101−FITCがラビット角膜の角質層に架橋されていることを明確に示す。ラビット眼の角膜に保持されるPCS−101−FITCの量は、12回まではPCS−101の連続適用にほぼ比例して増加しているようにみえる(図3および図4)。これは、外因性グルタミン転移酵素と緩衝液中のCa++が不在の場合に生じた。
【0148】
例5:グルタミン転移酵素無添加の場合の、ブタの口蓋、歯肉、舌下部上皮へのPCS201(HA−PLL−FITC抱合体)のカプリング、およびEDTAによるその阻害:
材料および方法:
完全な反応溶液は、100mMのグリシン(pH8.2)、150mMのNaCl緩衝液、およびHA−PLL−FITC抱合体1500μgを含む。総反応容量は300μlである。陰性対照は140mMのEDTAを反応溶液中に含む。
ブタの口蓋、歯肉、舌下部の試料をPBS緩衝液で短時間洗浄し、反応液中37℃で1時間インキュベートした。次に試料をPBS緩衝液で攪拌しながら1時間洗浄した。凍結組織切片を作成し、DAPIで染色した。切片をエピ蛍光照明下で適切なフィルタを用いて撮影し、FITCを緑色、DAPIを青色で示した。
【0149】
結果:
図5は、外因性グルタミン転移酵素が不在の場合の、ブタの口蓋上皮への蛍光PCS−201の架橋、およびEDTAによるその阻害を示す。図6は、外因性グルタミン転移酵素が不在の場合の、ブタの舌の下部表面上皮への蛍光PCS−201の架橋、およびEDTAによるその阻害を示す。図7は、外因性グルタミン転移酵素が不在の場合の、ブタの歯肉上皮への蛍光PCS−201の架橋、およびEDTAによるその阻害を示す。図8は、外因性グルタミン転移酵素が不在の場合の、適用後30秒以内における、ブタの舌および歯肉の上皮への蛍光PCS−201の架橋を示す。図9は、外因性グルタミン転移酵素が不在の場合の、適用後30秒以内における、ブタの口蓋、歯肉、および舌の上皮への蛍光PCS−201の架橋を示す。図10は、外因性グルタミン転移酵素が不在の場合の、適用後30秒以内における、ブタの口の上皮への蛍光PCS−201の架橋を示す。外因性グルタミン転移酵素は、かなりの量のHA−PLL−FITC抱合体を、ブタの口蓋、歯肉、および舌下部の上皮の角質層へ架橋する。EDTAは、HA−PLL−FITC抱合体の、ブタの口蓋、歯肉、および舌下部の上皮の角質層への架橋を阻害する(図5〜10)。
【0150】
例6:グルタミン転移酵素無添加の場合の、ブタ大動脈内層へのPCS−201−FITCおよびポリリジンのカプリングの時間変化:
材料および方法:
反応溶液は、1μg/μlのPLL−FITC(MW=24kD)を100mMのグリシンと150mMのNaCl(pH8.2)中に含み、また5μg/μlのHA−PLL−FITC抱合体を100mMのグリシンと150mMのNaCl(pH8.2)(PCS−201−FITC)中に含む。反応溶液中の蛍光強度は、PLL−FITC溶液よりPCS−201溶液において17倍低い。総反応容量は500μlである。
【0151】
ブタの動脈をPBS緩衝液で洗浄し、緩衝液中に浸して組織の乾燥を防ぎながら0.5cm2の正方形に切り取った。次に動脈の各片を異なる時間(1、15、30および60分)、37℃にて反応混合物中でインキュベートした。PBSですすいだ後、攪拌しながら試料をPBSで1時間洗浄した。次に動脈試料を包埋し、OCT化合物中で凍結した。試料を切片にとって、蛍光照明下で撮影した。
【0152】
結果:
図11は、外因性グルタミン転移酵素が不在の場合の、ブタ動脈内層への蛍光PCS−201およびPLLの架橋を示す。元の溶液における蛍光強度は、PCS−201溶液ではPLL溶液より17倍低い。PLL−FITCおよびPCS−201の動脈内層への結合は、蛍光検出により示されるように、インキュベーションの1分後に観察された。PLL−FITCおよびPCS−201の結合は、蛍光強度およびその組織検査切片上での均一性によって示されるように、インキュベーションの長さと共に増加した(図11)。動脈組織に保持されたPCS−201の蛍光強度がPLL−FITCより低いことの理由の一部は、元の溶液における蛍光強度が、PCS−201溶液ではPLL−FITC溶液より17倍低いためである。
【0153】
例7:異なる塩濃度におけるHA−ポリリジン抱合体のラビット角膜の角質層への結合:
材料および方法:
抱合体ストックは、0.1Mのグリシン中に凍結乾燥した抱合体に再懸濁して作成し、FITC(ストック濃度=0.1mg/ml)の蛍光を用いて定量化した。反応群は、0.2Mのグリシン中0.1mg/mlのHA−PLL−FITCで塩濃度を増加させたもの(0、50、150、300、500mMのNaCl)、および、0.1Mのグリシン中0.1mg/mlのPLL−FITCで塩濃度を増加させたもの(0、50、150、300、500mMのNaCl)である。総反応容量は70μlであった。
【0154】
ラビットの無傷の眼球をPBS緩衝液ですすいだ。反応溶液は角膜の中心に0.5cm2のクローニングシリンダーを用いて適用し、37℃で1時間インキュベートした。1時間後、眼球を30mlのPBSで1時間攪拌しながら洗浄した。角膜を、SpotRTデジタルカメラ(Diagnostic Instrument, Inc.)を用いてFITC照明下で、洗浄の前および後に撮影した。角膜は次に切り取ってOCT媒体中で凍結した。FITC蛍光は次の条件のもとで定量化した:PLL:2倍倍率、2秒露光、ND4フィルタ;HA−PLL抱合体:2倍倍率、2秒露光、フィルタなし。
結果:
【表17】
【0155】
図12は、外因性グルタミン転移酵素が不在の場合の、NaCl濃度の、HA−PLL−FITCのラビット角膜角質層へのカプリングに対する効果を示す。塩濃度は0〜500mMの範囲であった。表1は、PLLまたはHA−PLL抱合体を用いた場合の角膜組織へのFITCの結合のレベルを示す。HA−PLL抱合体のラビット角膜角質層への結合は、NaCl濃度の増加に伴って着実に増加しており、これはおそらく、HAおよびPLLの任意のイオン錯体の分解の結果、PLLがグルタミン転移酵素の基質として露出されたことによる(図12)。PLLのみの結合はNaCl濃度の増加に伴って着実に減少しているが、これは、浸透圧性の流れの変化または塩のグルタミン転移酵素への影響による可能性がある。
【0156】
例8:in vivo試験:
緒言:
ヒトでの試験を実施して、HA−PLL抱合体の、レーシック(登録商標)手術後のドライアイの患者における効果を測定した。試験は、レーシック(登録商標)手術後のドライアイを経験している患者におけるHA−PLLの有効性を、正常な患者およびプラセボを摂取しているドライアイの患者と比較して行った。
【0157】
予備試験の結果:
第1の患者(患者No.1)には高分子量HA、PCS−102(0.15%のPolyL−810kd mwHA)を与えた。患者No.1は9ヶ月前に別の外科医による手術を受け、それ以来非常につらいドライアイを患っていた。第2の患者(患者No.2)には現在の分子量の高濃度のPCS−101(0.4%のPolyL−220kd mwHA)を与えた。患者No.2は3週間前に手術を受け、処置の前に1週間、完全に排出させた(術後の局所ステロイドの任意の影響を排除するため)。両患者ともドライアイを経験していた。
【0158】
ここで用いられる表示指標は、1)涙の膜の破壊時間(TFBUT);2)シルマー(Shirmer)II試験(リトマス型の試験紙を用いた、角膜表面の水分量を計測するもの);および3)蛍光の中断の存在(古典的な「染色」エンドポイント)である。2番目および3番目の指標は、FDAにより有効性を許容できる印であると認められている。両方の眼を独立して評価し、RE=右眼、LE=左眼とした。
各患者は、ベースラインのTFBUTおよびシルマースコアを処置前に計測した。正常な人々のこれら2つの指標はおよそ10である。両患者は予想通り、両指標共に平均より下の値を示し、またつらい症状を報告した。
【0159】
各患者に最初は1滴のみのそれぞれのHA−PLL抱合体を投与し、続いて15分毎に90分まで(患者No.2の場合)計測した。
各患者に1日6滴づつ2日間投与し、その後やめるよう指示した。続いて15分毎に90分まで計測して、処置によってTFBUT、シルマースコアおよび蛍光染色スコアが改善したかどうかをみた。
患者No.2には、1日3滴のみ(QID)として治療をさらに1週間続けるよう指示した。これに続いて、患者No.2は、10〜12時間の間(1晩)さらに投与を行うことなく計測を行い、次に、再び15分毎に90分まで計測した。
患者No.2においてはシルマー試験スコアは大きく上昇し、最後の適用の13.5時間後においてさえも上昇した。TFBUTおよび染色スコアも同様に、統計的に有意な改善を示した。さらに、患者は、大幅な苦痛の軽減と、この製品を手放したくないとの希望を報告した。
【0160】
例9:遊離HA(HA−FITC)と比較した、ラビットの角膜に繰り返し適用後の、グルタミン転移酵素添加なしの場合のCS−101(PLL−TRITCへ抱合したHA−FITC)の架橋:
材料および方法:
遊離HAのバッチを、フルオレセインアミンを用いて最初にCOOH基にラベルし、精製した。ラベルされたHA(HA−FITC)の一部を対照として維持し、残りをTRITCで前もってラベルされたポリリジンに抱合し、精製した。抱合の後、ダブルラベルされたPCS−101(PLL−TRITCに抱合したHA−FITC)を精製した。
【0161】
ラビット角膜への架橋を評価するための反応群は以下である。
I群:10mg/mlのPCS−101(PLL−TRITCに抱合したHA−FITC)を、20mMホウ酸塩と80mMのNaCl、pH7.8に含むもの、および
II群:10mg/mlの遊離HA(HA−FITC)を、20mMホウ酸酸塩と80mMのNaCl、pH7.8に含むもの。
総反応容量は50μlであった。PCS−101と遊離HAの適用溶液中におけるFITC蛍光強度、粘性およびHAの分子量は同じであった。
【0162】
ラビットの無傷の眼球をPBS緩衝液ですすいだ。角膜の中心に0.5cm2のシリンダーを用いて反応溶液を適用し、37℃で1分間インキュベートした。処置した領域は、シリンダー内において150μlの1倍PBXで1分未満洗浄した。この適用および洗浄プロセスを6回、各眼に対して行った。
角膜をSpotRTデジタルカメラ(Diagnostic Instrument, Inc.)を用いてFITC照明下で撮影した。次に角膜を切り取り、OCT媒体中で凍結した。組織学切片を作成し、FITC照明下で蛍光を定量するために撮影した。結果は以下の通り。
【0163】
【表18】
【0164】
図13は、外因性グルタミン転移酵素が不在の場合の、HA−PLL抱合体をラビット角膜に適用した場合の、FITCおよびTRITCの二重染色の結果を示す(第1パネル)。写真は、各適用毎に1分のインキュベーション時間をとり抱合体を6回連続して適用した後に撮影した。HAはさらにFITCに抱合し、PLLはさらにTRITCに抱合した。HA−FITCのみを用いた場合、染色は観察されなかった(第2パネル)。PLL−TRITCで角膜をラベルした(第3パネル)。無処置の組織は、背景の蛍光のみを示した(第4パネル)。この染色パターンは、PCS−101を用いた場合に観測されたFITC蛍光が、第3パネルに見られるようにPLLの角膜への結合の結果であって、HA−FITCの非特異的結合によるものではないことを示す。
【0165】
結論:
データは、PCS−101(HA−PLL抱合体)のラビット角膜表層への架橋は、適用回数の増加と共に増加することを示す。対照的に、遊離HA(HA−FITC)は、ラビット角膜表層へは特に結合しなかった。これは、組織切片の蛍光強度が背景レベルにとどまっており、適用回数を増加しても増加しなかったことによって証拠付けられる。6回の繰り返し適用後、ラビット角膜に保持されたPCS−101の量は、それらの相対的修正平均FITC蛍光強度による測定(図14参照)が示すように、遊離HAの場合より約24倍高かった。
【0166】
同等物
本明細書に開示された態様に対して、種々の改変が可能であることが理解されるであろう。従って、上の記述は限定的と理解されるべきでなく、好ましい態様の例示に過ぎない。当業者は、ここに記載されている特許請求の範囲において他の改変を構想するであろう。
本明細書に開示されたすべての文献、特許および特許出願は、参照としてその全体がここに組み込まれる。
【0167】
付表Aは、本発明の抱合体に使用可能な種々のリンカーを示す表である。
図は、特許請求される発明の使用可能性に対して要求されない。
【0168】
【表19】
【0169】
【表20】
【0170】
【表21】
【0171】
【表22】
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】図1Aは、点眼製剤中のFITCでラベルされたポリリジンの最終適用の1時間後におけるラビット角膜断面の蛍光顕微鏡写真の図である。図1Bは、点眼製剤中のFITCでラベルされたポリリジンの最終適用の36時間後におけるラビット角膜断面の蛍光顕微鏡写真の図である。図1Cは、点眼製剤中のPCS−101(ヒアルロン酸に抱合したFITCでラベルされたポリリジン、遊離ヒアルロン酸、および緩衝液)の最終適用の1時間後におけるラビット角膜断面の蛍光顕微鏡写真の図である。図1Dは、点眼製剤中のPCS−101(ヒアルロン酸に抱合したFITCでラベルされたポリリジン、遊離ヒアルロン酸、および緩衝液)の最終適用の36時間後におけるラビット角膜断面の蛍光顕微鏡写真の図である。図1Eは、点眼製剤中の対照媒体のみの最終適用の1時間後におけるラビット角膜断面の蛍光顕微鏡写真の図である。図1Fは、点眼製剤中の対照媒体のみの最終適用の36時間後におけるラビット角膜断面の蛍光顕微鏡写真の図である。
【0173】
【図2】ヒトの指へのin vivoでの抱合の時間変化を示す図である。
【図3】外因的に添加されたグルタミン転移酵素が不在の場合のラビット角膜へのPCS−10−FITCの繰り返し適用後の取り込みを示す写真を編集した図である。
【図4】外因的に添加されたグルタミン転移酵素が不在の場合のラビット角膜へのPCS−10−FITCの繰り返し適用後の取り込み(断面)を示す写真を編集した図である。
【図5】PCS−201のブタ口蓋への結合を示す写真を編集した図である。
【0174】
【図6】PCS−201のブタの舌下部表面上皮への結合を示す写真を編集した図である。
【図7】PCS−201のブタ歯肉上皮への結合を示す写真を編集した図である。
【図8】PCS−201のブタ歯肉上皮および舌上皮への結合を示す写真を編集した図である。
【図9】PCS−201のブタ口蓋、歯肉上皮および舌上皮への結合を示す写真を編集した図である。
【0175】
【図10】PCS−201のブタ口上皮への結合を示す写真である。
【図11】PCS−201およびポリリジン(両者ともFITCでラベルされたもの)のブタ動脈内層への架橋を示す写真を編集した図である。
【図12】外因的に添加されたグルタミン転移酵素が不在の場合のヒアルロン酸とポリリジンFITCのラビット角膜角質層へのカプリングに対するNaCl濃度の影響を示す図である。
【0176】
【図13】PCS−101および遊離HAのラビット角膜表層への結合の比較を示す図である。
【図14】ラビット角膜モデルにおける、PLL−TRITCへ抱合したHA−FITC、HA−FITC、および未処置細胞の、修正平均蛍光強度の比較を示す棒グラフの図である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、ドライアイおよび口腔乾燥症を含むがこれらに限定されない、ヒアルロン酸の投与から便益を受ける疾患に関連する症状を軽減するための、組成物および方法に関する。
【0002】
背景技術
ドライアイは、角膜および結膜を含む眼の持続性の乾燥状態である。ドライアイは、異常なまたは適切でない涙の生成、およびムチン分泌の欠乏症(すなわち、乾性角結膜炎)から生じ得る。ドライアイ症状は、種々の潜在的な疾患、例えば涙腺(涙を生成する腺)を障害する自己免疫疾患、例えば関節リューマチ、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、および全身性硬化症およびサルコイドーシスなどの結果として現れることもある。ドライアイはまた、眼の手術、例えばレーシック(登録商標)手術などの後にも引き起こされることがある。ドライアイは米国において1300万人の人々に影響を及ぼしていると推定される。
【0003】
潜在する病理学に関わらず、ドライアイは一般に眼球前方の涙液膜の急激な破壊を伴い、暴露された眼球外表面の脱水を生じる。角膜および結膜を湿潤に保つには正常な涙の生成が必要であり、正常な涙の生成は角膜および結膜の潰瘍形成の予防および角膜の透明度の維持を助ける。さらに、涙は眼の表面のまぶたの動きを促進し(例えば、まばたきにおいて)、眼から異物を除去する。また涙は通常、眼の感染を予防するのに役立つリソチームを含む。
【0004】
ドライアイはまた、眼における中程度の不快感から重度の痛みまでの症状を伴うことがある。ドライアイが長期間続くと、視力低下(かすみ目)、ざらざらする、および/または燃えるような感覚、ならびにかゆみを引き起こし得る。この状態を処置せずに放置していると、さらに角膜潰瘍および/または瘢痕を生じることがある。
今日までのドライアイの最も一般的な処置は、人工涙液を用いることである。市場で入手可能な人工涙液製品は、Bion Tears(Alcon)、Lacriset(Merck)、Tears Naturale(Alcon)、Tears Naturale II(Alcon)を含む。しかし、人工涙液使用の欠点の1つは頻繁な適用が必要なことであり、これは特に、人工涙液製剤によりもたらされる苦痛の軽減が一般には長く続かないからである。
【0005】
口腔乾燥症(ドライマウス)は口腔乾燥症(xerostomia)として知られており、不適切な唾液の生成を特徴とする状態である。これは、ストレス(例えば恐れ)、唾液腺(すなわち、唾液を生成する腺)の感染、またはある種の薬物、例えば抗コリン薬、利尿薬、抗ヒスタミン薬、クロニジン、レボドパ、メチルドーパ、および三還系抗うつ薬などによって引き起こされる一時的な状態の場合もある。口腔乾燥症はまた、未知の病因による永久的な状態のこともある。口腔乾燥症はまた、シェーグレン症候群および全身性硬化症、ならびに口腔、首および頭部の放射線療法(例えば、口腔の癌の処置において)に関連する。口腔乾燥症は一般に嚥下および話すことにおいて困難や苦痛を生じ、味覚を障害する場合もある。場合によっては虫歯の原因ともなる。
【0006】
口腔乾燥症は現在、口内洗浄剤、局所的適用物、唾液の代替物、または無糖キャンディーなどの唾液分泌促進薬によって処置される。現在市場で入手可能な唾液分泌促進薬は、コリン作動性拮抗薬、例えばEvoxac(登録商標、セビメリンHCl、Daiichi Pharmaceutical Corp.)、およびSalagen(登録商標、ピロカルピンHCl、MGI Pharma., Inc.)などである。市場で入手可能な唾液置換物は、Moi-Stir、OrexおよびSalivartを含む。口腔乾燥症を軽減するためのもっとも一般的な処置は、人工の唾液を口の中にスプレーすることである。しかし人工涙液と同じく人工唾液も頻繁な適用が必要であり、冒された人々にとっては厄介である。
ヒアルロン酸はドライアイの処置に有用であることが以前に報告されている。しかし、かかる報告では遊離ヒアルロン酸の使用に焦点が置かれており、上記の人工涙液の処置と同様、継続して適用することが必要である。
【0007】
発明の概要
ドライアイおよび口腔乾燥症、およびヒアルロン酸投与から便益を受ける他の容態に対する持続的活性処置(prolonged activity treatment)は、継続的で頻繁な適用の必要性を克服するため望ましい。
本発明は、ドライアイ、口腔乾燥症、および乾燥に関連する他の容態に対する、継続的で頻繁な治療剤の適用の代替策を提供する。本発明は、ドライアイおよび口腔乾燥症を軽減するヒアルロン酸の有効性が、冒された身体の表面または組織にヒアルロン酸を共有結合的に付着することにより強化できるとの発見に部分的に基づく。かかる付着は、ドライアイおよび口腔乾燥症用の剤を繰り返し頻繁に適用する必要性を低減するが、これは、ヒアルロン酸が、瞬きや嚥下の過程においてより洗い流されにくくなるからである。本発明によれば、ヒアルロン酸は、冒された身体表面にグルタミン転移酵素の基質である連結分子を解して付着する。連結分子は、グルタミン転移酵素の基質であるアミノ基および/またはカルボキサミド基を含むことができる。グルタミン転移酵素は内因性グルタミン転移酵素が好ましいが、しかし外因性グルタミン転移酵素であってもよい。
【0008】
ここに提供される組成物は、しかし、ドライアイおよび口腔乾燥症における使用のみに限定されない。むしろ、乾燥を特徴とする別の組織の他の疾患における有用性も見出され、別の組織とは例えば、例えば膣、直腸、および鼻(その他に含まれるもの)などの粘膜組織ならびに、例えば皮膚、毛髪、爪および唇などの外表面を含む。さらにこの組成物は、他の身体組織、例えば内皮(特に大動脈の内皮)、および骨関節軟骨などにおいてさらに有用性が見出される。血管の内皮において用いる場合は、ヒアルロン酸組成物は長時間持続する予防的および/または治療的利点を提供し、前の報告にあるようにヒアルロン酸が血小板の凝固を阻害する。ヒアルロン酸はまた、関節炎の関節痛を低減することが前に報告されており、従って骨関節軟骨へのヒアルロン酸の付着は、関節炎を長時間軽減する。皮膚の乾燥によるしわにおいて用いられる場合は、ヒアルロン酸は局所的に適用され、非付着性ヒアルロン酸製剤の頻繁な適用の必要性を軽減することができる。本発明は、ヒアルロン酸と連結分子の抱合体の、前述の条件それぞれに調製された製剤を包含することを意図する。
【0009】
従って、本発明はその1側面において、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体、および遊離ヒアルロン酸を含み、遊離ヒアルロン酸と抱合体が少なくとも2のモル比で存在する組成物を提供する。
本発明の種々の態様は、本明細書中に開示される側面に等しく適用される。従って、これらの態様は1度列挙されるが、本明細書および特許請求の範囲に示されるように、種々の側面に適用されることが理解される。
【0010】
1つの態様において、連結分子は、少なくとも2個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも3個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも4個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも5個の脂肪族アミン、または少なくとも6個の脂肪族アミンを有する。他の態様において、連結分子は天然のポリリジンである。他の態様において、ポリリジンは、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、およびポリ−DL−リジンからなる群から選択される。他の態様において、連結分子はポリリジンの誘導体である。
【0011】
1つの態様において、連結分子は、少なくとも2個の連続したカルボキサミド、少なくとも3個の隣接したカルボキサミド、少なくとも4個の隣接したカルボキサミド、少なくとも5個のカルボキサミド、または少なくとも6個のカルボキサミドを有する。他の態様において、連結分子は天然のポリグルタミンである。他の態様において、連結分子は、ポリ−L−グルタミン、ポリ−D−グルタミン、およびポリ−DL−グルタミンからなる群から選択される。さらに他の態様において、連結分子はポリグルタミンの誘導体である。
【0012】
1つの態様において、ヒアルロン酸は天然のヒアルロン酸である。他の態様において、ヒアルロン酸は、ヒアルロン酸の薬学的に許容し得る塩、ヒアルロン酸エステル、および硫酸化ヒアルロン酸からなる群から選択されるヒアルロン酸の誘導体である。
モル比は、少なくとも2.0および少なくとも4.0からなる群から選択することができる。
他の態様において、組成物は、点眼剤、コンタクトレンズ用溶液、眼科用軟膏、アイパック、およびコンタクトレンズからなる群から選択される形態で提供される。さらに他の態様において、組成物は、舌下錠、うがい薬、練り歯磨き、キャンディ、および経口ジェルからなる群から選択される形態で提供される。
【0013】
1つの態様において、ヒアルロン酸は、少なくとも100,000の分子量を有する。重要な態様において、抱合体は、1.0より大きい正電荷に対する負電荷の比を有する。
他の態様において、組成物は、薬学的に許容し得る担体をさらに含む。重要な態様において、薬学的に許容し得る担体は、少なくとも280mOsmのモル浸透圧濃度(osmolarity)を有する。他の態様において、薬学的に許容し得る担体は、少なくとも6.5のpHを有する。
【0014】
薬学的に許容し得る担体は、眼科用保存剤を含むことができる。ある態様において、眼科用保存剤は、有機水銀剤、四級アンモニウム化合物、パラヒドロキシ安息香酸エステル、置換アルコールおよびフェノールからなる群から選択される。関連する態様において、有機水銀剤は、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、およびチメロサールからなる群から選択される。他の関連する態様において、四級アンモニウム化合物は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、およびポリクオタニウム−1(POLYQUAD)からなる群から選択される。
【0015】
さらに他の態様において、置換アルコールおよびフェノールは、クロロブタノール、およびクロロブタノール/フェニルエチルアルコールからなる群から選択される。眼科用保存剤は抗生物質であってもよい。
さらに他の態様において、組成物は、香味剤(flavoring agent)、着色剤および芳香剤(scenting agent)からなる群から選択される剤をさらに含む。他の態様において、組成物は、アルギニンまたはフッ化物をさらに含む。
1つの態様において、抱合体は、少なくとも90%、少なくとも95%、および少なくとも99%からなる群から選択される重量比を有する。他の態様において、連結分子は錯体を形成していない。
【0016】
他の側面において、本発明は、グルタミン転移酵素の基質である連結分子と共有結合的に連結しているヒアルロン酸を含み、前記連結分子が錯体を形成していない、医薬組成物を提供する。1つの態様において、組成物は、遊離ヒアルロン酸を含む。他の態様において、組成物は、点眼剤、コンタクトレンズ用溶液、眼科用軟膏、アイパック、およびコンタクトレンズからなる群から選択される形態で提供される。さらに他の態様において、組成物は、舌下錠、うがい薬、練り歯磨き、キャンディ、および経口ジェルからなる群から選択される形態で提供される。
【0017】
さらに他の側面において、本発明は、点眼瓶に入れた、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体を含む組成物を提供する。1つの態様において、組成物は、薬学的に許容し得る担体をさらに含む。他の態様において、取扱説明書が随意的に点眼瓶の外表面に提供される。1つの重要な態様において、組成物は、遊離ヒアルロン酸をさらに含む。他の態様において、薬学的に許容し得る担体は、少なくとも280mOsmのモル浸透圧濃度を有し、および/または少なくとも6.5のpHを有する。他の態様において、薬学的に許容し得る担体は、アルギニンまたはリゾチームを含む。1つの重要な態様において、連結分子は錯体を形成していない。
さらなる側面において、本発明は、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体ならびに、香味剤、着色剤および芳香剤からなる群から選択される剤を含む組成物を提供する。
【0018】
1つの態様において、香味剤は、マンニトール、サッカリンナトリウム、マグナスウィート(magnasweet)、ペパーミントの抽出物、葉の粉末または油;スペアミントの抽出物、葉の粉末または油;ウィンターグリーン油;バニラ抽出物;パセリ;オレガノ油;ベイリーフ油;チョウジ油;セージ油;サッサフラス油;レモン油;オレンジ油;アニス油;ベンズアルデヒド;アーモンド油;ショウノウ;ニオイヒバ油;マジョラム油;シトロネラ油;ラベンダー油;カラシ油;パイン油;まつ葉油;ローズマリー油;タイム油;シナモンリーフ油;メントール;カルボン;アネトール;オイゲノール;サリチル酸メチル;リモネン;シメン;n−デシルアルコール;シトロネロール;α−テルピネオール;酢酸メチル;シトロネリルアセテート;メチルオイゲノール;シネオール;リナロール;オイクトル(eyktl)リナロール;バニリン;チモール;ペリラ油;冬緑油;ユーカリ油;カフェイン;酒石クリーム、乳酸、リンゴ酸、グルタミン酸第一ナトリウム、亜硝酸塩、ソルビトール、アスパルテーム、アセスルファム、デキストロース、レブロース、シクラミン酸ナトリウム、ステビオシド、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、グリシルリジン、ペリルラルチン(perillartine)、タウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、およびp−メトキシシンナムアルデヒドからなる群から選択される。
【0019】
他の態様において、着色剤は、FD&C青色#1、FD&C黄色#5、FD&C黄色#10、FD&C赤色#3、FD&C赤色#40、カラメルカラー(caramel color)またはカラメルパウダー(caramel powder)(#05439)、チョコレートシェード(chocolate shade)(#05349)、グリーンレイクブレンド(green lake blend)(#09236)、コウェット二酸化チタン(kowet titanium dioxide)(#03970)、イエローリキッドカラー(yellow liquid color)(#00403)、および亜硝酸塩からなる群から選択される。
さらに他の態様において、芳香剤は、草花の抽出物、ハーブ抽出物、木の花の抽出物、植物抽出物、および人工の芳香剤からなる群から選択される。
重要な態様において、組成物は、経口または眼への投与用に製剤化される。組成物は、舌下錠、うがい薬、練り歯磨き、経口ジェルおよびキャンディとして製剤化することができる。組成物は、アルギニンまたはフッ化物をさらに含んでもよい。
【0020】
組成物はさらに、少なくとも6.5のpHおよび/または280mOsmより高いモル浸透圧濃度を随意的に有する、薬学的に許容し得る担体をさらに含むことができる。
他の側面において、本発明は、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体を、フッ化物を含む担体内において含む組成物を提供する。1つの態様において、担体は、薬学的に許容し得る担体である。他の態様において、薬学的に許容し得る担体は、少なくとも6.5のpHおよび/または280mOsmより高いモル浸透圧濃度を有する。1つの態様において、抱合体は、舌下錠、うがい薬、練り歯磨き、キャンディおよび経口ジェルからなる群から選択される形態で提供される。
【0021】
さらに他の側面において、本発明は、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体を舌下錠の形態において含む組成物を提供する。関連する態様において、舌下の形態はさらに、サッカリン、アスパルテーム、ソルビトール、アセスルファム、デキストロース、レブロース、シクラミン酸ナトリウム、ステビオシド、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、グリシルリジン、ペリルラルチン、タウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、およびp−メトキシシンナムアルデヒドからなる群から選択される甘味料を含む。他の態様において、舌下の形態はビタミンまたはフッ化物を含む。
【0022】
さらに他の側面において、本発明は、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体、および有効量の遊離ヒアルロン酸を含み、遊離ヒアルロン酸と抱合体が少なくとも2のモル比で存在する、医薬組成物を提供する。
他の側面において本発明は、上述の任意の組成物の有効量をその必要のある対象に投与することを含む、乾燥を特徴とする疾患の処置または予防のための方法を提供する。
1つの態様において、疾患はドライアイである。関連する態様において、ドライアイは、非進行性結膜瘢痕形成(スティーブンス−ジョンソン症候群)、シェーグレン症候群、トラコーマ、および瘢痕性類天疱瘡からなる群から選択される疾患に関連する。他の態様において、疾患は口腔乾燥症である。さらに他の疾患において、対象は、ドライアイ症状を誘発する外科的処置、たとえば視力矯正手術(corrective eye surgery)(例えば、レーシック(登録商標)手術)を受けたか、またはこれから受ける者である。
【0023】
他の側面において、本発明は、眼の乾燥を有するかまたはそのリスクを有する対象の眼に、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体の有効量を投与することを含む、対象を処置するための方法を提供する。1つの態様において、抱合体は、点眼剤、コンタクトレンズ用溶液、眼科用軟膏、アイパック、およびコンタクトレンズからなる群から選択される形態で提供される。
他の側面において、本発明は、口腔の乾燥を有するかまたはそのリスクを有する対象の口腔に、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体の有効量を投与することを含む、対象を処置する方法を提供する。1つの態様において、抱合体は、舌下錠、うがい薬、練り歯磨き、キャンディ、および経口ジェルからなる群から選択される形態で提供される。
【0024】
さらなる側面において、本発明は、関節の不快感を有するかまたはそのリスクを有する対象の関節に、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体の有効量を投与することを含む、対象を処置する方法を提供する。
さらに他の側面において、本発明は、過剰な血液凝固を有するかまたはそのリスクを有するか、または血液凝固のリスクが増加した対象の血管に、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体の有効量を投与することを含む、対象を処置する方法を提供する。
【0025】
さらに他の側面において、本発明は、しわを有するかまたはそのリスクを有する対象の皮膚に、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体の有効量を投与することを含む、対象を処置する方法を提供する。
上記の組成物および抱合体は、本明細書に提供される方法に好適である。
以下の態様は上記の方法に等しく適用される。1つの態様において、有効量は1日0.05μg/kg未満である。
これらおよび他の側面および態様について、本明細書にさらに詳細に記載する。
【0026】
発明の詳細な説明
本発明は、乾燥を特徴とする障害を含む、ヒアルロン酸の存在から便益を受ける疾患の処置のための新規な組成物および方法を提供する。乾燥を特徴とする障害は、それぞれ不十分な涙液および唾液の生成から生じ得るドライアイおよび口腔乾燥症を含む。ある態様において本発明は、ヒアルロン酸を、水分子を引きつけ保持するその機能を通して、冒された粘膜または外側の組織を湿潤させることのできる活性剤として用いる。本明細書中にさらに詳細に記述するように、ヒアルロン酸は、ドライアイを経験する対象者の角膜および結膜を湿潤させるために用いられて成功していることが報告されている。
【0027】
本発明は、ヒアルロン酸が、粘膜表面(例えば角膜または口腔)、内皮表面、または外表面(例えば毛髪または爪)などの冒された表面に、グルタミン転移酵素が介在する反応を用いて付着できるとの発見に部分的に基づく。グルタミン転移酵素は、特定のペプチド結合γグルタミニル残基と、アミンドナー基質として作用するペプチド結合リジンまたはポリアミンの種々の1級アミノ基との間の共有架橋反応を介在する、カルシウム依存酵素のファミリーである(Davies, et al, Adv. Exp. Med. Biol. 250, 391-401, 1988)。哺乳類においては、少なくとも5種類の酵素的に活性なグルタミン転移酵素が同定され、クローニングされて配列決定されている。本発明は、例えばグルタミンのカルボキサミド基と、例えばリジンのアミノ基との間の共有結合をもたらす機能を有する、任意のすべてのグルタミン転移酵素およびそれらの酵素誘導体を包含することを意図している。好ましい態様においては、抱合体の身体組織への付着をもたらすグルタミン転移酵素は内因性グルタミン転移酵素であるが、ある態様においては、外因性グルタミン転移酵素もまた用いることができる。
【0028】
ヒアルロン酸は、グルタミン転移酵素と反応するアミノ基またはカルボキサミド基を含まないために、本質的にはグルタミン転移酵素の基質ではない。しかし、ヒアルロン酸は、グルタミン転移酵素の反応に鋭敏に反応するよう、本発明に従って修飾することができる。これは例えば、カルボキサミドまたはアミノ側鎖基(単数または複数)をヒアルロン酸の適切な反応基に付加することにより、実現できる(すなわち、「修飾」ヒアルロン酸)。これはまた、グルタミン、リジン、またはグルタミンおよびリジンの両方を、ヒアルロン酸と共有結合的に結合し、グルタミン転移酵素の基質である抱合体を形成することによっても実現できる。最も好ましい方法は、ポリグルタミン、ポリリジン、インボルクリン(グルタミン転移酵素の天然の基質)またはインボルクリンの断片などの連結分子をヒアルロン酸に結合し、適切な抱合体を形成することである。次に、角膜上皮または口腔上皮などの上皮組織に存在する内因性グルタミン転移酵素は、連結分子(ヒアルロン酸が付着したもの)が眼または口腔内のアミノまたはカルボキサミド基質に共有結合的に付着するのを触媒することが可能となる。
【0029】
天然のヒアルロン酸は、D−グルクロン酸およびN−アセチルD−グルコサミンの二糖類の反復モノマーの直鎖ポリマーである。本明細書で用いられる場合、用語「ヒアルロン酸」は、明示的に他の記載がない限り、天然のヒアルロン酸および、塩およびエステルを含むその誘導体(すなわち類似体)を含むが、これらに限定されない。ヒアルロン酸の塩は、薬学的に許容し得る塩、例えば、ナトリウム塩および4級アンモニウム塩を含む。ヒアルロン酸誘導体は、エステル化などの他の化学反応により修飾されたヒアルロン酸を含み、従ってヒアルロン酸塩エステル、および硫酸化ヒアルロン酸(米国特許第6,339,074B1号に記載されたもの)を含む。ヒアルロン酸誘導体の1例は、ヒランである。ヒアルロン酸誘導体はまた、米国特許第4,851,521号、第4,965,353号および第5,202,431号に記載の、合成または半合成変種、例えばヒアルロン酸のエステルならびに、脂肪族、アラリファティック、ヘテロ環式、および脂環式アルコール(例えば、ヒアルロン酸のベンジルまたはエチルエステル)を含む。
【0030】
本発明の組成物はさらに、抱合体の形態に加えて、遊離形態のヒアルロン酸を含むことができる。遊離ヒアルロン酸の使用は以前に報告されている。ヒアルロン酸は、眼または他の冒された表面に、グルタミン転移酵素が介在する結合を介して付着することができることが現在発見されている。かかる付着により、ヒアルロン酸が眼(または他の冒された表面)に存在する時間を延長し、従って、かかる表面にヒアルロン酸を再度適用する必要性を低減または完全に消去する。従って、本組成物の治療的利点は、一旦身体組織に適用されるとその組織へ共有結合的に付着する、抱合体ヒアルロン酸の存在から主として誘発されることが理解される。この利点は、本組成物に存在することができる遊離ヒアルロン酸の場合には生ぜず、なぜならば遊離ヒアルロン酸は、限定的な治療的利点のみを有することが、以前より示されているからである。
【0031】
本明細書で用いられる場合、用語「抱合体」は、連結分子がヒアルロン酸に直接および間接に付着したもの両方を含む。間接付着は一般に、スペーサ(すなわち、リンカー)が連結分子とヒアルロン酸との間に存在することを意味する。好適なスペーサは本明細書に記載されている。
任意の特定の理論または機構に縛られることを意図するものではないが、ヒアルロン酸は、乾燥を特徴とする疾患、例えば、これらに限定されないがドライアイ、口腔乾燥症および膣乾燥症などの処置に有用であり、なぜならば、ヒアルロン酸は保湿剤(moisturizer)としておよび/または湿潤剤(humectant)として作用する機能を有するからである。本明細書で用いられる場合、保湿剤は、膜を形成しそれによって水分子を捕らえることができ、その蒸発を防いだり蒸発の程度を限定する剤である。本明細書で用いられる場合、湿潤剤は、組織、表面または他の領域の含水量を増加する剤である。ヒアルロン酸は一般に中性のpHにおいて負に荷電されており、親水性のヒドロキシ基を有し、水分子を引き付けて保持することができる。ヒアルロン酸は膜を形成し、水分子を引き付けて保持することができる。従ってヒアルロン酸は、保湿剤および湿潤剤の両方として機能することができる。
【0032】
ヒアルロン酸はまた血小板の凝固を阻害することが報告されており、この機構が、血管内投与製剤に関連する本発明の態様において活用されている。
ヒアルロン酸は市場を通して入手可能であり、種々のブランド名、例えばHealon、Hyalastine、Hyalectin、Hyloran(ヒアルロン酸ナトリウム)、およびHyaloftil(高分子ヒアルロン酸)を含むブランド名で販売されている。代替的に、ヒアルロン酸は、動物源(例えば雄鶏の鶏冠から市場でHyalformとして販売されている)や、in vitroでの発酵(例えば細菌による発酵、市場でRestylaneとして販売されている)から合成または精製することができ、これらは特に米国特許第
【表1】
号に記載されている。
【0033】
用いるヒアルロン酸の長さは、冒された身体の表面または組織に潤いを与えるのに十分な長さであれば、本発明には重要ではない。そのためには、ある態様においては、短いヒアルロン酸の鎖(strand)(すなわち、分子量が2000未満のもの)より、長いヒアルロン酸の鎖(すなわち、分子量が100,000より大のもの)の方が、連結分子に数個のかかる短い鎖が付着しているのでなければより好ましい。抱合体が1個の連結分子および1個のヒアルロン酸の鎖のみを包含する場合、少なくとも保持できる水分子の数を最大にするためにも、ヒアルロン酸の鎖が長いのが好ましい。低および高分子量のヒアルロン酸を生成し単離する方法は既知であり、米国特許第
【表2】
号などに報告されている。
【0034】
ヒアルロン酸の鎖の長さは、二糖類単位(各単位は約401ダルトンの分子量を有する)の数、または鎖の分子量で表される。例えば、分子量200,000のヒアルロン酸の鎖は、498個の二糖類モノマー単位で構成される。重要な態様においては、ヒアルロン酸の鎖は、
【表3】
分子量を有する。さらに他の態様においては、ヒアルロン酸はより大きな分子量すなわち、
【表4】
分子量を有する。ある好ましい態様においては、ヒアルロン酸は、
【表5】
の分子量を有する。
【0035】
ある態様においては、本発明の抱合体は、遊離ヒアルロン酸と組み合わせて対象に提供される。本明細書で用いられる場合、「遊離」ヒアルロン酸は連結分子に抱合されていない。本発明は、治療結果を達成するために、ヒアルロン酸が特定の受容体(例えばCD44)に結合することに頼っていない。むしろ、冒された部位へのヒアルロン酸の局在が、指向性投与およびグルタミン転移酵素が介在する結合を通して一般に制御される。ヒアルロン酸の受容体への結合は、本発明の方法においては必要ではない。遊離ヒアルロン酸の存在は問題とはならず、なぜならば、同族受容体への結合のために抱合されたヒアルロン酸と争うことがないため、抱合体の有効性を低下させないからである。さらに、本発明の抱合体は、十分なレベルの内因性グルタミン転移酵素およびグルタミン転移酵素の基質を有していれば、それがヒアルロン酸受容体を発現するかどうかに関わらず、どのような表面または組織にも付着するからである。
【0036】
ある態様においては、天然のヒアルロン酸より低い親和性でヒアルロン酸受容体に結合する、ヒアルロン酸誘導体が用いられる(遊離形態および/または抱合体の形態で)。ある態様においては、それらの親和性は、天然のヒアルロン酸の結合親和性の2倍未満、5倍未満、10倍未満、20倍未満、50倍未満、または100倍未満である。
【0037】
ある態様においては、組成物中の遊離ヒアルロン酸の抱合ヒアルロン酸に対するモル比は、
【表6】
である。ある特定の態様においては、遊離ヒアルロン酸の抱合ヒアルロン酸に対するモル比は、1より大、好ましくは1.5より大、そしてより好ましくは2より大である。本明細書で用いられる場合、遊離ヒアルロン酸の抱合ヒアルロン酸に対するモル比は、連結分子に抱合されていないヒアルロン酸のモル数(全MW変種を含む)の、連結分子に抱合されたヒアルロン酸のモル数(同一または異なるMW)に対する比率である。従って、ある態様においては、遊離ヒアルロン酸の量は、抱合されたヒアルロン酸と競合してヒアルロン酸受容体へ結合するのに十分である。
【0038】
本発明の連結分子は、グルタミン転移酵素の基質である。従って、連結分子は脂肪族アミンまたはカルボキサミドを有するが、ただし両方は有さないのが好ましい。好ましい連結分子は、グルタミン転移酵素の基質である複数の反応性カルボキサミドおよび/または脂肪族アミンを担持するポリマーである。グルタミン転移酵素の基質であるカルボキサミドを含む化合物は周知であり、グルタミンが含まれる。グルタミン転移酵素の基質である脂肪族アミンもまた周知であり、例えば、米国特許第5,490,980号に例示されており、この特許の開示は参照として本明細書に組み込まれる。しかしながら単一の脂肪族アミン部分を表している‘980特許と異なり、本発明は1側面において、複数の脂肪族アミンを用いることに関連する。脂肪族アミン(または複数の脂肪族アミン)は、隣接していてもよく、またはそれらは、好ましくは分枝状または非分枝状ポリマーの長さに沿って個別の間隔をあけられてもよい。ある態様においては、反応性部分間の間隔は、抱合体が特定の身体組織に付着するために重要である。
【0039】
1つの態様は、複数単位を有するポリマーである連結分子に関連し、ここで各単位は、グルタミン転移酵素の基質である脂肪族アミンを担持する。ポリマーはホモポリマーまたはヘテロポリマーであってよい。連結分子との関連で本明細書で用いられる場合、グルタミン転移酵素のポリ脂肪族アミンの基質は、連結分子の主鎖に沿って互いに個別の間隔をあけて、1個または2個以上の主鎖の分子により分離されている、少なくとも3個の脂肪族アミンを有する連結分子である。これは例えばリジンが豊富なポリマーにおいてもっとも簡単に描写でき、そこではポリマーの分離した単位が、各々はそれぞれがグルタミン転移酵素の基質である脂肪族アミンを担持する。連結分子それ自体は、隣接したリジンのポリマーであってよく、好ましくは、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、および少なくとも5個もしくは6個以上の隣接したリジンのポリマーである。各々が脂肪族アミンを担持する隣接した単位のポリマーが好ましい。ある態様においては、連結分子は2個の隣接したリジン残基を有することができ、好ましくは、これらは連結分子のどちらかの終端に位置する。
【0040】
同様に、他の重要な連結分子は、各単位がグルタミン転移酵素反応性のカルボキサミド基を担持する複数の単位を有するポリマーである。ポリマーはホモポリマーまたはヘテロポリマーであってよい。グルタミン転移酵素のポリカルボキサミドの基質は、連結分子の主鎖に沿って互いに個別の間隔をあけて、1個または2個以上の主鎖の分子により分離されている、少なくとも2個のカルボキサミドを有する連結分子である。連結分子は隣接したカルボキサミドのポリマーであってよく、好ましくは、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、または少なくとも5個もしくは6個以上の隣接したカルボキサミドのポリマーである。ある重要な態様においては、隣接するカルボキサミドは、連結分子のどちらかの終端に位置する。
【0041】
最も好ましい連結分子は、グルタミンまたはリジン、またはグルタミンおよびリジンなどの、カルボキサミド部分または脂肪族アミン部分の豊富なポリマーである。カルボキサミドの豊富なポリマーは、その単位の少なくとも20%がカルボキサミドを担持する単位であるものである。脂肪族アミンの豊富なポリマーは、その単位の少なくとも20%が脂肪族アミンを担持する単位であるものである。従って、これらのポリマーはまた、上記定義の単位を少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、またはそれ以上有するものも包含する。グルタミンまたはリジンが豊富なポリマーは、少なくとも20%の単位がグルタミンまたはリジン、またはグルタミンおよびリジンであるポリマーである。カルボキサミドまたは脂肪族アミンが豊富なポリマーは、隣接した結合グルタミンもしくはリジンにおいて生じるような、少なくとも3個、好ましくは4個、そして最も好ましくは5個もしくは6個以上の、別々で通常の距離をあけて分離されたカルボキサミドまたは脂肪族アミンを含むポリマーであってもよい。しかし、グルタミン転移酵素の基質とするために、わずか2個のグルタミンまたはリジンの鎖をヒアルロン酸に付加するかまたはつないでもよいことも、理解されるべきである。好ましい態様においては、連結分子およびそれを含む抱合体は、内因性グルタミン転移酵素の基質である(すなわち、内因性グルタミン転移酵素によって作用させられるのに十分なグルタミン転移酵素反応基を有する)。
【0042】
好ましい連結分子の1つはポリリジンである。ポリリジンは、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、およびポリ−DL−リジンを含む。他の重要な連結分子はポリグルタミンである。ポリグルタミンは、ポリ−L−グルタミン、ポリ−D−グルタミン、およびポリ−DL−グルタミンを含む。
従って連結分子は、天然または誘導体形態のポリリジンおよびポリグルタミンを含む。ポリリジンの天然の形態は、リジンモノマーのポリマーである。ポリリジンの誘導体形態は、リジンモノマーのポリマーであって、該モノマーの1つまたは2つが化学的または他の方法で修飾されているものである。
ある態様においては、連結分子は、タンパク質分解酵素によって開裂不可能な分子である。これら後者のペプチド誘導体は、加水分解できない主鎖の修飾を含むことができる。
【0043】
連結分子の長さは一般に限定されず、短い連結分子および長い連結分子の両方を本発明において用いることができる。従って、3残基の短い連結分子(例えば3個のリジンまたは3個のグルタミン)を効率的に用いることができる。連結分子の分子量は、200Da未満から100,000Daを超えるまでの範囲が可能であり、対応する残基の数は連結分子の構成に依存する。態様に応じて、連結分子は、
【表7】
またはそれ以上の分子量を有することができる。当業者であれば、連結分子のモノマー単位の数を、その分子量および組成に基づいて推定することができる。例で用いる連結分子は平均181リジン残基の長さを有し、従って平均分子量は約23,000である。
【0044】
重要な態様においては、連結分子は錯体を形成せず、特にポリリジンの場合はそうである。「錯体を形成しない」連結分子とは、連結分子が、本発明のヒアルロン酸および/または媒体溶液の塩またはアミノ酸以外の化合物と結合しないことを意味する。重要な態様においては、錯体を形成しない連結分子は、例えば薬剤などの治療剤または核酸と錯体を形成しない。核酸に結合してイオン錯体を形成するポリリジンの機能について報告されている。ポリリジンは中性のpHにおいて正に荷電されるため、核酸などのイオン的に負に荷電される剤と反応する傾向にある。しかし、本発明のある側面においては、抱合体は核酸を送達することを意図しておらず、そのような抱合体の連結分子は錯体を形成しない。
【0045】
ポリリジンなどの連結分子は、錯体を形成しない形態において維持することができ、例えば、塩濃度およびpHを操作することにより、ポリリジンと負に荷電された剤(例えば薬剤、または核酸などの治療剤)との間のイオン反応を妨げて、維持することができる。例えば、アニオンの濃度を増加させて、ポリリジンへのイオン結合のため、負に荷電された剤と競合させることができる。他の態様において、抱合体は、わずかに浸透圧の高い溶液、例えばモル浸透圧濃度が280mOsmより高い溶液内で提供することができる。他の態様において、組成物は、
【表8】
もしくはそれより高いモル浸透圧濃度を有する。任意の塩(一価および二価の塩を含む)、アミノ酸または緩衝液を、溶液のモル浸透圧濃度の調節に用いることができる。
【0046】
連結分子はまた、他の剤、これに限定されないがアルギニンなどを含むことにより、錯体を形成しない形態において提供することができる。ある態様においては、これらの剤は、ヒアルロン酸に結合するためにリジンモノマー単位と競合し、それによって、ヒアルロン酸と抱合体のポリリジン成分との間のイオン錯体形成を妨げる。従って、重要な態様においては、ヒアルロン酸とポリリジン成分は互いにイオン錯体を形成せず、むしろ、抱合の点においてのみ互いに接触している(例えば、それらの間の共有結合、またはそれらをスペーサ分子へ結合する共有結合)。
さらに他の態様においては、抱合体は核酸分子を担持することを意図しないため、例えばDNアーゼおよびRNアーゼなどの核酸分解酵素を組成物に含むことができる。
【0047】
十分な数のグルタミン転移酵素反応基(すなわち、脂肪族アミンまたはカルボキサミド)が、グルタミン転移酵素の反応を介した組織への反応に利用可能であることは重要である。従って、すべてのグルタミン転移酵素反応基が錯体を形成する必要はなく、ある場合においては、グルタミン転移酵素介在の反応には、2〜3個のグルタミン転移酵素反応基のみで十分である。ある態様においては、グルタミン転移酵素反応基はポリマーの終端に存在し、他の場合には、それらは内部に位置することができる。
抱合体の構造は、連結分子が十分な数の利用可能なアミノまたはカルボキサミド反応基を有し(グルタミン転移酵素の基質となるために)、またヒアルロン酸が冒された表面または組織を湿潤することができるのであれば、ヒアルロン酸および連結分子に関して様々に変化可能である。
【0048】
最も単純な形態において、抱合体はヒアルロン酸および連結分子が1:1の抱合体である。したがって、抱合体は、互いに直接または間接に付着する、ヒアルロン酸の1鎖および連結分子の1鎖を有する。
より複雑な形態において、抱合体は、数個のヒアルロン酸の鎖を1つの連結分子に付着して含む。ヒアルロン酸は、連結分子に、連結分子の長さに沿って隣接した部位に付着するか、または一定もしくはランダムな長さの間隔を置いて付着することができる。この後者の態様において、抱合体は、連結分子をその主鎖とし、ヒアルロン酸の鎖をそのグラフトとする、グラフト共重合体である。連結分子の主鎖に沿ったヒアルロン酸側鎖の長さ、数、および位置は、治療的利点をもたらすために投与すべき抱合体の量に影響する。ある態様において、ヒアルロン酸側鎖は、抱合体が冒された身体組織または表面に付着するために十分なグルタミン転移酵素反応基が存在する場合には、連結分子内のほとんどすべての利用可能な反応基にグラフトすることができる。
【0049】
抱合体を冒された表面に付着させるのに用いられる連結分子上のグルタミン転移酵素反応基は、連結分子の終端であってよいが、それに限定されない。従って、1つの態様において、反応基は連結分子の真ん中にあり、その片側または両側の側面にヒアルロン酸の鎖が付着してもよい。
【0050】
抱合体の構造はまた、連結分子へのヒアルロン酸のグラフトの程度によって記述することができる。本明細書で用いられる場合、グラフト率(grafting rate)は、ヒアルロン酸の二糖モノマーの数の、連結分子のモノマーの数に対する比で表される。例として、分子量220,000(および約549のヒアルロン酸二糖単位を含む)のヒアルロン酸の1本の鎖の、分子量23,000(および約181のリジン残基を含む)のポリリジン連結分子への抱合は、約3のグラフト率(すなわち549/181)に対応する。グラフト率は、連結分子にグラフトされるヒアルロン酸の鎖の数および長さ、ならびに連結分子それ自体の長さに依存して変えることができる。従って態様により、グラフト率は0.001より低い値から10000より高い値までの範囲に渡る。重要な態様において、グラフト率は、
【表9】
である。グラフト率は本来、ヒアルロン酸と連結分子の間の結合の数の指標ではないことは注意すべきである。ある好ましい態様において、ヒアルロン酸二糖単位の数は、連結分子のサブユニットの数(例えばリジン残基)より大きく、従って、グラフト率は1より大である。
【0051】
同様にして抱合体は、構造的に、抱合体の総重量(すなわちヒアルロン酸と連結分子の重量)に対するヒアルロン酸の総重量の比率によって記述することができ、パーセンテージで表される。この重量比は、同様に0.001未満〜99.9%までの範囲に渡る。重要な態様において、重量比は、
【表10】
である。ヒアルロン酸二糖モノマーの数が連結分子モノマー(例えばリジン残基)の数より多い好ましい態様においては、重量比は90%を超えるのが好ましい。従って好ましい態様においては、重量比は
【表11】
である。従って、ある重要な態様においては、抱合体における連結分子の重量は一般に10%以下である。
【0052】
抱合体の分子量は、抱合体の複合物によっても変わり得る。分子量220,000の1本のヒアルロン酸の鎖および分子量23,000の連結分子を有する、例としての抱合体の分子量は、243,000である。抱合体の分子量は約50,000から10,000,000を超えるまでの範囲で変化することができ、好ましい範囲は75,000〜1,000,000であり、より好ましい範囲は100,000〜500,000であり、さらに好ましい範囲は100,000〜300,000である。
さらに他の例においては、抱合体は、ポリリジン(重量)に対するヒアルロン酸(重量)の割合で、パーセンテージで表すことができる。
【0053】
抱合体はまた、その荷電比(すなわち正電荷に対する負電荷の比)によって表すことができる。1未満の荷電比は全体として正の荷電を示し、一方1より大きい荷電比は全体として負の荷電を示す。重要な態様において、荷電比は1より大から10より大までの範囲で変化することができる。ある態様においては、荷電比は
【表12】
またはそれよりさらに大である。他の態様においては、荷電比は1〜10の範囲で変化し、好ましくは2〜8、より好ましくは3〜7、およびさらにより好ましくは4〜6の範囲である。好ましい態様においては、好ましくはpHが6.5〜8の範囲において、抱合体は全体として負の電荷を有する。pHが6.5より大の場合は、ヒアルロン酸は負である。pHが約8より大では、リジン残基は中性に荷電されるが、しかし抱合体全体はまだ負に荷電される。ポリグルタミンを含む抱合体に対しては、グルタミン残基の中性の電荷のため、pHが6.5より大において抱合体は常に負に荷電される。
【0054】
本明細書で用いられる場合、抱合体とは、任意の化学的または生化学的方法により互いに安定して結合された2つの実体を意味する。重要なのは、付着の性質が、ヒアルロン酸の有効性または連結分子の基質活性を実質的に損なわないようなものであることである。これらの要因を心に留めていれば、共有結合または非共有結合を含む、当業者に知られている任意の結合を用いることができる。共有結合が好ましい。付着のかかる手段および方法は、当業者には周知である。
【0055】
ポリリジンを連結分子として用いる態様において、ヒアルロン酸およびポリリジンは、還元的アミノ化(reductive amination)反応により抱合される。例示によって、ポリリジンとHAの抱合体を形成するための実験方法が提供される。一般に、ヒアルロン酸の還元終端(reductive end)は、ポリリジン上のアミノ残基に結合されてシッフ塩基を形成し、次にイミノ結合に還元される。1つの実験デザインにおいて、ヒアルロン酸およびポリリジンを、ホウ酸緩衝液(pH8.5)またはリン酸緩衝液(pH8.3)などの溶媒に溶解する。還元剤、例えば水素化シアノホウ素ナトリウム(NaBH3CH)を加え、1時間〜5日間の間、0〜50℃の温度で反応を進行させる。反応は、ジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシドなどの有機溶媒を添加することによって制御できる。反応は、ヒアルロン酸とポリリジンのイオン相互反応を防ぐことにより強化することができる。かかるイオン相互反応は、塩化ナトリウムまたは塩化カリウムなどの塩を加えることにより、または、反応温度を上げることにより、低下させることができる。
【0056】
ある態様においては、抱合体は、出発物質のモル比の範囲がポリリジン対ヒアルロン酸で0.5:1〜5:1において形成される。1つの重要な態様においては、ポリリジン対ヒアルロン酸の出発モル比は1.3:1である。これらの試薬のモル比は、ポリリジン1個当たり数個の(例えば1または2個の)ヒアルロン酸の鎖が抱合された抱合体を生成する可能性が高い。
合成反応が完了すると、溶液を透析して抱合されなかったポリリジンを取り除く。しかし、抱合されなかったヒアルロン酸は取り除かないのが好ましく、従って分離は、非抱合のポリリジンは選択的に除去するが、非抱合のヒアルロン酸は除去しないものである。例えば、分離技法が透析による場合は、透析用チューブ(dialysis tubing)は、ポリリジン(例えばMWが23,000)の移動は許容するが、ヒアルロン酸(例えばMWが少なくとも100,000)の移動は許容しない孔のサイズを選択する。
【0057】
抱合体を構成するために、連結分子をスペーサを介してヒアルロン酸につなぐのが望ましい場合もある。これにより、例えば、グルタミン転移酵素が連結分子の反応性部分へアクセスするのを妨害するなどの、立体障害から生じる可能性のある任意の問題を取り除くことができる。これらのスペーサは、任意の様々な分子であってよく、好ましくは非反応性で、例えばC1〜C30の直鎖または分枝状炭素鎖であって、飽和または非飽和で、リン脂質、アミノ酸(例えばグリシン)などで、天然または合成のものである。さらなるスペーサは、アルキルおよびアルケニル炭酸塩、カルバミン酸塩、リン酸塩、およびカルバミドを含む。これらはすべて関連しており、上述のC1〜C30などのスペーサに極性の機能性を付加することができる。付録Aに示されるような好適なスペーサは市場で入手可能であり、例えばPierce Chemical Co.から入手可能である。
【0058】
本明細書に記載される抱合または修飾は常用の化学作用を用いており、化学分野の当業者には周知であり、従って本発明の一部を形成するものではない。保護基ならびにモノおよびヘテロ二機能性リンカー(bifunctional linker)などの既知のリンカーの使用は文献に十分に解説されており、ここでは繰り返さない。
従って本発明による付着は、直接の付着である必要はない。本発明の組成物の成分は、それらの付着を促進するために官能基と共に提供され、および/またはリンカー基がこれらの組成物の成分の間に入って付着を促進する。さらに、本発明の組成物の成分は単一の工程において合成することもでき、それによって該成分を1つの同一実体であるとみなすことができる。例えば、ヒアルロン酸は、グルタミン転移酵素を介したポリペプチドの結合のために、1つの終端においてポリグルタミンを含むように合成してもよい。
【0059】
共有結合の特定の例は、二機能性架橋剤(bifunctional cross linker)分子が用いられるものを含む。架橋剤分子は、抱合すべき分子の性質により、ホモ二機能性またはヘテロ二機能性である。ホモ二機能性架橋剤は、2個の同一の反応基を有する。ヘテロ二機能性架橋剤は、順次の抱合反応を許容する2個の異なる反応基を有するものと定義される。種々の種類の市場で入手可能な架橋剤は、1個または2個以上の以下の基:1級アミン、2級アミン、スルフヒドリル、カルボキシル、カルボニル、および炭水化物、と反応する。アミン特異的架橋剤の例は、ビス(スルホスクシンイミジル)スベリン酸塩、ビス[2−(スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン、ジスクシンイミジルスベリン酸塩、ジスクシンイミジル酒石酸塩、ジメチルアジピメート(adipimate)・2HCl、ジメチルピメリミデート(pimelimidate)・2HCl、ジメチルスベリミデート(suberimidate)・2HCl、およびエチレングリコールビス−[スクシンイミジル−[スクシナート]]である。スルフヒドリル基と反応する架橋剤は、ビスマレイミドヘキサン、1,4−ジ−[3’−(2’−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ブタン、1−[p−アジドサリチルアミド]−4−ヨードアセトアミド]ブタン、およびN−[4−(p−アジドサリチルアミド)ブチル]−3’[2’−ピリジルジチオ]プロピオンアミドを含む。炭水化物と選択的に反応する架橋剤は、アジドベンゾイルヒドラジンを含む。カルボキシル基と選択的に反応する架橋剤は、4−[p−アジドサリチルアミド]ブチルアミンを含む。アミンおよびスルフヒドリルと反応するヘテロ二機能性架橋剤は、N−スクシンイミジル−3−[2−ピリジルジチオ]プロピオナート、スクシンイミジル[4−ヨードアセチル]アミノベンゾアート、スクシンイミジル−4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシラート、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキスクシンイミドエステル、スルホスクシンイミジル6−[3−[2−ピリジルジチオ]プロピオンアミド]ヘキサノアート、およびスルホスクシンイミジル−4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシラートを含む。カルボキシルおよびアミン基と反応するヘテロ二機能性架橋剤は、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]−カルボジイミド塩酸塩を含む。炭水化物およびスルフヒドリルと反応するヘテロ二機能性架橋剤は、4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシルヒドラジド・2HCl、4−(4−N−マレイミドフェニル)−酪酸ヒドラジド・2HCl、および3−[2−ピリジルジチオ]プロピオニルヒドラジドを含む。架橋剤は、ビス−[β−4−アジドサリチルアミドエチル]二硫化物およびグルタルアルデヒドである。アミンまたはチオール基は、合成核酸の任意のヌクレオチドに加えることができ、二機能性架橋剤分子への付着点を提供する。核酸は、抱合競合剤、例えば
【表13】
を組み込むことにより合成できる。
【0060】
ヒアルロン酸を本発明のグルタミン転移酵素の基質に抱合するための他のリンカーは、米国特許第5,342,770号に記載のペプチドリンカーを含む。他の化学リンカー組成物は、米国特許第6,303,555 B1号(例えば、4〜6個の炭素原子を有するカルボン酸、またはエトキシ化多価アルコール、またはポリビニルピロリドン、またはMW6000〜10,000のポリエチレングリコール)、米国特許第5,952,454号(グリコシルドナーをアミン含有担体に抱合するためのスペーサ)、米国特許第6,361,777 B1号(アミノチオールリンカー)、米国特許第4,680,338号(二機能性リンカー)、米国特許第5,034,514号などに記載されている。
【0061】
ある態様においては、正常な生理学的条件のもとで開裂する結合により、または、光などの刺激の適用により特異的に開裂を引き起こす結合によってヒアルロン酸を連結分子に付着させ、それによって剤を放出できるのが望ましい。一定の態様においては、ヒアルロン酸はその抱合形態において不活性であり、放出された場合にのみ活性であることができる。他の場合においては、ヒアルロン酸は放出されて、身体組織に付着した点から離れた場所でのみ活性を発揮する。さらに他の場合においては、ヒアルロン酸は持続的な様式で放出され、組織に対して共有結合的に結合されるのではない形態で適用されたヒアルロン酸に比べて、その放出が延長される。容易に開裂する結合は、容易に加水分解される結合を含み、例えばエステル結合、アミド結合、またはシッフ塩基型の結合などである。光によって開裂される結合は周知である。さらに他の態様において、開裂可能な結合はそれ自体が、連結分子のモノマー単位の間のペプチド結合であってもよい。かかる結合は、トリプシンなどのタンパク質分解酵素によって開裂でき、冒された組織に応じて溶液の強さを変化させるのに用いることができる。
【0062】
非共有的な抱合方法も用いることができる。非共有的抱合は、疎水性相互作用、イオン相互作用、高親和性相互作用、例えばビオチン−アビジンおよびビオチン−ストレプトアビジン錯体形成、ならびに他の親和性相互作用を含む。1つの態様においては、アビジンなどの分子はポリグルタミンなどの連結分子に付着する。この抱合は、本発明に従って組織に一旦付着すると、ビオチン分子に付着する任意の剤に対する普遍的な連結部分となる。
【0063】
連結分子は、ミクロ球体またはナノ球体などの微粒子の一部であってもよく、ヒアルロン酸は微粒子内に、その中に物理的に閉じ込められるか、それに共有的に結合されるか、または物理化学的に微粒子に付着させることにより含まれてもよい。好ましい態様においては、ミクロ球体またはナノ球体は、少なくともそれらの表面上に、グルタミン、リジン、またはグルタミンとリジンの両方が豊富なポリマーを担持する。微粒子を製造する方法は文書化されており、本発明のベースを形成するものではない。本発明が従来技術と異なるのは以下の点においてのみである:本発明においては、微粒子構造のポリマーそのものまたはそれらが誘導体化されたものがグルタミンおよび/またはリジンを含むか、あるいは、グルタミンの、リジンの、またはグルタミンとリジンのポリマーがマトリクスを形成するポリマー混合物内に含められ、それによってかかるポリマーが微粒子の全体および/または表面に閉じ込められる。ミクロ球体またはナノ球体の例およびそれらの製造方法は、
【表14】
に見出すことができ、これらの開示は参照として本明細書に組み込まれる。
【0064】
本発明のさらに他の側面により、本明細書に引用されたものおよび当分野において既知のものを含む、ヒアルロン酸と任意の数のリンカー分子との抱合体は、身体組織または表面に種々の治療剤を送達するために用いられる。ある重要な態様においては、リンカーは、本明細書に引用したリンカーを含む脂肪族アミンおよびカルボキサミドである。本発明のこの側面において、ヒアルロン酸は、治療剤の担体分子として作用することが意図され、ヒアルロン酸それ自体は、治療的便益を付与してもしなくてもよい。他のリンカー分子は米国特許第6,267,957 B1号に開示されている。この特許の内容全体は参照として本明細書に組み込まれる。この後者の特許にはまた、ヒアルロン酸を介して投与可能な種々の治療剤が開示されている。用いることのできる治療剤の例は、アドレナリン作用薬;副腎皮質ステロイド;副腎皮質抑制剤;アルコール妨害剤;アルドステロン拮抗剤;アミノ酸;アンモニア解毒剤;アナボリック(同化作用剤);興奮薬;鎮痛剤;アンドロゲン;麻酔、添加物(adjunct to);麻酔薬;食欲抑制薬;拮抗剤;下垂体前葉抑制剤;駆虫薬;抗座そう剤;抗アドレナリン作用薬;抗アレルギー薬;抗アメーバ薬;抗アンドロゲン;抗貧血薬;抗狭心症薬;抗不安薬;抗関節炎薬;抗喘息薬;抗アテローム硬化症薬;抗菌剤;抗胆嚢炎薬;抗胆石生成薬(anticholelithogenic);抗コリン作用薬;抗凝集剤;抗コクシジウム薬(anticoccidal);抗けいれん薬;抗うつ薬;抗糖尿病薬;下痢止め薬;抗利尿薬;解毒剤;制吐剤;抗てんかん薬;抗エストロゲン;抗繊維素溶解薬;抗真菌剤;抗緑内障薬;抗血友病薬;抗出血薬;抗ヒスタミン薬;抗高脂血症薬;
【0065】
抗リポタンパク血症薬;降圧剤;抗低血圧薬;抗感染症薬;抗感染症薬、局所的;抗炎症薬;抗角化剤;抗マラリア薬;抗菌薬;偏頭痛薬;抗分裂剤;抗真菌薬;制嘔吐剤;抗新生物薬;抗好中球減少薬;抗肥満薬(antiobessional agent);駆虫薬;抗パーキンソン病薬;逆ぜん動薬;抗ニューモシスティス薬;抗増殖薬;抗前立腺肥大薬;抗原虫薬;かゆみ止め薬;抗精神病薬;抗リューマチ薬;抗住血吸虫薬;抗脂漏薬;抗分泌薬;鎮痙薬;抗血栓剤;鎮咳薬;抗潰瘍薬;抗尿結石薬;抗ウイルス薬;食欲抑制剤;良性前立腺過形成治療薬;血糖調節物質;骨吸収阻害薬;気管支拡張薬;炭酸脱水酵素阻害薬;心抑制薬;心臓保護薬;強心剤;心血管作動薬;胆汁分泌促進薬;コリン作動薬(cholinergic);コリン作動薬(cholinergic agonist);コリンエステラーゼ不活性化剤;コクシジウム抑制薬;認知補助剤(cognition adjuvant);認知促進薬;抑制薬;診断補助薬;利尿剤;ドーパミン作動剤;外部寄生虫撲滅薬;催吐剤(emetic);酵素阻害薬;エストロゲン;繊維素溶解薬;蛍光剤;フリーラジカル酸素捕捉剤;胃腸運動エフェクター;グルココルチコイド;性腺刺激因子(gonad stimulating principle);毛髪成長刺激剤;止血薬;ヒスタミンH2受容体拮抗薬;ホルモン;コレステロール低下剤;血糖降下薬;脂質低下薬;血液降下剤;造影剤;免疫剤;免疫調整剤(immunomodulator);免疫調節剤(immunoregulator);免疫賦活剤;免疫抑制剤;
【0066】
インポテンス治療補助剤;阻害剤;角質溶解薬;LNRH作動薬;肝臓疾患処置剤;ルテオリジン;記憶補助剤;精神機能促進剤;気分調整剤(mood regulator);粘液溶解薬;粘膜保護剤;散瞳剤;鼻充血除去薬;神経筋遮断薬;神経防護作用薬;NMDA拮抗薬;非ホルモンステロール誘導体;分娩促進薬;プラスミノゲン活性剤;血小板活性化因子拮抗薬;血小板凝集阻害剤;脳卒中後および頭部外傷後処置薬;増強薬;プロゲスチン;プロスタグランジン;前立腺成長阻害剤;プロチロトロピン(prothyrotropin);向精神薬;肺面;放射性剤;調整剤;弛緩薬;再分割剤(repartitioning agent);疥癬虫殺虫剤;硬化剤;鎮静剤;鎮静催眠薬;選択的アデノシンA1拮抗薬;セロトニン拮抗薬;セロトニン阻害剤;セロトニン受容体拮抗薬;ステロイド;興奮剤;抑制剤;症候性多発性硬化症;共力剤;甲状腺ホルモン;甲状腺阻害剤;チロ類似薬(thyromimetic);精神安定剤;筋萎縮性側策硬化症の処置;脳虚血の処置;パジェット病の処置;不安定狭心症の処置;尿酸排泄促進薬;血管収縮薬;血管拡張剤;外傷治療薬;創傷治療薬;キサンチン酸化酵素阻害薬である。
【0067】
当業者には明らかであるように、ヒアルロン酸が他の治療剤の担体として用いられるこれら後者の抱合体は、
かかる治療が必要な対象に対する治療的または予防的方法において用いることができる。かかる剤の投与から利益を受ける対象の識別は、開業医の領域である。
本発明の化合物は、本明細書に記載されているような特定の疾患もしくは症状を有するか、またはそれらを有するリスクのある対象の処置のための多数の方法において用いることができる。かかる疾患を有する対象は、開業医または自己診断によって疾患を有すると診断されたものである。かかる診断は、対象が経験している症状に基づいて、または臨床検査に基づいて行うことができる。疾患を有するリスクのある対象とは、環境的、行動的または遺伝的要因のために疾患を発症する傾向のあるものである。疾患または状態は、疾患を有する対象においては処置され、一方、疾患を有するリスクのある対象においては予防される。
【0068】
本化合物は、乾燥を特徴とするものを含む多くの疾患の処置または予防に用いることができる。乾燥を特徴とする状態とは、対象が、例えば眼や口などの組織または身体組織において水分または潤滑の不足を経験する状態である。乾燥を特徴とする状態は、身体の任意の領域を内部的および外部的に冒しえることが理解される。本明細書に提供される方法を用いて処置することができる状態の例は、ドライアイ、口腔乾燥症、皮膚の乾燥(例えば、しわ)、膣腔の乾燥などを含む。本化合物は、ヒアルロン酸が治療的または予防的に有益であると以前に報告されている任意の疾患の処置および/または予防に用いることができる。かかる疾患は前記されており、一般の開業医に既知である。
【0069】
本明細書に記載の化合物を用いて処置することができる皮膚の疾患は、褥瘡、栄養障害性潰瘍、やけど、無痛性創傷(indolent wound)、外傷後潰瘍、静脈瘤性および静脈炎後潰瘍、放射線壊死、単純ヘルペスウィルスおよび植皮により誘発される等による皮膚の病変を含む。これらの態様において、本組成物は、ガーゼパッド、クリーム、スプレー剤を用いて投与することができ、乳化剤を含んでもよい。局所用製剤に含んでもよい他の剤は、マンニトール、ポリエチレングリコール、オレイン酸、グリセロール、ソルビトール、p−オキシメチルベンゾアート、パラフィンジェリー、およびグリシンを含む。
【0070】
本発明の化合物を用いて処置できる他の疾患は、呼吸器疾患、例えば気腫、慢性気管支炎、喘息、肺水腫、急性呼吸窮迫症候群、気管支肺異形成症、肺線維症、および無気肺などを含む。これらの疾患に対して、本組成物は気管内投与することができ、それにはエアロゾル、噴霧器、または咽頭注入法(instillation)を用いることを含む。
間質性膀胱炎は、本発明の組成物を用いて処置が可能な他の疾患である。間質性膀胱炎を有する対象は、切迫した頻繁な排尿、排尿により軽減され得る恥骨結合上の痛み、関節炎、痙攣性結腸および低度の発熱などの症状を一般に有する。本組成物は、膀胱および/または関連する解剖学的構造内に、例えばカテーテルなどを用いて直接注入するのが好ましい。注入容量は、5ml〜100mlの範囲が可能であり、より好ましい容量は20ml〜70mlである。経腹壁的投与も考えられる。
【0071】
本化合物は、関節の不快感を経験している対象において用いることもできる。関節の不快感を経験している対象とは、膝および腕の関節などの関節に不快感または痛みを経験しているものである。この不快感は、関節の曲げが必要な動きの間に最もしばしば起こり、かかる関節の可動性の不足に関連している。それはしばしば、関節炎の発現である。この方法で処置すべき対象は、変形性関節症、急性または慢性滑膜炎、関節軟骨の退行変性過程、および乾燥関節疾患などの関節の疾患を有するか、発症するリスクのあるものである。一般にこれらの状態に伴う症状は、痛みおよび関節機能の障害を含む。これらの態様において、本組成物は、関節内注入物として投与することができる。かかる組成物は、コラーゲン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン、グリコプロテイン、硫酸塩灰(sulphated ash)、アルブミン、および保存剤、例えば安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベンなどを含むことできる。注射は身体の任意の関節内に行うことができ、それらは、心皮、球節、ウマの蹄(coffin)、または脛足根関節(tibotarsal joint)、足根間関節または足根中足関節、大腿脛骨の外側もしくは内側包(lateral or medial sacs)、または大腿膝蓋関節を含むが、これらに限定されない。関節疾患の処置または予防に関連する方法は、競走馬などの動物に特に好適である。
【0072】
本化合物は、過剰な血液凝固を有する対象または血液凝固を発症するリスクの高い対象、または有害な心血管系イベントを有するか、そのリスクのある対象において有用である。これらの対象は、既に血液凝固を有するか、または環境的、行動的(例えば食生活)もしくは遺伝的要因のために血液凝固を発症しやすい。血液凝固を発症する高いリスクとは、対象の正規母集団のリスクより高いことである。過剰な血液凝固とは、不適切に生じ、対象の正規母集団が経験するより頻繁であるか、またはより重篤な血液凝固である。これらの対象は一般に、本発明の化合物を、ステントまたはバルーン血管形成などの静脈内または動脈内医療器具を用いて投与される。本化合物は医療器具を被覆することができ、またはボーラスもしくは連続注射により投与することもできる。本明細書で示される組成物は、従って、動脈の再狭窄の予防に有用である。代替的に、本抱合体は随意的に遊離ヒアルロン酸とともに、ガイドチャネル、バイパス、人工血管、シャント、および心血管系において用いられる他の生体材料などの調製において用いることができる。
【0073】
ある態様においては、本組成物は、身体組織または表面に対して、他の治療剤との処置のために供給される。ヒアルロン酸は組織を透過することが知られており、従って、身体組織の他の剤の受容を増加させるのに有用である。そのように処置される組織は、通常または病態により還流が悪くなっている組織であってよい。
本明細書に提供される組成物は、ドライアイまたは口腔乾燥症を有する対象の処置に用いることができるが、組成物の使用はこれに限定されない。ドライアイは、涙腺(すなわち、涙を生成する)を障害する自己免疫疾患を含むがこれには限定しない多くの潜在的状態から生じ得るものであり、自己免疫疾患は例えば関節リューマチ、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、および全身性硬化症およびサルコイドーシスなどである。これらの対象の多くは、涙を生成する機能が低下している。角膜および/または結膜を含む眼の持続する乾燥を有すると診断された対象は、本明細書に記載の処置法の好適な候補者である。これらの対象は、一般に眼に中程度の不快感から強い痛み、視力低下(かすみ目)、ざらざらする、および/または燃えるような感覚、ならびにかゆみを訴え、角膜潰瘍および/または瘢痕を発症することもある。
【0074】
本発明はまた、口腔乾燥症を有する対象の処置のための方法を提供する。口(すなわち口腔)の乾燥は、ストレス、潜在する状態、例えばシェーグレン症候群および全身性硬化症、唾液腺(すなわち、唾液を生成する腺)の感染、特定の医薬剤、例えば抗コリン作用薬、利尿薬、抗ヒスタミン薬、クロニジン、レボドーパ、メチルドーパ、および三環系抗欝薬などの使用、または放射線療法への暴露などから生じ得る。口腔乾燥症を有する対象は一般に、嚥下および話すことにおける困難さおよび苦痛、味覚の障害、場合によっては虫歯などを訴える。ドライアイはまた、ホルモンの変化のため閉経後の女性にも一般的である。
【0075】
ドライアイおよび口腔乾燥症の症状の軽減に加えて、本発明のヒアルロン酸抱合体は、組織または表面における湿度および水分を一定のレベルに維持するのが望ましい他の状況においても用いることができる。この例は、白内障手術、人口水晶体置換術および角膜移植などの眼内手術を含む。
本組成物はさらに、他の粘膜組織(例えば、膣、直腸、鼻腔、肛門等)および外部組織(例えば、毛髪、爪、唇等)の乾燥を伴う症状の軽減に用いることができる。
さらに他の態様において、本抱合体は異常な血小板凝固のリスクのある対象に用いることが意図されるが、これはヒアルロン酸が血小板凝固を抑制すると報告されているからである。かかる対象は、ステント留置またはバルーン血管造影法などの侵襲的処置を受けるものであってよく、本発明の抱合体はこれらの器具を用いて投与することができるが、その投与はこれらに限定されない。
【0076】
提供される組成物は、治療的な方法および予防的な方法の両方に使用可能であることが理解される。治療的に用いられる場合、本抱合体は対象に既に存在している症状を軽減することが意図され、従って対象が症状を訴えた後に投与することができる。予防的に用いられる場合、本抱合体は、対象がかかる症状を引き起こすことが知られている活動を行っているかこれから行おうとしている場合に、かかる症状が発生するのを防ぐか、またはその発生を遅延させることを意図する。これらの活動は、ドライアイの場合は例えば読書のし過ぎ、コンピュータの使い過ぎ、および場合によってはコンタクトレンズの長時間の使用などを含む。
【0077】
「対象」とは、ヒトまたは脊椎動物であり、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、サルなどの霊長類、サケなどの魚(水産養殖種)、ラットおよびマウスなどを含むが、これらに限定されない。
本発明の組成物は、有効量を投与される。用語「有効量」とは、所望の生物学的効果を実現するのに必要または十分な量をいう。例えば、ヒアルロン酸含有抱合体の有効量は、対象がドライアイ症状について処置される場合には、かかる症状を低減させるかまたは消滅させるのに必要な量である。処置される対象が、口腔乾燥症を有するかまたは有する疑いのある場合は、口腔乾燥症の症状を低減させるかまたは消滅させるのに必要な量である。本明細書で用いられる場合、用語「処置」とは、例えば、これらに限定されないがドライアイまたは口腔乾燥症に関連する症状の低減または完全な消滅を言う。例として、処置の前にドライアイ症状を経験している対象は、処置の後にドライアイ症状の重篤度または頻度が軽減されるか、または症状が完全に消滅すれば「処置された」ことになる。ドライアイまたは口腔乾燥症に関連する症状とは、本明細書に記載のものである。
【0078】
本明細書に記載の教示と組み合わせて、種々の抱合体構造から選択し、効力、相対的バイオアベイラビリティ、患者の体重、副作用の重篤度および好ましい投与方法などの要因を慎重に考慮することにより、重大な毒性または炎症をもたらすことなく、全体として特定の対象の処置に有効な、効果的な予防または治療の処置方法が計画できる。
任意の特定の適用に対する有効量は、処置される疾患もしくは状態または軽減される症状、投与される特定の抱合体、対象の大きさ、または、疾患、状態もしくは症状の重篤度などの要因により変化し得る。当業者は、過度の実験を必要とすることなく、特定の抱合体の有効量を経験的に決定することができる。
【0079】
抱合体の有効量はまた、該抱合体の正確な性質に依存し、これには連結分子に対するヒアルロン酸の割合、および、ヒアルロン酸および連結分子の長さまたは分子量などを含むが、これらに限定されない。遊離形態で適用される場合、ヒアルロン酸ナトリウムは0.1%(w/v)溶液(すなわち1mg/ml)で眼に投与されている。しかし、本発明のヒアルロン酸の、連結分子を介して眼球表面に付着する能力を考えると、本組成物においてはより少量のヒアルロン酸しか必要としないことが期待される。好ましくは、本剤形は、単位用量当たり遊離ヒアルロン酸の0.1%溶液に等価な効力を有する抱合体の量を投与する。一般に、抱合体は、眼に投与される場合は1投与当たり少なくとも50μgのヒアルロン酸を送達するよう製剤化され、口腔に投与される場合は1投与当たり少なくとも1mgのヒアルロン酸を送達するよう製剤化される。口腔を意図した組成物は、口腔内の処置すべき面積がより大きいことを考えると、眼のそれよりも濃縮されたものであってよい。
【0080】
本明細書に記載された化合物の対象への用量は、一般に約0.001mg/日〜16,000mg/日の範囲、より一般的には約0.05mg/日〜8000mg/日の範囲、そして最も一般的には約0.1mg/日〜4000mg/日の範囲である。対象の体重当たりで表すと(および、平均体重80kgを仮定すると)、一般的な容量は約0.00001〜200mg/kg/日の範囲、より一般的には約0.0006〜100mg/kg/日の範囲、そして最も一般的には約0.001〜50mg/kg/日の範囲である。
同様に、抱合体がその中に含まれて送達される容量は、投与部位により変化する。眼に送達する場合は、容量は2ml未満、1ml未満、0.5ml未満、0.25ml未満、0.1ml未満、0.05ml未満、0.025ml未満またはそれより低いのが好ましい。口腔に送達する場合は容量はそれより大きくてもよく、うがい薬など大きな容量の組成物で送達される場合は特にそうである。代替的に、抱合体をスプレー剤として口腔に送達する場合は、その容量は眼への投与容量の尺度となり得る。
【0081】
抱合体は対象に対し任意の様式で投与してよいが、その様式は処置する状態および症状に関連するのが好ましい。例えば、ドライアイ症状の処置に用いる場合は、抱合体は眼に投与される。口腔乾燥症の症状の処置に用いる場合は、抱合体は口腔に投与される。経口で投与する場合、胃または消化管の他の領域ではなく、直接口腔に(場合によって咽喉部を含む)抱合体を送達することを意図する。他の投与経路は、鼻腔内、気管内、吸入、膣、直腸、局所的、関節内、および静脈内を含むが、これらに限定されない。
【0082】
本化合物は、疾患および投与の様式に応じて、異なる容器、媒体または剤形において提供される。例えば、本明細書に詳細に記載されているように、本化合物は、経口適用のためには、舌下錠、ガム、うがい薬、練り歯磨き、キャンディ、ジェル、フィルム等として;眼への適用のためには、点眼器中の目薬、眼科用軟膏、アイジェル、アイパック、コンタクトレンズもしくは眼内レンズのコーティングとして;コンタクトレンズ用保存液または洗浄液等として;局所的適用のためには、ローション、軟膏、ジェル、クリーム、スプレー剤、ティッシュペーパー、綿棒、拭き取り用繊維等として;関節内適用のためには、関節内送達のための注入可能な溶液等として;血管適用のためには、医療器具のコーティング、注入可能溶液等として;膣または直腸への適用のためには、軟膏、タンポン、座薬、粘液付着性組成物等として、投与可能である。
【0083】
本発明の抱合体は、ドライアイを有する対象に、眼への投与に好適な種々の組成および物理的形態において投与可能である。眼への投与を意図した組成物は、眼の環境、少なくともpH、ならびに塩の組成および濃度に関して適合するものでなければならない。これらの組成物は、眼を刺激してはならない。
組成物は、種々の物理的形態において眼に投与可能であり、液体溶液、眼の軟膏またはジェル、または綿撤糸などのアイパックを含むが、これらに限定されない。液体溶液は点眼器の支援により便利に投与され、点眼瓶に入れて提供することができる。
【0084】
点眼瓶は、容器から液体を取り出すのに用いられる点眼器を含む容器である。点眼瓶はガラス製またはプラスチック製であり、液体の容量およびその保管寿命によってサイズが異なり得る。例えば眼科用保存剤などの保存剤を含まない溶液は、保管寿命が短くなる傾向があり、従って一般に小さい容量で調製される。従って、ある重要な態様においては、組成物は、最大で0.5mlの桁の容量、または5.0mlの桁の容量を含む点眼瓶で提供される。これら後者の態様は、単回の使用または1週間単位に対応し、随意的に、それらは眼科用保存剤を含まない。かかる小容量の複数の瓶(例えば、吹き込み充填密封法(blow-fill-seal method)により調製されたバイアルなど)は、キットで提供され、それは随意的に、箱、バッグ、またはボール紙もしくはプラスチックの裏あてなどの裏あてを含む。キットは、本明細書に概要を示すように、組成物の使用の指示書を含むことができる。
【0085】
組成物はまた、アイ・ケアのために定常的に用いられ市場で入手可能な溶液に入れて提供することもできる。例えば、組成物は、コンタクトレンズ洗浄液、コンタクトレンズ保存液、またはコンタクトレンズ装着者のための目薬などの、コンタクトレンズ用溶液に混合できる。コンタクトレンズ用溶液は当分野で知られており、一般にコンタクトレンズを保存または洗浄するのに用いる溶液、または、目薬もしくは人工涙液組成物などの、コンタクトレンズ装着者によって用いられる溶液を指す。コンタクトレンズ装着者に対して一緒に提供されれば、組成物は、角膜とコンタクトレンズとの間の摩擦を減少させる。組成物はまたフィルムの形態で提供することもでき、かかるフィルムは、例えばコンタクトレンズ製造業者によってコンタクトレンズに被覆することができて、ドライアイまたは炎症なしにコンタクトレンズの使用を延長することができる。同様に組成物は、コンタクトレンズを商業的にそれに入れて提供するための溶液に含むこともできる。
【0086】
同様に組成物は、当分野で知られている眼用ジェルまたは軟膏として製剤化することもできる。
眼用の投与を意図した組成物は、眼用溶液、ジェル等のために記載された、または涙の中に存在することが知られている他の剤を含むことができる。一例は、涙の中に存在することが知られているリゾチームである。
眼用の投与を含むある態様においては、組成物は、色を消すために処理すること(したがって、溶液を透明で無色にする)ができる。代替的に、組成物の色を加えるか変えることが望ましい場合もあり、特に、組成物が眼に送達されたことを確認するために色を用いる場合はそうである。
【0087】
ある態様においては眼用の組成物は保存剤を含まず、無菌フィルタ(例えば0.22μmフィルタ)でろ過して単回使用量としてパッケージされる。従ってある場合においては、本発明の組成物は、使用量の単位で調製および/またはパッケージされる。使用量の単位とは、1回の投与に必要な量、または1日、1週間、1ヶ月もしくはそれ以上の期間の投与量である。好ましくは、単位量の単位とは、1回の投与、または最大でも数日(ただし1週間未満)の期間の投与に必要な量である。使用単位のパッケージ化は溶液の汚染を防ぐのに有用であり、なぜならば、それによって個人が溶液に接触する回数が低減されるからである。
【0088】
本発明の抱合体は、同様にして、口腔乾燥症を有する対象に対して、種々の組成および経口または口腔投与に好適な物理的形態において投与することができる。「経口的」および「口腔的」の用語は本明細書では同義的に用いられ、口腔を指し、唇、歯、口、舌、口蓋、および上部咽喉領域を包含する。経口または口腔投与を意図した本組成物は、口腔の環境に適合しなければならない。一般に経口または口腔送達製剤に対する要求は、眼用送達製剤のそれと比べてよりゆるやかである。しかし、味覚および嗅覚の考慮は経口または口腔送達製剤において重要であり、これらは眼用製剤においては重要性がより低いであろう。
【0089】
好ましい態様において、組成物は、その物理的形態に関わらず口腔内に送達されて留まる。従って本組成物は、口腔内に留まり消化管では消化されない、ロゼンジ(トローチ剤)、スプレー剤、ガム、舌下錠、うがい薬、経口ジェル、練り歯磨き、粘膜付着性パッチなどの形態で提供されるのが好ましい。
経口的に送達される場合、抱合体は、舌下粘膜を含む口腔粘膜に接触する。「粘膜(mucosa)」は、粘膜(mucous membrane)を指す。本明細書で用いられる場合の「口腔粘膜」とは、口および上部咽頭領域の粘膜を指す。「舌下」とは、口腔内の舌の下側の領域を指す。
【0090】
1つの好適な経口形態は、舌下錠である。舌下錠は、抱合体を舌下粘膜に送達する。本明細書で用いられる場合、「錠剤」とは、圧縮または成型により調製される医薬剤形を指す。舌下錠は小さく平らであり、舌の下に置かれて迅速に、ほとんど瞬間的に崩壊し、抱合体を舌下粘膜に放出する。用語「崩壊」とは、バラバラに壊れることを意味する。好ましくは、本発明の舌下錠剤は崩壊して5分間以内に、より好ましくは2分間以内に抱合体を放出する。放出された抱合体は、口腔に存在する内因性グルタミン転移酵素の作用を介して、口腔粘膜に結合するために利用可能となる。
経口的送達製剤の他の形態は、ロゼンジ(トローチ剤)、ガム、および薄い溶解性フィルムを含む。
【0091】
経口製剤は液体形態をとることもできる。液体は、スプレー剤または滴剤として口腔全体に投与でき、これには舌下領域など領域を選択することを含む。本発明のスプレー剤または滴剤は、経口または舌下投与に適合させた標準のスプレー瓶、または点滴瓶を用いて投与することができる。液体製剤は、口腔への投与を容易にするために、好ましくはスプレー瓶、微細噴霧器、またはエアロゾル蒸気容器に保持される。液体組成物は、予め定められた量の組成物を口腔に送達するよう調整されている点滴器またはスプレー瓶に保持することもできる。目盛り付スプレーまたは点滴器を有する瓶は、当分野に知られている。
【0092】
本発明の抱合体は、経口ジェルとしても製剤化することができる。例として、抱合体は、粘膜付着性の不水溶性ジェルとして投与してもよい。このジェルは、少なくとも1種の不水溶性アルキルセルロースまたはヒドロキシアルキルセルロース、揮発性非水溶媒、および本抱合体から製造する。生物付着性ポリマーを添加してもよいが、必須ではない。ジェルは一旦粘膜表面に接触すると、主として揮発性溶媒または非水性溶媒が蒸発することにより、付着性フィルムを形成する。ジェルが粘膜表面に留まる機能は、そのフィルム性コンシステンシー(filmy consistency)および不溶性成分の存在と関連する。ジェルは、スプレーにより、浸すことにより、または指もしくは綿棒で直接適用することにより、粘膜表面に適用することができる。
【0093】
本発明の抱合体はまた、うがい薬または練り歯磨きとして製剤化することができる。
必要な場合、送達製剤は、香味剤、着色剤および/または芳香剤を含むことができる。香味剤、着色剤および/または芳香剤は、組成物をユーザーに許容されやすいように改善することを支援する。
【0094】
香味剤は、それがなければ無味の製剤に味付けを提供する剤、既に存在するが弱い味を強化する剤、または既存の不快な味を隠すかまたは変化させて、より口にあう味にする剤である。香味剤は当分野に知られており、Waner-Jenkinson Company, Inc.などの数多くの供給者から市場を通して入手可能である。香味剤の例は、ペパーミントの抽出物、葉の粉末または油;スペアミントの抽出物、葉の粉末または油;ウィンターグリーン油;バニラ抽出物;パセリ;オレガノ油;ベイリーフ油;チョウジ油;セージ油;サッサフラス油;レモン油;オレンジ油;アニス油;ベンズアルデヒド;アーモンド油;ショウノウ;ニオイヒバ油;マジョラム油;シトロネラ油;ラベンダー油;カラシ油;パイン油;まつ葉油;ローズマリー油;タイム油;シナモンリーフ油;メントール;カルボン;アネトール;オイゲノール;サリチル酸メチル;リモネン;シメン;n−デシルアルコール;シトロネロール;α−テルピネオール;酢酸メチル;酢酸シトロネリル;メチルオイゲノール;シネオール;リナロール;オイクトル(eyktl)リナロール;バニリン;チモール;ペリラ油;冬緑油;ユーカリ油;カフェイン、酒石クリーム、乳酸、リンゴ酸、グルタミン酸第一ナトリウム、亜硝酸塩、ソルビトール等を含む。香味剤は、製剤が口腔または経口投与を意図したものである場合に最も所望される。香味剤はまた、甘味剤(すなわち、甘味料)、例えばアスパルテーム、アセスルファム、サッカリン、デキストロース、レブロース、シクラミン酸ナトリウム、ステビオシド、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、グリシルリジン、ペリルラルチン、タウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、およびp−メトキシシンナムアルデヒド等を含む。
【0095】
同様に着色剤は、それがなければ無色の製剤に対して色を提供する剤、既に存在するが弱い色を強化する剤、または既存の潜在的に不快な色を、隠すかまたは変化させる剤である。着色剤はまた、色付きの製剤を色なしのものに変換する剤も含む。着色剤は当分野に知られており、上に記載したような香味剤の供給者から購入することができる。着色剤は眼用および経口製剤にも望ましい場合がある。好適な着色剤の例は、二酸化チタンである。経口組成物用の好適な着色剤は、FD&C青色#1、FD&C黄色#5および#10、FD&C赤色#3および#40、カラメルカラーまたはカラメルパウダー(#05439)、チョコレートシェード(#05349)、グリーンレイクブレンド(#09236)、コウェット二酸化チタン(#03970)、イエローリキッドカラー(#00403)、および硝酸塩を含む。
【0096】
芳香剤は、それがなければ無臭の製剤に対して芳香(すなわち、香り)を提供する剤、既に存在するが弱い芳香を強化する剤、または既存の潜在的に不快な匂いを、隠すかまたは変化させる剤である。芳香剤はまた、匂いのある製剤を無臭のものに変換する剤を含む。芳香剤は当分野に知られており、上に記載したような香味剤の供給者から購入することができる。着色剤の例は、草花の抽出物、ハーブ抽出物、木の花の抽出物または植物抽出物などの天然の芳香剤、および人工の芳香剤を含む。芳香剤は、眼用および経口製剤に対して望ましい可能性がある。
【0097】
好適な舌下錠の例は、以下の配合に従って生成される:ヒアルロン酸とポリリジンの抱合体(1個の錠剤あたり1mgの抱合体を供給するように配合);マンニトールUSP(DC級)31.5mg;微結晶(microcryst)、セルロース40.35mg;グリコール酸スターチナトリウム(sodium starch glycolate)NF2.6mg;サッカリンナトリウム、USP0.5mg;香味剤S.D.ペパーミント、FCC0.75mg;マグナスイートMM 188M0.5mg;バニラ香味剤#800、0.2mg;D&C黄色#10、アルミニウムレイク(Aluminum Lake)0.2mg;ステアリン酸マグネシウム、NF0.5mg;エアロシル200、0.4mg。
好適な舌下錠の他の例は以下の配合に従って生成される:ヒアルロン酸とポリリジンの抱合体(1個の錠剤あたり1mgの抱合体を供給するように配合);マンニトール30.30mg;微結晶セルロース(FMC)40.00、34.00mg;グリコール酸スターチナトリウム(EXPLS TAB Mendell)2.60;ステアリン酸マグネシウム、NF0.50mg;サッカリンナトリウム(Mallinckrodt)2.00mg;アスパルテーム(Neutrasweet)4.00mg;ペパーミント(Virginia Dare HF82 SD#517)0.40mg;バニラ(Virginina Dare 800NAT)0.30mg;MAFCOマグナスイート 188M0.25mg;プロスイート#560(MM54)0.75mg;チョコレート風味#682、2.00mg;D&C黄色#10。
【0098】
当業者は、これらの製剤に対する改変が容易に実施できることを認識する。それ自体が対象に対して治療的または有益である化合物を含む他の成分を、本発明の製剤に添加できることが理解される。例えば、本発明の経口製剤はビタミンまたはフッ化物を含んでよく、眼用製剤は、抗緑内障薬などの当分野で知られている治療剤を含んでもよい。
【0099】
上記の製剤においては、マンニトール、サッカリンナトリウム、ペパーミント、マグナスイートおよびバニラは、抱合体の味を隠すか、または快い味を最小限に提供することのできる香味剤である。香味剤は、有効性を犠牲にすることなく取り除くことができる。しかし、対象のコンプライアンスはより困難となる。香味は、個人の必要性や好みに合うように変化させることができる。D&C黄色は着色剤として用いられる。着色剤は、容易に取り除いたり、または他の染料と置き換えることができる。ステアリン酸マグネシウムおよびエアロシル200は、錠剤を圧縮機から解放するための潤滑剤である。これらの成分は、製造工程によっては完全に置き換えまたは取り除くことができる。微結晶性セルロース、マンニトールおよびグリコール酸スターチナトリウムは、錠剤のコアを提供する。セルロースおよびデンプンは、コア成分の結合を促進し、水分の存在下で錠剤の崩壊を促進する。これらの成分の相対的な量は、錠剤の崩壊を調節するために変化させることができる。
【0100】
全成分の量を計量し、マンニトールおよびアビセル(Avicel)を除く全成分を、80メッシュのステンレススチール製のふるいに通す。これらの材料は好適なサイズのポリエチレンの袋内で約5分間混合し、PKブレンダーなどの好適なブレンダーに移す。マンニトールおよびアビセルの必要量を40メッシュのステンレススチール製のふるいに通し、前記PKブレンダーに他の材料と共に加える。混合物をPKブレンダーで10分間混合して取り出す。混合物の試料を、効力および他の品質決定基準に関して検査する。混合物のかさ密度は、100tap用にセットされたかさ密度計を用いて決定する。錠剤圧縮機を指定のパンチに設定し、混合物を80mgの錠剤重量に圧縮する。
【0101】
錠剤は、1個の錠剤を舌の下に置くことにより投与する。この錠剤は崩壊してヒアルロン酸を含む抱合体を放出し、抱合体は次に口腔粘膜に付着する。
経口溶液は、蒸留した殺菌液を用いて製造し、以下の配合に従って製造することができる:ヒアルロン酸とポリリジンの抱合体(1投与当たり1mg/mlの抱合体を提供するように配合);塩化ナトリウム0.9%;および塩化ベンザルコニウム0.1〜0.2%。該製剤は、滴剤によるかまたは細かいミストとして投与可能な経口溶液であるが、その投与経路はこれらに限定されない。当業者は、製剤に対して容易に改変が可能であることを、容易に理解する。
【0102】
上記の製剤において、塩化ナトリウムは溶液に等浸透圧性を付与するために用いられる。かかる溶液はユーザーにとってより快適であるが、しかし塩化ナトリウムは所望により取り除いてもよい。また上記の製剤において、塩化ベンザルコニウムは保存剤として用いられる。
しかしある態様においては、わずかに高張性の製剤、例えば280mOsmを越える製剤を用いて、抱合体がそれ自体とまたは他の荷電化合物と錯体を形成しないよう維持するのが好ましい。これらの態様は、本明細書に記載されている。
【0103】
経口投与はまた、粘膜付着性デバイスまたはシステムを用いて有効にすることができる。この型の好ましいシステムは、適用後に自然に壊れるものである。好適な生体内崩壊性粘膜付着性デバイスまたはシステムの1例は、ジェル、ディスクまたはフィルムとして製剤化可能であり、任意の粘膜表面において用いることができるBEMA(登録商標)である。生体内崩壊性粘膜付着性デバイスは、活性剤が口腔または膣の粘膜などの粘膜表面に送達されることを許容する、ポリマーベースのシステムである。生体内崩壊性粘膜付着性デバイスは一般に、多くの形態をとることが可能なフィルムから構成される。1つの好ましい態様においては、生体内崩壊性粘膜付着性デバイスは、小さな半軟性ディスクの形態である。生体内崩壊性粘膜付着性デバイス、例えばBEMA(登録商標)ディスクは、形成後に抱合体を浸透させることができる。これらのデバイスは、例えば口、膣、直腸または肛門などの粘膜表面に付着できる。フィルムが生体内崩壊されるにつれて、それに含まれていた抱合体は放出され、隣接する粘膜に付着する。ディスクは本質的には粘膜表面の水分に溶解するため、ディスクを取り除く必要はない。生体内崩壊性粘膜付着性デバイスの1つの利点は、粘膜に付着せずにそれを囲む組織または腔へ放出される抱合体が最少となることである。一般に、フィルム(例えば、ディスクの形態において)の一方の側のみが粘膜表面に付着する。膣または肛門に適用するには、デバイス(例えばディスク)が丸められてから、デバイスの付着側に特に注意しながら腔へと挿入されることが推奨される。
【0104】
生体内崩壊性粘膜付着性デバイスは、デバイス中の抱合体の滞留時間、生体内崩壊の動態(および従って、活性剤の放出時間および放出率)、デバイスの味(特に経口投与に好適な)、ならびに形状およびディスクの厚さを制御するよう、特定的に合成することができる。
生体内崩壊性粘膜付着性システムおよびデバイスは、
【表15】
から市場を通して入手可能である。米国特許第
【表16】
号が特に参照可能である。
【0105】
抱合体は、デバイス重量の0.001〜30%、より好ましくは重量の0.005〜20%を構成してよい。他の成分もBEMA(登録商標)ディスクに存在することができ、それらには、可塑剤、香味剤(好ましくは経口適用のために)、芳香剤(例えば香料)、着色剤、および保存剤を含む。これら後者の成分は、ディスクの付着層および非付着層のどちらかまたは両方に加えることができる。
ディスクは、種々の形状またはサイズを有することができる。ディスクの厚さは、0.05mm〜1mm、または0.1mm〜5mmの範囲で変えることができ、付着層または非付着層のどちらかが総厚さの10〜90%を占めてよい。本明細書に記載されているように、抱合体は、多数の適切な溶媒または溶媒の組合せの中に入れてBEMA(登録商標)ディスクに装填するよう調製することができ、これら溶媒は、水、メタノール、エタノール、または低アルキルアルコール例えばイソプロピルアルコールなどを単体でもしくは組み合せて含むが、これらに限定されない。
【0106】
ディスクの形成は、フィルムディッピング、フィルム被覆、フィルム鋳造、スピンコーティング、またはスプレー乾燥を含むがこれらに限定されない、当分野で既知の任意数の技法を用いて実現することができる。ディスクの2つの層は一緒に形成することもでき、または別々に形成した後互いに接触させることもできる。ディスクは、楕円、正方形、および長方形の形状にすることができるが、これらに限定されない。
本発明の組成物は、薬学的に許容し得る濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合する担体、補助剤、および随意的に他の治療用成分を規定どおりに含むことができる、薬学的に許容し得る担体中において投与してもよい。用語「薬学的に許容し得る担体」とは、1種または2種以上の適合可能な固体または液体の充填剤、希釈剤、または封入物質であって、対象への投与に適したものを意味する。用語「担体」とは、有機および/または無機の成分、天然または合成のものであって、活性成分がそれに組み合わされて対象への適用が促進されるものを意味する。医薬組成物の成分はまた、本発明の抱合体および組成物と、また互いに、所望の医薬有効性を実質的に損なうことのない様式において混合することができる。薬学的に許容し得る担体は当分野で知られている。
【0107】
担体の性質は投与部位に依存して変わる。しかし、担体はグルタミン転移酵素活性に好適なものでなければならない。グルタミン転移酵素は、わずかにアルカリ性のpH(例えば、pH6.5〜9)において効率的に機能するが、これは、特に眼への投与に好適ではない。その結果、グルタミン転移酵素のpH依存性を、塩濃度を増加させることにより補償することが必要となる。また、ヒアルロン酸および連結分子が互いにイオン的に錯体を形成して、連結分子がグルタミン転移酵素に接近不可能になったり、および/またはヒアルロン酸が湿潤剤として効果的に機能するのを阻害したりしないことを確かめることも必要である。pHおよび塩濃度は、グルタミン転移酵素の最大活性、ヒアルロン酸と連結分子との間の最小イオン相互作用、および冒された表面または組織の最小の刺激に基づき決定する。
【0108】
グルタミン転移酵素活性に適合する好適な保存剤は、ケーソン(kathon)およびメチルパラベンを含む。グルタミン転移酵素活性に適合する好適な洗浄剤および界面活性剤は、hampene led、Tween 20、chemophor RH-40、およびDC190を含む。グルタミン転移酵素活性に適合する好適な保湿剤は、プロピレングリコール、ブチレングリコール、およびglucacam E-20を含む。避けるべき保存剤は、glydant、Dowicil 200、BTC2125M、およびヨードアセトアミドを含む。避けるべき洗浄剤および/または界面活性剤は、Bioterge AS-40、CTAB、モノマートCPA40、およびSDSを含む。
【0109】
ヒアルロン酸および他の投与される化合物は、それ自体で(ストレートで)、または薬学的に許容し得る塩の形態で投与することができる。医薬で用いる場合は、塩は、薬学的に許容し得なくてはならないが、しかし非薬学的に許容し得る塩も、それから薬学的に許容し得る塩を調製するために用いることができる。かかる塩は、限定されないが以下の酸から調製するものを含む:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸。また、かかる塩は、アルカリ金属塩またはアルカリ土類塩、例えばカルボン酸基のナトリウム、カリウム、またはカルシウム塩として調製することもできる。
【0110】
好適な緩衝剤は、酢酸および塩(1〜2%w/v);クエン酸および塩(1〜3%w/v);ホウ酸および塩(0.5〜2.5%w/v);およびリン酸および塩(0.8〜2%w/v)を含む。好適な保存剤は、塩化ベンザルコニウム(0.003〜0.03%w/v);クロロブタノール(0.3〜0.9%w/v);パラベン(0.01〜0.25%w/v)およびチメロサール(0.004〜0.02%w/v)を含む。
医薬組成物はまた、好適な固体またはゲル相の担体または賦形剤を含むことができる。かかる担体または賦形剤の例は、これらに限定されないが、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖類、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーを含む。
【0111】
好適な液体または固体の医薬調製物の形態は、例えば、吸入用の水もしくは生理食塩水溶液、マイクロカプセル化、渦巻化(encochleated)、微細金粒子に被覆、リポソーム中に含有、噴霧化する、エアロゾル、皮膚に移植用のペレット、またはこすって皮膚に適用するために尖った物質上に乾燥して導入、などである。医薬組成物はまた以下を含むことができる:顆粒、粉体、錠剤、被覆錠剤、(微小)カプセル、座薬、シロップ、乳剤、懸濁液、クリーム、ドロップ、活性化合物の持続放出用調製物などであって、調製用賦形剤、添加物および/または補助剤、例えば崩壊剤、結合剤、被覆剤、膨張剤、潤滑剤、香味剤、甘味料または可溶化剤などが上記のように通例として用いられているもの。医薬組成物は、種々の薬剤送達システムにおける使用に好適である。薬剤送達の現在の方法の簡単な概説については、Langer, Science 249: 1527-1533, 1990を参照のこと;該文献は参照として本明細書に組み込まれる。
【0112】
組成物は、単位用量形態で便利に提供することができ、薬学分野で周知の任意の方法により調製することができる。すべての方法は、化合物を、1種または2種以上の付属成分を構成する担体と関連させるステップを含む。一般に組成物は、化合物を液体担体、細かく分割した固体担体またはその両方と均一かつ密接に関連させ、次に必要に応じて製品を形作ることによって調製される。液体用量単位は、バイアルまたはアンプルである。固体用量単位は、錠剤、カプセル、フィルム、および座薬である。
重要なのは、担体はそれが接触する身体組織または表面に好適でなければならないことである。当業者に知られているように、眼への投与に好適な担体は、眼に対する刺激が最少であること、そして好適には全く刺激しないことが要求される。眼または眼科用の製剤は薬学分野で知られており、当業者はかかる担体の組成についての指針としてRemington’s Pharmaceuticalsを参照することができる。
【0113】
眼科用製剤は、溶液、乳液、懸濁液などの液体、ならびにジェルおよび軟膏などの半固体の形態をとることができる。
眼科用製剤は、眼科用保存剤を含んでもよく、含まなくてもよい。眼科用保存剤は、当分野で知られている。一般にかかる保存剤は抗菌剤であり、これは細菌による感染が眼への剤の投与における最も一般的な副作用の1つだからである。眼科用保存剤の例は、有機水銀剤(例えば、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、チメロサール(Merthiolate(登録商標)、Lilly);四級アンモニウム化合物(例えば塩化ベンザルコニウム)、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、ポリクオタニウム−1(POLYQUAD);パラヒドロキシ安息香酸エステル;および置換アルコールおよびフェノール(例えば、クロロブタノール、クロロブタノール/フェニルエチルアルコール)を含む。他の好適な保存剤は、メチルパラベンおよびプロピルパラベンを含む。
【0114】
本明細書に記載の種々の製剤は、当分野で知られているように、ろ過または加熱により殺菌してもよい。
眼科用製剤はさらに、等張化剤、緩衝剤、保存剤(上に記載)、希釈剤、安定剤、キレート剤、増粘剤等を含むことができる。等張化剤の例は、塩化ナトリウム、ホウ酸、クエン酸ナトリウム等を含む。緩衝剤の例は、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤等を含む。眼科用製剤のpHは5〜8の範囲に維持するべきである。希釈剤の例は、蒸留または殺菌した水または生理食塩水(水性製剤用)、および植物油、流動パラフィン、鉱油、プロピレングリコール、およびp−オクチルドデカノール(非水性製剤用)を含む。安定剤の例は、亜硫酸ナトリウムおよびプロピレングリコールを含む。好適なキレート剤は、EDTAナトリウムである。増粘剤の例は、グリセロール、カルボキシメチルセルロース、およびカルボキシビニルポリマーを含む。
眼科用製剤に含むことができる他の成分は、ソルビン酸、リン酸二水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、グリセリン、リゾチーム等を含む。
【0115】
経口投与に対しては、かかる担体は本発明の化合物が、舌下または口腔内吸収錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ジェル、フィルム、シロップ、スラリー、懸濁液等として製剤化できるようにする。経口製剤はまた、練り歯磨き、パウダー、液体歯磨き剤、入れ歯洗浄剤、うがい薬、チューインガム、キャンディ、および他の食材を含むことができる。経口使用のための医薬調製物は、固体の賦形剤として得ることができ、随意的に、得られた混合物をすりつぶして必要に応じ好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物として加工し、錠剤または糖衣錠のコアを得ることができる。好適な賦形剤は、特に、乳糖、ショ糖、マンニトールまたはソルビトールを含む糖類などの充填剤;セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などである。所望により崩壊剤を加えてもよく、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、または、アルギン酸もしくはその塩例えばアルギン酸ナトリウムである。随意的に、経口製剤は、内部の酸性条件を中和するために生理食塩水また緩衝剤中に製剤化することもできるが、これは、抱合体が口腔内で取り込まれる場合には、消化管において取り込まれる場合に比べて重要ではない。糖衣錠のコアは、好適なコーティングと共に提供されてよい。この目的のために濃縮糖溶液を使用することができ、それには随意的に、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールジェル(carbopol gel)、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および好適な有機溶媒もしくは溶媒混合物を含んでよい。染料または顔料は、錠剤または糖衣錠のコーティングに、識別のため、または活性化合物の用量の異なる組み合わせを特徴付けるために、加えることができる。
【0116】
経口で用いることのできる医薬調製物は、ゼラチンで作られた押し込み式カプセル(push-fit capsule)、ならびにゼラチンおよび可塑剤、例えばグリセロールまたはソルビトールで作られた軟性の密封カプセルを含む。押し込み式カプセルは、活性成分を、乳糖などの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/またはタルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および随意的に安定剤との混合物として含むことができる。ソフトカプセル剤においては、活性化合物は、好適な液体、例えば脂肪油、流動パラフィン、または液体ポリエチレングリコールなどに溶解または懸濁させることができる。さらに、安定剤を加えることができる。経口投与用に製剤化された微小球体も用いることができる。かかる微小球体は、当分野においてよく規定されている。経口投与用のすべての製剤は、かかる投与に好適な用量とすべきである。口腔内投与に対しては、組成物は従来様式で製剤化された錠剤またはトローチ剤の形態をとることができる。
【0117】
経口製剤に好適な抗菌剤などの保存剤は、チモール、メントール、トリクロサン、4−ヘキシルレソルシノール、フェノール、オイカリプトール、安息香酸、過酸化ベンゾイル、ブチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、サリシルアミド等を含む。
歯磨きペーストなどの経口製剤のための増粘剤は、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、天然ゴム、例えばカラヤゴム、キサンタンガム、アラビアゴム、トラガカントゴム等を含む。
経口製剤はさらに、保湿剤、例えば、これらに限定されないが、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等を含むことができる。
製剤が練り歯磨き、または歯の洗浄剤である場合には、さらに、シリカなどの研磨剤、例えば乾膠体、ヒドロゲル、アエロゲル、炭酸カルシウムもしくはマグネシウム、リン酸カルシウム、アルミナおよびその水酸化物、アルミノケイ酸塩、ケイ酸マグネシウムおよびケイ酸ジルコニウム等を含むことができる。これらの製剤はさらに、フッ化物、および亜鉛塩やアルカリ金属ピロリン酸塩などの抗結石剤を含んでもよい。
【0118】
吸入による投与に対しては、本発明による使用のための化合物は、エアゾールスプレーの形態で、加圧式パックまたは噴霧器から、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素もしくは他の好適なガスなどの好適な推進剤の使用と共に便利に送達することができる。加圧式エアロゾルの場合、用量単位は、計量した量を送達するためのバルブを提供することにより決定することができる。吸入器(inhaler)または吸入器(insufflator)において用いるための例えばゼラチンなどのカプセルおよびカートリッジは、化合物と、例えば乳糖またはデンプンなどの好適なパウダーベースとのパウダー混合物を含むよう、製剤化することができる。鼻腔へ投与するための化合物はまた、ジェルまたは点鼻薬として製剤化することができる。
【0119】
局所投与のためには、化合物は、外表面に好適な任意の標準的製剤として提供することができる。例えば、化合物が皮膚での使用を意図している場合、軟膏、ローション、スプレー剤、ジェル、ティッシュ、ふき取り繊維(例えば、オムツかぶれの処置用)等として提供することができる。唇への適用に対しては、化合物はリップバームまたはリップスティックの形態で提供できる。他の例としては、化合物が毛髪への適用を意図している場合、スプレー、シャンプー、または毛髪固定剤例えばヘアスプレー、ジェル、もしくはムースなどの形態で提供することができる。爪への適用に対しては、化合物は、マニキュア液および他の爪用ケア製品として提供できる。
【0120】
好ましくはないが、ある場合においては化合物は、そのような目的のために製剤化されている場合は全身的に投与してもよい。非経口投与は、ボーラス注射または連続注入によって実施できる。注射用の製剤は、単位用量形態、例えば、アンプルまたは複数用量容器に保存剤を添加して提供することができる。組成物は、油性または水性の媒体内において懸濁液、溶液または乳液の形態をとることができ、懸濁剤、安定剤および/または分散剤などの配合剤を含んでよい。
【0121】
非経口投与用の医薬製剤は、水溶性形態の活性化合物の水溶液を含む。さらに、活性化合物の懸濁液も、適切な油性注射用懸濁液として調製してもよい。好適な脂溶性溶媒または媒体は、例えばゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームなどを含む。水性注射用懸濁液は、懸濁液の粘性を高める物質を含んでよく、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランなどである。随意的に、懸濁液は、好適な安定剤または化合物の溶解性を高める剤を含むことができ、高度に濃縮された溶液の調製を可能としている。代替的に活性化合物はパウダーの形態をとることもでき、使用の前に、例えば殺菌された発熱物質を含まない水などの好適な媒体と構成される。
【0122】
化合物はまた、直腸または膣内での組成物、例えば座薬(タンポンを含む)または停留浣腸剤、例えばココアバターもしくは他のグリセリドなどの従来の座薬ベースを含むものとして、製剤化してもよい。膣洗浄製剤も用いることができる。粘膜投与はまた、粘膜付着性フィルム、例えば本明細書に詳細に記載されたものなどを用いて実施することができる。膣内投与を含むある態様においては、組成物を、膣のグルタミン転移酵素を介した抱合体の膣粘膜への付着を促進するために、膣内環境のpHを一時的に上げる媒体内で提供するのが望ましい場合がある。このpHの増加は長く持続する必要はなく、むしろ、有効量の抱合体が組織に接触するのに十分なだけ長いのがよい。例として、pHは、局所的に6.5〜9のpHを提供する粘膜付着ディスク、座薬または洗浄溶液の使用を通して調整することができる。
前に記載の製剤に加えて、化合物はまた、デポー調製物としても製剤化することができる。かかる長時間作用型製剤は、好適なポリマー材料もしくは疎水性材料(例えば許容し得る油内の乳液として)またはイオン交換樹脂と共に、またはやや溶けにくい誘導体、例えばやや溶けにくい塩として、製剤化してもよい。
【0123】
本発明の組成物は、例えば本明細書に記載の生体内崩壊性粘膜付着性システムおよび当分野で知られたものなどの、持続放出デバイスを用いて投与することができる。
他の送達システムは、時間放出、遅延放出、または持続放出送達システムである。かかるシステムは、化合物の繰り返しの投与を避けることができ、対象および内科医の利便性を増す。多くの型の放出送達システムが利用可能であり、当業者に知られている。それらは、ポリマーベースシステム、例えばポリ(ラクチド−グリコリド)、コポリオキサラート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシブチル酸、およびポリアンヒドリドを含む。
【0124】
前記のポリマー含有薬剤のマイクロカプセルは、例えば、米国特許第5,075,109号に記載されている。送達システムはまた非ポリマーシステムを含み、それらは以下である:コレステロールなどのステロールを含む脂質、コレステロールエステルおよび脂肪酸または中世脂肪、例えばモノ−、ジ−、およびトリ−グリセリド;ヒドロジェル放出システム;シラスティックシステム(sylastic system);ペプチドベースシステム;ワックスコーティング;従来の結合剤および賦形剤を用いた圧縮錠剤;部分融合インプラントなど。特定の例は、(a)本発明の剤が、マトリックス内の形態で含まれている崩壊システムであって、米国特許第4,452,775号、第4,675,189号、第5,736,152号などに記載されているようなシステム、および(b)活性成分が、制御された速度でポリマーから浸透する分散性システムであって、米国特許第3,854,480号、第5,133,974号、第5,407,686号などに記載されているようなシステムなどを含むが、これらに限定されない。さらに、ポンプをベースにしたハードウェア送達システムも用いることができ、それらの幾つかは移植に適合される。
【0125】
持続放出組成物は、局所的に、例えばジェル、軟膏、クリームまたはパッチ(例えば、経皮パッチまたは粘膜パッチ、例えばBEMA(登録商標)ディスク)として適用可能である。例として、持続放出生分解性粒子は、体表面にそれのみで、または軟膏、ジェルもしくはクリームとして適用できる。局所的投与は、皮膚表面および粘膜表面への投与を含む。粘膜表面送達は、リップスティック、リップバームなどの唇のトリートメント、ヘルペス用軟膏;日焼け止め軟膏;例えば口内炎(例えば、放射線または化学療法が誘発した口内炎)のための経口ジェル;口腔洗浄剤、歯磨きペースト、吸入剤、表面パッチ等を介して、効果を上げることができる。代替的に、それらを移植することもできる。好ましい態様においては、持続放出デバイスは生体内崩壊性または生分解性である。他の好ましい態様においては、持続放出デバイスはそれらが適用された表面(例えば皮膚または粘膜)に付着し、好ましい形態は本発明の生体内崩壊性粘膜付着性(例えばBEMA(登録商標))デバイスである。当分野ではかかるデバイスは周知である。
【0126】
本発明の組成物は、ある側面に従ったキットの形態で提供することができる。本明細書で用いられる場合、組成物がキットとして提供されるときは、組成物は第1の容器(たとえば瓶)内に包装または含まれており、その容器はさらに第2の容器(例えば箱、段ボール箱、または袋)に包装されていることを意図している。どの場合でも、組成物の使用のための説明書を含むのが好ましい。かかる説明書は、第1の容器(すなわち、組成物を直接包含する容器)の外表面のラベルに直接提供してもよく、または、第2の容器(すなわち、第1容器を包含する容器)の外表面のラベルに提供してもよい。代替的に、使用説明書は、両方の容器とは別に、例えば第2容器内に入れた独立の用紙に記載してもよい。使用説明書は、単一用量で送達される量、任意の間隔において越えるべきではない最大量(例えば1日最大用量)、投与の方法および投与部位、処置すべき対象、および製剤で処置すべきではない対象、禁忌事項、および製剤の活性成分と非活性成分などの情報を含むが、これらに限定されない。
以下の例は、例示目的で示すものであり、本発明の範囲を限定することは意図しない。
【0127】
例
例1:ポリ(L−リジン)とヒアルロン酸の還元アミノ化を介した抱合:
緒言:
ポリリジン(PLL)のヒアルロン酸(HA)への抱合は、ヒアルロン酸の末端糖残基のアルデヒド基がポリリジンのアミノ基とシッフ塩基を形成する能力に基づく。形成されたシッフ塩基は安定ではなく、加水分解により容易に逆転される。多数の還元剤を用いてシッフ塩基を安定な第2級アミンに変換することができる。還元反応は、シアノボロヒドラートナトリウムによって最も促進されるが、これは、この試薬のシッフ塩基に対する高い反応性およびアルデヒド基に対する低い反応性による。
【0128】
【化1】
【0129】
スキーム1.還元アミノ化を介したポリ(L−リジン)ヒアルロン酸抱合体の合成
材料および方法:
分子量粘性が平均220,000のヒアルロン酸であって、ナトリウム塩形態のものは、Lifecore Biomedical(Chaska, MN)より購入した。FITCでラベルされたポリ−L−リジン(すなわち、PLL−FITC)であって、分子量15,000〜30,000および置換の程度が1モルのリジンモノマー当たり0.003〜0.01モルFITCのものは、Sigma Chemical Co.(St. Louis, MO)より購入した。シアノボロヒドリドナトリウム(NaBH3CN)は、Aldrich(Milwaukee, WI)から入手した。
【0130】
還元アミノ化により、NaBH3CNを還元剤として用いてスキーム1に示すように、PLLをHAに抱合した。HA(100mg)およびPLL(10mg)は、1MのNaClを含む15mlのホウ酸ナトリウム緩衝液(0.1M、pH8.5)に溶解した。HAの濃度は6mg/mlであり、一方PLLの濃度は0.6〜2.4mg/mlの範囲で変化させた。シアノボロヒドリドナトリウムを24mMの濃度で反応物に加え、HAの還元終端に対して約1000モル過剰とした。反応混合物を40℃で一定に攪拌しながらインキュベートし、反応物からアリコートを試薬混合の直後、3日後および6日後に取り出した。アリコートはリン酸緩衝液で希釈して、HA濃度が3mg/mlおよびPLL濃度が0.3mg/mlとし、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)により分析した。陰性対照実験を、反応物にシアノボロヒドリドナトリウムを加えないこと以外は同じ条件下で行った。最終生成物は、実験では6日間の反応で、また対照では3日間の反応で収穫して、0.5MのNaCl水性溶液に対して、Spectra/Por7膜(分子量カットオフ50,000)を用いて透析し、未反応のシアノボロヒドリドナトリウムを取り除いた。低pHで行った実験では、試料は酢酸緩衝溶液(50mM酢酸、0.2MのNa2SO4)でpH3.5に希釈し、1日保存し、ゲル透過クロマトグラフィ(GPC)により分析した。
【0131】
GPCはWatersポンプシステムを用いて行い、25℃で流量1.0ml/分にて、Waters600コントローラおよび717自動サンプラーを備えたUltrahydrogel線形カラム(Waters Corporation、Milford, MA, US)を用いた。0.2MのNa2SO4および5mMのリン酸緩衝液(pH8.0)を含む水溶液を移動相として用いた。各試料をそれぞれ500μl、カラムに注入した。溶出液は、Waters996フォトダイオードアレイ検出器で検出し、208nmおよび490nmの波長、ならびに474走査型蛍光検出器(励起波長490nmおよび530nm)で処理した。低pHでの実験では、走行および検出条件は同一で、異なるのは溶出緩衝液の組成が50mMの酢酸、0.2MのNa2SO4でpHが3.5であることのみであった。
【0132】
結果:
反応混合物のUV吸収(490nmおよび208nmにおいて)および蛍光(490nmおよび530nmにおいて)GPCプロファイルは、5分後、3日後および6日後に分析した。最大滞留時間7分間におけるピークはHAによるものであり、一方最大滞留時間9分間におけるピークはPLL−FITCによるものである。この指定は、HAおよびPLL−FITC化合物の個別のGPCプロファイルに基づく。反応中の転換(transformation)は、PLL−FITCの変換(conversion)により追跡し、490nmでのUV吸収および530nmでの蛍光によって検出する。上記条件において、PLL−FITCは最大吸収を示し、一方HAは吸収を示さない。反応開始後、PLL−FITCに対応するピークの領域は減少し、反対にHAに対応するピーク(滞留時間7分で最大のピーク)は増加する。新しいピークの出現(滞留時間7分)は、PLL−FITCのHAへの抱合のためである。その吸収の増加は、反応過程におけるPLL−FITCとHAの抱合の増加に帰することができる。時間による抱合の程度は対応するピークの積分により決定され、2.4%(5分)、31.2%(3日)、37.5%(6日)である。
【0133】
NaBH3CH不在で実施された陰性対照実験を、還元剤を用いた場合の反応と比較した。490nmでのUV吸収および530nmでの蛍光によって検出されたGPCプロファイルを分析した。対照実験における抱合の程度は約10%であり、これはNaBH3CHが存在する場合に観察された抱合の程度の1/3未満であった。
【0134】
反応pH8.5においてPLL−FITCは正に荷電され、一方HAは負に荷電される。HAとPLL−FITCとの間の抱合反応は高い塩濃度(1MのNaCl)において実施され、まだ可能性の残る、試薬間のイオン錯体形成を防ぐ。イオン性と共有性の結合形成を識別するために、反応生成物を酢酸によりpH3.5に酸性化した。酸性条件下においてHAはプロトン化され、もしイオン錯体が形成された場合には不安定である。反対に、化学的共有結合は同じ条件で安定である。陰性対照物、およびNaBH3CHと共に得られた試験反応混合物は、pH3.5で1日保存し、GPC(酢酸緩衝液、50Mm、0.2MNa2SO4)により分析した。抱合体に帰するピークの部分は酸性化の前と同じである:対照では10%、NaBH3CHとの実験では34%であった。共有結合により形成されたHA−PLL−FITC抱合体は、pH3.5で侵食されないほどに十分に安定である。
【0135】
例2:ラビットの眼モデルにおけるHA−PLL−FITCの結合
材料および方法:
FITCでラベルされたポリリジンおよび、ヒアルロン酸に結合したFITCでラベルされたポリリジンの、付着の程度および時間を、in vivoでラビット角膜モデルを用いて試験した。このランダム化・二重盲検・プラセボ対照・単一中心・対側群・前臨床試験には、ニュージーランドホワイトラビットを用いた。
各ラビットの眼は、次の4種類の処置の1つにランダムに割り当てた:活性物質1(媒体に0.42%のFITCでラベルされたPCS−101(ポリリジンに抱合したヒアルロン酸で、抱合体に対して遊離ヒアルロン酸が約1:1のモル比;HAの平均分子量は220,000Daであり、ポリリジンは15,000〜30,000Daである)を添加(試料サイズ:眼9個));活性物質2(媒体に2%のFITCでラベルされたポリリジン)を添加(試料サイズ:眼4個));媒体(20mMのホウ酸ナトリウム、pH7.8に、80mMのNaClを添加)(試料サイズ:眼5個);およびプラセボ(リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4)(試料サイズ:眼2個)。元の溶液の蛍光強度は、ポリリジン溶液中よりPCS−101溶液中で175倍低い。
【0136】
組成物は、1投与あたり40μlの同一容量で、生きているラビットのそれぞれの眼に1日2回、連続3日間、従って1つの眼に合計6滴を投与した。最後の滴下投与の1時間、16時間および36時間後に動物を屠殺し、角膜を取り出して、断面切片法のためにOCT媒体中で冷凍した。切片はSpotRTデジタルカメラ(Diagnostic Instrument, Inc.)により、FITC下の明視野照明、40倍の倍率で組織学的検査のために撮影した。すべてのラビットの試験が完了され、全変数について評価可能であった。結果を図1A〜1Fに示す。これらは、最後の適用の1時間後および36時間後における、点眼製剤中の蛍光PCS−101およびポリリジンの、in vivoでのラビット角膜への架橋を示す。
【0137】
結果:
図1A〜1Fは、眼の試験における、蛍光でラベルされたトランスリンク(TransLink)(登録商標)システム生成物を示すラビット角膜断面の写真である。上段(図1Aおよび図1B)は、3日間で6滴投与された最後の1滴の後、1時間後および36時間後に屠殺されたラビットの角膜上の蛍光ラベル付きポリリジントランスリンク(登録商標)システムアンカー(活性剤なし)を示す。ぺリコールポリリジンアンカーが、死んだ角膜上皮の最上層全体で1時間後に顕著な耐久性を維持していること、および36時間後にその存在を示していることがわかる。1時間後と36時間後の間の信号の低減は、24〜36時間後の上皮の自然な剥離の結果および、マーカーとして用いた蛍光分子の消滅による可能性が高い。
【0138】
図1Cおよび図1Dは、1時間後および36時間後における、ヒアルロン酸とポリリジンの抱合体のラビット角膜への付着を示す。抱合体中のポリリジンはFITCで同様にラベルされている。付着の前、FITCでラベルされた抱合体の原液は、FITCでラベルされたポリリジンの原液に比べて175倍低い蛍光強度を示した。ヒアルロン酸含有抱合体は、1時間後において、角膜の上皮細胞の最上層(および結膜/瞼、データ示されず)に耐久的に架橋する。最終適用の36時間後、少量だが検出可能な量の抱合体が角膜上に存在する。
図1Eは、角膜を媒体のみで処置した場合の、バックグラウンドの蛍光レベルを示す。図1Fは、断面における角膜の構造を示す。
【0139】
結論:
付着の程度および時間:
FITCが抱合したポリリジンを6滴投与すると、ポリリジンは、最後の1滴の適用後少なくとも36時間、ラビット角膜に耐久的に付着した。処置された眼の分析により、ポリリジンが架橋した分子が、角膜の成熟した表面上皮細胞および結膜および瞼にも付着したことが示された。この所見は驚きであり、何故ならば、正常なラビットの眼の表面細胞は自然の涙の膜が覆っており、剤がそこに付着するのを妨げることが予想されるからである。ポリリジンの付着時間の長いことは、かかる付着が自然の眼の環境に耐久するものであり、瞬きによって機械的に壊されるものではないことを示す。
【0140】
ヒアルロン酸に抱合したFITCをラベルしたポリリジンの6滴の投与は、同様に、少なくとも1時間、ポリリジンのラビット角膜への付着をもたらした。ラベルされたポリリジンの最小量は36時間後にも検出可能であったが、これは蛍光でラベルされた抱合体の原液の蛍光強度が低いことにより、部分的に説明可能である。ポリリジン単体の場合の結果と整合して、ヒアルロン酸抱合体の、眼の表面への耐久性のある付着が達成された。重要なことは、眼への刺激が観測されなかったことである。
【0141】
刺激:
活性物質1は、初回適用の5分後の1時点のみにおいて、ベースラインを越える統計的に有意な充血の増加を引き起こした。しかし、半グレード未満のこの変化は、このモデルにおいて刺激反応を達成するのに臨床的に重要とは考えられない。活性物質2は、4つの時点において、ベースラインを越える統計的に有意な充血の増加を引き起こした。さらに活性物質1は、ベースラインを越える統計的に有意な複合的な眼の刺激の増加を引き起こさなかったが、活性物質2は、4つの時点において、ベースラインを越える統計的に有意な複合的眼の刺激の増加を引き起こした。
【0142】
充血または複合的な眼の刺激における活性物質1とプラセボとの間の統計的な有意差は、どの時点においても観測されなかった。しかし活性物質1と活性物質2との間には、1〜3日において幾つかの統計的な有意差が観測され、特に、充血については15時点、複合刺激については8時点で観測された。
活性物質1は、ベースラインと比べて、またはプラセボ群と比べて、どの時点においても、いかなる臨床的に重要な変化も生じさせなかった。また1時点を除き、この化合物は、任意の刺激スコアにおいて統計的に有意な変化を生じさせなかった。この結果活性物質1は、本試験において刺激剤であることは示されなかった。
【0143】
例3:HA−ポリリジン抱合体のin vivoでヒトの指の角質層へ結合する能力:
材料および方法:
反応溶液は、0.34μg/μlのHA−PLL−FITC抱合体(PLL−FITC含量換算)を0.1Mのグリシン緩衝液と0.15MのNaCl、pH8の中に含み、合計反応量は20μlである。
ヒトの指を水ですすいで乾燥し、その後反応溶液を適用した。反応溶液は粉末無添加の指サックを用いて皮膚に10秒間すりこみ、室温で放置して乾燥した。指は次に水で洗浄して乾燥した。洗浄後の種々の時点において(0、2.5、6および24時間)、指の最上表面をSpotRtデジタルカメラ(Diagnostic Instrument, Inc.)を用いてFITC照明下で撮影した(2倍倍率)。
【0144】
結果:
図2は、0.34μg/μlのHA−PLL−FITC抱合体が、試料をすりこんで適用した場合に、ヒト指にin vivoで結合する時間経過のデータを示す。時間の経過は、0時間、2.5時間、6時間、および24時間である。処置なしの組織(対照)の染色レベルも同時に示す。
洗浄後に観測される明るい蛍光は、HA−PLL抱合体がヒト指の角質層にin vivoで架橋したことを示す(図2)。洗浄の24時間後においてもかなりの量の蛍光を見ることができ、in vivoでヒト皮膚に架橋したHA−PLL抱合体の耐久性を24時間以上に渡って示している。
【0145】
例4:グルタミン転移酵素無添加の場合のPCS−101の繰り返し適用後の取り込み
材料および方法:
完全な反応溶液は、PCS−101(HA−PLL−FITCおよび遊離HA)10mg/mlを、pH7.8の20mMのホウ酸ナトリウムと80mMのNaClとを含む滅菌緩衝液中に含む。総反応容量は50μlであった。
【0146】
無傷のラビット眼球をPBS緩衝液ですすいだ。反応溶液を0.5cm2のシリンダーで各角膜の中心に適用し、37℃で1分間湿潤チャンバー内でインキュベートした。インキュベーションの後、反応溶液を取り除き、角膜をPBS緩衝液で1分間25℃で洗浄した。次に、1個のラビット眼試料を取り除き、残りの試料に反応溶液をさらに適用し、再度37℃でインキュベーションした。このプロトコルを繰り返し、試料にPCS−101を合計1、2、4、6、8、10および12回適用して処置した。角膜はそれぞれ、洗浄後に、SpotRTデジタルカメラ(Diagnostic Instrument, Inc.)を用いてFITC照明下で2倍対物レンズで撮影した。次に角膜を摘出し、OCT媒体中で凍結した。各試料から凍結組織切片を作成し、切片をSpotRTデジタルカメラ(Diagnostic Instrument, Inc.)を用いて、エピ蛍光下で20倍対物レンズおよび適切なフィルタを用いて撮影した。
【0147】
結果
図3および図4は、グルタミン転移酵素の添加なしでラビットの角膜に繰り返し適用した後の、PCS−101の取り込みを示す。適用回数と1倍〜12倍の範囲を示す。最初の適用後に観測される蛍光は、PCS−101−FITCがラビット角膜の角質層に架橋されていることを明確に示す。ラビット眼の角膜に保持されるPCS−101−FITCの量は、12回まではPCS−101の連続適用にほぼ比例して増加しているようにみえる(図3および図4)。これは、外因性グルタミン転移酵素と緩衝液中のCa++が不在の場合に生じた。
【0148】
例5:グルタミン転移酵素無添加の場合の、ブタの口蓋、歯肉、舌下部上皮へのPCS201(HA−PLL−FITC抱合体)のカプリング、およびEDTAによるその阻害:
材料および方法:
完全な反応溶液は、100mMのグリシン(pH8.2)、150mMのNaCl緩衝液、およびHA−PLL−FITC抱合体1500μgを含む。総反応容量は300μlである。陰性対照は140mMのEDTAを反応溶液中に含む。
ブタの口蓋、歯肉、舌下部の試料をPBS緩衝液で短時間洗浄し、反応液中37℃で1時間インキュベートした。次に試料をPBS緩衝液で攪拌しながら1時間洗浄した。凍結組織切片を作成し、DAPIで染色した。切片をエピ蛍光照明下で適切なフィルタを用いて撮影し、FITCを緑色、DAPIを青色で示した。
【0149】
結果:
図5は、外因性グルタミン転移酵素が不在の場合の、ブタの口蓋上皮への蛍光PCS−201の架橋、およびEDTAによるその阻害を示す。図6は、外因性グルタミン転移酵素が不在の場合の、ブタの舌の下部表面上皮への蛍光PCS−201の架橋、およびEDTAによるその阻害を示す。図7は、外因性グルタミン転移酵素が不在の場合の、ブタの歯肉上皮への蛍光PCS−201の架橋、およびEDTAによるその阻害を示す。図8は、外因性グルタミン転移酵素が不在の場合の、適用後30秒以内における、ブタの舌および歯肉の上皮への蛍光PCS−201の架橋を示す。図9は、外因性グルタミン転移酵素が不在の場合の、適用後30秒以内における、ブタの口蓋、歯肉、および舌の上皮への蛍光PCS−201の架橋を示す。図10は、外因性グルタミン転移酵素が不在の場合の、適用後30秒以内における、ブタの口の上皮への蛍光PCS−201の架橋を示す。外因性グルタミン転移酵素は、かなりの量のHA−PLL−FITC抱合体を、ブタの口蓋、歯肉、および舌下部の上皮の角質層へ架橋する。EDTAは、HA−PLL−FITC抱合体の、ブタの口蓋、歯肉、および舌下部の上皮の角質層への架橋を阻害する(図5〜10)。
【0150】
例6:グルタミン転移酵素無添加の場合の、ブタ大動脈内層へのPCS−201−FITCおよびポリリジンのカプリングの時間変化:
材料および方法:
反応溶液は、1μg/μlのPLL−FITC(MW=24kD)を100mMのグリシンと150mMのNaCl(pH8.2)中に含み、また5μg/μlのHA−PLL−FITC抱合体を100mMのグリシンと150mMのNaCl(pH8.2)(PCS−201−FITC)中に含む。反応溶液中の蛍光強度は、PLL−FITC溶液よりPCS−201溶液において17倍低い。総反応容量は500μlである。
【0151】
ブタの動脈をPBS緩衝液で洗浄し、緩衝液中に浸して組織の乾燥を防ぎながら0.5cm2の正方形に切り取った。次に動脈の各片を異なる時間(1、15、30および60分)、37℃にて反応混合物中でインキュベートした。PBSですすいだ後、攪拌しながら試料をPBSで1時間洗浄した。次に動脈試料を包埋し、OCT化合物中で凍結した。試料を切片にとって、蛍光照明下で撮影した。
【0152】
結果:
図11は、外因性グルタミン転移酵素が不在の場合の、ブタ動脈内層への蛍光PCS−201およびPLLの架橋を示す。元の溶液における蛍光強度は、PCS−201溶液ではPLL溶液より17倍低い。PLL−FITCおよびPCS−201の動脈内層への結合は、蛍光検出により示されるように、インキュベーションの1分後に観察された。PLL−FITCおよびPCS−201の結合は、蛍光強度およびその組織検査切片上での均一性によって示されるように、インキュベーションの長さと共に増加した(図11)。動脈組織に保持されたPCS−201の蛍光強度がPLL−FITCより低いことの理由の一部は、元の溶液における蛍光強度が、PCS−201溶液ではPLL−FITC溶液より17倍低いためである。
【0153】
例7:異なる塩濃度におけるHA−ポリリジン抱合体のラビット角膜の角質層への結合:
材料および方法:
抱合体ストックは、0.1Mのグリシン中に凍結乾燥した抱合体に再懸濁して作成し、FITC(ストック濃度=0.1mg/ml)の蛍光を用いて定量化した。反応群は、0.2Mのグリシン中0.1mg/mlのHA−PLL−FITCで塩濃度を増加させたもの(0、50、150、300、500mMのNaCl)、および、0.1Mのグリシン中0.1mg/mlのPLL−FITCで塩濃度を増加させたもの(0、50、150、300、500mMのNaCl)である。総反応容量は70μlであった。
【0154】
ラビットの無傷の眼球をPBS緩衝液ですすいだ。反応溶液は角膜の中心に0.5cm2のクローニングシリンダーを用いて適用し、37℃で1時間インキュベートした。1時間後、眼球を30mlのPBSで1時間攪拌しながら洗浄した。角膜を、SpotRTデジタルカメラ(Diagnostic Instrument, Inc.)を用いてFITC照明下で、洗浄の前および後に撮影した。角膜は次に切り取ってOCT媒体中で凍結した。FITC蛍光は次の条件のもとで定量化した:PLL:2倍倍率、2秒露光、ND4フィルタ;HA−PLL抱合体:2倍倍率、2秒露光、フィルタなし。
結果:
【表17】
【0155】
図12は、外因性グルタミン転移酵素が不在の場合の、NaCl濃度の、HA−PLL−FITCのラビット角膜角質層へのカプリングに対する効果を示す。塩濃度は0〜500mMの範囲であった。表1は、PLLまたはHA−PLL抱合体を用いた場合の角膜組織へのFITCの結合のレベルを示す。HA−PLL抱合体のラビット角膜角質層への結合は、NaCl濃度の増加に伴って着実に増加しており、これはおそらく、HAおよびPLLの任意のイオン錯体の分解の結果、PLLがグルタミン転移酵素の基質として露出されたことによる(図12)。PLLのみの結合はNaCl濃度の増加に伴って着実に減少しているが、これは、浸透圧性の流れの変化または塩のグルタミン転移酵素への影響による可能性がある。
【0156】
例8:in vivo試験:
緒言:
ヒトでの試験を実施して、HA−PLL抱合体の、レーシック(登録商標)手術後のドライアイの患者における効果を測定した。試験は、レーシック(登録商標)手術後のドライアイを経験している患者におけるHA−PLLの有効性を、正常な患者およびプラセボを摂取しているドライアイの患者と比較して行った。
【0157】
予備試験の結果:
第1の患者(患者No.1)には高分子量HA、PCS−102(0.15%のPolyL−810kd mwHA)を与えた。患者No.1は9ヶ月前に別の外科医による手術を受け、それ以来非常につらいドライアイを患っていた。第2の患者(患者No.2)には現在の分子量の高濃度のPCS−101(0.4%のPolyL−220kd mwHA)を与えた。患者No.2は3週間前に手術を受け、処置の前に1週間、完全に排出させた(術後の局所ステロイドの任意の影響を排除するため)。両患者ともドライアイを経験していた。
【0158】
ここで用いられる表示指標は、1)涙の膜の破壊時間(TFBUT);2)シルマー(Shirmer)II試験(リトマス型の試験紙を用いた、角膜表面の水分量を計測するもの);および3)蛍光の中断の存在(古典的な「染色」エンドポイント)である。2番目および3番目の指標は、FDAにより有効性を許容できる印であると認められている。両方の眼を独立して評価し、RE=右眼、LE=左眼とした。
各患者は、ベースラインのTFBUTおよびシルマースコアを処置前に計測した。正常な人々のこれら2つの指標はおよそ10である。両患者は予想通り、両指標共に平均より下の値を示し、またつらい症状を報告した。
【0159】
各患者に最初は1滴のみのそれぞれのHA−PLL抱合体を投与し、続いて15分毎に90分まで(患者No.2の場合)計測した。
各患者に1日6滴づつ2日間投与し、その後やめるよう指示した。続いて15分毎に90分まで計測して、処置によってTFBUT、シルマースコアおよび蛍光染色スコアが改善したかどうかをみた。
患者No.2には、1日3滴のみ(QID)として治療をさらに1週間続けるよう指示した。これに続いて、患者No.2は、10〜12時間の間(1晩)さらに投与を行うことなく計測を行い、次に、再び15分毎に90分まで計測した。
患者No.2においてはシルマー試験スコアは大きく上昇し、最後の適用の13.5時間後においてさえも上昇した。TFBUTおよび染色スコアも同様に、統計的に有意な改善を示した。さらに、患者は、大幅な苦痛の軽減と、この製品を手放したくないとの希望を報告した。
【0160】
例9:遊離HA(HA−FITC)と比較した、ラビットの角膜に繰り返し適用後の、グルタミン転移酵素添加なしの場合のCS−101(PLL−TRITCへ抱合したHA−FITC)の架橋:
材料および方法:
遊離HAのバッチを、フルオレセインアミンを用いて最初にCOOH基にラベルし、精製した。ラベルされたHA(HA−FITC)の一部を対照として維持し、残りをTRITCで前もってラベルされたポリリジンに抱合し、精製した。抱合の後、ダブルラベルされたPCS−101(PLL−TRITCに抱合したHA−FITC)を精製した。
【0161】
ラビット角膜への架橋を評価するための反応群は以下である。
I群:10mg/mlのPCS−101(PLL−TRITCに抱合したHA−FITC)を、20mMホウ酸塩と80mMのNaCl、pH7.8に含むもの、および
II群:10mg/mlの遊離HA(HA−FITC)を、20mMホウ酸酸塩と80mMのNaCl、pH7.8に含むもの。
総反応容量は50μlであった。PCS−101と遊離HAの適用溶液中におけるFITC蛍光強度、粘性およびHAの分子量は同じであった。
【0162】
ラビットの無傷の眼球をPBS緩衝液ですすいだ。角膜の中心に0.5cm2のシリンダーを用いて反応溶液を適用し、37℃で1分間インキュベートした。処置した領域は、シリンダー内において150μlの1倍PBXで1分未満洗浄した。この適用および洗浄プロセスを6回、各眼に対して行った。
角膜をSpotRTデジタルカメラ(Diagnostic Instrument, Inc.)を用いてFITC照明下で撮影した。次に角膜を切り取り、OCT媒体中で凍結した。組織学切片を作成し、FITC照明下で蛍光を定量するために撮影した。結果は以下の通り。
【0163】
【表18】
【0164】
図13は、外因性グルタミン転移酵素が不在の場合の、HA−PLL抱合体をラビット角膜に適用した場合の、FITCおよびTRITCの二重染色の結果を示す(第1パネル)。写真は、各適用毎に1分のインキュベーション時間をとり抱合体を6回連続して適用した後に撮影した。HAはさらにFITCに抱合し、PLLはさらにTRITCに抱合した。HA−FITCのみを用いた場合、染色は観察されなかった(第2パネル)。PLL−TRITCで角膜をラベルした(第3パネル)。無処置の組織は、背景の蛍光のみを示した(第4パネル)。この染色パターンは、PCS−101を用いた場合に観測されたFITC蛍光が、第3パネルに見られるようにPLLの角膜への結合の結果であって、HA−FITCの非特異的結合によるものではないことを示す。
【0165】
結論:
データは、PCS−101(HA−PLL抱合体)のラビット角膜表層への架橋は、適用回数の増加と共に増加することを示す。対照的に、遊離HA(HA−FITC)は、ラビット角膜表層へは特に結合しなかった。これは、組織切片の蛍光強度が背景レベルにとどまっており、適用回数を増加しても増加しなかったことによって証拠付けられる。6回の繰り返し適用後、ラビット角膜に保持されたPCS−101の量は、それらの相対的修正平均FITC蛍光強度による測定(図14参照)が示すように、遊離HAの場合より約24倍高かった。
【0166】
同等物
本明細書に開示された態様に対して、種々の改変が可能であることが理解されるであろう。従って、上の記述は限定的と理解されるべきでなく、好ましい態様の例示に過ぎない。当業者は、ここに記載されている特許請求の範囲において他の改変を構想するであろう。
本明細書に開示されたすべての文献、特許および特許出願は、参照としてその全体がここに組み込まれる。
【0167】
付表Aは、本発明の抱合体に使用可能な種々のリンカーを示す表である。
図は、特許請求される発明の使用可能性に対して要求されない。
【0168】
【表19】
【0169】
【表20】
【0170】
【表21】
【0171】
【表22】
【図面の簡単な説明】
【0172】
【図1】図1Aは、点眼製剤中のFITCでラベルされたポリリジンの最終適用の1時間後におけるラビット角膜断面の蛍光顕微鏡写真の図である。図1Bは、点眼製剤中のFITCでラベルされたポリリジンの最終適用の36時間後におけるラビット角膜断面の蛍光顕微鏡写真の図である。図1Cは、点眼製剤中のPCS−101(ヒアルロン酸に抱合したFITCでラベルされたポリリジン、遊離ヒアルロン酸、および緩衝液)の最終適用の1時間後におけるラビット角膜断面の蛍光顕微鏡写真の図である。図1Dは、点眼製剤中のPCS−101(ヒアルロン酸に抱合したFITCでラベルされたポリリジン、遊離ヒアルロン酸、および緩衝液)の最終適用の36時間後におけるラビット角膜断面の蛍光顕微鏡写真の図である。図1Eは、点眼製剤中の対照媒体のみの最終適用の1時間後におけるラビット角膜断面の蛍光顕微鏡写真の図である。図1Fは、点眼製剤中の対照媒体のみの最終適用の36時間後におけるラビット角膜断面の蛍光顕微鏡写真の図である。
【0173】
【図2】ヒトの指へのin vivoでの抱合の時間変化を示す図である。
【図3】外因的に添加されたグルタミン転移酵素が不在の場合のラビット角膜へのPCS−10−FITCの繰り返し適用後の取り込みを示す写真を編集した図である。
【図4】外因的に添加されたグルタミン転移酵素が不在の場合のラビット角膜へのPCS−10−FITCの繰り返し適用後の取り込み(断面)を示す写真を編集した図である。
【図5】PCS−201のブタ口蓋への結合を示す写真を編集した図である。
【0174】
【図6】PCS−201のブタの舌下部表面上皮への結合を示す写真を編集した図である。
【図7】PCS−201のブタ歯肉上皮への結合を示す写真を編集した図である。
【図8】PCS−201のブタ歯肉上皮および舌上皮への結合を示す写真を編集した図である。
【図9】PCS−201のブタ口蓋、歯肉上皮および舌上皮への結合を示す写真を編集した図である。
【0175】
【図10】PCS−201のブタ口上皮への結合を示す写真である。
【図11】PCS−201およびポリリジン(両者ともFITCでラベルされたもの)のブタ動脈内層への架橋を示す写真を編集した図である。
【図12】外因的に添加されたグルタミン転移酵素が不在の場合のヒアルロン酸とポリリジンFITCのラビット角膜角質層へのカプリングに対するNaCl濃度の影響を示す図である。
【0176】
【図13】PCS−101および遊離HAのラビット角膜表層への結合の比較を示す図である。
【図14】ラビット角膜モデルにおける、PLL−TRITCへ抱合したHA−FITC、HA−FITC、および未処置細胞の、修正平均蛍光強度の比較を示す棒グラフの図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体、および、
遊離ヒアルロン酸、
を含み、前記遊離ヒアルロン酸および前記抱合体が少なくとも2のモル比で存在する組成物。
【請求項2】
連結分子が、少なくとも2個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも3個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも4個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも5個の脂肪族アミン、または少なくとも6個の脂肪族アミンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
連結分子が天然のポリリジンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ポリリジンが、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、およびポリ−DL−リジンからなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
連結分子がポリリジンの誘導体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
連結分子が、少なくとも2個の連続したカルボキサミド、少なくとも3個の隣接したカルボキサミド、少なくとも4個の隣接したカルボキサミド、少なくとも5個のカルボキサミド、または少なくとも6個のカルボキサミドを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
連結分子が天然のポリグルタミンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
連結分子が、ポリ−L−グルタミン、ポリ−D−グルタミン、およびポリ−DL−グルタミンからなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
連結分子がポリグルタミンの誘導体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
ヒアルロン酸が天然のヒアルロン酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
ヒアルロン酸が、ヒアルロン酸の薬学的に許容し得る塩、ヒアルロン酸エステル、および硫酸化ヒアルロン酸からなる群から選択されるヒアルロン酸の誘導体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
モル比が、少なくとも2.0および少なくとも4.0からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
組成物が、点眼剤、コンタクトレンズ用溶液、眼科用軟膏、アイパック、およびコンタクトレンズからなる群から選択される形態で提供される、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
組成物が、舌下錠、うがい薬、練り歯磨き、キャンディ、および経口ジェルからなる群から選択される形態で提供される、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
ヒアルロン酸が、少なくとも100,000の分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
抱合体が、1.0より大きい正電荷に対する負電荷の比を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
薬学的に許容し得る担体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
薬学的に許容し得る担体が、眼科用保存剤を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
眼科用保存剤が、有機水銀剤、四級アンモニウム化合物、パラヒドロキシ安息香酸エステル、置換アルコールおよびフェノールからなる群から選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
有機水銀剤が、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、およびチメロサールからなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
四級アンモニウム化合物が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、およびポリクオタニウム−1(POLYQUAD)からなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
置換アルコールおよびフェノールが、クロロブタノール、およびクロロブタノール/フェニルエチルアルコールからなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
眼科用保存剤が抗生物質である、請求項18に記載の組成物。
【請求項24】
香味剤、着色剤および芳香剤からなる群から選択される剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
抱合体が、少なくとも90%、少なくとも95%、および少なくとも99%からなる群から選択される重量比を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
アルギニンまたはフッ化物さらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
連結分子が錯体を形成していない、請求項1に記載の組成物。
【請求項28】
グルタミン転移酵素の基質である連結分子と共有結合的に連結したヒアルロン酸を含み、
前記連結分子が錯体を形成していない、医薬組成物。
【請求項29】
連結分子が、少なくとも2個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも3個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも4個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも5個の脂肪族アミン、または少なくとも6個の脂肪族アミンを有する、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
連結分子が天然のポリリジンである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項31】
ポリリジンが、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、およびポリ−DL−リジンからなる群から選択される、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
連結分子がポリリジンの誘導体である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項33】
連結分子が、少なくとも2個の隣接したカルボキサミド、少なくとも3個の隣接したカルボキサミド、少なくとも4個の隣接したカルボキサミド、少なくとも5個のカルボキサミド、または少なくとも6個のカルボキサミドを有する、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項34】
連結分子が天然のポリグルタミンである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項35】
ポリリジンが、ポリ−L−グルタミン、ポリ−D−グルタミン、およびポリ−DL−グルタミンからなる群から選択される、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
連結分子がポリグルタミンの誘導体である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項37】
ヒアルロン酸が天然のヒアルロン酸である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項38】
ヒアルロン酸が、ヒアルロン酸の薬学的に許容し得る塩、ヒアルロン酸エステル、および硫酸化ヒアルロン酸からなる群から選択されるヒアルロン酸の誘導体である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項39】
遊離ヒアルロン酸をさらに含む、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項40】
組成物が、点眼剤、コンタクトレンズ用溶液、眼科用軟膏、アイパック、およびコンタクトレンズからなる群から選択される形態で提供される、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項41】
組成物が、舌下錠、うがい薬、練り歯磨き、キャンディ、および経口ジェルからなる群から選択される形態で提供される、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項42】
ヒアルロン酸が、少なくとも100,000の分子量を有する、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項43】
抱合体が、1より大きい正に対する負電荷の比を有する、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項44】
薬学的に許容し得る担体をさらに含む、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項45】
薬学的に許容し得る担体が、眼科用保存剤を含む、請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項46】
眼科用保存剤が、有機水銀剤、四級アンモニウム化合物、パラヒドロキシ安息香酸エステル、置換アルコールおよびフェノールからなる群から選択される、請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項47】
有機水銀剤が、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、およびチメロサールからなる群から選択される、請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項48】
四級アンモニウム化合物が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、およびポリクオタニウム−1(POLYQUAD)からなる群から選択される、請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項49】
置換アルコールおよびフェノールが、クロロブタノール、およびクロロブタノール/フェニルエチルアルコールからなる群から選択される、請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項50】
眼科用保存剤が抗生物質である、請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項51】
薬学的に許容し得る担体が、少なくとも280mOsmのモル浸透圧濃度を有する、請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項52】
薬学的に許容し得る担体が、少なくとも6.5のpHを有する、請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項53】
薬学的に許容し得る担体が、アルギニンまたはフッ化物を含む、請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項54】
抱合体が、少なくとも90%、少なくとも95%、および少なくとも99%からなる群から選択される重量比を有する、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項55】
ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体を、点眼瓶中に含む組成物。
【請求項56】
薬学的に許容し得る担体をさらに含む、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
使用のための指示書をさらに含む、請求項55に記載の組成物。
【請求項58】
連結分子が、少なくとも2個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも3個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも4個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも5個の脂肪族アミン、または少なくとも6個の脂肪族アミンを有する、請求項55に記載の組成物。
【請求項59】
連結分子が、天然のポリリジン、またはポリリジンの誘導体である、請求項55に記載の組成物。
【請求項60】
天然のポリリジンが、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、およびポリ−DL−リジンからなる群から選択される、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
連結分子が、少なくとも2個の隣接したカルボキサミド、少なくとも3個の隣接したカルボキサミド、少なくとも4個の隣接したカルボキサミド、少なくとも5個のカルボキサミド、または少なくとも6個のカルボキサミドを有する、請求項55に記載の組成物。
【請求項62】
連結分子が、天然のポリグルタミン、またはポリグルタミンの誘導体である、請求項55に記載の組成物。
【請求項63】
天然のポリグルタミンが、ポリ−L−グルタミン、ポリ−D−グルタミン、およびポリ−DL−グルタミンからなる群から選択される、請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
ヒアルロン酸が天然のヒアルロン酸である、請求項55に記載の組成物。
【請求項65】
ヒアルロン酸が、ヒアルロン酸の薬学的に許容し得る塩、ヒアルロン酸エステル、および硫酸化ヒアルロン酸からなる群から選択されるヒアルロン酸の誘導体である、請求項55に記載の組成物。
【請求項66】
遊離ヒアルロン酸をさらに含む、請求項55に記載の組成物。
【請求項67】
ヒアルロン酸が、少なくとも100,000の分子量を有する、請求項55に記載の組成物。
【請求項68】
抱合体が、1より大きい正電荷に対する負電荷の比を有する、請求項55に記載の組成物。
【請求項69】
薬学的に許容し得る担体が、眼科用保存剤を含む、請求項56に記載の組成物。
【請求項70】
眼科用保存剤が、有機水銀剤、四級アンモニウム化合物、パラヒドロキシ安息香酸エステル、置換アルコールおよびフェノールからなる群から選択される、請求項69に記載の組成物。
【請求項71】
有機水銀剤が、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、およびチメロサールからなる群から選択される、請求項70に記載の組成物。
【請求項72】
四級アンモニウム化合物が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、およびポリクオタニウム−1(POLYQUAD)からなる群から選択される、請求項70に記載の組成物。
【請求項73】
置換アルコールおよびフェノールが、クロロブタノール、およびクロロブタノール/フェニルエチルアルコールからなる群から選択される、請求項70に記載の組成物。
【請求項74】
眼科用保存剤が抗生物質である、請求項69に記載の組成物。
【請求項75】
薬学的に許容し得る担体が、少なくとも280mOsmのモル浸透圧濃度を有する、請求項56に記載の組成物。
【請求項76】
薬学的に許容し得る担体が、少なくとも6.5のpHを有する、請求項56に記載の組成物。
【請求項77】
薬学的に許容し得る担体が、アルギニンまたはリゾチ−ムを含む、請求項56に記載の組成物。
【請求項78】
抱合体が、少なくとも90%、少なくとも95%、および少なくとも99%からなる群から選択される重量比を有する、請求項55に記載の組成物。
【請求項79】
連結分子が錯体を形成していない、請求項55に記載の組成物。
【請求項80】
ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体、および、
香味剤、着色剤および芳香剤からなる群から選択される剤、
を含む組成物。
【請求項81】
香味剤が、マンニトール、サッカリンナトリウム、マグナスウィート、ペパーミントの抽出物、葉の粉末または油;スペアミントの抽出物、葉の粉末または油;ウィンターグリーン油;バニラ抽出物;パセリ;オレガノ油;ベイリーフ油;チョウジ油;セージ油;サッサフラス油;レモン油;オレンジ油;アニス油;ベンズアルデヒド;アーモンド油;ショウノウ;ニオイヒバ油;マジョラム油;シトロネラ油;ラベンダー油;カラシ油;パイン油;まつ葉油;ローズマリー油;タイム油;シナモンリーフ油;メントール;カルボン;アネトール;オイゲノール;サリチル酸メチル;リモネン;シメン;n−デシルアルコール;シトロネロール;α−テルピネオール;酢酸メチル;酢酸シトロネリル;メチルオイゲノール;シネオール;リナロール;オイクトル(eyktl)リナロール;バニリン;チモール;ペリラ油;冬緑油;ユーカリ油;カフェイン;酒石クリーム、乳酸、リンゴ酸、グルタミン酸第一ナトリウム、亜硝酸塩、ソルビトール、アスパルテーム、アセスルファム、デキストロース、レブロース、シクラミン酸ナトリウム、ステビオシド、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、グリシルリジン、ペリルラルチン、タウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、およびp−メトキシシンナムアルデヒドからなる群から選択される、請求項80に記載の組成物。
【請求項82】
着色剤が、FD&C青色#1、FD&C黄色#5、FD&C黄色#10、FD&C赤色#3、FD&C赤色#40、カラメルカラーまたはカラメルパウダー(#05439)、チョコレートシェード(#05349)、グリーンレイクブレンド(#09236)、コウェット二酸化チタン(#03970)、イエローリキッドカラー(#00403)、および亜硝酸塩からなる群から選択される、請求項80に記載の組成物。
【請求項83】
芳香剤が、草花の抽出物、ハーブ抽出物、木の花の抽出物、植物抽出物、および人工芳香剤からなる群から選択される、請求項80に記載の組成物。
【請求項84】
組成物が、経口投与用に製剤化される、請求項80に記載の組成物。
【請求項85】
組成物が、舌下錠、うがい薬、練り歯磨き、経口ジェルおよびキャンディとして製剤化される、請求項84に記載の組成物。
【請求項86】
アルギニンまたはフッ化物をさらに含む、請求項80に記載の組成物。
【請求項87】
薬学的に許容し得る担体をさらに含む、請求項80に記載の組成物。
【請求項88】
薬学的に許容し得る担体が、少なくとも6.5のpHを有する、請求項87に記載の組成物。
【請求項89】
連結分子が錯体を形成していない、請求項80に記載の組成物。
【請求項90】
抱合体が、少なくとも90%、少なくとも95%、および少なくとも99%からなる群から選択される重量比を有する、請求項80に記載の組成物。
【請求項91】
薬学的に許容し得る担体が、280mOsmより高いモル浸透圧濃度を有する、請求項87に記載の組成物。
【請求項92】
ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体を、フッ化物を含む担体内に含む組成物。
【請求項93】
薬学的に許容し得る担体をさらに含む、請求項92に記載の組成物。
【請求項94】
薬学的に許容し得る担体が、少なくとも6.5のpHを有する、請求項93に記載の組成物。
【請求項95】
連結分子が錯体を形成していない、請求項92に記載の組成物。
【請求項96】
抱合体が、少なくとも90%、少なくとも95%、および少なくとも99%からなる群から選択される重量比を有する、請求項92に記載の組成物。
【請求項97】
薬学的に許容し得る担体が、280mOsmより高いモル浸透圧濃度を有する、請求項93に記載の組成物。
【請求項98】
抱合体が、舌下錠、うがい薬、練り歯磨き、キャンディ、および経口ジェルからなる群から選択される形態で提供される、請求項92に記載の組成物。
【請求項99】
ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体を、舌下錠の形態で含む組成物。
【請求項100】
サッカリン、アスパルテーム、ソルビトール、アセスルファム、デキストロース、レブロース、シクラミン酸ナトリウム、ステビオシド、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、グリシルリジン、ペリルラルチン、タウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、およびp−メトキシシンナムアルデヒドからなる群から選択される甘味料をさらに含む、請求項99に記載の組成物。
【請求項101】
ビタミンをさらに含む、請求項99に記載の組成物。
【請求項102】
フッ化物をさらに含む、請求項99に記載の組成物。
【請求項103】
請求項1、28、55、80、92または99の組成物の有効量を、それらを必要とする対象に投与することを含む、乾燥を特徴する疾患の処置のための方法。
【請求項104】
疾患がドライアイである、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
ドライアイが、非進行性結膜瘢痕形成(スティーブンス−ジョンソン症候群)、シェーグレン症候群、トラコーマ、および瘢痕性類天疱瘡からなる群から選択される疾患に関連する、請求項103に記載の方法。
【請求項106】
疾患が口腔乾燥症である、請求項103に記載の方法。
【請求項107】
ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体、および
有効量の遊離ヒアルロン酸、
を含み、前記遊離ヒアルロン酸と前記抱合体が、少なくとも2のモル比で存在する、医薬組成物。
【請求項108】
眼の乾燥を有するかまたはそのリスクを有する対象の眼に、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体の有効量を投与することを含む、対象の処置のための方法。
【請求項109】
抱合体が、点眼剤、コンタクトレンズ用溶液、眼科用軟膏、アイパック、およびコンタクトレンズからなる群から選択される形態で提供される、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
口腔の乾燥を有するかまたはそのリスクを有する対象の口腔に、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体の有効量を投与することを含む、対象の処置のための方法。
【請求項111】
抱合体が、舌下錠、うがい薬、練り歯磨き、キャンディ、および経口ジェルからなる群から選択される形態で提供される、請求項110に記載の組成物。
【請求項112】
関節の不快感を有するかまたはそのリスクを有する対象の関節に、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体の有効量を投与することを含む、対象の処置のための方法。
【請求項113】
過剰な血液凝固を有するかもしくはそのリスクを有するか、または増加した血液凝固のリスクを有する対象の血管に、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体の有効量を投与することを含む、対象の処置のための方法。
【請求項114】
しわを有するかまたはそのリスクを有する対象の皮膚に、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体の有効量を投与することを含む、対象の処置のための方法。
【請求項115】
有効量が1日あたり0.05μg/kg未満である、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項116】
連結分子が、少なくとも2個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも3個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも4個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも5個の脂肪族アミン、または少なくとも6個の脂肪族アミンを有する、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項117】
連結分子が天然のポリリジンである、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項118】
ポリリジンが、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、およびポリ−DL−リジンからなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項119】
連結分子がポリリジンの誘導体である、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項120】
連結分子が、少なくとも2個の連続したカルボキサミド、少なくとも3個の隣接したカルボキサミド、少なくとも4個の隣接したカルボキサミド、少なくとも5個のカルボキサミド、または少なくとも6個のカルボキサミドを有する、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項121】
連結分子が天然のポリグルタミンである、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項122】
連結分子が、ポリ−L−グルタミン、ポリ−D−グルタミン、およびポリ−DL−グルタミンからなる群から選択される、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項123】
連結分子がポリグルタミンの誘導体である、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項124】
ヒアルロン酸が天然のヒアルロン酸である、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項125】
ヒアルロン酸が、ヒアルロン酸の薬学的に許容し得る塩、ヒアルロン酸エステル、および硫酸化ヒアルロン酸からなる群から選択されるヒアルロン酸の誘導体である、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項126】
ヒアルロン酸が、少なくとも100,000の分子量を有する、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項127】
抱合体が、1.0より大きい正電荷に対する負電荷の比を有する、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項128】
抱合体が、薬学的に許容し得る担体内において投与される、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項129】
抱合体が、眼科用保存剤を含む薬学的に許容し得る担体内において投与される、請求項108に記載の方法。
【請求項130】
眼科用保存剤が、有機水銀剤、四級アンモニウム化合物、パラヒドロキシ安息香酸エステル、置換アルコールおよびフェノールからなる群から選択される、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
有機水銀剤が、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、およびチメロサールからなる群から選択される、請求項129に記載の方法。
【請求項132】
四級アンモニウム化合物が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、およびポリクオタニウム−1(POLYQUAD)からなる群から選択される、請求項129に記載の方法。
【請求項133】
置換アルコールおよびフェノールが、クロロブタノール、およびクロロブタノール/フェニルエチルアルコールからなる群から選択される、請求項129に記載の方法。
【請求項134】
眼科用保存剤が抗生物質である、請求項128に記載の方法。
【請求項135】
抱合体が、香味剤、着色剤および芳香剤からなる群から選択される剤を含む薬学的に許容し得る担体内において投与される、請求項110に記載の方法。
【請求項136】
抱合体が、少なくとも90%、少なくとも95%、および少なくとも99%からなる群から選択される重量比を有する、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項137】
薬学的に許容し得る担体が、アルギニンを含む、請求項128に記載の方法。
【請求項138】
薬学的に許容し得る担体が、少なくとも6.5のpHを有する、請求項128に記載の方法。
【請求項139】
薬学的に許容し得る担体が、少なくとも280mOsmのモル浸透圧濃度を有する、請求項128に記載の方法。
【請求項1】
ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体、および、
遊離ヒアルロン酸、
を含み、前記遊離ヒアルロン酸および前記抱合体が少なくとも2のモル比で存在する組成物。
【請求項2】
連結分子が、少なくとも2個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも3個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも4個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも5個の脂肪族アミン、または少なくとも6個の脂肪族アミンを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
連結分子が天然のポリリジンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ポリリジンが、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、およびポリ−DL−リジンからなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
連結分子がポリリジンの誘導体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
連結分子が、少なくとも2個の連続したカルボキサミド、少なくとも3個の隣接したカルボキサミド、少なくとも4個の隣接したカルボキサミド、少なくとも5個のカルボキサミド、または少なくとも6個のカルボキサミドを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
連結分子が天然のポリグルタミンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
連結分子が、ポリ−L−グルタミン、ポリ−D−グルタミン、およびポリ−DL−グルタミンからなる群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
連結分子がポリグルタミンの誘導体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
ヒアルロン酸が天然のヒアルロン酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
ヒアルロン酸が、ヒアルロン酸の薬学的に許容し得る塩、ヒアルロン酸エステル、および硫酸化ヒアルロン酸からなる群から選択されるヒアルロン酸の誘導体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
モル比が、少なくとも2.0および少なくとも4.0からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
組成物が、点眼剤、コンタクトレンズ用溶液、眼科用軟膏、アイパック、およびコンタクトレンズからなる群から選択される形態で提供される、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
組成物が、舌下錠、うがい薬、練り歯磨き、キャンディ、および経口ジェルからなる群から選択される形態で提供される、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
ヒアルロン酸が、少なくとも100,000の分子量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
抱合体が、1.0より大きい正電荷に対する負電荷の比を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
薬学的に許容し得る担体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
薬学的に許容し得る担体が、眼科用保存剤を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
眼科用保存剤が、有機水銀剤、四級アンモニウム化合物、パラヒドロキシ安息香酸エステル、置換アルコールおよびフェノールからなる群から選択される、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
有機水銀剤が、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、およびチメロサールからなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
四級アンモニウム化合物が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、およびポリクオタニウム−1(POLYQUAD)からなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
置換アルコールおよびフェノールが、クロロブタノール、およびクロロブタノール/フェニルエチルアルコールからなる群から選択される、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
眼科用保存剤が抗生物質である、請求項18に記載の組成物。
【請求項24】
香味剤、着色剤および芳香剤からなる群から選択される剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項25】
抱合体が、少なくとも90%、少なくとも95%、および少なくとも99%からなる群から選択される重量比を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項26】
アルギニンまたはフッ化物さらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項27】
連結分子が錯体を形成していない、請求項1に記載の組成物。
【請求項28】
グルタミン転移酵素の基質である連結分子と共有結合的に連結したヒアルロン酸を含み、
前記連結分子が錯体を形成していない、医薬組成物。
【請求項29】
連結分子が、少なくとも2個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも3個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも4個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも5個の脂肪族アミン、または少なくとも6個の脂肪族アミンを有する、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
連結分子が天然のポリリジンである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項31】
ポリリジンが、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、およびポリ−DL−リジンからなる群から選択される、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
連結分子がポリリジンの誘導体である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項33】
連結分子が、少なくとも2個の隣接したカルボキサミド、少なくとも3個の隣接したカルボキサミド、少なくとも4個の隣接したカルボキサミド、少なくとも5個のカルボキサミド、または少なくとも6個のカルボキサミドを有する、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項34】
連結分子が天然のポリグルタミンである、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項35】
ポリリジンが、ポリ−L−グルタミン、ポリ−D−グルタミン、およびポリ−DL−グルタミンからなる群から選択される、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
連結分子がポリグルタミンの誘導体である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項37】
ヒアルロン酸が天然のヒアルロン酸である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項38】
ヒアルロン酸が、ヒアルロン酸の薬学的に許容し得る塩、ヒアルロン酸エステル、および硫酸化ヒアルロン酸からなる群から選択されるヒアルロン酸の誘導体である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項39】
遊離ヒアルロン酸をさらに含む、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項40】
組成物が、点眼剤、コンタクトレンズ用溶液、眼科用軟膏、アイパック、およびコンタクトレンズからなる群から選択される形態で提供される、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項41】
組成物が、舌下錠、うがい薬、練り歯磨き、キャンディ、および経口ジェルからなる群から選択される形態で提供される、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項42】
ヒアルロン酸が、少なくとも100,000の分子量を有する、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項43】
抱合体が、1より大きい正に対する負電荷の比を有する、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項44】
薬学的に許容し得る担体をさらに含む、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項45】
薬学的に許容し得る担体が、眼科用保存剤を含む、請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項46】
眼科用保存剤が、有機水銀剤、四級アンモニウム化合物、パラヒドロキシ安息香酸エステル、置換アルコールおよびフェノールからなる群から選択される、請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項47】
有機水銀剤が、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、およびチメロサールからなる群から選択される、請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項48】
四級アンモニウム化合物が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、およびポリクオタニウム−1(POLYQUAD)からなる群から選択される、請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項49】
置換アルコールおよびフェノールが、クロロブタノール、およびクロロブタノール/フェニルエチルアルコールからなる群から選択される、請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項50】
眼科用保存剤が抗生物質である、請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項51】
薬学的に許容し得る担体が、少なくとも280mOsmのモル浸透圧濃度を有する、請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項52】
薬学的に許容し得る担体が、少なくとも6.5のpHを有する、請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項53】
薬学的に許容し得る担体が、アルギニンまたはフッ化物を含む、請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項54】
抱合体が、少なくとも90%、少なくとも95%、および少なくとも99%からなる群から選択される重量比を有する、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項55】
ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体を、点眼瓶中に含む組成物。
【請求項56】
薬学的に許容し得る担体をさらに含む、請求項55に記載の組成物。
【請求項57】
使用のための指示書をさらに含む、請求項55に記載の組成物。
【請求項58】
連結分子が、少なくとも2個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも3個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも4個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも5個の脂肪族アミン、または少なくとも6個の脂肪族アミンを有する、請求項55に記載の組成物。
【請求項59】
連結分子が、天然のポリリジン、またはポリリジンの誘導体である、請求項55に記載の組成物。
【請求項60】
天然のポリリジンが、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、およびポリ−DL−リジンからなる群から選択される、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
連結分子が、少なくとも2個の隣接したカルボキサミド、少なくとも3個の隣接したカルボキサミド、少なくとも4個の隣接したカルボキサミド、少なくとも5個のカルボキサミド、または少なくとも6個のカルボキサミドを有する、請求項55に記載の組成物。
【請求項62】
連結分子が、天然のポリグルタミン、またはポリグルタミンの誘導体である、請求項55に記載の組成物。
【請求項63】
天然のポリグルタミンが、ポリ−L−グルタミン、ポリ−D−グルタミン、およびポリ−DL−グルタミンからなる群から選択される、請求項62に記載の組成物。
【請求項64】
ヒアルロン酸が天然のヒアルロン酸である、請求項55に記載の組成物。
【請求項65】
ヒアルロン酸が、ヒアルロン酸の薬学的に許容し得る塩、ヒアルロン酸エステル、および硫酸化ヒアルロン酸からなる群から選択されるヒアルロン酸の誘導体である、請求項55に記載の組成物。
【請求項66】
遊離ヒアルロン酸をさらに含む、請求項55に記載の組成物。
【請求項67】
ヒアルロン酸が、少なくとも100,000の分子量を有する、請求項55に記載の組成物。
【請求項68】
抱合体が、1より大きい正電荷に対する負電荷の比を有する、請求項55に記載の組成物。
【請求項69】
薬学的に許容し得る担体が、眼科用保存剤を含む、請求項56に記載の組成物。
【請求項70】
眼科用保存剤が、有機水銀剤、四級アンモニウム化合物、パラヒドロキシ安息香酸エステル、置換アルコールおよびフェノールからなる群から選択される、請求項69に記載の組成物。
【請求項71】
有機水銀剤が、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、およびチメロサールからなる群から選択される、請求項70に記載の組成物。
【請求項72】
四級アンモニウム化合物が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、およびポリクオタニウム−1(POLYQUAD)からなる群から選択される、請求項70に記載の組成物。
【請求項73】
置換アルコールおよびフェノールが、クロロブタノール、およびクロロブタノール/フェニルエチルアルコールからなる群から選択される、請求項70に記載の組成物。
【請求項74】
眼科用保存剤が抗生物質である、請求項69に記載の組成物。
【請求項75】
薬学的に許容し得る担体が、少なくとも280mOsmのモル浸透圧濃度を有する、請求項56に記載の組成物。
【請求項76】
薬学的に許容し得る担体が、少なくとも6.5のpHを有する、請求項56に記載の組成物。
【請求項77】
薬学的に許容し得る担体が、アルギニンまたはリゾチ−ムを含む、請求項56に記載の組成物。
【請求項78】
抱合体が、少なくとも90%、少なくとも95%、および少なくとも99%からなる群から選択される重量比を有する、請求項55に記載の組成物。
【請求項79】
連結分子が錯体を形成していない、請求項55に記載の組成物。
【請求項80】
ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体、および、
香味剤、着色剤および芳香剤からなる群から選択される剤、
を含む組成物。
【請求項81】
香味剤が、マンニトール、サッカリンナトリウム、マグナスウィート、ペパーミントの抽出物、葉の粉末または油;スペアミントの抽出物、葉の粉末または油;ウィンターグリーン油;バニラ抽出物;パセリ;オレガノ油;ベイリーフ油;チョウジ油;セージ油;サッサフラス油;レモン油;オレンジ油;アニス油;ベンズアルデヒド;アーモンド油;ショウノウ;ニオイヒバ油;マジョラム油;シトロネラ油;ラベンダー油;カラシ油;パイン油;まつ葉油;ローズマリー油;タイム油;シナモンリーフ油;メントール;カルボン;アネトール;オイゲノール;サリチル酸メチル;リモネン;シメン;n−デシルアルコール;シトロネロール;α−テルピネオール;酢酸メチル;酢酸シトロネリル;メチルオイゲノール;シネオール;リナロール;オイクトル(eyktl)リナロール;バニリン;チモール;ペリラ油;冬緑油;ユーカリ油;カフェイン;酒石クリーム、乳酸、リンゴ酸、グルタミン酸第一ナトリウム、亜硝酸塩、ソルビトール、アスパルテーム、アセスルファム、デキストロース、レブロース、シクラミン酸ナトリウム、ステビオシド、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、グリシルリジン、ペリルラルチン、タウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、およびp−メトキシシンナムアルデヒドからなる群から選択される、請求項80に記載の組成物。
【請求項82】
着色剤が、FD&C青色#1、FD&C黄色#5、FD&C黄色#10、FD&C赤色#3、FD&C赤色#40、カラメルカラーまたはカラメルパウダー(#05439)、チョコレートシェード(#05349)、グリーンレイクブレンド(#09236)、コウェット二酸化チタン(#03970)、イエローリキッドカラー(#00403)、および亜硝酸塩からなる群から選択される、請求項80に記載の組成物。
【請求項83】
芳香剤が、草花の抽出物、ハーブ抽出物、木の花の抽出物、植物抽出物、および人工芳香剤からなる群から選択される、請求項80に記載の組成物。
【請求項84】
組成物が、経口投与用に製剤化される、請求項80に記載の組成物。
【請求項85】
組成物が、舌下錠、うがい薬、練り歯磨き、経口ジェルおよびキャンディとして製剤化される、請求項84に記載の組成物。
【請求項86】
アルギニンまたはフッ化物をさらに含む、請求項80に記載の組成物。
【請求項87】
薬学的に許容し得る担体をさらに含む、請求項80に記載の組成物。
【請求項88】
薬学的に許容し得る担体が、少なくとも6.5のpHを有する、請求項87に記載の組成物。
【請求項89】
連結分子が錯体を形成していない、請求項80に記載の組成物。
【請求項90】
抱合体が、少なくとも90%、少なくとも95%、および少なくとも99%からなる群から選択される重量比を有する、請求項80に記載の組成物。
【請求項91】
薬学的に許容し得る担体が、280mOsmより高いモル浸透圧濃度を有する、請求項87に記載の組成物。
【請求項92】
ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体を、フッ化物を含む担体内に含む組成物。
【請求項93】
薬学的に許容し得る担体をさらに含む、請求項92に記載の組成物。
【請求項94】
薬学的に許容し得る担体が、少なくとも6.5のpHを有する、請求項93に記載の組成物。
【請求項95】
連結分子が錯体を形成していない、請求項92に記載の組成物。
【請求項96】
抱合体が、少なくとも90%、少なくとも95%、および少なくとも99%からなる群から選択される重量比を有する、請求項92に記載の組成物。
【請求項97】
薬学的に許容し得る担体が、280mOsmより高いモル浸透圧濃度を有する、請求項93に記載の組成物。
【請求項98】
抱合体が、舌下錠、うがい薬、練り歯磨き、キャンディ、および経口ジェルからなる群から選択される形態で提供される、請求項92に記載の組成物。
【請求項99】
ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体を、舌下錠の形態で含む組成物。
【請求項100】
サッカリン、アスパルテーム、ソルビトール、アセスルファム、デキストロース、レブロース、シクラミン酸ナトリウム、ステビオシド、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、グリシルリジン、ペリルラルチン、タウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、およびp−メトキシシンナムアルデヒドからなる群から選択される甘味料をさらに含む、請求項99に記載の組成物。
【請求項101】
ビタミンをさらに含む、請求項99に記載の組成物。
【請求項102】
フッ化物をさらに含む、請求項99に記載の組成物。
【請求項103】
請求項1、28、55、80、92または99の組成物の有効量を、それらを必要とする対象に投与することを含む、乾燥を特徴する疾患の処置のための方法。
【請求項104】
疾患がドライアイである、請求項103に記載の方法。
【請求項105】
ドライアイが、非進行性結膜瘢痕形成(スティーブンス−ジョンソン症候群)、シェーグレン症候群、トラコーマ、および瘢痕性類天疱瘡からなる群から選択される疾患に関連する、請求項103に記載の方法。
【請求項106】
疾患が口腔乾燥症である、請求項103に記載の方法。
【請求項107】
ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体、および
有効量の遊離ヒアルロン酸、
を含み、前記遊離ヒアルロン酸と前記抱合体が、少なくとも2のモル比で存在する、医薬組成物。
【請求項108】
眼の乾燥を有するかまたはそのリスクを有する対象の眼に、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体の有効量を投与することを含む、対象の処置のための方法。
【請求項109】
抱合体が、点眼剤、コンタクトレンズ用溶液、眼科用軟膏、アイパック、およびコンタクトレンズからなる群から選択される形態で提供される、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
口腔の乾燥を有するかまたはそのリスクを有する対象の口腔に、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体の有効量を投与することを含む、対象の処置のための方法。
【請求項111】
抱合体が、舌下錠、うがい薬、練り歯磨き、キャンディ、および経口ジェルからなる群から選択される形態で提供される、請求項110に記載の組成物。
【請求項112】
関節の不快感を有するかまたはそのリスクを有する対象の関節に、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体の有効量を投与することを含む、対象の処置のための方法。
【請求項113】
過剰な血液凝固を有するかもしくはそのリスクを有するか、または増加した血液凝固のリスクを有する対象の血管に、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体の有効量を投与することを含む、対象の処置のための方法。
【請求項114】
しわを有するかまたはそのリスクを有する対象の皮膚に、ヒアルロン酸とグルタミン転移酵素の基質である連結分子との抱合体の有効量を投与することを含む、対象の処置のための方法。
【請求項115】
有効量が1日あたり0.05μg/kg未満である、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項116】
連結分子が、少なくとも2個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも3個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも4個の隣接した脂肪族アミン、少なくとも5個の脂肪族アミン、または少なくとも6個の脂肪族アミンを有する、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項117】
連結分子が天然のポリリジンである、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項118】
ポリリジンが、ポリ−L−リジン、ポリ−D−リジン、およびポリ−DL−リジンからなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項119】
連結分子がポリリジンの誘導体である、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項120】
連結分子が、少なくとも2個の連続したカルボキサミド、少なくとも3個の隣接したカルボキサミド、少なくとも4個の隣接したカルボキサミド、少なくとも5個のカルボキサミド、または少なくとも6個のカルボキサミドを有する、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項121】
連結分子が天然のポリグルタミンである、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項122】
連結分子が、ポリ−L−グルタミン、ポリ−D−グルタミン、およびポリ−DL−グルタミンからなる群から選択される、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項123】
連結分子がポリグルタミンの誘導体である、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項124】
ヒアルロン酸が天然のヒアルロン酸である、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項125】
ヒアルロン酸が、ヒアルロン酸の薬学的に許容し得る塩、ヒアルロン酸エステル、および硫酸化ヒアルロン酸からなる群から選択されるヒアルロン酸の誘導体である、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項126】
ヒアルロン酸が、少なくとも100,000の分子量を有する、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項127】
抱合体が、1.0より大きい正電荷に対する負電荷の比を有する、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項128】
抱合体が、薬学的に許容し得る担体内において投与される、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項129】
抱合体が、眼科用保存剤を含む薬学的に許容し得る担体内において投与される、請求項108に記載の方法。
【請求項130】
眼科用保存剤が、有機水銀剤、四級アンモニウム化合物、パラヒドロキシ安息香酸エステル、置換アルコールおよびフェノールからなる群から選択される、請求項129に記載の方法。
【請求項131】
有機水銀剤が、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、およびチメロサールからなる群から選択される、請求項129に記載の方法。
【請求項132】
四級アンモニウム化合物が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、およびポリクオタニウム−1(POLYQUAD)からなる群から選択される、請求項129に記載の方法。
【請求項133】
置換アルコールおよびフェノールが、クロロブタノール、およびクロロブタノール/フェニルエチルアルコールからなる群から選択される、請求項129に記載の方法。
【請求項134】
眼科用保存剤が抗生物質である、請求項128に記載の方法。
【請求項135】
抱合体が、香味剤、着色剤および芳香剤からなる群から選択される剤を含む薬学的に許容し得る担体内において投与される、請求項110に記載の方法。
【請求項136】
抱合体が、少なくとも90%、少なくとも95%、および少なくとも99%からなる群から選択される重量比を有する、請求項108、110、112、113または114に記載の方法。
【請求項137】
薬学的に許容し得る担体が、アルギニンを含む、請求項128に記載の方法。
【請求項138】
薬学的に許容し得る担体が、少なくとも6.5のpHを有する、請求項128に記載の方法。
【請求項139】
薬学的に許容し得る担体が、少なくとも280mOsmのモル浸透圧濃度を有する、請求項128に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2006−502988(P2006−502988A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−519871(P2004−519871)
【出願日】平成15年7月3日(2003.7.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/021034
【国際公開番号】WO2004/004744
【国際公開日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【出願人】(500472349)ペリコール・サイエンス・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年7月3日(2003.7.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/021034
【国際公開番号】WO2004/004744
【国際公開日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【出願人】(500472349)ペリコール・サイエンス・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】
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