説明

ビデオ信号処理回路

【目的】機材の増加を伴うことなく、例えばカメラ一体型VTRの電子ビューファインダでホワイトバランスを正確に認識する。
【構成】ベクトル座標変換回路17より、色差信号B−Y,R−Yの合成ベクトル値に対応した位置でハイレベル「H」となり、その他の位置ではローレベル「L」となるベクトル座標信号SBRを得、このベクトル座標信号SBRをベクトル表示スイッチ18を介して加算回路16に供給する。スイッチ18をオンとすることにより、ビデオ信号SV′にベクトル座標信号SBRが極性反転されて加算されため、陰極線管11の画面にはビデオ信号SV′による画像と共に、色差信号B−Y,R−Yの合成ベクトル値を示す部分が高輝度で表示される。ベクトルスコープと同様に、陰極線管11の画面には色差信号B−Y,R−Yがベクトル表示されることになる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えばENG(Electronic News Gathering)カメラ等のカメラ一体型VTRに適用してビデオ信号処理回路に関する。
【0002】
【従来の技術】図8において、1はENGカメラであり、カメラヘッド部およびVTR部とで構成される。屋外の撮像においては、ホワイトバランス(W/B)のセットスイッチ1bを操作してホワイトバランスを取ることができるが、必ずしも最適なホワイトバランスが取れるとは限らない。例えば、複数の光源の照明によるホワイトバランスでは、複数の光源の色温度を忠実に再現するのが困難だからである。
【0003】そこで、例えばカラーバーを撮像することでENGカメラ1より出力されるカラービデオ信号SCVをベクトルスコープ2に供給し、各色成分を2軸座標でベクトル表示して色再現性を認識し、ホワイトバランスを調整することが行なわれている。また、ENGカメラ1より出力されるカラービデオ信号SCVをカラーサブモニタ3あるいはカラー電子ビューファインダ(カラーEVF)1aに供給し、表示されるカラー画像でだいたいのホワイトバランスを認識し、その調整をすることが行なわれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ホワイトバランス調整をするのに、ベクトルスコープ2を使用するものによれば、精度よく調整できるが、機材の増加を伴う問題点があった。また、カラーサブモニタ3を使用するものによれば、機材の増加を伴うと共に、視感調整によるバラツキが発生する問題点があった。さらに、カラーEVF1aを使用するものによれば、視感調整によるバラツキが発生する問題点があった。
【0005】そこで、この発明では、例えば機材を増加せずに、電子ビューファインダでホワイトバランスを正確に認識できるようにするためのビデオ信号処理回路を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明は、カラービデオ信号を構成する色差信号をベクトル座標信号に変換する変換回路と、この変換回路より出力されるベクトル座標信号をビデオ信号に加算する加算回路とを備えてなるものである。
【0007】
【作用】例えばカメラ一体型VTRの電子ビューファインダに適用した場合、カラーバーの撮像時には、電子ビューファインダには、ベクトルスコープを使用した場合と同様に、各色成分の色差信号がベクトル表示される。そのため、ユーザは電子ビューファインダの表示によって出力ビデオ信号のホワイトバランスを正確に認識し得る。
【0008】
【実施例】以下、図面を参照しながら、この発明の一実施例について説明する。
【0009】まず、カラーバーのベクトル表示について説明する。図9Aはカラーバー画面であり、このパターンを青色差信号B−Yおよび赤色差信号R−Yで示すと、同図Bに示すようになる。数値は、輝度信号Yの白レベルを1.00としたときの値である。
【0010】ベクトルスコープでは、各色成分の色差信号B−Y,R−YがB−Y軸およびR−Y軸の2軸座標で合成されてベクトル表示されるため、カラーバーのベクトル表示は同図Cに示すようになる。
【0011】次に、図10を使用して陰極線管の基本構成について説明する。同図において、白黒ビデオ信号SV(図11Cに図示)は同期分離および映像増幅回路7に供給される。この回路7で分離される水平同期信号HP(図11Aに図示)は水平偏向回路4に供給され、この水平偏向回路4より出力される水平偏向電流IH(図11Bに図示)は陰極線管11の水平偏向コイル12に供給される。
【0012】また、回路7で分離される垂直同期信号VP(図11Eに図示)は垂直偏向回路5に供給され、この垂直偏向回路5より出力される垂直偏向電流IV(図11Fに図示)は陰極線管11の垂直偏向コイル13に供給される。
【0013】また、回路7からは同期信号が除去されると共に極性が反転されたビデオ信号SV′(図11Dに図示)が出力され、このビデオ信号SV′は陰極線管11のグリッド10に供給される。なお、陰極線管11のカソード9にはカソードバイス回路6より所定のバイアス電圧が印加されると共に、陰極線管11のアノード端子14には高圧回路8より高圧が印加される。
【0014】上述した水平偏向電流IHを水平偏向コイル12に流すことによって電子ビームは左右方向に偏向され、一方垂直偏向電流IVを垂直偏向コイル13に流すことによって電子ビームは上下方向に偏向され、図12に示すように走査される。また、ビデオ信号SV′が陰極線管11のグリッド10に供給されることによって、電子ビームはビデオ信号SV′によって密度変調される。これにより、陰極線管11の画面にはビデオ信号SV′による画像が表示されることになる。
【0015】図1は、実施例の構成を示している。図1において、図10と対応する部分には同一符号を付し、その詳細説明は省略する。
【0016】同図において、陰極線管11は、ENGカメラ等のカメラ一体型VTRの電子ビューファインダを構成する白黒陰極線管である。この陰極線管11の管面には、ベクトルスコープと同様の座標軸(図7参照)が予め表示されている。
【0017】また、同期分離および映像増幅回路7より出力されるビデオ信号SV′は加算回路16に供給される。そして、この加算回路16の出力信号は陰極線管11のグリッド10に供給される。
【0018】また、カメラ部より出力される赤色差信号R−Yおよび青色差信号B−Yはそれぞれベクトル座標変換回路17に供給され、この変換回路17より出力されるベクトル座標信号SBRはベクトル表示スイッチ18を介して加算回路16に極性反転されて供給される。図示せずも、ベクトル表示スイッチ18は、例えばカメラ一体型VTR本体の外面に配設される。
【0019】図2は、ベクトル座標変換回路17の構成を示している。同図において、信号B−YはA/D変換器21で1サンプル8ビットのディジタル信号に変換されて切換スイッチ22のH側の固定端子に供給される。ここで、信号B−Yの正側は「128」〜「255」の量子化値に、その負側は「127」〜「0」の量子化値に対応するように設定される(図3参照)。信号B−Yのディジタル信号は、後述するようにX方向(列方向)のライトアドレス信号として使用される。
【0020】一方、赤色差信号R−YはA/D変換器23で1サンプル8ビットのディジタル信号に変換されて切換スイッチ22のL側の固定端子に供給される。ここで、信号R−Yの正側は「127」〜「0」の量子化値に、その負側は「128」〜「255」の量子化値に対応するように設定される(図3参照)。信号R−Yのディジタル信号は、後述するようにY方向(行方向)のライトアドレス信号として使用される。
【0021】切換スイッチ22より出力されるライトアドレス信号WADは切換スイッチ24のH側の固定端子に供給される。この切換スイッチ24のL側の固定端子には、メモリコントローラ25よりX方向およびY方向のリードアドレス信号RADが供給される。コントローラ25には、水平同期信号HPおよび垂直同期信号VPが回路7(図1参照)より同期基準信号として供給される。
【0022】切換スイッチ24より出力されるアドレス信号ADはメモリ26に供給される。メモリ26にはコントローラ25よりXアドレスストローブ信号(XASバー)、Yアドレスストローブ信号(YASバー)、リード・ライトコントロール信号(RWバー)、リフレッシュコントロール信号RCが供給される。また、メモリ26には常にハイレベル「H」の信号が入力データDinとして供給されると共に、このメモリ26よりベクトル座標信号SBRとなる出力データDoutが出力される。
【0023】図4は、メモリ26の具体構成を示している。同図において、261はX方向に0〜255、Y方向に0〜255のアドレスを有する256×256×1ビットの記憶容量を有する、例えばDRAMのメモリセルである。また、262はアドレス信号AD[A0〜A7]が供給されるアドレスバッファであり、このアドレスバッファ262より出力されるX方向およびY方向のアドレス信号は、それぞれXデコーダ(列デコーダ)263およびYデコーダ(行デコーダ)264に供給される。アドレスバッファ262には、上述したXアドレスストローブ信号(XASバー)、Yアドレスストローブ信号(YASバー)、リフレッシュコントロール信号RCが供給される。
【0024】また、265はデータバッファであり、入力データDinはこのデータバッファ265を介してメモリセル261に書き込みデータとして供給されると共に、メモリセル261からの読み出しデータはこのデータバッファ265を介して出力データDoutとして導出される。データバッファ265には、上述したリード・ライトコントロール信号(RWバー)が供給される。
【0025】なお、上述したようにメモリ26の構成は、従来周知の構成と同様であるので、その他の詳細については省略する。
【0026】このメモリ26に対する入力データDinの書き込みと、このメモリ26からの出力データDoutの読み出しは、メモリコントローラ25の制御によって所定のサイクルでもって交互に行なわれる。
【0027】図5は、メモリ26のリードライト動作を示すタイミングチャートである。同図AはYアドレスストローブ信号(YASバー)、同図Bはアドレス信号AD、同図CはXアドレスストローブ信号(XASバー)、同図Dはリード・ライトコントロール信号(RWバー)、同図Eは入力データDin、同図Fは出力データDoutを示している。
【0028】図2に戻って、切換スイッチ22,24には、それぞれメモリコントローラ25より切換制御信号SW1,SW2が供給される(図5G,Hに図示)。切換スイッチ22,24はそれぞれ切換制御信号SW1,SW2がハイレベル「H」のときはH側に接続され、一方ローレベル「L」のときはL側に接続される。
【0029】ライトアドレス期間には、切換制御信号SW2はハイレベル「H」とされてメモリ26にライトアドレス信号WADが供給されると共に、切換制御信号SW1はローレベル「L」からハイレベル「H」とされてメモリ26にY方向およびX方向のライトアドレス信号が順次供給される。
【0030】これにより、メモリ26のメモリセル261にはライトアドレス信号WADで指定されるアドレスに入力データDinが書き込まれる。上述したようにライトアドレス信号WADを構成するX方向およびY方向のアドレス信号はそれぞれ色差信号B−YおよびR−Yをディジタル変換したものであるため、メモリセル261には色差信号B−YおよびR−Yの合成ベクトル値に対応したアドレスに入力データDinが書き込まれることになる。
【0031】次に、リードアドレス期間には、切換制御信号SW2はローレベル「L」とされてメモリ26にリードアドレス信号RADが供給される。上述せずもリードアドレス信号RADは、陰極線管11の電子ビームの走査位置に応じたものとされる。これにより。メモリ26のメモリセル261の記憶内容が陰極線管11の電子ビームの走査位置に対応して順次読み出される。後述するように、ラインリフレッシュ動作によって、メモリセル261は色差信号B−YおよびR−Yの合成ベクトル値に対応したアドレス以外にローレベル「L」が書き込まれた状態とされる。そのため、メモリ26より出力される出力データDoutは、色差信号B−YおよびR−Yの合成ベクトル値に対応した位置でハイレベル「H」となり、その他の位置ではローレベル「L」となる。
【0032】図6は、メモリ26のラインリフレッシュ動作を示すタイミングチャートである。同図Aは水平ブランキング信号HBLK、同図Bはアドレス信号AD、同図CはXアドレスストローブ信号(XASバー)、同図Dはリード・ライトコントロール信号(RWバー)、同図Eは入力データDin、同図Fは出力データDout、同図Gはリフレッシュコントロール信号RCを示している。
【0033】水平ブランキング期間でリフレッシュコントロール信号RCがハイレベル「H」となり、この水平ブランキング期間でラインリフレッシュ動作が行なわれ、直前の走査期間に読み出されたメモリセル261のY方向のアドレスに対応する全てのX方向アドレス0〜255にローレベル「L」が書き込まれる。
【0034】図1に戻って、上述したようにベクトル座標変換回路17からは、色差信号B−YおよびR−Yの合成ベクトル値に対応した位置でハイレベル「H」となり、その他の位置ではローレベル「H」となるベクトル座標信号SBRが出力される。そのため、ベクトル表示スイッチ18をオンとすることにより、このベクトル座標信号SBRが加算回路16に極性反転されて供給されてビデオ信号SV′に加算される。そのため、陰極線管11の画面にはビデオ信号SV′による画像に重ねて色差信号B−YおよびR−Yの合成ベクトル値を示す位置が高輝度で表示される。
【0035】そのため、ベクトル表示スイッチ18をオンとすることにより、ベクトルスコープと同様に、陰極線管11の画面には色差信号B−Y,R−Yが2軸座標でベクトル表示される。例えば、カラーバー(図9A参照)をフルフィールドで撮像する場合、最適なホワイトバランスにあるときは図7に「●」で示す位置が高輝度で表示され、一方R方向にずれているときは同図に「×」で示す位置が高輝度で表示される。
【0036】したがって本例によれば、ベクトル表示スイッチ18をオンとすることで、ユーザは電子ビューファインダの表示によって出力ビデオ信号のホワイトバランスを正確に認識でき、ホワイトバランス調整を精度よく行なうことができる。また本例によれば、ベクトルスコープ等を使用するものでなく、機材が増加する等の不都合もなくなる。
【0037】なお、ホワイトバランスの調整時には、上述したようにカラーバーを撮像せずに、単一カラー、例えばホワイトチャートを撮像して、その位置のずれを修正するように調整することも可能である。
【0038】また、上述実施例においては、ベクトル表示スイッチ18によってベクトル座標信号SBRをビデオ信号SV′に加算して、ビデオ信号SV′による画像と共に、色差信号B−Y,R−Yの合成ベクトル値を表示するようにしたものであるが、信号を切り換えることで合成ベクトル値のみを表示することもできる。
【0039】また、上述実施例においては、陰極線管11の管面にベクトルスコープと同様の座標軸が予め表示されるようにしたものであるが、この座標軸の表示を回路7からのビデオ信号SV′によって行なうようにしてもよい。
【0040】また、上述実施例は、この発明をカメラ一体型VTRの電子ビューファインダに適用したものであるが、その他の機器にも適用することができる。例えば、ビデオ編集機に適用すれば、機材を増加することなく、カラーバランス等の調整を精度よく行なうことができる。
【0041】また、上述実施例においては、ベクトル座標信号SBRを白黒ビデオ信号SV′に加算してベクトル位置を高輝度で表示するようにしたものであるが、陰極線管がカラー表示できるものであれば、ベクトル位置を所定の色で表示するようにもできる。その場合には、ベクトル座標信号SBRを所定の色信号に変換して陰極線管を駆動することになる。
【0042】
【発明の効果】この発明によれば、カラービデオ信号を構成する色差信号をベクトル座標信号に変換し、このベクトル座標信号をビデオ信号に加算できるため、例えば、カメラ一体型VTRの電子ビューファインダに、ベクトルスコープを使用した場合と同様に色差信号をベクトル表示できるため、ベクトルスコープ等の機材の増加を招くことなく、ホワイトバランス調整を精度よく行なうことができる。また例えば、編集機に使用すれば、機材の増加を伴うことなくカラーバランス調整を精度よく行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の構成を示すブロック図である。
【図2】ベクトル座標変換回路の構成を示すブロック図である。
【図3】X方向およびY方向におけるライトアドレス信号の形成を説明するための図である。
【図4】メモリの構成を示すブロック図である。
【図5】メモリのリードライト動作を示すタイミングチャートである。
【図6】メモリのラインリフレッシュ動作を示すタイミングチャートである。
【図7】陰極線管の画面のベクトル表示の一例を示す図である。
【図8】従来のホワイトバランスの確認の説明のための図である。
【図9】カラーベクトル表示の説明のための図である。
【図10】陰極線管の基本構成を示すブロック図である。
【図11】図10の例の各部の信号波形を示す図である。
【図12】陰極線管の走査原理を説明するための図である。
【符号の説明】
1 ENGカメラ
4 水平偏向回路
5 垂直偏向回路
6 カソードバイアス回路
7 同期分離および映像増幅回路
8 高圧回路
11 陰極線管
17 ベクトル座標変換回路
18 ベクトル表示スイッチ
21,23 A/D変換器
22,24 切換スイッチ
25 メモリコントローラ
26 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 カラービデオ信号を構成する色差信号をベクトル座標信号に変換する変換回路と、この変換回路より出力されるベクトル座標信号をビデオ信号に加算する加算回路とを備えてなるビデオ信号処理回路。

【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図1】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図7】
image rotate


【図11】
image rotate


【図6】
image rotate


【図8】
image rotate


【図12】
image rotate


【図9】
image rotate


【図10】
image rotate