説明

ビニル系接着剤

【課題】耐ブロッキング性、接着性および耐候性に優れた接着剤、前記接着剤からなる接着剤層を有する太陽電池モジュール用バックシート、太陽電池モジュールおよび太陽電池を提供すること。
【解決手段】ビニル系重合体を含有するビニル系接着剤であって、前記ビニル系重合体が側鎖の末端にエチレン性不飽和二重結合を有するビニル系重合体であることを特徴とするビニル系接着剤、前記ビニル系接着剤からなる接着剤層を有する太陽電池モジュール用バックシート、太陽電池モジュールおよび太陽電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニル系接着剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、単量体としてカルボン酸ビニルが用いられた重合体を含有する被着体、特にエチレン−酢酸ビニル共重合体を含有する被着体などに好適に使用することができるビニル系接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単量体としてカルボン酸ビニルが用いられた重合体、特にエチレン−酢酸ビニル共重合体は、可撓性を有し、水および紫外線に対する安定性に優れているとともに、ゴム弾性、柔軟性、強靭性、低温特性、耐候性、透明性、剛性、耐摩擦性、電気絶縁性などにも優れていることから、農業用フィルム、建築土木用シート、人工芝、太陽電池用セル封止剤、自動車用外装部品、食品包装紙、靴底などの材料として幅広く用いられている。
【0003】
前記材料には、ポリエステルウレタン系接着剤(例えば、特許文献1参照)、ポリエーテルウレタン系接着剤(例えば、特許文献2参照)、ウレタン変性アクリル樹脂系接着剤(例えば、特許文献3参照)などのウレタン系接着剤が用いられている。しかし、これらの接着剤には、接着性が低く、特に屋外で使用される環境ではさらに耐候性に劣るという欠点がある。
【0004】
そこで、近年、耐ブロッキング性、接着性および耐候性に優れた接着剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−043238号公報
【特許文献2】特開2011−042756号公報
【特許文献3】特開2011−153204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、耐ブロッキング性、接着性および耐候性に優れた接着剤、前記接着剤からなる接着剤層を有する太陽電池モジュール用バックシート、太陽電池モジュールおよび太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1) ビニル系重合体を含有するビニル系接着剤であって、前記ビニル系重合体が側鎖の末端にエチレン性不飽和二重結合を有するビニル系重合体であることを特徴とするビニル系接着剤、
(2) 側鎖の末端にエチレン性不飽和二重結合を有するビニル系重合体が、エポキシ基含有単量体およびオキサゾリン基含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体を含有する単量体成分を重合させてなる重合体とカルボキシル基および/または水酸基を有する単量体とを反応させてなるビニル系重合体、カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体を含有する単量体成分を重合させてなる重合体とエポキシ基含有単量体およびオキサゾリン基含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体とを反応させてなるビニル系重合体、カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体を含有する単量体成分を重合させてなる重合体とイソシアネート基含有単量体とを反応させてなるビニル系重合体、イソシアネート基含有単量体を含有する単量体成分を重合させてなる重合体とカルボキシル基および/または水酸基を有する単量体とを反応させてなるビニル系重合体、および(メタ)アクリル酸(ビニロキシアルコキシ)アルキルを含有する単量体成分を重合させてなるビニル系重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種のビニル系重合体である前記(1)に記載のビニル系接着剤、
(3) 前記(1)または(2)に記載のビニル系接着剤からなる接着剤層が形成されてなる太陽電池モジュール用バックシート、
(4) 前記(3)に記載の太陽電池モジュール用バックシートを有することを特徴とする太陽電池モジュール、および
(5) 前記(4)に記載の太陽電池モジュールを有することを特徴とする太陽電池
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のビニル系接着剤は、接着性に優れるとともに耐湿熱性および耐候性にも優れるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のビニル系接着剤が用いられた太陽電池モジュール用バックシートの一実施態様を示す概略断面図である。
【図2】本発明のビニル系接着剤が用いられ、バリア層を有する太陽電池モジュール用バックシートの他の一実施態様を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のビニル系接着剤は、前記したように、ビニル系重合体を含有し、前記ビニル系重合体が側鎖の末端にエチレン性不飽和二重結合を有することを特徴とする。なお、本願明細書において、ビニル系重合体は、ビニル基を有する重合体を意味する。
【0011】
側鎖の末端にエチレン性不飽和二重結合を有するビニル系重合体は、例えば、
(A)エポキシ基含有単量体およびオキサゾリン基含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体を含有する単量体成分を重合させることによって得られる重合体と、カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体とを反応させることによって得られるビニル系重合体(以下、重合体Aという)、
(B)カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体を含有する単量体成分を重合させることによって得られる重合体と、エポキシ基含有単量体およびオキサゾリン基含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体とを反応させることによって得られるビニル系重合体(以下、重合体Bという)、
(C)カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体を含有する単量体成分を重合させることによって得られる重合体と、イソシアネート基含有単量体とを反応させることによって得られるビニル系重合体(以下、重合体Cという)、
(D)イソシアネート基含有単量体を含有する単量体成分を重合させることによって得られる重合体と、カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体とを反応させることによって得られるビニル系重合体(以下、重合体Dという)、
(E)(メタ)アクリル酸(ビニロキシアルコキシ)アルキルを含有する単量体成分を重合させることによって得られるビニル系重合体(以下、重合体Eという)
などが挙げられ、これらのビニル系重合体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0012】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
【0013】
(A)重合体A
重合体Aは、前記したように、エポキシ基含有単量体およびオキサゾリン基含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体を含有する単量体成分を重合させることによって得られる重合体と、カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体とを反応させることによって得られる。
【0014】
エポキシ基含有単量体としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸β−メチルグリシジル、メタクリル酸β−メチルグリシジル、アクリル酸β−エチルグリシジル、メタクリル酸β−エチルグリシジルなどのアルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸β−アルキルグリシジル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリル(グリシジル)エーテル、3−アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−メタクリロイルオキシメチルオキセタン、3−メチル−3−アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−メチル−3−メタクリロイルオキシメチルオキセタン、3−エチル−3−アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−エチル−3−メタクリロイルオキシメチルオキセタン、アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、メタクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、ビニルシクロへキセンオキサイドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのエポキシ基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのエポキシ基含有単量体のなかでは、接着性、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましい。
【0015】
オキサゾリン基含有単量体としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのオキサゾリン基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのオキサゾリン基含有単量体のなかでは、接着性、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、2−ビニル−2−オキサゾリンが好ましい。
【0016】
エポキシ基含有単量体およびオキサゾリン基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、併用してもよい。単量体成分は、エポキシ基含有単量体およびオキサゾリン基含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体のみで構成されていてもよく、当該単量体成分には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、他の単量体が含まれていてもよい。
【0017】
前記他の単量体としては、例えば、カルボキシル基を有する単量体、酸性リン酸エステル系単量体、活性水素をもつ基を有する単量体、(メタ)アクリル酸エステル、窒素原子を有する単量体、2個以上の重合性二重結合を有する単量体、芳香族系単量体、ハロゲン原子を有する単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0018】
カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの脂肪族モノカルボン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボキシル基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0019】
酸性リン酸エステル系単量体としては、例えば、2−アクリロイルオキシメチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシメチルアシッドホスフェート、2−アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの酸性リン酸エステル系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0020】
活性水素をもつ基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチルなどの水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチルなどのα−ヒドロキシメチルアクリル酸エステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの活性水素をもつ基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0021】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどのアルキル基の炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸アルキル;アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルなどのシクロアルキル基の炭素数が3〜8の(メタ)アクリル酸シクロアルキル;アクリル酸シクロヘキシルメチル、メタクリル酸シクロヘキシルメチル、アクリル酸シクロヘキシルエチル、メタクリル酸シクロヘキシルエチル、アクリル酸シクロヘキシルプロピル、メタクリル酸シクロヘキシルプロピル、アクリル酸4−メチルシクロヘキシルメチル、メタクリル酸4−メチルシクロヘキシルメチルなどのアルキル基の炭素数が1〜8であり、シクロアルキル基の炭素数が3〜8である(メタ)アクリル酸シクロアルキルアルキルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0022】
窒素原子を有する単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド、アクリル酸N,N’−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N’−ジメチルアミノエチル、アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、アクリル酸イミド、メタクリル酸イミドなどの窒素原子含有(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの窒素原子を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0023】
2個以上の重合性二重結合を有する単量体としては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの2個以上の重合性二重結合を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの芳香族系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0025】
ハロゲン原子を有する単量体としては、例えば、塩化ビニルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ハロゲン原子を有する単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
ビニルエステル系単量体としては、例えば、酢酸ビニルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ビニルエステル系単量体は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
ビニルエーテル系単量体としては、例えば、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのビニルエーテル系単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0028】
また、前記他の単量体には、接着性、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、ベンゾトリアゾール系単量体、ベンゾフェノン系単量体、トリアジン系単量体などの紫外線吸収性基を有する単量体;紫外線安定性基を有する単量体などが含まれていてもよい。紫外線吸収性基を有する単量体は、例えば、大塚化学(株)製、商品名:RUVA93、大阪有機化学工業(株)製、商品名:BP−1Aなどとして商業的に容易に入手することができる。紫外線安定性基を有する単量体は、例えば、(株)ADEKA製、商品名:アデカスタブLA−82、アデカスタブLA−87などのアデカスタブシリーズなどとして商業的に容易に入手することができる。
【0029】
また、単量体成分には、耐加水分解性および耐絶縁性を向上させる観点から、ビスアリールフルオレンを基本構造としたアクリル酸を含有させてもよい。ビスアリールフルオレンを基本構造としたアクリル酸は、例えば、大阪ガスケミカル(株)製、商品名:オグソールEA−0200、オグソールEA−0200、オグソールEA−0500、オグソールEA−1000などとして商業的に容易に入手することができる。また、単量体成分には、特開2002−69130号公報に開示されているような(メタ)アクリル酸のシクロヘキシルアルキルエステル、ジシクロペンテニル(メタ)アクリル酸、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリル酸、ジシクロペンタニル(メタ)アクリル酸、トリシクロ[5.2.1.02.6]デカ−8−イル(メタ)アクリル酸やテルペン系(メタ)アクリル酸などを含有させることもできる。
【0030】
単量体成分におけるエポキシ基含有単量体およびオキサゾリン基含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体の含有率は、接着性、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、その上限値は100質量%である。
【0031】
単量体成分を重合させる際には、分子量分布の増大やゲル化を抑制する観点から、必要により連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、例えば、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸などのメルカプトカルボン酸類;メルカプト酢酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸メチル、3−メルカプトプロピオン酸2−エチルヘキシル、3−メルカプトプロピオン酸n−オクチル、3−メルカプトプロピオン酸メトキシブチル、3−メルカプトプロピオン酸ステアリル、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−メルカプトプロピオネート)などのメルカプトカルボン酸エステル類;エチルメルカプタン、tert−ブチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、1,2−ジメルカプトエタンなどのアルキルメルカプタン類;2−メルカプトエタノール、4−メルカプト−1−ブタノールなどのメルカプトアルコール類;ベンゼンチオール、m−トルエンチオール、p−トルエンチオール、2−ナフタレンチオールなどの芳香族メルカプタン類;トリス〔(3−メルカプトプロピオニロキシ)−エチル〕イソシアヌレートなどのメルカプトイソシアヌレート類;2−ヒドロキシエチルジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドなどのジスルフィド類;ベンジルジエチルジチオカルバメートなどのジチオカルバメート類;α−メチルスチレンダイマーなどのダイマー類;四臭化炭素などのハロゲン化アルキルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらの連鎖移動剤のなかでは、入手が容易であること、架橋防止性に優れていること、重合速度の低下の度合いが小さいことなどから、メルカプトカルボン酸類、メルカプトカルボン酸エステル類、アルキルメルカプタン類、メルカプトアルコール類、芳香族メルカプタン類、メルカプトイソシアヌレート類などのメルカプト基を有する化合物が好ましい。
【0032】
連鎖移動剤の量は、単量体成分の組成、重合温度などの重合条件、目標とする重合体の分子量などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、重量平均分子量が数千〜数万の重合体を得る場合には、単量体成分100質量部あたり、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜15質量部であることがより好ましい。
【0033】
単量体成分を重合させる方法としては、例えば、溶液重合法、塊状重合法、分散重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0034】
単量体成分を溶液重合法によって重合させる場合、溶媒として、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン系溶媒;ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒などの有機溶媒が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。溶媒の量は、重合条件、単量体成分の組成、得られる重合体の濃度などを考慮して適宜決定すればよい。
【0035】
単量体成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。重合開始剤の量は、得られる重合体の所望する物性などに応じて適宜設定すればよいが、通常、単量体成分100質量部あたり、好ましくは0.01〜50質量部、より好ましくは0.05〜20質量部である。
【0036】
単量体成分を重合させる際の重合条件は、重合方法に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。重合温度は、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは40〜140℃の範囲から適切な温度を選択することが望ましい。反応時間は、単量体成分の重合反応が完結するように適宜設定すればよい。また、重合の際の雰囲気は、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
【0037】
次に、以上のようにしてエポキシ基含有単量体およびオキサゾリン基含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体を含有する単量体成分を重合させることによって得られる重合体と、カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体とを反応させる。
【0038】
カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体としては、カルボキシル基を有する単量体、水酸基を有する単量体、およびカルボキシル基と水酸基とを有する単量体が挙げられる。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの脂肪族モノカルボン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボキシル基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
水酸基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチルなどのアルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルアクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜4のカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜4の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルメタクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル、α−ヒドロキシメチルメタクリル酸エチルなどの各アルキル基の炭素数が1〜4のα−ヒドロキシアルキルアクリル酸アルキルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水酸基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレートは、例えば、ダイセル化学工業(株)製、商品名:プラクセルFM1、プラクセルFM1D、プラクセルFM2D、プラクセルFM3、プラクセルFA1DM、プラクセルFA2Dなどとして商業的に容易に入手することができる。
【0041】
カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体のなかでは、接着性、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0042】
前記重合体とカルボキシル基および/または水酸基を有する単量体との割合は、前記重合体が有するエポキシ基およびオキサゾリン基の合計量の1モルあたり、カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体のカルボキシル基および水酸基の合計量が好ましくは0.1〜3モル、より好ましくは0.5〜1.5モルとなるように調整することが望ましい。
【0043】
前記重合体とカルボキシル基および/または水酸基を有する単量体とを反応させる際には、カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体にエステル化触媒、重合禁止剤などを添加することが好ましい。
【0044】
エステル化触媒としては、例えば、オクテン酸亜鉛などの有機酸金属塩、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムヨーダイド、テトラブチルホスホニウムブロマイドなどのホスホニウム化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのエステル化触媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
エステル化触媒の量は、その種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、前記重合体100質量部あたり、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜3質量部である。
【0046】
重合禁止剤としては、例えば、メトキシフェノール;ヒドロキノン、ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコールなどのキノン類;2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノールなどのアルキルフェノール類;アルキル化ジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−ヒドロキシ−4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどのアミン類;ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルジチオカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅等のジチオカルバミン酸銅類;2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシルなどの1−オキシル類などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合禁止剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0047】
重合禁止剤の量は、収率を向上させるとともに、カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体の重合を抑制するとともに前記重合体との反応性を維持する観点から、カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体に対して、好ましくは0.01〜10000ppm、より好ましくは0.1〜7000ppm、さらに好ましくは1〜5000ppmである。
【0048】
前記重合体とカルボキシル基および/または水酸基を有する単量体との反応は、例えば、前記重合体が得られた反応混合物に、カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体を添加することによって行なうことができる。
【0049】
前記重合体とカルボキシル基および/または水酸基を有する単量体とを反応させる際の反応条件は、その反応方法に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。反応温度は、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは40〜140℃の範囲から適切な温度を選択することが望ましい。反応時間は、反応が完結するように適宜設定すればよい。また、反応の際の雰囲気は、特に限定されず、空気であってもよく、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよく、あるいは酸素と不活性ガスとの混合ガスであってもよい。
【0050】
以上のようにして前記重合体とカルボキシル基および/または水酸基を有する単量体とを反応させることにより、重合体Aが得られる。重合体Aの重量平均分子量は、好ましくは5000〜100万、より好ましくは1万〜50万、さらに好ましくは3万〜30万である。なお、重量平均分子量は、ポリスチレン標準でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定したときの値である。
【0051】
また、重合体A(不揮発分)の酸価または水酸基価は、接着性、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、好ましくは0.1〜200mgKOH/g、より好ましくは1〜100mgKOH/g、さらに好ましくは3〜60mgKOH/gである。
【0052】
(B)重合体B
重合体Bは、前記したように、カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体を含有する単量体成分を重合させることによって得られる重合体と、エポキシ基含有単量体およびオキサゾリン基含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体とを反応させることによって得られる。
【0053】
カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体としては、前記重合体Aを調製する際に用いられるカルボキシル基および/または水酸基を有する単量体と同様のものが例示される。より具体的には、カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体としては、カルボキシル基を有する単量体、水酸基を有する単量体、およびカルボキシル基と水酸基とを有する単量体が挙げられる。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0054】
カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの脂肪族モノカルボン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボキシル基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0055】
水酸基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチルなどのアルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルアクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜4のカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜4の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルメタクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル、α−ヒドロキシメチルメタクリル酸エチルなどの各アルキル基の炭素数が1〜4のα−ヒドロキシアルキルアクリル酸アルキルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水酸基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレートは、例えば、ダイセル化学工業(株)製、商品名:プラクセルFM1、プラクセルFM1D、プラクセルFM2D、プラクセルFM3、プラクセルFA1DM、プラクセルFA2Dなどとして商業的に容易に入手することができる。
【0056】
カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体のなかでは、接着性、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、より好ましくはアルキル基の炭素数が1〜12の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、より一層好ましくはアルキル基の炭素数が1〜6の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、さらに好ましくはアルキル基の炭素数が1〜4の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルである。
【0057】
なお、単量体成分には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、他の単量体が含まれていてもよい。他の単量体としては、例えば、酸性リン酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ基を有する単量体、窒素原子を有する単量体、2個以上の重合性二重結合を有する単量体、芳香族系単量体、ハロゲン原子を有する単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0058】
前記酸性リン酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル、窒素原子を有する単量体、2個以上の重合性二重結合を有する単量体、芳香族系単量体、ハロゲン原子を有する単量体、ビニルエステル系単量体およびビニルエーテル系単量体としては、前記重合体Aを調製する際に用いられる他の単量体と同じものが例示される。
【0059】
エポキシ基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのエポキシ基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0060】
前記他の単量体のなかでは、接着性、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルおよび(メタ)アクリル酸シクロアルキルがより好ましい。
【0061】
また、前記他の単量体には、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、ベンゾトリアゾール系単量体、ベンゾフェノン系単量体、トリアジン系単量体などの紫外線吸収性基を有する単量体;紫外線安定性基を有する単量体などが含まれていてもよい。紫外線吸収性基を有する単量体および紫外線安定性基を有する単量体としては、前記重合体Aを調製する際に用いられるのと同じものが例示される。
【0062】
また、単量体成分には、耐加水分解性および耐絶縁性を向上させる観点から、ビスアリールフルオレンを基本構造としたアクリル酸を含有させてもよい。ビスアリールフルオレンを基本構造としたアクリル酸としては、前記重合体Aを調製する際に用いられるのと同じものが例示される。
【0063】
単量体成分における前記カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体の含有率は、接着性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、その上限値は100質量%である。
【0064】
単量体成分を重合させる際には、分子量分布の増大やゲル化を抑制する観点から、必要により連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、前記重合体Aを調製する際に用いられるのと同じものが例示される。
【0065】
連鎖移動剤の量は、単量体成分の組成、重合温度などの重合条件、目標とする重合体の分子量などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、重量平均分子量が数千〜数万の重合体を得る場合には、単量体成分100質量部あたり、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜15質量部であることがより好ましい。
【0066】
単量体成分を重合させる方法としては、例えば、溶液重合法、塊状重合法、分散重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0067】
単量体成分を溶液重合法によって重合させる場合に用いられる溶媒としては、前記重合体Aを調製する際に用いられるのと同じものが例示される。
【0068】
単量体成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、前記重合体Aを調製する際に用いられるのと同じものが例示される。重合開始剤の量は、得られる重合体の所望する物性などに応じて適宜設定すればよいが、通常、単量体成分100質量部あたり、好ましくは0.05〜30質量部、より好ましくは0.15〜10質量部である。
【0069】
単量体成分を重合させる際の重合条件は、重合方法に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。重合温度は、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは40〜140℃の範囲から適切な温度を選択することが望ましい。反応時間は、単量体成分の重合反応が完結するように適宜設定すればよい。また、重合の際の雰囲気は、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
【0070】
次に、以上のようにしてカルボキシル基および/または水酸基を有する単量体を含有する単量体成分を重合させることによって得られる重合体と、エポキシ基含有単量体およびオキサゾリン基含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体とを反応させる。
【0071】
エポキシ基含有単量体およびオキサゾリン基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0072】
エポキシ基含有単量体としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸β−メチルグリシジル、メタクリル酸β−メチルグリシジル、アクリル酸β−エチルグリシジル、メタクリル酸β−エチルグリシジルなどのアルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸β−アルキルグリシジル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ビニルベンジルグリシジルエーテル、アリル(グリシジル)エーテル、3−アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−メタクリロイルオキシメチルオキセタン、3−メチル−3−アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−メチル−3−メタクリロイルオキシメチルオキセタン、3−エチル−3−アクリロイルオキシメチルオキセタン、3−エチル−3−メタクリロイルオキシメチルオキセタン、アクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、メタクリル酸(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチル、ビニルシクロへキセンオキサイドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのエポキシ基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのエポキシ基含有単量体のなかでは、接着性、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸グリシジルが好ましい。
【0073】
オキサゾリン基含有単量体としては、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのオキサゾリン基含有単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これらのオキサゾリン基含有単量体のなかでは、接着性、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、2−ビニル−2−オキサゾリンが好ましい。
【0074】
前記重合体とエポキシ基含有単量体およびオキサゾリン基含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体との反応は、例えば、前記重合体が得られた反応混合物に、エポキシ基含有単量体およびオキサゾリン基含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体を添加することによって行なうことができる。
【0075】
前記重合体とエポキシ基含有単量体およびオキサゾリン基含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体とを反応させる際の反応条件は、その反応方法に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。反応温度は、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは40〜140℃の範囲から適切な温度を選択することが望ましい。反応時間は、反応が完結するように適宜設定すればよい。また、反応の際の雰囲気は、特に限定されず、空気であってもよく、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよく、あるいは酸素と不活性ガスとの混合ガスであってもよい。
【0076】
以上のようにして前記重合体とエポキシ基含有単量体およびオキサゾリン基含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体とを反応させることにより、重合体Bが得られる。重合体Bの重量平均分子量は、好ましくは5000〜100万、より好ましくは1万〜50万、さらに好ましくは3万〜30万である。なお、重量平均分子量は、ポリスチレン標準でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定したときの値である。
【0077】
また、重合体B(不揮発分)の酸価または水酸基価は、接着性、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、好ましくは0.1〜200mgKOH/g、より好ましくは1〜100mgKOH/g、さらに好ましくは3〜60mgKOH/gである。
【0078】
(C)重合体C
重合体Cは、前記したように、カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体を含有する単量体成分を重合させることによって得られる重合体とイソシアネート基含有単量体とを反応させることによって得られる。
【0079】
カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体としては、前記重合体Aを調製する際に用いられるカルボキシル基および/または水酸基を有する単量体と同様のものが例示される。より具体的には、カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体としては、カルボキシル基を有する単量体、水酸基を有する単量体、およびカルボキシル基と水酸基とを有する単量体が挙げられる。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0080】
カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの脂肪族モノカルボン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボキシル基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0081】
水酸基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチルなどのアルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルアクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜4のカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜4の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルメタクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル、α−ヒドロキシメチルメタクリル酸エチルなどの各アルキル基の炭素数が1〜4のα−ヒドロキシアルキルアクリル酸アルキルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水酸基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレートは、例えば、ダイセル化学工業(株)製、商品名:プラクセルFM1、プラクセルFM1D、プラクセルFM2D、プラクセルFM3、プラクセルFA1DM、プラクセルFA2Dなどとして商業的に容易に入手することができる。
【0082】
カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体のなかでは、接着性、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、より好ましくはアルキル基の炭素数が1〜12の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、より一層好ましくはアルキル基の炭素数が1〜6の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、さらに好ましくはアルキル基の炭素数が1〜4の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルである。
【0083】
なお、単量体成分には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、他の単量体が含まれていてもよい。他の単量体としては、例えば、酸性リン酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ基を有する単量体、窒素原子を有する単量体、2個以上の重合性二重結合を有する単量体、芳香族系単量体、ハロゲン原子を有する単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0084】
前記酸性リン酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル、窒素原子を有する単量体、2個以上の重合性二重結合を有する単量体、芳香族系単量体、ハロゲン原子を有する単量体、ビニルエステル系単量体およびビニルエーテル系単量体としては、前記重合体Aを調製する際に用いられる他の単量体と同じものが例示される。
【0085】
エポキシ基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのエポキシ基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0086】
前記他の単量体のなかでは、接着性、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルおよび(メタ)アクリル酸シクロアルキルがより好ましい。
【0087】
また、前記他の単量体には、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、ベンゾトリアゾール系単量体、ベンゾフェノン系単量体、トリアジン系単量体などの紫外線吸収性基を有する単量体;紫外線安定性基を有する単量体などが含まれていてもよい。紫外線吸収性基を有する単量体および紫外線安定性基を有する単量体としては、前記重合体Aを調製する際に用いられるのと同じものが例示される。
【0088】
また、単量体成分には、耐加水分解性および耐絶縁性を向上させる観点から、ビスアリールフルオレンを基本構造としたアクリル酸を含有させてもよい。ビスアリールフルオレンを基本構造としたアクリル酸としては、前記重合体Aを調製する際に用いられるのと同じものが例示される。
【0089】
単量体成分における前記カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体の含有率は、接着性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、その上限値は100質量%である。
【0090】
単量体成分を重合させる際には、分子量分布の増大やゲル化を抑制する観点から、必要により連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、前記重合体Aを調製する際に用いられるのと同じものが例示される。
【0091】
連鎖移動剤の量は、単量体成分の組成、重合温度などの重合条件、目標とする重合体の分子量などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、重量平均分子量が数千〜数万の重合体を得る場合には、単量体成分100質量部あたり、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜15質量部であることがより好ましい。
【0092】
単量体成分を重合させる方法としては、例えば、溶液重合法、塊状重合法、分散重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0093】
単量体成分を溶液重合法によって重合させる場合に用いられる溶媒としては、前記重合体Aを調製する際に用いられるのと同じものが例示される。
【0094】
単量体成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、前記重合体Aを調製する際に用いられるのと同じものが例示される。重合開始剤の量は、得られる重合体の所望する物性などに応じて適宜設定すればよいが、通常、単量体成分100質量部あたり、好ましくは0.05〜30質量部、より好ましくは0.15〜10質量部である。
【0095】
単量体成分を重合させる際の重合条件は、重合方法に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。重合温度は、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは40〜140℃の範囲から適切な温度を選択することが望ましい。反応時間は、単量体成分の重合反応が完結するように適宜設定すればよい。また、重合の際の雰囲気は、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
【0096】
次に、以上のようにしてカルボキシル基および/または水酸基を有する単量体を含有する単量体成分を重合させることによって得られる重合体と、イソシアネート基含有単量体とを反応させる。
【0097】
イソシアネート基含有単量体としては、例えば、アクリロイルオキシメチルイソシアネート、メタクリロイルオキシメチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、3−アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、3−メタクリロイルオキシプロピルイソシアネートなどのアルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネート、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボキシル基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0098】
前記重合体と、イソシアネート基含有単量体とを反応させる際には、触媒を用いることが好ましい。
【0099】
触媒としては、例えば、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジネオデカン酸ジブチルスズ、ジ酢酸ジブチルスズなどのジカルボン酸ジアルキルスズなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。触媒の量は、その種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、前記イソシアネート基含有単量体100質量部あたり、好ましくは0.005〜5質量部、より好ましくは0.01〜3質量部である。
【0100】
前記重合体とイソシアネート基含有単量体との反応は、例えば、前記重合体が得られた反応混合物に、イソシアネート基含有単量体を添加することによって行なうことができる。
【0101】
前記重合体とイソシアネート基含有単量体との割合は、前記重合体が有するカルボキシル基および/または水酸基とイソシアネート基含有単量体が有するイソシアネート基との当量比(NCO基の当量/カルボキシル基および水酸基の合計当量)が、好ましくは0.1〜5、より好ましくは0.2〜3となるように調整することが望ましい。
【0102】
前記重合体とイソシアネート基含有単量体を反応させる際の反応条件は、その反応方法に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。反応温度は、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは40〜140℃の範囲から適切な温度を選択することが望ましい。反応時間は、反応が完結するように適宜設定すればよい。また、反応の際の雰囲気は、特に限定されず、空気であってもよく、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよく、あるいは酸素と不活性ガスとの混合ガスであってもよい。
【0103】
以上のようにして前記重合体とイソシアネート基含有単量体とを反応させることにより、重合体Cが得られる。重合体Cの重量平均分子量は、好ましくは5000〜100万、より好ましくは1万〜50万、さらに好ましくは3万〜30万である。なお、重量平均分子量は、ポリスチレン標準でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定したときの値である。
【0104】
また、重合体C(不揮発分)の水酸基価は、接着性、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、好ましくは0.4〜200mgKOH/g、より好ましくは1〜100KOH/g、さらに好ましくは3〜60mgKOH/gである。
【0105】
(D)重合体D
重合体Dは、前記したように、イソシアネート基含有単量体を含有する単量体成分を重合させることによって得られる重合体と、カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体とを反応させることによって得られる。
【0106】
イソシアネート基含有単量体としては、前記重合体Cを調製する際に用いられるイソシアネート基含有単量体と同様のものが例示される。より具体的には、例えば、アクリロイルオキシメチルイソシアネート、メタクリロイルオキシメチルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、3−アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、3−メタクリロイルオキシプロピルイソシアネートなどのアルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネート、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボキシル基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0107】
なお、単量体成分には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、他の単量体が含まれていてもよい。他の単量体としては、例えば、酸性リン酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル、窒素原子を有する単量体、2個以上の重合性二重結合を有する単量体、芳香族系単量体、ハロゲン原子を有する単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0108】
前記酸性リン酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ基を有する単量体、窒素原子を有する単量体、2個以上の重合性二重結合を有する単量体、芳香族系単量体、ハロゲン原子を有する単量体、ビニルエステル系単量体およびビニルエーテル系単量体としては、前記重合体Cを調製する際に用いられる他の単量体と同じものが例示される。
【0109】
前記他の単量体のなかでは、接着性、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸アルキルおよび(メタ)アクリル酸シクロアルキルがより好ましい。
【0110】
また、前記他の単量体には、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、ベンゾトリアゾール系単量体、ベンゾフェノン系単量体、トリアジン系単量体などの紫外線吸収性基を有する単量体;紫外線安定性基を有する単量体などが含まれていてもよい。紫外線吸収性基を有する単量体および紫外線安定性基を有する単量体としては、前記重合体Aを調製する際に用いられるのと同じものが例示される。
【0111】
また、単量体成分には、耐加水分解性および耐絶縁性を向上させる観点から、ビスアリールフルオレンを基本構造としたアクリル酸を含有させてもよい。ビスアリールフルオレンを基本構造としたアクリル酸としては、前記重合体Aを調製する際に用いられるのと同じものが例示される。
【0112】
単量体成分における前記イソシアネート基含有単量体の含有率は、接着性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、その上限値は100質量%である。
【0113】
単量体成分を重合させる際には、分子量分布の増大やゲル化を抑制する観点から、必要により連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、前記重合体Aを調製する際に用いられるのと同じものが例示される。
【0114】
連鎖移動剤の量は、単量体成分の組成、重合温度などの重合条件、目標とする重合体の分子量などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、重量平均分子量が数千〜数万の重合体を得る場合には、単量体成分100質量部あたり、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜15質量部であることがより好ましい。
【0115】
単量体成分を重合させる方法としては、例えば、溶液重合法、塊状重合法、分散重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0116】
単量体成分を溶液重合法によって重合させる場合に用いられる溶媒としては、前記重合体Aを調製する際に用いられるのと同じものが例示される。
【0117】
単量体成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、前記重合体Aを調製する際に用いられるのと同じものが例示される。重合開始剤の量は、得られる重合体の所望する物性などに応じて適宜設定すればよいが、通常、単量体成分100質量部あたり、好ましくは0.05〜30質量部、より好ましくは0.15〜10質量部である。
【0118】
単量体成分を重合させる際の重合条件は、重合方法に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。重合温度は、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは40〜140℃の範囲から適切な温度を選択することが望ましい。反応時間は、単量体成分の重合反応が完結するように適宜設定すればよい。また、重合の際の雰囲気は、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
【0119】
次に、以上のようにしてイソシアネート基含有単量体を含有する単量体成分を重合させることによって得られる重合体と、カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体とを反応させる。
【0120】
カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体としては、前記重合体Aを調製する際に用いられるカルボキシル基および/または水酸基を有する単量体と同様のものが例示される。より具体的には、カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体としては、カルボキシル基を有する単量体、水酸基を有する単量体、およびカルボキシル基と水酸基とを有する単量体が挙げられる。これらの単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0121】
カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸などの脂肪族モノカルボン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのカルボキシル基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0122】
水酸基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシブチルなどのアルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルアクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜4のカプロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜4の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルメタクリル酸メチル、α−ヒドロキシメチルアクリル酸エチル、α−ヒドロキシメチルメタクリル酸エチルなどの各アルキル基の炭素数が1〜4のα−ヒドロキシアルキルアクリル酸アルキルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの水酸基を有する単量体は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレートは、例えば、ダイセル化学工業(株)製、商品名:プラクセルFM1、プラクセルFM1D、プラクセルFM2D、プラクセルFM3、プラクセルFA1DM、プラクセルFA2Dなどとして商業的に容易に入手することができる。
【0123】
カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体のなかでは、接着性、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、より好ましくはアルキル基の炭素数が1〜12の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、より一層好ましくはアルキル基の炭素数が1〜6の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、さらに好ましくはアルキル基の炭素数が1〜4の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルである。
【0124】
前記重合体と、カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体とを反応させる際には、触媒を用いることが好ましい。
【0125】
触媒としては、例えば、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジネオデカン酸ジブチルスズ、ジ酢酸ジブチルスズなどのジカルボン酸ジアルキルスズなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。触媒の量は、その種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、前記カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体100質量部あたり、好ましくは0.005〜5質量部、より好ましくは0.01〜3質量部である。
【0126】
前記重合体とカルボキシル基および/または水酸基を有する単量体との反応は、例えば、前記重合体が得られた反応混合物に、カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体を添加することによって行なうことができる。
【0127】
前記重合体とカルボキシル基および/または水酸基を有する単量体との割合は、前記重合体が有するカルボキシル基および/または水酸基とカルボキシル基および/または水酸基を有する単量体が有するイソシアネート基との当量比(NCO基の当量/カルボキシル基および水酸基の合計当量)が、好ましくは0.1〜5、より好ましくは0.2〜3となるように調整することが望ましい。
【0128】
前記重合体とカルボキシル基および/または水酸基を有する単量体を反応させる際の反応条件は、その反応方法に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。反応温度は、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは40〜140℃の範囲から適切な温度を選択することが望ましい。反応時間は、反応が完結するように適宜設定すればよい。また、反応の際の雰囲気は、特に限定されず、空気であってもよく、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよく、あるいは酸素と不活性ガスとの混合ガスであってもよい。
【0129】
以上のようにして前記重合体とカルボキシル基および/または水酸基を有する単量体とを反応させることにより、重合体Dが得られる。重合体Dの重量平均分子量は、好ましくは5000〜100万、より好ましくは1万〜50万、さらに好ましくは3万〜30万である。なお、重量平均分子量は、ポリスチレン標準でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定したときの値である。
【0130】
また、重合体D(不揮発分)の水酸基価は、接着性、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、好ましくは0.4〜200mgKOH/g、より好ましくは1〜100KOH/g、さらに好ましくは3〜60mgKOH/gである。
【0131】
(E)重合体E
重合体Eは、前記したように、(メタ)アクリル酸(ビニロキシアルコキシ)アルキルを含有する単量体成分を重合させることによって得られる。
【0132】
(メタ)アクリル酸(ビニロキシアルコキシ)アルキルとしては、例えば、アクリル酸(ビニロキシメトキシ)メチル、メタクリル酸(ビニロキシメトキシ)メチル、アクリル酸(ビニロキシエトキシ)エチル、メタクリル酸(ビニロキシエトキシ)エチルなどのアルコキシ基の炭素数が1〜4で、アルキル基の炭素数が1〜4である(メタ)アクリル酸(ビニロキシアルコキシ)アルキルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、(メタ)アクリル酸(ビニロキシアルコキシ)アルキルは、例えば、(株)日本触媒製、品番:VEEA〔アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル〕などとして商業的に容易に入手することができる。
【0133】
なお、単量体成分には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、他の単量体が含まれていてもよい。他の単量体としては、例えば、カルボキシル基を有する単量体、酸性リン酸エステル系単量体、活性水素をもつ基を有する単量体、(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ基を有する単量体、窒素原子を有する単量体、2個以上の重合性二重結合を有する単量体、芳香族系単量体、ハロゲン原子を有する単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0134】
前記酸性リン酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸エステル、窒素原子を有する単量体、2個以上の重合性二重結合を有する単量体、芳香族系単量体、ハロゲン原子を有する単量体、ビニルエステル系単量体およびビニルエーテル系単量体としては、前記重合体Aを調製する際に用いられる他の単量体と同じものが例示される。また、前記エポキシ基を有する単量体としては、前記重合体Cを調製する際に用いられる他の単量体と同じものが例示される。
【0135】
前記他の単量体のなかでは、ビニルエーテル系単量体が好ましく、ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのアルキル基の炭素数が1〜8のアルキルビニルエーテルおよびアルキル基の炭素数が3〜12のシクロアルキルビニルエーテルがより好ましく、アルキル基の炭素数が4〜8のアルキルビニルエーテルがさらに好ましい。
【0136】
また、前記他の単量体には、接着性、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、ベンゾトリアゾール系単量体、ベンゾフェノン系単量体、トリアジン系単量体などの紫外線吸収性基を有する単量体;紫外線安定性基を有する単量体などが含まれていてもよい。紫外線吸収性基を有する単量体および紫外線安定性基を有する単量体としては、前記重合体Aを調製する際に用いられるのと同じものが例示される。
【0137】
また、単量体成分には、接着性、耐加水分解性および耐絶縁性を向上させる観点から、ビスアリールフルオレンを基本構造としたアクリル酸を含有させてもよい。ビスアリールフルオレンを基本構造としたアクリル酸としては、前記重合体Aを調製する際に用いられるのと同じものが例示される。
【0138】
単量体成分における(メタ)アクリル酸(ビニロキシアルコキシ)アルキルの含有率は、接着性を向上させる観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、その上限値は100質量%である。
【0139】
単量体成分を重合させる際には、分子量分布の増大やゲル化を抑制する観点から、必要により連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤としては、前記重合体Aを調製する際に用いられるのと同じものが例示される。
【0140】
連鎖移動剤の量は、単量体成分の組成、重合温度などの重合条件、目標とする重合体の分子量などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、重量平均分子量が数千〜数万の重合体を得る場合には、単量体成分100質量部あたり、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜15質量部であることがより好ましい。
【0141】
単量体成分の重合法としては、例えば、溶液重合法、塊状重合法、分散重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0142】
単量体成分を溶液重合法によって重合させる場合、溶媒として、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン系溶媒;ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒などの有機溶媒が挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。溶媒の量は、重合条件、単量体成分の組成、得られる重合体の濃度などを考慮して適宜決定すればよい。
【0143】
単量体成分の重合は、カチオン重合法などのイオン重合法によって行なうことができる。カチオン重合の際に用いられる重合開始剤としては、例えば、ヘテロポリ酸、過塩素酸、硫酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸、ピクリルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸などのプロトン酸、三フッ化ホウ素、臭化アルミニウム、塩化アルミニウム、五塩化アンチモン、塩化第二鉄、四塩化スズ、四塩化チタン、塩化水銀、塩化亜鉛などのルイス酸、ヨウ素、トリフェニルクロロメタンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0144】
前記ヘテロポリ酸は、例えば、酸の中心にタングステン、モリブデン、バナジウムなどの原子を有し、ヘテロ原子がリン、ケイ素、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、ホウ素、ヒ素、コバルトなどの原子であるケギン構造を有するポリ酸である。前記ヘテロポリ酸としては、例えば、リンタングステン酸、ケイタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイモリブデン酸、ホウタングステン酸、ホウモリブデン酸、コバルトモリブデン酸、コバルトタングステン酸、ヒ素タングステン酸、ゲルマニウムタングステン酸、リンモリブドタングステン酸、ホウモリブドタングステン酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのなかでは、リンタングステン酸は、無着色であり、有機溶媒に対する溶解性が高く、重合開始能力に優れていることから好ましい。
【0145】
重合開始剤の量は、重合反応を迅速に行なうとともに重合反応を容易に制御することができるようにする観点から、単量体成分に対して、好ましくは1ppm〜30質量%、より好ましくは5ppm〜20質量%、さらに好ましくは10ppm〜10質量%である。
【0146】
単量体成分を重合させる際の重合条件は、重合方法に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。重合温度は、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは40〜140℃の範囲から適切な温度を選択することが望ましい。反応時間は、単量体成分の重合反応が完結するように適宜設定すればよい。また、重合の際の雰囲気は、例えば、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであることが好ましい。
【0147】
単量体成分を重合させた後には、必要により、得られた反応混合物に重合反応停止剤を添加することにより、重合反応を停止させてもよい。重合反応停止剤としては、例えば、アンモニア、トリエチルアミンなどのアミンなどの有機塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0148】
以上のようにして前記単量体成分を重合させることにより、重合体Eが得られる。重合体Eの重量平均分子量は、好ましくは1000〜100万、より好ましくは1500〜50万、さらに好ましくは2000〜30万である。なお、重量平均分子量は、ポリスチレン標準でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定したときの値である。
【0149】
側鎖の末端にエチレン性不飽和二重結合を有するビニル系重合体1分子あたりの側鎖の末端に存在するエチレン性不飽和二重結合の数は、接着性、耐候性および耐ブロッキング性を向上させる観点から、4個以上有することが好ましく、7個以上有することがより好ましく、10個以上有することがさらに好ましい。なお、前記重合体が側鎖の末端に有するエチレン性不飽和二重結合の数の上限値には特に限定がない。
【0150】
本発明のビニル系接着剤は、前記したように、側鎖の末端にエチレン性不飽和二重結合を有するビニル系重合体を含有する。ビニル系接着剤における側鎖の末端にエチレン性不飽和二重結合を有するビニル系重合体(不揮発分)の含有率は、接着性および耐候性を向上させる観点から、好ましくは5〜80質量%、より好ましくは5〜60質量%である。ビニル系接着剤におけるビニル系重合体(不揮発分)の含有率は、ビニル系接着剤に含まれる有機溶媒の量を調整することによって調節することができる。有機溶媒としては、例えば、前記重合体Aを調製する際に用いられる有機溶媒などが挙げられるが、本発明は、当該有機溶媒の種類によって限定されるものではない。
【0151】
なお、ビニル系接着剤の不揮発分は、側鎖の末端にエチレン性不飽和二重結合を有するビニル系重合体のみで構成されていてもよいが、本発明の目的を阻害しない範囲内であれば、他の重合体が含まれていてもよい。
【0152】
本発明のビニル系接着剤には、耐加水分解性および耐絶縁性を向上させる観点から、硬化剤が含まれていてもよい。
【0153】
硬化剤としては、例えば、(ブロック)ポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、およびオキサゾリン基含有樹脂、アミノプラスト樹脂などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの硬化剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記硬化剤のなかでは、硬化性および耐候性の観点から、(ブロック)ポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、およびオキサゾリン基含有樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体が好ましく、(ブロック)ポリイソシアネート化合物がより好ましい。
【0154】
(ブロック)ポリイソシアネート化合物とは、ポリイソシアネート化合物および/またはブロックポリイソシアネート化合物を意味する。
【0155】
ポリイソシアネート化合物としては、イソシアネート基を分子内に少なくとも2つ有する化合物が挙げられる。ポリイソシアネート化合物の具体例としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどのポリイソシアネート;これらのポリイソシアネートのアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体などのポリイソシアネートの変性物(誘導体)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0156】
ブロックポリイソシアネート化合物は、加熱によって接着剤を架橋させるが、常温で貯蔵安定性を向上させる性質および接着性を有する。また、ブロックポリイソシアネート化合物は、太陽電池として実際に使用される環境だけでなく、太陽電池モジュールを評価する際に検討される高温多湿の雰囲気中における促進試験を行なった場合であっても、太陽電池に用いられる充填材に対する接着性にさらに優れている。ブロックポリイソシアネート化合物は、通常、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック化剤でブロックさせたものである。ブロック化剤としては、例えば、ε−カプロラクタム、フェノール、クレゾール、オキシム、アルコールなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ブロックポリイソシアネート化合物のなかでは、芳香環に直接結合したイソシアネート基を有しない無黄変性ポリイソシアネート化合物は、接着剤層の黄変を防止する観点から好ましい。
【0157】
(ブロック)ポリイソシアネート化合物は、例えば、住化バイエルウレタン(株)製、商品名:デスモジュールN3200、デスモジュールN3300、デスモジュールBL3175、デスモジュールN3400、デスモジュールN3600、デスモジュールVPLS2102、スミジュールBL3575MPA/X;旭化成ケミカルズ(株)製、商品名:デュラネートE−402−90T、デュラネートE−405−80T、デュラネートTPA−B80E、デュラネートMF−B60X、デュラネートMF−K60Xなどとして商業的に容易に入手することができる。
【0158】
(ブロック)ポリイソシアネート化合物の量は、特に限定されない。例えば、ビニル系重合体中の水酸基1モルあたりの(ブロック)ポリイソシアネート化合物におけるイソシアネート基の量は、接着剤層の耐加水分解性および耐絶縁性を向上させる観点から、好ましくは0.6モル以上、より好ましくは0.8モル以上であり、未反応のイソシアネート基が空気中の水分と反応することによって接着剤層が発泡したり、白化することを防止する観点から、好ましくは1.4モル以下、より好ましくは1.2モル以下である。
【0159】
エポキシ樹脂としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製、商品名:エピコート828、エピコート1001X70、エピコート815;旭電化工業(株)製、商品名:アデカレジンEP−4100などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0160】
オキサゾリン基含有樹脂としては、例えば、(株)日本触媒製、商品名:エポクロスK−2000シリーズ、エポクロスWS−500、エポクロスWS−700などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0161】
アミノプラスト樹脂は、メラミンやグアナミンなどのアミノ基を有する化合物とホルムアルデヒドとの付加縮合物であり、アミノ樹脂とも呼ばれている。
【0162】
アミノプラスト樹脂としては、例えば、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、完全アルキル型メチル化メラミン、完全アルキル型ブチル化メラミン、完全アルキル型イソブチル化メラミン、完全アルキル型混合エーテル化メラミン、メチロール基型メチル化メラミン、イミノ基型メチル化メラミン、メチロール基型混合エーテル化メラミン、イミノ基型混合エーテル化メラミンなどのメラミン樹脂;ブチル化ベンゾグアナミン、メチル/エチル混合アルキル化ベンゾグアナミン、メチル/ブチル混合アルキル化ベンゾグアナミン、ブチル化グリコールウリルなどのグアナミン樹脂などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0163】
アミノプラスト樹脂は、例えば、三井サイテック(株)製、商品名:サイメル1128、サイメル303、マイコート506、サイメル232、サイメル235、サイメル771、サイメル325、サイメル272、サイメル254、サイメル1170などとして商業的に容易に入手することができる。
【0164】
アミノプラスト樹脂の量は、特に限定されない。ビニル系重合体とアミノプラスト樹脂との固形分の質量比(ビニル系重合体/アミノプラスト樹脂)は、接着性を向上させる観点から、好ましくは6/4以上であり、接着剤層の耐加水分解性および密着性を高める観点から、好ましくは9/1以下である。
【0165】
硬化剤の量は、硬化剤の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、側鎖の末端にエチレン性不飽和二重結合を有するビニル系重合体100質量部あたり、接着剤層の耐加水分解性および耐絶縁性の観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、接着性を向上させる観点から、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。
【0166】
本発明のビニル系接着剤は、その用途や該ビニル系接着剤に用いられる硬化剤の種類などに応じて種々の硬化条件で硬化させることができる。本発明のビニル系接着剤は、常温硬化型、加熱硬化型、紫外線硬化型または電子線硬化型として用いることができる。また、硬化剤の量、その添加方法や分散方法などには、特に限定がない。例えば、側鎖の末端にエチレン性不飽和二重結合を有するビニル系重合体が1分子内に複数個の水酸基を有する場合には、当該ビニル系重合体に応じて硬化剤の量を調整したり、添加方法や分散方法を選択すればよい。
【0167】
本発明のビニル系接着剤には、必要に応じて、側鎖の末端にエチレン性不飽和二重結合を有するビニル系重合体と硬化剤との架橋反応を促進させるための硬化触媒を含有させてもよい。硬化触媒としては、特に限定がないが、例えば、(ブロック)ポリイソシアネート化合物を用いる場合には、ジブチル錫ジラウレート、第3級アミンなどが好ましい。また、アミノプラスト樹脂を用いる場合には、酸性または塩基性の硬化触媒が好ましい。
【0168】
また、本発明のビニル系接着剤には、添加剤などを含有させてもよい。添加剤としては、フィルムやコーティング膜などを形成する樹脂組成物に一般に使用されている添加剤などが挙げられる。添加剤の具体例としては、レベリング剤;コロイド状シリカ、アルミナゾルなどの無機微粒子;ポリメチルメタクリレート系の有機微粒子;消泡剤;タレ性防止剤;シランカップリング剤;チタン白、複合酸化物顔料、カーボンブラック、有機顔料、顔料中間体などの顔料;顔料分散剤;リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤などの酸化防止剤;粘性調整剤;紫外線安定剤;金属不活性化剤;過酸化物分解剤;難燃剤;補強剤;可塑剤;潤滑剤;防錆剤;蛍光性増白剤;有機系および無機系の紫外線吸収剤、無機系熱線吸収剤;有機系および無機系の防炎剤;有機系および無機系の帯電防止剤;オルソギ酸メチルなどの脱水剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0169】
なお、硬化触媒、溶媒および添加剤の量は、それらの種類などによって異なるので一概には決定することができないことから、接着剤層に要求される性質に応じて適宜調整することが好ましい。
【0170】
本発明においては、接着性を向上させる観点から、ビニル系接着剤に、例えば、ポリエステル系樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、シリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン、アミノ基含有樹脂などの熱可塑性樹脂、粘着性付与剤などを含有させてもよい。
【0171】
前記ポリエステル系樹脂としては、例えば、東洋紡績(株)製、バイロン(登録商標)103、240、500、GK110、GK640など;日本合成化学工業(株)製、ニチゴーポリエスター(登録商標)TP−220、TP−235、TP−236、TP−290などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0172】
前記変性オレフィン系樹脂としては、例えば、日本製紙ケミカル(株)製、アウローレン(登録商標)100、200、350、S−5189など;三洋化成工業(株)、ユーメックス1001、1010、2000などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0173】
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体としては、例えば、東ソー(株)製、メルセン(登録商標)H−6051、H−6410など;住友化学(株)製、スミテート(登録商標)KA−31、KA−42などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0174】
前記ポリビニルブチラール(PVB)としては、例えば、(株)クラレ製、Mowital(登録商標)シリーズB30H、B45M、B60Hなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0175】
前記シリコーン樹脂としては、例えば、信越化学工業(株)製、品番:KE−103、KE−1013などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0176】
前記塩化ビニル樹脂としては、例えば、積水化学工業(株)製、商品名:セキスイPVCTSなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0177】
前記ポリウレタンとしては、例えば、ディーアイシーバイエル重合体(株)製、商品名:デスモパンDP6580Aなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0178】
前記アミノ基含有樹脂としては、例えば、(株)日本触媒製、商品名:ポリメントNK−350、NK−380などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0179】
前記粘着性付与剤としては、ロジン系粘着性付与剤;ロジンエステル系粘着性付与剤、テルペン系粘着性付与剤、テルペンフェノール系粘着性付与剤、飽和炭化水素樹脂、クマロン系粘着性付与剤、クマロンインデン系粘着性付与剤、スチレン樹脂系粘着性付与剤、キシレン樹脂系粘着性付与剤、フェノール樹脂系粘着性付与剤、石油樹脂系粘着性付与剤などが挙げられ、これらの粘着性付与剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0180】
前記ロジン系粘着性付与剤としては、例えば、ハリマ化成(株)製、商品名:ハリエスターDS−90などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0181】
前記ロジンエステル系粘着性付与剤としては、例えば、荒川化学工業(株)製、商品名:パインクリスタルKE−100、KE−311などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0182】
前記テルペン系粘着性付与剤としては、ヤスハラケミカル(株)製、クリアロン(登録商標)M−115、P−115などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0183】
前記テルペンフェノール系粘着性付与剤としては、例えば、荒川化学工業(株)製、商品名:タノマル803Lなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0184】
前記飽和炭化水素樹脂としては、例えば、荒川化学工業(株)製、商品名:アルコンP−90、P−100などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0185】
前記スチレン樹脂系粘着性付与剤としては、例えば、三井化学(株)製、品番:FTR−6000などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0186】
粘着性付与剤の量は、所望する粘着性に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、ビニル系重合体100質量部あたり、被着体に対する粘着性を向上させる観点から、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、粘着力の低下を抑制する観点から、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下である。
【0187】
本発明のビニル系接着剤を適用することができる被着体としては、例えば、カルボン酸ビニルエステルを含有する単量体成分を重合させることによって得られた重合体からなる被着体、ポリエステルからなる被着体、ポリカーボネートからなる被着体、フッ素樹脂からなる被着体、(メタ)アクリル系樹脂からなる被着体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの被着体のなかでは、耐候性およびコストの観点から、ポリエステル基材およびフッ素樹脂基材が好ましい。
【0188】
本発明のビニル系接着剤は、カルボン酸ビニルエステルを含有する単量体成分を重合させることによって得られた重合体からなる被着体に好適に使用することができるという利点を有する。カルボン酸ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、オクチル酸ビニルなどのハロゲン原子などの置換基を有していてもよい飽和脂肪族カルボン酸ビニルエステル;シクロヘキシルカルボン酸ビニルなどの脂環式カルボン酸ビニルエステル;アジピン酸ジビニル、(メタ)アクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、ソルビン酸ビニルなどの不飽和脂肪族カルボン酸ビニルエステル;安息香酸ビニル、ケイヒ酸ビニルなどの芳香族カルボン酸ビニルエステルなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0189】
本発明のビニル系接着剤を、カルボン酸ビニルエステルを含有する単量体成分を重合させることによって得られた重合体からなる被着体に用いた場合には、本発明のビニル系接着剤と当該被着体とを強固に接着させることができるという利点がある。このように本発明のビニル系接着剤と当該被着体とを強固に接着させることができる理由は、定かではないが、おそらく本発明のビニル系接着剤に含まれている側鎖の末端にエチレン性不飽和二重結合を有するビニル系重合体のエチレン性不飽和二重結合が開裂し、当該被着体が有するエステル基と化学結合を形成することに基づくものと考えられる。
【0190】
また、本発明においては、前記した被着体以外にも、耐熱性、強度物性、電気絶縁性、耐加水分解性などを考慮して、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂などの樹脂からなる被着体を用いることができる。
【0191】
被着体の形態としては、例えば、フィルム、プレートなどをはじめ、所定形状に成形された成形体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。本発明において好適な被着体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含有する樹脂からなるフィルムなどが挙げられる。
【0192】
被着体の用途としては、例えば、太陽電池用封止材、農業用樹脂フィルム、建設土木用樹脂シート、自動車外装部品、食品用包装紙、紙の表面が樹脂コートされた積層材料、人工芝、靴底などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0193】
また、本発明のビニル系接着剤を太陽電池モジュールに用いられるバックシートに塗布することにより、当該ビニル系接着剤からなる接着剤層が形成された太陽電池モジュール用バックシートを製造することができる。この接着剤層が形成された太陽電池モジュール用バックシートにおいて、接着剤層が形成されている面は、太陽電池モジュールを構成する充填材と貼り合わされる面となる。バックシートとしては、通常、太陽電池に用いられているものであればよく、本発明は、当該バックシートの種類によって限定されるものではない。
【0194】
充填材としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのなかでは、耐候性および難燃性の観点および接着強度を高める観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましい。太陽電池モジュールを構成する充填材と貼り合わされる面に形成される本発明のビニル系接着剤からなる接着剤層の乾燥後の厚さは、接着性および耐候性の観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは1μm以上であり、脆化防止の観点から、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、より一層好ましくは30μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。
【0195】
前記基材が接着剤で貼り合わせた太陽電池モジュール用バックシートの構成を示す概略断面図を図1に示す。図1は、太陽電池モジュール用バックシートのもっとも単純な構造を有する。2つの基材1,1は、接着剤2で貼り合わされている。基材1,1は、それぞれ同じ材質からなる基材であってもよく、あるいは異なる材質からなる基材であってもよい。
【0196】
接着剤2としては、例えば、本発明のビニル系接着剤、本発明のビニル系接着剤以外のビニル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリカーボネート系接着剤などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。接着剤2は、接着性および耐候性の観点から、本発明のビニル系接着剤であることが好ましい。2つの基材1,1のうちの一方表面には、本発明のビニル系接着剤からなる接着剤層4が形成されている。
【0197】
本発明のビニル系接着剤は、太陽電池として実際に使用される環境だけでなく、太陽電池モジュールを評価する際に検討される高温多湿の雰囲気中における促進試験を行なった場合であっても、太陽電池に用いられる充填材に対する接着性および耐候性に優れ、電気出力特性を維持し、バックシートの外観不良を生じがたいという優れた効果を発現する。
【0198】
図2は、太陽電池モジュール用バックシートにバリア層3を介在させたときの他の一実施態様を示す概略断面図である。図2において、2つの基材1,1のそれぞれ一方表面には接着剤2,2が塗布されており、2つの基材1,1上に接着剤2,2によって形成されている接着剤層の間に例えばガスバリア層などのバリア層3を介在させて2つの基材1,1が一体化されており、太陽電池モジュールを構成する充填材と貼り合わされる面に本発明のビニル系接着剤からなる接着剤層4が形成されている。この実施態様の太陽電池モジュール用バックシートにおいても、本発明のビニル系接着剤からなる接着剤層4が形成されているので、太陽電池として実際に使用される環境だけでなく、太陽電池モジュールを評価する際に検討される高温多湿の雰囲気中における促進試験を行なった場合であっても、太陽電池に用いられる充填材に対する接着性および耐候性に優れ、電気出力特性を維持し、バックシートの外観不良を生じがたいという優れた効果が発現される。
【0199】
図1に示されたバックシートおよび図2に示されたバックシートのなかでは、図1に示されたバックシートは、低コスト化の観点から好ましい。
【0200】
図2に示されるガスバリア層3としては、例えば、金属箔、金属蒸着フィルム、酸化物蒸着フィルムなどの酸化物を蒸着した蒸着基材などが挙げられる。
【0201】
金属箔としては、例えば、アルミニウム箔などが挙げられる。金属蒸着フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルムやポリオレフィン系延伸フィルムにアルミニウムなどの金属を蒸着させたアルミニウム蒸着フィルムなどの金属蒸着フィルムが挙げられる。
【0202】
酸化物蒸着フィルムとしては、例えば、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、酸化錫、酸化マグネシウム、酸化インジウム、これらの複合酸化物などをポリエステルフィルムに蒸着したフィルムであって、透明でかつ酸素、水蒸気などのガスバリア性を有するものなどが挙げられる。これらのなかでは、二酸化ケイ素をポリエステルフィルムに蒸着したフィルムおよび酸化アルミニウムをポリエステルフィルムに蒸着したフィルムが好ましい。
【0203】
酸化物蒸着フィルムにおいて、好適な酸化物の蒸着層の厚さは、酸化物の種類や組成によって異なるが、一般に、均一な酸化物の蒸着層を形成させる観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上であり、柔軟性を付与し、外的応力によって亀裂が生じないようにする観点から、好ましくは300nm以下、より好ましくは150nm以下である。
【0204】
酸化物の蒸着層を形成する方法としては、例えば、真空蒸着法をはじめ、薄膜形成方法であるスパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【0205】
本発明のビニル系接着剤を被着体に塗布する前には、本発明のビニル系接着剤と被着体との接着強度を向上させる観点から、被着体の表面に有機過酸化物を塗布するか、当該有機過酸化物を本発明のビニル系接着剤に含有させるか、または当該有機過酸化物を被着体にあらかじめ含有させておくことが好ましい。特に、被着体として、カルボン酸ビニルエステルを含有する単量体成分を重合させることによって得られた重合体からなる被着体を用いた場合には、被着体の表面に有機過酸化物を塗布するか、または当該有機過酸化物を本発明のビニル系接着剤に含有させることにより、本発明のビニル系接着剤と被着体との接着強度を向上させることができる。
【0206】
有機過酸化物としては、例えば、ジベンゾイルパーオキサイド、ジイソブチルパーオキサイド、ジトリメトキシヘキサノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジコハク酸パーオキサイド、ジ(メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジイソノニルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシイソノナノエート、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、tert−ヘキシルパーオキシ-2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカルボネート、テトラメチルブチルパーオキシエチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサノエートなどのアルキルパーオキシエステル;ジn−プロピルパーオキシカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジsec−ブチルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6−ビス(tert−ブチルパーオキシカルボキシ)ヘキサン、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、ジ(sec−ブチル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシカーボネート;ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、ジ(イソプロピル)パーオキシカーボネート、ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(sec−ブチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6−ビス(tert−ブチルパーオキシカルボキシ)ヘキサン、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネートなどのジアルキルパーオキサイドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの有機過酸化物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0207】
有機過酸化物を被着体の表面に塗布する際、必要により、有機過酸化物を有機溶媒に所望の濃度となるように溶解させ、得られた溶液を被着体に塗布してもよい。有機過酸化物の被着体への塗布量(固形分量)は、当該有機過酸化物の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、0.01〜1g/m2程度であることが好ましい。また、有機過酸化物を本発明のビニル系接着剤に含有させる場合、本発明のビニル系接着剤における有機過酸化物の含有率は、当該有機過酸化物の種類などによって異なるので一概には決定することができないが、通常、0.01〜10質量%程度であることが好ましい。
【0208】
また、本発明のビニル系接着剤のガスバリア性を安定させるとともに向上させる観点から、例えば、被着物上にアクリルポリオール、イソシアネート化合物およびシラン化合物からなるアンダーコート層が設けられていてもよく、酸化物の蒸着層上にポリビニルアルコールの部分または完全ケン化物とシラン化合物とからなるオーバーコート層が設けられていてもよい。
【0209】
本発明のビニル系接着剤を、例えば、被着物上にグラビアコート、ロールコート、バーコート、リバースコートなどの方法で、乾燥後の膜厚が0.1〜20μmとなるように塗工し、その基材上に他の基材をドライラミネートなどの方法で貼り合わせた後、太陽電池モジュールを構成する充填材と貼り合わされる面にビニル系接着剤からなる接着剤層を形成させることにより、太陽電池モジュールを製造することができる。このとき、基材には、必要に応じて、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理などの接着性を向上させるための表面処理を施してもよい。例えば、基材としてフッ素樹脂からなる基材を用いる場合には、その基材にプラズマ処理などを施すことが好ましい。
【0210】
本発明のビニル系接着剤が用いられた太陽電池モジュールは、太陽電池として実際に使用される環境だけでなく、太陽電池モジュールを評価する際に検討される高温多湿の雰囲気中における促進試験を行なった場合であっても、太陽電池に用いられる充填材に対する接着性および耐候性に優れ、電気出力特性を維持し、バックシートの外観不良を生じがたいという優れた効果を奏する。
【0211】
本発明のビニル系接着剤が用いられた太陽電池モジュールは、例えば、一般に用いられている太陽電池モジュールにおいて、バックシートとして本発明のビニル系接着剤を置き換えることによって容易に構成させることができる。また、本発明の太陽電池は、例えば、一般に用いられている太陽電池において、太陽電池モジュールを本発明の太陽電池モジュールに置き換えることによって容易に構成させることができる。
【0212】
したがって、本発明のビニル系接着剤は、太陽電池用モジュールに用いられるバックシートと充填材とを貼り合わせるための太陽電池モジュール用接着剤として好適に使用することができるものである。太陽電池モジュールを構成する充填材と貼り合わされる面に、本発明のビニル系接着剤からなる接着剤層を形成されたバックシートは、太陽電池モジュール用バックシートとして好適に使用することができる。この太陽電池モジュール用バックシートを有する太陽電池用モジュールは、太陽電池に好適に使用することができる。
【実施例】
【0213】
次に本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0214】
基材または充填材として、以下のものを用いた。
<基材1>
帝人デュポンフィルム(株)製、商品名:テトロンU298W〔白色ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)フィルム〕
<基材2>
三菱樹脂(株)製、商品名:テックバリア(二酸化ケイ素蒸着PETフィルム)
<基材3>
東レ(株)製、商品名:ルミラーX10S(耐熱性オリゴマーPETフィルム)
<充填材>
三井化学ファブロ(株)製、商品名:ファストキュア、品番:RC02B(厚さが400μmのEVAシート)
【0215】
製造例1
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管および窒素ガス導入口を備えた1000ミリリットル容のフラスコ内に、酢酸ブチル200gを仕込み、窒素ガスを導入し、攪拌しながら酢酸ブチルを120℃に加熱した。このフラスコ内にシクロヘキシルメタクリレート307g、グリシジルメタクリレート17g、ブチルメタクリレート3gおよび重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート15gの混合物を4時間かけて滴下し、滴下終了後、さらに2時間加熱した。
【0216】
次に、窒素ガスおよび酸素ガスをフラスコ内に吹き込みながらフラスコの内温を110℃に下げ、アクリル酸6g、エステル化触媒としてオクテン酸亜鉛0.68gおよび重合禁止剤として4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル0.03gの混合物を30分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、さらに6時間反応させることにより、側鎖の末端にアクリロイル基を有するビニル系重合体の不揮発分の含有率が61質量%の溶液を得た。得られたビニル系重合体(以下、重合体1という)の酸価は10mgKOH/gであり、重量平均分子量は45000であった。
【0217】
製造例2
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管および窒素ガス導入口を備えた1000ミリリットル容のフラスコ内に、酢酸ブチル200gを仕込み、窒素ガスを導入し、撹拌しながら酢酸ブチルを約120℃に加熱した。このフラスコ内にシクロヘキシルメタクリレート306g、アクリル酸18g、ブチルメタクリレート3gおよび重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート15gからなる混合物を4時間かけてフラスコ内に滴下した後、さらに2時間加熱した。
【0218】
次に、窒素ガスおよび酸素ガスをフラスコ内に吹き込みながらフラスコの内温を110℃に下げ、2−ビニル−2−オキサゾリン24gを30分間かけてフラスコ内に滴下した。滴下終了後、さらに6時間反応させることにより、側鎖の末端にビニル基を有するビニル系重合体の不揮発分の含有率が62質量%の溶液を得た。得られたビニル系重合体(以下、重合体2という)の酸価は10mgKOH/gであり、重量平均分子量は47000であった。
【0219】
製造例3
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管および窒素ガス導入口を備えた500ミリリットル容のフラスコ内に、酢酸エチル60gを仕込み、窒素ガスを導入し、約80℃で還流させた。このフラスコ内にシクロヘキシルメタクリレート89g、2−エチルヘキシルアクリレート2g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート9g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5gおよび酢酸エチル40gからなる混合物を2時間かけてフラスコ内に連続的に滴下した。さらに3時間加熱することにより、重合体の不揮発分の含有率が50.1質量%の溶液を得た。得られた重合体の重量平均分子量は120000であり、水酸基価は42mgKOH/gであった。
【0220】
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管および窒素ガス導入口を備えた500ミリリットル容のフラスコ内に、前記で得られた重合体150g、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート3gを仕込み、得られた混合物に窒素ガスと空気とを2:1の体積比で混合した混合ガスを吹き込みながら攪拌を行ない、フラスコの内温を約70℃に昇温した。その後、触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ0.03gをフラスコ内に添加し、70℃で3時間反応させた後、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)により、イソシアネート基に由来する波数2273cm−1におけるピークの消失を確認し、側鎖の末端にアクリロイル基を有するビニル系重合体の不揮発分の含有率が49.8質量%の溶液を得た。得られたビニル系重合体(以下、重合体3という)の重量平均分子量は110000であり、水酸基価は21mgKOH/gであった。
【0221】
製造例4
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管および窒素ガス導入口を備えた500ミリリットル容のフラスコ内に、酢酸エチル60gを仕込み、窒素ガスを導入し、約80℃で還流させた。このフラスコ内にシクロヘキシルメタクリレート93g、2−エチルヘキシルアクリレート2g、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート5g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5gおよび酢酸エチル40gからなる混合物を2時間かけてフラスコ内に連続的に滴下した。さらに3時間加熱することにより、重合体の不揮発分の含有率が50.0質量%の溶液を得た。得られた重合体の重量平均分子量は130000であった。
【0222】
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管および窒素ガス導入口を備えた500ミリリットル容のフラスコ内に、前記で得られた重合体150gおよび2−ヒドロキシエチルメタクリレート5gを仕込み、得られた混合物に窒素ガスと空気とを2:1の体積比で混合した混合ガスを吹き込みながら攪拌を行ない、フラスコの内温を約70℃に昇温した。その後、触媒としてジラウリン酸ジブチルスズ0.03gをフラスコ内に添加し、70℃で3時間反応させた後、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)により、イソシアネート基に由来する波数2273cm−1におけるピークの消失を確認し、側鎖の末端にアクリロイル基を有するビニル系重合体の不揮発分の含有率が49.9質量%の溶液を得た。得られたビニル系重合体(以下、重合体4という)の重量平均分子量は120000であった。
【0223】
製造例5
攪拌機、温度計、滴下ラインおよび窒素/空気混合ガス導入管を取り付けた4つ口フラスコ内に酢酸エチル150gを添加し、50℃に昇温した。昇温後、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル〔(株)日本触媒製、品番:VEEA〕50gおよび2−エチルヘキシルビニルエーテル150gの混合物と、酢酸エチル25gおよびリンタングステン酸13mgの混合物とを、それぞれ3時間かけてフラスコ内に滴下し、重合を行なった。その後、トリエチルアミンをフラスコ内に添加することにより、重合反応を終了した。得られた反応混合物におけるビニル系重合体(以下、重合体5という)の不揮発分の含有率は53質量%であり、重合体5の重量平均分子量は8000であった。
【0224】
製造例6
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管および窒素ガス導入口を備えた500ミリリットル容のフラスコ内に、酢酸エチル60gを仕込み、窒素ガスを導入し、約80℃で還流させた。このフラスコ内にシクロヘキシルメタクリレート89g、2−エチルヘキシルアクリレート2g、2−ヒドロキシエチルメタクリレート9g、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5gおよび酢酸エチル40gからなる混合物を2時間かけてフラスコ内に連続的に滴下した。さらに3時間加熱することにより、ビニル系重合体の不揮発分が50.1質量%の溶液を得た。得られたビニル系重合体(以下、重合体6という)の重量平均分子量は120000であり、水酸基価は42mgKOH/gであった。
【0225】
実施例1
製造例1で得られた重合体1の不揮発分100質量部あたりポリイソシアネート硬化剤〔住化バイエルウレタン(株)製、商品名:デスモジュールN3200〕2質量部の割合で、重合体1およびポリイソシアネート硬化剤を容器内に入れ、不揮発分濃度が10質量%となるように酢酸エチルで希釈することにより、接着剤1を得た。
【0226】
実施例2
製造例2で得られた重合体2の不揮発分100質量部あたりポリイソシアネート硬化剤〔住化バイエルウレタン(株)製、商品名:デスモジュールN3200〕2質量部の割合で、重合体2およびポリイソシアネート硬化剤を容器内に入れ、不揮発分濃度が10質量%となるように酢酸エチルで希釈することにより、接着剤2を得た。
【0227】
実施例3
製造例3で得られた重合体3の不揮発分量100質量部あたりポリイソシアネート硬化剤〔住化バイエルウレタン(株)製、商品名:デスモジュールN3200〕4質量部の割合で、重合体3およびポリイソシアネート硬化剤を容器内に入れ、不揮発分濃度が10質量%となるように酢酸エチルで希釈することにより、接着剤3を得た。
【0228】
実施例4
製造例4で得られた重合体4を容器内に入れ、不揮発分濃度が10質量%となるように酢酸エチルで希釈することにより、接着剤4を得た。
【0229】
実施例5
製造例5で得られた重合体5を容器内に入れ、不揮発分濃度が10質量%となるように酢酸エチルで希釈することにより、接着剤5を得た。
【0230】
比較例1
製造例6で得られた重合体4の不揮発分量100質量部あたりポリイソシアネート硬化剤〔住化バイエルウレタン(株)製、商品名:デスモジュールN3200〕7質量部の割合で、重合体4およびポリイソシアネート硬化剤を容器内に入れ、不揮発分濃度が10質量%となるまで酢酸エチルで希釈することにより、接着剤6を得た。
【0231】
実験例〔太陽電池モジュール用バックシートの作製〕
表1に示すように接着剤1〜6のうちいずれかを用い、その接着剤を乾燥後の塗工量が1g/m2となるように基材1に塗布し、100℃で1分間乾燥させることにより、接着剤層を形成させた。その後、基材1〜3を充填材側から順に、基材1の接着剤層が形成されていない面が接着剤Xと重ね合わされるようにして、基材1/接着剤X/基材2/接着剤X/基材3の順に重ね合わせ、ドライラミネート法によって積層することにより、積層体を得た。得られた積層体を50℃で5日間養生することにより、太陽電池モジュール用バックシートを作製した。
【0232】
なお、前記接着剤Xとして、ポリエステル系接着剤の主剤〔大日本インキ化学工業(株)製、品番:LX703VL〕とポリイソシアネート硬化剤〔大日本インキ化学工業(株)製、品番:KE90〕を用い、接着剤Xの乾燥後の塗工量が10g/m2となるように調整した。
【0233】
次に、前記で得られた太陽電池モジュール用バックシートの物性を以下の方法により調べた。その結果を表1に示す。
【0234】
〔耐ブロッキング性〕
前記で得られた太陽電池モジュール用バックシートを幅5cm、長さ20cmに裁断し、裁断されたシートの接着層面が形成されている面と未処理の耐熱性オリゴマーPETフィルム〔東レ(株)製、商品名:ルミラーX10S〕(以下、未処理のPETフィルムという)とを重ね合わせ、得られた積層体の上に質量が5kgの錘を載せ、この積層体を温度40℃のオーブン内に入れて24時間保持した。その後、オーブンから積層体を取り出し、積層体の接着剤層を目視により観察し、耐ブロッキング性を以下の評価基準に基づいて評価した。
【0235】
(評価基準)
○:接着剤層が未処理のPETフィルムに転写されていない(合格)。
×:接着剤層が未処理のPETフィルムに転写されている(不合格)。
【0236】
〔接着性〕
前記で得られたバックシートを幅60mm、長さ200mmに裁断したもの1枚と、EVAシート〔三井化学ファブロ(株)製、品番:RC02B、厚さ:400μm〕を幅60mm、長さ90mmに裁断したもの1枚と、強化ガラス(幅:10mm、長さ:100mm、厚さ:3mm)とを用意した。
【0237】
太陽電池モジュール用バックシートの接着性を評価する面がEVAシートと接するように、バックシート/EVAシート/強化ガラス板の順に重ね合わせた。得られた積層体を5N/cm2の加圧下で150℃の温度で3分間真空引きをし、150℃に加温したオーブン中で8分間保管し、架橋反応を進行させることにより、サンプルを得た。
【0238】
温度が23℃で相対湿度が65%の雰囲気中で、前記で得られたサンプルの未接着部の強化ガラス板とEVAシートとをオートグラフ〔(株)島津製作所製〕の上下のクリップにそれぞれ挟み、180度剥離法により、幅25mmのクロスヘッド速度300mm/minにおける剥離強度(初期値)を測定し、以下の評価基準に基づいて接着性を評価した。
【0239】
さらに、前記剥離強度を測定したサンプルとは別のサンプルを温度が85℃で相対湿度が85%の雰囲気中で1000時間または2000時間放置した後、前記と同じ条件で剥離強度を測定し、以下の評価基準に基づいて接着性を評価した。
【0240】
(評価基準)
EX:剥離強度が80N/10mm以上(接着性に著しく優れている)
A:剥離強度が40N/10mm以上、80N/10mm未満(接着性に優れている)
B:剥離強度が20N/10mm以上、40N/10mm未満(接着性が良好)
C:剥離強度が10N/10mm以上、20N/10mm未満(接着性がやや良好)
D:剥離強度が10N/10mm未満(接着性が不良)(不合格)
【0241】
〔耐候性、電気出力特性およびバックシートの外観〕
(1)耐候性
A4サイズの強化ガラス板上に、太陽電池モジュール用充填材として前記強化ガラス板と同じA4サイズのEVAシート〔三井化学ファブロ(株)製、品番:RC02B、厚さ:400μm〕で挟まれた多結晶系シリコン製の太陽電池セルを載せた後、さらにその上に前記で得られたバックシートをその接着剤層がEVAシートと接するように設けることにより、積層体を得た。
【0242】
次に、前記で得られた各積層体を5N/cmの加圧下で150℃の温度で3分間真空引きをした後、150℃に加温したオーブン中で8分間保管し、架橋反応を進行させた。その後、アルミニウムフレームで枠組みを行なうことにより、サンプルを作製した。
【0243】
前記サンプルをアイスーパーUVテスター〔岩崎電気(株)製、品番:SUV−W151〕を用い、100mW/cmで温度60℃、相対湿度50%の条件で紫外線を100時間または150時間照射することにより、耐候性促進試験を行なった。
【0244】
次に、オートグラフ〔(株)島津製作所製〕を用いて180度剥離法によりクロスヘッド速度300mm/minにおける剥離強度を測定し、式:
〔保持率(%)〕
=〔(促進試験後の剥離強度)÷(促進試験前の剥離強度)〕×100
に基づいて保持率を求め、耐候性を以下の評価基準に基づいて評価した。
【0245】
(評価基準)
○:保持率が50%以上であるもの(合格)
×:保持率が50%未満であるもの(不合格)
【0246】
(2)電気出力特性
前記耐候性促進試験前後のサンプルの最大出力をJIS C8913に準じて測定し、式:
〔最大出力の変化率(%)〕
=〔(促進試験後の最大出力)÷(促進試験前の最大出力)〕×100
に基づいて最大出力の変化率を求め、電気出力特性を以下の評価基準に基づいて評価した。
【0247】
(評価基準)
〇:最大出力の変化率が95%以上(合格)
△:最大出力の変化率が90%以上95%未満(合格)
×:最大出力の変化率が90%未満(不合格)
【0248】
(3)バックシートの外観
前記耐候性促進試験後のサンプルのバックシートの外観に浮きなどがないかどうかを目視で観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
【0249】
(評価基準)
〇:異常なし(合格)
×:EVAシートと基材と間で浮きがあり(不合格)
【0250】
【表1】

【0251】
表1に示された結果から、各実施例で得られたビニル系接着剤は、いずれも、耐ブロッキング性に優れ、比較例1で得られたビニル系接着剤と対比して、太陽電池として実際に使用される環境だけでなく、太陽電池モジュールを評価する際に検討される高温多湿の雰囲気中における促進試験を行なった場合であっても、太陽電池に用いられる充填材に対する接着性および耐候性に優れ、電気出力特性を維持し、バックシートの外観に優れていることがわかる。したがって、各実施例で得られたビニル系接着剤は、いずれも、太陽電池モジュールおよび太陽電池に好適に使用することができることがわかる。
【符号の説明】
【0252】
1:基材
2:接着剤
3:バリア層
4:接着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル系重合体を含有するビニル系接着剤であって、前記ビニル系重合体が側鎖の末端にエチレン性不飽和二重結合を有するビニル系重合体であることを特徴とするビニル系接着剤。
【請求項2】
側鎖の末端にエチレン性不飽和二重結合を有するビニル系重合体が、エポキシ基含有単量体およびオキサゾリン基含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体を含有する単量体成分を重合させてなる重合体とカルボキシル基および/または水酸基を有する単量体とを反応させてなるビニル系重合体、カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体を含有する単量体成分を重合させてなる重合体とエポキシ基含有単量体およびオキサゾリン基含有単量体からなる群より選ばれた少なくとも1種の単量体とを反応させてなるビニル系重合体、カルボキシル基および/または水酸基を有する単量体を含有する単量体成分を重合させてなる重合体とイソシアネート基含有単量体とを反応させてなるビニル系重合体、イソシアネート基含有単量体を含有する単量体成分を重合させてなる重合体とカルボキシル基および/または水酸基を有する単量体とを反応させてなるビニル系重合体、および(メタ)アクリル酸(ビニロキシアルコキシ)アルキルを含有する単量体成分を重合させてなるビニル系重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種のビニル系重合体である請求項1に記載のビニル系接着剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載のビニル系接着剤からなる接着剤層が形成されてなる太陽電池モジュール用バックシート。
【請求項4】
請求項3に記載の太陽電池モジュール用バックシートを有することを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項5】
請求項4に記載の太陽電池モジュールを有することを特徴とする太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−71948(P2013−71948A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209981(P2011−209981)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】