説明

ビーム状プラズマ源

【課題】基板の処理に好適なプラズマ源を提供すること。
【解決手段】基板を処理するための直線形状のプラズマ源であって、 内部にマグネトロンプラズマが生成される放電キャビティであるとともに、内面上に配置されたカソード電極(16)上にマグネトロンプラズマが生成され、アノード電極が放電キャビティの外部に配置されている、放電キャビティと;放電キャビティの外部に配置された複数の磁石(1,2)であるとともに、放電キャビティ内に無磁界ポイントを形成する、複数の磁石と;を具備し、処理の一様性が、プラズマに対して基板を移動させることにより、あるいは、基板に対してプラズマを移動させることにより、得られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ源およびイオン源に関するものであり、例えばプラズマ処理やプラズマによって増強された化学気相蒸着法(PECVD)やプラズマエッチングといったような工業プロセスにおいて使用可能であり、また、航空産業における電気的推進デバイスとして使用可能である。
【背景技術】
【0002】
プラズマ源およびイオン源は、以下のような様々なプロセスに有効に適用される。すなわち、プラズマによって増強された化学気相蒸着法(PECVD)や、反応性イオンエッチングや、プラズマによる表面改質や、プラズマによるおよび表面クリーニングや、蒸着フィルムまたはスパッタリングフィルムにおける密度の増大化や、反応的蒸発プロセスまたはスパッタリングプロセスを補助。興味がもたれているのは、例えばフレキシブルなウェブやプラズマテレビや建築用ガラスといったような大面積基板に対するこれらプロセスの応用である。
【0003】
いくつかのプラズマ源およびイオン源が、市販されており、多くのものが開示されている。市販のプラズマ源およびイオン源には、以下のものがある。すなわち、ホローカソードプラズマ源、グリッドを備えたイオン源、エンドホールイオン源、拡張型加速チャンネルタイプやアノード層タイプといったような閉塞ドリフトタイプのイオン源、および、例えば Leybold Optics社のものといったような改良されたアノードタイプの先進型プラズマ源。例えば半導体や光学フィルタといったような小さな基板に対してはうまく適用されているけれども、大面積基板の処理に対する応用に対しては、それほど効果的ではない。これは、主として、ビーム生成および中性化に関して、一様かつ線形の電子源ではなく、ポイント状の電子源の使用のためである。例えばフィラメントや加熱した低い仕事関数材料やおよびホローカソードといったようなポイント状電子源技術は、直線的に拡張することが困難である。したがって、このようなポイント状電子源に依存するイオン源およびプラズマ源は、大面積基板の使用に際して、一様かつ線形のビームを形成することが困難である。
【0004】
したがって、大面積基板にまで容易に拡張し得るような一様かつ線形のプラズマ源またはイオン源が、要望されている。この理想的な線形のプラズマ源は、例えばフィラメントやLaB6といったような繊細で高価な電子源を必要とするべきではなく、広範なプロセス圧力範囲にわたった動作可能であるべきである。このプラズマ源は、また、物理的におよび経済的にコンパクトであるべきであり、また、稠密で効率的なプラズマビームを生成すべきである。
【0005】
従来技術によるプラズマ源は、一般に、2つの技術カテゴリーのうちの1つを利用している。そのような第1のカテゴリーは、マグネトロンスパッタリングプラズマ源であり、より詳細には、不均衡なマグネトロンプラズマ源と、ホローカソードスパッタリングプラズマ源と、である。第2のカテゴリーは、プラズマ源およびイオン源を備えている。
【0006】
『不均衡なマグネトロンプラズマ源』
Window 氏および Savvides氏は、複数の文献において、不均衡なマグネトロン(『UBM』)スパッタカソードという概念を提案した。これら文献においては、タイプIIの不均衡なマグネトロンが開示されており、このマグネトロンは、カソードからスパッタリングされたフラックスをイオン化し得るという能力を有している。無磁界領域およびミラー磁界による電子の閉込という基本的動作原理が開示されている。
【0007】
図12は、Window 氏および Savvides氏によって提案されたプレーナターゲットタイプII UBMを示している。Window 氏および Harding 氏は、その後、中央の磁性材料が無く、高透磁率の磁極が無いような、タイプII UBMを提案した。図12においては、磁石(200)は、長方形または円形の分流プレート(201)の周囲近傍に配置されている。中央の軟鉄製磁極(207)は、分流プレートの中央に配置されている。磁気構成が『不均衡』であることのために、無磁界ポイント(203)が、マグネトロントラップ(205)の上方に形成される。また、無磁界ポイントの上方の増強された磁気力線は、ミラー閉込領域(208)を形成する。動作時には、マグネトロンプラズマ(204)は、ターゲット(206)をスパッタリングする。マグネトロンプラズマから放出される電子は、ミラー閉込領域(208)内に拘束され、第2の可視のプラズマ領域を形成する。
【0008】
文献に記載されているように、ミラープラズマ領域は、ターゲットからのスパッタフラックスのかなりの部分をイオン化する。ミラー領域内で生成しされたプラズマ(208)が、また、基板(209)に対して衝突し、スパッタフィルタの成長を有用に衝撃する。プラズマ(208)は、例えばPECVDやプラズマ処理等といったようなプラズマプロセスのために使用することができる。これらプラズマプロセスにおける使用の際には、ターゲット(206)からのスパッタフラックスは、必ずしも望ましいものではない。UBMは、典型的には、マグネトロンスパッタリングおよびPECVD応用の場合には、mTorrという圧力範囲で動作しなければならず、露出したターゲット(206)は、PECVDの構成要素の凝集によって、すぐに汚染される。
【0009】
『ホローカソードスパッタ源』
ホローカソードという用語は、従来技術においては、様々なスパッタ源について記述するために使用されている。米国特許第4,915,805号明細書は、マグネトロンによって閉じ込められたホローカソードを開示しており、この場合、基板は、キャビティの中心を通過する。米国特許第4,933,057号明細書は、マグネトロンによって閉じ込められたホローカソードを開示しており、この場合、アノードが、プロセスチャンバ内の開口に対向して配置されている。この位置のアノードは、電子が、まず最初に放電キャビティを通過する必要なく、アノードに到達することを可能とする。放電キャビティ内には、ガスは、導入されず、放電キャビティは、プロセスチャンバに対して開口を介して隔離されている。
【0010】
米国特許第5,073,245号明細書は、プロセスチャンバから離間したキャビティ内のスパッタ源を開示している。磁界は、キャビティシリンダの軸に沿って延在し、マグネトロンタイプの閉込領域がキャビティシリンダ壁の内周回りに形成されることが、報告されている。プロセスチャンバに対する開口は、マグネトロン経路における不連続を形成する。アノードは、各端部のところにおいて、キャビティの内部に配置されている。米国特許第5,334,302号明細書は、複数のマグネトロンカソードキャビティを備えたスパッタリング装置を開示している。プロセスガスは、各キャビティの底部へと導入される。キャビティはプロセスチャンバに対して開口している。
【0011】
米国特許第5,482,611号明細書は、カップ形状のあるいは環状のカソードを備えた不均衡なマグネトロンスパッタカソードを開示している。無磁界ポイントが、カソード開口に隣接したところに、生成される。放電キャビティは、プロセスチャンバに対して開口している。この文献の第6図においては、カソード開口上に、個別のマイクロ波アプリケータが設置されている。カソードから離間しているものの、アプリケータ開口の寸法は、カソードキャビティと同じかあるいはそれ以上である。一実施形態においては、プロセスガスは、プロセスチャンバ開口に対向しつつ、キャビティの底部のところにおいて、キャビティへと導入される。
【0012】
米国特許第5,908,602号明細書は、線形のアーク放電源を提案している。放電キャビティは、マグネトロン閉込プラズマ領域を備えておらず、放電キャビティの開口は、プロセスチャンバに対して露出されている。米国特許第6,444,100号明細書は、ボックス形状のホローカソードスパッタ源を開示している。このボックスの底部は、浮遊電位とされているか、あるいは、カソードに対して接続されているか、のどちらかである。ボックスは、プロセスチャンバに対して開口しており、プロセスガスは、プロセスチャンバ開口を介することのみによってしか、ボックスへと導入することはできない。
【0013】
『他のプラズマ源』
米国特許第6,444,945号明細書は、両極性のプラズマ源、プラズマシート源、および、両極性プラズマ源を利用した流出セルと、を開示している。好ましい実施形態においては、マグネトロンカソードプラズマは、形成されることがなく、ホローカソードキャビティ開口は、プロセスチャンバに対して露出されている。米国特許第4,871,918号明細書は、ホローアノード型のイオン電子源を開示している。このイオン電子源は、プロセスチャンバに向けて狭くなっていくような開口導管を有した放電キャビティを備えている。放電キャビティ内には、マグネトロン閉込領域も、また、無磁界ポイントも、存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第4,915,805号明細書
【特許文献2】米国特許第4,933,057号明細書
【特許文献3】米国特許第5,073,245号明細書
【特許文献4】米国特許第5,334,302号明細書
【特許文献5】米国特許第5,482,611号明細書
【特許文献6】米国特許第5,908,602号明細書
【特許文献7】米国特許第6,444,100号明細書
【特許文献8】米国特許第6,444,945号明細書
【特許文献9】米国特許第4,871,918号明細書
【特許文献10】米国特許第6,103,074号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
米国特許第6,103,074号明細書は、カスプ磁界を実現したカソードアーク蒸着方法および装置を開示している。放電キャビティ内には、マグネトロン閉込領域が存在せず、キャビティは、プロセスチャンバに対して開口している。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本出願人によるこの発明は、プラズマ源を備えている。本出願人によるプラズマ源は、第1幅を有しているとともに、頂部と壁部とを備えて構成された、放電キャビティと;頂部に配置され、かつ、頂部から外向きに延出されているとともに、頂部を貫通しかつ放電キャビティ内にまで延出されている開口が形成された、ノズルであり、開口が第2幅を有し、この第2幅が第1幅よりも小さなものとされた、ノズルと;を具備している。
【0017】
本出願人によるプラズマ源は、さらに、電源と;放電キャビティ内にイオン化可能ガスを導入し得るよう放電キャビティ内に配置された導管と;電源に対して接続されたカソード電極と;を具備し、カソード電極は、放電キャビティ内において、少なくとも1つのマグネトロン放電領域を支持し得るものとされている。本出願人によるプラズマ源は、さらに、壁部に隣接して配置された複数の磁石であるとともに、放電キャビティ内に無磁界ポイントを形成するものとされた、複数の磁石を具備している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】本出願人によるビーム状プラズマ源を示す断面図である。
【図1B】本出願人によるビーム状プラズマ源を示す断面図である。
【図2】図1の装置を示す平面図である。
【図3】図1の装置を示す斜視図である。
【図4】本出願人によるビーム状プラズマ源を示す図であって、ガス導入口が個別とされていること、ビームが基板に向けて案内されていること、を示している。
【図5】本出願人によるビーム状プラズマ源を示す図であって、電子ビーム蒸着法による反応性成膜を補助している様子を示している。
【図6】本出願人によるビーム状プラズマ源を示す図であって、プラネット型/ボックス型のコーティング法に適用されている様子を示している。
【図7】本出願人によるビーム状プラズマ源を示す図であって、プラズマが、バイアスされつつ並進移動している基板に向けて案内されている様子を示している。
【図8】磁極磁石を両サイドに配置した2つのビーム状プラズマ源を、互いに対向して配置した様子を示す図である。
【図9】本出願人によるこの発明の電磁石バージョンを示す断面図であって、宇宙用の推進手段として適用されている様子を示している。
【図10】本発明の見地に基づき、イオン源を増強する電源構成を備えた実施形態を示す図である。
【図11】本出願人によるビーム状プラズマ源を示す図であって、鉛直方向を向いた磁石と、プレーナ型カソードと、を備えている。
【図12】従来技術による不均衡なマグネトロンスパッタリング源を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、ビーム源(24)を示す断面図であって、このビーム源(24)は、ノズル(6)から外向きに突出する稠密なプラズマ(9)のビームを生成する。開口(101)が、ノズル(6)から放電キャビティ(26)内へと延在している。放電キャビティ(26)は、第1幅(110)を有している。開口(101)は、第2幅(115)を有している。ここで、第2幅(115)は、第1幅(110)よりも小さいものとされている。中心線(120)は、第1幅(110)の中央を通過している。
【0020】
ある実施形態においては、放電キャビティ(26)は、長方形横断面を有した平行六面体を備えている。このような実施形態においては、第1幅(110)は、その長方形横断面のうちの、長い方の辺の長さとされる。ある実施形態においては、放電キャビティ(26)は、正方形横断面を有した平行六面体を備えている。このような実施形態においては、第1幅(110)は、その正方形横断面の一辺の長さとされる。ある実施形態においては、放電キャビティ(26)は、円形横断面を有した円筒形状を備えている。このような実施形態においては、第1幅(110)は、その円形横断面の直径とされる。
【0021】
ある実施形態においては、開口(101)は、長方形横断面を有している。このような実施形態においては、第2幅(115)は、その長方形横断面のうちの、長い方の辺の長さとされる。ある実施形態においては、開口(101)は、正方形横断面を有している。このような実施形態においては、第2幅(115)は、その正方形横断面の一辺の長さとされる。ある実施形態においては、開口(101)は、円形横断面を有している。このような実施形態においては、第2幅(115)は、その円形横断面の直径とされる。
【0022】
ビーム源(24)は、図示していないプロセスチャンバの中に配置される。そのプロセスチャンバは、減圧下に維持される。磁石(1,2)は、それぞれのS極を軟鋼製の分流器(3)によって支持された状態で、互いに対向して配置されている。『互いに対向して配置』という用語に関しては、本出願人は、磁石(1)の第1磁極性を有した磁極が、磁石(2)の同じ磁極性を有した磁極に対して、対向関係にあることを意味している。磁石(1,2)は、外向きに案内された複数の磁気力線(18)および内向きに案内された複数の磁気力線(19)から構成されたカスプ磁界を生成する。内向きの磁気力線(19)は、絶縁体(15)およびライナー(16)を通過し、分流器(10)を中心合わせする。カスプ磁界は、放電キャビティ(26)の内部に、無磁界ポイント(25)を形成する。ある実施形態においては、無磁界ポイント(25)は、中心線(120)に沿って配置される。図示されていない端部磁石および磁石(1,2)に加えて、カスプ磁界(18,19)は、領域(9,8)において、無限の電子トラップを形成する。分流器(10)は、分流器(11)に対して連結されており、これら両分流器は、軟鋼から形成されている。ライナー(16)は、熱導電性を改良し得るよう、ブロック(12)に対してろう付けされている。
【0023】
ブロック(12)は、図示されてない配管に対して接続された穴(13)を介して、水冷される。分流器(11)は、ブロック(12)に対して固定される。ライナー(16)と、ブロック(12)と、分流器(10,11)と、からなるアセンブリは、ビーム源の一方の電極を形成する。第2の電極は、分流器ボックス(3)とカバー(5)とによって、形成されている。磁石は、セラミックタイプのものであって、絶縁体(14,15)によって、ライナー(16)およびブロック(12)から隔離されている。ある実施形態においては、絶縁体(14,15)は、1つまたは複数のフッ素系ポリマーから形成される。他の実施形態においては、絶縁体(14,15)は、電気絶縁性のセラミック材料から形成される。
【0024】
ギャップ(100)は、ボックス(3)を、ブロック(12)および分流器(11)から絶縁している。これにより、ギャップ中のプラズマを除去することができる。ある実施形態においては、ギャップ(100)は、約3mmである。ガス(27)は、ボックス(3)の中のポート(4)を通ってビーム源内へと導入される。ガス(27)は、ボックスとブロック(12)との間のギャップ(100)を介して、ブロック(12)の周縁領域を流通する。その後、ガス(27)は、ボックス(3)およびカバー(5)に配置された複数のグルーブ(22)を通して流通する。ガス(27)は、カバー(5)とライナー(16)との間において、放電キャビティ(26)内へと導入される。カバー(5)は、ノズル(6)を備えている。このノズル(6)を通して、ガス(27)が、プロセスチャンバ内へと流入する。カバー(5)とノズル(6)とは、ろう付けチューブ(7)を使用して水冷されている。電源(17)の一方の電極が、カバー(5)と、ボックス(3)と、チャンバグラウンドと、に対して接続されている。
【0025】
電源(17)の他の電極は、内部ブロックアセンブリ(12)に対して接続されている、すなわち、ライナー(16)と、分流器(10,11)と、に対して接続されている。ブロック(12)に対しての電気的な接続は、水冷式の導出チューブを使用したボックス(3)によって行われている(チューブは、図示されていない)。ある実施形態においては、ライナー(16)は、カソード電極を備えている。ある実施形態においては、ライナー(16)は、約1以上といったような二次電子放出係数(δ)を有した材料から形成される。
【0026】
ある実施形態においては、電源(17)は、標準的なスパッタリングマグネトロンタイプのものとされる。ある実施形態においては、電源(17)は、パルス型のDC電源とされる。ある実施形態においては、電源(17)は、中程度の周波数のAC電源とされる。ある実施形態においては、電源(17)は、RF電源とされる。
【0027】
図1に図示された実施形態においては、DC電源(17)が使用されており、ブロック(12)に対して、マイナス電極が接続されている。ガス(27)は、放電キャビティ(26)内へと導入され、電源(17)は、オンとされた際には、プラズマが、ビーム源の領域(8,9)において、点火される。領域(8)は、プラズマ中に収容された無端ホール電流であって、ビーム源の長さを拡張させる。図1の断面図に示すように、領域(8)においては、2つのローブが、動作中のビーム源の内部において、プラズマの拡張ドーナツとして現われる。この領域(8)は、カバー(5)からの電界がビーム源の内部へと磁気力線(19)を超えて下方へと侵入した場合に、形成される。電子がこれら電気力線に追従しようとすることにより、それら電子は、磁気力線(19)によって拘束される。
【0028】
電子は、電子を含有しているライナー(16)表面と分流器(10)表面と磁気力線(19)とから形成された静電気学的なかつ磁気的な閉込領域から逃げ出すことはできない。その結果、プラズマ領域(8)は、放電キャビティ(26)の内部に閉じ込められる。領域(9)は、プラズマ領域(8)の結果として、形成され維持される。磁気力線(18)とカバー(5)とノズル(6)との構成により、プラズマ領域(8)によって形成された電子は、カバー(5)とノズル(6)とからなるアノード電極に到達することが、防止される。磁気力線(18)は、ライナー(16)から外向きに通過するとともに、収束し、ノズル(6)を通って外向きに通過する。
【0029】
電子が、磁気力線を横断することができないことにより、カバー(5)とノズル(6)とプラズマ領域(8)との間の電気回路は、単に、ノズル(6)から導出されて、磁気力線(18)による閉込領域から抜け出すことによって、完成することができる。プラズマ(9)は、電子がノズル(6)を通して磁気力線(18)に沿って逃げようとしたときに、複数の磁気力線(18)がノズル(6)に収束する結果としての磁気ミラーに直面することにより、形成される。このミラー領域は、電子の一部を反射し、プラズマ(9)内において、第2閉込領域(39)を形成する。
【0030】
領域(39)も、また、閉じたドリフト磁気ボトルであって、電子は、ビーム源の一端にまで、下向きにサイクロイド的に移動し、ビーム源の他端へと戻ってくる。電子導出脱出経路を形成することに加えて、ノズル(6)は、また、放電キャビティ(26)からプロセスチャンバ内を流れるガス(27)に関しての、唯一のただ一つの導出経路を形成する。プロセスガス(27)は、プラズマ領域(39)を必然的に通過する。プラズマ領域(39)においては、多くの割合のガス(27)の高い割合が、イオン化され、その後、ノズル(6)から導出される。領域(39)におけるのガス(27)と電子との合流は、稠密なプラズマ(9)を形成し、この稠密なプラズマ(9)が、ノズル(6)から外向きに導出され、プロセスチャンバ内へと導入される。ビーム源(24)を動作時に見た場合には、プラズマ(39)およびプラズマ(9)は、単一のプラズマのように見える。ノズル(6)の内径は、放電キャビティ(26)の内径よりも、小さい。ノズル(6)をより狭くすることによって、ライナー(16)からスパッタリングされてプロセスチャンバへと到達する材料の量を低減させ得るだけでなく、プロセスガス(27)は、放電キャビティ(26)から出るためには、プラズマ領域(39)を通過しなければならない。
【0031】
図2は、カバー(5)を取り外した状態で、ビーム源(24)を示す平面図である。端部磁石(20,21)が、側面磁石(1,2)と協働して、閉じたドリフト磁気力線(18,19)を形成している。図2においては、1つの磁気力線(18)だけが図示されている。図2においては、ボックス(3)と、ライナー(16)と、絶縁体(15)と、磁石(1,2、20,21)の下方に配置された水冷ブロック(12)と、が示されている。ガス(27)のために、ボックス(3)に形成された複数のグルーブ(22)も、また、図示されている。プラズマ(9)は、中心のところにおいて、より暗い部分として図示されている。より明るい部分は、プラズマ領域(39)に対応している。
【0032】
図3は、ビーム源(24)を示す斜視図である。図3においては、水冷配管は、図示されていない。上述したように、水冷配管は、電極に対しての電気的接続を行うのに有用である。図3に図示された実施形態においては、プラズマ(9)は、ノズル(6)からプロセスチャンバ内へと、外向きに噴出している。図示のように、プラズマ(9)は、ノズル(6)から外向きに延出するような狭い一様なビームを形成する。
【0033】
当業者であれば、ビーム源(24)を、様々な形状やサイズやスケールのものとし得ること、および、様々な材料から形成し得ることは、理解されるであろう。例えば、一実施形態においては、ビーム源(24)は、以下のようなものとして構築される。:磁石(1,2)は、セラミックタイプのものとされ、約25.4mm(約1インチ)幅×約101.6mm(約4インチ)長さ×約25.4mm(約1インチ)厚さのものとされる。磁石(20,21)は、約25.4mm(約1インチ)幅×約50.8mm(約2インチ)長さ×約25.4mm(約1インチ)厚さのものとされる。ブロック(12)は、真鍮から形成される。カバー(5)およびノズル(6)は、銅から形成される。ノズル(6)の開口は、約19.1mm(約0.75インチ)幅×約19.1mm(約0.75インチ)深さ×約88.9mm(約3インチ)長さのものとされる。分流器(10)および分流器(11)は、軟鋼から形成される。ライナー(16)は、銅シートから形成され、楕円形状へと曲げられる。この楕円形状は、長軸の長さが約38.1mm(約1.5インチ)とされる。当業者であれば、ビーム源(24)の寸法および材料に関し、本出願人によるこの発明の範囲を逸脱することなく、様々な変形や修正が可能であることは、理解されるであろう。
【0034】
ビーム源(24)、および、このビーム源によって生成されたプラズマ(9)は、上述したビーム源の場合には、以下のような、多様に有効な特性を有している。
【0035】
プラズマ(9)は、非常に稠密なものであり、300Vで1kWというDC電源出力を使用した場合には、1cm あたりにつき1012個を超えるイオン密度を有している。イオン飽和電流は、与えられたビーム源寸法およびこれらの電源セッティングにおいて、100mA以上であることが測定された。電流プローブ表面は、プラズマ(9)をブロックしているノズル(6)の端部を超えて5cmのところに配置された。プローブを接地した状態での電子電流は、1A以上であった。
【0036】
プラズマ(9)は、周縁部分の端部効果を除いては、ビーム源の長さにわたって一様である。このことは、大部分の用途において要求されるように、成膜や処理やエッチングの一様性が要求される場合には、重要である。3m以上の基板幅を、一様に処理することができる。動作時には、プラズマ(9)は、ノズル(6)から外向きに延出する1cm幅の一様なビームとして現われる。
【0037】
プラズマビーム源(『PBS』)(24)は、スパッタ源ではない。それよりもむしろ、ビーム源(24)は、PECVDや、プラズマ処理や、エッチングプロセス、において有効である。ライナー材料のスパッタリングは発生するけれども、ノズル(6)からは、最小量のスパッタ材料しか、導出されない。これには、いくつかの理由がある。第1に、マグネトロンプラズマ領域(8)(図1)は、ビーム源の内部において深いところに位置している。スパッタリングされたライナー材料は、ライナー上や、分流器(10)上や、分流器(11)上や、および/または、カバー(5)上や、ノズルの(6)上に、再成膜される。スパッタリングされた材料が、表面との接触時に即座に凝縮することにより、ビーム源(24)は、スパッタリングされた材料がビーム源から出ることに関しては、『曲がりくねった経路』を、提供する。第2に、マグネトロンプラズマ(8)の上方において、放電チャンバ内へとプロセスガスを供給していることにより、プラズマ(8)に対する供給ガスの流れが、ノズル(6)から離間する向きに案内される。これにより、ノズル(6)からの凝縮物の排出に対抗するような方向性モーメント効果が生成される。
【0038】
ビーム源のスパッタリング速度が小さいことは、実際に、動作時に観測される。例えば、PECVDによるシリコン酸化物コーティングの成膜時には、数μmのコーティング後に、形成されたコーティングは、光学的に明らかに現れる。この明瞭なコーティングは、銅製ライナー(16)を使用して形成される。当業者であれば理解されるように、酸素ガスとアルゴンのガスの混合物内でスパッタリングされた銅は、黒いコーティングを形成する。そのような黒いコーティングは、ビーム源(24)を使用して基板上にシリコン酸化物コーティングを形成する際には、一切観測されなかった。
【0039】
純粋な反応性ガスは、ビーム源(24)内において、『燃焼させる』ことができる。従来技術による高密度プラズマ源においては、電子を生成するために、フィラメントや、仕事関数が低い材料や、電界効果デバイス、を使用している。これらプラズマ源は、典型的には、プラズマ源内へと、例えばアルゴンといったような不活性ガスを供給する。プラズマ源の内部で、例えば酸素といったような反応性ガスを使用すれば、電子源の寿命を著しく短くする傾向がある。反応性のプロセスを実行するに際しては、これらプラズマ源を使用する場合には、プラズマ源の外部において、プラズマ内へと酸素を供給する。そして、酸素の一部を、プラズマ源から導出したアルゴンプラズマに対して反応させる。このような従来技術によるプラズマ源は、効率が悪いものではあるけれども、それでもなお、様々なプロセスにおいて使用されている。それは、代替手段が存在しないからである。
【0040】
しかしながら、極めて対照的に、本出願人によるビーム源(24)は、高密度かつ純粋な酸素プラズマを生成する。これは、様々なプロセスにおいて、有利である。加えて、ビーム源(24)の使用時には、アルゴン流が必要条件ではないので、真空ポンピング条件を、緩和することができる。
【0041】
本出願人によるビーム源(24)は、広範囲のプロセス圧力において、動作することができる。マグネトロンタイプのプラズマ源に関して典型的であるように、PBSは、1〜100mTorrという圧力範囲で、容易に動作することができる。この圧力範囲に加えて、動作は、蒸着プロセスにおいて使用される10−5Torrの範囲まで拡張することができる。そのような圧力は、ノズル(6)がビーム源からのガスコンダクタンスを制限することにより、使用することができる。放電キャビティ(26)内へとプロセスガス(27)を供給することにより、放電キャビティ(26)内の圧力は、mTorr範囲に維持することができる。一方、ビーム源の外部においては、プロセスチャンバは、はるかに低い圧力に維持することができる。また、プロセスガス流通要求は、狭いノズル(6)開口によってもたらされるコンダクタンス制限のおかげでより少量のガス(27)流でもってmTorr範囲に放電キャビティ(26)を維持し得ることのために、最小化される。
【0042】
プラズマビーム(9)は、プロセスチャンバの内部における平均自由行程に依存して、ノズル(6)から数百mmにわたって、外向きに延出される。例えば、3mTorrにおいては、ビームは、ノズル(6)から外向きに、少なくとも300mmにわたって延出される。そのようなプラズマビームの形成は、ビーム源(24)を、多くの応用において、卓越したものとすることができる。例えば、非平面状の基板を、一様に、PECVDコーティングしたり、処理したり、することができる。
【0043】
基板(23)は、ビーム源(24)から電気的に絶縁することができる。基板が電気回路の一部を構成しないことにより、基板は、浮遊状態に維持することができる。あるいは、基板は、異なる電源によって個別的にバイアスすることができる。ある実施形態においては、ビーム源(24)は、DCやあるいは0〜100MHzのACも含めて様々な周波数を使用した標準的マグネトロン電源を備えている。特殊な高電圧電源とか、RF電源とか、いったものを使用する必要はない。チャンバグラウンドに対する接続は、また、電源のどちらの電極においても、行うことができる。図1〜図3においては、ボックス(3)とカバー(5)とが、グラウンドに対して接続される。これは、安全対策として、簡便である。
【0044】
図4は、PECVDコーティングに対して応用されたビーム源(24)を示している。アルゴンと酸素との混合ガス(41)が、チューブ(40)を介して、ビーム源のポート(4)に対して供給されている。モノマーガス(43)は、ビーム源の外部へと放出される。ポリマーコーティングは、プラズマ(9)内でイオン化されたガスによって活性化されたモノマーガスの重合によって、基板(23)上に成膜される。ノズル(6)のコンダクタンス制限のために、および、ノズル(6)を通して導出されるプラズマ(9)の高密度のために、および、そのようなプラズマ(9)の指向性のために、モノマーガス(43)は、ビーム源(24)内へは戻らない。このことは、コーティング操作後に、ビーム源(24)の放電キャビティ(26)内にPECVDコーティングが実質的に存在しないことにより、実際に確認される。
【0045】
基板(23)は、様々な材料および様々な形状のものとすることができる。そのような基板は、限定するものではないけれども、例えば、フレキシブルなウェブや、フラットなガラスや、3次元形状や、金属や、シリコンウェハ、等とすることができる。ビーム源(24)を使用した、他の物理的な構成や、プロセス構成が、可能である。例えば、1つまたは複数の1つ以上のモノマーガスを、即座の渋滞という問題を起こすことなく、放電キャビティ(26)内へと導入することができる。加えて、例えば炭化水素といったようなある種のモノマーガスを、拡張された期間にわたってビーム源内に供給することができる。ビーム源(24)は、また、例えばプラズマ処理や表面クリーニングや反応性イオンエッチングといったような他のプラズマプロセスを行うことができる。
【0046】
図5は、電子ビーム蒸発ウェブコーティング用途に際して、蒸発物(29)を反応させるためにビーム源(24)を使用している様子を示している。ドラム(25)は、成膜領域上にわたってウェブ(23)を搬送している。ルツボ(27)は、蒸着材料(28)を収容している。電子ビーム源(26)が、ルツボ(27)内へと電子ビーム(31)を照射する。プラズマ(9)は、蒸着材料からなるクラウド(29)内へと案内される。これにより、イオン化されたガスとプラズマ(9)との反応を促進することができる。シールド(30)は、電子ビーム(31)とプラズマ(9)との間の相互作用を阻止する。
【0047】
従来技術においては、複雑なホローカソード源を使用することによって、蒸着反応が行われてきた。ホローカソードの外部においては、プラズマが、拡散によってのみ制限されていることにより、ホローカソードは、本質的に非一様である。本出願人によるビーム源(24)においては、磁気力線(19)が、電子を拘束している。また、静電気力によって、イオンは、同様にプラズマ領域(9)内に拘束されている。また、上述したように、ビーム源プラズマ(9)は、電子閉込の閉じたドリフト特性のために、基板幅にわたって、一様である。
【0048】
図6は、プラネタリ型のボックスコーティング装置に対して適用されたビーム源(24)を示している。この図においては、ビーム源(24)は、端面からではなく、長手方向に沿って示されている。図6に図示された実施形態においては、プラズマビーム(9)が、プラズマシートとして現われている。ビーム源(24)は、基板支持プラネタリから十分に離間して配置されている。例えば、ボックスコーティング装置の底部に配置されている。これにより、例えば電子ビームや他の熱的蒸発源といったような様々な成膜源のための空間を提供することができる。ビーム源(24)と他の成膜源とを組み合わせることにより、コーティングを、プラズマ(9)の作用によって、稠密化することができる。ある実施形態においては、純粋なアルゴンを使用することによって、金属コーティングの密度を高めることができる。他の実施形態においては、アルゴンに対して、反応ガスが追加される。
【0049】
従来技術と比較した場合、本出願人によるビーム源の主な利点は、例えば酸素といったような反応性ガスを、ビーム源内において直接的に使用できることである。従来技術によるビーム源は、反応性ガスの消費に対して過敏であるようなフィラメントや他の電子生成手段を使用することが必須であったことにより、ビーム源の内部においては、不活性ガスを使用する必要があった。このような従来技術によるビーム源においては、反応性ガスは、ビーム源の外部のプロセスチャンバ内に供給される。ビーム源の内部と比較して、プロセスチャンバ内での反応性ガスのイオン化効率が小さいことにより、大きなパワーが必要とされ、大きなアルゴン流速が必要とされていた。これに対し、ビーム源(24)を使用することによって、純粋な反応性プラズマを使用することにより、あるいは、所望に応じて反応性ガスプラズマと不活性ガスプラズマとを併用することにより、プロセス効率を、増大させることができる。また、適切な圧力にプロセスを維持するのに必要な全体的ポンピング速度を低減することができる。当業者であれば、過度のアルゴンをポンピング除去する必要がないことを、理解されるであろう。
【0050】
図7は、例えばシリコンウエハーといったような基板(23)上に配置されたビーム源(24)を示している。図7に図示された実施形態においては、ウエハー(23)を支持しているステージ(51)は、並進移動される。つまり、X方向および/またはY方向において移動する。これにより、プラズマ(9)によってウエハー(23)を一様に処理することができる。図7においては、基板(23)とビーム源(24)とを、個別的にバイアスし得ることが、示されている。バイアス電圧(52)は、この例においては、ウエハー(23)を通して電流を流し得るような十分に大きな周波数のAC電源とされている。このバイアス電源(52)は、ステージ(51)に対して接続されている。ビーム源に対する電源(17)は、プラズマ(9)を生成する。バイアス電源(52)が無い場合には、絶縁性基板(23)は、通常は、プラズマ(9)の特徴的浮遊電圧値にまで上昇することとなる。つまり、典型的には、プロセス条件に依存してビーム源(24)の場合には、約−10V〜約−70Vとの間の電圧値にまで上昇することとなる。バイアス電源(52)をオンとすることによって、プラズマ(9)と基板(23)との間のプラズマダークスペースを横切った電圧降下は、正方向または負方向において、プロセスのために必要に値にまで、変更することができる。基板(23)がビーム源(24)の電極ではないことにより、個別的なバイアスが可能である。
【0051】
図8は、2つのビーム源(24a,24b)を示している。これらビーム源(24a,24b)は、基板上にわたって大面積の一様のプラズマ(91)を生成するために使用されている。図8に図示された実施形態においては、基板は、フレキシブルなウェブ(23)とされ、ロール(64)上にわたって案内されている。2のビーム源(24a,24b)は、互いに同一のものである。しかしながら、相違点は、ビーム源(24a)の磁石(60,61)と、ビーム源(24a)の端部磁石(図示せず)とが、S極がプラズマ(91)に対向するようにして、配置されており、一方、ビーム源(24b)においては、磁石(62,63)のN極どうしが内向きとされていることである。この配置により、両ビーム源の間にわたっての磁界の共有をもたらし、図示のような閉じたプラズマ領域(91)を生成することができる。
【0052】
図9は、宇宙での推進用途のために構成されたビーム源(90)を示す断面図である。マグネトロン電子源およびカスプ磁界に関する基本構成は、先の図の場合と同じである。ビーム源(90)においては、磁気カスプ磁界(18,19)が、環状の電磁石(70,71)によって形成されている。電子源マグネトロンプラズマ領域(8)は、ライナーチューブ(16)内に形成される。ライナー(16)は、絶縁体プレート(72)によってボックス(3)から電気的に絶縁されているとともに、絶縁体リング(73)によって電磁石(71)から電気的に絶縁されている。推進ガス(27)は、ポート(92)を通ってガスキャビティ(79)内へと導入される。その後、ガス(27)は、ライナー(16)と対向電極(5)との間のギャップ(78)を介して、放電キャビティ(26)へと流入する。
【0053】
カバー電極(5)は、絶縁体プレート(76)によって、円形のボックス(3)から電気的に絶縁されている。カバー(5)は、電磁石(70)の環状開口内へと適合するノズル部分(6)を有している。ライナー(16)およびカバー(5)は、電源(74)に対して接続される。図11に図示された実施形態においては、ライナー(16)に対して接続された負極を備えたDC電源が使用されている。他の実施形態においては、AC電源またはRF電源を、使用することができる。ボックス(3)は、グラウンドに対して接続されている。電源(74)がオンとされ、さらに、ガス(27)が放電キャビティ(26)内へと流入した場合には、マグネトロンプラズマ領域(8)によって形成された電子は、磁気力線(18)がなすミラー磁界領域の中に閉じ込められる。そして、プラズマ(9,39)が形成される。プラズマ(9)がノズル(6)から放出されることにより、推進力が生成される。推進力の1つの成分は、磁気ノズル効果によって生成される。磁気ミラー(39)を通過した後に、電子は、それらがノズル(6)から外向きに移動するにつれて、磁界の強度の減少を経験する。負の勾配磁場に応答して、電子の移動は、磁界の軸に沿った熱スピンから直線的運動へと変換される。
【0054】
電子は、ビーム源から離間する向きに加速するように、イオンを静電的に引っ張る。領域(18)における磁界がイオンを拘束し得るほど大きいものである場合には、すなわち、少なくとも1000ガウスを超えるような大きいものである場合には、イオンによる推進力が、さらに生成される。この条件下においては、イオンは、磁気的に拘束され、ノズル(6)を通過する際には径方向電界によって加熱される。電子がノズルから導出される際には、それら電子は、アノード(5)による静電的反発力と磁気的ノズル効果との双方によって、加速される。
【0055】
本出願人によるビーム源を使用して得られる電子閉込は、ライナー(16)によって、可能な3つの軸方向磁界電子導出経路のうちの2つを、物理的に制限する。3つの軸方向磁界領域は、以下のものを備えている。(i)円錐形の圧縮された領域(18)と、(ii)円錐形の圧縮された領域(19)と、(iii)平面ディスクという形状をなす圧縮された領域(170)。ライナー(16)がDC回路のカソードとして接続されている場合には、あるいは、AC電源の負のACサイクルにある場合には、電子は、ライナー表面から静電的によって反射される。電子がアノード電極(5)に到達しようとした際には、電子は、磁気力線(19)を横断しつつ衝突的に拡散し、ミラー領域(39)を通って移動し、カバー(5)へと戻る前に、ノズル(6)を通してビーム源から導出される。磁気力線を横断して拡散するけれども、電子は、また、磁気力線に沿って螺旋移動する。磁気力線(170)がライナー(16)を通過するようにビーム源を構成することにより、これら磁気力線に沿って移動する電子は、静電的に含有されたままである。磁気力線(170)が、電気的浮遊表面あるいは対向電極(5)を通過し得るような場合には、いくらかの電子が、磁気力線(170)がなす圧縮ミラーを通って脱出することとなる。電子の脱出に関し、1つの軸方向磁界領域(18)だけを開放可能とすることは、プラズマ噴出流(9)の形成および維持に関し、電子の効率的な使用を増大させる。
【0056】
図10は、ビーム源(100)を示している。様々な実施形態において、ビーム源(100)は、円形や、環状や、拡張された長さのもの、とされる。図10に図示された実施形態においては、ビーム源(100)は、希土類磁石(1,2)と、2つの電源(83,84)と、を備えている。電源(83)は、カソードライナー(16)と、ボックス(3)と、を接続している。絶縁体(81)が、カバー(5)とボックス(3)とを電気的に絶縁している。電源(84)は、アノードカバー(5)と、ボックス(3)と、を接続している。ボックス(3)は、接地されている。
【0057】
図10の構成を使用すれば、プラズマ電位を、グラウンドに対して調節することができる。このことは、接地された基板にに対してプラズマ(9)を適用する場合に、有用である。プラズマ電位を増大させることによって、基板を衝撃するイオンエネルギーが、増大する。図10は、さらに、カバー(5)に組み込まれたプロセスガスマニホールド(80)を示している。小さな分配穴(85)が、ビーム源(100)の長手方向に沿って、放電キャビティ(26)内へと、ガス(27)を一様に案内する。カスプ磁界配置でもって磁石(1,2)を互いに対向配置することにより、ミラー領域(39)内において、大きなミラー圧縮比が形成される。希土類磁石(1,2)を使用した場合、ミラーの頂点における磁界の強さは、500ガウスを超えるものとすることができる。電子がこのミラー領域(39)を通過する際に、それら電子は、この強い磁界を受け、ラーモア回転半径は、それに応じて小さなものとなる。これらの条件下においては、プラズマを、この断面図のように端面から見た場合、ノズル(6)から導出されるプラズマ(9)幅は、非常に狭いものであって、約3mmの程度である。
【0058】
このことは、Window 氏および Savvides 氏の場合や、Helmer 氏の場合や、他の場合におけるような、鉛直方向に配置された磁石に対する利点である。磁石を鉛直方向に配置した例が、図11において、他の好ましい実施形態として示されている。磁石を鉛直方向に配置することにより、マグネトロン閉込領域(8)の上方に無磁界領域(25)が形成されるものの、磁界の強さは、典型的には、100ガウス未満であって、ラーモア回転半径は、より大きなものとなる。図10に図示された実施形態においては、分流器(10)は、アルミニウム製ボディ(12)内に組み込まれている。分流器(10)は、ライナー(16)のスパッタリング速度を低減させ、ライナー(16)のスパッタリングを均等なものとする。これにより、ライナー(16)の寿命を延ばすことができる。この観点においては有効ではあるものの、分流器(10)は、ビーム源の基本的動作にとって、必須ではない。
【0059】
ボディ(12)は、押出加工によって形成された穴(82)によって、水冷される。絶縁体(14,86)が、ボックス(3)内においてカソードボディ(12)を支持しているとともに、ボックス(3)から、カソードを、すなわち、ボディ(12)およびライナー(16)を、電気的に絶縁している。ビーム源(100)は、拡張された長さを有した長方形することができる。双方の磁界領域(8,9)を閉塞経路とするために使用された端部磁石は、図10には図示されていない。
【0060】
図11は、鉛直方向に配置された磁石を備えたビーム源(1100)を示している。この磁石配置は、Window 氏および Harding 氏によって提案されたタイプIIの不均衡型マグネトロン磁界を代理するものである。磁石(97)の形状や、放電キャビティ(26)の形状は、本出願人によるこの発明の範囲内で、実施することができる。図11に図示された実施形態においては、磁石(97)は、2つの閉込領域を形成する。すなわち、カソード(98)の表面(105)のところにおけるマグネトロン閉込(95)と;ノズル(104)を通してのミラー/ノズル閉込(93)と;を形成する。
【0061】
本出願人によるビーム源の他の実施形態の場合と同様に、マグネトロン電子生成領域(101)は、放電キャビティ(103)内に含まれている。放電キャビティは、無磁界領域(95)を備えている。カバープレート(91)の開口(104)は、ミラー磁界(93)の軸と一致するような、中心軸を有している。
【0062】
平面状のライナー(98)は、ガンドリリング加工によって形成された穴(99)を介して水冷され、分流器(96)内に組み込まれている。磁石(97)と傾斜付き分流器(109)と分流器(96)とは、図示のような、不均衡な磁界を生成する。平面状のカソード(98)と磁石構成部材(96,97,109)とは、電気的に浮遊状態とされたボックス(90)内において、電気的絶縁体(図示せず)によって懸架されている。電気的に浮遊状態とされたカバープレート(91)は、ボックス(90)に対して固定される。カバープレート(91)は、穴(92)を介して水冷される。カバープレート(91)およびカソード(98)に対して水を案内する配管については、図示されていない。ガス(27)は、ネジ山付き穴(100)を介してボックス(90)内へと供給される。ガス(27)は、磁石分流器(96)の周縁を流通し、その後、放電キャビティ(103)内へと案内される。
【0063】
電源(108)がオンとされたときには、マグネトロンプラズマ(102)が形成され、ミラー閉込領域(106)に対して電子が供給される。ミラー閉込領域(106)内に拘束された電子は、ガス(27)と衝突し、ノズル(104)の開口から脱出しようとする。これにより、稠密なプラズマ(94)が形成される。図11に図示された実施形態においては、個別のアノード(107)が設けられている。カバー(91)は、電気回路内における電極として接続されない。カバー(91)は、導出ガス(27)に対してのコンダクタンス制限を行う。これにより、ミラー閉込領域(106)を通ってノズル(104)からガスを導出する。電子の移動度が大きい場合には、ビーム源の外部にリターン電極(107)を配置したことにより、ビーム源の点火後におけるビーム源の性能変化は、ごくわずかである。アノード(107)がカソード(98)から遠くに位置していることにより、プラズマ(102)を点火するためには、ベース圧力および使用されている電源(108)の点火電圧に依存して、圧力スパイクが、キャビティ(103)内において必要とされることがあり得る。
【0064】
導電性プラズマ(102)の点火後においては、アノード電極は、プロセスチャンバ内の任意の位置に配置することができる。アノード電極がノズル(104)である場合には、上述したような、いくつかのイオン加速という利点を得ることができる。図11に図示された実施形態においては、ライナー材料は、アルミニウムとされている。酸素ガス(27)が使用される場合、アルミニウムは、良好な二次電子エミッタである。さらに、カソード表面(105)上において形成される反応生成物をなすアルミナは、非常にゆっくりとしか、スパッタリングされない。これは、ビーム源の動作に際しての利点である。というのは、与えられたパワーに関して、大きな電子電流が生成され、カソード材料(98)のスパッタリングが遅いからである。
【0065】
このような特性を有した他の材料を、使用することもできる。例えば、アルゴンプラズマ(94)が望ましい場合には、カーボンは、良好なカソード材料である。カーボンは、格別の二次電子エミッターではないけれども、アルゴン中において、非常にゆっくりとしか、スパッタリングされない。図11が断面図であることに注意されたい。ビーム源(1100)は、円形とすることも、また、長方形とすることも、できる。また、1m以上にわたって長さを延長することもできる。本発明は、多くの応用およびプロセスを可能にする。いくつかのものについては、上述したとおりである。当業者には、さらなる応用が、明らかであろう。いくつかの実施形態について例示したけれども、本発明の範囲を逸脱することなく、さらなる多くの応用が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 磁石
2 磁石
6 ノズル
8 プラズマ領域
9 プラズマ
17 電源
18 カスプ磁界
19 カスプ磁界
20 端部磁石
21 端部磁石
23 基板
24 ビーム源(ビーム状プラズマ源)
24a ビーム源(ビーム状プラズマ源)
24b ビーム源(ビーム状プラズマ源)
26 放電キャビティ
27 ガス
39 第2閉込領域
70 電磁石
71 電磁石
90 ビーム源
91 プラズマ領域
100 ビーム源(ビーム状プラズマ源)
101 開口
110 第1幅
115 第2幅
120 中心線
1100 ビーム源(ビーム状プラズマ源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理するための直線形状のプラズマ源であって、
内部にマグネトロンプラズマが生成される放電キャビティであるとともに、内面上に配置されたカソード電極上に前記マグネトロンプラズマが生成され、アノード電極が前記放電キャビティの外部に配置されている、放電キャビティと;
前記放電キャビティの外部に配置された複数の磁石であるとともに、前記放電キャビティ内に無磁界ポイントを形成する、複数の磁石と;
を具備し、
処理の一様性が、前記プラズマに対して前記基板を移動させることにより、あるいは、前記基板に対して前記プラズマを移動させることにより、得られていることを特徴とするプラズマ源。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマ源において、
前記放電キャビティの外部に前駆体ガスが供給され、
前記基板の一様な処理が、前記プラズマと、前記放電キャビティの外部の前記前駆体ガスと、の間の相互作用によって得られていることを特徴とするプラズマ源。
【請求項3】
プラズマ源であって、
第1幅を有しているとともに、頂部と壁部とを備えて構成された、放電キャビティと;
前記頂部に配置され、かつ、前記頂部から外向きに延出されているとともに、前記頂部を貫通しかつ前記放電キャビティ内にまで延出されている開口が形成された、ノズルであり、前記開口が第2幅を有し、この第2幅が前記第1幅よりも小さなものとされた、ノズルと;
第1電源と;
この第1電源に対して接続された少なくとも1つのカソード電極であるとともに、前記放電キャビティの内面上に配置され、前記放電キャリア内においてこのカソード電極の表面上に少なくとも1つのマグネトロン放電領域を形成し得る、少なくとも1つのカソード電極と;
前記壁部に隣接して前記放電キャビティの外部に配置された複数の磁石であるとともに、前記放電キャビティの内部に無磁界ポイントを形成するものとされた、複数の磁石と;
を具備していることを特徴とするプラズマ源。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−124168(P2012−124168A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−5596(P2012−5596)
【出願日】平成24年1月13日(2012.1.13)
【分割の表示】特願2004−537902(P2004−537902)の分割
【原出願日】平成15年9月19日(2003.9.19)
【出願人】(508371024)ジェネラル・プラズマ・インコーポレーテッド (6)
【Fターム(参考)】