説明

ピアノのペダルカバーおよびその装着方法

【課題】ペダルの錆や損傷を防止することができ、それにより、ペダルの外観を長期にわたり良好に維持することができるピアノのペダルカバーおよびその装着方法を提供する。
【解決手段】ピアノのペダル2に着脱自在に装着されるピアノのペダルカバー1であって、プラスチックの真空成形により、ペダル2の外形に沿う形状に形成されている。また、ペダル本体3およびこのペダル本体3から外方に突出した突出部4を有するピアノのペダル2に装着されたピアノのペダルカバー41であって、ペダル本体3および突出部4を覆うように、ペダル2に装着されたシュリンクフィルム42で構成され、シュリンクフィルム42の収縮の際に、シュリンクフィルム42をペダル本体3と突出部4との移行部分4aに押圧することにより、シュリンクフィルム42が、移行部分4aに密着した状態で装着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アコースティックピアノや電子ピアノなどのペダルに装着されるピアノのペダルカバーおよびその装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ピアノのペダルとして、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。このペダルは、前後方向に延びる3つのペダルで構成されている。各ペダルは、ペダル箱に回動自在に支持され、後半部がペダル箱に収容されるとともに、前半部がペダル箱から前方に突出している。
【0003】
このようなペダルは一般に、真鍮や鉄などの金属から成り、表面が錆びるのを防止するために、アクリル焼き付け塗装などにより、コーティングされる。しかし、その塗装処理が不十分な場合などには、被膜にピンホールが生じたり、ピアノの長年の使用によって、被膜が損傷したりすることにより、ペダルの金属面が外気に部分的に触れることで、ペダルがまだら状に錆びるおそれがある。また、ピアノの出荷時など、ピアノを搬送する際に、ペダルが比較的硬い物に誤って当たった場合には、ペダルが傷つくこともある。以上のように、ペダルに錆や傷が生じた場合には、ペダルの外観、ひいてはピアノの商品性が著しく損なわれてしまう。
【0004】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、ペダルの錆や損傷を防止することができ、それにより、ペダルの外観を長期にわたり良好に維持することができるピアノのペダルカバーおよびその装着方法を提供することを目的とする。
【0005】
【特許文献1】特開平11−338462号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、ピアノのペダルに着脱自在に装着されるピアノのペダルカバーであって、プラスチックの真空成形により、ペダルの外形に沿う形状に形成されていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、ペダルカバーが、プラスチックの真空成形により、ペダルの外形に沿う形状に形成されているので、そのペダルカバーをペダルにぴったりと装着することができ、それにより、ペダルが外気に触れないようになることで、錆の発生を防止できるとともに、ピアノの搬送の際に、ペダルを誤ってぶつけた場合でも、ペダルの損傷を防止することができる。このようなペダルの錆や損傷の防止によって、ペダルの外観を長期にわたり良好に維持することができる。また、ペダルカバーは、ペダルに着脱自在であるので、ピアノを使用しないとき、例えばピアノの保管時や搬送時にペダルカバーをペダルに装着したり、ピアノの演奏時にペダルカバーをペダルから取り外すなど、必要に応じて、ペダルカバーをペダルに容易に着脱することができる。なお、演奏者の好みに応じて、ペダルカバーを常時、ペダルに装着することも可能である。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のピアノのペダルカバーにおいて、ペダルカバーは、ペダルを上方から覆うカバー本体部と、このカバー本体部の周縁部に設けられ、ペダルの底面の下側に回り込んだ状態で、ペダルの周縁部に係止される係止部と、を有していることを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、カバー本体部の周縁部に係止部が設けられ、この係止部が、ペダルの底面の下側に回り込んだ状態で、ペダルの周縁部に係止されるので、ペダルカバーを、ペダルから外れにくい状態で、しっかりと装着することができる。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載のピアノのペダルカバーにおいて、ペダルカバーは、ペダルを上方から覆う上カバー部と、この上カバー部に対し折り畳み自在に形成され、折り畳まれた状態で、ペダルを下方から覆う下カバー部と、上カバー部および下カバー部の一方に設けられた係合部と、上カバー部および下カバー部の他方に設けられ、上カバー部および下カバー部がペダルを上下から覆った状態で、係合部に係合することにより、上カバー部および下カバー部を互いに係止する係止部と、を有していることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、下カバー部が、上カバー部に対し折り畳み自在に形成されるとともに、両カバー部の一方に係合部が設けられ、他方にその係合部に係合する係止部が設けられているので、下カバー部を折り畳んだ状態で、上下の両カバー部でペダルを上下から覆うとともに、係止部を係合部に係合させるだけで、ペダルカバーをペダルにしっかりと装着することができる。また、係合部と係止部との係合を解除するだけで、ペダルカバーをペダルから容易に取り外すことができる。さらに、上カバー部と下カバー部が一体に構成されているので、両カバー部を別体に構成する場合に比べて、ペダルカバーの取扱いや保管を容易に行うことができる。
【0012】
請求項4に係る発明は、ペダル本体およびこのペダル本体から外方に突出した突出部を有するピアノのペダルに装着されたピアノのペダルカバーであって、ペダル本体および突出部を覆うように、ペダルに装着されたシュリンクフィルムで構成され、シュリンクフィルムの収縮の際に、シュリンクフィルムをペダル本体と突出部との移行部分に押圧することにより、シュリンクフィルムが、移行部分に密着した状態で装着されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、ペダルカバーが、ペダル本体、およびこのペダル本体から外方に突出した突出部を覆うように装着されたシュリンクフィルムで構成されている。また、シュリンクフィルムの収縮の際に、シュリンクフィルムをペダル本体と突出部との移行部分に押圧することにより、シュリンクフィルムは、上記移行部分に密着した状態で、ペダルに装着されている。このように、シュリンクフィルムと移行部分との間に隙間が生じないので、その隙間に外気が侵入することを完全に防止でき、それにより、錆の防止効果を格段に高めることができる。また、シュリンクフィルムが収縮することで構成されるペダルカバーは、移行部分を含めて、ペダルにぴったりと装着されるので、演奏者は、ペダルカバーをペダルに装着したまま、ペダル操作をまったく違和感無く行うことができる。したがって、ペダルカバーを常時、ペダルに装着しておくことも可能であり、それにより、上述したペダルの錆の防止に加えて、ペダルの損傷も防止することができ、ペダルの外観を長期にわたり良好に維持することができる。
【0014】
請求項5に係る発明は、ペダル本体およびこのペダル本体から外方に突出した突出部を有するピアノのペダルにペダルカバーを装着するペダルカバーの装着方法であって、ペダル本体および突出部をシュリンクフィルムで覆う被覆工程と、シュリンクフィルムをペダル本体と突出部との移行部分に押圧しながら、シュリンクフィルムを収縮させる収縮工程と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、ペダル本体および突出部をシュリンクフィルムで覆い、このシュリンクフィルムの収縮の際に、シュリンクフィルムをペダル本体と突出部との移行部分に押圧しながら、収縮させる。これにより、収縮したシュリンクフィルムであるペダルカバーは、上記移行部分に密着した状態で、ペダルに装着され、したがって、上記ペダルカバーの装着方法によれば、前述した請求項4と同様の作用、効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1および図2は、本発明の一実施形態によるペダルカバー1を、ピアノのペダル2に装着した状態を示しており、前者および後者のペダル2はそれぞれ、アップライトピアノ用およびグランドピアノ用のものである。これらのピアノには通常、3つのペダル2が、左右方向に並んだ状態で設けられ、各ペダル2は、ピアノ本体やペダル箱(いずれも図示せず)に回動自在に支持され、後半部がピアノ本体やペダル箱に収容される一方、前半部が外部に露出した状態で、前方に突出している。なお、以下の説明では、両図のペダル2、2を区別する場合、アップライトピアノ用およびグランドピアノ用のペダルにそれぞれ、符号「2A」および「2B」を付して説明するものとし、また、両図のペダルカバー1、1を区別する場合、両ペダル2A、2Bにそれぞれ装着されるペダルカバーにそれぞれ、符号「1A」および「1B」を付して説明するものとする。
【0017】
ペダル2は、真鍮や鉄などの金属から成り、所定形状に形成されている。図1に示すアップライトピアノ用のペダル2Aは、並設される3つのペダルのうち、右端に配置されるラウドペダルであり、前後方向に延びるペダル本体3と、このペダル本体3の前後方向の中央部よりも若干前側の位置に設けられ、上方に突出した突出部4とを有している。なお、この突出部4は、その直ぐ後ろ側に設けられるピアノ本体の前土台(図示せず)が、ピアノの演奏時などに演奏者の足がぶつかることで傷つくのを防止するためのものである。
【0018】
ペダル本体3の前半部3aは、前方に向かって右方に若干湾曲し、横幅が前方に向かって緩やかに大きくなるとともに、前端部が円弧状に形成されている。また、ペダル本体3の後半部3bは、その長さ方向と直交する断面の外形が横長矩形状に形成されており、後端部には、ペダル2Aを回動自在に支持するためのペダルシャフト5が、孔6に挿通された状態で、左右方向に延びるように固定される。一方、突出部4は、ある程度の厚さを有し、正面形状がほぼ縦長矩形状に形成されている。
【0019】
なお、ペダル本体3の後半部3bには、長さ方向の中央部に、上下方向に貫通した孔7が形成されている。この孔7には、ペダル2Aの動作を、ペダル天秤を介してダンパー(いずれも図示せず)などに伝えるために、ペダル2Aとペダル天秤とを連結するペダル天秤ボルト8が固定される。
【0020】
一方、図2に示すグランドピアノ用のペダル2Bは、並設される3つのペダルのうち、左端に配置されるソフトペダルである。このペダル2Bは、前後方向に延び、前端部が前方に向かって左方に若干湾曲するように形成されている。また、ペダル2Bの前後方向の中央部よりも若干後ろ側の位置には、ペダル2Bを回動自在に支持するためのペダルシャフト11が、孔12に挿通された状態で、左右方向に延びるように固定される。なお、ペダル2Bの後端部には、上方に若干突出した円筒状の凹部13が設けられ、この凹部13に、ペダル2Bの動作を鍵盤やアクション(いずれも図示せず)に伝えるためのペダル突揚棒14が固定される。
【0021】
次に、上述した各ペダル2に装着されるペダルカバー1について説明する。図1および図2に示すように、ペダルカバー1は、ペダル2の前半部、すなわち、ペダル2のピアノ本体やペダル箱から外部に露出した部分を覆うように装着される。なお、ペダルカバー1が装着されるペダル2A、2Bの前半部の最も大きな相違点は、突出部4の有無であるので、以下の説明では、突出部4を有するペダル2Aに装着されるペダルカバー1Aを中心に説明するものとする。
【0022】
ペダルカバー1は、比較的薄い軟質のプラスチックから成り、後述するように、シート状のプラスチックを真空成形することによって作製される。このペダルカバー1の材料として、例えば、ポリエチレン、塩化ビニル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、およびAS樹脂などのプラスチックを採用することができる。
【0023】
図3に示すように、ペダルカバー1は、ペダル2の底面の大部分を除き、突出部4を含むペダル2の前半部(以下「ペダル前半部」という)を覆うとともに、ペダル前半部の外形に沿う形状に形成されている。具体的には、このペダルカバー1は、ペダル前半部の外形とほぼ同じ形状およびサイズのカバー本体部1aと、このカバー本体部1aの下端周縁部に沿って連続して設けられ、ペダル2の周縁部に係止される係止部1bとを有している。図3(c)、(d)に示すように、係止部1bは、カバー本体部1aの下端から連なるとともに、ペダル2の底面の下側に回り込み、断面形状がほぼコ字状に形成されている。なお、図2のペダル2Bに装着されたペダルカバー1Bは、上述したペダルカバー1Aに対し、突出部4を覆う部分を有していない点のみが異なり、それ以外は、ペダルカバー1Aと同様に構成されている。
【0024】
ここで、図4を参照して、真空成形によるペダルカバー1の製造方法について説明する。まず、同図(a)に示すように、あらかじめ、ペダルカバー1の原材料であるシート状のプラスチック21と、製造すべきペダルカバー1に応じた所定の型22とを準備する。なお、図4では、プラスチック21については、便宜上、縦断面の形状のみを図示するものとする。
【0025】
プラスチック21は、熱可塑性で、前記例示したものなどである。一方、型22は、前述したペダル前半部とほぼ同じ形状およびサイズを有している。また、この型22には、側面の下端周縁部に沿って、外方に開口した凹部23が形成されるとともに、上下方向に貫通した複数の吸引孔24(図4では1つのみ図示)が設けられている。
【0026】
上記のプラスチック21および型22を、それぞれ上下に位置するように、真空成形機(図示せず)にセットする。なお、詳細は省略するが、真空成形機は、プラスチック21を加熱するための加熱装置、プラスチック21と型22の間の空気を吸引する真空ポンプ、成形後のプラスチック21を冷却するための冷却装置、および成形後のプラスチック21から不要部分を切除するための加工装置(いずれも図示せず)などを備えている。
【0027】
上記真空成形機へのプラスチック21および型22のセット後、まず、加熱装置により、プラスチック21を加熱し、軟化させる。次いで、プラスチック21および型22の一方を他方側に移動させることにより、図4(b)に示すように、プラスチック21で型22を上方から覆うとともに、プラスチック21の周囲を密封する。
【0028】
次いで、真空ポンプにより、型22の吸引孔24を介して、プラスチック21と型22の間の空気を吸引する。これにより、図4(c)に示すように、プラスチック21は、型22の外面に密着し、その型22の外形に沿うように成形される。この場合、型22の下端部の凹部23にも、プラスチック21が入り込み、その部分が、ペダルカバー1の前記係止部1bとなる。そして、冷却装置により、成形後のプラスチック21を冷却し、その後、加工装置により、プラスチック21の周囲を上方から切断し、不要部分を切除する。その後、成形後のプラスチック21から型22を抜くことにより、図4(d)に示すように、ペダルカバー1が完成する。なお、図2のペダルカバー1Bを製造する場合には、ペダル2Bに対応した型を用いる。
【0029】
以上詳述したように、本実施形態のペダルカバー1によれば、このペダルカバー1が、プラスチック21の真空成形によって形成され、ペダル2の外形に沿う形状に形成されるので、ペダル前半部を上方から覆うように、ペダルカバー1をペダル2にぴったりと装着することができる。それにより、ペダル2のペダル前半部、すなわち演奏者側から見える部分が、外気に触れないようになることで、錆の発生を防止できるとともに、ピアノの搬送の際に、ペダル2を誤ってぶつけた場合でも、ペダル2の損傷を防止することができる。これにより、ペダル2の外観を長期にわたり良好に維持することができる。
【0030】
また、ペダルカバー1の下端周縁部には、係止部1bが設けられているので、ペダルカバー1を、ペダル2から外れにくい状態で、しっかりと装着することができる。さらに、ペダルカバー1は、ペダル2に着脱自在であるので、ピアノを使用しないとき、例えばピアノの保管時や搬送時にペダルカバー1をペダル2に装着したり、ピアノの演奏時にペダルカバー1をペダル2から取り外すなど、必要に応じて、ペダルカバー1をペダル2に容易に着脱することができる。さらにまた、演奏者の好みに応じて、ペダルカバー1を常時、ペダル2に装着することも可能である。
【0031】
次に、図5および図6を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。このペダルカバー31は、上述した実施形態と同様に、シート状のプラスチックを真空成形することによって作製される。ペダルカバー31は、比較的薄い硬質のプラスチックから成り、ペダル前半部を上方および下方からそれぞれ覆う上カバー部32および下カバー部33で構成されている。
【0032】
上カバー部32は、ペダル前半部の外形とほぼ同じ形状およびサイズのカバー本体部32aを有している。また、上カバー部32には、カバー本体部32aの前半部の側方に、下方に開口し且つ平面形状がU字状の前凹部32b(係合部、係止部)が形成され、カバー本体部32aの後端部の両側に、下方に開口し且つ平面形状が楕円状の一対の後ろ凹部32c、32c(係合部、係止部)が形成されている。なお、カバー本体部32aの後端部の下半部には、ペダルカバー31が装着されたペダル2のペダル本体3を通すための逃げ孔32dが形成されている。
【0033】
一方、下カバー部33は、上カバー部32に対し、折曲げ部34を介して折り畳み自在に形成されるとともに、上カバー部32の前凹部32bに嵌合可能で且つ平面形状がU字状の前凸部33a(係止部、係合部)と、上カバー部32の後ろ凹部32c、32cに嵌合可能で且つ平面形状が楕円状の一対の後ろ凸部33b、33b(係止部、係合部)とを有している。上記折曲げ部34は、例えば互いの間隔が比較的大きなミシン目などによって、直線状に形成されている。この折曲げ部34を介して、ペダルカバー31が折り畳まれることにより、下カバー部33が、上カバー部32の底部にぴったりと重なるようになっている。そして、その場合には、下カバー部33の前凸部33aが、上カバー部32の前凹部32bに、下カバー部33の後ろ凸部33b、33bが、上カバー部32の後ろ凹部32c、32cに嵌合する。
【0034】
なお、このペダルカバー31の製造方法の詳細な説明は省略するが、図6に示す展開した状態のペダルカバー31を一回の真空成形によって製造するための所定形状の型を準備し、前述したペダルカバー1と同様の手順によって製造する。
【0035】
上記構成のペダルカバー31をペダル2に装着する場合には、折曲げ部34を介してペダルカバー31を折り畳み、上カバー部32および下カバー部33で、ペダル前半部を上下から挟むように、その全体を覆う。またこの場合、下カバー部33の前凸部33aを上カバー部32の前凹部32bに嵌合させるとともに、下カバー部33の両後ろ凸部33b、33bを上カバー部32の両後ろ凹部32c、32cにそれぞれ嵌合させる。このように、ペダルカバー31を折り畳み、下カバー部33の前凸部33aおよび後ろ凸部33b、33bを、上カバー部32の前凹部32bおよび後ろ凹部32c、32cにそれぞれ嵌合させるだけで、ペダルカバー31をペダル2にしっかりと装着することができる。また、上記凸部33a、33bと凹部32b、32cの嵌合を解除するだけで、ペダルカバー31をペダル2から容易に取り外すこともできる。
【0036】
以上詳述したように、本実施形態のペダルカバー31によれば、前述したペダル1と同様の効果、すなわち、ペダル2の錆や損傷を防止でき、ペダル2の外観を長期にわたり良好に維持することができる。また、ペダルカバー31は、硬質のプラスチックから成るので、ペダル2の損傷の防止効果を高めることができる。さらに、ペダルカバー31は、上カバー部32および下カバー部33が一体に構成されているので、両カバー部32、33を別体に構成する場合に比べて、ペダルカバー31の取扱いや保管を容易に行うことができる。
【0037】
なお、本実施形態では、上カバー部32に前凹部32bおよび後ろ凹部32c、32cを設ける一方、下カバー部33に前凸部33aおよび後ろ凸部33b、33bを設けたが、これらの凹凸関係を全て逆にしたり、部分的に逆にしたりすることも可能である。
【0038】
次に、図7〜図9を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。なお、これらの図では、後述するペダルカバー41およびシュリンクフィルム42については、便宜上、縦断面の形状のみを図示するものとする。図7に示すように、本実施形態のペダルカバー41は、加熱されることによって収縮するシュリンクフィルムから成り、ペダル2のペダル前半部の外周面全体に密着した状態で、これを覆うように構成されている。このシュリンクフィルムとして、例えば塩化ビニル、ポリプロピレン、およびポリエチレンなど、種々のプラスチックフィルムを採用することができる。
【0039】
図8は、ペダル2へのペダルカバー41の装着手順を示している。同図(a)に示すように、まず、シュリンクフィルム42で、ペダル2のペダル前半部の全体を覆う(被覆工程)。なおこの場合、シート状のシュリンクフィルムをペダル前半部に巻き付ける他、袋状のシュリンクフィルムをペダル前半部に被せるようにしても良い。
【0040】
次いで、図8(b)に示すように、ペダル2のペダル本体3から突出部4に連なる曲面4a(移行部分)と同じ曲面43aを有する治具43を、ペダル2の曲面4aに対向するように、シュリンクフィルム42の外側に配置する。この治具43には、ゴムやばねなど(いずれも図示せず)が取り付けられており、それにより、治具43が、同図(b)の白抜き矢印の方向に付勢される。そして、この状態のまま、ペダル2を加熱することにより、シュリンクフィルム42を収縮させる。すなわち、治具43によって、シュリンクフィルム42を曲面4aに向かって押圧しながら、シュリンクフィルム42を収縮させる(収縮工程)。これにより、同図(c)に示すように、シュリンクフィルム42は、上記曲面4aに密着する。
【0041】
なお、シュリンクフィルム42を押圧せずに、単に収縮させた場合には、図9に示すように、ペダル本体3、突出部4およびシュリンクフィルム42で囲まれた空間Sが残存する。その場合、空間S内の空気や、空間Sに侵入する外気などによって、ペダル2が錆びるおそれがある。
【0042】
したがって、上述したように、シュリンクフィルム42の収縮の際に、シュリンクフィルム42をペダル2の上記曲面4aに押圧することにより、シュリンクフィルム42は、曲面4aを含めて、ペダル2のペダル前半部の外周面全体に密着する。
【0043】
以上詳述したように、本実施形態のペダルカバー41によれば、収縮したシュリンクフィルムであるペダルカバー41と、ペダル2のペダル前半部との間に隙間が生じないので、その隙間に外気が侵入することを完全に防止でき、それにより、錆の防止効果を格段に高めることができる。また、ペダルカバー41は、ペダル2のペダル前半部にぴったりと装着されるので、演奏者は、ペダルカバー41をペダル2に装着したまま、ペダル操作をまったく違和感無く行うことができる。したがって、ペダルカバー41を常時、ペダル2に装着しておくことも可能であり、それにより、ペダル2の錆の防止に加えて、ペダル2の損傷も防止することができ、ペダル2の外観を長期にわたり良好に維持することができる。
【0044】
なお、上述した各実施形態では、アップライトピアノおよびグランドピアノのペダル2に装着されるペダルカバー1、31、41について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、電子ピアノのペダルに装着されるペダルカバーにも適用することができる。また、実施形態で示したペダルカバー1、31、41の細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態によるペダルカバーをアップライトピアノのペダルに装着した状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態によるペダルカバーをグランドピアノのペダルに装着した状態を示す斜視図である。
【図3】(a)図1のペダルの部分平面図、(b)図1のペダルの部分側面図、(c)c−c線に沿う拡大断面図、(d)ペダル先端部の拡大縦断面図である。
【図4】図1のペダルカバーの成形工程を説明するための図である。
【図5】本発明の第2実施形態によるペダルカバーを示す斜視図であり、ペダルに装着した状態を示す。
【図6】(a)図5のペダルカバーを展開した斜視図、(b)同ペダルカバーの平面図、(c)同ペダルカバーの正面図である。
【図7】本発明の第3実施形態によるペダルカバーを示す側面図であり、ペダルに装着した状態を示す。
【図8】図7のペダルカバーをペダルに装着する際の手順を説明する図である。
【図9】ペダルを覆うシュリンクフィルムを単に収縮させたときの状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0046】
1 ペダルカバー
1a カバー本体部
1b 係止部
2 ペダル
3 ペダル本体
4 突出部
4a 曲面(移行部分)
21 プラスチック
22 型
31 第2実施形態のペダルカバー
32 上カバー部
32a カバー本体部
32b 前凹部(係合部、係止部)
32c 後ろ凹部(係合部、係止部)
33 下カバー部
33a 前凸部(係止部、係合部)
33b 後ろ凸部(係止部、係合部)
41 第3実施形態のペダルカバー
42 シュリンクフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピアノのペダルに着脱自在に装着されるピアノのペダルカバーであって、
プラスチックの真空成形により、前記ペダルの外形に沿う形状に形成されていることを特徴とするピアノのペダルカバー。
【請求項2】
前記ペダルカバーは、
前記ペダルを上方から覆うカバー本体部と、
このカバー本体部の周縁部に設けられ、前記ペダルの底面の下側に回り込んだ状態で、当該ペダルの周縁部に係止される係止部と、
を有していることを特徴とする請求項1に記載のピアノのペダルカバー。
【請求項3】
前記ペダルカバーは、
前記ペダルを上方から覆う上カバー部と、
この上カバー部に対し折り畳み自在に形成され、折り畳まれた状態で、前記ペダルを下方から覆う下カバー部と、
前記上カバー部および前記下カバー部の一方に設けられた係合部と、
前記上カバー部および前記下カバー部の他方に設けられ、前記上カバー部および前記下カバー部が前記ペダルを上下から覆った状態で、前記係合部に係合することにより、前記上カバー部および前記下カバー部を互いに係止する係止部と、
を有していることを特徴とする請求項1に記載のピアノのペダルカバー。
【請求項4】
ペダル本体およびこのペダル本体から外方に突出した突出部を有するピアノのペダルに装着されたピアノのペダルカバーであって、
前記ペダル本体および前記突出部を覆うように、前記ペダルに装着されたシュリンクフィルムで構成され、
当該シュリンクフィルムの収縮の際に、当該シュリンクフィルムを前記ペダル本体と前記突出部との移行部分に押圧することにより、当該シュリンクフィルムが、前記移行部分に密着した状態で装着されていることを特徴とするピアノのペダルカバー。
【請求項5】
ペダル本体およびこのペダル本体から外方に突出した突出部を有するピアノのペダルにペダルカバーを装着するペダルカバーの装着方法であって、
前記ペダル本体および前記突出部をシュリンクフィルムで覆う被覆工程と、
前記シュリンクフィルムを前記ペダル本体と前記突出部との移行部分に押圧しながら、当該シュリンクフィルムを収縮させる収縮工程と、
を備えていることを特徴とするペダルカバーの装着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−309014(P2006−309014A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−133543(P2005−133543)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)