ピアノの遠隔監視システム
【課題】的確な時期に調律などの注意喚起を行うことができるシステムを提供する。
【解決手段】ピアノ監視端末10は、動作検知手段15と、マイクロフォン16と、ピアノの演奏開始を判別する演奏開始判別機能35と、演奏開始判別機能35により演奏開始が判断されると、マイクロフォン16を介して得られた音を周波数データに変換する変換機能36と、インターネット3を介して周波数データを含むピアノ監視情報をサーバ20に送信する送信機能37とを備える。サーバ20は、ピアノ監視情報を蓄積および管理する履歴管理機能22と、判定データ21aを設定する設定機能23と、ピアノ監視情報と判定データ21aに基づきピアノの異常の有無を判断する状態判別機能24と、状態判別機能24によりピアノに異常があると判断されると、異常があると判断されたピアノの管理者の登録アドレスに宛てて注意喚起の情報を送信する発報機能25とを備える。
【解決手段】ピアノ監視端末10は、動作検知手段15と、マイクロフォン16と、ピアノの演奏開始を判別する演奏開始判別機能35と、演奏開始判別機能35により演奏開始が判断されると、マイクロフォン16を介して得られた音を周波数データに変換する変換機能36と、インターネット3を介して周波数データを含むピアノ監視情報をサーバ20に送信する送信機能37とを備える。サーバ20は、ピアノ監視情報を蓄積および管理する履歴管理機能22と、判定データ21aを設定する設定機能23と、ピアノ監視情報と判定データ21aに基づきピアノの異常の有無を判断する状態判別機能24と、状態判別機能24によりピアノに異常があると判断されると、異常があると判断されたピアノの管理者の登録アドレスに宛てて注意喚起の情報を送信する発報機能25とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピアノについて的確な時期に調律などのサービスを提供するためのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外部から入力される音響波形の周波数と所定の調律対象周波数のずれを示す表示物を所定の表示更新周期毎に更新して表示する表示器を有する調律器が開示されている。この調律器は、外部からの音響波形を入力する入力手段と、入力された音響波形から、表示更新周期よりも細かい分解能からなる調律対象周波数に応じた周期毎に、所定の時間範囲にわたる波形区間を、それぞれ抽出する抽出手段と、抽出された各波形区間毎に、この区間内の波形の周期性を明示する表示情報を作成する表示情報作成手段と、表示更新周期の一周期内で作成された各波形区間毎の表示情報に重ね合わせて、この重ね合わせた多値の情報に応じた表示形態で表示器に表示させる表示制御手段とを具えている。
【特許文献1】特開2007−11023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ピアノの調律は、一般には、ユーザ自身が行うのではなく、そのピアノを販売した、あるいはメンテナンスを委託された楽器店などの事業者が行うことが多い。事業者は、任意の時期にダイレクトメールや電話などの手法により、ユーザ(顧客)に調律の必要性を伝えるなどしている。しかしながら、ピアノの設置環境や使用状況によって、調律が必要な時期には差があるため、必ずしも的確な時期に調律を促すことはできていない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様は、個々のピアノに設置されたピアノ監視端末と、そのピアノ監視端末とネットワークを介して通信可能な監視サーバとを有するピアノの遠隔監視システムである。この遠隔監視システムにおいて、ピアノ監視端末は、ピアノの可動部分のいずれかの動きを検知するための動作検知手段と、このピアノ監視端末に内蔵またはピアノの内部に設置されたマイクロフォンと、動作検知手段からの情報により、ピアノの演奏開始を判別する演奏開始判別機能と、演奏開始判別機能により演奏開始が判断されると、マイクロフォンを介して得られた音をデジタル化して調律確認用の周波数データに変換する変換機能と、ネットワークを介して周波数データを含むピアノ監視情報を監視サーバに送信する送信機能とを備えている。監視サーバは、個々のピアノについて、ピアノ監視端末より送信されたピアノ監視情報を蓄積および管理する履歴管理機能と、個々のピアノの状態判定のための、周波数しきい値を含む判定データを設定する設定機能と、ピアノ監視情報および判定データに基づき個々のピアノの異常の有無を判断する第1の状態判別機能と、第1の状態判別機能によりいずれかのピアノに異常があると判断されると、異常があると判断されたピアノの管理者の登録アドレスに宛てて注意喚起の情報を送信する発報機能とを備えている。ピアノの管理者は、例えば、ユーザであってもよく、また、ピアノの管理を委託された第3者(調律師や、ピアノの調律を含む管理を行う事業者など)であってもよい。
【0005】
このピアノの遠隔監視システムによれば、ピアノ監視端末の動作検知手段により、ピアノの可動部分のいずれかの動きが検知される。このため、動作検知手段からの情報により、演奏開始判別機能によってピアノの演奏開始を判別でき、他の音源、例えばオーディオ装置などからの音と、監視対象のピアノの音とを明確に区別できる。演奏開始判別機能により、演奏開始が判断されると、変換機能により、ピアノ監視端末に内蔵またはピアノの内部に設置されたマイクロフォンを介して得られた音をデジタル化して調律確認用の周波数データに変換する。そして、送信機能により、ネットワークを介して周波数データを含むピアノ監視情報を監視サーバに送信する。
【0006】
このピアノの遠隔監視システムによれば、周波数データを含むピアノ監視情報を、ネットワークを介して、ピアノの調律を行う事業者などが管理している監視サーバに送ることができる。したがって、ピアノの調律を行う事業者は、ピアノが設置されているユーザのもとに出向くことなく、周波数データを含むピアノ監視情報を得る(蓄積および管理する)ことができる。しかも、監視サーバに送信される音データ(ピアノ監視情報に含まれる音データ)は、アナログデータではなく、デジタル化された周波数データであるため、データ量が軽く、しかも、音データが劣化しない。
【0007】
さらに、このピアノの遠隔監視システムによれば、監視サーバは、履歴管理機能により、個々のピアノについて、ピアノ監視端末より送信されたピアノ監視情報を蓄積および管理しているとともに、設定機能により、個々のピアノの状態判定のための、周波数しきい値を含む判定データを設けている。そして、監視サーバの第1の状態判別機能により、ピアノ監視情報および判定データに基づき個々のピアノの異常の有無が判断され、いずれかのピアノに異常があると判断されると、監視サーバの発報機能により、異常があると判断されたピアノの管理者の登録アドレスに宛てて注意喚起の情報を自動的に送信できる。
【0008】
このように、このピアノの遠隔監視システムによれば、監視サーバにより、的確な時期、すなわち、何らかの異常があると判断されたときに、ピアノの管理者に対して、自動的に注意を喚起することができる。管理者がユーザである場合、ユーザに自動的に注意喚起を行うことにより、ピアノの調律を行う事業者などは、ユーザ(顧客)に調律の必要性を伝えるために、ダイレクトメールや電話などの手法を用いる必要が無く、手間およびコストが省ける。さらに、コストパフォーマンスの改善に加えて、ユーザが要望しているタイミングで調律などのメンテナンスを申し込むことができるのでサービスを提供し易く、ユーザを囲い込み易い。ユーザも、的確な時期に、忘れずに調律してもらうことができる。また、ピアノ監視端末より、送信されたピアノ監視情報を蓄積および管理することができるため、ピアノの調律を行う事業者は、個々のピアノの状態を遠隔で監視でき、長期的な計画を立てて、少ない人数で、ユーザに対してピアノの状態を良好に保持するサービスを提供できる。
【0009】
このピアノの遠隔監視システムにおいて、ピアノ監視端末は、周波数データが予め設定されたしきい値を超えているか否かを判断する第2の状態判別機能を含んでいてもよい。ピアノ監視端末単体でも、ピアノの異常の有無(しきい値を超えているか否か)を判断できる。このピアノ監視端末を用いた場合、ネットワークに繋がなくても、このピアノ監視端末においてピアノの異常の有無を判断できる。したがって、このようなピアノ監視端末は、単体でも流通させることができる。また、ピアノ監視端末が一次的に異常を判断して、その結果を監視サーバに送信しても良い。
【0010】
また、ピアノの調律のタイミングは、単純に、周波数データの高低だけでなく、温度や湿度、あるいは、前回調律してからの経過時間などにより総合的に判断することが好ましい。また、調律のタイミングは、季節(夏季や冬季)なども考慮し、総合的に判断することが好ましい。
【0011】
したがって、このピアノの遠隔監視システムにおいて、ピアノ監視端末は、さらに、ピアノの内部の温度および/または湿度を含む設置環境データを第1の時間間隔毎に測定する測定機能を備え、送信機能は、設置環境データを含むピアノ監視情報を監視サーバに送信することが好ましい。この場合、監視サーバにおいては、設定機能は、温度および/または湿度のしきい値を含む判定データを設定する機能を含むことが好ましい。温度および/または湿度のしきい値は、例えば、温度および/または湿度の最大値・最小値などであってもよく、また、温度および/または湿度の一定期間の変動幅などであってもよい。第1の状態判別機能により、周波数データの判定データと、温度および/または湿度の判定データとに基づいて、ピアノの異常の有無を判断することができる。
【0012】
このピアノの遠隔監視システムにおいて、登録アドレスの一例は、ピアノ監視端末に割り当てられたインターネットアドレスである。ピアノ監視端末に注意喚起の情報を送信することができる。この場合、ピアノ監視端末において、信号を点滅させたり、音声案内を行うなどすることにより、ユーザに注意喚起を行うことができる。
【0013】
また、登録アドレスは、ピアノの管理者が有するパーソナルコンピュータに設定されたメールアドレスであってもよい。すなわち、登録アドレスの他の例は、個々のピアノの管理者のメールアドレスである。この場合、監視サーバの発報機能は、注意喚起の情報を含むメールを送信するようにすることが好ましい。
【0014】
ピアノ監視端末の動作検知手段の一例は、ピアノの鍵盤の動きを検知する手段を含むものである。ピアノ監視端末の動作検知手段の他の例は、ピアノのハンマの動きを検知する手段を含むものである。ピアノ監視端末の動作検知手段のさらに他の例は、ピアノの鍵盤蓋がひらいたことを検知する手段を含むものである。このような動作検知手段を用いることにより、演奏開始判別機能によってピアノの演奏開始を判断することができる。
【0015】
本発明の他の態様は、個々のピアノに設置されたピアノ監視端末とネットワークを介して通信可能な監視サーバにより、ピアノを遠隔監視する方法である。ピアノ監視端末は、ピアノの可動部分のいずれかの動きを検知するための動作検知手段と、このピアノ監視端末に内蔵またはピアノの内部に設置されたマイクロフォンと、動作検知手段からの情報により、ピアノの演奏開始を判別する演奏開始判別機能と、演奏開始判別機能により演奏開始が判断されると、マイクロフォンを介して得られた音をデジタル化して調律確認用の周波数データに変換する変換機能と、ネットワークを介して周波数データを含むピアノ監視情報を監視サーバに送信する送信機能とを備えている。この方法は、以下の工程を含む。
(a)個々のピアノについて、ピアノ監視端末より送信されたピアノ監視情報を蓄積および管理すること(蓄積および管理する工程)
(b)個々のピアノの状態判定のための、周波数しきい値を含む判定データを設定すること(設定する工程)
(c)ピアノ監視情報および判定データに基づき個々のピアノの異常の有無を判断すること(判断する工程)
(d)いずれかのピアノに異常があると判断されると、異常があると判断されたピアノの管理者の登録アドレスに宛てて注意喚起の情報を送信すること(送信する工程)
【0016】
この方法によれば、ピアノの調律を行う事業者は、ピアノが設置されているユーザのもとに出向くことなく、周波数データを含むピアノ監視情報を得る(蓄積および管理する)ことができる。しかも、監視サーバに送信される音データ(ピアノ監視情報に含まれる音データ)は、アナログデータではなく、デジタル化された周波数データであるため、データ量が軽く、しかも、音データが劣化しない。
【0017】
また、この方法によれば、監視サーバにより、的確な時期、すなわち、何らかの異常があると判断されたときに、ピアノの管理者に対して、自動的に注意を喚起することができる。また、ピアノ監視端末より、送信されたピアノ監視情報を蓄積および管理することができるため、ピアノの調律を行う事業者は、個々のピアノの状態を遠隔で常に監視することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態にかかるピアノの遠隔監視システムの概略構成を示している。このピアノの遠隔監視システム1は、各家庭51などに設置されたピアノ2を、ピアノの調律を行う事業者あるいはピアノ販売店などの事業者52が管理できるようにするためのものである。事業者52の側で情報を管理するための監視サーバ20は、事業者52の施設内に設置されていても良く、インターネットにより接続された外部の施設に設置されていても良い。いずれの場合も、監視サーバ20が、外部のコンピュータネットワークであるインターネット3を介して、個々のピアノ2に設置されたピアノ監視端末10と接続され、監視サーバ20は、個々のピアノ2に設置されたピアノ監視端末10とネットワーク3を介して通信可能に設定される。なお、図1では、1つのピアノのみを図示しているが、このピアノの遠隔監視システム1には、複数のピアノが含まれていてもよい。
【0019】
ピアノ2が設置されている家庭51内には、インターネット3と繋がるルータ4を介して、家庭内LAN5が形成されている。LAN5には、ピアノ監視端末10とパーソナルコンピュータ(マシン)6とが接続されている。ピアノ監視端末10は、予めピアノ2にセットされ、あるいは一体に組み込まれていてもよく、後付けで、すなわち、購入後にピアノ2にセットされてもよい。
【0020】
図2は、図1のピアノの遠隔監視システム1に含まれるピアノ監視端末10および監視サーバ20の概略構成を示している。ピアノ監視端末10は、インターフェイス11と、コントローラ12と、温度計13と、湿度計14と、ピアノ2の可動部分のいずれかの動きを検知するための動作検知手段15と、ピアノ監視端末10に内蔵されたマイクロフォン16とを備えている。マイクロフォン16は、ピアノ2の内部に設置してもよい。ピアノ監視端末10は、インターフェイス11によりLAN5およびルータ4を介してインターネット3と接続されている。
【0021】
動作検知手段15としては、ピアノ2の鍵盤の動きを検知する手段を含むものを用いることができる。鍵盤の動きを検知する手段としては、例えば、特開2007−78956号公報に記載の技術を用いることができる。特開2007−78956号公報には、ピアノの鍵盤の各鍵に対応するLEDによって、演奏教習の曲データのノートオンイベントに応じて押鍵すべき鍵に光を照射させて押鍵をガイドし、鍵盤の各鍵にセンサから光を照射して、その反射光によって各鍵の演奏状態を検出することが記載されている。
【0022】
なお、動作検知手段15としては、ピアノ2のハンマの動きを検知する手段を含むものを用いてもよい。ハンマの動きを検知する手段としては、例えば、特開2006−84823号公報に記載の技術を用いることができる。特開2006−84823号公報には、自動演奏ピアノは、演奏操作に応じて変位し、対応する弦を打弦するハンマと、該ハンマの動きを検出するセンサを有し、センサはハンマの動きに応じた出力電圧(検出信号)をCPUを含む信号処理モジュールに出力することが記載されている。ROM或いはRAM等適宜のメモリには、ハンマが打弦したときに弦に生じうるたわみ量を記憶したたわみ量出力テーブルが記憶されている。制御系はセンサの出力と該テーブルから出力されたたわみ量に基づき打弦判定を行うための閾値を設定し、センサの出力と該閾値とを用いて演奏データを生成することが記載されている。
【0023】
さらに、動作検知手段15としては、ピアノ2の鍵盤蓋がひらいたことを検知する手段を含むものを用いてもよい。例えば、特開平10−124040号公報には、奥屋根に回動自在に取り付けられ、開位置と閉位置の間で開閉される鍵盤蓋の開閉を制御するための鍵盤蓋の開閉制御装置であって、奥屋根がピアノ本体に着脱自在に取り付けられるとともに、一端部が鍵盤蓋に対して回動自在に連結された連結バーと、奥屋根に取り付けられるとともに、連結バーに係合し、鍵盤蓋が閉位置側へ回動するときに連結バーを介して鍵盤蓋に負荷を加える加負荷手段と、を備えていることが記載されている。このような開閉制御装置であれば適当なセンサを設けることにより、鍵盤蓋がひらいたことを検知することができる。また、手動で鍵盤蓋を開閉する場合も適当なセンサあるいはリミットスイッチなどの手段を配置することにより、鍵盤蓋がひらいたことを検知できる。
【0024】
コントローラ12は、CPUあるいはマイクロプロセッサなどを備えたプログラマブルなデバイスであり、不図示のROMあるいはその他のメモリに格納されているプログラムをロードすることにより各機能を実現する。コントローラ12は、温度計13により温度を測定する温度測定機能33と、湿度計14により湿度を測定する湿度測定機能34とを備えている。温度測定機能33は、ピアノ2の内部にセットされた温度計13により、ピアノ2の内部の温度を含む設置環境データを第1の時間間隔毎に測定する。湿度測定機能34は、ピアノ2の内部にセットされた湿度計14により、ピアノ2の内部の湿度を含む設置環境データを第1の時間間隔毎に測定する。すなわち、本例では、設置環境データは、定期的に測定された温度データと湿度データとを含んでいる。
【0025】
コントローラ12は、さらに、演奏開始判別機能35と、周波数変換機能36と、送受信機能37とを備えている。演奏開始判別機能35は、動作検知手段15からの情報により、ピアノ2の演奏開始を判別する機能である。周波数変換機能36は、演奏開始判別機能35により演奏開始が判断されたときに、ピアノ2の内部にセットされたマイクロフォン16を介して得られた音をデジタル化して調律確認用の周波数データに変換する機能である。送受信機能37は、インターフェイス11を介してインターネット3にアクセスし、周波数データと、ピアノ2の内部の温度および湿度を含む設置環境データとを含むピアノ監視情報61を、監視サーバ20に送信する機能を含んでいる。
【0026】
監視サーバ20は、CPU、HDDなどのストレージ21をはじめとする、コンピュータあるいはサーバとしてのハードウェア資源と、それらのハードウェア資源を動作させるためのソフトウェア資源を備えており、監視プログラムをロードすることによりピアノ監視用の機能を実現する。監視サーバ20は、履歴管理機能22と、設定機能23と、状態判別機能(第1の状態判別機能)24と、発報機能25と、ユーザ管理機能26とを備えており、これらの機能はストレージ21に格納された各種の情報に基づき動作する。ストレージ21には、監視対象の個々のピアノ2についてのピアノ監視情報61、個々のピアノ2のユーザの情報、個々のユーザの登録アドレス(本例では、メールアドレス)、および判定データ21aなどが格納されている。判定データ21aには、個々のピアノ2の状態判定のためのしきい値、本例では、上下の周波数しきい値、上下の温度しきい値、および上下の湿度しきい値が含まれている。
【0027】
温度しきい値は、例えば、下限が0℃で、上限が30℃などとすることができる。温度のしきい値は、これに加え、または、これと置換し、1日または一定の期間内の温度の変動幅などとしてもよい。湿度しきい値は、例えば、相対湿度で下限が20%で、上限が90%などとすることができる。湿度のしきい値は、これに加え、または、これと置換し、1日または一定の期間内の湿度の変動幅などとしてもよい。周波数しきい値は、ピアノ2を使用するユーザの性質(プロなのか、アマチュアなのか)や、ピアノ2を使用する環境(コンサートホールなのか、家庭なのか、高温になりやすい(窓際)、低温になりやすい、高湿度になりやすい、低湿度になりやすい)などにより、ピアノ2の調律を行う事業者などがプロフェッショナルとしてのノウハウなどに基づき任意に設定できる。一般に、コンサートホールで使用するピアノ2は、家庭で使用するピアノ2と比べて、厳しい判断基準(しきい値)を持つようになる。
【0028】
これらのしきい値を含む判定データ21aは、例えば、周波数データの判定データがしきい値を超えた場合であっても、温度および/または湿度の判定データにより、温度および/または湿度が一時的に上昇または下降したことに起因する可能性がある場合には、監視を続け、一定時間後、周波数データの判定データがしきい値の範囲内に戻った場合には、注意喚起の情報の送信を行わないなどの設定が可能である。一方、周波数データがしきい値の範囲内である場合でも、温度および/または湿度が、長期にわたって高すぎるあるいは低すぎる状態が続いた場合には、ピアノの音程が狂い易くなる可能性があるため、注意喚起の情報を送信するように設定することも可能である。
【0029】
履歴管理機能22は、個々のピアノ2について、ピアノ監視端末10より送信されたピアノ監視情報61を蓄積および管理する機能である。ピアノ監視情報61は、ストレージ21に格納される。設定機能23は、周波数しきい値、温度しきい値、および湿度しきい値を含む判定データ21aを設定する機能である。状態判別機能24は、ピアノ監視情報61および判定データ21aに基づき個々のピアノ2の異常の有無を判断する機能である。発報機能25は、状態判別機能24によりいずれかのピアノ2に異常があると判断されると、異常があると判断されたピアノ2のユーザの登録アドレス(メールアドレス)に宛てて、パーソナルコンピュータ6に注意喚起の情報65を送信する機能である。なお、発報機能25は、状態判別機能24によりいずれかのピアノ2に異常があると判断されると、異常があると判断されたピアノ2の管理を委託された第3者の登録アドレス(メールアドレス)に宛てて、注意喚起の情報65を送信するものであってもよい。
【0030】
ピアノ監視端末10の送受信機能37は、周波数データを含むピアノ監視情報61を監視サーバ20に送信する。ピアノ監視端末10は、周波数データが予め設定されたしきい値を超えているか否かを判断する状態判別機能(第2の状態判別機能)を備えていても良い。そのようなピアノ監視端末10は、周波数データとともに、あるいは、周波数データとは別に、ピアノ2の周波数データに異常があることを判断した情報を含むピアノ監視情報61を監視サーバ20に送信しても良い。また、ピアノ監視端末10の側において異常を判断するためのしきい値は、ピアノ監視端末10の側にディフォルトで設定されていても良く、また、マニュアルで設定できるようにしておいても良い。さらに、ピアノ監視端末10が監視サーバ20から判定データ21aを取得しても良く、その機能をピアノ監視端末10の送受信機能37に付加しても良い。
【0031】
ピアノ2の周波数の異常は、単に周波数の高低だけでなく、温度の高低、湿度の高低、調律してからの経過時間、利用環境などにより、総合的に判断することが好ましい。また、ピアノ2が置かれる環境は、夏季では高く、冬季では低くなることが予想されるため、日時の情報をもとに季節も判断に含めることが好ましい。本例では、監視サーバ20は、これらの情報を総合的に判断するように設定されている。
【0032】
例えば、サーバ20の状態判別機能24は、個々のピアノに対する判定データ21aにより、周波数データの判定データ21aがしきい値を超えた場合であっても、温度および/または湿度が一時的に上昇または下降したことに起因する可能性があると判断された場合には、一定時間監視を続ける。この場合、状態判別機能24は、一定時間後、周波数データの判定データ21aがしきい値の範囲内に戻った場合には、発報機能25より注意喚起の情報65の送信を行わず、一定時間経った後であっても、周波数データの判定データ21aが戻らない(しきい値を超えている)場合に、発報機能25より注意喚起の情報65の送信を行う。
【0033】
一方、周波数データがしきい値の範囲内である場合でも、温度および/または湿度が、長期にわたって高すぎるあるいは低すぎる状態が続いた場合には、ピアノ2の音程が狂い易くなる可能性がある。また、エアコンなどの冷暖房装置からの風が直接ピアノ2に向けられている場合、短時間で調律に狂いが生じる可能性が高い。サーバの状態判別機能24は、ピアノ監視情報61より、このような状態を検知すると、発報機能25より注意喚起の情報65を送信する。ピアノ監視情報61に、温度、湿度などの情報を含めて監視することにより、ピアノ2の調性に悪影響を及ぼす可能性がある設置状況に対して、警告を出すことが可能となる。その結果、ピアノ2の長寿命化が果たされる。
【0034】
さらに、サーバ20の日時の情報より夏季であることをサーバ20の状態判別機能24はわかる。夏季は、ある程度室温が高くなることが予想されるため、調律師は、その室温に合わせて調律することがある。したがって、サーバ20の状態判別機能24は、そのような調律師の調律方法のノウハウを含めた判定データ21aに基づき、個々のピアノ2の状態を判断できる。真夏であれば、昼間、一時的に室温が高温になるかもしれず、そのような場合には、しばらく様子をみるような判定データ21aを用意しても良い。さらに、サーバ20の状態判別機能24が、周波数データがしきい値から外れる頻度が通常より高く、あるいは期間が短く、ピアノ監視情報61に含まれる温度が高いことより、ピアノ2に直射日光があたるような環境であると想定されると、ピアノ2の設置環境の改善も含めた注意喚起の情報65を発報機能25から出力しても良い。例えば、ピアノ2が設置されている部屋のカーテンを閉めるなどのアドバイスが可能である。
【0035】
システム1においては、各ピアノ2に取り付けられたピアノ監視端末10からサーバ20に定期的に送られるピアノ監視情報61に含まれる周波数データ、温度データ、および/または湿度データにより個々のピアノ2の状態を判断する。ピアノ監視端末10の送受信機能37は、定期的にピアノ監視情報61を発信する。それとともに、適当なしきい値を内部に保持したり、一定期間のピアノ監視情報61を保持することにより、送受信機能37は、周波数データ、温度データ、および/または湿度データの日動変動が大きいとき、または設定値を超えたときに、そのデータを含むピアノ監視情報61をサーバ20のアドレスに宛てて送信してもよい。
【0036】
また、本例のシステム1では、演奏開始判別機能35によって演奏開始が判断されると、周波数変換機能36によりマイクロフォン16を介して得られた音をデジタル化して調律確認用の周波数データに変換し、送受信機能37により、インターネット3を介して周波数データを含むピアノ監視情報61が監視サーバ20に送信される。このため、監視サーバ20において、ピアノ2が使用されている時間を管理することもできる。監視サーバ20は、日々のピアノ2の利用状況や調律情報を含む定期的な報告66を、一定間隔で、ピアノ2の管理者(例えば、ユーザおよび/またはピアノの管理を委託された第3者)の登録アドレスに宛ててメールなどにより送信したり、管理者(例えば、ユーザおよび/またはピアノの管理を委託された第3者)がアクセス可能でセキュリティが確保されたホームページにアップするようにしてもよい。
【0037】
図3は、ピアノの遠隔監視方法の概略をフローチャートにより示している。本例のピアノの遠隔監視システム1に含まれているピアノ監視端末10は、以下のように動作する。
【0038】
まず、ステップ101において、動作検知手段15によりピアノ2の可動部分の動きが検知され、その情報に基づき演奏開始判別機能35によりピアノ2の演奏開始が判断される。演奏開始になると、ステップ102において、マイクロフォン16により音を検出する。マイクロフォン16は、ピアノ2の音をできるだけ効率良く検出するためにピアノ2の内部に設置されていることが望ましい。ピアノ監視端末10は、演奏開始判別機能35により演奏が開始されたと判断された後に、マイクロフォン16により音を検知する。このため、ピアノ2から発せられた音ではない他の音がマイクロフォン16により検出され、監視対象のピアノ以外の音源からの音によりピアノ2の状態が判断されることを防ぐことができる。ステップ103において、周波数変換機能36により、マイクロフォン16を介して得られた音をデジタル化して調律確認用の周波数データに変換する。ステップ104において、変換された周波数データを含むピアノ監視情報61が監視サーバ20に送信される。
【0039】
また、ステップ105において、所定の時間毎のサンプリングタイミングとなる(第1の時間が経過する)と、ステップ106において、定期的に温度および湿度を検出する。そして、ステップ107において、検出された温度データおよび湿度データを含むピアノ監視情報61が監視サーバ20に送信される。
【0040】
図4は、システム1に含まれる監視サーバ20によりピアノ2を遠隔監視する方法の概略をフローチャートにより示している。
【0041】
まず、ステップ111において、判定データ21aの設定が必要な場合には、ステップ112において、判定データ21aを設定する。上述したように、判定データ21aは、ピアノ2を使用するユーザの性質や、ピアノ2を使用する環境などにより、ピアノ2の調律を行う事業者などがプロの見地で任意に設定できる。判定データ21aの設定が要求されるタイミングは、ユーザがピアノを購入したとき、事業者がピアノのメンテナンスサービスを請け負ったときといった初期の設定に加え、監視対象のピアノの調律を行ったとき、ユーザの技能がステップアップしたときなどがある。
【0042】
ステップ113において、ピアノ監視端末10からピアノ監視情報61を受信すると、ステップ114において、履歴管理機能22により、ストレージ21におけるピアノ監視情報の履歴を更新する。その後、ステップ115において、状態判別機能24により、ピアノ監視情報61および判定データ21aに基づき、個々のピアノ2の異常の有無を判断する。ステップ116において、異常がある場合には、ステップ117において、発報機能25により、ピアノ2のユーザの登録アドレスに宛てて注意喚起の情報65が送信される。
【0043】
このように、本例のピアノの遠隔監視システム1およびピアノの遠隔監視方法によれば、ピアノ2の調律を行う事業者は、ピアノ2が設置されているユーザのもとに出向かなくても、周波数データを含むピアノ監視情報を得ることができる。このため、監視対象のピアノ2の状態をいつでも的確に把握することができる。監視サーバ20に送信される音データ(ピアノ監視情報に含まれる音データ)は、アナログデータではなく、デジタル化された周波数データであるため、データ量が軽く、しかも、音データが劣化しない。
【0044】
したがって、本例のピアノの遠隔監視システム1およびピアノの遠隔監視方法によれば、監視サーバ20により、的確な時期、すなわち、何らかの異常があると判断されたときに、ピアノ2のユーザに対して、自動的に注意を喚起することができる。また、ピアノ監視端末10より、送信されたピアノ監視情報を蓄積および管理することができるため、利用状況や調律情報を、一定間隔で、ピアノ2のユーザの登録アドレスに宛てて送信することもできる。このため、従来は、売り切りの状態であったピアノについて、ユーザに対して継続的なメンテナンスサービスを提供できる。さらに、監視対象のピアノの使用状況をユーザまたは予め登録された第3者などに定期的に通知するなど、新たなサービスを提供することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態にかかるピアノの遠隔監視システムの概略構成を示す図。
【図2】図1のピアノの遠隔監視システムのピアノ監視端末および監視サーバの概略構成を示す図。
【図3】ピアノの遠隔監視方法の概略を説明するためのフローチャート。
【図4】監視サーバによりピアノを遠隔監視する方法の概略を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0046】
1 ピアノの遠隔監視システム、 2 ピアノ
3 インターネット(ネットワーク)、 10 ピアノ監視端末
15 動作検知手段、 16 マイクロフォン
20 監視サーバ、 21a 判定データ
22 履歴管理機能、 23 設定機能
24 状態判別機能、 25 発報機能
33 温度測定機能、 34 湿度測定機能
35 演奏開始判別機能、 36 周波数変換機能(変換機能)
37 送受信機能(送信機能)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピアノについて的確な時期に調律などのサービスを提供するためのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外部から入力される音響波形の周波数と所定の調律対象周波数のずれを示す表示物を所定の表示更新周期毎に更新して表示する表示器を有する調律器が開示されている。この調律器は、外部からの音響波形を入力する入力手段と、入力された音響波形から、表示更新周期よりも細かい分解能からなる調律対象周波数に応じた周期毎に、所定の時間範囲にわたる波形区間を、それぞれ抽出する抽出手段と、抽出された各波形区間毎に、この区間内の波形の周期性を明示する表示情報を作成する表示情報作成手段と、表示更新周期の一周期内で作成された各波形区間毎の表示情報に重ね合わせて、この重ね合わせた多値の情報に応じた表示形態で表示器に表示させる表示制御手段とを具えている。
【特許文献1】特開2007−11023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ピアノの調律は、一般には、ユーザ自身が行うのではなく、そのピアノを販売した、あるいはメンテナンスを委託された楽器店などの事業者が行うことが多い。事業者は、任意の時期にダイレクトメールや電話などの手法により、ユーザ(顧客)に調律の必要性を伝えるなどしている。しかしながら、ピアノの設置環境や使用状況によって、調律が必要な時期には差があるため、必ずしも的確な時期に調律を促すことはできていない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様は、個々のピアノに設置されたピアノ監視端末と、そのピアノ監視端末とネットワークを介して通信可能な監視サーバとを有するピアノの遠隔監視システムである。この遠隔監視システムにおいて、ピアノ監視端末は、ピアノの可動部分のいずれかの動きを検知するための動作検知手段と、このピアノ監視端末に内蔵またはピアノの内部に設置されたマイクロフォンと、動作検知手段からの情報により、ピアノの演奏開始を判別する演奏開始判別機能と、演奏開始判別機能により演奏開始が判断されると、マイクロフォンを介して得られた音をデジタル化して調律確認用の周波数データに変換する変換機能と、ネットワークを介して周波数データを含むピアノ監視情報を監視サーバに送信する送信機能とを備えている。監視サーバは、個々のピアノについて、ピアノ監視端末より送信されたピアノ監視情報を蓄積および管理する履歴管理機能と、個々のピアノの状態判定のための、周波数しきい値を含む判定データを設定する設定機能と、ピアノ監視情報および判定データに基づき個々のピアノの異常の有無を判断する第1の状態判別機能と、第1の状態判別機能によりいずれかのピアノに異常があると判断されると、異常があると判断されたピアノの管理者の登録アドレスに宛てて注意喚起の情報を送信する発報機能とを備えている。ピアノの管理者は、例えば、ユーザであってもよく、また、ピアノの管理を委託された第3者(調律師や、ピアノの調律を含む管理を行う事業者など)であってもよい。
【0005】
このピアノの遠隔監視システムによれば、ピアノ監視端末の動作検知手段により、ピアノの可動部分のいずれかの動きが検知される。このため、動作検知手段からの情報により、演奏開始判別機能によってピアノの演奏開始を判別でき、他の音源、例えばオーディオ装置などからの音と、監視対象のピアノの音とを明確に区別できる。演奏開始判別機能により、演奏開始が判断されると、変換機能により、ピアノ監視端末に内蔵またはピアノの内部に設置されたマイクロフォンを介して得られた音をデジタル化して調律確認用の周波数データに変換する。そして、送信機能により、ネットワークを介して周波数データを含むピアノ監視情報を監視サーバに送信する。
【0006】
このピアノの遠隔監視システムによれば、周波数データを含むピアノ監視情報を、ネットワークを介して、ピアノの調律を行う事業者などが管理している監視サーバに送ることができる。したがって、ピアノの調律を行う事業者は、ピアノが設置されているユーザのもとに出向くことなく、周波数データを含むピアノ監視情報を得る(蓄積および管理する)ことができる。しかも、監視サーバに送信される音データ(ピアノ監視情報に含まれる音データ)は、アナログデータではなく、デジタル化された周波数データであるため、データ量が軽く、しかも、音データが劣化しない。
【0007】
さらに、このピアノの遠隔監視システムによれば、監視サーバは、履歴管理機能により、個々のピアノについて、ピアノ監視端末より送信されたピアノ監視情報を蓄積および管理しているとともに、設定機能により、個々のピアノの状態判定のための、周波数しきい値を含む判定データを設けている。そして、監視サーバの第1の状態判別機能により、ピアノ監視情報および判定データに基づき個々のピアノの異常の有無が判断され、いずれかのピアノに異常があると判断されると、監視サーバの発報機能により、異常があると判断されたピアノの管理者の登録アドレスに宛てて注意喚起の情報を自動的に送信できる。
【0008】
このように、このピアノの遠隔監視システムによれば、監視サーバにより、的確な時期、すなわち、何らかの異常があると判断されたときに、ピアノの管理者に対して、自動的に注意を喚起することができる。管理者がユーザである場合、ユーザに自動的に注意喚起を行うことにより、ピアノの調律を行う事業者などは、ユーザ(顧客)に調律の必要性を伝えるために、ダイレクトメールや電話などの手法を用いる必要が無く、手間およびコストが省ける。さらに、コストパフォーマンスの改善に加えて、ユーザが要望しているタイミングで調律などのメンテナンスを申し込むことができるのでサービスを提供し易く、ユーザを囲い込み易い。ユーザも、的確な時期に、忘れずに調律してもらうことができる。また、ピアノ監視端末より、送信されたピアノ監視情報を蓄積および管理することができるため、ピアノの調律を行う事業者は、個々のピアノの状態を遠隔で監視でき、長期的な計画を立てて、少ない人数で、ユーザに対してピアノの状態を良好に保持するサービスを提供できる。
【0009】
このピアノの遠隔監視システムにおいて、ピアノ監視端末は、周波数データが予め設定されたしきい値を超えているか否かを判断する第2の状態判別機能を含んでいてもよい。ピアノ監視端末単体でも、ピアノの異常の有無(しきい値を超えているか否か)を判断できる。このピアノ監視端末を用いた場合、ネットワークに繋がなくても、このピアノ監視端末においてピアノの異常の有無を判断できる。したがって、このようなピアノ監視端末は、単体でも流通させることができる。また、ピアノ監視端末が一次的に異常を判断して、その結果を監視サーバに送信しても良い。
【0010】
また、ピアノの調律のタイミングは、単純に、周波数データの高低だけでなく、温度や湿度、あるいは、前回調律してからの経過時間などにより総合的に判断することが好ましい。また、調律のタイミングは、季節(夏季や冬季)なども考慮し、総合的に判断することが好ましい。
【0011】
したがって、このピアノの遠隔監視システムにおいて、ピアノ監視端末は、さらに、ピアノの内部の温度および/または湿度を含む設置環境データを第1の時間間隔毎に測定する測定機能を備え、送信機能は、設置環境データを含むピアノ監視情報を監視サーバに送信することが好ましい。この場合、監視サーバにおいては、設定機能は、温度および/または湿度のしきい値を含む判定データを設定する機能を含むことが好ましい。温度および/または湿度のしきい値は、例えば、温度および/または湿度の最大値・最小値などであってもよく、また、温度および/または湿度の一定期間の変動幅などであってもよい。第1の状態判別機能により、周波数データの判定データと、温度および/または湿度の判定データとに基づいて、ピアノの異常の有無を判断することができる。
【0012】
このピアノの遠隔監視システムにおいて、登録アドレスの一例は、ピアノ監視端末に割り当てられたインターネットアドレスである。ピアノ監視端末に注意喚起の情報を送信することができる。この場合、ピアノ監視端末において、信号を点滅させたり、音声案内を行うなどすることにより、ユーザに注意喚起を行うことができる。
【0013】
また、登録アドレスは、ピアノの管理者が有するパーソナルコンピュータに設定されたメールアドレスであってもよい。すなわち、登録アドレスの他の例は、個々のピアノの管理者のメールアドレスである。この場合、監視サーバの発報機能は、注意喚起の情報を含むメールを送信するようにすることが好ましい。
【0014】
ピアノ監視端末の動作検知手段の一例は、ピアノの鍵盤の動きを検知する手段を含むものである。ピアノ監視端末の動作検知手段の他の例は、ピアノのハンマの動きを検知する手段を含むものである。ピアノ監視端末の動作検知手段のさらに他の例は、ピアノの鍵盤蓋がひらいたことを検知する手段を含むものである。このような動作検知手段を用いることにより、演奏開始判別機能によってピアノの演奏開始を判断することができる。
【0015】
本発明の他の態様は、個々のピアノに設置されたピアノ監視端末とネットワークを介して通信可能な監視サーバにより、ピアノを遠隔監視する方法である。ピアノ監視端末は、ピアノの可動部分のいずれかの動きを検知するための動作検知手段と、このピアノ監視端末に内蔵またはピアノの内部に設置されたマイクロフォンと、動作検知手段からの情報により、ピアノの演奏開始を判別する演奏開始判別機能と、演奏開始判別機能により演奏開始が判断されると、マイクロフォンを介して得られた音をデジタル化して調律確認用の周波数データに変換する変換機能と、ネットワークを介して周波数データを含むピアノ監視情報を監視サーバに送信する送信機能とを備えている。この方法は、以下の工程を含む。
(a)個々のピアノについて、ピアノ監視端末より送信されたピアノ監視情報を蓄積および管理すること(蓄積および管理する工程)
(b)個々のピアノの状態判定のための、周波数しきい値を含む判定データを設定すること(設定する工程)
(c)ピアノ監視情報および判定データに基づき個々のピアノの異常の有無を判断すること(判断する工程)
(d)いずれかのピアノに異常があると判断されると、異常があると判断されたピアノの管理者の登録アドレスに宛てて注意喚起の情報を送信すること(送信する工程)
【0016】
この方法によれば、ピアノの調律を行う事業者は、ピアノが設置されているユーザのもとに出向くことなく、周波数データを含むピアノ監視情報を得る(蓄積および管理する)ことができる。しかも、監視サーバに送信される音データ(ピアノ監視情報に含まれる音データ)は、アナログデータではなく、デジタル化された周波数データであるため、データ量が軽く、しかも、音データが劣化しない。
【0017】
また、この方法によれば、監視サーバにより、的確な時期、すなわち、何らかの異常があると判断されたときに、ピアノの管理者に対して、自動的に注意を喚起することができる。また、ピアノ監視端末より、送信されたピアノ監視情報を蓄積および管理することができるため、ピアノの調律を行う事業者は、個々のピアノの状態を遠隔で常に監視することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態にかかるピアノの遠隔監視システムの概略構成を示している。このピアノの遠隔監視システム1は、各家庭51などに設置されたピアノ2を、ピアノの調律を行う事業者あるいはピアノ販売店などの事業者52が管理できるようにするためのものである。事業者52の側で情報を管理するための監視サーバ20は、事業者52の施設内に設置されていても良く、インターネットにより接続された外部の施設に設置されていても良い。いずれの場合も、監視サーバ20が、外部のコンピュータネットワークであるインターネット3を介して、個々のピアノ2に設置されたピアノ監視端末10と接続され、監視サーバ20は、個々のピアノ2に設置されたピアノ監視端末10とネットワーク3を介して通信可能に設定される。なお、図1では、1つのピアノのみを図示しているが、このピアノの遠隔監視システム1には、複数のピアノが含まれていてもよい。
【0019】
ピアノ2が設置されている家庭51内には、インターネット3と繋がるルータ4を介して、家庭内LAN5が形成されている。LAN5には、ピアノ監視端末10とパーソナルコンピュータ(マシン)6とが接続されている。ピアノ監視端末10は、予めピアノ2にセットされ、あるいは一体に組み込まれていてもよく、後付けで、すなわち、購入後にピアノ2にセットされてもよい。
【0020】
図2は、図1のピアノの遠隔監視システム1に含まれるピアノ監視端末10および監視サーバ20の概略構成を示している。ピアノ監視端末10は、インターフェイス11と、コントローラ12と、温度計13と、湿度計14と、ピアノ2の可動部分のいずれかの動きを検知するための動作検知手段15と、ピアノ監視端末10に内蔵されたマイクロフォン16とを備えている。マイクロフォン16は、ピアノ2の内部に設置してもよい。ピアノ監視端末10は、インターフェイス11によりLAN5およびルータ4を介してインターネット3と接続されている。
【0021】
動作検知手段15としては、ピアノ2の鍵盤の動きを検知する手段を含むものを用いることができる。鍵盤の動きを検知する手段としては、例えば、特開2007−78956号公報に記載の技術を用いることができる。特開2007−78956号公報には、ピアノの鍵盤の各鍵に対応するLEDによって、演奏教習の曲データのノートオンイベントに応じて押鍵すべき鍵に光を照射させて押鍵をガイドし、鍵盤の各鍵にセンサから光を照射して、その反射光によって各鍵の演奏状態を検出することが記載されている。
【0022】
なお、動作検知手段15としては、ピアノ2のハンマの動きを検知する手段を含むものを用いてもよい。ハンマの動きを検知する手段としては、例えば、特開2006−84823号公報に記載の技術を用いることができる。特開2006−84823号公報には、自動演奏ピアノは、演奏操作に応じて変位し、対応する弦を打弦するハンマと、該ハンマの動きを検出するセンサを有し、センサはハンマの動きに応じた出力電圧(検出信号)をCPUを含む信号処理モジュールに出力することが記載されている。ROM或いはRAM等適宜のメモリには、ハンマが打弦したときに弦に生じうるたわみ量を記憶したたわみ量出力テーブルが記憶されている。制御系はセンサの出力と該テーブルから出力されたたわみ量に基づき打弦判定を行うための閾値を設定し、センサの出力と該閾値とを用いて演奏データを生成することが記載されている。
【0023】
さらに、動作検知手段15としては、ピアノ2の鍵盤蓋がひらいたことを検知する手段を含むものを用いてもよい。例えば、特開平10−124040号公報には、奥屋根に回動自在に取り付けられ、開位置と閉位置の間で開閉される鍵盤蓋の開閉を制御するための鍵盤蓋の開閉制御装置であって、奥屋根がピアノ本体に着脱自在に取り付けられるとともに、一端部が鍵盤蓋に対して回動自在に連結された連結バーと、奥屋根に取り付けられるとともに、連結バーに係合し、鍵盤蓋が閉位置側へ回動するときに連結バーを介して鍵盤蓋に負荷を加える加負荷手段と、を備えていることが記載されている。このような開閉制御装置であれば適当なセンサを設けることにより、鍵盤蓋がひらいたことを検知することができる。また、手動で鍵盤蓋を開閉する場合も適当なセンサあるいはリミットスイッチなどの手段を配置することにより、鍵盤蓋がひらいたことを検知できる。
【0024】
コントローラ12は、CPUあるいはマイクロプロセッサなどを備えたプログラマブルなデバイスであり、不図示のROMあるいはその他のメモリに格納されているプログラムをロードすることにより各機能を実現する。コントローラ12は、温度計13により温度を測定する温度測定機能33と、湿度計14により湿度を測定する湿度測定機能34とを備えている。温度測定機能33は、ピアノ2の内部にセットされた温度計13により、ピアノ2の内部の温度を含む設置環境データを第1の時間間隔毎に測定する。湿度測定機能34は、ピアノ2の内部にセットされた湿度計14により、ピアノ2の内部の湿度を含む設置環境データを第1の時間間隔毎に測定する。すなわち、本例では、設置環境データは、定期的に測定された温度データと湿度データとを含んでいる。
【0025】
コントローラ12は、さらに、演奏開始判別機能35と、周波数変換機能36と、送受信機能37とを備えている。演奏開始判別機能35は、動作検知手段15からの情報により、ピアノ2の演奏開始を判別する機能である。周波数変換機能36は、演奏開始判別機能35により演奏開始が判断されたときに、ピアノ2の内部にセットされたマイクロフォン16を介して得られた音をデジタル化して調律確認用の周波数データに変換する機能である。送受信機能37は、インターフェイス11を介してインターネット3にアクセスし、周波数データと、ピアノ2の内部の温度および湿度を含む設置環境データとを含むピアノ監視情報61を、監視サーバ20に送信する機能を含んでいる。
【0026】
監視サーバ20は、CPU、HDDなどのストレージ21をはじめとする、コンピュータあるいはサーバとしてのハードウェア資源と、それらのハードウェア資源を動作させるためのソフトウェア資源を備えており、監視プログラムをロードすることによりピアノ監視用の機能を実現する。監視サーバ20は、履歴管理機能22と、設定機能23と、状態判別機能(第1の状態判別機能)24と、発報機能25と、ユーザ管理機能26とを備えており、これらの機能はストレージ21に格納された各種の情報に基づき動作する。ストレージ21には、監視対象の個々のピアノ2についてのピアノ監視情報61、個々のピアノ2のユーザの情報、個々のユーザの登録アドレス(本例では、メールアドレス)、および判定データ21aなどが格納されている。判定データ21aには、個々のピアノ2の状態判定のためのしきい値、本例では、上下の周波数しきい値、上下の温度しきい値、および上下の湿度しきい値が含まれている。
【0027】
温度しきい値は、例えば、下限が0℃で、上限が30℃などとすることができる。温度のしきい値は、これに加え、または、これと置換し、1日または一定の期間内の温度の変動幅などとしてもよい。湿度しきい値は、例えば、相対湿度で下限が20%で、上限が90%などとすることができる。湿度のしきい値は、これに加え、または、これと置換し、1日または一定の期間内の湿度の変動幅などとしてもよい。周波数しきい値は、ピアノ2を使用するユーザの性質(プロなのか、アマチュアなのか)や、ピアノ2を使用する環境(コンサートホールなのか、家庭なのか、高温になりやすい(窓際)、低温になりやすい、高湿度になりやすい、低湿度になりやすい)などにより、ピアノ2の調律を行う事業者などがプロフェッショナルとしてのノウハウなどに基づき任意に設定できる。一般に、コンサートホールで使用するピアノ2は、家庭で使用するピアノ2と比べて、厳しい判断基準(しきい値)を持つようになる。
【0028】
これらのしきい値を含む判定データ21aは、例えば、周波数データの判定データがしきい値を超えた場合であっても、温度および/または湿度の判定データにより、温度および/または湿度が一時的に上昇または下降したことに起因する可能性がある場合には、監視を続け、一定時間後、周波数データの判定データがしきい値の範囲内に戻った場合には、注意喚起の情報の送信を行わないなどの設定が可能である。一方、周波数データがしきい値の範囲内である場合でも、温度および/または湿度が、長期にわたって高すぎるあるいは低すぎる状態が続いた場合には、ピアノの音程が狂い易くなる可能性があるため、注意喚起の情報を送信するように設定することも可能である。
【0029】
履歴管理機能22は、個々のピアノ2について、ピアノ監視端末10より送信されたピアノ監視情報61を蓄積および管理する機能である。ピアノ監視情報61は、ストレージ21に格納される。設定機能23は、周波数しきい値、温度しきい値、および湿度しきい値を含む判定データ21aを設定する機能である。状態判別機能24は、ピアノ監視情報61および判定データ21aに基づき個々のピアノ2の異常の有無を判断する機能である。発報機能25は、状態判別機能24によりいずれかのピアノ2に異常があると判断されると、異常があると判断されたピアノ2のユーザの登録アドレス(メールアドレス)に宛てて、パーソナルコンピュータ6に注意喚起の情報65を送信する機能である。なお、発報機能25は、状態判別機能24によりいずれかのピアノ2に異常があると判断されると、異常があると判断されたピアノ2の管理を委託された第3者の登録アドレス(メールアドレス)に宛てて、注意喚起の情報65を送信するものであってもよい。
【0030】
ピアノ監視端末10の送受信機能37は、周波数データを含むピアノ監視情報61を監視サーバ20に送信する。ピアノ監視端末10は、周波数データが予め設定されたしきい値を超えているか否かを判断する状態判別機能(第2の状態判別機能)を備えていても良い。そのようなピアノ監視端末10は、周波数データとともに、あるいは、周波数データとは別に、ピアノ2の周波数データに異常があることを判断した情報を含むピアノ監視情報61を監視サーバ20に送信しても良い。また、ピアノ監視端末10の側において異常を判断するためのしきい値は、ピアノ監視端末10の側にディフォルトで設定されていても良く、また、マニュアルで設定できるようにしておいても良い。さらに、ピアノ監視端末10が監視サーバ20から判定データ21aを取得しても良く、その機能をピアノ監視端末10の送受信機能37に付加しても良い。
【0031】
ピアノ2の周波数の異常は、単に周波数の高低だけでなく、温度の高低、湿度の高低、調律してからの経過時間、利用環境などにより、総合的に判断することが好ましい。また、ピアノ2が置かれる環境は、夏季では高く、冬季では低くなることが予想されるため、日時の情報をもとに季節も判断に含めることが好ましい。本例では、監視サーバ20は、これらの情報を総合的に判断するように設定されている。
【0032】
例えば、サーバ20の状態判別機能24は、個々のピアノに対する判定データ21aにより、周波数データの判定データ21aがしきい値を超えた場合であっても、温度および/または湿度が一時的に上昇または下降したことに起因する可能性があると判断された場合には、一定時間監視を続ける。この場合、状態判別機能24は、一定時間後、周波数データの判定データ21aがしきい値の範囲内に戻った場合には、発報機能25より注意喚起の情報65の送信を行わず、一定時間経った後であっても、周波数データの判定データ21aが戻らない(しきい値を超えている)場合に、発報機能25より注意喚起の情報65の送信を行う。
【0033】
一方、周波数データがしきい値の範囲内である場合でも、温度および/または湿度が、長期にわたって高すぎるあるいは低すぎる状態が続いた場合には、ピアノ2の音程が狂い易くなる可能性がある。また、エアコンなどの冷暖房装置からの風が直接ピアノ2に向けられている場合、短時間で調律に狂いが生じる可能性が高い。サーバの状態判別機能24は、ピアノ監視情報61より、このような状態を検知すると、発報機能25より注意喚起の情報65を送信する。ピアノ監視情報61に、温度、湿度などの情報を含めて監視することにより、ピアノ2の調性に悪影響を及ぼす可能性がある設置状況に対して、警告を出すことが可能となる。その結果、ピアノ2の長寿命化が果たされる。
【0034】
さらに、サーバ20の日時の情報より夏季であることをサーバ20の状態判別機能24はわかる。夏季は、ある程度室温が高くなることが予想されるため、調律師は、その室温に合わせて調律することがある。したがって、サーバ20の状態判別機能24は、そのような調律師の調律方法のノウハウを含めた判定データ21aに基づき、個々のピアノ2の状態を判断できる。真夏であれば、昼間、一時的に室温が高温になるかもしれず、そのような場合には、しばらく様子をみるような判定データ21aを用意しても良い。さらに、サーバ20の状態判別機能24が、周波数データがしきい値から外れる頻度が通常より高く、あるいは期間が短く、ピアノ監視情報61に含まれる温度が高いことより、ピアノ2に直射日光があたるような環境であると想定されると、ピアノ2の設置環境の改善も含めた注意喚起の情報65を発報機能25から出力しても良い。例えば、ピアノ2が設置されている部屋のカーテンを閉めるなどのアドバイスが可能である。
【0035】
システム1においては、各ピアノ2に取り付けられたピアノ監視端末10からサーバ20に定期的に送られるピアノ監視情報61に含まれる周波数データ、温度データ、および/または湿度データにより個々のピアノ2の状態を判断する。ピアノ監視端末10の送受信機能37は、定期的にピアノ監視情報61を発信する。それとともに、適当なしきい値を内部に保持したり、一定期間のピアノ監視情報61を保持することにより、送受信機能37は、周波数データ、温度データ、および/または湿度データの日動変動が大きいとき、または設定値を超えたときに、そのデータを含むピアノ監視情報61をサーバ20のアドレスに宛てて送信してもよい。
【0036】
また、本例のシステム1では、演奏開始判別機能35によって演奏開始が判断されると、周波数変換機能36によりマイクロフォン16を介して得られた音をデジタル化して調律確認用の周波数データに変換し、送受信機能37により、インターネット3を介して周波数データを含むピアノ監視情報61が監視サーバ20に送信される。このため、監視サーバ20において、ピアノ2が使用されている時間を管理することもできる。監視サーバ20は、日々のピアノ2の利用状況や調律情報を含む定期的な報告66を、一定間隔で、ピアノ2の管理者(例えば、ユーザおよび/またはピアノの管理を委託された第3者)の登録アドレスに宛ててメールなどにより送信したり、管理者(例えば、ユーザおよび/またはピアノの管理を委託された第3者)がアクセス可能でセキュリティが確保されたホームページにアップするようにしてもよい。
【0037】
図3は、ピアノの遠隔監視方法の概略をフローチャートにより示している。本例のピアノの遠隔監視システム1に含まれているピアノ監視端末10は、以下のように動作する。
【0038】
まず、ステップ101において、動作検知手段15によりピアノ2の可動部分の動きが検知され、その情報に基づき演奏開始判別機能35によりピアノ2の演奏開始が判断される。演奏開始になると、ステップ102において、マイクロフォン16により音を検出する。マイクロフォン16は、ピアノ2の音をできるだけ効率良く検出するためにピアノ2の内部に設置されていることが望ましい。ピアノ監視端末10は、演奏開始判別機能35により演奏が開始されたと判断された後に、マイクロフォン16により音を検知する。このため、ピアノ2から発せられた音ではない他の音がマイクロフォン16により検出され、監視対象のピアノ以外の音源からの音によりピアノ2の状態が判断されることを防ぐことができる。ステップ103において、周波数変換機能36により、マイクロフォン16を介して得られた音をデジタル化して調律確認用の周波数データに変換する。ステップ104において、変換された周波数データを含むピアノ監視情報61が監視サーバ20に送信される。
【0039】
また、ステップ105において、所定の時間毎のサンプリングタイミングとなる(第1の時間が経過する)と、ステップ106において、定期的に温度および湿度を検出する。そして、ステップ107において、検出された温度データおよび湿度データを含むピアノ監視情報61が監視サーバ20に送信される。
【0040】
図4は、システム1に含まれる監視サーバ20によりピアノ2を遠隔監視する方法の概略をフローチャートにより示している。
【0041】
まず、ステップ111において、判定データ21aの設定が必要な場合には、ステップ112において、判定データ21aを設定する。上述したように、判定データ21aは、ピアノ2を使用するユーザの性質や、ピアノ2を使用する環境などにより、ピアノ2の調律を行う事業者などがプロの見地で任意に設定できる。判定データ21aの設定が要求されるタイミングは、ユーザがピアノを購入したとき、事業者がピアノのメンテナンスサービスを請け負ったときといった初期の設定に加え、監視対象のピアノの調律を行ったとき、ユーザの技能がステップアップしたときなどがある。
【0042】
ステップ113において、ピアノ監視端末10からピアノ監視情報61を受信すると、ステップ114において、履歴管理機能22により、ストレージ21におけるピアノ監視情報の履歴を更新する。その後、ステップ115において、状態判別機能24により、ピアノ監視情報61および判定データ21aに基づき、個々のピアノ2の異常の有無を判断する。ステップ116において、異常がある場合には、ステップ117において、発報機能25により、ピアノ2のユーザの登録アドレスに宛てて注意喚起の情報65が送信される。
【0043】
このように、本例のピアノの遠隔監視システム1およびピアノの遠隔監視方法によれば、ピアノ2の調律を行う事業者は、ピアノ2が設置されているユーザのもとに出向かなくても、周波数データを含むピアノ監視情報を得ることができる。このため、監視対象のピアノ2の状態をいつでも的確に把握することができる。監視サーバ20に送信される音データ(ピアノ監視情報に含まれる音データ)は、アナログデータではなく、デジタル化された周波数データであるため、データ量が軽く、しかも、音データが劣化しない。
【0044】
したがって、本例のピアノの遠隔監視システム1およびピアノの遠隔監視方法によれば、監視サーバ20により、的確な時期、すなわち、何らかの異常があると判断されたときに、ピアノ2のユーザに対して、自動的に注意を喚起することができる。また、ピアノ監視端末10より、送信されたピアノ監視情報を蓄積および管理することができるため、利用状況や調律情報を、一定間隔で、ピアノ2のユーザの登録アドレスに宛てて送信することもできる。このため、従来は、売り切りの状態であったピアノについて、ユーザに対して継続的なメンテナンスサービスを提供できる。さらに、監視対象のピアノの使用状況をユーザまたは予め登録された第3者などに定期的に通知するなど、新たなサービスを提供することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態にかかるピアノの遠隔監視システムの概略構成を示す図。
【図2】図1のピアノの遠隔監視システムのピアノ監視端末および監視サーバの概略構成を示す図。
【図3】ピアノの遠隔監視方法の概略を説明するためのフローチャート。
【図4】監視サーバによりピアノを遠隔監視する方法の概略を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0046】
1 ピアノの遠隔監視システム、 2 ピアノ
3 インターネット(ネットワーク)、 10 ピアノ監視端末
15 動作検知手段、 16 マイクロフォン
20 監視サーバ、 21a 判定データ
22 履歴管理機能、 23 設定機能
24 状態判別機能、 25 発報機能
33 温度測定機能、 34 湿度測定機能
35 演奏開始判別機能、 36 周波数変換機能(変換機能)
37 送受信機能(送信機能)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々のピアノに設置されたピアノ監視端末と、前記ピアノ監視端末とネットワークを介して通信可能な監視サーバとを有し、
前記ピアノ監視端末は、
前記ピアノの可動部分のいずれかの動きを検知するための動作検知手段と、
当該ピアノ監視端末に内蔵または前記ピアノの内部に設置されたマイクロフォンと、
前記動作検知手段からの情報により、前記ピアノの演奏開始を判別する演奏開始判別機能と、
前記演奏開始判別機能により前記演奏開始が判断されると、前記マイクロフォンを介して得られた音をデジタル化して調律確認用の周波数データに変換する変換機能と、
前記ネットワークを介して前記周波数データを含むピアノ監視情報を前記監視サーバに送信する送信機能と、を備え、
前記監視サーバは、
前記個々のピアノについて、前記ピアノ監視端末より送信された前記ピアノ監視情報を蓄積および管理する履歴管理機能と、
前記個々のピアノの状態判定のための、周波数しきい値を含む判定データを設定する設定機能と、
前記ピアノ監視情報および前記判定データに基づき前記個々のピアノの異常の有無を判断する第1の状態判別機能と、
前記第1の状態判別機能によりいずれかのピアノに異常があると判断されると、異常があると判断されたピアノの管理者の登録アドレスに宛てて注意喚起の情報を送信する発報機能と、を備えている、ピアノの遠隔監視システム。
【請求項2】
請求項1において、前記ピアノ監視端末は、さらに、前記周波数データが予め設定されたしきい値を超えているか否かを判断する第2の状態判別機能を備える、ピアノの遠隔監視システム。
【請求項3】
請求項1または2において、前記ピアノ監視端末は、さらに、前記ピアノの内部の温度および/または湿度を含む設置環境データを第1の時間間隔毎に測定する測定機能を備え、
前記送信機能は、前記設置環境データを含む前記ピアノ監視情報を前記監視サーバに送信し、
前記監視サーバにおいては、
前記設定機能は、温度および/または湿度のしきい値を含む前記判定データを設定する機能を含む、ピアノの遠隔監視システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記登録アドレスは、前記個々のピアノの管理者のメールアドレスであり、
前記監視サーバの前記発報機能は、注意喚起の情報を含むメールを送信する、ピアノの遠隔監視システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記動作検知手段は、前記ピアノの鍵盤の動きを検知する手段を含む、ピアノの遠隔監視システム。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記動作検知手段は、前記ピアノのハンマの動きを検知する手段を含む、ピアノの遠隔監視システム。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記動作検知手段は、前記ピアノの鍵盤蓋がひらいたことを検知する手段を含む、ピアノの遠隔監視システム。
【請求項8】
個々のピアノに設置されたピアノ監視端末とネットワークを介して通信可能な監視サーバにより、前記ピアノを遠隔監視する方法であって、
前記ピアノ監視端末は、
前記ピアノの可動部分のいずれかの動きを検知するための動作検知手段と、
当該ピアノ監視端末に内蔵または前記ピアノの内部に設置されたマイクロフォンと、
前記動作検知手段からの情報により、前記ピアノの演奏開始を判別する演奏開始判別機能と、
前記演奏開始判別機能により前記演奏開始が判断されると、前記マイクロフォンを介して得られた音をデジタル化して調律確認用の周波数データに変換する変換機能と、
前記ネットワークを介して前記周波数データを含むピアノ監視情報を前記監視サーバに送信する送信機能と、を備え、
当該方法は、
前記個々のピアノについて、前記ピアノ監視端末より送信された前記ピアノ監視情報を蓄積および管理することと、
前記個々のピアノの状態判定のための、周波数しきい値を含む判定データを設定することと、
前記ピアノ監視情報および前記判定データに基づき前記個々のピアノの異常の有無を判断することと、
いずれかのピアノに異常があると判断されると、異常があると判断されたピアノの管理者の登録アドレスに宛てて注意喚起の情報を送信することとを含む、方法。
【請求項9】
個々のピアノに設置されるピアノ監視端末であって、
前記ピアノの可動部分のいずれかの動きを検知するための動作検知手段と、
当該ピアノ監視端末に内蔵または前記ピアノの内部に設置されたマイクロフォンと、
前記動作検知手段からの情報により、前記ピアノの演奏開始を判別する演奏開始判別機能と、
前記演奏開始判別機能により前記演奏開始が判断されると、前記マイクロフォンを介して得られた音をデジタル化して調律確認用の周波数データに変換する変換機能と、
ネットワークを介して前記周波数データを含むピアノ監視情報を監視サーバに送信する送信機能と、を有するピアノ監視端末。
【請求項10】
請求項9において、さらに、前記周波数データが予め設定されたしきい値を超えているか否かを判断する第2の状態判別機能を有する、ピアノ監視端末。
【請求項11】
請求項9または10において、さらに、前記ピアノの内部の温度および/または湿度を含む設置環境データを第1の時間間隔毎に測定する測定機能を有し、
前記送信機能は、前記設置環境データを含む前記ピアノ監視情報を前記監視サーバに送信する、ピアノ監視端末。
【請求項1】
個々のピアノに設置されたピアノ監視端末と、前記ピアノ監視端末とネットワークを介して通信可能な監視サーバとを有し、
前記ピアノ監視端末は、
前記ピアノの可動部分のいずれかの動きを検知するための動作検知手段と、
当該ピアノ監視端末に内蔵または前記ピアノの内部に設置されたマイクロフォンと、
前記動作検知手段からの情報により、前記ピアノの演奏開始を判別する演奏開始判別機能と、
前記演奏開始判別機能により前記演奏開始が判断されると、前記マイクロフォンを介して得られた音をデジタル化して調律確認用の周波数データに変換する変換機能と、
前記ネットワークを介して前記周波数データを含むピアノ監視情報を前記監視サーバに送信する送信機能と、を備え、
前記監視サーバは、
前記個々のピアノについて、前記ピアノ監視端末より送信された前記ピアノ監視情報を蓄積および管理する履歴管理機能と、
前記個々のピアノの状態判定のための、周波数しきい値を含む判定データを設定する設定機能と、
前記ピアノ監視情報および前記判定データに基づき前記個々のピアノの異常の有無を判断する第1の状態判別機能と、
前記第1の状態判別機能によりいずれかのピアノに異常があると判断されると、異常があると判断されたピアノの管理者の登録アドレスに宛てて注意喚起の情報を送信する発報機能と、を備えている、ピアノの遠隔監視システム。
【請求項2】
請求項1において、前記ピアノ監視端末は、さらに、前記周波数データが予め設定されたしきい値を超えているか否かを判断する第2の状態判別機能を備える、ピアノの遠隔監視システム。
【請求項3】
請求項1または2において、前記ピアノ監視端末は、さらに、前記ピアノの内部の温度および/または湿度を含む設置環境データを第1の時間間隔毎に測定する測定機能を備え、
前記送信機能は、前記設置環境データを含む前記ピアノ監視情報を前記監視サーバに送信し、
前記監視サーバにおいては、
前記設定機能は、温度および/または湿度のしきい値を含む前記判定データを設定する機能を含む、ピアノの遠隔監視システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記登録アドレスは、前記個々のピアノの管理者のメールアドレスであり、
前記監視サーバの前記発報機能は、注意喚起の情報を含むメールを送信する、ピアノの遠隔監視システム。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記動作検知手段は、前記ピアノの鍵盤の動きを検知する手段を含む、ピアノの遠隔監視システム。
【請求項6】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記動作検知手段は、前記ピアノのハンマの動きを検知する手段を含む、ピアノの遠隔監視システム。
【請求項7】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記動作検知手段は、前記ピアノの鍵盤蓋がひらいたことを検知する手段を含む、ピアノの遠隔監視システム。
【請求項8】
個々のピアノに設置されたピアノ監視端末とネットワークを介して通信可能な監視サーバにより、前記ピアノを遠隔監視する方法であって、
前記ピアノ監視端末は、
前記ピアノの可動部分のいずれかの動きを検知するための動作検知手段と、
当該ピアノ監視端末に内蔵または前記ピアノの内部に設置されたマイクロフォンと、
前記動作検知手段からの情報により、前記ピアノの演奏開始を判別する演奏開始判別機能と、
前記演奏開始判別機能により前記演奏開始が判断されると、前記マイクロフォンを介して得られた音をデジタル化して調律確認用の周波数データに変換する変換機能と、
前記ネットワークを介して前記周波数データを含むピアノ監視情報を前記監視サーバに送信する送信機能と、を備え、
当該方法は、
前記個々のピアノについて、前記ピアノ監視端末より送信された前記ピアノ監視情報を蓄積および管理することと、
前記個々のピアノの状態判定のための、周波数しきい値を含む判定データを設定することと、
前記ピアノ監視情報および前記判定データに基づき前記個々のピアノの異常の有無を判断することと、
いずれかのピアノに異常があると判断されると、異常があると判断されたピアノの管理者の登録アドレスに宛てて注意喚起の情報を送信することとを含む、方法。
【請求項9】
個々のピアノに設置されるピアノ監視端末であって、
前記ピアノの可動部分のいずれかの動きを検知するための動作検知手段と、
当該ピアノ監視端末に内蔵または前記ピアノの内部に設置されたマイクロフォンと、
前記動作検知手段からの情報により、前記ピアノの演奏開始を判別する演奏開始判別機能と、
前記演奏開始判別機能により前記演奏開始が判断されると、前記マイクロフォンを介して得られた音をデジタル化して調律確認用の周波数データに変換する変換機能と、
ネットワークを介して前記周波数データを含むピアノ監視情報を監視サーバに送信する送信機能と、を有するピアノ監視端末。
【請求項10】
請求項9において、さらに、前記周波数データが予め設定されたしきい値を超えているか否かを判断する第2の状態判別機能を有する、ピアノ監視端末。
【請求項11】
請求項9または10において、さらに、前記ピアノの内部の温度および/または湿度を含む設置環境データを第1の時間間隔毎に測定する測定機能を有し、
前記送信機能は、前記設置環境データを含む前記ピアノ監視情報を前記監視サーバに送信する、ピアノ監視端末。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2009−237035(P2009−237035A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80044(P2008−80044)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(399063013)ナルテック株式会社 (30)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(399063013)ナルテック株式会社 (30)
【Fターム(参考)】
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