説明

ピュレ様食品およびこれを含有する食品

【課題】ピュレを原料の一部として使用し、原料として用いたピュレと比較し遜色ない風味、色、食感を有するピュレ様食品を提供する。前記ピュレ様食品を含有する新たな食品を提供する。
【解決手段】ピュレ、α化エステル化澱粉および水を含有し、前記α化エステル化澱粉は、加熱膨潤度が5〜20であり、且つ加熱溶解度が5〜20である、ピュレ様食品。前記ピュレ様食品を含有する食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピュレを原料の一部として使用し、原料として用いたピュレと比較し遜色ない風味、色、食感を有するピュレ様食品および前記ピュレ様食品を含有する食品に関する。より詳しくは、野菜ピュレまたは果実ピュレ等のピュレを原料の一部として使用し、さらにα化エステル化澱粉を添加して、原料として用いたピュレと比較し遜色ない風味、色、食感を呈することを可能にしたピュレ様食品、および前記ピュレ様食品を含有するゲル状またはペースト状などの食品に関する。
【背景技術】
【0002】
「ピュレ」とは野菜・果物・肉・魚などを生のまま、またはよく煮た後、裏ごしたり煮詰めたりしたものである。ピュレは、そのまま食されたり、ソース類やジャム類の原料に用いられたりと、その使用用途は多岐にわたる。しかしながら、ピュレの主な原料となる野菜や果実の生産量は、天候により大きく左右される。そのため、供給量を安定させるために野菜や果実以外の材料でピュレの一部を代替したピュレ様食品が望まれている。また、価格面からも安価な材料でピュレの一部を代替した低コストのピュレ様食品が望まれている。しかしながら、野菜や果実以外の材料でピュレの一部を代替したピュレ様食品は未だ開発されていない。
【0003】
前記ピュレ代替材料に求められる特性としては、「適度な粘度を有する」、「著しい着色がない」「異味・異臭がしない」といった性質が挙げられる。さらに、ピュレが本来有している食感を損なわないために、ピュレ代替材料は、野菜や果実由来の食物繊維と同様なパルプ感を有していることも重要である。
【0004】
生産量が安定しており、且つ低価格なピュレ代替材料として、澱粉が挙げられる。特許文献1には特定粒径の未加工α化澱粉が繊維感或いはパルプ感を有することが記載されている。特許文献1に記載された発明は、原料として25重量%以上のアミロースを含有する未加工澱粉を用い、該澱粉をドラムドライヤーのような加熱処理手段でα化処理した後、粉砕、篩別等により、250μm以上の粒径を有するα化澱粉を調製することにより、繊維感或いはパルプ感を有する新食感のα化澱粉を製造することができる技術である。
【0005】
特許文献2には二段階架橋処理を施したα化加工澱粉を用いたゲル状食品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−265490号公報
【特許文献2】特開2003−144062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術でパルプ感を有した澱粉を得るには、加熱・粉砕処理により得られたα化澱粉を篩別することにより、250μm以上の粒径を有するα化澱粉を分取する作業が必須である。よってこの技術は、作業効率が悪く歩留まりも大幅に低下するものであり、工業的生産には適していないものである。
【0008】
特許文献2に記載されたα化加工澱粉は、見た目こそもろもろとしたパルプ感を有している。しかし、実際の食感はパルプ感が無く滑らかなものである。特許文献2に記載の発明は、外観から期待される食感と実際に食した食感とが異なる食品を提供することを目的とするものであることから、外観および実際の食感ともにパルプ感を有する食品を提供することは、目的から外れるものであり、外観および実際の食感ともにパルプ感を有する食品は、特許文献2には記載されていない。
【0009】
このように、篩別・分取作業を必要とせず、且つ野菜ピュレまたは果実ピュレに近いパルプ感を有した澱粉の報告例は未だ無い。
【0010】
そこで本発明は、ピュレを原料の一部として使用し、原料として用いたピュレと比較し遜色ない風味、色、食感を有するピュレ様食品を提供することを目的とする。さらに本発明は、本発明で得られたピュレ様食品を含有する新たな食品を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の加熱膨潤度および特定の加熱溶解度を有するα化エステル化澱粉と水を、野菜ピュレまたは果実ピュレと併用することにより、原料として用いた野菜ピュレまたは果実ピュレが有する風味、色、食感と比較し遜色ない自然なパルプ感を有するピュレ様食品が得られることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は以下の通りである。
(1)ピュレ、α化エステル化澱粉および水を含有し、前記α化エステル化澱粉は、加熱膨潤度が5〜20であり、且つ加熱溶解度が5〜20である、ピュレ様食品。
(2)ピュレの含有量が50〜90質量%の範囲であり、水100質量部に対して5〜20質量部の範囲のα化エステル化澱粉を含有する(1)に記載のピュレ様食品。
(3)前記α化エステル化澱粉は、リン酸架橋を有する(1)または(2)に記載のピュレ様食品。
(4)前記α化エステル化澱粉が、タピオカ澱粉をα化およびエステル化したものである(1)〜(3)のいずれか1項に記載のピュレ様食品。
(5)前記ピュレは、野菜、果物から成る群から選ばれる少なくとも1種の微粉砕物を含む(1)〜(4)のいずれか1項に記載のピュレ様食品。
(6)(1)〜(5)のいずれか1項に記載のピュレ様食品を含有する食品。
(7)前記食品はゲル状またはペースト状である(6)に記載の食品。
(8)加熱膨潤度が5〜20であり、且つ加熱溶解度が5〜20であるα化エステル化澱粉を含有する、ピュレ様食品製造用添加剤。
(9)ピュレに水とともに混合してピュレ様食品を製造するために用いられる(8)に記載のピュレ様食品製造用添加剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ピュレに、特定の加熱膨潤度および特定の加熱溶解度を有するα化エステル化澱粉と水を併用することで、原料として用いたピュレが有する風味、色、食感と比較し遜色ない自然なパルプ感を有するピュレ様食品が得られる。即ち、原料として用いたピュレが有する風味、色、食感を損なうことなく、一部をα化エステル化澱粉および水で代替することで、ピュレ様食品を得ることができる。これにより、より安価で且つ安定生産可能なピュレと遜色ない物性を有するピュレ様食品を提供することができる。また、本発明に用いるα化エステル化澱粉は、粒径に特段の制限がなく、製造工程において、粒径250μm以上のα化澱粉を分取する必要はない。そのため、製造コストを抑制することが可能であり、より安価にピュレ様食品を提供することができる。さらには、本発明のピュレ様食品を用いることで、通常のピュレを用いた食品と比較し遜色ない風味、色、食感を有した新たな食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<ピュレ様食品>
本発明のピュレ様食品は、ピュレ、α化エステル化澱粉および水を含有し、かつ前記α化エステル化澱粉は、加熱膨潤度が5〜20であり、且つ加熱溶解度が5〜20である、ピュレ様食品である。
【0015】
本発明のピュレ様食品が含有するピュレとは、野菜・果物・肉・魚などを冷凍、冷蔵、常温、高温から選ばれる1種また2種以上の温度に保持した後、破砕処理または裏ごしすることで得られる、野菜・果物・肉・魚の微粉砕物である。さらに、前記ピュレは必要に応じて適宜、無機塩類や糖類等を添加したものであってもよい。本発明において使用する野菜ピュレとは、野菜を原料とした前記ピュレであれば何れでもよい。ピュレ原料として使用する野菜としては、例えば、トマト、ダイコン、ホウレンソウ、ワサビ、オクラ、キャベツ、ニンジン、グリーンピース、ケール、コーン、セロリ、パセリ、カボチャ、ジャガイモ、モロヘイヤ、ピーマン、アスパラ、枝豆、オニオン、ガーリック、サツマイモ、ニンニク、ホウレンソウ、栗、生姜、ゴマ、カブ等が挙げられる。
【0016】
本発明において使用する果実ピュレとは、果実を原料とした前記ピュレであれば何れでもよい。ピュレ原料として使用する果実としては、例えば、リンゴ、イチゴ、アプリコット、グアヴァ、桃、梅、カシス、バナナ、マンゴー、ゆず、ベリー、キウイ等が挙げられる。
【0017】
本発明に用いるα化エステル化澱粉は、加熱膨潤度が5〜20、好ましくは5〜15であり、且つ加熱溶解度が5〜20、好ましくは5〜15である。加熱膨潤度が5未満のα化エステル化澱粉を用いると、澱粉粒の膨潤が過剰に抑制されて粉状の違和感のある食感が生じるため、得られる物は、ピュレ様食品として適さない。一方、加熱膨潤度が20を超えるα化エステル化澱粉を用いると、澱粉粒の膨潤が過剰に促進されてパルプ感が低下してしまうため、得られる物は、ピュレ様食品には適さない。
【0018】
本発明に用いるα化エステル化澱粉は、加熱溶解度が5〜20、好ましくは5〜15である。加熱溶解度が5未満のα化エステル化澱粉を用いると、澱粉粒からの澱粉成分の溶出が過剰に抑制されて粉状の違和感のある食感が生じるため、得られる物は、ピュレ様食品として適さない。一方、加熱溶解度が20を超えるα化エステル化澱粉を用いると、澱粉粒からの澱粉成分の溶出が過剰に促進されてパルプ感が低下してしまうため、得られる物は、ピュレ様食品には適さない。
【0019】
本発明において、α化エステル化澱粉の加熱膨潤度とは、以下の方法によって定量される値を意味する。すなわち、乾燥物質量1.0gのα化エステル化澱粉試料を水100mlに分散し、沸騰水中で時々攪拌しながら30分間加熱後、30℃に冷却する。次いで、この糊液を遠心分離(3000rpm、10分間)して糊層と上澄液層に分け、糊層の質量を測定してこれをAとする。次いで、質量測定した糊層を105℃で乾固した後、再び質量を測定してこれをBとし、A/Bの値を加熱膨潤度とする。
【0020】
本発明において、α化エステル化澱粉の加熱溶解度とは、以下の方法によって定量される値を意味する。すなわち、乾燥物質量1.0gのα化エステル化澱粉試料を水100mlに分散し、沸騰水中で時々攪拌しながら30分間加熱後、30℃に冷却する。次いで、この糊液を遠心分離(3000rpm、10分間)して糊層と上澄層に分け、上澄層に含まれる全糖量をフェノール硫酸法で測定し、その容量に対する質量%濃度として加熱溶解度を算出する。
【0021】
本発明においてピュレと混合するα化エステル化澱粉および水の量は、原料として用いるピュレの種類、さらには目的とするピュレ様食品が有すべき物性(風味、色、食感)を考慮して適宜決定できる。本発明の目的が、原料として用いるピュレの風味、色、食感と比較し遜色ない風味、色、食感を有するピュレ様食品を提供することであるので、原料として用いるピュレの種類が変われば、ピュレ様食品に求められる物性(風味、色、食感)も変化する。但し、ピュレ様食品の色は、α化エステル化澱粉および水の混合物は無色または白濁色であることから、原料として用いるピュレの色に依存する。また、α化エステル化澱粉および水の混合物はほぼ無味、無臭であることから、ピュレ様食品の風味は、原料として用いるピュレの風味に依存する。そのような観点から、ピュレの含有量はピュレ様食品の全量の50質量%以上であることが好ましい。ピュレの含有量がピュレ様食品の全量の50質量%を下回ると、原料とするピュレ由来の風味や色が薄まってしまう傾向が強くなる。原料として用いるピュレの色および風味により近いピュレ様食品を得るという観点からは、ピュレの含有量は高い程好ましい。但し、ピュレの含有量は高くなるほど、ピュレの代替品としてのピュレ様食品の価値は下がることになる。そのような観点から、ピュレの含有量は、50〜95質量%が好ましく、より好ましくは55〜85質量%の範囲である。
【0022】
また、ピュレ様食品の食感は、ピュレの含有量やα化エステル化澱粉の種類に加えて、α化エステル化澱粉および水の混合物中の両者の含有比率により変化する。より具体的には、α化エステル化澱粉および水の混合物中の両者の含有比率によりピュレ様食品の粘度が変化し、ピュレ用食品の食感に影響を及ぼす。α化エステル化澱粉および水の混合物の粘度は、α化エステル化澱粉の種類とα化エステル化澱粉および水の含有比率により変化し、前記混合物中のα化エステル化澱粉の割合が増加するにつれて混合物の粘度は上昇する。ピュレ様食品が、原料として用いるピュレと比較し遜色ない食感を呈するという観点から、水100質量部に対してα化エステル化澱粉は、例えば、5〜20質量部の範囲とすることができる。但し、α化エステル化澱粉または原料として用いるピュレの種類によっては、水100質量部に対するα化エステル化澱粉の量が5質量部未満または20質量部超であっても、原料として用いるピュレと比較し遜色ない食感を呈するピュレ様食品が得られる場合もある。
【0023】
本発明において用いるα化エステル化澱粉は、α化およびエステル化が施された澱粉であり、かつ加熱膨潤度および加熱溶解度が上記設定範囲内である。加熱膨潤度および加熱溶解度が上記設定範囲内であるα化非エステル化澱粉は、パルプ感はあるがすぐに口溶けてなめらかな食感に変化し、違和感のある食感となってしまうため、ピュレ代替原料には適さない。
【0024】
本発明におけるα化エステル化澱粉は、澱粉へのエステル化とα化処理が組み合わされたものであれば何れでもよく、エステル化とα化処理はどちらが先に行われてもよい。但し、実用上は、エステル化澱粉をα化処理してα化エステル化澱粉を得ることが、澱粉の性質を考慮すると適当である。前記エステル化澱粉としては、アセチル化、リン酸化、リン酸架橋、アセチル化アジピン酸架橋、オクテニルコハク酸エステル化から選ばれる1種また2種以上の加工処理が施された澱粉であればよい。但し、アセチル化アジピン酸架橋またはリン酸架橋が施された澱粉がパルプ感を発現させるという観点から好ましく、リン酸架橋が施された澱粉がより好ましい。また、これらのエステル化と組み合わせて、本発明の効果を損なわない範囲で、エーテル化(ヒドロキシプロピル化)や酸化等といったエステル化以外の加工処理を施すことに制限はなく、湿熱処理、油脂加工、ボールミル処理、微粉砕処理、加熱処理、温水処理、漂白処理、酸処理、アルカリ処理、酵素処理等の物理加工を施すことにも制限はない。
【0025】
エステル化澱粉の原料となる澱粉としては、コーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、サゴ澱粉などが挙げられ、これらの1種または2種以上を組み合わせてもよい。この中でも、コーンスターチ、タピオカ澱粉、米澱粉から選ばれる1種また2種以上を用いることが好ましく、タピオカ澱粉を用いることがより好ましい。なお、いずれの澱粉においても、ウルチ種、ワキシー種、モチ種、ハイアミロース種のように、育種的手法もしくは遺伝子工学的手法において改良された品種が存在するが、これらは特に限定されるものではない。例えば、コーンスターチにおいては、一般的なウルチ種のコーンスターチに加え、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、ホワイト種コーンスターチ、イエロー種コーンスターチなどが挙げられる。
【0026】
本発明における澱粉のα化処理方法には特段の制限は無く、α化処理方法の具体例としては、ドラムドライヤー、エクストルーダ、スプレードライヤーを用いたα化処理が挙げられる。
【0027】
α化エステル化澱粉の加熱膨潤度および加熱溶解度は、(i)原料澱粉の種類、(ii)エステル化の有無、(iii)エステル化の種類、(iv)エステル化の度合い、(v)α化の度合いの5つの要素によって変化する。従って、本発明では、これら5つの要素(厳密には、エステル化は必須であるため、(ii)以外の4つの要素)を組み合わせることによって、加熱膨潤度が5〜20であり、且つ加熱溶解度が5〜20であるα化エステル化澱粉を得ることができる。実施例に、加熱膨潤度が5〜20であり、且つ加熱溶解度が5〜20であるα化エステル化澱粉を例示しているので、当業者であれば、これらの例示を基に、上記4つの要素を変更することで、所望の加熱膨潤度および加熱溶解度を有するα化エステル化澱粉を得ることができる。また、実施例に記載のように、市販のα化エステル化澱粉の中に、上記所望の加熱膨潤度および加熱溶解度を有するものもあるので、市販品の中から、適宜所望の加熱膨潤度および加熱溶解度を有するα化エステル化澱粉を選択することもできる。尚、澱粉のα化およびエステル化の方法自体は、いずれも澱粉業界においては周知である。
【0028】
本発明のピュレ様食品は、ピュレにα化エステル化澱粉および水を添加、混合することにより、製造することができる。通常は、α化エステル化澱粉を水や水溶液に分散し、得られた分散液をピュレに添加することが、α化エステル化澱粉が均一に分散したピュレ様食品が得られることから好ましい。本発明にて得られるピュレ様食品は、必要に応じて加熱処理してもよく、加熱殺菌してもよい。
【0029】
本発明のピュレ様食品は、基本組成は、ピュレ、α化エステル化澱粉および水であるが、それ以外に公知の食品添加物を適宜含有することができる。そのような食品添加物としては、例えば、香料、甘味料(例えば、糖類)、酸味料(例えば、有機酸類)、調味料、pH調整剤、保存料、着色料などを例示することができる。尚、これらの食品添加物は、ピュレ様食品を製造する際に添加されたものであっても、原料として用いるピュレに含有され、それがピュレ様食品に持ち込まれた物であってもよい。
【0030】
<ピュレ様食品製造用添加剤>
本発明は、加熱膨潤度が5〜20であり、且つ加熱溶解度が5〜20であるα化エステル化澱粉を含有する、ピュレ様食品製造用添加剤を包含する。ピュレ様食品製造用添加剤に含有されるα化エステル化澱粉は、上記ピュレ様食品で説明した物と同様である。本発明のピュレ様食品製造用添加剤は、ピュレに水とともに混合してピュレ様食品を製造するために用いられる。本発明のピュレ様食品製造用添加剤は、ピュレに水とともに混合することで、ピュレ様食品が製造される。本発明のピュレ様食品製造用添加剤は、公知の食品添加物を適宜含有することができる。そのような食品添加物としては、例えば、香料、甘味料(例えば、糖類)、酸味料(例えば、有機酸類)、調味料、pH調整剤、保存料、着色料などを例示することができる。
【0031】
<ピュレ様食品含有食品>
本発明は、上記本発明のピュレ様食品を含有する食品を包含する。本発明のピュレ様食品を含有する食品は、ピュレ様食品の特性(特に食感)を活かせるという観点からは、例えば、ゲル状食品またはペースト状食品であることができる。ゲル状食品またはペースト状食品としては、ゲル状またはペースト状を呈する食品であれば制限は無く、具体的にはカレー、餡、タレ、ソース、チョコレートクリーム、生クリーム、カスタードクリーム、フラワーペースト、フィリング、スプレッド、グラタン、スープ類、御汁粉、ジャム、ゼリー、グミ、ムース、杏仁豆腐、ババロア、パンナコッタ、プリン、ヨーグルト等が挙げられる。ピュレ様食品を含有する食品におけるピュレ様食品の含有量は、食品の種類及びピュレ様食品の種類に応じて、食品に求められる物性を考慮して適宜決定できる。食品に占めるピュレ様食品の含有量は、例えば、0.1〜80質量%の範囲であることができる。但し、この範囲に限定される意図ではない。
【実施例】
【0032】
実施例により本発明の具体的説明を以下に記述する。但し、本発明の技術的範囲は以下の例示に限定されるものではない。
【0033】
(各α化澱粉試料の製造方法)
以下に示した製造方法により、実施例に使用する各α化澱粉を製造した。
【0034】
澱粉試料1
リン酸架橋タピオカ澱粉である松谷化学工業株式会社製の「パインベークCC」にドラムドライヤーによるα化処理を施した後、50メッシュを通過させたものを澱粉試料1とした。
【0035】
澱粉試料2
リン酸架橋タピオカ澱粉であるAsia Modified Starch Co., Ltd. 製の「Neovis T−300」にドラムドライヤーによるα化処理を施した後、50メッシュを通過させたものを澱粉試料2とした。
【0036】
澱粉試料3
α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉であるAsia Modified Starch Co., Ltd. 製の「QSWELL−5E3」を用い、50メッシュを通過させたものを澱粉試料3とした。
【0037】
澱粉試料4
α化アセチル化リン酸架橋タピオカ澱粉であるAsia Modified Starch Co., Ltd. 製の「QSWELL−303」を用い、50メッシュを通過させたものを澱粉試料4とした。
【0038】
澱粉試料5
α化リン酸架橋ワキシーコーンスターチである日本食品化工株式会社製の「日食ネオビスC−60」を用い、50メッシュを通過させたものを澱粉試料5とした。
【0039】
澱粉試料6
α化アセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉であるAsia Modified Starch Co., Ltd. 製の「QSWELL−408」を用い、50メッシュを通過させたものを澱粉試料6とした。
【0040】
澱粉試料7
α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉であるAsia Modified Starch Co., Ltd. 製の「QSWELL−505」を用い、50メッシュを通過させたものを澱粉試料7とした。
【0041】
澱粉試料8
リン酸架橋タピオカ澱粉である松谷化学工業株式会社製の「パインスターチRT」にドラムドライヤーによるα化処理を施した後、50メッシュを通過させたものを澱粉試料8とした。
【0042】
澱粉試料9
湿熱処理ハイアミロースコーンスターチである日本食品化工株式会社製の「日食ロードスター」にドラムドライヤーによるα化処理を施した後、50メッシュを通過させたものを澱粉試料9とした。
【0043】
澱粉試料10
α化リン酸架橋馬鈴薯澱粉である松谷化学工業株式会社製の「スリミスター」を用い、50メッシュを通過させたものを澱粉試料10とした。
【0044】
澱粉試料11
リン酸架橋タピオカ澱粉をドラムドライヤーでα化する工程でさらにリン酸架橋を施したα化二段階リン酸架橋澱粉である松谷化学工業株式会社製の「パインゴールドVE」を澱粉試料11とした。
【0045】
澱粉試料12
アセチル化アジピン酸架橋タピオカ澱粉であるAsia Modified Starch Co., Ltd. 製の「TAS−110」にドラムドライヤーによるα化処理を施した後、50メッシュを通過させたものを澱粉試料12とした。
【0046】
澱粉試料13
α化ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ澱粉である松谷化学工業株式会社製の「プリジェルVA70T」を用い、50メッシュを通過させたものを澱粉試料13とした。
【0047】
澱粉試料14
α化コーンスターチである日本食品化工株式会社製の「日食アルスターE」を用い、50メッシュを通過させたものを澱粉試料14とした。
【0048】
澱粉試料15
α化ハイアミロースコーンスターチである日本食品化工株式会社製の「日食アルスターH」を用い、50メッシュを通過させたものを澱粉試料15とした。
【0049】
澱粉試料16
アセチル化タピオカ澱粉である日本食品化工株式会社製の「日食MT−01H」にドラムドライヤーによるα化処理を施した後、50メッシュを通過させたものを澱粉試料16とした。
【0050】
澱粉試料17
α化ワキシーコーンスターチである日本食品化工株式会社製の「日食ワキシーアルファD−6」を用い、50メッシュを通過させたものを澱粉試料17とした。
【0051】
澱粉試料18
湿熱処理コーンスターチである三和澱粉工業株式会社製の「デリカスターH−100」にドラムドライヤーによるα化処理を施した後、50メッシュを通過させたものを澱粉試料18とした。
【0052】
(各α化澱粉の性質)
表1に、澱粉試料1〜澱粉試料9の各α澱粉の性質を示した。なお、澱粉試料6に関しては、遠心分離により上澄液層から糊層を分離することが不可能であったため、加熱膨潤度は測定不能であった。
【0053】
【表1】

【0054】
(実施例1)澱粉試料の比較
表1に示した各α化澱粉1.1重量部に水13.9重量部を加え撹拌した後、トマトピュレ(デルモンテ社製)85.0重量部に混合することでトマトピュレ様食品を得た。得られた各トマトピュレ様食品に関し、トマトピュレ様のパルプ感の有無を官能試験にて評価した。トマトピュレと同様のパルプ感を有していた場合は「◎」、トマトピュレに近いパルプ感を有していた場合は「○」、トマトピュレ様のパルプ感をわずかに有していた場合は「△」、全くパルプ感を有していない場合は「×」と評価した(以下の実施例2〜8においても同様の評価を実施した)。また、パルプ感以外の風味・食感・粘度等に関しても官能試験により評価を実施した。官能試験結果を表2に纏めた。
【0055】
【表2】

【0056】
表2に示す通り、澱粉試料1、2および3を1.1重量部添加したトマトピュレ様食品は、トマトピュレと同様のパルプ感を有しており、食感・風味共に通常のトマトピュレと比べ違和感の無いものであった。澱粉試料4、5、6および7を1.1重量部添加したトマトピュレ様食品は、トマトピュレに非常に近いパルプ感を有しており、食感・風味共に通常のトマトピュレと比べ違和感の無いものであった。一方で、澱粉試料14を1.1重量部添加したトマトピュレ様食品は、若干のパルプ感を有していたが、トマトピュレとは異なる糊感が感じられ、通常のトマトピュレとは異なる食感であった。また、澱粉試料8、9、10、15を1.1重量部添加したトマトピュレ様食品は、パルプ感とは異質のざらつきや粉感を有しており、通常のトマトピュレとは全く異なる食感であった。澱粉試料13、16、17を1.1重量部添加したトマトピュレ様食品は、トマトピュレとは異なる強い糊感を有しており、通常のトマトピュレとは全く異なる食感であった。澱粉試料11、12、18を1.1重量部添加したトマトピュレ様食品は、口に入れた瞬間はパルプ感を示すがすぐに消失しなめらかな食感に変化してしまい、トマトピュレと全く異なる食感であった。
【0057】
(実施例2)澱粉試料添加量の検討
澱粉試料1、水および青リンゴピュレ(Boiron社製)を表3に示す通り混合し、青リンゴピュレ様食品を得た。得られた各ピュレ様食品の官能評価結果を表3に纏めた。
【0058】
【表3】

【0059】
表3に示す通り、澱粉試料2の添加量が1.0〜3.0重量部の試験区では、青リンゴピュレと比較し遜色ない風味・食感を有するピュレ様食品が得られた。しかし、澱粉試料2の添加量を4.0重量部とした試験区で得られたピュレ様食品は、青リンゴピュレと比べパルプ感が不足したものであり、食感、風味および色味のいずれにおいても違和感のあるものであった。
【0060】
(実施例3)ホウレンソウピュレ様食品
澱粉試料2、6および15を、水およびホウレンソウピュレ(カゴメ社製)と表4に示す通り混合し、ホウレンソウピュレ様食品を得た。得られた各ピュレ様食品の官能評価結果を表4に纏めた。
【0061】
【表4】

【0062】
表4に示す通り澱粉試料2および澱粉試料6を1.2重量部添加したホウレンソウピュレ様食品は、通常のホウレンソウピュレと同様の食感・風味を有しており、何ら違和感のないものであった。一方で、澱粉試料15を1.2重量部添加したホウレンソウピュレ様食品は、パルプ感とは異質のザラつき感が強く、通常のホウレンソウピュレとは全く異なる食感であった。
【0063】
(実施例4)紫芋ピュレ様食品
澱粉試料2および6を、水、紫芋ピュレ(井上天極堂製)と表5に示す通り混合し、紫芋ピュレ様食品を得た。得られた各ピュレ様食品の官能評価結果を表5に纏めた。
【0064】
【表5】

【0065】
表5に示す通り、澱粉試料2を2.0重量部添加した試験区および澱粉試料6を0.4重量部添加した試験区共に、得られた紫芋ピュレ様食品は通常の紫芋ピュレと比較し遜色ない食感・風味を有していた。
【0066】
(実施例5)ニンジンピュレ様食品
澱粉試料2の1.2重量部を水13.8重量部に加え撹拌した後、ニンジンピュレ(カゴメ社製)85.0重量部に混合することでニンジンピュレ様食品を得た。得られたニンジンピュレ様食品は、通常のニンジンピュレと同様の食感・風味を有したものであった。
【0067】
(実施例6)イチゴピュレ様食品
澱粉試料2の2.0重量部を水28.0重量部に加え撹拌した後、イチゴピュレ(Boiron製)70.0重量部に混合することでイチゴピュレ様食品を得た。得られたイチゴピュレ様食品は、通常のイチゴピュレと同様の食感・風味を有したものであった。
【0068】
(実施例7)ダイコンピュレ様食品
澱粉試料6の1.2重量部を水13.8重量部に加え撹拌した後、ダイコンを擂り潰すことで得られたダイコンピュレ85.0重量部に混合することでダイコンピュレ様食品を得た。得られたダイコンピュレ様食品は、通常のダイコンピュレと同様の食感・風味を有したものであった。
【0069】
(実施例8)ゲル状食品
表6に示す割合(部)で原材料を混合し、ニンジンピュレ様食品を作製した。次に、表7に示す割合(部)で原材料を使用し、以下に示す方法にてニンジンゼリーを製造した。即ち、鍋にニンジンピュレ様食品、オレンジジュース、蜂蜜、あらかじめ水と混合したゼラチンを加え、加熱した後、ゼラチンが溶けたら火を止め、急冷させた。澱粉試料2を材料としたニンジンピュレ様食品1を用いた実施例のニンジンゼリーを食したところ、ニンジン由来の果肉感に似た食感があり、糊感も気にならないものであった。一方で、澱粉試料15を材料としたニンジンピュレ様食品2を用いた比較例のニンジンゼリーを食したところ、果肉感とは異質なざらつきがあり、通常のニンジンゼリーと比べ違和感のある食感であった。また、比較例のニンジンゼリーは、通常のニンジンゼリーに比べボディ感が劣ったものであった。
【0070】
【表6】

【0071】
【表7】

【0072】
(実施例9)ペースト状食品
表8に示す割合(部)で原材料を混合し、トマトピュレ様食品を作製した。次に、表9に示す割合(部)で原材料を使用し、以下に示す方法にてトマトソースを製造した。即ち、鍋に加工澱粉以外の原材料を加えて加熱し、60℃まで達温した後、あらかじめ水に溶いた加工澱粉を加えて90℃到達まで加熱を行い、火を止めて放冷した。次に、加熱により減量した水分を補充し、レトルトパウチに詰め、120℃で20分間レトルト殺菌した。尚、表9において加工澱粉は、日食MT‐80(日本食品化工株式会社製)を使用した。澱粉試料2を材料としたトマトピュレ様食品1を用いた実施例のトマトソースを食したところ、トマトの果肉感に似た食感があり、糊感も気にならないものであった。一方で、澱粉試料15を材料としたトマトピュレ様食品を用いた比較例のトマトソースを食したところ、トマトの果肉感とは異質なざらつきがあり、通常のトマトソースと比べ違和感のある食感であった。また、比較例のトマトソースは、通常のトマトソースに比べボディ感が劣ったものであった。
【0073】
【表8】

【0074】
【表9】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は食品製造分野において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピュレ、α化エステル化澱粉および水を含有し、前記α化エステル化澱粉は、加熱膨潤度が5〜20であり、且つ加熱溶解度が5〜20である、ピュレ様食品。
【請求項2】
ピュレの含有量が50〜90質量%の範囲であり、水100質量部に対して5〜20質量部の範囲のα化エステル化澱粉を含有する請求項1に記載のピュレ様食品。
【請求項3】
前記α化エステル化澱粉は、リン酸架橋を有する請求項1または2に記載のピュレ様食品。
【請求項4】
前記α化エステル化澱粉が、タピオカ澱粉をα化およびエステル化したものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のピュレ様食品。
【請求項5】
前記ピュレは、野菜、果物から成る群から選ばれる少なくとも1種の微粉砕物を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のピュレ様食品。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のピュレ様食品を含有する食品。
【請求項7】
前記食品はゲル状またはペースト状である請求項6に記載の食品。
【請求項8】
加熱膨潤度が5〜20であり、且つ加熱溶解度が5〜20であるα化エステル化澱粉を含有する、ピュレ様食品製造用添加剤。
【請求項9】
ピュレに水とともに混合してピュレ様食品を製造するために用いられる請求項8に記載のピュレ様食品製造用添加剤。