説明

ピロロ[2,3−d]ピリミジン化合物

本明細書に記載されているのは、ピロロ{2,3−d}ピリミジン化合物、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤としてのそれらの使用、この化合物を含有する医薬組成物、およびこれらの化合物を調製するための方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載されているのは、N−メチル(4−(メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ)シクロヘキシル)メタンスルホンアミド、その類似体、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤としてのそれらの使用、これらの化合物を含有する医薬組成物、およびこれらの化合物を調製するための方法である。
【背景技術】
【0002】
タンパク質キナーゼは、タンパク質中の特定の残基のリン酸化を触媒する酵素のファミリーであり、チロシンおよびセリン/スレオニンキナーゼに大きく分類される。突然変異、過剰発現、または不適当な調節、調節不全もしくは調節解除、ならびに増殖因子またはサイトカインの過剰もしくは過少産生から生じる不適当なキナーゼ活性は、それだけには限らないが、癌、心臓血管疾患、アレルギー、喘息および他の呼吸器疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、骨疾患、代謝異常、ならびにアルツハイマー病などの神経および神経変性障害を含む多くの疾患に関連付けられている。不適当なキナーゼ活性は、前述のおよび関連する疾患に関連付けられている細胞増殖、細胞分化、生存、アポトーシス、有糸分裂誘発、細胞周期制御、および細胞運動性に関連する種々の生物学的細胞応答を引き起こす。
【0003】
したがって、タンパク質キナーゼは、治療的介入の標的としての酵素の重要なクラスとして浮上している。特に、細胞性タンパク質チロシンキナーゼ(JAK−1、JAK−2、JAK−3、およびTyk−2)のJAKファミリーは、サイトカインシグナル伝達において中心的な役割を果たす(Kisselevaら、Gene、2002、285、1;Yamaokaら Genome Biology 2004、5、253))。それらの受容体と結合した後、サイトカインはJAKを活性化し、それが次にサイトカイン受容体をリン酸化し、それによってシグナル伝達分子、特に、最終的に遺伝子発現をもたらすシグナル伝達性転写因子(STAT)ファミリーのメンバーのためのドッキング部位が形成される。多くのサイトカインは、JAKファミリーを活性化することが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、JAK−1、JAK−2、JAK−3、および/またはTyk−2を含むJAK酵素を有効に阻害する代替化合物の必要性が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式Iの化合物
【0006】
【化1】

(式中、Rは、ヒドロキシで置換されていてもよい−C1〜4アルキルである)またはその薬学的に許容できる塩を提供する。
【0007】
特に、Rがメチルである式Iの化合物を提供する。
【0008】
特に、Rがエチルまたはシクロブチルである式Iの化合物を提供する。
【0009】
別の態様では、本発明は、
薬学的に許容できる担体および式Iの化合物を含む医薬組成物、
治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩を、必要とする哺乳動物に投与することによって、臓器移植拒絶反応、狼瘡、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬、癌、変形性関節症、および糖尿病から選択される障害または症状を管理または治療するための方法、
治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩を、必要とする哺乳動物に投与することによって、糖尿病、癌、自己免疫性甲状腺障害、潰瘍性大腸炎、クローン病、ドライアイ、アルツハイマー病、白血病、および免疫抑制または免疫調節が望ましいであろう他の適応症から選択される障害または症状を管理または治療するための方法、
治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩を、必要とする哺乳動物に投与することによって、哺乳動物における、アレルギー性皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、そう痒症およびその他のそう痒性症状を含むアレルギー反応ならびに腸疾患などの炎症性疾患から選択される障害または症状を管理または治療するための方法、
治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩を、必要とする哺乳動物に投与することによって、慢性または難治性喘息、遅発型喘息、気道反応性亢進、気管支炎、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息、塵埃喘息、再発性気道閉塞、および慢性閉塞性肺疾患を含む喘息およびその他の閉塞性気道疾患から選択される障害または症状を管理または治療するための方法、
治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩を、必要とする哺乳動物に投与することによって、タンパク質チロシンキナーゼまたはJAK−1、JAK−2、JAK−3および/もしくはTyk−2を阻害するための方法、
治療有効量の式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩を、必要とする哺乳動物に投与することによって、タンパク質チロシンキナーゼまたはJAK−1、JAK−2、JAK−3および/もしくはTyk−2を阻害するための方法、ならびに
本発明の化合物を調製するための方法
も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】N−メチル−1−{トランス−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}メタンスルホンアミドマレイン酸塩(A形)の特徴的なX線粉末回折パターンを示す図である。
【図2】ノミ関連そう痒および皮膚炎軽減アッセイにおけるノミアレルギーのイヌにおける実施例1bの27日目のVASスコアを示す図である。
【図3】ノミ関連そう痒および皮膚炎軽減アッセイにおけるノミアレルギーのイヌにおける実施例1bの記録4時間当たりのそう痒の秒数を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記化合物に関して、ならびに出願および請求項の全体にわたって、下記の用語は、以下に定義した意味を有する。
【0012】
「哺乳動物」という用語は、ヒトまたは家畜およびコンパニオンアニマルを含む動物を意味する。「コンパニオンアニマル」(単数または複数)という表現は、ペットとして飼っている動物を意味する。コンパニオンアニマルの例には、ネコ、イヌ、およびウマがある。「家畜」という用語は、食物もしくは繊維などの生産物を作るため、またはその労働のために農業環境で飼育または育成した動物を意味する。実施形態によっては、家畜は、哺乳動物、例えばヒトによる摂取に適している。家畜動物の例には、ウシ、ヤギ、ウマ、ブタ、ラムを含むヒツジ、およびウサギなどの哺乳動物、ならびにニワトリ、カモおよびシチメンチョウなどのトリがある。
【0013】
疾患の「管理すること(controlling)」、「治療すること(treating)」または「治療(treatment)」という用語には:(1)疾患を予防すること、すなわち疾患に曝露されているもしくは罹りやすいかもしれないが疾患の症候/徴候をまだ経験もしくは示していない哺乳動物において疾患の臨床的な症候もしくは徴候が発生しないようにすること;(2)疾患を阻害すること、すなわち、疾患もしくはその臨床的な症候/徴候の発生を阻止もしくは軽減すること;または(3)疾患を緩和させること、すなわち、疾患もしくはその臨床的な症候/徴候の緩やかな軽減をもたらすことが含まれる。
【0014】
「治療有効量」という用語は、疾患を治療するために哺乳動物に投与したとき、疾患に対してかかる治療を行うのに十分な化合物の量を表す。「治療有効量」は、化合物、疾患およびその重症度ならびに治療すべき哺乳動物の年齢、体重などによって異なるはずである。
【0015】
「およそ」という用語は、X線粉末回折パターンのピークを同定するのに使用した場合、規定された2θ値±0.2°2θと定義する。結晶形がA形多形体であり、特許請求によって包含されているかどうかの任意の決定は、この試験中のばらつきを考慮して判断すべきである。
【0016】
「薬学的に許容できる」は、哺乳動物、コンパニオンアニマルまたは家畜動物で使用するのに適していることを表す。
【0017】
種々の炭化水素含有部分の炭素原子含有量は、その部分中の炭素原子の最小および最大の数を指す接頭辞によって記載されており、すなわち、接頭辞Ci〜jは、整数「i」〜整数「j」(iとjを含む)個の炭素原子の部分を示す。したがって、例えば、C1〜4アルキルは、1〜4(1と4を含む)個の炭素原子のアルキルを意味する。
【0018】
用語アルキルは、直鎖状、分枝状および環状飽和一価炭化水素基を意味するが、「プロピル」などの個々の基に言及すると、直鎖基だけが包含されており、「イソプロピル」などの分枝鎖異性体またはシクロプロピルメチルもしくはシクロペンチルなどの環状異性体は、具体的に呼ばれる。
【0019】
同じ分子式を有するが、性質またはそれらの原子の結合順序または空間内のそれらの原子の配置が異なる化合物は、「異性体」と称される。空間内のそれらの原子の配置が異なる異性体は、「立体異性体」と称される。式Iの化合物は、シス−およびトランス−アキラルジアステレオ異性体として存在できることが当業者には理解されよう。特に、本発明は、化学名N−メチル−1−{トランス−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}メタンスルホンアミドを有する式IAの化合物、
【0020】
【化2】

またはその薬学的に許容できる塩を提供する。
【0021】
記載された化合物の範囲内に含まれているのは、すべて本明細書に記載の化合物の異性体(例えばシス−、トランス−、またはジアステレオ異性体)単独ならびに任意の混合物である。鏡像異性体、ジアステレオ異性体、シス、トランス、シン、アンチ、溶媒和物(水和物を含む)、互変異性体、およびその混合物を含むこれらの形態すべてが記載された化合物に含まれている。
【0022】
立体異性体混合物、例えばジアステレオ異性体の混合物は、それらの対応する異性体に、適当な分離法を用いて既知の方法で分離することができる。ジアステレオ異性体混合物は例えば、分別結晶、クロマトグラフィー、溶媒分散、および類似の手順を用いてそれらの個々のジアステレオ異性体に分離することができる。この分離は、1つの出発化合物のレベルで、または式Iの化合物自体の中で行うことができる。鏡像異性体は、ジアステレオ異性体塩の形成によって、例えば鏡像異性体ピュアなキラル酸との塩形成によって、またはクロマトグラフィー、例えばキラルリガンドを含むクロマトグラフ担体を用いたHPLCによって、分離することができる。
【0023】
投与経路
哺乳動物(すなわちヒトおよび動物)における障害を治療するための治療的使用では、本発明の化合物またはその医薬組成物は、経口、非経口、局所、経直腸、経粘膜、または経腸的に投与することができる。非経口投与には、全身的な効果を引き起こすための間接注射または患部への直接注射が含まれる。局所投与には、皮膚または局部適用によって容易に接近できる臓器、例えば、眼または耳の治療が含まれる。これには、全身的な効果を引き起こすための経皮送達も含まれる。直腸投与には、坐剤の形態が含まれる。好ましい投与経路は、経口および非経口である。
【0024】
医薬用塩
式Iの化合物は、その本来の形態で、または塩として使用することができる。安定な非毒性の酸性または塩基性塩を形成することが望ましい場合には、薬学的に許容できる塩としての化合物の投与が適切かもしれない。式Iの化合物の薬学的に許容できる塩には、酢酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、エトグルタル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2−ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素/リン酸二水素、糖酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩およびトリフルオロ酢酸塩がある。
【0025】
組成物/製剤
本発明の医薬組成物は、当技術分野でよく知られているプロセスによって、例えば、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作成、湿式粉砕、乳化、カプセル封入、封入(entrapping)、凍結乾燥プロセスまたは噴霧乾燥を用いて製造することができる。
【0026】
本発明に基づいて使用する医薬組成物は、薬剤的に使用でき、調製物への活性化合物の加工を容易にする、添加剤および佐剤を含む1種または複数の薬学的に許容できる担体を用いて従来の方法で製剤することができる。適切な製剤は、選択した投与経路に依存する。薬学的に許容できる添加剤および担体は、一般に当業者に既知であり、このように本発明に含まれている。かかる添加剤および担体は、例えば、「Remingtons Pharmaceutical Sciences」Mack Pub.Co.、New Jersey(1991)に記載されている。
【0027】
本発明の製剤は、短時間作用型、速放出型、長時間作用型、および持続放出型になるように設計することができる。したがって、製剤は、管理放出または緩放出用に製剤することもできる。
【0028】
投与量
本発明で使用するのに適した医薬組成物には、有効成分が使用目的、すなわち、障害または疾患の管理または治療を達成するのに十分な量で含有されている組成物が含まれている。より具体的には、治療有効量は、疾患の症候/徴候の予防、緩和もしくは寛解、または治療対象の生存の延長に有効な化合物の量を表す。
【0029】
医薬組成物およびその単位投与形態中の本発明の化合物である活性成分の量は、異なっていてもよく、または投与の方法、特定の化合物の効力および所望の濃度に応じて広く調節してもよい。治療有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。一般に、活性成分の量は、組成物の重量によって0.01%〜99%の範囲になる。
【0030】
一般に、活性成分の投与量の治療有効量は、約0.01〜約100mg/kg体重/日、好ましくは約0.1〜約10mg/kg体重/日、より好ましくは約0.3〜3mg/kg体重/日、さらにより好ましくは約0.3〜1.5mg/kg体重/日の範囲になる。投与量は、各対象の必要量および治療対象となる障害または疾患の重症度に応じて異なっていてもよいことを理解されたい。
【0031】
所望の用量は、1回投与で、または適切な間隔で投与する分割投与、例えば、1日当たり2、3、4回もしくはそれ以上のサブ投与として与えることが好都合であり得る。サブ投与自体は、例えば、吹入器からの複数吸入または目への複数回の滴剤の適用によってなど、数回のばらばらの大ざっぱに間隔を空けた投与にさらに分割してもよい。
【0032】
また、投与した初回投与量は、所望の血漿濃度を急速に達成させるために、上記の上限レベルを超えて増加させてもよいことを理解されたい。その一方で初回投与量は、最適量よりも少なくてもよく、1日投与量は、特定の状況によっては、治療のコース中に次第に増加させてもよい。所望であれば、1日量は、投与のために複数回投与、例えば、1日当たり2〜4回に分割してもよい。
【0033】
医学および獣医学の使用
本発明の化合物は、ヤヌスキナーゼ−1(JAK−1)、ヤヌスキナーゼ−2(JAK−2)およびヤヌスキナーゼ−3(JAK−3)に対して効力があるヤヌスキナーゼ阻害剤(JAK−i)である。したがって、これらは、臓器移植、狼瘡、多発性硬化症、関節リウマチ、乾癬、I型糖尿病および糖尿病からの合併症、癌、喘息、アトピー性皮膚炎、自己免疫性甲状腺障害、潰瘍性大腸炎、クローン病、アルツハイマー病、白血病、変形性関節症、そう痒症の管理、慢性呼吸器疾患および免疫抑制/免疫調節が望ましい他の適応症のための治療薬として有用である。
【0034】
さらに、動物におけるアトピー性皮膚炎を管理するのに安全で有効な薬剤の大きな必要性がある。動物におけるアトピー性皮膚炎を治療するための市場は現在、動物、特にイヌなどのコンパニオンアニマルで苦痛および望ましくない副作用が生じるコルチコステロイドによって支配されている。抗ヒスタミン剤も使用されているが、効果が不十分である。シクロスポリンのイヌ製剤(ATOPICA(商標))は現在、アトピー性皮膚炎に関して販売されているが、高価であり、効力の発現が遅い。さらに、ATOPICA(商標)については、GI耐性問題がある。本発明の化合物は、JAK−1およびJAK−3に対して効力があるJAK阻害剤である。これらの化合物は、ステロイド使用に代わるものになるはずであり、アトピー性皮膚炎において続く、またはノミアレルギー性皮膚炎におけるノミなどのアレルゲンもしくは原因物質の除去後にゆっくり軽減する慢性そう痒症および炎症の解消をもたらす。
【0035】
本発明の化合物は、薬学的に許容できる形態で単独で、または哺乳動物の免疫系を調節する1種もしくは複数の別の薬剤または抗炎症剤と併せて投与することができる。これらの薬剤は、それだけには限らないが、シクロスポリンA(例えばSandimmune(登録商標)またはNeoral(登録商標)、ラパマイシン、FK−506(タクロリムス)、レフルノミド、デオキシスペルグアリン、ミコフェノレート(例えばCellcept(登録商標)、アザチオプリン(例えばImuran(登録商標))、ダクリズマブ(例えばZenapax(登録商標))、OKT3(例えばOrthocolone(登録商標))、アトガム、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、および抗炎症性ステロイド(例えばプレドニゾロンまたはデキサメタゾン)を含んでいてよい。これらの薬剤は、同じまたは別個の投与形態の一部として、同じまたは異なる投与経路によって、同じまたは異なる投与スケジュールで、当業者に既知の標準的な製剤上の慣行に従って投与することができる。
【0036】
一実施形態では、本発明は、有効量の1種または複数の本明細書に記載の化合物を対象に投与することを含む、ヒトまたはヒト以外の哺乳動物などの対象における、JAKに関連する疾患、症状または障害を治療または予防する方法を提供する。JAK関連疾患、症状または障害は、JAK−1、JAK−2、JAK−3、および/またはTyk−2と関連し得る。治療できる適当な対象には、家畜または野生動物、イヌ、ネコ、ウマなどのコンパニオンアニマル;ウシおよび他の反芻動物、ブタ、家禽、ウサギなどを含む家畜;霊長類、例えばアカゲザルおよびカニクイザル(クラブイーティングまたはオナガザルとしても知られている)、マーモセット、タマリン、チンパンジー、マカクなどのサル;およびラット、マウス、アレチネズミ、モルモットなどのげっ歯類が含まれる。一実施形態では、化合物は、薬学的に許容できる形態で、場合により薬学的に許容できる担体で投与する。
【0037】
JAK/STATシグナル伝達は、アレルギー、喘息、移植片(同種移植片)拒絶などの自己免疫疾患、関節リウマチ、筋萎縮性側索硬化症および多発性硬化症など多くの異常免疫反応の媒介、ならびに固形悪性疾患と白血病およびリンパ腫などの血液悪性疾患に関与している。JAK/STAT経路の薬学的介入(pharmaceutical intervention)の概説については、Frank、(1999)、Mol.Med.5:432:456およびSeidelら、(2000)、Oncogene 19:2645〜2656を参照のこと。
【0038】
JAK−3は特に、種々の生物学的プロセスに関与している。例えば、IL−4およびIL−9によって誘導されたマウス肥満細胞の増殖および生存は、JAK−3およびγ鎖シグナル伝達に依存していることが示されている。Suzukiら、(2000)、Blood 96:2172〜2180。JAK−3はまた、IgE受容体媒介肥満細胞の脱顆粒応答において重要な役割を果たし(Malaviyaら、(1999)、Biochem.Biophys.Res.Commun.257:807〜813)、JAK−3キナーゼの阻害は、アナフィラキシーを含むI型超過敏反応を予防することが示されている(Malaviyaら、(1999)、J.Biol.Chem.274:27028〜27038)。JAK−3阻害は、同種移植片拒絶反応に対して免疫抑制をもたらすことも示されている(Kirken、(2001)、Transpl.Proc.33:3268〜3270)。JAK−3キナーゼは、関節リウマチの初期および後期(Muller−Ladnerら、(2000)、J.Immunal.164:3894〜3901);家族性筋萎縮性側索硬化症(Trieuら、(2000)、Biochem Biophys.Res.Commun.267:22〜25);白血病(Sudbeckら、(1999)、Clin.Cancer Res.5:1569〜1582);T細胞リンパ腫の一形態である菌状息肉腫(Nielsenら、(1997)、Prac.Natl.Acad.Sci.USA 94:6764〜6769);および異常細胞増殖(Yuら、(1997)、J.Immunol.159:5206〜5210;Catlett−Falconeら、(1999)、Immunity 10:105〜115)に関わるメカニズムにも関与している。
【0039】
JAK−3を含むJAKキナーゼは、最もよく見られる形態の小児癌である急性リンパ芽球性白血病に罹っている子供由来の原発性白血病細胞で大量に発現されており、研究は、いくつかの細胞におけるSTAT活性化とアポトーシスを調節するシグナルとを関連付けている(Demoulinら、(1996)、Mol.Cell.Biol.16:4710〜6;Jurlanderら、(1997)、Blood 89:4146〜52;Kanekoら、(1997)、Clin.Exp.Immun.109:185〜193;およびNakamuraら、(1996)、J.Biol.Chem.271:19483〜8)。それらは、リンパ球の分化、機能および生存に重要であることも知られている。JAK−3は特に、リンパ球、マクロファージ、および肥満細胞の機能に不可欠な役割を果たしている。このJAKキナーゼの重要性を考慮に入れると、JAK−3に選択的なものを含むJAK経路を調節する化合物は、リンパ球、マクロファージ、または肥満細胞の機能が関わっている疾患または症状を治療するのに有用であり得る(Kudlaczら、(2004)Am.J.Transplant 4:51〜57;Changelian(2003)Science 302:875〜878)。
【0040】
JAK経路の標的化またはJAKキナーゼ、特にJAK−3の調節が治療的に有用であると企図される症状には、関節炎、喘息、自己免疫疾患、癌または腫瘍、糖尿病、いくつかの眼の疾患、障害または症状、炎症、腸管の炎症、アレルギーまたは症状、神経変性疾患、乾癬、移植片拒絶反応、およびウィルス感染がある。JAK−3の阻害に利益を与え得る条件を、以下により詳細に論じる。
【0041】
したがって、式Iの化合物またはその薬学的に許容できる塩および医薬組成物は:
関節リウマチ、若年性関節炎、および乾癬性関節炎を含む関節炎;
慢性または難治性喘息、遅発型喘息、気道反応性亢進、気管支炎、気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息、塵埃喘息、再発性気道閉塞、および慢性閉塞性肺疾患を含む喘息および他の閉塞性気道疾患;
単一臓器または単一細胞型の自己免疫異常と名付けられたもの、例えば橋本甲状腺炎、自己免疫性溶血性貧血、悪性貧血の自己免疫性萎縮性胃炎、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性精巣炎、グッドパスチャー病、自己免疫性血小板減少症、交感性眼炎、重症筋無力症、グレーブス病、原発性胆汁性肝硬変、慢性活動性肝炎、潰瘍性大腸炎および膜性糸球体症、全身性の自己免疫異常に関連するとして名付けられたもの、例えば全身性紅斑性狼瘡、関節リウマチ、シェーグレン症候群、ライター症候群、多発性筋炎−皮膚筋炎、全身性硬化症、結節性多発性動脈炎、多発性硬化症および水疱性類天疱瘡を含む自己免疫疾患または異常、ならびにコーガン症候群、強直性脊椎炎、ヴェグナー肉芽腫症、自己免疫性脱毛症、I型または若年型糖尿病、および甲状腺炎を含むO細胞(体液)に基づき得るまたはT細胞に基づき得る別の自己免疫疾患;
消化管/胃腸管癌、大腸癌、肝臓癌、肥満細胞腫瘍および扁平上皮癌を含む皮膚癌、乳房癌および乳癌、卵巣癌、前立腺癌、リンパ腫、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病を含む白血病、腎臓癌、肺癌、筋肉腫、骨肉腫、膀胱癌、脳腫瘍、口腔黒色腫および転移性黒色腫を含む黒色腫、カポジ肉腫、多発性骨髄腫を含む骨髄腫、骨髄増殖性疾患、増殖性糖尿病性網膜症、および充実性腫瘍を含む血管形成関連障害を含む癌または腫瘍;
I型糖尿病および糖尿病からの合併症を含む糖尿病;
眼の自己免疫疾患、角結膜炎、春季結膜炎、ベーチェット病に関連するブドウ膜炎および水晶体原性ブドウ膜炎を含むブドウ膜炎、角膜炎、ヘルペス性角膜炎、円錐角膜炎、角膜上皮ジストロフィー、角膜白斑、眼天疱瘡、モーレン潰瘍、強膜炎、グレーブス眼症、フォークト−小柳−原田症候群、乾性角結膜炎(ドライアイ)、フリクテン、虹彩毛様体炎、サルコイドーシス、内分泌性眼障害、交感性眼炎、アレルギー性結膜炎、および眼内血管新生を含む眼疾患、障害または症状;
クローン病および/または潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、小児脂肪便症、直腸炎、好酸球性胃腸炎、および肥満細胞症を含む腸管の炎症、アレルギーまたは症状;
運動ニューロン疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、脳虚血を含む神経変性疾患、または心的外傷、ストライク、グルタミン酸神経毒性もしくは低酸素が原因である神経変性疾患;発作における虚血性/再潅流傷害、心筋虚血、腎虚血、心臓発作、心肥大、アテローム性動脈硬化症および動脈硬化症、臓器低酸素症、および血小板凝集;
アトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬、強皮症、そう痒症および他のそう痒性症状を含む皮膚疾患、症状または障害;
ウマを含む哺乳動物におけるアレルギー性皮膚炎およびウマにおける咬傷過敏症、夏季湿疹および皮膚掻痒などのアレルギー性疾患を含むアレルギー反応;ならびに
ランゲルハンス島移植片拒絶反応、骨髄移植片拒絶反応、移植片対宿主疾患、骨髄、軟骨、角膜、心臓、椎間板、島、腎臓、肢、肝臓、肺、筋肉、筋芽細胞、神経、すい臓、皮膚、小腸、または気管、および異物移植などの臓器および細胞移植片拒絶反応を含む移植片拒絶反応などの種々の症状または疾患を治療するのに使用することができる。
【0042】
別の実施形態は、JAK酵素を非治療的量または治療有効量の1種または複数の本発明の化合物と接触させることを含む、JAK−1、JAK−2、JAK−3および/またはTyk−2を含むJAK酵素を阻害する方法を提供する。かかる方法は、in vivoまたはin vitroで行われ得る。in vitro接触は、種々の量または濃度の選択された酵素に対する1種または複数の化合物の効力を決定するために、スクリーニングアッセイを伴っていてよい。治療有効量の1種または複数の化合物とのin vivo接触は、記載された疾患、障害もしくは症状の治療または接触が行われる動物における臓器移植拒絶反応の予防法を伴っていてよい。JAK酵素および/または宿主動物に対する1種または複数の化合物の効果も、決定または測定することができる。JAK活性を決定するための方法には、実施例に記載されているもの、ならびにWO 99/65908、WO 99/65909、WO 01/42246、WO 02/00661、WO 02/096909、WO 2004/046112またはWO 2007/012953に開示されているものがある。
【0043】
以下の反応スキームは、本発明の化合物の一般的な合成手順を例示している。すべての出発原料は、これらのスキームに記載されている手順によって、または当業者に既知の手順によって調製する。
【0044】
【化3】

【0045】
敏感な官能基(PgまたはPg1)は、本発明の化合物の合成中に保護および脱保護する必要があるかもしれないことが、当業者には明らかであろう。これは、従来の方法によって、例えばTW GreeneおよびPGM Wutsによる「Protective Groups in Organic Synthesis」、John Wiley & Sons Inc(1999)、およびその中の参考文献に記載されているように、実現することができる。
【0046】
スキームIでは、4−クロロ−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(a)は、商業的に得ることができる。トランス−4−(メチルアミノ)−シクロヘキシル]メタノール(b)は、対応するカルボン酸、トランス−4−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]シクロヘキサンカルボン酸から、0〜60℃の温度で数時間、テトラヒドロフランなどの非プロトン性無水溶媒中での水素化アルミニウムリチウムなどの還元剤を用いた処理によって得ることができる。
【0047】
スキームIに示すとおり、構造(c)の化合物は、最高90℃までの高温で最長数時間、トリエチルアミンおよび炭酸カリウムなどの適当な塩基の存在下でN,N−ジメチルホルムアミド、水性ジオキサンおよびジメチルスルホキシドなどの適当な非プロトン性極性溶媒中に、4−クロロ−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(a)とトランス−4−(メチルアミノ)−シクロヘキシル]メタノール(b)の反応によって合成することができる。
【0048】
構造(d)の化合物は、構造(c)の化合物から2ステップ手順で合成することができる。例えば、構造(d)の化合物は、第1に、塩化メチレンなどの極性非プロトン性溶媒中で臭化チオニルまたは三臭化リンなどの臭素化試薬を用いて、保護されていないシクロヘキシルメチルブロミドをもたらし、第2に、塩化トシルなどの適当な保護試薬を添加して、保護された構造(d)の化合物を得ることによって合成することになる。
【0049】
構造(e)の化合物は、構造(c)の化合物から簡単な保護プロセスを用いて調製することができる。例えば、PgとPgのどちらもトシルの場合、これは、塩化メチレンなどの極性非プロトン性溶媒、DMAPなどの触媒およびトリエチルアミンなどの弱塩基の存在下で、保護されていない構造(c)の化合物を塩化トシルで処理することによって、1ステップ反応で生じさせることができる。
【0050】
構造(f)の化合物は、適当な求核試薬を用いてSアルキル化によって構造(e)の化合物から合成することができる。したがって保護基(Pg)がトシルまたはメシルなどの適当なヒドロキシル保護基である構造(e)の化合物は、ジメチルスルホキシドまたはN−メチルピロリジンなどの極性溶媒中でチオ酢酸カリウムと最高75℃までの高温で最長2時間まで反応させて、構造(f)の化合物を得ることができる。
【0051】
構造(g)の化合物は、式(f)の化合物から酸化手順によって合成することができる。多くの酸化条件、例えばS.D.BurkeおよびR.L.Danheiserによって編集された「Handbook of Reagents for Organic Synthesis − Oxidising and Reducing Agents」に記載されているものが当業者には知られている。例えば、水で濡らしてもよい構造(f)の化合物は、ギ酸で処理し、続いて室温で約15時間撹拌しながら過酸化水素をゆっくり加えて、構造(g)の化合物を得ることができる。あるいは、オキソンは、酢酸などの極性溶媒中で使用でき、酢酸カリウムの存在下で反応を行うと、式(g)の化合物のカリウム塩が生成する。
【0052】
構造(g)の化合物は、極性溶媒中の亜硫酸ナトリウムなどの適当な硫黄求核試薬で処理することによって、構造(e)の化合物から直接合成できることが予想される。同様に、構造(g)の化合物は、亜硫酸ナトリウムとの求核置換反応によって、構造(d)の化合物から合成することができる。
【0053】
還流させながら、N,N−ジメチルホルムアミドなどの極性共溶媒を加えた塩化メチレンなどの非プロトン性極性溶媒中の塩化チオニルなどの塩素化剤を用いて式(g)のスルホン酸を処理することによって、塩素化した化合物を得る。次いで塩素化化合物は、テトラヒドロフランなどの非プロトン性無水溶媒中で純粋な気体の形にある、または室温でテトラヒドロフランなどの非プロトン性無水溶媒中に溶解している適当なアミンと反応し、構造(h)の化合物を生成する。トリエチルアミンなどの無水弱塩基は、反応中に生成した塩酸を吸い取るために、使用してもよい。
【0054】
本発明の式Iの化合物は、Pgが適当な保護基である式(h)の化合物から、当業者に既知の脱保護手順によって調製することができる。例えば、保護基(Pg)がトシルの場合、適当な脱保護条件は、メタノールまたはイソプロパノールなどのプロトン性溶媒および場合によりテトラヒドロフランおよび水などの混和性共溶媒中での水酸化リチウムまたは水酸化カリウムなどの塩基との反応を室温で数時間伴って、式Iの脱保護アミンをもたらす。
【0055】
式Iの化合物の塩は、ブタノールなどのプロトン性溶媒および場合により水などの共溶媒の存在下における式Iの化合物の遊離塩基とマレイン酸などの適当な酸との反応によって形成することができる。
【0056】
あるいは、本発明の化合物は、スキームIIに従って調製することができる。
【0057】
【化4】

【0058】
スキームIIでは、4−メチル−7−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(j)は、当技術分野でよく知られている手順を用いて塩化トシルなどの保護剤を使用して、市販されている(a)から得ることができる。トランス−4−(メチルアミノ)−シクロヘキシル]メタノール(b)は、対応するカルボン酸、トランス−4−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]シクロヘキサンカルボン酸から、0〜110℃の温度で数時間、トルエンなどの無水溶媒中でのビットライドなどの還元剤を用いた処理によって得ることができる。
【0059】
スキームIIに示すとおり、構造(k)の化合物は、最高60℃までの高温で最長数時間、触媒量のヨウ化カリウムを含むトリエチルアミンなどの適当な塩基の存在下でアセトンなどの適当な溶媒中に、4−クロロ−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(j)とトランス−4−(メチルアミノ)−シクロヘキシル]メタノール(b)の反応によって合成することができる。
【0060】
構造(k)の化合物は、最高60℃までの高温でトリエチルアミンまたはジエチルイソプロピルアミンなどの適当な塩基の存在下でアセトンなどの適当な溶媒中に、塩化メシルなどの適当なメシル化試薬の添加によって合成して、構造(k)のメタンスルホニル化合物を得ることができる。
【0061】
構造(l)の化合物は、適当な求核試薬を用いて簡単なSアルキル化プロセスを用いることによって構造(k)の化合物から調製することができる。したがって構造(k)の化合物は、イソプロピルアルコールまたは水またはトルエンなどの溶媒中で亜硫酸ナトリウムと最高90℃までの高温で最長4時間まで反応させて、構造(l)の化合物を得ることができる。
【0062】
0〜40℃の温度で、N,N−ジメチルホルムアミドなどの極性共溶媒を加えたTHFまたは塩化メチレンなどの非プロトン性極性溶媒中の塩化チオニルなどの塩素化剤を用いて式(l)のスルホン酸を処理することによって、塩素化した化合物を得る。次いで塩素化化合物は、テトラヒドロフランなどの非プロトン性無水溶媒中で純粋な気体の形にある、または室温でテトラヒドロフランなどの非プロトン性無水溶媒中に溶解している、好ましくはメチルアミン、シクロブチルアミンまたは2−ヒドロキシアゼチジンなどの適当なアミンと反応し、構造(h)の化合物を生成する。トリエチルアミンなどの無水弱塩基は、反応中に生成した塩酸を吸い取るために、使用してもよい。
【実施例】
【0063】
調製1 N−メチル−1−[トランス−4−(メチル{7−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル}アミノ)シクロヘキシル]メタンスルホンアミド
【0064】
【化5】

方法(a) 調製2の化合物(308.0g湿重量、214.5g乾燥重量、0.41mol)のテトラヒドロフラン(1.0l)溶液にメチルアミン(2Mテトラヒドロフラン溶液、687ml)を1時間にわたって加える。室温で30分間撹拌した後、さらにメチルアミン(2Mテトラヒドロフラン溶液、53ml)を加え、反応混合物を室温で18時間撹拌する。減圧蒸留によって混合物の体積を600mlまで減少させ、テトラヒドロフラン(300ml)を加えてから、混合物の体積を再度およそ750mlに減少させる。45℃で加熱した混合物に、2−プロパノール(247ml)および水(693ml)を加える。室温まで冷却した後、固形物をろ過によって捕集し、水(2×250ml)で洗浄し、真空中65℃で乾燥させて、表題化合物(180.4g)を得る。
1H-NMR
(d6-DMSO): 1.17 - 1.32 (2H), 1.57 - 1.73 (4H), 1.76 - 1.92 (1H),
1.93 - 2.08 (2H), 2.30 - 2.39 (3H), 2.53 - 2.62 (3H), 2.87 - 2.98 (2H), 3.07 -
3.17 (3H), 4.53 - 4.75 (1H), 6.81 - 6.94 (1H), 7.38 - 7.47 (2H), 7.56 - 7.65
(1H), 7.92 - 8.02 (2H), 8.15 - 8.27 (1H).
【0065】
方法(b) 0〜5℃のTHF(1.65l)およびN,N−ジメチルホルムアミド(5.0ml)に溶かした調製2の化合物(165g、0.34mol)の溶液に、塩化チオニル(125ml、17mol)を25分にわたって加える。反応混合物を30分間0〜5℃で撹拌し、次いで8時間の間40℃までゆっくり加熱した。室温まで冷却した後、溶媒を減圧下で蒸発させ、THFと共に共沸させて、塩化チオニルを除去した。得られた塩化スルホニルに、新たなTHF(1.65l)を加え、混合物を0℃まで冷却した。乾燥N−メチルアミンガスを30分間パージし、反応物をさらに室温で4時間撹拌した。溶媒をその体積の半分(800ml)まで蒸発させ、ヘプタン(1.5l)を加えた。生成物を沈殿させ、ろ過し、水(1l)で洗浄して、表題化合物(80g)を得た。
1H-NMR
(d6-DMSO): 1.17 - 1.32 (2H), 1.57 - 1.73 (4H), 1.76 - 1.92 (1H),
1.93 - 2.08 (2H), 2.30 - 2.39 (3H), 2.53 - 2.62 (3H), 2.87 - 2.98 (2H), 3.07 -
3.17 (3H), 4.53 - 4.75 (1H), 6.81 - 6.94 (1H), 7.38 - 7.47 (2H), 7.56 - 7.65
(1H), 7.92 - 8.02 (2H), 8.15 - 8.27 (1H)
【0066】
調製2 [トランス−4−(メチル{7−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル}アミノ)シクロヘキシル]メタンスルホニルクロリド
【0067】
【化6】

ジクロロメタン(1.2l)およびN,N−ジメチルホルムアミド(4.1ml)に溶かした調製3の化合物(210.0g、0.42mol)の溶液に、塩化チオニル(151.0ml、2.1mol)を25分にわたって加える。反応混合物を還流させながら18時間加熱し、次いで減圧蒸留によって体積を800mlまで減少させる。およそ30℃で加熱した混合物に、酢酸エチル(1.1l)を1時間にわたって加え、続いてヘプタン(546ml)を室温で20分にわたって加える。混合物を0℃まで冷却し、1時間撹拌し、得られた沈殿物を窒素下でろ過によって捕集する。固体をヘプタン(2×125ml)で洗浄して、表題化合物(308.0g湿重量)を得て、これを窒素下で貯蔵し、直接使用する。
【0068】
調製3 [トランス−4−(メチル{7−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル}アミノ)シクロヘキシル]メタンスルホン酸
【0069】
【化7】

方法(a) 調製4の化合物(100.0g湿重量、23.5g乾燥重量、47.8mmol)とギ酸(82.0g、68.0ml、1.8mol)の混合物に、過酸化水素(35wt.%水溶液、21.0ml、0.26mol)を10分にわたって加える。反応混合物を室温で15時間撹拌し、次いでメタ重硫酸ナトリウムまたはメタ重亜硫酸ナトリウム水溶液(33wt.%、35ml)に加えることによってクエンチする。混合物に、水(5ml)、2−プロパノール(50ml)および水酸化ナトリウム水溶液(33wt.%、161ml)を加え、スラリーを室温で1時間撹拌する。固形物をろ過によって捕集し、水(100ml)で洗浄し、真空中60℃で乾燥させて、表題化合物(26.0g)を得る。
1H-NMR
(d6-DMSO): 0.98 - 1.18 (2H), 1.55 - 1.76 (5H), 1.99 - 2.13 (2H),
2.29 - 2.39 (5H), 3.05 - 3.15 (3H), 4.47 - 4.76 (1H), 6.77 - 6.92 (1H), 7.38 -
7.48 (2H), 7.54 - 7.62 (1H), 7.91 - 8.02 (2H), 8.17 - 8.25 (1H)
【0070】
方法(b) IPA−水(各585ml、1:1、V/V)に溶かした調製3の化合物の溶液に、硫酸ナトリウムを加え、混合物を80〜90℃まで24時間加熱した。室温まで冷めた後、溶媒を最大で50%まで蒸発させ、酢酸の添加によって反応混合物のpHを3〜4の範囲に調節した。トルエン(1l)を加え、混合物を80%まで蒸発させた。さらにトルエン(1l)を加え、混合物を4時間還流させた。トルエンをデカントし、真空下で乾燥させることによって合成した表題化合物が得られた(168g)。
1H-NMR
(d6-DMSO): 0.98 - 1.18 (2H), 1.55 - 1.76 (5H), 1.99 - 2.13 (2H),
2.29 - 2.39 (5H), 3.05 - 3.15 (3H), 4.47 - 4.76 (1H), 6.77 - 6.92 (1H), 7.38 -
7.48 (2H), 7.54 - 7.62 (1H), 7.91 - 8.02 (2H), 8.17 - 8.25 (1H)
【0071】
調製4 S−{[トランス−4−(メチル{7−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル}アミノ)シクロヘキシル]メチル}エタンチオエート
【0072】
【化8】

チオ酢酸カリウム(11.4g、99.4mmol)のジメチルスルホキシド(30ml)溶液に、ジメチルスルホキシド(130ml)に溶かした調製5の化合物(50.0g、87.9mmol)を加える。反応混合物を55℃で3時間加熱し、室温まで冷却し、炭酸水素ナトリウム水溶液(0.1M、640ml)に加えることによってクエンチする。混合物を13℃まで冷却し、得られた沈殿物をろ過によって捕集し、水(250ml)で洗浄して、表題化合物(204.0g湿重量)を得る。
1H-NMR
(d6-DMSO): 1.06 - 1.23 (2H), 1.39 - 1.51 (1H), 1.51 - 1.70 (4H),
1.74 - 1.88 (2H), 2.30 - 2.40 (6H), 2.73 - 2.84 (2H), 3.06 - 3.14 (3H), 4.44 -
4.76 (1H), 6.76 - 6.94 (1H), 7.36 - 7.49 (2H), 7.56 - 7.62 (1H), 7.90 - 8.02
(2H), 8.17 - 8.26 (1H)
【0073】
調製5 [トランス−4−(メチル{7−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル}アミノ)シクロヘキシル]メチル4−メチルベンゼンスルホナート
【0074】
【化9】

調製6の化合物(42.0g、0.16mol)のジクロロメタン(1l)溶液に、トリエチルアミン(68.3g、0.68mol)および4−ジメチルアミノピリジン(1.0g、8.2mmol)、続いてp−トルエンスルホニルクロリド(62g、0.33mol)を加える。反応混合物を室温で2時間撹拌してから、さらにp−トルエンスルホニルクロリド(45.5g、0.24mol)を加える。18時間撹拌した後、混合物を真空中で濃縮し、残留物の一部分(およそ309g)をメタノール(758ml)中で15分間スラリーにする。スラリーに、水(600ml)および飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(142ml)を加え、混合物を1時間撹拌する。固形物をろ過によって捕集し、メタノール:水[1:1、50ml]、水(50ml)およびヘキサン(50ml)で洗浄する。固体を真空中60℃で乾燥させて、表題化合物(87.1g)を得る。
1H-NMR
(d6-DMSO): 1.02 - 1.20 (2H), 1.53 - 1.75 (7H), 2.31 - 2.39 (3H),
2.39 - 2.47 (3H), 3.04 - 3.12 (3H), 3.80 - 3.91 (2H), 4.34 - 4.76 (1H), 6.78 -
6.93 (1H), 7.37 - 7.54 (4H), 7.54 - 7.64 (1H), 7.75 - 7.84 (2H), 7.91 - 8.01
(2H), 8.14 - 8.25 (1H)
【0075】
調製6 {トランス−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}−メタノール
【0076】
【化10】

水(1l)に溶かしたトランス−4−(メチルアミノ)シクロヘキシル]メタノールの化合物(WO 2002/14267に記載されている手順に従って調製できる)(50.0g、0.35mol)、4−クロロ−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(市販されている、42.9g、0.27mol)および炭酸カリウム(57.3g、0.42mol)の混合物と1,4−ジオキサン(100ml)を90℃で15時間加熱する。混合物に調製7の化合物(2.0g、14.0mmol)を加え、反応混合物を90℃でさらに1時間加熱する。室温まで冷却した後、混合物を1時間撹拌し、固形物をろ過によって捕集し、水(150ml)で洗浄し、真空中65℃で乾燥させて、表題化合物(72.7g)を得る。
1H-NMR
(d6-DMSO): 1.00 - 1.19 (2H), 1.30 - 1.45 (1H), 1.52 - 1.77 (4H),
1.77 - 1.91 (2H), 3.09 - 3.20 (3H), 3.20 - 3.29 (2H), 4.37 - 4.51 (1H), 6.45 -
6.57 (1H), 7.06 - 7.17 (1H), 8.01 - 8.14 (1H)
【0077】
調製7 [トランス−4−(メチル{7−[(4−メチルフェニル)スルホニル]−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル}アミノ)シクロヘキシル]メタンスルフィナート
【0078】
【化11】

調製4の化合物(60.0g、0.418mol)のアセトン(600ml)溶液に、トリエチルアミン(117.5ml、0.837mol)および触媒ヨウ化カリウム(3.4g、0.05mol)、続いて4−クロロ−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン(市販されている、102.8g、0.335mol)を加える。得られた混合物を60℃まで22時間加熱した。室温まで冷ました後、アセトン(300ml)、続いてトリエチルアミン(146.9ml、1.04mol)、次いで塩化メシル(81.7ml、1.047mol)を加えた。室温で4時間撹拌した後、水(1.8l)を加え、その結果生成物が沈殿した。生成物をろ過し、乾燥させ、MTBE−ヘプタンの混合物(6:4、600ml)と一緒に粉砕した。MTBE−ヘプタンからの2回目の粉砕を行い、合成した表題化合物が得られた(120g)。
1H-NMR
(d6-DMSO):
【0079】
調製8 [トランス−4−(メチルアミノ)シクロヘキシル]メタノール
【0080】
【化12】

ビットライド溶液(65%、767ml、2.465mol)を1時間にわたってトランス−4−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]シクロヘキサンカルボン酸(市販されている、100g、0.4109mol)のトルエン(1l)溶液に滴下した。添加が完了した後、反応混合物を100〜110℃で加熱還流した。反応混合物を、硫酸ナトリウム塩水溶液(800ml)を用いて10℃より低い温度でクエンチした。反応混合物をセライトに通してろ過し、ろ過ケーキをDCM(500ml)、続いて水(100ml)で洗浄した。有機層を分離し、水層をDCM(600ml次いで400ml)で2回抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で濃縮して、表題化合物(62g)を得た。
1H-NMR
(CD3OD): 1.08 - 1.31 (4H), 1.51 - 1.64 (1H), 1.93 - 2.05 (2H), 2.10
- 2.22 (2H), 2.38 - 2.50 (1H), 2.50 - 2.54 (3H), 3.48 - 3.55 (2H)
【0081】
(実施例1a)
N−メチル−1−{トランス−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}メタンスルホンアミドの調製
【0082】
【化13】

調製1の化合物(250.0g、0.48mol)の2−プロパノール(1.2l)溶液に、水(1.2l)に溶かした水酸化リチウム(48.7g、2.03mol)を加える。反応混合物を40℃で8時間加熱し、次いで室温で18時間撹拌する。混合物をろ過し、2−プロパノール:水(1:1、100ml)を通して洗浄し、塩酸(6N)を添加することによってろ液をpH7.5に調節する。1時間撹拌した後、固形物をろ過によって捕集し、2−プロパノール:水(1:2、240ml)で洗浄し、真空中60℃で乾燥させて、表題化合物(148.7g)を遊離塩基(実施例1a)として得る。
1H-NMR
(d6-DMSO): 1.20 - 1.39 (2H), 1.62 - 1.75 (4H), 1.77 - 1.91 (1H),
1.97 - 2.11 (2H), 2.54 - 2.63 (3H), 2.89 - 2.99 (2H), 3.10 - 3.21 (3H), 4.44 -
4.86 (1H), 6.43 - 6.61 (1H), 7.01 - 7.19 (1H), 7.94 - 8.16 (1H)
【0083】
(実施例1b)
N−メチル−1−{トランス−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}メタンスルホンアミドマレイン酸塩の調製
【0084】
実施例1aの化合物(212.0g、628.3mmol)およびマレイン酸(67.2g、579.0mmol)の1−ブタノール(3200ml)中混合物と水(400ml)を室温で18時間撹拌する。減圧蒸留(55℃、100mbar)によって混合物の体積を1600mlまで減少させ、次いで0℃まで冷却する。得られた固体をろ過によって捕集し、ヘプタン(500ml)で洗浄し、真空中35℃で乾燥させて、N−メチル−1−{トランス−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]−シクロヘキシル}メタンスルホンアミドのマレイン酸塩(253.0g)をA形として知られる結晶形として得る。
実験MH 338.2;予測 338.2。
1H-NMR
(d6-DMSO): 1.24 - 1.38 (2H), 1.68 - 1.92 (5H), 2.00 - 2.11 (2H),
2.56 - 2.61 (3H), 2.91 - 3.00 (2H), 3.15 - 3.27 (3H), 4.39 - 4.70 (1H), 6.53 -
6.73 (1H), 7.16 - 7.36 (1H), 8.07 - 8.29 (1H).
【0085】
(実施例1c)
N−メチル−1−{トランス−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}−メタンスルホンアミドマレイン酸塩(A形)の粉末X線回折の採取方法
自動サンプルチェンジャー、θ−θゴニオメーター、自動ビーム発散スリット、およびPSD Vantec−1検出器を取り付けたBruker−AXS Ltd.のD4粉末X線回折計を用いて、A形、N−メチル−1−{トランス−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}−メタンスルホンアミドマレイン酸塩の粉末X線回折パターンを集めた。試料を、低バックグラウンドキャビティシリコンウェーハ試験片台上に載せることによって分析の準備をした。試験片を回転させ、その間、X線管を40kV/35mAで作動させながら銅K−αX線(波長=1.5406オングストローム)を照射した。分析は、2°〜55°の2θ範囲にわたって0.018°のステップ当たり0.2秒のカウントに設定した連続モードで実行するゴニオメーターで行った。結果を表1および表2に要約して示す。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
当業者には容易に明らかなように、たとえ同じロットの物質で実施したときでも、X線粉末回折の結果が変動することがあり、それに続くXRPDの結果が一致しないことがある。この相違は、試験試料の調製、温度、使用したX線回折計の特定のモデル、オペレーターの技術などに起因し得る。用語「およそ」は、X線粉末回折パターン中のピークを規定する際に使用した場合、定められた2θ値±0.2°2θと定義する。結晶形がA形多形体であるかどうか、および請求項によって包含されるかどうかについての任意の決定は、この試験のばらつきに照らして解釈すべきである。
【0089】
このばらつきは、図1に示されている。2つの異なるロットのN−メチル−1−{トランス−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}−メタンスルホンアミドマレイン酸塩A形を、同じXRPD回折計にかけた。図1の特徴的なピークは、それがA形多形体であることを裏付けている。しかし、これらのピークならびに他の同定ピークの相対強度は、わずかに異なっていた。
【0090】
(実施例2)
N−シクロブチル−1−{トランス−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}メタンスルホンアミドの調製
【0091】
【化14】

実施例1の基本手順に従い、重要でない変形形態を作成するが、前駆体をシクロブタンアミンに置換して、表題化合物を得る。
実験MH 378.0;予測 378.2
1H-NMR
(d6-DMSO): 1.22 - 1.32 (2H), 1.47 - 1.70 (6H), 1.78 - 2.04 (5H),
2.16 - 2.24 (2H), 2.85 - 2.86 (2H), 3.15 (3H).3.68 - 3.78 (1H), 4.60 - 4.72 (1H), 6.51 - 6.54 (1H), 7.11 - 7.12
(1H), 7.44 - 7.49 (1H), 8.08 (1H), 11.60 (1H)
【0092】
(実施例3)
N−エチル−1−{トランス−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}メタンスルホンアミドの調製
【0093】
【化15】

実施例1の基本手順に従い、重要でない変形形態を作成するが、前駆体をエタンアミンに置換して、表題化合物を得る。
実験MH 352.0;予測 352.2
1H-NMR
(CDCl3): 1.24 - 1.44 (5H), 1.64 - 1.74 (2H), 1.87 - 2.09 (3H), 2.15
- 2.21 (2H), 2.97 - 2.99 (2H), 3.18 - 3.27 (5H), 4.46 - 4.52 (1H), 4.74 - 4.86
(1H), 6.55 (1H), 7.04 (1H), 8.28 (1H)
【0094】
(実施例4)
JAK酵素アッセイ
材料:組換えJAK−2(カタログ番号PV4210)およびJAK−3(カタログ番号PV3855)は(Invitrogen Corporation、米国ウィスコンシン州Madison)から購入した。この研究で使用した組換えJAK−1(GST−JAK−1(852−1142))およびTyk−2(GST−Tyk2(870−1187、C1187S))は、Pfizer Laboratoriesで発現および精製された。アデノシン5’−三リン酸(ATP)は、Sigma Chemical Company、米国ミズーリ州St.Louisから得た。JAK−2およびJAK−3アッセイに使用したJAKtideペプチド(ペプチド配列、FITC−KGGEEEEYFELVKK(配列番号:1))とJAK−1およびTyk−2アッセイに使用したIRS−1ペプチド(ペプチド配列、5−FAM−KKSRGDYMTMQIG(配列番号:2))は、(American Peptide Company、米国カリフォルニア州Sunnyvale)から購入した。コーティング試薬3は、(Caliper Life Sciences、米国マサチューセッツ州Hopkinton)から購入した。
【0095】
方法:JAKtide(JAK−2およびJAK−3)またはIRS−1ペプチド(JAK−1およびTyk−2)のリン酸化を定量化するためにペプチド移動度シフトアッセイを使用した。反応を、384穴プレート(Matrical MP−101)中に全体積10マイクロリットルで実施した。反応混合物は、20mM HEPES、pH7.4、10mM塩化マグネシウム、0.01%ウシ血清アルブミン(BSA)、0.0005%ツイーン−20、ATP(JAK−2およびJAK−3は4マイクロモル、JAK−1は40マイクロモルならびにTyk−2は7マイクロモル))、2%DMSOおよび1マイクロモル ペプチド基質(JAK−2およびJAK−3はJAKtideまたはJAK−1およびTyk−2はIRS−1ペプチド)を含有していた。化合物を連続的に100%ジメチルスルホキシドで希釈し、二組または四組に分けて11点用量応答で試験した(反応物10マイクロリットル当たりの化合物/DMSO 200nlを加えた)。最終濃度2nM JAK−2、1nM JAK−3、7nM Tyk2または20nM JAK−1への酵素の添加によって反応を開始した。JAK−1では240分間、JAK−2では150分間、JAK−3では90分間およびTyk−2では60分間アッセイを実行した。アッセイを、20マイクロリットルの140mM HEPES、22.5mM EDTAおよび0.15%コーティング試薬3で指定した時間に停止した。プレートをLabChip 3000(LC3000)測定器(Caliper Life Sciences)に置いて、リン酸化したペプチドの形成を測定した。(Caliper Life Sciences)製のHits Well Analyzer Softwareを用いてデータを分析して、形成した生成物の量を求めた。
【0096】
次いでデータを内部アプリケーションに取り込み、そこで各データポイントを非阻害および無酵素対照に対する%阻害として表した。次いで4パラメータロジスティック方程式(方程式1)を用いて用量反応データを適合させて、IC50値を決定した。
【0097】
【数1】

【0098】
ここで、最大値は適合させた非阻害値であり、最小値は適合させた完全阻害値であり、sはスロープファクターである。
【0099】
このプロトコルを用いて、実施例1および2の表題化合物について以下の結果を生み出した。
【0100】
【表3】

【0101】
(実施例5)
イヌのin vitro T細胞増殖アッセイ
T細胞活性化は、種々の炎症性障害および自己免疫異常ならびに喘息、アレルギーおよびそう痒症において重要な役割を果たす。T細胞活性化は、部分的に、JAK−STAT経路を介してシグナルを送るサイトカインによって誘発できるので、JAK阻害剤は、異常なT細胞活性化を伴うかかる疾患に対して有効な可能性がある。
【0102】
方法:イヌの全血を、ビーグル犬29匹および雑種犬23匹からナトリウムヘパリンチューブに捕集した。全血(20μL)を、ビヒクル対照または試験化合物(0.001〜10μM)、コンカナバリンA(ConA;1μg/ml、Sigma C5275)、およびイヌインターロイキン−2(IL−2;50ng/ml、R&D Systems 1815−CL/CF)を含有する培地(1%熱不活性化ウシ胎児血清、Gibco #10082−39、292μg/ml L−グルタミン、Gibco #250030−081、100u/mlペニシリンおよび1ml当たり100μgストレプトマイシン、Gibco #15140−122を加えたRPMI 1640、Gibco #21870−076)180μLと共に96穴プレート(Costar 3598)に播いた。全血と、ビヒクル対照を含んでConAまたはIL−2を含まない培地とを含有する穴をバックグラウンド対照として使用した。プレートを37℃で48時間インキュベートした。トリチウム標識チミジン、0.4μCi/穴(Perkin Elmer、Net027A−005MC)をさらに20時間加えた。Brandel MLR−96セルハーベスターおよびプリウェットフィルターマット(Wallac 1205−401、Perkin Elmer)を用いて、プレートを凍結し、次いで解凍、洗浄およびろ過した。フィルターを60℃で1時間乾燥させ(Precision 16EG熱対流炉)、シンチラント(Wallac 1205−440、Perkin Elmer)10mLと共にフィルターサンプルバッグ(Wallac 1205−411、Perkin Elmer)中に置いた。密封したフィルターを、LKB Wallac 1205 Betaplate液体シンチレーションカウンターでカウントした。Gterm Betaplateプログラムv1.1(Wallac copyright 1989〜1990)によってデータを集め、以下の式を用いて計算したパーセント阻害に変換した:
【0103】
【数2】

データを、GraphPad Prism 4.0を用いてパーセント阻害として図示し、IC50曲線を、2点間(point to point)解析を用いてあてはめた。
【0104】
結果 ビーグルからの全血を用いた場合に得られた平均IC50値は、実施例1aの化合物では66.3nM;実施例2では410nM;および実施例3では83nMであった。雑種犬からの全血を用いた場合に得られた平均IC50値は、実施例1aの化合物では138nMであった。これらのデータは、本発明の化合物が、多くの疾患において重要な特徴であるT細胞増殖を阻害するのに有効であることを示唆する。
【0105】
(実施例6)
ノミ関連そう痒症および皮膚炎軽減アッセイ
ノミ関連そう痒症および皮膚炎は、イヌによく見られる皮膚状態である。そう痒症は、ノミ関連皮膚炎に関連する最も重篤な臨床的症状の1つであり、連続してひっかき、顔をこすり、足を噛むことは、紅斑、浮腫、脱毛症、苔癬化、および色素沈着過度などの種々の変化を皮膚にもたらし得る。ノミ関連そう痒症および皮膚炎は、実験的に誘導することができる。これらのモデルでは、炎症性細胞およびサイトカインは、アレルゲンに対する免疫反応を媒介することがわかっている。したがって、そう痒発生性および炎症誘発性サイトカイン受容体のシグナル伝達を阻害するJAK阻害剤は、ノミ関連そう痒症および皮膚炎の阻害、軽減または最小化に有効な可能性がある。
【0106】
研究計画
体重が5〜35kgで年齢が1歳より大きい雄および雌の雑種犬28匹に、餌を与えていない成虫のネコノミ(Ctenocephalides felis)およそ100匹を、投与を開始する14日前に寄生させ、研究の間中、4日毎にイヌ1匹当たりノミ30匹を再寄生させた。投与の7日前に、イヌ24匹を、皮膚病変に関する視覚的アナログ尺度(VAS)スコアに基づいて、無作為に3つの異なる治療グループ、偽薬、0.5mg/kgまたは0.25mg/kgの実施例1bの化合物に分けた。治療は、経口的に28日間1日2回行い、研究中、そう痒行動ならびに紅斑および皮膚病変を評価した。ビデオ記録可能な囲いの中にイヌを入れ、4時間にわたってイヌの活動を記録することによって、そう痒行動を記録した。イヌがひっかき行動に何秒費やしたかを調べることによって、そう痒活動を定量化した。腹部、鼠径部の画像キャプチャによって皮膚病変を記録し、視覚的アナログ尺度(VAS)に従って重症度のランクを付けた。
【0107】
統計的分析:
反復測定のための混合線形モデルを用いて、ビデオキャプチャしたそう痒行動の経過時間を分析した。モデルには、治療と研究日の固定効果ならびに治療と研究日の相互作用が含まれていた。変量効果には、ブロック、ブロックと治療と誤差の相互作用が含まれていた。そう痒行動(1日目)のベースラインデータを、そう痒行動の分析で共分散として使用した。最小自乗平均を、治療平均の推定値として使用した。最小自乗平均の標準誤差を推定し、90%信頼区間を作成した。対数変換後のデータに関して最小自乗平均から幾何平均をコンピューターで計算した。ア・プリオリ対比(a priori contrast)を使用して治療を評価した。治療差を10%有意水準(P≦0.10)で評価した。
【0108】
結果
治療結果を図2および図3に示す。病変および紅斑が、0.5mg/kgグループにおいて著しく軽減した。図2は、ノミアレルギーのイヌにおける実施例1bの27日目のVASスコアを示している(最小自乗平均)。10%有意水準で偽薬と比較すると、そう痒の著しい軽減が、両グループの研究中に種々の時点で見られた(0.25mg/kgの用量が1、4および12日目、0.5mg/kgの用量が1および20日目)。図3は、ノミアレルギーのイヌにおける実施例1bの記録4時間当たりのそう痒の秒数を示している(長い幾何平均)。
【0109】
(実施例7)
細胞増殖阻害アッセイ
ネコの細胞系 MYA−1およびFETJは、ATCC(米国バージニア州Manassas)から得たネコのTリンパ芽球細胞系である。これらの細胞は、37℃で5%COの加湿インキュベーター内において10%FBSを補充したRPMI 1640完全培地中で培養した。
【0110】
Ex vivoイヌのリンパ腫結節組織
ミシガン州立大学(MSU)獣医学部で獣医学スタッフによって悪性リンパ節を切除し、輸送培地(10%ウシ胎児血清(FBS)、100U/mLペニシリン、100ug/mLストレプトマイシンおよび0.25ug/mLアンホテリシンBを補充したアドバンストRPMI 1640完全培地(Invitrogen/Gibco(登録商標))中に置いた。結節を、小さい断片に刻んで組織ふるいを通すことによって24時間以内の切除にて処理した。細胞懸濁液を200xgで回転させ、上清を除去し、細胞ペレットを室温で10分間NHCl中に再懸濁させた。細胞懸濁液を遠心分離によってペレットにした;NHClを除去し、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)で1回洗浄し、続いて増殖培地(アドバンストRPMI完全、1%FBS、50nM 2−メルカプトエタノール、100U/mLペニシリン、100ug/mLストレプトマイシンおよび0.25ug/mLアンホテリシンB)中に再懸濁した。次いで細胞懸濁液を100μmナイロン細胞ストレーナー(BD−Falcon)に通し、血球計算盤を用いてカウントした。増殖培地単独、0.005%Pansorbin(登録商標)(熱不活性化、ホルマリン固定黄色ブドウ球菌(Staphylococcus Aureus)細胞(SAC)、Calbiochem)、および10ng/mLイヌIL−2(R&D Systems)を補充した増殖培地、または125ng/mLコンカバリンA(Sigma)および125ng/mLリポ多糖類(LPS;Calbiochem)を補充した増殖培地のいずれかの中で細胞を培養した。
【0111】
in vitro抗増殖アッセイ法
上記培地中で培養した細胞を、1×10細胞/穴(ネコ細胞系)または2×10細胞/穴(リンパ節細胞)の密度で96穴コスタープレート(Corning)に播き、37℃で5%COの加湿インキュベーター内において最長5日間、種々の濃度の試験化合物に曝露した。増殖に対する影響を、製造業者の使用説明書に従い、CellTiter 96(登録商標)AQueous 非放射性細胞増殖アッセイ(Promega)を用いて決定した。一般に、可溶性テトラゾリウム塩(MTS)および電子結合試薬を用いて、増殖を間接的に測定した。組織培地に可溶なホルマザン生成物へのMTS生物還元を、Softmax Pro 4.6ソフトウェア(Molecular Devices)を用いてSpectramaxプレートリーダー上で490nMにおける吸光度によってモニターした。データを、GraphPad Prism 4.00を用いてパーセントDMSO対照として図示し、IC50曲線を、S字状用量応答を含む非線形回帰モデルを用いてあてはめた。
【0112】
結果
表4は、実施例1の化合物が、増殖に関してIL−2に依存しているがIL−2独立系(FETJ)には依存していないネコのリンパ細胞系MYA−1の増殖を阻害できることを示している。式IAの化合物またはその塩も、TまたはB細胞リンパ腫と診断されたイヌから得たイヌ結節組織の増殖を阻害することができる。これらの結果は、JAK阻害剤が、イヌおよびネコのリンパ腫を治療するのに有効かもしれないことを示唆している。
【0113】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
が、ヒドロキシで置換されていてもよいC1〜4アルキルである、式Iの化合物:
【化1】

またはその薬学的に許容できる塩。
【請求項2】
がメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がエチル、またはシクロブチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
N−メチル−1−{トランス−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}メタンスルホンアミド、またはその薬学的に許容できる塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容できる塩および薬学的に許容できる担体を含む医薬組成物。
【請求項6】
治療有効量の請求項1に記載の化合物を、必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物におけるアレルギー反応、アレルギー性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、またはそう痒症を治療するための方法。
【請求項7】
前記治療有効量が、0.01mg/kg体重/日〜100mg/kg体重/日である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記治療有効量が、0.1mg/kg体重/日〜10mg/kg体重/日である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記哺乳動物にコンパニオンアニマルが含まれる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記コンパニオンアニマルがイヌである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記哺乳動物に家畜が含まれる、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の化合物を経口、非経口、または局所的に投与する、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
治療有効量の請求項1に記載の化合物を、必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における神経変性疾患、角結膜炎、慢性呼吸器疾患、自己免疫疾患、炎症性腸疾患、新生物および関節炎症状を治療するための方法。
【請求項14】
治療有効量の請求項1に記載の化合物を、必要とする哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物における癌、白血病、狼瘡、多発性骨髄腫を治療するための方法。
【請求項15】
結晶形AのN−メチル−1−{トランス−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}メタンスルホンアミドマレイン酸塩。
【請求項16】
およそ6.2、12.6および15.7において°2θで表される少なくとも1つの特徴的なピークを有するX線粉末回折パターンを含む、請求項15に記載の結晶形AのN−メチル−1−{トランス−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}メタンスルホンアミドマレイン酸塩。
【請求項17】
およそ6.2、12.6、15.7、18.5、27および28.38において°2θで表される特徴的なピークを有するX線粉末回折パターンを含む、請求項15に記載の結晶形AのN−メチル−1−{トランス−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}メタンスルホンアミドマレイン酸塩。
【請求項18】
およそ6.178、8.519、12.601、13.819、15.478、15.719、16.32、17.997、18.539、20.298、20.659、21.583、22.642、23.08、24.86、25.602、26.582、27.02、27.721、28.161、28.38において°2θで表される特徴的なピークを有するX線粉末回折パターンを含む、請求項15に記載の結晶形AのN−メチル−1−{トランス−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}メタンスルホンアミドマレイン酸塩。
【請求項19】
N−メチル−1−{トランス−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}メタンスルホンアミドとマレイン酸を反応させることを含む、N−メチル−1−{トランス−4−[メチル(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル)アミノ]シクロヘキシル}メタンスルホンアミドマレイン酸塩A形を調製するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−500253(P2012−500253A)
【公表日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523467(P2011−523467)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【国際出願番号】PCT/IB2009/053514
【国際公開番号】WO2010/020905
【国際公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】