説明

ファイバ構造を有する有機デバイス

光活性ファイバならびにこのようなファイバを製作する方法を提供する。ファイバは、第1電極を含む導電性コアを有する。有機層が第1電極を取り囲み、第1電極に電気的に接続されている。透明な第2電極が有機層を取り囲み、有機層に電気的に接続されている。遮断層またはスムージング層などのその他の層もファイバの中に組み込まれてもよい。ファイバを布地に織ってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に有機光電子デバイスに関する。本発明は、具体的にはファイバ構造を有する有機光電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料を利用した光電子デバイスが、多くの理由から望ましいものになりつつある。このようなデバイスを作るために使用される材料の多くは比較的低廉であり、したがって有機光電子デバイスは潜在的に、コスト面で無機デバイスを超えて有利である。その上、可とう性などの有機材料の固有の特性によって、これらの材料は、可とう性基板上の製作などの特定の用途に好適なものとなり得る。有機光電子デバイスの例としては、有機発光デバイス(OLED)、有機フォトトランジスタ、有機光電池、および有機光電検出器がある。有機材料は従来の材料に勝る性能上の有利さを持つことがある。例えば、(OLEDのために)有機発光層が光を放出するときの波長を、一般に適切なドーパントによって容易に調整することもできる。
【0003】
光電子デバイスは、電磁放射線を電子的に生成するかまたは検出するため、もしくは環境電磁放射線から電気を発生するために、材料の光学的および電子的性質に依存する。
【0004】
感光性光電子デバイスは電磁放射線を電気に変換する。光電池(PV)デバイスとも呼ばれる太陽電池は、特に電力を発生するために使用される感光性光電子デバイスの一形式である。太陽光以外の光源から電気エネルギーを発生することもできるPVデバイスを、電力消費負荷を駆動して、例えば照明や加熱を行うため、もしくは電子回路、または計算機、ラジオ、コンピュータ、または遠隔監視装置または通信装置などのデバイスを付勢するために使用することができる。これらの発電への適用はさらに、太陽またはその他の光源からの直接照明が利用できないとき、またはPVデバイスの電力出力を特定の適用要件と釣り合わせるために動作を続けることができるように、バッテリまたはその他のエネルギー貯蔵デバイスの充電をしばしば必要とする。本明細書で使用されるものとして「抵抗性負荷」という用語は、電力を消費するかまたは貯蔵する任意の回路、デバイス、装置、またはシステムを指す。
【0005】
別の形式の感光性光電子デバイスは光導電体セルである。この機能では、信号検出回路構成がデバイスの抵抗をモニタリングして、光の吸収による変化を検出する。
【0006】
さらに別の形式の感光性光電子デバイスは光電検出器である。動作中は、光電検出器は電流検出回路と共に使用され、電流検出回路は、光電検出器が電磁放射線にさらされて印加バイアス電圧を有することがあるときに発生する電流を測定する。本明細書で記載するような検出回路は、バイアス電圧を光電検出器に提供し、電磁放射線に対する光電検出器の電子的応答を測定することができる。
【0007】
これらの3種類の感光性光電子デバイスを、後で定義するような整流接合が存在するか否かに従って、およびさらに、デバイスがバイアスすなわちバイアス電圧としても知られる外部の印加電圧によって動作するか否かに従って特徴づけてもよい。光導電体セルは整流接合を持たず、正常にはバイアスによって動作する。PVデバイスは少なくとも1つの整流接合を有し、バイアスによっては動作しない。光電検出器は少なくとも1つの整流接合を有し、通常はバイアスによって常には動作しない。概して、光電池は回路、デバイス、または装置に電力を提供するが、検出回路構成を制御するための信号または電流、または検出回路構成からの情報出力を提供しない。反対に、光電検出器または光導電体は検出回路構成を制御するための信号または電流、または検出回路構成からの情報出力を提供するが、回路、デバイス、または装置に電力を提供しない。
【0008】
慣例として、感光性光電子デバイスは多くの無機半導体、例えば結晶質、多結晶質、および非晶質シリコン、ガリウム砒素、テルル化カドミウムなどから製造されてきた。本明細書では、用語「半導体」とは、電荷担体が熱励起または電磁励起によって誘導されるとき電気を伝導することができる材料を指す。用語「光導電」とは一般に、電磁放射エネルギーが吸収され、これによって電荷担体(キャリア)の励起エネルギーに変換され、こうして電荷担体は材料の中で電荷を伝導すなわち運ぶことができる過程に関する。用語「光導電体」および「光導電材料」は、本明細書では、電磁放射線を吸収して電荷担体を発生する性質のために選ばれた半導体材料を指す。
【0009】
PVデバイスは、入射太陽力を有用な電力に変換することができる効率を特徴としてもよい。結晶質または非晶質シリコンを利用するデバイスが商用には優位を占め、23%またはそれ以上の効率を達成したデバイスもある。しかし、特に大きな表面積の効率的な結晶質ベースのデバイスは、顕著な効率低下の欠陥なしに大きな結晶を生成する場合に固有の問題があるので、製造が困難で高価になる。他方、高効率の非晶質シリコンデバイスはなお安定性の問題を受ける。現在市販されている非晶質シリコンセルは4〜8%の安定化された効率を有する。もっと最近の努力は、経済的な生産コストで容認可能な光起電性変換効率を達成するための有機光電池の使用に集中している。
【0010】
PVデバイスを、光電流と光電圧の最大積のための標準照明条件(すなわち、1000W/m2、AM1.5分光照明である標準試験条件)の下での最大電力発生のために最適化してもよい。標準照明条件下でのこのようなセルの電力変換効率は、次の3つのパラメータすなわち、(1)ゼロバイアス下での電流、すなわち短絡電流ISC、(2)開回路条件下での光電流、すなわち開回路電圧VOC、および(3)フィルファクタに依存する。
【0011】
PVデバイスは、負荷の両端間に接続されて光によって照射されると、光によって発生する電流を生成する。無限の負荷の下で照射されると、PVデバイスはその最大可能電圧、V open-circuit(開回路)すなわちVOCを発生する。その電気接点が短絡した状態で照射されると、PVデバイスはその最大可能電流、I short-circuit(短絡回路)すなわちVSCを発生する。電力を発生するために実際に使用されるときには、PVデバイスは有限負荷に接続されて、電力出力は電流と電圧との積I×Vによって与えられる。PVデバイスによって発生する最大全電力は本来、積ISC×VOCを超えることはできない。負荷値が最大電力抽出のために最適化されると、電流および電圧はそれぞれImaxおよびVmaxの値を有する。
【0012】
PVデバイスのための価値の数字は、下式で定義されるフィルファクタffである。すなわち
ff={ImaxVmax}/{ISCVOC} (1)
ただし、ISCおよびVOCは実際の使用では決して同時に得られないので、ffは常に1より小さい。それでもなお、ffが1に近づくにつれて、デバイスの直列抵抗すなわち内部抵抗は小さくなり、したがって最適化された条件の下でISCとVOCの積のより大きなパーセンテージを負荷に分配する。Pincをデバイスに入射する電力とすると、デバイスの電力効率ηPは下式で計算することができる。
ηP=ff*(ISC*VOC)/Pinc
【0013】
適切なエネルギーの電磁放射線が、半導体有機材料、例えば有機分子結晶(OMC)材料またはポリマーに入射すると、光子が吸収されて励起分子状態を生成することができる。これは記号的にはS0+hv→SO*で表される。ここで、S0およびSO*はそれぞれ基底状態と励起分子状態を示す。このエネルギー吸収は、π結合であってもよいHOMOエネルギー準位にある束縛状態からπ*結合であってもよいLUMOエネルギー準位への電子の昇位、または同意義でLUMOエネルギー準位からHOMOエネルギー準位への正孔の昇位に関連している。有機薄膜光導電体では、発生した分子状態は一般に、励起子、すなわち準粒子として運搬される束縛状態の電子-正孔対であると考えられている。励起子は、他の対からの正孔または電子の再結合とは逆に元の電子および正孔の相互結合過程と呼ばれる対の中での再結合の前に、かなりの寿命を有することができる。光電流を生成するために、一般的に電子-正孔対は2つの異なる接触する有機薄膜の間のドナー-アクセプタ界面において分離状態になる。電荷が分離しない場合には、電荷は、入射光よりも低いエネルギーの光の放出によって放射的に、または熱の生成によって非放射的に、消光現象としても知られている対の中での再結合過程において結合することができる。これらの結果のいずれも感光性光電子デバイスでは望ましくない。
【0014】
接点における電界または異質性は、励起子がドナー-アクセプタ界面において解離するのではなく消光し、この結果電流には最終的な貢献はしない原因になることがある。したがって、光発生された励起子を接点から離して維持することが望ましい。これは接合の近くの領域への励起子の拡散を制限する効果を有するので、付随する電界が接合の近くの励起子の解離によって解放された電荷担体を分離する機会は増す。
【0015】
実質的な容積を占める内部発生電界を生成するために、通常の方法は、特に分子量子エネルギー状態に関して、適切に選択された導電特性を有する材料の2層を並置させることである。これら2つの材料の界面は、光起電力ヘテロ接合と呼ばれる。慣習的な半導体理論では、PVヘテロ接合を形成するための材料は一般にn型またはp型のいずれかであると表示されている。この場合、n型は、大多数の担体形式が電子であることを示している。これを、比較的自由なエネルギー状態にある多くの電子を有する材料として見ることができよう。p型は、大部分の担体形式が正孔であることを示している。このような材料は比較的自由なエネルギー状態にある多くの正孔を有する。背景すなわち光発生されない大多数の担体濃度の形式は、主として、欠陥または不純物による意図されないドーピングに依存する。不純物の形式および濃度は、HOMO-LUMOギャップと呼ばれる最高占有分子軌道(HOMO)エネルギー準位と最低非占有分子軌道(LUMO)エネルギー準位との間のギャップ内におけるフェルミエネルギーまたはフェルミレベルの値を決定する。フェルミエネルギーは、占有の確率が1/2に等しいエネルギーの値によって示される分子量子エネルギー状態の統計的占有を特徴づける。LUMOエネルギー準位に近いフェルミエネルギーは、電子が支配的な担体であることを示す。HOMOエネルギー準位に近いフェルミエネルギーは、正孔が支配的な担体であることを示す。この結果、フェルミエネルギーは慣例的な半導体の特性を特徴づけ、基本形のPVヘテロ接合は慣習的にp-n界面である。
【0016】
「整流」という用語は、とりわけ、界面が非対称条件特性を有する、すなわち界面が好ましくは一方向の電子電荷輸送を支援する。整流は通常、適切に選択された材料の間のヘテロ接合において起こる内部電界と関連している。
【0017】
本明細書で使用されているように、また一般に当業者には理解されるように、第1「最高占有分子軌道」(HOMO)または「最低非占有分子軌道」(LUMO)エネルギー準位とは、この第1エネルギー準位が真空エネルギー準位により近い場合には、第2HOMOまたはLUMOエネルギー準位「より大きい」かまたは「より高い」。電離電位(IP)が真空レベルに対して負エネルギーとして測定されるので、より高いHOMOエネルギー準位が、より小さな絶対値を有するIP(より小さな負であるIP)に対応する。同様に、より高いLUMOエネルギー準位が、より小さな絶対値を有する電子親和力(EA)(より小さな負であるEA)に対応する。従来のエネルギー準位図では、頂部に真空レベルがあり、材料のLUMOエネルギー準位は同じ材料のHOMOエネルギー準位より高い。「より高い」HOMOまたはLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMOまたはLUMOエネルギー準位より、このような図の最上部に近く見える。
【0018】
有機材料に関しては、「ドナー」および「アクセプタ」という用語は、接触するが異なる2つの有機材料のHOMOおよびLUMOエネルギー準位の相対位置を言う。これは、「ドナー」および「アクセプタ」がそれぞれ無機n型層および無機p型層を作り出すために使用されるドーパントの形式を言う、無機の状況におけるこれらの用語の使用とは対照的である。有機に関しては、別の材料と接触しているある材料のLUMOエネルギー準位がより低い場合には、この材料はアクセプタである。そうでなければこれはドナーである。外部バイアスがない状態で、ドナー-アクセプタ接合における電子のためにはアクセプタ材料の中に動くことが、および正孔のためにはドナー材料の中に動くことがエネルギー的には有利である。
【0019】
有機半導体の重要な性質は担体の移動性である。移動性は、電荷担体が電界に応答して導電性材料を通過することができる容易性を計る。有機感光デバイスに関しては、高い電子移動性によって優先的に電子によって伝導する材料を含む層を、電子輸送層またはETLと呼んでもよい。高い正孔移動性によって優先的に正孔によって伝導する材料を含む層を、正孔輸送層またはHTLと呼んでもよい。必ずしも必要ではないが、アクセプタ材料がETLであり、ドナー材料がHTLであることが好ましい。
【0020】
従来の無機半導体PVセルは、p-n接合を使用して内部電界を確立する。Tang他、Appl.Phys Lett.48,183(1986)によって報告されたような初期の有機薄膜セルは、通常の無機PVセルに使用されているものと類似のヘテロ接合を含む。しかしここで、p-n型接合の確立に加えて、ヘテロ接合のエネルギー準位オフセットも重要な役割を演じることが認識される。
【0021】
有機D-Aヘテロ接合におけるエネルギー準位オフセットは、有機材料における光発生過程の基本的性質による有機PVデバイスの動作に重要であると考えられる。有機材料の光励起によって、局部フレンケル励起子または電荷移動励起子が発生する。電気検出または電流発生が起こるためには、束縛励起子は引き離されてこれらの構成物である電子と正孔になる必要がある。このような過程を内部電界によって誘導することができるが、有機デバイスにおいて通常見られる電界における効率(F〜106V/cm)は低い。有機材料における最も効率的な励起子の解離はドナー-アクセプタ(D-A)界面において起こる。このような界面では、低い電離電位を有するドナー材料が、高い電子親和力を有するアクセプタ材料と共にヘテロ接合を形成する。ドナー材料とアクセプタ材料とのエネルギー準位の整合に応じて、励起子の解離はこのような界面でエネルギー的に有利になることができ、こうしてアクセプタ材料の中には自由電子ポーラロンポーラロンが、ドナー材料の中には自由正孔ポーラロンが生じる。
【0022】
有機PVセルは、慣例のシリコンベースのデバイスと比較したとき多くの潜在的な利点を有する。有機PVセルは軽量で、材料使用の点で経済的であり、可とう性プラスチックフォイルなどの低コストの基板に付着させることができる。しかし、ある有機PVデバイスは一般的に1%程度またはそれ以下という比較的低い外部量子効率を有する。これは部分的に、固有の光導電過程の2次的性質によるものと考えられる。すなわち、担体の発生は、励起子の発生、拡散、および電離または収集を必要とする。これらの過程の各々に関連する効率ηが存在する。下付き文字を次のように使用してもよい。すなわち電力効率にはP、外部量子効率にはEXT、光子吸収にはA、拡散にはED、収集にはCC、および内部量子効率にはINTである。この表記法を使用すると次のようになる。
ηP〜ηEXTAEDCC
ηEXTAINT
【0023】
励起子の拡散長(LD)は、光吸収長(〜500Å)よりも一般的にかなり小さく(LD〜50Å)、複数または高度に折り曲げられた界面を有する厚い、したがって抵抗性のセルを使用するか、または吸収効率の低い薄いセルを使用するかの間で交換条件を必要とする。
【0024】
一般的に、光が吸収されて有機薄膜の中に励起子を形成すると、一重項励起子が形成される。項間交差の機構によって、一重項励起子は三重項励起子に崩壊することがある。この過程で、エネルギーは失われ、結果的にデバイスのためにはより低い効率となる。項間交差からのエネルギー損失がない場合には、三重項励起子は一般により長い寿命を有し、したがって一重項励起子より長い拡散長を有するので、三重項励起子を発生する材料を使用することが望ましいことになる。
【特許文献1】米国特許第6657378号
【特許文献2】米国特許第6580027号
【特許文献3】米国特許第6352777号
【特許文献4】米国特許第5844363号
【特許文献5】米国特許第6303238号
【特許文献6】米国特許第5707745号
【特許文献7】米国特許第5247190号
【特許文献8】米国特許第6091195号
【特許文献9】米国特許第5834893号
【特許文献10】米国特許第6420031号
【特許文献11】米国特許第5703436号
【特許文献12】米国特許第6097147号
【特許文献13】同時係属出願第09/449801号
【特許文献14】米国特許出願第10/723953号
【特許文献15】米国特許第6333458号
【特許文献16】米国特許第6440769号
【特許文献17】米国特許出願第10/857747号
【特許文献18】米国特許出願公開第2002-0071963A1号
【特許文献19】米国特許出願第09/931948号
【特許文献20】米国特許第6013982号
【特許文献21】米国特許第6087196号
【特許文献22】米国特許出願第10/233470号
【特許文献23】米国特許第6294398号
【特許文献24】米国特許第6468819号
【非特許文献1】Tang他、Appl.Phys Lett.48,183(1986)
【非特許文献2】Applied Physics Letters 2000、76、2650〜52頁
【非特許文献3】Gary L.Miessler、Donald A.Tarr、「Inorganic Chemistry(第2版)」、Prentice Hall(1988年)
【非特許文献4】P.Peumans、A.Yakimov、S.R.Forrest、J.Appl.Phys.、2003年、93、3693
【非特許文献5】L.A.A.Pettersson他、J.Appl.Phys.、86、487(1999)
【非特許文献6】V.Bulovic、S.R.Forrest、Chem.Phys.、210、13(1996)
【非特許文献7】J.J.M.Halls他、Appl.Phys.Lett.、68,3120(1996)
【非特許文献8】B.A.Gregg他、J.Phys.Chem.B、101、5362(1997)
【非特許文献9】T.Stuebinger、W.Bruetting、J.Appl.Phys.、90、3632(2001)
【非特許文献10】H.R.Kerp、E.E.van Faassen、Nord.Hydrol、1、1761(1999)
【非特許文献11】A.L.Burin、M.A.Ratner,J.、Phys.Chem.、A 104、4704(2000)
【非特許文献12】V.E.Choong他、J.Vac.Sci.Technol.、A 16、1838(1998)
【非特許文献13】M.Theander他、Phys.Rev.,B 61、12957(2000)
【非特許文献14】P.Peumans、S.R.Forrest、「Very-High-Efficiency Double-Heterostructure Copper Phthalocyanine/C60 Photovoltaic Cells」、Applied Physics Letters、2001年、79(1)126頁
【非特許文献15】P.Peumans、S.Uchida、S.R.Forrest、「Efficient Bulk Heterojunction Photovoltaic Cells Using Small-Molecular-Weight Organic Thin Films」、Nature、2003年、425(6954)、158頁
【非特許文献16】S.E.Shaheen他、「2.5% Efficient Organic Plastic Solar Cells」、Applied Physics Letters、2001年、78(6)、841頁
【非特許文献17】A.Yakimov、S.R.Forrest、「High Photovoltage Multiple-Heterojunction Organic Solar Cells Incorporating Interfacial Matallic Nanoclusters」、Applied Physics Letters、2002年、80(9)、1667〜1669頁
【非特許文献18】C.J.Brabec他、Organic Photovoltaic Devices Produced From Conjugated Polymer/Metanofullerene Bulk Heterojunctions」、Synthetic Metals、2001、121(1-3)、1517頁
【非特許文献19】S.E.Shaheen他、「Low Band-Gap Polymeric Photovoltaic Devices」、Synthetic Metals、2001、121、1583頁
【非特許文献20】P.E.Burrows他、「Gas Permeation and Lifetime Tests on Polymer-Based Barrier Coatings」、SPIE Annual Meeting、2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
光活性ファイバならびにこの種のファイバを製作するための方法を提供する。このファイバは、第1電極を含む導電性コアを有する。有機層が第1電極を取り囲み、第1電極に電気的に接続されている。透明な第2電極が有機層を取り囲み、有機層に電気的に接続されている。遮断層またはスムージング層などの他の層もまたファイバの中に組み込んでもよい。ファイバを布地の中に織り込んでもよい。
【課題を解決するための手段】
【0026】
ファイバ構造を有する有機光電子デバイスを提供する。有機感光デバイスおよび有機発光デバイスなどの、さまざまな形式の有機光電子デバイスを提供することができる。本発明の実施形態は、アノード、カソード、およびアノードとカソードとの間に配置されてこれらの電気的に接続されている有機層を含んでもよい。
【0027】
本発明の実施形態の有機感光デバイスを、例えば入射電磁放射線から電流を発生させるために使用してもよく(例えばPVデバイス)、または入射電磁放射線を検出するために使用してもよい。「光活性領域」とは、電磁放射線を吸収して、電流を発生させるために解離することがある励起子を発生させる感光デバイスの一部分である。有機感光性光電子デバイスは、少なくとも1つの透明電極を含み、入射放射線がデバイスによって吸収されるようにすることもできる。いくつかのPVデバイス材料および構成が、参照によって全体が本明細書に組み込まれている米国特許第6657378号、同第6580027号、および同第6352777号に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は、有機感光性光電子デバイス100を示す。図は必ずしも一定の比例で描かれる必要はない。デバイス100は、基板110と、アノード115と、アノードスムージング層120と、ドナー層125と、アクセプタ層130と、遮断層135と、カソード140とを含んでもよい。カソード140は、第1導電層と第2導電層とを有する複合カソードであってもよい。デバイス100を、上記の層を順番に付着することによって製造してもよい。電荷分離が、ドナー層125とアクセプタ層130との間の有機ヘテロ接合で優先的に発生することがある。ヘテロ接合における拡散電位は、接触してヘテロ結合を形成する2つの材料の間のHOMO-LUMOエネルギー準位の差によって決定される。ドナー材料とアクセプタ材料との間のHOMO-LUMOギャップオフセットは、ドナー/アクセプタ界面において電界を発生し、これは界面の励起子拡散長の中で作り出される励起子の電荷分離を容易にする。
【0029】
OLEDは、電圧がデバイスの両端間に印加されたときに光を発する有機薄膜を利用する。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明、およびバックライトなどの用途のための次第に興味を増す技術となりつつある。いくつかのOLED材料および構成が、参照によって全体が本明細書に組み込まれている米国特許第5844363号、同第6303238号、および同第5707745号に記載されている。
【0030】
一般に、OLEDは、アノードとカソードとの間に配置されてこれらに電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が印加されると、アノードは正孔を、カソードは電子を(1つまたは複数の)有機層に射出する。射出された正孔と電子は各々、反対に荷電された電極に向って移動する。電子と正孔が同じ分子の上に局在化されると、励起されたエネルギー状態を有する局在化された電子-正孔対である「励起子」が生成される。励起子が発光機構を介して弛緩すると光が発せられる。ある場合には、励起子がエキシマまたは励起錯体の上に局在化されることがある。熱緩和などの非放射機構も起こることがあるが、一般に望ましくないと考えられている。
【0031】
図4は、有機発光デバイス400を示す。図は必ずしも一定の比例で描かれる必要はない。デバイス400は、基板410と、アノード415と、正孔注入層420と、正孔輸送層425と、電子遮断層430と、発光層435と、正孔遮断層440と、電子輸送層445と、電子注入層450と、保護層455と、カソード460とを含んでもよい。カソード460は、第1導電層462と第2導電層464とを有する複合カソードである。デバイス400を、上記の層を順番に付着することによって製造してもよい。
【0032】
図1および4に図示した各層の特定組成と配置は単に例示的なものであり、限定しようとするものではない。例えば、層のいずれか(遮断層などの)を省いてもよい。(反射層および/または反射防止層などの)他の層を加えてもよい。感光性デバイスのために、追加のアクセプタ層およびドナー層を使用することもでき(すなわちタンデムセル)、または分離した有機アクセプタ層およびドナー層を持たない他の形式の有機感光性デバイスを使用してもよい。電子輸送層および/または正孔輸送層のないOLEDなどの、別の形式のOLEDを使用してもよい。層の順序を変えてもよい。本明細書に特定して記載されたもの以外の配置を使用してもよい。当業者は本開示の利益によって、さまざまな有機デバイス構成をファイバ構造に適合させることができるはずである。
【0033】
説明された特定の材料および構造は全く例示的であり、他の材料および構造を使用してもよい。機能デバイスを、さまざまな方法で記載されたさまざまな層を組み合わせることによって達成してもよく、または設計、性能、およびコストの要素に基づいて層を完全に省いてもよい。特に記載されていない他の層を含んでもよい。特に記載されたもの以外の材料を使用してもよい。本明細書に提供された実施例の多くは単一の材料を含むとしてさまざまな層を説明するが、ホストおよびドーパントの混合物などの材料の組合せ、またはさらに一般には混合物を使用してもよいことは理解されよう。さらに、層はさまざまな副層を有してもよい。本明細書においてさまざまな層に与えられた名称は厳密に限定しようとするものではない。例えば、OLEDにおいては、電子遮断層はまた正孔輸送層として機能してもよい。ある実施形態では、OLEDまたは感光性デバイスを、カソードとアノードとの間に配置された「有機層」を有するものとして説明してもよい。この有機層は単一層で構成されてもよく、または例えば図1および2に関連して説明されているように、異なる有機材料の複数の層をさらに含んでもよい。
【0034】
全体が参照によって本明細書に組み込まれているFriend他の米国特許第5247190号に開示されているような高分子材料から構成されるOLED(PLED)などの、特定して説明されていない構造および材料も使用することができる。さらに別の実施例として、単一有機層を有するOLEDを使用してもよい。全体が参照によって本明細書に組み込まれているForrest他の米国特許第5707745号に開示されているように、複数のOLEDを積み重ねてもよい。デバイス構造は、図1および4に図示された単一層構造から逸脱したものでもよい。例えば、基板は、全体が参照によって本明細書に組み込まれているForrest他の米国特許第6091195号に開示されているように、メサ構造などの光取出しを改善するための曲った反射表面、および/または全体が参照によって本明細書に組み込まれているBulovic他の米国特許第5834893号に開示されているように、ピット構造を含んでもよい。
【0035】
基板は、所望の構造的性質を提供するものであれば適当な任意の基板であってもよい。基板は可とう性であっても剛性であってもよい。基板は透明、半透明、または不透明であってもよい。プラスチックおよびガラスは、好ましい剛性基板材料の例である。プラスチックフォイルおよび金属フォイルは好ましい可とう性基板材料の例である。基板の材料および厚さを選んで、望ましい構造的および光学的性質を得ることもできる。
【0036】
参照によって本明細書に組み込まれている米国特許第6352777号は、光電子デバイスにおいて使用できる電極または接点の例を提供している。本明細書で使用されるとき、用語「電極」および「接点」とは、光発生された電流を外部回路に配分するため、またはバイアス電圧をデバイスに提供するための媒質を提供する層を指す。電極または接点は、有機感光性光電子デバイスの光活性領域と、電荷担体を外部回路へまたは外部回路から運搬するためのワイヤ、リード線、またはその他の手段の光活性領域との間に、界面を提供する。感光性光電子デバイスでは、デバイス外部からの環境電磁放射線の最大量を光導電的に活性の内部領域に入ることを可能にすることが望ましい。1つまたは複数の光導電層に到達する電磁放射線は、光伝導性吸収によって電気に変換されることもある。これはしばしば、電気接点の少なくとも1つが入射電子放射線を最小限に吸収し最小限に反射するものでなければならないことを指図する。このような接点は実質的に透明であることが好ましい。反対側の電極は、吸収されることなくセルを通過した光がセルを通じて反射して戻るように、反射性材料であってもよい。本明細書で使用されるように、材料の層、または異なる材料のいくつかの層の連続は、1つまたは複数の層が、関連波長における環境電磁放射線の少なくとも50%を前記の1つまたは複数の層を透過させるとき、「透明」であると言われる。同様に、関連波長における環境電磁放射線の一部、しかし50%以下の通過を可能にする層は、「半透明」であると言われる。
【0037】
本明細書で使用されるように、「頂部」は基板から最も遠いことを意味し、また「底部」は基板に最も近いことを意味する。例えば、2つの電極を有するデバイスについては、底部電極は基板に最も近い電極であり、一般に製造された最初の電極である。底部電極は2つの表面、すなわち基板に最も近い底部表面と基板からさらに離れた頂部表面を有する。第1層が第2層の「上に配置された」と記載される場合は、第1層は基板からさらに離れて配置される。第1層が第2層「と物理的接触状態」にあると明記されないならば、第1層と第2層の間に別の層があってもよい。例えば、カソードとアノードの間にさまざまな有機層が存在しても、カソードはアノード「の上に配置されている」と記載されてもよい。同軸デバイスまたはその他の非平面構成に関しては、「上に配置されている」は、コアまたは基板として働く構造の部分、すなわち上に構造の残りが製作される構造の部分から離れて配置されることを意味する。
【0038】
電極は、金属または「金属代替物」で構成されることが好ましい。本明細書では、用語「金属」は、1つの基本的に純粋な金属、例えばMg、および2つ以上の基本的に純粋な金属で構成される材料である金属合金、例えばMgおよびAgであり共にMg:Agと表示されるものによって構成される材料の両方を包含するために使用される。ここで、用語「金属代替物」とは、正規の定義では金属ではないが、ある一定の適切な用途で望まれる金属に似た性質を有する材料を呼ぶ。電極および電荷移動層のために通常使用される金属代替物としては、ドープされた広バンドギャップ半導体、例えばインジウム酸化第一スズ(ITO)、ガリウムインジウム酸化第一スズ(GITO)、および亜鉛インジウム酸化第一スズ(ZITO)を挙げることができる。特にITOは、約3.2eVの光学的バンドギャップを有する高度にドープされた縮退n+半導体であり、この光学的バンドギャップはこの半導体を約3900Åより大きな波長に対して透明にする。他の適当な金属代替物は透明導電性重合体ポリアニリン(PANI)とその化学的関連物である。金属代替物をさらに広範囲の非金属材料から選択してもよく、ここで用語「非金属」とは、化学的に未結合の金属を含まないという条件で広範囲の材料を包含するための意味を持つ。金属が、単独状態で、または1つもしくは複数の他の金属と合金として組合せの状態で、化学的に未結合の形で存在するときは、この金属を代替案として、その金属的形式で存在するか、または「自由金属」と呼んでもよい。したがって、本発明の金属代替物電極をときには「金属フリー」と呼んでもよく、ここで用語「金属フリー」とは、化学的に未結合の形での金属を含まない材料を包含するための表現的意味を持つ。自由金属は一般的に、金属格子全体にわたって電子伝導帯の中を移動自在の値電子の海から結果的に得られる金属的結合の形を有する。金属代替物は金属成分を含んでもよいが、これらはいくつかの基材の上では「非金属」である。これらは純粋な自由金属ではなく、また自由金属の合金でもない。金属がその金属的形で存在するときは、電子伝導帯は、その他の金属的特性の中でも特に、高い導電性ならびに光放射に対する高い反射性を提供する傾向がある。
【0039】
本発明の実施形態は、光電子デバイスの透明電極の1つまたは複数として、Parthasarathy他の米国特許第6420031号(「Parthasarathy‘031」)に開示されているような高度に透明な非金属低抵抗カソード、またはForrest他の米国特許第5703436号(「Forest‘436」)に開示されているような高効率の低抵抗金属/非金属複合物カソードを含んでもよい。これらの特許は両方とも参照によって全体が本明細書に組み込まれている。各形式のカソードは、銅フタロシアニン(CuPc)などの有機材料の上にITO層をスパッタ蒸着して高度に透明な非金属低抵抗カソードを形成するか、または薄いMg:Ag層の上にITO層をスパッタ蒸着して高効率の低抵抗金属/非金属複合物カソードを形成するステップを含む製作工程において準備されることが好ましい。
【0040】
本明細書では、用語「カソード」は次の方式で使用されている。環境照射下にあって、抵抗負荷と接続されて外部印加電圧のない非スタック式PVデバイスまたはスタック式PVデバイスの単一ユニット、例えばPVデバイスでは、電子は光伝導性材料からカソードへ移動する。OLEDでは、電子はカソードからデバイスの中へ注入される。同様に、用語「アノード」は本明細書では、照明下のPVデバイスにおいて反対の方式で移動する電子と等価である正孔が光伝導性材料からアノードへ移動するように使用されている。これらの用語が本明細書で使用されるとき、アノードとカソードは電極または電荷移動層であってもよいことに留意されたい。
【0041】
有機感光性デバイスは、少なくとも1つの光活性領域を含み、ここで光は吸収されて励起された状態すなわち「励起子」を形成し、続いて励起子は解離して電子と正孔になる。励起子の解離は一般的に、アクセプタ層とドナー層の並置によって形成されたヘテロ接合において発生する。例えば、図1のデバイスでは、「光活性領域」はアクセプタ層125とドナー層130を含んでもよい。
【0042】
アクセプタ材料は、例えばペリレン、ナフタレン、フラーレン、またはナノチューブから構成されてもよい。アクセプタ材料の一例は、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボキシルビス-ベンゾイミダゾール(PTCBI)である。代替案として、アクセプタ層は、参照によって全体が本明細書に組み込まれている米国特許第6580027号に記載されているようなフラーレン材料で構成されてもよい。アクセプタ層に隣接して、有機ドナー型材料の層がある。アクセプタ層とドナー層との境界はヘテロ接合を形成し、ヘテロ結合は内部発生電界を生成することもある。ドナー層の材料はフタロシアニンまたはポーフィリン、もしくはこれらの誘導体または遷移金属錯体、例えば銅フタロシアニン(CuPc)であってもよい。他の適当なアクセプタ材料およびドナー材料を使用してもよい。
【0043】
光活性領域において有機金属材料を使用することによって、このような材料を組み込んだ感光性デバイスは三重項励起子を効率的に利用することができる。一重項と三重項との混合は、有機金属化合物のためには、吸収が一重項基底状態から直接に三重項励起状態への励起を必然的に含むほど強くなることができ、一重項基底状態から三重項励起状態への変換に付属する損失を排除すると考えられている。一重項励起子と比較して三重項励起子のより長い寿命と拡散長が、三重項励起子はデバイスの効率を損なうことなく、より大きな距離を拡散してドナー-アクセプタヘテロ接合に到達するので、より厚い光活性領域の使用を可能にする。有機金属以外の材料を使用することもできる。
【0044】
本発明の好ましい一実施形態では、感光性デバイスの積み重ねた有機層は、Peumans他の米国特許第6097147号、Applied Physics Letters 2000、76、2650〜52頁、および1999年11月26日に出願された同時係属中の出願第09/449801号に記載されているような、1つまたは複数の励起子遮断層(EBL)を含み、これら両特許文献は参照によって本明細書に組み込まれている。PVデバイスでは、より高い内部および外部量子効率がEBLを含むことによって達成されており、解離する界面の近くの領域に光発生された励起子を閉じ込め、感光性有機/電極界面における寄生励起子急冷を防止する。励起子が拡散する容積を制限することに加えて、EBLはまた、電極の付着中に導入される物質の拡散隔壁として作用することもできる。ある情況では、EBLを、ピンホール欠陥または充填不良欠陥を埋めるに十分な厚さにすることができ、さもなければ有機PVデバイスを非機能的にする可能性もある。したがってEBLは、電極が有機材料の上に付着されるときに生じる損傷から壊れ易い有機層を保護する助けをすることができる。
【0045】
EBLの励起子遮断特性は、励起子が遮断されている隣接有機半導体のものよりも実質的に大きなLUMO-HOMOエネルギーギャップを有することに由来すると考えられている。したがって、閉じ込められた励起子は、エネルギーを考慮するとEBL内に存在することが禁じられる。励起子を遮断することはEBLのためには望ましいが、すべての電荷を遮断することはEBLのためには望ましくない。しかし、隣接するエネルギー準位の性質によって、EBLはある1つの符号の電荷担体を遮断してもよい。符号によって、EBLは2つの他の層、通常は有機感光性半導体層と電極または電荷移動層との間に存在することになる。隣接する電極または電荷移動層はカソードまたはアノードに関連することになる。したがって、デバイス内の所与の位置おけるEBLのための材料は、所望の符号の担体がその電極または電荷移動層への輸送を妨げないように選ばれることになる。適正なエネルギー準位の整合は、電荷輸送に対する障壁が存在せず、直列抵抗の増加を防止することを確証する。例えば、電子に対するあらゆる望ましくない障壁が最小に抑えられるように隣接ETLのLUMOエネルギー準位に近接して調和したLUMOエネルギー準位を有することが、カソード側EBLとして使用される材料のために望ましい。
【0046】
材料の励起子を遮断する性質はこのHOMO-LUMOエネルギーギャップの固有の性質ではないことを理解されたい。所与の材料が励起子遮断物として作用するか否かは、隣接する有機感光性材料の相対的HOMOおよびLUMOエネルギー準位に依存する。したがって、孤立状態の化合物の等級を、これらを使用してもよいデバイスの情況と関係なく励起子遮断物として識別することは不可能である。しかし本明細書では教示によって、当業者は、所与の材料が有機PVデバイスを作るために選択された一組の材料と共に使用されるときに、励起子遮断層として機能するか否かを識別できよう。
【0047】
本発明の好ましい一実施形態では、感光性デバイスのアクセプタ層とカソードとの間にEBLが位置する。EBLのための好ましい材料は、約3.5eVのLUMO-HOMOエネルギー準位分離を有すると考えられる2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(バソクプロインまたはBCPとも呼ばれる)、またはビス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリノ)-アルミニウム(III)フェノレート(Alq2OPH)を含む。BCPは、アクセプタ層からカソードへ電子を容易に運搬することができる効果的な励起子遮断物である。
【0048】
EBL層を、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(PTCDI)、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸-ビス-ベンジミダゾール(PTCBI)、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、およびこれらの誘導体を含むがこれらに限定されない、適当なドーパントによってドープしてもよい。本デバイスにおいて付着されるようなBCPは非晶質であると考えられる。この明らかに非晶質であるBCP励起子遮断層は、高い光強度の下で特に速い薄膜再結晶を見せることもある。結果として得られる他結晶質材料への形態変化は、結果的に、充填不良、空洞、または電極材料の侵入などの可能な欠陥を有する低品質の薄膜となる。したがって、適当な比較的大きな安定した分子によってこの効果を示すBCPなどのあるEBL材料のドーピングはEBL構造を安定化することができ、形態変化を劣化させる動作を防止することがわかった。EBLに近いLUMOエネルギー準位を有する材料による、所与のデバイスにおいて電子を運搬しているEBLのドーピングは、空間電荷の形成を生じさせて性能を低下させる電子トラップが形成されないことを確証する助けになることを、さらに理解されたい。さらに、比較的低いドープ密度は隔離されたドーパント個所における励起子の発生を最小に抑えるはずであると理解されたい。このような励起子の拡散は取り囲むEBL材料によって効果的に防止されるので、このような吸収はデバイスの光変換効率を低下させる。
【0049】
光活性デバイスの代表的な実施形態はまた、透明電荷移動層または電荷再結合層を含んでもよい。本明細書で記載されるように、電荷移動層は、電荷移動層がしばしば、しかし必ずしも必要ではないが無機(金属であることが多い)であり、光導電的に活性として選ばれなくてもよいという内容によって、アクセプタ層およびドナー層から区別される。用語「電荷移動層」は、本明細書では、電荷移動層が電荷担体を光電子デバイスのある小部分から隣接する小部分へ配分するだけである電極と類似しているが異なる層を指すために使用される。用語「電荷再結合層」は、本明細書では、電荷再結合層がタンデム感光性デバイス間の電子および正孔の再結合を可能にし、1つまたは複数の光活性層の近くで内部光場の強度も強化することがある電極と類似しているが異なる層を指すために使用される。電荷再結合層を、参照によって全体が本明細書に組み込まれている米国特許第6657378号に記載されているような半透明の金属ナノクラスタ、ナノ粒子、またはナノロッドで構成することができる。
【0050】
本発明の好ましい一実施形態では、アノードとドナー層との間にアノードスムージング層が位置する。この層のための好ましい材料は、3,4-ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリエチレンスルフォン酸(PEDOT:PSS)の薄膜からなる。アノード(ITO)とドナー層(CuPc)との間にPEDOT:PSS層を導入することで、非常に改善された製作歩留りが得られる。これは、ITOを平坦化するスピンコートPEDOT:PSS膜の能力にきし、さもなければITOの粗い表面は薄い分子層全体にわたって充填不良となる。
【0051】
本発明のさらに別の実施形態では、1つまたは複数の層を、次の層を付着する前にラズマで処理してもよい。これらの層を例えば弱いアルゴンまたは酸素のプラズマで処理してもよい。この処理は、直列抵抗を低下させるので有益である。PEDOT:PSS層を、次の層を付着する前に弱いプラズマ処理にかけることは特に有利である。
【0052】
図1に図示した簡単な層構造は限定されない実施例として提供するものであり、本発明の実施形態を広範囲のさまざまな他の構造と共に使用してもよいことが理解される。説明する特定の材料および構造は全く例示的なもので、他の材料および構造を使用してもよい。異なる方法で説明されたさまざまな層を組み合わせて機能デバイスを達成してもよく、または設計、性能、およびコストの要素に基づいて層を完全に省いてもよい。特に説明されていないその他の層を含むこともできる。特定して説明したものとは別の材料を使用してもよい。本明細書の中に挙げた実施例の多くは単一の材料を含むとしてさまざまな層を説明しているが、ホストとドーパントの混合物またはさらに一般には混合物などの、材料の組合せを使用してもよいことが理解される。さらに層はさまざまな副層を有してもよい。本明細書においてさまざまな層に与えられた名称は、厳密に限定しようとするものではない。光活性領域の一部ではない有機層、すなわち光電流に対して重要な寄与となる光子を一般に吸収しない有機層を、「非光活性層」と呼んでもよい。非光活性層の例としては、EBLおよびアノードスムージング層がある。また他の形式の非光活性層を使用してもよい。
【0053】
感光性デバイスの光活性層において使用するための好ましい有機材料には、シクロメタレート型有機金属化合物が含まれる。本明細書において使用されるような用語「有機金属」とは、当業者には一般に理解されているような、例えばGary L.Miessler、Donald A.Tarr、「Inorganic Chemistry」、Prentice Hall (1988年)に挙げられているものである。したがって、有機金属という用語は、炭素-金属結合を通じて金属に結合された有機基を有する化合物を指す。この級は本質的に、アミン、ハライド、擬似ハライド(CNなど)の金属複合物などの、ヘテロ原子からのドナー結合のみを有する物質である配位化合物を含まない。実際、有機金属化合物は一般に、有機種への1つまたは複数の炭素金属結合の他に、へテロ原子からの1つまたは複数のドナー結合を含む。有機種への炭素-金属結合は、金属とフェニル、アルキル、アルケニルなどの有機基の炭素原子との間の直接結合を指すが、CNまたはCOの炭素などの「無機炭素」への金属結合を指すものではない。シクロメタレート型という用語は、金属への結合に基づいて、環員の1つとして金属を含む環構造が形成されるように二座有機金属配位子を含む、化合物を指す。
【0054】
有機層を、真空蒸着、スピンコーティング、有機蒸気相堆積、インクジェット印刷、および当技術分野で周知のその他の方法を使用して製作してもよい。
【0055】
本発明の実施形態の有機感光性光電子デバイスは、PV、光電検出器、または光導電体として機能してもよい。本発明の有機感光性光電子デバイスがPVデバイスとして機能するときはいつでも、光伝導性有機層において使用される材料とその厚さを、例えばデバイスの外部量子効率を最適化するために選択してもよい。本発明の有機感光性光電子デバイスが光電検出器または光導電体として機能するときはいつでも、光伝導性有機層において使用される材料とその厚さを、例えばデバイスの感度を所望のスペクトル領域に最大化するために選択してもよい。
【0056】
この結果を、層厚の選択において使用できるいくつかの指針を考慮して達成することもできる。励起子拡散長LDについては、大部分の励起子解離が界面において発生するので、層厚Lと比較してより大きいことが望ましい。LDがLより小さい場合には、多くの励起子が解離の前に再結合することがある。さらに光導電層の全厚については、PVデバイスの上の入射放射線のほぼ全てが吸収されて励起子を生成するように、電磁放射線吸収長1/α(ただし、αは吸収係数)程度であることが望ましい。さらにまた、光伝導性層の厚さは、有機半導体の高いバルク抵抗率による過度の直列抵抗を避けるために、できるだけ小さくすべきである。
【0057】
したがって、これらの競合する指針は本来、感光性光電子セルの光伝導性有機層の厚さを選択する場合、交換条件を行使する必要がある。したがって一方では、入射放射線の最大量を吸収するためには、匹敵するかまたは吸収長より大きな厚さが(単一セルデバイスのために)望ましい。他方では、光導電層の厚さが増すにつれて2つの望ましくない効果が増す。1つは、有機半導体の高い直列抵抗によって、増加した有機層の厚さがデバイスの抵抗を増加させ、効率を低下させることである。別の望ましくない効果は、光導電層の厚さの増加が、励起子が有効電界から離れた電荷分離界面において発生し、この結果、対の中での再結合およびさらに低下した効率の確率を高めるという可能性を増加する。したがって、デバイス全体のための高い外部量子効率を作り出す方法でこれらの競合する効果を釣り合わせるデバイス構成が望ましい。
【0058】
有機感光性光電子デバイスは光電検出器として機能してもよい。この実施形態では、例えば、全体が参照によって本明細書に組み込まれている2003年11月26日に出願された米国特許出願第10/723953号に記載の多層有機デバイスであってもよい。この場合は、一般に外部電界が分離された電荷の抽出を容易にするために印加される。
【0059】
有機感光性光電子デバイスの効率を上げるために、集線装置または捕獲構成を使用することができ、ここで光子を強制的に薄い吸収領域に複数回通過させる。全体が参照によって本明細書に組み込まれている米国特許第6333458号および同第6440769号は、高い吸収のためおよび収集効率を増す集光(light concentrator)装置と使用するために光学寸法を最適化することにより感光性光電子デバイスの光変換効率を高める構造的設計を使用することによって、この問題に取り組んでいる。感光性デバイスのこのような形状寸法は実質的に、反射空洞または導波構造の中で入射放射線を捕獲することによって、材料を通る光学距離を増加し、これによって感光性材料を通る多重反射によって光を再循環させる。したがって米国特許第6333458号および同第6440769号に開示された形状寸法は、体抵抗の実質的な増加を起すことなく、デバイスの外部量子効率を高める。このようなデバイスの形状寸法の中には、第1反射層、光学的ミクロ空洞干渉効果を防止するためにすべての次元において入射光の光干渉長より長くなければならない透明絶縁層、透明絶縁層に隣接する透明第1電極層、透明電極に隣接する感光性ヘテロ構造、およびやはり反射性である第2電極が含まれる。
【0060】
デバイスの所望の領域の中に光エネルギーを集束するために、被覆を使用してもよい。全体が参照によって本明細書に組み込まれている米国特許出願第10/857747号は、このような被覆の実施例を提供している。
【0061】
有機太陽電池は通常、金属とITO電極との間に挟まれた分子または高分子有機化合物の薄い(約100nm)層から構成されている。ITOは、ガラスまたはプラスチックのシートの上にスパッタリングされてもよく、有機材料を、真空蒸着法(VTE)、気相蒸着法(OVPD)、スピンコーティング、または浸漬被覆法によって付着してもよい。金属カソードを熱的に真空蒸着してもよい。デバイスをITO側から照明してもよい。シリコン光電池とは異なり、光子の吸収は電荷対を直接発生しない。この構造における光電流発生は、4つの連続的ステップすなわち、1)フレンケル励起子として知られる束縛電荷対を発生するための光子の吸収、2)ドナー-アクセプタ界面への励起子の拡散、3)電子-正孔対への励起子の解離、および4)電極における電子と正孔の収集において起こる。一般に、ドナー材料は、低い電離電位(IP)を得るために選らばれるが、アクセプタ材料は高い電子親和力(EA)を有し、界面において励起子の発熱的解離を駆動する。
【0062】
個別の層は、光の効率的な吸収のために十分に厚いが励起子の特性拡散長以内であることが好ましい。下の表1は、いくつかの好ましい有機PVセル材料の典型的な励起子拡散長を表示している。
【0063】
【表1】

【0064】
上の表において、PPEIはペリレンビス(フェネチリミド)、alq3はトリス(8-ヒドロキシキノリン)アルミニウム、CuPcは銅フタロシアニン、ZnPcは亜鉛フタロシアニンである。PPEIの結果は、SnO2急冷表面の結果を使用し、無限表面再結合速度を想定して計算される。2.5±0.5μmのPPEIのLDに至る結果は、急冷装置拡散と溶剤蒸気支援焼きなまし中の形態変化に多分影響されている。120±30のPPVの結果は、光学的干渉効果を考慮していない。拡散長測定値は次の出典から得られた。すなわち、(1)P.Peumans、A.Yakimov、S.R.Forrest、J.Appl.Phys.、2003年、93、3693、(2)L.A.A.Pettersson他、J.Appl.Phys.、86、487(1999)、(3)V.Bulovic、S.R.Forrest、Chem.Phys.、210、13(1996)、(4)J.J.M.Halls他、Appl.Phys.Lett.、68,3120(1996)、(5)B.A.Gregg他、J.Phys.Chem.B、101、5362(1997)、(6)T.Stuebinger、W.Bruetting、J.Appl.Phys.、90、3632(2001)、(7)H.R.Kerp、E.E.van Faassen、Nord.Hydrol、1、1761(1999)、(8)A.L.Burin、M.A.Ratner,J.、Phys.Chem.、A 104、4704(2000)、(9)V.E.Choong他、J.Vac.Sci.Technol.、A 16、1838(1998)、(10)M.Theander他、Phys.Rev.,B 61、12957(2000)である。
【0065】
多くの有機化合物(例えば銅フタロシアニン)においては吸収係数が高いので、すべてを考量すると、これは結果的に100〜1000Åの望ましい層厚になり、これはシリコンベースの光電池またはグレッツェル光電池の活性層よりもはるかに薄い。有機分子鎖および高分子鎖はファンデルワールス力によって保持されることもでき、周囲条件で低密度(1.1g/cm3)の固体薄膜を形成することもできる。膜を低い基板温度で蒸着することができ、有機光電池を、活性層を基板に格子適合させる必要はなく、適度のサーマルバジェットで、さまざまな基板の上に構築することを可能にする。
【0066】
TangとVan Slykeは、1%の量子効率を有する有機ヘテロ接合光電池を1986年に実証した。しかし、初めは、この第1ヘテロ接合光電池は、励起子の拡散長が短いために限られたものであった。これは発生した励起子の大部分が界面に達する前に崩壊する(光子になる)原因となった。平坦ヘテロ接合有機光電池の進展は、長い励起子拡散長を有するC60などの材料、ならびにバルクヘテロ接合などの新規のデバイス構造が最近になって紹介されるまで遅いものであった。
【0067】
バルクヘテロ接合は、ドナー材料とアクセプタ材料との相互貫入網目であってもよい。実質的に平坦なヘテロ接合とは異なり、光子の吸収はドナー-アクセプタ界面の近くで発生することがあり、電荷解離の確率を上げる。バルクヘテロ接合を製作するために、混合ドナー-アクセプタ分子膜を基板の上に付着させ焼きなましを行って層分離を誘導してもよい。同様に2つの重合体をスピンコーティングして、相関隔離させ、相互貫入構造を生成することもできる。重合体システムと分子システムの両方において3.5%という高い効率を達成した。
【0068】
C60および効率に関する一般情報は、例えば、P.Peumans、S.R.Forrest、「Very-High-Efficiency Double-Heterostructure Copper Phthalocyanine/C60 Photovoltaic Cells」、Applied Physics Letters、2001年、79(1)126頁において入手可能である。バルクヘテロ接合(バルクヘテロ接合)構造に関する一般情報は、P.Peumans、S.Uchida、S.R.Forrest、「Efficient Bulk Heterojunction Photovoltaic Cells Using Small-Molecular-Weight Organic Thin Films」、Nature、2003年、425(6954)、158頁、および/またはS.E.Shaheen他、「2.5% Efficient Organic Plastic Solar Cells」、Applied Physics Letters、2001年、78(6)、841頁に見ることができる。
【0069】
さらにすぐれた有機材料、タンデム光電池、および金属ナノクラスタを使用することによって、より大きな利得を予期することができる。先の表は例示的なものであり、排他的にしようとするものではない。金属ナノクラスタに関する一般情報は、A.Yakimov、S.R.Forrest、「High Photovoltage Multiple-Heterojunction Organic Solar Cells Incorporating Interfacial Matallic Nanoclusters」、Applied Physics Letters、2002年、80(9)、1667〜1669頁に見ることができる。
【0070】
周知の有機光電池はシリコン電池またはグレッツェル電池よりも効率的ではないかもしれないが、これらは潜在的に製造がより容易でより低廉である。有機材料はまた基板のより広い選択を可能にする。本明細書の一実施形態では、現況の技術と材料による1つの有機光電池(ファイバ形式)の製作方法が開示されており、この光電池は結果的に3.5%またはそれ以上の効率的な太陽電池であるはずであるが、コストはかなり低く、周知の有機光電池と比較してさらに融通のきく形状因子となる。
【0071】
図2は、本発明の一実施形態による光活性ファイバ構造200の表示例を示す。図示をわかり易くするために、図2は一定の比例で描かれなくてもよい。光活性ファイバ構造200は、支持要素202と、支持要素202を実質的に取り囲んでもよい第1電極204と、第1電極204を実質的に取り囲んでもよく、光活性領域を含む有機層206と、有機層206実質的に取り囲んでもよい第2電極208と、透明電極208のある表面と電気的に接触してもよい補助導体210とを含んでもよい。本発明の一実施形態による光活性ファイバ構造200は、さらに外部層212を含んでもよい。
【0072】
ある実施形態では、支持要素202を可とう性の中実材料で製作してもよい。例としては光ファイバ、遠距離通信用ファイバ、および中実ナイロンストランドを挙げることができる。一実施形態では、コアは中実ナイロンストランドとしてもよい。その他の材料も、本発明の範囲から逸脱することなく受け入れ可能であり、広範囲のさまざまな寸法を特定の用途の構造的要件に応じて使用することもできる。支持要素202と第1電極204は共に「導電性コア」から成る。支持要素202は導電性または非導電性であってもよい。ある実施形態では、導電性コアは、支持要素202を第1電極204から分離することを必要とせず、単一要素であってもよい。このような導電性コアは、十分な構造的性質と導電性を提供する材料から成ることが好ましい。金属ワイヤはこのような導電性コアの好ましい例である。分離した支持要素202があってもなくても、第1電極204は(例えばリチウムの第2層によって取り囲まれたアルミニウムの第1層などの)2つ以上の層から構成されてもよい。適当な導電性材料の例としては、銀、金、銅、およびアルミニウムが挙げられる。その他の導電性材料を使用してもよい。導電性コアは可とう性であることが好ましい。
【0073】
ある実施形態では、有機層206は、重合体または小分子バルクヘテロ接合被覆であってもよい。ある実施形態では、有機層206の厚さは約1〜200nmの範囲にあってもよい。重合体または小分子バルクヘテロ接合被覆の例としては、それぞれPCBM-nMDMO-PPVおよびCuPc-C60が挙げられる。本明細書で使用されるように、
PCBMは、6,6-フェニル-C61-ブチル酸-メチルエステル、
MDMO-PPVは、ポリ(2-メトキシ-5-(3',7'-ジメチルオクチロキシ)-1,4-フェニレン-ビニレン)、
PPVは、ポリ(1,4-フェニレン-ビニレン)、
C60は、バックミンスターフラーレン、
PtOEPは、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィン白金(II)(さらに白金オクタエチルポーフィリン)
PTCBIは、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボキシルビス-ベンジミダゾールである。
平坦ヘテロ接合層または混合ヘテロ接合層などの他の有機層、ならびにその他の光を発生する材料の組合せも、本発明の範囲から逸脱することなく選択してもよい。
【0074】
ある実施形態では、第2電極208は透明であってもよく、PEDOT-PSSから成る重合体を含んでもよい。ITOは別の好ましい材料である。第2電極208が透明で可とう性であることは好ましい。また他の透明な電極材料を、金属であっても非金属であっても、本発明の範囲から逸脱することなく選択することもできる。
【0075】
ある実施形態では、外部層212は光学的に透明なナイロンであってもよい。またその他の材料を使用してもよい。必要な環境からの保護の量に応じて、また第2電極208などの他の層によって提供されるこのような保護の量に応じて、外部層212を省いてもよい。
【0076】
産業的な実際面では、例えばファイバが織られてもよい布において、(図2の200のような)光活性ファイバ構造のアジマス方位を制御することは困難になることがある。ある布構造では、光活性ファイバ表面の(従来の平坦光電池における50%と比較して)25%のみが有用に露出される。例えばITOまたはPEDOT-PSSから成る第2電極208を使用してもよい。しかし、ITOまたはPEDOT-PSSから成るような透明電極は、一般的に、約1cmを超える長さにわたって電流を伝導するためには抵抗が大き過ぎることがある。したがって、補助導体210を有機層206と第2電極208の両方に加えて、これらと電気的接触状態にしてもよい。補助導体210は、光活性ファイバ構造200の全長にわたって電流を抽出することもできる。一実施形態では、補助導体210は例えば銀、金、銅、またはアルミニウムで構成されてもよい。補助導体210を第2電極208に電気的に接続してもよく、第2電極208の外部表面の約5パーセント〜約50パーセントを覆ってもよい。その上、図2では1つの中実ワイヤとして図示したが、補助導体は少なくとも1つの金属ワイヤ、金属化(メタライズ)されたワイヤ、金属リボン、金属化されたリボン、および金属被覆物のいずれかであってもよい。補助導体210を光活性ファイバ構造200の周りに巻いてもよく、支持要素202の軸に実質的に平行な方向に加えてもよい。巻いた場合には、補助導体210によって覆われる表面の量が最小になるようにデューティサイクルが低いことが好ましい。それは、補助導体210は必ずしも透明である必要はなく、補助導体によって遮断される光の量を最小にすることが望ましいからである。「デューティサイクル」とは、補助導体210が完全に一回転するファイバに沿った軸方向距離である。活性領域の大き過ぎる部分から光を遮断することを防止するためには、第2電極の少なくとも周囲のデューティサイクルが好ましい。第2電極208として使用するために望ましい大部分の材料のため、および大部分のファイバ寸法のために、電極208周囲の周りの伝導ではなく、軸方向の伝導が、補助導体210が取り組む問題となることが予測されるので、非常に小さなデューティサイクルに対しては重要な導電性の利点はないかもしれない。ファイバの一部分のみが光に露出されると予期される一定の布に織り込むなどの、補助導体210の配向が容易に制御されないようにソラーファイバを製品の中に組み込むことがある場合には、ファイバが補助導体210を有する状況を避けるために十分に低いデューティサイクルを持つ巻き補助導体210を、光に露出されるファイバの部分の実質的な小部分を遮断するように、常に光源に対して向けることが好ましいと思われる。さらにまた、一実施形態では、補助導体210は、第2電極208を取り囲む導電体の編組(図示せず)であって、編組(ブレード)からの吸蔵度合いは約50パーセント以下であることが好ましいものであってもよい。図3は第2電極208によって有機層206から分離された補助導体210を図示しているが、このような分離は必要ではなく、補助導体210は有機層206と接触してもよい。例えば、補助導体210を第2電極208の前に製作してもよい。
【0077】
図3は、本発明の一実施形態による励起子遮断層320をさらに含む、図2の光活性ファイバ構造の図例と同様な光活性ファイバ構造300の図例を示す。励起子遮断層320は、非光活性励起子遮断層320が有機層206と第2電極208の各々に電気的に接続されるように、有機層206と第2電極208との間に配置された非光活性層を含んでもよい。励起子遮断層320が有機であることは好ましい。図解を容易にするために、励起子遮断層320は図3の拡大部分にのみ示されている。好ましくは有機であるその他の非光活性層が、光活性ファイバ構造において第1電極204と第2電極208との間に含まれてもよい。例えば、遮断層、スムージング層、および当技術分野に知られているか知られるようになることもある他の任意の層を、ファイバ構造の中に組み込んでもよい。
【0078】
本発明による光活性ファイバ構造200を製造する一つの方法は、遠距離通信ファイバをITOで被覆し、次いで真空熱蒸着またはディップコーティングを使用して(1つまたは複数の)活性有機層を付着させることである。(図2の210のような)導体を、真空蒸着を使用して付着させてもよく、その後に通常の電気探針技法を使用して検査してもよい。
【0079】
実用的な光活性ファイバの寸法はその構成に従属し、これらの寸法と構成は両方とも、同時にかついくらか反復して確立される。一般に、織物(ファブリック)に織られた可とう性光発生ファイバで使用してもよいように一般化された円筒状デバイス形状を考えると、全ファイバ厚は(図2の212のような)外部層を含めて約10〜100μmの範囲内にあってもよく、活性有機層(例えば有機層206)は一般的に僅かに約100nmにしてもよい。
【0080】
活性有機層(例えば有機層206)によって吸収される光パワーは下式によって得られる。
【0081】
Popt≧Φ・d・L (2)
ただし、Φ、r2、およびLは、それぞれ、オプティカルフラックス、アノードにおけるファイバ半径、妨害されないファイバの長さである。結果として得られる全光電流は下式によって得られる。
【0082】
【数1】

【0083】
ただし、ηpwr、FF、およびVOCは、それぞれ、光電池の出力効率、フィルファクタ、および開回路電圧である。(出力効率ηpwrは、構造における入射太陽束に対するあらゆる追加吸収損失の説明となる。)負荷回路において生成される電力は下記の通りである。
【0084】
Pload=Vdrop・Iload=(0.05・FF・VOC)・IPG (4)
ただし、5%の圧力低下がファイバ長に沿って許容されており、動作中はIPG=Iloadである。同時に、オームの法則が下記を指図する。
【0085】
【数2】

【0086】
ただし、ρはアノード(例えば第2電極208および/または補助導体210)の抵抗率であり、Acs≒π・d・tはアノードの断面積である。式(2)〜(5)を組み合わせると下式が得られる。
【0087】
【数3】

【0088】
アルミニウム(ρ=5・10-8Ω・m)が(図2の204のような)内部導体として使用され、ηpwr=3%、FF=0.5V、VOC=0.5Vであれば、(図2の204のような)内部導体の最小厚の推定値(メートル)は下記の通りになる。
【0089】
t≧5・10-6・L2 (7)
ただし、Lはやはりメートルで表される。したがって、電流を10cm毎に取り出す場合には、5μm厚のアルミニウム被覆を使用することができる。これはまた導体の直径も設定する。すなわち、
【0090】
【数4】

【0091】
ただし、dauは図2の補助導体210などの補助導体の直径である。したがって、上記からdau=30μmとなる。
【0092】
ある実施形態では、光活性ファイバ構造200は、補助導体210を含めて、例えば10μm厚の外部層212によって巻かれ次いで囲まれて、この結果、最大直径にわたって約110μmをなすやや細長い断面の光活性ファイバ構造が得られる。この直径は、典型的な織物加工設備および産業用ならびに個人用生地への組込みに適していると思われる。
【0093】
本発明の一実施形態による光活性ファイバ構造を低コストで製作し、織物の高速製造に組み込んでもよいことが考えられる。1つの可能な連続製作順序は、感光性重合体のブレンドを含む溶融体を通じて金属または金属被覆されたナイロンコアを線引きすることであってもよい。感光性重合体は乾燥して相分離し、結果としてコアを囲むバルクヘテロ接合が得られる。次にコアを導電性重合体(例えばPEDOT)で被覆してもよい。導体を導入して、低いデューティサイクルで光発生コアによって巻くか、または光活性ファイバのコアの軸に実質的に平行な方向に直線的に適用して、光活性ファイバにおける十分な光吸収を可能にしてもよい。最終的に、光活性ファイバ全体を、透明プラスチック外装または保護用外層の中に包むことによって「仕上げ」、この機械的(例えば研磨性)および環境的損傷からの保護を助けてもよい。
【0094】
最後に、取り付けた太陽電池パネルの実行可能性は、原料、製作、モジュール組立て、運搬、および現場取付けのコストに依存する。大量製造された光活性ファイバの最終コストの推定値は単に概算であるが、シリコン光電池より低いことが期待される。光活性ファイバにおいて使用される光活性重合体の質量を、上で得られた寸法から計算することができる。1m長のファイバは〜10-5mgの乾燥光活性重合体を必要とし、光活性ファイバから織られた1m2の布地見本は〜0.1gの乾燥光活性重合体を使用する。C60などの化学剤は現在<$30/グラム(純度99%)で大量に入手可能であり、この価格は近い将来低下することが予期できる。ナイロン布は、織り、処理、および強度に応じてm2当り$1〜$20の価格で消費者に入手可能で、大量消費者には実質的にさらに低いコストになる。3%効率の1m2光電池は平均して30ワットの電力を発生することができる。光活性ファイバのコストが技術的剛性ベースの織物の価格内にある場合には、発生する電力のコストは〜$0.1と$0.8/ワットの間になり得る。一般的なシリコンベースの太陽電池は$3〜4/設備ワットのコストを有する。さらにまた、機械的に堅牢な可とう性織物の形で愛用電池を製造すると、重くてかさばるシリコン光電池モジュールと比較して、設置コストを大幅に低減させることができる。
【0095】
光活性ファイバの製作に使用される重合体の性質は、いくつかの光学的、電気的、機械的、および流動学的要件を満たすことが好ましい。太陽電池の効率を最大にするためには、光発生層の吸収スペクトルはできるだけ太陽放射スペクトルに重なるべきである。重合体は一般的に、入射太陽放射線のかなりの部分を削除する>2eVのバンドギャップを結合している。活性重合体の構造と組成を改質して、小分子状の側枝およびC60のような機能基を使用する太陽スペクトルの低エネルギー部を含むことができる。全体的に、C.J.Brabec他、Organic Photovoltaic Devices Produced From Conjugated Polymer/Metanofullerene Bulk Heterojunctions」、Synthetic Metals、2001、121(1-3)、1517頁、およびS.E.Shaheen他、「Low Band-Gap Polymeric Photovoltaic Devices」、Synthetic Metals、2001、121、1583頁を参照されたい。
【0096】
しかし、重合体の構造的改質はまた、その溶融温度、流動学的挙動、および結晶秩序に影響する。重合体の溶融流動学はよく研究された題目であるが、光電池において使用される重合体の流動学を扱ういくつかの研究が存在し、多くが最近5年間以内にのみ総合化されている。
【0097】
光活性重合体の改質に加えて、低バンドギャップ染料分子をホスト膜の中にドーピングすることによって光吸収を改善(「敏感に」)してもよい。しかし、染料分子の上に作られた励起子は、取り巻く重合体マトリックスに対してエネルギーが低いので捕獲されたままである。グレッツッル電池において使用されるもののようなナノ寸法で三相形態学を巧みに処理することで、この限界を乗り越えることもある。両親媒性ドーパント分子を親水性重合体および疎水性重合体と共に混合し、こうして焼なましによって両親媒性ドーパントが2つの重合体相の間の境界において第3相を作り出すこともできる。正味の結果は、三重界面において低エネルギー励起子を吸収して直ちに解離することである。
【0098】
隣接する鎖の間の電荷および励起子のホッピングもまた光電池の主力電流を制限する。障壁被覆設計の動作仮説は、光電池への化学種(例えばO2およびH2O)の拡散が、熱応力および光学的応力によって加速された光学活性化合物および電気的活性化合物の分解をひき起こすことである。水分拡散係数をある高分子材料では低くすることができるが、酸素拡散は防止するにはもっと困難である。金属被覆はある用途(例えば、食品パッケージ、光ファイバコーティングなど)においてしばしば使用されるが、これらは大陽束を遮断する。代わりに、透明な酸化物(例えば、TiO2、SiO2、およびAl2O3)被覆を太陽ファイバのために使用することができる。有機ベースデバイスにおいて拡散障壁として酸化物薄膜を使用することの困難性は、加工処理と適用の観点に由来する。高品質の濃厚な酸化物の蒸着温度は一般的に高いが(>500℃)、有機材料の蒸着温度は一般的に低い(<500℃)。また酸化物は脆く、重合体とは異なる熱膨張係数を有し、したがって取扱い中や使用中に亀裂が容易に生じる。交互になった重合体薄膜とスパッタリングした金属酸化物無機薄膜とが使用される、障壁被覆が開発されている。例えば、P.E.Burrows他、「Gas Permeation and Lifetime Tests on Polymer-Based Barrier Coatings」、SPIE Annual Meeting、2000を参照されたい。無機層はデバイスに有害な化学種の拡散を遮断するために作用するが、重合体中間層は酸化層を和らげて機械的に分離するために作用する。酸化物のゾル-ゲル合成物などの低コストの合成手法も受入れ可能になることがある。
【0099】
OLEDの実施形態については、有機層206は、有機発光デバイスの有機層を含んでもよい。このような層が図4に(平面様式で)図示されており、先および後にさらに詳しく記載されている。補助導体をOLEDの中で使用して電流を提供してもよい。
【0100】
正孔輸送層425は、孔を伝達することができる材料を含んでもよい。正孔輸送層430は固有のもの(ドープされていない)でも、ドープされていてもよい。導電性を向上させるためにドーピングを使用してもよい。α-NPDおよびTPDは固有正孔輸送層の例である。pドープされた正孔輸送層の一例は、全体が参照によって本明細書に組み込まれているForrest他の米国特許出願公開第2002-0071963A1号に開示されているような、50:1のモル比でF4-TCNQでドープされたm-MTDATAである。その他の正孔輸送層を使用してもよい。
【0101】
発光層435は、電流がアノード415とカソード460との間を通されるときに光を放射することができる有機材料を含んでもよい。蛍光放射材料を使用してもよいが、発光層435は燐光放射材料を含むことが好ましい。燐光放射材料は、このような材料にはより高い発光効率が伴うので好ましい。発光層435はまた、放射材料によってドープされた、電子、および/または正孔を輸送することができるホスト材料を含んでもよく、放射材料は電子、正孔、および/または励起子を捕獲することもあり、こうして励起子は放射材料から光電子放出機構を介して緩和される。発光層435は、輸送特性と放射特性とを組み合わせる単一材料を含んでもよい。放射材料がドーパントであっても、または主構成物質であっても、発光層435は、放射材料の放射を調整するドーパントなどの他の材料を含んでもよい。発光層435は、組み合わせて所望の光スペクトルを放射することができる複数の放射材料を含んでもよい。燐光放射材料の例にはIr(ppy)3がある。蛍光放射材料の例にはDCMおよびDMQAがある。ホスト材料の例にはAlq3、CBP、およびmCPがある。放射およびホスト材料の例は、全体が参照によって本明細書に組み込まれているThompson他の米国特許第6303238号に開示されている。発光材料は、多くの方法で発光層435の中に含まれてもよい。例えば、放射小分子を重合体の中に組み込んでもよい。これはいくつかの方法、すなわち小分子を重合体の中に個別分子種としておよび明確な分子種としてドープすることによって、または共重合体を形成するように小分子を重合体の基幹に組み込むことによって、または小分子をペンダント基として重合体に結合することによって完成してもよい。その他の発光層材料および構造を使用してもよい。例えば、小分子放射材料はデンドリマのコアとして存在してもよい。
【0102】
多くの有用な放射材料が、金属の中心に結合した1つまたは複数の配位子を含む。配位子は、これが有機金属放射材料の光活性特性に直接貢献する場合には、「光活性」と呼んでもよい。「光活性」配位子は、金属と共に、光子が放射されるときに電子が移動する元と先のエネルギー準位を提供することもある。その他の配位子を「副」と呼んでもよい。副配位子は、例えば光活性配位子のエネルギー準位をシフトすることによって、分子の光活性特性を変更することもできるが、副配位子は発光に必要とされるエネルギー準位を直接提供しない。ある分子において光活性である配位子が、他の分子においては副配位子となることもある。光活性および副のこれらの定義は限定しない理論を意図するものである。本明細書で使用されるような用語「光活性」は、光の吸収および放射に直接関係することを一般に意味するものである。光活性デバイスとは反対にOLEDに関して提供される特定の意味は、一般定義の文脈上の適用例である。
【0103】
電子輸送層440は、電子を輸送することができる材料を含んでもよい。電子輸送層440は固有であっても(ドープされていない)、ドープされてもよい。導電性を高めるためにドーピングを使用してもよい。Alq3は固有電子輸送層の一例である。nドープされた電子輸送層の一例は、全体が参照によって本明細書に組み込まれているForrest他の米国特許出願公開第2002-0071963A1号に開示されているような、1:1のモル比でLiによってドープされたBPhenである。その他の電子輸送層を使用してもよい。
【0104】
電子輸送層の電荷搬送構成要素を、電子がカソードから電子輸送層のLUMO(最低非占有分子軌道)エネルギー準位に効率的に注入可能であるように、選択してもよい。「電荷搬送構成要素」は、電子を実際に輸送するLUMOエネルギー準位を有する材料である。この構成要素は基礎材料であってもよく、またはドーパントであってもよい。有機材料のLUMOエネルギー準位は一般に、この材料の電子親和性を特徴としてもよく、カソードの相対的電子注入効率は一般に、カソード材料の作業機能の面に関して特徴としてもよい。これは、電子輸送層と隣接カソードとの好ましい特質をETLの電荷搬送構成要素の電子親和性とカソード材料の作業機能とに関して明記してもよいことを意味する。特に、高い電子注入効率を達成するように、カソード材料の作業機能が電子輸送層の電荷搬送構成要素の電子親和力を超える値は、約0.75eVを超えないことが好ましく、約0.5eV以下であることはさらに好ましい。同様な考えが、電子が注入されているいずれの層にも適用される。
【0105】
OLEDにおける遮断層を使用して、発光層を離れる電荷担体(電子または正孔)および/または励起子の数を減らしてもよい。電子遮断層430を発光層435と正孔輸送層425との間に配置して、正孔輸送層425の方向に電子が発光層435を離れることを遮断してもよい。同様に、正孔遮断層440を発光層435と電子輸送層445との間に配置して、電子輸送層445の方向に正孔が発光層435を離れることを遮断してもよい。励起子が発光層から出て拡散することを遮断するために、遮断層を使用してもよい。遮断層の理論と使用は、全体が参照によって本明細書に組み込まれているForrest他の米国特許第6097147号および米国特許出願公開第2002-0071963A1号にさらに詳しく記載されている。
【0106】
本明細書で使用されているように、また当業者には理解されると思われるように、用語「遮断層」は、この層が電荷担体および/または励起子を必然的に遮断することを示唆することなく、この層が、デバイスを通る電荷担体および/または励起子の輸送をかなり抑制する障壁を提供することを意味する。デバイスにおけるこのような遮断層の存在は、結果的に、遮断層のない同様なデバイスと比較して実質的に高い効率となる。さらに、遮断層を使用して放射をOLEDの所望の領域に制限してもよい。
【0107】
一般に、注入層は、電極または有機層などの1つの層から隣接する有機層への電荷担体の注入を改善する材料から成る。注入層はまた電荷輸送機能を実施してもよい。デバイス400では、正孔注入層420は、アノード415から正孔輸送層425への正孔の注入を改善するどのような層であってもよい。CuPcは、ITOアノード415およびその他のアノードからの正孔注入層として使用してもよい材料の一例である。デバイス400では、電子注入層450は、電子輸送層445への電子の注入を改善するどのような層であってもよい。LiF/Alは、隣接層から電子輸送層への電子注入層として使用してもよい材料の一例である。その他の材料または材料の組合せを注入層のために使用してもよい。特定のデバイスの構成に応じて、注入層を、デバイス400に示されたものとは異なる位置に配置してもよい。注入層のさらなる例は、全体が参照によって本明細書に組み込まれているLu他の米国特許出願第09/931948号に提供されている。正孔注入層は、スピンコートされた重合体などの溶液析出された材料、例えばPEDOT:PSSを含んでもよく、またはこれは蒸着された小分子材料、例えばCuPcまたはMTDATAであってもよい。
【0108】
正孔注入層(HIL)は、アノードから正孔注入材料への効率的な正孔注入を行うように、アノード表面を平坦化するか、または濡らしてもよい。正孔注入層はまた、本明細書に記載の相対電離電位(IP)エネルギーによって定義されるように、HILの片側上の隣接アノード層およびHILの反対側上の正孔輸送層と有利に調和するHOMO(最高占有分子軌道)エネルギー準位を有する電荷搬送構成要素を有してもよい。「電荷搬送構成要素」とは、実際に正孔を輸送するHOMOエネルギー準位を有する材料のことである。この構成要素はHILの基礎材料であっても、またはドーパントであってもよい。ドープされたHILを使用することによって、ドーパントをその電気的特性のために選択することができ、濡れ、可とう性、靭性などの形態学的性質のためにホストを選択することができる。HIL材料のための好ましい性質は、正孔をアノードからHIL材料の中に効率的に注入できるようなことである。特に、HILの電荷搬送構成要素がアノード材料のIPよりも約0.7eV以上ではないIPを有することが好ましい。電荷搬送構成要素がアノード材料よりも約0.5eV以上ではないIPを有することはさらに好ましい。同様な考慮が、正孔が注入されているどの層にも適用される。HIL材料はさらに、OLEDの正孔輸送層において一般的に使用される従来の正孔輸送材料からは、このようなHIL材料が従来の正孔輸送材料の正孔伝導率より実質的に低い正孔伝導率を有してもよいということで区別される。本発明のHILの厚さは、アノード層の表面を平面化するかまたは濡らすことを助けるために十分に厚くしてもよい。例えば、10nmという小さな厚さが非常に平滑なアノード表面のために受け入れ可能である。しかし、アノード表面は非常に粗くなる傾向があるので、50nmまでのHIL厚が望ましい場合もある。
【0109】
連続製作工程中に下にある層を保護するために、保護層を使用してもよい。例えば、金属または金属酸化物の頂部電極を製作するために使用される工程は有機層を損傷させることがあり、このような損傷を減少または排除するために保護層を使用してもよい。デバイス400では、保護層455が、カソード460の製作中に下にある有機層に対する損傷を減らすことができよう。保護層が、デバイス400の動作電圧を大幅に増加させるように、これが輸送する形式の電荷(デバイス400内の電子)のために高い担体移動度を有することは好ましい。CuPc、BCP、およびさまざまな金属フタロシアニンは、保護層に使用してもよい材料の例である。その他の材料および材料の組合せも使用できる。保護層455の厚さは、有機保護層460を付着した後に発生する製作工程による下に位置する層への損傷が非常に少ないか皆無であるように十分な厚さであっても、デバイス400の動作電圧を大幅に増加させるほど厚くないことが好ましいが、保護層455の導電性を増加するためにこれをドープしてもよい。例えば、CuPcまたはBCP保護層460をLiでドープしてもよい。保護層のさらに詳細な説明は、全体が参照によって組み込まれているLu他の米国特許出願第09/931948号に見ることができる。
【0110】
別に特記されない場合は、さまざまな実施形態の層のいずれも、任意の適当な方法によって付着してもよい。有機層については、好ましい方法としては、全体が参照によって組み込まれている米国特許第6013982号および同第6087196号に記載されているような熱蒸発インクジェット、全体が参照によって組み込まれているForrest他の米国特許第6337102号に記載されているような有機気相成長法(OVPD)、全体が参照によって組み込まれている米国特許出願第10/233470号に記載されているような有機気相ジェットプリンティング(OVJP)による蒸着が含まれる。その他の適当な付着方法には、スピコーティングおよびその他の溶液ベースの工程が含まれる。溶液ベースの工程は、窒素または不活性雰囲気の中で実施されることが好ましい。その他の層については、好ましい方法には熱蒸発は含まれる。好ましいパターン化方法には、マスクを通す蒸着、全体が参照によって組み込まれている米国特許第6294398号および同第6468819号に記載されているような冷間圧接、およびインクジェットおよびOVJDなどの蒸着方法にどれかに関連するパターン化が含まれる。さらにその他の方法を使用してもよい。付着しようとする材料を、特定の蒸着方法と競合的にするように改質してもよい。例えば、分岐または非分岐の、好ましくは少なくとも3個の炭素を含むアルキル基およびアリル基などの置換基を小分子の中で使用して、これらの溶液プロセスに耐える能力を向上させてもよい。20個およびそれ以上の炭素を有する置換基を使用してもよく、3〜20個の炭素は好ましい範囲である。非対称構造を有する材料は、非対称材料は再結晶する傾向が低いので、対称構造を有するものよりすぐれた溶液加工性を有することがある。小分子の溶液プロセスに耐える能力を向上させるために、デンドリマ置換基を使用してもよい。
【0111】
本明細書に開示された分子は、本発明の範囲から逸脱することなく多くの異なる方法で置換されてもよい。例えば、置換基が加えられた後に二座配位子の1つまたは複数が共に連結されて、例えば四座配位子または六座配位子を形成するように、3個の二座配位子を有する化合物に置換基が加えられてもよい。その他のこのような連結が形成されてもよい。この形式の連結は、当技術分野で一般に「キレート効果」として理解されているものによって、連結のない類似の化合物に関して安定性を増すことがあると信じられている。
【0112】
本発明の実施形態にしたがって製作されたデバイスを、フラットパネルディスプレイ、コンピュータモニタ、テレビジョン、広告掲示板、内部および外部照明および/または信号のための明り、ヘッドアップディスプレイ、完全透明ディスプレイ、可とう性ディスプレイ、レーザプリンタ、電話、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、ラップトップコンピュータ、ディジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダ、マイクロディスプレイ、車両、大面積の壁、劇場またはスタジアムのスクリーン、または標識を含む、広範囲のさまざまな消費者用製品に組み込んでもよい。受動マトリックスおよび能動マトリックスを含む、本発明にしたがって製作されたデバイスを制御するために、さまざまな制御機構を使用してもよい。デバイスの多くが、18度C〜30度Cなどの人間にとって快適な温度範囲において、さらに好ましくは室温(20〜25度C)において使用することを意図されている。
【0113】
本発明を特定の実施例および好ましい実施形態に関して説明したが、本発明がこれらの実施例と実施形態に限定されるものではないことが理解される。したがって本発明は、当業者には明らかになるように、本明細書に説明された特定の実施例と好ましい実施形態からの変形を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】アノード、アノードスムージング層、ドナー層、アクセプタ層、遮断層、およびカソードを含む有機PVデバイスを示す図である。
【図2】光活性ファイバを示す図である。
【図3】遮断層を含む光活性ファイバを示す図である。
【図4】有機発光デバイスを示す図である。
【符号の説明】
【0115】
100 有機感光性光電子デバイス
110 基板
115 アノード
120 アノードスムージング層
125 ドナー層
130 アクセプタ層
135 遮断層
140 カソード
200 光活性ファイバ構造
202 支持要素
204 第1電極
206 有機層
208 第2電極
210 補助導体
212 外部層
300 光活性ファイバ構造
320 非光活性励起子遮断層
400 有機発光デバイス
410 基板
415 アノード
420 正孔注入層
425 正孔輸送層
430 電子遮断層
435 発光層
440 正孔遮断層
445 電子輸送層
450 電子注入層
455 保護層
460 カソード
462 第1導電層
464 第2導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極を含む導電性コアと、
前記コアを取り囲み、前記第1電極に電気的に接続された有機層と、
前記有機層を取り囲み、前記有機層に電気的に接続された透明第2電極と
を含むことを特徴とする構造。
【請求項2】
前記コアが、非導電性支持要素と、前記非導電性支持要素を取り囲む導電性第1電極とを含むことを特徴とする請求項1に記載の構造。
【請求項3】
前記支持要素がナイロンファイバを含むことを特徴とする請求項2に記載の構造。
【請求項4】
前記支持要素が光ファイバを含むことを特徴とする請求項2に記載の構造。
【請求項5】
前記導電性コアが金属ワイヤを含むことを特徴とする請求項1に記載の構造。
【請求項6】
前記第2電極に電気的に接続された導電性補助導体をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の構造。
【請求項7】
前記補助導体が前記コアの軸に実質的に平行な軸を有することを特徴とする請求項6に記載の構造。
【請求項8】
前記補助導体が、前記第2電極の少なくとも周囲の周りに1デューティサイクルで前記第2電極に巻きつけられていることを特徴とする請求項6に記載の構造。
【請求項9】
前記補助導体が、金属ワイヤ、金属化されたワイヤ、金属リボン、金属化されたリボン、および金属被覆のうちの1つであることを特徴とする請求項6に記載の構造。
【請求項10】
前記補助導体が前記第2電極を取り囲む導電体の編組であることを特徴とする請求項6に記載の構造。
【請求項11】
前記第1電極が、銀、金、銅、およびアルミニウムから成る群から選択された材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の構造。
【請求項12】
前記第2電極が、PEDOTおよびPSSから成る群から選択された材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の構造。
【請求項13】
前記第1電極、前記有機層、および前記第2電極が、感光性デバイスを含み、前記有機層が光活性領域を含むことを特徴とする請求項1に記載の構造。
【請求項14】
前記有機層が非光活性領域をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の構造。
【請求項15】
前記非光活性領域が励起子遮断層であることを特徴とする請求項14に記載の構造。
【請求項16】
前記光活性領域が、一対の有機材料の間にヘテロ接合を含み、前記一対の有機材料は、PCBM/MDMO-PPV、CuPc/C60、およびCuPc/PTCBIから成る群から選択されることを特徴とする請求項13に記載の構造。
【請求項17】
前記第2電極を取り囲む外部層をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の構造。
【請求項18】
前記第1電極、前記有機層、および前記第2電極が、有機発光デバイスを含み、前記有機層が発光層を含むことを特徴とする請求項1に記載の構造。
【請求項19】
前記有機層が非発光層をさらに含むことを特徴とする請求項18に記載の構造。
【請求項20】
前記有機層が、前記発光層に隣接して配置されかつ前記発光層と物理的に接触している第1および第2遮断層をさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の構造。
【請求項21】
複数のファイバを含む織物であって、
前記ファイバの各々が
第1電極を含む導電性コアと、
前記コアを取り囲みかつ前記第1電極に電気的に接続された第1有機層と、
前記有機層を取り囲みかつ前記有機層に電気的に接続された透明第2電極と
をさらに含むことを特徴とする織物。
【請求項22】
第1電極を含む導電性コアを有機層で被覆するステップと、
前記有機層を覆って第2電極を堆積させるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
前記第2電極を覆って導電性導体を付着するステップ
をさらに含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1電極、前記有機層、および前記第2電極が感光性デバイスを含み、前記有機層が光活性領域を含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記第1電極、前記有機層、および前記第2電極が有機発光デバイスを含み、前記有機層が発光層を含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記導電性コアがディップコーティングによって前記有機層で被覆されることを特徴とする請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−507133(P2008−507133A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521501(P2007−521501)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/023963
【国際公開番号】WO2006/019576
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(591003552)ザ、トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシティ (68)
【Fターム(参考)】