説明

フィラメントランプ

【課題】 複数のフィラメントが発光管の内部に配設されたフィラメントランプにおいて、フィラメントの端部から放射される光の強度を落とすことなく、フィラメントの端部が不所望に変形することを防止すること。
【解決手段】 両端に封止部が形成された発光管の内部に、複数のフィラメントがそれぞれ発光管の管軸方向に順次に並んで配設され、各フィラメントの両端に一対の内部リードが連結され、各内部リードが封止部に配設された複数の金属箔の各々に対して電気的に接続され、前記内部リードは、前記フィラメントに連結される端部に前記発光管の径方向に広がる拡径部が形成され、前記拡径部は、当該拡径部を有する内部リードに連結されたフィラメント以外の他のフィラメントに連結された前記内部リードに、絶縁材を介して当接することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はフィラメントランプに関するものであり、特に、被処理体を加熱するために用いられるフィラメントランプに係わるものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ製造工程における、例えば成膜、酸化、不純物拡散、窒化、膜安定化、シリサイド化、結晶化、およびイオン注入活性化などの様々なプロセス、並びに、太陽電池の製造工程における様々なプロセスを行う急速熱処理(以下、「RTP:Rapid Thermal Processing」ともいう。)に用いられる加熱処理装置としては、例えば光透過性材料からなる発光管の内部にフィラメントが配設されてなる白熱ランプなどの光源からの光照射によって、被処理体に接触することなくこれを加熱することのできる光照射式の加熱処理装置が広く利用されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
本発明者等は、このような光照射式の加熱処理装置の光源として用いられる次のような構成を有するフィラメントランプを提案している(特許文献3参照)。
【0004】
このフィラメントランプを、図10を参照して説明すると、両端が端部封止部2a、2bで気密に封止された直管状の発光管1内には、コイル状のフィラメント4、5、6が発光管1の管軸方向に伸びるよう順次に並んで配置され、各フィラメント4、5、6の両端には、それぞれ給電用の内部リード4a、4b、5a、5b、6a、6bが連結されている。
【0005】
上記の各フィラメントの内部リードは、それぞれ両端封止部に延びて、個別に金属箔を介して外部リードに電気的に接続されている。
即ち、各フィラメント4、5、6の一端側の内部リード4a、5a、6aはそれぞれ一端側封止部2aの金属箔7a、8a、9aを介して、一端側の外部リード10a、11a、12aに電気的に接続されている。
同様に、他端側の内部リード4b、5b、6bはそれぞれ他端側封止部2bの金属箔7b、8b、9bを介して、他端側の外部リード10b、11b、12bに電気的に接続されている。
【0006】
そして、各フィラメント4、5、6は、これら各外部リード10a、10b、11a、11b、12a、12bを介してそれぞれ別個の給電装置13、14、15に接続されていることにより、個別に給電可能とされている。
なお、16、17、18はそれぞれ各フィラメント4、5、6の内部リード4b、5a、5b、6aに被嵌された絶縁管で、それぞれ他のフィラメント4、5、6に対向する部位に設けられている。
また、19、20、21は、発光管1の内壁と絶縁管16、17、18との間の位置において、発光管1の管軸方向に並設された環状のアンカーであって、各フィラメント4、5、6は、それぞれ、例えば2個のアンカーによって発光管1と接触しないよう支持されている。
【0007】
このような構成のフィラメントランプを用いた光照射式加熱処理装置によれば、複数のフィラメントに対して個別に給電できて各フィラメントの発光等の制御を個別に行うことができることから、例えば熱処理される被処理体上における場所的な温度変化の度合いの分布が被処理体の形状に対して非対称である場合であっても、当該被処理体の特性に応じた所望の放射照度分布で光照射することができる結果、被処理体を均一に加熱することができ、従って、被処理体における被照射面の全体にわたって、均一な温度分布を実現することができるという利点を有する。
【0008】
【特許文献1】特開平7−37833号公報
【特許文献2】特開2002−203804号公報
【特許文献3】特開2006−279008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のフィラメントランプは、上記したように、各フィラメント4、5、6の一端側の内部リード4a、5a、6aは、それぞれ一端側の封止部2aに配設された金属箔7a、8a、9aを介して、一端側の外部リード10a、11a、12aに電気的に接続されている。また、各フィラメント4、5、6の他端側の内部リード4b、5b、6bは、それぞれ他端側の封止部2bに配設された金属箔7b、8b、9bを介して、他端側の外部リード10b、11b、12bに電気的に接続されている。
このように、例えば、フィラメント4の近傍には、これと並ぶようにして、他のフィラメント5(6)に係る内部リード5a(6a)が配設されている。これらの内部リード5a(6a)は、フィラメントランプの点灯時において、図11(a)に示すようにフィラメント4からのエネルギー輻射を受けることで高温となって、図11(b)に示すように変形することがあった。これは、昇温に伴う熱膨張が部分的に異なったり、リード製作時の加工歪が解放されたりすることによる。このため、変形する方向は、重力方向とは無関係である。そして、内部リード5a(6a)が変形した場合は、当該内部リードに連結されたフィラメント5(6)の内部リード5a(6a)に連結された端部側が図11(b)に示すように変形することにより、フィラメントを5(6)を所望の位置(例えば、発光管1の管軸上)に配置することができないため、被処理体の被照射面におけるランプのフィラメントからの放射照度分布に悪影響を与える惧れがあった。
【0010】
このように、内部リードが変形することに起因してフィラメントの端部が変形することを防止するため、本出願人は、種々の対策を検討した。例えば、本出願人は、上記した環状のアンカー19(20、21)を、フィラメント5(6)の内部リード5a(6a)に連結された端部に設けた構成のフィラメントランプを試みに作製した(図示は省略)。
ところが、このような構成のフィラメントランプは、フィラメント5(6)の端部から、内部リード5a(6a)と環状のアンカーとの双方を介して放熱されることにより、フィラメント5(6)の端部の温度が低下し、フィラメント5(6)の端部から放射される光の強度が著しく低下することが判明した。
以上より、従来は、フィラメントの端部から放射される光の強度を落とすことなく、フィラメントの端部が変形することを防止することはできなかった。
【0011】
以上から、本発明の目的は、複数のフィラメントが発光管の内部に配設されたフィラメントランプにおいて、フィラメントの端部から放射される光の強度を落とすことなく、フィラメントの端部が変形することを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のフィラメントランプは、両端に封止部が形成された発光管の内部に、複数のフィラメントがそれぞれ発光管の管軸方向に順次に並んで配設され、各フィラメントの両端に一対の内部リードが連結され、各内部リードが封止部に配設された複数の金属箔の各々に対して電気的に接続され、
前記内部リードは、前記フィラメントに連結される端部に前記発光管の径方向に広がる拡径部が形成され、
前記拡径部の近傍には、当該拡径部を有する内部リード以外の他の内部リードが延伸し、
前記拡径部と、当該拡径部の近傍を延伸する前記内部リードとが、絶縁材を介して当接することを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明のフィラメントランプは、3つ以上の前記フィラメントが前記発光管の内部に配設され、前記封止部の直近に配置された端部側フィラメントに係る前記一対の内部リードが、共に前記端部側フィラメントの直近の同一封止部で保持され、前記端部側フィラメントの間に配置された中央側フィラメントに係る前記一対の内部リードが、互いに異なる前記封止部で保持されていることを特徴とする。
さらに、本発明のフィラメントランプは、前記絶縁物が前記内部リードの周囲に設けられていることを特徴とする。
さらに、本発明のフィラメントランプは、前記絶縁物が前記拡径部の周囲に設けられていることを特徴とする。
さらに、本発明のフィラメントランプは、前記絶縁物が石英ガラスからなる絶縁管であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明のフィラメントランプの内部リードは、フィラメントに連結される端部に発光管の径方向に広がる拡径部が形成されていることにより、フィラメントランプの点灯時において、当該内部リードの近傍に配設されたフィラメントからの輻射エネルギーを受けて高温になったとしても、不所望に変形することがない。したがって、内部リードに連結されたフィラメントの端部が、当該内部リードが不所望に変形することに起因して変形することが無いため、フィラメントを発光管の所望の位置に配設することができる。しかも、内部リードに形成された拡径部は、当該拡径部を有する内部リードに連結されたフィラメント以外の他のフィラメントに係る内部リードに、絶縁材を介して当接するため、拡径部と他のフィラメントに係る内部リードとが短絡することが無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明のフィラメントランプの全体の構成を示す斜視図、図2はフィラメントランプの平面図である。図3は、内部リードの構成を説明するための斜視図である。図4は、図1のA−A´線で径方向に切断した断面図である。
【0016】
発光管1内には、ハロゲンサイクルを行うためのハロゲンガスと不活性ガスが封入されているとともに、3つの独立したコイル状のフィラメント24、25、24が、発光管1の管軸L(以下、単に管軸ともいう)方向に順次に並んで配置されている。一端側の封止部2aに直近する端部側フィラメント24に連結された一対の内部リード24a、24bは、封止部2aから延在してそれぞれフィラメント24の端部に接続されている。これら内部リード24a、24bは共に、同一の封止部2aにおいて金属箔27a、27bと接続するように保持されている。
他端側の封止部2bに直近する端部側フィラメント24に関しても、上記と同様に、その内部リード24a、24bは、共に同一の封止部2b内で金属箔29a、29bと接続するように保持されている。
一方、管軸方向の中央に位置する中央側フィラメント25の内部リード25a、25bは、両端の封止部2a、2b方向に延在し、互いに異なる封止部2で金属箔28a、28bと接続するように保持されている。
金属箔27a、27b、28a、28b、29a、29bには、それぞれ外部リード30a、30b、31a、31b、32a、32bが接続されている。
フィラメント24、25、および、内部リード24a、24b、25a、25bは、例えばタングステンによって構成されている。
【0017】
また、発光管1の内部の、封止部2a、2b近傍には、ガラスブリッジ35、35が設けられている。該ガラスブリッジ35は、一対の円柱状ガラス部材35a,35bからなり、一対の円柱状ガラス部材35aと35bの間に内部リードを挟持した状態で、一対のガラス部材35a,35bを固着させることで形成されている。発光管1の一端側に配置されたガラスブリッジ35には、内部リード24a,24b,25aが挟持され、発光管1の他端側に配置されたガラスブリッジ35には、内部リード24a,24b,25bが挟持されている。
【0018】
図2と図3に示すように、双方の端部側フィラメント24の、中央側フィラメント25側の端部に連結された内部リード24bは、各端部側フィラメント24の端部に連結される直線状の連結部241bが、発光管1の管軸上に配置された状態で形成されている。連結部241bは、コイル状のフィラメント24の端部にかしめられることによって、フィラメント24に連結されている。この連結部241bに連続して、発光管1の径方向に伸びる直線状の径方向部242bが形成されている。この径方向部242bに連続して、発光管1の内壁に沿って湾曲する拡径部243bが形成されている。この拡径部243bに連続して、連結部241bと同じ方向に延伸して、封止部2aで保持される内部リード本体部244bが形成されている。すなわち、内部リード24bは、連結部241b、径方向部242b、拡径部243bおよび内部リード本体部244bを備える。
拡径部243bと発光管1の内壁面との間には、図4に示すように、拡径部243bと中央側フィラメント25に係る内部リード25a(内部リード本体部254a)とが接触して短絡することを防止するため、絶縁管33が配設される。したがって、拡径部243bは、発光管1の内径よりもやや小さい径を有する円の一部により形成される。
図4に示すように、内部リード24bは、発光管1の内壁に沿って湾曲した拡径部243bが発光管1の内壁に当接することにより、フィラメント24の変形を防止する。
【0019】
図2と図3に示すように、中央側フィラメント25の一端に連結された内部リード25aは、中央側フィラメント25に連結するための直線状の連結部251aが、発光管1の管軸上に配置された状態で形成されている。連結部251aは、コイル状のフィラメント25の端部に捩じ込まれることによって、フィラメント25に連結されている。この連結部251aに連続して、発光管1の径方向に伸びる直線状の径方向部252aが形成されている。この径方向部252aに連続して、発光管1の内壁に沿って湾曲する拡径部253aが形成されている。この拡径部253aに連続して、連結部251aと逆方向に延伸して、封止部2aで保持される内部リード本体部254aが形成されている。すなわち、内部リード25aは、連結部251a、径方向部252a、拡径部253a、内部リード本体部254aを備える。
拡径部253aは、内部リード24bの拡径部243bよりも径の大きい円の一部によって形成されており、後述する絶縁管を介することなく発光管1の内壁に直接的に当接することにより、中央側フィラメント25の端部が不所望に変形することを防止する。
【0020】
フィラメント25の他端に連結された内部リード25bについても、内部リード25aと同一の構成とされている。具体的には、図1において、252bは径方向部、253bは拡径部であり、図2において、251bは連結部、253bは拡径部、254bは内部リード本体部である。
【0021】
上記した内部リード24b、25aおよび25bは、例えば、1本の線状部材を曲げ加工することによって形成されることが好ましい。また、連結部241b(251a,251b)、径方向部242b(252a、252b)、拡径部243b(253a、253b)および内部リード本体部244b(254a、254b)を適宜の手段によって接合して構成することもできる。
【0022】
図2と図3に示すように、拡径部243bを有する内部リード24bに連結されたフィラメント24の近傍においては、当該フィラメント以外の他のフィラメント25の一端に連結された内部リード25a(内部リード本体部254a)が、封止部2aに向けて延伸している。
この一端側の内部リード本体部254aの周囲は、例えば、石英ガラスからなる絶縁管33によって被覆されている。拡径部243bと、その近傍を延伸する内部リード本体部254aとは、絶縁管33を介して当接している。絶縁管33を設けることにより、拡径部243bと、内部リード本体部254aとの絶縁が確保され、両者が接触して短絡することがない。
【0023】
図3に示すように、絶縁管33の全長は、径方向部243bを管軸方向に投影した全長よりやや長い程度とされることが好ましい。
すなわち、絶縁管33の全長は、拡径部243bと内部リード本体部254aとが短絡することを十分に防止することができれば良いので、必要以上に長いことは好ましくない。絶縁管33の全長が長いと、絶縁管の内面に異物が介在しやすくなるばかりか、絶縁管33がフィラメント24の直近に配置されることになって、被照射面における放射照度分布に悪影響を与える虞があるからである。
【0024】
中央側フィラメント25の一端に連結された内部リード25aの内部リード本体部254aには、コイル状の規制部材34が設けられている。このような規制部材34を設けることにより、絶縁管33が管軸方向に移動することを防止することができる。
規制部材34は、例えばスポット溶接などによって上記線状部254aに固定されている。
【0025】
中央側フィラメント25の他端に連結された内部リード25bについても、図1、2に示すように、内部リード本体部254bの周囲は、内部リード本体部254aと同様にして、石英ガラスからなる絶縁管33によって被覆されていると共に、コイル状の規制部材34が設けられている。規制部材34は、コイル状形状に限らず、絶縁管33の移動を防止できればよく、線状または板状でもかまわない。
拡径部243bと、その近傍を延伸する内部リード本体部254bとは、絶縁管33を介して当接しており、絶縁管33により両者の絶縁が確保されている。
【0026】
このフィラメントランプは、3つの互いに独立したフィラメント24、25、24に、それぞれ独立に給電される構成とされている。
すなわち、図1、2に示すように、発光管1の一端側に配置されたフィラメント24に係る内部リード24a,24bは、それぞれ、金属箔27a,27bを介して外部リード30a,30bに電気的に接続されている。発光管1の中央側に配置されたフィラメント25に係る内部リード25a,25bは、それぞれ、封止部2aに埋設された金属箔28a,封止部2bに埋設された金属箔28bを介して外部リード31a,31bに電気的に接続されている。発光管1の他端側に配置されたフィラメント24に係る内部リード24a,24bは、それぞれ、金属箔29a,29bを介して外部リード32a,32bに電気的に接続されている。
そして、このフィラメントランプは、外部リード30aと30bとに対して給電装置36が接続され、外部リード31aと31bとに対して給電装置37が接続され、外部リード32aと32bとに対して給電装置38が接続されている。つまり、このフィラメントランプは、各フィラメント24,25,24に対して、互いに異なる給電装置36、37、38によって独立に給電される構成とされている。
【0027】
本発明のフィラメントランプは、発光管1の一端側に配置された端部側フィラメント24に連結された一対の内部リード24a,24bが同一の封止部2aで保持されると共に、発光管1の他端側に配置された端部側フィラメント24に連結された一対の内部リード24a,24bが同一封止部2bで保持された構成とされている。このような構成とすることにより、中央側フィラメント25の近傍に内部リードが延伸しないため、被処理体の直上に位置するフィラメント25からの照射光は、内部リードによって遮られることがない。したがって、本発明のフィラメントランプは、被処理体の被照射面における放射照度分布を均一にすることができる。
なお、各封止部2a,2bの近傍に位置する2つのフィラメント24,24の近傍を延在する内部リードの本数に関しては、従来技術と同数であって、これらのフィラメントは一般に被処理体を載置する載置台の周辺のガードリング(図示せず)に対応することになり、被処理体の被照射面における放射照度分布が、該内部リードにより受ける影響は少ない。
【0028】
しかも、端部側フィラメント24に連結された内部リード24bには、発光管1の径方向に広がる拡径部243bが形成されているため、次のような効果を期待することができる。
前述したように、発光管1の両端に配置されたフィラメント24の近傍を延伸する内部リード24bは、フィラメント24からの輻射エネルギーを受けることによって、内部リード本体部244bが高温状態になったときに、熱膨張によって変形しようとする力が生じる。同様に、フィラメント24の近傍を延伸する内部リード25a,25bは、フィラメント24からの輻射エネルギーを受けることによって、熱膨張によって変形しようとする力が生じる。
然るに、本発明のフィラメントランプは、発光管1の径方向に広がる拡径部243bが端部側フィラメント24に係る内部リード24bに形成されているため、内部リード24bが高温状態になって変形しようとしても、拡径部243bが発光管1の内壁に当接することによって、内部リード24bが不所望に変形することが確実に防止される。同様に、本発明のフィラメントランプは、発光管1の径方向に広がる拡径部253a,253bが、中央側フィラメント25に係る各々の内部リード25a,25bに形成されているため、内部リード25a,25bが不所望に変形することが確実に防止される。
このように、本発明のフィラメントランプは、当該フィラメントランプの点灯時に、各フィラメントに連結された内部リードが不所望に変形することが無いため、各フィラメントの端部が変形することを確実に防止することができる。
しかも、本発明のフィラメントランプにおいては、各フィラメントの端部が拡張部を伴ったリードに接続されているため、フィラメント自体の端部には、これを支えるためのアンカーを設置する必要がない。したがって、アンカーからの熱の逃げが生じないので、低温状態になることもないため、各フィラメントの端部から放射される光の強度が落ちることがない。
したがって、本発明のフィラメントランプは、各フィラメントを発光管1内における所望の位置に確実に配置することができるため、被処理体の被照射面における放射照度分布を均一にすることができる。
【0029】
次に、図5は、本発明のフィラメントランプの他の実施形態に係る要部を拡大して示す要部拡大図である。同図(a)は隣り合う2つの内部リードの斜視図であり、(b)は隣り合う2つの内部リードを上方から見た図である。
同図に示すフィラメントランプは、以下に説明するように、発光管1の両端に位置する端部側フィラメント24に連結された一対の内部リード24a,24bが互いに逆方向に延伸していることが、図1に示すフィラメントランプと異なっている。
言い換えると、図5のフィラメントランプは、図10に示す従来のフィラメントランプにおいて、内部リードの形状を改良したものである。図5において、24は図10のフィラメントランプのフィラメント4に対応し、25は図10のフィラメントランプのフィラメント5に対応する。
【0030】
図5に示すように、フィラメント24の両端に連結された一対の内部リード24a,24bは、互いに逆方向に延伸する。具体的には、フィラメント24の一端に連結された内部リード24aが封止部2aの方向へ延伸し、フィラメント24の他端に連結された内部リード24bが封止部2bの方向へ延伸している。
フィラメント25の両端に連結された一対の内部リード25a,25bについても、フィラメント24と同様に、互いに逆方向に延伸する。具体的には、フィラメント25の一端に連結された内部リード25aが封止部2aの方向へ延伸し、フィラメント25の他端に連結された内部リード25bが封止部2bの方向へ延伸している。
【0031】
内部リード24b,25aは、図1〜3に示すフィラメントランプの内部リード24b,25aと同様の形状を有する。すなわち、図5において、241b,251aが連結部、242b,252aが径方向部、243b,253aが拡径部、244b,254aが内部リード本体部である。拡径部243b,253aは、後述するように、絶縁管33を介して内部リード本体部254a,244bに当接するため、発光管1の内径よりも若干小さい径を有する円の一部により形成されている。
【0032】
内部リード24bの拡径部243bの近傍には、フィラメント25に連結された内部リード25aの内部リード本体部254aが延伸している。内部リード本体部254aは、絶縁管33で被覆されていると共に、絶縁管33が管軸方向に移動することを規制する規制部材34が固定されている。内部リード本体部254aと拡径部243bとは、絶縁管33を介して当接しており、絶縁管33により絶縁されている。
内部リード25aの拡径部253aの近傍についても、フィラメント24に連結された内部リード24bの内部リード本体部244bが延伸している。内部リード本体部244bは、絶縁管33で被覆されていると共に、絶縁管33が管軸方向に移動することを規制する規制部材34が固定されている。内部リード本体部244bと拡径部253aとは、絶縁管33を介して当接しており、絶縁管33により絶縁されている。
【0033】
このような図5に示すフィラメントランプは、当該フィラメントランプの点灯時に、各フィラメントに連結された内部リードが不所望に変形することが無いため、各フィラメントの端部が変形することを確実に防止することができる。したがって、同図に示すフィラメントランプは、各フィラメントを発光管1内における所望の位置に確実に配置することができるため、被処理体の被照射面における放射照度分布を所望する分布にすることができる。
【0034】
次に、図6は、本発明のフィラメントランプの他の実施形態に係る要部を拡大して示す要部拡大図である。同図は、図5に示す内部リードを改良したものである。
同図において、24,25はフィラメント、241b,251aは連結部、242b,252aは径方向部、243b,253aは拡径部、244b,254aは内部リード本体部である。内部リード24bは、直線状の連結部241bに連続する径方向部242bがフィラメント25に対し逆方向へ折返された形状とされている。これにより、当該径方向部242bに連続する拡径部243bが、フィラメント24の周囲を囲む状態で配置されている。244bは、拡径部243bに連続する内部リード本体部である。
内部リード25aについても、直線状の連結部251aに連続する径方向部252aがフィラメント24に対し逆方向へ折返された形状とされている。これにより、当該径方向部252aに連続する拡径部253aが、フィラメント25の周囲を囲む状態で配置されている。254aは、拡径部253aに連続する内部リード本体部である。
なお、図6において、33は絶縁管、34は絶縁管33が管軸方向に移動することを規制する規制部材である。
【0035】
上記した図6に示す内部リードの形状によれば、以下に図7を用いて説明するような効果を期待することができる。図7(a)は、内部リード24b,25aの径方向部242b,252aが折返されていない形状とされ、図7(b)は、内部リード24b,25aの径方向部242b,252aが折返された形状とされている。
以下では、隣り合う拡径部243bと253aとの離間距離Xが図7の(a),(b)共に等しいことを前提とする。離間距離Xは、隣り合う拡径部243bと253aとの間で沿面放電が発生することのないように決められた距離である。
隣り合う拡径部243bと253aとの離間距離Xが図7の(a),(b)共に等しい場合、図7(b)に示すものは、図7(a)に示すものと比べて、隣り合うフィラメント24と25との間の離間距離を小さくすることができる。すなわち、図7(b)における隣り合うフィラメント24,25間の離間距離Y2は、図7(a)における隣り合うフィラメント24,25間の離間距離Y1よりも小さい。
このように、内部リードの形状を図6に示す形状にすることにより、隣り合う拡径部間で不所望な放電を生じることがなく、かつ、隣り合うフィラメント間の離間距離を小さくすることができるため、隣り合うフィラメント間に形成される非発光領域を最小限の長さにすることができる。
【0036】
次に、図8および図9は、端部側フィラメントと中央側フィラメントとの間の絶縁を確保するための絶縁物に関する種々の形態を示す。上記では、絶縁管を用いることにより、拡径部とその近傍を延伸する他のフィラメントに係る内部リード本体部との絶縁を確保する形態について説明した。図8および図9では、上記の絶縁を確保するために絶縁管以外を用いた形態について説明する。
【0037】
図8において、24b,25aは内部リード、243b,253aは拡径部、254aは内部リード本体部、34は規制部材である。
図8(a)に示す絶縁物は、内部リード25aの内部リード本体部254aの全周に対し石英粉末を溶射することによって形成されている。石英粉末は、必ずしも内部リード本体部254aの全周にわたって溶射する必要はない。石英粉末は、内部リード24bの拡径部243bと、これの近傍を延伸する内部リード本体部254aとの間で絶縁を確保することができる範囲に溶射すれば良い。
図8(b)に示す絶縁物は、傾斜機能材料を内部リード25aの内部リード本体部254aの周囲に巻き付けることによって形成されている。
図8(c)に示す絶縁物は、樋状に形成された一対の石英ガラス片によって内部リード25aの内部リード本体部254aの周囲を挟んだ状態で、当該一対のガラス片を溶融させることによって形成されている。
図8(a)〜(c)に示す絶縁物の管軸方向における全長は、上記した絶縁管33と同一とすることができる。
なお、図8では、便宜のため、拡径部243bの近傍を延伸する内部リード本体部254aの周囲に絶縁物を設けることについて説明した。当然のことながら、他の拡径部の近傍を延伸する他の内部リード本体部に対しても、上記したのと同様にして絶縁物を設けることができる。
【0038】
また、絶縁物は、必ずしも内部リードの内部リード本体部の周囲に設ける必要は無い。図9に示すように、絶縁物を内部リード本体部の近傍に配置される拡径部の周囲に設けることもできる。
図9(a)は、石英ビーズまたはセラミックビーズを、内部リード本体部254aの近傍に配置された径方向部243bの周囲に設けた例である。
図9(b)は、石英粉末を、内部リード本体部254aの近傍に配置された径方向部243bの周囲に設けた例である。
なお、図9では、便宜のため、絶縁物を拡径部243bの周囲に設けることについて説明した。当然のことながら、他の内部リード本体部の近傍に配置された他の拡径部に対しても、上記したのと同様にして絶縁物を設けることができる。
【0039】
なお、便宜のため、上記では、フィラメント数が3つの場合について説明した。本発明は、当然のことながら、フィラメント数が2つ以上のものの全てについて適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のフィラメントランプの構成の概略を示す斜視図である。
【図2】本発明のフィラメントランプの平面図である。
【図3】図1のフィラメントランプの部分説明図である。
【図4】図1のフィラメントランプのA−A´線断面図である。
【図5】本発明のフィラメントランプの他の実施形態に係る部分説明図である。
【図6】本発明のフィラメントランプの他の実施形態に係る部分説明図である。
【図7】図6に示す実施形態の効果を説明するための部分説明図である。
【図8】絶縁物の種々の形態を説明するための部分説明図である。
【図9】絶縁物の種々の形態を説明するための部分説明図である。
【図10】従来のフィラメントランプの構成の概略を示す斜視図である。
【図11】従来のフィラメントランプにおいて生じる問題を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1 発光管
2a、2b 封止部
24、24 端部側フィラメント
25 中央側フィラメント
4a、5a、6a、4b、5b、6b、24a、24b、25a、25b 内部リード
241b、251a、251b 連結部
242b、252a、252b 径方向部
243b、253a、253b 拡径部
244b、254a、254b 内部リード本体部
27a、27b、28a、28b、29a、29b 金属箔
30a、30b、31a、31b、32a、32b 外部リード
33 絶縁管
34 規制部材
35 ガラスブリッジ
36、37、38 給電装置
4、5、6 フィラメント
7a、7b、8a、8b、9a、9b 金属箔
10a、10b、11a、11b、12a、12b 外部リード
16、17、18 絶縁管
19、20、21 アンカー
13、14、15 給電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端部に封止部が形成された発光管の内部に、複数のフィラメントがそれぞれ発光管の管軸方向に順次に並んで配設され、各フィラメントの両端に一対の内部リードが連結され、各内部リードが封止部に配設された複数の金属箔の各々に対して電気的に接続されたフィラメントランプにおいて、
前記内部リードは、前記フィラメントに連結される端部に前記発光管の径方向に広がる拡径部が形成され、
前記拡径部の近傍には、当該拡径部を有する内部リード以外の他の内部リードが延伸し、
前記拡径部と、当該拡径部の近傍を延伸する前記内部リードとが、絶縁材を介して当接することを特徴とするフィラメントランプ。
【請求項2】
3つ以上の前記フィラメントが前記発光管の内部に配設され、
前記各封止部の直近に配置された端部側フィラメントに係る前記一対の内部リードが、共に前記端部側フィラメントの直近の同一封止部で保持され、
前記端部側フィラメントの間に配置された中央側フィラメントに係る前記一対の内部リードが、互いに異なる前記封止部で保持されていることを特徴とする請求項1に記載のフィラメントランプ。
【請求項3】
前記絶縁物が、前記内部リードの周囲に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフィラメントランプ。
【請求項4】
前記絶縁物が、前記拡径部の周囲に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフィラメントランプ。
【請求項5】
前記絶縁物が、石英ガラスからなる絶縁管であることを特徴とする請求項3または請求項4に記載のフィラメントランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−55977(P2010−55977A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220754(P2008−220754)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)