説明

フィラメント又はファイバ

本発明はフィラメント又はファイバに係る。当該フィラメント又はファイバは、液晶エラストマ、及びアクチュエータを有する。該アクチュエータは、フィラメント又はファイバを作動させ、フィラメント又はファイバの寸法において変化をもたらすことを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメント又はファイバ、特にはファブリック又は衣類における含有に対して適切であるフィラメント又はファイバに係り、衣類又はファブリックの特性のうち1つ又はそれ以上に変化をもたらす目的を有する。
【背景技術】
【0002】
ファイバ又はフィラメントの寸法に変化をもたらす多種の方法は、既知である。本来の寸法の比率として表されるファイバの寸法における変化は、歪みとして既知である。ファイバ内での寸法の変化を引き起こすようアクチュエータを活用することは、機知である。しかしながら、最も知られている材料は、非常に限られた歪みのみ、即ち、刺激に応じる非常に限られた移動又は形状変化のみを示す。例えば、圧電性材料は1%より少ない歪みを示し得、形状記憶合金は8%より少ない歪みを示し、また、強誘電性ポリマは5%より少ない歪みを示す。
【0003】
イオン・ポリマ・ゲル及び誘電性エラストマ等の著しくより大きい歪みを有する材料は、既知である。しかしながら、これらの材料は、通常は液体の形状であるイオン導体を必要とするか、あるいは、10V/ミクロンのオーダを有する極めて強い電界を必要とするかのいずれかである不利点を有する。大きい線形歪みを有する材料は、多くない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、フィラメント又はファイバの寸法がアクチュエータに応じて制御可能且つ可逆的に変更され得るフィラメント又はファイバを与える、ことを目的とする。
【0005】
本発明は更に、比較的大きい歪みがフィラメント又はファイバにおいて誘発され得るフィラメント又はファイバを与える、ことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、液晶エラストマ及びアクチュエータを有するフィラメント又はファイバが与えられる。該アクチュエータは、フィラメント又はファイバの作動がフィラメント又はファイバの寸法において変化をもたらし得るようにする。
【0007】
望ましくは、フィラメント又はファイバの作動は、フィラメント又はファイバの線の寸法又は軸方向における変化をもたらす。かかる線の寸法における変化は、本来の線の寸法の比率として表される際、線形歪みとして既知である。
【0008】
液晶エラストマは、機能長鎖エラストマ、複数のメソゲニック側鎖、及び架橋剤を有する。
【0009】
メソゲニック側鎖を形成するメソゲンは、液晶活性基である。
【0010】
架橋剤は、長鎖エラストマを互いに対して結び付け、また、液晶活性であり得る。
【0011】
液晶が等方相を液晶相から分離する等方相境界を有する、ことは既知である。
【0012】
液晶エラストマの性質により、特には液晶のオーダリング(ordering)の結合、及び長鎖エラストマの構造により、エラストマの長さは、液晶相が液相から等方相境界を通る際に減少する。
【0013】
工程は可逆性であるため、等方相から液晶相まで、材料は再度拡張する。
【0014】
液晶が等方相から液晶相に通過する際300%拡張する、ことは既知である。
【0015】
有利には、メソゲニック側鎖のうち少なくとも複数は、位置を合わせられる。大きな一軸収縮及び拡張に対しては、実質的に全てのメソゲニック基を位置合わせすることが求められる。このようにして、相変化によって誘発される変化がエラストマにわたって単一指向性であるため、局所歪みは、大きな全体歪みをもたらすよう加えられ得る。位置合わせされた液晶エラストマは、液単結晶エラストマ(LSCE)(liquid single-crystal elastomers)と称される。
【0016】
液晶等方相転移は、一般的には、温度によって誘発され、その値はメソゲニック側鎖の種類、架橋剤の種類、及びこれら2つの合成物の濃縮率に依存して調整され得る。これによって、室温又はそれを下回る温度から、100℃より高い温度までの、大きな範囲の転移温度が可能となる。
【0017】
例えば、4’−メトキシフェニル−4−(1−ブテンオキシ)ベゾアーテ(bezoate)がメソゲニック側鎖として使用される際、ネマチック(又はスメクチック)−等方相転移温度(the nematic (or smectic) to isotropic phase transition temperature)は、ブテンオキシ基をエテネオキシ基に変更することによって25度を上回って低下され得る。同様に、該温度は、ブテンオキシ基をヘキセネオキシ基に変更することによって約25度上昇され得る。加えて、本例に対する主要の鎖(main−chain)の長さの単位あたりのメソゲニック側鎖の数の増大は、一般的に、ネマチック(又はスメクチック)−等方相転移温度を増大させる。
【0018】
有利には、アクチュエータは、ファイバ又はフィラメントに沿って軸方向に延在する電極を有する。
【0019】
望ましくは、電極は弾性である。これによって該電極は、ファイバが作動時に拡張及び収縮するよう拡張及び収縮し得る。
【0020】
弾性の電極は、例えば、波形であり得る。
【0021】
有利には、電極は、クロム金を有する。
【0022】
5nm乃至10nmの厚さを有するクロム金膜は、柔軟電極を形成するよう電子ビーム蒸着によってファイバ又はフィラメント上へと蒸着され得る。かかる電極は、20%より大きい歪みまで導電性のままであり得る。かかるフィルムは、フィラメント又はファイバに対して均質に塗布され得る。
【0023】
望ましくは、電極は、少なくとも部分的にファイバ又はフィラメントの長さに沿って延在する螺旋形ワイヤを有する。
【0024】
電極は、実質的にフィラメント又はファイバの外側表面に沿って延在し得る。あるいは、電極は、ファイバ又はフィラメント内において延在し得る。電極は、ファイバ又はフィラメント内において延在する際、ファイバ又はフィラメントの軸と実質的に同軸上に延在し得る。
【0025】
便利には、アクチュエータは、導電種(conducting species)を有する。導電種は、例えばカーボンファイバ又は導電性ポリマであり得る。
【0026】
上述された種類のアクチュエータは、ファイバ又はフィラメントにおいてオーム加熱を引き起こすよう使用され得る。かかるフィラメント又はファイバでは、液晶エラストマにおいて等方相変化が温度によって誘発される。
【0027】
液晶エラストマは、ポリ(メチルハイドロゲンシロキサン)を有するエラストマ基幹、4−ブタ(but)−3−エニルオキシベンゾン酸4−メトキシフェニルエステルを有する側鎖メソゲン、及び、例えば、ネマチック特性を有する1−4(ヒドロキシ−4’−ビフェニル)−2−[4−(10−ウンデセニルオキシ)フェニル]ブタンをベースとするポリエーテルを有する架橋剤、を有し得る。
【0028】
有利には、アクチュエータは、各々が互いから隔てられる第1及び第2の電極を有する。かかる電極の配置は、ファイバにわたって電界を適用するよう、故にファイバが電気的にアドレスされ得るよう、使用され得る。かかるフィラメント又はファイバでは、液晶エラストマにおいて液晶相の状態(例えばスメクチック)は電界の適用によって変更される。このため、メソゲンは、キラル原子を有して必要とされる。例えば、(2S)−2−メチルブチル4−(4’−ハイドロオキシベンゾイロキシ)ベンゾアーテである。
【0029】
便利には、第1及び第2の電極の各々は、実質的にフィラメント又はファイバの外側表面に沿って延在する。
【0030】
あるいは、第1の電極は、実質的にフィラメント又はファイバの外側表面に沿って延在し、第2の電極は、フィラメント又はファイバ内において延在する。他の実施例では、第1及び第2の電極のいずれも、フィラメント又はファイバ内において延在し得る。
【0031】
あるいは、第1及び第2の電極は各々、フィンガー電極を有する。かかる配置は、ファイバの長さ方向に沿って電界を誘発するよう使用され得る。
【0032】
望ましくは、第1及び第2の電極の各々は、弾性である。有利には、第1及び第2の電極の少なくとも一方は、波形である。便利には、第1及び第2の電極の少なくとも一方は、クロム金を有する。第1及び第2の電極の一方又は両方は、5nm乃至10nmの厚さを有するクロム金膜から形成され得る。かかる電極は、20%より大きい歪みに対して導電性を保持し得る。かかる膜は、フィラメント又はファイバに対して均質に適用され得る。
【0033】
望ましくは、液晶エラストマは、強誘電性液晶エラストマ、望ましくは液単結晶エラストマを有する。
【0034】
かかる材料において、相転移及び材料の活性(actuation)は、電界の適用によって誘発される。
【0035】
大変大きな横方向電気歪みは、強誘電性液晶エラストマ、望ましくは強誘電性液単結晶エラストマを使用して達成され得る。
【0036】
かかる液晶エラストマの相転移は、1V/ミクロンのオーダを有する電界の適用によって誘発され得る。
【0037】
便利には、アクチュエータは、メソゲニック側鎖へと組み込まれたアゾ基を有する。
【0038】
メソゲニック側鎖におけるアゾ基の取込みによって、シス異性体が屈曲非メソゲニック形状を有するところのトランス−シス光異性化(trans−to−cisphotoisomerisation)反応を誘発するよう、放射線が使用され得る。これは、フィラメント又はファイバの放射線がフィラメント又はファイバの拡張に繋がる、ことを意味する。他の波長の光を有する放射の際、フィラメント又はファイバの弛緩又は収縮が発生する。
【0039】
かかるファイバは、例えば[4−(4−ブテノキシ)−4’−メチルオキシ]アゾベンゼンである感光性のメソゲニック側基(sidegroups)、及び/又は、例えば[4−(11−ウンデセネオキシ)]アゾベンゼンである感光性メソゲニック架橋剤を取り込むことによって、放射線によって等方相変化が誘発されるところの液晶エラストマから形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明は、添付の図面を参照して例証としてこれより説明される。
【0041】
図1を参照すると、本発明に従ったフィラメント又はファイバを形成するよう適切である液晶エラストマ(LCE)の基本構造が、参照符号2によって全体的に示される。LCEは、例えばPDMSである機能長鎖エラストマ4、メソゲニック側鎖6、及び架橋剤8を有する。メソゲンは、液晶活性基であり、架橋剤は、1つの長鎖エラストマ4を第2の長鎖エラストマ4に対して架橋する。
【0042】
図2を参照すると、低温において長さに対して基準化されたファイバの長さとして表される歪み(strain)は、基準化された温度T/TN−Iの関数として、図示される。TN−Iは、等方性転移温度に対する液晶である。
【0043】
液晶相は、液晶の材料に依存して、ネマチック、スメチック、又はコリステリックであり得る。
【0044】
図2から判り得る通り、温度の上昇は、歪みを誘発する。TN−Iよりかなり前の温度において、長さの変化は発生し、T/TN−I=1においては顕著である。
【0045】
図3を参照すると、本発明に従ったファイバ又はフィラメントの一実施例が図示される。図3a乃至図3h中に示されるファイバ又はフィラメントの各々は、ファイバ10の加熱をもたらすよう構成される。ファイバ10は、ファイバの寸法における変化に関与する液晶エラストマ12、及びアクチュエータを有する。
【0046】
図3a中、アクチュエータは、波形の電極14の形状である。電極は、波形であるため、ファイバ10の長さが加熱時に増大する際に軸方向に伸張することが可能である。電極は、部分的又は完全にファイバ10の長さに沿って延在し得る。
【0047】
図3b中、アクチュエータは、電極がファイバ10の伸張を有して伸張できるよう、従属又は弾性の材料を有して作られる電極18の形状である。
【0048】
電極14,16,18は、例えばクロム金合金である適切な材料から形成され得る。
【0049】
図3dを参照すると、ファイバ10は、例えばカーボンファイバ又は導電性ポリマの形状である導電種20を取り込んで示される。
【0050】
図3e中、アクチュエータは、部分的又は全体的にファイバ10の長さに沿って延在しうる螺旋形ワイヤの形状である。
【0051】
図3f及び図3gは、1つ又はそれ以上の導電性ワイヤ24を有して織り合わされる本発明に従ったファイバを図示する。導電性ワイヤ24は、金属製の導電有機性であり得る。ファイバ上の加熱効果は、導電性ワイヤ24を用いてもたらされ得る。
【0052】
図3h中、ファイバ10は、ファイバ10内において延在する螺旋形導電電極26を有して示される。
【0053】
図3a乃至図3hに図示される配置の各々は、ファイバのオーム加熱が図示される多種の電極の形状におけるアクチュエータを介して行われ得るようにする。
【0054】
図4a及び図4bを参照すると、本発明の他の実施例に従ったファイバ28が図示される。
【0055】
図4a中、ファイバ28は、上部と下部に隔てられた柔軟電極30を有する。
【0056】
図4b中、ファイバ28は、2組のフィンガー電極32,34を有する。
【0057】
図4a中に示される実施例はまた、図3a,3b又は3c中に示される実施例と組み合わされ得る。
【0058】
図4a中に示される実施例は、ファイバの長さに対して垂直である電界を作る。これは、ファイバが電界の適用時に広がり、電界適用時のファイバの長さにおける減少に繋がる、ことを意味する。
【0059】
図4b中に示される配置では、電極32,34によって定義付けられる電極のレイアウトは、ファイバの長さ方向において電界を誘発するよう使用される。電界方向は、矢印36によって示される通り交互である。これは、ファイバ28が電界の適用時に伸張し、ファイバの幅において対応する減少に繋がる、ことを意味する。
【0060】
図5を参照すると、本発明に従ったファイバの更なる一実施例は、参照符号38によって全体的に示される。ファイバ38は、液晶エラストマ内においてアゾ基を有する。かかるファイバは、ファイバにおいて歪みを引き起こす放射線40に対して露呈され得る。
【0061】
シス−トランス
(外1)

構造変化に対する典型的な波長は、365nmであり、工程は、典型的には465nmであるUV放射線を有する照射によって可逆され得る。光異性化反応を完了するよう、照射時間は、使用される的確な材料に依存して、数秒から数分で変わり得る。
【0062】
図6を参照すると、本発明に従った複数のフィラメント又はファイバから形成される多種の導電性布地は、参照符号42によって全体的に示される。布地42は、従来の織編用糸から形成され、そのうちの少なくとも複数は、弾性材料44及び導電ファイバ46から形成される。
【0063】
弾性材料から形成されるファイバは、少なくとも部分的に、本発明に従ったファイバを有する。かかるファイバは、温度、電界、放射線、電流等の上述された刺激のうちの1つに応じて伸張及び短縮する。これは、ファブリックの導電性における変化に繋がる。
【0064】
布地の熱絶縁性の特性は、多種の特性に依存し、そのうちの1つが布地構造の内部に封入された空気の量である。布地は、積み重ねられ且つ相互接続された層を有し得る。加えて、布地は、縦糸連動装置オープンコース構造(warp interlockor open course structure)から形成され得る。更に、布地は、三次元直交織り構造を有し得る。
【0065】
三次元直交織り構造は、典型的には、第1、第2、及び第3のファイバを有し、その全てが互いに対して相互に直交する。縦糸及び横糸上で垂直であるファイバは、本発明に従った液晶エラストマから形成される。第3のファイバを形成する液晶エラストマは、温度によって決定される長さを有する。高温は、第3のファイバの収縮に繋がる。これは、互いに対して押される織り構造における層に繋がる。これは、同様に、布地内に封入される空気がより少なくなることをもたらし、布地の熱絶縁性を低減させることを意味する。温度が低下する際、第3のファイバの長さは、積み重ねられた層が拡張し得るよう増大する。これは、織り構造内において封入される空気をより多くすることに繋がり、同様に熱絶縁性における上昇をもたらす。
【0066】
第3のファイバを形成する異なる液晶エラストマの使用は、異なる刺激を使用して引き起こされ得る布地をもたらし得る。
【0067】
この種類の布地は、多くの異なる方途において使用され得る。例えば、該布地は、ブラジャーを形成するよう使用され得、ブラジャーによって与えられるサポートの度合いは可変である。例えば、激しい運動中、ブラジャーは最大限のサポートを与えることが望ましい。これは、本発明に従ったファイバをブラジャーを形成するよう使用される布地へと組み合わせることによって達成され得る。ファイバの拡張は、ブラジャーのぴったりとしたフィットをより少なくし、抑えられた胸部のサポートをもたらす。他方では、ファイバの収縮は、胸部の強化されたサポートに繋がる。
【0068】
衣類のドレイプ(drape)は、衣類の特徴的な外見の決定において重要である。衣類のドレイプは、衣類を作るよう使用されるファイバ及び糸の機械的及び物理的性質に関連付けられる多くの異なるパラメータによって影響を及ぼされる。加えて、ドレイプは、糸の配置、即ち糸が編まれる及び/又は織られる及び/又は組まれる等によって影響を及ぼされ、また、衣類を着用する人間の身体と衣類との相互作用によって影響を及ぼされる。
【0069】
本発明に従ったファイバ又はフィラメントから部分的又は全体的に衣類を形成することによって、衣類を形成するファイバの可逆の拡張及び収縮は、審美的な理由等に対して所望され得るドレイプにおいて変化を誘発する。
【0070】
また、本発明に従ったファイバ又はフィラメントから全体的又は部分的に形成される衣類は、血圧測定装置を形成するよう使用され得る。
【0071】
血圧が測定されるべき人間の腕上で血圧計バンド(cuff)に空気を入れ、該人間における静脈を閉じるようにすることによって血圧を測定することは、既知である。
【0072】
血圧の測定中、該人間の心拍は測定される。完全な心拍を形成する2つのサブ拍動(sub−beat)が検出可能である圧力は、最高血圧に対応する。1つのみのサブ拍動が検出可能である圧力は、最低血圧に対応する。
【0073】
測定は自動化され得るため、医師は必要とされず、人は自分で自分の血液を家で測定し得る。しかしながら、既知の装置は比較的大きく、血圧計バンドは、正確に腕に取り付けられなければならない。
【0074】
本発明に従ったフィラメント又はファイバから形成される衣類の使用を介して、布地の血圧測定装置が血圧を測定するよう使用され得る。
【0075】
図7乃至図10を参照すると、本発明の一実施例に従った衣類は、参照符号60によって全体的に示される。衣類は、シャツ又は上着等の形状であり、本発明に従ったフィラメント又はファイバから形成され且つ可変の電気絶縁性質を有する布地の血圧計バンド62を有する。これは、血圧計バンド62の抵抗が血圧計バンドにおける歪みを有して変動する、ことを意味する。
【0076】
図8は、2つの異なる液晶エラストマに対する血圧計バンド62の抵抗と血圧計バンドにおける歪みとの間の関係をグラフで示す。破線Iは、増大する歪みとともに抵抗が減少する歪みの抵抗間の関係を示す。実線IIは、増大する歪みとともに抵抗が増加する状況における抵抗と歪みとの間の関係を示す。
【0077】
血圧計バンド62を形成する材料における歪みは、上述された通りの外部からの刺激によって誘発され、最も望ましくは、電流又は電界の適用を介して誘発される。
【0078】
血圧計バンド62を形成するファイバを形成する液晶エラストマが選択され、血圧計バンド62において誘発される歪みは、血圧計バンドの収縮をもたらす。血圧計バンドの収縮は、同様に一定の圧力Pに対応する収縮力Fに対して関連付けられ得る。Pは、血圧計バンドの表面Aによって分割される力Fに対して同等である。これは、
P=F/A
を意味する。
【0079】
血圧計バンドはまず、抵抗においてばらつきが測定されない程度に収縮される。この段階では、血圧計バンド圧力は、最大血圧より大きく、図10a中に図示される。血圧計バンドの続く弛緩中の複数の段階において、歪みはある時間に対して一定に維持され、血圧計バンドの抵抗は時間に応じて測定される。血圧計バンド圧が最大血圧より小さくなった際、心臓の拍動は、血圧計バンドを定期的に拡張及び収縮させ、図8中に示される通り、歪み−抵抗機能に依存して抵抗における減少又は増大のいずれかをもたらす。
【0080】
図8中の線IIによって示される上昇機能を想定すると、血圧計バンドの拡張が減少された歪みを示すため、心拍によって引き起こされる血圧計バンドの一時的な拡張は、抵抗における減少をもたらす。
【0081】
図8中に示される通り、抵抗R2及び歪みS2において、抵抗の第1の振幅は、図10b中に示される通りに測定される。この時点では、血圧計バンド圧は、最大血圧Psと同等である。反復時間Δtは、心拍数f=60×Δt−1をもたらす。較正曲線から得られる対応する力はF2であり、R2において血圧計バンド圧はF2/A=Psである。
【0082】
抵抗R1及び歪みS1において、歪みは更に低減され、また、血圧計バンドが更に弛緩する際、測定される抵抗信号は図10c中に示される通り最大である。対応する圧力F1/Aは、平均血圧として称される。
【0083】
R0において、更に歪みを低減する際、図10dに示される通り信号は消える。これは、その時点では、血圧計バンド圧F0/Aが最小血圧Pdと同等である、ことを意味する。
【0084】
衣類60は、電子制御ユニット(図示せず)を更に有する。該電子制御ユニットは、血圧計バンド62を形成するファイバを形成する液晶エラストマをアドレスし得、また、時間依存性の血圧計バンド抵抗を測定し得る。更には、該制御ユニットは、所定の較正曲線を適用することによって測定された時間依存性の抵抗から圧力を算出する。最後に、制御ユニットは、心拍数が算出されるところの時間の長さを測定する。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明に従ったフィラメント又はファイバの一部を形成する液晶エラストマの基本的な構造を図示する。
【図2】標準化された気温T/TN−Iの関数として本発明に従ったフィラメント又はファイバにおける歪みを示すグラフであり、T N−Iは、液晶ネマチック−等方相転移温度である。
【図3】図3a乃至図3hは、等方相変化が温度によって誘発されるところの液晶エラストマから形成される本発明に従ったフィラメント又はファイバの該略図である。
【図4】図4a乃至図4cは、等方相変化が電界の適用によって誘発されるところの液晶エラストマからフィラメント又はファイバが形成される本発明に従った第2の実施例の概略図である。
【図5】歪みが放射線によって誘発されるところのアゾ基を有する液晶エラストマからフィラメント又はファイバが形成される本発明の第3の実施例の概略図である。
【図6】本発明に従ったフィラメント又はファイバから形成される多種の導電性布地の該略図である。
【図7】袖の血圧計バンドを取り込む図6中の布地から形成される衣類の該略図である。
【図8】衣類を形成する布地において誘発される歪みに応じる図7中の血圧計バンドの抵抗のグラフである。
【図9】図7中に示される血圧計バンドによって着用者上へと与えられる力を相互に関連付ける較正曲線を図示する。
【図10】図10a乃至図10dは、異なる歪み(即ち異なる血圧計バンド抵抗)において測定される時間依存性の抵抗を図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶エラストマと、アクチュエータとを有するフィラメント又はファイバであって、
前記アクチュエータは、前記フィラメント又はファイバの作動が前記フィラメント又はファイバの寸法において変化をもたらし得るようにする、
フィラメント又はファイバ。
【請求項2】
前記液晶エラストマは、機能長鎖エラストマと、複数のメソゲニック側鎖と、架橋剤と、を有する、
請求項1記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項3】
前記メソゲニック側鎖のうち少なくとも複数は、位置を合わせられる、
請求項2記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項4】
前記アクチュエータは、前記ファイバ又はフィラメントに沿って軸方向に延在する電極を有する、
請求項1乃至3のうちいずれか一項記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項5】
前記電極は弾性である、
請求項4記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項6】
前記電極は波形である、
請求項5記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項7】
前記電極は、少なくとも部分的に前記ファイバ又はフィラメントの長さに沿って延在する螺旋形ワイヤを有する、
請求項1乃至4のうちいずれか一項記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項8】
前記電極は、Cr−Au電極である、
請求項4乃至7のうちいずれか一項記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項9】
前記電極は、実質的に前記ファイバ又はフィラメントの外側表面に沿って延在する、
請求項4乃至8のうちいずれか一項記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項10】
前記電極は、前記ファイバ又はフィラメント内において延在する、
請求項4乃至8のうちいずれか一項記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項11】
前記アクチュエータは、第1及び第2の電極を有し、
前記第1及び第2の電極の各々は、互いから隔てられている、
請求項1乃至3のうちいずれか一項記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項12】
前記第1及び第2の電極の各々は、実質的に前記フィラメント又はファイバの外側表面に沿って延在する、
請求項11記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項13】
前記第1の電極は、実質的に前記フィラメント又はファイバの外側表面に沿って延在し、
前記第2の電極は、前記フィラメント又はファイバ内において延在する、
請求項11記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項14】
前記第1及び第2の電極は各々、フィンガー電極を有する、
請求項11、12又は13のうちいずれか一項記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項15】
前記アクチュエータは、導電種を有する、
請求項1乃至3のうちいずれか一項記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項16】
前記導電種は、カーボンファイバを有する、
請求項15記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項17】
前記導電種は、導電性ポリマを有する、
請求項15記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項18】
前記液晶エラストマは、強誘電性液晶エラストマを有する、
請求項1又は2記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項19】
前記アクチュエータは、前記メソゲニック側鎖へと組み込まれたアゾ基を有する、
請求項2又は請求項2に従属する請求項のうちいずれか一項記載のフィラメント又はファイバ。
【請求項20】
液晶エラストマから形成される複数のエラストマファイバと、前記エラストマファイバを有して織り合わされる複数の導電性ワイヤと、を有する、
ファブリック。
【請求項21】
請求項1乃至19のうちいずれか一項記載の複数のフィラメント又はファイバから形成される、
ファブリック。
【請求項22】
請求項20又は21記載のファブリックから形成される、
衣類。
【請求項23】
請求項20又は21記載のファブリックから形成される、
血圧測定装置。
【請求項24】
請求項20又は21記載のファブリックから形成される熱絶縁性を制御する、
装置。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図3e】
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【図3f】
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【図3g】
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【図3h】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−538168(P2007−538168A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517561(P2007−517561)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【国際出願番号】PCT/IB2005/051612
【国際公開番号】WO2005/113867
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】