説明

フィルタエレメント

【課題】 本発明は、濾過すべき液が流動する回路のコストが高くなることを抑えつつ、濾過すべき液中の水分を捕集することができるフィルタエレメントを提供する。
【解決手段】 フィルタエレメント40は、作動油L中の異物Iを濾過する濾材71と、作動油L中の水分を吸着して捕集する機能を有する水分吸着材72とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧機関の作動油循環回路中に設けられて作動油などの濾過すべき液を濾過するフィルタエレメントの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油圧機械の作動油循環回路には、作動油が循環している。作動油は、循環する過程で、ごみなど異物を含むようになる。このため、当該作動油循環回路中を流れる作動油中のゴミを濾過するために濾過装置が設けられている。濾過装置は、濾材を備えるフィルタエレメントを備えている。フィルタエレメントは、一般的に、濾材がひだ折りされて筒状に形成されるフィルタ本体と、フィルタ本体を支持するフレームとを備えている。フレームは、フィルタ本体の内側に収容される筒状の内筒と、フィルタ本体を内側に収容する外筒と、内筒と外筒とフィルタ本体の両端を支持するプレートとを有している。
【0003】
内筒と外筒には、複数の孔が形成されている。このため、濾過すべき作動油は、外筒から内筒の内側に向かって流れる。このとき、作動油中のゴミなどの異物がフィルタエレメントによって捕集される。つまり、作動油が濾過される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、作動油などの濾過すべき液中には、ゴミなどの異物の他に、水が含まれることがある。この水も捕集する必要がある。このため、従来では、例えば、水分を捕集することを目的とした水分除去用循環回路が用いられる。この水分除去用循環回路は、濾過装置を通過して濾過されたきれいな作動油を溜めるタンクに連通しており、回路中に水分吸着材が設けられている。水分吸着材は、当該水分吸着材を通る作動油中の水分のみを吸着する機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3492429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のように、作動油循環回路とは別途に、水分を捕集するために水分除去用循環回路を設けるとその分、作動油が循環する回路のコストがかかる。つまり、コストが高くなる。コストが高くなることは、好ましくない。
【0007】
本発明は、濾過すべき液が流動する回路のコストが高くなることを抑えつつ、濾過すべき液中の水分を捕集することができるフィルタエレメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の請求項1に記載の発明のフィルタエレメントは、濾過すべき液を濾過する濾材と、前記液中の水分を吸着して捕集する機能を有する水分吸着材とを備える。
【0009】
本願の請求項2に記載の発明のフィルタエレメントは、請求項1の記載において、前記濾材が筒状に形成される第1のフィルタ本体を少なくとも備える第1のフィルタエレメント部と、前記水分吸着材が筒状に形成される第2のフィルタ本体を少なくとも備える第2のフィルタエレメント部とを備える。前記第1のフィルタエレメント部と前記第2のフィルタエレメント部とが各々の軸線方向に並ぶとともに、前記第1のフィルタ本体の内部と前記第2のフィルタ本体の内部とが連通する。
【0010】
本願の請求項3に記載の発明のフィルタエレメントは、請求項1の記載において、前記濾材は、筒状に形成され、前記水分吸着材は、前記濾材の側面の周方向に一部の範囲に重なるとともに、当該範囲の全面に接触する。
【0011】
本願の請求項4に記載の発明のフィルタエレメントは、請求項1の記載において、前記濾材は、筒状に形成され、前記水分吸着材は、筒状に形成されるとともに内側に前記筒状に形成された濾材を収容する。
【0012】
本願の請求項5に記載の発明のフィルタエレメントは、請求項4の記載において、前記水分吸着材は、前記濾材の全面に接触した状態で重なる。
【0013】
本願の請求項6に記載の発明のフィルタエレメントは、請求項4の記載において、前記濾材は、ひだ折りされて筒状に形成され、前記水分吸着材は、円筒状に形成される。
【発明の効果】
【0014】
本願発明によれば、濾過すべき液が流動する回路のコストが高くなることを抑えつつ、濾過すべき液中の水分を捕集することができるフィルタエレメントを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るフィルタエレメントを備える濾過装置を示す断面図。
【図2】図1に示されたフィルタエレメントを示す斜視図。
【図3】図2中に示されるF3−F3線に沿って示されるフィルタエレメントの断面図。
【図4】図3に示される、接合用の濾材によって接合される第1,2の部分の端部どうしを示す斜視図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るフィルタエレメントを、フィルタエレメントの軸心線を垂直に横切るように切断した状態を示す断面図。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るフィルタエレメントを示す斜視図。
【図7】図6中に示されるF7−F7線に沿うフィルタエレメントの断面図。
【図8】本発明の第4の実施形態に係るフィルタエレメントを示す斜視図。
【図9】本発明の第5の実施形態に係るフィルタエレメントを備える濾過装置を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1の実施形態に係るフィルタエレメントを、図1〜4を用いて説明する。図1は、本実施形態のフィルタエレメント40を備える濾過装置10を示す断面図である。図1に示すように、濾過装置10は、作動油循環回路5に組み込まれている。作動油循環回路5は、例えば図示しない重機などの機器内に設けられている。作動油循環回路5内には、作動油Lが循環している。濾過装置10は、作動油循環回路5中を循環する作動油Lを濾過する。作動油循環回路5を循環して内部のごみなどの異物を含む作動油Lは、本発明で言う濾過すべき液の一例である。
【0017】
濾過装置10は、作動油循環回路5に連通して、内部に作動油Lが流れるベース部材20と、ベース部材20に固定されるフィルタケース30と、このフィルタケース30の内側に規定されるフィルタ収容空間31内に設けられるフィルタエレメント40と、蓋部材78とを備えている。
【0018】
ベース部材20は、濾過される前の作動油Lをフィルタ収容空間31内に導く流入口21と、濾過された後の作動油Lを作動油循環回路5戻す流出口22とを備えている。
【0019】
フィルタケース30は、ベース部材20の流入口21と流出口22とに連通する連通部32と、上記されたフィルタ収容空間31を規定する内部空間規定部材33とを備えている。連通部32には、ベース部材20の流出口22に螺合する、突出した形状の螺合部34が形成されている。螺合部34の周面には、おねじが形成されている。ベース部材20の流出口22の内面には、螺合部34のおねじが螺合するめねじが形成されている。螺合部34の内部には、ベース部材20を貫通する連通孔34aが形成されている。また、連通部32には、流入口21と連通する連通孔35が形成されている。
【0020】
内部空間規定部材33は、筒状であって、一端が開口し他端が閉塞される形状である。内部空間規定部材33は、開口36の縁37をベース部材20に当接した状態で固定される。開口36の縁37とベース部材20との間には、シール部材38が開口36の周方向全域にわたって形成されている。このため、開口36の縁37とベース部材20との間は、液密にシールされる。
【0021】
連通部32において連通孔35の周囲は、外側に突出する突出部39となっている。フィルタエレメント40は、筒状であって、内側に上記突出部39が嵌合される。このことによって、ベース部材20にフィルタエレメント40が固定される。なお、フィルタエレメント40については、後で詳細に説明する。
【0022】
内部空間規定部材33とフィルタエレメント40の端部(図中、連通部32と反対側端部)との間には、ばね部材23が設けられている。ばね部材23は、内部空間規定部材33がベース部材20に固定された状態において縮むように設定されている。このため、ばね部材23の付勢力によってフィルタエレメント40が連通部32に押し付けられるので、フィルタ収容空間31内でのフィルタエレメント40の姿勢が保持される。連通部32に形成される連通孔34a,35は、フィルタ収容空間31内に開口しており、それゆえ、フィルタ収容空間31と流入口21、フィルタ収容空間31と流出口22とが連通している。
【0023】
ついで、フィルタエレメント40について具体的に説明する。図2は、フィルタエレメント40を示す斜視図である。なお、図1中に示されたフィルタエレメント40は、断面された状態が示されている。図1,2に示されるように、フィルタエレメント40は、フレーム50と、フィルタ本体70とを備えている。
【0024】
図1に示すように、フレーム50は、内筒51と、外筒52と、第1のプレート53と、第2のプレート54とを備えている。内筒51と、外筒52と、第1のプレート53と、第2のプレート54とは、例えば樹脂で形成されている。
【0025】
内筒51は、筒状である。本実施形態では、一例として、内筒51は、円筒である。内筒51の一端51aは、第1のプレート53に連結されて固定されており、内筒51の他端51bは、第2のプレート54に連結されている。第1,2のプレート53,54は、内筒51の内側と外部とが連通するように、内筒51の内側に対応する部分に連通孔53a,54aが形成されている。内筒51の側壁部57には、全域にわたって、内部と外部とを連通する連通孔58が複数形成されている。連通孔58は、側壁部57に均等に分布している。なお、連通孔58は、図中一部のみ図示されており、他は省略されている。
【0026】
第1,2のプレート53,54は、内筒の両端51a、51bの開口の縁から外側に広がるように、平面形状が円状に形成されている。
【0027】
外筒52は、両端が開口する筒状であって、本実施形態では一例として円筒である。外筒52は、内側に内筒51を収容するとともに、内筒51と同心になるように(内筒51の軸心線Xと外筒52の軸心線Yとが重なるように)配置されている。外筒52の一端の開口の縁は、第1のプレート53に当接している。外筒52の他端の開口の縁は、第2のプレート54に当接している。外筒52の側壁部59の全域には、外筒52の内部と外部とを連通する連通孔60が複数形成されている。連通孔60は、側壁部59に均一に分布している。図2中では、外筒52は、内部の構造を示すために、一部が省略されて切り欠かれて示されている。外筒52は、実際には、周方向に環状に形成されている。また、連通孔60は、一部が図示されており、他は省略されている。
【0028】
第1,2のプレート53,54の周縁には、内側に立ち上がる立ち上がり部61,62が形成されている。外筒52は、立ち上がり部61,62に接しており、位置決めされている。
【0029】
フィルタ本体70は、シート状の濾材71と、シート状の水分吸着材72とを備えている。図3は、図2中に示されるF3−F3線に沿って示されるフィルタエレメント40の断面図である。図3は、フィルタエレメント40の軸心線Zを垂直に横切るように断面された状態が示されている。なお、軸心線X、Y、Zは、重なっている。
【0030】
図3に示されるように、濾材71は、ひだ折りされて筒状に形成されている。濾材71は、当該濾材71の厚み方向(図中矢印Aで示す方向、言い換えると、筒状の外側から内側へ向かう方向または外側から内側へ向かう方向)に濾過すべき作動油Lが通ることによって、当該作動油L中のゴミなどの異物Iを捕集する。このことによって、作動油Lが濾過される。
【0031】
水分吸着材72は、作動油L中の水を吸着して捕集する機能を有している。水分吸着材72は濾材71の外周面73(筒状に形成される濾材71の外側に向く面)の周方向に一部に接触した状態で重ねられている。なお、水分吸着材72は、上記のように、作動油L中の水を吸着して捕集する機能を有するもの(材料)であればよい。
【0032】
より具体的には、水分吸着材72の全面は濾材71の外面73に接触した状態で重ねられており、濾材71とともにひだ折りされている。このようにひだ折りされることによって、水分吸着材72は、濾材71に保持される。
【0033】
本実施形態では、一例として、水分吸着材72が設けられる範囲Bは、濾材71の周方向に90度の範囲である。なお、水分吸着材72が濾材71に接触して重ねられる範囲は、90度に限定されるものではない。例えば、60度や120度などの他の角度であってもよい。水分吸着材72が接触して重ねられる範囲は、フィルタエレメント40に求められる水分吸着能力に応じて設定される。
【0034】
水分吸着材72は、範囲B内においては、軸心線Zにそって濾材71の外面73の全域に接触している。言い換えると、水分吸着材72は、範囲Bにおいては、筒状に形成される濾材71の一端から他端まで濾材71の外面73に接触している。
【0035】
図3中には、フィルタエレメント40の2点鎖線で囲まれた範囲F3が拡大して示されている。範囲F3は、濾材71と水分吸着材72との固定構造を示している。範囲F3に示すように、濾材71は、範囲B内の部分と範囲B以外の部分とが切り離されており、これらが一体に接続されている。ここで、濾材71において、範囲B内の部分を第1の部分74とし、範囲B外の部分を第2の部分75とする。
【0036】
水分吸着材72は、第1の部分74の全面に接触した状態で重ねられており、ともにひだ折りされている。第1の部分74と第2の部分75とにおいて、互いに周方向に隣り合う端部74a,75aは、接合用のクリップ76によって挟まれることによって、互いが連結されている。クリップ76は、一例として金属性である。図4は、接合用のクリップ76によって挟まれて連結される端部74a,75aを示す斜視図である。
【0037】
より具体的には、図3,4に示すように、端部74a,75aは、互いの外側の部分が互い当接しており、この当接した部分が、接合用のクリップ76によって水分吸着材72も含めて挟み込まれて互いに連結されている。端部74a,75aどうしは、例えば接着材で接合されてもよい。
【0038】
なお、図3の範囲F3中では、第1の部分74と第2の部分75との接合構造のうち、一方の接合構造を示しているが、他方の接合部77も同様である。
【0039】
濾材71と水分吸着材72とが一体になったユニットであるフィルタ本体70は、フレーム50の内筒51と外筒52との間に、内筒51と外筒52と同心になるように配置される。内筒51は、作動油Lがフィルタ本体70を厚み方向Aに通過する際にフィルタ本体70が内側に過度に変形することがないようにフィルタ本体70を支持する機能を有している。外筒52は、フィルタ本体70が外側に過度に開かないように(変形しないように)支持する機能を有している。
【0040】
なお、本実施形態では、フィルタエレメント40が内筒51と外筒52とを備える構造が採用されたが、フィルタ本体70が内側に過度に変形することがない場合は、内筒51は、用いられなくてもよい。同様に、フィルタ本体70が外側に過度に変形することがない場合は、外筒52は、用いられなくてもよい。
【0041】
図1に示すように、蓋部材78は、第2のプレート54の連通孔54aを液密に塞いでおり、ばね部材23を受けている。
【0042】
つぎに、濾過装置10の動作を説明する。作動油循環回路5内を循環する作動油Lは、循環する途中でゴミなどの異物を含むようになる。また、作動油Lは、もともと水分を含んでいたり、または、作動油循環回路5内を循環する過程で水を含むようになる。ベース部材20からフィルタ収容空間31に流入した作動油Lは、まだフィルタエレメント40によって濾過および水分が除去される前の状態である。
【0043】
フィルタ収容空間31に流入した作動油Lは、図中矢印で示すように、フィルタエレメント40を厚み方向に外側から内側に向かって通る。この際、濾材71の第1の部分74を通過する作動油Lは、まず、水分吸着材72を通る。水分吸着材72は、作動油L中の水分Wを吸着し、捕集する。このため、水分吸着材72を通過した作動油L中の水分Wは取り除かれる。ついで、水分吸着材72を通過した作動油Lは、第1の部分74を通過する。このとき、濾材71によってゴミなどの異物が取り除かれる。つまり、作動油Lが濾過される。
【0044】
第2の部分75を通過する作動油Lは、濾材71によってゴミなどの異物が取り除かれる。
【0045】
このように、作動油Lは、作動油循環回路5を循環する過程で濾過装置10を何度も通過する。このとき、ごみなどの異物Iとともに作動油L中の水分が徐々に取り除かれるようになる。
【0046】
つまり、作動油L中の水分を取り除くための水分除去循環回路を別途に設ける必要がない。言い換えると、ごみなどの異物を濾過する濾過装置を利用して水分を同時に取り除くことができる。このことによって、作動油L中の水分を除去するための水分除去用循環回路を別途に設けることがないので、作動油Lが循環する回路のコストが増加することを抑制しつつ、作動油中の水分を取り除くことができる。
【0047】
なお、本実施形態では、第1の部分74と第2の部分75とは、同じ材料であって同じ濾過精度を有している。しかしながら、第1の部分74と第2の部分75とが、互いに異なる濾過精度を備えてもよい。または、第1,2の部分74,75が同じ材料であって同じ濾過精度を有する場合は、濾材71は、第1,2の部分74,75に分けられることなく、1つのシート状に形成されてもよい。
【0048】
つぎに、本発明の第2の実施形態に係るフィルタエレメントを、図5を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、フィルタ本体70の構造が第1の実施形態と異なる。他の構造は、第1の実施形態と同様であってよい。上記異なる構造による効果を説明する。
【0049】
図5は、本実施形態のフィルタエレメント40を図3と同様に軸心線Zを垂直に横切るように切断した状態を示す断面図である。図5に示すように、本実施形態では、濾材71は、第1,2の部分74,75に分かれておらず、一枚のシート状のものがひだ折りされて筒状に形成されている。図5中に、フィルタエレメント40の一部を示す2点鎖線で囲まれる範囲F5が拡大して示されている。水分吸着材72は、濾材71の外周面の全域に接触した状態で重ねられており、濾材71とともにひだ折りされている。なお、本実施形態では、濾材71の形状、水分吸着材72の形状が第1の実施形態と異なっているが、濾材71の材質や濾過性能などと、水分吸着材72の材質や水分吸着性能などとは、第1の実施形態と同じであってよい。上記異なる構造を具体的に説明する。
【0050】
本実施形態では、第1の実施形態と同様の効果が得られるとともに、さらに、水分吸着材72が濾材71の外周面の全域に設けられることによって、作動油L中の水分をより効果的に取り除くことができる。
【0051】
つぎに、本発明の第3の実施形態に係るフィルタエレメントを、図6を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、フィルタ本体70の構造が第1の実施形態と異なる。他の構造は、第1の実施形態と同様であってよい。上記異なる構造を具体的に説明する。
【0052】
図6は、本実施形態のフィルタエレメント40を示す斜視図である。なお、図6中では、フィルタ本体70を示すために、外筒52が省略されている。しかしながら、本実施形態では、フィルタエレメント40は、実際には外筒52を備えている。図7は、図6中に示されるF7−F7線に沿うフィルタエレメント40の断面図である。図7は、フィルタエレメント40の軸心線Zを垂直に横切るように断面している。
【0053】
図7に示されるように、本実施形態では、濾材71は、第1,2の部分74,75に分かれておらず、一枚のシート状のものがひだ折りされて筒状に形成されている。水分吸着材72は、円筒状に丸められており、内側に濾材71を収容している。図7では、フィルタエレメント40において水分吸着材72の近傍の一部である2点鎖線で囲まれる範囲F7を拡大して示している。図に示されるように、本実施形態では、水分吸着材72は、第1の実施形態のように、濾材71に重ねられていない。さらに、筒状の水分吸着材72の内面72aに、ひだ折りされて外側に突出する濾材71の突出端部71aが当接するように円筒状に形成されている。
【0054】
図6に示されるように、水分吸着材72は、軸心線Z方向に全域ではなく、一部に形成されている。本実施形態では、一例として、水分吸着材72は、軸心線Z方向の中央に配置されている。なお、本実施形態では、濾材71の形状、水分吸着材72の形状が第1の実施形態と異なっているが、濾材71の材質や濾過性能などと水分吸着材72の材質や水分吸着性能などは、第1の実施形態と同様であってよい。上記異なる構造による効果を説明する。
【0055】
本実施形態は、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0056】
つぎに、本発明の第4の実施形態に係るフィルタエレメントを、図8を用いて説明する。なお、第3の実施形態と同様の機能を有する構成は第3の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、水分吸着材72の構造が、第3の実施形態と異なる。他の構造は、第3の実施形態と同様であってよい。上記異なる構造を具体的に説明する。
【0057】
図8は、本実施形態のフィルタエレメント40を示す斜視図である。図8中では、フィルタ本体70を示すために、外筒52が省略されている。しかしながら、本実施形態では、フィルタエレメント40は、実際には、外筒52を備えている。図8に示すように、本実施形態では、水分吸着材72は、濾材71の軸心線にそって濾材71の全域を覆うように形成されている。つまり、水分吸着材72は、濾材71の一端から他端まで延びている。なお、図中、濾材71を示すために、水分吸着材72の一部が切り欠かれて示されている。
【0058】
本実施形態では、第3の実施形態と同様の効果が得られる。
【0059】
つぎに、本発明の第5の実施形態に係るフィルタエレメントを、図9を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、濾過装置10の構造が第1の実施形態と異なる。上記異なる構造を具体的に説明する。
【0060】
図9は、本実施形態のフィルタエレメント40が設置される濾過装置10を示す断面図である。図9に示すように、本実施形態の濾過装置10は、第1の実施形態のように、ベース部材20とフィルタケース30とを備えていない。
【0061】
本実施形態では、濾過装置10は、作動油循環回路5中に設けられるタンク80と、タンク80内に収容されるフィルタエレメント40とを備えている。
【0062】
タンク80は、タンク本体81と、蓋部材82とを備えている。タンク本体81は、一端が開口する筒状である。タンク本体81の側壁部83には、濾過される前の作動油Lが流入する流入口84が形成されている。タンク本体81の底壁部85には、フィルタエレメント40を通過した後の作動油Lを作動油循環回路5に戻す流出口86が形成されている。
【0063】
流出口86の縁部または縁部の近傍は、タンク本体81内に突出している。本実施形態では、一例として、作動油循環回路5を構成する管部200の一部が流出口86からタンク本体81内に突出している。管部200は、筒状である。
【0064】
管部200は、流出口86に嵌合しており、それゆえ、流出口86の縁と管部200との間は液密にシールされている。なお、この構造だけに限定されるものではない。本実施形態では、流出口86の縁の近傍の一例として管部200がタンク本体81内に突出している。例えば、流出口86の縁部がタンク本体81の内側に向かって突出してもよい。
【0065】
フィルタエレメント40は、第1のフィルタエレメント部90と、第2のフィルタエレメント部91とを備えている。
【0066】
第1のフィルタエレメント部90は、フレーム50と、水分吸着材72とを備えている。フレーム50は、第1の実施形態で説明されたフレーム50と同様であってよい。水分吸着材72は、シート状であって、内筒51と外筒52との間において、内筒51に巻きつけられている。水分吸着材72が筒状に形成されたものは、第1のフィルタ本体300である。第1のフィルタ本体300は、本発明で言う第1のフィルタ本体の一例である。
【0067】
第1のフィルタエレメント部90の第1のプレート53の連通孔53aに、流出口86が嵌合されることによって、第1のフィルタエレメント部90は、タンク本体81内に位置決めされる。上記のように嵌合されることによって、管部200と連通孔53aの縁との間は、液密に塞がれる。
【0068】
第2のフィルタエレメント部91は、フレーム50と、濾材71とを備えている。フレーム50は、第1の実施形態で説明されたフレーム50と同様でよいが、第1,2のプレート53,54の構造が第1の実施形態と異なる。この異なる部分について説明する。第2のフィルタエレメント部91の第1のプレート53において連通孔53aの周縁部53bは、内筒51の軸心線Xにそって外側に突出している。第2のプレート54の連通孔54aは、液密に閉塞されている。濾材71は、ひだ折りされて筒状に形成されており、内筒51と外筒52との間に、内筒51と同心になるように収容されている。濾材71が筒状に形成されたものは、第2のフィルタ本体301である。第2のフィルタ本体301は、本発明で言う第2のフィルタ本体の一例である。
【0069】
第2のフィルタエレメント部91は、第1のプレート53の外側に突出する縁部53bが第1のフィルタエレメント部90の第2のプレート54の連通孔54aに嵌合することによって、タンク本体81内に位置決めされる。言い換えると、第1,2のフィルタエレメント部90,91は、各々の軸心線201,202が延びる方向203,204に並んでいる。このことによって、第1,2のフィルタエレメント部90,91の内部は、互いに連通する。このことは、本発明でいう第1,2のフィルタ本体の内部どうしが連通することの一例である。
【0070】
第1のフィルタエレメント部90の第2のプレート54の連通孔54aと、第2のフィルタエレメント部91の第1のプレート53の突出する縁部53bとは、縁部53bが連通孔54aに液密に嵌合するように形成されている。このことによって、連通孔54aの縁と縁部53bとの間が液密にシールされるので、第2のフィルタエレメント部91から第1のフィルタエレメント部90に作動油Lが流動する際に、第1のフィルタエレメント部90の第2のプレート54の連通孔54aから作動油が漏れること、または、第2のフィルタエレメント部91を通さずに第1のフィルタエレメント部90の第2のプレート54の連通孔54aから作動油Lが第1のフィルタエレメント部90の内部に流入することが防止される。
【0071】
蓋部材82は、タンク本体81の開口87の縁部88に、ボルト100によって開閉可能に固定される。縁部88は、例えば、フランジ状に開口87の全周にわたって形成されている。このことによって、蓋部材82は、開口87を閉塞する。縁部88と蓋部材82との間にはシール部材の一例としてOリング101が設けられている。Oリング101によって、蓋部材82が開口87を閉塞しボルト100で固定された状態では、蓋部材82と縁部88との間が液密にシールされる。
【0072】
蓋部材82と第2のフィルタエレメント部91との間にばね部材102が設けられている。蓋部材82が開口87を閉塞している状態では、ばね部材102が縮むとともにばね部材102の付勢力によって第1,2のフィルタエレメント部90,91が押さえつけられる。このことによって、第1,2のフィルタエレメント部90,91の姿勢が保持される。
【0073】
つぎに、本実施形態の濾過装置10の動作を説明する。濾過される前の作動油Lは、流入口84を通ってタンク80内に流入する。タンク80内に溜まった作動油Lは、第1,2のフィルタエレメント部90,91を外側から内側に向かって通過する。第1のフィルタエレメント部90を通過する作動油Lは、水分吸着材72によって、水分が取り除かれる。水分吸着材72を通過した作動油Lは、内筒51に流入し、ついで流出口86を通って作動油循環回路5に戻る。
【0074】
第2のフィルタエレメント部91を通過する作動油Lは、濾材71によって、ごみなどの異物が取り除かれる。第2のフィルタエレメント部91を通過した作動油Lは、第1のプレート53の連通孔53aと、第1のフィルタエレメント部90の第2のプレート54の連通孔54aとを通って第1のフィルタエレメント部90の内筒51の内側に流入する。
【0075】
本実施形態では、フィルタエレメント40が、水分吸着材72を備える第1のフィルタエレメント部90を備えることによって、ゴミなどの異物Iを濾過すると同時に、水分を取り除くことができる。このため、濾過装置10とは別途に、水分を取り除くための循環回路を設ける必要がないので、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0076】
なお、本実施形態では、第1,2のフィルタエレメント部の一例として、フレーム50を備える構造が用いられている。しかしながら、例えば、濾材71、水分吸着材72が筒状に形成された第1,2のフィルタ本体300,301が充分の強度を備えている場合などであってフレーム50が必要ない場合は、第1,2のフィルタエレメント部は、フレームを備えていなくてもよい。
【0077】
この場合、濾材71、水分吸着材72が筒状に形成された第1,2のフィルタ本体300,301が本発明で言う第1,2のフィルタエレメント部となる。また、この場合、第1,2のフィルタ本体(第1,2のフィルタエレメント部)が、例えば各々の軸心線方向に重ねられることによって各々の内部が連通するようになっていてもよい。
【0078】
この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0079】
40…フィルタエレメント、71…濾材、72…水分吸着材、90…第1のフィルタエレメント部、91…第2のフィルタエレメント部、203…軸線方向、204…軸線方向、300…第1のフィルタ部、301…第2のフィルタ部、L…作動油(濾過すべき液)、B…範囲。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過すべき液を濾過する濾材と、
前記液中の水分を吸着して捕集する機能を有する水分吸着材と
を具備することを特徴とするフィルタエレメント。
【請求項2】
前記濾材が筒状に形成される第1のフィルタ本体を少なくとも備える第1のフィルタエレメント部と、
前記水分吸着材が筒状に形成される第2のフィルタ本体を少なくとも備える第2のフィルタエレメント部と
を具備し、
前記第1のフィルタエレメント部と前記第2のフィルタエレメント部とが各々の軸線方向に並ぶとともに、前記第1のフィルタ本体の内部と前記第2のフィルタ本体の内部とが連通する
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタエレメント。
【請求項3】
前記濾材は、筒状に形成され、
前記水分吸着材は、前記濾材の側面の周方向に一部の範囲に重なるとともに、当該範囲の全面に接触する
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタエレメント。
【請求項4】
前記濾材は、筒状に形成され、
前記水分吸着材は、筒状に形成されるとともに内側に前記筒状に形成された濾材を収容する
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタエレメント。
【請求項5】
前記水分吸着材は、前記濾材の全面に接触した状態で重なることを特徴とする請求項4に記載のフィルタエレメント。
【請求項6】
前記濾材は、ひだ折りされて筒状に形成され、
前記水分吸着材は、円筒状に形成される
ことを特徴とする請求項4に記載のフィルタエレメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−143371(P2011−143371A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7332(P2010−7332)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000178675)ヤマシンフィルタ株式会社 (18)
【Fターム(参考)】