説明

フィルタ装置

【課題】本発明は、作動油が流れる流路において汚染の程度を検出する部位が傷つくことを抑制できるとともに、作動油中の異物を安価に検出できるフィルタ装置を提供する。
【解決手段】フィルタ装置20は、フィルタエレメント20と、フィルタエレメント20より上流の位置とフィルタエレメント20より下流の位置とをフィルタエレメント20を迂回する計測用流路部62と、計測用流路部62内を流れる作動油L中の異物の量を計測する計測部100とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば重機が備える油圧アクチュエータの油圧回路中を流れる作動油などの濾過すべき液の汚染度を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作動油回路中を流れる作動油中のごみなどの異物の量に基づいて当該作動油の汚染の程度を検出する装置がある。この種の装置では、油圧回路のメインポンプの駆動力によって作動油が流れるメイン流路を規定する壁部内において、流路を挟んで両側にそれぞれ光伝達体が設けられている。そして、光伝達体を内側に挟むように、光源と受光器が設けられている。
【0003】
受光器は、光伝達体を通過した、光源が照射した光を検出する。また、受光器は、流路中をごみなどの粒子が通過することに起因する光の減衰量からゴミの量を測定する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−258142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される測定装置では、光伝達体には、メインポンプの圧力が作用する。メインポンプの圧力が大きい場合には、異物が光伝達体に当るなどして傷がつくなどすることが考えられる。作動油が流れる流路において汚染の程度を検出する部位が傷つくことは、好ましくない。
【0006】
このため、メインポンプによって作動油が循環するメイン流路とは別の測定用流路と、測定用流路に作動油の一部を流動させるためのメインポンプとは別の測定用ポンプとを用いて作動油の汚染を測定する技術が提案されている。測定用ポンプによってメイン流路を流れる作動油の一部が測定用流路に流入し、この測定用流路を流れる作動用中の汚染を測定する。この測定用流路には、特許文献1に開示されるような光伝達体、光源、受光器が設けられている。測定用ポンプは、測定用に適したものが用いられる。
【0007】
しかしながら、測定用ポンプを用いる構造では、測定用ポンプの分コストが高くなる。コストが高くなることは好ましくない。
【0008】
本発明は、作動油が流れる流路において汚染の程度を検出する部位が傷つくことを抑制できるとともに、作動油中の異物を安価に検出できるフィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の請求項1に記載される発明のフィルタ装置は、濾過すべき液を濾過するフィルタエレメントと、前記フィルタエレメントより上流の位置と前記フィルタエレメントより下流の位置とを前記フィルタエレメントを迂回して連通するとともに、前記濾過すべき液を流す計測用流路部と、前記計測用流路部内を流れる前記濾過すべき液の異物の量を計測する計測部とを備える。
【0010】
本願の請求項2に記載される発明のフィルタ装置は、請求項1の記載において、前記計測用流路部は、光を透過する検出用パイプを備える。前記計測部は、検出用パイプに光を照射する光源と、前記検出用パイプを通過した光を受光し、前記検出用パイプを前記異物が通過するとことに起因する前記光の変化を検出して出力する受光部とを備える。
【0011】
本願の請求項3に記載される発明のフィルタ装置は、請求項2の記載において、前記受光部の出力に基づいて前記濾過すべき液の汚染の程度を求める汚染度判定部を備える。前記受光部は2つ設けられて前記検出用パイプにそって離間して配置される。前記汚染度判定部は、前記検出用パイプを流れる同一の異物に対する上流に配置される受光部の出力時点と下流に配置される受光部の出力時点との時差に基づいて前記検出用パイプに流れる前記濾過すべき液の流量を検出し、当該検出した流量に基づいて前記汚染の程度を検出する。
【0012】
本願の請求項4に記載される発明のフィルタ装置は、請求項2の記載において、前記受光部の出力に基づいて前記濾過すべき液の汚染の程度を求める汚染度判定部を備える。前記受光部は2つ設けられて前記検出用パイプにそって離間して配置される。前記汚染度判定部は、前記検出用パイプを流れる同一の前記異物に対する上流に配置される受光部の出力時点と下流に配置される受光部の出力時点との時差に基づいて前記検出用パイプに流れる前記濾過すべき液の流量を検出し、当該検出した流量が予め設定された流量であるときに前記濾過すべき液の前記汚染の程度を検出する。
【発明の効果】
【0013】
本願発明によれば、作動油が流れる流路において汚染の程度を検出する部位が傷つくことを抑制できるとともに、作動油中の異物を安価に検出できるフィルタ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるフィルタ装置が油圧循環回路中に組み込まれている状態を示す断面図。
【図2】図1に示された計測部の一部を切り欠いた状態を示す斜視図。
【図3】図2に示された第1,2の受光部が出力した信号値を示すグラフ。
【図4】図1中に示されるF4―F4線に沿って示す計測部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の実施形態に係るフィルタ装置を、図1〜4を用いて説明する。図1は、本実施形態のフィルタ装置20が油圧循環回路中10に組み込まれている状態を示す断面図である。本実施形態では、フィルタ装置20は、一例として、油圧アクチュエータ(図示せず)を備える重機の油圧循環回路10中に組み込まれている。油圧アクチュエータを駆動する作動油Lは、油圧循環回路10中を循環している。作動油Lは、本発明で言う濾過すべき液の一例である。作動油Lは、油圧アクチュエータを駆動したり、または、油圧循環回路10中を循環する過程で、ごみなどの異物を含むようになる。フィルタ装置20は、作動油Lを濾過する。
【0016】
フィルタ装置20は、油圧循環回路10に設けられるオイルタンク11に設置されている。オイルタンク11は、フィルタ装置20を通過して濾過された後の作動油Lが所定量ためられるように形成されている。オイルタンク11は、一端部に開口12が形成されている。フィルタ装置20は、具体的には、開口12に設けられている。濾過される前の作動油Lは、油圧循環回路10の流路からフィルタ装置20に流入し、フィルタ装置20によって濾過された後の作動油Lがオイルタンク11に流入する。このため、フィルタ装置20は、油圧循環回路10の一部を構成している。
【0017】
フィルタ装置20は、フィルタ部30と、計測ユニット60と、汚染度判定部90とを備えている。フィルタ部30は、作動油Lを濾過する。フィルタ部30は、フィルタエレメント31と、フィルタエレメント31を収容するハウジング32とを備えている。
【0018】
フィルタエレメント31は、濾材33と、フレーム34とを備えている。濾材33は、作動油L中に含まれるごみなどの異物を濾す。濾材33は、筒状に形成されており、本実施形態では、一例として例えばひだ折りされて筒状に形成されている。フレーム34は、両端が開口する内筒35と、第1,2のプレート36,37とを備えている。内筒35の側壁部38には、全面にわたって複数の連通孔39が形成されている。連通孔39は、側壁部38を貫通している。なお、図中では、連通孔39の一部が図示され、他の部分は図示が省略されている。しかしながら、実際には、連通孔39は、側壁部38の全域に形成されている。
【0019】
第1,2のプレート36,37は、内筒35の両端に固定されている。第2のプレート37において内筒35の他端の開口35bに対向する範囲は、当該開口35bが外部に連通するように切り欠かれている。第1のプレート36は、内筒35の開口に対応する部位に後述されるリリース弁48が設けられている。リリース弁48が閉じている状態では、第1のプレート36は内筒35の開口を液密に閉塞する。
【0020】
第1,2のプレート36,37は、内筒35の両端の開口縁から外側に延びる形状となっている。第1,2のプレート36,37の平面形状は、例えば、円である。
【0021】
上記のように筒状に形成された濾材33は、内側に内筒35を収容するように第1,2のプレート36,37間に収容されている。第1,2のプレート36,37の周縁部は、内側に向かって折れ曲がっており、筒状の濾材を支持している。
【0022】
ハウジング32は、筒状であって内側にフィルタエレメント31を収容するハウジング本体40と、ハウジング本体40の一端の開口42を塞ぐ蓋部材41とを備えている。
【0023】
ハウジング本体40の側壁部44において一端と他端との間の中間の位置には、外側に広がるフランジ部45が形成されている。ハウジング本体40をオイルタンク11内に設置する際に、このフランジ部45がオイルタンク11の開口12の縁に当接することによって、ハウジング本体40を開口42に設置することができる。フランジ部45と開口12の縁との間は、液密にシールされる。例えば、フランジ部45と開口12の縁との間にOリングなどのシール材が用いられてもよい。
【0024】
ハウジング本体40の他端部には内側に突出する突出部46が形成されている。突出部46は、フィルタエレメント31の内筒35の他端部35aの開口35bに嵌合する形状である。フィルタエレメント31は、突出部46が内筒35の他端部35aの開口35bに嵌合することによって、ハウジング本体40内に固定される。突出部46と開口35bの縁との間は、液密にシールされる。
【0025】
突出部46は、オイルタンク11内に向かっても突出する形状である。突出部46の内側には、ハウジング本体40内とオイルタンク11内とを連通する連通孔47が形成されている。
【0026】
フィルタエレメント31の第1のプレート36において内筒35の開口と対向する部位には、リリース弁48が設けられている。第1のプレート36は、リリース弁48以外の部分は塞がれている。リリース弁48は、ハウジング32内の圧力が所定値以上になると開き、濾過される前の作動油Lをフィルタエレメント31の下流に流す。
【0027】
上記のように構成されるフィルタエレメント31は、ハウジング32内に収容された状態では、内筒35の両端が塞がれるので、作動油Lは、周方向外側から濾材33を通って内筒35の内側に出る。このとき、濾材33によって作動油Lが濾過される。
【0028】
ハウジング本体40の側壁部44には、油圧循環回路10に連通する流入口49が形成されている。流入口49は、油圧循環回路10においてハウジング本体40に濾過される前の作動油Lを導く流路が連結される。また、オイルタンク11には、濾過された後の作動油Lを戻す流出口49aが形成されている。
【0029】
蓋部材41は、ハウジング本体40の一端の開口42を液密に塞ぐ。蓋部材41は、例えば図示しないボルトなどの固定具によって、開口42を開閉可能に液密に塞ぐ。
【0030】
計測ユニット60は、計測部用ハウジング61と、計測用流路部62の一部と、計測部100とを備えている。
【0031】
図2は、計測ユニット60の一部を切り欠いた状態を示す斜視図である。図1,2に示すように、計測部用ハウジング61は、蓋部材41に重なる円筒状である。計測部用ハウジング61は、計測部用ハウジング本体66と、計測部用蓋部材67とを備えている。計測部用ハウジング本体66は、一端が開口する筒状であり、計測部用蓋部材67が当該開口を塞ぐ。ハウジング61は、蓋部材41に固定される。
【0032】
ハウジング本体66の内部に収容空間68が規定されている。計測用流路部62は、計測部用ハウジング本体66の底壁部69と収容空間68内とに形成される第1の部分62aと、後述される第2の部分62bとを有している。
【0033】
第1の部分62aは、計測部用ハウジング本体66において蓋部材41に対向する底壁部69に形成される流入部70と流出部71と、収容空間68内に配置されて流入部70と流出部71とを連通する連結部72とを備えている。連結部72は、光源63が照射する光を透過する材質で形成される検出用透明パイプ74備えている。検出用透明パイプ74は、例えばガラスで形成される。検出用透明パイプ74は、本発明で言う検出用パイプの一例である。
【0034】
計測部100は、光源63と、第1の受光部64と、第2の受光部65とを備えている。光源63は、収容空間68内において検出用透明パイプ74に対向する部位に設けられている。第1,2の受光部64,65は、収容空間68内において、検出用透明パイプ74を挟んで光源63と反対側に設けられている。第1,2の受光部64,65は、検出用透明パイプ74にそって離間して並んでいる。第1の受光部64は、第2の受光部65よりも上流に位置している。
【0035】
図2に示すように、蓋部材41には、流入部70と流出部71とに嵌合される、蓋部材側流入部80と蓋部材側流出部81とが設けられている。蓋部材側流入部80と蓋部材側流出部81とは、外側に突出する形状であって、内部に両端に開口するとともに両端の開口を連通する連通孔83が形成されている。蓋部材側流入部80が流入部70内に嵌合すると、蓋部材側流入部80内の連通孔83を通して、ハウジング本体40内と計測用流路部62とが連通する。同様に、蓋部材側流出部81が流出部71に嵌合されると、蓋部材側流出部81内の連通孔83と計測用流路部62とが連通する。
【0036】
図1に示すように、蓋部材側流出部81は、ハウジング本体40の側壁部44に重なる位置に形成されている。側壁部44内には、蓋部材側流出部81内の連通孔83に連通する、計測用流路部62の第2の部分62bが形成されている。
【0037】
第2の部分62bは、オイルタンク11内に開口している。本実施形態では、ハウジング本体40の側壁部44の一部に、オイルタンク11内に突出する突出部44aが形成されている。第2の部分62bは、突出部44a内にも形成されており、オイルタンク11内に開口している。
【0038】
上記の構造により、計測用流路部62(第1,2の部分62a,62b)を介して、フィルタエレメント31を迂回する流路が形成される。この流路には、オイルタンク11内の圧力とハウジング32内の圧力差によって、フィルタエレメント31を通過する前の作動油Lが流れる。
【0039】
つまり、計測用流路部62を流れる作動油Lは、フィルタエレメント31によっては濾過されない。このため、第2の部分の出口には、計測オイル濾過用フィルタエレメント86が設けられている。計測オイル濾過用フィルタエレメント86は、計測用流路部62を流れる作動油Lを濾過する。計測オイル濾過用フィルタエレメント86によって濾過された後の作動油Lは、オイルタンク11内に出る。
【0040】
オイルタンク11内の圧力とハウジング32内の圧力差について具体的に説明する。作動油Lがフィルタエレメント31を通過することによって圧力損失が生じる。このため、ハウジング32内の圧力がオイルタンク11内の圧力よりも、当該圧力損失の分高くなる。本実施形態では、ハウジング32内の圧力がオイルタンク11内の圧力よりも一例として0.5〜1kg/m大きくなるように、濾材33の精度が設定されている。
【0041】
光源63は、検出用透明パイプ74に向かって光を照射する。第1,2の受光部64,65は、検出用透明パイプ74を通過した光を受光する。第1,2の受光部64,65は、受光した光に応じた信号を出力する。本実施形態では、一例として、第1,2の受光部64,65として半導体レーザが用いられている。
【0042】
第1,2の受光部64,65が出力する信号について、具体的に説明する。検出用透明パイプ74内を流れる作動油Lにごみなどの異物が含まれると、当該異物によって光源63が照射する光が遮られ、それゆえ、第1,2の受光部64,65が受光する光が減衰する。第1,2の受光部64,65は、受光する光が小さくなると(減衰すると)、信号を出力する。このように、第1,2の受光部64,65が信号を出力すると、検出用透明パイプ74内の作動油L中にごみが含まれることを示す。
【0043】
図3は、第1,2の受光部64,65の出力信号の一例を示すグラフである。図3に示される第1,2の受光部64,65の出力信号の波形について説明する。図3中、横軸3aは、時間の経過を示す。なお、説明の都合上、横軸に3aの符号を付す。図中横軸3aより下方の範囲3bは、第1の受光部64の出力信号を示し、横軸3aより上方の範囲3cは、第2の受光部65の出力信号を示す。横軸は、図中右側に進むにつれて時間が経過したことを示す。横軸3aは、範囲3b,3cで共通に用いられる。
【0044】
範囲3bでは、縦軸は、出力信号の強さを示す。範囲3bでは、出力信号は、図中下方に進むにつれて強くなる。範囲3cでは、縦軸は、出力信号の強さを示す。範囲3cでは、出力信号は、図中上方に進むにつれて強くなる。
【0045】
第1,2の受光部64,65が出力する信号は、ごみなどの異物の大きさに比例して強くなる。つまり、範囲3b,3cの縦軸は、第1,2の受光部64,65が検出したごみなどの異物の大きさを示し、範囲3bにおいては下方に進むにつれてごみなどの異物が大きいことを示し、範囲3cにおいては上方に進むにつれてごみなどの異物が大きいことを示す。そして、波形の山の数は、第1,2の受光部64,65が出力する信号の個数であり、つまり、ごみなどの異物の個数を示す。
【0046】
汚染度判定部90は、収容空間68内に設けられている。図4は、図1中に示されるF4―F4線に沿って示される計測ユニット60の断面図である。図4は、収容空間68内を示している。図4に示されるように、汚染度判定部90は、第1の計測用基板91と、第2の計測用基板92とを備えている。
【0047】
汚染度判定部90は、作動油Lの単位体積中に含まれるごみなどの異物の量に基づいて、作動油Lの汚染の程度を判定する。単位体積中に含まれるごみなどの量が多くなるほど、作動油Lが汚染されていることになる。
【0048】
なお、ここで言う作動油Lの単位体積中に含まれるごみなどの異物の量とは、ごみなどの異物の数と、これら異物の合計の面積とを示す。なお、個々の異物の面積も測定される。
【0049】
汚染度判定部90は、図3に示されるような第1,2の受光部64,65が出力する信号に基づいて、作動油Lの単位体積当りのごみなどの異物の量を検出する。このため、汚染度判定部90は、検出用透明パイプ74を流れる作動油Lの流量を求めるとともに、第1,2の受光部64,65の出力する信号から異物の量を求める。ここで言う流量は、検出用透明パイプ74内の流路のうちのある断面(流れる方向を垂直に横切る断面)を単位時間(一秒間)に流れる作動油Lの量である。検出用パイプ74は、本実施形態では直線であり、流路断面の面積形状は、流れる方向に一定である。
【0050】
汚染度判定部90による流量の検出について、具体的に説明する。まず、検出用透明パイプ74を流れる作動油Lの流量が変化する点について説明する。作動油Lは、オイルタンク11内とハウジング32内の圧力差によって、検出用透明パイプ74内を流れる。オイルタンク11内とハウジング32の圧力差は、フィルタエレメント31の圧力損失によって決定される。作動油Lは、油圧循環回路10のメインポンプ(図示せず)によって、フィルタエレメント31を通過する。
【0051】
フィルタエレメント31の濾材33は、作動油Lを濾過することによって、作動油L中のごみなどの異物を捕集する。このため、所定期間濾材33が用いられると目詰まりするなどして濾材33の濾過性能が低下し、それゆえ、フィルタエレメント31による圧力損失が変化する。この結果、検出用透明パイプ74を流れる作動油Lの流量が変化する。
【0052】
汚染度判定部90は、図3に示されるように、ある共通の異物を第1,2の受光部64,65が検出した際に出力される信号の時差(Δt秒)に基づいて、その瞬間の検出用透明パイプ74内の流量を検出する。
【0053】
ある異物に対して第1の受光部64が信号を出力した時点から、Δt秒後に第2の受光部65が当該共通の異物に対する信号を出力する。Δt秒は、第1,2の受光部64,65が検出用透明パイプ74にそって離間して配置されることによって生じる時間差である。
【0054】
第1,2の受光部64,65間の距離と、検出用透明パイプ74の流路断面積とは、予め求められている。汚染度判定部90は、これらの値とΔtとに基づいて、検出用透明パイプ74内の作動油Lの流量を検出する。検出用透明パイプ74を流れる作動油Lの流量が常に求めることができるので、単位体積の作動油Lが検出用透明パイプ74を流れたことを検出することもできる。
【0055】
つぎに、汚染度判定部90の異物の量を求める動作を説明する。汚染度判定部90は、第1,2の受光部64,65に接続されている。汚染度判定部90は、第1,2の受光部64,65の計測結果である出力信号をみており、図3に示すように異物に対する信号をうけると、当該信号に対応する異物の量を求める。本実施形態では、光源63と、第1,2の受光部64,65と、汚染度判定部90における異物の量を求める機能とによって、作動油L中の異物の量が求められる。
【0056】
本実施形態では、汚染度判定部90が第1,2の受光部64,65の計測結果である出力に基づいて異物の量を求めたが、これに限定されない。例えば、第1,2の受光部64,65の出力に基づいて異物の量を求める機能を有する算出部を別途に設けてもよい。この場合、この算出部によって算出された異物の量が、汚染度判定部に送信される。または、第1,2の受光部64,65の各々が、異物の量を算出する機能を有する算出部を備えていてもよい。
【0057】
汚染度判定部90は、上記のように、第1,2の受光部64,65の出力信号に基づいて常に作動油Lの流量を検出することによって単位体積の作動油Lの流れを検出し、この単位体積の作動油Lが流れる間に検出されるごみなどの異物の量から、作動油Lの汚染の程度を判定する。
【0058】
さらに、汚染度判定部90は、作動油Lの汚染の程度に基づいて、フィルタエレメント31の交換の必要性や作動油Lの交換の必要性を判定する。汚染度判定部90(本実施形態では、第1,2の計測用基板91,92)は、例えば重機の運転席に設けられるモニタなどに連結されており、フィルタエレメント31の交換の必要がある場合、または、作動油Lの交換の必要がある場合には、モニタに交換を促す指示を表示する。なお、フィルタエレメント31と作動油Lの交換の必要性の報告は、上記の運転席近傍のモニタに限定されるものではない。
【0059】
また、汚染度判定部90は、第1,2の受光部64,65の誤検出をキャンセルする機能を有している。作動油L中にごみなど異物がある場合では、この異物に対して図3に示すように第1,2の受光部64,65が同様の信号(図中、符号S1,S2を付す)を出力する。しかしながら、例えば第1の受光部64が信号を出力せず、第2の受光部65のみが信号を出力する場合では、汚染度判定部90は、このときの第2の受光部65の出力は誤検出であるとし、異物の量に含めない。なお、図3中には、一例として、第2の受光部65のみが信号(図中符号S3を付す)を出力した場合を示している。この信号S3は、誤検出として認識される。
【0060】
このように、第1,2の受光部64,65のうちどちらか一方のみが信号を出力した場合では、当該信号はごみなどの異物の誤検出であるとする。
【0061】
また、本実施形態では一例として、汚染判定部90は、第1,2の受光部64,65の出力信号において、予め設定された強さの信号値P1以下の信号については、ごみなどの異物としては認識しない。信号値P1は、任意に設定することができる。なお、信号値P1以下については異物としては認識しないことは、一例であり、全ての信号値を異物として認識するようにしてもよい。
【0062】
このように、本実施形態では、作動油Lがフィルタエレメント31を通過することに起因する圧力損失を利用して、計測ユニット60に作動油Lを導く。このため、計測ユニット60内を流れる作動油Lの圧力は、油圧循環回路10を駆動するメインポンプ(図示せず)の圧力よりも小さくできる。この結果、作動油Lの汚染の程度の測定に用いられる検出用透明パイプ74が圧力によって損傷することを抑制することができる。さらに、汚染の程度を検出するための別途のポンプを必要としないので、作動油中の異物を安価に検出できるフィルタ装置を提供できる。
【0063】
このことは、本実施形態のように計測ユニット60が検出用透明パイプ74を用いる構造においては、特に有効である。
【0064】
また、汚染度判定部90が、第1,2の受光部64,65の検出結果に基づいて検出用透明パイプ74内を流れる作動油Lの流量を常に検出することによって、作動油Lの単位体積あたりのごみなどの異物の量を正確に検出できるようになるので、作動油Lの汚染の程度を正確に検出することができる。
【0065】
つぎに、本発明の第2の実施形態に係るフィルタ装置を説明する。なお、本実施形態では、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態では、フィルタ装置20の構造は、第1の実施形態と同様である。本実施形態では、汚染度判定部90における作動油Lの汚染の程度の判定にかかる動作が第1の実施形態と異なる。このため、本実施形態においても図面は、第1の実施形態と同様に図1〜4を用いる。フィルタ装置20の他の動作は、第1の実施形態と同様であってよい。上記異なる動作について具体的に説明する。
【0066】
第1の実施形態では、汚染度判定部90は、検出用透明パイプ74内を流れる作動油Lの流量を常に検出しており、検出される流量に基づいて作動油Lの単位体積あたりのごみなどの異物の量を求めて作動油Lの汚染の判定を行っている。
【0067】
これに対し、本実施形態では、汚染度判定部90は、第1の実施形態と同様に常に検出用透明パイプ74内を流れる作動油Lの流量(単位時間当たりの作動油Lのながれる量)を検出するとともに、検出用透明パイプ74内を流れる作動油Lの流量が予め設定される所定流量となるときに作動油Lの汚染の程度を判定する。
【0068】
具体的には、汚染度判定部90は、第1の実施形態と同様に検出用透明パイプ74内の作動油Lの流量を検出する。そして、検出された流量が予め設定された流量(単位時間当たりの作動油Lの流れる量)と同じ値となると、予め設定された流量が維持される時間と、予め設定された流量が維持される間のごみなどの異物の量を検出する。
【0069】
汚染度判定部90は、予め設定された流量と、予め設定された流量が維持される時間と、この時間内のごみなどの異物の量とから、作動油Lの単位体積あたりのごみなどの異物の量を求めることができ、作動油Lの汚染の程度を判定することができる。
【0070】
このように、予め設定された流量を用いることによって、作動油Lの単位体積あたりのごみなどの異物の量を正確に計算することができるので、第1の実施形態と同様に、作動油Lの汚染の程度を正確に判定することができる。
【0071】
なお、本実施形態において、本実施形態において第1の実施形態と同様の部分においては、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0072】
この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0073】
20…フィルタ装置、31…フィルタエレメント31、62…計測用流路部、63…光源、64…第1の受光部(受光部)、64…第2の受光部(受光部)、74…検出用透明パイプ(検出用パイプ)、90…汚染度判定部、100…計測部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過すべき液を濾過するフィルタエレメントと、
前記フィルタエレメントより上流の位置と前記フィルタエレメントより下流の位置とを前記フィルタエレメントを迂回して連通するとともに、前記濾過すべき液を流す計測用流路部と、
前記計測用流路部内を流れる前記濾過すべき液の異物の量を計測する計測部と
を具備することを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記計測用流路部は、光を透過する検出用パイプを具備し、
前記計測部は、
検出用パイプに光を照射する光源と、
前記検出用パイプを通過した光を受光し、前記検出用パイプを前記異物が通過するとことに起因する前記光の変化を検出して出力する受光部と
を具備することを特徴とする請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のフィルタ装置において、
前記受光部の出力に基づいて前記濾過すべき液の汚染の程度を求める汚染度判定部を具備し、
前記受光部は2つ設けられて前記検出用パイプにそって離間して配置され、
前記汚染度判定部は、前記検出用パイプを流れる同一の異物に対する上流に配置される受光部の出力時点と下流に配置される受光部の出力時点との時差に基づいて前記検出用パイプに流れる前記濾過すべき液の流量を検出し、当該検出した流量に基づいて前記汚染の程度を検出する
ことを特徴とするフィルタ装置。
【請求項4】
請求項2に記載のフィルタ装置において、
前記受光部の出力に基づいて前記濾過すべき液の汚染の程度を求める汚染度判定部を具備し、
前記受光部は2つ設けられて前記検出用パイプにそって離間して配置され、
前記汚染度判定部は、前記検出用パイプを流れる同一の前記異物に対する上流に配置される受光部の出力時点と下流に配置される受光部の出力時点との時差に基づいて前記検出用パイプに流れる前記濾過すべき液の流量を検出し、当該検出した流量が予め設定された流量であるときに前記濾過すべき液の前記汚染の程度を検出する
ことを特徴とするフィルタ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−122852(P2011−122852A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278783(P2009−278783)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000178675)ヤマシンフィルタ株式会社 (18)