説明

フィードストロークを変更可能な低空頭用掘削装置

【課題】マストを追加延長できるようにして、空頭に余裕のある現場においては掘削効率を高め、装置の稼働率を高める昇降装置を提供する。
【解決手段】スキッドベースと、スキッドベースに支持され、その前後方向に相対スライドするフレームと、フレームに立設されたローラチェーン11を設けたマスト3と、ローラチェーン11に噛み合うピンスプロケットによって昇降するスイベルヘッド5を取り付けた昇降装置とケリーロッドを回転させるターンテーブル30とを備えた低空頭用の掘削装置において、ローラチェーン11を設けた延長マストをマストに着脱自在に取り付け、トータルのマストの高さを高くし、フィードストロークを大きく取れるようにして掘削効率を高めた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駅プラットホーム下などの空頭が制限された現場において使用する掘削装置のフレームを延長できるようにしてフィードストロークを変更できるようにしたものであり、空頭に余裕がある場合、できるだけ掘削管のフィードストロークを大きくして掘削効率を高めることができるようにした掘削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
営業中の鉄道の駅舎にプラットホームを増設したり、駅ビルを増改築する場合、基礎工や土留工は、鉄道営業の障害とならないよう、特に、利用者の障害とならないように運行終了後の夜間に実施せざるを得ず、また、レール上には電車用電源を供給する架線があるため、万が一にも工事機械が接触しないようにしなければならないため、通常の施工機械が使用できず、工期がかかるという問題がある。また、新たに構築する基礎は、線路と線路の間やプラットホームの下に構築することになるが、構築の際に施工機械が乗客の障害物とならないようにする必要がある。
このような課題を解決するものとして図1に示すように、スキッドベースによって水平方向に移動可能とし、このスキッドベースに立設されたフレームとマスト及びベースに設けたターンテーブルによってケリーロッドを回転駆動することによって2m以下の空頭であっても設置可能な低空頭掘削装置を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−39921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、低空頭用の掘削装置であるため、空頭に余裕がある現場であっても、掘削管であるケリーロッドのフィードストロークがフレームの高さで制限され、掘削管の継ぎ足し作業を頻繁におこなわなければならず掘削効率が低いので、空頭に余裕のある現場で使用するには掘削効率が低いという問題があり、使用できる現場が限定されるため掘削装置の稼働率が低いものであった。
本発明は、空頭に余裕のある現場においては、フレームを延長できるようにし、掘削効率を高め、装置の稼働率を高くするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
フレーム下部にスキッドベースがスライド可能に設けてあり、フレームとスキッドベースはシリンダジャッキで連結されており、フレーム下部には独立駆動されるレベリングジャッキが設けてあり、フレームにはローラチェーンを固定したマストが設けてあると共に中央部には掘削ビットを回転駆動するターンテーブルが設けてあり、ターンテーブルの外側にはターンテーブルを駆動する油圧モータが設けてあり、マストに設けた固定ローラチェーンに噛み合うピンギヤスプロケットを有する昇降装置にスイベルヘッドが取り付けてあり、更に、マストの上部に連結可能であり、ローラチェーンが固定してある着脱可能な延長マストからなる低空頭用の掘削装置である。
【発明の効果】
【0006】
この発明の掘削装置は、掘削ロッドの駆動方式がターンテーブル方式であり、フレームに設けたマストの上部に延長マストを追加設置することができるようにしてあるため、低空頭の現場でも稼動させることができると共に、空頭に余裕がある現場では延長マストを設けて掘削効率を高め、掘削装置の稼働率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】低空頭掘削装置の平面図。
【図2】低空頭掘削装置の側面図。
【図3】低空頭掘削装置の正面図。
【図4】ケリーロッドの斜視図。
【図5】延長マストを取り付けた低空頭掘削装置の側面図。
【図6】延長マストを取り付けた低空頭掘削装置の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
この発明の低空頭掘削装置を添付の図面を参照して説明する。図1〜図3に示すように、掘削装置は、空頭が2m程度と極めて制限された現場においても稼働可能であり、掘削装置の高さを1.8m程度にしてある。
掘削装置は、スキッドベース1、フレーム2、マスト3、昇降装置4、及びターンテーブル30を備えている。スキッドベース1は、1対のスキッド1a、1aが連結部材1bで連結された枠体であり、フレーム2は、スキッドベース1のスキッド1a、1a上にガイド6を介してスライド可能に搭載されており、スキッドベース1が地盤面に接地する。スキッドベース1の後部の連結部材1bとフレーム2との間に油圧シリンダ7が配置され、その伸縮作動によりスキッドベース1に対してフレーム2がスライドできるようにしてある。
【0009】
フレーム2の前後方向に沿う両側部には独立に駆動可能なレベリングジャッキ8、8が設けてあり、このレベリングジャッキ8を作動させることによってフレーム2をスキッドベース1と共に接地面から浮き上がらせることができる。レベリングジャッキ8を独立に駆動することによって片方のスキッド1aを単独で地盤面から浮き上がらせることができ、斜め方向に進行させることも可能である。
全てのレベリングジャッキ8を作動させてスキッドベース1を地盤面から浮き上がらせ、油圧シリンダ7を作動させて伸縮させることによって掘削装置を尺取虫のように前後進させることができる。
【0010】
フレーム2にはベースプレート9が設けられ、マスト3がベースプレート9上に立設されている。図3に示すように、マスト3は枠体であり、その前部に昇降装置4を案内する縦方向に延びる1対のガイド10、10が設けられている。ガイド10、10に沿ってローラチェーン11が設置されており、昇降装置4にはローラチェーン11に対応して1対のピンギヤスプロケット12、12が収容されており、ローラチェーン11に沿って昇降装置4が上下動する。
昇降装置には油圧モータ13が設けられており、この油圧モータ13によりスプロケット12、12が回転し、ローラチェーン11、11に沿って昇降する。マスト3には昇降装置4の上昇限度位置及び下降限度位置を規定するストッパ20aが設けられている。
固定ローラチェーンとピンギヤスプロケットの昇降装置は、ラックアンドピニオン方式に比較して高い組立て精度が要求されず、コスト的に有利であり、また、昇降スライド面の磨耗によるがたつきに対しても柔軟に対応することができるので維持修繕が容易であると共に、費用を削減することができる。
【0011】
スイベルヘッド5が昇降装置4にブラケット14を介して取り付けられており、図4に示すケリーロッド15がフランジ16を介して接続される。また、このスイベルヘッド5には排泥管17が接続されている。
【0012】
ケリーロッド15は、図4に示すように管体の両側面にチャンネル鋼などの鋼材が溶接されて回転駆動力伝達用突起41が形成されている。管体の両端部にはフランジ43が設けてあり、フランジ43の下面には補強リブ42が設けてある。一方のフランジにはケリーロッド同士を接続する際の長短のガイド44、44が設けてあり、接続時の位置合わせを容易にしており、他方のフランジ43の対応する位置には位置合わせ用の穴が形成してある。
【0013】
ケリーロッド4の接続はボルト46でおこない、一方のフランジにボルトが補助具によって予め取り付けてあり、狭い空間での接続作業を容易にしている。他方のフランジ43には対応した位置に接続用の穴が形成してある。管体の側面にはケリーロッド4を取り扱う際のクレーンのフックなどを引っ掛ける金具47が設けてある。
【0014】
マスト3の両側部にはケリーロッド15の継ぎ足し・切り離し時に、ケリーロッド15を吊り下げるためのアーム23、23が設けられている。このアーム23、23はマスト3にヒンジ24を介して取り付けられ、水平面内を旋回自在である。アーム23、23の後端にはウィンチ25が設けられている。アーム23、23の先端にはプーリ26が設けられている。ウィンチ25から繰り出されて、プーリ26に掛けられて垂下するワイヤロープ27の先端にはフック27aが設けられている。このフック27aに掛止するためのブラケット47が、ケリーロッド15の周面に設けられている。
【0015】
ターンテーブル30は、フレーム2に設置されている。ターンテーブル30はこれを回転自在に支持する支持フレーム31を有している。支持フレーム31の内部にはターンテーブル30の駆動伝達機構が配置されており、ターンテーブル30の外周に形成されたリングギヤと、このリングギヤに噛み合うアイドルギヤと、このアイドルギヤに噛み合うピニオンとが配置されている。ピニオンは支持フレーム31上に設置された油圧による駆動モータ32に取り付けられたギヤであり、この駆動モータ32の作動によりターンテーブル30が回転する。
【0016】
ターンテーブル30の内周にはブッシュが着脱自在に取り付けられ、このブッシュの内周面にはケリーロッド15の突起41が嵌合する溝が設けられており、ターンテーブル30の回転がケリーロッド15に伝達され、ケリーロッド15の先端に取り付けられたビットが回転して掘削がおこなわれる。
【0017】
スイベルヘッド5が図2の二点鎖線で示す下降位置に達したら、新たなケリーロッド15を継ぎ足す。まず、スイベルヘッド5とケリーロッド15の接続を解除してマスト3の上部まで上昇させ、マスト3を後退させて新たなケリーロッド15を継ぎ足す。次いで、マスト3を前進させてスイベルヘッド5と新たなケリーロッド15を接続する。低空頭空間では、マスト3の高さをできる限り低くしてあるため、フィードストロークが小さなものとなり、掘削効率が犠牲となっている。
【0018】
この問題を解決するため、マスト3の約2分の1程度の高さの延長マスト3aをマスト3の上部に着脱自在に連結できるようにしてある。
延長マスト3aは、図5、及び図6に示すように、マスト3と同様の枠体構造であり、前面側には昇降装置4を案内する縦方向に延びる1対のガイドが設けられ、ガイドに沿ってローラチェーン11がマスト3に設けたローラチェーン11と同じ間隔に配置してあり、延長マスト3a連結後のローラチェーン11が直線となるようにしてある。
マスト3に設けてあったストッパ20aは撤去し、延長マスト3aに設置する。
ローラチェーン11とピンギヤスプロケット12を有する昇降装置4は、前述のように、他の方式に比較して高い組立て精度が要求されないので組立が容易であり、マスト3及び延長マスト3aに多少の変形があっても、昇降装置4の昇降動作にあまり影響しないので好都合である。
【0019】
延長マスト3aは底部に連結用の穴を設けた連結板が設けてあり、マスト3の上部にも同様に連結穴を設けてボルトとナットなどの連結具によって連結する。
掘削装置の高さを1.8m程度にした場合のフィードストロークf1は約1.1mしか取れないが、高さ1mの延長マストを連結することによってフィードストロークは、図5に示すようにf1+f2となって約2倍に改善されるので、ケリーロッド15の継ぎ足し交換作業の回数が同一深さを掘削する場合に約半分の回数で済むことになり掘削効率を飛躍的に高めることができる。
【符号の説明】
【0020】
1:スキッドベース
2:フレーム
3:マスト
3a:延長マスト
4:昇降装置
5:スイベルヘッド
7:駆動シリンダ
8:レベリングジャッキ
10:ガイド
11:ローラチェーン
12:ピンスプロケット
13:駆動モータ
15:ケリーロッド
23:アーム
25:ウィンチ
26:プーリ
27:ワイヤロープ
30:ターンテーブル
31:支持フレーム
32:駆動モータ
41:突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム下部にスキッドベースがスライド可能に設けてあり、フレームとスキッドベースはシリンダジャッキで連結されており、フレーム下部には独立駆動されるレベリングジャッキが設けてあり、フレームにはローラチェーンを固定したマストが設けてあると共に中央部には掘削ビットを回転駆動するターンテーブルが設けてあり、ターンテーブルの外側にはターンテーブルを駆動する油圧モータが設けてあり、マストに設けた固定ローラチェーンに噛み合うピンギヤスプロケットを有する昇降装置にスイベルヘッドが取り付けてあり、更に、マストの上部に連結可能であり、ローラチェーンが固定してある着脱可能な延長マストからなる低空頭掘削装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−53483(P2013−53483A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193392(P2011−193392)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000216025)鉄建建設株式会社 (109)
【出願人】(599112113)株式会社東亜利根ボーリング (25)
【Fターム(参考)】