説明

フェナントレノン化合物、組成物および方法

本発明は、グルココルチコイド受容体の調節因子である式(I)の化合物またはその塩を対象とする。本発明の化合物および塩は、グルココルチコイド受容体活性によって媒介される状態の治療において有用である。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グルココルチコイド受容体調節因子である化合物を包含する。本発明はまた、組成物、ならびに化合物および組成物を使用する方法も包含する。
【背景技術】
【0002】
グルココルチコイド受容体調節因子は、それらの強い抗炎症、抗増殖および免疫調節活性ゆえに、様々な状態を治療するために使用されるグルココルチコイド受容体リガンドである。J.Minerら、Expert Opin.Investig.Drugs(2005)14(12):1527〜1545。
【0003】
グルココルチコイド受容体調節因子の例は、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、RU−486を包含し、WO2000/66522およびWO2004/005229において記載されている通りである。
【0004】
グルココルチコイド受容体調節因子による治療は、多くの場合、骨喪失および骨粗しょう症等の副作用を伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
効果的、強力であり、かつ副作用が緩和されたグルココルチコイド受容体調節因子を特定することは、医学上の必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、式Iの化合物:
【0007】
【化1】

またはその塩に関する。これは、化合物4b−ベンジル−6,7−ジヒドロキシ−6−メチル−N−(2−メチルピリジン−3−イル)−10−オキソ−7−フェニル−4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボキサミド、または薬学的に許容できるその塩を包含する。
【0008】
本発明はまた、治療有効量の式Iの化合物と、薬学的に許容できる担体とを含む組成物にも関する。グルココルチコイド受容体を式Iの化合物と接触させる方法も提供される。式Iの化合物を対象に投与することにより、該対象においてグルココルチコイド受容体活性によって媒介される状態を治療する方法がさらに提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書におけるこの詳細な説明は、当業者が、特定の使用の要件に最適となり得るように、それらの多数の形態で本発明を適合および適用することができるように、発明、原理および実践的応用を当業者に伝えることのみを意図している。したがって、これらの発明は、本明細書において記載されている実施形態に限定されず、修正され得る。
【0010】
A.定義
特許請求の範囲または本明細書中の他の箇所において異なる定義が与えられていない限り、下記で定義する用語にはこれらの定義が適用されるものとする。
【0011】
用語「担体」は、活性医薬化合物以外の医薬組成物または製剤中の構成要素を記述する。担体は、薬学的に許容できる材料もしくはビヒクル、または1種もしくは複数の材料および/もしくはビヒクルの組合せであってよい。例は、液体または固体充填剤、賦形剤、添加剤、溶媒、共溶媒、緩衝剤、保存剤、酸化防止剤、湿潤剤、崩壊剤、結合剤、懸濁化剤、界面活性剤、湿潤剤、増量剤、ポリマー、流動促進剤、着色剤、香味剤、甘味料、滑沢剤、保湿剤、および錠剤化または被包材料を包含する。
【0012】
語句「グルココルチコイド受容体を接触させる」は、グルココルチコイド受容体とのインビボ、エクスビボまたはインビトロ接触が為されることを意味し、グルココルチコイド受容体を有する対象への本発明の化合物または塩の投与、および、例えば、グルココルチコイド受容体を含有する、細胞の、未精製または精製調製物を含有する試料に本発明の化合物または塩を導入することを包含する。例えば、接触させることは、結合等、化合物と受容体との間の相互作用を包含する。
【0013】
語句「炎症関連状態」は、関節炎、線維筋痛、強直性脊椎炎、乾癬、全身性エリテマトーデス、痛風、未分化脊椎関節症(spondyloarthropy)、若年発症脊椎関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、および上述の状態に関連する疼痛を包含する。関節炎の具体例は、関節リウマチ、骨関節炎、反応性関節炎、感染性関節炎、乾癬性関節炎、多発性関節炎、若年性関節炎、若年性関節リウマチ、若年性反応性関節炎および若年性乾癬性関節炎を包含する。
【0014】
用語「調節」または「調節因子」は、アンタゴニスト、アゴニスト、部分アンタゴニスト、部分アゴニスト、またはそれらの混合物もしくは比率を包含する。
【0015】
用語「対象」は、マウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、霊長類またはヒト等の哺乳動物を包含する任意の動物を指す。
【0016】
用語「治療(treating)」(ならびに対応する用語「治療する」および「治療(treatment)」)は、対象の緩和的、回復的および防止的(「予防的」)治療を包含する。用語「緩和的治療」は、対象における状態の影響または強度を、該状態を治すことなく和らげ、または軽減する治療を指す。用語「防止的治療」(および対応する用語「予防的治療」)は、対象において状態の発生を防止する治療を指す。用語「回復的治療」(「治癒法」)は、対象において状態の進行を停止させ、病理学的徴候を軽減し、または該状態を完全に解消する治療を指す。治療は、患者、研究者、医師、獣医または臨床医等の個人が求めている組織、系または対象の生物学的または医薬的応答を誘発する治療有効量の化合物、塩または組成物によって為され得る。
【0017】
用語「薬学的有効」または「治療有効」は、上記で論じた通りの有効な治療を提供するために十分な本明細書における化合物またはその塩の量を指す。薬学的または治療有効量を含むものは、別の作用物質と組み合わせて投与される場合に、単独で利用される場合よりも少ない量の化合物または塩であってよいことが理解される。
【0018】
B.化合物
本発明は、式Iの三環式化合物を提供する。これらの化合物は、グルココルチコイド受容体調節因子として有用である。
【0019】
本発明はまた、式IIの化合物:
【0020】
【化2】

またはその塩も含む。
【0021】
本発明は、化合物4b−ベンジル−6,7−ジヒドロキシ−6−メチル−N−(2メチルピリジン−3−イル)−10−オキソ−7−フェニル−4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボキサミドまたは薬学的に許容できるその塩を包含する。化合物(4bR,6R,7R,8aS)−4b−ベンジル−6,7−ジヒドロキシ−6−メチル−N−(2−メチルピリジン−3−イル)−10−オキソ−7−フェニル−4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボキサミドまたは薬学的に許容できるその塩も包含される。
【0022】
本発明の化合物の薬学的に許容できる塩は、その酸付加および塩基塩(二塩(disalt)を包含する)を包含する。一実施形態において、本発明は、式Iの化合物の塩酸塩を包含する。別の実施形態において、本発明は、式Iの化合物のカルシウム塩を包含する。別の実施形態において、本発明は、式Iの化合物のナトリウム塩を包含する。
【0023】
薬学的に許容できる酸付加塩は、非毒性塩を形成する酸から形成される。例は、酢酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グロクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベンズ酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩(naphthylate)、2−ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩およびトリフルオロ酢酸塩を包含する。薬学的に許容できる塩基塩は、非毒性塩を形成する塩基から形成される。例は、アルミニウム塩、アルギニン塩、ベンザチン塩、カルシウム塩、コリン塩、ジエチルアミン塩、ジオールアミン塩、グリシン塩、リジン塩、マグネシウム塩、メグルミン塩、オラミン塩、カリウム塩、ナトリウム塩、トロメタミン塩および亜鉛塩を包含する。
【0024】
適切な塩についての総説は、「Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use」、StahlおよびWermuth著(Wiley−VCH、Weinheim、Germany、2002)を参照されたい。
【0025】
塩は、本発明の化合物の溶液と、必要に応じて所望の酸または塩基とを一緒に混合することによって容易に調製できる。塩は、溶液から沈殿させ濾過によって収集してよく、または溶媒の蒸発によって回収してもよい。塩におけるイオン化の程度は、完全なイオン化からほとんどイオン化していない程度まで変動し得る。
【0026】
本発明の化合物は、プロドラッグとして投与され得る。よって、それ自体は薬理活性をほとんどまたは全く有し得ないある特定の誘導体は、体内または体表に投与されると、例えば加水分解によって、所望の活性を有する本発明の化合物に変換され得る。そのような誘導体を、「プロドラッグ」と称する。プロドラッグの使用についてのさらなる情報は、「Pro−drugs as Novel Delivery Systems」、14巻、ACS Symposium Series(T HiguchiおよびW Stella)および「Bioreversible Carriers in Drug Design」、Pergamon Press、1987(E B Roche編、American Pharmaceutical Association)において見ることができる。
【0027】
プロドラッグは、例えば、本発明の化合物中に存在する適切な官能基を、例えば「Design of Prodrugs」、H Bundgaard著(Elsevier、1985)において記載されている通り、「プロ部分」として当業者に既知のある特定の部分と置き換えることによって生成できる。
【0028】
そのようなプロドラッグのいくつかの例は、
(i)化合物がアルコール官能基(−OH)を含有する場合は、そのエーテル、例えば、水素の(C〜C)アルカノイルオキシメチルによる置き換え、および
(ii)化合物が第二級アミノ官能基を含有する場合は、そのアミド、例えば、水素の(C〜C10)アルカノイルによる置き換え
を包含する。
【0029】
本明細書における化合物のリン酸塩形態は、WO2008/070149、WO2008/064274およびWO2006/078846において開示されているもの等、当技術分野において既知の方法によって調製できる。化合物(4a−ベンジル−2,3−ジヒドロキシ−3−メチル−N−(2−メチルピリジン−3−イル)−9−オキソ−2−フェニル−1,2,3,4,4a,9,10,10a−オクタヒドロフェナントレン−7−カルボキサミド)メチル二水素ホスフェートおよび立体異性体((2R,3R,4aR10aS)−4a−ベンジル−2,3−ヒドロキシ−3−メチル−N−(2−メチルピリジン−3−イル)−9−オキソ−2−フェニル−1,2,3,4,4a,9,10,10a−オクタヒドロフェナントレン−7−カルボキサミド)メチル二水素ホスフェートは、以下のスキームによって調製できる。
【0030】
【化3】

【0031】
最後に、本発明のある特定の化合物は、それ自体が本発明の他の化合物のプロドラッグとして作用し得る。例えば、式IまたはIIのある特定の化合物は、式IまたはIIによって包括される他の化合物のプロドラッグとみなされ得る。
【0032】
複数種の異性を有する化合物または塩および1種または複数のそれらの混合物を包含する化合物または塩の、立体異性体、幾何(シス/トランスまたはZ/E)異性体および互変異性形態等の全ての異性体は、本発明の範囲内に包含される。例えば、下記は、式IIの化合物および互変異性体を描写している。
【0033】
【化4】

【0034】
対イオンが、光学活性、例えばD−乳酸もしくはL−リジン、またはラセミ、例えばDL−酒石酸もしくはDL−アルギニンである酸付加塩または塩基塩も包含される。
【0035】
異性体は、当業者に周知の従来の技術によって分離することができる。
【0036】
本発明は、1個または複数の原子が、同じ原子番号を有するが、原子質量または質量数が自然界において通常見られる原子質量または質量数とは異なる原子によって置き換えられている、本発明の同位体標識化合物を包含する。
【0037】
本発明の同位体標識化合物は、一般に、当業者に既知の従来の技術によって、または以前に用いられた非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を使用し、添付の実施例および調製において記載されている工程に類似した工程によって調製できる。
【0038】
以下で言及する状態の治療のために、本発明の化合物が投与され得る。本発明の化合物の塩を使用してもよい。
【0039】
C.組成物
本発明の化合物または塩は、組成物の一部であってよい。組成物は、1種または複数の本発明の化合物または塩も包含することができる。組成物は、ある鏡像体過剰率の1種または複数の本発明の化合物も包含し得る。他の薬理的活性物質および担体が組成物に包含され得る。
【0040】
一実施形態は、式Iの化合物またはその塩を含む組成物である。別の実施形態は、式Iの化合物またはその塩と、担体とを含む組成物である。
【0041】
例えば、担体は添加剤であってよい。添加剤の選択は、特定の投与モード、可溶性および安定性に対する添加剤の影響、ならびに剤形の性質等の要因に大きく依存することになる。
【0042】
組成物は、固体、液体または両方であってよく、0.05重量%〜95重量%の活性化合物を含有し得る単位用量組成物、例えば錠剤として、化合物と配合され得る。本発明の化合物または塩は、適切なポリマーまたは他の薬物担体とカップリングされ得る。
【0043】
D.方法
本発明は、グルココルチコイド受容体を、本発明の化合物または塩と接触させる方法を包含する。
【0044】
本発明はまた、対象においてグルココルチコイド受容体活性によって媒介される状態を治療する方法であって、該対象に、本発明の化合物または塩を投与するステップを含む方法も包含する。
【0045】
グルココルチコイド受容体活性によって媒介される状態は、
a)原発性または続発性副腎皮質不全、先天性副腎過形成、非化膿性甲状腺炎、および癌に伴う高カルシウム血症等の内分泌障害
b)乾癬性関節炎、若年性関節リウマチを包含する関節リウマチ、強直性脊椎炎、急性および亜急性滑液包炎、急性非特異的腱滑膜炎、急性痛風関節炎、外傷後骨関節炎、骨関節炎の滑膜炎、および上顆炎等のリウマチ障害、
c)全身性エリテマトーデスおよび急性リウマチ性心臓炎等のコラーゲン疾患、
d)天疱瘡、水疱性ヘルペス状皮膚炎(bullous dermatitis herpetiformis)、重症多形性紅斑(スティーブンス・ジョンソン症候群)、剥脱性皮膚炎、菌状息肉腫、乾癬、および脂漏性皮膚炎等の皮膚科学的状態、
e)季節性または通年性アレルギー、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、血清病、および薬物過敏反応等のアレルギー状態、
f)アレルギー性角膜辺縁潰瘍、眼部帯状疱疹、前眼部炎症、びまん性後部ブドウ膜炎および脈絡膜炎、慢性ブドウ膜炎、交感性眼炎、アレルギー性結膜炎、角膜炎、脈絡網膜炎、視神経炎、虹彩炎、および虹彩毛様体炎等の眼疾患および状態
g)症候性サルコイドーシス、レフラー症候群、ベリリウム症、劇症または播種性肺結核、および誤嚥性肺炎等の呼吸器系疾患
h)特発性血小板減少性紫斑病、続発性血小板減少症、後天性(自己免疫性)溶血性貧血、赤芽球減少症(赤血球貧血)、および先天性(赤血球系)再生不良性貧血等の血液障害
i)白血病およびリンパ腫等の新生物性疾患、
j)特発型のまたはエリテマトーデスによる、尿毒症を伴わないネフローゼ症候群における利尿促進またはタンパク尿の排出等の浮腫状態
k)潰瘍性大腸炎、限局性腸炎、炎症性腸疾患、クローン病、胃炎、過敏性腸症候群等の消化器疾患
l)結核性髄膜炎および旋毛虫症等の混合型の状態、ならびに
m)アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄損傷、精神病性大うつ病および末梢性ニューロパチー等の神経学的状態
を包含する。
【0046】
グルココルチコイド受容体活性によって媒介される状態はまた、移植片拒絶反応(例えば、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓(例えば島細胞)、骨髄、角膜、小腸、皮膚同種異系移植片、皮膚同種移植片(熱傷治療において用いられるもの等)、心臓弁異種移植片、血清病および移植片対宿主疾患、関節リウマチ、乾癬性関節炎、多発性硬化症、I型およびII型糖尿病、若年性糖尿病、肥満、喘息、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎等)、壊疽性膿皮症(gangrenum)、狼蒼(全身性エリテマトーデス(erythematosis))、重症筋無力症、乾癬、皮膚炎、皮膚筋炎、湿疹、脂漏症、肺炎症、目のブドウ膜炎、肝炎、バセドウ病、橋本甲状腺炎、自己免疫性甲状腺炎、ベーチェットまたはシェーグレン(Sjorgen’s)症候群(眼乾燥/口内乾燥)、悪性または免疫性溶血性貧血、アテローム性動脈硬化症、アジソン病(副腎の自己免疫疾患)、特発性副腎不全、多腺性自己免疫疾患(多腺性自己免疫症候群としても既知である)、糸球体腎炎、強皮症、限局性強皮症、扁平苔癬、白斑(viteligo)(皮膚の色素脱失)、円形脱毛症、自己免疫性脱毛症、自己免疫性下垂体機能低下症(hypopituatarism)、ギラン・バレー症候群ならびに肺胞炎等の自己免疫疾患、接触過敏症、遅延型過敏症、接触性皮膚炎(ツタウルシによるものを包含する)、蕁麻疹(uticaria)、皮膚アレルギー、呼吸器アレルギー(花粉症、アレルギー性鼻炎)およびグルテン過敏性腸症(セリアック病)を包含するT細胞媒介性過敏性疾患、骨関節炎、急性膵炎、慢性膵炎、急性呼吸促迫症候群、セザリー症候群、ならびに再狭窄、狭窄およびアテローム性動脈硬化症(artherosclerosis)等の炎症性およびまたは増殖性(proliferatory)要素を有する血管疾患等の、炎症性疾患も包含する。
【0047】
グルココルチコイド受容体活性によって媒介される状態はまた、
a)あらゆる種類、病原または病因の喘息、特に、アトピー性喘息、非アトピー性喘息、アレルギー性喘息、アトピー性気管支IgE媒介性喘息、気管支喘息、本態性喘息、真性喘息、病態生理学的異常によって引き起こされる内因性喘息、環境要因によって引き起こされる外因性喘息、未知または不明の原因の本態性喘息、非アトピー性喘息、気管支炎性喘息、気腫性喘息、運動誘発性喘息、アレルゲン誘発性喘息、冷気誘発性喘息、職業性喘息、細菌、真菌、原虫またはウイルス感染によって引き起こされる感染性喘息、非アレルギー性喘息、初発喘息、喘鳴幼児症候群および細気管支炎(bronchiolytis)からなる群から選択されるメンバーである喘息、
b)慢性または急性気管支収縮、慢性気管支炎、小気道閉塞および気腫、
c)あらゆる種類、病原または病因の閉塞性または炎症性気道疾患、特に、慢性好酸球性肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性気管支炎を包含するCOPD、COPDに関連するまたは関連しない肺気腫または呼吸困難、不可逆的な進行性気道閉塞を特徴とするCOPD、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、他の薬物療法の結果生じる気道過敏性の増悪、および肺高血圧症を伴う気道疾患からなる群から選択されるメンバーである閉塞性または炎症性気道疾患、
d)あらゆる種類、病原または病因の気管支炎、特に、急性気管支炎、急性喉頭気管気管支炎、アラキジン酸性気管支炎、カタル性気管支炎、クループ性(croupus)気管支炎、乾性気管支炎、感染性喘息性気管支炎、増殖性気管支炎、ブドウ球菌(staphylococcus)または連鎖球菌気管支炎および小胞性気管支炎、急性肺損傷からなる群から選択されるメンバーである気管支炎、ならびに
e)あらゆる種類、病原または病因の気管支拡張症、特に、円柱状気管支拡張症、嚢胞状気管支拡張症、紡錘状気管支拡張症、細気管支拡張症(capillary bronchiectasis)、嚢状気管支拡張症、乾性気管支拡張症および濾胞状気管支拡張症からなる群から選択されるメンバーである気管支拡張症
も包含する。
【0048】
別の実施形態は、あらゆる種類、病原または病因の閉塞性もしくは炎症性気道疾患、特に、慢性好酸球性肺炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性気管支炎を包含するCOPD、COPDに関連するもしくは関連しない肺気腫もしくは呼吸困難、不可逆的な進行性気道閉塞を特徴とするCOPD、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、他の薬物療法の結果生じる気道過敏性の増悪、および肺高血圧症を伴う気道疾患からなる群から選択されるメンバーである閉塞性もしくは炎症性気道疾患、または、あらゆる種類、病原または病因の喘息、特に、アトピー性喘息、非アトピー性喘息、アレルギー性喘息、アトピー性気管支IgE媒介性喘息、気管支喘息、本態性喘息、真性喘息、病態生理学的異常によって引き起こされる内因性喘息、環境要因によって引き起こされる外因性喘息、未知もしくは不明の原因の本態性喘息、非アトピー性喘息、気管支炎性喘息、気腫性喘息、運動誘発性喘息、アレルゲン誘発性喘息、冷気誘発性喘息、職業性喘息、細菌、真菌、原虫もしくはウイルス感染によって引き起こされる感染性喘息、非アレルギー性喘息、初発喘息、喘鳴幼児症候群および細気管支炎からなる群から選択されるメンバーである喘息を治療するのに使用するための、本発明の化合物または塩の使用を包含する。
【0049】
本発明は、対象において炎症関連状態を治療する方法であって、該対象に、本発明の化合物または塩を投与するステップを含む方法を包含する。
【0050】
本発明は、対象において、喘息、皮膚炎、炎症性腸疾患、アルツハイマー病、精神病性大うつ病、ニューロパチー、移植片拒絶反応、多発性硬化症、慢性ブドウ膜炎または慢性閉塞性肺疾患等の状態を治療する方法であって、該対象に、本発明の化合物または塩を投与するステップを含む方法を包含する。
【0051】
本発明は、対象において関節リウマチを治療する方法であって、該対象に、本発明の化合物または塩を投与するステップを含む方法を包含する。
【0052】
関節リウマチは、炎症関節を生じさせる慢性自己免疫性および炎症性疾患と考えられており、該関節は最終的には、腫脹し、痛むようになり、関節の軟骨、骨および靭帯の破壊を起こす。関節リウマチの結果は、関節の変形、不安定化および硬直、ならびに関節内の瘢痕である。関節は非常に変動する速度で劣化する。遺伝性素因を包含する多くの要因が疾患のパターンに影響を及ぼし得る。関節リウマチのある人々は、緩やかな経過、疾患のない長期間の寛解状態とともに時折の再燃、または緩慢もしくは急速であり得る着実に進行する疾患を有し得る。関節リウマチは突発することがあり、多くの関節が同時に炎症を起こす。さらに多くの場合、関節リウマチは気付かないうちに始まり、次第に様々な関節を侵す。通常、炎症は対称であり、身体の両側にある関節が侵される。典型的には、手指、足指、手、足、手首、肘および足首の小関節が最初に炎症を起こし、続いて膝および腰である。
【0053】
関節リウマチに伴う疼痛は、典型的には体性侵害受容性関節痛である。腫脹した手首は神経を締め付け、手根管症候群による麻痺または刺痛をもたらし得る。罹患した膝の裏側に嚢胞が発達することがあり、破裂して下肢における疼痛および腫脹を引き起こす可能性がある。
【0054】
本発明は、対象において皮膚炎を治療する方法であって、該対象に、本発明の化合物または塩を投与するステップを含む方法を包含する。
【0055】
本発明は、対象において慢性閉塞性肺疾患を治療する方法であって、該対象に、本発明の化合物または塩を投与するステップを含む方法を包含する。
【0056】
本発明は、対象において喘息を治療する方法であって、該対象に、本発明の化合物または塩を投与するステップを含む方法を包含する。
【0057】
本発明は、対象においてアルツハイマー病を治療する方法であって、該対象に、本発明の化合物または塩を投与するステップを含む方法を包含する。
【0058】
本発明は、グルココルチコイド受容体調節に伴う副作用を緩和する方法であって、式Iの化合物を対象に投与するステップを含む方法を包含する。
【0059】
本発明は、プレドニゾロン治療に伴う副作用を緩和する方法であって、式Iの化合物を対象に投与するステップを含む方法を包含する。
【0060】
本発明は、上述の状態、疾患および障害を、そのような状態を有する対象またはそのような状態に罹りやすい対象において治療する方法であって、該対象に1種または複数の本発明の化合物または塩を投与することによる方法をさらに含む。
【0061】
一実施形態において、上述の治療は防止的治療である。
【0062】
別の実施形態において、上述の治療は緩和的治療である。
【0063】
別の実施形態において、上述の治療は回復的治療である。
【0064】
E.投薬量および投与
提案されている適応症の治療に最も適切な剤形および投与経路を選択するために、本発明の化合物または塩は、可溶性および溶液安定性(全pH域で)ならびに透過性等、それらの生物薬剤学的特性について評価され得る。
【0065】
本発明の化合物または塩の用量は、経口投与では0.1mg〜100mgの範囲であり、用量は吸入投与では2mg以下の範囲である。用量は、単回用量または2回以上の分割用量で投与されてよく、本明細書において与えられる典型的な範囲外となることがある。
【0066】
投薬量は、約60kg〜70kgの重量を有する平均的なヒト対象に基づくものである。投薬および投薬計画は、対象および投薬に影響を与え得る様々な条件(年齢、性別、体重等)によって決まる。医師または他の医療専門家ならば、乳児および高齢者等、その重量がこの範囲外である対象の用量を決定することが容易にできるであろう。
【0067】
経口投与
本発明の化合物およびその塩は、経口的に投与され得る。経口投与は、化合物または塩が胃腸管に入るような嚥下、および/または、化合物または塩が口から血流中に直接入る、口腔、経舌もしくは舌下投与を含み得る。
【0068】
経口投与に適した製剤は、錠剤等の固体、半固体および液体系、マルチもしくはナノ粒子、液体または粉末を含有する軟または硬カプセル剤、ロゼンジ剤(液体充填剤を包含する)、咀嚼剤、ゲル剤、高速分散剤形、フィルム剤、オビュール剤、スプレー剤、ならびに口腔/粘膜付着性パッチを包含する。さらに、本発明の化合物または塩は、噴霧乾燥分散剤として投与され得る。
【0069】
液体製剤は、懸濁剤、液剤、シロップ剤およびエリキシル剤を包含する。そのような製剤は、軟または硬カプセル剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース製のもの)中の充填剤として用いられてもよく、典型的には、担体、例えば、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセルロースまたは適切な油と、1種または複数の乳化剤および/または懸濁化剤とを含む。液体製剤は、例えばサシェからの固体の再構成によって調製することもできる。
【0070】
本発明の化合物およびその塩は、Expert Opinion in Therapeutic Patents、11(6)、981〜986、LiangおよびChen著(2001)において記載されているもの等、速溶性、速崩壊性の剤形で使用することもできる。
【0071】
錠剤剤形では、用量に応じて、薬物は剤形の1重量%〜80重量%、より典型的には剤形の5重量%〜60重量%を占め得る。薬物に加えて、錠剤は通常、崩壊剤を含有する。崩壊剤の例は、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、微結晶性セルロース、低級アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、アルファ化デンプンおよびアルギン酸ナトリウムを包含する。通常、崩壊剤は、剤形の1重量%〜25重量%、好ましくは5重量%〜20重量%を構成することになる。結合剤は通常、錠剤製剤に粘着性の品質を付与するために使用される。適切な結合剤は、微結晶性セルロース、ゼラチン、糖、ポリエチレングリコール、天然および合成ガム、ポリビニルピロリドン、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロースならびにヒドロキシプロピルメチルセルロースを包含する。錠剤はまた、ラクトース(一水和物、噴霧乾燥した一水和物、無水物等)、マンニトール、キシリトール、デキストロース、スクロース、ソルビトール、微結晶性セルロース、デンプンおよびリン酸水素カルシウム二水和物等の賦形剤も含有し得る。錠剤はまた、ラウリル硫酸ナトリウムおよびポリソルベート80等の表面活性剤、ならびに二酸化ケイ素およびタルク等の流動促進剤も場合により含み得る。存在する場合、表面活性剤は錠剤の0.2重量%〜5重量%を構成してよく、流動促進剤は錠剤の0.2重量%〜1重量%を構成してよい。
【0072】
錠剤は通常、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フマル酸ステアリルナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムとの混合物等の滑沢剤も含有する。滑沢剤は通常、錠剤の0.25重量%〜10重量%、好ましくは0.5重量%〜3重量%を構成する。
【0073】
他の考えられる構成要素は、酸化防止剤、着色剤、香味剤、保存剤および矯味剤を包含する。
【0074】
例示的な錠剤は、最大約80%の薬物、約10重量%〜約90重量%の結合剤、約0重量%〜約85重量%の賦形剤、約2重量%〜約10重量%の崩壊剤および約0.25重量%〜約10重量%の滑沢剤を含有する。
【0075】
経口投与用の固体製剤は、即時および/または調節放出となるように配合することができる。調節放出製剤は、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出を包含する。
【0076】
本発明の目的のための適切な調節放出製剤は、米国特許第6,106,864号において記述されている。高エネルギー分散剤ならびに浸透圧性粒子および被覆粒子等、他の適切な放出テクノロジーの詳細は、Pharmaceutical Technology On−line、25(2)、1〜14、Vermaら著(2001)において見られる。
【0077】
経口投与のための用量範囲はまた、0.1mg〜80mg、15mg〜80mg、0.1mg〜25mgも包含する。
【0078】
非経口投与
本発明の化合物または塩は、血流中、筋肉内または内部器官内へ直接投与してもよい。実施例2は、血流中に投与することができた。非経口投与に適した手段は、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、滑液嚢内および皮下を包含する。非経口投与に適したデバイスは、針(極微針を包含する)注射器、無針注射器および注入技術を包含する。非経口製剤は、典型的には、塩、炭水化物および緩衝剤(好ましくは3〜9のpHに)等の添加剤を含有し得る水溶液であるが、いくつかの用途では、無菌パイロジェンフリー水等の適切なビヒクルと併せて使用するために、無菌非水溶液としてまたは乾燥形態として、より適切に配合することができる。
【0079】
無菌条件下における、例えば凍結乾燥による非経口製剤の調製は、当業者に周知の標準的な薬学技術を使用して容易に達成することができる。
【0080】
非経口溶液の調製において使用される本発明の化合物およびその塩の可溶性は、可溶性増強剤の組み込み等、適切な配合技術の使用によって増大させることができる。
【0081】
非経口投与用の製剤は、即時および/または調節放出となるように配合することができる。調節放出製剤は、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出を包含する。よって、本発明の化合物は、活性化合物の調節放出を提供する埋め込みデポー剤としての投与のために、懸濁液として、または、固体、半固体もしくは揺変性液体として配合することができる。そのような製剤の例は、薬物コーティングしたステント、ならびに薬物装填(dl−乳酸−グリコール酸)共重合体(PGLA)マイクロスフェアを含む半固体および懸濁液を包含する。
【0082】
局所投与
本発明の化合物または塩は、皮膚または粘膜に、局所的に、真皮(内)にまたは経皮的に投与することもできる。実施例1は、皮膚に投与することができた。この目的のための典型的な製剤は、ゲル剤、ヒドロゲル剤、ローション剤、液剤、クリーム剤、軟膏、撒布剤、包帯剤、泡沫剤、フィルム剤、皮膚パッチ剤、ウエハー剤、移植片、海綿体、繊維、絆創膏およびマイクロエマルジョン剤を包含する。リポソームを使用してもよい。典型的な担体は、アルコール、水、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、グリセリン、ポリエチレングリコールおよびプロピレングリコールを包含する。浸透促進剤を組み込んでもよく、例えば、J Pharm Sci、88(10)、955〜958、FinninおよびMorgan著(1999年10月)を参照されたい。
【0083】
局所投与の他の手段は、エレクトロポレーション、イオントフォレーシス、フォノフォレーシス、ソノフォレーシスおよび極微針または無針(例えば、Powderject(商標)、Bioject(商標)等)注射による送達を包含する。
【0084】
局所投与用の製剤は、即時および/または調節放出となるように配合することができる。調節放出製剤は、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出を包含する。
【0085】
吸入/鼻腔内投与
本発明の化合物または塩は、鼻腔内にまたは吸入によって、典型的には、乾燥粉末吸入器から乾燥粉末(単独で、例えばラクトースとの乾式混和物中の混合物として、または例えばホスファチジルコリン等のリン脂質と混合された混合成分粒子としてのいずれか)の形態で、加圧コンテナ、ポンプ、スプレー、噴霧器(好ましくは、電気流体力学を使用して霧状ミストを生じさせる噴霧器)もしくはネブライザーからエアゾールスプレーとして、1,1,1,2−テトラフルオロエタンもしくは1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン等の適切な推進剤を使用してもしくは使用せずに、または点鼻薬として、投与することもできる。鼻腔内使用のために、粉末は、生体接着剤、例えばキトサンまたはシクロデキストリンを含み得る。
【0086】
加圧コンテナ、ポンプ、スプレー、噴霧器またはネブライザーは、例えば、エタノール、水性エタノール、または活性物の分散、可溶化もしくは延長放出のための適切な代替剤、溶媒としての推進剤(複数可)、およびソルビタントリオレエート、オレイン酸またはオリゴ乳酸等の任意選択の界面活性剤を含む、本発明の化合物(複数可)の溶液または懸濁液を含有する。乾燥粉末または懸濁液製剤における使用前に、薬物製品は、吸入による送達に適したサイズ(典型的には5ミクロン未満)に微粉化される。これは、スパイラルジェットミル、流動床ジェットミル、ナノ粒子を形成するための超臨界流体処理、高圧均質化または噴霧乾燥等、任意の適切な破砕方法によって実現することができる。
【0087】
吸入器または通気器において使用するための、カプセル剤(例えば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース製のもの)、ブリスターおよびカートリッジは、本発明の化合物、ラクトースまたはデンプン等の適切な粉末基剤、およびL−ロイシン、マンニトールまたはステアリン酸マグネシウム等の性能調節剤(performance modifier)の混合粉体を含有するように配合することができる。ラクトースは無水物であっても一水和物の形態であってもよく、好ましくは後者である。他の適切な添加剤は、デキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、スクロースおよびトレハロースを包含する。
【0088】
電気流体力学を使用する噴霧器において使用するための適切な溶液製剤は、本発明の化合物、プロピレングリコール、滅菌水、エタノールおよび塩化ナトリウムを含み得る。プロピレングリコールの代わりに使用できる代替的な溶媒は、グリセロールおよびポリエチレングリコールを包含する。
【0089】
吸入/鼻腔内投与用の製剤は、例えばPGLAを使用して、即時および/または調節放出となるように配合することができる。調節放出製剤は、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出およびプログラム放出を包含する。
【0090】
乾燥粉末吸入器およびエアゾールの場合、投薬量単位は、計量された量を送達する弁を使って決定される。本発明に従う単位は、典型的には、単回用量で、または、さらに通例は、1日を通しての分割用量として投与され得る計量用量または「パフ(puff)」を投与するように構成される。
【0091】
吸入投与のための用量範囲は、2mg以下〜1mg以下の範囲である。
【0092】
組合せ
本発明の化合物または塩は、薬物等、1種または複数の他の治療剤と組み合わせて投与され得る。本発明の化合物またはその塩は、1種または複数の他の治療剤と同時にまたは異なる時に投与され得る。
【0093】
例えば、「組み合わせて」は、次のものを包含する:本発明の化合物または塩および治療剤の組合せの、対象への同時投与(そのような成分が、前記成分を実質的に同時に前記対象に放出する単一剤形中に一緒に配合される場合)、本発明の化合物または塩および治療剤の組合せの、治療を必要とする対象への実質的同時投与(そのような成分が、前記対象によって実質的に同時に摂取され、このとき、前記成分が、実質的に同時に前記対象に放出される別個の剤形中に互いに別々に配合される場合)、本発明の化合物または塩および治療剤の組合せの、対象への順次投与(そのような成分が、各投与の間にかなりの時間間隔をおいて前記対象によって連続した時間に摂取され、このとき、前記成分が、実質的に異なる時に前記対象に放出される別個の剤形中に互いに別々に配合される場合)、ならびに、そのような本発明の化合物または塩および治療剤の組合せの、対象への順次投与(そのような成分が、前記成分を制御方式で放出し、このとき、これらが、前記対象によって同時および/もしくは異なる時に、同時発生的に、連続的にかつ/または重複的に投与され、ここで、各部分は、同じまたは異なる経路のいずれかによって投与され得る単一剤形中に一緒に配合される場合)。
【0094】
例えば、本発明の化合物または塩は、他の抗炎症剤に加えて、部分的にまたは完全に組み合わせて使用され得る。本明細書において記載されている化合物および塩と組み合わせて使用され得る医薬剤の例は、TNF−α阻害剤、COX−2阻害剤、5−リポキシゲナーゼ阻害剤、ロイコトリエンの受容体アンタゴニスト(antagoinists)、PDE4阻害剤、抗ヒスタミンH阻害剤、胃保護H受容体アンタゴニスト、インスリン様成長因子型(IGF−1)模倣薬、マトリックスメタロプロテアーゼの阻害剤、非ステロイド系抗炎症剤、p38阻害剤、P2X7阻害剤、α2Δ阻害剤、抗ウイルス剤、およびWO2004/005229の32〜38頁に記載されている他の作用物質を包含する。
【0095】
F.組成物または薬剤の調製における使用
一実施形態において、本発明は、グルココルチコイド受容体活性によって媒介される状態を治療するのに使用するための、本発明の化合物または塩を含む組成物または薬剤の調製方法を含む。
【0096】
別の実施形態において、本発明は、炎症、炎症関連状態、関節リウマチ、皮膚炎、アルツハイマー病用の組成物または薬剤の調製における、1種または複数の本発明の化合物または塩の使用を含む。
【0097】
本発明は、方法の項において詳述されている1つまたは複数の状態を治療するための組成物または薬剤の調製のための、1種または複数の本発明の化合物または塩の使用も包含する。
【0098】
G.スキーム
本発明の化合物は、一般的合成スキームにおいて例証されている方法および以下に詳述する実験手順を使用して調製できる。本明細書における合成法の反応は、有機合成の当業者によって容易に選択され得る適切な溶媒中で行われ、前記適切な溶媒は、通常、反応が行われる温度では出発材料(反応物質)とも中間体とも生成物とも実質的に反応しない任意の溶媒である。所与の反応は、1種の溶媒中または複数種の溶媒の混合物中で行われ得る。特定の反応ステップに適切な溶媒は、該特定の反応ステップに応じて選択され得る。
【0099】
本発明の化合物の調製には、種々の化学基の保護および脱保護を伴うことができる。保護および脱保護の必要性ならびに適切な保護基の選択は、当業者によって容易に決定され得る。保護基の化学的性質は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、T.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、Wiley&Sons,Inc.、New York(1999)において見ることができる。
【0100】
反応は、当技術分野において既知である任意の適切な方法に従ってモニターすることができる。例えば、生成物形成は、核磁気共鳴分光法(例えばHまたは13C)赤外線分光法、分光光度法(例えば紫外可視)もしくは質量分析法等の分光学的手段によって、または、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)もしくは薄層クロマトグラフィー等のクロマトグラフィーによってモニターされ得る。
【0101】
本明細書において使用される出発材料は、市販されているか、または日常的な合成法によって調製できるかのいずれかである。
【0102】
一般的合成スキームは、例証を目的として提示するものであり、限定を意図するものではない。
【0103】
【化5】

【0104】
式A−8の1(R)−ベンジル−5−ブロモ−9(S)−ヒドロ−10(R)−ヒドロキシ−10(R)−メチル−トリシクロ[7.3.1.02,7]トリデカ−2,4,6−トリエン−13−オンは、WO00/66522において概して開示されている、スキームAに記載されているプロトコールを使用して調製した。Phはフェニルを表している。Bnはベンジルを表している。化合物A−1は購入することができる(例えば、(Sanmar、Vuf、Kingchem)。化合物A−2、6−ブロモ−3,4−ジヒドロ−2(1H)−ナフタレノン(Chem.Abstr.登録番号4133−35−1)は、Org.Syn.1971、51、109〜112において記載されている通りに調製できる。化合物A−3、1−(6−ブロモ−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−ナフタレニル)−ピロリジン(Chem.Abst.登録番号863925−40−0)は、WO2007/105053(McHardyら)において記載されている通り。化合物A−4、1−[6−ブロモ−3,4−ジヒドロ−1−(フェニルメチル)−2−(1H)−ナフタレニリデン]−ピロリジニウムブロミド(Chem.Abst.登録番号418772−22−2)も、US2002/0107235(Liuら)および米国特許第6,852,719号(Liuら)において記載されている。
【0105】
【化6】

【0106】
化合物B−1、7−ブロモ−2−エトキシ−3,4,4a,9−テトラヒドロ−4a−(フェニルメチル)−(4aS)−フェナントレンは、欧州特許出願第EP1201649号および同第EP1201660号(いずれもLiuら)ならびに同第EP1201665号(Murryら)において記載されている通りに調製できる。
【0107】
調製1:(S)−4α−ベンジル−7−ブロモ−2−エトキシ−3,4,4α,9−テトラヒドロフェナントレン
【0108】
【化7】

出発材料A−8(450g、1.17モル)を、エタノール(4.5L)に周囲温度で溶解した。エタノール中21%のナトリウムエトキシド(44mL、0.12モル)を添加し、混合物を3時間加熱還流させた。出発材料A−8が消費されたら、反応混合物を−25℃に冷やした。温度を−25℃付近に維持しながら、塩化アセチル(250mL、3.51モル)を混合物にゆっくり添加した。添加が完了した後、混合物を0℃に加温し、中間体エノンが消費されるまでその温度で保持した。混合物は、この時点ではスラリーであった。温度を−5℃〜5℃に維持しながら、エタノール中21%のナトリウムエトキシド(1.31L、3.51モル)を混合物に添加した。混合物が塩基性でなければ、さらなるナトリウムエトキシドを添加した。混合物の温度を25℃に上昇させ、次いで水(5.9L)で希釈した。混合物を濾過し、固体を水(3×)で洗浄した。表題化合物(440g、85面積%)がベージュ色の固体として得られた。1H NMR (DMSO) δ ppm: 1.27 (t, 3H), 1.65 (dt, 1H), 2.06 (d, 1H), 2.21 (dd, 1H), 2.49
(m, 1H), 2.65 (m, 2H), 2.89 (m, 2H), 3.85 (q, 2H), 5.45 (m, 2H), 6.44 (d, 2H),
6.98 (t, 2H), 7.06 (m, 2H), 7.25 (d, 1H), 7.33 (dd, 1H).
【0109】
調製2:(S)−4α−ベンジル−7−ブロモ−2,2−(1,2−エチレンジオキシ)−1,2,3,4,4α,9−ヘキサヒドロフェナントレン
【0110】
【化8】

(S)−4α−ベンジル−7−ブロモ−2−エトキシ−3,4,4α,9−テトラヒドロフェナントレン(1270g、3.2モル、85面積%、調製1において記載されている通りに調製できる)をトルエン(6.45L)に溶解した。エチレングリコール(898mL、16.1モル)およびp−トルエンスルホン酸(6.1g、0.03モル)を添加し、反応物を加熱還流させた。溶媒(1L)を混合物から蒸留し、新鮮なトルエン(1L)に置き換えた。この蒸留過程をさらに2回繰り返した。さらなるp−トルエンスルホン酸(6.1g)を添加し、毎回新鮮なトルエンを添加した。基質が生成物に変換されると、反応中に2種の中間体(LCによって検出された)が形成された。反応の終点は、2種の中間体と生成物との間の平衡点であった。終点に達したら、混合物を周囲温度に冷却した。混合物を0.5MのNaOH(2L)で洗浄した。相を迅速に分離し、いずれの相も暗色で、小さなラグ(rag)層を有していた。混合物を水(2L)で洗浄した。相を非常にゆっくり分離した。混合物を共沸蒸留によって乾燥させた。メタノール(4L)を混合物に添加し、溶媒(4L)を混合物から蒸留した。メタノール添加および溶媒蒸留をさらに2回繰り返した。メタノールを混合物に添加すると、数分後に沈殿が発生した。さらなるメタノール(4L)を混合物に添加し、次いで還流させた。30分後、混合物を0℃に冷却した。混合物を濾過し、冷やしたメタノール(2×2L)で固体を洗浄した。固体を真空オーブン中65℃で乾燥させた。表題化合物(882g、98面積%)がベージュ色の固体として得られた。1H NMR (DMSO) δ ppm: 1.71 (m, 2H), 2.06 (m, 2H), 2.31 (dd, 1H), 2.39 (m, 1H), 2.68
(d, 1H), 2.77 (m, 1H), 2.86 (dd, 1H), 3.36 (d, 1H), 3.86 (m, 4H), 5.45 (m, 1H),
6.50 (m, 2H), 7.00 (m, 4H), 7.37 (dd, 1H), 7.44 (d, 1H).
【0111】
調製3:(S)−メチル4β−ベンジル−7,7−(1,2−エチレンジオキシ)−4β,5,6,7,8,10−ヘキサヒドロフェナントレン−2−カルボキシレート
【0112】
【化9】

(S)−4 −ベンジル−7−ブロモ−2,2−(1,2−エチレンジオキシ)−1,2,3,4,4 ,9−ヘキサヒドロフェナントレン(719g、1.75モル、調製2において記載されている通りに調製できる)をテトラヒドロフラン(7.19L)に溶解し、−70℃に冷やした。ヘキサン中1.6Mのn−ブチルリチウム(2270mL、2.27モル)を、温度が−60℃未満に維持されるような速度で添加した。添加後、混合物を追加で15分間保持した。温度を−60℃未満に維持しながら、二酸化炭素(108g、2.45モル)を添加した。添加後、混合物を追加で15分間保持した。混合物を周囲温度に加温した。溶媒(7L)を混合物から大気圧で蒸留した。DMF(7L)を混合物に添加した。混合物を周囲温度に冷却した。ヨウ化メチル(152mL、2.45モル)を添加し、反応が完了するまで(約1時間)混合物を保持した。混合物を70℃に加熱し、圧力を70mmHgまで次第に低下させることによって溶媒を蒸留した。蒸留が止まったら、混合物を室温に冷却した。水(6.5L)を混合物にゆっくり添加して、生成物を沈殿させた。混合物を濾過し、固体を水(3×)で洗浄した。固体をフィルター上で乾燥させた。粗生成物(736g、74面積%)がベージュ色の固体として得られた。生成物をクロマトグラフィーによって精製した。463gの生成物がクロマトグラフィーから回収された。この材料を、n−ヘプタン(6130mL)から分離した。394gの表題化合物が回収された。別の70gの表題化合物が、クロマトグラフィーによって母液から回収された。1H NMR (DMSO) δ ppm: 1.74 (m, 2H), 2.10 (m, 2H), 2.33 (dd, 1H), 2.45 (m, 1H), 2.72
(d, 1H), 2.79 (m, 1H), 2.94 (dd, 1H), 3.40 (d, 1H), 3.87 (m, 7H), 5.49 (m, 1H),
6.47 (m, 2H), 6.93 (m, 2H), 7.01 (m, 1H), 7.42 (d, 1H), 7.64 (d, 1H), 7.79 (dd,
1H).
【0113】
調製4:(4βS,8αR)−メチル4β−ベンジル−7,7−(1,2−エチレンジオキシ)−4β,5,6,7,8,8α,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボキシレート
【0114】
【化10】

(S)−メチル4β−ベンジル−7,7−(1,2−エチレンジオキシ)−4β,5,6,7,8,10ヘキサヒドロフェナントレン−2−カルボキシレート(201g、0.515モル、調製3において記載されている通りに調製できる)および50mlのエチレングリコールを、オートクレーブ中でトルエン(2.0L)に溶解した。これに、10グラムの5%Pd/C(乾燥触媒)を添加した。次いで、オートクレーブを密閉し、窒素(3サイクル)、続いて水素(3サイクル)でパージした。反応は、80psigの圧力および50℃の温度で18時間実行した。完了および選択性(典型的な選択性のものは、95:5、トランス:シスである)についてのHPLC分析。懸濁液をCelite(登録商標)に通して濾過して触媒を除去し、トルエン溶液を、真空下50℃で約200mlに濃縮した。50℃のうちに1Lの1−ブタノールを添加し、透明になるまで溶液を60℃に加熱した。冷却時に、得られた固体表題化合物を真空濾過によって単離した(196グラム、97%、トランス:シス 95.75:4.24)。1H NMR (300 MHz, CDCl3) δ ppm: 7.79 (bs, 1H, Ar-H), 7.47 (d, J= 9 Hz, 1H, Ar-H), 7.13-7.05
(cm, 3H, Ar-H), 6.56-6.53 (cm, 2H, Ar-H), 6.43 (d, J= 9 Hz, 1H, Ar-H),
4.04-3.93 (cm, 4H, 2-CH2), 3.89 (s, 3H, CH3),3.08-3.03
(cm, 3H, CH2, CH-H), 2.63 (d, J= 15 Hz, CH-H), 2.22-1.72 (cm, 8H,
4-CH2), 1.57 (cm, 1H, CH-H).; 13CNMR (CDCl3, δ): 167.7, 149.2, 137.7, 136.4, 131.1, 130.5, 127.8, 127.7, 127.4,
126.3, 125.5, 108.9, 64.6, 64.5, 52.1, 40.5, 39.8, 38.3, 35.8, 31.6, 30.3,
27.9, 24.6.
【0115】
【化11】

【0116】
調製5:(4bS,8aR)−4b−ベンジル−7−オキソ−4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボン酸
【0117】
【化12】

(4βS,8αR)−メチル4β−ベンジル−7,7−(1,2−エチレンジオキシ)−4β,5,6,7,8,8α,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボキシレート(10g、25.5mmol)、IPA(75mL)および2MのHCl水溶液(25mL、51.0mmol)を一緒に混合し、加熱還流させた。加熱中に混合物は均質になった。ケタールが加水分解されるまで(約30〜45分間)混合物を還流で保持した。約3%のケタールを残して反応が停止した。2.5MのNaOH(40mL、101.9mmol)を混合物に添加し、加熱を続けた。エステルが加水分解されるまで(約30分間)混合物を還流で保持した。2MのHCl水溶液(40mL)を添加し、混合物を40℃に冷却した。酸を添加すると、2つの液相が形成された。種晶を添加して、結晶化を開始した。結晶化が始まって30分後、さらなる2MのHCl水溶液(40mL)を添加した。混合物を20℃に冷却し、60分間保持した。混合物を濾過し、固体を水で洗浄した。固体を真空オーブン中70℃で乾燥させた。淡黄色固体(7.86g、92%収率)が得られた。1H NMR (DMSO): δ 1.50 (m, 1H), 1.65 (m, 1H), 1.90 (m, 1H), 2.05 (m, 1H), 2.20 (d,
1H), 2.30 (d, 1H), 2.40 (dd, 1H), 2.65 (d, 1H), 2.80 (d, 1H), 3.00 (m, 3H),
4.30 (d, 1H), 6.40 (d, 1H), 6.60 (d, 2H), 7.10 (m, 3H), 7.35 (d, 1H), 7.65 (s,
1H), 12.75 (s, 1H).
【0118】
調製6:(4bR,6E,8aR)−4b−ベンジル−6−ベンジリデン−7−オキソ−4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボン酸
【0119】
【化13】

(4bS,8aR)−4b−ベンジル−7−オキソ−4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボン酸(6.5g、19.44mmol)を水(65mL)に懸濁させた。2.5MのNaOH(11.7mL、29.16mmol)、続いてベンズアルデヒド(2.16mL、21.38mmol)を添加した。時間をかけて(50℃で4時間または25℃で終夜)、混合物は均質になった。反応が完了したと判断され、このとき2%未満の(4bS,8aR)−4b−ベンジル−7−オキソ−4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボン酸(調製5)が残っていた。既に25℃になっていなければ、混合物を25℃に冷却した。混合物に、EtOAc(65mL)、続いて2MのHCl水溶液(29mL)を添加した。結晶化は、通常通り、酸添加中またはその直後に発生した。混合物を60分間撹拌した。ヘプタン(65mL)を添加し、混合物を追加で60分間撹拌した。水相を分離して取り出すことは考えず、全混合物を濾過し、水、続いてヘプタンで固体を洗浄する。淡黄色固体(6.55g、80%収率)が得られた。1H NMR (DMSO): δ 1.70 (m, 1H), 1.85 (m, 1H), 2.45 (m, 3H), 2.65 (d, 3H), 2.95 (m,
2H), 3.50 (d, 1H), 6.15 (d, 2H), 6.25 (d, 1H), 6.70 (t, 2H), 6.90 (t, 1H), 7.30
(d, 1H), 7.50 (m, 5H), 7.70 (d, 2H), 12.75 (s, 1H).
【0120】
調製7:(4bR,6E,7S,8aR)−4b−ベンジル−6−ベンジリデン−7−ヒドロキシ−7−フェニル−4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボン酸
【0121】
【化14】

塩化セリウム(III)(5.00g、20.29mmol)を、テトラヒドロフラン(50mL)中、50℃で16時間混合した。反応物の温度をJKEMで内部的にモニターした。得られた白色乳状液を−75℃に冷却し、激しく撹拌した。冷スラリーに、温度を−70℃未満に維持しながら、フェニルマグネシウムブロミド(THF中1.0M、19.1mmol)を15分間かけて滴下投入した。溶液を−73℃で15分間保ち、テトラヒドロフラン(40mL)中の(4bR,6E,8aR)−4b−ベンジル−6−ベンジリデン−7−オキソ−4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボン酸(3.5g、8.311mmol)の溶液を、反応温度を−70℃未満に維持しながら20分間かけて滴下添加した。HPLC/MSを得ると、出発材料が残っていることを示していた。反応物を追加で3時間混合して、HPLC/MSを得ると、出発材料が残っていた。追加の2mLの臭化ベンジルマグネシウム溶液(2.0mmol)を10分間かけて添加し、HPLC/MSを得た。追加の1mLの臭化ベンジルマグネシウム溶液(1.0mmol)を10分間かけて添加し、HPLC/MSを得た。溶液を−73℃で30分間混合し、10℃に加温し、次いで0℃に冷却した。温度を10℃未満に維持しながら、飽和KHSO水溶液を滴下添加することにより、反応物をクエンチした。計50mlの飽和溶液を添加した。溶液中に固体が形成され、真空濾過(filtratration)によって除去した。濾過ケーキを、テトラヒドロフラン(40mL)および水(40mL)で洗浄した。酢酸エチル(100mL)を添加し、層を分離した。有機層を飽和塩化アンモニウム(100mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。水層をHPLC/MSによって確認すると、いかなる生成物も含有していなかった。残留物をメタノール(15ml)に溶かし、水を添加した。溶液は乳状になり、最終的には沈殿物が形成された。少量のメタノールおよび水を添加して、沈殿物の品質および量を改善した。固体を真空濾過によって収集し、約2時間風乾させた。3.4グラムの表題化合物が薄黄色固体として81%収率で得られた。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) d ppm
12.65 (1 H, s), 7.44 - 7.56 (7 H, m), 7.34 - 7.39 (2 H, m), 7.30 (2 H, t, J=7.7
Hz), 7.12 - 7.22 (2 H, m), 6.78 (1 H, t, J=7.4 Hz), 6.50 (2 H, t, J=7.8 Hz),
6.12 (1 H, d, J=8.3 Hz), 5.86 (2 H, d, J=7.3 Hz), 5.44 (1 H, s), 3.61 (1 H, d,
J=14.2 Hz), 2.96 (1 H, dd, J=17.6, 7.9 Hz), 2.80 - 2.91 (1 H, m), 2.66 - 2.74
(1 H, m), 2.50 - 2.65 (2 H, m), 2.08 (1 H, t, J=13.3 Hz), 1.82 - 1.93 (1H, m,
J=13.2 Hz), 1.75 - 1.82 (1 H, m), 1.59 - 1.74 (2 H, m); LC/MS, tr =
3.77分(5〜95%アセトニトリル/水を5分にわたり、1ml/min、254nm、50℃で).
【0122】
調製8:(4bR,7R,8aR)−4b−ベンジル−7−ヒドロキシ−6−オキソ−7−フェニル−4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボン酸
【0123】
【化15】

(4bR,6E,7S,8aR)−4b−ベンジル−6−ベンジリデン−7−ヒドロキシ−7−フェニル−4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボン酸(37.7グラム、75.7mmol)を、1200mLの塩化メチレン(methlylene)に溶解した。反応物を−78℃に冷却し、窒素を反応混合物に15分間吹き込んで発泡させた。次にオゾンを混合物に吹き込んで発泡させると、青みを帯びた色合いが現れた。オゾンを反応物に3時間継続して吹き込んで発泡させた。1時間でのHPLC/MSを得ると、出発材料が残っていた。オゾン投入を続けた。2時間でのHPLC/MSを得、1時間でのHPLC/MSを得ると、出発材料が残っていた。オゾン投入を続けた。3時間でのHPLC/MSを得た。出発材料の消費は変化していなかった。オゾンを停止し、青色が消失するまで窒素を反応物に吹き込んで発泡させた。ジメチルスルフィド(20mL)およびメタノール(20mL)を添加し、反応物を室温に加温した。溶媒を減圧下で除去し、得られた濃厚な油を酢酸エチル(100mL)に溶解した。ヘプタン(100mL)を溶液に添加し、混合物をかき混ぜた。得られた溶液はわずかに濁っていた。溶液を混合することなく室温で終夜保存した。白色結晶が形成された。5.7グラムの結晶を収集し、HPLC/MSおよび1H NMRを得た。溶媒を母液から除去した。44グラムの橙褐色油が得られた。HPLC/MSを得た。分取逆相クロマトグラフィーを利用して母液を精製して、追加の22gの表題化合物を得て、総回収27.5g、85%収率とした。MH+ [m/z] 501 M+Na [m/z] 523 ; 1H NMR (400
MHz, DMSO-d6) δ ppm 2.00 (s, 4 H) 2.10 -
2.21 (m, 3 H) 2.51 (q, 3 H) 2.73 - 2.85 (m, 4 H) 2.96 - 3.10 (m, 3 H) 6.15 (dd,
1 H) 6.60 (dd, 2 H) 7.09 - 7.15 (m, 3 H) 7.25 (d, 1 H) 7.30 (d, 1 H) 7.34 -
7.40 (m, 4 H) 7.69 (s, 1 H).
【0124】
調製9:(4bR,7R,8aR)−4b−ベンジル−7−ヒドロキシ−N−(2−メチルピリジン−3−イル)−6−オキソ−7−フェニル−4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボキサミド
【0125】
【化16】

(4bR,7R,8aR)−4b−ベンジル−7−ヒドロキシ−6−オキソ−7−フェニル−4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボン酸(21g、49.2mmol)、3−アミノ−2−ピコリン(5.8g、52.2mmol)および1−メチルイミダゾール(20mL、246.2mmol)を、無水アセトニトリル(105mL)に溶解した。穏やかな発熱を制御するために、1−プロパンホスホン酸環状無水物(酢酸エチル中50wt%)(47mL、78.8mmol)をゆっくり添加した。反応が完了するまで(1時間未満)、混合物を25℃で撹拌した。酢酸エチル(86mL)を混合物に添加した。混合物を水(4×100mL)で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、濃縮乾固した。表題生成物(22.3g、89%収率)が薄黄色泡状物として得られた。1H NMR (DMSO): δ 1.95 (m, 2H), 2.10 (m, 3H), 2.35 (s, 3H), 2.75 (m, 3H), 3.0 (d,
1H), 3.05 (m, 2H), 5.70 (s, 1H), 6.15 (d 1H), 6.60 (m, 2H), 7.10 (m, 3H), 7.25
(m, 2H), 7.30 (m, 5H), 7.65 (d, 1H), 7.70 (s, 1H), 8.15 (s, 1H), 9.85 (s, 1H).
【0126】
調製10:(4bR,6R,7R,8aR)−4b−ベンジル−6,7−ジヒドロキシ−6−メチル−N−(2−メチルピリジン−3−イル)−7−フェニル−4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボキサミド
【0127】
【化17】

火炎乾燥した50mLの丸底フラスコに、THF(5mL)中の(4bR,7R,8aR)−4b−ベンジル−7−ヒドロキシ−N−(2−メチルピリジン−3−イル)−6−オキソ−7−フェニル−4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボキサミド(0.28g、0.54mmol)を添加した。溶液を、氷/アセトン浴中で−17℃に冷却した。反応物にMeLiLiBr(0.1mL)を添加した。1時間後、LCMSは、出発材料が残っていることを示したため、追加の0.15mLを添加した。反応物を室温になるまで2時間かけて撹拌した。HPLCにより、2.5%の出発材料が残っていた。反応物にNHClをゆっくり添加し、脱ガスを観察した。反応物を、アセトニトリルおよび水で125mLに希釈した。反応物を逆相クロマトグラフィーによって精製し、次いで凍結乾燥した。得られた乾燥粉末を、2滴の濃HClとともにアセトニトリルおよび水に再度溶解した。溶液を凍結乾燥乾固した。これにより、表題生成物(231.4mg)をHCl塩として73%収率で産出した。LRMS ES+ 533.1 1H NMR (300 MHz, メタノール-d4) δ ppm 1.23 - 1.28 (m, 3 H)
1.53 - 1.62 (m, 1 H) 1.90 - 2.20 (m, 3 H) 2.70 - 2.74 (m, 3 H) 2.84 (d, J=14.90
Hz, 1 H) 2.92 - 3.22 (m, 2 H) 3.28 - 3.40 (m, 4 H) 3.91 (d, J=12.08 Hz, 1 H)
6.50 (d, J=8.26 Hz, 2 H) 6.84 - 6.92 (m, 2 H) 6.99 - 7.10 (m, 3 H) 7.13 - 7.29
(m, 3 H) 7.45 (dd, J=8.15, 1.91 Hz, 1 H) 7.56 - 7.65 (m, 2 H) 7.77 (d, J=1.81
Hz, 1 H) 7.88 (dd, J=8.26, 5.84 Hz, 1 H) 8.51 - 8.63 (m, 2 H).
【実施例】
【0128】
(実施例1)
(4bR,6R,7R,8aS)−4b−ベンジル−6,7−ジヒドロキシ−6−メチル−N−(2−メチルピリジン−3−イル)−10−オキソ−7−フェニル−4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボキサミド
【0129】
【化18】

固体(4bR,6R,7R,8aR)−4b−ベンジル−6,7−ジヒドロキシ−6−メチル−N−(2−メチルピリジン−3−イル)−7−フェニル−4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボキサミド(2200mg、4.130mmol)の試料を、塩化メチレン(10mL)およびメタノール(100mL)の室温溶液で溶解した。この得られた溶液を、MeOH中2NのHCl溶液10mLで処理し、追加で10分間撹拌した。このときに反応溶液を視覚的に調査して、全ての固体を確実に溶解させ、次いで−78℃に冷却した。冷却した溶液を、オゾンの定常流(5cc流量、Azcozon発生器、AZCO Industries Ltd.、モデル番号RMU16−8を使用し、O圧を30psiに設定して作り出したもの)で処理した。5時間の一定のオゾン流動後、LCMS分析(M+H LRMS 547.2amu)により、反応物はほぼ完全に所望の表題化合物となっていた。溶液は深青色に発色した。冷反応溶液を窒素で5分間フラッシュしてオゾンのほとんどを消失させると、反応物は格段に薄い青色に発色した。このときに、内部反応温度を−70℃超に上げないようにして、20mLの硫化ジメチルを添加した。これに続いて冷却浴の除去をし、反応物を室温に(1時間)自発的に加温させ、追加で3時間この温度で維持した。このときに、反応溶液を濃縮して残留物とし、25mLのTHFに溶解し、次いで、得られたTHF溶液をC−18逆相クロマトグラフィー(15分間の勾配実行、5%アセトニトリル移動相〜95%アセトニトリル移動相および水)に直接供した。得られた表題化合物を、交換樹脂(ストラトスフィアSPE、PL−HCO3 MP−樹脂、製品番号3540−C603)に通して濾過して、いかなるTFA塩も除去し、表題生成物をその親化合物として提供した。得られた固体を下記の手順によって結晶化させた。固体をMeOH(7mL)でスラリー化し、1時間後に固体を収集し、追加の2mLのMeOHで洗浄して、表題化合物1802mg、79%を産出した。分析データは次の通りである。1H NMR (500 MHz, D6 DMSO) δ ppm 1.18 (s, 3 H) 1.51 (dd, J=12.66, 1.96 Hz, 1 H) 1.99 (d, J=14.96
Hz, 1 H) 2.40 (dd, J=18.88, 4.85 Hz, 1 H) 2.43 - 2.49 (m, 1 H) 2.49 (br. s., 3
H) 2.56 (t, J=12.82 Hz, 1 H) 2.61 (d, J=12.53 Hz, 1 H) 2.75 (d, J=15.12 Hz, 1
H) 2.92 (dd, J=18.59, 12.74 Hz, 1 H) 4.05 (d, J=12.45 Hz, 1 H) 6.65 (d, J=8.27
Hz, 1 H) 6.79 (dd, J=7.69, 1.59 Hz, 2 H) 7.05 - 7.13 (m, 3 H) 7.15 - 7.21 (m, 1
H) 7.25 (t, J=7.69 Hz, 2 H) 7.49 (dd, J=7.94, 5.10 Hz, 1 H) 7.62 (dd, J=7.44,
1.25 Hz, 2 H) 7.87 (dd, J=8.23, 2.13 Hz, 1 H) 8.01 (dd, J=7.78, 1.00 Hz, 1 H)
8.46 (dd, J=5.01, 1.50 Hz, 1 H) 8.54 (d, J=2.09 Hz, 1 H) 10.18 - 10.58 (m, 1 H,
NH).
DMSOの含水量に応じ、2個のOHプロトンが4.78および5.44ppmにおいて可視となり得る。HRMS m/z 547.2619 (C35H35N2O4:
M+Hの計算値, 547.2591).
【0130】
I.生物学的データ
リポ多糖(LPS)誘発性ヒト全血
ヒトドナーからの静脈血を、ヘパリンナトリウムを含有する管(BDバキュテイナ、Becton Dickinson and Company製、Franklin Lakes、NY)中の10mlアリコートとして収集した。血液を、滅菌ポリスチレン丸底96ウェル組織培養プレート(Corning Costar)に180μl/ウェルで添加した。化合物を調製している間(ほぼ60分間)、5%COの加湿した37℃のインキュベーターに血液を入れた。
【0131】
化合物は、ジメチルスルホキシド(DMSO、Sigma−Aldrich)中10mMのストック溶液から調製した。ストック化合物を、DMSO中で希釈して適切な出発濃度を与え、次いでDMSO中で1/3に連続希釈(すなわち、15μlの化合物+30μlのDMSO)し、続いてそれぞれの連続希釈物をビヒクル溶液(リン酸緩衝溶液(ダルベッコのリン酸緩衝溶液、塩化カルシウム無添加、塩化マグネシウム無添加、Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA)中2%のDMSO)中で1/167に希釈した。10μlアリコート中の血液に、化合物またはビヒクルを3連で添加し、考えられる周辺効果を最小化するために、外側のウェルは除外した。アッセイにおける各化合物の最終最高濃度は、3〜0.3μMの範囲であった。アッセイにおける最終DMSO濃度は、0.1%であった。試料を含有するプレートを穏やかにボルテックスして混合し、インキュベーター内に戻した。RPMI中100μg/mlのアリコートで−20℃にて保存していたLPSストック(大腸菌(E.coli)血清型0111:B4、Sigma−Aldrich)を、RPMI中で1/50に希釈して、使用ストック溶液(working stock solution)を作製した。60分間のインキュベーション後、10μlの調製したLPS使用ストックを血液に添加して、100ng/mlの最終濃度とした。陰性対照として使用するウェルに、LPS無添加のRPMI培地を入れた。プレートを再度穏やかにボルテックスし、プレートを22時間終夜インキュベートした。インキュベーションに続いて、血液を1500×gで5分間遠心分離し、血奬を除去して、−20℃で凍結させるか、またはサイトカイン放出についてアッセイした。
【0132】
サイトカイン放出の計測および分析
IL−1β、IFNγおよびTNFαタンパク質レベルは、メソスケールアッセイキット(Meso Scale Discovery、Gaithersburg、MD、U.S.A.)を使用して計測した。試薬を室温に至らせた。室温で60分間穏やかに振とうしながら、メソスケールプレートを150μlのメソスケールブロックB希釈剤でブロックした。プレートを、洗浄緩衝液(PBS、Invitrogen Corporation、0.05%のツイン20添加済、Sigma−Aldrich)で3回洗浄した。標準曲線用の較正物質を、ヒト血奬/血清アッセイ希釈剤中、1/5連続希釈物として調製して、50000pg/ml〜3.2pg/mlの範囲の最終濃度を実現した。試料を10〜20μl/ウェルで添加し、較正物質を20μl/ウェルで添加し、次いで、穏やかに振とうしながら室温で2時間インキュベートした。プレートを再度洗浄緩衝液で3回洗浄した。検出抗体を、ヒト血奬/血清抗体希釈剤中で1μg/mlに希釈し、プレートに20μl/ウェルで添加した。プレートを、前述同様に2時間インキュベートし、再度洗浄した。読み取り緩衝液(Read Buffer)T(4×)をmqHOで1:1に希釈して2×濃度とし、150μlを各ウェルに添加した。プレートを、セクターイメージャー6000(Meso Scale Discovery)で読み取って、未加工のシグナル値を出した。
【0133】
個々の試料のシグナル値を、陽性および陰性対照(それぞれ、LPS添加済のビヒクル処理した血液およびLPS無添加のビヒクル処理した血液)と比較して、%阻害を出した。各ドナーについて3連の値を平均した。3人または4人のドナーについて値を平均し、Microsoftエクセルアプリケーション用のLabStatsプラグインで4パラメーターあてはめ曲線を使用してグラフ化した。
【0134】
プレドニゾロンは、Sigma−Aldrich(Saint Louis、MO)から入手した。
【0135】
【表1】

【0136】
【表2】

【0137】
比較物(Comparator)Aは、(4βS,7S,8αR)−4β−ベンジル−7−ヒドロキシ−N−((2−メチルピリジン−3−イル)メチル)−7−(3,3,3−トリフルオロプロピル)−4β,5,6,7,8,8α,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボキサミドであり、その合成は、WO00/66522(Dowら)の241頁に実施例番号771C−3として記載されており、下記の構造を有する。
【0138】
【化19】

【0139】
下記の比較化合物、比較物B、CおよびDは、本明細書において記載されている方法、当技術分野において既知の方法および以下のスキームDによって調製できる。
【0140】
【化20】

(4bR,6R,7R,8aR)−4b−ベンジル−N−(6−ブロモ−2−メチルピリジン−3−イル)−6,7−ジヒドロキシ−6−メチル−7−フェニル−4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボキサミド
【0141】
【化21】

(4bR,6R,7R,8aR)−4b−ベンジル−6,7−ジヒドロキシ−6−メチル−N−(2−メチルピリジン−3−イル)−7−(ピリジン−2−イル)−4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボキサミド
【0142】
【化22】

(4bR,6R,7R,8aR)−4b−ベンジル−6,7−ジヒドロキシ−6−メチル−7−フェニル−N−(ピリジン−3−イルメチル)−4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボキサミド
【0143】
【化23】

【0144】
下記の比較化合物、比較物Eは、当技術分野において既知の一般的方法および以下の反応スキームEによって調製できる。
【0145】
【化24】

(4bR,6R,7S,8aR)−4b−ベンジル−6,7−ジヒドロキシ−6−メチル−N−(2−メチルピリジン−3−イル)−7−(トリフルオロメチル)−4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボキサミド
【0146】
【化25】

【0147】
比較物Fは、(2R,3S,4aR,10aR)−4a−ベンジル−2−フェニル−1,2,3,4,4a,9,10,10a−オクタヒドロフェナントレン−2,3,7−トリオールであり、その合成は、国際出願WO2004/005229(Chantignyら)の106頁に実施例30として記載されており、下記の構造を有する。
【0148】
【化26】

【0149】
比較物Gは、(2R,3S,4aR,10aR)−4a−ベンジル−7(2−メチルピリジン(methyulpyridin)−3−イルメトキシ)−2−フェニル−1,2,3,4,4a,9,10,10a−オクタヒドロフェナントレン−2,3ジオールであり、その合成は、国際出願WO2004/005229(Chantignyら)の107頁に実施例32として記載されており、下記の構造を有する。
【0150】
【化27】

【0151】
【表3】

【0152】
【表4】

【0153】
【表5】

【0154】
実施例1、比較物F、比較物Gおよびプレドニゾロンは、いずれもグルココルチコイド受容体のリガンドであるが、各々は、エクスビボLPS刺激ヒト全血からのサイトカインの阻害において、独特なプロファイルを与える。GRの完全アゴニストであるプレドニゾロンは、IFNγ、TNFαおよびIL−1βの完全阻害を実証する。実施例1はまた、濃度依存性的にサイトカイン放出を阻害する。部分的アゴニスト/アンタゴニストであるため、実施例1は、プレドニゾロンほどの阻害を示さない。その上、実施例1について観察される阻害レベルは計測したサイトカイン間で異なる、換言すると、IFNγ=73%、TNFα=43%およびIL−1β=38%である。実施例1とは対照的に、比較物Fおよび比較物Gは、TNFαもIL−1βも有意に阻害せず(3000nMにおいて20%未満)、IFNγの阻害に対する効果がはるかに少ないことを示す(3000nMにおいてそれぞれ22%または41%のみ阻害)。このように、実施例1、比較物F、比較物Gおよびプレドニゾロンは同じ受容体と結合するが、これらは著しく異なる活性を実証する。
【0155】
インビボデータ
マウスコラーゲン誘発性関節炎(mCIA)
マウスコラーゲン誘発性関節炎は、II型コラーゲンによる免疫化後に関節腫脹および骨破壊が発生している、関節リウマチの一般に使用される慢性前臨床モデルである。疾患発生率および重症度の低下は、それぞれ疾患修飾ならびに徴候および症状の緩和の指標となることが臨床状況において先に示されている。
【0156】
治療mCIAモデルにおいて、疾患発生率および重症度の誘導をLPS刺激によって同期化した。0日目に、雄DBA/Jマウスを100ugのウシII型コラーゲン(bCII)によって免疫化した。28日目に、全てのマウスに、20μgのLPSの腹腔内注射を受けさせ、34日目まで疾患を発達させた。34日目には、全てのマウスが疾患を有しており(発生率=100%)、平均重症度スコアは7であった。34日目に、化合物の投薬を治療モードで開始し、49日目まで続けた。足の腫脹の発生率の減少(すなわち、疾患の回復)および重症度の減少を経時的に計測することにより、異なる治療を比較した。
【0157】
28日マウス副作用モデル
重量27〜29グラムの10〜12週齢雌スイスウェブスターマウス(Taconic、Germantown、NY、U.S.A.)を、Institutional Animal Care and Use Committeeのガイドラインに従い、かつ実験動物福祉についてのNIHガイドラインに従って使用する。マウスを、研究に入る前に3〜7日間、Pfizer動物施設に馴化させる。プレドニゾロンおよびDAGR化合物を、経口強制飼養によって計28日間投与する。各処置群は、通常8〜10匹のマウスを含有する。研究用の投薬計画を確立するために、試験的な薬力学的時間経過実験を遂行して、単回ED80用量(急性LPS内毒素血症マウスモデルから決定されたもの)後のTNFa抑制を定量化する。TNFaを24時間にわたって有意に抑制するために、プレドニゾロンは1日2回の投薬を要すると決定された。DAGR化合物は必要とされる投薬頻度が変わる。
【0158】
各実験の初日および最終日に体重を計測する。投薬の約3週間後に、定常状態薬物動態分析用の血液試料を得る。LPS誘発性TNF−aに対する化合物の影響を評価するために、28日目の最終投薬から2.5時間後、全てのマウスにLPS(Salmonella Typhosa、Sigma、St.Louis、L−7895)の腹腔内注射を受けさせる。LPS投与の90分後に、マウスを屠殺する。Linco多重アッセイ(St.Charles、MO)およびルミネックス100(Austin、TX)を使用して、血清試料をオステオカルシンおよびTNFaについてアッセイする。試料を1:20に希釈し、メーカーの使用説明書に従ってアッセイを実行する。オステオカルシン標準物質は、Biomedical Technologies Incorporated(Stoughton、MA)から別個に購入する。血清中インスリンを計測して、インスリン抵抗性に対する化合物の影響を評価する。インスリンは、Alpco Diagnostics(Salem、NH)製の超高感度マウスEIAキットを使用し、メーカーのプロトコールに準じて計測した。
【0159】
皮質骨組織形態計測
各研究の生存期間中、骨組織形態計測のため、1日目および26日目に、2%重炭酸ナトリウム中に溶解した蛍光色素カルセイン(C−0875、Sigma−Aldrich、20mg/kg、200μL/匹)の2度の腹腔内注射をマウスに施す。蛍光色素標識を骨塩に組み込み、骨形成率の計測を可能にする。組織採取中に、皮質組織形態計測のために左脛骨を切除し清浄にする。全ての皮膚および筋肉を除去した後、脛骨を暗所にて70%エタノール(4℃)に最低24時間入れる。
【0160】
皮質骨の組織形態計測的分析には、粉砕した横断切片を使用する。ダイヤモンドウエハーブレードが装備された低速鋸(イソメット、Buehler、Lake Bluff、IL)を使用して、骨を切開する。各脛骨の端部を脛骨−腓骨の骨癒合(tibia−fibula synostosis)の近位で除去し、75mmの断片を切断する。粗面(roughened)ガラスプレートおよびコルクを使用して、透過性になり蛍光顕微鏡下で全ての標識が識別可能となるまで、切片を約25mmに粉砕する。下記の溶液を使用して、切片をそれぞれ最低2分間脱水する:1)70%エタノール、2)95%エタノール、3)100%エタノール、4)50/50 エタノール/キシレンおよび5)キシレン(2回)(Sigma、St.Louis、534056)。オイキットクイックマウンティングメディウム(Eukitt Quick Mounting Medium)(Sigma、St.Louis、03989)を使用して切片を封入し、カバースリップをかける。オステオメジャー骨分析プログラム(Osteomeasure Bone Analysis Program)(Decatur、Georgia)を使用し、骨の内周および外周をトレースすることに加え、第1および第2の蛍光標識をトレースすることによって、骨形成率を計算する。骨形成率は、下記の方程式によって計算される:(標識間の(Interlabel)幅/標識間隔)×(標識した周囲/骨周囲)。各研究につき各処置群から少なくとも5つの試料を計測する。
【0161】
PK分析およびLC/MS/MS系用の標準物質および試料調製
コルチコステロン、プレドニゾロンおよび化合物のレベルを、全ての血清試料において計測する。DMSO中のストックから対照マウス血清中で下記の標準物質を調製する:5、2.5、1.25、0.3125、0.078、0.0195、0.00488、0.00122、0.00305、0.000076μg/mL。30μLの血清試料(未知試料および標準血清試料)を、新たな96バイアルプレートに移す。アセトニトリル(170ml、内部標準物質として1μMのトルブタミドを含有)を添加して血清を沈殿させ、MS/MS分析用の内部標準物質を提供する。プレートを、4000rpm、25℃で5分間遠心分離する。90μLの上清を注射に移し、分析のために5μLをLC/MS/MS系に注入した。定量下限(LOQ)未満の濃度はゼロ(0)として報告し、平均濃度の評価およびAUCの推定において使用する。時刻ゼロから最終定量化可能濃度の時刻(t)までの濃度時間曲線下面積[AUC(0〜t)]は、線形台形法を使用して決定される。
【0162】
統計的評価
データの4パラメーターロジスティックあてはめを使用し、種々のパラメーターについてED50およびED80値を得る。各実験/用量群について、各マウスの値がその群の平均からのものである標準偏差の数を計算し、次いで群の標準偏差で割ることによって、異常値を検出する。この計算において使用される平均および標準偏差では、それが異常値であった場合には影響を及ぼさないような、検討中の値を除外した。検討中の値が平均から2.5標準偏差を超えていれば、残りの計算においては使用しなかった。
【0163】
次いで、ビヒクル群および10mpkプレドニゾン対照群の平均を使用し、各動物についてパーセント阻害値を計算する。次いで、各群についての曲線下面積平均を使用し、個々のマウスのパーセント阻害値を4パラメーターロジスティックモデルにあてはめる。4つのパラメーターは全て推定であり、下方プラトーは0%に固定されず、上方プラトーは100%に固定されなかったため、ED50およびED80値は、50%または80%に等しい応答を表す逆較正式を使用することによって計算される。「nd」という表記は、決定されていないことを意味する。
【0164】
【表6】

【0165】
解離指数
解離指数(DI)は、抗炎症効果および副作用のバイオマーカーの観点から、プレドニゾロンの解離に対する化合物の解離を定量化するための計測として選定した。解離指数は、初期臨床開発において利用され得る臨床的に意義のあるバイオマーカーを使用して計算した。血清中オステオカルシンおよびLPS誘発性血清中TNFαは、それぞれ骨形成率および抗炎症効果の指標として臨床的に認められている。
【0166】
解離指数は、下記の主張に基づくものであった。
1)解離は、炎症および副作用のバイオマーカー[オステオカルシン(OC)、インスリンまたは骨形成率等]間の用量差を要し、副作用の例としてオステオカルシン抑制(OC)を使用する式によって定義された。
【0167】
【数1】

【0168】
【数2】

2)化合物のDIは、その臨床比較物であるプレドニゾロンで観察されるものに対するものと考えることができる。補正済みのまたは正規化したDIは、化合物DIをプレドニゾロンDIで割ったものとして定義された。
【0169】
【表7】

【0170】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】

またはその塩。
【請求項2】
化合物が(4bR,6R,7R,8aS)−4b−ベンジル−6,7−ジヒドロキシ−6−メチル−N−(2−メチルピリジン−3−イル)−10−オキソ−7−フェニル−4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボキサミドである、請求項1に記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
請求項2に記載の、化合物のカルシウム塩。
【請求項4】
請求項2に記載の、化合物のナトリウム塩。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物またはその塩と、薬学的に許容できる担体とを含む組成物。
【請求項6】
薬学的有効量の(4bR,6R,7R,8aS)−4b−ベンジル−6,7−ジヒドロキシ−6−メチル−N−(2−メチルピリジン−3−イル)−10−オキソ−7−フェニル−4b,5,6,7,8,8a,9,10−オクタヒドロフェナントレン−2−カルボキサミドまたは薬学的に許容できるその塩と、薬学的に許容できる担体とを含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
グルココルチコイド受容体を、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩と接触させるステップを含む方法。
【請求項8】
対象においてグルココルチコイド受容体活性によって媒介される状態を治療する方法であって、前記対象に、請求項1に記載の化合物または薬学的に許容できるその塩を投与するステップを含む方法。
【請求項9】
前記状態が炎症関連状態である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記状態が、喘息、皮膚炎、炎症性腸疾患、アルツハイマー病、精神病性大うつ病、ニューロパチー、移植片拒絶反応、多発性硬化症、慢性ブドウ膜炎または慢性閉塞性肺疾患である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記状態が関節リウマチである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記状態が皮膚炎である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記状態が喘息である、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記状態がアルツハイマー病である、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記状態が炎症性腸疾患である、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
グルココルチコイド受容体調節に伴う副作用を緩和する方法であって、請求項1に記載の化合物を対象に投与するステップを含む方法。

【公表番号】特表2011−529103(P2011−529103A)
【公表日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520622(P2011−520622)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【特許番号】特許第4823397号(P4823397)
【特許公報発行日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際出願番号】PCT/IB2009/053044
【国際公開番号】WO2010/013158
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(593141953)ファイザー・インク (302)
【Fターム(参考)】