説明

フッ化物の溶解度増進をもたらす解離剤、配合物及び方法

本発明は、解離剤成分を配合することにより、溶媒中において無機フッ化物の有効な溶解をもたらす組成物、配合物及び方法を提供する。本発明の解離剤は、錯体形成、酸−塩基反応、及び付加物形成反応などの、溶液中の化学反応に参加し、それらが溶媒環境の範囲における無機フッ化物の溶解の増進をもたらす。ルイス酸、ルイス塩基、アニオン受容体、カチオン受容体又はそれらの組合せを含む解離剤を提供しており、それらがある範囲の無機フッ化物、特に、本発明の解離剤が存在しないと、多くの溶媒に高度に不溶であるLiFなどの無機フッ化物の溶解の程度を著しく増加させる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願への相互参照]
[001]本出願は、本発明と相反しない範囲でそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、2006年8月11日出願の米国特許仮出願第60/837174号明細書への、及び2007年3月2日出願の米国特許仮出願第11/681493号明細書への優先権の利益を請求する。
【0002】
[連邦政府後援研究又は開発に関する言説]
[002]該当しない。
【0003】
[発明の背景]
[003]電気化学的貯蔵及び変換デバイスにおける進歩は、携帯型電子機器、航空宇宙工学、通信及び生物医学的計装化を含む様々な分野におけるこれらのシステムの可能性を著しく広げている。最先端水準の電気化学的貯蔵及び変換デバイスは、特定の目標用途要求及び操作環境に対応する設計及び性能特性を有するように特に設計されている。このような先進的な電気化学的貯蔵システムには、埋め込み型医用デバイス向けの低い自己放電速度及び高い放電信頼性を示す高エネルギー密度電池;携帯型電子機器向けの安価な軽量再充電可能な電池;並びに軍事及び航空宇宙用途向けに短い時間間隔にわたり高い放電速度を提供することが可能な高容量電池が含まれる。
【0004】
[004]この多様な組合せの先進的な電気化学的貯蔵及び変換システムが幅広く実現されることが、次世代の高性能デバイス用途を可能にする、これらのシステムの機能性拡大を対象とした研究を、継続して動機付けている。例えば、高電力の携帯型電子機器への要求が益々増大することによって、より高いエネルギー密度を有する安全軽量な一次及び二次電池の開発における、とてつもなく大きな関心が呼び起こされている。消費者向け電子機器及び計装化の分野における小型化への要求も、高性能電池の寸法、質量及び形状因子を切り詰める新規な設計戦略の研究を継続して刺激している。さらに、電気自動車及び航空宇宙工学の分野における発展も、有用な作動環境範囲に向けて高いエネルギー密度及び高い電力密度を示す高度信頼性電池への著しいニーズを作り出している。
【0005】
[005]電気化学的貯蔵及び変換技術における多くの進歩は、電池素子向けの新たな材料の発見及び組み込みに直接帰することが可能である。例えば、リチウム電池技術は、少なくとも一部、これらのシステムのための新規な電極及び電解質材料の発見により、急速な発展を続けている。正及び負電極用インターカレーションホスト材料の先駆的同定から高性能非水電解質の開発まで、リチウム電池システム用の新規な材料の発見及び最適化は、それらの設計及び性能の可能性に大変革をもたらしている。これらの進歩の結果として、携帯型電子機器システム用一次及び二次電気化学セルを含む、いくつかの商業的に有意義な用途について現在、リチウム系電池技術が好んで使われている。
【0006】
[006]リチウム電池技術のための材料戦略及びセル設計における進歩は、(i)大きいエネルギー密度(例えば、≒150Whkg−1)、(ii)高いセル電圧(例えば約3.6Vまで)、(iii)実質的に一定な(例えば平坦な)放電プロフィル、(iv)長い貯蔵寿命(例えば10年まで)、(v)良好なサイクリング特性、及び(vi)作動温度範囲(例えば摂氏−20〜60度)との適合性を含む、有用なデバイス性能をもたらすことが可能な一次及び二次電気化学セルを実現している。これらの有利な特性の結果として、一次及び二次リチウム電池は、携帯電話及び携帯型コンピューターなどの多くの携帯型電子デバイス向けの、他の重要な、生物医学工学、センシング、軍事用通信、及び照明の分野におけるデバイス用途向けの電力源として広く用いられる。
【0007】
[007]一次リチウム電池系は、典型的に、リチウムイオンを発生するリチウム金属負極を使用する。放電の間、リチウムイオンは負極から液相又は固相電解質を通って移動し、インターカレーションホスト材料を含む正極でインターカレーション反応を受ける。二重インターカレーション型リチウムイオン二次電池も開発されており、この場合リチウム金属を、第2のリチウムイオンインターカレーションホスト材料で置き換えて、負極を提供する。リチウムイオン二次電池では、リチウムイオン挿入及び脱挿入同時反応によりリチウムイオンが、放電及び充電サイクルの間、正及び負インターカレーション電極間で移動することが可能になる。負極にリチウムイオンインターカレーションホスト材料を組み込むことは、リチウムの高度な反応性及び非エピタキシャル析出性状により、再充電の際に安全問題を起こし易い金属リチウムの使用を避けるという有意義な利点を有する。リチウム電池における電極向けの有用なインターカレーションホスト材料には、炭素質材料(例えば、黒鉛、コークス、半フッ素化炭素など)、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属セレン化物、及び金属リン化物が含まれる。米国特許第6852446号明細書、第6306540号明細書、第6489055号明細書、及びGholam−Abbas Nazri and Gianfranceo Pistoia編集の「Lithium Batteries Science and Technology」、Kluer Academic Publishers,2004は、リチウム及びリチウムイオン電池システムを対象としており、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0008】
[008]リチウム電気化学セル向けの電解質は、リチウムが水と極めて反応性の性質を有するため、非水材料に限定される。(i)有機又は無機溶媒中に溶解されたリチウム塩の溶液、(ii)イオン導電性ポリマー、(iii)イオン性液体、(iv)及び溶融リチウム塩を含む、いくつかの種類の非水電解質が、リチウム電気化学セル向けにうまく実装されている。極性有機溶媒中に溶解されたリチウム塩を含む非水電解質溶液は、一次及び二次リチウムセル向けに現在最も広く採用されている電解質である。これらの電解質向けに有用な溶媒には、リチウム塩の解離を促進して、それらのイオン性成分とする極性溶媒が含まれる。リチウムセル電解質向けに有用な性質を示す極性溶媒には、直鎖及び環状エステル(例えば、ギ酸メチル、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、及び炭酸プロピレン)、直鎖及び環状エーテル(例えば、ジメトキシエタン、及びジオキソラン)、アセトニトリル、並びにγ−ブチロラクトンが含まれる。これらの電解質系内のリチウム塩は、通例ではリチウム及び錯体アニオンを含む塩であり、極性有機溶媒中のそれらの解離を促進するように、比較的低い格子エネルギーを有するものである。これらの系のため電解質中にうまく組み込まれているリチウム塩には、LiClO、LiBF、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、及びLiPF、が含まれ、0.01M〜1Mの範囲にある濃度で提供される。
【0009】
[009]一次又は二次リチウム電池のために極性有機溶媒系電解質システムをうまく実装するには、それらの化学的及び物理的性質を含むいくつかの考慮が必要である。第一に、電解質は、電極表面上に、放電開始時に著しい電圧遅れをもたらさない且つ高電流放電の際急速に再形成が可能である安定な不動態化層を形成することが可能でなければならない。第二に、電解質は、関連電極材料及び放電条件についての電解劣化に関して化学的に安定でなければならない。第三に、電解質は有用なイオン伝導性を示さなければならない。これらのシステム向けの最先端技術の電解質は、例えば摂氏25度で約0.005Scm−1以上のイオン導電率を示す。電気化学セルにおける性能向上をもたらすために有用な電解質の他の物理的性状には、熱的安定性、低粘度、低融点、及び高沸点が含まれる。
【0010】
[010]多くの最先端技術のリチウム電池の電力出力は、現在、これらの系の内部抵抗を一部決定する電解質の導電率によって制約されている。したがって、実質的な研究は、現在、より高いデバイス性能にアクセスため、大きなイオン伝導性をもたらす一次及び二次リチウム電池向け電解質の開発に向けられている。一次又は二次リチウム電池向け極性有機溶媒系電解質系のイオン伝導性を高めるいくつかの方策が、展開されている。これらの方策の多くは、リチウム塩の溶解を増進する電解質への添加剤を提供する一方、同時に放電及び充電条件下で化学的及び電気化学的安定性を維持することを包含する。
【0011】
[011]アニオン受容体は、非水電解質溶液のイオン伝導性を増加させる添加剤として最近開発されている化合物の1種である(例えば米国特許第6022643号明細書、第6120941号明細書、及び第6352798号明細書を参照されたい)。アニオン受容体は、電解質に供給したリチウム塩のアニオンとの錯体形成反応に参加する非水素結合性の求電子基を組み込むことによって、低誘電性溶媒中のリチウム塩のイオン解離を増進させる。いくつかのアニオン受容体添加剤が、数桁の大きさで溶解度の増加をもたらす形で、特定のリチウム塩の溶解を増進することが実証されている。アニオン受容体添加剤は、ボラン、電子求引性リガンドを有するホウ素酸塩及びホウ酸塩、ポリアンモニウム化合物、グアニジニウム、カリックスアレーン化合物、及びアザ−エーテル化合物などのフッ素化ホウ素系アニオン受容体を含む広い範囲の化合物を包含する。しかし、リチウム電池中にアニオン受容体をうまく組み込むことは、いくつかの重要な因子にかかっている。第一に、アニオン受容体は、有用な放電及び蓄電条件下で電解的分解に関して安定でなければならない。第二に、アニオン受容体は、電極におけるインターカレーション反応を妨げないように錯体アニオンを放出(又は脱錯体化)可能であるべきである。第三に、アニオン受容体それ自体は、好ましくはインターカレーションホスト材料とのインターカレーションに参加すべきではなく、このようなインターカレーション反応に参加する場合、機械的に誘発される電極の劣化をもたらすべきではない。
【0012】
[012]リチウムセル向け極性有機溶媒系電解質に他の有用な化学的及び物理的特性を賦与する添加剤も開発されている。例えば、米国特許第6306540号明細書(Hiroiら)は、リチウム塩及びそれらの解離生成物を含むガス形成分解反応を最小とすることにより非水電解質の安定性を改良する添加剤を提供する。この参考文献は、非水有機溶媒中のLiPFの溶液に、LiF添加剤を提供している電解質組成物を開示している。LiF添加剤が少なくとも一部溶解すると、非水電解質中にフッ化物イオンが発生し、それが、PFアニオンを伴うガス形成分解反応を抑制すると報告されている。しかし、この参考文献は、評価した非水有機溶媒中のLiF固有の低溶解性のために、電解質内に極めて少量のフッ化物イオンしか発生しないことを示している。例えば、この参考文献は、この電解質溶液中のLiFの溶解性が不十分であるために、室温で0.2重量%のLiF(〜0.077M)を溶解させることが困難であったことを報告している。
【0013】
[013]前述のことから明らかであるように、当技術分野において、電気化学的変換及び貯蔵システムのために有用な化学的及び物理的性状を示す非水電解質への必要性が存在する。一次及び二次リチウム電気化学セルにおいて使用するため大きなイオン伝導性及び良好な安定性を示す非水電解質が必要とされている。具体的には、一次及び二次リチウム電気化学セルのための非水電解質中におけるリチウム塩の溶解度及び安定性を高める添加剤への必要性が存在する。
【0014】
[014]さらに、当技術分野において、多くの溶媒環境において通例非常に低い溶解度を示す無機フッ化物を含む、フッ化物の溶解度及び/又は溶解の増進をもたらす方法への必要性が一般に存在する。水性相及び非水相を含む溶液相において、新たな化学作用が行われることを可能にするフッ化物の高められた溶解度をもたらす方法及び組成物が必要とされている。表面フッ素化、並びにソフト化学方法を使用した有機及び無機フッ素化を含む、フッ化物の溶解度を高める方法及び組成物を求める広い範囲の、可能性のある用途が存在する。このような種類の反応の一例は、耐腐食性を高める目的のための表面フッ素化を包含する。溶液及び/又はガス相中における高度に腐食性のHFの使用又はHFの生成を伴う、溶液相フッ化物イオンの供給源が、特に必要とされる。
【0015】
[015]表1は、水中における無機フッ化物の範囲における溶解度データの要約を提供する。表1に示すように、多くの固体状態無機フッ化物(MF)、例えばCdF、CoF、FeF、MnF、NaF、NiF、ZnF、ZrF、AlF、BaF、CaF、CuF、FeF、InF、LiF、MgF、PbF、SrF、UF、VF−3HO、BiF、CeF、CrF/CrF、GaF、LaF、NdF、及びThFは、水及び多くの有機溶媒に難溶性である。CsF、RbF、KF、SbF及びAgFなどの他のフッ化物は、周囲温度で水中に容易に溶解する。加水分解に問題がなければ、不溶性元素フッ化物は、ハロゲン化物メタセシスにより、又は適正な元素酸化物、水酸化物、炭酸塩との、又は元素それ自体との水性フッ化水素酸の反応により、水性沈殿として調製することができる。しかし、上記において考察したように、フッ化水素酸の使用は、高度の腐食性及び毒性が示される著しい欠点を有する。
【0016】
[016]したがって、不溶性フッ化物の溶解が、現在、化学的な科学及び技術の大きな課題である。他の利点の中で、それは溶液反応による新たな化学的合成のために、又は溶解したフッ素化化学種の適正な物理的性状のために、フッ素に富む溶液を提供することができる。具体的には、フッ化物の高められた溶解度をもたらす方法及び組成物は、溶液相及び表面相合成経路として有用な溶液相フッ化物組成物にアクセスする重要なツールを提供できる。上記において考察したように、フッ化物の高められた溶解度をもたらす方法及び組成物により、電解合成、電着、及び電解不動態化を含む多くの用途向けの、並びに一次及び二次電池、電気化学二重層コンデンサー及び燃料電池などの電気化学エネルギー貯蔵及び変換システムにおける新たな電解質溶液も可能になるであろう。
【0017】
[017]
【表1−1】

【0018】
[018]
【表1−2】

【0019】
[019]
【0020】
[発明の概要]
[020]本発明は、解離剤成分を配合することにより、溶媒中において無機フッ化物(すなわち、1つ又は複数のフッ化物基を含有する無機塩)の有効な溶解をもたらす組成物、配合物及び方法を提供する。本発明の解離剤は、錯体形成、酸−塩基反応、及び付加物形成反応などの、溶液中の化学反応に参加し、それらが溶媒環境の範囲における無機フッ化物の溶解の増進をもたらす。ルイス酸、ルイス塩基、アニオン受容体、カチオン受容体又はそれらの組合せを含む解離剤を提供しており、それらがある範囲の無機フッ化物、特に、本発明の解離剤が存在しないと、多くの溶媒に高度に不溶であるLiFなどの無機フッ化物の溶解の程度を著しく増加させる。本発明の組成物、配合物及び方法は多用性があり、したがって、水溶液、非水有機溶液、及び非水無機溶液を含む、溶解した無機フッ化物を含有する溶液を作るのに有用である。本発明の解離剤、配合物、及び方法は、選択された化学的、電子的、及び物理的性状を有するフッ化物イオンに富む溶液を作るのに有用である。例えば、本発明は、化学合成用途向けに溶液相試薬を提供するのに役立つ組成物を提供する。さらに、本発明は、電気化学的変換及び貯蔵システム、電解合成、電着(電気めっき)、電解不動態化、電解エッチング、並びに強調Fイオンセンサー及び専用電極などの電気化学的検出及び分析の用途向けに有用な組成物を提供する。本方法及び組成物は、フッ化物イオン専用電極などの電気化学的検出システムを含む、検出システムにも有用である。
【0021】
[021]本発明は、電気化学デバイス向けの、特に、一次及び二次リチウム電気化学セル向けの新たな種類の非水電解質をも提供する。この実施形態の電解質配合物は、多くの非水有機溶媒中で固有の低溶解度を有するリチウム塩の有効な溶解をもたらす。本発明のこの態様は、高イオン伝導性、良好な化学的及び電気化学的安定性などの化学的及び物理的性状を有する電解質組成物、並びにこれらのシステムでは他の方法では手が届かない、有用なフッ化物イオンを含有する溶液相組成物を提供する。本発明の電解質配合物中に、極性カーボネート及びγ−ブチロラクトンなどの極性非水有機溶媒中でLiFなどのリチウム塩の溶解の程度及び溶解度を著しく増大させる、ルイス酸、ルイス塩基、アニオン受容体、カチオン受容体又はこれらの組合せを含む解離剤を配合している。本非水電解質組成物及び解離剤は、金属リチウムと接触して化学的に安定であり、放電及び充電電位の有用な範囲にわたって高い電圧安定性をも示している。本発明の非水電解質により、大きな放電速度及び電力出力機能を含む、従来のシステムに対して先進的な性能特性を示す、一次及び二次リチウム電池を含む、一次及び二次電気化学セルが可能になる。
【0022】
[022]一態様において、本発明は、溶媒又は溶媒の組合せに加えた場合、1種又は複数の無機フッ化物の溶解を増進させる解離剤を含む溶液を提供する。本発明のこの態様の溶液は、(i)1種又は複数の溶媒と、(ii)この1種又は複数の溶媒に提供した解離剤と、(iii)この解離剤を有する1種又は複数の溶媒中に溶解した1種又は複数の無機フッ化物とを含む多成分配合物である。本発明のこの態様における有用な解離剤には、ルイス酸、ルイス塩基、アニオン受容体、カチオン受容体又はこれらの組合せが含まれる。本発明のこの態様は、溶媒又は溶媒の組合せ中に無機フッ化物を溶解する方法であって、1種又は複数の溶媒に解離剤を供給するステップと、この解離剤を含有する1種又は複数の溶媒中にこの無機フッ化物を溶解するステップとを含む方法をさらに提供する。
【0023】
[023]本発明のこの態様の溶液に解離剤成分を配合すると、溶液中の、錯体形成、酸−塩基反応、及び付加物形成反応を含む化学反応に参加することにより、1種又は複数の無機フッ化物の溶解をもたらす形で、それが溶解度平衡条件に影響を及ぼして、1種又は複数の溶媒中の無機フッ化物の溶解の程度が増進される。例えば一実施形態において、この解離剤及び無機フッ化物は、この1種又は複数の溶媒中に溶解した0.15M以上の濃度の無機フッ化物を生成させるのに十分な量で、提供される。いくつかの用途について、この解離剤及び無機フッ化物は、この1種又は複数の溶媒中に溶解した0.15M〜3Mの範囲にわたって選択される、好ましくは特定の用途について0.5M〜1Mの範囲にわたって選択される濃度の無機フッ化物を生成させるのに十分な量で提供される。いくつかの用途について好ましい解離剤は、モル対モル基準で無機フッ化物の溶解を著しく増進させることが示される。例えば一実施形態において、1種又は複数の溶媒中に溶解した無機フッ化物の、1種又は複数の溶媒中に溶解した解離剤に対するモル比:
【0024】
[024]
【数1】


[025]は0.1以上であり、好ましくはいくつかの用途について0.1〜10の範囲にわたって選択される。
【0025】
[026]本配合物、解離剤、及び方法は、広い範囲の無機フッ化物、特に純粋溶媒又は組合せ溶媒中において低溶解度を示すものに適用可能である。本溶液、配合物、及び方法において有用な種類の無機フッ化物の種類には、アルカリ金属フッ化物、アルカリ土類金属フッ化物、遷移金属フッ化物、及びフッ化アンモニウムが含まれる。本発明は、下式を有するフッ化物を溶解した溶液を提供する:
【0026】
[027] MF 又は BF
【0027】
[028] (F1) (F2)
【0028】
[029]式中、Mは、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sn、Pb、及びSbからなる群から選択される金属であり、nはMの酸化状態であり;又Bは、NH(すなわちアンモニウムイオン)及びN(R(第四級アンモニウム)(式中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、H原子、アルキル基、アセチル基、及び芳香族(フェニル)基からなる群から選択される)からなる群から選択される多原子カチオンであり、yはBの荷電状態である。一実施形態において、例えば、本発明の溶液は、CdF、CoF、FeF、MnF、NaF、NiF、ZnF、ZrF、AlF、BaF、CaF、CuF、FeF、InF、LiF、MgF、PbF、SrF、UF、VF−3HO、BiF、CeF、CrF/CrF、GaF、LaF、NdF、ThF、AgF、CsF、RbF、SbF、TlF、BeF、KF、NHF、SnF、TaF、VF、BF、BrF、BrF、BrF、CoF、GeF/GeF、Hg/HgF、NbF、OsF、PF/PF、RhF、SF/SF、SnF、TeF、UF、VF、及びWFからなる群から選択される無機フッ化物成分を含む。一実施形態において、例えば、本発明の溶液は、CdF、CoF、FeF、MnF、NaF、NiF、ZnF、ZrF、AlF、BaF、CaF、CuF、FeF、InF、LiF、MgF、PbF、SrF、UF、VF−3HO、BiF、CeF、CrF/CrF、GaF、LaF、NdF、及びThFからなる群から選択される無機フッ化物成分を含む。
【0029】
[030]他の態様において、本発明は、溶媒又は溶媒の組合せ中のLiF塩を溶解するように特に適応された化学的性質を有する1種又は複数の解離剤を含有する溶液を提供する。一実施形態において、この態様の溶液は、(i)1種又は複数の溶媒と、(ii)この1種又は複数の溶媒に加えた解離剤であり、ルイス酸、ルイス塩基、及びクラウンエーテルからなる群から選択される1種又は複数の化合物を含む解離剤と、(iii)この解離剤を有する1種又は複数の溶媒中に溶解したLiFであり、前記1種又は複数の溶媒中に溶解した濃度が0.15M以上であるLiFとを含む。本発明のこの態様の特定の実施形態は、この1種又は複数の溶媒中に0.15M〜3Mの範囲にわたって選択される、好ましくはいくつかの用途について0.5M〜1Mの範囲にわたって選択される濃度の溶解したLiFが生成するようにLiFの溶解をもたらす。本発明のこの態様は、溶媒又は溶媒の組合せ中にLiFを溶解する方法であって、この1種又は複数の溶媒に、ルイス酸、ルイス塩基、クラウンエーテル、又はこれらの組合せを含む解離剤を加えるステップと、この解離剤を含有する1種又は複数の溶媒中にこのLiFを溶解するステップとを含む方法をさらに提供する。
【0030】
[031]解離剤の組成及び濃度の選択によって、少なくとも一部、本発明のこの態様の溶液及び配合物の組成、化学的性質及び/又は物理的性状が決まる。例えば、本発明の溶液及び方法中の解離剤の組成及び濃度は、LiFなどの無機フッ化物の所望される溶解の程度を達成するための重要なパラメーターである。いくつかの実施形態における有用な解離剤には、ルイス酸、ルイス塩基、アニオン受容体、カチオン受容体、錯化剤、付加物形成剤、及びこれらの化合物の組合せが含まれる。いくつかの実施形態において、解離剤は、0.01M〜10Mの範囲にわたって選択される、好ましくはいくつかの用途について0.1M〜5Mの範囲にわたって選択される、より好ましくはいくつかの用途について0.5M〜1.5Mの範囲にわたって選択される濃度で1種又は複数の溶媒中に提供される。いくつかの実施形態について有用な解離剤の他の性状には、化学的安定性(例えばリチウム金属が存在する状態で)、電気化学セルにおける放電又は充電条件下での電気化学的安定性、溶液に加える場合、粘性の影響が低いこと、熱的安定性、並びに溶液に加える場合、イオン伝導性が高められることが含まれる。リチウム電池用途向けのいくつかの実施形態において、解離剤試薬は、電極においてインターカレーション反応に著しく曝されることはない。
【0031】
[032]本溶液、配合物、及び方法において、ルイス酸及びルイス塩基は、特に有用な種類の解離剤である。本明細書において使用している用語「ルイス酸」は、溶液中でカチオンを生成することができ、又はアニオンと結合することができる物質、及び/又は電子対を受容して、配位共有結合を形成することができる分子を指し、用語「ルイス塩基」は、溶液中でアニオンを生成することができ、又はカチオンと結合することができる物質、及び/又は電子対を供与することにより、配位共有結合を形成することができる分子又はイオンを指す。本発明の溶液に提供される有用なルイス塩基又はルイス酸解離剤には、無機フッ化物、無機塩化物、無機炭酸塩、及び無機酸化物が含まれるがそれらに限定されない。例えば、一実施形態においてこの解離剤は、AlCl、ClO、SnCl2−、BF、PF、及びAsFからなる群から選択される1種又は複数のルイス塩基である。例えば、一実施形態においてこの解離剤は、BF、PF、SbF、AsF、AlCl、SnCl、FeCl、NbCl、TiCl、及びZnClからなる群から選択される1種又は複数のルイス酸である。
【0032】
[033]一実施形態において、1種又は複数のルイス酸及び/又はルイス塩基を含む解離剤は、0.1M〜10Mの範囲にわたって選択される、好ましくはいくつかの用途について0.5M〜3Mの範囲にわたって選択される濃度で溶液中に提供される。ルイス酸及び塩基は、前駆体化合物を本発明の溶液に提供することにより、この溶液に提供できる。本説明の文脈において、用語「前駆体化合物」は、溶媒又は溶媒の組合せ中に提供した場合、ルイス酸、ルイス塩基、又はこの両方を溶液中で生成させる物質を指す。例えば、一実施形態においてこの解離剤は、1種又は複数の溶媒中に前駆体化合物を溶解して、ルイス塩基、ルイス酸、又はルイス酸及びルイス塩基の組合せを生成させることにより提供され、この場合この前駆体化合物は、下式を有するアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、希土類金属塩、又はアンモニウム塩を含む:
【0033】
[034] AX
【0034】
[035] (F3)
【0035】
[036]式中、Aは、金属、金属カチオン、及びアンモニウム基からなる群から選択され、Xはフッ素化アニオン、過塩素酸塩基、イミド基、炭化物基、カーボネート基、酸化物基、及び塩化物基からなる群から選択される。リチウム塩は、本発明のいくつかの溶液及び方法においてルイス酸及び/又はルイス塩基を生成させるのに役立つ前駆体である。本溶液、配合物、及び方法において有用な前駆体化合物には、LiPF、LiBF、LiAsF、LiClO、LiSnCl、LiAlCl、LiFeCl、LiNbCl、LiTiCl、LiZnCl、NaPF、NaBF、NaAsF、NaClO、NaSnCl、NaAlCl、NaFeCl、NaNbCl、NaTiCl、NaZnCl、KPF、KBF、KAsF、KClO、KSnCl、KAlCl、KFeCl、KNbCl、KTiCl、KZnCl、NHPF、NHBF、NHAsF、NHClO、NHSnCl、NHAlCl、NHFeCl、NHNbCl、NHTiCl、NHZnCl、N(CHClO、N(CHSnCl、N(CHAlCl、N(CHFeCl、N(CHNbCl、N(CHTiCl、N(CHZnCl、N(CClO、N(CSnCl、N(CAlCl、N(CFeCl、N(CNbCl、N(CTiCl、及びN(CZnClが含まれるが、それらに限定されない。
【0036】
[037]カチオン受容体は、本溶液、配合物、及び方法における他の特に有用な種類の解離剤である。本明細書において使用している用語「カチオン受容体」は、溶液中でカチオンと結合するか、そうでなければカチオンを吸収することができる分子又はイオンを指す。本発明のいくつかの溶液は、クラウンエーテル、ルイス塩基、及びカチオン錯化剤からなる群から選択される1種又は複数のカチオン受容体を含む。一実施形態において、1種又は複数のカチオン受容体を含む解離剤は、0.1M〜10Mの範囲にわたって選択される、好ましくはいくつかの用途について0.3M〜5Mの範囲にわたって選択される濃度で溶液中に提供される。
【0037】
[038]クラウンエーテルは、LiFを含む無機フッ化物の溶解を増進させるのに有益な化学的及び物理的性状を示すカチオン受容体の1種である。これらの化合物は、溶液中の金属イオンと錯体形成するのに有用である。本発明において有用なクラウンエーテルカチオン受容体には、ベンゾ−15−クラウン−5、15−クラウン−5、18−クラウン−6、シクロヘキシル−15−クラウン−5、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、ジ−t−ブチルジベンゾ−18−クラウン−6、4,4i ̄(5i ̄)−ジ−tert−ブチルジベンゾ−24−クラウン−8、4−アミノベンゾ−15−クラウン−5、ベンゾ−15−クラウン−5、ベンゾ−18−クラウン−6、4−tert−ブチルベンゾ−15−クラウン−5、4−tert−ブチルシクロヘキサノ−15−クラウン−5、18−クラウン−6、シクロヘキサノ−15−クラウン−5、ジ−2,3−ナフト−30−クラウン−10、4,4’(5’)−ジ−tert−ブチルジベンゾ18−クラウン−6、4’−(5’)−ジ−tert−ブチルジシクロヘキサノ−18−クラウン−6、4,4’(5’)−ジ−tert−ブチルジシクロヘキサノ−24−クラウン−8、4,10−ジアザ−15−クラウン−5、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−21−クラウン−7、ジベンゾ−24−クラウン−8、ジベンゾ−30−クラウン−10、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6、ジシクロヘキサノ−21−クラウン−7、ジシクロヘキサノ−24−クラウン−8、2,6−ジケト−18−クラウン−6、2,3−ナフト−15−クラウン−5、4’−ニトロベンゾ−15−クラウン−5、テトラアザ−12−クラウン−4テトラヒドロクロリド、テトラアザ−12−クラウン−4四水素スルフェート、1,4,10,13−テトラオキサ−7,16−ジアザシクロオクタデカン、12−クラウン−4、15−クラウン−5、及び21−クラウン−7が含まれるが、それらに限定されない。一実施形態において、クラウンエーテル解離剤は、溶媒に対し0.1M〜10Mの範囲にわたって選択される、好ましくはいくつかの用途について0.5M〜3Mの範囲にわたって選択される濃度で溶液中に提供される。
【0038】
[039]アニオン受容体は、本溶液、配合物、及び方法における他の特に有用な種類の解離剤である。本明細書において使用している用語アニオン受容体は、溶液中でアニオンと結合するか、そうでなければアニオンを吸収することができる分子又はイオンを指す。本溶液、配合物、及び方法における有用なアニオン受容体には、フッ素化及び半フッ素化ホウ酸塩化合物、フッ素化及び半フッ素化ホウ素酸塩化合物、フッ素化及び半フッ素化ボラン、フェニルホウ素化合物、アザ−エーテルホウ素化合物、ルイス酸、環状ポリアンモニウム化合物、グアニジニウム化合物、カリックスアレーン化合物、アザ−エーテル化合物、第四級アンモニウム化合物、アミン、イミダゾリニウム系受容体、水銀メタラサイクル化合物、ケイ素含有かご(ケージ)、及びマクロ環が含まれるが、それらに限定されない。一実施形態において、1種又は複数のアニオン受容体を含む解離剤は、0.1M〜10Mの範囲にわたって選択される、好ましくはいくつかの用途について0.5M〜3Mの範囲にわたって選択される濃度で溶液中に提供される。
【0039】
[040]カリックスアレーン化合物の例には、コバルトセニウム系受容体、フェロセン系受容体、π−メタル化カチオンホスト、カリックス[4]アレーン、及びカリックス[6]アレーンが含まれる。アザ−エーテルアニオン受容体の例には、直鎖アザ−エーテル、多分岐アザ−エーテル、及び環状アザ−クラウンエーテルが含まれる。水銀メタラサイクルアニオン受容体の例には、マーキュラカルボランド(mercuracarborands)及びペルフルオロ−o−フェニレン水銀メタラサイクルが含まれる。アニオン受容性ケイ素含有かご及びマクロ環の例には、シルセスキオキサンかご、及びクラウンシランが含まれる。有用なアニオン受容体の他の例は、一般に当技術分野で見出すことができる[例えば、Dietrich、Pure&Appl.Chem.,Vol 65,No.7、1457〜1464頁、1993;米国特許第5705689号明細書;米国特許第6120941号明細書;Matthews及びBeer、Calixarene Anion Receptors、Calixarenes 2001中の421〜439頁、Kluwer Academic Publishers,The Netherlands;Rodionov、State of the Art in Anion Receptor Design、American Chemical Society Division of Organic Chemistry Fellowship Awardee Essay 2005〜2006;H.S.Lee,X.Q.Yang,C.L.Xiang,J.McBreen,L.S.Choi、「The Synthesis of a New Family of Boron−Based Anion Receptors and the Study of Their Effect on Ion Pair Dissociation and Conductivity of Lithium Salts in Nonaqueous Solutions」、J.Electrochem.Soc.,Vol.145,No.8、1998年8月;H.S.Lee,Z.F.Ma,X.Q.Yang,X.Sun及びJ.McBreen、「Synthesis of a Series of Fluorinated Boronate Compounds and Their Use as Additives in Lithium Battery Electrolytes」、Journal of The Electrochemical Society,151(9)A1429〜A1435(2004);並びにX.Sun,H.S.Lee,S.Lee,X.Q.Yang及びJ.McBreen、「A Novel Lithium Battery Electrolyte Based on Lithium Fluoride and a Tris(pentafluorophenyl)Borane Anion Receptor in DME」、Electrochemical and Solid−State Letters,1(6)239〜240(1998)を参照されたい;これらの全ては、本発明と相反しない範囲で参照により組み込まれている。
【0040】
[041]本発明の溶液、配合物、及び方法は、ある範囲の、水を含む溶媒、非水有機溶媒、及び非水無機溶媒と適合性がある。リチウム電気化学セルなどの電気化学セル用電解質を提供するのに役立ついくつかの実施形態において、1種又は複数の溶媒は、直鎖及び環状エステル、直鎖及び環状エーテル、及び極性カーボネートなどの1種又は複数の極性非水溶媒を含む。本発明の電解質は、所与の電気化学デバイス又は用途のために役立つ相対的割合で提供される単一の非水溶媒又は非水溶媒の組合せを含むことができる。本発明のいくつかの実施形態における非水溶媒の組成は、イオン伝導性、粘度、融点、凝固点、並びに電解分解性に関する及び/又はリチウム金属との反応に関する安定性などの所望の物理的、電子的、及び化学的性状を有する電解質配合物を提供するように選択される。本発明において有用な溶媒には、1種又は複数のγ−ブチロラクトン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸エチレン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオラン、ギ酸メチル、ニトロメタン、ホスホロキシクロリド、チオニルクロリド、スルフリルクロリド、ジエチルエーテル、ジエトキシエタン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチル−THF、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、酢酸メチル、及びトラタヒドロフラン(tratahydrofurane)が含まれるが、それらに限定されない。
【0041】
[042]他の態様において、本発明の溶液、及び配合物は、電気化学的貯蔵及び変換用途のため役立つ電解質組成物を提供する。これらの実施形態において、電解質の無機フッ化物、解離剤、及び溶媒成分はターゲット電気化学デバイス用途のため役立つ溶液性状をもたらすように選択される。例えば、この態様のいくつかの実施形態において、電解質の溶液成分の組成は、大きなイオン伝導性、並びに純粋な非水有機溶媒に比較的難溶な無機フッ化物を含有する溶液への溶解性を高めるなどの有用な化学的及び物理的性状を確立するように選択される。本発明には、高度な化学的及び電気化学的安定性を示す、非水電解質を含む電解質が含まれる。例えば、一実施形態において、本発明の電解質は、5V(対Li/Li)を超える高い電圧安定性ウインドウを有する。他の実施形態において、本発明の電解質配合物は、放電又は充電条件下でLi金属との接触に関して安定である。本発明の電解質は、摂氏25度において10−4Scm−1以上の、好ましくはいくつかの用途について10−3Scm−1以上の、より好ましくはいくつかの用途について5×10−3Scm−1以上のイオン導電率を有する。本発明の非水電解質は、摂氏25度において5cP以下の、より好ましくはいくつかの用途について3cP以下の粘度を有する。
【0042】
[043]本発明は広い範囲の無機フッ化物を含む電解質を包含するが、リチウム電気化学セル向けに好ましい種類の電解質は、1種又は複数の非水溶媒中に提供されるLiF及び解離剤を含む。この態様において、本発明は、LiF塩を含む無機フッ化物成分と、1種又は複数の有機溶媒中のLiFの解離及び安定性を著しく強化する解離剤とを有する電解質配合物を提供する。この態様の実施形態は、Fが最も電気陰性な元素であり、Liが最も電気陽性な元素であるため、電気化学セルの電解質向けに特に有用である。したがって、LiFを含む本発明の電解質は、従来のリチウム電気化学セルに対して強化されたセル電圧及び比容量を有する電気化学セルをもたらすため特に魅力的である。本発明の解離剤は、選択された非水有機溶媒又は非水有機溶媒の組合せ中のLiFの導電率を、25℃において10−4Scm−1以上、好ましくは5×10−4Scm−1以上、より好ましくは10−3Scm−1以上の値まで増加させることが可能である。一実施形態において、本発明の解離剤は、選択された非水有機溶媒(又は溶媒の組合せ)中のLiFの溶解度を、低値(例えばマイクロモルの桁の)から0.1M以上、好ましくは0.5M以上、好ましくは1M以上まで増加させる。一実施形態において、本発明の電解質中の温度約25℃におけるLiF溶解度は、解離剤の添加によって、約0.1M〜5Mを含む約0.1Mを超える値、及び約1〜2Mの間まで増加される。
【0043】
[044]本発明には、非水電解質などの本電解質を備えた、一次電気化学セル、二次電気化学セル、コンデンサー、スーパーコンデンサー、及び燃料電池を含むがそれらに限定されない電気化学デバイスが含まれる。さらに、本発明の溶液、解離剤、及び方法は、電気化学的検出システムを含む検出システムのために有用でもある。例えば、本発明の溶液及び解離剤は、フッ化物イオン専用電極の干渉を低減し、選択性を高めるのに有用である。一実施形態において、本発明は、(i)正極と、(ii)負極と、(iii)正極と負極の間に提供される本発明の電解質とを備えた電気化学セルを提供する。当電気化学分野の業者により理解されるように、本発明の電気化学デバイスにおいて有用な電解質は、本記述全体にわたって提供されるものを含む。一実施形態において、本発明の電気化学デバイスの電解質は、(i)1種又は複数の溶媒と、(ii)この1種又は複数の溶媒に提供される解離剤と、(iii)この解離剤を有する1種又は複数の溶媒中に溶解した無機フッ化物とを含み、この場合、この解離剤及び無機フッ化物は、この1種又は複数の溶媒中に0.15M以上の濃度で溶解した無機フッ化物を生成させるのに十分な量で提供される。
【0044】
[045]当業者により理解されるように、本発明の電気化学デバイスにおいて金属及び半導体材料を含む広い範囲の電極材料及び構成を用いることができる。いくつかの用途についてナノ構造的及び/又はインターカレーティング電極の使用が有用である。一実施形態において負極はリチウム金属、リチウム貯蔵能力を有する黒鉛、コークス、多壁状カーボンナノチューブ、多層状カーボンナノ繊維、多層状カーボンナノ粒子、カーボンナノウイスカー、及びカーボンナノロッドなどの炭素質材料、又はリチウム金属合金を含む。一実施形態において正極は、フッ化物イオン貯蔵能力を有する黒鉛、コークス、多壁状カーボンナノチューブ、多層状カーボンナノ繊維、多層状カーボンナノ粒子、カーボンナノウイスカー、及びカーボンナノロッドなどの炭素質材料を含む。一実施形態において正極は、平均化学量論CF(式中、xは、フッ素原子 対 炭素原子の平均原子比であり、約0.3〜約1.0の範囲から選択される)を有する部分フッ素化炭素質材料を含む炭素質材料を備えている。この部分フッ素化炭素質材料は、フッ素化されていない炭素成分を有する多相材料である。一実施形態において正極は、可逆的フッ素イオン貯蔵能力を有する遷移金属又は希土類金属などのフッ素化元素を含む。
【0045】
[046]フッ化物の溶解度増大をもたらす本発明の溶液、解離剤、及び方法は、電気化学デバイス及びシステムにおける電解質としてのそれらの使用のほかに、有意義な用途を有する。本発明の組成物、及び方法は、幅広い種類の表面相及び溶液合成経路並びに他の方法が可能になるために有益な溶液相組成物及び性状(例えば化学的、物理的、及び/又は電気化学的)にアクセスするのに有益である。例えば、本発明のフッ化物含有溶液は、例えばソフト化学方法、及び表面フッ素化反応による有機及び無機フッ素化を含む重要な合成化学に、溶液相試薬を提供することができる。本発明のフッ化物含有溶液は、電解合成、電着、及び電解不動態化を含む重要な溶液相方法にアクセスするために肝要な溶液性状(例えばイオン伝導性、イオン強度など)を利用する上でも有用であろう。
【0046】
[047]他の態様において、本発明は、1種又は複数の溶媒中に無機フッ化物を溶解する方法であって、(i)1種又は複数の溶媒を提供するステップと、(ii)この1種又は複数の溶媒に解離剤を提供するステップと、(iii)この解離剤を有する1種又は複数の溶媒中に無機フッ化物を溶解するステップとを含み、この場合、この解離剤及び無機フッ化物が、この1種又は複数の溶媒中に0.15M以上の濃度で溶解した無機フッ化物を生成させるのに十分な量で提供され、それによりこの1種又は複数の溶媒中にこの無機フッ化物を溶解する方法を提供する。
【0047】
[048]他の態様において、本発明は、1種又は複数の溶媒中にLiFを溶解する方法であって、(i)1種又は複数の溶媒を提供するステップと、(ii)この1種又は複数の溶媒に解離剤を提供するステップであり、この解離剤が、ルイス酸、ルイス塩基、及びクラウンエーテルからなる群から選択される1種又は複数の化合物を含むステップと、(iii)この解離剤を有する1種又は複数の溶媒中にLiFを溶解するステップとを含み、この場合、前記1種又は複数の溶媒中に溶解しているLiFの濃度が0.15M以上、場合によって0.5M以上である方法を提供する。
【0048】
[049]他の態様において、本発明は、電気化学デバイス向け電解質の製造方法であって、(i)1種又は複数の溶媒を提供するステップと、(ii)この1種又は複数の溶媒に解離剤を提供するステップと、(iii)この解離剤を有する1種又は複数の溶媒中に無機フッ化物を溶解するステップとを含み、この場合、この解離剤及び無機フッ化物が、この1種又は複数の溶媒中に0.15M以上の濃度で溶解した無機フッ化物を生成させるのに十分な量で提供され、それによりこの電気化学デバイス向けにこの電解質を製造する方法を提供する。
【0049】
[050]他の態様において、本発明は、電気化学デバイス向け電解質の製造方法であって、(i)1種又は複数の溶媒を提供するステップと、(ii)この1種又は複数の溶媒に解離剤を提供するステップであり、この解離剤が、ルイス酸、ルイス塩基、及びクラウンエーテルからなる群から選択される1種又は複数の化合物を含むステップと、(iii)この解離剤を有する1種又は複数の溶媒中にLiFを溶解するステップとを含み、それによりこの電気化学デバイス向けにこの電解質を製造する方法を提供する。
【0050】
[051]他の態様において、本発明は、1種又は複数の溶媒中にLiFを溶解している溶液であって、(i)前記1種又は複数の溶媒と、(ii)前記1種又は複数の溶媒中に溶解したLiFとを含み、この場合、前記1種又は複数の溶媒中に溶解しているLiFの濃度が0.15M以上である溶液を提供する。
【0051】
[052]どんな特定の学説にも捉われようとせずに、本発明に関して根底にある原則についての考え及び理解への考察が本明細書において存在することができる。どんな機械論的説明又は仮説の究極的な正しさにも拘らず、やはり本発明の実施形態は効果をもたらし、有用であることが認められる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】EC−DMC中の1M LiPF溶液からなるLiFを含有する電解質、及びLiFを含有しない電解質を有するLi/電解質/黒鉛系電極セルの比較(標準化)放電プロフィルのグラフである。
【図2】LiF含有電解質セルについて、2.1Vと4.8Vの間で掃引速度15mV/分のもとに得られたサイクルボルタンモグラムを示すグラフである。負に帯電した化学種の黒鉛中へのインターカレーション及び脱インターカレーションに対応する酸化及び還元ピークを示している。
【図3】EC−DMC中の1M LiPF溶液からなるLiFを含有する電解質、及びLiFを含有しない電解質を有するLi/電解質/フッ化黒鉛(CF0.53)系電極セルの比較(標準化)放電プロフィルのグラフである。
【図4】充電/放電サイクルの間、LiPFを含有するセルにより提供される電流を示すグラフである。
【図5】充電/放電サイクルの間、LiF及び12−クラウン−4を含有するセルにより提供される電流を示すグラフである。
【0053】
[発明の詳細な説明]
[058]図を参照すると、同様の数値は同様の構成要素を示しており、2つ以上の図に出てくる同一の数値は、同一の構成要素を指している。一般に本明細書において使用している用語及び表現は、当業者に知られている標準的な文章、定期刊行物参考文献、及び文脈を参照することにより見出すことができる、業界公認の意味を有する。下記の定義は、本発明の文脈におけるそれらの特定の使用法を明確にするため提供している。
【0054】
[059]「標準電極電位」(E°)は、溶質の濃度が1M、ガス圧が1気圧、及び温度が摂氏25度である場合の電極電位を指す。本明細書で使用している標準電極電位は、標準水素電極を基準として測定している。
【0055】
[060]「インターカレーション」は、イオンがホスト材料に挿入されて、フッ化物イオンなどの移動性ゲストイオンの挿入と相まって起る電気化学的電荷移動を伴うホスト/ゲスト固相レドックス反応により層間化合物を生成する過程を指す。インターカレーションによるゲストイオンの挿入後もホスト材料の主な構造的特徴が保持される。いくつかのホスト材料において、インターカレーションは、ゲストイオンが層状ホスト材料の層間間隙(例えばギャラリー)に吸収される過程を指す。層間化合物の例にはフッ化物イオン層間化合物が含まれ、この場合フッ化物イオンは、層状フッ化物ホスト材料又は炭素ホスト材料などのホスト材料中に挿入される。本発明の電極向けに層間化合物を形成するのに役立つホスト材料には、CF、FeFx、MnFx、NiFx、CoFx、LiC、LixSi、及びLixGeが含まれるが、それらに限定されない。
【0056】
[061]用語「電気化学セル」は、化学エネルギーを電気エネルギーに、又は電気エネルギーを化学エネルギーに変換するデバイス又はデバイス素子を指す。電気化学セルは2つ以上の電極(例えば正極及び負極)及び電解質を有し、電極表面で電極反応が起り電荷移動過程をもたらす。電気化学セルには一次電池、二次電池及び電気分解システムが含まれるが、それらに限定されない。一般的なセル及び/又は電池構成が当技術分野で知られており、例えば米国特許第6489055号明細書、第4052539号明細書、第6306540号明細書、Seel及びDahn、J.Electrochem.Soc.147(3)892〜898(2000)を参照されたい。
【0057】
[062]用語「容量」は、電池などの電気化学セルが保持することができる電荷の総量を指す、電気化学セルの特性である。容量は通常、アンペア−時の単位で表される。用語「比容量(specific capacity)」は、電池などの電気化学セルの単位重量当りの容量出力を指す。比容量は通常、アンペア−時kg−1の単位で表される。
【0058】
[063]用語「放電速度(discharge rate)」は、電気化学セルが放電する電流を指す。放電電流は、アンペア−時の単位で表すことができる。別法として、放電電流は、電気化学セルの定格容量として正規化し、C/(Xt)(式中、Cは電気化学セルの容量、Xは変数、tは、本明細書で用いる指定した時間単位であり、1時間に等しい)として表すことができる。
【0059】
[064]「電流密度」は、単位電極面積当り流れる電流を指す。
【0060】
[065]「開路電圧」は、回路が開いている場合(すなわち非荷電条件)の電気化学セルの端子(すなわち電極)間の電位差を指す。ある条件下で開路電圧を使用して電気化学セルの組成を推定することができる。本方法及びシステムは、電極、電気化学セル、及び電気化学系の熱力学的パラメーター、材料性状及び電気化学性状を測定するため、電気化学セルの熱化学的安定化条件についての開路電圧の測定を利用している。
【0061】
[066]表現「充電の状態」は、電気化学セル又はその素子(例えば電極――カソード及び/又はアノード)の特性であり、その定格容量についての百分率で表した、電池などの利用可能な容量を指す。
【0062】
[067]電極は、電解質及び外部回路によりイオン及び電子が交換される電気的導体を指す。「正極」及び「カソード」は、本説明において同義語的に使用され、電気化学セルにおいてより高い(すなわち負極よりも高い)電極電位を有する電極を指す。「負極」及び「アノード」は、本説明において同義語的に使用され、電気化学セルにおいてより低い(すなわち正極よりも低い)電極電位を有する電極を指す。カソード還元は、化学種が1個又は複数の電子を得ることを指し、アノード酸化は、化学種が1個又は複数の電子を失うことを指す。本電気化学セルの正極及び負極は、アセチレンブラック、カーボンブラック、粉末黒鉛、コークス、炭素繊維、及び金属粉末などの導電性希釈剤をさらに含むことができ、並びに/又はポリマー結合剤などの結合剤をさらに含むことができる。いくつかの実施形態において有用な正極の結合剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのフルオロポリマーを含む。本発明の正極及び負極は、薄膜電極構成などの薄型電極設計を含む、電気化学及び電池科学の分野で知られている有用な構成及び形状因子の範囲で提供できる。電極は、本明細書において開示されるように、例えば米国特許第4052539号明細書、第6306540号明細書、第6852446号明細書中に開示されているものを含み、当技術分野で知られているように製造される。いくつかの実施形態について、電極は通例、電極集電板上に電極材料、導電性不活性材料、結合剤、及び液体担体のスラリーを付着させ、次いで担体を蒸発させて、集電板と電気的に接続している凝集塊を残すことにより製造される。
【0063】
[068]「電極電位」は、異なる酸化(原子価)状態にある化学種の電極内に存在することによる、又は化学種の電極との接触による、通常基準電極に対して測定される電圧を指す。
【0064】
[069]「電解質」は、固体状態、液体状態(最も普通)、又はより稀にはガス(例えばプラズマ)とすることができるイオン性導体を指す。電気化学セルの文脈において、電解質は、電気化学セルの2つ以上の電極間のイオン伝導性を提供する。
【0065】
[070]「カチオン」は正帯電イオンを指し、「アニオン」は負帯電イオンを指す。
【0066】
[071]「ルイス酸」は、溶液中でカチオンを生成することができ、又はアニオンと結合することができる物質、及び/又は電子対を受容して、配位共有結合を形成することができる分子を指す。有用な種類のルイス酸には、無機フッ化物、無機塩化物、無機炭酸塩、及び無機酸化物が含まれるが、それらに限定されない。無機フッ化物ルイス酸の例はBF、PF、SbF、AsF、である。無機塩化物ルイス酸の例はAlCl、SnCl、FeCl、NbCl、TiCl、及びZnClである。
【0067】
[072]「ルイス塩基」は、溶液中でアニオンを生成することができ、又はカチオンと結合することができる物質、及び/又は電子対を供与して、配位共有結合を形成することができる分子又はイオンを指す。有用な種類のルイス塩基には、無機フッ化物、無機塩化物、無機炭酸塩、及び無機酸化物が含まれるが、それらに限定されない。無機塩化物ルイス塩基の例はAlCl、ClO、及びSnCl2−である。無機フッ化物ルイス塩基の例はBF、PF、及びAsFである。
【0068】
[073]「ルイス酸前駆体」又は「前駆体」、及び「ルイス塩基前駆体」又は「前駆体」は、溶媒及び/又は溶液中に導入した場合、ルイス酸、及び/又はルイス塩基を生成させることができる物質を指す。ルイス酸/塩基先駆体の例は、LiPF、LiBF、LiAsF、LiClO、LiSnCl、LiAlCl、LiFeCl、LiNbCl、LiTiCl、LiZnCl、NaPF、NaBF、NaAsF、NaClO、NaSnCl、NaAlCl、NaFeCl、NaNbCl、NaTiCl、NaZnCl、KPF、KBF、KAsF、KClO、KSnCl、KAlCl、KFeCl、KNbCl、KTiCl、KZnCl、NHPF、NHBF、NHAsF、NHClO、NHSnCl、NHAlCl、NHFeCl、NHNbCl、NHTiCl、及びNHZnCl、などである。
【0069】
[074]「アニオン受容体」は、アニオンと結合するか、そうでなければアニオンを吸収することができる分子又はイオンを指す。有用な種類のアニオン受容体には、フッ素化及び半フッ素化ホウ酸塩化合物、フッ素化及び半フッ素化ホウ素酸塩化合物、フッ素化及び半フッ素化ボラン、ルイス酸、環状ポリアンモニウム化合物、グアニジニウム、カリックスアレーン化合物、アザ−エーテル化合物、第四級アンモニウム、アミン、イミダゾリニウム系受容体、水銀メタラサイクル、並びにケイ素含有かご(ケージ)及びマクロ環が含まれるが、それらに限定されない。環状ポリアンモニウムアニオン受容体の例には、ポリアンモニウムマクロ環、ポリアンモニウムマクロ二環、ポリアンモニウムマクロ三環、アザクラウン化合物、プロトン化テトラ−、ペンタ−、及びヘキサアミンが含まれる。カリックスアレーン化合物の例には、コバルトセニウム系受容体、フェロセン系受容体、π−メタル化カチオンホスト、カリックス[4]アレーン、及びカリックス[6]アレーンが含まれる。アザ−エーテルアニオン受容体の例には、直鎖アザ−エーテル、多分岐アザ−エーテル、及び環状アザ−クラウンエーテルが含まれる。水銀メタラサイクルアニオン受容体の例には、水銀カルボランド、及びペルフルオロ−o−フェニレン水銀メタラサイクルが含まれる。アニオン受容性ケイ素含有かご及びマクロ環の例には、シルセスキオキサンかご、及びクラウンシランが含まれる。有用なアニオン受容体の他の例は、一般に当技術分野で見出すことができる[例えば、Dietrich、Pure&Appl.Chem.,Vol 65,No.7、1457〜1464頁、1993;米国特許第5705689号明細書;米国特許第6120941号明細書;Matthews及びBeer、Calixarene Anion Receptors、Calixarenes 2001中の421〜439頁、Kluwer Academic Publishers,The Netherlands;Rodionov、State of the Art in Anion Receptor Design、American Chemical Society Division of Organic Chemistry Fellowship Awardee Essay 2005〜2006;H.S.Lee,X.Q.Yang,C.L.Xiang,J.McBreen,L.S.Choi、「The Synthesis of a New Family of Boron−Based Anion Receptors and the Study of Their Effect on Ion Pair Dissociation and Conductivity of Lithium Salts in Nonaqueous Solutions」、J.Electrochem.Soc.,Vol.145,No.8、1998年8月;H.S.Lee,Z.F.Ma,X.Q.Yang,X.Sun及びJ.McBreen、「Synthesis of a Series of Fluorinated Boronate Compounds and Their Use as Additives in Lithium Battery Electrolytes」、Journal of The Electrochemical Society,151(9)A1429〜A1435(2004);並びにX.Sun,H.S.Lee,S.Lee,X.Q.Yang及びJ.McBreen、「A Novel Lithium Battery Electrolyte Based on Lithium Fluoride and a Tris(pentafluorophenyl)Borane Anion Receptor in DME」、Electrochemical and Solid−State Letters,1(6)239〜240(1998)を参照されたい。
【0070】
[075]「カチオン受容体」は、カチオンと結合するか、そうでなければカチオンを吸収することができる分子又はイオンを指す。有用な種類のカチオン受容体には、クラウンエーテル、ルイス塩基、及び他のカチオン錯化剤が含まれるがそれらに限定されない。クラウンエーテルカチオン受容体の例には、ベンゾ−15−クラウン−5、15−クラウン−5、18−クラウン−6、シクロヘキシル−15−クラウン−5、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、ジ−t−ブチルジベンゾ−18−クラウン−6、4,4i ̄(5i ̄)−ジ−tert−ブチルジベンゾ−24−クラウン−8、4−アミノベンゾ−15−クラウン−5、ベンゾ−15−クラウン−5、ベンゾ−18−クラウン−6、4−tert−ブチルベンゾ−15−クラウン−5、4−tert−ブチルシクロヘキサノ−15−クラウン−5、18−クラウン−6、シクロヘキサノ−15−クラウン−5、ジ−2,3−ナフト−30−クラウン−10、4,4’(5’)−ジ−tert−ブチルジベンゾ18−クラウン−6、4’−(5’)−ジ−tert−ブチルジシクロヘキサノ−18−クラウン−6、4,4’(5’)−ジ−tert−ブチルジシクロヘキサノ−24−クラウン−8、4,10−ジアザ−15−クラウン−5、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−21−クラウン−7、ジベンゾ−24−クラウン−8、ジベンゾ−30−クラウン−10、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6、ジシクロヘキサノ−21−クラウン−7、ジシクロヘキサノ−24−クラウン−8、2,6−ジケト−18−クラウン−6、2,3−ナフト−15−クラウン−5、4’−ニトロベンゾ−15−クラウン−5、テトラアザ−12−クラウン−4テトラヒドロクロリド、テトラアザ−12−クラウン−4四水素スルフェート、1,4,10,13−テトラオキサ−7,16−ジアザシクロオクタデカン、12−クラウン−4、15−クラウン−5、及び21−クラウン−7が含まれるが、それらに限定されない。
【0071】
[076]「解離剤(dissociating agent)」及び「解離剤(dissociation agent)」は同義語的に使用され、溶液、溶媒、及び/又は電解質中に添加されて、塩の溶解度及び/又は溶解を増大させる化合物を指す。本発明の解離剤は、無機フッ化物、特にLiFなどの一般に比較的不溶性とみなされている無機フッ化物の溶解を増進させるのに有用である。
【0072】
[077]本発明は、一般に不溶性とみなされるフッ化物塩を溶解し大濃度で含有する溶液を生成させる方法を提供する。他の態様において、本発明は、一般に不溶性とみなされるフッ化物塩を溶解し大濃度で含有する溶液、溶媒、及び電解質を提供する。一実施形態において、これらの溶液、溶媒、及び電解質に、これらのフッ化物塩の溶解を促進する化合物を提供する。これらの化合物は、通常では不溶な化合物を溶解する手段を提供するので溶解(dissolution,dissolving)剤、又は解離(dissociating,dissociation)剤とみなすことができる。一実施形態において、フッ化物塩は、解離剤を含有しない溶液中に自然平衡において生じる濃度よりも遥かに大きい濃度で溶液中の溶質として存在する。一実施形態において、フッ化物塩は少量の溶質成分である。他の実施形態において、フッ化物塩は、溶液、溶媒、及び電解質中に存在する最も多量の溶質である。
【0073】
[078]本発明は、LiFなどの元素フッ化物(MF)を溶解するための添加剤及び方法を提供する。例えば、一実施形態において、カーボネート又はガンマブチロラクトン(γ−BL)系液体溶媒中のLiPF、LiBF、LiAsF、及びLiClOなどのリチウム塩(LiX)の有機溶液は、著しい量のLiFを溶解するが、一方LiX塩が存在しない同一の溶液は、LiFをはっきり認められるほど溶解しない。本方法を様々な他の不溶性フッ化物(MF)に適用して、広い範囲のMF+AX(A=アルカリ金属又はNH、及びX=フッ化物アニオン、過塩素酸塩、イミド、炭化物)の「錯体型」溶液を提供できる。本発明の組成物はまた、非水有機溶媒中に非常に大きい溶解度で溶解したLiFを含有するリチウム電池用途向けに、新たな系列の電解質をも提供する。
【0074】
実施例1:電気化学セル向け電解質及び解離剤
[079]本添加剤、組成物、配合物及び方法の化学的性状及び有用性を実証するため、本発明の電解質を調製し、リチウム電気化学セル中に組み込んだ。評価した電解質は、選択された非水有機溶媒又は非水有機溶媒の組合せ中に溶解したLiF及び適正な解離剤を含む。この電気化学セルの電子的性能を評価して、本発明の電解質の有益な化学的及び物理的性状を実証した。
【0075】
[080]1.母溶液の調製:EC−DMC中のLiPF、及びγ−BL中のLiBF、並びにPC中のLiAsF、及びLiClOの1M溶液を、アルゴンを満たしたドライボックス内で調製した(EC=炭酸エチレン、DMC=炭酸ジメチル、PC=炭酸プロピレン)。本説明全体にわたって、これらの溶液を「母溶液」と呼ぶ。
【0076】
[081]2.母溶液中にLiF溶解:アルゴンを満たしたドライボックス内で、それぞれの上述の母溶液から、試料5ミリリットル(5×10−3モルのLiX)を採取し、それに65ミリグラム(2.5×10−3モル)のLiFを添加した。LiFの完全な溶解が行われるまで、すなわち溶液が透明になるまで磁気撹拌した。これらの溶液におけるLiF/LiXモル比は0.5であり、LiF絶対濃度は0.5Mである。
【0077】
[082]3.電気化学的試験:ドライボックス内で、金属リチウム円板(負極)、「電解質」で湿らせたポリプロピレン微孔性セパレーター、及び複合電極(正極)からなるコイン形セルを作った。2つの型の複合カソード電極:黒鉛系電極及びフッ化黒鉛系電極を使用した。「電解質」は、EC−DMC中のLiPF母溶液、又はEC−DMC中のLiPFに溶解したLiF母溶液のいずれかである。
【0078】
[083]3a)黒鉛系セル:セルは最初、一定電流10mA/g−黒鉛のもとで250mVまで放電した。電位250mV(対Li/Li)は、最初の不動態化(固体電解質インターフェーズ:SEI形成、通常は、>500mV(対Li/Li)における)電位と、リチウムインターカレーション(通常は、<200mV(対Li/Li)における)電位の間の電位を選択した。次いで電池を、同じ速度10mA/g−黒鉛のもとで5V(対Li/Li)まで充電した。次いで、さらなる充電まで一定の5Vを数時間印加した。次いで電池は数時間休止させ、次いで同じ速度10mA/g−黒鉛のもとで3Vまで放電した。これに続き、電池は、上述と同じ手順で3Vと5Vの間を数回循環させた。
【0079】
[084]LiF含有電解質を有する電池について、2.1〜4.8V電圧ウインドウにおいて掃引速度15mV/分のもとで一次ボルタンメトリーをも行った。
【0080】
[085]3b)フッ化黒鉛系セル:ここで試験したCF材料は、黒鉛から得られたCF0.53である。セルは、一定電流(C/20速度:すなわち32.1mA/g−CF0.53)のもとで異なる放電深度(DOD=10、20、30、....100%)まで放電させた。次いでセルは4.8Vまで、及び5.0Vまで充電し、数時間休止させ、さらに充電するまで数時間同じ一定電圧を印加した(4.8又は5.0V)。この後、セルは3Vまで放電し、次いで上述と同じ手順に従って4.8又は5.0Vまで再充電した。
【0081】
[086]4.結果
4a)黒鉛系電極:図1は、EC−DMC中の1M LiPF溶液からなる電解質でありLiFを含有するもの、及びLiFを含有しないものによるLi/電解質/黒鉛系電極セルの比較(標準化)放電プロフィルを提供する。図1は、母溶液電解質(Liなし)を使用した、母電解質中にLiFを溶解したもの(LiF)を使用した黒鉛系セルの、4.8Vまでの充電電圧による電圧 対 放電/充電比を示す。これらの結果は、LiFを含有する電解質が、LiFを含有しない電解質よりも高い放電電圧、及び相対容量を有することを示している。
【0082】
[087]図2は、Li/EC−DMC中の0.5M LiF+1M LiPF/黒鉛セルについて、2.1Vと4.8Vの間で掃引速度15mV/分のもとに得られたサイクルボルタンモグラムを示す。図2中に見られるのは、負に帯電した化学種の黒鉛中へのインターカレーション及び脱インターカレーションに対応する酸化及び還元ピークである。これらの正電流(酸化)ピーク及び負電流(還元)ピークは、セルの可逆的充電及び放電に対応する。これらのピークは、それぞれ、負に帯電した化学種(又はアニオン)のインターカレーション及び脱インターカレーションと関連している可能性がある。
【0083】
[088]4b)フッ化黒鉛系電極:図3は、EC−DMC中の1M LiPF溶液からなる電解質でありLiFを含有するもの、及びLiFを含有しないものによるLi/電解質/フッ化黒鉛(CF0.53)系電極セルの比較(標準化)放電プロフィルを提供する。図3は、母溶液電解質(LiFなし)を使用した、母電解質中にLiFを溶解したもの(LiF)を使用したフッ化黒鉛(CF0.53)系セルの、4.8Vまでの充電電圧による電圧 対 放電/充電容量比を示す。これらの結果は、LiFを含有する電解質が、LiFを含有しない電解質よりも高い放電電圧、及び相対容量を有することを示している。
【0084】
[089]5.結論:元素フッ化物LiFに基づく新たな電解質溶液を首尾よく調製した。この溶液は、アルゴン雰囲気下で淡色透明且つ安定である。EC、DMC、PC又はγ−ブチロラクトンなどのカーボネートの中で選択された、LiPF、LiBF、LiAsF、及びLiClOなどの溶解リチウム塩を含有する極性溶媒から構成される種々の有機液体媒質中でLiFの溶解が達成された。LiFを有する電解質溶液は、5V(対Li/Li)を超える高い電圧安定性ウインドウを有する。それらは、金属リチウムと接触しても安定である。LiF含有電解質溶液は、純黒鉛又はフッ化黒鉛系正極に基づいたものなどの電池用途向け電極材料の電気化学性能の向上を示している。同一の原理による「母溶液」電解質を使用して、多くの不溶性元素フッ化物の溶解を達成することができる。
【0085】
実施例2:LiF含有、及び不含有フッ素化炭素電極リチウム半電池の比較
[090]2種のフッ素化炭素電極(CF0.125)リチウム半電池を調製した。1つのセルは、炭酸プロピレン(PC)中の1M LiPFの電解質を含有した。他のセルは、PC中の1M LiF及び1M 12−クラウン−4の電解質を含有した。クラウンエーテルは、カチオン受容体として作用して、PC中にLiFが溶解することを可能にする。セルは、1mV/sの速度で約3.2Vと5.5Vの間をサイクルさせた。
【0086】
[091]図4は、充電/放電サイクルの間、LiPFを含有するセルにより提供される電流を示しており、明らかな酸化又は還元ピークが示されない。このセルは、放電容量よりも遥かに高い充電容量を有し、大きな不可逆性を示している。
【0087】
[092]図5は、充電/放電サイクルの間、LiFを含有するセルにより提供される電流を示しており、約3.6V及び4.15Vに酸化ピーク、約4Vに還元ピークが示される。このセルは、類似した充電及び放電容量を有し、良好な可逆性を示している。
【0088】
[093]これらの結果は、溶解したLiFの存在によって、フッ素化炭素が、高電圧、高サイクル性の再充電可能なフッ化物イオン電池向けの適切なカソードとなることを示しており、それはFがフッ素化炭素カソード中に可逆的にインターカレートすることができるからである。
【0089】
[094]実施例3:解離剤を有するフッ化物溶液
[095]表2は、NHF、NaF、KF、MgF、及びAlFを含む様々なフッ化物塩から本発明のフッ化物溶液を作るのに役立つ実験条件の要約を提供する。
【0090】
[096]
【表2】

【0091】
[097]
[参照による組み込み及び変形形態に関する言説]
[098]この出願全体にわたる全ての参考資料、例えば発行若しくは付与された特許を含む特許文書又は同等物、特許出願刊行物、及び非特許文献資料、又は他の出典材料は、これによって、それらの全体を参照により本明細書に組み込んでいる。もっとも、それぞれの参考資料が、この出願における開示と少なくとも部分的に相反することのない範囲まで、参照により個別に組み込まれている(例えば部分的に相反する参考資料は、この参考資料の部分的に相反する部分を除いて参照により組み込まれている)。
【0092】
[099]本明細書において用いられている用語及び表現は、記述に関連して用いられ、制約に関して用いられることはなく、このような用語及び表現の使用において、示され且つ記述される特徴の又はその一部の、どんな等価物をも排除する意図は存在しなくて、特許請求される本発明の範囲内で種々の修正が可能であることが認められる。したがって、本発明は、好ましい実施形態、例示的実施形態、及び任意選択の特徴により具体的に開示されているが、当業者が、本明細書において開示される考え方の修正及び変形形態の手段に頼ることができ、このような修正及び変形形態が、添付される特許請求範囲により定義される本発明の範囲内あるとみなされることを理解されたい。本明細書において提供される特定の実施形態は、本発明の有用な実施形態の例であり、本発明が、本記述において示されるデバイス、デバイス素子、方法段階の多数の変形形態を用いて実行できることは、当業者には明らかであろう。当業者には明らかであろうように、方法、及びその方法のため有用なデバイスは、多数の任意選択の組成物及び処理要素並びにステップを含むことができる。
【0093】
[0100]本明細書において一群の置換基が開示されている場合、その群の全ての個々の構成員、及びその群構成員の任意の異性体、鏡像異性体、ジアステレオマーを含む全ての小群が別々に開示されると理解される。本明細書においてマーカッシュ群又は他の群分けが用いられる場合、その群の全ての構成員、並びにその群について可能な全ての組合せ及び部分組合せ(subcombinations)が、本開示に個別に含まれることが意図される。例えば、本明細書において、式中で若しくは化学名中で、その化合物の異性体、鏡像異性体、又はジアステレオマーが指定されないような形で化合物が記述される場合、その記述は、個別に記述された化合物のそれぞれの異性体及び鏡像異性体を(又は任意の組合せで)含むことが意図されている。さらに、特に指定されない限り、本明細書において開示されている化合物の全ての同位体的変形形態が本開示により包含されることが意図される。例えば、開示されている分子中の任意の1つ又は複数の水素は、重水素又はトリチウムで置き換えることができる。分子の同位体的変形形態は、その分子の試験における、その分子関連の化学的及び生物学的研究又はその利用における標準物質として一般に有用である。このような同位体的変形形態を作る方法は、当技術分野で知られている。化合物の特定の名称は、当業者が同一の化合物を他の方法で命名し得ることが知られているように、例示的であることを意図している。
【0094】
[0101]本明細書において開示されている多くの分子は、1種又は複数のイオン化可能な基[それらからプロトンを取り除くことができる(例えば−COOH)、若しくは加えることができる(例えばアミン)、又は第四級化することができる(例えばアミン)基]を含有する。このような分子及びその塩の全ての可能なイオン形態が、本明細書における開示中に個別に含まれることを意図している。本明細書における化合物の塩に関して、当業者は、所与の用途について本発明の塩を調製するのに適しているものを、広く様々な入手可能な対イオンの中から選択することができる。特定の用途において、塩を調製するための所与のアニオン又はカチオンの選択が、その塩の溶解性の増加又は減少をもたらす可能性がある。
【0095】
[0102]特に指定されない限り、本明細書において記述又は例示される成分のあらゆる配合物又は組合せを使用して、本発明を実施することができる。
【0096】
[0103]本明細書において範囲、例えば温度範囲、時間範囲、又は組成若しくは濃度範囲が示される場合にはいつも、全ての中間の範囲及び部分的範囲(subranges)、並びに与えられた範囲内に含まれる全ての個別値が、本開示内に含まれることを意図している。本明細書における記述に含まれている範囲又は部分的範囲内の任意の部分的範囲又は個別値を、本明細書における特許請求範囲から排除し得ることが理解されるであろう。
【0097】
[0104]本明細書において挙げた全ての特許及び刊行物は、本特許が属する当業者のレベルを示す指標である。本明細書において引用した参考資料は、その全体を参照により組み込んで、それらの刊行又は出願年月日における最先端技術を示しており、この情報を利用して、必要な場合、従来技術である特定の実施形態を排除し得ることを意図している。例えば、物質組成物を特許請求する場合、本明細書において引用された参考資料中に提供されている可能化(enabling)開示についての化合物を含む、本出願人による発明の前に当技術分野で知られ、入手可能な化合物は、本明細書における物質クレームの組成物に含まれないことが意図されていると理解されたい。
【0098】
[0105]本明細書において使用されている「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する(containing)」、又は「特徴とする(characterized by)」と同義であり、包括的又は変更可能(オープンエンド)であり、追加的な、未列挙の要素又は方法ステップを排除しない。本明細書において使用されている「からなる(consisting of)」は、請求要素において指定されないどんな要素、ステップ、又は成分をも排除するものである。本明細書において使用されている「本質的に、...からなる(consisting essentially of)」は、特許請求の基本的及び新規な特性に実質的に影響を及ぼさない材料又はステップを排除しない。本明細書におけるそれぞれの例において、用語「含む(comprising)」、「本質的に、...からなる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」のいずれも他の2つの用語のいずれかで代替できる。本明細書において例証的に記述されている本発明は、本明細書において具体的に開示されていない任意の1つ又は複数の要素、1つ又は複数の制約を含まなくても適切に実施できるものである。
【0099】
[0106]本発明の実施において、過度の実験に頼ることなく、具体的に例示されたもの以外の出発材料、生物学的材料、試薬、合成方法、精製方法、分析方法、試験方法、及び生物学的方法が、用いられ得ることを当業者は理解するであろう。任意のこのような材料及び方法についての、全ての当技術分野で知られる機能的等価物が、本発明に含まれることを意図している。使用されている用語及び表現は、記述に関連して用いられ、制約に関して用いられることはなく、このような用語及び表現の使用において、示され且つ記述される特徴の又はその一部の、どんな等価物をも排除する意図は存在しなくて、特許請求される本発明の範囲内で種々の修正が可能であることが認められている。したがって、本発明は、好ましい実施形態、及び任意選択の特徴により具体的に開示されているが、当業者が、本明細書において開示される考え方の修正及び変形形態の手段に頼ることができ、このような修正及び変形形態が、添付される特許請求範囲により定義される本発明の範囲内にあるとみなされることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種又は複数の溶媒中に溶解した無機フッ化物を有する溶液であって、
前記1種又は複数の溶媒と、
前記1種又は複数の溶媒に提供している解離剤と、
前記解離剤を有する前記1種又は複数の溶媒中に溶解した前記無機フッ化物とを含み、
前記解離剤及び無機フッ化物が、前記1種又は複数の溶媒中に溶解した0.15M以上の濃度の無機フッ化物を生成させるのに十分な量で提供される溶液。
【請求項2】
前記解離剤及び無機フッ化物が、前記1種又は複数の溶媒中に溶解した0.15M〜3Mの範囲にわたって選択される濃度の前記無機フッ化物を生成させるのに十分な量で提供される、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
前記解離剤及び無機フッ化物が、前記1種又は複数の溶媒中に溶解した0.5M〜1Mの範囲にわたって選択される濃度の前記無機フッ化物を生成させるのに十分な量で提供される、請求項1に記載の溶液。
【請求項4】
前記1種又は複数の溶媒中に溶解した無機フッ化物の、前記1種又は複数の溶媒中に溶解した解離剤に対するモル比が、0.1以上である、請求項1に記載の溶液。
【請求項5】
前記1種又は複数の溶媒中に溶解した無機フッ化物の、前記1種又は複数の溶媒中に溶解した解離剤に対するモル比が、0.1〜10の範囲にわたって選択される、請求項1に記載の溶液。
【請求項6】
前記無機フッ化物が、式:
MF 又は BF
(F1) (F2)
を有し、Mが、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sn、Pb、及びSbからなる群から選択される金属であり、nがMの酸化状態であり;又Bが、NH、及びN(R(式中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、H原子、アルキル基、アセチル基、及び芳香族(フェニル)基からなる群から選択される)からなる群から選択される多原子カチオンである、請求項1に記載の溶液。
【請求項7】
前記無機フッ化物が、CdF、CoF、FeF、MnF、NaF、NiF、ZnF、ZrF、AlF、BaF、CaF、CuF、FeF、InF、LiF、MgF、PbF、SrF、UF、VF−3HO、BiF、CeF、CrF/CrF、GaF、LaF、NdF、ThF、AgF、CsF、RbF、SbF、TlF、BeF、KF、NHF、SnF、TaF、VF、BF、BrF、BrF、BrF、CoF、GeF/GeF、Hg/HgF、NbF、OsF、PF/PF、RhF、SF/SF、SnF、TeF、UF、VF、及びWFからなる群から選択される、請求項1に記載の溶液。
【請求項8】
前記解離剤が、前記1種又は複数の溶媒中に、0.1M〜10Mの範囲にわたって選択される濃度で提供される、請求項1に記載の溶液。
【請求項9】
前記解離剤が、ルイス酸、ルイス塩基、アニオン受容体、及びカチオン受容体からなる群から選択される1種又は複数の化合物である、請求項1に記載の溶液。
【請求項10】
前記解離剤が、無機フッ化物、無機塩化物、無機炭酸塩、及び無機酸化物からなる群から選択される1種又は複数のルイス塩基又はルイス酸である、請求項9に記載の溶液。
【請求項11】
前記解離剤が、AlCl、ClO、SnCl2−、BF、PF、及びAsFからなる群から選択される1種又は複数のルイス塩基である、請求項9に記載の溶液。
【請求項12】
前記解離剤が、BF、PF、SbF、AsF、AlCl、SnCl、FeCl、NbCl、TiCl、及びZnClからなる群から選択される1種又は複数のルイス酸である、請求項9に記載の溶液。
【請求項13】
前記解離剤が、前記1種又は複数の溶媒中に前駆体化合物を溶解して、ルイス塩基、ルイス酸、又はルイス酸及びルイス塩基を生成させることにより提供され、前記前駆体化合物が、下式を有するアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、又はアンモニウム塩:
AX
(F3)
を含み、Aが、金属、金属カチオン、及びアンモニウム基からなる群から選択され、Xが、フッ素化アニオン、過塩素酸塩基、イミド基、炭化物基、カーボネート基、酸化物基、及び塩化物基からなる群から選択される、請求項9に記載の溶液。
【請求項14】
前記前駆体化合物が、1種又は複数のリチウム塩である、請求項13に記載の溶液。
【請求項15】
前記前駆体化合物が、LiPF、LiBF、LiAsF、LiClO、LiSnCl、LiAlCl、LiFeCl、LiNbCl、LiTiCl、LiZnCl、NaPF、NaBF、NaAsF、NaClO、NaSnCl、NaAlCl、NaFeCl、NaNbCl、NaTiCl、NaZnCl、KPF、KBF、KAsF、KClO、KSnCl、KAlCl、KFeCl、KNbCl、KTiCl、KZnCl、NHPF、NHBF、NHAsF、NHClO、NHSnCl、NHAlCl、NHFeCl、NHNbCl、NHTiCl、NHZnCl、N(CHClO、N(CHSnCl、N(CHAlCl、N(CHFeCl、N(CHNbCl、N(CHTiCl、N(CHZnCl、N(CClO、N(CSnCl、N(CAlCl、N(CFeCl、N(CNbCl、N(CTiCl、及びN(CZnClからなる群から選択される1種又は複数の塩である、請求項13に記載の溶液。
【請求項16】
前記解離剤が、1種又は複数のアニオン受容体を含む、請求項1に記載の溶液。
【請求項17】
前記解離剤が、1種又は複数のカチオン受容体を含む、請求項1に記載の溶液。
【請求項18】
前記カチオン受容体が、クラウンエーテル、ルイス塩基、及びカチオン錯化剤からなる群から選択される1種又は複数の化合物である、請求項17に記載の溶液。
【請求項19】
前記カチオン受容体が、ベンゾ−15−クラウン−5、15−クラウン−5、18−クラウン−6、シクロヘキシル−15−クラウン−5、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、ジ−t−ブチルジベンゾ−18−クラウン−6、4,4i ̄(5i ̄)−ジ−tert−ブチルジベンゾ−24−クラウン−8、4−アミノベンゾ−15−クラウン−5、ベンゾ−15−クラウン−5、ベンゾ−18−クラウン−6、4−tert−ブチルベンゾ−15−クラウン−5、4−tert−ブチルシクロヘキサノ−15−クラウン−5、18−クラウン−6、シクロヘキサノ−15−クラウン−5、ジ−2,3−ナフト−30−クラウン−10、4,4’(5’)−ジ−tert−ブチルジベンゾ18−クラウン−6、4’−(5’)−ジ−tert−ブチルジシクロヘキサノ−18−クラウン−6、4,4’(5’)−ジ−tert−ブチルジシクロヘキサノ−24−クラウン−8、4,10−ジアザ−15−クラウン−5、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−21−クラウン−7、ジベンゾ−24−クラウン−8、ジベンゾ−30−クラウン−10、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6、ジシクロヘキサノ−21−クラウン−7、ジシクロヘキサノ−24−クラウン−8、2,6−ジケト−18−クラウン−6、2,3−ナフト−15−クラウン−5、4’−ニトロベンゾ−15−クラウン−5、テトラアザ−12−クラウン−4テトラヒドロクロリド、テトラアザ−12−クラウン−4四水素スルフェート、1,4,10,13−テトラオキサ−7,16−ジアザシクロオクタデカン、12−クラウン−4、15−クラウン−5、及び21−クラウン−7からなる群から選択される1種又は複数のクラウンエーテルである、請求項18に記載の溶液。
【請求項20】
前記1種又は複数の溶媒が、水、非水有機溶媒、及び非水無機溶媒からなる群から選択される、請求項1に記載の溶液。
【請求項21】
前記1種又は複数の溶媒が、1種又は複数の極性非水溶媒を含む、請求項1に記載の溶液。
【請求項22】
前記1種又は複数の溶媒が、γ−ブチロラクトン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸エチレン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオラン、ギ酸メチル、ニトロメタン、ホスホルオキシクロリド、塩化チオニル、塩化スルフリル、ジエチルエーテル、ジエトキシエタン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチル−THF、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、酢酸メチル、及びトラタヒドロフランからなる群から選択される1種又は複数の溶媒を含む、請求項1に記載の溶液。
【請求項23】
前記1種又は複数の溶媒が、1種又は複数の極性カーボネートを含む、請求項1に記載の溶液。
【請求項24】
請求項1に記載の溶液を含む電解質。
【請求項25】
請求項1に記載の溶液を含む電気化学デバイス。
【請求項26】
1種又は複数の溶媒中に無機フッ化物を溶解する方法であって、
前記1種又は複数の溶媒を提供するステップと、
前記1種又は複数の溶媒に解離剤を提供するステップと、
前記解離剤を有する前記1種又は複数の溶媒中に前記無機フッ化物を溶解するステップとを含み、
前記解離剤及び無機フッ化物が、前記1種又は複数の溶媒中に0.15M以上の濃度で溶解した無機フッ化物を生成させるのに十分な量で提供され、それにより前記1種又は複数の溶媒中に前記無機フッ化物を溶解する方法。
【請求項27】
1種又は複数の溶媒中に溶解したLiFを含む溶液であって、
前記1種又は複数の溶媒と、
前記1種又は複数の溶媒に提供される解離剤であり、ルイス酸、ルイス塩基、及びクラウンエーテルからなる群から選択される1種又は複数の化合物を含む解離剤と、
前記解離剤を有する前記1種又は複数の溶媒中に溶解した前記LiFとを含み、
前記1種又は複数の溶媒中に溶解されるLiFの濃度が0.15M以上である溶液。
【請求項28】
前記解離剤及びLiFが、前記1種又は複数の溶媒中に溶解された0.15M〜3Mの範囲にわたって選択される濃度のLiFを生成させるのに十分な量で提供される、請求項27に記載の溶液。
【請求項29】
前記解離剤及びLiFが、前記1種又は複数の溶媒中に溶解された0.5M〜1Mの範囲にわたって選択される濃度のLiFを生成させるのに十分な量で提供される、請求項27に記載の溶液。
【請求項30】
前記解離剤が、前記1種又は複数の溶媒中に、0.1M〜10Mの範囲にわたって選択される濃度で提供される、請求項27に記載の溶液。
【請求項31】
前記解離剤が、無機フッ化物、無機塩化物、無機炭酸塩、及び無機酸化物からなる群から選択される1種又は複数のルイス塩基又はルイス酸である、請求項27に記載の溶液。
【請求項32】
前記解離剤が、AlCl、ClO、SnCl2−、BF、PF、及びAsFからなる群から選択される1種又は複数のルイス塩基である、請求項27に記載の溶液。
【請求項33】
前記解離剤が、BF、PF、SbF、AsF、AlCl、SnCl、FeCl、NbCl、TiCl、及びZnClからなる群から選択される1種又は複数のルイス酸である、請求項27に記載の溶液。
【請求項34】
前記解離剤が、前記1種又は複数の溶媒中に前駆体化合物を溶解して、ルイス塩基、ルイス酸、又はルイス酸及びルイス塩基を生成させることにより提供され、前記前駆体化合物が、下式を有するアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、遷移金属塩、又はアンモニウム塩:
AX
(F3)
を含み、Aが、金属、金属カチオン、及びアンモニウム基からなる群から選択され、Xがフッ素化アニオン、過塩素酸塩基、イミド基、炭化物基、カーボネート基、酸化物基、及び塩化物基からなる群から選択される、請求項27に記載の溶液。
【請求項35】
前記前駆体化合物が、1種又は複数のリチウム塩である、請求項34に記載の溶液。
【請求項36】
前記前駆体化合物が、LiPF、LiBF、LiAsF、LiClO、LiSnCl、LiAlCl、LiFeCl、LiNbCl、LiTiCl、LiZnCl、NaPF、NaBF、NaAsF、NaClO、NaSnCl、NaAlCl、NaFeCl、NaNbCl、NaTiCl、NaZnCl、KPF、KBF、KAsF、KClO、KSnCl、KAlCl、KFeCl、KNbCl、KTiCl、KZnCl、NHPF、NHBF、NHAsF、NHClO、NHSnCl、NHAlCl、NHFeCl、NHNbCl、NHTiCl、NHZnCl、N(CHClO、N(CHSnCl、N(CHAlCl、N(CHFeCl、N(CHNbCl、N(CHTiCl、N(CHZnCl、N(CClO、N(CSnCl、N(CAlCl、N(CFeCl、N(CNbCl、N(CTiCl、及びN(CZnClからなる群から選択される1種又は複数の塩である、請求項34に記載の溶液。
【請求項37】
前記解離剤が、ベンゾ−15−クラウン−5、15−クラウン−5、18−クラウン−6、シクロヘキシル−15−クラウン−5、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、ジ−t−ブチルジベンゾ−18−クラウン−6、4,4i ̄(5i ̄)−ジ−tert−ブチルジベンゾ−24−クラウン−8、4−アミノベンゾ−15−クラウン−5、ベンゾ−15−クラウン−5、ベンゾ−18−クラウン−6、4−tert−ブチルベンゾ−15−クラウン−5、4−tert−ブチルシクロヘキサノ−15−クラウン−5、18−クラウン−6、シクロヘキサノ−15−クラウン−5、ジ−2,3−ナフト−30−クラウン−10、4,4’(5’)−ジ−tert−ブチルジベンゾ18−クラウン−6、4’−(5’)−ジ−tert−ブチルジシクロヘキサノ−18−クラウン−6、4,4’(5’)−ジ−tert−ブチルジシクロヘキサノ−24−クラウン−8、4,10−ジアザ−15−クラウン−5、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−21−クラウン−7、ジベンゾ−24−クラウン−8、ジベンゾ−30−クラウン−10、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6、ジシクロヘキサノ−21−クラウン−7、ジシクロヘキサノ−24−クラウン−8、2,6−ジケト−18−クラウン−6、2,3−ナフト−15−クラウン−5、4’−ニトロベンゾ−15−クラウン−5、テトラアザ−12−クラウン−4テトラヒドロクロリド、テトラアザ−12−クラウン−4四水素スルフェート、1,4,10,13−テトラオキサ−7,16−ジアザシクロオクタデカン、12−クラウン−4、15−クラウン−5、及び21−クラウン−7からなる群から選択される1種又は複数のクラウンエーテルである、請求項27に記載の溶液。
【請求項38】
前記1種又は複数の溶媒が、水、非水有機溶媒、及び非水無機溶媒からなる群から選択される、請求項27に記載の溶液。
【請求項39】
前記1種又は複数の溶媒が、1種又は複数の極性非水溶媒を含む、請求項27に記載の溶液。
【請求項40】
前記1種又は複数の溶媒が、γ−ブチロラクトン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸エチレン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシエタン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオラン、ギ酸メチル、ニトロメタン、ホスホルオキシクロリド、塩化チオニル、塩化スルフリル、ジエチルエーテル、ジエトキシエタン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチル−THF、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、酢酸メチル、及びトラタヒドロフランからなる群から選択される1種又は複数の溶媒を含む、請求項27に記載の溶液。
【請求項41】
前記1種又は複数の溶媒が、1種又は複数の極性カーボネートを含む、請求項27に記載の溶液。
【請求項42】
請求項27に記載の溶液を含む電解質。
【請求項43】
請求項27に記載の溶液を含む電気化学デバイス。
【請求項44】
1種又は複数の溶媒中にLiFを溶解する方法であって、
前記1種又は複数の溶媒を提供するステップと、
前記1種又は複数の溶媒に解離剤を提供するステップであり、前記解離剤が、ルイス酸、ルイス塩基、及びクラウンエーテルからなる群から選択される1種又は複数の化合物を含むステップと、
前記解離剤を有する前記1種又は複数の溶媒中にLiFを溶解するステップとを含み、
前記1種又は複数の溶媒中に溶解されるLiFの濃度が0.15M以上である方法。
【請求項45】
電気化学デバイス向け電解質であって、
1種又は複数の溶媒と、
前記1種又は複数の溶媒に提供される解離剤と、
前記解離剤を有する前記1種又は複数の溶媒中に溶解した無機フッ化物とを含み、
前記解離剤及び無機フッ化物が、前記1種又は複数の溶媒中に溶解した0.15M以上の濃度の無機フッ化物を生成させるのに十分な量で提供される電解質。
【請求項46】
正極と、負極と、請求項45に記載の電解質とを含み、前記電解質が前記正極と前記負極の間に提供される電気化学セル。
【請求項47】
電気化学デバイス向け電解質であって、
1種又は複数の溶媒と、
前記1種又は複数の溶媒に供給される解離剤であり、前記解離剤が、ルイス酸、ルイス塩基、及びクラウンエーテルからなる群から選択される1種又は複数の化合物を含む解離剤と、
前記解離剤を有する前記1種又は複数の溶媒中に溶解したLiFとを含み、
前記1種又は複数の溶媒中に溶解されるLiFの濃度が0.15M以上である電解質。
【請求項48】
正極と、負極と、請求項47に記載の電解質とを含み、前記電解質が前記正極と前記負極の間に提供される電気化学セル。
【請求項49】
電気化学デバイス向け電解質の製造方法であって、
1種又は複数の溶媒を提供するステップと、
前記1種又は複数の溶媒に解離剤を供給するステップと、
前記解離剤を有する1種又は複数の溶媒中に無機フッ化物を溶解するステップとを含み、
前記解離剤及び無機フッ化物が、前記1種又は複数の溶媒中に溶解した0.15M以上の濃度の無機フッ化物を生成させるのに十分な量で提供され、それにより前記電気化学デバイス向けに前記電解質を製造する方法。
【請求項50】
電気化学デバイス向け電解質の製造方法であって、
1種又は複数の溶媒を提供するステップと、
前記1種又は複数の溶媒に解離剤を供給するステップであり、前記解離剤が、ルイス酸、ルイス塩基、及びクラウンエーテルからなる群から選択される1種又は複数の化合物を含むステップと、
前記解離剤を有する前記1種又は複数の溶媒中にLiFを溶解するステップとを含み、
前記1種又は複数の溶媒中に溶解したLiFの濃度が0.15M以上であり、それにより前記電気化学デバイス向けに前記電解質を製造する方法。
【請求項51】
1種又は複数の溶媒中に溶解したLiFを有する溶液であって、
前記1種又は複数の溶媒と、
前記1種又は複数の溶媒中に溶解したLiFとを含み、
前記1種又は複数の溶媒中に溶解したLiFの濃度が0.15M以上である溶液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−500725(P2010−500725A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−524011(P2009−524011)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【国際出願番号】PCT/US2007/075697
【国際公開番号】WO2008/105916
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(501272937)カリフォルニア インスティテュート オブ テクノロジー (25)
【出願人】(502017261)セントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック(シー.エヌ.アール.エス.) (15)
【Fターム(参考)】