説明

フッ素系界面活性剤

本発明は、少なくとも1つの基Yを含むポリオール類の脂肪酸エステル類またはスルホン化脂肪酸エステル類またはスルホン化脂肪酸アミド類であって、Yが、CF−(CH−O−、SF−、CF−(CH−S−、CFCFS−、[CF−(CHN−もしくは[CF−(CH]NH−(式中、aは0〜5の範囲から選択される整数を表す)、または式(I)(式中、RfはCF−(CH−、CF−(CH−O−、CF-(CH−S−、CFCF−S−、SF−(CH−もしくは[CF−(CHN−、[CF−(CH]NH−もしくは(CFN−(CH−を表し、Bは単結合、O、NH、NR、CH、C(O)−O、C(O)、S、CH−O、O−C(O)、N−C(O)、C(O)−N、O−C(O)−N、N−C(O)−N、O−SOもしくはSO−Oを表し、Rは1〜4個のC原子を有するアルキルを表し、bは0もしくは1を表し、cは0もしくは1を表し、qは0もしくは1を表し、ここでbおよびqからの少なくとも1つのラジカルは1を表し、rは0、1、2、3、4もしくは5を表す)を表す化合物、これらの化合物の製造方法、ならびにこれらの界面活性化合物の使用に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの基Yを含むポリオール類の脂肪酸エステル類またはスルホン化脂肪酸エステル類またはスルホン化脂肪酸アミド類、これらの化合物の製造方法、およびこれらの表面活性化合物の使用に関し、ここでYは、CF−(CH−O−、SF−、CF−(CH−S−、CFCFS−、[CF−(CHN−または[CF−(CH]NH−(式中aは0〜5の範囲から選択される整数を表す)、または、
【化1】

式中、
Rfは、CF−(CH−、CF−(CH−O−、CF−(CH−S−、CFCF−S−、SF−(CH−、[CF−(CHN−、[CF−(CH]NH−または(CFN−(CH−を表し、
Bは、単結合、O、NH、NR、CH、C(O)−O、C(O)、S、CH−O、O−C(O)、N−C(O)、C(O)−N、O−C(O)−N、N−C(O)−N、O−SOまたはSO−Oを表し、
Rは、1〜4個のC原子を有するアルキルを表し、
bは、0または1を表し、cは、0または1を表し、
qは、0または1を表し、ここでbおよびqからの少なくとも1つのラジカルは、1を表し、ならびに
rは、0、1、2、3、4または5を表す、
を表す。
【背景技術】
【0002】
フッ素系界面活性剤(fluorosurfactant)は、表面エネルギーを低減させる極めて優れた能力を有し、これは、例えば、表面の疎水化、例えば織物含浸(textile impregnation)、ガラスの疎水化、または航空機翼の除氷に用いられる。
しかし、一般的に、フッ素系界面活性剤は、パーフルオロアルキル置換基を含み、これは、生物学的および他の酸化プロセスにより環境中で分解されて、パーフルオロアルカンカルボン酸類およびパーフルオロアルカンスルホン酸類を生成する。これらは、難分解性であると見なされ、一部のケースでは健康被害をもたらすことが疑われる(G. L. Kennedy, Jr., J. L. Butenhoff, G. W. Olsen, J. C. O'Connor, A. M. Seacat, R. G. Perkins, L. B. Biegel, S. R. Murphy, D. G. Farrar, Critical Reviews in Toxicology 2004, 34, 351-384)。さらに、比較的長鎖のパーフルオロアルカンカルボン酸類およびパーフルオロアルカンスルホン酸類は、食物連鎖において蓄積する。
【0003】
したがって、古典的なフッ素系界面活性剤に匹敵する特性プロフィールを有し、好ましくは酸化的または還元的に分解され得る、界面活性物質についての要求がある。ここで特に有利な化合物は、分解の際に難分解性の有機フッ素分解生成物を何ら後に残留させないものである。
Omnova社は、側鎖が末端CFまたはC基を含むポリマーを市販している。国際公報WO 03/010128には、C3〜20パーフルオロアルキル基を含むパーフルオロアルキル置換アミン類、酸類、アミノ酸類およびチオエーテル酸類が記載されている。
特開2001−133984号公報には、反射防止コーティングに用いるのに適するパーフルオロアルコキシ鎖を含む界面活性化合物が開示されている。特開平9−111286号公報には、エマルジョンにおけるパーフルオロポリエーテル界面活性剤の使用が開示されている。
【0004】
しかし、これらの既知のフッ素系界面活性剤は、最終的には分解の際に難分解性のパーフルオロアルカンスルホン酸およびパーフルオロアルカンカルボン酸の生成をもたらす。環境により優しいとして導入された末端CF基を含む置換基さえも、分解されて、難分解性のトリフルオロ酢酸を生成し得る。
先のドイツ国特許出願DE 102005000858には、少なくとも1つの末端ペンタフルオロスルフラニル基または少なくとも1つの末端トリフルオロメトキシ基を担持し、極性末端基を含む化合物が、界面活性性であり、界面活性剤として高度に好適であることが記載されている。
【0005】
F原子を含まないポリオール類の脂肪酸エステル類およびスルホン化脂肪酸エステル類は、界面活性剤として知られている。ポリオール類のこれらの脂肪酸エステル類は、例えば、食物用の乳化剤として、および化粧品において用いられる。
OCFまたはSF基を修飾として含むこのクラスのポリオール類の脂肪酸エステル類またはスルホン化脂肪酸エステル類またはスルホン化脂肪酸アミド類は、DE 102005000858には記載されていない。
パーフルオロ化された界面活性剤のためのさらなる、好ましくは分解性の代替物に対する要求が継続している。
【発明の概要】
【0006】
今回、Yが、CF−(CH−O−、SF−、CF−(CH−S−、CFCFS−、[CF−(CHN−または[CF−(CH]NH−(式中aは0〜5の範囲から選択される整数を表す)、または、
【化2】

式中、
Rfは、CF−(CH−、CF−(CH−O−、CF−(CH−S−、CFCF−S−、SF−(CH−、[CF−(CHN−、[CF−(CH]NH−または(CFN−(CH−を表し、
Bは、単結合、O、NH、NR、CH、C(O)−O、C(O)、S、CH−O、O−C(O)、N−C(O)、C(O)−N、O−C(O)−N、N−C(O)−N、O−SOまたはSO−Oを表し、
Rは、1〜4個のC原子を有するアルキルを表し、
bは、0または1を表し、cは、0または1を表し、
qは、0または1を表し、ここでbおよびqからの少なくとも1つのラジカルは、1を表し、ならびに
rは、0、1、2、3、4または5を表す、
を表す、少なくとも1つの基Yを含む新規なポリオール類の脂肪酸エステル類またはスルホン化脂肪酸エステル類またはスルホン化脂肪酸アミド類が、界面活性性であり、界面活性剤に極めて好適であることが見出された。
【0007】
したがって、本発明は第1に、少なくとも1つの基Yを含むポリオール類の脂肪酸エステル類またはスルホン化脂肪酸エステル類またはスルホン化脂肪酸アミド類であって、Yが、CF−(CH−O−、SF−、CF−(CH−S−、CFCFS−、[CF−(CHN−または[CF−(CH]NH−(式中aは0〜5の範囲から選択される整数を表す)、または、
【化3】

式中、
Rfは、CF−(CH−、CF−(CH−O−、CF−(CH−S−、CFCF−S−、SF−(CH−、[CF−(CHN−、[CF−(CH]NH−または(CFN−(CH−を表し、
Bは、単結合、O、NH、NR、CH、C(O)−O、C(O)、S、CH−O、O−C(O)、N−C(O)、C(O)−N、O−C(O)−N、N−C(O)−N、O−SOまたはSO−Oを表し、
Rは、1〜4個のC原子を有するアルキルを表し、
bは、0または1を表し、cは、0または1を表し、
qは、0または1を表し、ここでbおよびqからの少なくとも1つのラジカルは、1を表し、ならびに
rは、0、1、2、3、4または5を表す、
を表す、前記化合物に関する。
【0008】
本発明の化合物は、好ましくは、言及するフッ素化された基Y以外には、フッ素化された基をさらに含まない。
本発明の脂肪酸エステル類は、脂肪酸に由来しており、これは、飽和または不飽和であってもよく、4〜25個のC原子、好ましくは8〜22個のC原子、特に好ましくは12〜20個のC原子を含んでいてもよい。脂肪酸類はまた、例えば側鎖中にOH基を担持してもよい。
脂肪酸の例は、ラウリン酸(C1123COOH)、ミリスチン酸(C1327COOH)、パルミチン酸(C1531COOH)、ステアリン酸(C1735COOH)、オレイン酸(C1733COOH)、リノール酸(C1731COOH)、リシノール酸(C1732(OH)COOH)、リノレン酸(CHCHCH=CHCHCH=CHCH=CH(CHCOOH)、アラキドン酸(C1939COOH)またはエルカ酸(C2143COOH)である。
本発明の変形において、好ましいのは、偶数個の炭素を有する、即ち好ましくは8、10、12、14、16、18、20または22個のC原子を有する、特に好ましくは12、14、16、18または20個のC原子を有する脂肪酸である。しかし、奇数個の炭素を有する合成脂肪酸を用いることも、可能である。
【0009】
本発明の脂肪酸エステル類において、基Yは、好ましくはエステル官能基に対して末端の位置にある。フリーのOH基を側鎖中に含む脂肪酸において、これらは同様に、Yにより、特に部分基CF−(CH−O−(式中aは1〜5の範囲から選択される整数を表す)または、
【化4】

式中、
Rfは、CF−(CH−、CF−(CH−O−、CF−(CH−S−、CFCF−S−、SF−(CH−、[CF−(CHN−、[CF−(CH]NH−または(CFN−(CH−を表し、
Bは、単結合、O、NH、NR、CH、C(O)−O、C(O)、S、CH−O、O−C(O)、N−C(O)、C(O)−N、O−C(O)−N、N−C(O)−N、O−SOまたはSO−Oを表し、
Rは、1〜4個のC原子を有するアルキルを表し、
bは、0または1を表し、cは、0または1を表し、
qは、0または1を表し、ここでbおよびqからの少なくとも1つのラジカルは、1を表し、ならびに
rは、0、1、2、3、4または5を表す、
から選択される基Yにより置換されていてもよい。
【0010】
本発明の変形において、脂肪酸は、ポリオール類を用いてエステル化され、ここで脂肪酸エステル中のポリオール基は、n=1、2、3、4または5である−O−CH−(CHOH)−CH−OH基、単糖基、二糖基またはオリゴ糖基から選択することができる。
エステル化されるn=1、2、3、4または5であるポリオール類HO−CH−(CHOH)−CH−OHの例は、グリセリン(もしくは同意語としてグリセロール)、D−トレイトール、L−トレイトール、エリスロール、D−アラビニトール、L−アラビニトール、アドニトール、キシリトール、D−ソルビトール、D−グルシトール、D−マンニトール、ズルシトール、ガラクチトールまたはさらに4価の分枝アルコールであるペンタエリスリトールである。
この群のポリオール類から、好ましいのは、グリセロール、エリスロール、ペンタエリスリトール、キシリトール、ソルビトールまたはマンニトール、特に好ましくはグリセロールまたはソルビトールの利用である。
【0011】
エステル化される単糖類の例は、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボースまたはタガトースである。このリストは、両方の異性体、即ち各々の場合においてDまたはL形態を含む。
これらの単糖類の群から、好ましいのは、グルコース、ガラクトースまたはフルクトースの利用である。 エステル化される二糖類の例は、サッカロース(またはスクロースとしても知られる)、ラクトース、トレハロース、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオースまたはメリビオースを用いることも可能である。このリストには、αおよびβ形態が共に含まれる。
二糖類の群から、好ましいのは、サッカロースまたはラクトース、特に好ましくはサッカロースの利用である。
【0012】
エステル化される多糖類の例は、特にまた、三糖類、例えばラフィノース、疑似オリゴ糖、例えばアカルボース、しかしまたアミロース、アミロペクチン、キサンタン、イヌリン、キチン、ペクチンまたはセルロースである。
本発明のポリオール類の脂肪酸エステル類において、エステル化を、各々の場合において、ポリオール基中の水酸基の数に完全に適合させることができるか、またはエステル化は、不完全であり得、即ちポリオール基は、エステル化された水酸基、およびまた遊離の水酸基を両方含む。
【0013】
以下に開示する適用に依存して、確定した化合物、即ちポリオールのエステル化の1つの変形のみを有する脂肪酸エステル類、またはまたポリオールのエステル化の種々の変形を有する当該脂肪酸エステル類の混合物を用いることができる。
好ましいのは、上記で定義したように、基Yを含む少なくとも1つの脂肪酸基を含む本発明のポリオール類の脂肪酸エステル類載りようである。混合物の組成は、試薬および反応条件を選択することにより、制御することができる。
他の好ましい態様において、特に好ましいのは、ポリオール基がグリセロール、ソルビトールまたはサッカロースに由来するポリオール類の脂肪酸エステル類である。
【0014】
基Yにおいて、aは、好ましくは0、1または2、特に好ましくは0または2、極めて特に好ましくは0を表し、rは、好ましくは0〜3、特に0〜1を表す。
本発明の変形において、基Yにおけるqが0を表し、少なくとも1つのcおよび/またはbが各々1を表すのが好ましい。すべてのcおよびbが1を表す、即ち芳香環がoおよび/またはp位において、特にo,p,o位においてフッ素基により置換されているのが特に好ましい。
本発明の他の変形において、すべてのqおよびbが各々0を表し、少なくとも1つのcが1を表すのが好ましい。両方のcが1を表す、即ち芳香環がo位において、o,o位においてフッ素基により置換されているのが特に好ましい。
【0015】
本発明の他の変形において、すべてのcおよびqが各々0を表し、bが1を表す、即ち芳香環がp位においてフッ素基により置換されているのが好ましい。
以下でRfとも略すアリール置換基としてのフッ素基の中で、好ましいのは、rが0、1または2を表すものであり、ここでrは好ましくは0を表す。特に好ましいのは、本発明において、基Rf=CF−、CF−S−、CFCF−S−、SF−または(CFN−である。
【0016】
本発明の好ましい変形において、脂肪酸の修飾を決定づける基Yは、上記で定義したように、CF−O−、CFCF−S−、CF−S−、(CFN−、または
【化5】

式中、
Rfは、CF−(CH−、CF−(CH−O−、CF−(CH−S−、CFCF−S−、SF−(CH−、[CF−(CHN−、[CF−(CH]NH−または(CFN−(CH−を表し、
Bは、単結合、O、NH、NR、CH、C(O)−O、C(O)、S、CH−O、O−C(O)、N−C(O)、C(O)−N、O−C(O)−N、N−C(O)−N、O−SOまたはSO−Oを表し、
Rは、1〜4個のC原子を有するアルキルを表し、
bは、0または1を表し、cは、0または1を表し、
qは、0または1を表し、ここでbおよびqからの少なくとも1つのラジカルは、1を表し、ならびに
rは、0を表す、
からなる。
【0017】
Rfは、好ましくは、CF−(CH−、CF−(CH−O−、CF−(CH−Sまたは[CF−(CHN−を表す。本発明の好ましい変形は、式中rが、0、1、2または3、特に0、1または2を表す、以下でまたRfと略すフッ素基を包含し、ここでrは、好ましくは0を表す。
本発明の特に好ましい態様において、Rfは、CF−、CF−O−、CF−CH−CH−O−、CF−S−、CFCF−S−、SF−、CF−CH−CH−S−、(CF−N−および(CF−CH−CH−N−、特にCF−、CF−O−、CF−S−および(CF−N−を表す。
本発明の他の好ましい変形は、CF−、CF−S−、CFCF−S−、SF−または(CFN−に等しい基Rfを包含する。
特に好ましい基Bは、O、S、CHO、CH、C(O)およびOC(O)である。特に、OおよびOC(O)に等しいBが、好ましい。
【0018】
本発明の特に好ましい変形は、CF−Ar−O、CF−O−Ar−O、CF−CH−CH−O−Ar−O、CF−S−Ar−O、CFCF−S−Ar−O、SF−Ar−O、CF−CH−CH−S−Ar−O、(CF−N−Ar−O、(CF−CH−CH−N−Ar−O、CF−Ar−OC(O)、CF−O−Ar−OC(O)、CF−CH−CH−O−Ar−OC(O)、CF−S−Ar−OC(O)、CFCF−S−Ar−OC(O)、SF−Ar−OC(O)、CF−CH−CH−S−Ar−OC(O)、(CF−N−Ar−OC(O)および(CF−CH−CH−N−Ar−OC(O)に等しい、特にCF−Ar−O、CF−O−Ar−O、CF−S−Ar−O、(CF−N−Ar−O、CF−Ar−OC(O)、CF−O−Ar−OC(O)、CF−S−Ar−OC(O)および(CF−N−Ar−OC(O)に等しい基Yを包含する。
本発明の特に好ましい変形は、CF−Ar−OおよびCF−Ar−OC(O)に等しいYを包含する。
【0019】
本発明の変形において、qが0を表し、少なくとも1つのcおよび/またはbが各々1を表すのが好ましい。すべてのcおよびbが1を表す、即ち芳香環がo,p,o位においてフッ素基により置換されているのが特に好ましい。
本発明の他の変形において、すべてのqおよびbが各々0を表し、少なくとも1つのcが1を表すのが好ましい。両方のcが1を表す、即ち芳香環がo,o位においてフッ素基により置換されているのが特に好ましい。
本発明の他の変形において、すべてのcおよびqが各々0を表し、bが1を表す、即ち芳香環がp位においてフッ素基により置換されているのが好ましい。
特に好ましいのは、好ましいかまたは特に好ましい範囲における変数の組み合わせを有する化合物の使用である。
さらなる好ましい組み合わせは、特許請求の範囲中に開示されている。
【0020】
他の好ましい態様は、ソルビトールの脂肪酸エステル類を包含し、これは、式IA
【化6】

式中、
R1〜R6は、上記で定義した基Yを含む脂肪酸基またはHに相当し、ここで基R1〜R6は、すべてHに等しくてはならない、
により表すことができる。
【0021】
他の好ましい態様は、サッカロースの脂肪酸エステル類を包含し、これは、式IB
【化7】

式中、
R1〜R8は、上記で定義した基Yを含む脂肪酸基またはHに相当し、ここで基R1〜R8は、すべてHに等しくてはならない、
により表すことができる。
【0022】
本発明のポリオールの脂肪酸エステル類は、文献から当業者に自体公知である方法により調製することができる。エステル化のための反応条件は、標準的な従来技術であり、好適な反応条件の選択は、合成の当業者には標準的である。遊離酸でのエステル化は、好ましくは、例えば酸触媒を用いて行うが、酵素的に行うこともできる。他の変法は、ピリジンの存在下での温和な条件の下での脂肪酸塩化物の反応である。
炭水化物の脂肪酸エステル類、即ち単糖類、二糖類または多糖類は、例えばアルカリ触媒を用いて脂肪酸メチルエステルを介して調製し、ここで生成したメタノールを蒸留して除去し、ここでこの反応の間の温度は、100℃より低温のままでなければならない。これに関する文献は、Ullmann's Encyclopaedia of Industrial Chemistry Release 2006, 第7版、"Surfactants"の項、著者:Kurt Kosswig、DOI: 10.1002/14356007.a25_747である。
【0023】
したがって、本発明はさらに、本発明のポリオール類の脂肪酸エステル類の製造方法であって、上記で定義した基Yを含む脂肪酸またはこの脂肪酸の誘導体を、ポリオールを用いてエステル化することを特徴とする、前記方法に関する。
この脂肪酸の誘導体は、上述のとおり、脂肪酸塩化物または脂肪酸の低級エステル類、例えばメチルエステル類である。
【0024】
修飾された飽和脂肪酸の合成の例は、以下のスキームにより明らかである。修飾された不飽和脂肪酸の合成は、対応して類似している。
1.基Y=OCFおよびアルキレン単位がスキーム中で(CHにより表され、式中sが4〜25に等しくてもよい飽和脂肪酸CH−(CHs−1−COOHについて:
変法A:
【化8】

【0025】
脂肪族OCF基は、例えばキサントゲン酸塩類のフルオロ脱硫(fluorodesulfuration)により前駆物質A=Z(CH−OHから得ることができる(K. Kanie, Y. Tanaka, K. Suzuki, M. Kuroboshi, T. Hiyama, Bull. Chem. Soc. Jpn. 2000, 73, 471-484; P. Kirsch, Modern Fluoroorganic Chemistry: Synthesis, Reactivity, Applications, Wiley-VCH, Weinheim, 2004, 67頁以降、144頁以降)。したがって、引用した参考文献中の前記方法の対応する開示はまた、本出願の開示内容に明確に属する。
【0026】
脱保護されたアルコールを誘導体化して酸を得ることを、後に酸化により行う。
【化9】

【0027】
あるいはまた、修飾された脂肪酸を、変法Bにより調製することができる:
【化10】

2−ブロモエタノールを、フルオロギ酸塩に変換し、その後カルボニル基を、SFを用いてOCFエーテルに変換する。
文献:
1. Aldrich, P.E.; Sheppard, William A. J. Org. Chem. 1964, 29, 11-15
2. Sheppard, William A. et al. J.Org:Chem. 1964, 29, 1-11
3. Yagupol´skii, L.M.; Alekseenko, A.N.; Il´chenko, A. Y Ukrainskii Khimicheskii Zhurnal 1978, 44, 1057-1059
【0028】
ここで、脂肪酸を、以下により得る:1.Williamsonエーテル合成、2.その後の水素添加分解的脱ベンジル化、ならびに3.化学量論量の過ヨウ素酸ナトリウムおよび触媒量の塩化ルテニウムを用いたその後の酸化。
【化11】

【0029】
2.基Y=CF−(CH−O−(式中、a=1〜5である)、および、そのアルキレン単位がスキーム中で(CHにより表され、式中sが4〜25に等しくてもよい飽和脂肪酸について:
CF−(CH−O−基を、CF−(CH−OH(式中、a=1、2、3、4または5である)を第一ヒドロキシエステルと、Mitsunobu反応(Mitsunobu, O. Synthesis, 1981, 1)により反応させて対応する脂肪酸エステルを得ることにより、導入する。
【化12】

【0030】
あるいはまた、修飾された脂肪酸は、アルコールCF−(CH−OH(式中、a=1〜5である)の対応する臭素化アルケンに対するジエーテル化(dietherification)およびその後の酸化的精製操作を伴うオゾン分解により、調製することができる。
【化13】

【0031】
3.基Y=SF、および、そのアルキレン単位がスキーム中で(CHにより表され、式中sが4〜25に等しくてもよい飽和脂肪酸について:
脂肪族SF基は、例えば、末端二重結合に、SFClまたはSFBrのフリーラジカル付加反応により導入することができる。例えば、脱ハロゲン化水素または水素添加を、その後任意に行うことができる。これらの反応工程の最初の2つは、SF官能基の存在下での接触水素化(P. Kirsch, M. Bremer, M. Heckmeier, K. Tarumi, Angew. Chem. 1999, 111, 2174-2178; Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1999, 38,1989-1992)と同様に、文献(R. Winter, P. G. Nixon, G. L. Gard, D. H. Radford, N. R. Holcomb, D. W. Grainger, J. Fluorine Chem. 2001, 107, 23-30)中に記載されている。したがって、引用した参考文献中の前記方法の対応する開示はまた、本出願の開示内容に明確に属する。例は、以下のスキームにより明らかになる:
【0032】
【化14】

【0033】
SFにより修飾された脂肪酸の代替的な合成は、脂肪酸エステル、例えばメチルエステルの末端二重結合へのSFClの付加、HClの脱離およびその後のエステル開裂である。
4.基Y=CF−SまたはCF−CF−S、および、そのアルキレン単位がスキーム中で(CHにより表され、式中sが4〜25に等しくてもよい飽和脂肪酸について:
【0034】
末端チオール基を含む酸または酸誘導体は、商業的に入手できるか、または当業者に知られている方法により、調製することができる。所望のCF−SまたはCF−CF−S基への変換は、例えば、以下のスキームにより、Anselmi, E. et al. J. Fluorine Chem. 2000, 105, 1, 41-44に従って行うか、または任意にSe(トリフルオロメチル)ジベンゾセレノフェニウムトリフラート(Umemotoの試薬):T. Umemoto et al. J. Am. Chem. Soc. 1993, 115, 2156-2164により、または:N.V. Ignatiev, Ukr. Khim. Zh. 2001, No. 10, 98〜102頁により行うことができる。
【0035】
【化15】

【0036】
5.基Y=(CFN−、および、そのアルキレン単位がスキーム中で(CHにより表され、式中sが4〜25に等しくてもよい飽和脂肪酸について:
脂肪族(CFN−基を、まず所望の脂肪酸に相当する数のC原子および末端二重結合を有するハロゲン化物との対応するテトラメチルアンモニウム塩の反応により、示したスキームに従って脂肪酸中に導入する。それぞれのテトラメチルアンモニウム塩は、EP 1081129の記載と同様に得ることができる。したがって、引用した参考文献中の前記方法の対応する開示はまた、本出願の開示内容に明確に属する。
【化16】

【0037】
末端二重結合は、当業者に知られている方法によりカルボキシル官能基に変換することができる。例は、以下のスキームにより明らかになり、ここで下記スキーム中のRfは、N(CFであってもよいが、SCFまたはSCであってもよい:
【化17】

【0038】
aが0〜5の範囲から選択される整数を表すアミン単位[CF−(CHN−を、Gabriel合成(Organikum: Organisch-Chemisches Grundpraktikum [Basic Practical Organic Chemistry]、第16版、VEB Deutscher Verlag der Wissenschaften, Berlin, 1986)、続いてヒドラジンとの反応による第一アミンの遊離により、導入することができる。CF(CH)HaIを用いたこのアミンのその後のアルキル化および脱ベンジル化により、第三アミノアルコールが重要な単位として得られる。
【化18】

例えばCrO/HSOによるその後の酸化の結果、修飾された酸が得られる。
【0039】
6.基Y=CF−(CH−S−(式中a=1〜5である)、および、そのアルキレン単位がスキーム中で(CHにより表され、式中sが4〜25に等しくてもよい飽和脂肪酸について:
CF−(CH−S−基は、例えば、CF−(CH−OH(式中a=1、2、3、4または5である)を、末端チオール基を含む脂肪酸エステルと、Mitsunobu反応(Mitsunobu, O. Synthesis, 1981, 1)により反応させて、対応する脂肪酸エステルを得ることにより導入し、ここで式CF−(CH−OHで表されるアルコール類は、商業的に入手できるかまたは市販の物質から容易に得られる。
【0040】
【化19】

例5a〜cと同様にして、CFS−またはCFCFS−またはCF(CH)−末端基を、(CFN−末端基の代わりに導入することもできる。硫黄含有化合物の場合において、PtまたはRu触媒を、Pd触媒の代わりに用いる。
【0041】
7.基Y=CFNH−について:
化合物CFNH−R中の末端基CFNH−は、対応する化合物ClC=N−Rの過剰のHFとの反応により、文献から知られている方法により導入することができる(対応する合成は、例えば、Petrow et al., Zh. Obshch. Khim. 29 (1959) 2169-2172に記載されている)。あるいはまた、イソシアン酸トリフルオロメチルを、アルコールと反応させて、化合物CF−NHC(=O)−O−Rを得ることも可能である(Knunyants et al. Mendeleev Chem. J. 22 (1977) 15-105またはMotornyi et al., Zh. Obshch. Khim. 29 (1959) 2157-2122に記載のとおり)。対応する出発物質は、各々、文献から知られている方法により得ることができ、生成物の基Rは、確立された方法により化学的に修飾することができる。
【0042】
8.基Y=
【化20】

式中、
Rfは、CF−(CH−、CF−(CH−O−、CF−(CH−S−、CFCF−S−、SF−(CH−、[CF−(CHN−、[CF−(CH]NH−または(CFN−(CH−を表し、
Bは、単結合、O、NH、NR、CH、C(O)−O、C(O)、S、CH−O、O−C(O)、N−C(O)、C(O)−N、O−C(O)−N、N−C(O)−N、O−SOまたはSO−Oを表し、
Rは、1〜4個のC原子を有するアルキルを表し、
bは、0または1を表し、cは、0または1を表し、
qは、0または1を表し、ここでbおよびqからの少なくとも1つのラジカルは、1を表し、ならびに
rは、0、1、2、3、4または5を表す、
および、式中アルキレン単位がスキーム中で(CHにより表され、式中sが4〜25に等しくてもよい飽和脂肪酸について:
【0043】
この芳香族基は、示したスキームに従って脂肪酸に導入される。いくつかの場合において、それぞれのRf置換芳香族化合物は、商業的に入手できる。そうでない場合は、合成方法をまた、各々の場合において示す。したがって、引用した参考文献中の前記方法の対応する開示はまた、本出願の開示内容に明確に属する。
基Rfは、CF−(CH−、CF−(CH−O−、CF−(CH−S−、CFCF−S−、SF−(CH−、[CF−(CHN−、[CF−(CH]NH−または(CFN−(CH−を表し、指数は上記の通りであり、これを芳香族化合物に対する置換反応により導入することができる。Rfを以下のスキームにおいて用いる場合には、他に示さない限り、本明細書中に示す定義が適用される。
【0044】
スペーサーのアリール−Rfへの結合または種々の官能基を介したさらなる結合を、スキームI〜VIIIに示す:
I.Mitsunobu反応によるエーテル化:
【化21】

【0045】
II.チオエーテルまたはスルホン単位を介した結合
【化22】

【0046】
III.アミン生成
【化23】

【0047】
IV.エステル化またはアミド生成
【化24】

【化25】

【0048】
V.スルホン酸エステル類およびアミド類を介した結合
【化26】

【0049】
塩化アリールスルホニルが、ClSOHとの反応により、対応する芳香族化合物から得られる。
【化27】

【0050】
VI.ケト官能基を介した結合
【化28】

【0051】
VII.イソシアネート類またはイソチオシアネート類を介した結合
【化29】

【0052】
VIII.Heck反応による結合
【化30】

【0053】
前記Rf置換基を有するアリール単位は、以下の反応により合成することができる:
CF置換基について:CF基は、以下のスキームに示す通り、芳香族カルボン酸のHFおよびSFとの超大気圧(superatmospheric pressure)および高温の下での反応により得ることができる:
【化31】

【0054】

【化32】

式中、G=−COH、CHNH、−CHOH、−CHO、−COCl、−CHBr、−CHCOH、−CH=CH、−CH=CHCOH、−C≡CCHOHである、
で表される化合物は、商業的に入手できる。
【0055】
フッ素化されたCF基を含む芳香族系についての誘導体化:
【化33】

【0056】
3つのフッ素化されたCF基を含む芳香族系についての誘導体化:
【化34】

DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミド
TPAP:過ルテニウム酸テトラ−n−プロピルアンモニウム
THP:テトラヒドロピラニル
【0057】
以下のことは、SFに適用される:
市販のp−ニトロペンタフルオロスルフラニル化合物の修飾は、P. Kirsch et al. Angewandte Chemie 1999, 111, 2174-2178に記載されているようにして行うことができる。
【化35】

市販の試薬は、以下のものである:
G’=−OH、−Br、−NH、−NO、−CHO、−CO
【化36】

【0058】
m,m−ビスペンタフルオロスルフラニル化合物は、W. A. Sheppard J. Am. Chem. Soc. 1962, 84, 3064-3072またはUS 3073861もしくはUS 3135736に記載されているようにして入手可能である:
【化37】

引用した参考文献中の上記の方法の対応する開示は、このようにまた、本出願の開示内容に明確に属する。
【0059】
以下のことは、FCS−またはFS−に適用される:
【化38】

市販の試薬は、以下のものである:
G’’=−OH、−Br、−Cl、−NH、−NO、−N=C=O、−CHO、−COH、−CN、−CHOH、−CHBr
【0060】
芳香族トリフルオロメチルチオエーテル類およびペンタフルオロエチルチオエーテル類は、以下のスキームに示す通り、ヨウ化芳香族化合物の置換またはチオフェノール類のエーテル化により入手可能である:
【化39】

【0061】
以下のことは、FCOに適用される:
【化40】

市販の試薬は、以下のものである:
G’’’=−OH、−I、−Br、−Cl、−NH、−SH、−B(OH)、−CHO、−COH、−COMe、−CONH、−CN、−CHOH、−CHBr、−CHCN。
【0062】
トリフルオロメトキシ芳香族化合物は、フェノール類の四塩化炭素およびフッ化水素との反応により得ることができる。
【化41】

【0063】
出発物質ニトロレゾルシノールは、以下の文献に従って調製することができる:
Ref. 1 Funke; Krucker; BSCFAS; Bull. Soc. Chim. Fr.; 1953; 744, 746または
Ref. 1 Grosheintz; Fischer; JACSAT; J. Am. Chem. Soc.; 70; 1948; 1476, 1478。
以下のことは、[CF−(CHN−に適用される:
aが0〜5の範囲から選択される整数を表すアミン単位[CF−(CHN−は、Gabriel合成(Organikum: Organisch-Chemisches Grundpraktikum [Basic Practical Organic Chemistry]、第16版、VEB Deutscher Verlag der Wissenschaften, Berlin, 1986)、続いてヒドラジンとの反応による第一アミンの遊離により、導入することができる。CF(CHHaIを用いたこのアミンのその後のアルキル化および脱ベンジル化により、第三アミノアルコールが重要な単位として得られる。
【0064】
【化42】

【0065】
以下のことは、(CFN−に適用される:
【化43】

市販の試薬は、以下のものである:
G’’’’=−OH、−I、−Br、−Cl、−NH、−NHAc、−CHO、−COH、−COMe、−CONH、−CN、−CHOH、−CHBr、−CHCN。
【0066】
(CFN置換基は、F.S. Fawcett; J. Am. Chem. Soc. 84 (No.22) (1962) 4275-4285に記載のとおりに、イソシアネート類から開始して、フルオロホスゲンとの反応およびSF/HFを用いたその後のフッ素化により、またはイソチオシアネート類から開始して、二フッ化水銀との反応およびその後のフルオロホスゲンとの反応、およびSF/HFを用いたその後のフッ素化により、得ることができる:
【0067】
【化44】

【0068】
ビストリフルオロメチルアニリン類を調製するための代替経路は、芳香族アルデヒド類から開始し、R.E. Banks, J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1 (1973) 80-82に詳細に記載されている:
【化45】

【0069】
以下のことは、CFNH−に適用される:
化合物CFNH−R中の末端基CFNH−は、対応する化合物ClC=N−Rの過剰のHFとの反応により、文献から知られている方法により導入することができる(対応する合成は、例えば、Petrow et al., Zh. Obshch. Khim. 29 (1959) 2169-2173またはE. Kuhle, Angew. Chem. 89 (No.11) (1977), 797-804に記載されている)。あるいは、イソシアン酸トリフルオロメチルを、アルコールと反応させて、化合物CF−NHC(=O)−O−Rを得ることができる(Knunyants et al. Mendeleev Chem. J. 22 (1977) 15-105またはMotornyi et al., Zh. Obshch. Khim. 29 (1959) 2157-2122に記載のとおり)。対応する出発物質は、各々、文献から知られている方法により得ることができ、またはClC=N−Rタイプの化合物は、化合物R−NH−CHOの塩素およびSOClとの反応により得ることができ、生成物の基Rは、確立された方法により化学的に修飾することができる。
【0070】
以下のスキームは、Rfとは無関係に行うことができる鎖延長を示す:
【化46】

【0071】
さらに、鎖延長は、エステルまたはアミド形成により可能である/行うことができる。
したがって、ここで引用した参考文献中の前記方法の対応する開示もまた、本出願の開示内容に明確に属する。
前記反応についての好適な溶媒および反応条件の選択は、当業者に全く困難を与えない(Organikum: Organisch-Chemisches Grundpraktikum [Basic Practical Organic Chemistry]、第16版、VEB Deutscher Verlag der Wissenschaften, Berlin, 1986)。
【0072】
本発明はさらに、少なくとも1つの基Yを含むスルホン化脂肪酸エステル類であって、Yが、CF−(CH−O−、SF−、CF−(CH−S−、CFCFS−、[CF−(CHN−または[CF−(CH]NH−(式中aは0〜5の範囲から選択される整数を表す)、または、
【化47】

式中、
Rfは、CF−(CH−、CF−(CH−O−、CF−(CH−S−、CFCF−S−、SF−(CH−、[CF−(CHN−、[CF−(CH]NH−または(CFN−(CH−を表し、
Bは、単結合、O、NH、NR、CH、C(O)−O、C(O)、S、CH−O、O−C(O)、N−C(O)、C(O)−N、O−C(O)−N、N−C(O)−N、O−SOまたはSO−Oを表し、
Rは、1〜4個のC原子を有するアルキルを表し、
bは、0または1を表し、cは、0または1を表し、
qは、0または1を表し、ここでbおよびqからの少なくとも1つのラジカルは、1を表し、ならびに
rは、0、1、2、3、4または5を表す、
を表す、前記化合物に関する。
【0073】
基Yにおいて、aは、好ましくは0、1または2、特に好ましくは0または2、極めて特に好ましくは0を表し、rは、好ましくは0〜3、特に0〜1を表す。
本発明の変形において、基Yにおけるqが0を表し、少なくとも1つのcおよび/またはbが各々1を表すのが好ましい。すべてのcおよびbが1を表す、即ち芳香環がoおよび/またはp位において、特にo,p,o位においてフッ素基により置換されているのが特に好ましい。
【0074】
本発明の他の変形において、すべてのqおよびbが各々0を表し、少なくとも1つのcが1を表すのが好ましい。両方のcが1を表す、即ち芳香環がo位において、o,o位においてフッ素基により置換されているのが特に好ましい。
本発明の他の変形において、すべてのcおよびqが各々0を表し、bが1を表す、即ち芳香環がp位においてフッ素基により置換されているのが好ましい。
【0075】
好ましい態様において、スルホン化された基は、部分式
−O−(CH−SO
式中、
o=1、2、3、4、5または6、好ましくは2または4であり、
M=金属カチオンである、
で記載することができる。
上記部分式において、Mは、金属カチオン、特にアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンまたはアンモニウムイオンから選択される金属カチオンを示す。リチウム、ナトリウムもしくはカリウムカチオンまたはNHは、Mのために好ましく用いられる。
【0076】
本発明の好ましい変形において、脂肪酸の修飾を決定づける基Yは、上記で定義したように、CF−O−、CFCF−S−、CF−S−、(CFN−、または
【化48】

式中、
Rfは、CF−(CH−、CF−(CH−O−、CF−(CH−S−、CFCF−S−、SF−(CH−、[CF−(CHN−、[CF−(CH]NH−または(CFN−(CH−を表し、
Bは、単結合、O、NH、NR、CH、C(O)−O、C(O)、S、CH−O、O−C(O)、N−C(O)、C(O)−N、O−C(O)−N、N−C(O)−N、O−SOまたはSO−Oを表し、
Rは、1〜4個のC原子を有するアルキルを表し、
bは、0または1を表し、cは、0または1を表し、
qは、0または1を表し、ここでbおよびqからの少なくとも1つのラジカルは、1を表し、ならびに
rは、0を表す、
からなる。
【0077】
Rfは、好ましくは、CF−(CH−、CF−(CH−O−、CF−(CH−Sまたは[CF−(CHN−を表す。本発明の好ましい変形は、式中rが、0、1、2または3、特に0、1または2を表す、以下でまたRfと略すフッ素基を包含し、ここでrは、好ましくは0を表す。
本発明の特に好ましい態様において、Rfは、CF−、CF−O−、CF−CH−CH−O−、CF−S−、CFCF−S−、SF−、CF−CH−CH−S−、(CF−N−および(CF−CH−CH−N−、特にCF−、CF−O−、CF−S−および(CF−N−を表す。
本発明の他の好ましい変形は、CF−、CF−S−、CFCF−S−、SF−または(CFN−に等しい基Rfを包含する。
特に好ましい基Bは、O、S、CHO、CH、C(O)およびOC(O)である。特に、OおよびOC(O)に等しいBが、好ましい。
【0078】
本発明の特に好ましい変形は、CF−Ar−O、CF−O−Ar−O、CF−CH−CH−O−Ar−O、CF−S−Ar−O、CFCF−S−Ar−O、SF−Ar−O、CF−CH−CH−S−Ar−O、(CF−N−Ar−O、(CF−CH−CH−N−Ar−O、CF−Ar−OC(O)、CF−O−Ar−OC(O)、CF−CH−CH−O−Ar−OC(O)、CF−S−Ar−OC(O)、CFCF−S−Ar−OC(O)、SF−Ar−OC(O)、CF−CH−CH−S−Ar−OC(O)、(CF−N−Ar−OC(O)および(CF−CH−CH−N−Ar−OC(O)に等しい、特にCF−Ar−O、CF−O−Ar−O、CF−S−Ar−O、(CF−N−Ar−O、CF−Ar−OC(O)、CF−O−Ar−OC(O)、CF−S−Ar−OC(O)および(CF−N−Ar−OC(O)に等しい基Yを包含する。
本発明の特に好ましい変形は、CF−Ar−OおよびCF−Ar−OC(O)に等しいYを包含する。
【0079】
本発明の変形において、qが0を表し、少なくとも1つのcおよび/またはbが各々1を表すのが好ましい。すべてのcおよびbが1を表す、即ち芳香環がo,p,o位においてフッ素基により置換されているのが特に好ましい。
本発明の他の変形において、すべてのqおよびbが各々0を表し、少なくとも1つのcが1を表すのが好ましい。両方のcが1を表す、即ち芳香環がo,o位においてフッ素基により置換されているのが特に好ましい。
本発明の他の変形において、すべてのcおよびqが各々0を表し、bが1を表す、即ち芳香環がp位においてフッ素基により置換されているのが好ましい。
【0080】
特に好ましいのは、好ましいかまたは特に好ましい範囲における変数の組み合わせを有する化合物の使用である。
さらなる好ましい組み合わせは、特許請求の範囲中に開示されている。
スルホン化脂肪酸エステル類の特に好ましい化合物は以下の化合物を含む:
【0081】
【化49】

【0082】
少なくとも1つの基Yを、好ましくはエステル官能基に対して末端に配置して含むスルホン化脂肪酸エステル類は、少なくとも1つの基Yを含む脂肪酸と、1〜6個のC原子を有するヒドロキシスルホン酸のナトリウム塩との、ポリオール類の脂肪酸エステル類について上記した(1.〜7.および付随するスキーム)反応により得ることができる。
ヒドロキシスルホン酸類は、市販されているか、または、既知の合成により入手することができる。
【0083】
本発明はさらに、少なくとも1つの基Yを含むスルホン化脂肪酸アミド類であって、Yが、CF−(CH−O−、SF−、CF−(CH−S−、CFCFS−、[CF−(CHN−または[CF−(CH]NH−(式中aは0〜5の範囲から選択される整数を表す)、または、
【化50】

式中、
Rfは、CF−(CH−、CF−(CH−O−、CF−(CH−S−、CFCF−S−、SF−(CH−、[CF−(CHN−、[CF−(CH]NH−または(CFN−(CH−を表し、
Bは、単結合、O、NH、NR、CH、C(O)−O、C(O)、S、CH−O、O−C(O)、N−C(O)、C(O)−N、O−C(O)−N、N−C(O)−N、O−SOまたはSO−Oを表し、
Rは、1〜4個のC原子を有するアルキルを表し、
bは、0または1を表し、cは、0または1を表し、
qは、0または1を表し、ここでbおよびqからの少なくとも1つのラジカルは、1を表し、ならびに
rは、0、1、2、3、4または5を表す、
を表す、前記化合物に関する。
【0084】
好ましい態様において、スルホン化された基は、部分式
−O−(CH−SO
式中、
o=1、2、3、4、5または6、好ましくは2または4であり、
M=金属カチオンである、
で記載することができる。
上記部分式において、Mは、金属カチオン、特にアルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンまたはアンモニウムイオンから選択される金属カチオンを示す。リチウム、ナトリウムもしくはカリウムカチオンまたはNHは、Mのために好ましく用いられる。
【0085】
本発明の好ましい変形において、脂肪酸の修飾を決定づける基Yは、上記で定義したように、CF−O−、CFCF−S−、CF−S−、(CFN−、または
【化51】

式中、
Rfは、CF−(CH−、CF−(CH−O−、CF−(CH−S−、CFCF−S−、SF−(CH−、[CF−(CHN−、[CF−(CH]NH−または(CFN−(CH−を表し、
Bは、単結合、O、NH、NR、CH、C(O)−O、C(O)、S、CH−O、O−C(O)、N−C(O)、C(O)−N、O−C(O)−N、N−C(O)−N、O−SOまたはSO−Oを表し、
Rは、1〜4個のC原子を有するアルキルを表し、
bは、0または1を表し、cは、0または1を表し、
qは、0または1を表し、ここでbおよびqからの少なくとも1つのラジカルは、1を表し、ならびに
rは、0を表す、
からなる。
【0086】
Rfは、好ましくは、CF−(CH−、CF−(CH−O−、CF−(CH−Sまたは[CF−(CHN−を表す。本発明の好ましい変形は、式中rが、0、1、2または3、特に0、1または2を表す、以下でまたRfと略すフッ素基を包含し、ここでrは、好ましくは0を表す。
本発明の特に好ましい態様において、Rfは、CF−、CF−O−、CF−CH−CH−O−、CF−S−、CFCF−S−、SF−、CF−CH−CH−S−、(CF−N−および(CF−CH−CH−N−、特にCF−、CF−O−、CF−S−および(CF−N−を表す。
本発明の他の好ましい変形は、CF−、CF−S−、CFCF−S−、SF−または(CFN−に等しい基Rfを包含する。
特に好ましい基Bは、O、S、CHO、CH、C(O)およびOC(O)である。特に、OおよびOC(O)に等しいBが、好ましい。
【0087】
本発明の特に好ましい変形は、CF−Ar−O、CF−O−Ar−O、CF−CH−CH−O−Ar−O、CF−S−Ar−O、CFCF−S−Ar−O、SF−Ar−O、CF−CH−CH−S−Ar−O、(CF−N−Ar−O、(CF−CH−CH−N−Ar−O、CF−Ar−OC(O)、CF−O−Ar−OC(O)、CF−CH−CH−O−Ar−OC(O)、CF−S−Ar−OC(O)、CFCF−S−Ar−OC(O)、SF−Ar−OC(O)、CF−CH−CH−S−Ar−OC(O)、(CF−N−Ar−OC(O)および(CF−CH−CH−N−Ar−OC(O)に等しい、特にCF−Ar−O、CF−O−Ar−O、CF−S−Ar−O、(CF−N−Ar−O、CF−Ar−OC(O)、CF−O−Ar−OC(O)、CF−S−Ar−OC(O)および(CF−N−Ar−OC(O)に等しい基Yを包含する。
本発明の特に好ましい変形は、CF−Ar−OおよびCF−Ar−OC(O)に等しいYを包含する。
【0088】
本発明の変形において、qが0を表し、少なくとも1つのcおよび/またはbが各々1を表すのが好ましい。すべてのcおよびbが1を表す、即ち芳香環がo,p,o位においてフッ素基により置換されているのが特に好ましい。
本発明の他の変形において、すべてのqおよびbが各々0を表し、少なくとも1つのcが1を表すのが好ましい。両方のcが1を表す、即ち芳香環がo,o位においてフッ素基により置換されているのが特に好ましい。
【0089】
本発明の他の変形において、すべてのcおよびqが各々0を表し、bが1を表す、即ち芳香環がp位においてフッ素基により置換されているのが好ましい。
特に好ましいのは、好ましいかまたは特に好ましい範囲における変数の組み合わせを有する化合物の使用である。
さらなる好ましい組み合わせは、特許請求の範囲中に開示されている。
【0090】
スルホン化脂肪酸アミド類の特に好ましい化合物は、以下の化合物を含む:
【化52】

【0091】
少なくとも1つの基Yを、好ましくはアミド官能基に対して末端に配置して含むスルホン化脂肪酸アミド類は、少なくとも1つの基Yを含む脂肪酸と、1〜6個のC原子を有するアミノスルホン酸のナトリウム塩との、ポリオール類の脂肪酸エステル類について上記した(1.〜7.および付随するスキーム)反応により得ることができる。
アミノスルホン酸類は、市販されているか、または、既知の合成により入手することができる。
【0092】
本発明の化合物、または本発明の組成物もしくは剤の利点は、特に、以下のものであり得る:
− 効率および/または有効性に関して、従来の炭化水素界面活性剤と同一またはこれより優秀たり得る界面活性性、および/または
− 難分解性のパーフルオロ化された分解生成物の生成を伴わない、物質の生物学的および/または非生物的分解性、および/または
− 配合物への良好な加工可能性、および/または
− 貯蔵安定性。
界面活性剤として本発明により用いることができる化合物は、疎水化剤または疎油化剤(oleophobicising agent)として用いるのに特に適する。
【0093】
使用領域は、例えば、織物、紙、ガラス、多孔質建築材料または吸着剤の表面改質である。塗料、コーティング、インク、写真コーティング(写真乾板、フィルムおよび紙用)、半導体フォトリソグラフィー用の特別のコーティング(フォトレジスト、最上部の反射防止コーティング、底部の反射防止コーティング)または表面コーティング用の他の調製物において、本発明の化合物および本発明により用いる化合物を、1または2以上の以下の機能を伴って有利に用いることができる:かぶり防止剤、分散剤、エマルジョン安定剤、消泡剤、脱気剤、帯電防止剤、難燃剤、光沢増進剤、潤滑剤、顔料または充填剤適合性増進剤、耐引っかき性増進剤、基材付着増進剤、表面付着減力液、皮膚保護剤(skin preventer)、疎水化剤、疎油化剤、UV安定剤、湿潤剤、流動制御剤、粘度低下剤、マイグレーション防止剤、乾燥促進剤。印刷インクにおいて、本発明の化合物および本発明により用いる化合物を、同様に有利に用いることができ、1または2以上の以下の機能を有し得る:消泡剤、脱気剤、摩擦制御剤、湿潤剤、流動制御剤、顔料適合性増進剤、印刷解像度増進剤、乾燥促進剤。
【0094】
したがって、本発明はさらに、本発明の化合物または本発明により用いる化合物の、表面コーティング、例えば印刷インク、塗料、コーティング、写真コーティング、半導体フォトリソグラフィー用の特殊コーティング、例えばフォトレジスト、最上部の反射防止コーティング、底部の反射防止コーティングのための調製物における添加剤としての、または対応する調製物に添加するための添加剤調製物における使用に関する。
【0095】
本発明の化合物または本発明により用いる化合物の本発明によるさらなる使用は、界面プロモーターまたは乳化剤としての使用である。これらの特性を、特に、エマルジョン重合によるフッ素重合体を調製するために、有利に用いることができる。
【0096】
本発明の化合物および本発明により用いる化合物を、気泡安定剤として、特に「泡消火薬剤」として知られている調製物において、用いることができる。したがって、本発明はさらに、本発明の化合物または本発明により用いる化合物の、気泡安定剤としての、および/または成膜を支持するための、特に、合成の、およびまたタンパク質をベースとする水成膜泡消火薬剤における、ならびにまたアルコール耐性配合物(AFFFおよびAFFF−AR、FP、FFFPおよびFFFP−AR泡消火薬剤)のための使用に関する。
【0097】
本発明の化合物および本発明により用いる化合物をまた、帯電防止剤として用いることができる。帯電防止作用は、織物、特に衣類、カーペットおよび敷物類、家具の張材および自動車の内装、不織布材料、革商品、紙および厚紙物品、木材および木材をベースとする材料、鉱物基材、例えば石、セメント、コンクリート、しっくい、陶磁器(施釉または無釉タイル、土器、磁器)およびガラスの処理において、ならびにプラスチックおよび金属基材のために、特に重要である。本出願は、対応する使用に関する。
【0098】
金属基材について、本発明はさらにまた、本発明の化合物の防食剤における使用に関する。
本発明はさらにまた、プラスチック加工における離型剤としてのその使用に関する。
一般的に、本発明の化合物および本発明により用いる化合物は、汚点および染みに対する保護剤、染み除去剤、かぶり防止剤、潤滑剤として、ならびに耐摩擦性および耐機械的摩耗性増進剤として、適する。
【0099】
本発明の化合物および本発明により用いる化合物を、織物(特に衣類、カーペットおよび敷物類、家具の張材および自動車の内装)ならびに硬質表面(特に台所表面、衛生設備、タイル、ガラス)のための洗浄組成物および染み除去剤における、ならびに光沢剤およびワックス(特に家具、フローリングおよび自動車用の)における添加剤として有利に用いることができ、これは、以下の機能の1または2以上を有する:湿潤剤、流動制御剤、疎水化剤、疎油化剤、汚点および染みに対する保護剤、潤滑剤、消泡剤、脱気剤、乾燥促進剤。洗浄組成物および染み除去剤の場合において、洗浄剤または汚れ乳化剤および分散剤としての使用は、さらにまた本発明の有利な態様である。したがって、本発明はさらに、本発明の化合物または本発明により用いる化合物の、洗浄組成物および染み除去剤における、または湿潤剤、流動制御剤、疎水化剤、疎油化剤、汚点および染みに対する保護剤、潤滑剤、消泡剤、脱気剤もしくは乾燥促進剤としての使用に関する。
【0100】
本発明の化合物および本発明により用いる化合物をまた、以下の機能の1または2以上を有するポリマー材料(プラスチック)における添加剤として、有利に用いることができる:潤滑剤、内部摩擦低下剤、UV安定剤、疎水化剤、疎油化剤、汚点および染みに対する保護剤、充填剤のための結合剤、難燃剤、マイグレーション防止剤(特に可塑剤のマイグレーションに対するもの)、かぶり防止剤。
【0101】
金属表面上の洗浄、エッチング、反応性改質および/または物質堆積(特にまた電気めっきおよび陽極酸化)または半導体表面(特に、半導体フォトリソグラフィー用)のための液体媒体中の添加剤として用いる際に、本発明の化合物および本発明により用いる化合物は、現像剤、リムーバー、エッジビーズ除去剤、エッチングおよび洗浄組成物として、湿潤剤および/または堆積フィルム品質増進剤として作用する。電気めっきプロセス(特にクロムめっき)の場合において、本発明はさらにまた、発泡作用を伴うかまたは伴わないフューム防止剤(fume inhibitor)としての機能に関する。
【0102】
さらに、界面活性剤として本発明において用いることができる化合物は、洗浄および清浄用途、特に織物の洗浄および清浄用途に適する。硬質表面の清浄および光沢化はまた、界面活性剤として本発明において用いることができる化合物についての可能な適用領域である。さらに、界面活性剤として本発明において用いることができる化合物を、化粧品、例えばフォームバス(foam bath)およびヘアシャンプーにおいて、またはクリームおよびローションにおける乳化剤として、有利に用いることができる。
本発明の化合物および本発明により用いる化合物を同様に、ヘアケアおよびボディーケア製品(例えばヘアリンスおよびヘアコンディショナー)における添加剤として有利に用いることができ、これは、以下の機能の1または2以上を有する:湿潤剤、発泡剤、潤滑剤、帯電防止剤、皮脂耐性増進剤。
【0103】
本発明の化合物および本発明により用いる化合物は、除草剤、殺虫剤および殺菌剤における添加剤として作用し、これは、以下の機能の1または2以上を有する:基材湿潤剤、アジュバント、気泡防止剤、分散剤、エマルジョン安定剤。
本発明の化合物および本発明により用いる化合物を同様に、接着剤における添加剤として有益に用いることができ、これは、以下の機能の1または2以上を有する:湿潤剤、浸透剤、基材接着増進剤、消泡剤。
本発明の化合物および本発明により用いる化合物はまた、潤滑剤および油圧油における添加剤として作用することができ、これは、以下の機能の1または2以上を有する:湿潤剤、腐食防止剤。潤滑剤の場合において、分散剤(特にフッ素重合体粒子のためのもの)としての使用は、さらにまた重要な観点である。
【0104】
パテおよび充填組成物における添加剤として用いる際には、本発明の化合物および本発明により用いる化合物は、以下の機能の1または2以上を伴って作用し得る:疎水化剤、疎油化剤、染みに対する保護剤、耐候性増進剤、UV安定剤、シリコーンブリード防止剤。
界面活性剤として本発明において用いることができる化合物についての適用のさらなる領域は、浮遊選鉱、即ち廃棄岩(dead rock)からの鉱石および鉱物の回収および分離である。このために、これらを、鉱石加工のための調製物、特に浮遊選鉱液およびリーチング液における添加剤として用い、これらは以下の機能の1または2以上を伴う:湿潤剤、発泡剤、気泡防止剤。関連する使用はまた、油井の刺激のための剤における添加剤としてのものであり、これは以下の機能の1または2以上を伴う:湿潤剤、発泡剤、乳化剤。
【0105】
さらに、これらを、除氷剤または氷結防止剤における添加剤として用いることができる。
さらに、本発明において界面活性剤として用いることができる好ましい化合物をまた、食物における乳化剤または分散助剤として用いることができる。他の適用分野は、金属処理において、革補助剤として、建設化学および作物保護においてである。
【0106】
本発明の界面活性剤はさらにまた、抗菌活性化合物として、特に抗菌性表面改質のための試薬として好適である。
本発明は、本発明において用いる化合物の本明細書中で言及するすべての使用に関する。前記目的のための界面活性剤のそれぞれの使用は、当業者に知られており、したがって本発明において用いる化合物の使用は、問題を提示しない。
【0107】
適用のために、本発明の化合物は、通常適切に配合された調製物中に導入される。本発明は同様に、本発明の少なくとも1種の化合物を含むそれぞれの組成物に関する。このような組成物は、好ましくは特定の用途に適するビヒクルおよび任意に他の特定の活性化合物および/または任意に補助剤を含む。
ここで好ましい組成物は、塗料およびコーティング調製物、消火組成物、潤滑剤、洗浄および清浄組成物、除氷剤または織物仕上げもしくはガラス処理のための疎水化剤である。本発明の好ましい変形において、組成物は、織物およびカーペットを仕上げるための疎水化剤である。
【0108】
織物の疎水性仕上げのために、ポリシロキサン類、フッ素化炭化水素またはアルミニウムもしくはジルコニウム塩のパラフィン類との混合物をベースとする疎水化剤が、一般的に用いられる(この点に関して、"Handbuch der Textilhilfsmittel" [Handbook of Textile Assistants], A. Chwala, V. Anger, Verlag Chemie, New York 1977, Chapter 3.24 "Phobiermittel" [Proofing Agents], 735頁以降を参照)。織物の疎水性仕上げは、特に雨具の場合において、これらを耐水性または防水性のいずれかにする役割を果たす。疎水化剤は、織物の繊維に適用され、ここでこれは、それ自体分子の疎水性部分が繊維表面に対して垂直であるように整列する。このようにして、水が表面全体にわたり拡散する傾向は、大幅に低減される。水は、凝集力のために球形の形状を採り、織物表面から水滴の形態で流出する。
【0109】
本発明の組成物についてのさらなる適用領域は、塗料およびコーティング調製物、消火組成物(粉末および泡)、潤滑剤、洗浄および清浄組成物ならびに除氷剤である。
組成物は、自体公知の方法により、例えば本発明の化合物を特定の用途に適するビヒクルおよび任意にさらなる特定の活性化合物および任意に補助剤と混合することにより、調製することができる。本発明において用いる化合物は、文献から当業者に自体公知の方法により調製することができる。
【0110】
明細書中で言及した好ましい化合物、その使用、組成物および方法に加えて、本発明の主題のさらなる好ましい組み合わせは、特許請求の範囲中に開示されている。
したがって、引用した参考文献中の開示もまた、本出願の開示内容に明確に属する。
以下の例は、保護の範囲を限定せずに本発明を一層詳細に説明する。特に、特定の例が基づく化合物の例中に記載した特徴、特性および利点はまた、詳細に述べていないが、保護の範囲内にある他の物質および化合物に、他の箇所に逆のことが記載されていない限り該当し得る。さらに、本発明は、特許請求の範囲に記載された全範囲にわたって行うことができ、本明細書中で述べる例には限定されない。
【0111】

用いる略語のリスト:
Bn:ベンジル
DBH:1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン
DCM:ジクロロメタン
DMAP:4−(ジメチルアミノ)ピリジン
Me:メチル
MTB:メチルtert−ブチルエーテル
RT 室温(20℃)
THF:テトラヒドロフラン
PE:石油エーテル
DCC N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
RT 室温
TPAP 過ルテニウム酸テトラ−n−プロピルアンモニウム
VE 脱塩(demineralised)
TLC 薄層クロマトグラフィー
DIAD アゾジカルボン酸ジイソプロピル
【0112】
例1
1.(E)−10−ペンタフルオロスルファニルデク−9−エンカルボン酸の合成
【化53】

15gのデセノールを、250mlのDCM(ジクロロメタン)に溶解し、−40℃に冷却する。27gのSFCl(コールドトラップにより予め凝縮させたもの)を、装置中にガスとして通じる。活性化のために、2mlの1MのEtB溶液を加える。ガスを通している間、バッチは濁ってくる。活性化を、ガスが通過しているときにバッチがもはや加温されなくなるまで繰り返す。混合物を、同一の温度にてさらに2時間撹拌する。反応混合物を、氷/NaHCO溶液(飽和)に加えることにより加水分解し、次にNaOHを用いてpH10に調整する。分離した水性相をMTBエーテル(MTBエーテル=メチルtert−ブチルエーテル)で2回洗浄する。採集した有機相をNaCl溶液で1回抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、ロータリーエバポレーターで濃縮する。クロマトグラフィーにより、純粋な形態の生成物を得る。
【0113】
脱離:
【化54】

9gの出発物質(28.2mmol)を、還流凝縮器を備えた250mlの一口フラスコ中の120mlのエタノールに溶解し、その後KOH粉末(4.75g、85mmol、3当量)を加える。反応混合物を一晩撹拌し、次いで濃縮し、水およびMTBエーテルを加える。相を分離した後、水性相をMTBエーテルで3回抽出し、採集した有機相を飽和NaClで洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、溶媒を蒸留により除去し、8.3gの帯黄色の液体を得る。Rf値は、出発物質よりわずかに高い(より極性の低い物質)。
【0114】
酸化:
【化55】

文献:Tetrahedron Vol. 44, No. 9, pp. 2636, 1988
11.3mmolのアルコールを、四塩化炭素(40ml)、アセトニトリル(40ml)および水(50ml)を含む溶媒混合物に溶解し、次にメタ過ヨウ素酸ナトリウム(5.44g、25.4mmol、2.25当量)および塩化ルテニウム(III)(234mg、1.13mmol、0.1当量)を加え、反応混合物を、22℃〜26℃(RT)にて3時間撹拌する。次に、50mlのジクロロメタンを反応混合物に加え、相を分離し、水性相をさらに各々の回において50mlのジクロロメタンで2回抽出する。合わせたジクロロメタン溶液を、硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、濾過し、溶媒を蒸留により除去する。生成物が、油状残留物として得られる。
【0115】
2.ソルビトールを用いたエステル化
【化56】

30gの(E)−10−ペンタフルオロスルファニルデク−9−エンカルボン酸を、最初に100gのトルエン中に導入し、24gのSOClを加える。反応混合物を70℃に加温し、過剰のSOClおよび溶媒を蒸留により除去する。得られた酸塩化物を、さらに精製せずにその後のアシル化において用いる。
【0116】
【化57】

アシル化のために、18gのソルビトールを150gのTHF(テトラヒドロフラン)に懸濁し、次いで32gの酸塩化物(1当量)および10gのトリエチルアミンを加える。反応が完了したら、生成物の混合物を単離し、慣用の実験室方法により精製する。
アシル化の程度は、より多くの酸塩化物(2〜20当量)を用いることにより増大させることができる。
モノアシル化が、好ましくはR1またはR6について生じ、ジアシル化が、好ましくはR1およびR6について生じる。
【0117】
例2
【化58】

34gのサッカロースを、100gのTHFに懸濁し、次いで、例1で調製した31gの塩化(E)−10−ペンタフルオロスルファニルデク−9−エンカルボニルおよび10gのトリエチルアミンを加える。反応が完了したら、生成物の混合物を単離し、慣用の実験室方法により精製する。アシル化の程度は、より多くの酸塩化物(2〜20当量)を用いることにより増大させることができる。
モノアシル化が、好ましくはR1またはR5またはR8について生じ、ジアシル化が、好ましくはR1/R5またはR1/R8またはR5/R6について生じる。
【0118】
例3
1. 7−(3,3,3−トリフルオロプロポキシ)ヘプタン酸メチルの合成
【化59】

3,3,3−トリフルオロプロパノール(10ml、110mmol)、7−ヒドロキシヘプタン酸メチル(133mmol、1.2当量)、トリフェニルホスフィン(35g、133mmol、1.2当量)を、最初に丸底フラスコ中の37mlのTHF中に導入し、超音波浴中に数分間導入して、物質を混合する。超音波に曝露している間に、DIAD(26.5ml、133mmol、1.2当量)を、極めてゆっくりと滴加し(温度が上昇する)、反応混合物を、超音波の下で15分間放置する。TLC試料を採取し、その後超音波浴中にさらに2時間放置する。
溶媒を、ロータリーエバポレーター中で除去する。その後、90mlの冷MTBエーテルを加え、この間酸化トリフェニルホスフィンが沈殿する。固体を吸引により濾別し、溶液を週末の間冷蔵庫中に貯蔵して、残りも沈殿するようにする。
残りの固体を吸引により濾別し、残留物をMTBで洗浄する。生成物溶液をロータリーエバポレーター中で濃縮し、カラムクロマトグラフィーにより精製する。
【0119】
2. 7−(3,3,3−トリフルオロプロポキシ)ヘプタン酸の合成
【化60】

7−(3,3,3−トリフルオロプロポキシ)ヘプタン酸メチル(50mmol)を、丸底フラスコ中の500mlのTHFに溶解し、固体の水酸化リチウム(65mmol、1.3当量)を、RTにて分割して加える。混合物をRTにて1時間撹拌し、その後100mlの水および200mlのMTBエーテルを加える。混合物を、HCl水溶液を用いてpH1に酸性化し、相を分離し、水性相をMTBで多数回抽出する。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレーター中で濃縮する。このようにして生成したカルボン酸を、その後の工程において直接用いる。
【0120】
3. ソルビトールを用いたエステル化
【化61】

例1と同様に、まず24gの7−(3,3,3−トリフルオロプロポキシ)ヘプタン酸を、最初に100gのトルエン中に導入し、24gのSOClと反応させ、生成した酸塩化物を、THF中の18gのソルビトールを用いて、トリエチルアミンの存在下でエステル化する。
【0121】
例4
【化62】

例2と同様にして、100gのTHF中の34gのサッカロースを、例3におけるようにして調製した30gの塩化7−(3,3,3−トリフルオロプロポキシ)ヘプタノイルおよび10gのトリエチルアミンと反応させる。反応が完了したら、生成物の混合物を、慣用の実験室方法を用いて単離し、精製する。アシル化の程度は、より多くの酸塩化物(2〜20当量)を用いることにより増大させることができる。
【0122】
例5
1.酸の合成
【化63】

a:アンモニウム塩の調製:
0.052g(0.18mmol)のCFSON(CFを、−40℃にて、0.017g(0.18mmol)の(CHを0.5mlの乾燥ジクロロメタンに溶解した溶液に加える。反応溶液を室温に加温し、同量の乾燥アセトニトリルで希釈する。乾燥アルゴン雰囲気中での蒸留による溶媒の除去により、0.037gの無色の高度に吸湿性の物質が90.2%の収率で得られる。
19F NMR (CCl3F): -40.8 s、融点:120〜125℃
【0123】
b:アリル化合物の調製:
【化64】

0.837g(2.12mmol)の(CHN(CFおよび0.196g(1.62mmol)の臭化アリルの混合物を、還流下、アルゴン雰囲気下で数時間加熱する。反応が完了したら、生成物を蒸留により除去する。
【0124】
c:鎖延長
【化65】

アリルアミン誘導体(4.2g;21.8mmol)およびその後Grubbs IIメタセシス触媒(0.9g;1mmol)を、オレフィン系メチルエステル(28.1mmol)を70mlのジクロロメタンに溶解した溶液に加える。
混合物を、還流下で17時間加熱する。
その後、混合物をロータリーエバポレーター中で濃縮し、カラム上で精製する。触媒を完全に除去するために、生成物を再びクロマトグラフィー分離し、結合した生成物を得る。
【0125】
d:二重結合の水素添加
【化66】

メチルエステル(27mmol)を、250mlのTHF中に回収し、活性炭上の5%パラジウム(10mol%)を加える。水素雰囲気(上昇した圧力)を適用した後に、反応混合物を3時間撹拌し、反応が完了したら精製操作する。このために、触媒を保護ガス雰囲気下で濾別し、溶液をロータリーエバポレーター中で濃縮する。
生成物を、その後の工程において直接用いることができる。
【0126】
e:酸の調製
【化67】

10mmolのメチルエステルを、100mlのTHFに溶解し、固体の水酸化リチウム(13mmol、1.3当量)を、RTにて分割して加える。混合物をRTにて1時間撹拌し、その後40mlの水および100mlのMTBエーテルを加える。混合物を、HCl水溶液を用いてpH1に酸性化し、相を分離し、水性相をMTBで多数回抽出する。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレーター中で濃縮する。このようにして生成したカルボン酸を、その後の工程において直接用いる。
【0127】
2.エステル化
【化68】

例1と同様に、まず0.1molのカルボン酸を、最初に100gのトルエン中に導入し、24gのSOClと反応させ、生成した酸塩化物を、THF中の18gのソルビトールを用いてトリエチルアミンの存在下でエステル化する。
【0128】
例6
【化69】

例2と同様に、100gのTHF中の34gのサッカロースを、例5おけるようにして調製した0.1molの酸塩化物および10gのトリエチルアミンと反応させる。反応が完了したら、生成物の混合物を単離し、慣用の実験室方法により精製する。アシル化の程度は、より多くの酸塩化物(2〜20当量)を用いることにより増大させることができる。
【0129】
例7
【化70】

水素化ナトリウム(92g、2.3mol、1.36当量)を、1200mlのTHF中に懸濁し、0℃に冷却する。400mlのTHFに溶解したヘプタン−1,7−ジオール(224g、1.7mol)を、この懸濁液に滴加する(注:Hの発生)。反応混合物を室温に加温し、さらに3時間撹拌する。その後、臭化ベンジル(251.3ml、2.11mol、1.25当量)およびヨウ化テトラブチルアンモニウム(32g、85mmol、0.05当量)を加え、混合物を一晩(9時間)撹拌する。
精製操作のために、反応混合物を、1200mlの氷水を用いてクエンチし、有機相を分離し、水性相をMTBエーテルで2回抽出し、合わせた有機抽出物を飽和NaCl溶液で洗浄する。有機相を乾燥し、ロータリーエバポレーター中で濃縮して粗生成物を得、これをシリカゲル上で精製する。
【0130】
【化71】

200mlのTHFおよび10.15gのNaH(253mmol、1.2当量)を、窒素でフラッシュした1lの四口のガラス装置中に最初に導入し、撹拌しながら−25℃に冷却する。
7−ベンジルオキシヘプタン−1−オール(211mmol、1当量)を、100mlのTHFと混合し、30分かけて滴加し(50mlのTHFでリンスする)、この間内部温度を0〜5℃に保持する。次に、反応混合物を30分かけてRTに加温する。
【0131】
混合物を、RTにてさらに120分間撹拌し、その後−25℃に冷却する。二硫化炭素(32.1g、421.6mmol、2当量)を、10分間かけて滴加し、この間反応混合物は、0℃に加温される。
混合物を、0℃にてさらに2.5時間撹拌する。反応混合物の色は、淡褐色から褐色に変化する。
ヨウ化メチルを加えるために、混合物を−20℃に再び冷却し、その後MeI(35.9g、253mmol、1.2当量)を、5分かけて滴加する(強い熱の発生:−78℃で対向冷却する(counter-cool))。反応混合物をRTにゆっくりと加温し、この温度にてさらに24時間撹拌する。
【0132】
次に、精製操作のために、バッチを、約10%のNHCl溶液(200ml)を用いてクエンチする。
相を分離する。水相を100mlのMTBエーテルで2回洗浄する。有機相を合わせ、その後100mlの約10%の飽和NaCl溶液で1回洗浄し、相を分離し、NaSOを用いて乾燥し、濾過し、ロータリーエバポレーター中で蒸発乾固させる。
【0133】
【化72】

(HF)/Py(200ml、7.14mol、30当量)、およびその後400mlのDCM中のキサントゲン酸メチル(238mmol)を、−78℃にてDBH(211g、738mmol、3.1当量)を1000mlのDCMに懸濁させた懸濁液に順次加える。反応混合物を、−78℃にてさらに1時間撹拌し、撹拌しながら一晩ゆっくりと加温する(朝における温度は2℃である)。
反応混合物を19℃に加温し、その後この温度にて約1時間撹拌する。
その後これを、加水分解のために再び冷却する。
【0134】
640mlのNaHSO溶液および600mlの47%KOHを、最初に4lの四口フラスコ中に導入し、0℃に冷却する。その後、反応混合物を、真空の補助により四口フラスコ中に吸引する。
混合物全体を分割する。最高の温度は、20℃でなければならない。
暗赤色の反応溶液は、帯黄色の懸濁液となる。400mlの脱塩水中の十分な47%KOHを、pHが7に達するまでこの懸濁液に加える。懸濁液は、次第に薄くなる。
相を分離し、水性相をMTBエーテルで2回抽出する。採集した有機相を塩化ナトリウム溶液で1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、その後濃縮する。粗生成物を活性炭と共に撹拌し、石油エーテル中のカラムクロマトグラフィーにより精製する。
【0135】
【化73】

ベンジルエーテル(150mmol)を、エタノール(1000ml)中に回収し、活性炭上の5%パラジウム(0.1当量)を加える。水素雰囲気(増大した圧力)を適用した後、反応の進行を毎時TLCにより調査する。反応を完了するために、消費した触媒を濾別し、新たな触媒を再び加える。反応が完了したら、パラジウム触媒を濾別し、反応混合物を濃縮する。粗生成物を次の工程において直接用いる。
【0136】
【化74】

例1と同様にして、22.6mmolのアルコールを、四塩化炭素(80ml)、アセトニトリル(80ml)および水(100ml)を含む溶媒混合物に溶解し、次にメタ過ヨウ素酸ナトリウム(10.88g、50.8mmol、2.25当量)および塩化ルテニウム(III)(468mg、2.26mmol、0.1当量)を加え、反応混合物を、22℃〜26℃(RT)にて3時間撹拌する。次に、100mlのジクロロメタンを反応混合物に加え、相を分離し、水性相を各々の回において100mlのジクロロメタンでさらに2回後抽出する。合わせたジクロロメタン溶液を、硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、濾過し、溶媒を蒸留により除去する。
カルボン酸が、油状残留物として得られる。
【0137】
【化75】

例1と同様に、まず21gの7−トリフルオロメトキシヘプタン酸を、最初に100gのトルエン中に導入し、24gのSOClと反応させ、生成した酸塩化物を、THF中の18gのソルビトールを用いてトリエチルアミンの存在下でエステル化する。
【0138】
例8
【化76】

例2と同様にして、100gのTHF中の34gのサッカロースを、例7におけるようにして調製した0.1molの酸塩化物および10gのトリエチルアミンと反応させる。反応が完了したら、生成物の混合物を、慣用の実験室方法を用いて単離し、精製する。アシル化の程度は、より多くの酸塩化物(2〜20当量)を用いることにより増大させることができる。
【0139】
例A:
【化77】

例1におけるようにして調製した31gの塩化(E)−10−ペンタフルオロスルファニルデク−9−エンカルボニルを、100gのTHFに溶解し、2−ヒドロキシエタンスルホン酸Na塩(15g)およびトリエチルアミン(10g)を加え、混合物を、30℃にて6時間撹拌する。
生成物を単離するために、混合物を氷/メチルtert−ブチルエーテルに加え、水相をこの溶媒で抽出し、すべての有機相を蒸発させる。エタノールおよび次に1.2当量の水酸化ナトリウムを加える。混合物を短時間加温し、冷却後、生成した結晶を単離し、乾燥する。
【0140】
例B:
【化78】

例1におけるようにして調製した塩化(E)−10−ペンタフルオロスルファニルデク−9−エンカルボニルを、THF(100g)に溶解し、2−メチルアミノエタンスルホン酸Na塩(16g)およびトリエチルアミン(10g)を加え、混合物を撹拌する。生成物を単離するために、混合物を氷/メチルtert−ブチルエーテルに加え、水相を当該溶媒で抽出し、すべての有機相を蒸発させる。エタノールおよび次に1.2当量の水酸化ナトリウムを加える。混合物を短時間加温し、冷却後、生成した結晶を単離し、乾燥する。
【0141】
例C:
【化79】

例Aと同様にして、THF中の26gの塩化7−(3,3,3−トリフルオロプロポキシ)ヘプタノイルを、2−ヒドロキシエタンスルホン酸Na塩(15g)およびトリエチルアミン(10g)と反応させる。生成した結晶を単離し、乾燥する。
【化80】

例Bと同様にして、THF中の26gの塩化7−(3,3,3−トリフルオロプロポキシ)ヘプタノイルを、2−メチルアミノエタンスルホン酸Na塩(16g)およびトリエチルアミン(10g)と反応させる。生成した結晶を単離し、乾燥する。
【0142】
例D:
【化81】

例Aと同様にして、THF中の例7におけるようにして調製した23gの塩化7−(トリフルオロメトキシ)ヘプタノイルを、2−ヒドロキシエタンスルホン酸Na塩(15g)およびトリエチルアミン(10g)と反応させる。生成した結晶を単離し、乾燥する。
【0143】
【化82】

例Bと同様にして、THF中の23gの塩化7−(トリフルオロメトキシ)ヘプタノイルを、2−メチルアミノエタンスルホン酸Na塩(16g)およびトリエチルアミン(10g)と反応させる。生成した結晶を単離し、乾燥する。
【0144】
例E:
【化83】

例Aと同様にして、THF中の例5におけるようにして調製した34gの酸塩化物を、2−ヒドロキシエタンスルホン酸Na塩(15g)およびトリエチルアミン(10g)と反応させる。生成した結晶を単離し、乾燥する。
【0145】
【化84】

例Bと同様にして、THF中の例5におけるようにして調製した34gの酸塩化物を、2−メチルアミノエタンスルホン酸Na塩(16g)およびトリエチルアミン(10g)と反応させる。生成した結晶を単離し、乾燥する。
【0146】
例9:生化学的分解性の決定
化合物の生化学的分解性を、European Commission publication: Classification, Packaging and Labelling of Dangerous Substances in the European Union, Part II - Testing Methods, Annex V - Methods for the Determination of Physico-Chemical Properties, Toxicity and Ecotoxicity, Part B, Biochemical Degradability - Zahn-Wellens Test (C.9.)、1997年1月、353〜357頁に対応するZahn-Wellens試験により決定する。
バッチ容積:1.5l
活性化スラッジ濃度:1gの固体/l
スラッジの由来:Merck KGaA; Darmstadtの処理プラント(調整していない(not adapted))
用いる試験物質の量:DOCとして約100〜200mg/l
曝気:精製空気を用いる
試料の精製操作(work-up):濾過(ミディアム〜ハードフィルター)
DOCの決定:Dimatec機器を用いた差分法(difference method)による
【0147】
方法についてのさらなる詳細は、上記の刊行物およびまたOECD Guideline for the testing of chemicals, 第3章、degradation and accumulation, method 302 B, 1〜8頁、採用:1992年7月17日中に示されており、この内容は、この点において本出願の開示内容に明確に属する。
さらに、試験における化合物自体の分解に加えて、フッ化物定量によりフッ素含有基の分解をも観察する:
方法:イオンクロマトグラフィー
機器:Dionex 120
検出器のタイプ:電導度検出器
カラム:AS9HC溶離剤:炭酸ナトリウム溶液、9mmol/l流量:1ml/分
文献:EN ISO 10304-2
【0148】
例10:表面張力の決定
機器:Kruess張力計(モデルK12)
測定溶液の温度:20℃
用いる測定モジュール:リング
測定溶液の濃度:脱イオン水中約0.5〜3.0g/l
方法についてのさらなる詳細は、the European Commission publication: Classification, Packaging and Labelling of Dangerous Substances in the European Union, Part II - Testing Methods, Annex V - Methods for the Determination of Physico-Chemical Properties, Toxicity and Ecotoxicity, Part A, Surface Tension (A.5), 1997年1月、51〜57頁およびまたOECD Guideline for the testing of chemicals, section 1, physical-chemical properties, method 115, 1〜7頁、採用:1995年7月27日により示されており、この内容は、この点において本出願の開示内容に明確に属する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの基Yを含むポリオール類の脂肪酸エステル類またはスルホン化脂肪酸エステル類またはスルホン化脂肪酸アミド類であって、Yが、CF−(CH−O−、SF−、CF−(CH−S−、CFCFS−、[CF−(CHN−または[CF−(CH]NH−(式中aは0〜5の範囲から選択される整数を表す)、または、
【化1】

式中、
Rfは、CF−(CH−、CF−(CH−O−、CF−(CH−S−、CFCF−S−、SF−(CH−、[CF−(CHN−、[CF−(CH]NH−または(CFN−(CH−を表し、
Bは、単結合、O、NH、NR、CH、C(O)−O、C(O)、S、CH−O、O−C(O)、N−C(O)、C(O)−N、O−C(O)−N、N−C(O)−N、O−SOまたはSO−Oを表し、
Rは、1〜4個のC原子を有するアルキルを表し、
bは、0または1を表し、cは、0または1を表し、
qは、0または1を表し、ここでbおよびqからの少なくとも1つのラジカルは、1を表し、ならびに
rは、0、1、2、3、4または5を表す、
を表す、前記化合物。
【請求項2】
脂肪酸基が、飽和または不飽和であってもよく、4〜25個のC原子、好ましくは8〜22個のC原子を有することを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
基Yが、エステル官能基に対して末端の位置にあることを特徴とする、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
ポリオール基が、n=1、2、3、4または5である−O−CH−(CHOH)−CH−OH基、単糖基、二糖基またはオリゴ糖基から選択されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
基Yを含む脂肪酸基が少なくとも1回出現することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
基YがCF−(CH−O−を示し、ここでa=0、1、2、3、4または5、好ましくはa=0、1または2であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物。
【請求項7】
基YがSFを示すことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
基YがCF−(CH−S−を示し、ここでa=0、1、2、3、4または5、好ましくはa=0、1または2であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】
基YがCF−CF−S−を示すことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の化合物。
【請求項10】
基Yが[CF−(CHN−を示し、ここでa=0、1、2、3、4または5、好ましくはa=0、1または2であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の化合物。
【請求項11】
基Yが[CF−(CH]NH−を示し、ここでa=0、1、2、3、4または5、好ましくはa=0、1または2であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】
基Yが、
【化2】

式中、
Rfは、CF−(CH−、CF−(CH−O−、CF−(CH−S−、CFCF−S−、SF−(CH−、[CF−(CHN−、[CF−(CH]NH−または(CFN−(CH−を表し、
Bは、単結合、O、NH、NR、CH、C(O)−O、C(O)、S、CH−O、O−C(O)、N−C(O)、C(O)−N、O−C(O)−N、N−C(O)−N、O−SOまたはSO−Oを表し、
Rは、1〜4個のC原子を有するアルキルを表し、
bは、0または1を表し、cは、0または1を表し、
qは、0または1を表し、ここでbおよびqからの少なくとも1つのラジカルは、1を表し、ならびに
rは、0、1、2、3、4または5を表す、
を示すことを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の化合物の製造方法であって、請求項1〜12のいずれかにおいて定義した基Yを含む脂肪酸またはこの脂肪酸の誘導体を、ポリオールを用いてエステル化することを特徴とする、前記方法。
【請求項14】
スルホン化された基が、
−O−(CH−SO
式中、
o=1、2、3、4、5または6、好ましくは2または4であり、
M=金属カチオンである、
により記載されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項15】
金属カチオンが、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンまたはアンモニウムイオンであることを特徴とする、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
基YがCF−(CH−O−を示し、ここでa=0、1、2、3、4または5、好ましくはa=0、1または2であることを特徴とする、請求項14または15に記載の化合物。
【請求項17】
基YがSFを示すことを特徴とする、請求項14〜16のいずれかに記載の化合物。
【請求項18】
基YがCF−(CH−S−を示し、ここでa=0、1、2、3、4または5、好ましくはa=0、1または2であることを特徴とする、請求項14〜17のいずれかに記載の化合物。
【請求項19】
基YがCF−CF−S−を示すことを特徴とする、請求項14〜18のいずれかに記載の化合物。
【請求項20】
基Yが[CF−(CHN−を示し、ここでa=0、1、2、3、4または5、好ましくはa=0、1または2であることを特徴とする、請求項14〜19のいずれかに記載の化合物。
【請求項21】
基Yが[CF−(CHNH−を示し、ここでa=0、1、2、3、4または5、好ましくはa=0、1または2であることを特徴とする、請求項14〜20のいずれかに記載の化合物。
【請求項22】
基Yが、
【化3】

式中、
Rfは、CF−(CH−、CF−(CH−O−、CF−(CH−S−、CFCF−S−、SF−(CH−、[CF−(CHN−、[CF−(CH]NH−または(CFN−(CH−を表し、
Bは、単結合、O、NH、NR、CH、C(O)−O、C(O)、S、CH−O、O−C(O)、N−C(O)、C(O)−N、O−C(O)−N、N−C(O)−N、O−SOまたはSO−Oを表し、
Rは、1〜4個のC原子を有するアルキルを表し、
bは、0または1を表し、cは、0または1を表し、
qは、0または1を表し、ここでbおよびqからの少なくとも1つのラジカルは、1を表し、ならびに
rは、0、1、2、3、4または5を表す、
を示すことを特徴とする、請求項14〜21のいずれかに記載の化合物。
【請求項23】
請求項14〜22のいずれかに記載の化合物の製造方法であって、請求項1〜3または14〜22のいずれかにおいて定義した基Yを含む脂肪酸を、1〜6個のC原子を有するヒドロキシスルホン酸のナトリウム塩を用いてエステル化することを特徴とする、前記方法。
【請求項24】
請求項1〜12または14〜22のいずれかに記載の少なくとも1種の化合物を含む、組成物。
【請求項25】
それぞれの用途に適するビヒクルおよび任意にさらなる特定の活性化合物が存在することを特徴とする、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
組成物が、塗料またはコーティング調製物、消火組成物、潤滑剤、洗浄または清浄組成物、除氷剤または織物仕上げもしくはガラス処理のための疎水化剤であることを特徴とする、請求項24または25に記載の組成物。
【請求項27】
請求項24〜26のいずれかに記載の組成物の製造方法であって、請求項1〜12または14〜22のいずれかに記載の少なくとも1種の化合物を、好適なビヒクル、および任意にさらなる特定の活性化合物と混合することを特徴とする、前記方法。
【請求項28】
請求項1〜12または14〜22のいずれかに記載の化合物の、界面活性剤としての使用。
【請求項29】
請求項1〜12または14〜22のいずれかに記載の化合物の、疎水化剤または疎油化剤としての、特に織物、紙、ガラス、多孔質建築材料または吸着剤の表面改質における疎水化剤または疎油化剤としての使用。
【請求項30】
請求項1〜12または14〜22のいずれかに記載の化合物の、帯電防止剤としての、特に衣類、カーペットおよび敷物類などの織物、家具の張材および自動車の内装、不織布材料、革商品、紙および厚紙物品、木材および木材をベースとする材料、石、セメント、コンクリート、しっくいなどの鉱物基材、施釉または無釉タイル、土器、磁器などの陶磁器およびガラスの処理における、ならびにプラスチックおよび金属基材のための帯電防止剤としての使用。
【請求項31】
請求項1〜12または14〜22のいずれかに記載の化合物の、印刷インク、塗料、コーティングラッカー、写真コーティングなどの表面コーティング、フォトレジスト、最上部の反射防止コーティング、底部の反射防止コーティングなどの半導体フォトリソグラフィー用の特殊コーティングのための調製物における添加剤としての、または対応する調製物に添加するための添加剤調製物における使用。
【請求項32】
請求項1〜12または14〜22のいずれかに記載の化合物の、気泡安定剤としての、および/または成膜を支持するための、特に泡消火剤における使用。
【請求項33】
請求項1〜12または14〜22のいずれかに記載の化合物の、界面プロモーターまたは乳化剤としての、特にフッ素重合体を調製するための使用。
【請求項34】
請求項1〜12または14〜22のいずれかに記載の化合物の、抗菌活性化合物としての、特に抗菌性表面改質のための試薬としての使用。

【公表番号】特表2009−541400(P2009−541400A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517017(P2009−517017)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005839
【国際公開番号】WO2008/003444
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】