説明

フリーラジカル疾患予防治療用組成物

【課題】 副作用が少なく、体内において高いフリーラジカル消去活性を有し、しかも製薬安定性にも優れた、新しいフリーラジカル疾患予防治療用組成物を提供する。
【解決手段】 フラーレン類及びその誘導体から選択される1種以上を有効成分として含有するフリーラジカル疾患予防治療用組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーラジカル関与性の疾患に効力を示し、製剤安定性、生体内での安全性の高いフリーラジカル疾患予防治療用 用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、フラーレンをはじめとするカーボンナノ構造体が炭素材料の新しい展望を拓くものとして注目されており、電子材料や電極材料はもとより、その医療、医学への応用や健康増進等を目的とした応用への関心が高まっている。
【0003】
フラーレン分子は、炭素原子から構成され、各球体には32〜1000個またはそれ以上の炭素原子が含まれる。フラーレンに関するさらに詳細な情報は下記の文献を参照されたい:(i)スマリー(R.E.Smalley)、「原子および分子クラスターにおける超音波性炭素クラスタービーム」、ベルシュタイン(E.R.Berstein)編、物理理論化学、第68巻、エルセビール・サイエンス(ニューヨーク)、第1頁〜第68頁(1990年)、(ii)カール(R.F.Curl)ら、「フラーレン類」、サイエンティフィック・アメリカン、第32頁〜第41頁(1991年10月)、(iii)ディーデリッヒ(F.Diederich)ら、「高級フラーレン類:分離と特性決定」、サイエンス、第252巻、第548頁〜第551頁(1991年4月)、および(iv) スマリー、「巨大炭素球:バックミンスターフラーレンの歴史」、ザ・サイエンシズ、第31巻、第2号、第22頁〜第28頁(1991年3月〜4月)。
【0004】
このようなフラーレン類の中で、最も代表的なものはC60フラーレンであり、その構造は、フットボールを連想させる。他のフレレン類、特に高次フラーレンとしてのC70およびC84も存在する。そしてフラーレン 類は現在では一般に「バッキーボール(buckyball)」として知られている。なお、C60フラーレン分子は一般に、少量のC70フラーレンとC84フラーレンを不純物として含んでいる。フラーレン類の調製法並びにそれらの溶解度、結晶化度および色特性は多数の文献、特に、クレッチュマー(W.Kraetschmer)らの報文[ネイチャー、第347巻、第354頁〜第358頁(1990年)、およびケミカル・アンド・エンジニアリング・ニュース、第22頁〜第25頁(1990年10月)」に記載されている。
【0005】
フラーレンへの関心の高まりとともに、これまでにも医薬品や化粧品へフラーレンを応用することが検討され、具体的な提案もなされている。例えばフラーレンまたはフラーレン混合物を化粧品に配合すること(特許文献1)や、フラーレンの紫外線吸収効果を利用してサンケア用化粧 品組成物とすること(特許文献2)、フラーレンを光増感剤としてウイルスを光学的に不活性する方法(特許文献3)、またフラーレンを抗酸化剤として皮膚外用剤等に応用することなどが本発明者らにより提案されている(特許文献4)。
【特許文献1】特開平6−192039号公報
【特許文献2】特開平9−278625号公報
【特許文献3】特開平9−322767号公報
【特許文献4】特開2004−250690
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、高齢化社会の進展により成人病発生率が増加し、なかでも老化に伴う各種疾患が深刻化しつつある。成人病関連疾患のなかでも不整脈、動脈硬化、虚血性心疾患、心不全、心筋梗塞、肝障害、虚血性肝障害、消化器官障害、血管障害、膵障害、胆嚢障害、臓器移植障害、糖尿病、高血圧、臓器不全等は成人病の代表的な疾患であることから、これらの予防や治療のための多くの医薬品が開発されてきている。
【0007】
また、これらの疾患について、その基本原因又はその原因因子の一つとして、生体内フリーラジカルに起因する疾病(本発明ではこれをフリーラジカル疾患予防治療用という。)であることが指摘されてきている(「活性酸素と病態」井上編、学会出版センター、1992及び「抗酸化物質」二木他ま、学会出版センター、1994)。実際にも、これらのフリーラジカル疾患予防治療用を治療または予防する目的でフリーラジカル疾患予防治療用、そして治療用薬剤の開発がかなり以前より進められ、以下のような多数の医薬品成分が既に提案されている。
【0008】
例えば、SOD関連物質(Inoue, etv., Biochemistry,28,6619−6624,1989),ユビキノン製剤(特開昭57−42616)、ベンゾアゼピン誘導体(特開昭57−193462)、ピロリジノン誘導体(特開昭59−27823)、置換ビニル誘導体(特開昭60−28963)、オキサミド誘導体(特開昭59−163353)、フランカルボキサミド誘導体(特開昭59−190991)、フタルイミド誘導体(特開昭61−37766)、ドコサヘキサエン酸(特開平4−273817)、リノレン酸誘導体(特開昭61−44853)、キノリンオキシド誘導体(特開昭61−65869)、ヘテロ芳香族アミン誘導体(特開昭61−282377)、カルボスチリル誘導体(特開昭63−301821)、イソインドール誘導体(特開昭63−150276)、菌体生産物(特開平1−143868)、イミダゾールチオンカルボキサミド誘導体(特開平1−146820)、ジペンゾオキセピン誘導体(特開平3−176487)、プロピルアミン誘導体(特開平3−236378)、ファニルフタラジン誘導体(特開平4−211666)、タンニン酸誘導体(特開平1−25726)、グリチルレチン酸誘導体(特開平4−330088)等を挙げることができる。
【0009】
しかしながら、これらの化合物の一部はフリーラジカル消去作用を持っているが、製剤化の過程や生体中での安定性に問題があり、特に患部に到達する前に他の臓器でフリーラジカルを消去して、失活してしまうため必要な臓器へ有効成分を高濃度でデリバリーできないという問題があった。また、上記の医薬品成分は体内に投与すると頭痛、吐気、嘔吐、食欲不振、悪心、発疹、筋痙攣等の副作用を伴うという問題もあった。
【0010】
一方、副作用が少なく、高いフリーラジカル消去活性を持つ物質としてL−アスコルビン酸やトコフェロールなどの単体又はその誘導体が知られており、フリーラジカル疾患の予防、治療に用いられてきている。しかしながら、これらの抗酸化物質も極めて酸化されやすく不安定で、製剤化の過程、または製剤化された後においても酸化分解を受け易いため、医薬品製剤としての長期間の品質保持が困難であり、またこれらを含有する注射液剤等にしてもオートクレーブ処理等の加熱滅菌処理ができないため、生体内に静脈注射などの方法で安定な状態で取り込ませることができないという問題があった。また、これらの従来の抗酸化剤を経口又は静注投与しても、生体内では活性が消失しやすく、しかもすみやかに体外に代謝され易く、フリーラジカル消去効果が十分に発揮できないという問題があった。
【0011】
そこで本発明は、フラーレンの抗酸化剤としての皮膚外用剤等への応用という本発明者らのこれまでの知見を踏まえ、上記のような従来のフリーラジカル疾患の予防・治療に係わる薬物、薬剤の問題点を解消し、副作用が少なく、体内において高いフリーラジカル消去活性を有し、しかも製薬安定性にも優れた、新しいフリーラジカル疾患予防治療用組成物を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
最近、本発明者は成人病モデルとして、血管内皮細胞をin vitroで培養し、一時的低酸素状態にすることによりフリーラジカルを発生させ、これにフラーレン類を作用させた場合、細胞に発生するフリーラジカルが従来のビタミンC以上に抑制されることを確認した。さらにフラーレン類は安定性が格段に良好で生体内で低毒性で充分に効果を発揮できることを見出し本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明のフリーラジカル疾患予防治療用組成物は、上記の課題を解決するものとして以下のことを特徴としている。
【0014】
第1:フラーレン類及びその誘導体から選択される1種以上を有効成分として含有するフリーラジカル疾患予防治療用組成物。
【0015】
第2:フラーレン類がフラーレンの多量体、カーボンナノチューブ、及びそれらの誘導体並びにそれらの塩類から選択される1種以上である上記のフリーラジカル疾患予防治療用組成物。
【0016】
第3:フラーレン類がフラーレンの開裂体、フラーレンの分裂体、及びそれらの誘導体並びにそれらの塩類から選択される1種以上である上記のフリーラジカル疾患予防治療用組成物。
【0017】
第4:フラーレン類が次式で表される上記のいずれかのフリーラジカル疾患予防治療用組成物。
【0018】
R1mーFーR2m
(式中、FはCn(Cは炭素原子、nは32以上の整数)で示されるフラーレン、カーボンナノチューブ、及びそれらの多量体、開裂体、分裂体もしくはそれらの混合物であり、R1mは、Cnに結合するm個の置換基であり、それぞれ独立して、同一又は別異に、水酸基、その水酸基と無機酸もしくは有機酸とのエステル基、その水酸基と糖との配糖体基、その水酸基とケトンとのケタール基又はその水酸基とアルデヒドのアセタール基を示す。R2mは、Cnに結合するm個の原子であり、それぞれ独立して、同一又は別異に、又は1つの原子が2箇所以上の異なる炭素に結合していることを示す。mは0又は1以上の整数を示す。)
第5:フラーレン開裂体、分裂体が次式でのいずれかで表されるフラーレン類またはその構造を内在する分子の単体又は複合体である上記いずれかのフリーラジカル疾患予防治療用組成物。
【0019】
【化1】

【0020】
(式中、Cは炭素原子で示されるフラーレンの部分構造体であり2つ以上の炭素原子が共有結合で結合されていればよく(共有結合されていない炭素が存在する場合は式中でRnの表示がない場合もRnと結合することを示す)、Rnは、Cに結合するn個の置換基であり、それぞれ独立して、同一又は別異に、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、リン原子、水酸基、その水酸基と無機酸もしくは有機酸とのエステル基、その水酸基と糖との配糖体基、その水酸基とケトンとのケタール基又はその水酸基とアルデヒドのアセタール基を示す。nは0又は1以上の整数を示す。)
第6:フリーラジカル疾患が心筋梗塞、虚血性心疾患、心不全、狭心症、不整脈、動脈硬化症、肝臓脂質代謝障害、高脂血症、本態性高血圧、高血圧症、動脈硬化症、冠動脈硬化症、血栓症、閉塞性動脈硬化症、血管障害、抹消血管障害、胆汁うつ滞症、高コレステロール血症、膵障害、臓器不全、急慢性肝炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、消化器官障害、胆嚢症、糖尿病、関節炎治療剤、リュウマチ、肝不全、肝障害、虚血性肝障害、肝臓脂質代謝障害、胆嚢障害、臓器移植障害、糖尿病、中毒症、臓器移植障害、癌、虚血性再灌流障害、組織の老化、皮膚組織の色素沈着、皮膚組織の皴、歯槽膿漏、癌、皮膚組織の脂漏症、皮膚組織の日焼け、皮膚組織のニキビ、やけど、肥満、脱毛、精神病、痴呆症、パーキンソン病、HIV、風邪、インフルエンザ、もしくは感染症である上記いずれかのフリーラジカル疾患予防治療用組成物。
【発明の効果】
【0021】
以上のとおりの本発明のフリーラジカル疾患予防治療組成物によれば、酸化され易く、製剤化過程あるいは製剤化した後での品質維持が困難であった従来の抗酸化剤を主剤として用いるラジカル疾患薬に比較し、製剤中及び生体中でも活性を失わずに安定化しており、さらには安全度が高く副作用がほとんど見られず、優れたフリーラジカル消去活性を有していることから、広範囲なフリーラジカル疾患予防治療薬、特に各種の虚血性疾病に対して有効な活性を有する薬剤が提供される。社会問題化しているフリーラジカル疾患に対する予防または治療薬として広く有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0023】
本発明のフリーラジカル疾患予防治療組成物においては、有効成分あるいは有用成分は、前記のとおりのフラーレン 類であって、フラーレン、フラーレン 含酸素誘導体、並びに有機化合物により修飾もしくは包接された前記のフラーレンまたはフラーレン含酸素誘導体、そしてそれらの塩類のうちの少なくとも1種からなるものである。
【0024】
このフラーレン類のうちのフラーレンについては、C60、C70あるいはこれらの混合物をはじめとして各種のものであってよい。たとえばこの出願の発明のフラーレン には、メチレン鎖等のアルキレン鎖を介して複数のフラーレンが結合したものや、アルキレン鎖が、フラーレン骨格の異なる位置の炭素原子に結合するもの等であってもよい。フラーレン 60の誘導体としては、フラーレン分子一個に対して修飾基が1個から40個結合していればよく、たとえばフラーレン70の誘導体としては、フラーレン分子一つに対して修飾基が1個から50個結合していればよく、この修飾基は、各々独立に水酸基またはその水酸基と無機もしくは有機酸とのエステル基または糖との配糖体基、もしくは水酸基とケトンとのケタール基もしくはアルデヒドとのアセタール基であればよく、このフラーレン修飾化合物またはその塩及びそこから選択される少なくとも一種であればよい。さらにこの出願の発明のフラーレンは、C60フラーレン、C70フラーレン又はナノチューブフラーレンでもよく、それらから選択させる一種以上の混合物でも良い。また、フラーレンの末生成物であるカーボンブラック(フラーレン類を含むすす)が残存したフラーレンでもよく、フラーレン中のカーボンブラックの濃度が0〜98%重量のものであればよい。
【0025】
本発明に使用できるフラーレン類の例として以下の化学式で表されるフラーレン類を使用することができる。
【0026】
R1m−F−R2m
(式中、FはCn(Cは炭素原子、nは32以上の整数)で示されるフラーレン、カーボンナノチューブ、及びそれらの多量体、開裂体、分裂体もしくはそれらの混合物であり、R1mは、Cnに結合するm個の置換基であり、それぞれ独立して、同一又は別異に、水酸基、その水酸基と無機酸もしくは有機酸とのエステル基、その水酸基と糖との配糖体基、その水酸基とケトンとのケタール基又はその水酸基とアルデヒドのアセタール基を示す。R1mは、Cnに結合するm個の原子であり、それぞれ独立して、同一又は別異に、又は1つの原子が2箇所以上の異なる炭素に結合していることを示す。mは0又は1以上の整数を示す。)
また、本発明に使用できるフラーレン類は、フラーレンの多量体、カーボンナノチューブ、及びそれらの誘導体及びそれらの塩類から選択される1種以上の単体又は混合物、これらを修飾もしくは包接する有機化合物であってもよい。
【0027】
フラーレンの多量体の例としては、例えば次式のものが例示される。すなわち、京大の小松らのグループが青酸カリと粉砕用鉄球を鋼鉄のカプセルに入れて、毎分3500回の高速振動を与え合成に成功した、C60の二量体(C120)、や三量体(C180,下図)、Rubinらの合成したC62、Wudlらが合成したフラレンの窒素原子結合体(C59N)2、等がある。
【0028】
また、本発明に使用できるフラーレン類の誘導体の例としてはフッ素をフラーレンに作用させたC60F、C60F18などがある。
【0029】
【化2】

【0030】
また、本発明にはグラファイトの粉に金属を混ぜ込みレーザーを当てて蒸発させて合成される、例えば次式のような金属内包フラーレン(式中のMは金属原子を示す)も使用することができる。本発明に使用できる金属内包フラーレンの具体例としてはスカンジウム、ランタン、セシウム、チタン内包フラーレン等があるがこれらに限定されない。
【0031】
【化3】

【0032】
本発明に使用できるフラーレン類には、例えば次式のような原子内包フラーレン(式中の小球体は原子を示す)も使用することができる。
【0033】
具体例としては、Sc3NやSc2C2などを取り込んだ(Sc3N)@C80や(Sc2C2)@C84などがある。
【0034】
【化4】

【0035】
本発明に使用できるフラーレン類として、フラーレンの開裂体、フラーレンの分裂体、及びそれらの誘導体及びそれらの塩類から選択される1種以上の単体又は混合物がある。
【0036】
例えば本発明に使用できる、開裂フラーレンの例としては、次式のようなRubinらによって作り出されたオープンケージフラーレン、小松らによって合成された穴あきフラーレンなどがある。
【0037】
【化5】

【0038】
本発明に使用できるフラーレン類には、フラーレンを修飾もしくは包接、錯体化する有機化合物との複合体も含まれる。この有機化合物としては、有機オリゴマー、有機ポリマーおよび包接化合物または包接錯体が形成可能なシクロデキストリン(CD)やクラウンエーテルもしくはそれらの類縁化合物の1種または2種以上のものが好適なものとして例示される。
【0039】
有機オリゴマーや有機ポリマーとしては、たとえば、カルボン酸エステル類、アルコール類、糖類、多糖類、多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、等のポリアルキレングリコール又は多価アルコール類の重合体、デキストラン、プルラン、デンプン、ヒドロキシエチルデンプン及びヒドロキシプロピルデンプンのようなデンプン誘導体を含む非イオン性水溶性高分子、アルギン酸、ヒアルロン酸、キトサン、キチン誘導体、並びにこれらの高分子のアニオン性又はカチオン性誘導体及びこれらの高分子グリセリン及び脂肪酸類、油類、炭酸プロピレン、ラウリルアルコール、エトキシル化ひまし油、ポリソルベート類、及びこれらのエステル類又はエーテル類、及びこれらの重合体、及びこれらのポリエステル重合体類、ポリビニルピロリドン等のピロリドン重合体類、不飽和アルコール重合体類のエステル類またはエーテル類およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体等のものがフラーレン 又はその誘導体に結合したものが好ましく、それらの一種以上の混合物であってもよい。なかでも、ポリエチレングリコール(PEG)等のポリアルキレングリコール、PVP、等の各種のものが好ましいものとして例示される。PEG、PVP等のポリマーの場合には、その平均分子量については、一般的には、2000〜100,000程度が好ましい、フラーレンまたはフラーレン含酸素誘導体との比率としては、モル比として10/1以下程度とする事が考慮される。
【0040】
また、本発明に使用できるフラーレン類には、例えば次式に示したようなシクロデキストリン等の包摂体やBoydらが合成したポルフィリン錯体(ジョーズポルフィリン)、二重ナノリングシクロファンフラーレン錯体、中村らが合成したフラーレン−フェロセン誘導体やフラーレン−フェニル誘導体Ph5C60、フラーレン−ビフェニル誘導体等も含まれる。
【0041】
【化6】

【0042】
また、本発明で使用できるフラーレン誘導体には、フラーレン骨格の炭素原子に直接的に、あるいはアルキレン鎖等の炭素鎖を介して酸素原子が結合するものが考慮される。たとえば水酸化率が50/モル・フラーレン以上の−OH基が直接結合した水酸化フラーレン等が例示される。
【0043】
本発明で使用できるフラーレンの開裂体、分裂体としては、以下の化学式で表されるフラーレン類の開裂体、分裂体またはその構造を内在する分子の単体又は複合体であればよい。
【0044】
【化7】

【0045】
式中、Cは炭素原子で示されるフラーレンの部分構造体であり2つ以上の炭素原子が共有結合で結合されていればよく(共有結合されていない炭素が存在する場合は式中でRnの表示がない場合もRnと結合することを示す)、Rnは、Cに結合するn個の置換基であり、それぞれ独立して、同一又は別異に、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、リン原子、水酸基、その水酸基と無機酸もしくは有機酸とのエステル基、その水酸基と糖との配糖体基、その水酸基とケトンとのケタール基又はその水酸基とアルデヒドのアセタール基を示す。nは0又は1以上の整数を示す。)
さらに本発明に使用可能な分裂フラーレンの例としては、例えば次式のような、C60フラーレンの断片構造を有するコランニュレン(C2010)などがある。
【0046】
【化8】

【0047】
たとえば以上のとおりの有効成分、有用成分としてのフラーレン類とともに、この出願の発明においては、炭素数10以上の長鎖カルボン酸、またはそのエステルもしくは塩を含有することが有効でもある。さらには、後述のとおりの油剤、界面活性剤、顔料、保湿剤、賦形剤や基剤、細胞賦活剤等を配合してもよい。
【0048】
フラーレン含有の外用組成物に水分を含む場合のそのpHは、フラーレン、フラーレン誘導体、フラーレン包接化合物、又はその塩類の原体のpHにより異なるが、通常pHが3から10の範囲にあればフラーレン及びその誘導体を安定に配合することができるので好ましい。
【0049】
フラーレン、フラーレン誘導体、フラーレン包接化合物、又はその塩類の原体の20℃、0.5%重量水溶液のpHを測定し小数点以下の数字を四捨五入した数字をn(nは0から14までの整数)とするとき、nが3から10の場合は、安定な外用組成物のpHは、n±2の範囲でかつpH3から10の範囲でpHを調整するとよい。また、フラーレン、フラーレン誘導体、フラーレン修飾または包接化合物、又はその塩類の原体の20℃、0.5%重量水溶液のpHの四捨五入した数字をnとするとき、nが3以下の場合は、安定なフラーレン外用剤のpHは3から4の範囲とし、nのpHが10以上の場合はpH9から10とするのがよい。いずれにしても安定なフラーレン 含有外用組成物のpHは3から10の範囲とするのが好ましい。
【0050】
本発明のフリーラジカル疾患予防治療組成物が効果を発揮することのできる適用症には以下のフリーラジカルが原因の一部に直接或は間接的に関与するフリーラジカル疾患がある。具体的にはフリーラジカル疾患が心筋梗塞、虚血性心疾患、心不全、狭心症、不整脈、動脈硬化症、肝臓脂質代謝障害、高脂血症、本態性高血圧、高血圧症、動脈硬化症、冠動脈硬化症、血栓症、閉塞性動脈硬化症、血管障害、抹消血管障害、胆汁うつ滞症、高コレステロール血症、膵障害、臓器不全、急慢性肝炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、消化器官障害、胆嚢症、糖尿病、関節炎治療剤、リュウマチ、肝不全、肝障害、虚血性肝障害、肝臓脂質代謝障害、胆嚢障害、臓器移植障害、糖尿病、中毒症、臓器移植障害、癌、虚血性再灌流障害、組織の老化、皮膚組織の色素沈着、皮膚組織の皴、癌、皮膚組織の脂漏症、皮膚組織の日焼け、皮膚組織のニキビ、やけど、肥満、脱毛、精神病、痴呆症、パーキンソン病、HIV、風邪、インフルエンザ、感染症である。
【0051】
本発明のフリーラジカル疾患予防治療組成物の適用症である虚血性再灌流障害とは具体的には、虚血性心疾患、虚血性再潅流心筋障害、虚血性肝障害、虚血性再潅流肝臓障害、虚血性再潅流腎臓障害、虚血性再潅流膵臓障害、虚血性再潅流胆嚢障害、虚血性再潅流循環器障害、虚血性再潅流消化器障害、虚血性再潅流筋障害、虚血性再潅流血管障害、虚血性再潅流眼障害または虚血性再潅流皮膚障害がある。
【0052】
これらの疾患や以下に示す疾患が、フリーラジカルに起因又はその原因因子の一つが生体内フリーラジカルであることは、「活性酸素と病態」井上編、学会出版センター、1992及び「抗酸化物質」二木他編、学会出版センター、1994及び「現代医療」vol.25,No.10,1993及びこれらの書籍に記載された文献等により報告されている。
【0053】
本発明のフリーラジカル疾患予防治療用組成物の対象となるフリーラジカル疾患の一つに、組織を交換するために行われる臓器移植時の臓器不全及び組織障害がある。即ち、心臓、肝臓、腎臓、膵臓、胆嚢、胸腺、胃、肺、腸、皮膚等の臓器移植手術、冠動脈再疎通術等の血管及びそのバイパス手術及び以下に記載する疾病や事象により細胞や組織に流入する血流が停止または遅滞することに伴う臓器障害及びこれらの血流停止後の再灌流時又はその後に発生する細胞や組織の損傷、弊死や臓器不全に対する障害などを挙げることができ、これらの疾患にも効果がある。また、本発明のフリーラジカル疾患予防治療用組成物の対象となる他のフリーラジカル疾患としては、本発明の対象となる上記臓器に付随する血管の血栓症、貧血症、阻血症、血管硬化症、血管収縮症、出血(OBAYASHI,PROC.SOC.EXP.BIOL.WED.,196,196,164−169,1990)等に起因する血流速度の物理的低下や停止に伴う細胞や組織の損傷、弊死や血管を含む臓器の疾患及び不全などが挙げられ、これらにも効果がある。
【0054】
また、本発明のフリーラジカル疾患予防治療用組成物の対象となるその他のフリーラジカル疾患としては、血管内の酸素圧低下等に起因する酸欠及び農薬や一酸化炭素中毒症等の化学物質による細胞又は組織の酸欠障害組織の一時的酸欠等も含むことができ、この後の輸血等の適当な処置又は事象により血流が再び正常又はそれに近い状態で細胞や組織に送り込まれたときに見出される細胞や組織の損傷、弊死や血管を含む臓器の疾患及び不全などを挙げることができ、これらにも効果がある。
【0055】
また、本発明のフリーラジカル疾患予防治療用組成物が特に効果があり、その対象となるフリーラジカル疾患の虚血性再灌流疾患類の具体例としては、虚血再灌流心筋障害(NARITA.W.J,J.LAB.CLIN.MED.,110,153−158,1987、Smith,L.L.Phil.Trans.R.Soc.Lond.,311,647−657,1985)、虚血再灌流肝臓障害(INOUE,M,INMUCOSAL IMMUNOLOGY,527−530,ELSEVIER,AMSTERDAM,1990、中浜、肝臓,32:1110−1123,1991、竹川、肝臓,30:459−467,1989、白杉、日消外会誌、26:358,1993)虚血再灌流腎臓障害、虚血再灌流膵臓障害(ISAJI,S.:MIE MED.J.,35:109−123,1985)、虚血再灌流胆嚢障害(TAOKA,GASTROENT.JPN.,26:633−644,1991)、虚血再灌流循環器障害、虚血再灌流消化器障害(岩井、日消会誌,87:1662−1669,1990、NAITO,Y.,FREE RED.RES.COMMS.,16:13.5,1992)、虚血再灌流筋障害、虚血再灌流血管障害、虚血再灌流眼障害等の虚血再灌流皮膚障害などの虚血再灌流障害を挙げることができ、その予防、治療のいずれにも効果がある。
【0056】
さらにまた、本発明のフリーラジカル疾患予防治療用組成物は、活性酸素により誘発する以下のような各種障害にも効果がある。その具体例としては、ベーチェット病、放射線障害、抗ガン剤の副作用、細菌性ショック、悪液質、自己免疫疾患、火傷、ヘルペスウィルス、成人T細胞白血病、チオレドキシン症候群、外傷性ショック、菌萎縮性側索硬化症、無性心筋梗塞等である。
【0057】
本発明のフリーラジカル疾患予防治療用組成物は経口剤、注射液剤または点滴液剤、外用剤、貼布薬その他のいかなる形状の医薬品にも応用することができる。その主たる有効成分はフラーレン類では、シクロデキストリン包摂C60フラーレン、水酸化率が50/モル・フラーレン 以上の−OH基が直接結合した水酸化C60及びC70フラーレン、及びそのアルカリ金属塩がある。アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等が挙げられる。
【0058】
本発明のフリーラジカル疾患予防治療用組成物、注射剤等の溶液中のフラーレン類の分子団の直径を10ナノメーター以下にして均一な解離性溶液を得ることができ、これにより毛細血管等での血流停止の危険性を回避できることが判明した。この結果本発明のフラーレン類を含むフリーラジカル疾患予防治療用組成物は、マウス、ラット、ビーグル犬での急性毒性試験では、LD50=1000mg/kg以上と毒性は低く、またラットに使用した亜急性毒性試験では最大500mg/kg/dayの投与でも異常が認められなかった。これらの結果から、安全性の高いものであることが確認された。
【0059】
そして、本発明の組成物に配合されるフラーレン類の濃度は、本発明のフリーラジカル疾患予防治療用組成物に対して、全重量に対し0.01〜1000ppmを配合するが、血液中での良好な溶解性を考慮すると0.1〜100ppmが好ましい。
【0060】
本発明のフリーラジカル疾患予防治療用組成物に安定剤、効果活性剤等の目的で配合され得る物質の例としては、一般に添加剤として使用されているメトラゾール、エトプシド、コール酸類、ジメチルサルフォキシド、アデソシンリン酸類、ポリエチレングリコール類、ポリブチレングリコール類等の水溶性高分子化合物類、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム等の無機の塩類、クエン酸、リンゴ酸、リン酸、エデト酸、シュウ酸、乳酸、酪酸、酢酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸、シアル酸、アミノ酸等の有機酸類及びこれらの有機酸塩類、またはプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類から選択される1種又は2種以上の混合物を挙げることができる。
【0061】
前記、コール酸類とは、胆汁酸、デヒドロコール酸、デオキシコール酸又はそのナトリウム、カリウム等のアルカリ土類金属塩から選択される。前記アデノシンリン酸とは、アデノシン−5’3リン酸、アデノシン−5’2リン酸、アデニル酸等のアデノシンのリン酸エステル類より選択される。
【0062】
本発明のフリーラジカル疾患予防治療用 用組成物の剤型としては投与方法の簡便さ、効果から経口剤、外用剤と注射剤が望ましい。本発明の薬剤は、上記の純物質又はそれらの混合物を公知の医薬用担体と組み合わせて製剤化することができ、効果が最も高く投与法の簡便な注射剤、点滴用剤の静脈注射による投与法が望ましい。
【0063】
静脈注射により本発明の薬剤を投与する場合は、本発明の注射液をヒトの体重1kg当たり0.1〜50ccを、注射液中の溶解物質量の合計が1g/kg/時間以下の速度になるように静脈等へ静脈注射又は点滴する。注射液の溶解物質量の合計が20%以上の高濃度になる場合は低濃度の液から開始し、徐々に濃度を上げて投与することもできる。本発明のフラーレン類の投与量は製剤種、投薬法によっても異なるが、通常1μmg/kg体重/dayから10mg/kg体重/dayを1回又は数回に分けて投与する。また、特に臓器移植、心臓の血管バイパス手術等手術に伴う手術時の重度の虚血再灌流時及び重度の貧血、低血圧、心臓停止、酸欠症等の後の再灌流、再酸素化等の全身性の虚血再灌流時には、本発明のフラーレン類及び開裂フラーレン類及びその誘導体塩を100mg/kg体重/day以上投与すると、より大きな効果を期待することができる。
【0064】
本発明のフリーラジカル疾患予防治療用組成物は、該組成物は、本発明のフラーレン類及び開裂フラーレン類及びその誘導体塩の種類及び量を調整して添加するか、又は本発明のフラーレン類及び開裂フラーレン類及びその誘導体塩に浸透圧を調整しうる添加物を添加することにより、液剤の主成分であるフラーレン類及び開裂フラーレン類及びその誘導体塩の組織細胞に対する浸透性が増大し、より大きな効果を得ることができる。浸透圧を調整しうる添加物としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の無機塩類、ATP、リンゴ酸、クエン酸などの有機酸類又はそのナトリウム等の有機酸塩類、グルコース、フルクトース等の糖類等の中から選択される1種又は2種以上の複合物など、生理的に許容可能な添加物であれば特に限定されない。
【0065】
また、本発明のフリーラジカル疾患予防治療用 用組成物に抗酸化剤を添加することにより成人病治療又は予防効果を高めることができる。抗酸化剤としては、ビタミンB、L−アスコルビン酸、トコフェロール及びL−アスコルビン酸−2−リン酸やその他のサッカロ−L−アスコルビン酸の様な抗酸化ビタミン誘導体、ユビキノン、尿酸、システイン、グルタチオン、グルタチオンペルオキシターゼ、SOD、クエン酸類、リン酸類、ポリフェノール類、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、チオジプロピオン酸ジラウリル、コトコリエノール、リポ酸、トリルビグアナイド、ノルジヒドログアヤレチン酸、パラヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、ステアリン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、没食子酸オクチル、没食子酸プロピル、カロチノイド、フラボノイド、タンニン、リグナン、サポニン、リンゴエキスやチョウジエキス等、核酸類、漢方薬類、海草類、無機物及び日本薬局法に抗酸化機能を保持する記述がある既存の抗酸化剤より選択される1種又は2種以上の混合物を併用して添加することもできる。
【0066】
本発明のラジカル疾患予防治療組成物は医薬品、医薬部外品、化粧品、機能性食品への応用が可能である。本発明の組成物は、粉剤、液剤、錠剤、ゲル剤、乳剤、カプセル剤等の全ての剤形をとることができ、具体的には、飲み薬、注射薬、軟膏、座薬、外用剤等に応用することができる。さらに具体的にはローション、ミルクローション、クリーム、パック、シャンプー、リンス、育毛剤、養毛剤、染毛剤、整髪料、歯磨き、うがい液、入浴剤等の製品として利用することができ、特に限定されるものではない。
【0067】
本発明における化粧品は、例えばファンデーション、白粉、アイシャドウ、アイライナー、アイブロー、チーク、口紅、ネイルカラー等のメイクアップ化粧料;乳液、クリーム、ローション、カラミンローション、サンスクリーン剤、サンタン剤、アフターシェーブローション、プレシェーブローション、パック料、アクネ対策化粧料、エッセンス等の基礎化粧料;シャンプー、リンス、コンディショナー、ヘアカラー、ヘアトニック、セット剤、養毛料、パーマネント剤等の頭髪化粧料;ボディパウダー、デオドラント、脱毛剤、セッケン、ボディシャンプー、入浴剤、ハンドソープ、香水等に分類され、各々の化粧料として用いることができる。
【0068】
本発明の剤型としては、特に限定はなく、二層状、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、ジェル状、スプレー、ムース状、油性、固形状、シート状、パウダー状等従来公知の剤型を使用することができるものである。
【0069】
本発明は、有効成分として生体内で高いラジカルスカベンジング活性を示すフラーレン類を主成分とすることにより、製剤中及び保存中に安定で、生体に対し副作用が少ない安全で効果的なラジカル疾患予防治療組成物を提供することができた。
【実施例】
【0070】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を説明する。もちろん、これらの例により発明が限定されることはない。
A:組成物の製造
(実施例1)
シクロデキストリン包摂C60フラーレン及びシクロデキストリン包摂C70フラーレンを重量比8:2で均一に混合したものを1000ccの医薬用リンゲル液に178ppmの濃度で完全に溶解した後、注射液製造用除菌フィルターで滅菌濾過し、本発明の静脈注射用フリーラジカル疾患予防治療薬として注射溶液を製造した。
(実施例2)
水酸化率87%(モル換算)の水酸化C60フラーレン及び水酸化率61%(モル換算)の水酸化C70フラーレンを重量比8:2で均一に混合したものを1000ccの医薬用リンゲル液に5ppmの濃度で完全に溶解した後、注射液製造用除菌フィルターで滅菌濾過し、本発明の静脈注射用フリーラジカル疾患予防治療薬として注射溶液を製造した。
(実施例3)
ビタミンC60バイオリサーチ社製商品名ラジカルスポンジ(フラーレン濃度200ppm)のフラーレンを1%濃度で1000ccの医薬用リンゲル液に完全に溶解した後、注射液製造用除菌フィルターで滅菌濾過し、本発明の静脈注射用フリーラジカル疾患予防治療薬として注射溶液を製造した。
(実施例4)
ビタミンC60バイオリサーチ社製フラーレン誘導体C60,C70、C120,(C59N)2,C180,C62,C60F,C60F18,オープンケージフラーレン、穴あきフラーレン、コランニュレン11種をそれぞれ10ppmづつ配合した濃度110ppmのPVPフラーレン複合物を1%濃度で1000ccの医薬用リンゲル液に完全に溶解した後、注射液製造用除菌フィルターで滅菌濾過し、本発明の静脈注射用フリーラジカル疾患予防治療薬として注射溶液を製造した。
(実施例5)
シクロデキストリン包摂C60フラーレン及びシクロデキストリン包摂C70フラーレンを重量比8:2で均一に混合したもの25%重量、水酸化率87%(モル換算)の水酸化C60フラーレン及び水酸化率61%(モル換算)の水酸化C70フラーレンを重量比8:2で均一に混合したもの25%重量、ビタミンC60バイオリサーチ社製商品名ラジカルスポンジ(フラーレン濃度200ppm)のフラーレン50%重量の組成で混合したフラーレン類の複合物を1%重量で精製水90%、グリセリン4%、ブチレングリコール5%重量の中に分散溶解させフラーレン類の水溶性外用剤及び化粧品ローションとした。
(実施例6)
シクロデキストリン包摂C60フラーレン及びシクロデキストリン包摂C70フラーレンを重量比8:2で均一に混合したもの25%重量、水酸化率87%(モル換算)の水酸化C60フラーレン及び水酸化率61%(モル換算)の水酸化C70フラーレンを重量比8:2で均一に混合したもの25%重量、ビタミンC60バイオリサーチ社製商品名ラジカルスポンジ(フラーレン濃度200ppm)のフラーレン45%重量及びコランニュレン(C2010)5%重量の組成で混合したフラーレン類の複合物をマンニトールに1%重量濃度で希釈し、心筋梗塞、心不全、狭心症、不整脈、動脈硬化症、肝臓脂質代謝障害、高脂血症、本態性高血圧、高血圧症、動脈硬化症、冠動脈硬化症、血栓症、閉塞性動脈硬化症、血管障害、抹消血管障害、胆汁うつ滞症、高コレステロール血症、膵障害、臓器不全、急慢性肝炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、消化器官障害、胆嚢症、糖尿病、関節炎治療剤、リュウマチ、肝不全、肝障害、肝臓脂質代謝障害、胆嚢障害、臓器移植障害、糖尿病、中毒症、臓器移植障害、癌、組織の老化、皮膚組織の色素沈着、皮膚組織の皴、歯槽膿漏、癌、皮膚組織の脂漏症、皮膚組織の日焼け、皮膚組織のニキビ、やけど、肥満、脱毛、精神病、痴呆症、パーキンソン病、HIV、風邪、インフルエンザ予防治療用の経口投与用粉剤とした。
B:評価
(効果試験)前記、実施例のフリーラジカル疾患予防治療薬からなる試験区と対照区(リンゲル液のみ)の注射液を使用し、本発明の医薬用組成物の効果を以下の実験により比較確認した。
【0071】
(心疾患に対する効果試験)ラットを開胸し、左冠動脈前下行枝を15分間結紮した後に血流を再開した。あらかじめ試験区として冠動脈閉塞15分前に5mg/kgの本発明実施例1の医薬用組成物をラットに静脈内投与し、対照区として、リンゲル液のみを試験区と同様に注入した。実験前より抹消血中のフリーラジカル依存性化学発光をケミカルルミネセンスで測定したところ、再灌流直後より有意なフリーラジカルの上昇が確認された。冠閉塞中は心電図モニター上明確な不整脈はみられなかったが、血流再開すると数秒以内に対照区のみに心疾患の指標である明確な不整脈が発現した。しかし、本発明の実施例1の注射液を静脈内投与した区では、対照区にみられた不整脈は明確に抑えられ、本発明のフリーラジカル疾患予防治療用 用組成物の心疾患に対する効果が証明された。
【0072】
(肝障害に対する効果試験)ラット門脈及び冠動脈を20分間遮断後に60分間血流を再開後、肝臓をグルタールアルデヒドで灌流固定し電子顕微鏡で観察した。また、実験前より抹消血中のフリーラジカル依存性化学発光をケミカルルミネセンスで測定したところ血流再開直後より有意なフリーラジカルの上昇が確認された。あらかじめ試験区としてラット門脈及び冠動脈遮断15分前に5mg/kgの本発明の実施例2の注射液をラットに静脈内投与し、対照区としてリンゲル液のみを試験区と同様に注入した。電子顕微鏡観察の結果、対照区ではDisse腔、肝細胞間隔及び微小胆管が著名に拡大し、細胞内に多数の空胞が認められ明らかに肝臓細胞に病態が認められたが、本発明の注射液を投与した試験区の電子顕微鏡観察では、肝臓の組織構築は正常に保たれており、本発明のフリーラジカル疾患予防治療用組成物の肝疾患に対する効果が証明された。
【0073】
(膵疾患に対する効果試験)ラット冠動脈を20分間遮断後に60分間血流を再開した後、膵疾患モデルを作成し冠動脈遮断前及び血流再開後4時間目の血液中のアミラーゼを測定した。実験前より抹消血中のフリーラジカル依存性化学発光をケミカルルミネセンスで測定したところ血流再開直後より有意なフリーラジカルの上昇が確認された。あらかじめ試験区としてラット冠動脈遮断15分前に5mg/kgの本発明のフリーラジカル疾患予防治療組成物である実施例3の注射薬をラットに静脈内投与し、対照区としてリンゲル液のみを試験区と同様に注入した。血中アミラーゼ測定の結果、対照区では血中アミラーゼレベルは遮断前のレベルに比べ優位に高く最大6000U/dlの個体が認められ、明らかに膵疾患の病態が認められたが、本発明の注射薬を投与した試験区の血中アミラーゼレベルは最大個体で1000U/dlであり、遮断前の正常な状態に比較し若干のアミラーゼの上昇傾向が認められたが、対照区に比較し優位に低く、本発明フリーラジカル疾患予防治療用組成物の膵疾患に対する効果が証明された。
【0074】
(腎障害に対する効果試験)ラット冠動脈を20分間遮断後に60分間血流を再開した後、腎臓組織に障害を与えた腎疾患モデルを作成し、冠動脈遮断前及び血流再開後5日間の平均尿中蛋白を測定した。実験前より抹消血中のフリーラジカル依存性化学発光をケミカルルミネセンスで測定したところ、血流再開直後より有意なフリーラジカルの上昇が確認された。あらかじめ試験区としてラット冠動脈遮断15分前に5mg/kgの実施例4の注射薬をラットに静脈内投与し、対照区としてリンゲル液のみを試験区と同様に注入した。再灌流後5日間の平均尿中蛋白測定の結果、対照区では尿中蛋白レベルは遮断前のレベルに比べ優位に高く明らかに腎疾患の病態が認められたが、本発明の注射薬を投与した試験区の尿中蛋白レベルは、遮断前の正常な状態に比較し若干の尿中蛋白の上昇傾向が認められたが、対照区に比較し優位に低く、本発明のフリーラジカル疾患予防治療用 用組成物の腎疾患に対する効果が証明された。
【0075】
(臓器不全症に対する効果試験)ラット冠動脈閉塞モデルによって全身虚血を5分間加え、その後血流を再開した。実験前より抹消血中のフリーラジカル依存性化学発光を昭和電工製ケミカルルミネセンスで測定したところ、血流再開直後より有意なフリーラジカルの上昇が確認された。あらかじめ試験区としてラット冠動脈遮断15分前に5mg/kgの実施例3の注射薬をラットに静脈内投与し、対照区としてリンゲル液のみを試験区と同様に注入した。血流再開後も本発明のフリーラジカル関与性疾病薬を同量5日間、毎日1回注入し10日後に解剖し、心臓、肝臓、腎臓、膵臓、胆嚢の細胞壊死指数を45Caオートラジオグラフィ/イメージアナライザーにより求めた。対照区のラットでは虚血後各臓器で多数の細胞が壊死する遅発性細胞死が認められたが、本発明の注射薬を注入したネズミ(1群10匹)では、各細胞の壊死が顕著に防止されていることが確認された。
【0076】
(臓器不全症に対する比較効果試験)ラット冠動脈閉塞モデルによって、全身虚血を5分間加えその後血流を再開した。実験前より抹消血中のフリーラジカル依存性化学発光を昭和電工製ケミカルルミネセンスで測定したところ、血流再開直後より有意なフリーラジカルの上昇が確認された。あらかじめ試験区としてラット冠動脈遮断15分前に5mg/kgの実施例2の注射液をラットに静脈内投与し、対照区としてヒトCu−Zn型SODを配合したリンゲル液を試験区と同様に注入した。血流再開後も本発明の前記の医薬用組成物を同量5日間、毎日1回注入し10日後に解剖し、心臓、肝臓、腎臓、膵臓、胆嚢の細胞壊死指数を45Caオートラジオグラフィ/イメージアナライザーにより求めた。対照区のラットでは、45Caオートラジオグラフィ/イメージアナライザーで見ると、虚血後各臓器で多数の細胞が壊死する遅発性細胞死が認められたが、本発明の注射液を注入したネズミ(1群8匹)では、各細胞の壊死が顕著に防止されることが確認された。
【0077】
(皮膚疾患に対する比較効果試験)フリーラジカルが関与するといわれる皮膚の疾患である日光による色素沈着、皮膚の皴、口腔内の歯槽膿漏、皮膚組織の脂漏症、ニキビ、やけど、脱毛で悩む男女513人中224人に対してコントロール区としてマンニトールのみを、残りの289人の患者には試験区として実施例5の水溶性外用剤を朝晩の一日2回5cc(一日当たり10cc)を三ヶ月間塗布又は歯槽膿漏の場合に限りうがい液とともに口腔内に3分間滞留させて口をすすぎ一週間おきに症状を記録させたところ、試験区の289人中193人に何らかの改善傾向が認められ21人に悪化傾向が見られた。これに対して213人のコントロールの患者では25人に何らかの改善傾向が見られ19人に悪化傾向が認められた。残りの患者は、病状に変化は無かった。それぞれの病状についても統計学的に有効性をそれぞれ検討したところ試験区では同様に治療効果が認められたが、対照区では変化が無かった。これらの結果から本発明のラジカル疾患予防治療薬には上記皮膚疾患に対して効果があることが確認された。








【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラーレン類及びその誘導体から選択される1種以上を有効成分として含有するフリーラジカル疾患予防治療用組成物。
【請求項2】
フラーレン類がフラーレンの多量体、カーボンナノチューブ、及びそれらの誘導体並びにそれらの塩類から選択される1種以上である請求項1のフリーラジカル疾患予防治療用組成物。
【請求項3】
フラーレン類がフラーレンの開裂体、フラーレンの分裂体、及びそれらの誘導体並びにそれらの塩類から選択される1種以上である請求項1のフリーラジカル疾患予防治療用組成物。
【請求項4】
フラーレン類が次式で表される請求項1から3のいずれかのフリーラジカル疾患予防治療用組成物。
R1m−F−R2m
(式中、FはCn(Cは炭素原子、nは32以上の整数)で示されるフラーレン、カーボンナノチューブ、及びそれらの多量体、開裂体、分裂体もしくはそれらの混合物であり、R1mは、Cnに結合するm個の置換基であり、それぞれ独立して、同一又は別異に、水酸基、その水酸基と無機酸もしくは有機酸とのエステル基、その水酸基と糖との配糖体基、その水酸基とケトンとのケタール基又はその水酸基とアルデヒドのアセタール基を示す。R2mは、Cnに結合するm個の原子であり、それぞれ独立して、同一又は別異に、又は1つの原子が2箇所以上の異なる炭素に結合していることを示す。mは0又は1以上の整数を示す。)
【請求項5】
フラーレン開裂体、分裂体が次式でのいずれかで表されるフラーレン類またはその構造を内在する分子の単体又は複合体である請求項2から4のいずれかのフリーラジカル疾患予防治療用組成物。
【化1】

(式中、Cは炭素原子で示されるフラーレンの部分構造体であり2つ以上の炭素原子が共有結合で結合されていればよく(共有結合されていない炭素が存在する場合は式中でRnの表示がない場合もRnと結合することを示す)、Rnは、Cに結合するn個の置換基であり、それぞれ独立して、同一又は別異に、水素原子、炭素原子、酸素原子、窒素原子、リン原子、水酸基、その水酸基と無機酸もしくは有機酸とのエステル基、その水酸基と糖との配糖体基、その水酸基とケトンとのケタール基又はその水酸基とアルデヒドのアセタール基を示す。nは0又は1以上の整数を示す。)
【請求項6】
フリーラジカル疾患が心筋梗塞、虚血性心疾患、心不全、狭心症、不整脈、動脈硬化症、肝臓脂質代謝障害、高脂血症、本態性高血圧、高血圧症、動脈硬化症、冠動脈硬化症、血栓症、閉塞性動脈硬化症、血管障害、抹消血管障害、胆汁うつ滞症、高コレステロール血症、膵障害、臓器不全、急慢性肝炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、消化器官障害、胆嚢症、糖尿病、関節炎治療剤、リュウマチ、肝不全、肝障害、虚血性肝障害、肝臓脂質代謝障害、胆嚢障害、臓器移植障害、糖尿病、中毒症、臓器移植障害、癌、虚血性再灌流障害、組織の老化、皮膚組織の色素沈着、皮膚組織の皴、歯槽膿漏、癌、皮膚組織の脂漏症、皮膚組織の日焼け、皮膚組織のニキビ、やけど、肥満、脱毛、精神病、痴呆症、パーキンソン病、HIV、風邪、インフルエンザ、もしくは感染症である請求項1から5のいずれかのフリーラジカル疾患予防治療用組成物。


【公開番号】特開2006−160664(P2006−160664A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−354271(P2004−354271)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(503272483)ビタミンC60バイオリサーチ株式会社 (16)
【Fターム(参考)】