説明

フロアコーティング剤組成物

【課題】微小粉塵吸着性、耐スリップ性、及び優れた作業性、とりわけ良好な乾燥性及び硬化性を有する、室温硬化性のフロアコーティング剤組成物を提供する。
【解決手段】ケイ素原子1個あたり平均0.9〜1.1個の炭化水素基がケイ素原子に結合し、およびケイ素原子に結合した水酸基を1分子あたり少なくとも2個有するポリオルガノシロキサン樹脂を含有し、0.10kgf以上の滑り抵抗値を有する、室温硬化性のフロアコーティング剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアコーティング剤組成物、詳しくは、微小粉塵吸着性、耐スリップ性及び優れた作業性を有する、室温硬化性のフロアコーティング剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコーン系コーティング剤は、表面光沢性および防汚性を有することから、床材の保護及び美観を保持するためのコーティング剤として多用されている(特許文献1及び2)。しかしながら、上記コーティング剤を施工した床面に降下した花粉、塵埃、ダニの糞およびダニの死骸等の微小粉塵は、上記コーティング剤の埃付着防止性のために床面に吸着されず、再び空気中に飛散、浮遊することとなるので、室内の空気が清浄化されることはなかった。また、上記コーティング剤を施工した床面は、滑り易い表面を有するため、居住者が転倒する等の問題があった。さらに、上記のコーティング剤の施工は、通常、コーティング剤の塗布後、数時間〜半日程度の乾燥を必要とするため、施工期間の長期化や、乾燥時間短縮用の機材が搬入できない狭小空間における床に施工することができない等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−209548号公報
【特許文献2】特開2006−307124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、微小粉塵吸着性、耐スリップ性、及び優れた作業性、とりわけ良好な乾燥性及び硬化性を有する、室温硬化性のフロアコーティング剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、フロアコーティング剤組成物中にシラノール基を有するポリオルガノシロキサン樹脂を用い、該組成物の滑り抵抗値を制御することによって、微小粉塵吸着性及び耐スリップ性を有する、室温硬化性のフロアコーティング剤組成物を提供し得ることを見出した。また、特定の硬化触媒及び溶剤を用いることによって、フロアコーティング剤組成物に優れた作業性および高い安全性を付与し得ることを見出した。
すなわち、本発明には、以下の実施態様が含まれる。
[1]ケイ素原子1個あたり平均0.9〜1.1個の炭化水素基がケイ素原子に結合し、およびケイ素原子に結合した水酸基を1分子あたり少なくとも2個有するポリオルガノシロキサン樹脂を含有し、0.10kgf以上の滑り抵抗値を有する、室温硬化性のフロアコーティング剤組成物。
[2]前記炭化水素基はメチル基である、[1]に記載のフロアコーティング剤組成物。
[3]前記ポリオルガノシロキサン樹脂は、1000〜50000の重量平均分子量を有する、[1]または[2]に記載のフロアコーティング剤組成物。
[4]硬化触媒としてアミノ系シランカップリング剤および/またはその部分加水分解物を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載のフロアコーティング剤組成物。
[5]調整剤として、一般式:
Si(OR4−c
〔式中、
およびRは、それぞれ一価の炭化水素基であり、
Cは、0または1である〕
で示されるシラン化合物および/またはその部分加水分解物を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載のフロアコーティング剤組成物。
[6]脂肪族炭化水素系溶媒および/または脂環式炭化水素系溶媒とアルコールとの混合物を溶剤として含有する、[1]〜[5]のいずれかに記載のフロアコーティング剤組成物。
[7]アレルゲン不活化剤を含む、[1]〜[6]のいずれかに記載のフロアコーティング剤組成物。
[8]アレルゲン不活化剤はポリフェノールである、[7]に記載のフロアコーティング剤組成物。
【発明の効果】
【0006】
本発明のフロアコーティング剤組成物は、優れた微小粉塵吸着性及び耐スリップ性を有するため、床材に好適に適用することができる。また、本発明のフロアコーティング剤組成物は、優れた作業性、とりわけ良好な乾燥性および硬化性を有するので、既に居住している空間や狭小空間における床に施工することができ、また、急速に硬化することがないので容易に補修作業を行うことができる。さらに、本フロアコーティング剤組成物は、有機金属系触媒、例えば有機錫化合物等を含まないので、有機金属系触媒を含むフロアコーティング剤組成物より高い安全性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の室温硬化性のフロアコーティング剤組成物は、ケイ素原子1個あたり平均0.9〜1.1個の炭化水素基がケイ素原子に結合し、およびケイ素原子に結合した水酸基を1分子あたり少なくとも2個有するポリオルガノシロキサン樹脂を含んでなる。
本発明に用いるポリオルガノシロキサン樹脂は、RSiO 1/2 単位、RSiO単位、RSiO 3/2 単位およびSiO 2 単位の1種または2種以上から構成される樹脂状の反応性ポリオルガノシロキサンである。ここで、Rは、ケイ素原子に結合した炭化水素基であり、好ましくは1価の置換または非置換の炭化水素基である。Rとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、ビニル基、アリル基などのアルケニル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、およびシクロヘキシル基、シクロオクチル基などのシクロアルキル基、またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子をハロゲン原子、シアノ基などで置換した基、例えばクロロメチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基などが例示される。本発明においては、溶剤への溶解性の観点からメチル基が特に好ましい。
【0008】
本発明によるフロアコーティング剤組成物は、ポリオルガノシロキサン樹脂中のケイ素原子1個に結合した炭化水素基数(以下、R/Si比と称する)が平均0.9〜1.1個、好ましくは平均0.9〜1.05個となるように上記のポリオルガノシロキサン樹脂の1種または2種以上を含有する。上記R/Si比が0.9未満であると、ポリオルガノシロキサン樹脂の合成が困難となり、また、ポリオルガノシロキサン樹脂の保存安定性が悪くなる。上記R/Si比が1.1を越えると、耐スリップ性に劣る皮膜となり、また、塗膜のレベリング性も悪くなる。
【0009】
本発明に用いるポリオルガノシロキサン樹脂は、ケイ素原子に結合した水酸基(以下、シラノール基と称する)を1分子中に少なくとも2個有する。本発明に用いるポリオルガノシロキサン樹脂のシラノール基含有量は通常、ポリオルガノシロキサン樹脂全量を基準として、0.1〜5重量%である。上記シラノール基含有量は、以下の方法により算出することができる。
ポリオルガノシロキサン樹脂を300℃で2時間加熱し、発生した水分の量を、電量滴定式水分測定装置を用いて測定する。シラノール基含有量を、以下の式:
シラノール基含有量(%)={(発生水分量×34/18)/シリコーン樹脂重量}×100
に従って算出する。
【0010】
また、上記ポリオルガノシロキサン樹脂は、皮膜形成性、硬化性および作業性の観点から、好ましくは1000〜50000、より好ましくは3000〜30000、さらに好ましくは5000〜15000の重量平均分子量を有する。本発明における重量平均分子量とは、屈折率検出器を用いたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)によるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0011】
本発明に用いるポリオルガノシロキサン樹脂の製造方法は、既知の方法によって、例えば、出発原料として、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、テトラクロロシラン、メチルトリアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、トリメチルアルコキシシランおよびテトラアルコキシシラン等から選択される加水分解性シラン化合物の1種またはこれらの2種以上の混合物を有機溶媒存在下で加水分解し、縮合反応させた後、溶媒を除去することによって容易に製造することができる。
【0012】
本発明によるフロアコーティング剤組成物中のポリオルガノシロキサン樹脂の含有量は、フロアコーティング剤組成物全量を基準として、好ましくは5重量%以上、より好ましくは15重量%以上である。また、上記ポリオルガノシロキサン樹脂の含有量は、フロアコーティング剤組成物全量を基準として、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。ポリオルガノシロキサン樹脂の含有量が5重量%より少ない場合は、充分な皮膜強度を有する皮膜の形成が難しく、また、耐久性の乏しい皮膜となるおそれがある。またポリオルガノシロキサン樹脂の含有量が30重量%より多い場合は、レベリング性や作業性が悪くなるおそれがある。
【0013】
本発明のフロアコーティング剤組成物は、上記のポリオルガノシロキサン樹脂に加えて、硬化触媒を含んでなる。
本発明に用いる硬化触媒としては、アミノ系シランカップリング剤、その部分加水分解物およびこれらの混合物が挙げられる。上記アミノ系シランカップリング剤としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ系シランカップリング剤が挙げられ、これらを単独で使用してよく、またはこれらの2種以上を併用してもよい。入手が容易で、良好な硬化性を示し、また接着性向上効果が大きいことから、3−アミノプロピルトリエトキシシランおよびN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを用いることが好ましい。
【0014】
本発明によるフロアコーティング剤組成物中の硬化触媒の含有量は、ポリオルガノシロキサン樹脂全量を基準として、好ましくは1〜20重量%以上、より好ましくは3〜10重量%の量である。上記硬化触媒の含有量が20重量%より多い場合は、硬化性が悪化し、多湿化において皮膜が白化するなどのおそれがある。また、上記硬化触媒の含有量が1重量%より少ない場合は、作業性が悪化し、短時間でコーティング溶液がゲル化などを起こすおそれがあり、また、床材との密着が充分発現しなくなるおそれがある。
【0015】
また、本発明によるフロアコーティング剤組成物は、作業性および硬化性等の調整のために、調整剤として、以下の一般式:
Si(OR4−c
〔式中、
およびRは、それぞれ一価の炭化水素基であり、
Cは、0または1である〕
で示されるシラン化合物および/またはその部分加水分解物を含むことができる。
上記シラン化合物としては、アルコキシシランが挙げられ、好ましくはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランおよびテトラエトキシシランであり、これらを単独で使用してよく、またはこれらの2種以上を併用してもよい。
【0016】
本発明のフロアコーティング剤組成物中の上記調整剤の含有量は、ポリオルガノシロキサン樹脂全量を基準として、0〜100重量%、より好ましくは30〜80重量%である。調整剤を上記範囲内の含有量で用いることにより、フロアコーティング剤組成物の作業性および硬化性を好ましく調整することができる。
【0017】
本発明のフロアコーティング剤組成物は、必要に応じて、溶剤および/またはアレルゲン不活化剤等の添加剤を含んでいてよい。
本発明に用いる溶剤としては、脂肪族炭化水素系溶媒および/または脂環式炭化水素系溶媒とアルコールとの混合物が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素系溶媒および/または脂環式炭化水素系溶媒としては、好ましくは初留点範囲60℃〜200℃の炭化水素、より好ましくは初留点範囲100℃〜150℃の炭化水素が挙げられる。上記脂肪族炭化水素系溶媒および/または脂環式炭化水素系溶媒の初留点が60℃よりも低いと溶媒の揮発性が早すぎ充分な作業性が確保することができなくなり、また、基材にコーティング後、風乾時に皮膜が白化するおそれがある。また、上記脂肪族炭化水素系溶媒および/または脂環式炭化水素系溶媒の初留点が200℃よりも高いと溶媒が塗膜中に残存するので硬化性が悪くなり、また、表面がムラになり易くなる。
【0018】
上記アルコールとしては、炭素数1〜6のアルコール、より好ましくは炭素数2〜4のアルコールが挙げられるが、なかでもイソプロピルアルコールが、比較的臭気がマイルドであり、揮発性が高く、また炭化水素溶媒と併用した場合にポリオルガノシロキサン樹脂の溶解性が良好であることから特に好ましい。
【0019】
上記炭化水素とアルコールとの混合物は、炭化水素とアルコールとの重量比が、好ましくは1:0.2〜5、より好ましくは1:0.8〜1.2である。
上記溶剤は、フロアコーティング剤組成物全重量を基準として、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上の量で使用することができる。溶剤の使用量が上記範囲内であると、塗工性、レベリング性および乾燥性などの点で有利である。
【0020】
上記アレルゲン不活化剤としては、タンニン酸、カテキン、没食子等のポリフェノール類とその類似物、茶抽出物、種々の植物抽出油分、カチオン系界面活性剤、アルミニウム塩やジルコニウム塩、銀系化合物、水膨潤性粘土鉱物、コロイダルシリカ、ハイドロキシアパタイトが挙げられるが、これらに限定されない。本発明のフロアコーティング剤組成物に用いるアレルゲン不活化剤としては、タンニン酸等のポリフェノールが好ましい。本発明のフロアコーティング剤組成物にアレルゲン不活化剤を含ませることにより、床面に吸着された花粉やアレルギー物質等を不活化し、居住者等にアレルギー反応が生じないようにすることができる。
【0021】
上記アレルゲン不活化剤は、フロアコーティング剤組成物全重量を基準として、好ましくは0.001重量%〜10重量%、より好ましくは0.1重量%〜5重量%の量で使用することができる。上記アレルゲン不活化剤の含有量が0.001重量%未満であると、アレルゲンの不活化効果が充分に得られず、10重量%を超えると、その増量に見合った効果が得られなくなる。
上記アレルゲン不活化剤は、必要に応じて、単独で、または2種以上の混合物の状態で本発明のフロアコーティング剤組成物に含ませることができる。
【0022】
その他の添加剤としては、艶消し剤、紫外線吸収剤、着色剤、レベリング剤等が挙げられるが、これらに限定されない。
これらの添加剤は、フロアコーティング剤としての本来の性能を損なわない範囲の添加量で使用することができる。
【0023】
本発明のフロアコーティング剤組成物は、好ましくは、上記のポリオルガノシロキサン樹脂と、硬化触媒、溶剤およびアレルゲン不活化剤を含む硬化剤とから構成される二成分型フロアコーティング剤組成物、より好ましくは上記のポリオルガノシロキサン樹脂と、硬化触媒、溶剤、アレルゲン不活化剤およびアルコキシシラン系調整剤を含む硬化剤とから構成される二成分型フロアコーティング剤組成物として使用することができる。
【0024】
本発明のフロアコーティング剤組成物は、有機金属系触媒、例えば有機錫化合物等を含まないので、より高い安全性を示す。また、本発明のフロアコーティング剤組成物は、有機金属系触媒を使用しないにも拘わらず良好な硬化性を示す。
【0025】
本発明のフロアコーティング剤組成物は、滑り抵抗値が、0.10kgf以上、好ましくは0.11kgf、より好ましくは0.12kgf以上であるので、微小粉塵吸着性および耐スリップ性を有する。
また、本発明のフロアコーティング剤組成物は、乾燥時間が45分〜90分、硬化時間が45分〜24時間であり、塗布から1時間経過した後でもアセトンで除去することができるので、フロアコーティング剤組成物を床面に施工する際の作業性、特に乾燥作業性、補修作業性が良好である。
【0026】
本発明のフロアコーティング剤組成物は、良好な接着性を有するので、複合フローリング材、WPC床材等の床面に対して好ましく適用することができる。
【0027】
本発明のフロアコーティング剤組成物は、上記床面に塗布し、次いで、乾燥、硬化させることによって適用することができる。
本発明のフロアコーティング剤組成物は、従来既知の塗布方法、例えばワックス用コテ刷毛、ワクサー、場合によってはウエスを利用することにより、上記の床面に塗布することができる。
【0028】
また、本発明のフロアコーティング剤組成物は、従来既知の乾燥方法、例えば自然乾燥させることにより、乾燥、硬化させることができる。
【実施例】
【0029】
以下、次に実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない
【0030】
[フロアコーティング剤組成物の調製]
実施例1乃至4および比較例1乃至6
表1に示す重量部数の各成分を用いて、以下の手順でフロアコーティング組成物を製造した。先ず、ポリオルガノシロキサン樹脂、脂肪族炭化水素溶媒およびイソプロピルアルコールを混合し、70℃で1時間加熱攪拌することによって、ポリオルガノシロキサン樹脂を溶媒中に完全に溶解させた。次に、残りの各成分を添加、混合し、フロアコーティング組成物を得た。
なお、ポリオルガノシロキサン樹脂中のシラノール基含有量は、ポリオルガノシロキサン樹脂を300℃で2時間加熱し、発生した水分の量を、電量滴定式水分測定装置を用いて測定し、以下の式:
シラノール基含有量(%)={(発生水分量×34/18)/シリコーン樹脂重量}×100
に従って算出した。
【0031】
【表1】

【0032】
(注1)CHSiO 3/2 単位100モル%を有し、シラノール基含有量3.4%を有するポリオルガノシロキサン樹脂、重量平均分子量5500、R/Si比1.0
(注2)CHSiO 3/2 単位100モル%を有し、シラノール基含有量2.2%を有するポリオルガノシロキサン樹脂、重量平均分子量9000、R/Si比1.0
(注3)CHSiO 3/2 単位100モル%を有し、シラノール基含有量1.2%を有するポリオルガノシロキサン樹脂、重量平均分子量12000、R/Si比1.0
(注4)CHSiO 3/2 単位95モル%および(CHSiO単位5モル%を有し、シラノール基含有量2.1%を有するポリオルガノシロキサン樹脂、重量平均分子量8000、R/Si比1.05
(注5)ポリオルガノシロキサン樹脂2のシラノール基をメチルトリメトキシシランで封止したメトキシ基含有ポリオルガノシロキサン樹脂、R/Si比1.0
(注6)99.5重量部のポリオルガノシロキサン樹脂2および0.5重量部のポリジメチルシロキサンジオール(粘度50mPa・s)の混合物のシラノール基をメチルトリメトキシシランで封止したメトキシ基含有ポリオルガノシロキサン樹脂、R/Si比1.05
(注7)CHSiO 3/2 単位87モル%および(CHSiO単位13モル%を有し、シラノール基含有量1.7%を有するポリオルガノシロキサン樹脂、重量平均分子量7000、R/Si比1.13
(注8)99.5重量部のポリオルガノシロキサン樹脂2および0.5重量部のポリジメチルシロキサンジオール(粘度50mPa・s)の混合物、R/Si比1.05
(注9)モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、SILQUEST A−1100、3−アミノプロピルトリエトキシシラン
(注10)モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、SILQUEST TEOS PURE、テトラエトキシシラン
(注11)初留点範囲115〜140℃の脂肪族炭化水素溶媒
【0033】
上記のように調製した各フロアコーティング剤組成物について、以下の性能試験を行った。その結果を表2および表3に示す。
【0034】
[性能試験方法]
1.滑り抵抗値
各フロアコーティング剤組成物を複合フローリング材上にコテ刷毛で塗布し、72時間室温で硬化させた。次いで、綿製ウエスで包んだ約150gのおもりを、硬化したフロアコーティング剤組成物上に置き、デジタル式プッシュゲージで押しながら移動させた。該おもりの移動の際にデジタル式プッシュゲージに記録された数値を読み取った。
【0035】
2.乾燥時間
各フロアコーティング剤組成物を複合フローリング材上にコテ刷毛で塗布した。次いで、綿製ウエスで包んだ4cmの接地面積を有する約650gのおもりを、塗布面上に乗せた。塗布面におもりによる痕跡が残らなくなるまでの時間を測定した。
【0036】
3.密着性
各フロアコーティング剤組成物を、複合フローリング材上にコテ刷毛で塗布し、72時間室温で乾燥、硬化させた。その後、JIS K 5600−5−7に従うクロスカット法により評価した。
判定基準:
JIS K 5600−5−7による試験結果の分類が0または1の場合:○
JIS K 5600−5−7による試験結果の分類が2、3、4または5の場合:×
【0037】
5.花粉吸着性
各フロアコーティング剤組成物を、複合フローリング材上にコテ刷毛で塗布し、72時間室温で乾燥、硬化させた。該複合フローリング材を約3×8cmにカットし、試験体とした。該試験体の塗布面上に、0.02〜0.03gのスギ花粉を秤量した。次いで、試験体を反転させ、塗布面上の花粉を滑り落とした。その後、試験体を再度反転し、塗布面上に残ったスギ花粉を秤量した。初期のスギ花粉の量に対する試験体の塗布面上に残ったスギ花粉の量を花粉吸着性として求めた。
【0038】
6.補修作業性
各フロアコーティング剤組成物を、複合フローリング材上にコテ刷毛で塗布し、90分間室温で乾燥、硬化させた。その後、アセトンを含浸させたウエスを用いて、塗布したフロアコーティング剤組成物を拭き取る
判定基準:
フロアコーティング剤組成物を除去することができた場合:○
フロアコーティング剤組成物を除去することができなかった場合:×
【0039】
【表2】

【0040】
以上の結果から、実施例1乃至6において製造した本発明によるフロアコーティング剤組成物は、滑り抵抗値が0.12kgf以上であり、花粉吸着性が64.5%以上であるのに対し、比較例1乃至4で製造した本発明によらないフロアコーティング剤組成物は滑り抵抗値が0.09kgf以下であり、花粉吸着性が51.2%以下であった。従って、本発明のフロアコーティング剤組成物が優れた微小粉塵吸着性および耐スリップ性を有することがわかる。
また、実施例1乃至4において製造した本発明によるフロアコーティング剤組成物は、乾燥時間が45分であり、塗布1時間後でもアセトンにより除去することができるので、従来のフロアコーティング剤組成物よりも乾燥時間が短縮され、良好な施工性を有する。これに対し、比較例1乃至4で製造した本発明によらないフロアコーティング剤組成物は、乾燥時間が10分であり、塗布1時間後にはアセトンにより除去することができないので、施工性が不十分である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素原子1個あたり平均0.9〜1.1個の炭化水素基がケイ素原子に結合し、およびケイ素原子に結合した水酸基を1分子あたり少なくとも2個有するポリオルガノシロキサン樹脂を含有し、0.10kgf以上の滑り抵抗値を有する、室温硬化性のフロアコーティング剤組成物。
【請求項2】
前記炭化水素基はメチル基である、請求項1に記載のフロアコーティング剤組成物。
【請求項3】
前記ポリオルガノシロキサン樹脂は、1000〜50000の重量平均分子量を有する、請求項1または2に記載のフロアコーティング剤組成物。
【請求項4】
硬化触媒としてアミノ系シランカップリング剤および/またはその部分加水分解物を含む、請求項1〜3のいずれかに記載のフロアコーティング剤組成物。
【請求項5】
調整剤として、一般式:
Si(OR4−c
〔式中、
およびRは、それぞれ一価の炭化水素基であり、
Cは、0または1である〕
で示されるシラン化合物および/またはその部分加水分解物を含む、請求項1〜4のいずれかに記載のフロアコーティング剤組成物。
【請求項6】
脂肪族炭化水素系溶媒および/または脂環式炭化水素系溶媒とアルコールとの混合物を溶剤として含有する、請求項1〜5のいずれかに記載のフロアコーティング剤組成物。
【請求項7】
アレルゲン不活化剤を含む、請求項1〜6のいずれかに記載のフロアコーティング剤組成物。
【請求項8】
アレルゲン不活化剤はポリフェノールである、請求項7に記載のフロアコーティング剤組成物。

【公開番号】特開2012−12477(P2012−12477A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149835(P2010−149835)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【出願人】(000221111)モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 (257)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】