説明

フロントエンドモジュールの搭載構造

【課題】 車体への取付作業が容易で且つ確実な位置決めができるフロントエンドモジュールの搭載構造を提供する。
【解決手段】 フロントフェンダー61の後側係合部65は、フロントフェンダー61の前部下縁から前方斜め下方に延びる弾性を有する舌片69であり、フロントエンドモジュール1の後側取付部83は、フロントエンドモジュール1の搭載時にフロントフェンダー61の舌片69を案内する、平面視が略S字状に形成された切欠き87であるため、フロントエンドモジュール1を搭載する際に、切欠き87が舌片69に摺接しながらフロントエンドモジュール1のフェンダー合わせ部9aが案内され、搭載作業をスムーズに行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントエンドモジュールをフロントフェンダー等の車体部材に取り付ける搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
フロントバンパーを車両前部に配設する場合、例えば、予めフロントフェンダーにブラケットを締結し、該ブラケットにフロントバンパーの側部を取り付ける方法が採用されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
また、近年、ラジエータサポートにフロントバンパーやヘッドランプ等を一体的に取り付けたフロントエンドモジュールを採用する技術が開発されている。このフロントエンドモジュールは、車両の組立工程におけるメインラインとは別途に設けられたサブラインにて組み付けられたのち、メインラインにおいて、助力装置等で吊り上げた状態で作業者が車体に搭載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−200797号公報
【特許文献2】実用新案登録第2530897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来例においては、ラジエータサポートに助力装置を掛止させ、このラジエータサポートを上方に持ち上げることによって、フロントエンドモジュール全体を吊り上げる。ここで、バンパーがフロントエンドモジュールに組み付けられている場合は、バンパー単体の形状や大きさがばらつき、このばらつき量に応じて、フロントエンドモジュールの外形寸法等が変化するため、フロントエンドモジュールを車体に搭載する際の取付作業工数が多大にかかった。
【0006】
そこで、本発明は、車体への取付作業が容易で且つ確実な位置決めができるフロントエンドモジュールの搭載構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るフロントエンドモジュールの搭載構造は、フロントエンドモジュールを構成するバンパーの側部上縁に取付部を設け、フロントフェンダーの前部下縁に、前記取付部に係合する係合部を設け、前記フロントエンドモジュールを車両後方に向けて移動させ、前記取付部をフロントフェンダーの係合部に係合させることによって、フロントエンドモジュールをフロントフェンダーに搭載するフロントエンドモジュールの搭載構造であって、前記フロントエンドモジュールの取付部を、バンパーの側部上縁の車両後方側に形成された後側取付部と、該後側取付部の前部に配置された前側取付部とから構成する一方、前記フロントフェンダーの係合部を、前記フロントエンドモジュールの後側取付部に係合する後側係合部と、前記前側取付部に係合する前側係合部とから構成し、前記フロントエンドモジュールの後側取付部に、フロントフェンダーの後側係合部を案内しながら係合させるガイド機能をもたせる一方、前記フロントエンドモジュールの前側取付部に、フロントフェンダーの前側係合部の係合位置を決める位置決め機能をもたせたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るフロントエンドモジュールの搭載構造によれば、前記フロントエンドモジュールの後側取付部に、フロントフェンダーの後側係合部を案内しながら係合させるガイド機能をもたせる一方、前記フロントエンドモジュールの前側取付部に、フロントフェンダーの前側係合部の係合位置を決める位置決め機能をもたせているため、フロントエンドモジュールを車両後方に向けて移動させる際、後側取付部は後側係合部によって案内されながらスムーズに移動する一方、前側取付部は前側係合部に係止されてその係合位置を確実に保持される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態によるフロントエンドモジュールの斜視図である。
【図2】図1のフロントエンドモジュールの分解斜視図である。
【図3】図2のA部を拡大して示す斜視図である。
【図4】図3のB部を拡大して示す斜視図である。
【図5】バンパーの裏面側を示す斜視図である。
【図6】ラジエータサポートの支持部材に、バンパーの係合部材を取り付ける状態を示す斜視図である。
【図7】図6のC−C線による断面図である。
【図8】図7のD−D線による断面図である。
【図9】バンパーをラジエータサポートに取り付けている途中の状態を示す、図8に対応する断面図である。
【図10】バンパーをラジエータサポートに取り付けた後で、かつフロントエンドモジュールを吊り上げた状態を示す、図8に対応する断面図である。
【図11】バンパーをラジエータサポートに取り付けた後の状態を示す、図8に対応する断面図である。
【図12】バンパーの係合部材を開いて、ラジエータサポートの支持部材から外している状態を示す斜視図である。
【図13】フロントエンドモジュールを示す斜視図である。
【図14】フロントエンドモジュールの支持部にスリンガーブラケットを装着している状態を示す斜視図である。
【図15】フロントエンドモジュールをフロントフェンダーに搭載する状態を示す斜視図である。
【図16】フロントエンドモジュールの取付部とフロントフェンダーの係合部を拡大して示す斜視図である。
【図17】図16のE−E線による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0011】
まず、本発明に係るフロントエンドモジュールの組付けについて説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態によるフロントエンドモジュール1の斜視図、図2は図1のフロントエンドモジュール1の分解斜視図である。
【0013】
これらの図1,2に示すように、ラジエータサポート3の前部には、オイルクーラ5、バンパーレインフォースメントパネル7及びバンパー9がこれらの順に取り付けられている。また、ラジエータサポート3の左右両端のランプ孔11には、ヘッドランプ13が設けられている。一方、ラジエータサポート3の車両後方側には、ラジエータ15やファン17が配設されている。また、バンパー9のフロントグリル部には支持突起93が、ラジエータサポート3には取付面95が形成されている。
【0014】
図3は図2のA部を拡大して示す斜視図、図4は図3のB部を拡大して示す斜視図である。
【0015】
ラジエータサポート3の左側端部に形成されたランプ孔11の下部には、図4に示す支持部材19が形成されている。該支持部材19は、ラジエータサポート3の側面から車幅方向外側、即ち左方向に突出する支持部材本体部21と、該支持部材本体部21の先端に形成され、車両前後方向かつ上下方向に延びる支持部材係止部23とから一体に形成されており、車両前方から見て略T字状に形成されている。なお、支持部材本体部21の基部には、支持部材19の取付強度を向上させるために、三角リブ25が上下に形成されている。
【0016】
図5はバンパー9の裏面側を示す斜視図、図6はラジエータサポート3の支持部材19に、バンパー9の係合部材27を取り付ける状態を示す斜視図である。
【0017】
これらの図5,6に示すように、バンパー9の側端部の裏面側には、車両後方に向けて係合部材27が一体に形成されている。この係合部材27は、車両後方側に開口部29が形成された、断面略コ字状の部材であり、可とう性を有する材質、例えばバンパー9と同じ合成樹脂から形成されている。また、図6に示すように、係合部材27には車幅方向内側の縦壁面31が設けられており、該縦壁面31は、車両後方側に開口部29が設けられた断面略コ字状に形成されると共に、縦壁面31の開口部29の上部及び下部には係止爪33が形成されている。この係止爪33は、後述する図8に示すように、車両前方に向かうにつれて徐々に開口部29の上下間隔が狭くなるテーパ状に形成されており、係止爪33の前端面35に支持部材本体部21が係止されるように構成されている。
【0018】
図7は図6のC−C線による断面図である。ラジエータサポート3の支持部材19の支持部材係止部23は、バンパー9の係合部材27の内方に収容されており、支持部材係止部23の車幅方向厚さTは、係合部材27の内側の車幅方向長さLよりも小さく形成されているため、所定距離分のストロークである(L−T)だけ、バンパー9がラジエータサポート3に対して車幅方向に移動することができる。
【0019】
また、図7のD−D線による断面図である図8に示すように、支持部材本体部21と係合部材27の内面との間には、上下方向及び車両前後方向にあまり隙間がなく、係合部材27によって支持部材19の移動が規制されている。
【0020】
図9はバンパー9をラジエータサポート3に取り付けている途中の状態を示す、図8に対応する断面図である。図9に示すように、断面略コ字状の係合部材27は可とう性を有しており、所定荷重を加えることによって開口部29側が上下に開き、この状態で、図10に示すように、支持部材19を係合部材27の内方に嵌め込むことによって、係合部材27で支持部材19を係合させることができる。なお、図10は、後述するようにフロントエンドモジュール1を搬送している途中の状態を示し、図11は通常状態における支持部材19と係合部材27との位置関係を示している。
【0021】
図10に示すように、フロントエンドモジュール1を搬送している途中では、ラジエータサポート3に対してバンパー9が車両前方側に寄っており、図11に示すように、通常状態では係合部材27の内方の略中心部に支持部材本体部21が位置している。
【0022】
さらに、図12はバンパー9の係合部材27を開いて、ラジエータサポート3の支持部材19から外している状態を示す斜視図である。
【0023】
例えば、フロントエンドモジュール1のバンパー9に変形等が生じたために、バンパー9をラジエータサポート3から取り外す場合、係合部材27の開口部29側を上下に開いた状態でバンパー9を車両前方に向けて引き出すと、この開口部29側から支持部材19を外すことにより、バンパー9をラジエータサポート3から取り外すことができる。
【0024】
前記構成を有するフロントエンドモジュール1の作用効果を説明する。
【0025】
まず、前記バンパー9を、ラジエータサポート3に対して着脱自在に構成しているため、フロントエンドモジュール1のバンパー9に変形やキズ等が発生した場合に、バンパー9のみを取り外すことができ、メンテナンス性が向上する。
【0026】
また、ラジエータサポート3の側面から車幅方向外側に突出した支持部材19を設け、バンパー9の裏面側に前記支持部材19に係合する、車両後方側に開口部29が設けられた断面略コ字状の係合部材27を設け、かつ係合部材27を可とう性を有する材質のものから構成しているため、バンパー9の係合部材27を容易にラジエータサポート3の支持部材19に係合させることができる。また、係合部材27を可とう性を有する材質である合成樹脂から形成したため、係合部材27の開口部29を開いて支持部材19に係合させる作業を容易に行うことができる。
【0027】
そして、前記係合部材27の開口部29側に、前記支持部材19に係止自在の係止爪33を設けているため、係合部材27の内方に支持部材19を係合させたのちに、係止爪33によって支持部材19を確実に保持することができる。
【0028】
前記構成を有するフロントエンドモジュール1の組付手順について説明する。
【0029】
図6に示すように、ラジエータサポート3に向けて、バンパー9を車両後方側に移動させる。バンパー9の裏面側には、車両後方側に開口部29が形成された係合部材27が形成され、該係合部材27は、可とう性を有する合成樹脂から形成されているため、図9に示すように、開口部29が上下に開き、ラジエータサポート3の支持部材19の支持部材本体部21を係合部材27の開口部29から内方に挿入し、図11に示すように、断面略コ字状の保持部材の内方に収容することができる。なお、図2に示すように、バンパー9の支持突起93は、ラジエータサポート3の取付面95に載置され、該取付面95にボルト締結される。
【0030】
次いで、フロントエンドモジュール1の車体への組付けについて説明する。
【0031】
図13はフロントエンドモジュール1を示す斜視図、図14はフロントエンドモジュール1の支持部37にスリンガーブラケット41を装着している状態を示す斜視図である。
【0032】
フロントエンドモジュール1を構成するバンパー9の上面の左右には、車幅方向外側に開口が形成された支持部37が設けられており、該支持部37には、車両前後方向に間隔を隔てて2つの係止孔39が穿設されている。
【0033】
一方、図14に示すように、スリンガーブラケット41は、上下に延設された縦面43と、該縦面43の下端から屈曲して側方に延びる底面51とから、側面視略L字状に形成されている。また、縦面43には、略ロ字状の可動部45が上下方向に移動自在に支持されており、該可動部45には、X状にリンク部47が連結され、該リンク部47に側面視略L字状の支持部53が軸支されている。そして、リンク部47の下端部は、スプリング49を介して連結され、支持部53には下方に向けてピン57が2つ突設され、該ピン57に対応する底面51には、貫通孔59が穿設されている。
【0034】
よって、スリンガーブラケット41の底面51を、図14の矢印方向に移動させ、バンパー9の支持部37の開口55に挿入し、該支持部37の係止孔39にピン57を挿入すると、スプリング49が縮んでスリンガーブラケット41の支持部53と底面51によって、バンパー9の支持部37を挟むように保持される。
【0035】
図15はフロントエンドモジュール1をフロントフェンダー61に搭載する状態を示す斜視図、図16はフロントエンドモジュール1の取付部とフロントフェンダー61の係合部を拡大して示す斜視図である。
【0036】
これらの図に示すように、フロントフェンダー61の前部下縁61aにフロントエンドモジュール1が係合されることによって、フロントエンドモジュール1が車体に搭載されている。
【0037】
フロントフェンダー61の前部下縁61aには、車幅方向内側に延びるフランジ63が形成されており、該フランジ63の後側と前側に、後側係合部65及び前側係合部67が設けられている。この後側係合部65は、図17に示すように、フランジ63から前方斜め下方に延びる舌片69である。具体的には、舌片69は、フランジ63から下方に延びる基部71と、該基部71の下端から屈曲して前方に延びる本体部73と、該本体部73の先端から前方斜め下方に屈曲して延びる前端部75とが一体に形成されており、本体部73の略中央部には、後方斜め上方に延びるストッパー部77が延設されている。なお、この舌片69は、フランジ63を略矩形状に切り取った部分の切り起しから形成したものであり、上下方向に弾性変形自在に構成されている。
【0038】
また、前側係合部67は、フランジ63の車幅方向端部から下方に延びるクランプ爪79であり、該クランプ爪79においては、フランジ63との間に一定のスキマ79aが形成されている。
【0039】
一方、フロントエンドモジュール1を構成するバンパー9の側部上縁には、車幅方向内側に向けて延びるフランジ81が形成されている。このフランジ81には、前記舌片69に係合する後側取付部83が設けられ、該後側取付部83の前方には前側取付部85が設けられている。
【0040】
後側取付部83は、後部側に形成された平面視略S字状に形成された切欠き87と、該切欠き87の前部に形成された矩形状のストッパー孔89とからなり、切欠き87は前記舌片69の側部が摺接自在に構成されている。そして、フロントエンドモジュール1の搭載時に、フロントフェンダー61の舌片69にフロントエンドモジュール1の切欠き87が摺接し、舌片69の側部に切欠き87の側部が摺接しながらフロントエンドモジュール1が案内されるように構成されている。また、舌片69のストッパー部77は、フロントエンドモジュール1のストッパー孔89に挿入されて係止される。さらに、前側取付部85は、車幅方向内側に向けて延びる突片91からなり、該突片91の内方にもスキマが形成されており、前述したクランプ爪79と直交する向きに延設されているため、前記クランプ爪79のスキマ79aに突片91のスキマ91aを嵌合させると、車両前方から見て、クランプ爪79と突片91とによって略十字状に交差している状態になっている。なお、クランプ爪79と突片91は、前記舌片69及び切欠き87から車幅方向に離れた部位に配置されている。
【0041】
前記構成を有するフロントエンドモジュール1をフロントフェンダー61に搭載する手順を簡単に説明する。
【0042】
前述した図14に示すように、スリンガーブラケット41によってフロントエンドモジュール1を上方に持ち上げ、この状態で、図15に示すように、フロントエンドモジュール1を車体に向けて車両後方に移動させる。そして、図16に示すように、フロントエンドモジュール1の切欠き87をフロントフェンダー61の舌片69の側部に当接させたのち、舌片69の側部に切欠き87を摺接させながらフロントエンドモジュール1を車両後方側に移動させる。そして、舌片69のストッパー部77をストッパー孔89に係止させることによって、フロントフェンダー61の後側係合部65にフロントエンドモジュール1の後側取付部83を取り付けることができる。一方、フロントフェンダー61の前側係合部67とフロントエンドモジュール1の前側係合部67は、クランプ爪79のスキマ79aに突片91のスキマ91aを嵌合させることによって、確実に位置決めされる。なお、舌片69のストッパー部77がストッパー孔89に完全に嵌合されたとほぼ同時に、クランプ爪79が突片91に係合される。
【0043】
また、フロントエンドモジュール1をフロントフェンダー61から取り外す場合は、前述した作業と逆のことを行えば良く、舌片69を下方に押し下げてストッパー部77をストッパー孔89から抜き出した状態で、フロントエンドモジュール1を車両前方に向けて移動させれば良い。
【0044】
これまで説明した実施形態による作用効果を説明する。
【0045】
本実施形態によるフロントエンドモジュール1において、バンパー9の左右両端部の位置がラジエータサポート3に対して、車幅方向に所定距離分だけ移動自在で且つ車両前後方向の移動が規制されるように構成しているため、フロントエンドモジュール1をフロントフェンダー61に搭載する際の作業性が向上する。即ち、フロントエンドモジュール1をフロントフェンダー61に取り付けるときには、バンパー9の左右両端部のフェンダ合わせ部9a(図15参照)の上面が、フロントフェンダー61の前部下縁61aの下面に摺接するため、バンパー9のフェンダ合わせ部9aが車両前方に変形しようとする。しかし、図10に示すように、支持部材19の支持部材係止部23が係合部材27の縦壁面31の内側に当接するため、支持部材19によってフェンダー合わせ部9aが車体側へ引き込まれ、バンパー9のフェンダー合わせ部9aの変形を確実に阻止することができる。従って、バンパー9のフェンダー合わせ部9aを押し込む必要がなく、フロントエンドモジュール1の車体への搭載と同時に、バンパー9とフロントフェンダー61との結合が完了する。
【0046】
また、個々のバンパー9自体の成形寸法がばらついた場合でも、そのばらつき量を効率的に吸収することができる。さらに、フロントエンドモジュール1を車体に搭載する場合に、その搭載軌跡のバラツキを効率的に吸収することができることができて搭載作業の作業性を向上させることができ、搭載後の各構成部品の寸法バラツキによるバンパー9の歪みや割れ等の変形を防止することができる。
【0047】
また、前記バンパー9を、ラジエータサポート3に対して着脱自在に構成しているため、バンパー9をラジエータサポート3に取り付ける場合や、ラジエータサポート3から取り外す場合に作業性が良好となる。なお、バンパー9を取り外す場合は、車両の前面衝突等によってバンパー9にキズが生じ、バンパー9を販売店等において交換する必要が生じる場合は、バンパー取外しの作業性が向上する。具体的には、前記係合部材27は、可とう性を有し、車両後方側に開口部29が設けられた断面略コ字状に形成され、該開口部29の大きさが可変自在に構成されているため、ある一定の荷重を加えると、係合部材27が弾性変形して開口部29が開き、支持部材19からバンパー9を容易に外すことができる。
【0048】
そして、図10に示すように、前記係合部材27の開口部29側に、前記支持部材19を保持する係止爪33を設けているため、フロントエンドモジュール1を搬送する場合などに、ラジエータサポート3の支持部材19がバンパー9の係合部材27から抜け出ることがない。また、係止爪33の形状は、車両後方側の高さが徐々に小さくなるテーパ状に形成されているため、バンパー9の装着時は係合部材27が容易に支持部材19に係合され、一旦、係合部材27の内方に支持部材19が嵌合されたあとは、確実に係合部材27の内方に保持される。
【0049】
前記フロントフェンダー61の後側係合部65は、フロントフェンダー61の前部下縁から前方斜め下方に延びる弾性を有する舌片69であり、フロントエンドモジュール1の後側取付部83は、フロントエンドモジュール1の搭載時にフロントフェンダー61の舌片69を案内する、平面視が略S字状に形成された切欠き87であるため、フロントエンドモジュール1を搭載する際に、切欠き87が舌片69に摺接しながらフロントエンドモジュール1のフェンダー合わせ部9aが案内され、搭載作業をスムーズに行うことができる。このとき、前述したように、係合部材27は、支持部材19に対して車幅方向に移動自在となっているため、組付誤差などがあった場合でも、切欠き87に舌片69が案内されて、フェンダー合わせ部9aがラジエータサポート3に対して自在に移動する。従って、フェンダー合わせ部9aとフロントフェンダー61との合わせ精度を向上させることができる。
【0050】
また、前記フロントフェンダー61の前側係合部67は、フロントフェンダー61の前部下縁から下方に延びるクランプ爪79であり、フロントエンドモジュール1の前側取付部85は、車幅方向に延びて前記クランプ爪79に嵌合される突片91であるため、クランプ爪79に突片91が嵌合されることによって、フロントエンドモジュール1の搭載位置が確実に決まり、ばらつくことがない。
【0051】
そして、舌片69のストッパー部77がストッパー孔89に係止されると、バンパー9に車両前方に向かう荷重が入力された場合の外れを好適に防止することができる。
【符号の説明】
【0052】
1…フロントエンドモジュール
3…ラジエータサポート
9…バンパー
9a…フェンダー合わせ部
19…支持部材(保持手段)
27…係合部材(保持手段)
29…開口部
33…係止爪
61…フロントフェンダー
65…後側係合部
67…前側係合部
69…舌片
79…クランプ爪
83…後側取付部
85…前側取付部
91…突片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントエンドモジュールを構成するバンパーの側部上縁に取付部を設け、フロントフェンダーの前部下縁に、前記取付部に係合する係合部を設け、前記フロントエンドモジュールを車両後方に向けて移動させ、前記取付部をフロントフェンダーの係合部に係合させることによって、フロントエンドモジュールをフロントフェンダーに搭載するフロントエンドモジュールの搭載構造であって、
前記フロントエンドモジュールの取付部を、バンパーの側部上縁の車両後方側に形成された後側取付部と、該後側取付部の前部に配置された前側取付部とから構成する一方、前記フロントフェンダーの係合部を、前記フロントエンドモジュールの後側取付部に係合する後側係合部と、前記前側取付部に係合する前側係合部とから構成し、
前記フロントエンドモジュールの後側取付部に、フロントフェンダーの後側係合部を案内しながら係合させるガイド機能をもたせる一方、
前記フロントエンドモジュールの前側取付部に、フロントフェンダーの前側係合部の係合位置を決める位置決め機能をもたせたことを特徴とするフロントエンドモジュールの搭載構造。
【請求項2】
前記フロントフェンダーの後側係合部は、フロントフェンダーの前部下縁から前方斜め下方に延びる弾性を有する舌片であり、
フロントエンドモジュールの後側取付部は、フロントエンドモジュールの搭載時にフロントフェンダーの舌片を案内する、平面視が略S字状に形成された切欠きであることを特徴とする請求項1に記載のフロントエンドモジュールの搭載構造。
【請求項3】
前記フロントフェンダーの前側係合部は、フロントフェンダーの前部下縁から下方に延びるクランプ爪であり、
フロントエンドモジュールの前側取付部は、車幅方向に延びて前記クランプ爪に嵌合される突片であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフロントエンドモジュールの搭載構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2009−161182(P2009−161182A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106949(P2009−106949)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【分割の表示】特願2003−421158(P2003−421158)の分割
【原出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】